(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-02
(45)【発行日】2023-08-10
(54)【発明の名称】仮設吊り足場の連結金具
(51)【国際特許分類】
E04G 7/08 20060101AFI20230803BHJP
E04G 3/24 20060101ALI20230803BHJP
【FI】
E04G7/08 A
E04G3/24 302H
(21)【出願番号】P 2019168034
(22)【出願日】2019-09-17
【審査請求日】2022-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000143558
【氏名又は名称】株式会社国元商会
(74)【代理人】
【識別番号】100154014
【氏名又は名称】正木 裕士
(74)【代理人】
【識別番号】100154520
【氏名又は名称】三上 祐子
(72)【発明者】
【氏名】白波瀬 太一
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-140363(JP,A)
【文献】登録実用新案第3180084(JP,U)
【文献】実開昭60-001841(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 7/04-7/08
E04G 3/24
E04G 5/08
F16B 2/10
F16B 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長さ方向の端部の左右両側枠間に連結用鋼管が架設された吊り足場を長さ方向に連結するための連結金具であって、一方の吊り足場の前記連結用鋼管に固定するパイプクランプと、他方の吊り足場の前記連結用鋼管に固定するパイプクランプとが互いに連結一体化され、前記両パイプクランプは、平坦な外側面を有するパイプ受け座と当該パイプ受け座の一端から斜めに立ち上がる軸受け部とを備えた受け部材と、前記軸受け部の遊端に開閉自在に軸支された押さえ部材、及び前記パイプ受け座の遊端に起伏自在に軸支された締結用螺軸と当該螺軸に螺嵌するナットを備え、前記押さえ部材の遊端には、前記締結用螺軸が嵌入する切込み凹部を備える螺軸係合部が設けられ、前記両パイプクランプの受け部材どうしを互いに連結一体化する連結手段が設けられた連結金具において、
前記両パイプクランプは、それぞれの受け部材の軸受け部どうしを背中合わせに隣接させて、それぞれの受け部材のパイプ受け座における平坦な外側面が山形状に連続するように並列し、この状態で両パイプクランプの受け部材どうしを前記連結手段により互いに連結一体化して成る、仮設吊り足場の連結金具。
【請求項2】
前記連結手段は、両パイプクランプの受け部材のパイプ受け座における平坦な外側面に対接する2つの支持部を山形状に連続するように連設した連結受け部材と、各支持部を両パイプクランプのパイプ受け座に固定する固定手段とから構成されている、請求項1に記載の仮設吊り足場の連結金具。
【請求項3】
前記連結受け部材は、パイプクランプのパイプ受け座の平坦な外側面に対接する山形状の底板部と、この底板部の左右両側辺から立ち上がってパイプ受け座を左右両側から挟む側板部とから成る横断面溝形構造である、請求項2に記載の仮設吊り足場の連結金具。
【請求項4】
前記固定手段は、前記連結受け部材の両支持部における底板部に形成された、各支持部に1本の貫通ネジ孔と、各パイプクランプのパイプ受け座を内側から外向きに貫通して前記貫通ネジ孔に螺合締結された、各支持部に1本のボルトから構成されている、請求項3に記載の仮設吊り足場の連結金具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁などの点検保守作業現場に仮設される吊り足場を長さ方向に連結するための連結金具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
