(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-02
(45)【発行日】2023-08-10
(54)【発明の名称】オレフィン類重合用固体触媒成分、オレフィン類重合用触媒及びオレフィン類重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 4/654 20060101AFI20230803BHJP
C08F 10/00 20060101ALI20230803BHJP
【FI】
C08F4/654
C08F10/00 510
(21)【出願番号】P 2019035545
(22)【出願日】2019-02-28
【審査請求日】2022-02-18
(73)【特許権者】
【識別番号】390007227
【氏名又は名称】東邦チタニウム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】弁理士法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パダバッタン ゴビンダスワミィ
(72)【発明者】
【氏名】鵜澤 努
(72)【発明者】
【氏名】魚住 俊也
【審査官】尾立 信広
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-055103(JP,A)
【文献】米国特許第03459726(US,A)
【文献】特開平04-103604(JP,A)
【文献】特開2001-329014(JP,A)
【文献】特開平03-234714(JP,A)
【文献】特開昭50-036584(JP,A)
【文献】国際公開第2008/133147(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 4/60-4/70
C08F 6/00-246/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、マグネシウム、チタン及びハロゲンを含有し、
内部電子供与性化合物として、チオエーテル基含有内部電子供与性化合物(a)及び硫黄を含有しない内部電子供与性化合物(b)を含有し、該チオエーテル基含有内部電子供与性化合物(a)は、
下記一般式(i):
R
1
-O-CO-R
2
-S-R
3
-CO-O-R
4
(i)
(式中、R
1
及びR
4
は、炭素数1~20の直鎖状アルキル基、炭素数3~20の分岐アルキル基、ビニル基、炭素数3~20の直鎖状アルケニル基、炭素数3~20の分岐アルケニル基、炭素数1~20の直鎖状ハロゲン置換アルキル基、炭素数3~20の分岐ハロゲン置換アルキル基、炭素数2~20の直鎖状ハロゲン置換アルケニル基、炭素数3~20の分岐ハロゲン置換アルケニル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、炭素数3~20のシクロアルケニル基、炭素数3~20のハロゲン置換シクロアルキル基、炭素数3~20のハロゲン置換シクロアルケニル基、炭素数6~24の芳香族炭化水素基又は炭素数6~24のハロゲン置換芳香族炭化水素基であり、R
1
とR
4
は、同一であっても異なってもよい。R
2
及びR
3
は、2価の有機基であり、R
2
とR
3
は、同一であっても異なってもよい。)
で表されるチオエーテル基含有ジエステル化合物であること、
を特徴とするオレフィン類重合用固体触媒成分。
【請求項2】
硫黄の含有量が0.1~10.0質量%であることを特徴とする請求項1記載のオレフィン類重合用固体触媒成分。
【請求項3】
前記チオエーテル基含有内部電子供与性化合物(a)及び前記硫黄を含有しない内部電子供与性化合物(b)の合計含有量に対する前記チオエーテル基含有内部電子供与性化合物(a)の含有量の割合((a/(a+b))×100)が、0.5~50.0質量%であることを特徴とする請求項1又は2いずれか1項記載のオレフィン類重合用固体触媒成分。
【請求項4】
少なくとも(A)請求項1~
3いずれか1項記載のオレフィン類重合用固体触媒成分及び(B)下記一般式(2):
R
2
pAlQ
3-p (2)
(式中、R
2は炭素数1~4のアルキル基を示し、Qは水素原子またはハロゲン原子を示し、pは0<p≦3の実数である。R
2が複数存在する場合、複数のR
2は互いに同一であっても異なってもよく、Qが複数存在する場合、複数のQは互いに同一であっても異なってもよい。)
で表される有機アルミニウム化合物を相互に接触させて
、オレフィン類重合用触媒を得ることを特徴とするオレフィン類重合用触媒
の製造方法。
【請求項5】
請求項
4記載の
オレフィン類重合用触媒の製造方法を行い得られるオレフィン類重合用触媒の存在下にオレフィン類の重合を行うことを特徴とするオレフィン類重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィン類重合用固体触媒成分、オレフィン類重合用触媒及びオレフィン類重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、オレフィン類重合用触媒として、チタンなどの遷移金属触媒成分とアルミニウムなどの典型金属触媒成分とからなる固体触媒が広く知られている。
【0003】
また、従来より、プロピレンなどのオレフィン類の重合においては、マグネシウム原子、チタン原子、ハロゲン原子及び電子供与性化合物を必須成分として含む固体触媒成分が知られている。また該固体触媒成分、有機アルミニウム化合物及び有機ケイ素化合物から成るオレフィン類重合用触媒の存在下に、オレフィン類を重合もしくは共重合させる方法が数多く提案されている。
【0004】
たとえば、特許文献1(特開昭57-63310号公報)には、フタル酸エステル等の電子供与性化合物が担持された固体状チタン触媒成分と、助触媒成分として有機アルミニウム化合物と、少なくとも一つのSi-O-C結合を有する有機ケイ素化合物とを含むオレフィン類重合用触媒を用いてプロピレンを重合させる方法が提案されており、上記特許文献を含め多くの文献において電子供与性化合物としてフタル酸エステルを使用し、高い重合活性の下、高立体規則性ポリマーを得る方法が提案されている。
【0005】
また、特許文献2(特開2004-91513号公報)には、フタル酸エステルを用いないオレフィン類重合用触媒が提案されている。
【0006】
ここで、オレフィン類重合用固体触媒を用いて製造されるオレフィン類重合体は、包装材料、繊維、文具、容器、自動車部材等の多岐にわたる用途に用いられている。その中でも、自動車部材などの屋外で使用されるものにおいては、常温よりも高い温度で長期間使用されるため、酸化劣化し難く、耐酸化劣化寿命が長いことが要求される。
【0007】
そこで、特許文献3には、オレフィン類重合体に、酸化防止剤を添加することにより、耐酸化劣化寿命を長くすることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開昭57-63310号公報
【文献】特開2004-91513号公報
【文献】特開2011-52177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献3等のように、オレフィン類重合体に酸化防止剤を添加する方法では、耐酸化性を向上させるために、酸化防止剤の添加量を増やす必要があるが、オレフィン類重合体への酸化防止剤の添加量にも限度があり、また、酸化防止剤の使用量が多くなると製造コストの上昇を招く。
【0010】
従って、本発明の目的は、オレフィン類重合体の耐酸化劣化寿命を長くすることができる新規な手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記技術課題を解決すべく、本発明者等が鋭意検討を重ねた結果、オレフィン類重合用固体触媒成分に用いられている内部電子供与性化合物として、チオエーテル基を1つ以上と、カルボン酸エステル基、カルボニル基及びエーテル基からなる群から選ばれる含酸素電子供与性基を2つ以上と、を有するチオエーテル基含有内部電子供与性化合物を、従来より内部電子供与性化合物として用いられている硫黄原子を含有しない内部電子供与性化合物と併用して、オレフィン類重合用固体触媒成分を調製し、得られる固体触媒成分を用いて形成されたオレフィン類重合用触媒により得られるポリオレフィンは、従来のオレフィン類重合用固体触媒成分を、固体触媒成分として用いて形成されたオレフィン類重合用触媒により得られるポリオレフィンに比べ、耐酸化劣化寿命が長くなること等を見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明(1)は、少なくとも、マグネシウム、チタン及びハロゲンを含有し、
内部電子供与性化合物として、チオエーテル基含有内部電子供与性化合物(a)及び硫黄を含有しない内部電子供与性化合物(b)を含有し、該チオエーテル基含有内部電子供与性化合物(a)は、チオエーテル基を1つ以上と、カルボン酸エステル基、カルボニル基、エーテル基及びカーボネート基からなる群から選ばれる含酸素電子供与性基を2つ以上と、を有する化合物であること、
を特徴とするオレフィン類重合用固体触媒成分を提供するものである。
【0013】
また、本発明(2)は、硫黄の含有量が0.1~10.0質量%であることを特徴とする(1)のオレフィン類重合用固体触媒成分を提供するものである。
【0014】
また、本発明(3)は、前記チオエーテル基含有内部電子供与性化合物(a)及び前記硫黄を含有しない内部電子供与性化合物(b)の合計含有量に対する前記チオエーテル基含有内部電子供与性化合物(a)の含有量の割合((a/(a+b))×100)が、0.5~50.0質量%であることを特徴とする(1)又は(2)いずれかのオレフィン類重合用固体触媒成分を提供するものである。
【0015】
