(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-02
(45)【発行日】2023-08-10
(54)【発明の名称】超音波診断装置及びパルス繰り返し周波数制御プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 8/14 20060101AFI20230803BHJP
【FI】
A61B8/14
(21)【出願番号】P 2018227400
(22)【出願日】2018-12-04
【審査請求日】2021-09-17
(31)【優先権主張番号】P 2017237952
(32)【優先日】2017-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴田 千尋
(72)【発明者】
【氏名】掛江 明弘
(72)【発明者】
【氏名】西原 財光
【審査官】佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-248101(JP,A)
【文献】特開2017-035300(JP,A)
【文献】特開平08-322839(JP,A)
【文献】特開昭57-093045(JP,A)
【文献】特開2016-190032(JP,A)
【文献】特開2010-051798(JP,A)
【文献】特開平01-121040(JP,A)
【文献】特開2001-195567(JP,A)
【文献】国際公開第2009/016927(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 - 8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波画像に基づいて、
スキャン対象の浅部側の浅部輪郭線を特定する特定部と、
前記浅部輪郭線に基づいて、
複数のラスタの各ラスタについてパルス繰り返し周波数を設定する設定部と、
前記パルス繰り返し周波数に従ってスキャンを実行するように制御するスキャン制御部と、
を有する超音波診断装置。
【請求項2】
前記特定部は、
前記各ラスタ上の最浅部から最深部に向かって輝度値が最初に閾値以上となる位置をスキャン対象の輪郭点として求め、
複数のラスタにそれぞれ対応する複数の前記輪郭点を繋ぐ線を前記浅部輪郭線として設定する、
請求項
1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記特定部は、前記
浅部輪郭線より一定値だけ深い位置を含むようにスキャン領域を特定する、
請求項
2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記スキャン制御部は、前記スキャン領域内の複数のラスタを複数のブロックに分割し、前記複数のブロックに対して順に、かつ、各ブロック内の複数のラスタに対して順に超音波の送受信を実行する、
請求項
3に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記スキャン制御部は、前記スキャン領域内の複数のラスタを2個のブロックに分割し、前記2個のブロックに対して交互に、かつ、各ブロック内の複数のラスタに対して順に超音波の送受信を実行する、
請求項
4に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記スキャン制御部は、
前記スキャン領域の深さに基づいて、前記スキャン領域に対応するように前記各ラスタについてパルス繰り返し周波数を設定し、
前記スキャン領域の拡がりに基づいてスキャン角を設定する、
請求項
3乃至5のうちいずれか1項に記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記設定部は、Bモード、カラーモード、ドプラモード、3Dモード、及び、4Dモードのうち少なくとも1つについて、前記パルス繰り返し周波数を設定する、
請求項1乃至
6のうちいずれか1項に記載の超音波診断装置。
【請求項8】
コンピュータに、
超音波画像に基づいて、
スキャン対象の浅部側の浅部輪郭線を特定する機能と、
前記浅部輪郭線に基づいて、
複数のラスタの各ラスタについてパルス繰り返し周波数を設定する機能と、
前記パルス繰り返し周波数に従ってスキャンを実行するように制御する機能と、
を実現させるパルス繰り返し周波数制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、超音波診断装置及びパルス繰り返し周波数制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
医用分野では、超音波プローブの複数の振動子(圧電振動子)を用いて発生させた超音波を利用して、被検体内部を画像化する超音波診断装置が使用されている。超音波診断装置は、超音波診断装置に接続された超音波プローブから被検体内に超音波を送信させ、反射波に基づくエコー信号を生成し、画像処理によって所望の超音波画像を得る。
【0003】
従来の超音波診断装置では、臓器等の構造を把握するために、エコー信号に基づいてBモード処理した超音波画像であるBモード画像が利用されている。Bモード画像は、所謂白黒画像であり、輝度値の差異によって構造物の違いを表現する画像である。Bモード画像では、組織の違いにより音波の反射具合が異なることを利用しているため、大きく組織性状の異なる部分に関しては明瞭に境界等を描出できる。
【0004】
ここで、超音波診断装置で使用されるスキャン領域や、スキャン領域の深さによって決まるパルス繰り返し周波数(PRF:Pulse Repetition Frequency)は、スキャン前に予め決まっているので、スキャン対象の種類に応じてPRFをスキャンの度に変更したり、個人差によるスキャン対象の変化に応じてPRFをスキャンの度に変更したりすることはできない。したがって、無理にPRFを変更しようとすると、診断に必要な深さの領域をスキャン領域から除外してしまい、又は、診断に不要な深さの領域をスキャン領域に含めてしまうことが有り得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、スキャン対象に応じた適切なPRFを設定することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係る超音波診断装置は、特定部と、設定部と、スキャン制御部とを有する。特定部は、スキャン対象に応じて超音波のスキャン領域を特定する。設定部は、スキャン領域に対応するように、各ラスタについてパルス繰り返し周波数を設定する。スキャン制御部は、パルス繰り返し周波数に従ってスキャンを実行するように制御する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る超音波診断装置の構成を示す概略図。
