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特許7324478メソ-2,3-ブタンジオールの調製方法
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  • 特許-メソ-2,3-ブタンジオールの調製方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-02
(45)【発行日】2023-08-10
(54)【発明の名称】メソ-2,3-ブタンジオールの調製方法
(51)【国際特許分類】
   C12P 7/18 20060101AFI20230803BHJP
   B01D 61/02 20060101ALI20230803BHJP
   B01D 61/14 20060101ALI20230803BHJP
   B01D 61/42 20060101ALI20230803BHJP
   B01D 61/58 20060101ALI20230803BHJP
   B01D 71/02 20060101ALI20230803BHJP
   C07C 29/74 20060101ALI20230803BHJP
   C07C 29/80 20060101ALI20230803BHJP
   C07C 31/20 20060101ALI20230803BHJP
   C12N 1/20 20060101ALI20230803BHJP
   C12R 1/22 20060101ALN20230803BHJP
【FI】
C12P7/18
B01D61/02 500
B01D61/14 500
B01D61/42
B01D61/58
B01D71/02
C07C29/74
C07C29/80
C07C31/20 B
C12N1/20 Z
C12R1:22
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022562493
(86)(22)【出願日】2021-01-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-14
(86)【国際出願番号】 CN2021070440
(87)【国際公開番号】W WO2022147680
(87)【国際公開日】2022-07-14
【審査請求日】2022-10-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522400320
【氏名又は名称】蘇州蘇震生物工程有限公司
【氏名又は名称原語表記】SUZHOU SUZHEN BIOENGINEERING CO., LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】羅 吉安
(72)【発明者】
【氏名】張 葉興
(72)【発明者】
【氏名】張 ▲ユン▼
(72)【発明者】
【氏名】石 国柱
(72)【発明者】
【氏名】劉 賓
(72)【発明者】
【氏名】▲フォン▼ 華
【審査官】山▲崎▼ 真奈
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-524150(JP,A)
【文献】国際公開第2018/199669(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第109336737(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105622342(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103740771(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107201374(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102296094(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P
C07B
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生可能なバイオマスを原料とし、クレブシエラを用いて発酵させて2,3-ブタンジオールを生産し、2,3-ブタンジオール発酵ブロスを得るステップ(1)と、
ステップ(1)で得られた2,3-ブタンジオール発酵ブロスに対し、滅菌とタンパク質除去のための限外濾過、タンパク質除去と部分的塩除去のためのナノ濾過、脱塩のための電気透析、一部の水の除去のための多蒸発を順に行うことにより、濃縮液を得るステップ(2)と、
第一の精留塔を用いてステップ(2)で得られた濃縮液を脱水して脱水液を得た後、脱水液を蒸留して蒸留液を得るステップ(3)と、
ステップ(3)で得られた蒸留液を第二の精留塔で精留し、塔の頂部から3-ヒドロキシ-2-ブタノンを分離し、純度が99.5%以上である2,3-ブタンジオールをサイドラインから抽出するステップ(4)と、
ステップ(4)でサイドラインから抽出された2,3-ブタンジオールを第三の精留塔で精留し、塔の頂部からL-(+)-2,3-ブタンジオールを抽出し、サイドラインからメソ-2,3-ブタンジオールを抽出し、サイドラインから抽出されたメソ-2,3-ブタンジオールを活性炭で吸着させることにより、純化されたメソ-2,3-ブタンジオールを得るステップ(5)とを備えることを特徴とするメソ-2,3-ブタンジオールの調製方法。
