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特許7324491有害物質を含む塗装材の飛散防止装置、防止方法、およびその防止足場
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  • 特許-有害物質を含む塗装材の飛散防止装置、防止方法、およびその防止足場 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-02
(45)【発行日】2023-08-10
(54)【発明の名称】有害物質を含む塗装材の飛散防止装置、防止方法、およびその防止足場
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/02 20060101AFI20230803BHJP
   B05B 14/10 20180101ALI20230803BHJP
【FI】
E04G23/02 Z
B05B14/10
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019116399
(22)【出願日】2019-06-24
(65)【公開番号】P2021001503
(43)【公開日】2021-01-07
【審査請求日】2022-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】513155448
【氏名又は名称】日本トリート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166051
【弁理士】
【氏名又は名称】駒津 啓佑
(72)【発明者】
【氏名】臼井 淳一郎
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-004223(JP,A)
【文献】特開2005-126950(JP,A)
【文献】特開2009-256930(JP,A)
【文献】特開2004-169461(JP,A)
【文献】特開2013-194429(JP,A)
【文献】特開2008-038576(JP,A)
【文献】特開2016-172295(JP,A)
【文献】特開2016-003509(JP,A)
【文献】特開2007-092387(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 23/02
E04G 23/08
B05B 14/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建造物に塗装された有害物質を含む塗装材を剥離手段で研削して剥離する作業区域内で研削した前記塗装材の粉塵の飛散を防止する有害物質を含む塗装材の飛散防止装置において、
前記作業区域を囲うようにして、霧状の水滴が噴射される噴射領域が前記建造物における高さ方向、幅方向、および奥行き方向で重なる間隔、かつ前記霧状の水滴の噴射方向が前記建造物側斜下方に向けられて配置される複数の噴霧手段と、
前記噴霧手段が噴霧した霧状の水滴を含む前記作業区域内の空気を吸引して浄化する吸引手段と、
を備えることを特徴とする有害物質を含む塗装材の飛散防止装置。
【請求項2】
前記噴霧手段は、
前記作業区域の外部と内部とを区画するように設置された足場に配置されること、
を特徴とする請求項1記載の有害物質を含む塗装材の飛散防止装置。
【請求項3】
前記霧状の水滴を発生させる霧発生手段を備え、前記霧発生手段が発生させた霧状の水滴を圧送する圧送手段と、
記噴霧手段と前記圧送手段とを連結する連結手段と、
を備えることを特徴とする請求項記載の有害物質を含む塗装材の飛散防止装置。
【請求項4】
前記連結手段は、
前記設置された足場に任意の経路で配置可能な可撓性を備えた可撓性管材であること、 を特徴とする請求項記載の有害物質を含む塗装材の飛散防止装置。
【請求項5】
前記連結手段は、
設置される足場に固定され、足場の組み立てと共に所定の経路で連結される連結管材であること、
を特徴とする請求項記載の有害物質を含む塗装材の飛散防止装置。
【請求項6】
前記噴霧手段は、
前記霧状の水滴を噴射する方向を任意の角度で調節可能な角度調節手段、
を備えることを特徴とする請求項記載の有害物質を含む塗装材の飛散防止装置。
【請求項7】
前記圧送手段が備えることに替えて、前記噴霧手段が前記霧発生手段を備え
前記圧送手段は、前記霧発生手段が前記霧状の水滴を発生させるための水分を圧送すること、
を特徴とする請求項記載の有害物質を含む塗装材の飛散防止装置。
【請求項8】
前記霧発生手段は、
水分を加熱して蒸気を発生させるスチーム式霧発生装置であること、
を特徴とする請求項記載の有害物質を含む塗装材の飛散防止装置。
【請求項9】
前記霧発生手段は、
超音波を水分に照射することで水分を霧化させる超音波式霧発生装置であること、
を特徴とする請求項記載の有害物質を含む塗装材の飛散防止装置。
【請求項10】
前記足場は、
前記作業区域内を気密状態にして覆う気密性被覆部、
を備えることを特徴とする請求項2記載の有害物質を含む塗装材の飛散防止装置。
【請求項11】
