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特許7324582熱可塑性樹脂組成物およびこれから成形された成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-02
(45)【発行日】2023-08-10
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂組成物およびこれから成形された成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 69/00 20060101AFI20230803BHJP
   C08L 51/04 20060101ALI20230803BHJP
   C08L 25/08 20060101ALI20230803BHJP
   C08K 5/49 20060101ALI20230803BHJP
   C08L 67/00 20060101ALI20230803BHJP
【FI】
C08L69/00
C08L51/04
C08L25/08
C08K5/49
C08L67/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018246801
(22)【出願日】2018-12-28
(65)【公開番号】P2019119887
(43)【公開日】2019-07-22
【審査請求日】2021-12-20
(31)【優先権主張番号】10-2017-0184703
(32)【優先日】2017-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520087103
【氏名又は名称】ロッテ ケミカル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】李 宇 鎭
(72)【発明者】
【氏名】金 善 英
(72)【発明者】
【氏名】禹 殷 澤
【審査官】飛彈 浩一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0187690(US,A1)
【文献】特開2014-105275(JP,A)
【文献】特開2002-220527(JP,A)
【文献】特開平10-298421(JP,A)
【文献】特開平09-059505(JP,A)
【文献】特開2004-115668(JP,A)
【文献】特開2011-094153(JP,A)
【文献】米国特許第06596800(US,B1)
【文献】特開2009-013410(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0012217(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 69/00
C08L 51/04
C08L 25/08
C08K 5/49
C08L 67/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネート樹脂 100質量部と、
コア-シェル構造を有するゴム変性ビニルグラフト共重合体 1質量部~30質量部と、
芳香族ビニル共重合体樹脂 5質量部~50質量部と、
リン系難燃剤 5質量部~50質量部と、
ポリエステル樹脂 0.1~30質量部と、
を含み、
前記ポリカーボネート樹脂は、重量平均分子量が10,000g/mol~30,000g/molである第1のポリカーボネート樹脂と、重量平均分子量が35,000g/mol~60,000g/molである第2のポリカーボネート樹脂と、を含み、
前記コア-シェル構造を有するゴム変性ビニルグラフト共重合体は、ブタジエン/エチルアクリレートゴムに少なくともアルキル(メタ)アクリレート単量体がグラフト重合されてなる、熱可塑性樹脂組成物であって、
前記第1のポリカーボネート樹脂および前記第2のポリカーボネート樹脂は、芳香族ポリカーボネート樹脂であり、
前記ポリカーボネート樹脂は、ポリカーボネート樹脂全体の質量を100質量%として、前記第1のポリカーボネート樹脂 10質量%~90質量%と、前記第2のポリカーボネート樹脂 10質量%~90質量%と、を含み、
前記熱可塑性樹脂組成物は、ASTM D256に基づいて測定した厚さ1/8インチ試験片のノッチ付きアイゾット衝撃強度が60kgf・cm/cm~70kgf・cm/cmであり、
前記熱可塑性樹脂組成物は、成形温度300℃、金型温度80℃、射出圧1,500kgf/cm 、および射出速度120mm/sの条件で厚さ1.0mmのスパイラル形状の金型で射出成形して得られる試験片のスパイラルフロー長さが160mm~250mmである、熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
前記コア-シェル構造を有するゴム変性ビニルグラフト共重合体は、前記ブタジエン/エチルアクリレートゴムに前記アルキル(メタ)アクリレート単量体および芳香族ビニル単量体を含む単量体混合物がグラフト重合されてなる、請求項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