【請求項2】
ステップ(2)においては、限外濾過は、セラミック膜を用いて行い、セラミック膜の濾過孔径は、5~50nmであり、及び/又は、ステップ(2)においては、ナノ濾過で用いられるナノ濾過膜のカットオフ分子量は、300~1000であることを特徴とする請求項1に記載のメソ-2,3-ブタンジオールの調製方法。
【請求項3】
ステップ(2)においては、電気透析で用いられるイオン交換膜は、不均一膜又は半均一膜であり、電気透析脱塩後の脱塩溶液の電気伝導率は、2000μ/cmに低下することを特徴とする請求項1に記載のメソ-2,3-ブタンジオールの調製方法。
【請求項4】
ステップ(2)においては、多効用蒸発は、多効用蒸発器で行われ、前記多効用蒸
発器は、3効用蒸発器、4効用蒸発器、5効用蒸発器、6効用蒸発器又は7効用蒸発器であり、減圧蒸発であることを特徴とする請求項1に記載のメソ-2,3-ブタンジオールの調製方法。
【請求項5】
ステップ(2)においては、前記濃縮液の含水率は、40wt%以下であることを特徴とする請求項1に記載のメソ-2,3-ブタンジオールの調製方法。
【請求項6】
ステップ(3)においては、前記第一の精留塔のプロセスパラメータは、精留塔の理論段数が10~50であり、塔の頂部の操作圧力が80~90mmHgであり、塔の頂部の還流比率が0.5~1であることを特徴とする請求項1に記載のメソ-2,3-ブタンジオールの調製方法。
【請求項7】
ステップ(3)においては、前記蒸留は、蒸留塔で行われ、前記蒸留塔のプロセスパラメータは、塔の頂部の操作圧力が3~20mmHgであることを特徴とする請求項1に記載のメソ-2,3-ブタンジオールの調製方法。
【請求項8】
ステップ(3)においては、前記脱水液の含水率は、0.5wt%以下であることを特徴とする請求項1に記載のメソ-2,3-ブタンジオールの調製方法。
【請求項9】
ステップ(4)においては、前記第二の精留塔のプロセスパラメータは、精留塔の理論段数が10~100であり、塔の頂部の操作圧力が5~30mmHgであり、還流比率が0.5~10であることを特徴とする請求項1に記載のメソ-2,3-ブタンジオールの調製方法。
【請求項10】
ステップ(5)においては、前記第三の精留塔のプロセスパラメータは、精留塔の理論段数が25~100であり、塔の頂部の操作圧力が5~30mmHgであり、還流比率が3~30であることを特徴とする請求項1に記載のメソ-2,3-ブタンジオールの調製方法。
【請求項11】
ステップ(5)においては、塔の頂部から抽出されたL-(+)-2,3-ブタンジオールを活性炭で吸着させることにより、純化されたL-(+)-2,3-ブタンジオールを得ることを更に備え、前記純化されたL-(+)-2,3-ブタンジオールは、純度が51%以上であり、着色度がハーゼン単位色数10以下であることを特徴とする請求項1に記載のメソ-2,3-ブタンジオールの調製方法。
【請求項12】
ステップ(5)においては、前記純化されたメソ-2,3-ブタンジオールは、純度が90%以上であり、着色度がハーゼン単位色数10以下であることを特徴とする請求項1に記載のメソ-2,3-ブタンジオールの調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2,3-ブタンジオール及びその立体異性体の調製技術分野に属し、特に、メソ-2,3-ブタンジオールの調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メソ-2,3-ブタンジオール(Meso-2,3-ブタンジオール)は、2,3-ブタンジオールの立体異性体の1つとし、現在、研究で分かるように、メソ-2,3-ブタンジオールは、2,3-ブタンジオールの他の立体異性体(L型(L-(+)-2,3-ブタンジオール)、D型(D-(-)-2,3-ブタンジオール))に比べ、抗菌性及び防腐性が高く、皮膚への刺激がより少なく、例えば、中国特許CN2015800553290である。実際は、パラベン、イミダゾリジニル尿素、フェノキシエタノール、クロルフェネシン等の既存のような防腐剤であっても、組成物の中の微生物を抑制かつ消滅し、製品の貯蔵可能性を高めるという問題を実現することができるが、これらは、何れも皮膚の刺激、アレルギーを引き起こし、更に、重症の場合、皮膚の毒性を引き起こす。よって、既知の抗菌及び防腐の製品に比べ、メソ-2,3-ブタンジオールは、抗菌、防腐及び日常の化学製品等に優れた応用価値がある。しかしながら、現在、メソ-2,3-ブタンジオールの効率的な調製に関する報告が現時点では、現れていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、従来技術の欠陥を克服し、メソ-2,3-ブタンジオールを調製するための新たで効率的な方法を提供することである。当該方法により調製されたメソ-2,3-ブタンジオールは、純度が90%以上に達し、着色度がハーゼン単位色数10以下であり、異臭がないため、その優れた抗菌・防腐力を十分に利用することができ、皮膚等への刺激がなく、日常の化学製品及びポリマーグレードの製品の品質要求を十分に満たすことができる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上述した目的を達成するために、本発明による技術案は、下記ステップを備えるメソ-2,3-ブタンジオールの調製方法を提供する。
【0005】
