(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-02
(45)【発行日】2023-08-10
(54)【発明の名称】ダイカストマシン
(51)【国際特許分類】
B22D 17/32 20060101AFI20230803BHJP
B22D 17/30 20060101ALI20230803BHJP
B22D 17/20 20060101ALI20230803BHJP
B22D 18/02 20060101ALI20230803BHJP
【FI】
B22D17/32 F
B22D17/30 Z
B22D17/20 H
B22D18/02 B
(21)【出願番号】P 2018196916
(22)【出願日】2018-10-18
【審査請求日】2021-08-10
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003458
【氏名又は名称】芝浦機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】中田 光栄
【審査官】池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-071156(JP,A)
【文献】特開2007-061880(JP,A)
【文献】特開2014-042929(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 17/00-17/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
注湯機構によって溶湯が注湯される注湯口を有する筒形状の射出スリーブと、
前記射出スリーブ内に注湯された溶湯を射出するプランジャと、
前記プランジャを前記射出スリーブ内で移動させるプランジャ移動機構と、
注湯機構により前記射出スリーブの前記注湯口に溶湯を注湯する際に、前記プランジャ移動機構により前記プランジャを後退させながら溶湯を注湯する制御を行う制御部と、
前記射出スリーブ内に注湯された溶湯の充填高さを検知する充填高さ検知部と、を備え、
前記注湯口は、少なくとも注湯を開始する際の前記プランジャの位置から前記プランジャを後退させて停止させる停止位置までの距離に相当する長さ分、前記停止位置から前記射出スリーブの前方側に設けられており、
前記制御部は、前記充填高さ検知部によって検知された前記射出スリーブ内の溶湯の充填高さが、所定の高さよりも大きくなったこと、前記充填高さ検知部によって検知された前記射出スリーブ内に注湯された溶湯の充填高さに基づく前記射出スリーブ内の溶湯の充填率が所定の充填率よりも大きくなったこと、および、前記充填高さ検知部によって検知された前記射出スリーブ内に注湯された溶湯の充填高さに基づく前記射出スリーブ内における溶湯の充填量が所定の充填量よりも大きくなったことのいずれかに基づいて、前記プランジャ移動機構により前記プランジャの後退を開始する制御を行うように構成されている
とともに、注湯機構による溶湯の注湯速度に基づいて、前記プランジャ移動機構により前記プランジャを後退させる速度を調整し、前記射出スリーブ内に注湯された溶湯の前記射出スリーブ内における充填高さが、前記所定の充填率または充填量よりも大きい充填高さを維持するような制御を行うか、前記プランジャを後退させる際に、前記射出スリーブ内に注湯された溶湯が、前記所定の充填率よりも大きい充填率を維持するように、前記プランジャ移動機構により前記プランジャを後退させる速度を調整する制御を行うか、または、前記プランジャを後退させる際に、前記射出スリーブ内に注湯された溶湯が、前記所定の充填量よりも大きい充填量を維持するように、前記プランジャ移動機構により前記プランジャを後退させる速度を調整する制御を行うように構成されている、ダイカストマシン。
【請求項2】
前記制御部は、注湯機構により略一定の注湯速度で注湯を行うとともに、前記プランジャ移動機構により前記プランジャを略一定の速度で後退させる制御を行うように構成されている、請求項
1に記載のダイカストマシン。
【請求項3】
前記注湯口は、溶湯の射出方向において、少なくとも、前記射出スリーブの中央よりも前方側に設けられている、請求項1
または2に記載のダイカストマシン。
【請求項4】
前記注湯口は、金型の固定型が取り付けられる固定ダイプレートの前記固定型が設けられている面とは反対側の面側の位置に設けられている、請求項
3に記載のダイカストマシン。
【請求項5】
前記注湯口を塞ぐ蓋機構をさらに備え、
前記制御部は、溶湯を射出する際に、前記蓋機構により前記注湯口を塞ぐ制御を行うように構成されている、請求項1~
4のいずれか1項に記載のダイカストマシン。
【請求項6】
前記注湯口から前記射出スリーブ内に固形潤滑剤を供給する固形潤滑剤供給装置をさらに備え、
前記制御部は、溶湯を金型に射出した後の前記注湯口よりも後方側の待機位置に配置されている前記プランジャを、溶湯が注湯される際の前記プランジャの配置位置である初期位置に前記プランジャを前方に移動させる前に、前記固形潤滑剤供給装置によって前記注湯口から前記射出スリーブ内に固形潤滑剤を供給する制御を行うように構成されている、請求項1~
5のいずれか1項に記載のダイカストマシン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ダイカストマシンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ダイカストマシンが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、溶湯が注湯される射出スリーブと、溶湯を射出するプランジャと、プランジャを移動させるプランジャ移動機構とを備えるダイカストマシンが開示されている。上記特許文献1に開示されているダイカストマシンは、射出スリーブの後端部近傍に設けられた注湯口から溶湯を注湯し、プランジャによって溶湯を射出する構成となっている。