前記剥離手段は、
供給された電力により駆動する電力駆動部を備え、
前記噴霧手段が噴霧する霧状の水滴の粒径は、
前記電力駆動部に影響が出ない程度の粒径であること、
を特徴とする請求項1記載の有害物質を含む塗装材の飛散防止装置。
【請求項12】
前記噴霧手段が噴霧する霧状の水滴の粒径は、
前記吸引手段に吸引されるまで蒸発しない程度の粒径であること、
を特徴とする請求項1記載の有害物質を含む塗装材の飛散防止装置。
【請求項13】
建造物に塗装された有害物質を含む塗装材を剥離手段で研削して剥離する作業区域内で研削した前記塗装材の粉塵の飛散を防止する有害物質を含む塗装材の飛散防止方法において、
前記作業区域を囲うようにして、霧状の水滴が噴射される噴射領域が前記建造物における高さ方向、幅方向、および奥行き方向で重なる間隔、かつ前記霧状の水滴の噴射方向が前記建造物側斜下方に向けられて複数の噴霧手段が配置される工程と、
記噴霧手段が噴霧した霧状の水滴を含む前記作業区域内の空気を吸引手段が吸引して浄化する工程と、
を備えることを特徴とする有害物質を含む塗装材の飛散防止方法。
【請求項14】
建造物に塗装された有害物質を含む塗装材を剥離手段で研削して剥離する作業区域内で研削した前記塗装材の粉塵の飛散を防止する有害物質を含む塗装材の飛散防止足場において、
前記作業区域を囲うようにして、霧状の水滴が噴射される噴射領域が前記建造物における高さ方向、幅方向、および奥行き方向で重なる間隔、かつ前記霧状の水滴の噴射方向が前記建造物側斜下方に向けられて配置される複数の噴霧手段と、
前記噴霧手段が噴霧した霧状の水滴を含む前記作業区域内の空気を吸引して浄化する吸引手段と、
を備えることを特徴とする有害物質を含む塗装材の飛散防止足場。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有害物質を含む塗装材の飛散防止装置、有害物質を含む塗装材の飛散防止方法、および有害物質を含む塗装材の飛散防止足場に関し、特に建造物に塗装された有害物質を含む塗装材を剥離手段で研削して剥離する作業区域内で研削した前記塗装材の粉塵の飛散を防止する有害物質を含む塗装材の飛散防止装置、有害物質を含む塗装材の飛散防止方法、および有害物質を含む塗装材の飛散防止足場に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から建造物の資材にはアスベストが使われてきた。一般にアスベストと呼ばれる石綿は、天然にできた極めて細い鉱物繊維であり、耐久性、耐熱性、耐薬品性、電気絶縁性などの特性を備えており、1960年頃から1990年頃にかけて建設資材、摩擦材、シール材、断熱材など様々な用途に大量に使用されていた。
【0003】
しかし、極めて細い鉱物繊維のアスベストが粉塵となって気道から吸入されると、胸膜や気管支に障害を起こし、やがて肺ガンや中皮腫などのガンを発生させてしまう発ガン性が問題となっており、現在では、アスベストの製造や使用が完全に禁止されている。
【0004】
ところが、現在では製造や使用が完全に禁止されているものの、長年にわたって建設資材など大量に使用されてきたアスベストは、一般的な住宅から学校などの公共施設まで、多様な建造物に幅広く使用されており、現存する多くの建物にも、アスベストを含有する建設資材が残っていると考えられている。
【0005】
このように建設資材に多く使用されてきたアスベストは、露出したアスベストが粉塵となって飛散するだけでなく、地震などの災害時には建設資材に使用されたアスベストが大量に飛散する恐れも考えられるため、アスベストを含有した建設資材を除去する対策が必要とされている。
【0006】
またアスベストは、建設資材、摩擦材、シール材、断熱材だけでなく、仕上塗装材や下地調整塗装材にも用いられているが、これらの塗装材ではアスベストの添加量が少なく、セメントや合成樹脂などで固着させて使用するため、アスベストが飛散することは少ないと考えられていた。
【0007】
ところが、建造物を解体する場合、このアスベストを含む塗装材による塗膜を破断することなく除去することは非常に難しい。このようなアスベストを含有した塗装材により塗装された建造物の解体や、塗装の塗り替えを行う際に、処理を間違えるとアスベストが飛散してしまう危険性がある。またアスベストを含有した外壁だと知らずに壁を破断してしまうと、アスベストが飛散してしまう危険性がある。
【0008】
そこで、建造物の解体や、建造物の内装材などの除去を行う際に、アスベストの粉塵などの有害物が作業区域外に飛散してしまうことを防止するために、その作業区域をプラスチックなどの養生シートで囲い、内部を負圧状態に維持した負圧作業区域で除去作業をすることで、有害物の飛散を防止している。
【0009】
このような養生シートで囲まれた負圧作業区域では、内部の温度が上昇し、熱中症や脱水症状を引き起こす恐れがあるため、負圧作業区域内に冷却装置や集塵装置などを設置して作業環境を整えている。
【0010】