ステップ(1)においては、再生可能なバイオマスを原料とし、クレブシエラを用いて発酵させて2,3-ブタンジオールを生産し、2,3-ブタンジオール発酵ブロスを得る。
【0006】
ステップ(2)においては、ステップ(1)で得られた2,3-ブタンジオール発酵ブロスに対し、滅菌とタンパク質除去のための限外濾過、タンパク質除去と部分的塩除去のためのナノ濾過、脱塩のための電気透析、一部の水の除去のための多効果蒸発を順に行うことにより、濃縮液を得る。
【0007】
ステップ(3)においては、第一の精留塔を用いてステップ(2)で得られた濃縮液を脱水して脱水液を得た後、脱水液を蒸留して蒸留液を得る。
【0008】
ステップ(4)においては、ステップ(3)で得られた蒸留液を第二の精留塔で精留し、塔の頂部から3-ヒドロキシ-2-ブタノンを分離し、純度が99.5%以上である2,3-ブタンジオールをサイドラインから抽出する。
【0009】
ステップ(5)においては、ステップ(4)でサイドラインから抽出された2,3-ブタンジオールを第三の精留塔で精留し、塔の頂部からL-(+)-2,3-ブタンジオールを抽出し、サイドラインからメソ-2,3-ブタンジオールを抽出し、サイドラインから抽出されたメソ-2,3-ブタンジオールを活性炭で吸着させることにより、純化されたメソ-2,3-ブタンジオールを得る。
【0010】
本発明の幾つかの好ましい側面によれば、ステップ(2)においては、限外濾過は、セラミック膜を用いて行い、セラミック膜の濾過孔径は、5nm~50nmである。より好ましくは、ステップ(2)において、限外濾過は、セラミック膜を用いて行い、セラミック膜の濾過孔径は、5~20nmである。
【0011】
本発明の幾つかの好ましい側面によれば、ステップ(2)においては、ナノ濾過で用いられるナノ濾過膜のカットオフ分子量は、300~1000である。より好ましくは、ステップ(2)においては、ナノ濾過で用いられるナノ濾過膜のカットオフ分子量は、500~1000である。
【0012】
本発明の幾つかの好ましい側面によれば、ステップ(2)においては、電気透析で用いられるイオン交換膜は、不均一膜又は半均一膜であり、電気透析脱塩後の脱塩溶液の電気伝導率は、2000μ/cmに低下する。より好ましくは、ステップ(2)においては、電気透析のプロセスパラメータは、用いられるイオン交換膜が不均一膜であり、電気透析脱塩後の脱塩溶液の電気伝導率が1500μ/cmに低下する。
【0013】
本発明の幾つかの好ましい側面によれば、ステップ(2)においては、多効用蒸発は、多効用蒸発器で行われ、前記多効用蒸発器は、3効用蒸発器、4効用蒸発器、5効用蒸発器、6効用蒸発器又は7効用蒸発器等であり、減圧蒸発である。より好ましくは、ステップ(2)においては、多効用蒸発は、多効用蒸発器で行われ、前記多効用蒸発器のプロセスパラメータは、3効用蒸発器又は4効用蒸発器であり、最終蒸発器の操作圧力は、-0.093~-0.099MPaである。
【0014】
本発明によれば、ステップ(2)においては、前記濃縮液の含水率は、40wt%以下である。
【0015】
本発明の幾つかの好ましい側面によれば、ステップ(3)においては、前記第一の精留塔のプロセスパラメータは、精留塔の理論段数が10~50であり、塔の頂部の操作圧力が80~90mmHgであり、塔の頂部の還流比率が0.5~1である。より好ましくは、ステップ(3)においては、前記第一の精留塔のプロセスパラメータは、精留塔の理論段数が30~45であり、塔の頂部の操作圧力が85~90mmHgであり、塔の頂部の還流比率が0.8~1である。
【0016】
本発明の幾つかの好ましい側面によれば、ステップ(3)においては、前記蒸留は、蒸留塔で行われ、前記蒸留塔のプロセスパラメータは、塔の頂部の操作圧力が3~20mmHgである。より好ましくは、ステップ(3)においては、前記蒸留は、蒸留塔で行われ、前記蒸留塔のプロセスパラメータは、塔の頂部の操作圧力が5~10mmHgである。
【0017】
本発明によれば、ステップ(3)においては、前記脱水液の含水率は、0.5wt%以下である。
【0018】
本発明の幾つかの好ましい側面によれば、ステップ(4)においては、前記第二の精留塔のプロセスパラメータは、精留塔の理論段数が10~100であり、塔の頂部の操作圧力が5~30mmHgであり、還流比率が0.5~10である。より好ましくは、ステッ
プ(4)においては、前記第二の精留塔のプロセスパラメータは、精留塔の理論段数が30~50であり、塔の頂部の操作圧力が10~20mmHgであり、還流比率が2~5である。
【0019】
本発明の幾つかの好ましい側面によれば、ステップ(5)においては、前記第三の精留塔のプロセスパラメータは、精留塔の理論段数が25~100であり、塔の頂部の操作圧力が5~30mmHgであり、還流比率が3~30である。より好ましくは、ステップ(5)においては、前記第三の精留塔のプロセスパラメータは、精留塔の理論段数が40~60であり、塔の頂部の操作圧力が5~20mmHgであり、還流比率が6~25である。
【0020】
本発明によれば、ステップ(5)においては、前記調製方法は、塔の頂部から抽出されたL-(+)-2,3-ブタンジオールを活性炭で吸着させることにより、純化されたL-(+)-2,3-ブタンジオールを得ることを更に備える。前記純化されたL-(+)-2,3-ブタンジオールは、純度が51%以上であり、着色度がハーゼン単位色数10以下であり、異臭がない。
【0021】