具体的には、上記特許文献1に開示されているダイカストマシンは、プランジャを射出スリーブの後端部近傍の位置に配置した状態で溶湯を注湯し、注湯が完了した際にプランジャを前進させることにより、溶湯を射出する構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示されているダイカストマシンでは、注湯口が射出スリーブの後端部近傍に設けられているため、注湯口から金型までの距離が長くなっている。そのため、注湯された溶湯が射出スリーブの前方側に流れた際に薄い層となり、溶湯と接触する射出スリーブの表面積が大きくなるため、溶湯の温度が急速に低下する。溶湯の温度が低下すると、溶湯の湯流れ性(溶湯の流れやすさ)が低下するため、溶湯を射出する際のプランジャの射出速度または充填圧力を大きくしなければならないという問題点が生じる。プランジャの射出速度または充填圧力を大きくした場合、金型や射出チップ、スリーブの劣化が進行しやすくなるため好ましくない。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、注湯される溶湯の温度が急速に低下することによって溶湯の湯流れ性が低下することを抑制することが可能であり、プランジャの射出速度または充填圧力を大きくすることなく溶湯を射出することが可能なダイカストマシンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面におけるダイカストマシンは、注湯機構によって溶湯が注湯される注湯口を有する筒形状の射出スリーブと、射出スリーブ内に注湯された溶湯を射出するプランジャと、プランジャを射出スリーブ内で移動させるプランジャ移動機構と、注湯機構により射出スリーブの注湯口に溶湯を注湯する際に、プランジャ移動機構によりプランジャを後退させながら溶湯を注湯する制御を行う制御部と、射出スリーブ内に注湯された溶湯の充填高さを検知する充填高さ検知部と、を備え、注湯口は、少なくとも注湯を開始する際のプランジャの位置からプランジャを後退させて停止させる停止位置までの距離に相当する長さ分、停止位置から射出スリーブの前方側に設けられており、制御部は、充填高さ検知部によって検知された射出スリーブ内の溶湯の充填高さが、所定の高さよりも大きくなったこと、充填高さ検知部によって検知された射出スリーブ内に注湯された溶湯の充填高さに基づく射出スリーブ内の溶湯の充填率が所定の充填率よりも大きくなったこと、および、充填高さ検知部によって検知された射出スリーブ内に注湯された溶湯の充填高さに基づく射出スリーブ内における溶湯の充填量が所定の充填量よりも大きくなったことのいずれかに基づいて、プランジャ移動機構によりプランジャの後退を開始する制御を行うように構成されているとともに、注湯機構による溶湯の注湯速度に基づいて、プランジャ移動機構によりプランジャを後退させる速度を調整し、射出スリーブ内に注湯された溶湯の射出スリーブ内における充填高さが、所定の充填率または充填量よりも大きい充填高さを維持するような制御を行うか、プランジャを後退させる際に、射出スリーブ内に注湯された溶湯が、所定の充填率よりも大きい充填率を維持するように、プランジャ移動機構によりプランジャを後退させる速度を調整する制御を行うか、または、プランジャを後退させる際に、射出スリーブ内に注湯された溶湯が、所定の充填量よりも大きい充填量を維持するように、プランジャ移動機構によりプランジャを後退させる速度を調整する制御を行うように構成されている。
【0008】
この発明の一の局面によるダイカストマシンでは、上記のように、注湯機構により射出スリーブの注湯口に溶湯を注湯する際に、プランジャ移動機構によりプランジャを後退させながら溶湯を注湯する制御を行う制御部と、射出スリーブ内に注湯された溶湯の充填高さを検知する充填高さ検知部と、を備え、注湯口は、注湯を開始する際のプランジャの位置からプランジャを後退させて停止させる停止位置までの距離に相当する長さ分、停止位置から射出スリーブの前方側に設けられており、制御部は、充填高さ検知部によって検知された射出スリーブ内の溶湯の充填高さが、所定の高さよりも大きくなったこと、充填高さ検知部によって検知された射出スリーブ内に注湯された溶湯の充填高さに基づく射出スリーブ内の溶湯の充填率が所定の充填率よりも大きくなったこと、および、充填高さ検知部によって検知された射出スリーブ内に注湯された溶湯の充填高さに基づく射出スリーブ内における溶湯の充填量が所定の充填量よりも大きくなったことのいずれかに基づいて、プランジャ移動機構によりプランジャの後退を開始する制御を行うように構成されているとともに、注湯機構による溶湯の注湯速度に基づいて、プランジャ移動機構によりプランジャを後退させる速度を調整し、射出スリーブ内に注湯された溶湯の射出スリーブ内における充填高さが、所定の充填率または充填量よりも大きい充填高さを維持するような制御を行うか、プランジャを後退させる際に、射出スリーブ内に注湯された溶湯が、所定の充填率よりも大きい充填率を維持するように、プランジャ移動機構によりプランジャを後退させる速度を調整する制御を行うか、または、プランジャを後退させる際に、射出スリーブ内に注湯された溶湯が、所定の充填量よりも大きい充填量を維持するように、プランジャ移動機構によりプランジャを後退させる速度を調整する制御を行うように構成されている。これにより、少なくともプランジャを後退させる長さ分だけ射出スリーブの前方側に設けられた注湯口の位置にプランジャを配置した状態で注湯することにより、注湯時の射出スリーブの容積を小さくすることが可能となるので、射出スリーブ内において溶湯が薄い層を形成することを抑制することができる。このため、溶湯と接触する射出スリーブの表面積を小さくすることが可能となるので、注湯される溶湯の温度が急速に低下することによって溶湯の湯流れ性が低下することを抑制することが可能となる。その結果、プランジャの射出速度または充填圧力を大きくすることなく溶湯を射出することができる。また、プランジャを後退させながら注湯することにより、注湯する溶湯の量が多い場合でも、溶湯が溢れ出ることを抑制することができる。その結果、注湯する溶湯の量が変化した場合でも、溶湯が溢れ出ることを抑制しつつ、射出スリーブ内において溶湯の温度が急速に低下することを抑制することができる。
【0013】
この場合、好ましくは、制御部は、注湯機構により略一定の注湯速度で注湯を行うとともに、プランジャ移動機構によりプランジャを略一定の速度で後退させる制御を行うように構成されている。このように構成すれば、注湯速度とプランジャを後退させる速度とが、1対1の関係となるので、プランジャの後退中において、溶湯の厚みを略一定に維持することができる。