前記芳香族ビニル共重合体樹脂は、芳香族ビニル単量体由来の構成単位およびシアン化ビニル単量体由来の構成単位を含む重合体である、請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
前記芳香族ビニル共重合体樹脂は、重量平均分子量が10,000g/mol~300,000g/molである、請求項1~のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
前記リン系難燃剤は、ホスフェート化合物、ホスホネート化合物、ホスフィネート化合物、ホスフィンオキシド化合物、およびホスファゼン化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
前記熱可塑性樹脂組成物は、UL-94垂直試験法により測定した1.5mm厚の試験片の難燃性が5VBである、請求項1~のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項7】
前記熱可塑性樹脂組成物は、ISO R306に基づいて5kgの荷重、50℃/hrの条件で測定したビカット軟化温度が90℃~120℃である、請求項1~のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1~のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物から成形される、成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂組成物およびこれから成形された成形品に関する。より具体的には、本発明は、化学的耐性、耐衝撃性、難燃性、耐熱性、流動性などに優れた熱可塑性樹脂組成物およびこれから成形された成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂および芳香族ビニル共重合体樹脂のブレンド物は、耐衝撃性、難燃性、耐熱性、加工性などに優れ、コンピューターハウジング、事務用機器などの熱を多く発散させる大型射出物に適用されている。
【0003】
しかし、一般に、ポリカーボネート樹脂は、アルカリおよびこれに準じる金属イオン、低分子量のオイル、多湿な環境下等で分解され、機械的物性や難燃性などが低下し、破損が発生するおそれがあるので、多様な用途に適用するには限界がある。また、樹脂組成物に難燃性を付与するためにリン系難燃剤を適用しているが、この場合、ポリカーボネート樹脂特有の分解性により、化学的耐性、機械的物性、難燃性などの低下が発生するおそれがある。樹脂組成物の化学的耐性を向上させるためにポリエステル樹脂を適用する例があるが、難燃性、機械的物性の低下を防止するには適していない。
【0004】
したがって、化学的耐性、耐衝撃性、難燃性、耐熱性、流動性などに優れた熱可塑性樹脂組成物の開発が必要な実情にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】韓国公開特許第10-2010-0077648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、化学的耐性、耐衝撃性、難燃性、耐熱性、流動性などに優れた熱可塑性樹脂組成物を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、上記熱可塑性樹脂組成物から成形された成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂100質量部と、コア-シェル構造を有するゴム変性ビニルグラフト共重合体 1質量部~30質量部と、芳香族ビニル共重合体樹脂 5質量部~50質量部と、リン系難燃剤 5質量部~50質量部とを含み、前記ポリカーボネート樹脂は、重量平均分子量が10,000g/mol~30,000g/molである第1のポリカーボネート樹脂と、重量平均分子量が35,000g/mol~60,000g/molである第2のポリカーボネート樹脂と、を含み、前記コア-シェル構造ゴム変性ビニルグラフト共重合体は、ゴム質重合体に少なくともアルキル(メタ)アクリレート単量体がグラフト重合されてなることを特徴とする。
【0009】
具体例において、前記ポリカーボネート樹脂は、ポリカーボネート樹脂全体の質量を100質量%として、前記第1のポリカーボネート樹脂 10質量%~90質量%と、前記第2のポリカーボネート樹脂 10質量%~90質量%とを含んでもよい。
【0010】
具体例において、前記コア-シェル構造を有するゴム変性ビニルグラフト共重合体は、前記ゴム質重合体に前記アルキル(メタ)アクリレート単量体および芳香族ビニル単量体を含む単量体混合物がグラフト重合されてなるものであってもよい。
【0011】
具体例において、前記芳香族ビニル共重合体樹脂は、芳香族ビニル単量体由来の構成単位およびシアン化ビニル単量体由来の構成単位を含む重合体であってもよい。
【0012】
具体例において、前記芳香族ビニル共重合体樹脂は、重量平均分子量が10,000g/mol~300,000g/molであってもよい。
【0013】
具体例において、前記リン系難燃剤は、ホスフェート化合物、ホスホネート化合物、ホスフィネート化合物、ホスフィンオキシド化合物及びホスファゼン化合物のうち1種以上を含んでもよい。
【0014】
具体例において、前記熱可塑性樹脂組成物は、ポリエステル樹脂をさらに含んでもよい。