本発明によれば、ステップ(5)においては、前記純化されたメソ-2,3-ブタンジオールは、純度が90%以上であり、着色度がハーゼン単位色数10以下であり、異臭がない。
【発明の効果】
【0022】
上述した技術案の適用により、本発明は、従来技術に比べて以下のメリットを有する。
【0023】
本発明は、メソ-2,3-ブタンジオールの新たで効率的な調製方法を提供する。当該方法は、本発明の発明者の研究から発見された、2,3-ブタンジオールの製品の香り及び色合いに影響を与えた要因に基づいている。即ち、製品に含まれる微量の3-ヒドロキシ-2-ブタノンを、液体クロマトグラフィーのような従来の検出方法で検出しようとすると、含有量が非常に少ないため、3-ヒドロキシ-2-ブタノンの検出が困難である。よって、異臭と色合いは、常に2,3-ブタンジオールの品質に影響を与えている。また、2,3-ブタンジオールの3つの異性体の沸点は、非常に近く、分離が困難であるが、3-ヒドロキシ-2-ブタンジオールケトンの沸点は、2,3-ブタンジオールの3つの異性体の沸点よりも約30°C低くなっている。故に、本発明は、精留操作を採用しており、沸点が比較的低い3-ヒドロキシ-2-ブタノンを精留により塔の頂部から抽出し、3-ヒドロキシ-2-ブタノンが殆ど除去された2,3-ブタンジオールをサイドラインから抽出し、サイドラインから抽出された2,3-ブタンジオールを、第三の精留塔により主成分がメソ-2,3-ブタンジオールである製品をサイドラインから抽出し、更に、活性化炭素で吸着、脱色及び脱臭することにより、2,3-ブタンジオールの製品の香りや色合いに影響を与える要因を排除するだけでなく、高純度のメソ-2,3-ブタンジオールを効率よく調製することができる。よって、メソ-2,3-ブタンジオールによる抗菌、防腐、低皮膚刺激等の高いスタンダードが求められる日常の化学製品等の分野での応用のための基礎を築き、現在市場に出回っている他の防腐剤や抗菌剤に比べ、コストがより低い。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本発明の技術案をより分かりやすく説明するために、以下、実施形態の説明に使用する必要のある図面を簡単に紹介する。明らかに、図面は、本願の幾つかの実施形態しか示されておらず、当業者が創造性のある労働をせず、これらの図面から他の関連する図面を取得することができることが理解されたい。
図1図1は、本発明の実施形態におけるメソ-2,3-ブタンジオールの調製方法で用いられるプロセスフローチャート模式図である。 (符号の説明)1 発酵装置2 2,3-ブタンジオール発酵ブロス3 限外濾過装置4 限外濾過濾液5 ナノ濾過装置6 ナノ濾過濾液7 電気透析装置8 電気透析脱塩液9 多効用蒸発器10 濃縮液11 第一の精留塔12 脱水液13 蒸留塔14 蒸留液15 第二の精留塔16 3-ヒドロキシ-2-ブタノンを含む軽質成分17 2,3-ブタンジオール18 第三の精留塔19 第三の精留塔の頂部からの抽出物20 メソ-2,3-ブタンジオールが豊富な2,3-ブタンジオール21 第一の活性炭粒子吸着脱色システム22 メソ-2,3-ブタンジオール23 第二の活性炭粒子吸着脱色システム24 L-(+)-2,3-ブタンジオール
【発明を実施するための形態】
【0025】
現在、抗菌能力、防腐能力及び皮膚への低刺激性等におけるメソ-2,3-ブタンジオールの長所は、既に見出され、確認されているが、従来技術においては、当該メソ-2,3-ブタンジオールの効率的な調製が現時点では十分に研究されておらず、従来の方法では、メソ-2,3-ブタンジオールを2,3-ブタンジオールから直接に分離する。しかし、2,3-ブタンジオールは、L型(L-(+)-2,3-ブタンジオール)、D型(D-(-)-2,3-ブタンジオール)及びメソ型(Meso-2,3-ブタンジオール)の3つの立体異性体があり、表1は、3つの異性体の基本的な特性を示している。
【表1】
表1から分かるように、L型(L-(+)-2,3-ブタンジオール)、D型(D-(-)-2,3-ブタンジオール)及びメソ型(Meso-2,3-ブタンジオール)の三
者の沸点は、非常に近く、分離するのが非常に困難である。
【0026】
現在、2,3-ブタンジオールの生産方法は、化学方法(従来の化学工業)及び生物学的発酵方法(バイオリファイナリー)の2つの方法がある。化学方法の生産工程が複雑であり、プロセス条件が厳しく、操作が煩雑であり、設備に対する要求が高く、コストが高く、今迄工業規模の生産を実現することが困難である。生物学的発酵方法は、微生物を生産ツールとし、再生可能なバイオマスを原料とし、発酵タンクで2,3-ブタンジオールを生産する。一般的に用いられる細菌は、エンテロバクター属(Enterobacter)、クレブシエラ属(Klebsiella)、バチルス属(Bacillus)、ペニバシルス属(Paenibacillus)、セラティア属(Serratia)等である。異なる菌株は、2,3-ブタンジオールの発酵合成の様々な要素において違いがある。その中のでも、クレブシエラは、培養条件が比較的簡単であり、発酵の基質スペクトルが広く、発酵により生成される2,3-ブタンジオールが主にメソ型であり、65%~95%を占め、L型が少量で5%~35%を占めるため、産業用途の見通しが最も高いと認められている。しかし、最大の問題は、製品の分離と精製の難しさであり、発酵ブロスの中の2,3-ブタンジオールの純度を99.5%以上にすることが非常に難しく、2,3-ブタンジオールの混合物をより価値のあるモノマー(メソ型又はL型)に分離することが更に難しい。これにより、2,3-ブタンジオールの市場、特に、メソ-2,3-ブタンジオールの適用を制限してしまう。また、長い間、調製された2,3-ブタンジオールの製品は、常に異臭があり、活性炭を用いて吸着することにより異臭を完全に除去することができず、実際の応用に深刻な影響を及ぼし、実際の貯蔵プロセスにおいては、製品が黄色くなる問題も伴う。