【0014】
上記一の局面によるダイカストマシンにおいて、好ましくは、注湯口は、溶湯の射出方向において、少なくとも、射出スリーブの中央よりも前方側に設けられている。このように構成すれば、注湯口を射出スリーブの後端部近傍に設ける構成と比較して、溶湯を注湯する際の射出スリーブ内の容積をより小さくすることができる。その結果、射出スリーブに注湯された溶湯の温度が低下する速度をより小さくすることができる。
【0015】
この場合、好ましくは、注湯口は、金型の固定型が取り付けられる固定ダイプレートの固定型が設けられている面とは反対側の面側の位置に設けられている。このように構成すれば、注湯口を射出スリーブの後端部近傍に設ける構成と比較して、溶湯を注湯する際の射出スリーブ内の容積をより一層小さくすることができる。その結果、射出スリーブに注湯された溶湯の温度が低下する速度をより一層抑制することができる。
【0016】
上記一の局面によるダイカストマシンにおいて、好ましくは、注湯口を塞ぐ蓋機構をさらに備え、制御部は、溶湯を射出する際に、蓋機構により注湯口を塞ぐ制御を行うように構成されている。このように構成すれば、溶湯を射出する際に注湯口を塞ぐことが可能となるので、溶湯を射出する際に注湯口から溶湯が溢れ出ることを抑制することができる。
【0017】
上記一の局面によるダイカストマシンにおいて、好ましくは、注湯口から射出スリーブ内に固形潤滑剤を供給する固形潤滑剤供給装置をさらに備え、制御部は、溶湯を金型に射出した後の注湯口よりも後方側の待機位置に配置されているプランジャを、溶湯が注湯される際のプランジャの配置位置である初期位置にプランジャを前方に移動させる前に、固形潤滑剤供給装置によって注湯口から射出スリーブ内に固形潤滑剤を供給する制御を行うように構成されている。このように構成すれば、プランジャを初期位置に移動させる前に、注湯口よりも後方側の待機位置に配置されている状態において固形潤滑剤を供給することにより、固形潤滑剤を射出スリーブ内の全体に供給することが可能となるので、プランジャの摺動性を向上させることができる。その結果、プランジャの摺動抵抗が上昇することを抑制することが可能となるので、プランジャのかじり(焼き付き)を抑制することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、上記のように、注湯される溶湯の温度が急速に低下することによって溶湯の湯流れ性が低下することを抑制することが可能であり、プランジャの射出速度または充填圧力を大きくすることなく溶湯を射出することが可能なダイカストマシンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】一実施形態によるダイカストマシンの全体構成を模式的に示した図である。
【
図2】一実施形態によるダイカストマシンの制御部、プランジャ移動機構、蓋機構、充填高さ検知部および固形潤滑剤供給装置のブロック図である。
【
図3】一実施形態によるダイカストマシンの溶湯を注湯する処理を説明するための図(A)~図(E)である。
【
図4】一実施形態によるダイカストマシンの溶湯の射出処理を説明するためのフローチャートである。
【
図5】第1変形例によるダイカストマシンの全体構成を模式的に示した図である。
【
図6】第2変形例によるダイカストマシンの全体構成を模式的に示した図である。
【
図7】第3変形例によるダイカストマシンの充填高さ検知部を模式的に示した図である。
【
図8】第4変形例によるダイカストマシンの充填高さ検知部を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
図1および
図2を参照して、本実施形態によるダイカストマシン100の構成について説明する。
【0022】
図1に示すように、ダイカストマシン100は、射出スリーブ1と、プランジャ3と、プランジャ移動機構4と、制御部5と、充填高さ検知部6と、蓋機構7と、固形潤滑剤供給装置8とを備えている。
図1に示すダイカストマシン100は、コールドチャンバ方式であり、射出スリーブ1内に供給された溶湯M(
図3参照)を金型9内へ導入することによりダイカスト製品(成形品)を製造する。
【0023】
金型9は、固定型9aと可動型9bとを含む。固定型9aは、ダイカストマシン100の固定ダイプレート101に取り付けられ、固定されている。可動型9bはダイカストマシン100の移動ダイプレート102に取り付けられ、固定型9aに対して接近または離間する方向(X方向)に移動可能に保持されている。ダイプレート駆動機構103によって固定型9aに対して可動型9bを接近させて型締めすることにより、金型9内にダイカスト製品(成形品)を成形するためのキャビティ(空洞部分)9cが形成される。また、キャビティ9cには、金属溶湯の流通通路となる湯口9dが射出スリーブ1に連通している。
【0024】
射出スリーブ1は、注湯機構2によって溶湯Mが注湯される注湯口1aを有している。また、射出スリーブ1は、筒形状を有する金属製部品であり、水平方向(X方向)に延びるように配置されている。また、射出スリーブ1は、金型9内に形成されるキャビティ9cと連通している。射出スリーブ1は、X1方向端部が湯口9dに接続され、X2方向端部が開口している。なお、X1方向を射出方向の前方といい、X2方向を射出方向の後方という。
【0025】
注湯口1aは、少なくともプランジャ3を後退させる長さ分、射出スリーブ1の前方側(X1方向側)に設けられている。具体的には、注湯口1aは、溶湯Mの射出方向(X方向)において、少なくとも、射出スリーブ1の中央よりも前方側に設けられている。より具体的には、注湯口1aは、金型9の固定型9aが取り付けられる固定ダイプレート101の近傍に設けられている。
【0026】
注湯機構2は、制御部5の制御の下、射出スリーブ1内に溶湯Mを注湯するように構成されている。具体的には、注湯機構2は、保持炉(図示せず)から液状の金属材料(溶湯M)を汲み取って、ダイカストマシン100の射出スリーブ1に供給(注湯)するように構成されている。
【0027】