また、本発明(4)は、前記チオエーテル基含有内部電子供与性化合物(a)が、チオエーテル基を1つと、カルボン酸エステル基を2つと、を有するチオエーテル基含有ジカルボン酸エステル化合物であることを特徴とする(1)~(3)いずれかのオレフィン類重合用固体触媒成分を提供するものである。
【0016】
また、本発明(5)は、前記チオエーテル基含有内部電子供与性化合物(a)が、下記一般式(1):
R1-O-CO-R2-S-R3-CO-O-R4 (1)
(式中、R1及びR4は、炭素数1~20の直鎖状アルキル基、炭素数3~20の分岐アルキル基、ビニル基、炭素数3~20の直鎖状アルケニル基、炭素数3~20の分岐アルケニル基、炭素数1~20の直鎖状ハロゲン置換アルキル基、炭素数3~20の分岐ハロゲン置換アルキル基、炭素数2~20の直鎖状ハロゲン置換アルケニル基、炭素数3~20の分岐ハロゲン置換アルケニル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、炭素数3~20のシクロアルケニル基、炭素数3~20のハロゲン置換シクロアルキル基、炭素数3~20のハロゲン置換シクロアルケニル基、炭素数6~24の芳香族炭化水素基、炭素数6~24のハロゲン置換芳香族炭化水素基であり、R1とR4は、同一であっても異なってもよい。R2及びR3は、2価の有機基であり、R2とR3は、同一であっても異なってもよい。)
で表されるチオエーテル基含有ジカルボン酸エステル化合物であることを特徴とする(1)~(4)いずれかのオレフィン類重合用固体触媒成分を提供するものである。
【0017】
また、本発明(6)は、マグネシウム化合物と、四価のチタンハロゲン化合物と、内部電子供与性化合物と、を接触させるオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法であって、
該内部電子供与性化合物が、チオエーテル基を1つ以上と、カルボン酸エステル基、カルボニル基、エーテル基及びカーボネート基からなる群から選ばれる含酸素電子供与性基を2つ以上と、を有するチオエーテル基含有内部電子供与性化合物(a)、及び硫黄を含有しない内部電子供与性化合物(b)であること、
を特徴とするオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法を提供するものである。
【0018】
また、本発明(7)は、前記チオエーテル基含有内部電子供与性化合物(a)が、下記一般式(1):
R1-O-CO-R2-S-R3-CO-O-R4 (1)
(式中、R1及びR4は、炭素数1~20の直鎖状アルキル基、炭素数3~20の分岐アルキル基、ビニル基、炭素数3~20の直鎖状アルケニル基、炭素数3~20の分岐アルケニル基、炭素数1~20の直鎖状ハロゲン置換アルキル基、炭素数3~20の分岐ハロゲン置換アルキル基、炭素数2~20の直鎖状ハロゲン置換アルケニル基、炭素数3~20の分岐ハロゲン置換アルケニル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、炭素数3~20のシクロアルケニル基、炭素数3~20のハロゲン置換シクロアルキル基、炭素数3~20のハロゲン置換シクロアルケニル基、炭素数6~24の芳香族炭化水素基、炭素数6~24のハロゲン置換芳香族炭化水素基であり、R1とR4は、同一であっても異なってもよい。R2及びR3は、2価の有機基であり、R2とR3は、同一であっても異なってもよい。)
で表されるチオエーテル化合物であることを特徴とする(6)のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法を提供するものである。
【0019】
また、本発明(8)は、少なくとも(A)(1)~(5)いずれかのオレフィン類重合用固体触媒成分及び(B)下記一般式(2):
R2
pAlQ3-p (2)
(式中、R2は炭素数1~4のアルキル基を示し、Qは水素原子またはハロゲン原子を示し、pは0<p≦3の実数である。R2が複数存在する場合、複数のR2は互いに同一であっても異なってもよく、Qが複数存在する場合、複数のQは互いに同一であっても異なってもよい。)
で表される有機アルミニウム化合物を相互に接触させて得られたものであることを特徴とするオレフィン類重合用触媒を提供するものである。
【0020】
また、本発明(9)は、さらに(C)外部電子供与性化合物を相互に接触させて得られたものであることを特徴とする(8)のオレフィン類重合用触媒を提供するものである。
【0021】
また、本発明(10)は、(8)または(9)いずれかのオレフィン類重合用触媒の存在下にオレフィン類の重合を行うことを特徴とするオレフィン類重合体の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、オレフィン類重合体の耐酸化劣化寿命を長くすることができる新規な手段を提供することができ、耐酸化劣化寿命が長いオレフィン類重合体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の第一の形態のオレフィン類重合用固体触媒成分は、少なくとも、マグネシウム、チタン及びハロゲンを含有し、
内部電子供与性化合物として、チオエーテル基含有内部電子供与性化合物(a)及び硫黄を含有しない内部電子供与性化合物(b)を含有し、該チオエーテル基含有内部電子供与性化合物(a)は、チオエーテル基を1つ以上と、カルボン酸エステル基、カルボニル基、エーテル基及びカーボネート基からなる群から選ばれる含酸素電子供与性基を2つ以上と、を有する化合物であること、
を特徴とするオレフィン類重合用固体触媒成分である。
【0024】
本発明の第一の形態のオレフィン類重合用固体触媒成分は、少なくとも、マグネシウム、チタン及びハロゲンを含有するオレフィン類重合用固体触媒成分である。本発明の第一の形態のオレフィン類重合用固体触媒成分中のマグネシウムは、固体触媒成分の原料のマグネシウム化合物に主に由来し、チタンは、固体触媒成分の原料のチタンハロゲン化物に主に由来し、ハロゲンは、固体触媒成分の原料のチタンハロゲン化物又はマグネシウム化合物に主に由来する。また、本発明の第一の形態のオレフィン類重合用固体触媒成分は、マグネシウム、チタン及びハロゲンを以外に、硫黄及び酸素を含有する。本発明の第一の形態のオレフィン類重合用固体触媒成分中の硫黄は、固体触媒成分の電子供与性化合物に主に由来し、酸素は、固体触媒成分の原料のマグネシウム化合物または固体触媒成分の電子供与性化合物に主に由来する。
【0025】
本発明の第一の形態のオレフィン類重合用固体触媒成分中のマグネシウム、チタン、ハロゲン、硫黄及び酸素の含有量は、特に制限されず、製造するオレフィン類重合体の物性値等に合わせて適宜選択される。マグネシウムとしてのマグネシウム原子の含有量は、好ましくは10.0~70.0質量%、特に好ましくは10.0~50.0質量%であり、チタンとしてのチタン原子の含有量は、好ましくは0.1~10.0質量%、特に好ましくは0.5 ~8.0質量%であり、ハロゲンとしてのハロゲン原子の含有量は、好ましくは20.0~90.0質量%、特に好ましくは30.0~85.0質量%であり、硫黄としての硫黄原子の含有量は、好ましくは0.1~10.0質量%、特に好ましくは0.5~10.0質量%である。本発明の第一の形態のオレフィン類重合用固体触媒成分に含まれるハロゲンとしては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子から選ばれる1種以上のハロゲン原子が好ましく、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子から選ばれる1種以上のハロゲン原子がより好ましく、塩素原子及びヨウ素原子から選ばれる1種以上のハロゲン原子がさらに好ましい。
【0026】
なお、本発明において、オレフィン類重合用固体触媒成分中に含まれるチタン原子の含有率及びマグネシウム原子の含有率は、JIS 8311-1997「チタン鉱石中のチタン定量方法」に記載の方法(酸化還元滴定)に準じて測定した値を意味する。
【0027】
また、本発明において、オレフィン類重合用固体触媒成分中に含まれるハロゲン原子の含有量は、固体触媒成分を硫酸と純水の混合溶液で処理して水溶液とした後、所定量を分取し、硝酸銀標準溶液でハロゲン原子を滴定する硝酸銀滴定法によって測定した値を意味する。
【0028】
また、本発明において、オレフィン類重合用固体触媒成分中に含まれる硫黄原子の含有量は、GC(ガスクロマトグラフィ)により、チオエーテル基含有内部電子供与性化合物(a)を定量分析し、その量から算出した値を意味する。ただし、オレフィン類重合用固体触媒成分中に含まれる硫黄原子の含有量は、ICP(Inductively Coupled Plasma)の元素分析によって測定された値であってもよい。
【0029】
本発明の第一の形態のオレフィン類重合用固体触媒成分は、内部電子供与性化合物、すなわち、電子供与性基を1つ以上有する化合物として、チオエーテル基含有内部電子供与性化合物(a)及び硫黄を含有しない内部電子供与性化合物(b)を含有する。つまり、本発明の第一の形態のオレフィン類重合用固体触媒成分では、電子供与性化合物として、チオエーテル基含有内部電子供与性化合物(a)と、硫黄を含有しない内部電子供与性化合物(b)とが併用されている。
【0030】