【0027】
本発明の発明者らは研究を通じて、発酵方法により2,3-ブタンジオールを製造する過程においては、3-ヒドロキシ-2-ブタノンは、2,3-ブタンジオールの代謝前駆体であり、3-ヒドロキシ-2-ブタノンは、レダクターゼの触媒作用により2,3-ブタンジオールを生産し、発酵が終わった後、一定量の3-ヒドロキシ-2-ブタノンが発酵ブロスに残るが、発酵ブロスの中の3-ヒドロキシ-2-ブタノンの含有量がごく少量であり、クロマトグラフィーを用いて検出を試みてみ検出できないことを発見した。また、3-ヒドロキシ-2-ブタノン自体が食用香料であるため、2,3-ブタンジオールには少量の3-ヒドロキシ-2-ブタノンが含まれるだけでも、2,3-ブタンジオール製品の匂いに影響を与える。また、3-ヒドロキシ-2-ブタノンの酸化後に生成されるジアセチルは、黄色の物質であり、製品の貯蔵プロセスにおける黄色くなることは、製品に少量のジアセチルが存在することが起因すると思われる。
【0028】
上述した発見に基づき、本発明は、メソ-2,3-ブタンジオールの調製方法を提供する。当該調製方法は、下記ステップを備える。
【0029】
ステップ(1)においては、再生可能なバイオマスを原料とし、クレブシエラを用いて発酵させて2,3-ブタンジオールを生産し、2,3-ブタンジオール発酵ブロスを得る。
【0030】
ステップ(2)においては、ステップ(1)で得られた2,3-ブタンジオール発酵ブロスに対し、滅菌とタンパク質除去のための限外濾過、タンパク質除去と部分的塩除去のためのナノ濾過、脱塩のための電気透析、一部の水の除去のための多効果蒸発を順に行うことにより、濃縮液を得る。
【0031】
ステップ(3)においては、第一の精留塔を用いてステップ(2)で得られた濃縮液を脱水して脱水液を得た後、脱水液を蒸留して蒸留液を得る。
【0032】
ステップ(4)においては、ステップ(3)で得られた蒸留液を第二の精留塔で精留し、塔の頂部から3-ヒドロキシ-2-ブタノンを分離し、純度が99.5%以上である2,3-ブタンジオールをサイドラインから抽出する。
【0033】
ステップ(5)においては、ステップ(4)でサイドラインから抽出された2,3-ブタンジオールを第三の精留塔で精留し、塔の頂部からL-(+)-2,3-ブタンジオールを抽出し、サイドラインからメソ-2,3-ブタンジオールを抽出した後、サイドラインから抽出されたメソ-2,3-ブタンジオールを活性炭に吸着させて、純化されたメソ-2,3-ブタンジオールを得る。
【0034】
当該メソ-2,3-ブタンジオールの調製方法では、クレブシエラを用いて発酵させて2,3-ブタンジオールを生産し、可能な限り多くのメソ-2,3-ブタンジオールを含む2,3-ブタンジオール原料を得る。また、精留と活性化炭素吸着を組み合わせ、精留自体は、沸点が近い混合物の分離に用いられない。しかし、前記発明者の発見により、3-ヒドロキシ-2-ブタノンを分離する必要があるが、3-ヒドロキシ-2-ブタノンの沸点は、2,3-ブタンジオールの3つの立体異性体の沸点よりも約30℃低い。故に、本発明は、精留操作を用い、精留により塔の頂部から比較的低い沸点の3-ヒドロキシ-2-ブタノンを抽出し、3-ヒドロキシ-2-ブタノンが殆ど除去された2,3-ブタンジオールをサイドラインから抽出し、サイドラインから抽出された2,3-ブタンジオールは、第三の精留塔により主成分がL-(+)-2,3-ブタンジオールである製品及び主成分がメソ-2,3-ブタンジオールである製品をそれぞれ製造することができる。2つの製品は、それぞれ活性炭吸着により、微量の不純物、色素及び臭いが更に除去される。
【0035】
実践によれば、サイドラインから抽出された抽出物が粒子状活性炭に吸着されて得られた2,3-ブタンジオールは、純度が99.5%以上であり、メソ-2,3-ブタンジオールの割合が90%以上であり、着色度が10ハーゼ以下であり、異臭がない。即ち、本発明の方法は、純度が90%以上であるメソ-2,3-ブタンジオールの製品を完全に得ることができ、ポリマーグレード及び日常の化学製品の品質要求を完全に満たすことができるので、従来技術に比べ、メソ-2,3-ブタンジオールを効率的に調製することができ、抗菌能力、防腐能力及び皮膚への低刺激性等におけるメソ-2,3-ブタンジオールの長所を十分に利用することができ、非常に優れた現実的な意味を有する。
【0036】
また、塔の頂部から抽出された抽出物が活性炭に吸着されて得られた2,3-ブタンジオールは、純度が99.5%以上であり、L-(+)-2,3-ブタンジオールの割合が51%以上であり、着色度が10ハーゼ以下であり、異臭がなく、ポリマーグレードの製品の品質要求を完全に満たすことができる。
【0037】
また、ステップ(1)においては、再生可能なバイオマスは、当技術分野における通常の再生可能な生物学的原料であり、具体的には、グリセリン等である。
【0038】