【
図2】
図2は、実施形態に係る超音波診断装置の機能を示すブロック図。
【
図3】
図3は、実施形態に係る超音波診断装置の動作をフローチャートとして示す図。
【
図4】
図4は、実施形態に係る超音波診断装置において、スキャン対象に応じた第2のPRFの設定方法を説明するための図。
【
図5】
図5は、実施形態に係る超音波診断装置において、スキャン対象が心臓部である場合の第2のPRFの設定方法を説明するための図。
【
図6】
図6は、実施形態に係る超音波診断装置において、スキャン対象が腹部である場合の第2のPRFの設定方法を説明するための図。
【
図7】
図7は、実施形態に係る超音波診断装置において、スキャン対象が腹部である場合のカラードプラ画像の一例を示す図。
【
図8】
図8は、実施形態に係る超音波診断装置において、スキャン対象が胎児である場合の第2のPRFの設定方法を説明するための図。
【
図9】
図9は、実施形態に係る超音波診断装置において、胎児を第2のPRFでスキャンした場合に生成される3次元画像の例を示す図。
【
図10】
図10は、実施形態に係る超音波診断装置において、第2のスキャン領域内の複数のラスタで実行される複数の超音波送受信の順序を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、超音波診断装置及びパルス繰り返し周波数制御プログラムの実施形態について詳細に説明する。
【0010】
1.実施形態に係る超音波診断装置
図1は、実施形態に係る超音波診断装置の構成を示す概略図である。
【0011】
図1は、実施形態に係る超音波診断装置10を示す。また、
図1は、超音波プローブ20、入力部(例えば、入力インターフェース)30、及び表示部(例えば、ディスプレイ)40を示す。なお、超音波診断装置10に、超音波プローブ20、入力インターフェース30、及びディスプレイ40の少なくとも1個を加えた装置を超音波診断装置と称する場合もある。以下の説明では、超音波診断装置10の外部に、超音波プローブ20、入力インターフェース30、及びディスプレイ40の全てが備えられる場合について説明する。
【0012】
超音波診断装置10は、送受信部(例えば、送受信回路)11、Bモード処理部(例えば、Bモード処理回路)12、ドプラ処理部(例えば、ドプラ処理回路)13、画像生成部(例えば、画像生成回路)14、画像記憶部(例えば、画像メモリ)15、表示制御部(例えば、表示制御回路)16、ネットワーク接続部(例えば、ネットワーク接続回路)17、処理部(例えば、処理回路)18、及び記憶部(例えば、記憶回路)19を備える。回路11~14は、特定用途向け集積回路(ASIC:Application Specific Integrated Circuit)等によって構成されるものである。しかしながら、その場合に限定されるものではなく、回路11~14の機能の全部又は一部は、処理回路18がプログラムを実行することで実現されるものであってもよい。
【0013】
送受信回路11は、送信回路及び受信回路(図示省略)を有する。送受信回路11は、処理回路18による制御の下、超音波の送受信における送信指向性と受信指向性とを制御する。なお、送受信回路11が超音波診断装置10に設けられる場合について説明するが、送受信回路11は、超音波プローブ20に設けられてもよいし、超音波診断装置10及び超音波プローブ20の両方に設けられてもよい。
【0014】
送信回路は、パルス発生回路、送信遅延回路、及びパルサ回路等を有し、超音波振動子に駆動信号を供給する。パルス発生回路は、所定のレート周波数で、送信超音波を形成するためのレートパルスを繰り返し発生する。送信遅延回路は、超音波プローブ20の超音波振動子から発生される超音波をビーム状に集束して送信指向性を決定するために必要な圧電振動子ごとの遅延時間を、パルス発生回路が発生する各レートパルスに対し与える。また、パルサ回路は、レートパルスに基づくタイミングで、超音波振動子に駆動パルスを印加する。送信遅延回路は、各レートパルスに対し与える遅延時間を変化させることで、圧電振動子面から送信される超音波ビームの送信方向を任意に調整する。
【0015】
受信回路は、アンプ回路、A/D(Analog to Digital)変換器、及び加算器等を有し、超音波振動子が受信したエコー信号を受け、このエコー信号に対して各種処理を行ってエコーデータを生成する。アンプ回路は、エコー信号をチャンネル毎に増幅してゲイン補正処理を行う。A/D変換器は、ゲイン補正されたエコー信号をA/D変換し、デジタルデータに受信指向性を決定するのに必要な遅延時間を与える。加算器は、A/D変換器によって処理されたエコー信号の加算処理を行ってエコーデータを生成する。加算器の加算処理により、エコー信号の受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調される。
【0016】
Bモード処理回路12は、処理回路18による制御の下、受信回路からエコーデータを受信し、対数増幅、及び包絡線検波処理等を行って、信号強度が輝度の明るさで表現されるデータ(2次元又は3次元データ)を生成する。このデータは、一般に、Bモードデータと呼ばれる。
【0017】
ドプラ処理回路13は、処理回路18による制御の下、受信回路からのエコーデータから速度情報を周波数解析し、ドプラ効果による血流や組織を抽出し、平均速度、分散、パワー等の移動態情報を多点について抽出したデータ(2次元又は3次元データ)を生成する。このデータは、一般に、ドプラデータと呼ばれる。
【0018】
