(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-02
(45)【発行日】2023-08-10
(54)【発明の名称】結紮器
(51)【国際特許分類】
A61B 17/12 20060101AFI20230803BHJP
【FI】
A61B17/12
(21)【出願番号】P 2019134519
(22)【出願日】2019-07-22
【審査請求日】2022-06-09
(73)【特許権者】
【識別番号】597175938
【氏名又は名称】フォースエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085394
【氏名又は名称】廣瀬 哲夫
(74)【代理人】
【識別番号】100165456
【氏名又は名称】鈴木 佑子
(74)【代理人】
【識別番号】100206106
【氏名又は名称】廣瀬 郁夫
(72)【発明者】
【氏名】今井 孝典
(72)【発明者】
【氏名】澤畑 高樹
(72)【発明者】
【氏名】廣田 淳
(72)【発明者】
【氏名】菅野 真一
(72)【発明者】
【氏名】小野 晋一
(72)【発明者】
【氏名】澤畑 智之
(72)【発明者】
【氏名】村上 知洋
(72)【発明者】
【氏名】樋口 智章
【審査官】菊地 康彦
(56)【参考文献】
【文献】特許第4414616(JP,B2)
【文献】特開2010-011929(JP,A)
【文献】国際公開第2012/046757(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0153948(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/12-17/138
A61B 17/03-17/06
A61L 17/00-17/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空部を有する筒状体と、該中空部に挿通される紐状体と、を備え、
前記筒状体は、近位端部及び遠位端部にそれぞれ近位開口及び遠位開口を備え、
前記近位開口と遠位開口とは、筒状体の中空部を介して連通しており、
前記紐状体は、長さ方向の両端部である第一端部及び第二端部と、前記第一端部と第二端部のあいだの巻回部と、を備え、
前記巻回部は、結紮時に対象物を巻回する部位であり、
前記巻回部を対象物に巻回するとともに、筒状体の遠位端部側で対象物を押圧した状態で、中空部内を遠位開口から近位開口に向けて挿通され近位方向に牽引された紐状体の第一端部及び第二端部が筒状体に固定されることによって、対象物を結紮可能な結紮器
において、
前記紐状体の第一端部は、第二端部を係止可能な係止部を有しており、該係止部に第二端部を係止させた状態で中空部内を挿通可能に構成されていることを特徴とする結紮器。
【請求項2】
前記第一端部に
、巻回部よりも硬質な硬質部が形成され、前記係止部は、第一端部の前記硬質部に設けられていることを特徴とする請求項
1記載の結紮器。
【請求項3】
前記紐状体の第一端部を、
巻回部よりも硬質に形成される先端部側の硬質部と、
巻回部の柔軟性を有する巻回部側の柔軟部と、
が備えられたものとして、
第一端部を、
前記巻回部で対象物を巻回した後に、第二端部が係止部に係止された状態で、前記硬質部の先導によって前記筒状体を貫通して取り出された柔軟部が第二端部と共に固定手段を介して筒状体に固定される構成にしたことを特徴とする請求項
1または2記載の結紮器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外科手術において特に血管や腸管等の生体管や臓器、器具等を結紮するための結紮器の技術分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種の外科手術において、血管や腸管、尿管等の生体管を一時的に結紮して遮断する場合がある。例えば、頸動脈内膜剥離術(CEA:Carotid Endarterectomy)では、狭窄した動脈を切開してプラークを除去するに際して、一時的に動脈を結紮して駆血することがある。オフポンプ冠動脈バイパス術(OPCABG:Off-Pump Coronary Artery Bypass Grafting)においては、冠動脈にバイパスを吻合するに際して、一時的に冠動脈を結紮することがある。