橋梁などの点検保守作業現場に仮設される吊り足場は、長さ方向の左右両側に配置された左右両側枠材間に足場板を貼付し、長さ方向の端部には、足場板から延出する前記左右両側枠材間で連結用鋼管が架設されたものである。この種の吊り足場は、長さ方向に連続するように仮設する場合、互いに端部どうしが隣接する両吊り足場は、両吊り足場の隣接端部にある前記連結用鋼管どうしを、パイプクランプ利用の連結金具によって連結すると共に、このように連結された連結吊り足場構造体は、その両端に位置する前記連結用鋼管と、中間の吊り足場どうしが隣接する箇所では、何れか一方の吊り足場の前記連結用鋼管を、それぞれ吊下げ用チエンにより橋梁などの構造物に吊り下げて使用される。
【0003】
而して、前記吊り足場どうしを連結する連結金具としては、その構成を開示した特許技術文献を示すことは出来ないが、一般的に知られているものは、パイプクランプを利用するものである。このパイプクランプは、平坦な外側面を有するパイプ受け座と当該パイプ受け座の一端から斜めに立ち上がる軸受け部とを備えた受け部材と、前記軸受け部の遊端に開閉自在に軸支された押さえ部材、及び前記パイプ受け座の遊端に起伏自在に軸支された螺軸と当該螺軸に螺嵌するナットを備え、前記押さえ部材の遊端には前記螺軸が嵌入する切込み凹部が設けられたものである。このパイプクランプの2つを連結手段によって連結して、互いに端部が隣接する2つの吊り足場どうしを連結する連結金具としている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら従来周知の、2つのパイプクランプを連結一体化する連結手段は、各パイプクランプのパイプ受け座の平坦な外側面どうしを互いに対接させた状態で両パイプ受け座どうしを直接連結するボルトナットなどのみから構成されていた。即ち、この種のパイプクランプは、前記パイプ受け座の平坦な外側面が、パイプクランプに他の部材を取り付ける際の取付け座となっていたので、2つのパイプクランプの取付け座どうしを互いに当接させた状態で、ボルトナットなどにより連結一体化するのが常套手段となっていたのである。しかしこのような構成の連結金具では、吊り足場の上側から作業者がパイプクランプに対する操作を行わなければならないので、2つのパイプクランプの螺軸とナットが存在する箇所を、これらパイプクランプが取り付けられる吊り足場側の鋼管の上になるような向きで連結金具を使用しなければならない。
【0005】
即ち、
図13に基いて後述するように、連結する対象の2本の鋼管の間に、互いに背中合わせに連結された2つのパイプクランプのパイプ受け座が垂直縦向きに配置されると共に、これら2本の鋼管の外側に各パイプクランプの押さえ部材が垂直縦向きに配置され、締結用螺軸は、各鋼管の上側に先端上がりの横向き姿勢で配置されることになり、この締結用螺軸の先端部と押さえ部材先端の螺軸係合部が、2本の鋼管の周面上端レベルより大きく上方に突出する結果になる。このため、互いに隣接する吊り足場間の足場板の存在しない空間を別の中継用補助足場板で覆う安全策を講じようとすると、当該中継用補助足場板を、その前後の吊り足場の足場板より大きく山形状に突出する形状に構成しなければならず、吊り足場上を歩行する作業者にとっては安全性の面で問題になっていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記のような従来の問題点を解消することのできる仮設吊り足場の連結金具を提案するものであって、本発明に係る仮設吊り足場の連結金具は、後述する実施例との関係を理解し易くするために、当該実施例の説明において使用した参照符号を括弧付きで付して示すと、長さ方向の端部の左右両側枠(27)間に連結用鋼管(30)が架設された吊り足場(26)を長さ方向に連結するための連結金具(18)であって、一方の吊り足場(26)の前記連結用鋼管(30)に固定するパイプクランプ(1A)と、他方の吊り足場(26)の前記連結用鋼管(30)に固定するパイプクランプ(1B)が互いに連結一体化され、前記両パイプクランプ(1A,1B)は、平坦な外側面(6a)を有するパイプ受け座(6)と当該パイプ受け座(6)の一端から斜めに立ち上がる軸受け部(7)とを備えた受け部材(2)と、前記軸受け部(7)の遊端に開閉自在に軸支された押さえ部材(3)、及び前記パイプ受け座(6)の遊端に起伏自在に軸支された締結用螺軸(4)と当該螺軸(4)に螺嵌するナット(5)を備え、前記押さえ部材(3)の遊端には、前記締結用螺軸(4)が嵌入する切込み凹部(14)を備える螺軸係合部(13)が設けられ、前記両パイプクランプ(1A,1B)の受け部材(2)どうしを互いに連結一体化する連結手段が設けられた連結金具において、