画像生成回路14は、処理回路18による制御の下、超音波プローブ20が受信したエコー信号に基づいて、所定の輝度レンジで表現された超音波画像を画像データとして生成する。例えば、画像生成回路14は、超音波画像として、Bモード処理回路12によって生成された2次元のBモードデータから反射波の強度を輝度にて表したBモード画像を生成する。また、画像生成回路14は、超音波画像として、ドプラ処理回路13によって生成された2次元のドプラデータから移動態情報を表す平均速度画像、分散画像、パワー画像、又は、これらの組み合わせ画像としてのカラードプラ画像を生成する。
【0019】
画像メモリ15は、1フレーム当たり2軸方向に複数のメモリセルを備え、それを複数フレーム分備えたメモリである2次元メモリを含む。画像メモリ15としての2次元メモリは、処理回路18の制御による制御の下、画像生成回路14によって生成された1フレーム、又は、複数フレームに係る超音波画像を2次元画像データとして記憶する。
【0020】
画像生成回路14は、処理回路18による制御の下、画像メモリ15としての2次元メモリに配列された超音波画像に対し、必要に応じて補間処理を行う3次元再構成を行うことで、画像メモリ15としての3次元メモリ内に超音波画像をボリュームデータとして生成する。補間処理方法としては、公知の技術が用いられる。
【0021】
画像メモリ15は、3軸方向(X軸、Y軸、及びZ軸方向)に複数のメモリセルを備えたメモリである3次元メモリを含む場合もある。画像メモリ15としての3次元メモリは、処理回路18の制御による制御の下、画像生成回路14によって生成された超音波画像をボリュームデータとして記憶する。
【0022】
表示制御回路16は、GPU(Graphics Processing Unit)及びVRAM(Video RAM)等を含む。表示制御回路16は、処理回路18の制御による制御の下、処理回路18から表示出力要求のあった超音波画像(例えば、ライブ画像)をディスプレイ40に表示させる。
【0023】
ネットワーク接続回路17は、ネットワークの形態に応じた種々の情報通信用プロトコルを実装する。ネットワーク接続回路17は、この各種プロトコルに従って、超音波診断装置10と、外部の医用画像管理装置50及び医用画像処理装置60等の他の機器とを接続する。この接続には、電子ネットワークを介した電気的な接続等を適用することができる。ここで、電子ネットワークとは、電気通信技術を利用した情報通信網全般を意味し、無線/有線の病院基幹のLAN(Local Area Network)やインターネット網のほか、電話通信回線網、光ファイバ通信ネットワーク、ケーブル通信ネットワーク及び衛星通信ネットワーク等を含む。
【0024】
また、ネットワーク接続回路17は、非接触無線通信用の種々のプロトコルを実装してもよい。この場合、超音波診断装置10は、例えば超音波プローブ20と、ネットワークを介さず直接にデータ送受信することができる。
【0025】
処理回路18は、専用又は汎用のCPU(central processing unit)、MPU(micro processor unit)、又はGPU(Graphics Processing Unit)の他、ASIC、及び、プログラマブル論理デバイス等を意味する。プログラマブル論理デバイスとしては、例えば、単純プログラマブル論理デバイス(SPLD:simple programmable logic device)、複合プログラマブル論理デバイス(CPLD:complex programmable logic device)、及び、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA:field programmable gate array)等が挙げられる。
【0026】
また、処理回路18は、単一の回路によって構成されてもよいし、複数の独立した回路要素の組み合わせによって構成されてもよい。後者の場合、記憶回路19は回路要素ごとに個別に設けられてもよいし、単一の記憶回路19が複数の回路要素の機能に対応するプログラムを記憶するものであってもよい。
【0027】
記憶回路19は、RAM(random access memory)、フラッシュメモリ(flash memory)等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等によって構成される。記憶回路19は、USB(universal serial bus)メモリ及びDVD(digital video disk)等の可搬型メディアによって構成されてもよい。記憶回路19は、処理回路18において用いられる各種処理プログラム(アプリケーションプログラムの他、OS(operating system)等も含まれる)や、プログラムの実行に必要なデータを記憶する。また、OSに、操作者に対するディスプレイ40への情報の表示にグラフィックを多用し、基礎的な操作を入力インターフェース30によって行うことができるGUI(graphical user interface)を含めることもできる。
【0028】
超音波プローブ20は、前面部に複数個の微小な振動子(圧電素子)を備え、スキャン対象を含む領域、例えば管腔体を含む領域に対して超音波の送受波を行う。各振動子は電気音響変換素子であり、送信時には電気パルスを超音波パルスに変換し、また、受信時には反射波を電気信号(受信信号)に変換する機能を有する。超音波プローブ20は小型、軽量に構成されており、ケーブル(又は無線通信)を介して超音波診断装置10に接続される。
【0029】
超音波プローブ20は、スキャン方式の違いにより、リニア型、コンベックス型、及びセクタ型等の種類に分けられる。また、超音波プローブ20は、アレイ配列次元の違いにより、アジマス方向に1次元(1D)的に複数個の振動子が配列された1Dアレイプローブと、アジマス方向かつエレベーション方向に2次元(2D)的に複数個の振動子が配列された2Dアレイプローブとの種類に分けられる。なお、1Dアレイプローブは、エレベーション方向に少数の振動子が配列されたプローブを含む。
【0030】
