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特許7324568(メタ)アクリレート及びそれを含有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物、並びにその硬化物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-02
(45)【発行日】2023-08-10
(54)【発明の名称】(メタ)アクリレート及びそれを含有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物、並びにその硬化物
(51)【国際特許分類】
   C08F 299/02 20060101AFI20230803BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20230803BHJP
【FI】
C08F299/02
C08F2/44 A
C08F2/44 B
C08F2/44 C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018011741
(22)【出願日】2018-01-26
(65)【公開番号】P2018199804
(43)【公開日】2018-12-20
【審査請求日】2021-01-22
(31)【優先権主張番号】P 2017103169
(32)【優先日】2017-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390028897
【氏名又は名称】阪本薬品工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】柿倉 友華
(72)【発明者】
【氏名】村島 健司
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/010115(WO,A1)
【文献】特開2016-23235(JP,A)
【文献】特開昭50-35276(JP,A)
【文献】特開2006-335924(JP,A)
【文献】特開2016-8251(JP,A)
【文献】国際公開第2018/021352(WO,A1)
【文献】特開2008-45103(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア、酸化亜鉛、酸化ゲルマニウム、酸化インジウム、酸化スズ、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化アンチモン(ATO)、酸化セリウム、チタン酸バリウムからなる群より選ばれる無機微粒子の1種以上、及び/又はナノセルロース、セルロース誘導体、導電性高分子、多糖類、でんぷんおよびその誘導体、ゼラチン、ポリビニルアルコール(PVA)、シクロデキストリンからなる群より選ばれる親水性の有機化合物の1種以上(A)、並びに、式(1)で表される構造の(メタ)アクリレート(B)を含有し、有機溶剤を含まないことを特徴とする活性エネルギー線硬化型樹脂組成物であって、(B)100重量部に対して、(A)50重量部以下であることを特徴とする活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【化1】
(式中のRは水素原子または(メタ)アクリロイル基を表す。但し、全てが水素原子であることはない。また、AOは炭素数が2~4のアルキレンオキサイドを表す。k、l、mはアルキレンオキサイドの付加数であり、1~50である。nは水酸基価から算出されるポリグリセリンの平均重合度を示し、4~20である。)
【請求項2】
平均粒子径が1~200nmであり、かつ、表面改質がされていない無機微粒子、及び/又はナノセルロース、セルロース誘導体、導電性高分子、多糖類、でんぷんおよびその誘導体、ゼラチン、ポリビニルアルコール(PVA)、シクロデキストリンからなる群より選ばれる親水性の有機化合物の1種以上(A)、並びに、式(1)で表される構造の(メタ)アクリレート(B)を含有し、有機溶剤を含まないことを特徴とする活性エネルギー線硬化型樹脂組成物であって、(B)100重量部に対して、(A)50重量部以下であることを特徴とする活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【化1】
(式中のRは水素原子または(メタ)アクリロイル基を表す。但し、全てが水素原子であることはない。また、AOは炭素数が2~4のアルキレンオキサイドを表す。k、l、mはアルキレンオキサイドの付加数であり、1~50である。nは水酸基価から算出されるポリグリセリンの平均重合度を示し、4~20である。)
【請求項3】
無機微粒子の平均粒子径が1~200nmであることを特徴とする請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項4】