【0015】
具体例において、前記熱可塑性樹脂組成物は、ASTM D256に基づいて測定した厚さ1/8インチ試験片のノッチ付きアイゾット衝撃強度が、10kgf・cm/cm~70kgf・cm/cmであってもよい。
【0016】
具体例において、前記熱可塑性樹脂組成物は、UL-94垂直試験法により測定した1.5mm厚の試験片の難燃性が5VBであってもよい。
【0017】
具体例において、前記熱可塑性樹脂組成物は、ISO R306に基づいて5kgの荷重、昇温速度50℃/hrの条件で測定したビカット(Vicat)軟化温度が90℃~120℃であってもよい。
【0018】
具体例において、前記熱可塑性樹脂組成物は、成形温度300℃、金型温度80℃、射出圧1,500kgf/cm、および射出速度120mm/sの条件で厚さ1.0mmのスパイラル形状の金型で射出成形して得られる試験片のスパイラルフロー長さが160mm~250mmであってもよい。
【0019】
本発明の他の実施形態は、成形品に関する。前記成形品は、前記熱可塑性樹脂組成物から成形されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、化学的耐性、耐衝撃性、難燃性、耐熱性、流動性などに優れた熱可塑性樹脂組成物、およびこれから成形された成形品が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下では、本発明を詳細に説明する。
【0022】
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物は、(A)ポリカーボネート樹脂、(B)コア-シェル構造を有するゴム変性ビニルグラフト共重合体、(C)芳香族ビニル共重合体樹脂、および(D)リン系難燃剤を含む。
【0023】
(A)ポリカーボネート樹脂
本発明のポリカーボネート樹脂は、熱可塑性樹脂組成物の化学的耐性、難燃性、流動性などを向上させるために、重量平均分子量が異なる2種のポリカーボネート樹脂を混合したものであって、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)で測定した重量平均分子量が10,000g/mol~30,000g/mol、好ましくは15,000g/mol~29,000g/molである第1のポリカーボネート樹脂と、GPCで測定した重量平均分子量が35,000g/mol~60,000g/mol、好ましくは36,000g/mol~50,000g/molである第2のポリカーボネート樹脂と、を含むものである。
【0024】
前記第1のポリカーボネート樹脂の重量平均分子量が10,000g/mol未満である場合は、熱可塑性樹脂組成物の化学的耐性、難燃性、耐衝撃性などが低下する。前記第2のポリカーボネート樹脂の重量平均分子量が60,000g/molを超える場合は、熱可塑性樹脂組成物の流動性などが低下する。
【0025】
また、第1のポリカーボネート樹脂と第2のポリカーボネート樹脂との重量平均分子量の差は、5,000g/mol以上であることが好ましく、7,000g/mol以上であることがより好ましい。前記第1のポリカーボネート樹脂および第2のポリカーボネート樹脂の重量平均分子量の差が5,000g/mol未満である場合は、熱可塑性樹脂組成物の難燃性、化学的耐性、流動性などが低下するおそれがある。
【0026】
具体例において、前記第1および第2のポリカーボネート樹脂としては、それぞれの重量平均分子量の範囲を有する通常の熱可塑性ポリカーボネート樹脂を使用してもよく、例えば、ジフェノール類(芳香族ジヒドロキシ化合物)をホスゲン、ハロゲンホルメート、炭酸ジエステルなどのカーボネート前駆体と反応させることによって製造される芳香族ポリカーボネート樹脂を使用してもよい。
【0027】
具体例において、前記ジフェノール類としては、例えば、4,4'-ビフェノール、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-メチルブタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2-ビス(3-クロロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジクロロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパンなどが例示できるが、これらに制限されない。例えば、前記ジフェノール類としては、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジクロロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、または1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンが好ましく、ビスフェノールAと呼ばれる2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンがより好ましい。
【0028】
具体例において、前記第1および第2のポリカーボネート樹脂は、分枝鎖を有するものであってもよく、例えば、重合に使用されるジフェノール類全体に対して、0.05モル%~2モル%の3官能以上の多官能化合物、例えば、3個以上のフェノール性水酸基を有する化合物を添加して製造してもよい。