ここで、3Dスキャン、つまり、ボリュームスキャンが実行される場合、超音波プローブ20として、リニア型、コンベックス型、及びセクタ型等のスキャン方式を備えた2Dアレイプローブが利用される。又は、ボリュームスキャンが実行される場合、超音波プローブ20として、リニア型、コンベックス型、及びセクタ型等のスキャン方式を備え、エレベーション方向に機械的に揺動する機構を備えた1Dプローブが利用される。後者のプローブは、メカ4Dプローブとも呼ばれる。
【0031】
入力インターフェース30は、操作者によって操作が可能な入力デバイスからの信号を入力する回路と、入力デバイスとを含む。入力デバイスは、トラックボール、スイッチ、マウス、キーボード、走査面に触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、及び音声入力回路等によって実現される。操作者により入力デバイスが操作されると、入力インターフェース30はその操作に応じた入力信号を生成して処理回路18に出力する。
【0032】
ディスプレイ40は、例えば液晶ディスプレイやOLED(Organic Light Emitting Diode)ディスプレイ等の一般的な表示出力装置により構成される。ディスプレイ40は、処理回路18の制御に従って各種情報を表示する。
【0033】
また、
図1は、超音波診断装置10の外部機器である医用画像管理装置50及び医用画像処理装置60を示す。医用画像管理装置50は、例えば、DICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)サーバであり、ネットワークNを介してデータ送受信可能に超音波診断装置10等の機器に接続される。医用画像管理装置50は、超音波診断装置10によって生成された超音波画像等の医用画像をDICOMファイルとして管理する。
【0034】
医用画像処理装置60は、ネットワークNを介してデータ送受信可能に超音波診断装置10や医用画像管理装置50等の機器に接続される。医用画像処理装置60としては、例えば、超音波診断装置10によって生成された超音波画像に対して各種画像処理を施すワークステーションや、タブレット端末等の携帯型情報処理端末等が挙げられる。なお、医用画像処理装置60はオフラインの装置であって、超音波診断装置10によって生成された超音波画像を可搬型の記憶媒体を介して読み出し可能な装置であってもよい。
【0035】
続いて、超音波診断装置10の機能について説明する。
【0036】
図2は、超音波診断装置10の機能を示すブロック図である。
【0037】
処理回路18は、記憶回路19に記憶された、又は、処理回路18内に直接組み込まれたプログラムを読み出して実行することで、スキャン制御部(例えば、スキャン制御機能)21、特定部(例えば、スキャン領域特定機能)22、設定部(例えば、PRF設定機能)23を実現する。以下、機能21~23がソフトウェア的に機能する場合を例に挙げて説明するが、機能21~23の全部又は一部は、超音波診断装置10にASIC等の回路等として設けられるものであってもよい。
【0038】
スキャン制御機能21は、予め設定された第1のPRF、又は、後述のPRF設定機能23によって設定された第2のPRFに従ってスキャンを実行するように制御する機能である。スキャン制御機能21は、Bモード、カラーモード、ドプラモード、3Dモード、及び、4Dモードのうち少なくとも1つについて、PRFを制御することができる。
【0039】
スキャン領域特定機能22は、スキャン対象に応じて超音波のスキャン領域を特定する機能である。例えば、スキャン領域特定機能22は、スキャン制御機能21によるスキャンの実行により生成された超音波画像データに基づいて、スキャン領域を特定する。
【0040】
PRF設定機能23は、スキャン領域特定機能22によって特定されたスキャン領域に対応するように、複数のラスタの各ラスタについてPRFを設定する機能である。
【0041】
なお、機能21~23の機能の詳細については、
図3~
図9を用いて後述する。
【0042】
続いて、超音波診断装置10の動作について説明する。
【0043】
図3は、超音波診断装置10の動作をフローチャートとして示す図である。
図3において、「ST」に数字を付した符号はフローチャートの各ステップを示す。
図4は、超音波診断装置10において、スキャン対象に応じた第2のPRFの設定方法を説明するための図である。
図4は、セクタ型のスキャン方式を備えた1Dアレイプローブによって生成されるBモード画像を例示するものである。
【0044】
スキャン制御機能21は、入力インターフェース30を介した操作者からのスキャン開始指示に従って、送受信回路11等を統括的に制御して患者のスキャン対象を含む第1のスキャン領域に対して第1のPRFで第1のスキャンを実行し、スキャン対象を含む超音波画像、例えばBモード画像を生成する(ステップST1)。ステップST1では、スキャン制御機能21は、第1のスキャン領域の深さに基づいて第1のPRF(即ち、各ラスタの深さ)を設定し、第1のスキャン領域の拡がりに基づいて第1のスキャン角(即ち、ラスタ数)を設定する。
【0045】
ステップST1によって第1のスキャンが実行された場合、スキャン制御機能21は、Bモード画像をライブ画像として生成及び表示する(ステップST2)。また、ステップST1によって生成されたBモード画像は、画像メモリ15に記憶される。
【0046】
図4(A)は、超音波診断装置10における第1のスキャン領域を示す図である。
【0047】
図4(A)は、スキャン対象Pと、第1のスキャン領域Q1とを示す。また、
図4(A)は、スキャン対象Pを含み、第1のPRFを示す深さ(depth)の複数のラスタR1と、スキャン角θ1とを示す。なお、
図4(A)において、複数のラスタR1として11本のラスタを便宜的に示すが、その場合に限定されるものではない。
【0048】
スキャン角θ1の範囲内における複数のラスタR1において超音波ビームが送受信されることにより、第1のスキャン領域Q1に係るBモード画像が得られる。
【0049】