注湯機構2は、保持炉から液状の金属材料を汲み取るラドル20と、先端に設けられたラドル20を移動させるロボットアーム21とを備えている。なお、保持炉には、加熱によって所定温度に保持される液状の金属材料(溶湯M)が収容されている。注湯機構2は、ロボットアーム21によってラドル20を注湯口1aまで移動させるとともに、ラドル20を傾けることにより、ラドル20内の溶湯Mを射出スリーブ1内に注湯するように構成されている。注湯機構2は、制御部5から出力される制御信号CS1(
図2参照)を受信して駆動されるように構成されている。
【0028】
プランジャ3は、射出スリーブ1内に注湯された溶湯Mを射出するように構成されている。プランジャ3は、プランジャチップ31と、前方(X1方向)端部においてプランジャチップ31に着脱可能に取り付けられ、後方(X2方向)端部においてプランジャ移動機構4に接続されたプランジャロッド32とを備える。プランジャ3の各部は、主として鋼材などの金属材料により形成されている。プランジャ3は、全体としては直線棒状形状を有する。
【0029】
プランジャ移動機構4は、プランジャ3を射出スリーブ1内で前後方向(X方向)に進退移動させるように構成されている。プランジャ移動機構4は、制御部5から出力される制御信号CS2(
図2参照)を受信して駆動されるように構成されている。プランジャ移動機構4は、たとえば、油圧回路4aによって駆動される油圧シリンダである。プランジャ3およびプランジャ移動機構4による溶湯Mの射出の詳細については、後述する。
【0030】
充填高さ検知部6は、射出スリーブ1内に注湯された溶湯Mの充填率を検知するように構成されている。具体的には、充填高さ検知部6は、射出スリーブ1内に注湯された溶湯Mの充填高さfh(
図2参照)を検知するように構成されている。また、充填高さ検知部6は、検知した溶湯Mの充填率(充填高さfh)を、制御部5に出力するように構成されている。充填高さ検知部6は、たとえば、赤外線センサなどの距離センサを含む。
【0031】
蓋機構7は、制御部5の制御の下、注湯口1aを塞ぐように構成されている。蓋機構7は、注湯口1aを塞ぐ蓋部70と、蓋部70とロボットアーム72とを接続する接続部71と、先端に設けられた蓋部70を移動させるロボットアーム72とを備えている。また、蓋部70は、射出スリーブ1との密着度を向上させるため、射出スリーブ1と接触する側の端面に、弾性部材73を有している。蓋機構7は、蓋部70を、ロボットアーム72によって注湯口1aを塞ぐ位置まで移動させることにより、注湯口1aを塞ぐように構成されている。なお、
図1に示す例では、便宜上、蓋部70および弾性部材73を平板形状で図示しているが、射出スリーブ1は円筒状の形状を有しているため、蓋部70および弾性部材73は、射出スリーブ1の形状に沿うように湾曲した形状を有している。蓋機構7は、制御部5から出力される制御信号CS3(
図2参照)を受信して駆動されるように構成されている。
【0032】
固形潤滑剤供給装置8は、制御部5の制御の下、射出スリーブ1内に所定量の固形潤滑剤を供給するように構成されている。固形潤滑剤供給装置8は、固形潤滑剤供給部80と、先端に設けられた固形潤滑剤供給部80を移動させるアーム81とを備えている。固形潤滑剤は、たとえば、ワックスと黒鉛との混合物を粒状化したものを含む。固形潤滑剤供給装置8は、制御部5から出力される制御信号CS4(
図2参照)を受信して駆動されるように構成されている。固形潤滑剤供給装置8が射出スリーブ1内に固形潤滑剤を供給する構成の詳細については後述する。
【0033】
〈制御部の構成〉
図2に示す制御部5は、ダイカストマシン100の各部に接続されており、ダイカストマシン100の各部の駆動を制御するように構成されている。制御部5は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)などを含む。
【0034】
本実施形態では、制御部5は、射出スリーブ1内に溶湯Mを注湯するための制御信号CS1を、注湯機構2に出力するように構成されている。なお、制御信号CS1には、注湯を開始する信号と、注湯を終了する信号とが含まれる。また、制御部5は、プランジャ3を移動するための制御信号CS2を、プランジャ移動機構4に出力するように構成されている。制御部5は、制御信号CS2をプランジャ移動機構4に出力することによって、注湯機構2により射出スリーブ1の注湯口1aに溶湯Mを注湯する際に、プランジャ移動機構4によりプランジャ3を後退させながら溶湯Mを注湯する制御を行うように構成されている。溶湯Mを注湯する際の制御部5による制御の詳細については、後述する。なお、制御信号CS2には、プランジャ3を前進させるための信号と、プランジャ3を後退させるための信号とが含まれる。
【0035】
また、制御部5は、溶湯Mを射出する際に、注湯口1aを塞ぐための制御信号CS3を、蓋機構7に出力するように構成されている。なお、制御信号CS3には、注湯口1aを塞ぐための信号と、注湯口1aを開くための信号とが含まれる。また、制御部5は、射出スリーブ1内に固形潤滑剤を供給するための制御信号CS4を、固形潤滑剤供給装置8に出力するように構成されている。また、制御部5は、充填高さ検知部6からの充填率(充填高さfh)を受信するように構成されている。制御部5は、制御信号CS1~CS4を所定の順序で出力することにより、射出スリーブ1内に溶湯Mを注湯するとともに、注湯された溶湯Mを金型9に射出することにより、ダイカスト製品を製造する制御を行う。
【0036】
〈溶湯を注湯する構成〉
次に、
図3(A)~
図3(E)を参照して、本実施形態におけるダイカストマシン100が溶湯Mを射出スリーブ1に注湯する構成の詳細について説明する。
図3(A)は、プランジャ3を初期位置IPに配置した際の模式図である。
図3(B)は、注湯機構2によって射出スリーブ1内に溶湯Mの注湯を開始した際の模式図である。
図3(C)は、射出スリーブ1内に溶湯Mを注湯している際の模式図である。
図3(D)は、プランジャ3の後退を開始する際の模式図である。
図3(E)は、プランジャ3を所定位置まで後退させた際の模式図である。なお、ダイカストマシン100では、
図3(A)、
図3(B)、
図3(C)、
図3(D)および
図3(E)の順で、ダイカスト製品の成形動作が行われる。