無機微粒子が表面修飾されていないことを特徴とする請求項1または請求項3のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1~のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を硬化させることにより形成される硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(メタ)アクリレート、及びそれを含有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物、並びにその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリレートをはじめとする紫外線等の活性エネルギー線により硬化する樹脂は、硬化速度が速く、無溶剤での硬化が可能であることから、環境負荷の少ない樹脂として塗料、コーティング、接着剤、電子材料等の様々な分野で用いられている。近年、プラスチックや樹脂等の高分子材料の物性向上を目的に無機微粒子の添加が検討されており、活性エネルギー線硬化型樹脂でも検討が進められている。
【0003】
粒子径が小さい無機微粒子を用いることで、透明性の向上と共に、高機能化が可能となる。しかしながら、粒子径が小さくなるほど粒子同士は凝集しやすくなり、さらに無機微粒子は親水性が高いことから、疎水性が高い樹脂に対する分散性は低い。このような問題に対し、無機微粒子の表面をシランカップリング処理やグラフト化する等の手法が提案されている(特許文献1、2)。また、そのようにして表面修飾した無機微粒子を有機溶媒中に一度分散させ、それを樹脂へ添加することもなされている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-175981号公報
【文献】特許第5780622号公報
【文献】特開2010-0254889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、無機微粒子を均一に分散できる(メタ)アクリレート、及び硬化後の透明性等の物性にも優れる活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らが鋭意研究を重ねた結果、式(1)で表される(メタ)アクリレートは、無機微粒子を均一に分散でき、さらにナノセルロースなど親水性の有機化合物も均一に分散できることを見出した。そして、無機微粒子及び親水性の有機化合物からなる群より選ばれる1種以上と式(1)で表される(メタ)アクリレートを含有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を硬化させることで、透明性等の物性に優れる硬化物が得られることを見出した。
【化1】
(式中のRは水素原子または(メタ)アクリロイル基を表す。但し、全てが水素原子であることはない。また、AOは炭素数が2~4のアルキレンオキサイドを表す。k、l、mはアルキレンオキサイドの付加数であり、0~50である。nは水酸基価から算出されるポリグリセリンの平均重合度を示し、2~20である。)
【発明の効果】
【0007】
本発明の(メタ)アクリレートは、無機微粒子を均一に分散できるため、無機微粒子に対する表面処理等の工程を経ることなく、透明性等の物性に優れる硬化物を得ることができる。さらに、ナノセルロースなど親水性の有機化合物も均一に分散できるため、透明性等の物性に優れる硬化物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態に基づいて本発明を説明するが、本発明の範囲はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲で変更が加えられた形態も本発明に属する。なお、範囲を表す「~」は、上限と下限を含むものである。
【0009】
本発明は、無機微粒子及び親水性の有機化合物の分散性を有する、式(1)で表される構造の(メタ)アクリレートである。
【化1】
(式中のRは水素原子または(メタ)アクリロイル基を表す。但し、全てが水素原子であることはない。また、AOは炭素数が2~4のアルキレンオキサイドを表す。k、l、mはアルキレンオキサイドの付加数であり、0~50である。nは水酸基価から算出されるポリグリセリンの平均重合度を示し、2~20である。)
【0010】
本発明の(メタ)アクリレートを構成するポリグリセリンは、水酸基価から算出される平均重合度が2~20、好ましくは4~20のものである。本明細書において水酸基価から算出される平均重合度(n)とは、末端分析法によって算出される値であり、式(2)及び式(3)から算出される。
分子量=74n+18 ・・・ (2)
水酸基価=56110(n+2)/分子量 ・・・ (3)
前記水酸基価とは、化合物中に含まれる水酸基数の大小の指標となる数値であり、1gの化合物に含まれる遊離のヒドロキシ基をアセチル化するために必要な酢酸を中和するのに要する水酸化カリウムのミリグラム数をいい、水酸化カリウムのミリグラム数は、社団法人日本油化学会編纂、「日本油化学会制定、基準油脂分析試験法、2013年度版」に準じて算出される。
【0011】
また、本発明の(メタ)アクリレートを構成するアルキレンオキサイドは、炭素数が2~4である。例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなどが挙げられ、中でもエチレンオキサイド、プロピレンオキサイドが好ましい。これらのアルキレンオキサイドは単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。また、アルキレンオキサイドの付加数は、ポリグリセリンの水酸基1つあたり0~50である。ポリグリセリンの水酸基1つあたりのアルキレンオキサイドの付加数が50より多い場合、本発明の(メタ)アクリレートの製造において、水洗による精製が難しくなる等の問題が発生し、製造が困難となるので好ましくない。