本発明の第一の形態のオレフィン類重合用固体触媒成分に係るチオエーテル基含有内部電子供与性化合物(a)は、チオエーテル基を1つ以上と、カルボン酸エステル基、カルボニル基、エーテル基及びカーボネート基からなる群から選ばれる含酸素電子供与性基を2つ以上と、を有する化合物である。チオエーテル基含有内部電子供与性化合物(a)は、分子内に、チオエーテル基(-S-)を有している。つまり、チオエーテル基含有内部電子供与性化合物(a)のチオエーテル基の硫黄原子の結合手はいずれも、炭素原子に結合している。そして、チオエーテル基含有内部電子供与性化合物(a)では、チオエーテル基の硫黄原子の結合手がいずれも炭素原子に結合しているのであれば、チオエーテル基含有内部電子供与性化合物(a)内で、チオエーテル基は、分子の主鎖中に存在していてもよいし、分岐鎖中に存在していてもよい。また、チオエーテル基含有内部電子供与性化合物(a)は、チオール基(-SH)及びジスルフィド結合(-S-S-)等のポリスルフィド結合を有さない。そのため、本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分中の硫黄原子は、本発明の第一の形態のオレフィン類重合用固体触媒成分に内部電子供与性化合物として含有されているチオエーテル基含有内部電子供与性化合物(a)のチオエーテル基の硫黄原子に由来する。
【0031】
チオエーテル基含有内部電子供与性化合物(a)は、1つ以上のチオエーテル基に加え、2つ以上の含酸素電子供与性基を有する。含酸素電子供与性基は、「カルボン酸エステル基、カルボニル基、エーテル基及びカーボネート基からなる群から選ばれる基」である。つまり、チオエーテル基含有内部電子供与性化合物(a)は、分子内に、含酸素電子供与性基を2つ以上有する。チオエーテル基含有内部電子供与性化合物(a)に存在する含酸素電子供与性基は、カルボン酸エステル基(-COO-)、カルボニル基(-CO-)、エーテル基(-O-)及びカーボネート基(-O-CO-O-)のうちのいずれか1種であってもよいし、あるいは、カルボン酸エステル基、カルボニル基、エーテル基及びカーボネート基のうちの2種以上の組み合わせであってもよい。チオエーテル基含有内部電子供与性化合物(a)に存在する含酸素電子供与性基は、同一の基であってもよいし、異なる基であってもよい。チオエーテル基含有内部電子供与性化合物(a)では、内部電子供与性基として機能するのであれば、含酸素電子供与性基の存在する位置は特に制限されない。なお、チオエーテル基含有内部電子供与性化合物(a)において、カルボン酸エステル基(-COO-)、カルボニル基(-CO-)、エーテル基(-O-)及びカーボネート基(-O-CO-O-)の結合手は、いずれも炭素原子に結合している。
【0032】
チオエーテル基含有内部電子供与性化合物(a)の分子量は、好ましくは122~1,000、特に好ましくは122~500である。
【0033】
チオエーテル基含有内部電子供与性化合物(a)としては、例えば、チオエーテル基を有するジエステル化合物、チオエーテル基を有するジケトン化合物、チオエーテル基を有するジエーテル化合物、チオエーテル基を有するジカーボネート化合物、チオエーテル基を有するエステルケトン化合物、チオエーテル基を有するエステルエーテル化合物、チオエーテル基を有するエステルカーボネート化合物、チオエーテル基を有するエーテルケトン化合物、チオエーテル基を有するエーテルカーボネート化合物、チオエーテル基を有するカーボネートケトン化合物が挙げられる。
【0034】
チオエーテル基含有内部電子供与性化合物(a)としては、1つのチオエーテル基と、カルボン酸エステル基を2つと、を有するチオエーテル基含有ジカルボン酸エステル化合物が挙げられる。1つのチオエーテル基と、カルボン酸エステル基を2つと、を有するチオエーテル基含有ジカルボン酸エステル化合物としては、例えば、下記一般式(i)又は(ii):
R1-O-CO-R2-S-R3-CO-O-R4 (i)
R1-CO-O-R2-S-R3-O-CO-R4 (ii)
(式中、R1及びR4は、炭素数1~20の直鎖状アルキル基、炭素数3~20の分岐アルキル基、ビニル基、炭素数3~20の直鎖状アルケニル基、炭素数3~20の分岐アルケニル基、炭素数1~20の直鎖状ハロゲン置換アルキル基、炭素数3~20の分岐ハロゲン置換アルキル基、炭素数2~20の直鎖状ハロゲン置換アルケニル基、炭素数3~20の分岐ハロゲン置換アルケニル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、炭素数3~20のシクロアルケニル基、炭素数3~20のハロゲン置換シクロアルキル基、炭素数3~20のハロゲン置換シクロアルケニル基、炭素数6~24の芳香族炭化水素基又は炭素数6~24のハロゲン置換芳香族炭化水素基であり、R1とR4は、同一であっても異なってもよい。R2及びR3は、2価の有機基であり、R2とR3は、同一であっても異なってもよい。)
で表されるチオエーテル基含有ジエステル化合物が挙げられる。
【0035】
一般式(1)中のR1、R4の炭素数1~20の直鎖状アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ペンチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基等が挙げられる。好ましくは炭素数1~12の直鎖状アルキル基である。
【0036】
また、R1及びR4の炭素数3~20の分岐アルキル基としては、例えば、イソプロピル基、イソブチル基、t-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基などの2級炭素または3級炭素を有するアルキル基が挙げられる。好ましくは炭素数3~12の分岐アルキル基である。
【0037】
また、R1及びR4の炭素数3~20の直鎖状アルケニル基としては、アリル基、3-ブテニル基、4-ヘキセニル基、5-ヘキセニル基、7-オクテニル基、10-ドデセニル基等が挙げられる。好ましくは炭素数3~12の直鎖状アルケニル基である。R1及びR4の炭素数3~20の分岐アルケニル基としては、イソプロペニル基、イソブテニル基、イソペンテニル基、2-エチル-3-ヘキセニル基等が挙げられる。好ましくは炭素数3~12の分岐アルケニル基である。
【0038】
また、R1及びR4の炭素数1~20の直鎖状ハロゲン置換アルキル基としては、例えばハロゲン化メチル基、ハロゲン化エチル基、ハロゲン化n-プロピル基、ハロゲン化n-ブチル基、ハロゲン化n-ペンチル基、ハロゲン化n-ヘキシル基、ハロゲン化n-ペンチル基、ハロゲン化n-オクチル基、ハロゲン化ノニル基、ハロゲン化デシル基、ハロゲン置換ウンデシル基、ハロゲン置換ドデシル基等が挙げられる。好ましくは、炭素数1~12の直鎖状ハロゲン置換アルキル基である。また、R1及びR4の炭素数3~20の分岐ハロゲン置換アルキル基としては、ハロゲン化イソプロピル基、ハロゲン化イソブチル基、ハロゲン化2-エチルヘキシル基、ハロゲン化ネオペンチル基等が挙げられる。好ましくは、炭素数3~12の分岐ハロゲン置換アルキル基である。
【0039】
また、R1及びR4の炭素数2~20の直鎖状ハロゲン置換アルケニル基としては、2-ハロゲン化ビニル基、3-ハロゲン化アリル基、3-ハロゲン化-2-ブテニル基、4-ハロゲン化-3-ブテニル基、パーハロゲン化-2-ブテニル基、6-ハロゲン化-4-ヘキセニル基、3-トリハロゲン化メチル-2-プロペニル基等が挙げられる。好ましくは炭素数2~12のハロゲン置換アルケニル基である。また、R1及びR4の炭素数3~20の分岐ハロゲン置換アルケニル基としては、3-トリハロゲン化-2-ブテニル基、2-ペンタハロゲン化エチル-3-ヘキセニル基、6-ハロゲン化-3-エチル-4-ヘキセニル基、3-ハロゲン化イソブテニル基等が挙げられる。好ましくは炭素数3~12の分岐ハロゲン置換アルケニル基である。
【0040】
また、R1及びR4の炭素数3~20のシクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、テトラメチルシクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、ブチルシクロペンチル基等が挙げられる。好ましくは炭素数3~12のシクロアルキル基である。また、R1及びR4の炭素数3~20のシクロアルケニル基としては、シクロプロペニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロオクテニル基、ノルボルネン基、等が挙げられる。好ましくは炭素数3~12のシクロアルケニル基である。
【0041】
また、R1及びR4の炭素数3~20のハロゲン置換シクロアルキル基としては、ハロゲン置換シクロプロピル基、ハロゲン置換シクロブチル基、ハロゲン置換シクロペンチル基、ハロゲン置換トリメチルシクロペンチル基、ハロゲン置換シクロヘキシル基、ハロゲン置換メチルシクロヘキシル基、ハロゲン置換シクロヘプチル基、ハロゲン置換シクロオクチル基、ハロゲン置換シクロノニル基、ハロゲン置換シクロデシル基、ハロゲン置換ブチルシクロペンチル基等が挙げられる。好ましくは炭素数3~12のハロゲン置換シクロアルキル基である。
【0042】
また、R1及びR4の炭素数3~20のハロゲン置換シクロアルケニル基としては、ハロゲン置換シクロプロペニル基、ハロゲン置換シクロブテニル基、ハロゲン置換シクロペンテニル基、ハロゲン置換トリメチルシクロペンテニル基、ハロゲン置換シクロヘキセニル基、ハロゲン置換メチルシクロヘキセニル基、ハロゲン置換シクロヘプテニル基、ハロゲン置換シクロオクテニル基、ハロゲン置換シクロノネニル基、ハロゲン置換シクロデセニル基、ハロゲン置換ブチルシクロペンテニル基等が挙げられる。好ましくは炭素数3~12のハロゲン置換シクロアルケニル基である。
【0043】
また、R1及びR4の炭素数6~24の芳香族炭化水素基としては、フェニル基、メチルフェニル基、ジメチルフェニル基、エチルフェニル基、ベンジル基、1-フェニルエチル基、2-フェニルエチル基、2-フェニルプロピル基、1-フェニルブチル基、4-フェニルブチル基、2-フェニルヘプチル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、1,8-ジメチルナフチル基等が挙げられる。好ましくは炭素数6~12の芳香族炭化水素基である。