また、ステップ(1)においては、再生可能なバイオマスを原料とし、クレブシエラを用いて発酵させて2,3-ブタンジオールを生産して製造する方法は、当技術分野の従来の方法である。本発明においては、好ましくは、その具体的な実施形態は、発酵タンクの接種後、発酵ブロスの温度を30~40℃に、pH値を6~7に、換気量を0.01~0.5vvmに、攪拌速度を20~100rpmに制御し、発酵プロセスにおいて発酵ブロスの中の基質のグリセリン濃度を測定し、グリセリンの消費速度に基づいてグリセリンを追加することにより、発酵ブロスの中のグリセリン濃度が0.5~30g/Lであることを確保し、30~60時間後にタンクから出す。
【0039】
また、ステップ(2)においては、限外濾過は、セラミック膜を用いて行い、セラミック膜の濾過孔径は、5~20nmである。
【0040】
また、ステップ(2)においては、ナノ濾過で用いられるナノ濾過膜のカットオフ分子量は、500~1000である。
【0041】
また、ステップ(2)において、電気透析のプロセスパラメータは、用いられるイオン交換膜が不均一膜であり、電気透析脱塩後の脱塩液の電気伝導率が1500μ/cmに低下する。
【0042】
また、ステップ(2)においては、多効用蒸発は、多効用蒸発器を用いて行い、前記多効用蒸発器のプロセスパラメータは、3効用蒸発器又は4効用蒸発器であり、最終蒸発器の操作圧力が-0.093~-0.099MPaである。
【0043】
本発明によれば、ステップ(2)においては、前記濃縮液の含水率は、40wt%以下に達することができる。
【0044】
また、ステップ(3)においては、前記第一の精留塔のプロセスパラメータは、精留塔の理論段数が30~45であり、塔の頂部の操作圧力が85~90mmHgであり、塔の頂部の還流比率が0.8~1である。
【0045】
また、ステップ(3)において、蒸留は、蒸留塔を用いて行い、前記蒸留塔のプロセスパラメータは、塔の頂部の操作圧力が5~10mmHgである。
【0046】
本発明によれば、ステップ(3)においては、前記脱水液の水分含有量が0.5%以下に達することができる。
【0047】
また、ステップ(4)においては、前記第二の精留塔のプロセスパラメータは、精留塔の理論段数が30~50であり、塔の頂部の操作圧力が10~20mmHgであり、還流比率が2~5である。
【0048】
また、ステップ(5)においては、前記第三の精留塔のプロセスパラメータは、精留塔の理論段数が40~60であり、塔の頂部の操作圧力が10~20mmHgであり、還流比率が6~25である。
【0049】
好ましくは、本発明のメソ-2,3-ブタンジオールの調製方法は、以下の調製プロセスを採用する。図1に示すように、発酵装置1により生成される2,3-ブタンジオール発酵ブロス2→限外濾過装置3で限外濾過して限外濾過濾液4を生成する→ナノ濾過装置5でナノ濾過してナノ濾過濾液6を生成する→電気透析装置7で脱塩して電気透析脱塩溶
液8を生成する→多効用蒸発器9で多効用蒸発を行って濃縮液10を生成する→第一の精留塔11で精留及び脱水して脱水液12を生成する→蒸留塔13で蒸留及び純化して重質成分を除去し、蒸留液14を生成→第二の精留塔15で精製し、2,3-ブタンジオール17をサイドラインから抽出する→第三の精留塔18で精留し、メソ-2,3-ブタンジオールが豊富な2,3-ブタンジオール20をサイドラインから抽出する→第一の活性化炭素粒子吸着脱色システム21により吸着して脱色し、更に純化されたメソ-2,3-ブタンジオール22を生成する。第三の精留塔18の頂部から抽出された抽出物19は、主成分がL-(+)-2,3-ブタンジオール24である→第二の活性化炭素粒子吸着脱色システム23により吸着して脱色し、純化されたL-(+)-2,3-ブタンジオール24を得る。なお、第二の精留塔15において精製し、塔の頂部から3-ヒドロキシ-2-ブタノンを含む軽質成分16を分離する。
【0050】
以下、具体的な実施形態を用いて前記技術案を更に説明する。これらの実施形態は、本発明の基本原理、主な特徴及びメリットを説明するためのものである。本発明は、以下の実施形態に制限されない。実施形態に用いられる実施条件は、具体的な要求に基づいて更にすることができる。記載されていない実施条件は、通常、慣用の実験の中の条件である。後述においては、特に明記しない限り、全ての原料は、商業的な供給源から入手されるか、当該分野の慣用の方法により調製されるものである。
【実施例
【0051】
(第一の実施形態)
この例は、メソ-2,3-ブタンジオールの調製方法を提供する。当該調製方法は、下記ステップを備える。
【0052】
ステップ(1)においては、再生可能なバイオマス(具体的には、グリセリンである)を原料とし、クレブシエラを用いて発酵させて2,3-ブタンジオールを生産し、2,3-ブタンジオール発酵ブロスを得る。
【0053】
具体的な実施形態は、発酵タンクの接種後、発酵ブロスの温度を37℃に、pH値を6.5に、換気量を0.08vvmに、攪拌速度を50rpmに制御する。発酵過程においては、発酵ブロスの中の基質のグリセリンの濃度を測定し、グリセリン消費率に基づいてグリセリンを添加し、発酵ブロスの中のグリセリンの濃度が0.5~30g/Lであることを確保し、48時間での発酵後にタンクから出す。
【0054】
ステップ(2)においては、ステップ(1)で得られた2,3-ブタンジオール発酵ブロスに対しては、順に次のことを行う。
【0055】
滅菌及びタンパク質除去のための限外濾過により、限外濾過濾液を取得し、前記限外濾過は、セラミック膜(セラミック膜の濾過孔径は、5nmである)を用いて行う。
【0056】