また、生体管の遮断以外にも、臓器等に対しての一時的な縫合や、挿入されたカテーテルやカニューレ、シャンテチューブ等の器具の固定、術野の確保等を目的として、種々の結紮がなされる場合がある。例えば、血管内に挿入されたカテーテル等を固定するために、血管ごと結紮することがある。また、人工心肺のカニュレーションにおいて、送血・脱血カニューレを固定するために、挿入部位の周囲に巾着縫合を施しておき、カニューレの挿入後に結紮をすることがある。さらに、大動脈瘤へのステントグラフト内挿術において、シース固定のために血管ごと結紮をすることがある。このような各種の結紮に際して、筒状体と紐状体を用いるターニケットと呼ばれる結紮器が用いられることがある(特許文献1~3参照)。
【0003】
一般的なターニケットは、例えば生体管の結紮に際し、次のように用いられる。まず、手術用ループや縫合糸等の紐状体で生体管を巻回する。続いて、筒状体の遠位端から紐状体の両端部を挿通させ、筒状体の近位端から紐状体の両端部を取り出す。さらに、紐状体の両端部を近位方向に牽引しながら筒状体の遠位端部を生体管に押圧した状態で、紐状体を鉗子やクリップ等によって筒状体の近位端部に固定する。このようにすると、巻回された紐状体と筒状体とによって、生体管を結紮することができる。紐状体の固定を解除することで、結紮の強さを調節することができる。また、カニュレーションにおけるカニューレの固定に際しては、例えば次のようにターニケットを用いることができる。予め臓器等のカニューレ挿入部位の周囲に縫合針によって縫合糸を巻回し、筒状体に紐状体の両端部を挿入しておく。そして、カニューレを挿入し、その挿入部位に筒状体を押圧しながら縫合糸を牽引して筒状体に固定することで、挿入部位がカニューレに圧着されて、カニューレを固定することができる。
【0004】
このような結紮器に用いられる筒状体は、全長が数cm~数十cm程度、直径は5~10mm前後のものが多い。特に筒状体の全長が長い場合には、紐状体の両端部を筒状体内に挿通させて取り出す工程を、手作業やピンセット、鉗子等を用いて行うことには困難が伴う。そこで、特許文献1~3の結紮器のように、遠位端にフック部を有するスネアと呼ばれる器具がこの工程に用いられることがある。生体管を紐状体で巻回した状態で、スネアを筒状体の近位端から挿通させ、遠位端でフック部に紐状体の両端部側をまとめて引っ掛け、スネアを筒状体から引き抜くことで、紐状体の両端部を近位端から取り出せることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第3877434号明細書
【文献】特許第4414616号公報
【文献】特許第5788893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したような結紮器は、一般にスネアも含めてディスポーザブルであり、スネアを要するものとするとコストが高くなってしまう。また、術中に使用される器具が増えることは好ましくない。さらに、筒状体やスネアの形状を改良により操作性を向上させようとすると、製造コストが高くなりやすい。そこで、結紮器の紐状体を改良して筒状体への挿通を容易なものとすることにより、結紮器を用いた結紮の操作性を向上させることが、本発明が解決しようとする課題である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、中空部を有する筒状体と、該中空部に挿通される紐状体と、を備え、前記筒状体は、近位端部及び遠位端部にそれぞれ近位開口及び遠位開口を備え、前記近位開口と遠位開口とは、筒状体の中空部を介して連通しており、前記紐状体は、長さ方向の両端部である第一端部及び第二端部と、前記第一端部と第二端部のあいだの巻回部と、を備え、前記巻回部は、結紮時に対象物を巻回する部位であり、前記巻回部を対象物に巻回するとともに、筒状体の遠位端部側で対象物を押圧した状態で、中空部内を遠位開口から近位開口に向けて挿通され近位方向に牽引された紐状体の第一端部及び第二端部が筒状体に固定されることによって、対象物を結紮可能な結紮器において、前記紐状体の第一端部は、第二端部を係止可能な係止部を有しており、該係止部に第二端部を係止させた状態で中空部内を挿通可能に構成されていることを特徴とする結紮器である。