ところが、上記のように、負圧作業区域内に冷却装置や集塵装置などを設置することで、養生シートで区域された負圧作業区域内に有害物を留めることができ、ある程度の作業環境は改善されるが、作業者中の周囲には有害物が飛散しており、負圧作業区域の内部では作業環境が悪い問題がある。そこで、負圧施工区内での作業環境をさらに良好にする吸引式ショットブラストや吸引式グラインダーが開発されている(たとえば、特許文献1または特許文献2参照)。
【0011】
図3は、特許文献1で開示されたノズルヘッドの構成を示す断面図である。
図3に示すように、特許文献1で開示された吸引式ショットブラスト10は、建造物20が有する壁面21に塗装された有害物を含有する塗装材22を研削するための研削粒体11を、壁面21に衝突させることで塗装材22を研削し、研削により壁面21から剥離した粉塵を吸引するためのものであり、ノズルヘッド12、粒体回収分離タンク13、および加圧タンク14を備えている。
【0012】
ノズルヘッド12は、研削粒体11を壁面21に向かって噴射するための筒状の噴射ノズル12aと、研削粒体11を壁面21に衝突させることで研削した塗装材22を回収するための連結孔12bとを備えた金属製のカバー部12cで構成される。
筒状の噴射ノズル12aの一方の先端側は、カバー部12cの中心部に噴射ノズル12aの径と同じ径で形成された貫通孔に差し込まれて固定されている。
【0013】
また、カバー部12cの開口部12dの周端部には、ブラシ12eが所定の長さで壁面21または塗装材22と接するように設けられており、このブラシ12eが開口部12dの周端で壁面21または塗装材22と接することで、剥離した塗装材22の粉塵の飛散を防止することができる。
【0014】
また噴射ノズル12aは、カバー部12cの中心部から開口部12dの中心に向かって固定されており、ブラシ12eで囲まれた領域の中心に研削粒体11を噴射するようになっている。
【0015】
カバー部12cの一部には、内部の空間と連通し、ここでは図示しない吸引装置に接続された吸引ホース15を介して粒体回収分離タンク13と連結するための連結孔12bが設けられている。また連結孔12bには、吸引ホース15の先端が連結される。
【0016】
粒体回収分離タンク13は、研削された塗装材22の粉塵と研削粒体11とを回収し、回収した塗装材22の粉塵と研削粒体11と分離するためのものである。
回収された研削粒体11は塗装材22の粉塵と比較して重量があるため、粒体回収分離タンク13の下部に設けられた加圧タンク14に落下して回収される。
【0017】
塗装材22の粉塵は、粒体回収分離タンク13に連接された吸引ホース30によって吸引され、ここでは図示しない集塵装置や空気清浄装置を通して清浄化された空気が吸引装置によって吸引されて外気に排出される。
【0018】
加圧タンク14に回収された研削粒体11は、エアー圧力が加えられた後に、ブラストホース16を介して、ノズルヘッド12に圧送される。ノズルヘッド12に再び圧送された研削粒体11は、噴射ノズル12aから壁面21に向かって噴射される。このように、研削粒体11は、ノズルヘッド12、粒体回収分離タンク13、および加圧タンク14内を循環する。
【0019】
吸引式ショットブラスト10では、作業者がノズルヘッド12を把持し、ノズルヘッド12の開口部12dを壁面21に塗装された塗装材22に押し当てる。
ノズルヘッド12を壁面21に押し当てた状態で、加圧タンク14を駆動させると、研削粒体11は、ノズルヘッド12、粒体回収分離タンク13、および加圧タンク14内を循環して壁面21に塗装された塗装材22を研削する。
【0020】
このとき、連結孔12bに接続された吸引ホース15から、吸引装置の吸引動作により、カバー部12cおよびブラシ12eで密閉されたカバー部12c内部の空気が吸引され、これと同時に研削により剥離された塗装材22の粉塵と研削粒体11とが吸引ホース15の先端方向から後端方向に向かって吸引される。
【0021】
吸引ホース15を介して吸引された塗装材22の粉塵と研削粒体11とは、粒体回収分離タンク13で分離されて、塗装材22の粉塵は吸引ホース30の先端方向から後端方向に向かって吸引される。
【0022】
これにより、吸引式ショットブラスト10によって剥離された塗装材22の粉塵は、吸引装置によって吸引され、集塵装置や空気清浄装置を通して清浄化された空気が外気に排出されるので、負圧施工区内での作業環境が良好になる。
【0023】
図4は、特許文献2で開示された吸引式グラインダーの構成を示す断面図である。
図4に示すように、特許文献2で開示された吸引式グラインダー40は、ここでは図示しない回転駆動させるモーター部を備えた本体部41、本体部41より突出して本体部41が備えるモーター部の回転駆動により回転するモーター軸42、モーター軸42の先端に連結された円盤状の研削砥石43、および本体部41からモーター軸42と研削砥石43とを覆うように設けられた金属製のカバー部44を備えている。
【0024】
本体部41の一方の先端側は、カバー部44の中心部に本体部41の径と同じ径で形成された貫通孔に差し込まれて固定されている。また、本体部41の先端側から突出するように設けられたモーター軸42の先端に連結された研削砥石43の研削面43aは、カバー部44の開口部44aから露出するように設けられている。
【0025】