前記両パイプクランプ(1A,1B)は、それぞれの受け部材(2)の軸受け部(7)どうしを背中合わせに隣接させて、それぞれの受け部材(2)のパイプ受け座(6)における平坦な外側面(6a)が山形状に連続するように並列させた状態において、両パイプクランプ(1A,1B)の受け部材(2)どうしを前記連結手段で互いに連結一体化した構成になっている。
【発明の効果】
【0007】
上記本発明の連結金具は、両パイプクランプの受け部材の互いに背中合わせに隣接する軸受け部を、連結対象の両吊り足場の互いに並列する鋼管の間に下側から上向きに入り込むように配置させ、両パイプクランプの受け部材のパイプ受け座上にそれぞれ前記鋼管を嵌合させた状態で、両パイプクランプの押さえ部材を各鋼管の上に被せ、各パイプクランプの締結用螺軸を、ナットを後退限位置に後退させてある状態で上方に持ち上げて各押さえ部材の先端の切込み凹部に嵌入させた後、前記ナットを締め込んで、前記押さえ部材とパイプ受け座との間で各鋼管を挟持固定することにより、両吊り足場の互いに並列する鋼管どうしを互いに連結一体化することが出来る。
【0008】
而して上記の本発明の構成によれば、各パイプクランプの受け部材におけるパイプ受け座の一端から斜めに立ち上がる軸受け部どうしが背中合わせに隣接する状態で、両パイプクランプの受け部材どうしを互いに連結一体化されているので、この互いに背中合わせに隣接している両パイプクランプの軸受け部を、互いに連結する2本の前記鋼管の間に下側から上向きに入り込むように配置させると、本来は斜め上向きに傾斜している前記軸受け部がほぼ鉛直姿勢になるため、各パイプクランプが、前記軸受け部が上動する方向に互いに逆回転した姿勢になる。このため、前記軸受け部の上端(押さえ部材の軸支位置)が高くなると共に、締結姿勢の締結用螺軸が前記鋼管の周りで下方に回転して起立角度が緩くなる。従って、2本の並列する前記鋼管の周面上端レベルに対しては、両パイプクランプの押さえ部材のみか又は、締結用螺軸の長さによっては締結姿勢の締結用螺軸の上端と共に上方に突出する状態になる。
【0009】
上記の本発明の構成に対して、両パイプクランプが、その受け部材のパイプ受け座がほぼ水平になる通常の姿勢において、例えば前記パイプ受け座どうしを水平向きの連結部材の上に固定して連結一体化される構成や、両パイプクランプが、先に説明したように、その受け部材のパイプ受け座どうしを背中合わせに隣接させた状態で互いに連結一体化されている構成が考えられるが、これらの構成では、締結姿勢の締結用螺軸の上端や、当該締結用螺軸と係合する押さえ部材先端の螺軸係合部、及びナットなどが、前記鋼管の周面上端レベルから上向きに突出することになり、この突出高さに対して、上記のように前記鋼管の周面上端レベルから実質的にパイプクランプの押さえ部材のみが上側に突出する本発明の構成の場合の突出高さは、断然低くなる。従って、両パイプクランプによって、2つの吊り足場の端部に架設されている前記鋼管どうしを連結した場合、当該鋼管より上方に突出する部分の高さが大巾に低くなるので、互いに連結される吊り足場間に発生する空間を塞ぐために、両吊り足場間に跨って中継用補助足場板を敷設する場合でも、その中継用補助足場板の最大高さを大巾に低くすることが出来、この吊り足場の上を歩行する作業者に対する安全性を高めることが出来る。
【0010】
上記本発明を、既製品のパイプクランプをそのまま利用して実施する場合、前記軸受け部は、押さえ部材を軸支する関係で先細りの形状のものであり、しかも背面が平坦な直線状ではなくて屈曲しているのが普通であるから、背中合わせに隣接する2つのパイプクランプの受け部材の軸受け部どうしを直接溶接するか又は、ボルトやリベットなどの適当な止め具で結合一体化することは容易ではないし、十分な連結強度も得難い。従って、このような実施方法もあることにはあるが、好ましくは前記連結手段として、両パイプクランプ(1A,1B)の受け部材(2)のパイプ受け座(6)における平坦な外側面(6a)に対接する2つの支持部を山形状に連続するように連設した連結受け部材と、各支持部を両パイプクランプのパイプ受け座に固定する固定手段とから構成するのが好ましい。この構成によれば、両パイプクランプのパイプ受け座における平坦な外側面とこれに対接する山形状の底板部とを備えているので、前記固定手段として溶接やボルト或いはリベットなどを使用する場合でも、簡単に且つ十分な強度をもって連結一体化することが出来る。
