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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-02
(45)【発行日】2023-08-10
(54)【発明の名称】チョッパ回路
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20230803BHJP
【FI】
H02M3/155 H
H02M3/155 C
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020553258
(86)(22)【出願日】2019-10-16
(86)【国際出願番号】 JP2019040752
(87)【国際公開番号】W WO2020085172
(87)【国際公開日】2020-04-30
【審査請求日】2022-10-14
(31)【優先権主張番号】P 2018199400
(32)【優先日】2018-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】萩原 誠
【審査官】栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/038122(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/021443(WO,A1)
【文献】特開2010-213506(JP,A)
【文献】特開2016-226127(JP,A)
【文献】米国特許第6002603(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の外部接続端子における第1の直流電圧と第2の外部接続端子における第2の直流電圧との間で電圧変換するチョッパ回路であって、
第1の外部接続端子を有する第1のスイッチ部と、
前記第1のスイッチ部とオン時の導通方向が揃うように前記第1のスイッチ部に対して直列に接続され、前記第1のスイッチ部が接続される側とは反対側に第2の外部接続端子を有する第2のスイッチ部と、
前記第1のスイッチ部と前記第2のスイッチ部とを接続する配線から分岐した配線上に設けられる、1個もしくは互いにカスケード接続された複数個の半導体電力変換器と、
前記第1のスイッチ部と前記第2のスイッチ部とを接続する配線から分岐した配線上において、前記半導体電力変換器に対して直列に接続されるインダクタと、
直流成分及び所定周期の交流成分を有する電流を出力するよう、前記半導体電力変換器の電力変換動作を制御する半導体電力変換器用制御部と、
前記第1のスイッチ部及び前記第2のスイッチ部のうちいずれか一方をオンに制御し、他の一方をオフに制御するスイッチ用制御部であって、前記半導体電力変換器用制御部により前記半導体電力変換器が出力する電流の値が所定値以下に制御された時に、前記第1のスイッチ部及び前記第2のスイッチ部についてのオンからオフへの切替え及びオフからオンへの切替えを実行するスイッチ用制御部と、
を備える、チョッパ回路。
【請求項2】
第1の外部接続端子における第1の直流電圧と第2の外部接続端子における第2の直流電圧との間で電圧変換するチョッパ回路であって、
第1の外部接続端子を有する第1のスイッチ部と、
前記第1のスイッチ部とオン時の導通方向が揃うように前記第1のスイッチ部に対して直列に接続され、前記第1のスイッチ部が接続される側とは反対側に第2の外部接続端子を有する第2のスイッチ部と、
前記第1のスイッチ部と前記第2のスイッチ部とを接続する配線から分岐した配線上に設けられる、1個もしくは互いにカスケード接続された複数個の半導体電力変換器と、
前記第1のスイッチ部と前記第2のスイッチ部とを接続する配線から分岐した配線上において、前記半導体電力変換器に対して直列に接続されるインダクタと、
を備え、
前記第1のスイッチ部及び前記第2のスイッチ部を、それぞれ2個ずつ備える、チョッパ回路。
【請求項3】
直流成分及び所定周期の交流成分を有する電流を出力するよう、前記半導体電力変換器の電力変換動作を制御する半導体電力変換器用制御部と、
前記第1のスイッチ部及び前記第2のスイッチ部のうちいずれか一方をオンに制御し、他の一方をオフに制御するスイッチ用制御部であって、前記半導体電力変換器用制御部により前記半導体電力変換器が出力する電流の値が所定値以下に制御された時に、前記第1のスイッチ部及び前記第2のスイッチ部についてのオンからオフへの切替え及びオフからオンへの切替えを実行するスイッチ用制御部と、
をさらに備える、請求項2に記載のチョッパ回路。
【請求項4】
一対の第1の外部接続端子間における第1の直流電圧と一対の第2の外部接続端子間における第2の直流電圧との間で電圧変換するチョッパ回路であって、
オン時の導通方向が揃うように互いに直列接続される第1のスイッチ部、第2のスイッチ部、第3のスイッチ部及び第4のスイッチ部と、
前記第1のスイッチ部と前記第2のスイッチ部との接続点と、前記第3のスイッチ部と前記第4のスイッチ部との接続点と、を結ぶ配線上に設けられる、1個もしくは互いにカスケード接続された複数個の半導体電力変換器と、
前記第1のスイッチ部と前記第2のスイッチ部との接続点と、前記第3のスイッチ部と前記第4のスイッチ部との接続点と、を結ぶ配線上において、前記半導体電力変換器に対して直列に接続されるインダクタと、
直流成分及び所定周期の交流成分を有する電流を出力するよう、前記半導体電力変換器の電力変換動作を制御する半導体電力変換器用制御部と、
前記第1のスイッチ部と前記第3のスイッチ部との組及び前記第2のスイッチ部と前記第4のスイッチ部との組のうちいずれか一方の組をオンに制御し、他の一方の組をオフに制御するスイッチ用制御部であって、前記半導体電力変換器用制御部により前記半導体電力変換器が出力する電流の値が所定値以下に制御された時に、前記第1のスイッチ部と前記第3のスイッチ部との組及び前記第2のスイッチ部と前記第4のスイッチ部との組の各組についてのオンからオフへの切替え及びオフからオンへの切替えを実行するスイッチ用制御部と、
を備え、
前記第1のスイッチ部と前記第2のスイッチ部との接続側とは反対側の端子と、前記第3のスイッチ部と前記第4のスイッチ部との接続側とは反対側の端子と、を前記一対の第1の外部接続端子とし、
前記第2のスイッチ部と前記第3のスイッチ部との接続側の端子と、前記第4のスイッチ部の、前記第3のスイッチ部に対する接続側とは反対側の端子と、を前記一対の第2の外部接続端子とする、チョッパ回路。
【請求項5】
一対の第1の外部接続端子間における第1の直流電圧と一対の第2の外部接続端子間における第2の直流電圧との間で電圧変換するチョッパ回路であって、
オン時の導通方向が揃うように互いに直列接続され、一方がオンのときは他方がオフする第1のスイッチ部及び第2のスイッチ部を有し、前記第1のスイッチ部と前記第2のスイッチ部との接続側とは反対側の両側端子を前記一対の第1の外部接続端子とする第1の主電力変換器と、
前記第1のスイッチ部と前記第2のスイッチ部とを接続する配線から分岐した配線上に設けられる、1個もしくは互いにカスケード接続された複数個の半導体電力変換器と、
前記第1のスイッチ部と前記第2のスイッチ部とを接続する配線から分岐した配線上において、前記半導体電力変換器に対して直列に接続されるインダクタと、
オン時の導通方向が揃うように互いに直列接続され、一方がオンのときは他方がオフする第3のスイッチ部及び第4のスイッチ部を有し、前記第3のスイッチ部と前記第4のスイッチ部との接続側とは反対側の両側端子を前記一対の第2の外部接続端子とする第2の主電力変換器と、
直流成分及び所定周期の交流成分を有する電流を出力するよう、前記半導体電力変換器の電力変換動作を制御する半導体電力変換器用制御部と、
前記第1のスイッチ部と前記第3のスイッチ部との組及び前記第2のスイッチ部と前記第4のスイッチ部との組のうちいずれか一方の組をオンに制御し、他の一方の組をオフに制御するスイッチ用制御部であって、前記半導体電力変換器用制御部により前記半導体電力変換器が出力する電流の値が所定値以下に制御された時に、前記第1のスイッチ部と前記第3のスイッチ部との組及び前記第2のスイッチ部と前記第4のスイッチ部との組の各組についてのオンからオフへの切替え及びオフからオンへの切替えを実行するスイッチ用制御部と、
を備え、
前記第1のスイッチ部と前記第2のスイッチ部とを接続する配線から分岐した前記半導体電力変換器及び前記インダクタが設けられた配線が、前記第3のスイッチ部と前記第4のスイッチ部との接続点に接続される、チョッパ回路。
【請求項6】
前記半導体電力変換は、直列接続された2つの半導体スイッチと前記2つの半導体スイッチに並列接続された直流コンデンサとからなり前記2つの半導体スイッチのうちの一方の半導体スイッチの各端子を出力端とするチョッパセルからなる、請求項1~5のいずれか一項に記載のチョッパ回路。
【請求項7】
各前記半導体スイッチは、
オン時に一方向に電流を通す半導体スイッチング素子と、
該半導体スイッチング素子に逆並列に接続された帰還ダイオードと、
を有する、請求項に記載のチョッパ回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の外部接続端子間における第1の直流電圧と第2の外部接続端子間における第2の直流電圧との間で電圧変換するチョッパ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、直流電気鉄道への電池電力貯蔵システムの適用が進んでいる。例えば、鉄道車両に搭載した大容量リチウムイオン電池を使用することで、架線からの電力供給がゼロの場合においても、1回の充電で25[km]以上の走行距離を実現している。
【0003】
一般に直流電気鉄道の架線電圧とエネルギー蓄積要素の動作電圧は異なるため、双方向チョッパ回路を用いて電圧変換(電力変換)を行う必要がある。図28は、一般的な双方向チョッパ回路の回路図である。双方向チョッパ回路101は、オン時の導通方向が揃うように互いに直列接続され、一方がオンのときは他方がオフする第1のスイッチ部(正側バルブデバイス)121-1及び第2のスイッチ部(負側バルブデバイス)121-2と、第1のスイッチ部121-1及び第2のスイッチ部121-2との接続点に接続されるインダクタ113とを備える。第1のスイッチ部121-1及び第2のスイッチ部121-2は、ぞれぞれ、オン時に一方向に導通する半導体スイッチング素子と該半導体スイッチング素子に逆並列に接続された帰還ダイオードとからなる。電池電力貯蔵システムを有する直流電気鉄道の場合、高圧側直流電圧Vdc1は架線電圧に相当し、低圧側直流電圧Vdc2はエネルギー蓄積要素の動作電圧に相当する。例えば架線の標準電圧がVdc1=1500[V]の場合、Vdc2は600[V]から700[V]程度に設定される。近年、変換器容量が単機で500[kW]の大容量双方向チョッパが開発されている。この場合、インダクタ電流iLの直流成分は500[A]以上となる。
【0004】
また、近年では、補助変換器を用いた双方向チョッパ回路が提案されている。
【0005】
例えば、一対の第1の外部接続端子間における第1の直流電圧と一対の第2の外部接続端子間における第2の直流電圧との間で双方向に電圧変換する双方向チョッパ回路であって、オン時の導通方向が揃うように互いに直列接続され、一方がオンのときは他方がオフする第1および第2のスイッチ部を有し、前記第1のスイッチ部と前記第2のスイッチ部との接続側とは反対側の両側端子を前記一対の第1の外部接続端子とする主電力変換器と、前記第1のスイッチ部と前記第2のスイッチ部とを接続する配線から分岐した配線上に設けられる、1個もしくは互いにカスケード接続された複数個の単相フルブリッジ電力変換器と、前記第1のスイッチ部と前記第2のスイッチ部とを接続する配線から分岐した配線上において、前記単相フルブリッジ電力変換器に対して直列接続されるインダクタと、
を備え、前記第1のスイッチ部と前記第2のスイッチ部とを接続する配線から分岐した前記インダクタおよび前記単相フルブリッジ電力変換器が設けられた配線上の、いずれかの位置に前記一対の第2の外部接続端子が設けられることを特徴とする双方向チョッパ回路が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2017/038122号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
チョッパ回路において、インダクタの小型化及び軽量化は重要な課題であり、直流電気鉄道などの移動体に搭載する場合は特に重要である。インダクタの重量及び体積は蓄積エネルギーに比例するので、インダクタのインダクタンスを低減することで小型化及び軽量化を実現することができる。しかしながら、インダクタンスの低減はインダクタを流れる電流に含まれるリプル電流の増大を招くため、電力品質低下や変換器の不安定動作を引き起こす恐れがある。
【0008】
例えば図28に示す双方向チョッパ回路では、インダクタ113がシステムの高重量化・高体積化を引き起こす主要因となる。また、高圧側及び低圧側それぞれに直流遮断器114及び115を設置する必要があり、高コスト化や信頼性低下の要因となる。また、インダクタ電流iLが直流の場合、高圧側電流idc1にステップ状に変化する方形波電流が流れる。方形波電流が流れると、高圧側における配線インダクタンスの影響で過電圧が生じる恐れがある。また、第1のスイッチ部121-1及び第2のスイッチ部121-2では、デバイス通電時に電流を遮断するいわゆる「ハードスイッチング」を行う。その結果、第1のスイッチ部121-1及び第2のスイッチ部121-2でスイッチング損失が発生し、変換器効率低下を引き起こす。
【0009】
したがって、過電圧が発生せず、小型、軽量で信頼性が高く低損失のチョッパ回路の実現が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の第1の態様によれば、第1の外部接続端子における第1の直流電圧と第2の外部接続端子における第2の直流電圧との間で電圧変換するチョッパ回路は、第1の外部接続端子を有する第1のスイッチ部と、第1のスイッチ部とオン時の導通方向が揃うように第1のスイッチ部に対して直列に接続され、第1のスイッチ部が接続される側とは反対側に第2の外部接続端子を有する第2のスイッチ部と、第1のスイッチ部と第2のスイッチ部とを接続する配線から分岐した配線上に設けられる1個もしくは互いにカスケード接続された複数個の半導体電力変換器と、第1のスイッチ部と第2のスイッチ部とを接続する配線から分岐した配線上において半導体電力変換器に対して直列に接続されるインダクタと、直流成分及び所定周期の交流成分を有する電流を出力するよう、半導体電力変換器の電力変換動作を制御する半導体電力変換器用制御部と、第1のスイッチ部及び第2のスイッチ部のうちいずれか一方をオンに制御し、他の一方をオフに制御するスイッチ用制御部であって、半導体電力変換器用制御部により前記半導体電力変換器が出力する電流の値が所定値以下に制御された時に、第1のスイッチ部及び前記第2のスイッチ部についてのオンからオフへの切替え及びオフからオンへの切替えを実行するスイッチ用制御部と、を備える。
【0011】
ここで、第1の態様の変形例によるチョッパ回路は、第1の外部接続端子における第1の直流電圧と第2の外部接続端子における第2の直流電圧との間で電圧変換するチョッパ回路は、第1の外部接続端子を有する第1のスイッチ部と、第1のスイッチ部とオン時の導通方向が揃うように第1のスイッチ部に対して直列に接続され、第1のスイッチ部が接続される側とは反対側に第2の外部接続端子を有する第2のスイッチ部と、第1のスイッチ部と第2のスイッチ部とを接続する配線から分岐した配線上に設けられる1個もしくは互いにカスケード接続された複数個の半導体電力変換器と、第1のスイッチ部と第2のスイッチ部とを接続する配線から分岐した配線上において半導体電力変換器に対して直列に接続されるインダクタと、を備え、第1のスイッチ部及び第2のスイッチ部を、それぞれ2個ずつ備えてもよい。