図3の説明に戻って、スキャン制御機能21は、超音波送受信の一時停止が要求されたか否か、即ち、ステップST2によって表示された表示画像のフリーズが指示されたか否かを判断する(ステップST3)。例えば、スキャン制御機能21は、入力インターフェース30を介した操作者から表示画像のフリーズ指示を受け付けた場合に、表示画像のフリーズが指示されたと判断する。ステップST3の判断にてNO、即ち、表示画像のフリーズが要求されていないと判断された場合、スキャン制御機能21は、次のフレームについて、患者のスキャン対象を含む第1のスキャン領域に対して第1のPRFで第1のスキャンを実行し、スキャン対象を含む超音波画像を生成する(ステップST1)。
【0050】
ステップST3の判断にてYES、即ち、表示画像のフリーズが要求されたと判断された場合、スキャン領域特定機能22は、超音波送受信の一時停止させ、ステップST2によって表示された表示画像、つまり、最新のBモード画像に基づいて、後述する第2のスキャン領域の最深線を特定する(ステップST4)。
【0051】
図4(B)は、超音波診断装置10における最深線を示す図である。
【0052】
図4(B)は、スキャン対象Pと、スキャン対象Pに基づいて特定される第2のスキャン領域の最深線Sとを示す。第1に、最深線Sは、複数のラスタR1の各ラスタ上の複数の輝度値に基づいて、自動的に設定される。例えば、複数のラスタR1の各ラスタ上の最深部から最浅部に向かって輝度値が最初に閾値以上となる位置がスキャン対象Pの輪郭点として求められる。複数のラスタR1にそれぞれ対応する複数の輪郭点を繋ぐ線がスキャン対象Pの輪郭線として設定される。そして、輪郭線が最深線Sとして特定されるか、又は、輪郭線に対して、一定の余裕(マージン)をもつように最深線Sが特定される。その場合、輪郭線から各ラスタの最深部の方向に一定値の分だけ離れた最深線Sが特定される。
【0053】
又は、複数のラスタR1の各ラスタ上の複数の輝度値のうち最大輝度値が求められ、最大輝度値の位置がスキャン対象Pの輪郭点として求められる。そして、複数のラスタR1にそれぞれ対応する複数の輪郭点を繋ぐ線がスキャン対象Pの輪郭線として設定される。
【0054】
第2に、第2のスキャン領域の最深線Sは、入力インターフェース30を介した操作者による操作により手動的に設定される。
【0055】
図3の説明に戻って、スキャン領域特定機能22は、ステップST4によって特定された第2のスキャン領域の最深線に基づいて、第2のスキャン領域を特定する(ステップST5)。例えば、スキャン領域特定機能22は、ステップST4によって特定された第2のスキャン領域の最深線を含むように第2のスキャン領域を特定する。PRF設定機能23は、ステップST5によって特定された第2のスキャン領域の深さに基づいて、ラスタ毎に設定された複数のPRFからなる第2のPRFを設定すると共に、ステップST5によって特定された第2のスキャン領域の拡がりに基づいて第2のスキャン角を設定する(ステップST6)。
【0056】
図4(C)は、超音波診断装置10における第2のスキャン領域を示す図である。
【0057】
図4(C)は、スキャン対象Pと、第2のスキャン領域の最深線S(
図4(B)に図示)を含む第2のスキャン領域Q2とを示す。また、
図4(C)は、スキャン対象Pを含み、第2のPRFを示す深さの複数のラスタR2と、スキャン角θ2とを示す。
【0058】
スキャン角θ2の範囲内における複数のラスタR2において超音波ビームが送受信されることにより、第2のスキャン領域Q2に係るBモード画像が得られる。
【0059】
図4(C)に示す第2のスキャン領域Q2は、
図4(A)に示す第1のスキャン領域Q1と比較して、深度が浅い。ラスタ毎に異なる第2のスキャン領域Q2の深度に相応するPRFが、ラスタ毎に設定されることで、第2のPRFが設定される。したがって、
図4(C)に示す第2のスキャン領域Q2において超音波を送受信する第2のスキャンでは、ラスタ毎に設定された複数のPRFからなる第2のPRFの採用によりフレームレートが向上する。
図4(C)に示す第2のスキャン領域Q2は、
図4(A)に示す第1のスキャン領域Q1と比較して、スキャン角が狭い。したがって、
図4(C)に示す第2のスキャン領域Q2において超音波を送受信する第2のスキャンでは、フレームレートが向上する。
【0060】
図3の説明に戻って、スキャン制御機能21は、入力インターフェース30からのフリーズ解除の指示に従って、送受信回路11等を統括的に制御して患者のスキャン対象を含む第2のスキャン領域に対して第2のPRFで第2のスキャンを実行し、スキャン対象を含む超音波画像を生成する(ステップST7)。
【0061】
ステップST7によってスキャンが実行された場合、スキャン制御機能21は、Bモード画像をライブ画像として生成及び表示する(ステップST8)。スキャン制御機能21は、入力インターフェース30を介した操作者からのスキャン終了指示に従って、第2のスキャンを終了するか否かを判断する(ステップST9)。ステップST9の判断にてNO、即ち、第2のスキャンを終了しないと判断される場合、スキャン制御機能21は、次のフレームについて、患者のスキャン対象を含む第2のスキャン領域に対して第2のPRFで第2のスキャンを実行し、スキャン対象を含む超音波画像を生成する(ステップST7)。
【0062】
ステップST9の判断にてYES、即ち、第2のスキャンを終了すると判断される場合、第2のスキャンが終了される。
【0063】
なお、
図3のステップST4~ST6において、スキャン領域特定機能22は、ステップST3のフリーズ後に第2のスキャン領域を特定するものとして説明したがその場合に限定されるものではない。例えば、スキャン領域特定機能22は、フリーズを行うことなく、Bモード画像が生成される度に第2のスキャン領域を特定し、Bモード画像が生成される度に第2のPRF及び第2のスキャン角を設定してもよい。その場合、スキャン制御機能21は、時間の経過に伴って変化する第2のスキャン領域に従って第2のスキャンを実行する(ステップST7)。
【0064】
超音波診断装置10によれば、スキャン対象の種類に応じてPRFを変更することができ、また、同一種類のスキャン対象でも個人差に応じてPRFを変更することができる。即ち、超音波診断装置10によれば、スキャン対象に応じた適切な第2のPRFを設定することができる。それにより、2次元スキャンにおいて、スキャン領域Q2外であって診断に寄与しない深い位置のエコー信号を待つことなく次のラスタの超音波送信に移行することができるので、ライブ画像のフレームレートを向上させることができる。