【0044】
また、R1及びR4の炭素数6~24のハロゲン置換芳香族炭化水素基としては、ハロゲン化フェニル基、ハロゲン化メチルフェニル基、トリハロゲン化メチルフェニル基、パーハロゲン化ベンジル基、パーハロゲン化フェニル基、2-フェニル,2-ハロゲン化エチル基、パーハロゲン化ナフチル基、4-フェニル,2,3-ジハロゲン化ブチル基等が挙げられる。好ましくは炭素数6~12のハロゲン置換芳香族炭化水素基である。
【0045】
なお、R1及びR4のハロゲン置換アルキル基、ハロゲン置換アルケニル基、ハロゲン置換シクロアルキル基、ハロゲン置換シクロアルケニル基、及びハロゲン置換芳香族炭化水素基において、ハロゲン種としては、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素が挙げられ、好ましくはフッ素、塩素または臭素である。
【0046】
R2及びR3に係る2価の有機基は、一方が硫黄原子に結合し、他方がカルボキシルに結合する結合性の基であり、置換されていてもよい2価の炭化水素基である。
【0047】
一般式(1)中のR2及びR3は、炭素数1~20の直鎖状アルキレン基、炭素数3~20の分岐アルキレン基、ビニレン基、炭素数2~20の直鎖状アルケニレン基、炭素数3~20の分岐アルケニレン基、炭素数1~20の直鎖状ハロゲン置換アルキレン基、炭素数3~20の分岐ハロゲン置換アルキレン基、炭素数2~20の直鎖状ハロゲン置換アルケニレン基、炭素数3~20の分岐ハロゲン置換アルケニレン基、炭素数3~20のシクロアルキレン基、炭素数3~20のシクロアルケニレン基、炭素数3~20のハロゲン置換シクロアルキレン基、炭素数3~20のハロゲン置換シクロアルケニレン基、炭素数6~24の芳香族炭化水素基、炭素数6~24のハロゲン置換芳香族炭化水素基である。
【0048】
R2及びR3の炭素数1~20の直鎖状アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基、ウンデカメチレン基、ドデカメチレン基、トリデカメチレン基、テトラデカメチレン基など挙げられる。好ましくは、炭素数2~12の直鎖状アルキレン基である。更に好ましくはエチレン基である。
【0049】
R2及びR3の炭素数3~20の分岐アルキレン基としては、1-メチルエチレン基、2-メチルトリメチレン基、2-メチルテトラメチレン基、2-メチルペンタメチレン基、3-メチルヘキサメチレン基、4-メチルヘプタメチレン基、4-メチルオクタメチレン基、5-メチルノナメチレン基、5-メチルデカメチレン基、6-メチルウンデカメチレン基、7-メチルドデカメチレン基、7-メチルトリデカメチレン基などが挙げられる。好ましくは、炭素数3~12の分岐アルキレン基である。更に好ましくは、1-メチルエチレン基、2-メチルエチレン基、1-エチルエチレン基である。
【0050】
R2及びR3の炭素数2~20の直鎖状アルケニレン基としては、ビニレン基、プロペニレン基、ブテニレン基、ヘキセニレン基、オクテニレン基、オクタデセニレン基などが挙げられる。好ましくは、炭素数3~12の直鎖状アルケニレン基である。
【0051】
R2及びR3の炭素数3~20の分岐アルケニレン基としては、イソプロペニレン基、1-エチルエテニレン基、2-メチルプロペニレン基、2,2-ジメチルブテニレン基、3-メチル-2-ブテニレン基、3-エチル-2-ブテニレン基、2-メチルオクテニレン基、2,4-ジメチル-2-ブテニレン基などが挙げられる。好ましくは、連結部がエテニレン基である炭素数3~12の分岐アルケニレン基である。更に好ましくは、イソプロペニレン基、1-エチルエテニレン基、である。
【0052】
R2及びR3の炭素数1~20の直鎖状ハロゲン置換アルキレン基としては、ジクロロメチレン基、クロロメチレン基、ジクロロメチレン基、テトラクロロエチレン基などが挙げられる。好ましくは、炭素数3~12の直鎖状ハロゲン置換アルキレン基である。更に好ましくは、クロロエチレン基、フルオロエチレン基、ジクロロエチレン基、ジフルオロエチレン基、テトラフルオロエチレン基である。
【0053】
R2及びR3の炭素数3~20の分岐ハロゲン置換アルキレン基としては、1,2-ビスクロロメチルエチレン基、2,2-ビス(クロロメチル)プロピレン基、1,2-ビスジクロロメチルエチレン基、1,2-ビス(トリクロロメチル)エチレン基、2,2-ジクロロプロピレン基、1,1,2,2-テトラクロロエチレン基、1-トリフルオロメチルエチレン基、1-ペンタフルオロフェニルエチレン基等が挙げられる。好ましくは、炭素数3~12の分岐ハロゲン置換アルキレン基である。更に好ましくは、1-クロロエチルエチレン基、1-トリフルオロメチルエチレン基、1,2-ビス(クロロメチル)エチレン基である。
【0054】
R2及びR3の炭素数2~20の直鎖状ハロゲン置換アルケニレン基としては、ジクロロエテニレン基、ジフルオロエテニレン基、3,3-ジクロロプロペニレン基、1,2-ジフルオロプロペニレン基などが挙げられる。好ましくは、炭素数3~12の直鎖状ハロゲン置換アルケニレン基である。更に好ましくは、ジクロロエテニレン基、ジフルオロエテニレン基、である。
【0055】
R2及びR3の炭素数3~20の分岐ハロゲン置換アルキレン基としては、3,4-ジクロロ-1,2-ブチレン基、2,2-ジクロロ-1,3-ブチレン基、1,2-ジフルオロ-1,2-プロピレン基などが挙げられる。好ましくは、炭素数3~12の分岐ハロゲン置換アルキレン基である。更に好ましくは、クロロメチルエテニレン基、トリフルオロメチルエテニレン基、3,4-ジクロロ-1,2-ブテニレン基である。
【0056】
R2及びR3の炭素数3~20のシクロアルキレン基としては、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロプロピレン基、2-メチルシクロプロピレン基、シクロブチレン基、2,2-ジメチルシクロブチレン基、2,3-ジメチルシクロペンチレン基、1,3,3,-トリメチルシクロヘキシレン基、シクロオクチレン基などが挙げられる。好ましくは、炭素数3~12のシクロアルキレン基である。更に好ましくは、1,2-シクロアルキレン基、あるいは炭化水素基置換-1,2-シクロアルキレン基である。
【0057】
R2及びR3の炭素数3~20のシクロアルケニレン基としては、シクロペンテニレン基、2,4-シクロペンタジエニレン基、シクロヘキセニレン基、1,4-シクロヘキサジエニレン基、シクロヘプテニレン基、メチルシクロペンテニレン基、メチルシクロヘキセニレン基、メチルシクロヘプテニレン基、ジシクロデシレン基、トリシクロデシレン基などが挙げられる。好ましくは、炭素数3~12のシクロアルケニレン基である。更に好ましくは、1,2-シクロアルケニレン基、あるいは炭化水素基置換-1,2-シクロアルケニレン基である。
【0058】
R2及びR3の炭素数3~20のハロゲン置換シクロアルキレン基としては、3-クロロ-1,2-シクロペンチレン基、3,4,5,6-テトラクロロ-1,2-シクロヘキシレン基、3,3-ジクロロ-1,2-シクロプロピレン基、2-クロロメチルシクロプロピレン基、3,4-ジクロロ-1,2-シクロブチレン基、3,3-ビス(ジクロロメチル)-1,2-シクロブチレン基、2,3-ビス(ジクロロメチル)シクロペンチレン基、1,3,3-トリス(フルオロメチル)-1,2-シクロヘキシレン基、3-トリクロロメチル-1,2-シクロオクチレン基などが挙げられる。好ましくは、炭素数3~12のハロゲン置換シクロアルキレン基である。
【0059】
R2及びR3の炭素数3~20のハロゲン置換シクロアルケニレン基としては、5-クロロ-1,2-シクロ-4-ヘキセニレン基、3,3,4,4、-テトラフルオロ-1,2-シクロ-6-オクテニレン基などが挙げられる。好ましくは、炭素数3~12のハロゲン置換シクロアルケニレン基である。
【0060】
R2及びR3の炭素数6~24の芳香族炭化水素基としては、1,2-フェニレン、3-メチル-1,2-フェニレン、3,6-ジメチル-1,2-フェニレン、1,2-ナフチレン、2,3-ナフチレン、5-メチル-1,2-ナフチレン、9,10-フェナンスリレン、1,2-アントラセニレン等が挙げられる。好ましくは、炭素数6~12の芳香族炭化水素基である。
【0061】
R2及びR3の炭素数6~24のハロゲン置換芳香族炭化水素基としては、3-クロロ-1,2-フェニレン、3-クロロメチル-1,2-フェニレン、3,6-ジクロロ-1,2-フェニレン、3,6-ジクロロ-4,5-ジメチル-1,2-フェニレン、3-クロロ-1,2-ナフチレン、3-フルオロ-1,2-ナフチレン、3,6-ジクロロ-1,2-フェニレン、3,6-ジフルオロ-1,2-フェニレン、3,6-ジブロモ-1,2-フェニレン、1-クロロ-2,3-ナフチレン、5-クロロ-1,2-ナフチレン、2,6-ジクロロ-9,10-フェナンスリレン、5,6-ジクロロ-1,2-アントラセニレン、5,6-ジフルオロ-1,2-アントラセニレン等が挙げられる。好ましくは、炭素数6~12のハロゲン置換芳香族炭化水素基である。
【0062】
なお、R2及びR3のハロゲン置換アルキレン基、ハロゲン置換アルケニレン基、ハロゲン置換シクロアルキレン基、ハロゲン置換シクロアルケニレン基、及びハロゲン置換芳香族炭化水素基において、ハロゲン種としては、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素が挙げられ、好ましくはフッ素、塩素または臭素である。
【0063】
1つのチオエーテル基と、エステル基を2つと、を有するチオエーテル基含有ジエステル化合物としては、具体的には、以下に示すチオエーテル基含有ジエステル化合物が挙げられる。
【0064】
CH3-O-CO-CH2-S-CH2-CO-O-CH3
【0065】
CH3-CO-O-CH2-S-CH2-O-CO-CH3
【0066】