【0037】
図3(A)に示すように、制御部5は、制御信号CS2をプランジャ移動機構4に出力することにより、プランジャ3を初期位置IPに移動(前進)させる。本実施形態では、プランジャ3を初期位置IPに移動(前進)させることにより、射出スリーブ1内の容積を小さくした状態で注湯を開始する。X方向において、プランジャ3は、初期位置IPで前方端面が注湯口1aの後端と略同位置に、または、わずかに後方に配置される。
【0038】
図3(B)に示すように、制御部5は、制御信号CS1を注湯機構2に出力することにより、溶湯Mの注湯を開始する。本実施形態では、制御部5は、注湯機構2により略一定の注湯速度で注湯を行うように構成されている。
【0039】
また、制御部5は、射出スリーブ1内における溶湯Mの充填率に基づいて、プランジャ3を後退させるか否かを判定するように構成されている。具体的には、制御部5は、射出スリーブ1内に注湯された溶湯Mの充填率が所定の充填率よりも大きくなったことに基づいて、プランジャ移動機構4によりプランジャ3の後退を開始する制御を行うように構成されている。したがって、
図3(C)に示すように、制御部5は、射出スリーブ1内における溶湯Mの充填高さfhを取得するように構成されている。具体的には、充填高さ検知部6は、射出スリーブ1内の溶湯Mに向けて赤外線IRを照射することにより、溶湯Mの充填高さfhを取得するように構成されている。
【0040】
注湯する溶湯Mの重量、注湯する溶湯Mの比重、射出スリーブ1の内径、およびプランジャ3の初期位置IPは既知の値である。したがって、溶湯Mの充填率は、射出スリーブ1内に充填された溶湯Mの高さによって取得することができる。そこで、
図5(D)に示すように、制御部5は、射出スリーブ1内に注湯された溶湯Mの充填高さfhが所定の充填高さよりも大きくなったことに基づいて、プランジャ移動機構4によりプランジャ3の後退を開始する制御を行うように構成されている。すなわち、制御部5は、充填高さ検知部6によって検知された溶湯Mの充填高さfhが、所定の充填率よりも大きくなる高さになった場合に、プランジャ3の後退を開始するように構成されている。なお、制御部5は、所定の充填率として、たとえば、充填率が50%よりも大きくなった場合に、プランジャ3の後退を開始する制御を行うように構成されている。また、射出スリーブ1内における溶湯Mの充填率が大きくなりすぎた場合、溶湯Mを射出する際に射出スリーブ1から溢れる恐れがある。そこで、制御部5は、溶湯Mの充填率が90%よりも大きくならないように制御するように構成させている。すなわち、制御部5は、溶湯Mの充填率が50%よりも大きく、90%以下となるように、注湯機構2による注湯を制御するように構成されている。
【0041】
所定の充填率よりも大きい充填率で溶湯Mを充填した場合でも、プランジャ3を後退させる速度によっては、プランジャ3の後退中において、溶湯Mの充填率が所定の充填率よりも小さくなる場合がある。プランジャ3の後退中において、溶湯Mの充填率が所定の充填率よりも小さくなった場合、溶湯Mの温度低下の速度が上昇する原因となり、湯回り性が低下する。
【0042】
そこで、本実施形態では、
図3(D)に示すプランジャ3の後退開始時から、
図3(E)に示すプランジャ3の所定位置まで後退させる間において、制御部5は、プランジャ3を後退させる際に、射出スリーブ1内に注湯された溶湯Mが、所定の充填率よりも大きい充填率を維持するように、プランジャ移動機構4によりプランジャ3を後退させる速度を調整する制御を行うように構成されている。具体的には、制御部5は、注湯機構2による溶湯Mの注湯速度に基づいて、プランジャ移動機構4によりプランジャ3を後退させる速度を調整し、射出スリーブ1内に注湯された溶湯Mが、所定の充填率よりも大きい充填高さfhを維持するような制御を行うように構成されている。より具体的には、制御部5は、注湯機構2により略一定の注湯速度で注湯を行うとともに、プランジャ移動機構4によりプランジャ3を略一定の速度で後退させる制御を行うように構成されている。
【0043】
次に、
図4を参照して、本実施形態における制御部5が溶湯Mを射出する制御の処理について説明する。
【0044】
ステップS1において、制御部5は、制御信号CS3を蓋機構7に出力することにより、注湯口1aを開く。次に、ステップS2において、制御部5は、制御信号CS4を固形潤滑剤供給装置8に出力することにより、射出スリーブ1内に固形潤滑剤を供給する。具体的には、制御部5は、プランジャ3が待機位置SPに配置されている状態において、固形潤滑剤供給装置8によって射出スリーブ1内に固形潤滑剤を供給する制御を行うように構成されている。なお、待機位置SPとは、溶湯Mを金型9に射出した後の注湯口1aよりも後方側(X2方向側)の位置であり、溶湯Mが注湯される際のプランジャ3の配置位置である初期位置IPよりも後方(X2方向)の位置である。また、プランジャ3が待機位置SPに配置されている状態において固形潤滑剤が供給されるため、待機位置SPの位置は、溶湯Mの注湯が完了した際のプランジャ3の位置よりも後方側(X2方向側)に設定される。これにより、溶湯Mを射出する際にプランジャ3が移動する範囲におけるプランジャ3の摺動性を向上させることができる。
【0045】
次に、ステップS3において、制御部5は、制御信号CS2をプランジャ移動機構4に出力することにより、プランジャ3を待機位置SPから初期位置IPまで移動(前進)させる。
【0046】
次に、ステップS4において、制御部5は、制御信号CS1を注湯機構2に出力することにより、射出スリーブ1内に溶湯Mを注湯する。次に、ステップS5において、制御部5は、溶湯Mの充填率が所定の充填率よりも大きいか否かの判定を行う。溶湯Mの充填率が所定の充填率以下の場合、制御部5は、ステップS5の処理を繰り返す。溶湯Mの充填率が所定の充填率よりも大きい場合、処理は、ステップS6へ進む。
【0047】
ステップS6において、制御部5は、制御信号CS2をプランジャ移動機構4に出力することにより、プランジャ3の後退を開始する。次に、ステップS7において、制御部5は、所定量の溶湯Mを注湯したか否かを判定する。所定量の溶湯Mを注湯していない場合、制御部5は、ステップS7の処理を繰り返す。所定量の溶湯Mを注湯した場合、処理は、ステップS8へ進む。