【0012】
本発明の(メタ)アクリレートの製造方法には特に制限はない。例えば、特定のポリグリセリン、あるいは特定のポリグリセリンに任意の量のアルキレンオキサイドを公知の方法で付加反応させたポリオキシアルキレンポリグリセリルエーテルの末端水酸基に(メタ)アクリル酸を反応させて生成水を系外に抜き出しながらエステル化物を得る脱水エステル化法、末端水酸基に低級アルコールの(メタ)アクリル酸エステルを反応させて生成した低級アルコールを系外に抜き出しながらエステル化物を得るエステル交換法が挙げられる。
【0013】
本発明の(メタ)アクリレートの反応割合は、ポリグリセリン、あるいはポリオキシアルキレンポリグリセリルエーテルの水酸基のうち、3つ以上反応させることが好ましい。反応させる水酸基の数が3つ以上である場合、十分な硬化性を有する(メタ)アクリレートが得られる。
【0014】
また、本発明の(メタ)アクリレートの性状は、ポリグリセリンの平均重合度とアルキレンオキサイドの平均付加数のバランスにより、常温で液体であったり固体であったりするが、固体の場合でも塗膜作成の際、加熱や溶媒等の配合により液状となり、問題なく基材に塗布できれば目的とする性能が得られる。
【0015】
本発明は、前述の(メタ)アクリレートを提供すると共に、これと無機微粒子及び親水性の有機化合物からなる群より選ばれる1種以上を含有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物も提供する。
【0016】
本発明で使用される無機微粒子は平均粒子径が1~200nmのものが好ましく、例えば、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア、酸化亜鉛、酸化ゲルマニウム、酸化インジウム、酸化スズ、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化アンチモン(ATO)、酸化セリウム、チタン酸バリウム等の金属酸化物、フッ化マグネシウム、フッ化ナトリウム、金、銀、ニッケル、銅等のような金属微粉末が挙げられる。中でも、粒子表面の改質等の処理が施されていないものが好ましい。なお、上記無機微粒子の平均粒子径は体積基準で算出した粒度分布の累積50%径(D50径)であり、動的光散乱法を測定原理とする粒度分布測定装置を用いて測定することができる。
【0017】
本発明で使用される親水性の有機化合物は、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース等のセルロース誘導体;セルロースナノファイバー(CNF)、セルロースナノクリスタル(CNC)等のナノセルロース;PEDOT-PSS、ポリピロール、ポリフラン、ポリアニリン等の導電性高分子;DNA、タンパク質、リグニン等の生体高分子;キサンタンガム、キトサン等の多糖類;でんぷん及びその誘導体、ゼラチン、ポリビニルアルコール(PVA)、有機フラーレン、シクロデキストリン等が挙げられる。
【0018】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物において、無機微粒子や親水性の有機化合物の配合割合は、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の透明性の観点から、(メタ)アクリレート100重量部に対して、100重量部以下であることが好ましく、50重量部以下がより好ましく、30重量部以下が最も好ましい。
【0019】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の調製方法としては、特に限定されず、例えば、無機微粒子及び親水性の有機化合物からなる群より選ばれる1種以上と本発明の(メタ)アクリレートをペイントシェイカー(ロッキングミル)、ボールミル、ビーズミル、サンドミル等の分散機器で混合させる方法などが挙げられる。なお、混合する際は無機微粒子や親水性の有機化合物を水に溶解させて水溶液状態で混合しても良い。また、必要に応じてジルコニアビーズ、アルミナビーズなどのビーズを使用しても良い。
【0020】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は公知の方法によって硬化することができる。活性エネルギー線とは、電子線、あるいはX線、紫外線、低波長領域の可視光等の電磁波の総称であり、通常装置の簡便性及び普及性により紫外線が好ましい。紫外線を照射できる装置としては多くの種類があるが、任意に選択できる。また、低波長領域側の可視光として、青色LEDを用いることも可能である。なお、無機微粒子や親水性の有機化合物を水溶液状態で混合させた場合は、硬化前に加温して水分を除去することが望ましい。
【0021】
本発明において上記の中で、紫外線を用いて硬化させる場合、ラジカル重合系光重合開始剤を使用する必要がある。光重合開始剤としては、公知のどのような光重合開始剤であっても良いが配合後の貯蔵安定性が良い事が要求され、例えばベンジルケタール類、α-ヒドロキシアセトフェノン類、アミノアセトフェノン類、アシルフォスフィンオキサイド類、ベンゾイン類等の分子内開裂型開始剤、ベンゾフェノン類、チオキサントン類等の水素引き抜き型開始剤が挙げられ、単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0022】
