(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-02
(45)【発行日】2023-08-10
(54)【発明の名称】固定システム
(51)【国際特許分類】
A61G 13/10 20060101AFI20230803BHJP
A61B 90/50 20160101ALI20230803BHJP
A61B 50/20 20160101ALI20230803BHJP
【FI】
A61G13/10
A61B90/50
A61B50/20
(21)【出願番号】P 2022090237
(22)【出願日】2022-06-02
(62)【分割の表示】P 2018090872の分割
【原出願日】2018-05-09
【審査請求日】2022-06-02
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)下記ウェブサイトのアドレスにて公開 1)平成29年11月10日、https://confit.atlas.jp/guide/event/jsnet2017/subject/2-P35-6/advanced 2)平成29年11月13日、https://www.jstage.jst.go.jp/article/nkc/2/Supplement/2_S254/_pdf/-char/ja 3)平成29年11月17日、http://www.congre.co.jp/jsnet2017/pdf/abstract-download/poster.pdf (2)平成29年11月24日に第33回NPO法人日本脳神経血管内治療学会学術総会にて公開 (3)平成30年4月3日に第27回脳神経外科手術と機器学会事務局 奈良県立医科大学脳神経外科発行の第27回脳神経外科手術と機器学会プログラム・抄録集にて公開 (4)平成30年4月13日に第27回脳神経外科手術と機器学会(CNTT2018)にて公開
(73)【特許権者】
【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000193612
【氏名又は名称】ミズホ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】弁理士法人インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120237
【氏名又は名称】石橋 良規
(72)【発明者】
【氏名】小山 淳一
(72)【発明者】
【氏名】坂田 佳啓
【審査官】杉▲崎▼ 覚
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-112414(JP,A)
【文献】特表昭62-501264(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 13/10
A61B 90/50
A61B 50/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用具が載置可能な延長テーブルと、
前記延長テーブルに取り付けられる本体と、前記本体に取り付けられ、前記医療用具を前記延長テーブルとの間で付勢力によって固定するアームと、を備えた固定装置と、
を備えたことを特徴とする固定システム。
【請求項2】
前記延長テーブルは、寝台上であって患者の上方に載置されるテーブルの患者頭部側端部に屈曲手段を備えた連結部材を介して着脱可能に前記テーブルに連結されていることを特徴とする請求項1に記載の固定システム。
【請求項3】
前記本体は、前記延長テーブルに前記本体を着脱可能な着脱手段を備えていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の固定システム。
【請求項4】
前記着脱手段は、回転操作により磁性体の磁化の有無を制御する操作体を前記本体に備えていることを特徴とする請求項3に記載の固定システム。
【請求項5】
前記アームは回転可能に軸支されており、前記アームの先端部は前記医療用具を取り外し可能な解除位置と、前記医療用具を延長テーブルとの間で固定する固定位置と、の間を移動可能であることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の固定システム。
【請求項6】
前記アームに生じる付勢力を調整する調整手段を備えていることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の固定システム。
【請求項7】
前記延長テーブル上に本体を位置決めする位置決め手段を備えていることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の固定システム。
【請求項8】