請求項2の発明は、前記第一端部に、巻回部よりも硬質な硬質部が形成され、前記係止部は、第一端部の前記硬質部に設けられていることを特徴とする請求項1記載の結紮器である。
請求項3の発明は、前記紐状体の第一端部を、巻回部よりも硬質に形成される先端部側の硬質部と、巻回部の柔軟性を有する巻回部側の柔軟部と、が備えられたものとして、第一端部を、前記巻回部で対象物を巻回した後に、第二端部が係止部に係止された状態で、前記硬質部の先導によって前記筒状体を貫通して取り出された柔軟部が第二端部と共に固定手段を介して筒状体に固定される構成にしたことを特徴とする請求項1または2記載の結紮器である。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明とすることにより、硬質部に先導されて紐状体の両端部を中空部に挿通可能となるため、各端部が挿通の途中で屈曲しづらく、操作性に優れた結紮器とすることができる。
しかも第一端部と第二端部とを係止した状態で一体に中空部内に挿通可能となるため、操作性に優れたものとすることができる。
請求項2、3の発明とすることにより、安定して第二端部を係止させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】(A)~(F)第一実施形態に係る結紮器の使用例を示す図面である。
【
図4】(A)フック部の拡大図、(B)フック部に第二端部を係止させた状態の拡大図である。
【
図5】(A)~(E)第二実施形態に係る結紮器の使用例を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の
参考例となる第一実施形態について、
図1~2を参考に説明する。図面において、1は結紮の対象物の結紮に用いられる結紮器である。結紮器1は、長尺中空な円筒状の筒状体2を備えている。筒状体2は、近位端部3と遠位端部4とにそれぞれ近位開口3a、遠位開口4aを備えている。近位開口3aと遠位開口4aは、筒状体2の内部で連通していて、この連通した中空の内部が中空部5となっている。結紮器1はまた、対象物に巻回される紐状体10を備えている。紐状体10は、対象物に巻回された後に、両端部(後述する第一、第二端部11、12)が筒状体2の遠位開口4aから中空部5内に挿通されて、近位開口3aから取り出され、筒状体2に対して固定されることにより、対象物が結紮されることとなる。本実施形態では、結紮の対象物を血管Vとして説明する。
【0011】
本実施形態に係る筒状体2は、弾力性・柔軟性を有する合成樹脂材からなるものとしている。また、筒状体2は着色したものとしてもよい。例えば、動脈に用いるものは赤色、静脈に用いるものは青色、といった色分けをすることができる。あるいは、筒状体2を透明又は透光性を有するものとしてもよい。さらに、近位端部3と遠位端部4とを一見して区別可能とするために、いずれかの端部のみを着色したり、他の部位と異なった着色を施したりしたものとしてもよい。また、筒状体2は必ずしも円筒状のものに限られず、扁平形状や角筒状、テーパー状等種々の形状のものを採用することができる。さらに、筒状体2の内周と外周の形状を相違させてもよい。例えば、筒状体2の外周を円形状とする一方で、内周を多角形状にしてもよい。
【0012】
紐状体10は、少なくとも筒状体2の全長の2倍よりも長尺な紐形状であり、その長さ方向の両端部を第一端部11と第二端部12とし、その間を巻回部13とする。結紮時には、少なくとも巻回部13の一部が直接血管Vに巻回されることとなる。第一端部11及び第二端部12には、いずれも巻回部13より硬質な硬質部14が先側半部として形成されている。硬質部14は、各端部11、12の先端に至って、筒状体2の全長と略同じ長さにわたって設けられている。他方、巻回部13は柔軟性を有し、対象物の巻回に適したものとなっている。紐状体10の第一端部11及び第二端部12を硬質部14とすることにより、筒状体2内への紐状体10の挿入・挿通に際して、途中で端部が屈曲してしまうようなことがないため、真っ直ぐに挿入・挿通可能で操作性に優れる。
【0013】
紐状体10は、伸縮性を有する樹脂素材からなる扁平形状のものとしている。もっとも、これに限られるものではなく、伸縮性を有しない縫合糸のようなものでもよいし、扁平形状ではなく断面円形状のものであってもよく、結紮する対象物等に応じた適宜の素材・形状等からなるものを採用することができる。