光重合開始剤を使用する必要がある場合、その使用量は活性エネルギー線硬化型樹脂100重量部に対して0.1~15重量部、好ましくは0.5~10重量部である。
【0023】
また、光重合開始剤を使用する際には、光増感剤を1種、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0024】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物には、本発明の効果が損なわれない範囲で、本発明で用いられる(メタ)アクリレート以外の(メタ)アクリル系モノマーやアクリル系オリゴマーであるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー等のラジカル重合性化合物を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0025】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、本発明の効果が損なわれない範囲で、所望により、非イオン系界面活性剤、陰イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、両性イオン系界面活性剤等の界面活性剤、アセトン、メチルエチルケトン、エタノール、トルエン、ヘキサン、酢酸エチル、メチルセロソルブ等の有機溶剤、ポリエステルエラストマー、ポリウレタンエラストマー、アクリルポリマー等の非反応性高分子樹脂、ポリジアリルフタレート、ポリジアリルイソフタレート等の反応性高分子樹脂、レベリング剤、消泡剤、シランカップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、光安定剤、熱安定剤、重合禁止剤等の添加剤を適宜配合することができる。
【0026】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、活性エネルギー線によって硬化させる際、公知の方法により、塗膜、フィルム、立体造形物等、様々な形態とすることができる。また、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を塗布する基材としては、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、トリアセチルセルロース樹脂、ノルボルネン樹脂、ABS樹脂、AS樹脂等のプラスチック成形品、ガラス、金属、木材、セメント等、幅広い範囲の基材に適用できる。
【実施例
【0027】
以下、実施例に基づき、本発明を具体的に示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、部、及び%は、特に断りがない限り重量基準である。
【0028】
((メタ)アクリレートの合成)
温度計、撹拌機、空気吹き込み管、ディーン・スターク還流装置を備えた反応容器に、ポリオキシエチレン(60)テトラグリセリルエーテル637.6g(0.208mol)、トルエン577.0g、p-トルエンスルホン酸28.2g、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.7g、塩化銅(II)0.3g、次亜リン酸ナトリウム0.7g、アクリル酸135.2g(1.88mol)を仕込み、空気吹き込み下において撹拌しながら、トルエン還流雰囲気まで昇温し、約6時間かけて脱水エステル化反応を行った。反応終了後、アルカリ水洗、水洗を行い、有機層のトルエンを減圧留去することで、ポリオキシエチレン(60)テトラグリセリルエーテルアクリレート(A1)を得た。以下同様に、ポリグリセリンの平均重合度、アルキレンオキサイドの平均付加数を変化させて表1に示すA2、A3を得た。
【0029】
【表1】
【0030】
(実施例1)
70mLのガラス容器にポリオキシエチレン(60)テトラグリセリルエーテルアクリレート(A1)27.0g、フュームドシリカ(AEROSIL200、平均粒子径:12nm、日本アエロジル(株)製)3.0gを入れた。そこにジルコニアビーズ(YTZボール、直径1mm、ニッカトー製)を60.0g添加し、ロッキングミル(RM-05S:セイワ技研製)を用いて600rpmで8時間分散させた後、ジルコニアビーズを除去することでシリカ微粒子が10%の樹脂組成物を得た。続いて、得られた樹脂組成物100部に対して、光重合開始剤として1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニルケトン(Irgacure184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)を5部添加し、加温しながら開始剤を溶融させた。これをPETフィルム上にバーコーターで塗布し、高圧水銀ランプを装着したベルトコンベアー式UV硬化装置(アイグランテージECS-401GX、アイグラフィックス社製)を用いて、空気雰囲気下、積算光量500mJ/cmの条件で紫外線を照射することで硬化物を得た。
【0031】
(実施例2~3)
実施例1にて使用したアクリレート(A1)の代わりに、アクリレート(A2~3)を使用した以外は、実施例1と同様の方法で樹脂組成物、および硬化物を作製した。
【0032】
(実施例4)
実施例1にて使用したフュームドシリカの配合量を20%に変更した以外は、実施例1と同様の方法で樹脂組成物、および硬化物を作製した。
【0033】
(実施例5)