前記位置決め手段は、前記延長テーブルに形成されている凹凸部に対して嵌合可能な嵌合体を備えていることを特徴とする請求項7に記載の固定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用具を固定する固定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
カテーテルを使用した治療の一例として、脳動脈瘤内にコイルを留置して動脈瘤を閉塞するコイル塞栓術治療が知られている。
【0003】
コイル塞栓術治療は、カテーテルからデリバリーワイヤの先端に接続されたコイルを押し出して脳動脈瘤に詰める治療方法であって、このカテーテルやデリバリーワイヤはYコネクタに接続又は挿入され、デリバリーワイヤが医師によって進退操作されて治療が進められる。
【0004】
一般的にデリバリーワイヤの進退操作は、患者の近くで作業を行うことが多く、Yコネクタを固定する固定場所がないため、医師は、Yコネクタを把持しつつデリバリーワイヤの進退操作を行う必要があり、作業性が悪い等の問題がある。したがって、Yコネクタを載置する作業台や作業台にYコネクタを固定する固定装置等があると便利である。
【0005】
また、従来からX線の被曝防止用に用いられるテーブルが知られており、このテーブルは、患者の下半身上部を覆うようにしてベッド上に設けられる(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このようなテーブルにYコネクタを載置して治療を行う場合、医師はYコネクタを把持する必要性がなくなるため作業性の改善を図れるものの、Yコネクタをテープ等でテーブル上に固定すると、作業中にテープが剥がれてしまう等の不具合を生じるおそれがある。
【0008】
また、Yコネクタの最適な固定位置は各医師によって異なり、テープによる固定ではYコネクタの固定位置を調整できず、固定位置を移動する場合には、再度、テープで固定しなおす必要があって時間ロスが生じるとともに作業性が悪い等の不具合が生じる。
【0009】
また、この種のテーブルを用いた場合、Yコネクタの設置位置が患者から遠くなり、更にはYコネクタの固定位置が高すぎて治療に要する作業性が悪化するという不具合が生じる。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するために成されたものであって、簡単な操作で容易且つ確実に医療用具を着脱可能な固定装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る固定装置(10)は、医療用具(5)を載置又は取付け可能な基台(110)に取り付けられる本体(20)と、前記本体に取り付けられ、前記医療用具を前記基台との間で付勢力によって固定するアーム(32)と、を備えていることを特徴とする。
【0012】
また、請求項2に記載の固定装置は、請求項1に記載の固定装置において、前記本体は、磁性体の磁化の有無により前記基台に前記本体を着脱可能な着脱手段(45)を備え、前記着脱手段は、回転操作により前記磁性体の磁化の有無を制御する操作体(75)を前記本体に備えていることを特徴とする。
【0013】
また、請求項3に記載の固定装置は、請求項1、又は請求項2に記載の固定装置において、前記アームは回転可能に軸支されており、前記アームの先端部は前記医療用具を取り外し可能な解除位置(H)と、前記医療用具を基台との間で固定する固定位置(L)と、の間を移動可能であることを特徴とする。
【0014】
また、請求項4に記載の固定装置は、請求項1~3のいずれか一項に記載の固定装置において、前記アームに生じる付勢力を調整する調整手段(60)を備えていることを特徴とする。
【0015】
また、請求項5に記載の固定装置は、請求項1~4のいずれか一項に記載の固定装置において、前記基台上に本体を位置決めする位置決め手段(120)を備えていることを特徴とする。
【0016】
また、請求項6に記載の固定装置は、請求項5に記載の固定装置において、前記位置決め手段は、前記基台に形成されている凹凸部に対して嵌合可能な嵌合体(122)を備えていることを特徴とする。
【0017】
また、請求項7に記載の固定システムは、医療用具が載置可能な延長テーブル(110)と、前記延長テーブルに取り付けられる本体と、前記本体に取り付けられ、前記医療用具を前記延長テーブルとの間で付勢力によって固定するアームと、を備えた固定装置と、を備えたことを特徴とする。
【0018】