【0012】
また、第1の態様の変形例によるチョッパ回路は、直流成分及び所定周期の交流成分を有する電流を出力するよう、半導体電力変換器の電力変換動作を制御する半導体電力変換器用制御部と、第1のスイッチ部及び第2のスイッチ部のうちいずれか一方をオンに制御し、他の一方をオフに制御するスイッチ用制御部であって、半導体電力変換器用制御部により半導体電力変換器が出力する電流の値が所定値以下に制御された時に、第1のスイッチ部及び第2のスイッチ部についてのオンからオフへの切替え及びオフからオンへの切替えを実行するスイッチ用制御部と、をさらに備えてもよい。
【0013】
また、本開示の第2の態様によれば、一対の第1の外部接続端子間における第1の直流電圧と一対の第2の外部接続端子間における第2の直流電圧との間で電圧変換するチョッパ回路は、オン時の導通方向が揃うように互いに直列接続される第1のスイッチ部、第2のスイッチ部、第3のスイッチ部及び第4のスイッチ部と、第1のスイッチ部と第2のスイッチ部との接続点と第3のスイッチ部と第4のスイッチ部との接続点とを結ぶ配線上に設けられる1個もしくは互いにカスケード接続された複数個の半導体電力変換器と、第1のスイッチ部と第2のスイッチ部との接続点と第3のスイッチ部と第4のスイッチ部との接続点とを結ぶ配線上において半導体電力変換器に対して直列に接続されるインダクタと、直流成分及び所定周期の交流成分を有する電流を出力するよう、半導体電力変換器の電力変換動作を制御する半導体電力変換器用制御部と、第1のスイッチ部と第3のスイッチ部との組及び第2のスイッチ部と第4のスイッチ部との組のうちいずれか一方の組をオンに制御し、他の一方の組をオフに制御するスイッチ用制御部であって、半導体電力変換器用制御部により半導体電力変換器が出力する電流の値が所定値以下に制御された時に、第1のスイッチ部と第3のスイッチ部との組及び第2のスイッチ部と第4のスイッチ部との組の各組についてのオンからオフへの切替え及びオフからオンへの切替えを実行するスイッチ用制御部と、を備え、第1のスイッチ部と第2のスイッチ部との接続側とは反対側の端子と、第3のスイッチ部と第4のスイッチ部との接続側とは反対側の端子と、を一対の第1の外部接続端子とし、第2のスイッチ部と第3のスイッチ部との接続側の端子と、第4のスイッチ部の、第3のスイッチ部に対する接続側とは反対側の端子と、を一対の第2の外部接続端子とする。
【0014】
また、本開示の第3の態様によれば、一対の第1の外部接続端子間における第1の直流電圧と一対の第2の外部接続端子間における第2の直流電圧との間で電圧変換するチョッパ回路は、オン時の導通方向が揃うように互いに直列接続され、一方がオンのときは他方がオフする第1のスイッチ部及び第2のスイッチ部を有し、第1のスイッチ部と第2のスイッチ部との接続側とは反対側の両側端子を一対の第1の外部接続端子とする第1の主電力変換器と、第1のスイッチ部と第2のスイッチ部とを接続する配線から分岐した配線上に設けられる1個もしくは互いにカスケード接続された複数個の半導体電力変換器と、第1のスイッチ部と第2のスイッチ部とを接続する配線から分岐した配線上において半導体電力変換器に対して直列に接続されるインダクタと、オン時の導通方向が揃うように互いに直列接続され、一方がオンのときは他方がオフする第3のスイッチ部及び第4のスイッチ部を有し、第3のスイッチ部と第4のスイッチ部との接続側とは反対側の両側端子を一対の第2の外部接続端子とする第2の主電力変換器と、を備え、第1のスイッチ部と第2のスイッチ部とを接続する配線から分岐した半導体電力変換器及びインダクタが設けられた配線が、第3のスイッチ部と第4のスイッチ部との接続点に接続される。
【0015】
ここで、第3の態様によるチョッパ回路は、直流成分及び所定周期の交流成分を有する電流を出力するよう、半導体電力変換器の電力変換動作を制御する半導体電力変換器用制御部と、第1のスイッチ部と第3のスイッチ部との組及び第2のスイッチ部と第4のスイッチ部との組のうちいずれか一方の組をオンに制御し、他の一方の組をオフに制御するスイッチ用制御部であって、半導体電力変換器用制御部により半導体電力変換器が出力する電流の値が所定値以下に制御された時に、第1のスイッチ部と第3のスイッチ部との組及び第2のスイッチ部と第4のスイッチ部との組の各組についてのオンからオフへの切替え及びオフからオンへの切替えを実行するスイッチ用制御部と、をさらに備えてもよい。
【0016】
また、第1の態様、第1の態様の変形例、第2の態様及び第3の態様によるチョッパ回路においては、上記所定値はゼロであってもよい。
【0017】
また、第1の態様、第1の態様の変形例、第2の態様及び第3の態様によるチョッパ回路においては、半導体電力変換回路は、直列接続された2つの半導体スイッチと2つの半導体スイッチに並列接続された直流コンデンサとからなり2つの半導体スイッチのうちの一方の半導体スイッチの各端子を出力端とするチョッパセルからなってもよい。
【0018】
また、第1の態様、第1の態様の変形例、第2の態様及び第3の態様によるチョッパ回路においては、各半導体スイッチは、オン時に一方向に電流を通す半導体スイッチング素子と、この半導体スイッチング素子に逆並列に接続された帰還ダイオードと、を有してもよい。
【発明の効果】
【0019】
本開示の第1の態様、第1の態様の変形例、第2の態様及び第3の態様によれば、過電圧が発生せず、小型、軽量で信頼性が高く低損失のチョッパ回路を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本開示の第1の実施形態によるチョッパ回路を示す回路図である。
図2】本開示の第1~第3の実施形態によるチョッパ回路における半導体電力変換器を説明する回路図である。
図3】本開示の第1~第3の実施形態によるチョッパ回路における半導体電力変換器及びインダクタの配置例を示す回路図である。
図4】本開示の第1の実施形態によるチョッパ回路の第1の変形例を示す回路図である。
図5】本開示の第1の実施形態によるチョッパ回路の第2の変形例を示す回路図である。
図6】本開示の第1の実施形態によるチョッパ回路の理想的な各部波形を示す図であって、(A)はスイッチ用制御部において用いられる三角波と変調波との関係を示し、(B)は第1のスイッチ部の両端に現れる電圧を示し、(C)は第2のスイッチ部の両端に現れる電圧を示し、(D)は補助電力変換器の出力電圧を示し、(E)はインダクタ電流を示し、(F)は第1のスイッチ部及び第2のスイッチ部に流れる電流を示す。
図7】本開示の第1の実施形態によるチョッパ回路を複数並列接続したチョッパ回路システムを示す回路図である。
図8】本開示の第1の実施形態によるチョッパ回路を3台並列接続したチョッパ回路システムにおける正相電流制御系を示すブロック線図である。
図9】本開示の第1の実施形態によるチョッパ回路を3台並列接続したチョッパ回路システムにおける直流コンデンサ電圧制御系内の直流電圧一括制御系を示すブロック線図である。
図10】本開示の第1の実施形態によるチョッパ回路を3台並列接続したチョッパ回路システムにおける直流コンデンサ電圧制御系内の相間バランス制御系を示すブロック線図である。
図11】本開示の第1の実施形態によるチョッパ回路を3台並列接続したチョッパ回路システムにおける直流コンデンサ電圧制御系内の零相電流制御系を示すブロック線図である。
図12】本開示の第1の実施形態によるチョッパ回路を3台並列接続したチョッパ回路システムにおける直流コンデンサ電圧制御系内の個別バランス制御系を示すブロック線図である。
図13】本開示の第1の実施形態によるチョッパ回路を3台並列接続したチョッパ回路システムにおける各半導体電力変換器(チョッパセル)に対する電圧指令値を示すブロック図である。
図14】本開示の第1の実施形態によるチョッパ回路を3台並列接続したチョッパ回路システムのシミュレーションに用いた回路定数を示す図である。シミュレーションには「PSCAD/EMTDC」を使用した。
図15】本開示の第1の実施形態によるチョッパ回路を3台並列接続したチョッパ回路システムにおいて、第1の直流電圧側から第2の直流電圧側に400[kW]の電力伝送時におけるシミュレーション波形を示す図であって、(A)は各ユニットのインダクタ電流を示し、(B)は第1ユニットにおける第1のスイッチ部及び第2のスイッチ部のそれぞれの両端に現れる電圧を示し、(C)は第1ユニットにおける第1のスイッチ部及び第2のスイッチ部のそれぞれに流れる電流を示し、(D)はチョッパ回路システムにおける第1の直流電圧側及び第2の直流電圧側のそれぞれに流れる電流を示し、(E)は半導体電力変換器(チョッパセル)内のコンデンサの直流コンデンサ電圧を示す。
図16】本開示の第1の実施形態によるチョッパ回路を3台並列接続したチョッパ回路システムにおいて、第2の直流電圧側から第1の直流電圧側に400[kW]の電力伝送時におけるシミュレーション波形を示す図であって、(A)は各ユニットのインダクタ電流を示し、(B)は第1ユニットにおける第1のスイッチ部及び第2のスイッチ部のそれぞれの両端に現れる電圧を示し、(C)は第1ユニットにおける第1のスイッチ部及び第2のスイッチ部のそれぞれに流れる電流を示し、(D)はチョッパ回路システムにおける第1の直流電圧側及び第2の直流電圧側のそれぞれに流れる電流を示し、(E)は半導体電力変換器(チョッパセル)内のコンデンサの直流コンデンサ電圧を示す。
図17】本開示の第1の実施形態によるチョッパ回路を3台並列接続したチョッパ回路システムにおいて、400[kW]の電力伝送の向きを5msの時点で第1の直流電圧側と第2の直流電圧側とで反転された場合におけるシミュレーション波形を示す図であって、(A)は各ユニットのインダクタ電流を示し、(B)は第1ユニットにおける第1のスイッチ部及び第2のスイッチ部のそれぞれの両端に現れる電圧を示し、(C)は第1ユニットにおける第1のスイッチ部及び第2のスイッチ部のそれぞれに流れる電流を示し、(D)はチョッパ回路システムにおける第1の直流電圧側及び第2の直流電圧側のそれぞれに流れる電流を示し、(E)は半導体電力変換器(チョッパセル)内のコンデンサの直流コンデンサ電圧を示す。
図18】本開示の第2の実施形態によるチョッパ回路を示す回路図である。
図19】本開示の第2の実施形態によるチョッパ回路の理想的な各部波形を示す図であって、(A)はスイッチ用制御部において用いられる三角波と変調波との関係を示し、(B)は第1のスイッチ部及び第2のスイッチ部の両端に現れる電圧を示し、(C)補助電力変換器の出力電圧を示し、(D)はインダクタ電流を示し、(E)は第1のスイッチ部に流れる電流を示し、(F)は第2のスイッチ部に流れる電流を示す。
図20】本開示の第2の実施形態または第3の実施形態によるチョッパ回路を複数並列接続したチョッパ回路システムを示す回路図である。
図21】本開示の第2の実施形態によるチョッパ回路を3台並列接続したチョッパ回路システムのシミュレーションに用いた回路定数を示す図である。
図22】本開示の第2の実施形態によるチョッパ回路を3台並列接続したチョッパ回路システムにおいて、第1の直流電圧側から第2の直流電圧側に400[kW]の電力伝送時におけるシミュレーション波形を示す図であって、(A)は各ユニットのインダクタ電流を示し、(B)は第1ユニットにおける第1のスイッチ部及び第2のスイッチ部のそれぞれの両端に現れる電圧を示し、(C)は第1ユニットにおける第1のスイッチ部及び第2のスイッチ部のそれぞれに流れる電流を示し、(D)はチョッパ回路システムにおける第1の直流電圧側及び第2の直流電圧側のそれぞれに流れる電流を示し、(E)は半導体電力変換器(チョッパセル)内のコンデンサの直流コンデンサ電圧を示す。
図23】本開示の第2の実施形態によるチョッパ回路を3台並列接続したチョッパ回路システムにおいて、第2の直流電圧側から第1の直流電圧側に400[kW]の電力伝送時におけるシミュレーション波形を示す図であって、(A)は各ユニットのインダクタ電流を示し、(B)は第1ユニットにおける第1のスイッチ部及び第2のスイッチ部のそれぞれの両端に現れる電圧を示し、(C)は第1ユニットにおける第1のスイッチ部及び第2のスイッチ部のそれぞれに流れる電流を示し、(D)はチョッパ回路システムにおける第1の直流電圧側及び第2の直流電圧側のそれぞれに流れる電流を示し、(E)は半導体電力変換器(チョッパセル)内のコンデンサの直流コンデンサ電圧を示す。
図24】本開示の第2の実施形態によるチョッパ回路を3台並列接続したチョッパ回路システムにおいて、400[kW]の電力伝送の向きを5msの時点で第1の直流電圧側と第2の直流電圧側とで反転された場合におけるシミュレーション波形を示す図であって、(A)は各ユニットのインダクタ電流を示し、(B)は第1ユニットにおける第1のスイッチ部及び第2のスイッチ部のそれぞれの両端に現れる電圧を示し、(C)は第1ユニットにおける第1のスイッチ部及び第2のスイッチ部のそれぞれに流れる電流を示し、(D)はチョッパ回路システムにおける第1の直流電圧側及び第2の直流電圧側のそれぞれに流れる電流を示し、(E)は半導体電力変換器(チョッパセル)内のコンデンサの直流コンデンサ電圧を示す。
図25】本開示の第3の実施形態によるチョッパ回路を示す回路図である。
図26】本開示の第3の実施形態によるチョッパ回路を3台並列接続したチョッパ回路システムのシミュレーションに用いた回路定数を示す図である。
図27】本開示の第3の実施形態によるチョッパ回路を3台並列接続したチョッパ回路システムにおいて、第1の直流電圧側から第2の直流電圧側に400[kW]の電力伝送時におけるシミュレーション波形を示す図であって、(A)は各ユニットのインダクタ電流を示し、(B)は第1ユニットにおける第1のスイッチ部及び第2のスイッチ部のそれぞれの両端に現れる電圧を示し、(C)は第1ユニットにおける第3のスイッチ部及び第4のスイッチ部のそれぞれの両端に現れる電圧を示し、(D)は第1ユニットにおける第1のスイッチ部及び第2のスイッチ部のそれぞれに流れる電流を示し、(E)は第1ユニットにおける第3のスイッチ部及び第4のスイッチ部のそれぞれに流れる電流を示し、(F)はチョッパ回路システムにおける第1の直流電圧側及び第2の直流電圧側のそれぞれに流れる電流を示し、(G)は半導体電力変換器(チョッパセル)内のコンデンサの直流コンデンサ電圧を示す。
図28】一般的な双方向チョッパ回路の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下図面を参照して、チョッパ回路について説明する。理解を容易にするために、これらの図面は縮尺を適宜変更している。図面に示される形態は実施するための一つの例であり、図示された実施形態に限定されるものではない。
【0022】
図1は、本開示の第1の実施形態によるチョッパ回路を示す回路図である。図2は、本開示の第1~第3の実施形態によるチョッパ回路における半導体電力変換器を説明する回路図である。
【0023】
本開示の第1の実施形態によるチョッパ回路1は、一対の第1の外部接続端子T1及びG1間における第1の直流電圧vdc1と一対の第2の外部接続端子T2及びG2間における第2の直流電圧vdc2との間で双方向に電圧変換する。第1の外部接続端子T1及びG1と第2の外部接続端子T2及びG2のうち、一方に直流電源が接続され、もう一方に負荷もしくは他の直流電源が接続される。
【0024】
例えば、第1の外部接続端子T1及びG1に直流電源を接続し、第2の外部接続端子T2及びG2に負荷を接続した場合、チョッパ回路1は降圧チョッパとして動作する。この場合、直流電源が出力する電圧が第1の直流電圧vdc1であり、負荷に印加される電圧が第2の直流電圧vdc2である。
【0025】