【0048】
ステップS8において、制御部5は、制御信号CS2をプランジャ移動機構4に出力することにより、プランジャ3を停止(プランジャ3の後退を終了)する。なお、制御部5は、ステップS7の処理を、プランジャ3を停止するトリガーとするのではなく、プランジャ3の位置検知部(図示せず)の検知結果に基づいて、プランジャ3を停止させてもよい。
【0049】
次に、ステップS9において、制御部5は、制御信号CS3を蓋機構7に出力することにより、溶湯Mを射出する際に、蓋機構7により注湯口1aを塞ぐ制御を行うように構成されている
【0050】
次に、ステップS10において、制御部5は、制御信号CS2をプランジャ移動機構4に出力することにより、プランジャ3を前方位置FPまで移動(前進)させることにより、射出スリーブ1内の溶湯Mを金型9のキャビティ9cに射出する。次に、ステップS11において、制御部5は、制御信号CS2をプランジャ移動機構4に出力することにより、プランジャ3を待機位置SPまで移動(後退)させる。
【0051】
(本実施形態の効果)
本実施形態の効果について説明する。
【0052】
本実施形態では、上記のように、ダイカストマシン100は、注湯機構2によって溶湯Mが注湯される注湯口1aを有する筒形状の射出スリーブ1と、射出スリーブ1内に注湯された溶湯Mを射出するプランジャ3と、プランジャ3を射出スリーブ1内で移動させるプランジャ移動機構4と、注湯機構2により射出スリーブ1の注湯口1aに溶湯Mを注湯する際に、プランジャ移動機構4によりプランジャ3を後退させながら溶湯Mを注湯する制御を行う制御部5と、を備え、注湯口1aは、少なくともプランジャ3を後退させる長さ分、射出スリーブ1の前方側(X1方向側)に設けられている。これにより、少なくともプランジャ3を後退させる長さ分だけ射出スリーブ1の前方側(X1方向側)に設けられた注湯口1aの位置にプランジャ3を配置した状態で注湯することにより、注湯時の射出スリーブ1の容積を小さくすることが可能となるので、射出スリーブ1内において溶湯Mが薄い層を形成することを抑制することができる。このため、溶湯Mと接触する射出スリーブ1の表面積を小さくすることが可能となるので、注湯される溶湯Mの温度が急速に低下することによって溶湯Mの湯流れ性が低下することを抑制することが可能となる。その結果、プランジャ3の射出速度または充填圧力を大きくすることなく溶湯Mを射出することができる。また、プランジャ3を後退させながら注湯することにより、注湯する溶湯Mの量が多い場合でも、溶湯Mが溢れ出ることを抑制することができる。その結果、注湯する溶湯Mの量が変化した場合でも、溶湯Mが溢れ出ることを抑制しつつ、射出スリーブ1内において溶湯Mの温度が急速に低下することを抑制することができる。
【0053】
本実施形態では、上記のように、制御部5は、射出スリーブ1内に注湯された溶湯Mの充填率が所定の充填率よりも大きくなったことに基づいて、プランジャ移動機構4によりプランジャ3の後退を開始する制御を行うように構成されている。これにより、プランジャ3の後退を開始する際の射出スリーブ1内における溶湯Mの充填率を大きくすることが可能となるので、射出スリーブ1内の溶湯Mが薄くなるのを効果的に抑制することができる。その結果、プランジャ3を後退させながら注湯する場合でも、溶湯Mの温度が急速に低下することを抑制することが可能となるので、溶湯Mの湯回り性が低下することを抑制することができる。
【0054】
本実施形態では、上記のように、制御部5は、プランジャ3を後退させる際に、射出スリーブ1内に注湯された溶湯Mが、所定の充填率よりも大きい充填率を維持するように、プランジャ移動機構4によりプランジャ3を後退させる速度を調整する制御を行うように構成されている。これにより、所定の充填率よりも大きい充填率(溶湯Mが塊の状態)を維持したままプランジャ3を後退させることが可能となるので、プランジャ3を後退させる際にも溶湯Mが薄い層となることをより抑制することができる。その結果、溶湯Mの湯回り性が低下することをより抑制することが可能となるので、溶湯Mを射出する際のプランジャ3の射出速度または充填圧力を大きくすることをより抑制することができる。
【0055】
本実施形態では、上記のように、射出スリーブ1内に注湯された溶湯Mの充填高さfhを検知する充填高さ検知部6を備え、制御部5は、射出スリーブ1内に注湯された溶湯Mの充填高さfhが所定の充填高さよりも大きくなったことに基づいて、プランジャ移動機構4によりプランジャ3の後退を開始する制御を行うように構成されている。これにより、射出スリーブ1内の充填高さfhを検知することにより、溶湯Mの充填率を容易に、かつ、正確に取得することができる。その結果、プランジャ3の後退を開始するタイミングを容易に、かつ、正確に判定することが可能となるので、溶湯Mが薄い層のままプランジャ3の後退を開始することを防止することができる。
【0056】
本実施形態では、上記のように、制御部5は、注湯機構2による溶湯Mの注湯速度に基づいて、プランジャ移動機構4によりプランジャ3を後退させる速度を調整し、射出スリーブ1内に注湯された溶湯Mが、所定の充填率よりも大きい充填高さfhを維持するような制御を行うように構成されている。これにより、制御部5は、注湯速度に基づいてプランジャ3の後退速度を決定することが可能となるので、プランジャ3の後退速度を容易に調整することができる。その結果、制御部5は、プランジャ3を後退させる際に、射出スリーブ1内に注湯された溶湯Mが所定の充填率よりも大きい充填高さfhを維持して、プランジャ3の後退中に溶湯Mが薄い層となることを防止することができる。
【0057】
本実施形態では、上記のように、制御部5は、注湯機構2により略一定の注湯速度で注湯を行うとともに、プランジャ移動機構4によりプランジャ3を略一定の速度で後退させる制御を行うように構成されている。これにより、注湯速度とプランジャ3を後退させる速度とが、1対1の関係となるので、プランジャ3の後退中において、溶湯Mの厚みを略一定に維持することができる。
【0058】