研削砥石43は、たとえば円盤状の砥石であって、研削面43aに凹凸を多数備え、酸化アルミニウムやケイ素などの硬質材で円盤状に形成されたものである。また、研削砥石43は、本体部41に組み込まれたモーター部による回転駆動で回転し、壁面21に塗装された塗装材22を剥離することができる。
【0026】
また、カバー部44の開口部44aの周端部には、ブラシ45が所定の長さで壁面21または塗装材22と接するように設けられており、このブラシ45が開口部44aの周端で壁面21または塗装材22と接することで、剥離した塗装材22の粉塵の飛散を防止することができる。
【0027】
カバー部44の一部には、内部の空間と連通し、ここでは図示しない吸引装置に接続された吸引ホース30と連結するための連結孔44bが設けられている。また連結孔44bには、吸引ホース30の先端が連結される。
【0028】
吸引式グラインダー40では、作業者が本体部41を把持した状態で、本体部41に組み込まれたモーター部を駆動させる。次に、作業者は吸引式グラインダー40を壁面21に塗装された塗装材22に開口部44aを向けて接近させる。
【0029】
次に、作業者はブラシ45の先端を壁面21に塗装された塗装材22に押し当てながら、回転する研削砥石43の研削面43aで壁面21に塗装された塗装材22を研削する。
このとき、連結孔44bに接続された吸引ホース30から、吸引装置の吸引動作により、カバー部44およびブラシ45で密閉されたカバー部44内部の空気が吸引され、これと同時に研削により剥離された塗装材22の粉塵が吸引ホース30の先端方向から後端方向に向かって吸引され、ここでは図示しない集塵装置や空気清浄装置を通して清浄化された空気が吸引装置によって吸引されて外気に排出される。
【0030】
これにより、吸引式グラインダー40によって剥離された塗装材22の粉塵は、吸引装置によって吸引され、集塵装置や空気清浄装置を通して清浄化された空気が外気に排出されるので、負圧施工区内での作業環境が良好になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0031】
【文献】特開特開2015-4223号公報
【文献】特開特開2016-3509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0032】
しかし、特許文献1や特許文献2で開示された吸引式ショットブラスト10や吸引式グラインダー40でも、吸引しきれないアスベストなどの有害物の粉塵が飛散してしまう問題があった。
【0033】
具体的に、特許文献1や特許文献2で開示された技術では、吸引式ショットブラスト10や吸引式グラインダー40などの研削手段の吸引面である開口部12dや44aを塗装材22が塗装された壁面21に押し当てながら、塗装材22の研削作業を行う。
【0034】
ところが、これらは作業員が手で作業する為、塗装材22が塗装された壁面21と、これらの研削手段の吸引面との間に隙間が生じてしまった場合には、その隙間から塗装材22の粉塵が漏洩してしまうことが考えられる。
【0035】
これは、吸引式ショットブラスト10や吸引式グラインダー40を塗装材22が塗装された壁面21にしっかりと押し当てることで解決できるかもしれないが、塗装材22が塗装された壁面21が必ずしも平面であるとはいいきれない。
【0036】
たとえば、壁面21に凹凸面がある場合には、凹凸面と研削手段の吸引面である開口部12dや44aが正確に合致しない場合には隙間が生じてしまい、その隙間から塗装材22の粉塵が漏洩してしまうおそれがある。
【0037】
また研削して壁面21から剥離した塗装材22を、吸引式ショットブラスト10や吸引式グラインダー40などの研削手段が完全に吸引していない状態で、これらの研削手段を壁面21から離してしまうと、吸引面である開口部12dが露出し、吸引式ショットブラスト10から噴射される研削粒体11や、吸引式グラインダー40で回転する研削砥石43により塗装材22の粉塵が飛散してしまう。
【0038】
カバー部12cやカバー部44は、吸引面である開口部12dや44aを覆うように構成されており、カバー部12cやカバー部44の内部で、塗装材22の粉塵が完全に吸引されたか否かを作業者が判断するのは不可能であり、研削手段を壁面21から離したときに、カバー部12cやカバー部44の内部に吸引し切れていない塗装材22の粉塵が残っていた場合には、塗装材22の粉塵が勢いよく飛散してしまうため、非常に大きな問題となる。
【0039】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、研削作業中に生じる有害物の飛散を防止する有害物飛散防止装置、有害物飛散防止方法、および有害物飛散防止足場を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0040】
本発明では上記問題を解決するために、建造物に塗装された有害物質を含む塗装材を剥離手段で研削して剥離する作業区域内で研削した前記塗装材の粉塵の飛散を防止する有害物質を含む塗装材の飛散防止装置において、前記作業区域の内側に向かって前記建造物の上方から霧状の水滴を噴霧する噴霧手段と、前記噴霧手段が噴霧した霧状の水滴を含む前記作業区域内の空気を吸引して浄化する吸引手段とを備えることを特徴とする有害物質を含む塗装材の飛散防止装置が提供される。