タンパク質と一部の塩を除去するためのナノ濾過により、ナノ濾過濾液を取得し、前記ナノ濾過に用いられるナノ濾過膜は、MWCO500-1000である。
【0057】
脱塩のための電気透析により、電気透析脱塩溶液を取得し、前記電気透析のプロセスパラメータは、用いられるイオン交換膜が不均一膜であり、電気透析脱塩後の脱塩液の電気伝導率が1500μ/cmに低下する。
【0058】
一部の水を除去するための多効用蒸発により、濃縮液を得る。前記多効用蒸発は、多効用蒸発器により行われる。前記多効用蒸発器のプロセスパラメータは、4効用蒸発器であり、最終効用蒸発器の操作圧力が-0.096MPaである。
【0059】
ステップ(3)においては、第一の精留塔を用いてステップ(2)で得られた濃縮液を脱水して脱水液を得た後、脱水液を蒸留して蒸留液を得る。
【0060】
なお、前記第一の精留塔のプロセスパラメータは、塔の頂部の操作圧力が90mmHgであり、塔の頂部の還流比率が1である。
【0061】
前記蒸留は、蒸留塔を用いて行い、前記蒸留塔のプロセスパラメータは、蒸留塔の頂部の操作圧力が10mmHgである。
【0062】
ステップ(4)においては、ステップ(3)で得られた蒸留液を第二の精留塔で精留し
、3-ヒドロキシ-2-ブタノンを含む軽質成分を塔の頂部から分離し、純度が99.5%以上である2,3-ブタンジオールをサイドラインから抽出する。
【0063】
なお、前記第二の精留塔のプロセスパラメータは、塔の頂部の操作圧力が19mmHgであり、還流比率が3である。
【0064】
ステップ(5)においては、ステップ(4)でサイドラインから抽出された2,3-ブタンジオールを第三の精留塔で精留し、塔の頂部からL-(+)-2,3-ブタンジオールを抽出し、サイドラインからメソ-2,3-ブタンジオールを抽出した後、サイドラインから抽出されたメソ-2,3-ブタンジオールを活性炭に吸着させて、純化されたメソ-2,3-ブタンジオールを得る。
【0065】
なお、前記第三の精留塔のプロセスパラメータは、塔の頂部の操作圧力が5mmHgであり,還流比率が10である。
【0066】
表2は、この例の実験データを示している。
【表2】
表2から分かるように、この例で調製された最終製品のメソ-2,3-ブタンジオールにおいては、2,3-ブタンジオールの純度が99.5%であり、メソ-2,3-ブタンジオールの割合が90%であり、着色度がハーゼン単位色数5であり、異臭がない。
【0067】
最終製品のL-(+)-2,3-ブタンジオールにおいては、2,3-ブタンジオールの純度が99.5%であり、L-(+)-2,3-ブタンジオールの割合が55%であり、着色度がハーゼン単位色数5であり、臭がない。
【0068】
(第二の実施形態)
この例は、メソ-2,3-ブタンジオールの調製方法を提供する。当該調製方法は、下記ステップを備える。
【0069】
ステップ(1)においては、再生可能なバイオマス(具体的には、グリセリンである)を原料とし、クレブシエラを用いて発酵させて2,3-ブタンジオールを生産し、2,3-ブタンジオール発酵ブロスを得る。
【0070】
具体的な実施形態は、発酵タンクの接種後、発酵ブロスの温度を37℃に、pH値を6.5に、換気量を0.08vvmに、攪拌速度を50rpmに制御する。発酵過程においては、発酵ブロスの中の基質のグリセリンの濃度を測定し、グリセリン消費率に基づいてグリセリンを添加し、発酵ブロスの中のグリセリンの濃度が0.5~30g/Lであることを確保し、48時間での発酵後にタンクから出す。
【0071】
ステップ(2)においては、ステップ(1)で得られた2,3-ブタンジオール発酵ブロスに対しては、順に次のことを行う。
【0072】
滅菌及びタンパク質除去のための限外濾過により、限外濾過濾液を取得し、前記限外濾過は、セラミック膜(セラミック膜の濾過孔径は、5nmである)を用いて行う。
【0073】
タンパク質と一部の塩を除去するためのナノ濾過により、ナノ濾過濾液を取得し、前記ナノ濾過に用いられるナノ濾過膜は、MWCO500-1000である。
【0074】
脱塩のための電気透析により、電気透析脱塩溶液を取得し、前記電気透析のプロセスパラメータは、用いられるイオン交換膜が不均一膜であり、電気透析脱塩後の脱塩液の電気伝導率が1500μ/cmに低下する。
【0075】
一部の水を除去するための多効用蒸発により、濃縮液を得る。前記多効用蒸発は、多効用蒸発器により行われる。前記多効用蒸発器のプロセスパラメータは、4効用蒸発器であり、最終効用蒸発器の操作圧力が-0.097MPaである。
【0076】
ステップ(3)においては、第一の精留塔を用いてステップ(2)で得られた濃縮液を脱水して脱水液を得た後、脱水液を蒸留して蒸留液を得る。
【0077】
なお、前記第一の精留塔のプロセスパラメータは、塔の頂部の操作圧力が90mmHgであり、塔の頂部の還流比率が1である。
【0078】
前記蒸留は、蒸留塔を用いて行い、前記蒸留塔のプロセスパラメータは、蒸留塔の頂部の操作圧力が10mmHgである。
【0079】
ステップ(4)においては、ステップ(3)で得られた蒸留液を第二の精留塔で精留し、3-ヒドロキシ-2-ブタノンを含む軽質成分を塔の頂部から分離し、純度が99.5%以上である2,3-ブタンジオールをサイドラインから抽出する。
【0080】
なお、前記第二の精留塔のプロセスパラメータは、塔の頂部の操作圧力が19mmHgであり、還流比率が3である。
【0081】