【0029】
具体例において、前記第1のポリカーボネート樹脂の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)全体の質量を100質量%として、10質量%~90質量%が好ましく、10質量%~60質量%がより好ましく、15質量%~40質量%がさらに好ましい。前記第2のポリカーボネートの含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)全体の質量を100質量%として、10質量%~90質量%が好ましく、40質量%~90質量%がより好ましく、60質量%~85質量%がさらに好ましい。このような範囲であれば、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性、化学的耐性(耐油性)、難燃性、流動性、これらの物性バランスなどがさらに向上する。
【0030】
(B)コア-シェル構造を有するゴム変性ビニルグラフト共重合体
本発明で用いられるコア-シェル構造を有するゴム変性ビニルグラフト共重合体は、熱可塑性樹脂組成物の化学的耐性(耐油性)、耐衝撃性、外観特性などを向上させるものであって、ゴム質重合体にアルキル(メタ)アクリレート単量体、またはアルキル(メタ)アクリレート単量体および芳香族ビニル単量体を含む単量体混合物がグラフト重合されてなるものであってもよい。例えば、前記コア-シェル構造を有するゴム変性ビニルグラフト共重合体は、ゴム質重合体にアルキル(メタ)アクリレート単量体、またはアルキル(メタ)アクリレート単量体および芳香族ビニル単量体を含む単量体混合物をグラフト重合することによって得ることができる。重合は、乳化重合、懸濁重合などの公知の重合方法によって行われてもよい。また、前記コア-シェル構造を有するゴム変性ビニルグラフト共重合体は、コア(ゴム質重合体)-シェル(アルキル(メタ)アクリレート単量体由来の構成単位または単量体混合物に含まれる単量体由来の構成単位を有する重合体)の構造を有する。
【0031】
具体例において、前記ゴム質重合体としては、例えば、ポリブタジエン、ポリ(スチレン-ブタジエン)、ポリ(アクリロニトリル-ブタジエン)などのジエンゴム、前記ジエンゴムを水素添加した飽和ゴム、イソプレンゴム、炭素数2~10のアルキル(メタ)アクリレートゴム、炭素数2~10のアルキル(メタ)アクリレートおよびスチレンの共重合体、ならびにエチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体(EPDM)などが例示される。これらは、単独でも、または2種以上を混合して用いてもよい。例えば、前記ゴム質重合体としては、ジエンゴム、(メタ)アクリレートゴムなどを使用してもよく、具体的には、ブタジエンゴム、ブチルアクリレートゴム、エチルアクリレートゴム、またはこれらの組み合わせなどを使用してもよい。
【0032】
具体例において、前記ゴム質重合体(ゴム粒子)は、粒度分布測定器で測定した平均粒子径(D50)が0.05μm~6μmであることが好ましく、0.15μm~4μmであることがより好ましく、0.25μm~3.5μmであることがさらに好ましい。このような範囲で、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性、外観特性などがさらに向上する。ここで、平均粒子径は、公知の乾式法により、マスターサイザー(Mastersizer、登録商標)2000Eシリーズ(Malvern Instruments Ltd.)装備を用いて測定した。
【0033】
具体例において、前記ゴム質重合体の含有量は、コア-シェル構造を有するゴム変性ビニルグラフト共重合体全体の質量を100質量%として、10質量%~70質量%であることが好ましく、20質量%~60質量%であることがより好ましい。前記アルキル(メタ)アクリレート単量体由来の構成単位または単量体混合物に含まれる単量体由来の構成単位の含有量は、コア-シェル構造を有するゴム変性ビニルグラフト共重合体全体の質量を100質量%として、30質量%~90質量%であることが好ましく、40質量%~80質量%であることがより好ましい。このような範囲であれば、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性、化学的耐性などがさらに向上する。
【0034】
具体例において、前記アルキル(メタ)アクリレート単量体は、単独で前記ゴム質重合体にグラフト重合されてもよく、前記芳香族ビニル単量体と混合されて前記ゴム質重合体にグラフト重合されてもよい。このような単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートなどが例示できる。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。前記アルキル(メタ)アクリレート単量体は、単独でシェルに適用してもよい。前記単量体混合物に含まれる場合、その含有量は、単量体混合物100質量%中の6質量%~85質量%であることが好ましく、20質量%~80質量%であることがより好ましく、40質量%~70質量%であることがさらに好ましい。このような範囲であれば、熱可塑性樹脂組成物の化学的耐性、外観特性などがさらに向上する。
