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  • 特許-プリント配線板 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-02
(45)【発行日】2023-08-10
(54)【発明の名称】プリント配線板
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/02 20060101AFI20230803BHJP
   G01N 19/04 20060101ALI20230803BHJP
   H05K 3/00 20060101ALI20230803BHJP
【FI】
H05K1/02 C
G01N19/04 Z
H05K3/00 V
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019134843
(22)【出願日】2019-07-22
(65)【公開番号】P2021019131
(43)【公開日】2021-02-15
【審査請求日】2022-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】593215380
【氏名又は名称】株式会社伸光製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100123869
【弁理士】
【氏名又は名称】押田 良隆
(72)【発明者】
【氏名】鶴川 公治
(72)【発明者】
【氏名】唐澤 翔太
【審査官】ゆずりは 広行
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-186535(JP,A)
【文献】特開平11-054916(JP,A)
【文献】特開昭62-216292(JP,A)
【文献】特開2005-072458(JP,A)
【文献】特開2001-111238(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/02
G01N 19/04
H05K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビティまたはキャビティとなる部位を有するキャビティ層を備えたプリント配線板における前記キャビティ層に、略矩形形状の検査クーポン部を備え、
前記検査クーポン部が、強度測定用のクーポンであり、平面視で略矩形形状形態の領域内に半島状部の突出した領域を備えることを特徴とするプリント配線板。
【請求項2】
前記検査クーポン部が、四角形で、1辺の長さが、0.8~1.0mmであることを特徴とする請求項に記載のプリント配線板。
【請求項3】
前記検査クーポン部が、直列に複数個が並んだ形態であることを特徴とする請求項またはに記載のプリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層した開口部を設けた基板の接着強度の測定が可能なプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型薄型化および高機能化に伴い、半導体素子実装後の実装回路基板の高さを低減することのできるキャビティ構造を有する多層の回路基板に関心が集まってきている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ボトム用の基板に接着層を介してキャビティとしての開口部を設けた基板を積層するプリント配線板が記載されている。しかしながら、このようなボトム用の基板にキャビティとしての開口部を設けた基板を積層したプリント配線板は、積層した開口部を設けた基板の接着強度の測定が必要であり、積層したプリント配線板の特定の層の接着強度の測定は、製品を破壊して測定する方法となっていた。
【0004】
そこで、従来、セラミック多層板やプリント配線板などの積層物全体の強度管理に適しているとされる製品外側に検査用ピースを予め用意しておく方法(例えば、特許文献2参照)が提示されているが、この方法は、キャビティ部など特定の層の接着強度の計測には向いておらず、特定の層の接着強度を簡便に且つ容易に計測できる方法が希求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-16819号公報
【文献】特開平03-296646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような状況の中、特定の層の接着強度が計測可能な試験片(以下、クーポンと称す)の形態に着目し、その強度測定を行なうクーポンの形状及び試験方法を検討し、一般に普及している検査装置、検査方法を用いて測定が可能で、用いるクーポン部の形状もプリント配線板の製造工程内においては製作が容易で扱いやすい強度測定用クーポン部とした。本発明では、この強度測定用クーポン部を、プリント配線板における製品となる領域を除く範囲の外枠部に備えることで、特定の層の接着強度を測定できるプリント配線板を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第発明は、キャビティまたはキャビティとなる部位を有するキャビティ層を備えたプリント配線板における前記キャビティ層に、略矩形形状の検査クーポン部を備え、前記検査クーポン部が、強度測定用クーポンであり、平面視で略矩形形状形態の領域内に半島状部の突出した領域を備えることを特徴とするプリント配線板である。
【0008】
本発明の第の発明は、第の発明にける検査クーポン部が、四角形で、1辺の長さが、0.8~1.0mmであることを特徴とするプリント配線板である。
【0009】
本発明の第の発明は、第及び第の発明における検査クーポン部が、直列に複数個が並んだ形態であることを特徴とするプリント配線板である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の形態をとることで、製品を破壊することなく、かつ、製品と同条件で製造した検査クーポンの強度測定用クーポンを用い、シェア試験(せん断試験)の強度試験を行なうことで、その接合強度を確認でき、品質管理が可能となる。これにより、製品の品質を高精度で保証しつつ、製品製造後に廃棄してしまう外枠部の有効活用による高い経済性を両立可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明のキャビティ構造を持つ回路基板の外観斜視図と、その断面構造を示す部分断面図(丸枠内)である。
図2】本発明の実施形態における製品部と検査クーポン部の設置可能なキャビティ層外枠部の概要を示す平面模式図である。
図3】本発明の検査クーポン部のプリント配線板に設置された状態における模式平面図である。
図4】本発明の検査クーポン部の測定時の形態(試験片)を示す模式平面図である。