70mLのガラス容器に実施例1にて使用したアクリレート(A1)を13.5g、10%CNF水溶液を15.0g入れた。そこにジルコニアビーズ(YTZボール、直径1mm、ニッカトー製)を30.0g添加し、ロッキングミル(RM-05S:セイワ技研製)を用いて600rpmで8時間分散させた後、ジルコニアビーズを除去することでCNF含有の樹脂組成物を得た。続いて、得られた樹脂組成物190部に対して、光重合開始剤として1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニルケトン(Irgacure184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)を5部添加し、加温しながら開始剤を溶融させた。これをPETフィルム上にバーコーターで塗布し、80℃で30分間加温して水分を除去した後、高圧水銀ランプを装着したベルトコンベアー式UV硬化装置(アイグランテージECS-401GX、アイグラフィックス社製)を用いて、空気雰囲気下、積算光量500mJ/cmの条件で紫外線を照射することで硬化物を得た。
【0034】
(実施例6)
70mLのガラス容器に実施例1にて使用したアクリレート(A1)を14.85g、PEDOT-PSS溶液(Clevious PH1000、固形分:約1%、ヘレウス(株)製)を15.0g入れた。そこにジルコニアビーズ(YTZボール、直径1mm、ニッカトー製)を30.0g添加し、ロッキングミル(RM-05S:セイワ技研製)を用いて600rpmで8時間分散させた後、ジルコニアビーズを除去することで樹脂組成物を得た。続いて、得られた樹脂組成物199部に対して、光重合開始剤として1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニルケトン(Irgacure184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)を5部添加し、加温しながら開始剤を溶融させた。これをPETフィルム上にバーコーターで塗布し、80℃で30分間加温して水分を除去した後、高圧水銀ランプを装着したベルトコンベアー式UV硬化装置(アイグランテージECS-401GX、アイグラフィックス社製)を用いて、空気雰囲気下、積算光量500mJ/cmの条件で紫外線を照射することで硬化物を得た。
【0035】
(比較例1)
実施例1にて使用したアクリレート(A1)の代わりに、DPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート;KAYARAD DPHA、日本化薬(株)製)を使用した以外は、実施例1と同様の方法で樹脂組成物、および硬化物を作製した。
【0036】
実施例1~4、及び比較例1で得られた樹脂組成物、および硬化物について、以下に示す評価を実施した。評価の結果を表2に示した。
【0037】
(外観)
調製した樹脂組成物について、外観を目視にて観察し、下記の基準で分散性を評価した。
〇:透明均一 △:僅かに濁っている ×:白濁または沈殿がある
【0038】
(粘度)
調製した樹脂組成物について、コーンプレート型回転粘度計(DV-II+Pro、ブルックフィールド社製)を用いて、25℃における粘度を測定した。
◎:粘度が1,000mPa・s未満
〇:粘度が1,000mPa・s以上10,000mPa・s未満
△:粘度が10,000mPa・s以上50,000mPa・s未満
×:粘度が50,000mPa・s以上
【0039】
(透明性)
JIS K7136に準じ、基材であるPETフィルムに両面易接着処理PETフィルム(コスモシャインA4300、東洋紡(株)製)を用いて作製した硬化塗膜(膜厚10μm)について、濁度計(NDH-2000、日本電色工業(株)製)を用いてヘーズを測定した。
◎:ヘーズ値が1%未満 ○:ヘーズ値が1%以上5%未満
△:ヘーズ値が5%以上10%未満 ×:ヘーズ値が10%以上
【0040】
(カール性)
基材であるPETフィルムに両面易接着処理PETフィルム(コスモシャインA4300、東洋紡(株)製)を用いて作製した硬化塗膜(膜厚20μm)を10cm×10cmに切り取った。水平な台に硬化塗膜面を上にして置いた際の硬化塗膜の四隅の浮き高さを測定し、その平均値について、下記の基準でカール性を評価した。
◎:浮き高さの平均値が0mm以上10mm未満
○:浮き高さの平均値が10mm以上20mm未満
△:浮き高さの平均値が20mm以上30mm未満
×:浮き高さの平均値が30mm以上
【0041】
(密着性)
JIS K5400の碁盤目試験法に準拠し、基材であるPETフィルムに未処理のPETフィルム(ルミラー100-S10、東レ(株)製)を用いて作製した硬化塗膜(膜厚10μm)に、カッターナイフにて1mm間隔で切り目を入れて100個の碁盤目を作製した。その際に剥離せず、残存した碁盤目の数を数え、下記の基準にて評価した。
○:碁盤目の残存数が100個 △:碁盤目の残存数が91~99個
×:碁盤目の残存数が90個未満
【0042】
【表2】
【0043】
本発明の(メタ)アクリレートと無機微粒子からなる樹脂組成物を用いた実施例1~3は、DPHAと無機微粒子からなる樹脂組成物を用いた比較例1に比べて、外観、粘度共に良好であり、分散性に優れていた。また、硬化物の透明性、カール性にも優れていた。さらに、無機微粒子の添加量を実施例1より増加した実施例4や10%CNF水溶液を用いた実施例5、PEDOT-PSS水溶液を用いた実施例6でも同様の効果が確認された。