また例えば、第1の外部接続端子T1及びG1に負荷を接続し、第2の外部接続端子T2及びG2に直流電源を接続した場合、チョッパ回路1は昇圧チョッパとして動作する。この場合、負荷に印加される電圧が第1の直流電圧vdc1であり、直流電源が出力する電圧が第2の直流電圧vdc2である。
【0026】
また例えば、第1の外部接続端子T1及びG1に直流電源を接続し、第2の外部接続端子T2及びG2に他の直流電源を接続してもよい。
【0027】
チョッパ回路1は、第1のスイッチ部11と、第2のスイッチ部12と、半導体電力変換器13と、インダクタ14とを備える。また、チョッパ回路1は、その制御系として、半導体電力変換器用制御部15とスイッチ用制御部16とを備える。
【0028】
第1のスイッチ部11は、単方向の電流遮断が可能な半導体バルブデバイスである。第1のスイッチ部11は、オン時に一方向に導通する半導体スイッチング素子と該半導体スイッチング素子に逆並列に接続された帰還ダイオードとからなる。半導体スイッチング素子の例としては、IGBT、SiC(Silicon Carbide)-MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)、サイリスタ、GTO(Gate Turn-OFF Thyristor:ゲートターンオフサイリスタ)、トランジスタなどがあるが、半導体スイッチング素子の種類自体は本発明を限定するものではなく、その他の半導体素子であってもよい。
【0029】
第1のスイッチ部11は、第1の外部接続端子T1を有する。第1のスイッチ部11と第2のスイッチ部12との接続点をP1で表記する。すなわち、第1のスイッチ部11の、第1の外部接続端子T1が設けられる側とは反対側に、接続点P1が位置する。ここで、第1のスイッチ部11の順方向電圧(すなわち第1の外部接続端子T1と接続点P1との電位差)をvS1uで表す。
【0030】
第2のスイッチ部12は、単方向の電流遮断が可能な半導体バルブデバイスである。第1のスイッチ部11は、オン時に一方向に導通する半導体スイッチング素子と該半導体スイッチング素子に逆並列に接続された帰還ダイオードとからなる。半導体スイッチング素子の例としては、IGBT、SiC(Silicon Carbide)-MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)、サイリスタ、GTO(Gate Turn-OFF Thyristor:ゲートターンオフサイリスタ)、トランジスタなどがあるが、半導体スイッチング素子の種類自体は本発明を限定するものではなく、その他の半導体素子であってもよい。
【0031】
第2のスイッチ部12は、第1のスイッチ部11とオン時の導通方向が揃うように、接続点P1において第1のスイッチ部11に対して直列に接続される。第2のスイッチ部12は、第1のスイッチ部11が接続される側(接続点P1)とは反対側に、第2の外部接続端子T2を有する。ここで、第2のスイッチ部12の順方向電圧(すなわち接続点P1と第1の外部接続端子T2との電位差)をvS2uで表す。
【0032】
本明細書では、第1のスイッチ部11と第2のスイッチ部12とからなる電力変換器の組を、主電力変換器10と称する。後述するように、第1のスイッチ部11及び第2のスイッチ部12のうちいずれか一方をオンに制御されている間は、他の一方はオフに制御される。
【0033】
第1のスイッチ部11と第2のスイッチ部12との接続点P1からから分岐した配線上に、半導体電力変換器13を用いた可変制御電圧源とインダクタ14とが設けられる。
【0034】
半導体電力変換器13は、第1のスイッチ部11と第2のスイッチ部12との接続点P1からから分岐した配線上に、1個単独でもしくは複数個が互いにカスケード接続された状態で設けられる。本明細書では、1個でもしくは複数個からなる半導体電力変換器13を、補助電力変換器19と称する。また、本明細書では、半導体電力変換器13が1個の場合は、後述するインダクタ14が接続される側を「第1の直流側」と称し、複数個の半導体電力変換器13が互いにカスケード接続される場合は、当該半導体電力変換器13とは異なる他の半導体電力変換器13が接続される側を同じく「第1の直流側」と称する。また、「第1の直流側」とは反対側の直流側を、「第2の直流側」と称する。一例として、図1では、複数個(N個、ただしNは2以上の整数)の半導体電力変換器13が第1の直流側にて互いにカスケード接続された場合を示している。以下、半導体電力変換器13のカスケード数をj(ただし、jは1~Nの自然数)で表す。カスケード接続する半導体電力変換器13の個数を適宜調整するだけでチョッパ回路1の高耐圧化を容易に実現できる。
【0035】
半導体電力変換器13は、DCDCコンバータ131とコンデンサ132とを有する双方向チョッパセルとして構成される。すなわち、半導体電力変換器13は、直列接続された2つの半導体スイッチと2つの半導体スイッチに並列接続された直流コンデンサとからなり2つの半導体スイッチのうちの一方の半導体スイッチの各端子を出力端とするチョッパセルからなる。すなわち、DCDCコンバータ131は、互いに直列接続された2つの半導体スイッチング素子Sと、該半導体スイッチング素子Sの各々に逆並列に接続された帰還ダイオードDとからなる。半導体スイッチング素子Sの例としては、IGBT、SiC(Silicon Carbide)-MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)、サイリスタ、GTO(Gate Turn-OFF Thyristor:ゲートターンオフサイリスタ)、トランジスタなどがあるが、半導体スイッチング素子の種類自体は本発明を限定するものではなく、その他の半導体素子であってもよい。コンデンサ132は、半導体電力変換器13の第2の直流側に設けられる。チョッパ回路1を動作させる際にはDCDCコンバータ131を動作させてコンデンサ132を初期充電しておく。ここで、各半導体電力変換器13の直流コンデンサの電圧をvCju、補助電力変換器19の第1の直流側の電圧をvuとする。詳細については後述するが、補助電力変換器19を用いてインダクタ電流iuを制御することで、インダクタ14及び補助電力変換器19は制御電流源として動作する。なお, 図1では複数個の半導体電力変換器13(チョッパセル)をカスケード接続することで補助電力変換器を実現しているが、同様の機能を有する任意の半導体電力変換器を代用することもできる。
【0036】
インダクタ14は、第1のスイッチ部11と第2のスイッチ部12とを接続する配線上にある接続点P1から分岐した配線上において、半導体電力変換器13に対して直列接続される。また、接続点P1と接続点P2との間に設けられるインダクタ14を流れるインダクタ電流をiuとする。
【0037】
したがって、主電力変換器10内の第1のスイッチ部11と第2のスイッチ部12とを接続する配線上にある接続点P1から分岐した同一配線上には、半導体電力変換器13及びインダクタ14が設けられることになる。図1に示す例では、インダクタ14を接続点P1と半導体電力変換器13との間に配置し、第2の外部接続端子T2およびG2を補助電力変換器19の、インダクタ14が接続される側とは反対側の接続点P2(すなわち、複数の半導体電力変換器13の組の、インダクタ14が接続される側とは反対側)に配置しているが、これら半導体電力変換器13及びインダクタ14の配置順は、接続点P1と接続点P2との間の配線上において任意に設計可能である。図3は、本開示の第1~第3の実施形態によるチョッパ回路における半導体電力変換器及びインダクタの配置例を示す回路図である。なお、図3における半導体電力変換器13については、理解を容易にするために、図1及び図2に示す半導体電力変換器13におけるコンデンサC(コンデンサ132)を当該半導体電力変換器13の外側に記載している。また、N個(ただし、Nは自然数)の半導体電力変換器13のそれぞれを、セル1、・・・、セルj、・・・セルNで表す。図3(A)に示す例では、インダクタ14を接続点P1と半導体電力変換器13のセル1との間に配置している。また、図3(B)に示す例では、インダクタ14を半導体電力変換器13のセルNと接続点P2との間に配置している。また、図3(C)に示す例では、インダクタ14を半導体電力変換器13のセルNの、接続点P2とは反対側に配置している。
【0038】
半導体電力変換器用制御部15は、直流成分及び所定周期の交流成分を有する電流を出力するよう、半導体電力変換器13の電力変換動作を制御する。
【0039】
スイッチ用制御部16は、第1のスイッチ部11及び第2のスイッチ部12のうちいずれか一方をオンに制御し、他の一方をオフに制御する。また、スイッチ用制御部16は、半導体電力変換器用制御部15により半導体電力変換器13が出力する電流の値が所定値以下に制御された時に、第1のスイッチ部11及び第2のスイッチ部12についてのオンからオフへの切替え及びオフからオンへの切替えを実行する。ここで、所定値は、半導体電力変換器13の定格電流よりも十分に小さい値である。一例を挙げると、所定値は、半導体電力変換器13の定格電流の例えば0%~10%程度の値であるが、チョッパ回路1の適用環境によっては、半導体電力変換器13の定格電流の10%を超える値となり得る。
【0040】
半導体電力変換器用制御部15及びスイッチ用制御部16は、例えばソフトウェアプログラム形式で構築されてもよく、あるいは各種電子回路とソフトウェアプログラムとの組み合わせで構築されてもよい。例えばこれらをソフトウェアプログラム形式で構築する場合は、演算処理装置をこのソフトウェアプログラムに従って動作させることで、上述の各部の機能を実現することができる。またあるいは、半導体電力変換器用制御部15及びスイッチ用制御部16を、各部の機能を実現するソフトウェアプログラムを書き込んだ半導体集積回路として実現してもよい。なお、半導体電力変換器用制御部15及びスイッチ用制御部16の動作の詳細については後述する。
【0041】
第1の実施形態によるチョッパ回路1は、一対の第1の外部接続端子T1及びG1間における第1の直流電圧vdc1と一対の第2の外部接続端子T2及びG2間における第2の直流電圧vdc2との間で双方向に電圧変換することができる。ただし、図1に示すように主電力変換器10として2個の半導体バルブデバイスすなわち第1のスイッチ部11及び第2のスイッチ部12を有するチョッパ回路1においては、第1の直流電圧vdc1が第2の直流電圧vdc2よりも大きい関係「vdc1>vdc2」を有する必要がある。第1のスイッチ部11及び第2のスイッチ部12のうちいずれか一方をオンに制御されている間は、他の一方はオフに制御される。
【0042】
第1の直流電圧vdc1と第2の直流電圧vdc2との大小関係によらずに第1の直流電圧vdc1と第2の直流電圧vdc2との間で双方向に電圧変換するためには、主電力変換器として、4個の単方向の電流遮断が可能な半導体バルブデバイスを設けるか、2個の双方向の電流遮断が可能な半導体バルブデバイスを設ける必要がある。
【0043】
図4は、本開示の第1の実施形態によるチョッパ回路の第1の変形例を示す回路図である。第1の実施形態によるチョッパ回路の第1の変形例では、主電力変換器10として4個の半導体バルブデバイスすなわち第1のスイッチ部11-1及び11-2並びに第2のスイッチ部12-1及び12-2を有する。第1のスイッチ部11-1及び11-2並びに第2のスイッチ部12-1及び12-2はいずれも、単方向の電流遮断が可能な半導体バルブデバイスであり、オン時に一方向に導通する半導体スイッチング素子と該半導体スイッチング素子に逆並列に接続された帰還ダイオードとからなる。第1のスイッチ部11-1は、第1の外部接続端子T1と接続点P1との間に設けられる。第1のスイッチ部11-2は、第1の外部接続端子におけるグランド端子G1と接続点P2との間に設けられる。第2のスイッチ部12-1は、接続点P1と第2の外部接続端子T2との間に設けられる。第2のスイッチ部12-2は、接続点P2と第2の外部接続端子におけるグランド端子G2との間に設けられる。第2のスイッチ部12-1は、第1のスイッチ部11-1とオン時の導通方向が揃うように、接続点P1において第1のスイッチ部11-1に対して直列に接続される。第2のスイッチ部12-2は、第1のスイッチ部11-2とオン時の導通方向が揃うように、接続点P2において第1のスイッチ部11-2に対して直列に接続される。第1の直流電圧vdc1が第2の直流電圧vdc2よりも大きいという関係「vdc1>vdc2」の下で第1の直流電圧vdc1と第2の直流電圧vdc2との間で双方向に電圧変換するためには、第1のスイッチ部11-2及び第2のスイッチ部12-2を常時オン状態とし、第1のスイッチ部11-1及び第2のスイッチ部12-1について、いずれか一方をオンに制御されている間は、他の一方はオフに制御される。この場合、図4のチョッパ回路1は図1のチョッパ回路と等価となる。一方、第1の直流電圧vdc1が第2の直流電圧vdc2よりも小さいという関係「vdc1<vdc2」の下で第1の直流電圧vdc1と第2の直流電圧vdc2との間で双方向に電圧変換するためには、第1のスイッチ部11-1及び第2のスイッチ部12-1を常時オン状態とし、第1のスイッチ部11-2及び第2のスイッチ部12-2について、いずれか一方をオンに制御されている間は、他の一方はオフに制御される。
【0044】
図5は、本開示の第1の実施形態によるチョッパ回路の第2の変形例を示す回路図である。第1の実施形態によるチョッパ回路の第1の変形例では、主電力変換器10として4個の半導体バルブデバイスすなわち第1のスイッチ部11-1及び11-2並びに第2のスイッチ部12-1及び12-2を有する。第1のスイッチ部11-1及び11-2並びに第2のスイッチ部12-1及び12-2はいずれも、単方向の電流遮断が可能な半導体バルブデバイスであり、オン時に一方向に導通する半導体スイッチング素子と該半導体スイッチング素子に逆並列に接続された帰還ダイオードとからなる。第1のスイッチ部11-1及び第1のスイッチ部11-2は、第1の外部接続端子T1と接続点P1との間に設けられる。第1のスイッチ部11-1は、第1のスイッチ部11-2とオン時の導通方向が逆向きになるように設けられる。第1のスイッチ部11-1と第1のスイッチ部11-2とは入れ替えて設けられてもよい。第2のスイッチ部12-1及び第2のスイッチ部12-2は、接続点P1と第2の外部接続端子T2との間に設けられる。第2のスイッチ部12-1は、第2のスイッチ部12-2とオン時の導通方向が逆向きになるように設けられる。第2のスイッチ部12-1と第2のスイッチ部12-2とは入れ替えて設けられてもよい。第2のスイッチ部12-1は、第1のスイッチ部11-1とオン時の導通方向が揃うように設けられる。第2のスイッチ部12-2は、第1のスイッチ部11-2とオン時の導通方向が揃うように設けられる。第1の直流電圧vdc1が第2の直流電圧vdc2よりも大きいという関係「vdc1>vdc2」の下で第1の直流電圧vdc1と第2の直流電圧vdc2との間で双方向に電圧変換するためには、第1のスイッチ部11-2及び第2のスイッチ部12-2を常時オン状態とし、第1のスイッチ部11-1及び第2のスイッチ部12-1について、いずれか一方をオンに制御されている間は、他の一方はオフに制御される。一方、第1の直流電圧vdc1が第2の直流電圧vdc2よりも小さいという関係「vdc1<vdc2」の下で第1の直流電圧vdc1と第2の直流電圧vdc2との間で双方向に電圧変換するためには、第1のスイッチ部11-1及び第2のスイッチ部12-1を常時オン状態とし、第1のスイッチ部11-2及び第2のスイッチ部12-2について、いずれか一方をオンに制御されている間は、他の一方はオフに制御される。
【0045】