本実施形態では、上記のように、注湯口1aは、溶湯Mの射出方向(X方向)において、少なくとも、射出スリーブ1の中央よりも前方側(X1方向側)に設けられている。これにより、注湯口1aを射出スリーブ1の後端部近傍に設ける構成と比較して、溶湯Mを注湯する際の射出スリーブ1内の容積をより小さくすることができる。その結果、射出スリーブ1に注湯された溶湯Mの温度が低下する速度をより小さくすることができる。
【0059】
本実施形態では、上記のように、注湯口1aは、金型9の固定型9aが取り付けられる固定ダイプレート101の近傍に設けられている。これにより、注湯口1aを射出スリーブ1の後端部近傍に設ける構成と比較して、溶湯Mを注湯する際の射出スリーブ1内の容積をより一層小さくすることができる。その結果、射出スリーブ1に注湯された溶湯Mの温度が低下する速度をより一層抑制することができる。
【0060】
本実施形態では、上記のように、注湯口1aを塞ぐ蓋機構7を備え、制御部5は、溶湯Mを射出する際に、蓋機構7により注湯口1aを塞ぐ制御を行うように構成されている。これにより、溶湯Mを射出する際に注湯口1aを塞ぐことが可能となるので、溶湯Mを射出する際に注湯口1aから溶湯Mが溢れ出ることを抑制することができる。
【0061】
本実施形態では、上記のように、射出スリーブ1内に固形潤滑剤を供給する固形潤滑剤供給装置8を備え、制御部5は、溶湯Mを金型9に射出した後の注湯口1aよりも後方側(X2方向側)の待機位置SPに配置されているプランジャ3を、溶湯Mが注湯される際のプランジャ3の配置位置である初期位置IPにプランジャ3を前方に移動させる前に、固形潤滑剤供給装置8によって射出スリーブ1内に固形潤滑剤を供給する制御を行うように構成されている。これにより、プランジャ3を初期位置IPに移動させる前に、注湯口1aよりも後方側(X2方向側)の待機位置SPに配置されている状態において固形潤滑剤を供給することにより、固形潤滑剤を射出スリーブ1内の全体に供給することが可能となるので、プランジャ3の摺動性を向上させることができる。その結果、プランジャ3の摺動抵抗が上昇することを抑制することが可能となるので、プランジャ3のかじり(焼き付き)を抑制することができる。
【0062】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0063】
たとえば、上記実施形態では、プランジャ移動機構4が油圧回路4aによって駆動される油圧シリンダである構成の例を示したが本発明はこれに限られない。たとえば、本発明では、
図5に示す第1変形例のダイカストマシン200のように、プランジャ移動機構4がモータ4bによって駆動される電動シリンダとして構成されていてもよい。溶湯Mの湯回り性が低下することを抑制することが可能なので、油圧シリンダと比較してプランジャ3の射出速度または充填圧力が小さい電動シリンダを用いたダイカストマシン200において、本発明を適用することは好適である。
【0064】
また、上記実施形態では、固定ダイプレート101の近傍に注湯口1aを設ける構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、本発明では、
図6に示す第2変形例のダイカストマシン300のように、固定ダイプレート101の一部の領域CRをX1方向側に掘り込み、掘り込んだ位置に注湯口1aを設けてもよい。このように構成すれば、注湯口1aをより前方側(X1方向側)に設けることが可能となるので、初期位置IPにプランジャ3を配置した際の射出スリーブ1内の容積を、より一層小さくすることができる。その結果、注湯時における溶湯Mの温度低下をより一層抑制することができる。
【0065】
また、上記実施形態では、充填高さ検知部6によって充填高さfhを検知することにより、溶湯Mの充填率を検知する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、本発明では、
図7に示す第3変形例のように、射出スリーブ1に温度センサ60を設けることにより、溶湯Mの充填率を検知するように構成されていてもよい。具体的には、充填率が50%となる位置に第1温度センサ60aを設け、制御部5は、第1温度センサ60aが所定の温度を超えた場合に、溶湯Mの充填率が50%を超えたと判定するように構成されていてもよい。なお、温度センサ60によっては、検知感度が低いものもある。そのため、温度上昇の傾向を予め取得しておき、充填率が50%よりも大きくなったことを検知可能な位置に温度センサ60を配置してもよい。また、溶湯Mの充填率の上限を検知するため、充填率が90%となる位置に第2温度センサ60bを設けてもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、充填高さ検知部6によって充填高さfhを検知することにより、溶湯Mの充填率を検知する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、本発明では、
図8に示す第4変形例のように、通電センサ160によって、溶湯Mの充填率を検知するように構成されていてもよい。通電センサ160は、1対の通電センサ(第1センサ160aおよび第2センサ160b)から構成されており、第1センサ160aおよび第2センサ160bの間が溶湯Mで満たされた場合に通電するように構成されている。したがって、通電センサ160を、所定の充填率(たとえば、充填率が50%)となる位置に設けることにより、溶湯Mの充填率を検知することができる。
【0067】
また、本発明では上記実施形態では、溶湯Mの充填率が50%を超えた場合にプランジャ3の後退を開始する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、本発明では、注湯する溶湯Mの量によって、プランジャ3の後退を開始する充填率を変更してもよい。たとえば、制御部5は、充填率が70%よりも大きくなった場合に、プランジャ3の後退を開始する制御を行うように構成されていてもよい。
【0068】