図5】本発明の検査クーポン部を用いたシェア試験(せん断試験)の試験概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の説明にあたり、まず検査クーポンである強度測定用クーポンの形状について図1図5を参照して説明する。
本発明の特徴は、積層基板であるプリント配線板を構成する層と層との間の接着強度を、製品である回路基板を破壊せずに計測可能とするものである。
そのようなプリント配線板の一例として、表面にキャビティと呼ばれる凹部を持つキャビティ層と接着層を介して接合されたベース基板からなる積層構造を採る回路基板を例にして説明する。
【0013】
図1は本発明の実施形態にかかる回路基板1の外観斜視図と、その断面構造を示す部分断面図(丸枠内)である。
回路基板1は、キャビティCAを構成するキャビティ層110とベース基板112を、接着層111(或いは、接着シートやプリプレグ)を介して積層したものである。
本発明では、キャビティ層110とこの接着剤、接着シート、若しくはプリプレグなどを用いた接着接合における、この両者間の接合強度を選択的に測定する。
プリント配線板100は製造時、製品になる部分である回路基板1を複数枚、製造可能なように、図2に示すようにレイアウトされている。
【0014】
図2は、本発明の実施形態における製品になる部分(回路基板1)と強度測定用クーポンである検査クーポン部が設置可能なキャビティ層外枠部101(以下、外枠部とも称す)の概要を示すプリント配線板の平面模式図である。
このプリント配線板100は製造時、製品になる部分である回路基板1と同じ積層構成を有する図2に示す外枠部101の任意の場所に、強度測定用クーポンである検査クーポン部10を設置し、製品の切り離しと同時に、当該クーポン部も切り離され、製品とリンクして共に管理され、必要に応じて各種試験を、その当該クーポン部を試験片に用いて行なって、データを得るものである。なお、この外枠部の任意の場所は、製品製造に必要なガイド穴、マーク類などを避けた場所にあることが望ましい。
【0015】
次に、その強度測定用クーポンである検査クーポン部の形態について説明する。
図3は本発明に係る検査クーポン部10の形態の一例を示す模式図である。
図3図4に一例を示す本発明に係る検査クーポン部10は、平面視で略矩形状、且つ略凹形状のベース10Aと、その略凹部内に半島状部10Pを有する形態となっている。なお、平面視でのベース10A及び半島状部10Pの形状は、略矩形状、即ち長方形または正方形が望ましいが、略丸形状や略多角形状を採っても良く、両者の形状を適宜組み合わせて用いる。さらに、検査クーポン部は単一、若しくは直列に複数個が並んだ形態でプリント配線板に設けられている。
【0016】
さらに、半島状部10Pの配置位置は、実施する試験により適宜設定されるが、例としたシェア試験では、プリント配線板の外枠部への作製時には、ベース10Aの略凹部内に半島状に形成されていた物が、プリント配線板から切り離された際には、図3に示すように切り離すための「カットライン」を一辺として含む島状で、そのベース10Aの略凹部内に島状部10B(図4参照)として作製されている。
【0017】
次に、その具体的なサイズについては、当出願人が用いたシェア試験(剪断試験)が可能な、「Dage社製Dage Series 5000 BS5kg」では、下記実施例で示されるように、適正解が得られるクーポン形状サイズがあることから、得られる試験強度の大きさや、用いる試験機のスペックを考慮して決めるものとする。
【実施例
【0018】
以下、実施例を用いて更に本発明を説明する。
表1に示す形状に、単一の検査クーポン部の各寸法が設定できる試験片TPを図4に示すように製作した。なお、図4の試験片TPの作製は、図3の検査クーポン部10をプリント配線板の外枠部101(図2参照)から切り離す時や、その切り離し後に、図3の「カットライン」に沿って切断することで得られる。また、複数の試験片を使って測定する必要のある場合、例えば最大値、最小値、平均値によって良否判断をするケースや、標準偏差に代表されるバラツキ程度を必要とするケースでは、検査クーポン部10を複数の試験片TPとなる部位から構成されるように設け、「カットライン」での切断後に、必要数の分だけ切り離して試験片TPを作製する。
【0019】
その作製した試験片TPを用いて、図5に模式外観図で示す「シェア試験(剪断試験)」を行った。その試験結果を表2に示す。
なお、試験片TPの構成は、図1の回路基板1と同様のものを用いた。基材となるベース基板112にガラスエポキシ基板を用い、ガラスエポキシ製のキャビティ層110を、エポキシ系の接着層111を介して積層したプリント配線板を用いた。
【0020】
使用した試験機は、「Dage社製 Dage Series 5000 BS5kg」である。
シェア試験検査プローブSPがシェアする高さは、ベース基板112の表面から10μm高くした場合と、50μm高くした場合で試験を行った。これは、今回の試験片接着層の厚みを30~40μmで製作したため、ベース基板112と接着層111間位置でのシェア試験と、接着層111とキャビティ層110間の位置でのシェア試験を行うためである。即ち、ベース基板112と接着層111との接着強度、およびキャビティ層110と接着層111との接着強度を各々知ることが可能となっている。なお、図5に示すシェア試験の概要図では、接着層を介せずにベース基板112とキャビティ層110を接合した状態の検査クーポン部10のシェア試験をモデルとしている。
【0021】
【表1】
【0022】
【表2】
【0023】
その結果、試験片のサイズが、表1の参考例の試験片では測定強度が大きくなりすぎて、用いた試験機では破壊試験、即ち層と層との引き剥がしが出来ず、データが取得できなかったが、実施例1、実施例2で得られた試験データからは、第一に、プリント配線板の接着強度評価方法において、安定的な試験結果が得られこと、第二に、単位面積あたりの剪断強度が、試験片サイズの影響を受けにくい点、第三に、破壊モードはベース基板112の材質により傾向が見られ、いずれも最も弱いところが破壊されていること、第四に、接着層の厚み方向による剪断試験結果を得ることができ、接着層厚の効果の把握が可能である点、第五に、今回の試験条件(試験機、試験片)では、検査クーポンのサイズは0.8mm×0.8mm、1.0mm×1.0mmの2種類の検査クーポンで適正なデータが得られることが判った。
【符号の説明】
【0024】
1 回路基板
10 検査クーポン部
10A ベース
10B 島状部
10P 半島状部
110 キャビティ層
111 接着層
112 ベース基板
100 プリント配線板
101 プリント配線板の外枠部
CA キャビティ
SP シェア試験検査プローブ
TP 試験片
図1
図2
図3
図4
図5