【0065】
続いて、スキャン対象Pの種類に応じた第2のPRFの設定方法について
図5~
図9を用いて説明する。
【0066】
図5は、超音波診断装置10において、スキャン対象が心臓部である場合の第2のPRFの設定方法を説明するための図である。
図5は、セクタ型のスキャン方式を備えた1Dアレイプローブによって生成されるBモード画像を例示するものである。
図5(A)は、超音波診断装置10において、心臓部を含むスキャン領域を示す図である。
【0067】
図5(A)は、スキャン対象Pとしての心臓部Pmと、第1のスキャン領域Q1とを示す。また、
図5(A)は、心臓部Pmを含み、第1のPRFを示す深さの複数のラスタR1と、スキャン角θ1とを示す。なお、
図5(A)において、複数のラスタR1として11本のラスタを便宜的に示すが、その場合に限定されるものではない。
【0068】
スキャン角θ1の範囲内における複数のラスタR1において超音波ビームが送受信されることにより、第1のスキャン領域Q1に係るBモード画像が得られる。
【0069】
図5(B)は、超音波診断装置10において、心臓部Pmに基づく第2のスキャン領域の最深線を示す図である。
【0070】
図5(B)は、スキャン対象Pとしての心臓部Pmと、心臓部Pmに基づいて特定される第2のスキャン領域の最深線Smとを示す。最深線Smは、最深線S(
図4(B)に図示)の一例である。前述したように、最深線Smは、複数のラスタR1の各ラスタ上の複数の輝度値に基づいて、自動的に設定される。又は、前述したように、最深線Smは、入力インターフェース30を介した操作者による操作により手動的に設定される。
【0071】
図5(C)は、超音波診断装置10において、心臓部Pmに基づく第2のスキャン領域を示す図である。
【0072】
図5(C)は、心臓部Pmと、第2のスキャン領域の最深線Sm(
図5(B)に図示)を含む第2のスキャン領域Q2とを示す。また、
図5(C)は、心臓部Pmを含み、第2のPRFを示す深さの複数のラスタR2と、スキャン角θ2とを示す。
【0073】
スキャン角θ2の範囲内における複数のラスタR2において超音波ビームが送受信されることにより、第2のスキャン領域Q2に係るBモード画像が得られる。
【0074】
図5(C)に示す第2のスキャン領域Q2は、
図5(A)に示す第1のスキャン領域Q1と比較して、深度が浅い。ラスタ毎に異なる第2のスキャン領域Q2の深度に相応するPRFが、ラスタ毎に設定されることで、第2のPRFが設定される。したがって、
図5(C)に示す第2のスキャン領域Q2において超音波を送受信する第2のスキャンでは、ラスタ毎に設定された複数のPRFからなる第2のPRFの採用によりフレームレートが向上する。また、
図5(C)に示す第2のスキャン領域Q2は、
図5(A)に示す第1のスキャン領域Q1と比較して、スキャン角が狭い。したがって、
図5(C)に示す第2のスキャン領域Q2において超音波を送受信する第2のスキャンでは、フレームレートが向上する。
【0075】
図6は、超音波診断装置10において、スキャン対象が腹部である場合の第2のPRFの設定方法を説明するための図である。
図6は、コンベックス型のスキャン方式を備えた1DアレイプローブによってBモード画像を例示するものである。
図6(A)は、超音波診断装置10において、腹部を含むスキャン領域を示す図である。
【0076】
図6(A)は、スキャン対象Pとしての腹部Pnと、第1のスキャン領域Q1とを示す。また、
図6(A)は、腹部Pnを含み、第1のPRFを示す深さの複数のラスタR1と、スキャン角θ1とを示す。なお、
図6(A)において、複数のラスタR1として9本のラスタを便宜的に示すが、その場合に限定されるものではない。
【0077】
スキャン角θ1の範囲内における複数のラスタR1において超音波ビームが送受信されることにより、第1のスキャン領域Q1に係るBモード画像が得られる。
【0078】
図6(B)は、超音波診断装置10において、腹部Pnに基づく第2のスキャン領域の最深線を示す図である。
【0079】
図6(B)は、スキャン対象Pとしての腹部Pnと、腹部Pnに基づいて特定される第2のスキャン領域の最深線Snとを示す。最深線Snは、最深線S(
図4(B)に図示)の一例である。前述したように、最深線Snは、複数のラスタR1の各ラスタ上の複数の輝度値に基づいて、自動的に設定される。又は、前述したように、最深線Snは、入力インターフェース30を介した操作者による操作により手動的に設定される。
【0080】
図6(C)は、超音波診断装置10において、腹部Pnに基づく第2のスキャン領域を示す図である。
【0081】
図6(C)は、腹部Pnと、第2のスキャン領域の最深線Sn(
図6(B)に図示)を含む第2のスキャン領域Q2とを示す。また、
図6(C)は、腹部Pnを含み、第2のPRFを示す深さの複数のラスタR2と、スキャン角θ2とを示す。
【0082】
スキャン角θ2の範囲内における複数のラスタR2において超音波ビームが送受信されることにより、第2のスキャン領域Q2に係るBモード画像が得られる。
【0083】
図6(C)に示す第2のスキャン領域Q2は、
図6(A)に示す第1のスキャン領域Q1と比較して、深度が浅い。ラスタ毎に異なる第2のスキャン領域Q2の深度に相応するPRFが、ラスタ毎に設定されることで、第2のPRFが設定される。したがって、
図6(C)に示す第2のスキャン領域Q2において超音波を送受信する第2のスキャンでは、ラスタ毎に設定された複数のPRFからなる第2のPRFの採用によりフレームレートが向上する。また、
図6(C)に示す第2のスキャン領域Q2は、
図6(A)に示す第1のスキャン領域Q1と比較して、スキャン角が同一である(θ1=θ2)。
【0084】
なお、実施形態をBモードに適用する場合について説明したが、その場合に限定されるものではない。実施形態をカラードプラモードに応用することもできる。
【0085】
図7は、超音波診断装置10において、スキャン対象が腹部である場合の第2のPRFの設定方法を説明するための図である。
図7は、コンベックス型のスキャン方式を備えた1Dアレイプローブによって生成されるカラードプラ画像を例示するものである。