【0035】
具体例において、前記芳香族ビニル単量体としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-t-ブチルスチレン、エチルスチレン、ビニルキシレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、ジブロモスチレン、ビニルナフタレンなどが例示できる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。前記芳香族ビニル単量体の含有量は、前記単量体混合物100質量%中の15質量%~94質量%であることが好ましく、20質量%~80質量%であることがより好ましく、30質量%~60質量%であることがさらに好ましい。このような範囲であれば、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性などがさらに向上する。
【0036】
具体例において、前記コア-シェル構造を有するゴム変性ビニルグラフト共重合体としては、ブタジエンゴムのゴム質重合体にメチルメタクリレートがグラフト重合されたグラフト共重合体、ブタジエンゴムのゴム質重合体にメチルメタクリレートおよびスチレンがグラフト重合されたグラフト共重合体などが例示できる。
【0037】
具体例において、前記コア-シェル構造を有するゴム変性ビニルグラフト共重合体は、前記ポリカーボネート樹脂100質量部に対して1質量部~30質量部、好ましくは5質量部~25質量部で含まれる。前記コア-シェル構造を有するゴム変性ビニルグラフト共重合体の含有量が、前記ポリカーボネート樹脂100質量部に対して1質量部未満である場合、熱可塑性樹脂組成物の化学的耐性、耐衝撃性などが低下する。前記コア-シェル構造を有するゴム変性ビニルグラフト共重合体の含有量が前記ポリカーボネート樹脂100質量部に対して30質量部を超える場合は、熱可塑性樹脂組成物の難燃性、外観特性などが低下する。
【0038】
(C)芳香族ビニル共重合体樹脂
本発明の一具体例に係る芳香族ビニル共重合体樹脂は、芳香族ビニル単量体由来の構成単位およびシアン化ビニル単量体由来の構成単位を含む重合体であってもよい。例えば、前記芳香族ビニル共重合体樹脂は、芳香族ビニル単量体およびシアン化ビニル単量体を混合した後、これを重合することによって得ることができる。重合は、乳化重合、懸濁重合、塊状重合などの公知の重合方法によって行われてもよい。
【0039】
具体例において、前記芳香族ビニル単量体としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-t-ブチルスチレン、エチルスチレン、ビニルキシレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、ジブロモスチレン、ビニルナフタレンなどが挙げられる。これらは、単独でもまたは2種以上を混合して用いてもよい。前記芳香族ビニル単量体由来の構成単位の含有量は、芳香族ビニル共重合体樹脂全体を100質量%として20質量%~90質量%が好ましく、30質量%~80質量%がより好ましい。このような範囲であれば、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性、流動性などに優れる。
【0040】
具体例において、前記シアン化ビニル単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル、フェニルアクリロニトリル、α-クロロアクリロニトリル、フマロニトリルなどが例示できる。これらは、単独でもまたは2種以上を混合して用いてもよい。例えば、前記シアン化ビニル単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルが好ましい。前記シアン化ビニル単量体の含有量は、芳香族ビニル共重合体樹脂全体の質量を100質量%として10質量%~80質量%が好ましく、20質量%~70質量%がより好ましい。このような範囲であれば、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性、流動性などがさらに向上する。
【0041】
具体例において、前記芳香族ビニル共重合体樹脂は、加工性および耐熱性を付与するための単量体由来の構成単位などをさらに含んでもよい。このような単量体としては、(メタ)アクリル酸またはそのエステル、無水マレイン酸、N-置換マレイミドなどが挙げられるが、これらに限定されない。加工性および耐熱性を付与するための単量体を使用する場合、その含有量は、単量体混合物100質量%中の15質量%以下が好ましく、0.1質量%~10質量%であることがより好ましい。このような範囲であれば、他の物性が低下することなく、熱可塑性樹脂組成物に加工性および耐熱性を付与することができる。
【0042】
具体例において、前記芳香族ビニル共重合体樹脂は、GPC(gel permeation chromatography)で測定した重量平均分子量(Mw)が10,000g/mol~300,000g/molであることが好ましく、60,000g/mol~200,000g/molであることがより好ましい。このような範囲であれば、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性、流動性などがさらに向上する。