CH3CH2-O-CO-CH2CH2-S-CH2CH2-CO-O-CH2CH3
【0067】
CH3CH2-CO-O-CH2CH2-S-CH2CH2-O-CO-CH2CH3
【0068】
(CH3)2CH-O-CO-CH(CH3)CH2-S-CH2CH(CH3)-CO-O-CH(CH3)2
【0069】
C6H11-O-CO-C6H10-S-C6H10-CO-O-C6H11
*上記式中、C6H11はシクロヘキシル基を示し、C6H10はシクロへキシレン基を示す。
【0070】
C6H5-O-CO-C6H4-S-C6H4-CO-O-C6H5
*上記式中、C6H5はフェニル基を示し、C6H4はフェニレン基を示す。
【0071】
C6H5-CH2-O-CO-CH2CH(CH3)CH2-S-CH2-CO-O-CH2CH3
*上記式中、C6H5はフェニル基を示し、C6H4はフェニレン基を示す。
【0072】
CH2=CH-O-CO-CH2-CH2-S-CH2CH2CH2-O-CO-CH=CH2
【0073】
CH3-C6H4-O-CO-CH2CH2-S-CH2CH2-CO-O-C6H10-CH3
*上記式中、C6H4はフェニレン基を示し、C6H10はシクロへキシレン基を示す。
【0074】
チオエーテル基含有内部電子供与性化合物(a)は、内部電子供与性の化合物として機能すると共に、オレフィン類重合体中で、酸化防止剤としても機能する。つまり、チオエーテル基含有内部電子供与性化合物(a)は、内部電子供与性化合物兼オレフィン類重合体の酸化防止剤である。
【0075】
本発明の第一の形態のオレフィン類重合用固体触媒成分に係る硫黄原子を含有しない内部電子供与性化合物(b)は、硫黄を含有せず且つ電子供与性化合物として機能するものであれば、特に制限されない。硫黄を含有しない内部電子供与性化合物(b)としては、従来よりオレフィン類重合用固体触媒成分に用いられている内部電子供与性化合物が好適に用いられる。
【0076】
硫黄を含有しない内部電子供与性化合物(b)としては、アルコール類、フェノール類、エーテル類、カーボネート類、エステル類、ケトン類、酸ハライド類、酸アミド類、ニトリル類、イソシアネート類、酸無水物などが挙げられる。
【0077】
硫黄を含有しない内部電子供与性化合物(b)としては、エステル基、カーボネート基及びエーテル基から選ばれる一種以上の基を有する化合物であることが好ましく、1個のエーテル基を有するモノエーテル、2個のエーテル基またはフルオレン構造を有するジエーテル、エーテル基とエステル残基を其々1個ずつ有するエーテル-カルボン酸エステル、エーテル基とカーボネート基を其々1個ずつ有するエーテル-カーボネート、カーボネート基とエステル残基を其々1個ずつ有するカーボネート-エステル、カーボネート基を2個有するジカーボネート、エステル残基を1つ有するモノカルボン酸エステル、エステル残基を2つ有するジカルボン酸ジエステル及びジオールエステルがより好ましく、2-イソプロピル-2-イソペンチル-1,3-ジメトキシプロパン、2-イソプロピル-2-イソブチル-1,3-ジメトキシプロパン、9,9-ビス(メトキシメチル)フルオレン等の1,3-ジエーテル、3-エトキシ-2-tert-ブチルプロピオン酸エチル、3-エトキシ-2-tert-ペンチルプロピオン酸エチル等のエーテル-カルボン酸エステル、(2-エトキシエチル)メチルカーボネート、(2-エトキシエチル)エチルカーボネート、(2-プロポキシエチル)エチルカーボネート、(2-ブトキシエチル)エチルカーボネート、(2-エトキシエチル)フェニルカーボネート、(2-エトキシエチル)p-メチルフェニルカーボネート等のエーテルカーボネート、ジイソブチルマロン酸ジメチル、ジイソブチルマロン酸ジエチル、2,3-ジイソプロピルコハク酸ジエチル、マレイン酸ジエチル等の脂肪族ジカルボン酸ジエステル、シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸ジエチル、シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸ジ-n-プロピル、シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸ジ-n-ブチル、1-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸ジエチル、1-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸ジ-n-プロピル、1-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸ジ-n-ブチル、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸ジエチル、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸ジ-n-ブチル等の脂環式ジカルボン酸ジエステル及び、フタル酸ジエチル、フタル酸ジ-n-プロピル、フタル酸ジ-n-ブチル、フタル酸ジイソブチル、ベンジリデンマロン酸ジエチル、ベンジリデンマロン酸ジ-n-ブチル等の芳香族ジカルボン酸エステルがさらに好ましい。
【0078】
本発明の第一の形態のオレフィン類重合用固体触媒成分中、チオエーテル基含有内部電子供与性化合物(a)及び硫黄を含有しない内部電子供与性化合物(b)の合計含有量は、好ましくは5.0~40.0質量%、特に好ましくは10.0~30.0質量%である。チオエーテル基含有内部電子供与性化合物(a)及び硫黄を含有しない内部電子供与性化合物(b)の合計含有量が上記範囲にあることにより、オレフィン類重合触媒として求められる性能を発揮しつつも耐酸化劣化寿命が長いオレフィン類重合体を得ることができる。
【0079】
本発明の第一の形態のオレフィン類重合用固体触媒成分中、チオエーテル基含有内部電子供与性化合物(a)及び硫黄を含有しない内部電子供与性化合物(b)の合計含有量に対するチオエーテル基含有内部電子供与性化合物(a)の含有量の割合((a/(a+b))×100)は、好ましくは0.5~50.0質量%、特に好ましくは1.0~40.0質量%である。チオエーテル基含有内部電子供与性化合物(a)及び硫黄を含有しない内部電子供与性化合物(b)の合計含有量に対するチオエーテル基含有内部電子供与性化合物(a)の含有量の割合((a/(a+b))×100)が上記範囲にあることにより、オレフィン類重合触媒として求められる性能を発揮しつつも耐酸化劣化寿命が長いオレフィン類重合体を得ることができる。
【0080】
本発明の第一の形態のオレフィン類重合用固体触媒成分は、ポリシロキサン(以下、「ポリシロキサン(e)」とも記載する。)を含むものであってもよい。
【0081】
本発明の第一の形態のオレフィン類重合用固体触媒成分が、ポリシロキサン(e)を含むものであることにより、オレフィン類を重合したときに、得られる重合体の立体規則性あるいは結晶性を容易に向上させることができ、さらには生成ポリマーの微粉を容易に低減することができる。ポリシロキサン(e)は、主鎖にシロキサン結合(-Si-O-結合)を有する重合体であるが、シリコーンオイルとも称され、25℃における粘度が0.02~100cm2/s(2~10000センチストークス)、より好ましくは0.03~5cm2/s(3~500センチストークス)を有する、常温で液状あるいは粘稠状の鎖状、部分水素化、環状あるいは変性ポリシロキサンである。
【0082】
ポリシロキサン(e)のうち、鎖状ポリシロキサンとしては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンが、部分水素化ポリシロキサンとしては、水素化率10~80%のメチルハイドロジェンポリシロキサンが、環状ポリシロキサンとしては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、2,4,6-トリメチルシクロトリシロキサン及び2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサンから選ばれる1種以上が挙げられる。
【0083】
本発明の第二の形態のオレフィン類重合用固体触媒成分は、マグネシウム化合物と、四価のチタンハロゲン化合物と、内部電子供与性化合物と、を接触させて得られるオレフィン類重合用固体触媒成分であって、
該内部電子供与性化合物が、チオエーテル基を1つ以上と、カルボン酸エステル基、カルボニル基、エーテル基及びカーボネート基からなる群から選ばれる含酸素電子供与性基を2つ以上と、を有するチオエーテル基含有内部電子供与性化合物(a)、及び硫黄を含有しない内部電子供与性化合物(b)であること、
を特徴とするオレフィン類重合用固体触媒成分である。
【0084】
本発明の第二の形態のオレフィン類重合用固体触媒成分は、マグネシウム化合物と、四価のチタンハロゲン化合物と、内部電子供与性化合物として、チオエーテル基含有内部電子供与性化合物(a)、及び硫黄を含有しない内部電子供与性化合物(b)と、を接触させて得られるオレフィン類重合用固体触媒成分である。本発明の第二の形態のオレフィン類重合用固体触媒成分において、各原料成分を接触させる方法は、特に制限されず、公知のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法において用いられている各原料成分の接触方法が用いられる。
【0085】