また、請求項8に記載の固定システムは、請求項7に記載の固定システムにおいて、前記延長テーブルは、寝台上であって患者の上方に載置されるテーブルの患者頭部側端部に屈曲手段を備えた連結部材を介して着脱可能に前記テーブルに連結されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、医師が作業しやすい位置に医療用具を固定して保持することができる。また、脱着が必要な場合にワンアクションで固定装置を基台から脱着できる。また、簡易な操作で医療用具又は固定装置の脱着が可能であるため、脱着に要する時間の短縮化を容易に図れるとともに、作業効率を高めることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図4】吸着力をオン・オフ制御した際の構成例を示す縦断面図を示し、
図4は吸着力をオフ制御した際の構成図、
図4(b)は吸着力をオン制御した際の構成図である。
【
図5】吸着力をオン・オフ制御した際の構成例を示す横断面図を示し、
図5は吸着力をオフ制御した際の構成図、
図4(b)は吸着力をオン制御した際の構成図である。
【
図6】延長テーブルを備えたテーブルの一例を示す外観図である。
【
図7】固定装置の位置決め機構部を説明するための外観図である。
【
図8】固定装置の他の位置決め機構部を説明するための外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る固定装置の実施例について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施例は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施例の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0022】
(固定装置の概要)
本実施例は、
図1に示すように、コネクタ5を固定する固定装置10の一例であり、固定装置10は、寝台1に載せられた患者2の下半身上方に設置されたテーブル100から患者側に延長して設けられる延長テーブル110(本願の基台)の上に自由に位置決めされて固定される。
【0023】
また、この固定装置10には、例えば、コイル塞栓術治療において、脳動脈瘤を塞栓するためのコイル(図示しない)が接続されたデリバリーワイヤ3が挿入、又はデリバリーワイヤ3が内部に挿入されているカテーテル4が接続される円筒状のコネクタ5(本願の医療用具)が固定される。
【0024】
図1乃至
図4に示すように、固定装置10は、延長テーブル110の上に取り付けられる本体20と、本体20の側面から外方に突出するアーム32と、を備え、このアーム32は、弾性部材40によって先端部の上方への移動に対して付勢力を生じつつ、枢軸31によって
図2中の矢印に示すように上方向に回動可能に支持される。
【0025】
そして、固定装置10は、
図1に示すように、延長テーブル110の上に載置されるコネクタ5をアーム32に生じる付勢力によってアーム32と延長テーブル110の間で挟持して固定するとともに、本体20を延長テーブル110の上に自由に位置決めして固定する。また、アーム32の先端部は下方に屈曲しており、コネクタ5の周囲に係合しやすくなっており、コネクタ5が確実に保持される。
【0026】
また、コネクタ5は、本体20を延長テーブル110から取り外すことで容易に取り外すことが可能であるが、アーム32は、
図4に示すように、コネクタ5を延長テーブル110との間で押圧して挟持可能な固定位置Lからコネクタ5を取り外し可能な解除位置Hの間を外力によって移動可能となっている。
【0027】
したがって、外力を加えてアーム32を解除位置Hまで持ち上げることでコネクタ5をアーム32と延長テーブル110との間に差し込むことができるため、本体20を延長テーブル110に固定した状態でコネクタ5を容易に固定することが可能である。
【0028】
また、アーム32は、コネクタ5を本体20から離反する方向に移動することで付勢力に抗して持ち上がり、コネクタ5をアーム32から引き抜くことができるため、本体20を延長テーブル110に固定した状態でコネクタ5を容易に取り外すことが可能である。
【0029】
このように本実施例の固定装置10は、医師が作業しやすい位置にコネクタ5を簡単且つ確実に固定して保持することができるとともに、簡単な操作でコネクタ5の脱着が可能であるため、脱着に要する時間の短縮化を容易に図れるとともに、作業効率を高めることが可能である。
【0030】
(固定装置の構成)
図2乃至
図4に示すように、固定装置10は、枢軸11を介して先端部を上下方向に回転可能なアーム32を備えるアーム部30と、このアーム部30が取り付けられる直方体状に形成された本体20と、延長テーブル110に対して本体20を着脱する着脱機構部45(本願の着脱手段)と、延長テーブル110に対して本体20を位置決めする位置決め機構部120(本願の位置決め手段)と、を備える。
【0031】
アーム部30は、アーム32と、このアーム32を回転可能に支持する支持体35を備える。アーム32は、先端部が下方に屈曲するとともに帯状に形成された基体を有し、この基体の後方部分にはアーム32を軸支するための枢軸11に取り付けられる環状の取付部34を備えている。