【0011】
上記の前記連結受け部材を利用する場合、当該連結受け部材は、両パイプクランプのパイプ受け座の平坦な外側面に対接する山形状の底板部と、この底板部の左右両側辺から立ち上がってパイプ受け座を左右両側から挟む側板部とから成る横断面溝形構造とするのが好ましい。この構成によれば、横断面溝形構造によって連結受け部材自体の強度も十分に高めることが出来るだけでなく、2つのパイプクランプの前記パイプ受け座を横断面溝形構造の前記連結受け部材に嵌合させるだけで、2つのパイプクランプの位置や姿勢を確定させ易く、一層実施が容易に行える。更に、前記固定手段は、前記連結受け部材の両支持部における底板部に形成された、各支持部に1本の貫通ネジ孔と、各パイプクランプのパイプ受け座を内側から外向きに貫通して前記貫通ネジ孔に螺合締結された、各支持部に1本のボルトから構成するときは、合計2本のボルトを使用するだけで簡単且つ安価に実施することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、使用する汎用のパイプクランプの一部縦断正面図である。
【
図4】
図4は、同パイプクランプの右側面図である。
【
図5】
図5は、同パイプクランプの左側面図である。
【
図6】
図6は、同パイプクランプを使用して構成した本発明一実施例に係る連結金具の一部縦断正面図である。
【
図8】
図8は、連結手段として使用されている連結受け部材を示す斜視図である。
【
図9】
図9は、本発明連結金具の使用場所を説明する一部切欠き側面図である。
【
図11】
図11は、実際に本発明連結金具を使用した状態を説明する一部切欠き平面図である。
【
図13】
図13は、従来の連結金具を使用した場合の前記B-B線拡大断面図に相当する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
先ず、使用する汎用のパイプクランプを
図1~
図5に基いて説明すると、パイプクランプ1は、受け部材2、押さえ部材3、締結用螺軸4、及びナット5から構成されている。受け部材2は、平坦な外側面6aを有するパイプ受け座6と、当該パイプ受け座6の一端から斜めに立ち上がる軸受け部7とを備えている。パイプ受け座6と軸受け部7は、両者間にわたって連続する底板部8と、当該底板部8の左右両側辺から内側に直角に折曲連設された左右両側板部9を備えた、上側解放の横断面溝形構造のものであって、左右両側板部9の内側縁9aがクランプ対象の鋼管Pの周面に沿う円弧形に形成されている。
【0014】
押さえ部材3は、前記軸受け部7の遊端の左右両側板部9間に一端が嵌合して、左右両側板部9間を横断する支軸10によって開閉自在に軸支されたもので、外側の天板部11と、当該天板部11の左右両側辺から内側へ直角に折曲連設された左右両側板部12とを備えた、下側解放の横断面溝形構造のものであって、遊端部は、外向きに屈曲して角状に突出する螺軸係合部13となっている。この螺軸係合部13には、その先端から天板部11に切欠き形成された切込み凹部14が設けられて二股形状になっており、この二股形状の螺軸係合部13の天板部11には、一段低くなったナット受け面15が形成されている。この押さえ部材3の左右両側板部12の前記螺軸係合部13を除く領域の内側縁12aは、クランプ対象の鋼管Pの周面に沿う円弧形に形成されている。又、押さえ部材3の前記螺軸係合部13を除く領域も、前記内側縁12aと同様に外向きに膨らむ円弧形に形成されている。
【0015】
前記受け部材2におけるパイプ受け座6の、軸受け部7が連設される側とは反対側には、巾の狭くなった軸受け用突出部2aが形成され、締結用螺軸4は、その一端部が前記パイプ受け座6の軸受け用突出部2aに嵌合すると共に、この軸受け用突出部2aを形成してる左右両側板部9間を横断する支軸16によって揺動自在に軸支されている。ナット5は、締結用螺軸4に螺嵌するものであって、このナット5の外れ止め部4aが締結用螺軸4の先端に一体形成されている。而して当該締結用螺軸4は、ナット5を後退限位置まで後退させてある状態で支軸16の周りに閉動させることにより、受け部材2との間で鋼管Pを挟む閉じ姿勢にある押さえ部材3の螺軸係合部13の切込み凹部14内に嵌入させることが出来、この状態で後退限位置にあるナット5を締め込んで、螺軸係合部13のナット受け面15に圧接させることにより、受け部材2に対して押さえ部材3を支軸10の周りに閉動させ、鋼管Pを受け部材2の内側縁9aと押さえ部材3の内側縁12aとの間で挟み付けて固定することが出来る。