【0041】
これにより、噴霧手段が、作業区域の内側に向かって建造物の上方から霧状の水滴を噴霧し、吸引手段が、噴霧手段が噴霧した霧状の水滴を含む作業区域内の空気を吸引して浄化する。
【0042】
また、本発明では、建造物に塗装された有害物質を含む塗装材を剥離手段で研削して剥離する作業区域内で研削した前記塗装材の粉塵の飛散を防止する有害物質を含む塗装材の飛散防止方法において、噴霧手段が、前記作業区域の内側に向かって前記建造物の上方から霧状の水滴を噴霧する工程と、吸引手段が、前記噴霧手段が噴霧した霧状の水滴を含む前記作業区域内の空気を吸引して浄化する工程とを備えることを特徴とする有害物質を含む塗装材の飛散防止方法が提供される。
【0043】
これにより、噴霧手段が、作業区域の内側に向かって建造物の上方から霧状の水滴を噴霧し、吸引手段が、噴霧手段が噴霧した霧状の水滴を含む作業区域内の空気を吸引して浄化する。
【0044】
また、本発明では、建造物に塗装された有害物質を含む塗装材を剥離手段で研削して剥離する作業区域内で研削した前記塗装材の粉塵の飛散を防止する有害物質を含む塗装材の飛散防止足場において、前記作業区域の内側に向かって前記建造物の上方から所定の間隔で霧状の水滴を噴霧する噴霧手段と、前記噴霧手段が噴霧した霧状の水滴を含む前記作業区域内の空気を吸引して浄化する吸引手段とを備えることを特徴とする有害物質を含む塗装材の飛散防止足場が提供される。
【0045】
これにより、噴霧手段が、作業区域の内側に向かって建造物の上方から霧状の水滴を噴霧し、吸引手段が、噴霧手段が噴霧した霧状の水滴を含む作業区域内の空気を吸引して浄化する。
【発明の効果】
【0046】
本発明の有害物質を含む塗装材の飛散防止装置、有害物質を含む塗装材の飛散防止方法、および有害物質を含む塗装材の飛散防止足場によれば、噴霧手段が、作業区域の内側に向かって建造物の上方から霧状の水滴を噴霧し、吸引手段が、噴霧手段が噴霧した霧状の水滴を含む作業区域内の空気を吸引して浄化するので、噴霧手段が噴霧した霧状の水滴が
研削作業中に生じた有害物の粉塵を吸着して落下し、その有害物の粉塵を吸着した有害物の粉塵を含む作業区域内の空気を吸引手段が吸引するため、研削作業中に生じる有害物の飛散を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】本実施の形態に係る有害物飛散防止装置を示す断面図である。
図2】足場に設置される噴霧器を示す断面図である。
図3】特許文献1で開示されたノズルヘッドの構成を示す断面図である。
図4】特許文献2で開示された吸引式グラインダーの構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施の形態に係る有害物飛散防止装置を示す断面図である。
本実施の形態の有害物飛散防止装置100は、建造物200が備える壁面21に塗装されたアスベストのような有害物を含む塗装材22を作業者400が研削して除去を行う除去作業により、壁面21から剥離した際に生じる塗装材22の粉塵が周囲に飛散してしまうことを防止するためのものである。
【0049】
図1に示すように、建造物200の周面には、一般に建設工事において、高所で作業を行う人間の足がかりのために、仮に組立てた構造物である足場300が組み立てられている。この足場300に作業者400がのることで、建造物200の任意の高さの壁面21に塗装された有害物を含む塗装材22を研削して除去を行う除去作業を行うことができる。なお、建造物200の周面に組み立てられた足場300よりも内側を作業区域として以下を説明する。
【0050】
有害物飛散防止装置100は、圧送機本体110、足場300の所望の位置に配置されて霧状の水滴を噴射するための噴霧器120、圧送機本体110から噴霧器120までをつなぐ配送管130、塗装材22の粉塵を集塵して無害な空気を排出するための吸引装置140、および防水シート150を備えている。
【0051】
圧送機本体110は、たとえば建造物200に隣接した地面などの安定した場所に配置され、配送管130を介して噴霧器120に接続されており、ここでは図示しない電源装置により供給された電力により配送管130を通じて対象物を噴霧器120まで届けるためのポンプ装置である。
【0052】
ここでいう対象物とは、噴霧器120が噴霧するために必要な水分や気体である。また、圧送機本体110は、霧を発生させる霧発生手段を備えることができ、この場合、圧送機本体110は、配送管130を通じて霧発生手段が発生させた霧状の水滴および気体である対象物を噴霧器120まで圧送する。
【0053】
配送管130は、圧送機本体110と足場300の所望の位置に配置された噴霧器120とを接続して、圧送機本体110から圧送された対象物を噴霧器120まで届けるためのものである。
【0054】
たとえば配送管130は、あらかじめ足場300と共に固定された金属などの剛性を備えた剛性配送パイプであって、足場300を組み立てると共に配送管130も連結され、配送管130の先端で、かつ足場300の所望の位置に配置された噴霧器120まで連結される。