【0043】
具体例において、前記芳香族ビニル共重合体樹脂は、前記ポリカーボネート樹脂100質量部に対して5質量部~50質量部、好ましくは20質量部~40質量部で含まれる。前記芳香族ビニル共重合体樹脂の含有量が前記ポリカーボネート樹脂100質量部に対して5質量部未満である場合、熱可塑性樹脂組成物の流動性、化学的耐性などが低下する。前記芳香族ビニル共重合体樹脂の含有量が前記ポリカーボネート樹脂100質量部に対して50質量部を超える場合、熱可塑性樹脂組成物の難燃性、耐衝撃性などが低下する。
【0044】
具体例において、前記コア-シェル構造を有するゴム変性ビニルグラフト共重合体(B)と前記芳香族ビニル共重合体樹脂(C)との質量比((B):(C))は、1:1~1:3であることが好ましく、1:1.5~1:2.5であることがより好ましい。このような範囲であれば、熱可塑性樹脂組成物の化学的耐性、耐衝撃性、流動性、外観特性、難燃性などの物性バランスなどがさらに向上する。
【0045】
(D)リン系難燃剤
本発明の一具体例に係るリン系難燃剤は、通常の熱可塑性樹脂組成物に使用されるリン系難燃剤であってもよい。例えば、ホスフェート化合物、ホスホネート化合物、ホスフィネート化合物、ホスフィンオキシド化合物、ホスファゼン化合物、またはこれらの金属塩などのリン系難燃剤を使用してもよい。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0046】
具体例において、前記リン系難燃剤は、下記化学式1で表される芳香族リン酸エステル化合物(ホスフェート化合物)を含むことが好ましい。
【0047】
【化1】
【0048】
前記化学式1中、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、無置換の炭素数6~20のアリール基、または炭素数1~10のアルキル基で置換された炭素数6~20のアリール基であり、Rは、無置換の炭素数6~20のアリーレン基、または炭素数1~10のアルキル基で置換された炭素数6~20のアリーレン基である。アリーレン基の例としては、例えば、レゾルシノール、ヒドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールSなどのジフェノールから誘導される2価の基が挙げられる。nは、0~10であり、好ましくは0~4の整数である。
【0049】
前記化学式1で表される芳香族リン酸エステル化合物の例としては、nが0である場合、ジフェニルホスフェートなどのジアリルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレシルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリ(2,6-ジメチルフェニル)ホスフェート、トリ(2,4,6-トリメチルフェニル)ホスフェート、トリ(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスフェート、トリ(2,6-ジメチルフェニル)ホスフェートなどが挙げられる。nが1である化合物としては、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、レゾルシノールビス[ビス(2,6-ジメチルフェニル)ホスフェート]、レゾルシノールビス[ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスフェート]、ヒドロキノンビス[ビス(2,6-ジメチルフェニル)ホスフェート]、ヒドロキノンビス[ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスフェート]などが挙げられる。また、nが2以上であるオリゴマー型リン酸エステル化合物などであってもよいが、これらに制限されない。これらは、単独で使用してもよく、2種以上の混合物の形態で使用してもよい。
【0050】
具体例において、前記リン系難燃剤は、前記ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、5質量部~50質量部、好ましくは20質量部~40質量部で含まれる。前記リン系難燃剤の含有量が前記ポリカーボネート樹脂100質量部に対して5質量部未満である場合は、熱可塑性樹脂組成物の難燃性、流動性などが低下する。前記リン系難燃剤の含有量が前記ポリカーボネート樹脂100質量部に対して50質量部を超える場合は、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性、化学的耐性、耐熱性などが低下する。
【0051】
本発明の一具体例に係る熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂組成物の化学的耐性(耐油性)などをさらに向上させるために、ポリエステル樹脂をさらに含んでもよい。
【0052】