また、第1の直流電圧vdc1と第2の直流電圧vdc2との大小関係によらずに第1の直流電圧vdc1と第2の直流電圧vdc2との間で双方向に電圧変換するために、主電力変換器として、2個の双方向の電流遮断が可能な半導体バルブデバイスを設ける場合は、図1に示すチョッパ回路1において、第1のスイッチ部11及び第2のスイッチ部12を、それぞれ双方向の電流遮断が可能な半導体バルブデバイスにて構成すればよい。
【0046】
また、図1に示すチョッパ回路1における第1のスイッチ部11及び第2のスイッチ部12、図4及び図5に示すチョッパ回路1における第1のスイッチ部11-1及び11-2並びに第2のスイッチ部12-1及び12-2の各半導体バルブデバイスに対して、並列に過電圧抑制用スナバ回路を接続してもよい。
【0047】
続いて、本開示の第1の実施形態によるチョッパ回路1の動作原理について説明する。図4に示す第1の実施形態の第1の変形例によるチョッパ回路1の動作及び図5に示す第1の実施形態の第2の変形例によるチョッパ回路1の動作は、図1に示す第1の実施形態によるチョッパ回路1の動作と同様に考えることができるため、ここでは、図1に示す第1の実施形態によるチョッパ回路1の動作について説明する。図6は、本開示の第1の実施形態によるチョッパ回路の理想的な各部波形を示す図であって、(A)はスイッチ用制御部において用いられる三角波と変調波との関係を示し、(B)は第1のスイッチ部の両端に現れる電圧を示し、(C)は第2のスイッチ部の両端に現れる電圧を示し、(D)は補助電力変換器の出力電圧を示し、(E)はインダクタ電流を示し、(F)は第1のスイッチ部及び第2のスイッチ部に流れる電流を示す。図6(A)において、三角波vtriを実線で示し、変調波dを一点鎖線で示す。また、図6(F)において、第1のスイッチ部に流れる電流iu1を実線で示し、第2のスイッチ部に流れる電流iu2を破線で示す。
【0048】
第1のスイッチ部11及び第2のスイッチ部12のオンオフは、スイッチ用制御部16において、最小値が0で最大値が1の三角波vtriと変調波dとの比較結果に基づき決定する。変調波dの決定方法の詳細については後述するが、第1の直流電圧vdc1と第2の直流電圧vdc2との関係により決定される。スイッチ用制御部16は、第1のスイッチ部11及び第2のスイッチ部12のうちいずれか一方をオンに制御し、他の一方をオフに制御する。例えば、図6(A)に示すように三角波vtriが変調波dより小さい場合、スイッチ用制御部16は、第1のスイッチ部11に対してはオンとなるように制御し、第2のスイッチ部12に対してはオフとなるように制御する。この場合、図6(B)に示すように第1のスイッチ部11の両端に現れる電圧はvS1u=0となり、図6(C)に示すように第2のスイッチ部12の両端に現れる電圧はvS2u=vdc1-vdc2となる。また例えば、図6(A)に示すように三角波vtriが変調波dより大きい場合、スイッチ用制御部16は、第1のスイッチ部11に対してはオフとなるように制御し、第2のスイッチ部12に対してはオンとなるように制御する。この場合、図6(B)に示すように第1のスイッチ部11の両端に現れる電圧はvS1u=vdc1-vdc2となり、図6(C)に示すように第2のスイッチ部12の両端に現れる電圧はvS2u=0となる。
【0049】
半導体電力変換器用制御部15は、インダクタ14に、直流成分及び所定周期の交流成分を有するインダクタ電流iuが流れるよう、半導体電力変換器13(補助電力変換器19)の電力変換動作を制御する。インダクタ電流iuの直流成分をIdc(ただし、Idc>0)、交流成分をIac(ただし、Iac>0)とし、三角波vtriのキャリア周波数をfSMとすると、インダクタ電流iuは式1のように表される。
【0050】
【数1】
【0051】
以下、インダクタ電流iuが直流成分Idcと交流成分Iacを含む理由について説明する。
【0052】
後述する図13に示す通り、補助電力変換器19の出力電圧vuは、フィードフォワード制御として式2に示すように第1のスイッチ部11がオンの場合はvdc1を出力し第2のスイッチ部12がオンの場合はvdc2を出力する電圧項vfuを含む(図6(D))。電圧項vfuは補助電力変換器19の出力電圧vuに含まれる他の電圧項より大きく、したがって、補助電力変換器19の出力電圧vuは電圧項vfuにほぼ等しいとみなすことができる(vu≒vfu)。
【0053】
【数2】
【0054】
式2及び図6(D)より、電圧項vfuは、等価的に直流電圧とキャリア周波数fSMと同周波数の交流電圧とを含む。
【0055】
一方、補助電力変換器19において各半導体電力変換器13内のコンデンサCの直流コンデンサ電圧を一定にするために、補助電力変換器19の電力「vfu×iu」が平均的にゼロであるように補助電力変換器19を制御する必要がある。これを実現するために、半導体電力変換器用制御部15は、交流成分Iacに直流成分Idcが重畳された電流がインダクタ電流iuとしてインダクタ14に流れるよう、半導体電力変換器13(補助電力変換器19)の電力変換動作を制御する。図6(D)及び図6(E)に示すように、電力潮流の向きが第1の直流電圧vdc1側から第2の直流電圧vdc2側に向かう向きである場合、電圧項vfu及びインダクタ電流iuそれぞれに含まれる交流成分は同相であるため、両者は正の有効電力「vfu×iu」を形成する。したがって、電圧項vfu及びインダクタ電流iuそれぞれに含まれる直流成分が負の有効電力を形成するようにすれば、補助電力変換器19の電力「vfu×iu」を平均的にゼロにすることができる。電圧項vfuに含まれる直流成分は図6(D)及び式2より正となるため、インダクタ電流iuに含まれる直流成分の極性は負となる。
【0056】
一方、電力潮流の向きが第2の直流電圧vdc2側から第1の直流電圧vdc1側に向かう向きである場合、インダクタ電流iuに含まれる交流成分の位相は、第1の直流電圧vdc1側から第2の直流電圧vdc2側に向かう電力潮流の場合とは180度変化したものとなる。すなわち、電圧項vfu及びインダクタ電流iuそれぞれに含まれる交流成分は逆相であるため、両者は負の有効電力「vfu×iu」を形成する。したがって、電圧項vfu及びインダクタ電流iuそれぞれに含まれる直流成分が正の有効電力を形成するようにすれば、補助電力変換器19の電力「vfu×iu」を平均的にゼロにすることができる。電圧項vfuに含まれる直流成分は図6(D)及び式2より負となるため、インダクタ電流iuに含まれる直流成分の極性は正となる。よって、電力潮流の向きが第2の直流電圧vdc2側から第1の直流電圧vdc1側に向かう向きである場合は、インダクタ電流iuは式3のように表される。
【0057】
【数3】
【0058】
図1に示すチョッパ回路1において、インダクタ電流iuが負から正に切り替わる瞬間の位相をα(ただし、0<α<π/2)、インダクタ電流iuが正から負に切り替わる瞬間の位相をπ-αとする。一周期(0≦θ≦2π)において、「α≦θ≦π-α」のときは、第1のスイッチ部11がオンであり第2のスイッチ部12がオフであるため、図6(F)に示すように第1のスイッチ部11に流れる電流はiu1=iuとなり、第2のスイッチ部12に流れる電流はiu2=0となる。一方、「0≦θ≦α」及び「π-α≦θ≦2π」の場合は、第1のスイッチ部11がオフであり第2のスイッチ部12がオンであるため、図6(F)に示すように第1のスイッチ部11に流れる電流はiu1=0となり、第2のスイッチ部12に流れる電流はiu2=-iuとなる。また、図6(E)及び式1より、インダクタ電流iuの直流成分Idcは、交流成分Iac及びαを用いて式4のように表すことができる。
【0059】
【数4】
【0060】
なお、第1のスイッチ部11及び第2のスイッチ部12がともにオフとなるデッドタイム期間に関しては、インダクタ電流iuが正の場合(iu>0)は第2のスイッチ部12の帰還ダイオードを介して電流が流れるため、第1のスイッチ部11に流れる電流はiu1=0となり、第2のスイッチ部12に流れる電流はiu2=-iuとなる。一方、インダクタ電流iuが負の場合(iu<0)は第1のスイッチ部11の帰還ダイオードを介して電流が流れるため、第1のスイッチ部11に流れる電流はiu1=iuとなり、第2のスイッチ部12に流れる電流はiu2=0となる。また、式1及び式3より、電力潮流の向きが変化しても、式4は常に成り立つ。
【0061】
一方、第1のスイッチ部11及び第2のスイッチ部12のターンオン時とターンオフ時に着目すると、電圧変化時における第1のスイッチ部11に流れる電流iu1及び第2のスイッチ部12に流れる電流iu2はともにゼロとなる。このことは、理想状態における第1のスイッチ部11及び第2のスイッチ部12はスイッチング損失を発生しないことを意味する。
【0062】
以上がインダクタ電流iuが直流成分Idcと交流成分Iacを含む理由である。
【0063】
続いて、変調波d及び位相αの決定方法について説明する。以下では, 各変換器の損失がゼロの理想状態を仮定する。第1の直流電圧vdc1側の平均電力をPdc1、第2の直流電圧vdc2側の平均電力をPdc2とすると、両者の間では定常的に式5が成立する。
【0064】
【数5】
【0065】
第1の直流電圧vdc1側の平均電力Pdc1及び第2の直流電圧vdc2側の平均電力Pdc2は、第1のスイッチ部11に流れる電流iu1及び第2のスイッチ部12に流れる電流iu2の一周期平均値をそれぞれIu1及びIu2とすると式6及び式7のように表すことができる。
【0066】
【数6】
【0067】
【数7】
【0068】
図6(F)、式1及び式4より、第1のスイッチ部11に流れる電流iu1は式8で表すことができる。
【0069】
【数8】
【0070】
同様に、図6(F)、式1及び式4より、第2のスイッチ部12に流れる電流iu2は式9で表すことができる。
【0071】
【数9】
【0072】
式5~式9より、位相αについて式10が成り立つ。
【0073】
【数10】
【0074】
式10より、位相αは、第1の直流電圧vdc1と第2の直流電圧vdc2とにより決定され、インダクタ電流iuの交流成分Iacには依存しないことがわかる。このことは、位相αは電力伝送量に依存しない値であることを意味する。
【0075】
式10を簡略化するため、「sinα≒α」、「cosα≒1-α2/2」の近似式を適用すると、式10は式11のように変形することができる。
【0076】
【数11】
【0077】
式11は位相αに関する二次方程式であり、位相αについて解くと式12が得られる。
【0078】
【数12】
【0079】
位相に関する条件「0<α<π/2」より、位相αは式13のように表すことができる。
【0080】
【数13】
【0081】
図6(A)において、位相π/2から位相3π/2までの間の三角波vtriの傾きは「1/π」であり、また、位相πのときの三角波vtriの値は「0.5」である。また、位相π-αのときの三角波vtriの値は「d」である。これらの関係から、dは式14のように表すことができる。
【0082】
【数14】
【0083】
以上説明したように、変調波dは式14に基づき決定され、位相αは式13に基づき決定される。スイッチ用制御部16は、三角波vtriが式14に基づいて決定された変調波dより小さい場合、第1のスイッチ部11に対してはオンとなるように制御し、第2のスイッチ部12に対してはオフとなるように制御する。また、スイッチ用制御部16は、三角波vtriが式14に基づいて決定された変調波dより大きい場合、第1のスイッチ部11に対してはオフとなるように制御し、第2のスイッチ部12に対してはオンとなるように制御する。スイッチ用制御部16は、半導体電力変換器用制御部15により半導体電力変換器13が出力する電流がゼロに制御された位相α及び位相π-αの時に、第1のスイッチ部11及び第2のスイッチ部12についてのオンからオフへの切替え及びオフからオンへの切替えを実行する。
【0084】
上述した位相αの決定方法においては、各変換器の損失がゼロの理想状態を仮定した。この理想状態の下では、半導体電力変換器用制御部15により半導体電力変換器13が出力する電流の位相がα及びπ-αの時に、半導体電力変換器13が出力する当該電流はゼロになる。ただし、実際のチョッパ回路1では、チョッパ回路1内の各変換器には損失が存在するので、半導体電力変換器用制御部15により半導体電力変換器13が出力する電流の位相がα及びπ-αの時であっても、半導体電力変換器13が出力する当該電流がゼロにはならず、微小電流が流れる。そこで、スイッチ用制御部16は、半導体電力変換器用制御部15により半導体電力変換器13が出力する電流が所定値以下に制御された位相α及び位相π-αの時に、第1のスイッチ部11及び第2のスイッチ部12についてのオンからオフへの切替え及びオフからオンへの切替えを実行する。ここで、所定値は、半導体電力変換器13の定格電流よりも十分に小さい値である。一例を挙げると、所定値は、半導体電力変換器13の定格電流の例えば0%~10%程度の値であるが、チョッパ回路1の適用環境によっては、半導体電力変換器13の定格電流の10%を超える値となり得る。
【0085】
図1に示したチョッパ回路1を実際に適用する際、直流電流の平滑化や変換器容量の増大を目的として、複数のチョッパ回路1を並列接続したチョッパ回路システム(DCDCコンバータシステム)での適用が想定される。図7は、本開示の第1の実施形態によるチョッパ回路を複数並列接続したチョッパ回路システムを示す回路図である。
【0086】
図7に示すように、チョッパ回路システム1000は、複数のチョッパ回路1が並列接続されて構成される。チョッパ回路1の個数をユニット数M(ただし、Mは自然数)で表し、各チョッパ回路1を、第1ユニット、第2ユニット、・・・、第Mユニットで表す。また、各チョッパ回路1内の補助電力変換器19は等価制御電圧源vuで表している。各ユニット(チョッパ回路1)は、高圧側は共通の直流電源vdc1に対して並列に接続し、低圧側は共通の直流電源vdc2に対して並列に接続する。なお、各ユニットにおける主電力変換器10の三角波初期位相はユニット毎にそれぞれ180/M度ずつ移相させる。また、各インダクタ電流iuの位相も同様に180/M度ずつ移相させる。
【0087】
以下、3つのチョッパ回路1を有するチョッパ回路システム1000(ユニット数M=3)の制御について説明する。なお、ユニット数Mが3以外の場合も、同様に制御系を構築することができ、すなわち以下の説明を適用することができる。
【0088】
ユニット数M=3の場合、チョッパ回路システム1000は、三相電力変換器と類似の動作を行うことから、便宜上、チョッパ回路1の第1ユニットをu相電力変換器、チョッパ回路1の第2ユニットをv相電力変換器、チョッパ回路1の第3ユニットをw相電力変換器と呼称する。ただし、チョッパ回路システム1000のuvw相は、本来の三相電力変換器におけるuvw相とは意味合いが異なる点に留意すべきである。
【0089】
チョッパ回路システム1000の制御系は、インダクタ電流制御系(電力制御系)と直流コンデンサ電圧制御系とから構成される。
【0090】
初めに、チョッパ回路システム1000のインダクタ電流制御系(電力制御系)の構成について説明する。
【0091】
チョッパ回路システム1000のインダクタ電流制御系は、電力変換システムで一般的に適用される座標変換をベースとした電流制御系を適用することができる。各相のインダクタ電流をiu、iv、iwとする。各相のインダクタ電流iu、iv、iwは120度位相が異なる正相電流及び逆相電流と、同相の零相電流から構成される。各相のインダクタ電流iu、iv、iwにdq座標変換を適用することで、d軸電流id及びq軸電流iqを算出することができる。一方、零相電流i0に関しては、式15より算出する。
【0092】
【数15】
【0093】