本発明の第二の形態のオレフィン類重合用固体触媒成分に係るマグネシウム化合物(以下、マグネシウム化合物(c)とも記載する。)としては、ジハロゲン化マグネシウム、ジアルキルマグネシウム、ハロゲン化アルキルマグネシウム、ジアルコキシマグネシウム、ジアリールオキシマグネシウム、ハロゲン化アルコキシマグネシウムあるいは脂肪酸マグネシウム等から選ばれる1種以上が挙げられる。これらのマグネシウム化合物(c)の中、ジハロゲン化マグネシウム、ジハロゲン化マグネシウムとジアルコキシマグネシウムの混合物、ジアルコキシマグネシウムが好ましく、特にジアルコキシマグネシウムが好ましく、具体的にはジメトキシマグネシウム、ジエトキシマグネシウム、ジプロポキシマグネシウム、ジブトキシマグネシウム、エトキシメトキシマグネシウム、エトキシプロポキシマグネシウム及びブトキシエトキシマグネシウム等から選ばれる1種以上が挙げられ、これらのうち、ジエトキシマグネシウムが特に好ましい。
【0086】
また、ジアルコキシマグネシウム(c)は、金属マグネシウムを、ハロゲン含有有機金属等の存在下にアルコールと反応させて得たものであってもよい。さらに、上記ジアルコキシマグネシウムとしては、顆粒状または粉末状であり、その形状は不定形あるいは球状のものであってもよい。例えば球状のジアルコキシマグネシウムを使用した場合、より良好な粒子形状と狭い粒度分布を有する重合体粉末が得られ易く、重合操作時の生成重合体粉末の取り扱い操作性が向上し、生成重合体粉末に含まれる微粉に起因する重合体の分離装置におけるフィルターの閉塞等の問題が容易に解決される。
【0087】
ジアルコキシマグネシウム(c)は、1種単独であってもよいし、2種以上の併用であってもよい。上記の如き球状のジアルコキシマグネシウムを製造する方法は、例えば、特開昭58-4132号公報、特開昭62-51633号公報、特開平3-74341号公報、特開平4-368391号公報、特開平8-73388号公報等に例示されている。
【0088】
マグネシウム化合物(c)としては、溶液状のマグネシウム化合物、又はマグネシウム化合物懸濁液のいずれであってもよい。マグネシウム化合物(c)が固体である場合には、マグネシウム化合物(c)の可溶化能を有する溶媒に溶解して溶液状のマグネシウム化合物とするか、マグネシウム化合物(c)の可溶化能を有さない溶媒に懸濁してマグネシウム化合物懸濁液として用いる。マグネシウム化合物(c)が液体である場合には、そのまま溶液状のマグネシウム化合物として用いることができ、マグネシウム化合物の可溶化能を有する溶媒にこれを溶解して溶液状のマグネシウム化合物として用いることもできる。
【0089】
本発明の第二の形態のオレフィン類重合用固体触媒成分に係る四価のチタンハロゲン化合物(以下、四価のチタンハロゲン化合物(d)とも記載する。)としては、チタンテトラフルオライド、チタンテトラクロライド、チタンテトラブロマイド、チタンテトラアイオダイド等のチタンテトラハライド、アルコキシチタンハライドとしてメトキシチタントリクロライド、エトキシチタントリクロライド、プロポキシチタントリクロライド、n-ブトキシチタントリクロライド等のアルコキシチタントリハライド、ジメトキシチタンジクロライド、ジエトキシチタンジクロライド、ジプロポキシチタンジクロライド、ジ-n-ブトキシチタンジクロライド等のジアルコキシチタンジハライド、トリメトキシチタンクロライド、トリエトキシチタンクロライド、トリプロポキシチタンクロライド、トリ-n-ブトキシチタンクロライド等のトリアルコキシチタンハライドが挙げられる。
【0090】
本発明の第二の形態のオレフィン類重合用固体触媒成分に係る内部電子供与性化合物は、チオエーテル基を1つ以上と、カルボン酸エステル基、カルボニル基、エーテル基及びカーボネート基からなる群から選ばれる含酸素電子供与性基を2つ以上と、を有するチオエーテル基含有内部電子供与性化合物(a)、及び硫黄を含有しない内部電子供与性化合物(b)である。つまり、本発明の第二の形態のオレフィン類重合用固体触媒成分は、電子供与性化合物として、チオエーテル基含有内部電子供与性化合物(a)と、硫黄を含有しない内部電子供与性化合物(b)とを接触させて得られるものである。
【0091】
本発明の第二の形態のオレフィン類重合用固体触媒成分に係るチオエーテル基含有内部電子供与性化合物(a)及び硫黄を含有しない内部電子供与性化合物(b)は、本発明の第一の形態のオレフィン類重合用固体触媒成分に係るチオエーテル基含有内部電子供与性化合物(a)及び硫黄を含有しない内部電子供与性化合物(b)と同様である。
【0092】
本発明の第二の形態のオレフィン類重合用固体触媒成分は、少なくともマグネシウム化合物(c)、四価のチタンハロゲン化合物(d)、チオエーテル基含有内部電子供与性化合物(a)、及び硫黄を含有しない内部電子供与性化合物(b)を、不活性有機溶媒の存在下に接触させることによって調製されたものであることが好ましい。
【0093】
本発明の第二の形態のオレフィン類重合用固体触媒成分に係る不活性有機溶媒としては、四価のチタンハロゲン化合物(d)を溶解し且つマグネシウム化合物(c)を溶解しないものが好ましく、具体的には、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、1,2-ジエチルシクロヘキサン、メチルシクロヘキセン、デカリン、ミネラルオイル等の飽和炭化水素化合物、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素化合物、オルトジクロルベンゼン、塩化メチレン、1,2-ジクロロベンゼン、四塩化炭素、ジクロルエタン等のハロゲン化炭化水素化合物等から選ばれる1種以上が挙げられる。不活性有機溶媒としては、沸点が50~200℃程度であり、常温で液状の飽和炭化水素化合物あるいは芳香族炭化水素化合物が好ましく用いられ、中でも、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、エチルシクロヘキサン、ミネラルオイル、トルエン、キシレン、エチルベンゼンから選ばれる1種以上が好ましく、ヘキサン、ヘプタン、エチルシクロヘキサン及びトルエンから選ばれるいずれか1種以上が特に好ましい。
【0094】
本発明の第二の形態のオレフィン類重合用固体触媒成分を調製する方法としては、例えば、マグネシウム化合物(c)、四価のチタンハロゲン化合物(d)、チオエーテル基含有内部電子供与性化合物(a)、及び硫黄を含有しない内部電子供与性化合物(b)を炭化水素溶媒に懸濁し、加熱しながら所定時間接触させた後、得られた懸濁液にさらに四価のチタンハロゲン化合物(d)を加え、加熱しながら接触させて固体生成物を得、当該固体生成物を炭化水素溶媒で洗浄することにより目的とするオレフィン類重合用固体触媒成分を得る方法が挙げられる。上記加熱温度は、70~150℃が好ましく、80~120℃がより好ましく、90~110℃がさらに好ましい。上記加熱時間は、30~240分間が好ましく、60~180分間がより好ましく、60~120分間がさらに好ましい。上記懸濁液に対する四価のチタンハロゲン化合物(d)の添加回数は特に制限されない。上記懸濁液に対し四価のチタンハロゲン化合物(d)を複数回添加した場合には、各加熱温度が上記範囲内になるように、また添加毎の加熱時間が上記範囲内となるようにすればよい。なお、上記調製方法において、上記接触を、例えば、ケイ素、リン、アルミニウム等の他の反応試剤や界面活性剤の共存下に行ってもよい。
【0095】
本発明の第二の形態のオレフィン類重合用固体触媒成分において、チオエーテル基含有内部電子供与性化合物(a)及び硫黄を含有しない内部電子供与性化合物の合計接触量は、マグネシウム化合物に対し、好ましくは5.0~40.0質量%、特に好ましくは10.0~30.0質量%である。チオエーテル基含有内部電子供与性化合物(a)及び硫黄を含有しない内部電子供与性化合物の合計含有量が上記範囲にあることにより、オレフィン類重合触媒としての性能を発現することができる。
【0096】
本発明の第二の形態のオレフィン類重合用固体触媒成分において、チオエーテル基含有内部電子供与性化合物(a)及び硫黄を含有しない内部電子供与性化合物の合計接触量に対するチオエーテル基含有内部電子供与性化合物(a)の接触量の割合((a/(a+b))×100)は、好ましくは0.5~50.0質量%、特に好ましくは5.0~40.0質量%である。チオエーテル基含有内部電子供与性化合物(a)及び硫黄を含有しない内部電子供与性化合物の合計接触量に対するチオエーテル基含有内部電子供与性化合物(a)の接触量の割合((a/(a+b))×100)が上記範囲にあることにより、オレフィン類重合触媒としての性能を維持しながら、耐酸化劣化性を発現することができる。
【0097】
本発明の第二の形態のオレフィン類重合用固体触媒成分は、上記原料成分の加え、更にポリシロキサン(e)を接触させて得られたものであってもよい。本発明の第二の形態のオレフィン類重合用固体触媒成分に係るポリシロキサン(e)は、本発明の第一の形態のオレフィン類重合用固体触媒成分に係るポリシロキサン(e)と同様である。
【0098】
本発明の第一の形態のオレフィン類重合用固体触媒成分及び本発明の第二の形態のオレフィン類重合用固体触媒成分は、内部電子供与性化合物として、オレフィン類重合体の酸化防止性能を有するチオエーテル基含有内部電子供与性化合物(a)を含有する。そのため、本発明の第一の形態のオレフィン類重合用固体触媒成分及び本発明の第二の形態のオレフィン類重合用固体触媒成分は、オレフィン類重合用触媒に、重合性能を付与させることに加えて、オレフィン類重合体の酸化防止性を付与することができる多機能なオレフィン類重合用固体触媒成分である。
【0099】
本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法は、マグネシウム化合物と、四価のチタンハロゲン化合物と、内部電子供与性化合物と、を接触させるオレフィン類重合用固体触媒成分であって、
該内部電子供与性化合物が、チオエーテル基を1つ以上と、カルボン酸エステル基、カルボニル基、エーテル基及びカーボネート基からなる群から選ばれる含酸素電子供与性基を2つ以上と、を有するチオエーテル基含有内部電子供与性化合物(a)、及び硫黄を含有しない内部電子供与性化合物(b)であること、