【0032】
支持体35は、アーム32の取付部34を含む後方を収容可能な空間を有する筐体36を備え、この筐体36の両側には外側に突出するフランジ部36aが設けられている。このフランジ部36aには、図示しない本体20の前方端面に形成された孔部と同軸上に配置される図示しない複数の貫通孔が形成され、この貫通孔を通してネジ37が孔部と螺合することで本体20とアーム部30とが固定される。
【0033】
図3及び
図4に示すように、筐体36の空間は、筐体36の前方端部に形成された開口36bから後方に延びる第1の空間38と、第1の空間38の後方に連絡し鉛直方向に延びる第2の空間39と、を有する。
【0034】
第1の空間38内には、左右方向に水平に延びる枢軸11が設けられ、この枢軸11に取付部34が回転自在に取り付けられてアーム32が回転可能に軸支される。
【0035】
また、第2の空間39内であってアーム32の後方部下方には貫通孔部41aを有する伸縮可能な環状のバネ部材41が配置され、アーム32前方部の上方への移動に対してバネ部材41の弾性力による付勢力が生じる。
【0036】
したがって、延長テーブル110の上に載置されるコネクタ5は、延長テーブル110とアーム32との間でアーム32に生じる付勢力によって固定される。また、アームの先端部は下方に屈曲しており、この屈曲部がコネクタ5の外側を保持し、コネクタ5が外方に抜け出ることを防止する。
【0037】
また、第2の空間39内には、アーム32に生じる付勢力を調整する調整機構部60(本願の調整手段)が設けられている。調整機構部60は、バネ部材41の下端に接触して配置され、バネ部材41をアーム32の後方部との間で支持する平板状の支持部材62と、バネ部材41の中央に有する貫通孔部41a及びこの貫通孔部41aと同軸上に形成されたアーム32後方部に形成された貫通孔32aに挿入され、支持部材62に取り付けられる軸65aを有する回転体65と、を備える。
【0038】
回転体65は、筐体36の上部外方に配置される手動操作用の頭部65bと、この頭部65bから筐体36の上面を貫通して下方鉛直方向に延びる軸65aと、を備え、頭部65bの回転操作により軸65aが回転する。
【0039】
この軸65aの下端部外周縁には図示しない雄ネジが形成されており、支持部材62には、当該軸65aの雄ネジと螺合する図示しない雌ネジが形成された貫通孔62aが形成され、軸65aの下端部は螺合により支持部材62に取り付けられている。
【0040】
また、
図3及び
図4に示すように、軸65aの上部には径方向周囲に窪み65cが形成され、この窪み65cには前後方向に水平に延びる一対のピン66、66が配置され、このピン66、66により軸65aが回転可能に保持される。
【0041】
そして、手動による回転体65の頭部65bの回転操作により、頭部65bは上下に移動することなくその位置で回転し、軸65aと螺合する支持部材62のみが
図3中の矢印に示すように上下に移動する。アーム32の付勢力は、この支持部材62の上下方向の移動によりバネ部材41を伸縮させることで調整される。
【0042】
なお、バネ部材41を縮めることでアーム32の付勢力が高められるもののアーム32の可動域は狭くなる。一方、バネ部材41を解放(伸ばす)ことでアーム32の付勢力は低くなるもののアーム32の可動域は広くなる。
【0043】
次に、本体20を延長テーブル110に着脱する着脱機構部45について
図4及び
図5を用いて説明する。なお、本実施例の延長テーブル110は強磁性を有する(磁石が吸着する)材料により形成されているものとする。
【0044】
着脱機構部45は、本体20に設けられた磁性部材71(本願の磁性体)の吸着力をオン・オフ(磁性部材71、71間の磁化の有無)制御することにより延長テーブル110に本体20を着脱するものである。
【0045】
この着脱機構部45は本体20に設けられており、本体20は、
図4(b)に示すように、前後に配置された磁極の異なる平板状の磁性部材71、71と、
図5(b)に示すように、その磁極の異なる磁性部材71、71の間に配置された合成樹脂等で形成された非磁性部材72a、72bと、を備え、前後両側に磁極が分割されて磁極の異なる磁性部材71、71が配置される。なお、本体20の外形は、当該磁性部材71と非磁性部材72a、72bの形状により形成されたもので略直方体状に形成されている。
【0046】
非磁性部材72a、72bは、
図4及び
図5に示すように、中央部にN・S極が互いに対向した状態で配置される永久磁石73の上下を挟持するようにして配置されている。永久磁石73には同極のヨーク74(継鉄)が隣接して取り付けられ、磁力が増強される。
【0047】