具体例において、前記ポリエステル樹脂は、ジカルボン酸成分として、テレフタル酸(terephthalic acid、TPA)、イソフタル酸(isophthalic acid、IPA)、1,2-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、1,6-ナフタレンジカルボン酸、1,7-ナフタレンジカルボン酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸;ジメチルテレフタレート(dimethyl terephthalate、DMT)、ジメチルイソフタレート、ジメチル-1,2-ナフタレート、ジメチル-1,5-ナフタレート、ジメチル-1,7-ナフタレート、ジメチル-1,7-ナフタレート、ジメチル-1,8-ナフタレート、ジメチル-2,3-ナフタレート、ジメチル-2,6-ナフタレート、ジメチル-2,7-ナフタレートなどの芳香族ジカルボキシレート等と、ジオール成分として、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール等と、を重縮合することによって得ることができるが、これらに制限されない。
【0053】
具体例において、前記ポリエステル樹脂は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、およびポリトリメチレンテレフタレート(PTT)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでもよい。
【0054】
具体例において、前記ポリエステル樹脂は、o-クロロフェノール溶液(濃度:0.5g/dl)を用いて35℃で測定した固有粘度が、0.4dl/g~1.5dl/gであることが好ましい。
【0055】
具体例において、前記ポリエステル樹脂は、前記ポリカーボネート樹脂100質量部に対して30質量部以下で含まれることが好ましく、0.1質量部~10質量部で含まれることがより好ましい。このような範囲であれば、熱可塑性樹脂組成物の化学的耐性(耐油性)、耐衝撃性、難燃性などがさらに向上する。
【0056】
本発明の一具体例に係る熱可塑性樹脂組成物は、通常の熱可塑性樹脂組成物に含まれる添加剤をさらに含んでもよい。前記添加剤としては、滴下防止剤、充填剤、酸化防止剤、滑剤、離型剤、核剤、安定剤、顔料、染料、これらの混合物などを例示することができる。前記添加剤を使用する場合、その含有量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して0.001質量部~40質量部が好ましく、0.1質量部~10質量部がより好ましい。
【0057】
本発明の一具体例に係る熱可塑性樹脂組成物は、上記の成分を混合し、通常の二軸押出機を用いて、好ましくは200℃~280℃、より好ましくは220℃~250℃の成形温度で溶融・押出して得られるペレット形状であってもよい。
【0058】
具体例において、前記熱可塑性樹脂組成物は、ASTM D256に基づいて測定した厚さ1/8インチ試験片のノッチ付きアイゾット衝撃強度が10kgf・cm/cm~70kgf・cm/cmであることが好ましく、40kgf・cm/cm~65kgf・cm/cmであることがより好ましい。
【0059】
具体例において、前記熱可塑性樹脂組成物は、UL-94垂直試験法により測定した1.5mm厚の試験片の難燃性が、5VBであることが好ましい。
【0060】
具体例において、前記熱可塑性樹脂組成物は、ISO R306に基づいて5kgの荷重、50℃/hrの条件で測定したビカット軟化温度が90℃~120℃であることが好ましく、93℃~110℃であることがより好ましい。
【0061】
具体例において、前記熱可塑性樹脂組成物は、成形温度300℃、金型温度80℃、射出圧1,500kgf/cm、および射出速度120mm/sの条件で厚さ1.0mmのスパイラル形状の金型で射出成形して得られる試験片のスパイラルフロー長さが、160mm~250mmであることが好ましく、160mm~200mmであることがより好ましい。
【0062】
本発明に係る成形品は、本発明の熱可塑性樹脂組成物から成形される。前記熱可塑性樹脂組成物は、ペレット形状に製造されてもよく、製造されたペレットは、射出成形、押出成形、真空成形、キャスティング成形などの多様な成形方法を通じて多様な成形品(製品)に製造され得る。このような成形方法は、本発明の属する分野で通常の知識を有する者によく知られている。前記成形品は、化学的耐性、耐衝撃性、難燃性、耐熱性、流動性などに優れるので、電気/電子製品の外装材、事務用機器の外装材などとして有用である。
【実施例
【0063】
以下、実施例を通じて本発明をより具体的に説明する。しかし、これらの実施例は、説明の目的のためのものに過ぎなく、本発明を制限するものと解釈してはならない。
【0064】
以下では、実施例及び比較例で使用された各成分の仕様を説明する。
【0065】
(A)ポリカーボネート樹脂
(A1)重量平均分子量(Mw)が25,000g/molであるビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂(製造会社:Lotte Advanced Materials Co.,Ltd.)を使用した。
【0066】
(A2)重量平均分子量(Mw)が40,000g/molであるビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂(製造会社:帝人化成株式会社、製品名:K1300)を使用した。