【0016】
以上のように構成され且つ使用することが出来るパイプクランプ1を利用して構成される連結金具の実施例を、
図6~
図8に基いて説明すると、前記パイプクランプ1と同一構造の2つのパイプクランプ1A,1Bと、これら両パイプクランプ1A,1Bの連結手段としての連結受け部材17及び締結ボルト19a,19bによって、連結金具18が構成されている。即ち、2つのパイプクランプ1A,1Bは、
図6に示すように、それぞれの受け部材2の軸受け部7が背中合わせに隣接するように前後逆向きに配置した状態で、連結受け部材17と2本の締結ボルト19a,19bによって連結一体化されている。
【0017】
連結受け部材17は、上記のように軸受け部7が背中合わせに隣接するように前後逆向きに配置された2つのパイプクランプ1A,1Bそれぞれのパイプ受け座6の底板部8の平坦な外側面6aに当接する、山形状に連続する支持板部20a,20bを備えた山形状底板部21と、この山形状底板部21の左右両側辺から直角に折曲連設されて、前記パイプ受け座6を挟む左右両側板部22から構成され、両支持板部20a,20bの中央位置には、直角に貫通する貫通ネジ孔23が設けられている。一方、両パイプクランプ1A,1Bそれぞれのパイプ受け座6の底板部8の中央には、前記貫通ネジ孔23と同心状に貫通孔24が設けられ、この貫通孔24にパイプ受け座6の内側から締結ボルト19a,19bを挿通させると共に、連結受け部材17側の貫通ネジ孔23に螺合締結することにより、両パイプクランプ1A,1Bを、連結受け部材17と2本の締結ボルト19a,19bを介して連結一体化している。このように構成された連結金具18は、
図6に示すように、それぞれ鋼管Pを挟持している状態の両パイプクランプ1A,1Bが水平に並列しているとすれば、当該鋼管Pの上側には押さえ部材3の円弧形部分が存在し、両鋼管Pの周面上端レベルLよりも上方には、これら両パイプクランプ1A,1Bの押さえ部材3の円弧形部分と、僅かに締結用螺軸4の先端が突出する状態になる。
【0018】
尚、連結受け部材17側の貫通ネジ孔23は、各支持板部20a,20bから外向きに筒状壁部が形成される貫通孔加工とこの貫通孔の内側に対する雌ネジ溝加工とで形成したものであり、締結ボルト19a,19bによって2つのパイプクランプ1A,1Bを連結受け部材17に取り付けた後、締結ボルト19a,19bの弛み止めとして、貫通ネジ孔29から突出している締結ボルト19a,19bの先端部に対するカシメ加工を施している。又、各締結ボルト19a,19bの頭部は、各パイプクランプ1A,1Bのパイプ受け座6の左右両側板部9間に嵌まり込んでいて、内側縁9aより内側には突出していない。
【0019】
以上のように構成された連結金具18の使用方法を
図9~
図12に基いて説明すると、
図9及び
図10に示すように、橋梁などの保守点検作業のために、橋梁25の下側一定高さに作業用の吊り足場26が架設される。当該吊り足場26は、長さ方向に沿った左右両側枠27間に、この吊り足場26の両端部一定長さ領域を除いて、足場板28を敷設したものであって、この吊り足場26の両端の足場板28が敷設されていない領域には、吊下げ用チエン29による吊り足場26の吊下げ時に使用するために、左右両側枠27間に鋼管30(連結金具18の構造説明に際して示した鋼管Pに相当するもの)が架設されている。各吊り足場26は、その両端の鋼管30を橋梁25の梁材25aに吊下げ用チエン29によって吊り下げられるが、吊り足場26が長さ方向に連続するように架設される場合、
図11及び
図12に示すように、長さ方向に隣接する吊り足場26の互いに隣接する端部に架設されている前記鋼管30どうしを、当該鋼管30の両端近くの2箇所で本発明の連結金具18によって互いに連結することが出来る。
【0020】