図7(A)は、超音波診断装置10において、腹部を含むスキャン領域を示す図である。
【0086】
図7(A)は、スキャン対象Pとしての腹部Pnと、第1のスキャン領域Q1とを示す。また、
図7(A)は、腹部Pnを含み、第1のPRFを示す深さの複数のラスタR1と、スキャン角θ1とを示す。なお、
図7(A)において、複数のラスタR1として9本のラスタを便宜的に示すが、その場合に限定されるものではない。
【0087】
スキャン角θ1の範囲内における複数のラスタR1において超音波ビームが送受信されることにより、第1のスキャン領域Q1に係るBモード画像が得られる。また、Bモード画像の一部領域であるカラー表示領域Cにカラードプラモードによって得られる画像が重畳される。
【0088】
図7(B)は、超音波診断装置10において、腹部Pnに基づく第2のスキャン領域を示す図である。
【0089】
図7(B)は、腹部Pnと、第2のスキャン領域の最深線Sn(
図6(B)に図示)を含む第2のスキャン領域Q2とを示す。また、
図7(B)は、腹部Pnを含み、第2のPRFを示す深さの複数のラスタR2と、スキャン角θ2とを示す。
【0090】
ここで、カラー表示領域Cは、腹部の最深線Sn(横隔膜)より深い部分を含む。しかし、カラー表示領域C内であっても、最深線Snより深い部分は、カラードプラモードのスキャン領域に含めないようにする。なお、カラー表示領域C内であって最深線Snより深い部分については、
図7(A)に示す第1のスキャン領域Q1に係る第1のスキャンで生成された過去の画像が重畳されてもよい。
【0091】
なお、実施形態を2次元スキャンに適用する場合について説明したが、その場合に限定されるものではない。実施形態を2Dプローブアレイ又はメカ4Dプローブを用いた3次元スキャン(又は4次元スキャン)、即ち、ボリュームスキャンに適用することもできる。
【0092】
図8は、超音波診断装置10において、スキャン対象が胎児である場合の第2のPRFの設定方法を説明するための図である。
図4~
図7は、スキャン対象より深部をスキャン領域から除外しつつ、スキャン対象の全体をスキャンする場合の第2のスキャン領域を示す。一方で、
図8は、スキャン対象より深部をスキャン領域から除外しつつ、スキャン対象の浅部のみをスキャンする場合のスキャン領域を示す。
【0093】
図8は、コンベックス型のスキャン方式を備えた2Dアレイプローブ(又は、メカ4Dプローブ)によって生成される、ある断面のBモード画像を例示するものである。
図8(A)は、超音波診断装置10において、胎児を含むスキャン領域を示す図である。
【0094】
図8(A)は、ある断面におけるスキャン対象Pとしての胎児Poと、第1のスキャン領域Q1とを示す。また、
図8(A)は、胎児Poを含み、第1のPRFを示す深さの複数のラスタR1と、スキャン角θ1とを示す。なお、
図8(A)において、複数のラスタR1として9本のラスタを便宜的に示すが、その場合に限定されるものではない。
【0095】
スキャン角θ1の範囲内における複数のラスタR1において超音波ビームが送受信されることにより、第1のスキャン領域Q1に係るBモード画像が得られる。
【0096】
図8(B)は、超音波診断装置10において、胎児Poに基づく第2のスキャン領域の最深線を示す図である。
【0097】
図8(B)は、スキャン対象Pとしての胎児Poと、胎児Poに基づいて特定される第2のスキャン領域の最深線Soとを示す。最深線Soは、最深線S(
図4(B)に図示)の一例である。第1に、最深線Soは、複数のラスタR1の各ラスタ上の複数の輝度値に基づいて、自動的に設定される。例えば、複数のラスタR1の各ラスタ上の最浅部から最深部に向かって輝度値が最初に閾値以上となる位置が胎児Poの輪郭点として求められる。複数のラスタR1にそれぞれ対応する複数の輪郭点を繋ぐ線が胎児Poの輪郭線として設定される。そして、輪郭線に対して、一定の余裕をもつように最深線Soが特定される。その場合、輪郭線から各ラスタの最深部の方向に一定値の分だけ離れた最深線Soが特定される。
【0098】
又は、複数のラスタR1の各ラスタ上の複数の輝度値のうち最大輝度値が求められ、最大輝度値の位置が胎児Poの輪郭点として求められる。そして、複数のラスタR1にそれぞれ対応する複数の輪郭点を繋ぐ線が胎児Poの輪郭線として設定される。又は、胎児Poに対応する過去の画像に基づくパターンマッチングにより胎児Poの輪郭線が設定されてもよい。
【0099】
第2に、第2のスキャン領域の最深線Soは、入力インターフェース30を介した操作者による操作により手動的に設定される。
【0100】
図8(C)は、超音波診断装置10において、胎児Poに基づく第2のスキャン領域を示す図である。
【0101】
図8(C)は、胎児Poと、第2のスキャン領域の最深線So(
図8(B)に図示)を含む第2のスキャン領域Q2とを示す。また、
図8(C)は、胎児Poを含み、第2のPRFを示す深さの複数のラスタR2と、スキャン角θ2とを示す。
【0102】
スキャン角θ2の範囲内における複数のラスタR2において超音波ビームが送受信されることにより、第2のスキャン領域Q2に係るBモード画像が得られる。
【0103】
ボリュームスキャンでは、
図8に示す断面における第2のスキャン領域Q2の設定が、エレベーション方向に複数の断面についてそれぞれ行われる。
【0104】
図8(C)に示す第2のスキャン領域Q2は、
図8(A)に示す第1のスキャン領域Q1と比較して、深度が浅い。ラスタ毎に異なる第2のスキャン領域Q2の深度に相応するPRFが、ラスタ毎に設定されることで、第2のPRFが設定される。したがって、
図8(C)に示す第2のスキャン領域Q2において超音波を送受信する第2のスキャンでは、ラスタ毎に設定された複数のPRFからなる第2のPRFの採用によりボリュームレートが向上する。また、
図8(C)に示す第2のスキャン領域Q2は、
図8(A)に示す第1のスキャン領域Q1と比較して、スキャン角が狭い。したがって、
図8(C)に示す第2のスキャン領域Q2において超音波を送受信する第2のスキャンでは、ボリュームレートが向上する。
【0105】
図9は、超音波診断装置10において、胎児Poを第2のPRFでスキャンした場合に生成される3次元画像の例を示す図である。