【0067】
(A3)重量平均分子量(Mw)が32,000g/molであるビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂(製造会社:Lotte Advanced Materials Co.,Ltd.)を使用した。
【0068】
(B)コア-シェル構造ゴム変性ビニルグラフト共重合体
(B1)ブタジエン/エチルアクリレートゴム(コア、平均粒子径:310nm)に、メチルメタクリレートをグラフト重合することによってシェルを形成したコア-シェル構造を有するゴム変性ビニルグラフト共重合体(製造会社:呉羽化学工業株式会社、製品名:EXL-2602)を使用した。
【0069】
(B2)45質量%のブタジエンゴム(コア、平均粒子径:310nm)に、55質量%のスチレンおよびアクリロニトリル(質量比:75/25)をグラフト重合することによってシェルを形成したg-ABSを使用した。
【0070】
(C)芳香族ビニル共重合体樹脂
スチレン75質量%およびアクリロニトリル25質量%が重合されたSAN樹脂(重量平均分子量:130,000g/mol)を使用した。
【0071】
(D)リン系難燃剤
ビスフェノールAジホスフェート(製造会社:Yoke Chemical、製品名:BDP)を使用した。
【0072】
(E)ポリエステル樹脂
ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂(製造会社:Lotte Chemical Corporation、製品名:BCN76)を使用した。
【0073】
(実施例1~6および比較例1~6)
上記の各成分を下記の表1および2に記載した含有量で添加した後、230℃で押出することによってペレットを製造した。押出は、L/D=36、直径45mmである二軸押出機を用いて行った。製造されたペレットを、80℃で2時間以上乾燥した後、6オンス射出成形機(成形温度:230℃、金型温度:60℃)で射出することによって試験片を製造した。製造された試験片に対して下記の方法で物性を評価し、その結果を下記の表1および表2に示した。
【0074】
物性測定方法
(1)耐衝撃性評価:ASTM D256に基づいて、厚さ1/8インチ試験片のノッチ付きアイゾット衝撃強度(単位:kgf・cm/cm)を測定した。
【0075】
(2)難燃性評価:UL-94垂直試験法で、1.5mm厚の試験片の難燃性を測定した。
【0076】
(3)耐熱性評価:ISO R306に基づいて5kgの荷重、昇温速度50℃/hrの条件でビカット軟化温度(Vicat Softening Temperature:VST)(単位:℃)を測定した。
【0077】
(4)流動性評価:射出成形機(製造会社:WOOJIN Plaimm Co.,Ltd.、装置名:TE150-IE3)を用いて、成形温度300℃、金型温度80℃、射出圧1,500kgf/cm、および射出速度120mm/sの条件で厚さ1.0mmのスパイラル形状の金型で射出成形して得られる試験片のスパイラルフロー長さ(単位:mm)を測定した。長さが長いほど流動性(成形性)が優秀になる。
【0078】
(5)化学的耐性(耐油性)評価:ASTM D638に基づいて製造した3.2mm厚の試験片を横の長さ(a)12cm、縦の長さ(b)4cmの1/4楕円治具に曲げて応力を加えた状態で、試験片の表面に食用油およびキッチン用クリーナー(製造会社:花王株式会社、製品名:マジックリン(登録商標))をそれぞれ塗布し、72時間後にクラックの発生有無を確認した。(クラック未発生:○、クラック発生:×)
【0079】
【表1】
【0080】
【表2】
【0081】
上記表1および表2の結果から、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、化学的耐性、耐衝撃性、難燃性、耐熱性、流動性など、全てに優れることが分かる。
【0082】
一方、重量平均分子量が異なる2種のポリカーボネート樹脂((A1)および(A2))の代わりに、1種のポリカーボネート樹脂(A3)のみを使用した比較例1の場合、難燃性、化学的耐性などが低下したことが分かる。本発明の第2のポリカーボネート樹脂(A2)の代わりに、重量平均分子量の範囲が本発明の範囲外である(A3)を使用した比較例2の場合は、流動性などが低下したことが分かる。本発明の第1のポリカーボネート樹脂(A1)の代わりに、重量平均分子量の範囲が本発明の範囲外である(A3)を使用した比較例3の場合は、化学的耐性、難燃性などが低下したことが分かる。コア-シェル構造を有するゴム変性ビニルグラフト共重合体の添加量が少ない比較例4の場合は、耐衝撃性、化学的耐性などが低下したことが分かり、コア-シェル構造を有するゴム変性ビニルグラフト共重合体の添加量が多すぎる比較例5の場合は、難燃性などが低下したことが分かる。本発明のコア-シェル構造を有するゴム変性ビニルグラフト共重合体の代わりに、g-ABSを使用した比較例6の場合は、難燃性、化学的耐性などが低下したことが分かる。
【0083】
本発明の単純な変形および変更は、この分野で通常の知識を有する者によって容易に実施可能であり、このような変形や変更は、いずれも本発明の領域に含まれるものと見なすことができる。