また、上記実施形態では、ダイカストマシン100がコールドチャンバ方式の構成である例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、本発明は、ホットチャンバ方式のダイカストマシンンに適用してもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、注湯機構2がラドル20によって溶湯Mを注湯する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、本発明では、注湯機構2は、溶湯Mを汲み上げるポンプと、溶湯Mを注湯するためのパイプを有した電磁給湯機構として構成されていてもよい。しかしながら、注湯機構2を電磁給湯機構として構成する場合、ユーザによるメンテナンスの負担が増加するため、注湯機構2はラドル20によって注湯する構成の方が好ましい。
【0070】
また、上記実施形態では、制御部5が略一定の速度で注湯を行う構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、制御部5は、略一定の速度で注湯を行わなくてもよい。ただし、制御部5は、溶湯Mの充填率(溶湯Mの厚み)を維持するために、プランジャ3を後退させる速度を調整する必要がある。
【0071】
また、上記実施形態では、制御部5が注湯速度に基づいて、プランジャ3を後退させる速度の制御を行う構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、本発明では、予め実験を行うことにより取得した注湯機構2による注湯速度とプランジャ3を後退させる速度との関係を、テーブルとして記憶部などに記憶しておき、制御部5は、記憶されたテーブルに基づいてプランジャ3を後退させる速度を制御するように構成されていてもよい。また、制御部5は、注湯速度とプランジャ3を後退させる速度とを蓄積し、注湯速度に最適なプランジャ3の後退速度を学習するように構成されていてもよい。
【0072】
また、上記実施形態では、制御部5が、充填高さ検知部6によって検知された溶湯Mの充填高さfhに基づいて、プランジャ3を後退させるタイミングを判定する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、本発明では、予め実験を行うことにより取得した溶湯Mの充填率が所定の充填率となるまでの注湯時間を記憶部などに記憶しておき、制御部5は、所定の注湯時間が経過した際にプランジャ3の後退を開始するように構成されていてもよい。
【0073】
また、上記実施形態では、ダイカストマシン100が充填高さ検知部6を備える構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。ダイカストマシン100は、充填高さ検知部6を備えていなくてもよい。ダイカストマシン100が充填高さ検知部6を備えていない場合、制御部5は、射出スリーブ1内に注湯された溶湯Mの重量に基づいて、溶湯Mの充填率を取得すればよい。たとえば、制御部5は、以下に示す式(1)に基づいて、溶湯Mの充填率を取得するように構成されていてもよい。
【数1】
ここで、チップ断面積とは、プランジャチップ31の断面積である。また、空打ちストロークとは、溶湯Mを射出する際にプランジャ3が移動する距離のことである。
【0074】
また、上記実施形態では、蓋機構7が、ロボットアーム72によって蓋部70を移動させることにより、注湯口1aを塞ぐ構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、蓋機構7は、射出スリーブ1に設けられた蓋部70をスライド移動することにより注湯口1aを開閉するシャッター機構によって構成されていてもよい。
【0075】
また、上記実施形態では、制御部5が、射出スリーブ1内に注湯された溶湯Mの充填率が所定の充填率よりも大きくなったことに基づいて、プランジャ移動機構4によりプランジャ3の後退を開始する制御を行う構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、制御部5は、射出スリーブ1内に注湯された溶湯Mの充填量が所定の充填量よりも大きくなったことに基づいて、プランジャ移動機構4によりプランジャ3の後退を開始する制御を行うように構成されていてもよい。
【0076】
また、上記実施形態では、制御部5が、プランジャ3を後退させる際に、射出スリーブ1内に注湯された溶湯Mが、所定の充填率よりも大きい充填率を維持するように、プランジャ移動機構4によりプランジャ3を後退させる速度を調整する制御を行う構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、制御部5は、プランジャ3を後退させる際に、射出スリーブ1内に注湯された溶湯Mが、所定の充填量よりも大きい充填量を維持するように、プランジャ移動機構4によりプランジャ3を後退させる速度を調整する制御を行うように構成されていてもよい。
【0077】
また、上記実施形態では、制御部5が、注湯機構2による溶湯Mの注湯速度に基づいて、プランジャ移動機構4によりプランジャ3を後退させる速度を調整し、射出スリーブ1内に注湯された溶湯Mが、所定の充填率よりも大きい充填高さを維持するような制御を行う構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、制御部5は、注湯機構2による溶湯Mの注湯速度に基づいて、プランジャ移動機構4によりプランジャ3を後退させる速度を調整し、射出スリーブ1内に注湯された溶湯Mが、所定の充填量よりも大きい充填高さを維持するような制御を行うように構成されていてもよい。
【0078】
また、上記実施形態では、説明の便宜上、制御部5の制御処理を、処理フローに沿って順番に処理を行うフロー駆動型のフローチャートを用いて説明した例について示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御部5の制御処理を、イベント単位で処理を実行するイベント駆動型(イベントドリブン型)の処理により行ってもよい。この場合、完全なイベント駆動型で行ってもよいし、イベント駆動およびフロー駆動を組み合わせて行ってもよい。
【符号の説明】
【0079】
1 射出スリーブ
1a 注湯口
2 注湯機構
3 プランジャ
4 プランジャ移動機構
5 制御部
6 充填高さ検知部
7 蓋機構
8 固形潤滑剤供給装置
9 金型
9a 固定型
100、200、300 ダイカストマシン
101 固定ダイプレート
fh 充填高さ
IP 初期位置
M 溶湯
SP 待機位置