【0055】
この剛性配送パイプは、足場300を組み立てた際に、配送管130が連結されるように、あらかじめ所望の形状で足場300を形成しておくことで、作業性がよくなり、容易に有害物飛散防止装置100を設置することができる。
【0056】
また配送管130は、ゴムやビニールなどの可撓性を備えた可撓性配送パイプであってもよく、この場合組み立てられた足場300に任意の経路で、配送管130を配管することができるようになり、既存の足場300に有害物飛散防止装置100を容易に組み入れることができる。
【0057】
噴霧器120は、圧送機本体110から配送管130を通じて圧送された対象物により、霧状の水滴を噴射するためのものであり、足場300の所望の位置に配置されて、建造物200が備える壁面21や作業者400に向けて霧状の水滴を噴射する。
【0058】
なお、噴霧器120は、足場300の所望の位置に複数配置することもでき、この場合、配送管130は、任意の位置で圧送機本体110から配送管130までを複数に分岐させることができる。
【0059】
噴霧器120が噴射した霧状の水滴は、建造物200が備える壁面21や作業者400に向けてされ、作業者400の手元で行われる除去作業により壁面21から剥離された塗装材22の粉塵を吸着する。
【0060】
やがて噴霧器120が噴射した霧状の水滴や、塗装材22の粉塵を吸着した霧状の水滴は、その重量により建造物200が備える壁面21にそって鉛直下方向に落下していく。
これにより、万が一、作業者400の除去作業により塗装材22の粉塵が飛散してしまったとしても、噴霧器120が噴射した霧状の水滴が塗装材22の粉塵を吸着して落下させるため、塗装材22の粉塵の飛散拡大を防止することができる。
【0061】
また、建造物200が備える壁面21にそって噴霧器120が噴射した霧状の水滴が鉛直下方向に落下していくことで、建造物200が備える壁面21付近の空気の流れが鉛直下方向にはたらく。これにより、塗装材22の粉塵も鉛直下方向への空気の流れに沿って移動する。これにより、塗装材22の粉塵の飛散拡大を防止することができる。
【0062】
吸引装置140は、ここでは図示しない電源装置により供給された電力により塗装材22の粉塵を集塵して無害な空気を排出するためのバキューム装置であって、たとえば建造物200に隣接した地面などの安定した場所に配置され、上部から落下してきた塗装材22の粉塵や、塗装材22の粉塵を吸着した霧状の水滴を吸引する。
【0063】
たとえば吸引装置140は、装置本体の内部に、吸引装置140に外気を取り込むための吸引口、吸引装置140に取り込まれた空気を清浄化するフィルター、ルーツブロワー、電動モーター、および正常化された空気を吐出するサイレンサー機能を備えた排気口を備えており、これらの内部機器は排気管によって接続されて構成されている。また、吸引口と排気口とは後述する防水シート150で仕切られている。
【0064】
具体的な例として、吸引装置140では、電動モーターが駆動することで、ルーツブロワーが回転し、吸引口および排気管を通じて装置本体内部に吸引された気体が排気口を通じて外気に排出されることで、吸引口に吸引力を発生させている。
【0065】
この吸引力により、建造物200の壁面21に隣接した底部付近で、上部から落下してきた塗装材22の粉塵や、塗装材22の粉塵を吸着した霧状の水滴を吸引することができる。
【0066】
なお、吸引装置140の吸引能力は、装置本体内部で回転させるルーツブロワーの数量や大きさによって変化し、ルーツブロワーによる吸引は装置本体内の真空圧を高くすることができるため、塗装材22の粉塵や、塗装材22の粉塵を吸着した霧状の水滴を効率よくおこなうことができる。
【0067】
また、吸引力が高いため、吸引装置140の吸引口を吸引ホースなどで連結、分岐させて、足場300の所望の位置で塗装材22の粉塵や、塗装材22の粉塵を吸着した霧状の水滴を吸引するようにしてもよい。
【0068】
また、吸引装置140よりも吸引側の前方に、あらかじめ塗装材22の粉塵や、塗装材22の粉塵を吸着した霧状の水滴を集塵するための集塵装置を設置することもできる。
また、吸引装置140と集塵装置との間に集塵装置が集塵したあとの空気を、さらに浄化するための空気清浄装置を設けるようにしてもよい。
【0069】
集塵装置は、たとえばバグフィルターと呼ばれる微細な粉塵や煤塵、微細な有害物質などを除去する集塵フィルターを着脱自在に内蔵したレシーバータンクであって、集塵フィルターと、集塵フィルターを内部に格納する集塵タンク本体と、集塵タンク本体の内側に設置されて集められた粉塵をためる集塵袋とを備えている。
【0070】
集塵装置は後方に吸引装置140または空気清浄装置に吸引ホースなどで接続され、吸引装置140の吸引力よって、建造物200の壁面21に隣接した底部付近の空気を吸引することで、塗装材22の粉塵や、塗装材22の粉塵を吸着した霧状の水滴を吸引し、集塵フィルターによって集塵される。
【0071】