【0014】
また、紐状体10の硬質部14は、それ以外の部位、特に巻回部13とは、異なった着色で色分けされたものとすることができる。これにより、操作者が一見してどの部位が硬質部14であるかを判別可能となるため、操作性に優れる。また、紐状体10の硬質部14の形状を、他の部位、特に巻回部13と異なった断面形状としてもよい。例えば、硬質部14を巻回部13に対して幅狭な扁平形状とすると、一見して硬質部14の部位が判別可能となることに加え、硬質部14の中空部5内への挿通が容易なものとなる。
【0015】
このような巻回部13と硬質部14とを有する紐状体10は、二色成形による押出成形で製造することができ、例えば、次のようにすることができる。まず、硬質部14を形成するための硬質材料を吐出する第一工程と、その他の柔軟な部位(巻回部13)を形成するための材料である柔軟材料を吐出する第二工程とを所定時間ごとに繰り返す。この際、第一工程による成形部位は、硬質部14の倍の長さとなるように設定する。そして、冷却後に当該部位の長さ方向中央部で幅方向に切断する切断工程を行うことで、紐状体10の両端部11、12に同じ長さの硬質部14を形成したものとすることができる。
【0016】
もっとも、このような製造方法に限られず、例えば圧縮によって硬質部14を形成したり、紐状体10を編糸とするような場合には、両端部11、12の編込密度を大きくして硬質部14を形成したりすることもできる。
【0017】
続いて、このように構成された第一実施形態に係る結紮器1の使用方法の例について、
図2を参照して説明する。まず、紐状体10の巻回部13をループ状にしたうえで、このループ部Lを対象物である血管Vに宛てがい、適宜の回数巻回する(
図2(A)の状態)。そして、紐状体10のループ部Lに、紐状体10の両端部11、12を同方向から挿入する(
図2(B)の状態)。その後、紐状体10の両端部11、12を牽引することで、ループ部Lで血管Vを締め付ける。そして、紐状体10の両端部11、12を筒状体2の遠位開口4aから中空部5内に挿通させ(
図2(D)の状態)、近位開口3aから取り出す(
図2(E)の状態)。その後、筒状体2の遠位端部4で血管Vを押圧するとともに、紐状体10を近位方向に牽引した状態で、近位端部3の近傍で紐状体10の両端部11、12を鉗子やクリップ等の任意の固定手段18で固定する(
図2(F)の状態)。これによって、血管Vの結紮が完了する。
【0018】
かかる使用例において、紐状体10の両端部11、12がいずれも硬質部14を有しているため、中空部5内への挿通に際して、硬質部14の先導により、紐状体10が途中で屈曲して挿通しづらくなることを避けることができ、操作性に優れる。なお、両端部11、12を近位開口3aから取り出した後に筒状体2に固定するに際して、長尺な硬質部14がその後の作業の妨げとなるような場合には、硬質部14を切除してしまってもよい。また、紐状体10の固定部位は硬質部14に限られず、適宜のものとすることができる。固定手段18は、上述した鉗子やクリップ等の別の器具でもよいし、予め筒状体2に設けたキャップ等であってもよく、従来のものを適宜用いることができる。
【0019】
なお、上記した使用方法の例においては、対象物を血管Vとして、その外周に紐状体20を巻回したものとしているが、対象物に紐状体を巻回することは、必ずしも対象物の外周全体を巻回することに限られるものではない。すなわち、例えば血管や臓器等の表層部分を縫合糸で縫合した場合であっても、その表層部分に紐状体が巻回されているということができる。
【0020】
以上説明した第一実施形態に係る結紮器1に用いられる紐状体10は、第一端部11及び第二端部12と、そのあいだの巻回部13とを備え、第一端部11及び第二端部12の双方が、巻回部13よりも硬質で、筒状体2と同じ長さにわたって形成された硬質部14を有し、筒状体2の中空部5に紐状体10を挿通させるに際して、硬質部14の先導によって第一端部11と第二端部12を同時に挿通可能となるため、各端部11、12が途中で屈曲しづらく、操作性に優れる。
【0021】