上部に設けられる非磁性部材72aは、回転可能に磁性部材71、71に連結される非磁性体によって形成された連結部材76を介して本体20の上端部外側に露出して設けられる操作体75と連結され、手動による操作体75の回転操作により
図5に示すようにヨーク74を含む永久磁石73とともに回転操作される。
【0048】
図5に示すように、この操作体75の回転操作により永久磁石73は回転し、永久磁石73の磁性部材71に対する磁極方向が切り替えられ、非磁性部材72によって両側に分割された磁性部材71、71の間で磁力線Gの作用方向を切替えることで、磁性部材71、71間を磁化したり、磁化しないように切替可能である。
【0049】
なお、
図4(b)及び
図5(b)に示すように、磁性部材71、71間が磁化された場合には、磁力線Gが本体20の外側に形成されるため、本体20が延長テーブル110に吸着され固定される一方で、
図4(a)及び
図5(a)に示すように、磁性部材71、71間が磁化されない場合には、磁力線Gが本体20の内部に形成されるため、本体20は延長テーブル110に吸着されず、延長テーブル110に対して本体20を自由に移動することができる。
【0050】
なお、磁性部材71、71は、吸着能力の態様に応じてその個数等が適宜設定される。
【0051】
また、本体20の下端部には、非磁性体のカバー部材78が取り付けられ、連結部材76との間で内部が密閉されるとともに、両側の磁性部材71、71間に配置される永久磁石73や非磁性部材72を保持する。
【0052】
そして、本体20の上部に露出した操作体75を使用者が回転操作することで、永久磁石73を回転させ磁性部材71、71に対する磁極方向を切り換える。これによって、本体20の両側に分割された磁極の異なる磁性部材71、71による吸着力がオン・オフ制御されることになり、吸着力のオン制御により延長テーブル110に本体20が吸着されて固定され、吸着力のオフ制御により延長テーブル110への吸着が喪失し、延長テーブル110上において固定装置10を自由に移動することができる。
【0053】
このように本実施例の固定装置10は、操作体75の回転操作のみで磁性部材71、71間の吸着力をオン・オフ制御できるため、容易に本体20を延長テーブル110に位置決めして固定したり移動することができる。
【0054】
また、固定装置10は、延長テーブル110からの脱着が必要な場合にワンアクション(回転操作のみ)で脱着できるので便利である。また、簡易な操作で医療用具5や固定装置10の脱着が可能であるため、脱着に要する時間の短縮化を容易に図れるとともに、作業効率を高めることが可能である。
【0055】
(テーブル及び延長テーブルの構成)
次にテーブル及び延長テーブルの構成について
図6を用いて説明する。
テーブル100は、寝台1の上に載置されるものであって、少なくとも寝台1に横たわっている患者の腹部を含む下半身を覆う程度の大きさを有している。
【0056】
このテーブル100には、下方に四隅を含めて複数の脚体102、102が取り付けられている。脚体102は、昇降可能な軸を備え、患者の体型等に合わせてその長さを自由に調節可能になっている。
【0057】
また、テーブル100は、前後一対のテーブル部分101、101を図示しないヒンジを介して連結して構成され、折畳可能となっており、小さく収容することが可能である。
【0058】
また、テーブル100の前方端部の両側には、テーブル100の長さ(縦)方向の長さを延長可能な延長テーブル110が着脱可能に設けられている。
【0059】
また、テーブル100の前方部の一部領域と延長テーブル110は、強磁性を有する(磁石が吸着する)材料により形成された部材で形成されている。なお、固定装置10が取り付けられる領域若しくは表面のみを強磁性を有する材料としても良い。
【0060】
延長テーブルは、医療用具を載置可能な領域を有する平板状の基台を備えている。この延長テーブル110は、図示しないが、テーブル100の下端面に設けられた幅(左右)方向に延びる案内レールに、連結部材を介して連結される。したがって、延長テーブル110は、
図6中の矢印に示すように、テーブル100の幅方向において、手動により自由に移動することが可能である。
【0061】
また、延長テーブル110は、球関節(本願の屈曲手段)を備えた連結部材を介してテーブル100の患者頭部側端部に取り付けられており、
図6中の矢印に示すように、水平又は鉛直方向に回転可能となっており、水平方向に回転することで図示しないがテーブル100の下方に収納したり、
図6に示すように、テーブル100の前方部に張り出すことが可能である。
【0062】
また、延長テーブル110は鉛直方向に回転することで
図1に示すように傾斜(屈曲)可能となっており、コネクタ5の固定位置をテーブル100と患者の間で適宜調整することができる。
【0063】