を特徴とするオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法である。
【0100】
本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法は、マグネシウム化合物(c)と、四価のチタンハロゲン化合物(d)と、内部電子供与性化合物として、チオエーテル基を1つ以上と、カルボン酸エステル基、カルボニル基、エーテル基及びカーボネート基からなる群から選ばれる含酸素電子供与性基を2つ以上と、を有するチオエーテル基含有内部電子供与性化合物(a)、及び硫黄を含有しない内部電子供与性化合物(b)と、を接触させて、オレフィン類重合用固体触媒成分を製造する方法である。
【0101】
本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法に係るチオエーテル基含有内部電子供与性化合物(a)及び硫黄を含有しない内部電子供与性化合物(b)は、本発明の第一の形態のオレフィン類重合用固体触媒成分及び本発明の第二の形態のオレフィン類重合用固体触媒成分に係るチオエーテル基含有内部電子供与性化合物(a)及び硫黄を含有しない内部電子供与性化合物(b)と同様である。
【0102】
また、本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法に係るマグネシウム化合物(c)及び四価のチタンハロゲン化合物(d)は、本発明の第二の形態のオレフィン類重合用固体触媒成分に係るマグネシウム化合物(c)及び四価のチタンハロゲン化合物(d)と同様である。
【0103】
また、本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法において、マグネシウム化合物(c)と、四価のチタンハロゲン化合物(d)と、チオエーテル基含有内部電子供与性化合物(a)と、硫黄を含有しない内部電子供与性化合物(b)と、を接触させて、オレフィン類重合用固体触媒成分を製造する方法は、本発明の第二のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法において、マグネシウム化合物(c)と、四価のチタンハロゲン化合物(d)と、チオエーテル基含有内部電子供与性化合物(a)と、硫黄を含有しない内部電子供与性化合物(b)と、を接触させて、オレフィン類重合用固体触媒成分を製造する方法と同様である。
【0104】
本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法では、上記原料成分の加え、更にポリシロキサン(e)を接触させてもてもよい。本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法に係るポリシロキサン(e)は、本発明の第一の形態のオレフィン類重合用固体触媒成分及び本発明の第二の形態のオレフィン類重合用固体触媒成分に係るポリシロキサン(e)と同様である。
【0105】
本発明に係るオレフィン類重合用触媒は、少なくとも(A)本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分及び(B)有機アルミニウム化合物を相互に接触させて得られたものであることを特徴とするオレフィン類重合用触媒である。また、本発明に係るオレフィン類重合用触媒は、更に、(C)外部電子供与性化合物を相互に接触させて得られたもの、すなわち、(A)本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分、(B)有機アルミニウム化合物及び(C)外部電子供与性化合物を相互に接触させて得られたものであってもよい。
【0106】
本発明に係るオレフィン類重合用触媒に係る(A)本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分は、上述したとおりである。
【0107】
本発明のオレフィン重合用触媒は、(B)有機アルミニウム化合物を含む。(B)有機アルミニウム化合物としては、オレフィン類重合用触媒に用いられるものであれば、特に制限されない。
【0108】
本発明のオレフィン類重合用触媒において、(B)有機アルミニウム化合物としては、下記一般式(2):
R2
pAlQ3-p (2)
(式中、R2は炭素数1~4のアルキル基を示し、Qは水素原子またはハロゲン原子を示し、pは0<p≦3の実数である。R2が複数存在する場合、複数のR2は互いに同一であっても異なってもよく、Qが複数存在する場合、複数のQは互いに同一であっても異なってもよい。)で表される有機アルミニウム化合物が好ましい。
【0109】
上記一般式(2)で表される有機アルミニウム化合物としては、特に制限されないが、R2としては、エチル基及びイソブチル基から選ばれる一種以上が挙げられ、Qとしては、水素原子、塩素原子及び臭素原子から選ばれる一種以上が挙げられ、pは、2、2.5又は3が好ましく、3であることが特に好ましい。
【0110】
このような有機アルミニウム化合物の具体例としては、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ-n-ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムブロマイドなどのハロゲン化アルキルアルミニウム、ジエチルアルミニウムハイドライド等から選ばれる一種以上が挙げられ、中でもジエチルアルミニウムクロライドなどのハロゲン化アルキルアルミニウム、又はトリエチルアルミニウム、トリ-n-ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム等から選ばれる一種以上が好ましく、トリエチルアルミニウム及びトリイソブチルアルミニウムから選ばれる一種以上がより好ましい。
【0111】
本発明のオレフィン重合用触媒は、外部電子供与性化合物(C)を含む。外部電子供与性化合物(C)としては、オレフィン類重合用触媒に用いられるものであれば、特に制限されない。本発明のオレフィン類重合用触媒において、外部電子供与性化合物(C)としては、公知の外部電子供与性化合物のうち酸素あるいは窒素を含有するものが好ましい。
【0112】
本発明のオレフィン類重合用触媒において、外部電子供与性化合物(C)としては、下記一般式(3):
R3
qSi(OR4)4-q (3)
(式中、R3は、炭素数1~12のアルキル基、ビニル基、炭素数3~12のアルケニル基、炭素数3~12のシクロアルキル基、炭素数3~12のシクロアルケニル基、炭素数6~15の芳香族炭化水素基または置換基を有する炭素数6~15の芳香族炭化水素基を示し、R3が複数存在する場合、複数のR3は互いに同一でも異なってもよい。R4は、炭素数1~4のアルキル基、ビニル基、炭素数3~12のアルケニル基、炭素数3~6のシクロアルキル基、炭素数6~12の芳香族炭化水素基または置換基を有する炭素数7~12の芳香族炭化水素基を示し、R4が複数存在する場合、複数のR4は互いに同一でも異なってもよい。qは0≦q≦3の整数である。)で表される有機ケイ素化合物、 及び一般式(4):
(R5R6N)sSiR7
4-s (4)
(式中、R5及びR6は、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、ビニル基、炭素数3~20のアルケニル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、炭素数3~20のシクロアルケニル基または炭素数6~20のアリール基を示し、R5及びR6は互いに同一でも異なってもよく、また互いに結合して環を形成してもよく、R5R6N基が複数存在する場合、複数のR5R6N基は互いに同一でも異なってもよい。R7は炭素数1~20のアルキル基、ビニル基、炭素数3~12のアルケニル基、炭素数1~20のアルコキシ基、ビニルオキシ基、炭素数3~20のアルケニルオキシ基、炭素数3~20のシクロアルキル基、炭素数3~20のシクロアルキルオキシ基、炭素数6~20のアリール基、炭素数6~20のアリールオキシ基を示し、R7が複数存在する場合、複数のR7は互いに同一でも異なってもよい。sは1から3の整数である。)で表されるアミノシラン化合物から選択される一種以上が挙げられる。
【0113】
上記一般式(3)で表される有機ケイ素化合物又は一般式(4)で表わされるアミノシラン化合物としては、フェニルアルコキシシラン、アルキルアルコキシシラン、フェニルアルキルアルコキシシラン、シクロアルキルアルコキシシラン、アルキル(シクロアルキル)アルコキシシラン、(アルキルアミノ)アルコキシシラン、アルキル(アルキルアミノ)アルコキシシラン、シクロアルキル(アルキルアミノ)アルコキシシラン、テトラアルコキシシラン、テトラキス(アルキルアミノ)シラン、アルキルトリス(アルキルアミノ)シラン、ジアルキルビス(アルキルアミノ)シラン、トリアルキル(アルキルアミノ)シラン等が挙げられる。
【0114】