なお、d軸電流id及びq軸電流iqを算出する際、チョッパ回路1内の第1のスイッチ部11及び第2のスイッチ部12に適用する三角波vtriと同周波数fSMの基準正弦波を使用する点に特長がある。具体的には、一般の電力変換システムでは50[Hz]または60[Hz]の正弦波電流を制御するのに対し、チョッパ回路システム1000ではキャリア周波数fSM(例えば数百[Hz]以上)の正弦波電流を制御する。チョッパ回路システム1000において、d軸電流idは第1の直流電圧vdc1と第2の直流電圧vdc2との間の電力伝送に寄与する電流成分を表し、q軸電流iqは第1の直流電圧vdc1と第2の直流電圧vdc2との間の電力伝送に寄与しない電流成分を表す。すなわち、チョッパ回路システム1000のd軸電流idは一般の電力変換システムにおける有効電流に相当し, チョッパ回路システム1000のq軸電流iqは一般の電力変換システムにおける無効電流に相当する。
【0094】
チョッパ回路システム1000におけるd軸電流id及びq軸電流iqの制御は、一般の電力変換システムで通常に適用される非干渉電流制御を適用することで実現する。図8は、本開示の第1の実施形態によるチョッパ回路を3台並列接続したチョッパ回路システムにおける正相電流制御系を示すブロック線図である。q軸電流iqは第1の直流電圧vdc1と第2の直流電圧vdc2との間の電力伝送に寄与しないq軸電流iqの指令値iq *は常にゼロとする(iq *=0)。一方、q軸電流iqは第1の直流電圧vdc1と第2の直流電圧vdc2との間の電力伝送に寄与するd軸電流idの指令値id *は、第1の直流電圧vdc1側から第2の直流電圧vdc2側への電力潮流指令値p*より決定する。式6及び式8より、第1の直流電圧vdc1側の平均電力は式16のように表される。
【0095】
【数16】
【0096】
ここで、式16における係数3は三相分(3台分)のチョッパ回路1の合計電力を意味する。また、式16では、第1ユニットのチョッパ回路1内の第1のスイッチ部に流れる電流iu1と、第2ユニットのチョッパ回路1内の第1のスイッチ部に流れる電流iv1と、第3ユニットのチョッパ回路1内の第1のスイッチ部に流れる電流iw1とは一周期平均値が等しいと仮定している(Iu1=Iv1=Iw1)。また、式16において、インダクタ電流iu、iv、wの交流成分Iacとd軸電流idとの間には、「id=√(3/2)×Iac」の関係式が成り立つ。よって、電力潮流指令値p*とd軸電流指令値id *との関係は、式17のように表される。
【0097】
【数17】
【0098】
なお、式17では、第1の直流電圧vdc1側の電力よりd軸電流指令値id *を算出したが、第2の直流電圧vdc2側の電力からd軸電流指令値id *を算出することもできる。具体的には、式7及び式9より、電力潮流指令値p*とd軸電流指令値id *との関係は、式18のように表される。
【0099】
【数18】
【0100】
以上が、チョッパ回路システム1000のインダクタ電流制御系(電力制御系)の構成である。
【0101】
続いて、チョッパ回路システム1000の直流コンデンサ電圧制御系の構成について説明する。
【0102】
図1に示したチョッパ回路1内の補助電力変換器19の動作に着目すると、第1のスイッチ部11がオンで第2のスイッチ部12がオフのときは補助電力変換器19は第1の直流電圧vdc1側から電力を吸収し、第1のスイッチ部11がオフで第2のスイッチ部12がオンのときは補助電力変換器19は第2の直流電圧vdc2側へ電力を放出する。定常状態では、式5の関係が成り立つので、補助電力変換器19に流出入する電力の一周期の平均値はゼロとなる。すなわち、補助電力変換器19において定常的な電力の流出入は発生しないため、各半導体電力変換器13(チョッパセル)内のコンデンサにおける直流コンデンサ電圧の直流分は理想的には変動しない。しかし、実際は過渡変動や変換器損失の影響で変動するので、各半導体電力変換器13(チョッパセル)内のコンデンサについて、直流コンデンサ電圧制御を適用する必要がある。
【0103】
チョッパ回路システム1000の直流コンデンサ電圧制御系は、直流電圧一括制御系、相間バランス制御系、零相電流制御系、及び段間バランス制御系から構成される。
【0104】
図9は、本開示の第1の実施形態によるチョッパ回路を3台並列接続したチョッパ回路システムにおける直流コンデンサ電圧制御系内の直流電圧一括制御系を示すブロック線図である。直流電圧一括制御系は、チョッパ回路システム1000内の全での半導体電力変換器13(チョッパセル)に使用する直流コンデンサ電圧の算術平均値vCaveを指令値vC *に追従させるフィードバックループを構成する。具体的には、零相電流i0に含まれる直流成分i0dcを調整することで実現する。vCaveは式19のように表される。
【0105】
【数19】
【0106】
式19において、vCuave、vCvave、vCwaveは各相に使用する直流コンデンサ電圧の算術平均値を表し、それぞれ式20のように表される。
【0107】
【数20】
【0108】
「vC *>vCave」の場合、零相電流i0に含まれる直流成分i0dcの指令値i0dc *は増加するため、各半導体電力変換器13(チョッパセル)に流入する有効電力は増加する。その結果、各半導体電力変換器13内のコンデンサの直流コンデンサ電圧は増加する。一方、「vC *<vCave」の場合、零相電流i0に含まれる直流成分i0dcの指令値i0dc *は減少するため、各半導体電力変換器13(チョッパセル)から有効電力が流出する。その結果、各半導体電力変換器13内のコンデンサの直流コンデンサ電圧は減少する。
【0109】
図10は、本開示の第1の実施形態によるチョッパ回路を3台並列接続したチョッパ回路システムにおける直流コンデンサ電圧制御系内の相間バランス制御系を示すブロック線図である。相関バランス制御系は、零相電流i0に含まれるキャリア周波数成分i0acを利用して実現する。図10において、sinωtは、第1ユニットのチョッパ回路1内のインダクタ電流iuと同相成分を表し、sin(ωt-2π/3)は、第2ユニットのチョッパ回路1内のインダクタ電流ivと同相成分を表し、sin(ωt-4π/3)は第3ユニットのチョッパ回路1内のインダクタ電流iwと同相成分を表す。例えば、「vCave>vCuave」の場合、図10より、零相電流i0に含まれるキャリア周波数成分i0acの指令値i0ac *は第1ユニットのチョッパ回路1内のインダクタ電流iuと同相成分を発生する。この場合、零相電流i0に含まれるキャリア周波数成分i0ac図6における電圧項vfuに含まれる交流成分と正の有効電力を形成することでvCaveは上昇する。他の相(他のユニットのチョッパ回路1)に関しても同様である。
【0110】
図11は、本開示の第1の実施形態によるチョッパ回路を3台並列接続したチョッパ回路システムにおける直流コンデンサ電圧制御系内の零相電流制御系を示すブロック線図である。零相電流制御系は、零相電流i0を指令値「i0dc *+i0ac *」に追従させるフィードバックループを形成し、各相(各ユニット)共通の電圧指令値v0 *を生成する。
【0111】
図12は、本開示の第1の実施形態によるチョッパ回路を3台並列接続したチョッパ回路システムにおける直流コンデンサ電圧制御系内の個別バランス制御系を示すブロック線図である。個別バランス制御系は、各半導体電力変換器13(チョッパセル)の出力電圧とインダクタ電流との間で有効電力を形成することで電圧バランスを実現する。
【0112】
図13は、本開示の第1の実施形態によるチョッパ回路を3台並列接続したチョッパ回路システムにおける各半導体電力変換器(チョッパセル)に対する電圧指令値を示すブロック図である。図13において、vfu *、vfv *、vfw *はフィードフォワード項の電圧指令値を表し、例えばvfu *は式21で与えられる。
【0113】
【数21】
【0114】
ただし、第1のスイッチ部11及び第2のスイッチ部12がともにオフとなるデッドタイム期間は、インダクタ電流iuがゼロより大きい場合(iu>0)は「vfu *=vdc2」とし、インダクタ電流iuがゼロより小さい場合(iu<0)は「vfu *=vdc1」とする。各チョッパセル電圧指令値vju *、vjv *、vjw *(j:1-N)は、直流コンデンサ電圧で規格化された後に、最大値が1で最小値が0のキャリア周波数fSAの三角波と比較される。
【0115】
以上が、チョッパ回路システム1000の直流コンデンサ電圧制御系の構成である。
【0116】
続いて、チョッパ回路システム1000のシミュレーション結果について説明する。
【0117】
図14は、本開示の第1の実施形態によるチョッパ回路を3台並列接続したチョッパ回路システムのシミュレーションに用いた回路定数を示す図である。シミュレーションには「PSCAD/EMTDC」を使用した。チョッパ回路システム1000のユニット数Mは3であり、各ユニットであるチョッパ回路1内に設けられる半導体電力変換器13の数(チョッパセル数)Nは3とした。また、第1の直流電圧vdc1は1.5[kV]、第2の直流電圧vdc2は0.75[kV]とし、各半導体電力変換器13(チョッパセル)内のコンデンサの直流コンデンサ電圧VCは0.6[kV]とした。また、各ユニット内の主電力変換器10のキャリア周波数fSMは450[Hz]とし、補助電力変換器19のキャリア周波数fSAは10[kHz]とした。各チョッパセルには位相シフトPWMを適用しているため、補助電力変換器19の等価キャリア周波数は30[kHz](=NfSA)となる。なお、このシミュレーションは原理の確認が目的であるので、理想状態を想定している。すなわち、制御遅延がゼロのアナログ制御系を仮定し、デッドタイムがゼロの理想スイッチを使用した。
【0118】
図15は、本開示の第1の実施形態によるチョッパ回路を3台並列接続したチョッパ回路システムにおいて、第1の直流電圧側から第2の直流電圧側に400[kW]の電力伝送時におけるシミュレーション波形を示す図であって、(A)は各ユニットのインダクタ電流を示し、(B)は第1ユニットにおける第1のスイッチ部及び第2のスイッチ部のそれぞれの両端に現れる電圧を示し、(C)は第1ユニットにおける第1のスイッチ部及び第2のスイッチ部のそれぞれに流れる電流を示し、(D)はチョッパ回路システムにおける第1の直流電圧側及び第2の直流電圧側のそれぞれに流れる電流を示し、(E)は半導体電力変換器(チョッパセル)内のコンデンサの直流コンデンサ電圧を示す。
【0119】
図15(A)に示すインダクタ電流iu、iv、iwに着目すると、450[Hz]の交流成分に、負の直流電流が重畳していることがわかる。一方、450[Hz]の交流成分は正弦波状となり、高調波電流は少ない。図15(B)に示す第1ユニットにおける第1のスイッチ部11及び第2のスイッチ部12のそれぞれの両端に現れる電圧(半導体バルブデバイスの順方向電圧)vS1u、vS2uに着目すると、第1のスイッチ部11がオン状態となるvS1u=0のときは図15(C)に示すように第1のスイッチ部11に流れる電流はiu1=iu、第2のスイッチ部12に流れる電流はiu2=0となり、第2のスイッチ部12がオン状態となる「vS1u=vdc1-vdc2=750[V]」のときは図15(C)に示すように第1のスイッチ部11に流れる電流はiu1=0、第2のスイッチ部12に流れる電流はiu2=-iuとなる。このシミュレーション結果より、式12で表される変調率dを与えることで、第1のスイッチ部11及び第2のスイッチ部12において、ターンオフ時及び ターンオン時いずれもソフトスイッチング動作(すなわち、流れる電流が微小な所定値以下(例えばゼロ)のタイミングでのスイッチング動作)が実現できていることがわかる。よって、第1のスイッチ部11及び第2のスイッチ部12においてスイッチング損失は発生しない。
【0120】
また、図15(D)に示すチョッパ回路システム1000における第1の直流電圧vdc1側に流れる電流idc1及び第2の直流電圧vdc2側に流れる電流idc2に着目すると、第1のユニットのチョッパ回路1、第2のユニットのチョッパ回路1及び第3のユニットのチョッパ回路1の各電流が足し合わさることで、チョッパ回路1単体時の直流電流と比較して、より直流電流に近づいていることがわかる。また、従来のチョッパ回路で発生していたステップ状の電流変化は、チョッパ回路システム1000では発生していないこともわかる。したがって、ステップ状電流に起因する過電圧は、チョッパ回路システム1000では発生しない。
【0121】
また、図15(E)に示す半導体電力変換器13(チョッパセル)内のコンデンサの直流コンデンサ電圧vC1u、vC1v、vC1wに関しては、直流分と交流分を含み、このうち直流分は指令値である600[V]に良好に追従していることがわかる。また交流分に関しては、450[Hz]の交流成分が存在するが、その大きさは直流分と比較し十分に小さいことがわかる。
【0122】
図16は、本開示の第1の実施形態によるチョッパ回路を3台並列接続したチョッパ回路システムにおいて、第2の直流電圧側から第1の直流電圧側に400[kW]の電力伝送時におけるシミュレーション波形を示す図であって、(A)は各ユニットのインダクタ電流を示し、(B)は第1ユニットにおける第1のスイッチ部及び第2のスイッチ部のそれぞれの両端に現れる電圧を示し、(C)は第1ユニットにおける第1のスイッチ部及び第2のスイッチ部のそれぞれに流れる電流を示し、(D)はチョッパ回路システムにおける第1の直流電圧側及び第2の直流電圧側のそれぞれに流れる電流を示し、(E)は半導体電力変換器(チョッパセル)内のコンデンサの直流コンデンサ電圧を示す。すなわち、図16は、上述の図15のシミュレーションとは逆向き(第2の直流電圧側から第1の直流電圧側)に電力伝送を行ったシミュレーション結果を示している。
【0123】
図16(A)に示すインダクタ電流iu、iv、iwに着目すると、450[Hz]の交流成分に、正の直流電流が重畳していることがわかる。また、図15と比較して電力伝送の向きが変わった場合であっても、式11で表される位相αは変化していないことがわかる。つまり、第1のスイッチ部11及び第2のスイッチ部12において、ターンオフ時及び ターンオン時いずれもソフトスイッチング動作(すなわち、流れる電流が微小な所定値以下(例えばゼロ)のタイミングでのスイッチング動作)が実現できていることがわかる。他のシミュレーション波形については、図15と同様である。
【0124】
図17は、本開示の第1の実施形態によるチョッパ回路を3台並列接続したチョッパ回路システムにおいて、400[kW]の電力伝送の向きを5msの時点で第1の直流電圧側と第2の直流電圧側とで反転された場合におけるシミュレーション波形を示す図であって、(A)は各ユニットのインダクタ電流を示し、(B)は第1ユニットにおける第1のスイッチ部及び第2のスイッチ部のそれぞれの両端に現れる電圧を示し、(C)は第1ユニットにおける第1のスイッチ部及び第2のスイッチ部のそれぞれに流れる電流を示し、(D)はチョッパ回路システムにおける第1の直流電圧側及び第2の直流電圧側のそれぞれに流れる電流を示し、(E)は半導体電力変換器(チョッパセル)内のコンデンサの直流コンデンサ電圧を示す。
【0125】
図17に示すように、電力伝送の向きを5ms時点で高速に変化させた場合も、チョッパ回路システム1000は、過電圧及び過電流を生じることなく良好に動作することがわかる。このことは、補助電力変換器19が高速な電流制御機能を有していることを示している。
【0126】
以上が本開示の第1の実施形態によるチョッパ回路の説明である。続いて、本開示の第2の実施形態によるチョッパ回路について説明する。
【0127】
図18は、本開示の第2の実施形態によるチョッパ回路を示す回路図である。
【0128】
本開示の第2の実施形態によるチョッパ回路2は、一対の第1の外部接続端子T1及びG1間における第1の直流電圧vdc1と一対の第2の外部接続端子T2及びG2間における第2の直流電圧vdc2との間で双方向に電圧変換する。第1の外部接続端子T1及びG1と第2の外部接続端子T2及びG2のうち、一方に直流電源が接続され、もう一方に負荷もしくは他の直流電源が接続される。
【0129】