【0106】
図9は、第2のスキャン領域Q2(
図8(C)に図示)によりボリュームスキャンされた場合に生成される複数のBモード画像に対してサーフェスレンダリング処理して得られた3次元画像を示す。このように、胎児の顔の表情を操作者に提示することができる。
【0107】
図5~
図9を用いて説明したように、超音波診断装置10によれば、スキャン対象の種類に応じてPRFを変更することができ、また、同一種類のスキャン対象でも個人差に応じてPRFを変更することができる。即ち、超音波診断装置10によれば、スキャン対象に応じた適切な第2のPRFを設定することができる。それにより、3次元スキャンにおいて、スキャン領域Q2外であって診断に寄与しない深い位置のエコー信号を待つことなく次のラスタ及び次の断面の超音波送信に移行することができるので、ライブ画像のボリュームレートを向上させることができる。
【0108】
2.第2のスキャン領域の最深線の特定方法
図3のステップST4において、スキャン領域特定機能22は、各ラスタ上の最深部から最浅部に向かって輝度値が最初に閾値以上となる位置(
図4~
図7に図示)、又は、各ラスタ上の最浅部から最深部に向かって輝度値が最初に閾値以上となる位置(
図8に図示)に基づいて、第2のスキャン領域の最深線を特定する場合について説明した。しかし、最深線の特定方法はそれらの場合に限定されるものではない。
【0109】
例えば、スキャン領域特定機能22は、アトラス画像(例えば、典型的なBモード画像)とステップST2によって生成及び表示されたBモード画像とのパターンマッチングを用いて、第2のスキャン領域の最深線を特定してもよいし、入力インターフェース30を介した操作者による操作により第2のスキャン領域の最深線を手動的に特定してもよい。また、スキャン領域特定機能22は、上述した輝度値処理やパターマッチングにより特定された最深線を、入力インターフェース30を介した操作者による操作により手動的に修正することで、第2のスキャン領域の最深線を特定してもよい。
【0110】
3.第2のスキャン領域内のスキャン方法
前述したように、スキャン制御機能21は、第2のスキャン領域内の複数のラスタに第2のPRFを採用して超音波送受信を実行する。ここで、第2のスキャン領域内の複数のラスタに対応する複数の超音波送受信の実行順序について説明する。
【0111】
図10は、第2のスキャン領域内の複数のラスタで実行される複数の超音波送受信の順序を示す図である。
【0112】
図10(A)は、第2のスキャン領域Q2内の複数のラスタR2、例えば、12個のラスタL1~L12を示す。ラスタの数は説明の便宜上12個とするが、その数に限定されるものではない。また、
図10(B)は、12個のラスタL1~L12で実行される12個の超音波送受信の実行順序を表として示す。
【0113】
図10(B)の順序1は、
図10(A)に示す12個のラスタL1~L12で、端のラスタL1から順番に端のラスタL12まで12個の超音波送受信を行う場合の実行順序を示す。
【0114】
第2のスキャン領域Q2において第2のPRFを採用すると、特にTHI(tissue harmonic imaging)やカラーモードの場合や、
図8に示すスキャン対象の浅部のみをスキャンする場合、
図10(B)の順序1では、残留多重を生じる可能性がある。つまり、順序1では、あるラスタでの超音波の送信で第2のスキャン領域Q2外の深部からの反射波を、隣りのラスタでの反射波の受信の際に受信してしまうという問題がある。
【0115】
そこで、スキャン制御機能21は、
図10(B)の順序2,3に示すように、第2のスキャン領域Q2内の12個のラスタL1~L12について、一定間隔離れたラスタに対して順に12個の超音波送受信を実行することが好適である。なお、スキャン制御機能21は、第2のPRFを構成する複数のPRFが大きく変わらない場合には、順序1を採用することもできる。
【0116】
具体的には、スキャン制御機能21は、第2のスキャン領域Q2内の12個のラスタL1~L12をu(u:2以上の整数)個のブロックに分割し、u個のブロックに対して順に、かつ、各ブロック内の複数のラスタに対して順に超音波送受信を実行する。なお、
図10(B)の順序2は、u=2の場合を示し、
図10(B)の順序3は、u=4の場合を示す。
【0117】
順序2の場合、スキャン制御機能21は、12個のラスタL1~L12を、6個のラスタL1~L6からなる第1のブロックと、6個のラスタL7~L12からなる第2のブロックとに分割する。スキャン制御機能21は、第1のブロック及び第2のブロックに対して交互に、かつ、各ブロック内の6個のラスタに対して順に超音波送受信を実行する。その場合、スキャン制御機能21は、ラスタL1,L7,L2,L8,…,L12の順に、第2のPRFを採用しながら単位スキャン当たり12個の超音波送受信を実行する。
【0118】
順序3の場合、スキャン制御機能21は、12個のラスタL1~L12を、3個のラスタL1~L3からなる第1のブロックと、3個のラスタL4~L6からなる第2のブロックと、3個のラスタL7~L9からなる第3のブロックと、3個のラスタL10~L12からなる第4のブロックとに分割する。スキャン制御機能21は、第1のブロック~第4のブロックに対して順に、かつ、各ブロック内の3個のラスタに対して順に超音波送受信を実行する。その場合、スキャン制御機能21は、ラスタL1,L4,L7,L10,L2,L5,…,L12の順に、第2のPRFを採用しながら単位スキャン当たり12個の超音波送受信を実行する。
【0119】
なお、スキャン制御機能21は、スキャン制御部の一例である。スキャン領域特定機能22は、特定部の一例である。PRF設定機能23は、設定部の一例である。
【0120】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、スキャン対象に応じた適切なPRFを設定することができる。
【0121】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0122】
10 超音波診断装置
18 処理回路
21 スキャン制御機能
22 スキャン領域特定機能
23 PRF設定機能