しかも、硬質部14は各端部11、12の先端に至って形成されているため、特に筒状体2の遠位開口4aへの挿入が容易なものとなっている。また、硬質部14を巻回部13と異なる色で色分けしたり、異なる断面形状のものとすれば、一見して硬質部14の位置を把握することができるため、操作性に優れたものとすることができる。
【0022】
続いて、本発明
が実施された第二実施形態について、
図3~5を参考に説明する。第二実施形態に係る結紮器21は、紐状体30の両端部31、32の構造が第一実施形態のものと相違する。その他の構成については、変形例も含めて第一実施形態と同様であるため、説明を適宜省略する。
【0023】
第二実施形態に係る紐状体30の第一端部31は、第一実施形態と同様に先側半部に硬質部34を有している一方で、第二端部32は、硬質部を有しておらず、巻回部33と同様に柔軟に形成されている。さらに、第一端部31の硬質部34には、鈎状に形成されたフック部35が、第二端部32を係止する係止部として設けられている。結紮対象物である血管Vに巻回部33を巻回した後に、このフック部35に第二端部32を係止させ、第一端部31を筒状体22の中空部25内に挿通させることで、硬質部34を有する第一端部31と一体に第二端部32を中空部25内に挿通させることができる。
【0024】
なお、係止部としては上述したフック部35に限られず、種々のものとすることができる。例えば、硬質部34に挿通孔を設け、この挿通孔に第二端部32を挿通、巻回させて係止したものとすることもできる。また、係止部は硬質部34を有しない第二端部32に設けることもできる。
【0025】
続いて、このように構成された第二実施形態に係る結紮器21の使用方法の例について、
図5を参照して説明する。まず、紐状体30の第二端部32側を先導させて巻回部13を血管Vに巻回させる(
図5(A)の状態)。次に、第二端部32を第一端部31のフック部35に係止させる(
図5(B)の状態)。この係止状態で、第一端部31を筒状体2の遠位開口24aから中空部25内に挿通させる(
図5(C)の状態)。そして、第一端部31と、係止された第二端部32を近位開口23aから取り出し(
図5(D)の状態)、筒状体22の遠位端部24で血管Vを押圧するとともに、紐状体30を近位方向に牽引した状態で、近位端部23近傍で紐状体30の両端部31、32を鉗子やクリップ等の任意の固定手段38で固定する(
図5(E)の状態)。この際、第二端部32のフック部35への係止は解除してよい。以上によって、血管Vの結紮が完了する。
【0026】
かかる使用例において、紐状体30の第二端部32が、第一端部31の係止部であるフック部35に係止されているため、中空部25内への挿通に際して、第一端部31にのみ硬質部34を設けたものとしながら、硬質部34の先導により、第二端部32も第一端部と一体に挿通されるため、紐状体30が途中で屈曲して挿通しづらくなることを避けることができ、操作性に優れる。
【0027】
以上説明した第二実施形態に係る結紮器21に用いられる紐状体30は、第一端部31のみが硬質部34を有するが、第一端部31は第二端部32を係止可能な係止部としてフック部35を有していて、フック部35に第二端部32を係止させた状態で中空部25内に挿通可能であるから、当該挿通に際して、硬質部34の先導によって第一端部31と第二端部32を同時に挿通可能となるため、各端部31、32が途中で屈曲しづらく、操作性に優れる。特に、硬質部34にフック部35が設けられているため、第二端部32を安定して係止させることができる。
【0028】
本発明に係る結紮器は、血管や腸管、尿管等の生体管のほか、各種臓器や機器等の一時的に結紮する必要がある種々の対象物に用いることができる。より具体的には、例えばCEAやOPCABGに際しての動脈の結紮、カテーテルやカニューレの固定、大動脈瘤へのステントグラフト内挿術におけるシース固定等、様々な外科手術において用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、外科手術において生体管や臓器、器具等の対象物を結紮するために用いられる結紮器に利用することができる。
【符号の説明】
【0030】
1 結紮器
2 筒状体
3 近位端部
3a 近位開口
4 遠位端部
4a 遠位開口
4b 遠位端面
5 中空部
10 紐状体
11 第一端部
12 第二端部
13 巻回部
14 硬質部
35 フック部(係止部)
V 血管(対象物)