例えば、第1の外部接続端子T1及びG1に直流電源を接続し、第2の外部接続端子T2及びG2に負荷を接続した場合、チョッパ回路2は降圧チョッパとして動作する。この場合、直流電源が出力する電圧が第1の直流電圧vdc1であり、負荷に印加される電圧が第2の直流電圧vdc2である。
【0130】
また例えば、第1の外部接続端子T1及びG1に負荷を接続し、第2の外部接続端子T2及びG2に直流電源を接続した場合、チョッパ回路2は昇圧チョッパとして動作する。この場合、負荷に印加される電圧が第1の直流電圧vdc1であり、直流電源が出力する電圧が第2の直流電圧vdc2である。
【0131】
また例えば、第1の外部接続端子T1及びG1に直流電源を接続し、第2の外部接続端子T2及びG2に他の直流電源を接続してもよい。
【0132】
チョッパ回路2は、第1のスイッチ部21と、第2のスイッチ部22と、第3のスイッチ部23と、第4のスイッチ部24と、半導体電力変換器25と、インダクタ26とを備える。また、チョッパ回路2は、その制御系として、半導体電力変換器用制御部27とスイッチ用制御部28とを備える。
【0133】
第1のスイッチ部21、第2のスイッチ部22、第3のスイッチ部23、及び第4のスイッチ部24は、単方向の電流遮断が可能な半導体バルブデバイスである。第1のスイッチ部21、第2のスイッチ部22、第3のスイッチ部23、及び第4のスイッチ部24は、オン時に一方向に導通する半導体スイッチング素子と該半導体スイッチング素子に逆並列に接続された帰還ダイオードとからなる。半導体スイッチング素子の例としては、IGBT、SiC(Silicon Carbide)-MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)、サイリスタ、GTO(Gate Turn-OFF Thyristor:ゲートターンオフサイリスタ)、トランジスタなどがあるが、半導体スイッチング素子の種類自体は本発明を限定するものではなく、その他の半導体素子であってもよい。
【0134】
また、第1のスイッチ部21、第2のスイッチ部22、第3のスイッチ部23、及び第4のスイッチ部24の各半導体バルブデバイスに対して、並列に過電圧抑制用スナバ回路を接続してもよい。
【0135】
第1のスイッチ部21と、第2のスイッチ部22と、第3のスイッチ部23と、第4のスイッチ部24とは、オン時の導通方向が揃うように互いに直列接続される。第1のスイッチ部21と第2のスイッチ部22との接続点をP3、第2のスイッチ部22と第3のスイッチ部23との接続点をP4、第3のスイッチ部23と第4のスイッチ部24との接続点をP5で表記する。また、第4のスイッチ部24の、第3のスイッチ部23が接続される側とは反対側の接続点をP6で表記する。
【0136】
第1のスイッチ部21と第2のスイッチ部22との接続点P3とは反対側の端子を、第1の外部接続端子のうちの正極側端子T1とする。また、第3のスイッチ部23と第4のスイッチ部24との接続点P5とは反対側の端子を、第1の外部接続端子のうちのグランド端子G1とする。正極側端子T1とグランド端子G1とで一対の第1の外部接続端子が構成される。
【0137】
第2のスイッチ部22と第3のスイッチ部23との接続点P4から延びる配線上に、第2の外部接続端子のうちの正極側端子T2が設けられる。第4のスイッチ部24の、第3のスイッチ部23が接続される側とは反対側の接続点P6から延びる配線上に、第2の外部接続端子のうちのグランド端子G2が設けられる。正極側端子T2とグランド端子G2とで一対の第2の外部接続端子が構成される。
【0138】
ここで、第1のスイッチ部21の順方向電圧(すなわち第1の外部接続端子の正極側端子T1と接続点P3との電位差)をvS1uで表す。また、第2のスイッチ部22の順方向電圧(すなわち接続点P3と接続点P4との電位差)をvS2uで表す。また、第3のスイッチ部23の順方向電圧(すなわち接続点P4と接続点P5との電位差)をvS3uで表す。また、第4のスイッチ部24の順方向電圧(すなわち接続点P5と接続点P6との電位差)をvS4uで表す。
【0139】
また、第1の外部接続端子の正極側端子T1と接続点P3との間を流れる電流をiu1で表し、接続点P4と第2の外部接続端子の正極側端子T2との間を流れる電流をiu2で表す。
【0140】
本明細書では、第1のスイッチ部21と、第2のスイッチ部22と、第3のスイッチ部23と、第4のスイッチ部24とからなる電力変換器の組を、主電力変換器20と称する。後述するように、第1のスイッチ部21と第3のスイッチ部23との組及び第2のスイッチ部22と第4のスイッチ部24との組のうちいずれか一方の組をオンに制御されている間は、他の一方の組はオフに制御される。
【0141】
第1のスイッチ部21と第2のスイッチ部22との接続点P3と、第3のスイッチ部23と第4のスイッチ部24との接続点P5と、を結ぶ配線上に、半導体電力変換器25を用いた可変制御電圧源とインダクタ26とが設けられる。
【0142】
半導体電力変換器25は、接続点P3と接続点P5とを結ぶ配線上に、1個単独でもしくは複数個が互いにカスケード接続された状態で設けられる。本明細書では、1個でもしくは複数個からなる半導体電力変換器25を、補助電力変換器29と称する。また、本明細書では、半導体電力変換器25が1個の場合は、後述するインダクタ26が接続される側を「第1の直流側」と称し、複数個の半導体電力変換器25が互いにカスケード接続される場合は、当該半導体電力変換器25とは異なる他の半導体電力変換器25が接続される側を同じく「第1の直流側」と称する。また、「第1の直流側」とは反対側の直流側を、「第2の直流側」と称する。一例として、図18では、複数個(N個、ただしNは2以上の整数)の半導体電力変換器25が第1の直流側にて互いにカスケード接続された場合を示している。以下、半導体電力変換器25のカスケード数をj(ただし、jは1~Nの自然数)で表す。カスケード接続する半導体電力変換器25の個数を適宜調整するだけでチョッパ回路2の高耐圧化を容易に実現できる。
【0143】
半導体電力変換器25は、図2に示すように、DCDCコンバータ131とコンデンサ132とを有する双方向チョッパセルとして構成される。すなわち、半導体電力変換器25は、直列接続された2つの半導体スイッチと2つの半導体スイッチに並列接続された直流コンデンサとからなり2つの半導体スイッチのうちの一方の半導体スイッチの各端子を出力端とするチョッパセルからなる。DCDCコンバータ131及びコンデンサ132は、図2を参照して説明したとおりである。チョッパ回路2を動作させる際にはDCDCコンバータ131を動作させてコンデンサ132を初期充電しておく。ここで、各半導体電力変換器25の直流コンデンサの電圧をvCju、補助電力変換器29の第1の直流側の電圧をvuとする。詳細については後述するが、補助電力変換器29を用いてインダクタ電流iuを制御することで、インダクタ26及び補助電力変換器29は制御電流源として動作する。なお、図18では複数個の半導体電力変換器25(チョッパセル)をカスケード接続することで補助電力変換器を実現しているが、同様の機能を有する任意の半導体電力変換器を代用することもできる。
【0144】
インダクタ26は、第1のスイッチ部21と第2のスイッチ部22との接続点P3と、第3のスイッチ部23と第4のスイッチ部24との接続点P5と、を結ぶ配線上において、半導体電力変換器25に対して直列に接続される。また、インダクタ26を流れるインダクタ電流をiuとする。
【0145】
したがって、主電力変換器20内の第1のスイッチ部21と第2のスイッチ部22とを接続する配線上にある接続点P3から分岐した同一配線上には、半導体電力変換器25及びインダクタ26が設けられることになる。図18に示す例では、インダクタ26を接続点P3と半導体電力変換器25との間に配置し、第2の外部接続端子T2およびG2を補助電力変換器29の、インダクタ26が接続される側とは反対側の接続点P6(すなわち、複数の半導体電力変換器25の組の、インダクタ26が接続される側とは反対側)に配置しているが、これら半導体電力変換器25及びインダクタ26の配置順は、上述の第1の実施形態と同様、接続点P3と接続点P5との間の半導体電力変換器25が設けられる配線上において、図3に示したように任意に設計可能である。
【0146】
半導体電力変換器用制御部27は、直流成分及び所定周期の交流成分を有する電流を出力するよう、半導体電力変換器25の電力変換動作を制御する。
【0147】
スイッチ用制御部28は、第1のスイッチ部21と第3のスイッチ部23との組、及び第2のスイッチ部22と第4のスイッチ部24との組、のうちいずれか一方の組をオンに制御し、他の一方の組をオフに制御する。また、スイッチ用制御部28は、半導体電力変換器用制御部27により半導体電力変換器25が出力する電流の値が所定値以下に制御された時に、第1のスイッチ部21と第3のスイッチ部23との組、及び第2のスイッチ部22と第4のスイッチ部24との組、の各組についてのオンからオフへの切替え及びオフからオンへの切替えを実行する。ここで、所定値は、半導体電力変換器25の定格電流よりも十分に小さい値である。一例を挙げると、所定値は、半導体電力変換器25の定格電流の例えば0%~10%程度の値であるが、チョッパ回路2の適用環境によっては、半導体電力変換器25の定格電流の10%を超える値となり得る。
【0148】
半導体電力変換器用制御部27及びスイッチ用制御部28は、例えばソフトウェアプログラム形式で構築されてもよく、あるいは各種電子回路とソフトウェアプログラムとの組み合わせで構築されてもよい。例えばこれらをソフトウェアプログラム形式で構築する場合は、演算処理装置をこのソフトウェアプログラムに従って動作させることで、上述の各部の機能を実現することができる。またあるいは、半導体電力変換器用制御部27及びスイッチ用制御部28を、各部の機能を実現するソフトウェアプログラムを書き込んだ半導体集積回路として実現してもよい。
【0149】
続いて、本開示の第2の実施形態によるチョッパ回路2の動作原理について説明する。半導体電力変換器用制御部27及びスイッチ用制御部28の動作原理は、第1の実施形態における半導体電力変換器用制御部15及びスイッチ用制御部16の動作原理に類似している。
【0150】
第2の実施形態によるチョッパ回路2は、一対の第1の外部接続端子T1及びG1間における第1の直流電圧vdc1と一対の第2の外部接続端子T2及びG2間における第2の直流電圧vdc2との間で双方向に電圧変換することができる。ただし、第2の実施形態によるチョッパ回路2においては、第1の直流電圧vdc1が第2の直流電圧vdc2よりも大きい関係「vdc1>vdc2」を有する必要がある。
【0151】
図19は、本開示の第2の実施形態によるチョッパ回路の理想的な各部波形を示す図であって、(A)はスイッチ用制御部において用いられる三角波と変調波との関係を示し、(B)は第1のスイッチ部及び第2のスイッチ部の両端に現れる電圧を示し、(C)補助電力変換器の出力電圧を示し、(D)はインダクタ電流を示し、(E)は第1のスイッチ部に流れる電流を示し、(F)は第2のスイッチ部に流れる電流を示す。図19(A)において、三角波vtriを実線で示し、変調波dを一点鎖線で示す。
【0152】
第2の実施形態によるチョッパ回路2の動作は、第2の直流電圧vdc2が、第1の直流電圧vdc1の2分の1より小さい場合(vdc2<0.5vdc1)と、第1の直流電圧vdc1の2分の1より大きい場合(vdc2>0.5vdc1)とで異なるが、動作原理は同様に考えることができる。以下では、第2の直流電圧vdc2が、第1の直流電圧vdc1の2分の1より小さい場合(vdc2<0.5vdc1)について説明する。
【0153】
第1のスイッチ部21及び第2のスイッチ部22のオンオフは、スイッチ用制御部28において、最小値が0で最大値が1の三角波vtriと変調波dとの比較結果に基づき決定する。変調波dの決定方法の詳細については後述するが、第1の直流電圧vdc1と第2の直流電圧vdc2との関係により決定される。スイッチ用制御部28は、第1のスイッチ部21と第3のスイッチ部23との組、及び第2のスイッチ部22と第4のスイッチ部24との組、のうちいずれか一方の組をオンに制御し、他の一方の組をオフに制御する。例えば、図19(A)に示すように三角波vtriが変調波dより小さい場合、スイッチ用制御部28は、第1のスイッチ部21と第3のスイッチ部23との組に対してはオンとなるように制御し、第2のスイッチ部22と第4のスイッチ部24との組に対してはオフとなるように制御する。この場合、図19(B)に示すように第1のスイッチ部21の両端に現れる電圧はvS1u=0となり、第2のスイッチ部22の両端に現れる電圧はvS2u=vdc1-vdc2となる。また例えば、図19(A)に示すように三角波vtriが変調波dより大きい場合、スイッチ用制御部28は、第1のスイッチ部21と第3のスイッチ部23との組に対してはオフとなるように制御し、第2のスイッチ部22と第4のスイッチ部24との組に対してはオンとなるように制御する。この場合、図19(B)に示すように第1のスイッチ部21の両端に現れる電圧はvS1u=vdc1-vdc2となり、第2のスイッチ部22の両端に現れる電圧はvS2u=0となる。
【0154】
第2の実施形態によるチョッパ回路2の各部波形は、第1の外部接続端子の正極側端子T1と接続点P3との間を流れる電流iu1で表し、接続点P4と第2の外部接続端子の正極側端子T2との間を流れる電流iu2を除き、第1の実施形態によるチョッパ回路1の各部波形と基本的には同一となる。第1の実施形態によるチョッパ回路1では、第1のスイッチ部11がオン時に第1のスイッチ部11に流れる電流はiu1=iuとなり、第2のスイッチ部12に流れる電流はiu2=0となる第2のスイッチ部12がオン時に第1のスイッチ部11に流れる電流はiu1=0となり、第2のスイッチ部12に流れる電流はiu2=-iuとなる。これに対し、第2の実施形態によるチョッパ回路2では、第1のスイッチ部21と第3のスイッチ部23との組がオン時には第1の外部接続端子の正極側端子T1と接続点P3との間を流れる電流iu1及び接続点P4と第2の外部接続端子の正極側端子T2との間を流れる電流iu2はともにiuとなり(iu1=iu2=iu)、第2のスイッチ部22と第4のスイッチ部24との組がオン時には、第1の外部接続端子の正極側端子T1と接続点P3との間を流れる電流はiu1=0となり接続点P4と第2の外部接続端子の正極側端子T2との間を流れる電流はiu2=-iuとなる。
【0155】
式5~式10を参考にして、第2の実施形態によるチョッパ回路2の位相αに関する関係式を導出すると、式22のようになる。
【0156】
【数22】
【0157】
式22を簡略化するため、「sinα≒α」、「cosα≒1-α2/2」の近似式を適用すると、式22は式23のように変形することができる。
【0158】
【数23】
【0159】
式23は位相αに関する二次方程式であり、位相αについて解くと式24が得られる。
【0160】
【数24】
【0161】
位相に関する条件「0<α<π/2」より、位相αは式25のように表すことができる。
【0162】
【数25】
【0163】
図19(A)において、位相π/2から位相3π/2までの間の三角波vtriの傾きは「1/π」であり、また、位相πのときの三角波vtriの値は「0.5」である。また、位相π-αのときの三角波vtriの値は「d」である。これらの関係から、dは式26のように表すことができる。
【0164】
【数26】
【0165】