ステップ(5)においては、ステップ(4)でサイドラインから抽出された2,3-ブタンジオールを第三の精留塔で精留し、塔の頂部からL-(+)-2,3-ブタンジオールを抽出し、サイドラインからメソ-2,3-ブタンジオールを抽出した後、サイドラインから抽出されたメソ-2,3-ブタンジオールを活性炭に吸着させて、純化されたメソ-2,3-ブタンジオールを得る。
【0082】
なお、前記第三の精留塔のプロセスパラメータは、塔の頂部の操作圧力が5mmHgであり,還流比率が24である。
【0083】
表3は、この例の実験データを示している。
【表3】
表3から分かるように、この例で調製された最終製品のメソ-2,3-ブタンジオールにおいては、2,3-ブタンジオールの純度が99.7%であり、メソ-2,3-ブタンジオールの割合が95%であり、着色度がハーゼン単位色数5であり、異臭がない。
【0084】
最終製品のL-(+)-2,3-ブタンジオールにおいては、2,3-ブタンジオールの純度が99.7%であり、L-(+)-2,3-ブタンジオールの割合が50%であり、着色度がハーゼン単位色数5であり、臭がない。
【0085】
(第三の実施形態)
この例は、メソ-2,3-ブタンジオールの調製方法を提供する。当該調製方法は、下記ステップを備える。
【0086】
ステップ(1)においては、再生可能なバイオマス(具体的には、グリセリンである)を原料とし、クレブシエラを用いて発酵させて2,3-ブタンジオールを生産し、2,3-ブタンジオール発酵ブロスを得る。
【0087】
具体的な実施形態は、発酵タンクの接種後、発酵ブロスの温度を37℃に、pH値を6.5に、換気量を0.08vvmに、攪拌速度を50rpmに制御する。発酵過程においては、発酵ブロスの中の基質のグリセリンの濃度を測定し、グリセリン消費率に基づいてグリセリンを添加し、発酵ブロスの中のグリセリンの濃度が0.5~30g/Lであることを確保し、48時間での発酵後にタンクから出す。
【0088】
ステップ(2)においては、ステップ(1)で得られた2,3-ブタンジオール発酵ブロスに対しては、順に次のことを行う。
【0089】
滅菌及びタンパク質除去のための限外濾過により、限外濾過濾液を取得し、前記限外濾過は、セラミック膜(セラミック膜の濾過孔径は、5nmである)を用いて行う。
【0090】
タンパク質と一部の塩を除去するためのナノ濾過により、ナノ濾過濾液を取得し、前記ナノ濾過に用いられるナノ濾過膜は、MWCO500-1000である。
【0091】
脱塩のための電気透析により、電気透析脱塩溶液を取得し、前記電気透析のプロセスパラメータは、用いられるイオン交換膜が不均一膜であり、電気透析脱塩後の脱塩液の電気伝導率が1500μ/cmに低下する。
【0092】
一部の水を除去するための多効用蒸発により、濃縮液を得る。前記多効用蒸発は、多効用蒸発器により行われる。前記多効用蒸発器のプロセスパラメータは、4効用蒸発器であり、最終効用蒸発器の操作圧力が-0.097MPaである。
【0093】
ステップ(3)においては、第一の精留塔を用いてステップ(2)で得られた濃縮液を脱水して脱水液を得た後、脱水液を蒸留して蒸留液を得る。
【0094】
なお、前記第一の精留塔のプロセスパラメータは、塔の頂部の操作圧力が90mmHgであり、塔の頂部の還流比率が1である。
【0095】
前記蒸留は、蒸留塔を用いて行い、前記蒸留塔のプロセスパラメータは、蒸留塔の頂部の操作圧力が10mmHgである。
【0096】
ステップ(4)においては、ステップ(3)で得られた蒸留液を第二の精留塔で精留し、3-ヒドロキシ-2-ブタノンを含む軽質成分を塔の頂部から分離し、純度が99.5%以上である2,3-ブタンジオールをサイドラインから抽出する。
【0097】
なお、前記第二の精留塔のプロセスパラメータは、塔の頂部の操作圧力が19mmHgであり、還流比率が3である。
【0098】
ステップ(5)においては、ステップ(4)でサイドラインから抽出された2,3-ブタンジオールを第三の精留塔で精留し、塔の頂部からL-(+)-2,3-ブタンジオールを抽出し、サイドラインからメソ-2,3-ブタンジオールを抽出した後、サイドラインから抽出されたメソ-2,3-ブタンジオールを活性炭に吸着させて、純化されたメソ-2,3-ブタンジオールを得る。
【0099】
なお、前記第三の精留塔のプロセスパラメータは、塔の頂部の操作圧力が5mmHgであり,還流比率が20である。
【0100】
表4は、この例の実験データを示している。
【表4】
表4から分かるように、この例で調製された最終製品のメソ-2,3-ブタンジオールにおいては、2,3-ブタンジオールの純度が99.6%であり、メソ-2,3-ブタンジオールの割合が92%であり、着色度がハーゼン単位色数5であり、異臭がない。
【0101】
最終製品のL-(+)-2,3-ブタンジオールにおいては、2,3-ブタンジオールの純度が99.6%であり、L-(+)-2,3-ブタンジオールの割合が52%であり、着色度がハーゼン単位色数5であり、臭がない。
【0102】
上述した実施形態においては、表2~4の実験データは、それぞれ液体クロマトグラフィー又はガスクロマトグラフィーにより測定される。
【0103】
上述した実施形態は、本発明の技術的概念及び特徴を説明するものであり、その目的は、当該技術分野に精通している者が本発明の内容を理解し、本発明の内容に基づいて実施することができるようにすることであり、本発明の特許権利の範囲を制限しない。本発明の精神に基づいて行われた全ての等価の変更又は修飾は、何れも本発明の特許保護の範囲に属する。
図1