空気清浄装置は、たとえばHEPA(High Efficiency Particulate Air Filter)フィルターと呼ばれる空気中からゴミ、塵埃などを取り除くことで清浄空気にするHEPAフィルターを着脱自在に内蔵した装置であって、HEPAフィルターと、HEPAフィルターを内部に格納する装置本体とを備えている。
【0072】
集塵装置は前方に集塵装置、後方に吸引装置140が吸引ホースなどで接続され、吸引装置140の吸引力によって、建造物200の壁面21に隣接した底部付近の空気が集塵装置に吸引され、集塵装置が集塵したあとの空気を、さらに清浄化する。
【0073】
このように、吸引装置140よりも吸引側の前方に、集塵装置や空気清浄装置を配置することで、吸引装置140が外気に排出する空気を、よりキレイな空気にすることができる。また吸引動作のある吸引装置140への負担を軽減することができる。
【0074】
防水シート150は、噴霧器120が噴射した霧状の水滴が作業区域から外部に漏出することを防止するため、または外部から水分が作業区域内に浸入することを防止するためのものである。
【0075】
主に、噴霧器120が噴射した霧状の水滴が作業区域から外部に漏出することを防止するためのものとして、足場300が設置された地面に、防水シート151が壁面21から足場300の外側まで敷設される。
また防水シート151は、吸引口と排気口とを跨いで、作業区域と外気とを仕切るように、吸引装置140の中央部付近で、鉛直方向に設けられている。
【0076】
これらの防水シート151により、鉛直下方向に落下した噴霧器120が噴射した霧状の水滴や、塗装材22の粉塵を吸着した霧状の水滴が、作業区域から外部に漏出することを防止することができる。
【0077】
また、外部から水分が作業区域内に浸入することを防止するための防水シート150として、足場300の最上部に防水シート152が設けられ、防水シート152は、建造物200と足場300の外側面との間を覆うように設けられる。
【0078】
この防水シート152を配置することで、雨天時に降雨した雨が作業区域内に浸入することを防止することができる。これにより、雨天時にでも除去作業を効率よく行うことができる。
【0079】
また、防水シート152を配置することで、噴霧器120が噴射した霧状の水滴や塗装材22の粉塵を吸着した霧状の水滴が、作業区域から外部に漏出することを防止することができる。
【0080】
通常、建造物200が備える壁面21に塗装されたアスベストのような有害物を含む塗装材22を作業者400が研削して除去を行う除去作業は、建造物200の上部から行い、除去作業が終了するにつれて建造物200の下部に向かって処理を進めていく。
【0081】
このとき防水シート152を、作業を行う最上部の正面に設置することで、外部から侵入する雨や、噴霧器120が噴射した霧状の水滴や塗装材22の粉塵を吸着した霧状の水滴が、作業区域から外部に漏出することを防止することができる。
【0082】
次に、本実施の形態の有害物飛散防止装置100を用いて行う有害物を含有する塗装材210の除去作業の手順を説明する。
まず、ここでは図示しない機械操作担当の作業者410が、圧送機本体110および吸引装置140を駆動させる。これにより、作業区域内では噴霧器120を介して霧状の水滴が噴霧され、落下した霧状の水滴や空気を吸引装置140が吸引して作業区域外に排気する。
【0083】
この状態で、塗装材22の剥離作業を行う作業者400が、前述した剥離装置などを使用して研削し、塗装材22を剥離する。
この作業により発生した塗装材22の粉塵は、除去装置などによって吸引されるか、作業者400の周囲に飛散する。
【0084】
作業者400の周囲に飛散した塗装材22の粉塵は、噴霧器120が噴射した霧状の水滴により、吸着または鉛直下方向に落下していく。
鉛直下方向に落下した塗装材22の粉塵や、噴霧器120が噴射した霧状の水滴が吸着した塗装材22の粉塵は、やがて吸引装置140の吸引力により、吸引装置140に吸引されて、浄化された空気が作業区域外に排気される。これにより、研削作業中に生じる有害物の飛散を防止することができる。
【0085】
なお本実施の形態では、作業区域の内部と外部とを気密性部材で覆わない例で説明したが、たとえばビニールシートなどの気密性部材を足場300の作業区域内と作業区域外とを区別するように覆って設けることで、作業区域を気密状態で区画することができる。これにより、作業区域内で発生した塗装材22の粉塵や、噴霧器120が噴射した霧状の水滴、塗装材22の粉塵を吸着した塗装材22の粉塵を外部に漏出することを、さらに防止することができる。
【0086】
さらに、噴霧器120が噴射した霧状の水滴により、塗装材22の粉塵が吸着または鉛直下方向に落下していくため、気密状態で区画された作業区域内で塗装材22の粉塵が飛散することがなく、作業者400は安全な環境で作業することができる。
【0087】
さらに、作業区域を気密状態で区画した場合、吸引装置140の吸引および排気動作により、作業区域内が負圧状態になる。これにより、作業区域内の塗装材22の粉塵を含んだ空気や噴霧器120が噴射した霧状の水滴が作業区域外に漏出することを防止することができる。