以上説明したように、変調波dは式26に基づき決定され、位相αは式25に基づき決定される。スイッチ用制御部28は、三角波vtriが式26に基づいて決定された変調波dより小さい場合、第1のスイッチ部21と第3のスイッチ部23との組に対してはオンとなるように制御し、第2のスイッチ部22と第4のスイッチ部24との組に対してはオフとなるように制御する。また、スイッチ用制御部28は、三角波vtriが式26に基づいて決定された変調波dより大きい場合、第1のスイッチ部21と第3のスイッチ部23との組に対してはオフとなるように制御し、第2のスイッチ部22と第4のスイッチ部24との組に対してはオンとなるように制御する。スイッチ用制御部28は、半導体電力変換器用制御部27により半導体電力変換器25が出力する電流がゼロに制御された位相α及び位相π-αの時に、第1のスイッチ部21と第3のスイッチ部23との組及び第2のスイッチ部22と第4のスイッチ部24との組についてのオンからオフへの切替え及びオフからオンへの切替えを実行する。
【0166】
上述した位相αの決定方法においては、各変換器の損失がゼロの理想状態を仮定した。この理想状態の下では、半導体電力変換器用制御部27により半導体電力変換器25が出力する電流の位相がα及びπ-αの時に、半導体電力変換器25が出力する当該電流はゼロになる。ただし、実際のチョッパ回路2では、チョッパ回路2内の各変換器には損失が存在するので、半導体電力変換器用制御部27により半導体電力変換器25が出力する電流の位相がα及びπ-αの時であっても、半導体電力変換器25が出力する当該電流がゼロにはならず、微小電流が流れる。そこで、スイッチ用制御部28は、半導体電力変換器用制御部27により半導体電力変換器25が出力する電流が所定値以下に制御された位相α及び位相π-αの時に、第1のスイッチ部21と第3のスイッチ部23との組及び第2のスイッチ部22と第4のスイッチ部24との組についてのオンからオフへの切替え及びオフからオンへの切替えを実行する。ここで、所定値は、半導体電力変換器25の定格電流よりも十分に小さい値である。一例を挙げると、所定値は、半導体電力変換器25の定格電流の例えば0%~10%程度の値であるが、チョッパ回路2の適用環境によっては、半導体電力変換器25の定格電流の10%を超える値となり得る。
【0167】
続いて、3つのチョッパ回路2を有するチョッパ回路システム1000(ユニット数M=3)のシミュレーション結果について説明する。
【0168】
図20は、本開示の第2の実施形態または第3の実施形態によるチョッパ回路を複数並列接続したチョッパ回路システムを示す回路図である。図20に示すように、チョッパ回路システム1000は、複数のチョッパ回路2が並列接続されて構成される。チョッパ回路2の個数をユニット数M(ただし、Mは自然数)で表し、各チョッパ回路2を、第1ユニット、第2ユニット、・・・、第Mユニットで表す。各ユニット(チョッパ回路1)は、高圧側は共通の直流電源vdc1に対して並列に接続し、低圧側は共通の直流電源vdc2に対して並列に接続する。なお、各ユニットにおける主電力変換器20の三角波初期位相はユニット毎にそれぞれ180/M度ずつ移相させる。また、各インダクタ電流iuの位相も同様に180/M度ずつ移相させる。
【0169】
図21は、本開示の第2の実施形態によるチョッパ回路を3台並列接続したチョッパ回路システムのシミュレーションに用いた回路定数を示す図である。シミュレーションには「PSCAD/EMTDC」を使用した。チョッパ回路システム1000のユニット数Mは3であり、各ユニットであるチョッパ回路2内に設けられる半導体電力変換器25の数(チョッパセル数)Nは3とした。また、第1の直流電圧vdc1は1.5[kV]、第2の直流電圧vdc2は0.6[kV]とし、各半導体電力変換器25(チョッパセル)内のコンデンサの直流コンデンサ電圧VCは0.45[kV]とした。また、各ユニット内の主電力変換器10のキャリア周波数fSMは450[Hz]とし、補助電力変換器29のキャリア周波数fSAは10[kHz]とした。各チョッパセルには位相シフトPWMを適用しているため、補助電力変換器29の等価キャリア周波数は30[kHz](=NfSA)となる。なお、このシミュレーションは原理の確認が目的であるので、理想状態を想定している。すなわち、制御遅延がゼロのアナログ制御系を仮定し、デッドタイムがゼロの理想スイッチを使用した。
【0170】
図22は、本開示の第2の実施形態によるチョッパ回路を3台並列接続したチョッパ回路システムにおいて、第1の直流電圧側から第2の直流電圧側に400[kW]の電力伝送時におけるシミュレーション波形を示す図であって、(A)は各ユニットのインダクタ電流を示し、(B)は第1ユニットにおける第1のスイッチ部及び第2のスイッチ部のそれぞれの両端に現れる電圧を示し、(C)は第1ユニットにおける第1のスイッチ部及び第2のスイッチ部のそれぞれに流れる電流を示し、(D)はチョッパ回路システムにおける第1の直流電圧側及び第2の直流電圧側のそれぞれに流れる電流を示し、(E)は半導体電力変換器(チョッパセル)内のコンデンサの直流コンデンサ電圧を示す。
【0171】
図22(A)に示すインダクタ電流iu、iv、iwに着目すると、450[Hz]の交流成分に、負の直流電流が重畳していることがわかる。一方、450[Hz]の交流成分は正弦波状となり、高調波電流は少ない。図22(B)に示す第1ユニットにおける第1のスイッチ部21及び第2のスイッチ部22のそれぞれの両端に現れる電圧(半導体バルブデバイスの順方向電圧)vS1u、vS2uに着目すると、第1のスイッチ部21と第3のスイッチ部23との組がオン状態となるvS1u=vS3u=0のときは図22(C)に示すように第1のスイッチ部21に流れる電流iu1及び第2のスイッチ部22に流れる電流iu2はともにiuとなり(iu1=iu2=iu)、第2のスイッチ部22と第4のスイッチ部24との組がオン状態となる「vS1u=vdc1-vdc2=900[V]」のときは図22(C)に示すように第1のスイッチ部21に流れる電流iu1=0、第2のスイッチ部22に流れる電流iu2=-iuとなる。このシミュレーション結果より、式26で表される変調率dを与えることで、第1のスイッチ部21、第2のスイッチ部22、第3のスイッチ部23及び第4のスイッチ部24において、ターンオフ時及び ターンオン時いずれもソフトスイッチング動作(すなわち、流れる電流が微小な所定値以下(例えばゼロ)のタイミングでのスイッチング動作)が実現できていることがわかる。よって、第1のスイッチ部21、第2のスイッチ部22、第3のスイッチ部23及び第4のスイッチ部24においてスイッチング損失は発生しない。
【0172】
また、図22(D)に示すチョッパ回路システム1000における第1の直流電圧vdc1側に流れる電流idc1及び第2の直流電圧vdc2側に流れる電流idc2に着目すると、第1のユニットのチョッパ回路2、第2のユニットのチョッパ回路2及び第3のユニットのチョッパ回路2の各電流が足し合わさることで、チョッパ回路2単体時の直流電流と比較して、より直流電流に近づいていることがわかる。また、従来のチョッパ回路で発生していたステップ状の電流変化は、チョッパ回路システム1000では発生していないこともわかる。したがって、ステップ状電流に起因する過電圧は、チョッパ回路システム1000では発生しない。
【0173】
また、図22(E)に示す半導体電力変換器25(チョッパセル)内のコンデンサの直流コンデンサ電圧vC1u、vC1v、vC1wに関しては、直流分と交流分を含み、このうち直流分は指令値である450[V]に良好に追従していることがわかる。また交流分に関しては、450[Hz]の交流成分が存在するが、その大きさは直流分と比較し十分に小さいことがわかる。
【0174】
図23は、本開示の第2の実施形態によるチョッパ回路を3台並列接続したチョッパ回路システムにおいて、第2の直流電圧側から第1の直流電圧側に400[kW]の電力伝送時におけるシミュレーション波形を示す図であって、(A)は各ユニットのインダクタ電流を示し、(B)は第1ユニットにおける第1のスイッチ部及び第2のスイッチ部のそれぞれの両端に現れる電圧を示し、(C)は第1ユニットにおける第1のスイッチ部及び第2のスイッチ部のそれぞれに流れる電流を示し、(D)はチョッパ回路システムにおける第1の直流電圧側及び第2の直流電圧側のそれぞれに流れる電流を示し、(E)は半導体電力変換器(チョッパセル)内のコンデンサの直流コンデンサ電圧を示す。すなわち、図23は、上述の図22のシミュレーションとは逆向き(第2の直流電圧側から第1の直流電圧側)に電力伝送を行ったシミュレーション結果を示している。
【0175】
図23(A)に示すインダクタ電流iu、iv、iwに着目すると、450[Hz]の交流成分に、正の直流電流が重畳していることがわかる。また、図22と比較して電力伝送の向きが変わった場合であっても、式25で表される位相αは変化していないことがわかる。つまり、第1のスイッチ部21、第2のスイッチ部22、第3のスイッチ部23及び第4のスイッチ部24において、ターンオフ時及び ターンオン時いずれもソフトスイッチング動作(すなわち、流れる電流が微小な所定値以下(例えばゼロ)のタイミングでのスイッチング動作)が実現できていることがわかる。他のシミュレーション波形については、図22と同様である。
【0176】
図24は、本開示の第2の実施形態によるチョッパ回路を3台並列接続したチョッパ回路システムにおいて、400[kW]の電力伝送の向きを5msの時点で第1の直流電圧側と第2の直流電圧側とで反転された場合におけるシミュレーション波形を示す図であって、(A)は各ユニットのインダクタ電流を示し、(B)は第1ユニットにおける第1のスイッチ部及び第2のスイッチ部のそれぞれの両端に現れる電圧を示し、(C)は第1ユニットにおける第1のスイッチ部及び第2のスイッチ部のそれぞれに流れる電流を示し、(D)はチョッパ回路システムにおける第1の直流電圧側及び第2の直流電圧側のそれぞれに流れる電流を示し、(E)は半導体電力変換器(チョッパセル)内のコンデンサの直流コンデンサ電圧を示す。
【0177】
図24に示すように、電力伝送の向きを5ms時点で高速に変化させた場合も、チョッパ回路システム1000は、過電圧及び過電流を生じることなく良好に動作することがわかる。このことは、補助電力変換器29が高速な電流制御機能を有していることを示している。
【0178】
以上が本開示の第2の実施形態によるチョッパ回路の説明である。続いて、本開示の第3の実施形態によるチョッパ回路について説明する。
【0179】
図25は、本開示の第3の実施形態によるチョッパ回路を示す回路図である。
【0180】
本開示の第3の実施形態によるチョッパ回路3は、一対の第1の外部接続端子T1及びG1間における第1の直流電圧vdc1と一対の第2の外部接続端子T2及びG2間における第2の直流電圧vdc2との間で双方向に電圧変換する。第1の外部接続端子T1及びG1と第2の外部接続端子T2及びG2のうち、一方に直流電源が接続され、もう一方に負荷もしくは他の直流電源が接続される。
【0181】
例えば、第1の外部接続端子T1及びG1に直流電源を接続し、第2の外部接続端子T2及びG2に負荷を接続した場合、チョッパ回路3は降圧チョッパまたは昇圧チョッパとして動作する。この場合、直流電源が出力する電圧が第1の直流電圧vdc1であり、負荷に印加される電圧が第2の直流電圧vdc2である。
【0182】
また例えば、第1の外部接続端子T1及びG1に負荷を接続し、第2の外部接続端子T2及びG2に直流電源を接続した場合、チョッパ回路3は降圧チョッパまたは昇圧チョッパとして動作する。この場合、負荷に印加される電圧が第1の直流電圧vdc1であり、直流電源が出力する電圧が第2の直流電圧vdc2である。
【0183】
また例えば、第1の外部接続端子T1及びG1に直流電源を接続し、第2の外部接続端子T2及びG2に他の直流電源を接続してもよい。
【0184】
チョッパ回路3は、第1のスイッチ部31及び第2のスイッチ部32を有する第1の主電力変換器30と、半導体電力変換器33と、インダクタ34と、第3のスイッチ部36及び第4のスイッチ部37を有する第2の主電力変換器35とを備える。また、チョッパ回路3は、その制御系として、半導体電力変換器用制御部38とスイッチ用制御部39とを備える。
【0185】
第1のスイッチ部31、第2のスイッチ部32、第3のスイッチ部36、及び第4のスイッチ部37は、単方向の電流遮断が可能な半導体バルブデバイスである。第1のスイッチ部31、第2のスイッチ部32、第3のスイッチ部36、及び第4のスイッチ部37は、オン時に一方向に導通する半導体スイッチング素子と該半導体スイッチング素子に逆並列に接続された帰還ダイオードとからなる。半導体スイッチング素子の例としては、IGBT、SiC(Silicon Carbide)-MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)、サイリスタ、GTO(Gate Turn-OFF Thyristor:ゲートターンオフサイリスタ)、トランジスタなどがあるが、半導体スイッチング素子の種類自体は本発明を限定するものではなく、その他の半導体素子であってもよい。
【0186】
また、第1のスイッチ部31、第2のスイッチ部32、第3のスイッチ部36、及び第4のスイッチ部37の各半導体バルブデバイスに対して、並列に過電圧抑制用スナバ回路を接続してもよい。
【0187】
第1の主電力変換器30を構成する第1のスイッチ部31及び第2のスイッチ部32とは、オン時の導通方向が揃うように互いに直列接続される。第1のスイッチ部31と第2のスイッチ部32との接続点をP7で表記する。また、第2のスイッチ部32の、第1のスイッチ部31が接続される側とは反対側の接続点をP8で表記する。
【0188】
第2の主電力変換器35を構成する第3のスイッチ部36及び第4のスイッチ部37とは、オン時の導通方向が揃うように互いに直列接続される。第3のスイッチ部36と第4のスイッチ部37との接続点をP9で表記する。また、第3のスイッチ部36の、第4のスイッチ部37が接続される側とは反対側の接続点をP10で表記する。
【0189】
第1のスイッチ部31の、第1のスイッチ部31と第2のスイッチ部32との接続点P7とは反対側の端子を、第1の外部接続端子のうちの正極側端子T1とする。また、第2のスイッチ部32の、第1のスイッチ部31と第2のスイッチ部32との接続点P7とは反対側の端子を、第1の外部接続端子のうちのグランド端子G1とする。正極側端子T1とグランド端子G1とで一対の第1の外部接続端子が構成される。すなわち、第1のスイッチ部31と第2のスイッチ部32との接続点P7とは反対側の両極端子を、一対の第1の外部接続端子とする。
【0190】
第4のスイッチ部37の、第3のスイッチ部36と第4のスイッチ部37との接続点P9とは反対側の端子を、第2の外部接続端子のうちの負極側端子T2とする。また、第3のスイッチ部36の、第3のスイッチ部36と第4のスイッチ部37との接続点P9とは反対側の端子を、第2の外部接続端子のうちのグランド端子G2とする。負極側端子T2とグランド端子G2とで一対の第2の外部接続端子が構成される。すなわち、第3のスイッチ部36と第4のスイッチ部37との接続点P9とは反対側の両極端子を、一対の第2の外部接続端子とする。
【0191】
第1の外部接続端子のうちのグランド端子G1と接続点P8と接続点P10と第2の外部接続端子のうちのグランド端子G2とは、同一配線上に設けられる。
【0192】
ここで、第1のスイッチ部31の順方向電圧(すなわち第1の外部接続端子の正極側端子T1と接続点P7との電位差)をvS1uで表す。また、第2のスイッチ部32の順方向電圧(すなわち接続点P7と接続点P8との電位差)をvS2uで表す。また、第3のスイッチ部36の順方向電圧(すなわち接続点P9と接続点P10との電位差)をvS3uで表す。また、第4のスイッチ部37の順方向電圧(すなわち第1の外部接続端子の正極側端子T2と接続点P9との電位差)をvS4uで表す。
【0193】
また、第1のスイッチ部31を流れる電流をiu1で表し、第2のスイッチ部32を流れる電流をiu2で表し、第3のスイッチ部36を流れる電流をiu3で表し、第4のスイッチ部37を流れる電流をiu4で表す。