連結金具18によって長さ方向に隣接する吊り足場26どうしを互いに連結する場合、前後いずれかの吊り足場26の足場板28上から連結金具18を扱うことになるが、このとき、連結受け部材17が2本の並列する鋼管30の下側になる向きで、そして各パイプクランプ1A,1Bの互いに隣接する軸受け部7が両鋼管30の間に上向きに嵌まり込むように連結金具18をセットし、各鋼管30に被せた押さえ部材3の螺軸係合部13に締結用螺軸4を係合させてナット5を締め込むことになる。この作業の対象になるナット5は、各パイプクランプ1A,1Bの外側に斜め上向きの姿勢にある締結用螺軸4の上端付近に螺嵌しており、当該ナット5を締結用螺軸4に対して斜め下向きに螺進させることになるので、この作業は、連結金具18の上側から容易に行うことが出来る。
【0021】
しかも
図6に基いて説明したように、両鋼管30の周面上端レベルLより上方に突出するのは、実質的は当該鋼管30の上側に被さる押さえ部材3の厚さ分だけであるから、
図11及び
図12に示すように、長さ方向に隣接する前後両吊り足場26の足場板28が存在しない領域、即ち、前記鋼管30や連結金具18が存在する両吊り足場26の端部領域を、この領域の前後に位置する足場板28上に前後両端が載置される中継用補助足場板31によって塞ぐ場合、当該中継用補助足場板31は、その前後両端部間が僅かに高くなるように形成しておくだけで、連結金具18には接触させることなく中継用補助足場板31を敷設することが出来る。
【0022】
尚、連結金具18によって互いに連結される鋼管30を備えた前後両吊り足場26の互いに隣接する端部は、何れか片側の吊り足場26の鋼管30のみを吊下げ用チエン29によって橋梁25の梁材25aに吊り下げれば良い。この吊下げ用チエン29は、前記中継用補助足場板31を上下方向に貫通することになるので、その箇所には、
図11に示すように吊下げ用チエン29が貫通する吊下げ用チエン通し孔32が設けられている。又、図示省略しているが、中継用補助足場板31が吊り足場26に対して水平移動しないように位置決めする係止手段も併用することが出来る。更に、
図11に示すように、吊り足場26が左右横方向に隣接して2列吊り下げられるような場合は、中継用補助足場板31は、2列の吊り足場26の全巾をカバー出来る横長のものを使用することが出来る。
【0023】
図13は、従来の連結金具33を使用した状態を示している。この従来の連結金具33は、既に説明したように2つのパイプクランプ1A,1Bを、受け部材2におけるパイプ受け座6どうしを背中合わせの状態に当接させた状態で、当該パイプ受け座6どうしをボルトナットなどで連結一体化したものである。この従来の連結金具33を使用する場合、操作対象の締結用螺軸4とナット5が鋼管30の上側に位置する向きで、両鋼管30の間に両パイプクランプ1A,1Bの互いに隣接するパイプ受け座6が入り込む状態で使用されるのであるが、この場合、両鋼管30の周面上端レベルLより上方に、締結用螺軸4の先端部や押さえ部材3の先端の螺軸係合部13及びナット5などが大きく突出することになるので、これらを避けるために、中継用補助足場板34は、両端よりも中間領域が大巾に高くなるように形成する必要があった。本発明によれば、この中継用補助足場板34を
図12に示す中継用補助足場板31に代えることが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明の仮設吊り足場の連結金具は、橋梁などの点検保守作業現場に仮設される吊り足場を長さ方向に連結するための連結金具として活用出来る。
【符号の説明】
【0025】
1,1A,1B パイプクランプ
2 受け部材
2a 軸受け用突出部
3 押さえ部材
4 締結用螺軸
4a ナット外れ止め部
5 ナット
6 パイプ受け座
6a 平坦な外側面
7 軸受け部
8 底板部
9 左右両側板部
9a,12a 内側縁
10,16 支軸
11 天板部
12 左右両側板部
13 螺軸係合部
14 切込み凹部
15 ナット受け面
17 連結受け部材
18 連結金具
19a,19b 締結ボルト
20a,20b 支持板部
21 山形状底板部
22 左右両側板部
23 貫通ネジ孔
24 貫通孔
25 橋梁
25a 梁材
26 吊り足場
27 左右両側枠
28 足場板
29 吊下げ用チエン
30,P 鋼管
31,34 中継用補助足場板
32 吊下げ用チエン通し孔
33 従来の連結金具
L 並列する2本の鋼管の周面上端レベル