【0088】
図2は、足場に設置される噴霧器を示す断面図である。
図2に示すように、噴霧器120は、足場300の所望の位置に配置されて霧状の水滴を噴射する。
【0089】
具体的に噴霧器120は、作業者400の作業の邪魔にならないように、たとえば組み立てられた足場300が備える上階の踏板310の下側面と建枠320との交差部や、
ここでは図示しない足場300が備える手摺りなどに固定するとよい。
【0090】
また噴霧器120は、足場300に所定の間隔をあけて設置される。噴霧器120が設置される間隔は、噴霧器120が噴霧する霧状の水滴を噴射量によって調節するとよい。
具体的には、噴霧器120が噴霧する霧状の水滴を噴射量が少ない場合には、各階の足場300が備える踏板310の下側面に設置することもできるし、噴霧器120が噴霧する霧状の水滴を噴射量が多い場合には、隔階の足場300が備える踏板310の下側面に設置することもできる。
【0091】
また噴霧器120は、踏板310の通路方向にも複数設置でき、この場合も噴霧器120が噴霧する霧状の水滴を噴射量によって、噴霧器120を設置する間隔を調節することができる。
【0092】
なお、これらの噴霧器120を設置する間隔は、噴霧器120が霧状の水滴を噴霧する噴霧領域が重なるような位置で配置するとよい。これにより作業区域内全体に噴霧領域が広がり、作業区域内全体で噴射された霧状の水滴により塗装材22の粉塵が吸着され、吸引装置140が霧状の水滴に吸着した塗装材22の粉塵を吸引し、排気することができる。
【0093】
噴霧器120は、足場300の所望の位置に固定されるが、噴霧器120を足場300に固定する際には、噴霧器120の噴射方向を任意に変更してフレキシブルに噴射角度を調節して固定できる角度調整固定具121を用いるとよい。
【0094】
これにより噴霧器120が噴霧する霧状の水滴の噴射方向を任意に設定できる。基本的に噴霧器120が噴霧する霧状の水滴の噴射方向は、建造物200の壁面21方向かつ下方向に向けて固定されるが、作業者400が研削作業を行う際に、噴霧器120の噴射方向を作業者400の作業方向に変更するようにしてもよい。
【0095】
また、噴霧器120は、配送管130を通じて圧送機本体110が備える霧発生手段が発生させた霧状の水滴を圧送し、その霧状の水滴を噴霧器120が噴霧するが、このほかにも配送管130を通じて圧送機本体110が水分を噴霧器120まで圧送し、噴霧器120が霧状の水滴を発生させて噴霧するようにしてもよい。
【0096】
この場合、たとえば噴霧器120は、圧送機本体110から圧送された水分を保水するための保水タンク122を備え、噴霧器120が備える図示しない霧発生手段により、発生させた霧状の水滴を噴霧器120が噴霧する。
【0097】
圧送機本体110や噴霧器120が備える霧発生手段の例としては、超音波を保水タンク122内の水分に照射することで水分を霧化させる超音波式霧発生装置や、保水タンク122内の水分を加熱して蒸気を発生させるスチーム式霧発生装置などが挙げられる。
【0098】
超音波式霧発生装置の場合、超音波で霧状の水滴を発生させるので熱量を必要としないため、夏場などの暑い時期でも冷たい霧状の水滴を作業区域内に噴射することができる。これにより、作業区域内で作業者400は快適に作業を行うことができる。
【0099】
またスチーム式霧発生装置の場合、水分を加熱して蒸気を発生させるので、冬場などの寒い時期でも温かい霧状の水滴を作業区域内に噴射することができる。これにより、作業区域内で作業者400は快適に作業を行うことができる。
【0100】
また、噴霧器120は、超音波式霧発生装置やスチーム式霧発生装置を組み合わせたハイブリッド型の霧発生装置を利用することもできる。
なお、噴霧器120が噴射する霧状の水滴は、噴射量が多いと、作業者400が把持して研削作業を行う電気工具に影響を与えることがある。具体的には、前述の吸引式グラインダーなどが挙げられる。
【0101】
この吸引式グラインダーは供給された電力により研削砥石を回転させて塗装材210を研削するため、霧状の水滴の噴射量が多いと、電気工具がショートして壊れてしまう恐れがある。また作業者400が感電してしまう場合も考えられる。
このため、噴霧器120が噴射する霧状の水滴は、研削作業を行う電気工具などの電子機器に影響が出ない程度の粒径、噴射量であることが望ましい。
【0102】
また、噴霧器120が噴射する霧状の水滴は、塗装材210の粉塵を吸着させて鉛直下方向に落下させるため、吸引装置140が吸引するまでに水滴が蒸発してしまうと、塗装材210の粉塵が再び飛散してしまう恐れがある。このため、噴霧器120が噴射する霧状の水滴は、噴霧器120が噴射してから吸引装置140が吸引するまで蒸発しない程度の粒径、噴射量であることが望ましい。
【符号の説明】
【0103】
100 有害物飛散防止装置
110 圧送機本体
120 噴霧器
121 角度調整固定具
122 保水タンク
130 配送管
140 吸引装置
150、151、152 防水シート
200 建造物
210 塗装材
300 足場
310 踏板
320 建枠
400、410 作業者
図1
図2
図3
図4