【0194】
第1のスイッチ部31と第3のスイッチ部36との組及び第2のスイッチ部32と第4のスイッチ部37との組のうちいずれか一方の組をオンに制御されている間は、他の一方の組はオフに制御される。
【0195】
第1のスイッチ部31と第2のスイッチ部32との接続点P7と、第3のスイッチ部36と第4のスイッチ部37との接続点P9と、結ぶ配線上に、半導体電力変換器33を用いた可変制御電圧源とインダクタ34とが設けられる。
【0196】
半導体電力変換器33は、接続点P7と接続点P9とを結ぶ配線上に、1個単独でもしくは複数個が互いにカスケード接続された状態で設けられる。本明細書では、1個でもしくは複数個からなる半導体電力変換器33を、補助電力変換器40と称する。また、本明細書では、半導体電力変換器33が1個の場合は、後述するインダクタ34が接続される側を「第1の直流側」と称し、複数個の半導体電力変換器33が互いにカスケード接続される場合は、当該半導体電力変換器33とは異なる他の半導体電力変換器33が接続される側を同じく「第1の直流側」と称する。また、「第1の直流側」とは反対側の直流側を、「第2の直流側」と称する。一例として、図25では、複数個(N個、ただしNは2以上の整数)の半導体電力変換器33が第1の直流側にて互いにカスケード接続された場合を示している。以下、半導体電力変換器33のカスケード数をj(ただし、jは1~Nの自然数)で表す。カスケード接続する半導体電力変換器33の個数を適宜調整するだけでチョッパ回路3の高耐圧化を容易に実現できる。
【0197】
半導体電力変換器33は、図2に示すように、DCDCコンバータ131とコンデンサ132とを有する双方向チョッパセルとして構成される。すなわち、半導体電力変換器33は、直列接続された2つの半導体スイッチと2つの半導体スイッチに並列接続された直流コンデンサとからなり2つの半導体スイッチのうちの一方の半導体スイッチの各端子を出力端とするチョッパセルからなる。DCDCコンバータ131及びコンデンサ132は、図2を参照して説明したとおりである。チョッパ回路3を動作させる際にはDCDCコンバータ131を動作させてコンデンサ132を初期充電しておく。ここで、各半導体電力変換器33の直流コンデンサの電圧をvCju、補助電力変換器40の第1の直流側の電圧をvuとする。詳細については後述するが、補助電力変換器40を用いてインダクタ電流iuを制御することで、インダクタ34及び補助電力変換器40は制御電流源として動作する。なお、図25では複数個の半導体電力変換器33(チョッパセル)をカスケード接続することで補助電力変換器を実現しているが、同様の機能を有する任意の半導体電力変換器を代用することもできる。
【0198】
インダクタ34は、第1のスイッチ部31と第2のスイッチ部32との接続点P7と、第3のスイッチ部36と第4のスイッチ部37との接続点P9と、結ぶ配線上において、半導体電力変換器33に対して直列に接続される。インダクタ34の両端に印加される電圧をvuとする。また、インダクタ34を流れるインダクタ電流をiuとする。
【0199】
したがって、第1のスイッチ部31と第2のスイッチ部32とを接続する配線から分岐した配線上には、半導体電力変換器33及びインダクタ34が設けられることになる。図25に示す例では、インダクタ34を接続点P7と半導体電力変換器33との間に配置しているが、これら半導体電力変換器33及びインダクタ34の配置順は、上述の第1の実施形態及び第2の実施形態と同様、接続点P7と接続点P9との間の半導体電力変換器33が設けられる配線上において、図3に示したように任意に設計可能である。
【0200】
半導体電力変換器用制御部38は、直流成分及び所定周期の交流成分を有する電流を出力するよう、半導体電力変換器33の電力変換動作を制御する。
【0201】
スイッチ用制御部39は、第1のスイッチ部31と第3のスイッチ部36との組、及び第2のスイッチ部32と第4のスイッチ部37との組、のうちいずれか一方の組をオンに制御し、他の一方の組をオフに制御する。また、スイッチ用制御部39は、半導体電力変換器用制御部38により半導体電力変換器33が出力する電流の値が所定値以下に制御された時に、第1のスイッチ部31と第3のスイッチ部36との組、及び第2のスイッチ部32と第4のスイッチ部37との組、の各組についてのオンからオフへの切替え及びオフからオンへの切替えを実行する。ここで、所定値は、半導体電力変換器33の定格電流よりも十分に小さい値である。一例を挙げると、所定値は、半導体電力変換器33の定格電流の例えば0%~10%程度の値であるが、チョッパ回路3の適用環境によっては、半導体電力変換器33の定格電流の10%を超える値となり得る。
【0202】
半導体電力変換器用制御部38及びスイッチ用制御部39は、例えばソフトウェアプログラム形式で構築されてもよく、あるいは各種電子回路とソフトウェアプログラムとの組み合わせで構築されてもよい。例えばこれらをソフトウェアプログラム形式で構築する場合は、演算処理装置をこのソフトウェアプログラムに従って動作させることで、上述の各部の機能を実現することができる。またあるいは、半導体電力変換器用制御部38及びスイッチ用制御部39を、各部の機能を実現するソフトウェアプログラムを書き込んだ半導体集積回路として実現してもよい。
【0203】
続いて、本開示の第3の実施形態によるチョッパ回路3の動作原理について説明する。
【0204】
半導体電力変換器用制御部38及びスイッチ用制御部39の動作原理は、第1の実施形態における半導体電力変換器用制御部15及びスイッチ用制御部16の動作原理と同様である。すなわち、変調波dは式14に基づき決定され、位相αは式13に基づき決定される。スイッチ用制御部39は、三角波vtriが式14に基づいて決定された変調波dより小さい場合、第1のスイッチ部31と第3のスイッチ部36との組に対してはオンとなるように制御し、第2のスイッチ部32と第4のスイッチ部37との組に対してはオフとなるように制御する。また、スイッチ用制御部39は、三角波vtriが式14に基づいて決定された変調波dより大きい場合、第1のスイッチ部31と第3のスイッチ部36との組に対してはオフとなるように制御し、第2のスイッチ部32と第4のスイッチ部37との組に対してはオンとなるように制御する。スイッチ用制御部39は、半導体電力変換器用制御部38により半導体電力変換器33が出力する電流がゼロに制御された位相α及び位相π-αの時に、第1のスイッチ部31と第3のスイッチ部36との組、及び第2のスイッチ部32と第4のスイッチ部37との組、の各組についてのオンからオフへの切替え及びオフからオンへの切替えを実行する。
【0205】
上述した位相αの決定方法においては、各変換器の損失がゼロの理想状態を仮定した。この理想状態の下では、半導体電力変換器用制御部38により半導体電力変換器33が出力する電流の位相がα及びπ-αの時に、半導体電力変換器33が出力する当該電流はゼロになる。ただし、実際のチョッパ回路3では、チョッパ回路3内の各変換器には損失が存在するので、半導体電力変換器用制御部38により半導体電力変換器33が出力する電流の位相がα及びπ-αの時であっても、半導体電力変換器33が出力する当該電流がゼロにはならず、微小電流が流れる。そこで、スイッチ用制御部39は、半導体電力変換器用制御部38により半導体電力変換器33が出力する電流が所定値以下に制御された位相α及び位相π-αの時に、第1のスイッチ部31と第3のスイッチ部36との組、及び第2のスイッチ部32と第4のスイッチ部37との組、の各組についてのオンからオフへの切替え及びオフからオンへの切替えを実行する。ここで、所定値は、半導体電力変換器33の定格電流よりも十分に小さい値である。一例を挙げると、所定値は、半導体電力変換器33の定格電流の例えば0%~10%程度の値であるが、チョッパ回路3の適用環境によっては、半導体電力変換器33の定格電流の10%を超える値となり得る。
【0206】
第3の実施形態によるチョッパ回路3は、一対の第1の外部接続端子T1及びG1間における第1の直流電圧vdc1と一対の第2の外部接続端子T2及びG2間における第2の直流電圧vdc2との間で双方向に電圧変換することができる。ただし、第3の実施形態によるチョッパ回路3においては、第1の直流電圧vdc1と第2の直流電圧vdc2との大小関係によらずに第1の直流電圧vdc1と第2の直流電圧vdc2との間で双方向に電圧変換することができる。
【0207】
続いて、3つのチョッパ回路3を有するチョッパ回路システム1000(ユニット数M=3)のシミュレーション結果について説明する。
【0208】
図20に示すように、チョッパ回路システム1000は、複数のチョッパ回路3が並列接続されて構成される。チョッパ回路3の個数をユニット数M(ただし、Mは自然数)で表し、各チョッパ回路3を、第1ユニット、第2ユニット、・・・、第Mユニットで表す。各ユニット(チョッパ回路1)は、第1の直流電圧側は共通の直流電源vdc1に対して並列に接続し、第2の直流電圧側は共通の直流電源vdc2に対して並列に接続する。なお、各ユニットにおける第1の主電力変換器30及び第2の主電力変換器35の三角波初期位相はユニット毎にそれぞれ180/M度ずつ移相させる。また、各インダクタ電流iuの位相も同様に180/M度ずつ移相させる。
【0209】
図26は、本開示の第3の実施形態によるチョッパ回路を3台並列接続したチョッパ回路システムのシミュレーションに用いた回路定数を示す図である。シミュレーションには「PSCAD/EMTDC」を使用した。チョッパ回路システム1000のユニット数Mは3であり、各ユニットであるチョッパ回路3内に設けられる半導体電力変換器33の数(チョッパセル数)Nは3とした。また、第1の直流電圧vdc1は1.5[kV]、第2の直流電圧vdc2は0.75[kV]とし、各半導体電力変換器33(チョッパセル)内のコンデンサの直流コンデンサ電圧VCは0.6[kV]とした。また、各ユニット内の主電力変換器10のキャリア周波数fSMは450[Hz]とし、補助電力変換器40のキャリア周波数fSAは10[kHz]とした。各チョッパセルには位相シフトPWMを適用しているため、補助電力変換器40の等価キャリア周波数は30[kHz](=NfSA)となる。なお、このシミュレーションは原理の確認が目的であるので、理想状態を想定している。すなわち、制御遅延がゼロのアナログ制御系を仮定し、デッドタイムがゼロの理想スイッチを使用した。
【0210】
図27は、本開示の第3の実施形態によるチョッパ回路を3台並列接続したチョッパ回路システムにおいて、第1の直流電圧側から第2の直流電圧側に400[kW]の電力伝送時におけるシミュレーション波形を示す図であって、(A)は各ユニットのインダクタ電流を示し、(B)は第1ユニットにおける第1のスイッチ部及び第2のスイッチ部のそれぞれの両端に現れる電圧を示し、(C)は第1ユニットにおける第3のスイッチ部及び第4のスイッチ部のそれぞれの両端に現れる電圧を示し、(D)は第1ユニットにおける第1のスイッチ部及び第2のスイッチ部のそれぞれに流れる電流を示し、(E)は第1ユニットにおける第3のスイッチ部及び第4のスイッチ部のそれぞれに流れる電流を示し、(F)はチョッパ回路システムにおける第1の直流電圧側及び第2の直流電圧側のそれぞれに流れる電流を示し、(G)は半導体電力変換器(チョッパセル)内のコンデンサの直流コンデンサ電圧を示す。
【0211】
図27(A)に示すインダクタ電流iu、iv、iwに着目すると、450[Hz]の交流成分に、負の直流電流が重畳していることがわかる。一方、450[Hz]の交流成分は正弦波状となり、高調波電流は少ない。図27(B)及び図27(C)に示す第1ユニットにおける第1のスイッチ部31、第2のスイッチ部32、第3のスイッチ部36、及び第4のスイッチ部37のそれぞれの両端に現れる電圧(半導体バルブデバイスの順方向電圧)vS1u、vS2u、vS3u、及びvS4uに着目すると、第1のスイッチ部31と第3のスイッチ部36との組がオン状態となるvS1u=vS3u=0のときは図27(D)及び図27(E)に示すように第1のスイッチ部31に流れる電流iu1及び第3のスイッチ部36に流れる電流iu3は「iu1=-iu3=iu」となり、図27(B)及び図27(C)に示すように第2のスイッチ部32の両端に現れる電圧vS2u及び第4のスイッチ部37の両端に現れる電圧vS4uは「vS2u=vdc1=1.5[kV]」、「vS4u=vdc2=0.75[kV]」となる。また、第2のスイッチ部32と第4のスイッチ部37との組がオン状態となる「vS2u=vS4u=0[V]」のときは図27(D)及び図27(E)に示すように第2のスイッチ部32に流れる電流iu2及び第4のスイッチ部37に流れる電流iu4は「-iu2=iu4=iu」となり、図27(B)及び図27(C)に示すように第1のスイッチ部31の両端に現れる電圧vS1u及び第3のスイッチ部36の両端に現れる電圧vS3uは「vS1u=vdc1=1.5[kV]」、「vS3u=vdc2=0.75[kV]」となる。このシミュレーション結果より、式14で表される変調率dを与えることで、第1のスイッチ部31、第2のスイッチ部32、第3のスイッチ部36及び第4のスイッチ部37において、ターンオフ時及び ターンオン時いずれもソフトスイッチング動作(すなわち、流れる電流が微小な所定値以下(例えばゼロ)のタイミングでのスイッチング動作)が実現できていることがわかる。よって、第1のスイッチ部31、第2のスイッチ部32、第3のスイッチ部36及び第4のスイッチ部37においてスイッチング損失は発生しない。
【0212】
また、図27(F)に示すチョッパ回路システム1000における第1の直流電圧vdc1側に流れる電流idc1及び第2の直流電圧vdc2側に流れる電流idc2に着目すると、第1のユニットのチョッパ回路3、第2のユニットのチョッパ回路3及び第3のユニットのチョッパ回路3の各電流が足し合わさることで、チョッパ回路3単体時の直流電流と比較して、より直流電流に近づいていることがわかる。また、従来のチョッパ回路で発生していたステップ状の電流変化は、チョッパ回路システム1000では発生していないこともわかる。したがって、ステップ状電流に起因する過電圧は、チョッパ回路システム1000では発生しない。
【0213】
また、図27(G)に示す半導体電力変換器33(チョッパセル)内のコンデンサの直流コンデンサ電圧vC1u、vC1v、vC1wに関しては、直流分と交流分を含み、このうち直流分は指令値である600[V]に良好に追従していることがわかる。また交流分に関しては、450[Hz]の交流成分が存在するが、その大きさは直流分と比較し十分に小さいことがわかる。
【符号の説明】
【0214】
1 チョッパ回路
2 チョッパ回路
3 チョッパ回路
10 主電力変換器
11、11-1、11-2 第1のスイッチ部
12、12-1、12-2 第2のスイッチ部
13 半導体電力変換器
14 インダクタ
15 半導体電力変換器用制御部
16 スイッチ用制御部
19 補助電力変換器
20 主電力変換器
21 第1のスイッチ部
22 第2のスイッチ部
23 第3のスイッチ部
24 第4のスイッチ部
25 半導体電力変換器
26 インダクタ
27 半導体電力変換器用制御部
28 スイッチ用制御部
29 補助電力変換器
30 第1の主電力変換器
31 第1のスイッチ部
32 第2のスイッチ部
33 半導体電力変換器
34 インダクタ
35 第2の主電力変換器
36 第3のスイッチ部
37 第4のスイッチ部
38 半導体電力変換器用制御部
39 スイッチ用制御部
40 補助電力変換器
101 双方向チョッパ回路
113 インダクタ
114 直流遮断器
115 直流遮断器
131 DCDCコンバータ
132 コンデンサ
1000 チョッパ回路システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28