さらに、延長テーブル110は、上下に配置された2枚の板状の部材で構成され、2つの部材を相対的に移動させることで、延長テーブルの長さを伸縮自在となっている。
【0064】
このように延長テーブル110は、テーブル100の前方において、左右方向に位置決めできるとともに傾斜して位置決めできるので、適宜、最適な位置に延長テーブル110を位置決めすることが可能である。また、延長テーブル110を必要としないときには、テーブル100の下方に収納することが可能である。さらに、延長テーブル110の長さを伸縮することで、延長テーブル110を患者側に近づけたり、患者から離反することができる。
【0065】
次に、延長テーブル110に対する固定装置10の位置決め機構部120(本願の位置決め手段)について
図7を用いて説明する。
【0066】
本実施例の位置決め機構部120は、延長テーブル110の前後左右方向に均等に整列された複数の孔部121(本願の凹凸部)と、固定装置10の本体20に設けられた延長テーブル110の孔部121に嵌合可能な下方鉛直方向に延びるピン状の突起122(本願の嵌合体)(
図4参照)と、により構成され、固定装置10の本体20に設けられた突起122を延長テーブル110に形成された複数の孔部121の中から選択される所定の孔部121に嵌合させることで固定装置10を位置決めする。
【0067】
なお、突起122は、中央部に1つでも良いが、左右又は前後に複数設けても構わない。また、テーブル100の前方部にも孔部121を設けることで固定装置10をテーブル100にも固定することが可能となる。また、孔部121を突起とし、突起122を孔部としてもよい。
【0068】
このようにして固定された固定装置10は、突起122を孔部121に嵌合して位置決めするため、本体20の吸着力が多少弱くても固定状態を維持できる。また、固定装置10がスライド移動しないため、固定装置10の移動を容易に防止できる。
【0069】
次に、延長テーブル110に対する固定装置10の他の位置決め機構について
図8を用いて説明する。
【0070】
本実施例の固定装置10の位置決め機構部120は、延長テーブル110の前後左右方向に格子状に延びる突起部126と、固定装置10の本体20に設けられた延長テーブル110の突起部126に係合可能な図示しない凹部と、により構成され、固定装置10の本体20に設けられた凹部を延長テーブル110に形成された突起部126に係合させた状態でスライド移動させることで固定装置10を位置決めする。
【0071】
このようにして固定された固定装置10は、凹部が突起部126に係合して位置決めするため、本体20の吸着力が多少弱くても固定状態を維持できる。また、固定装置10をスライド移動して位置決めできるため、固定装置10を微調整して位置決めすることができる。
【0072】
なお、本実施例では、突起部126を格子状としているが、延長テーブル110の長さ方向にのみ複数の突起部126を並列に設けたり、延長テーブル110の幅方向にのみ複数の突起部126を並列に設けても構わない。
【0073】
また、本実施例では、テーブル100の一部又は延長テーブル110に位置決め機構用の孔部121や突起部126を設けているが、孔部121や突起部126を設けた別部材の基台(図示しない)を用意して、表面がフラットに形成されたテーブル100や延長テーブル110上に台座を取り付けた上で、この台座上に固定装置10やコネクタ5等の医療用具を載置しても構わない。
【0074】
このようにテーブル100や延長テーブル110とは別部材の基台と固定装置10を備えた固定システムとすることで、一般的に用いられている作業台に適用することができるため、汎用性が高く便利である。
【0075】
なお、本発明は、上記実施形態に限られることはなく、本発明の要旨を変更しない範囲において、種々の変更が可能である。例えば、本実施形態では、着脱機構部45は一例であり、磁性部材71、71や非磁性部材72等の配置形態は適宜変更しても構わない。
【0076】
また、本体20とアーム部30はネジ37を用いて着脱可能に固定されているが、他の形態により本体20とアーム部30を着脱可能にしても構わない。これによりアーム部30が破損等した場合に、アーム部30のみを新しいものに変更すればよく便利である。
また、本実施例では、寝台1に載せられた患者2の下半身上方に設置されたテーブル100から患者側に延長して設けられる延長テーブル110上に固定装置10を取り付ける一例を示したが、医療用具を取り付け可能なフレームや棚で構成される枠体を用意し、その枠体(本願の基台)に固定装置10を取り付けても使用しても良い。
【符号の説明】
【0077】
5 コネクタ
10 固定装置
20 本体
32 アーム
45 着脱機構部
60 調整機構部
75 操作体
110 延長テーブル
120 位置決め機構部
122 突起