上記一般式(3)で表される有機ケイ素化合物又は一般式(4)で表わされるアミノシラン化合物としては、具体的には、n-プロピルトリエトキシシラン、シクロペンチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、t-ブチルトリメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、イソプロピルイソブチルジメトキシシラン、ジイソペンチルジメトキシシラン、ビス(2-エチルヘキシル)ジメトキシシラン、t-ブチルメチルジメトキシシラン、t-ブチルエチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、シクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、ビス(エチルアミノ)メチルエチルシラン、ビス(エチルアミノ)t-ブチルメチルシラン、ビス(エチルアミノ)ジシクロヘキシルシラン、ジシクロペンチルビス(エチルアミノ)シラン、ビス(メチルアミノ)(メチルシクロペンチルアミノ)メチルシラン、ジエチルアミノトリエトキシシラン、ビス(シクロヘキシルアミノ)ジメトキシシラン、ビス(パーヒドロイソキノリノ)ジメトキシシラン、ビス(パーヒドロキノリノ)ジメトキシシラン、エチル(イソキノリノ)ジメトキシシラン等から選ばれる一種以上が挙げられ、中でも、n-プロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、t-ブチルメチルジメトキシシラン、t-ブチルエチルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、イソプロピルイソブチルジメトキシシラン、ジイソペンチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、t-ブチルメチルビス(エチルアミノ)シラン、ビス(エチルアミノ)ジシクロヘキシルシラン、ジシクロペンチルビス(エチルアミノ)シラン、ビス(パーヒドロイソキノリノ)ジメトキシシラン、ジエチルアミノトリエトキシシラン等から選ばれる一種以上が好ましい。
【0115】
本発明のオレフィン類重合用触媒において、(A)本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分、(B)一般式(2)で表される有機アルミニウム化合物及び(C)外部電子供与性化合物の含有割合は、本発明の効果が得られる範囲において任意に選定され、特に限定されるものではないが、オレフィン類重合用固体触媒成分(A)中のチタン原子1モルあたり、(B)一般式(2)で表される有機アルミニウム化合物が、1~2000モルであることが好ましく、50~1000モルであることがより好ましい。また、(B)一般式(2)で表される有機アルミニウム化合物1モルあたり、(C)外部電子供与性化合物が、0.002~10モルであることが好ましく、0.01~2モルであることがより好ましく、0.01~0.5モルであることがさらに好ましい。
【0116】
本発明のオレフィン類重合用触媒の製造方法は、特に制限されず、(A)本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分、(B)一般式(2)で表される有機アルミニウム化合物及び(C)外部電子供与性化合物を、公知の方法で接触させることにより、オレフィン類重合用触媒を製造する方法が挙げられる。
上記各成分を接触させる順序は任意であるが、例えば、以下の接触順序を例示することができる。
(i)(A)本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分→(C)外部電子供与性化合物→(B)一般式(2)で表される有機アルミニウム化合物
(ii)(B)一般式(2)で表される有機アルミニウム化合物→(C)外部電子供与性化合物→(A)本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分
(iii)(C)外部電子供与性化合物→(A)本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分→(B)一般式(2)で表される有機アルミニウム化合物
(iv)(C)外部電子供与性化合物→(B)一般式(2)で表される有機アルミニウム化合物→(A)本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分
上記接触例(i)~(iv)のうち、接触例(ii)が好適である。
なお、上記接触例(i)~(iv)において、「→」は接触順序を意味し、例えば、「(A)本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分→(B)一般式(2)で表される有機アルミニウム化合物→(C)外部電子供与性化合物」は、(A)本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分中に(B)一般式(2)で表される有機アルミニウム化合物を添加して接触させた後、(C)外部電子供与性化合物を添加して接触させることを意味する。
【0117】
本発明のオレフィン類重合用触媒は、(A)本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分、(B)一般式(2)で表される有機アルミニウム化合物及び(C)外部電子供与性化合物を、オレフィン類不存在下で接触させてなるものであってもよいし、オレフィン類の存在下で(重合系内で)接触させてなるものであってもよい。
【0118】
本発明によれば、粒度分布が狭く、微粗粉量が少なく、BD(Bulk Density;嵩密度)が高く、壊れにくいオレフィン類重合用触媒を提供することができる。
【0119】
本発明のオレフィン類重合体の製造方法は、本発明のオレフィン重合用触媒の存在下にオレフィン類の重合を行うことを特徴とするものである。
【0120】
本発明のオレフィン類重合体の製造方法において、オレフィン類の重合は、単独重合であっても共重合であってもよい。
【0121】
本発明のオレフィン類重合体の製造方法において、オレフィン類としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、ビニルシクロヘキサン等から選ばれる一種以上が挙げられ、エチレン、プロピレンまたは1-ブテンが好適であり、プロピレンがより好適である。
【0122】
プロピレンを重合する場合、他のオレフィン類との共重合を行ってもよく、プロピレンと他のα-オレフィンとのブロック共重合であることが好ましい。ブロック共重合により得られるブロック共重合体とは、2種以上のモノマー組成が連続して変化するセグメントを含む重合体であり、モノマー種、コモノマー種、コモノマー組成、コモノマー含量、コモノマー配列、立体規則性などポリマーの一次構造の異なるポリマー鎖(セグメント)が1分子鎖中に2種類以上繋がっている形態のものをいう。共重合されるオレフィン類としては、炭素数2~20のα-オレフィン(炭素数3のプロピレンを除く)であることが好ましく、具体的には、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、ビニルシクロヘキサン等が挙げられ、これ等のオレフィン類は一種以上併用であってもよい。とりわけ、エチレン及び1-ブテンが好適に用いられる。
【0123】
本発明のオレフィン類重合体の製造方法では、オレフィン類の重合を、有機溶媒の存在下でも不存在下でも行うことができる。また、本発明のオレフィン類重合体の製造方法では、気体及び液体のいずれの状態でも、重合対象となるオレフィン類を用いることができる。
【0124】
オレフィン類の重合であるが、例えば、オートクレーブ等の反応炉内において、本発明のオレフィン類重合用触媒の存在下、オレフィン類を導入し、加熱、加圧状態下に、オレフィン類の重合を行うことができる。
【0125】
本発明のオレフィン類重合体の製造方法において、重合温度は、通常200℃以下であるが、100℃以下が好ましく、活性や立体規則性の向上の観点からは、60~100℃がより好ましく、70~90℃がさらに好ましい。本発明のオレフィン類重合体の製造方法において、重合圧力は、10MPa以下が好ましく、5MPa以下がより好ましい。また、連続重合法、バッチ式重合法のいずれでも可能である。更に重合反応は一段で行ってもよいし、二段以上で行ってもよい。
【0126】
本発明のオレフィン類重合体の製造方法において、オレフィン類を重合(以下、適宜、本重合と称する。)するにあたり、重合対象となるオレフィン類に対して本発明のオレフィン類重合用触媒の構成成分の一部又は全部を接触させることにより、予備的な重合(以下、適宜、予備重合と称する。)を行ってもよい。
【0127】
予備重合を行うに際して、本発明のオレフィン類重合用触媒の構成成分及びオレフィン類の接触順序は任意であるが、不活性ガス雰囲気あるいはオレフィンガス雰囲気に設定した予備重合系内に先ず有機アルミニウム化合物を装入し、次いで本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分を接触させた後、プロピレン等のオレフィン類を一種以上接触させることが好ましい。または、不活性ガス雰囲気あるいはオレフィンガス雰囲気に設定した予備重合系内に先ず有機アルミニウム化合物を装入し、次いで外部電子供与性化合物を接触させ、更に本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分を接触させた後、プロピレン等のオレフィン類を一種以上接触させることが好ましい。予備重合の際には、本重合と同様のオレフィン類、あるいはスチレン等のモノマーを用いることができ、予備重合条件も、上記重合条件と同様である。
【0128】
上記予備重合を行うことにより、触媒活性を向上させ、得られる重合体の立体規則性及び粒子性状等を一層改善し易くなる。
【0129】
本発明に係るオレフィン類重合体の製造方法は、特に、気相法によるポリオレフィンの製造プロセスに適用される。
【0130】
本発明のオレフィン類重合用触媒は、本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分、すなわち、内部電子供与性化合物として、オレフィン類重合体の酸化防止剤としても機能するチオエーテル基含有内部電子供与性化合物(a)を用いる固体触媒成分を用いて形成されている。そのため、本発明のオレフィン類重合用触媒を用いて得られるオレフィン類重合体は、オレフィン類重合体の製造後に、外から酸化防止剤が添加されなくても、酸化防止剤を内在している。よって、本発明のオレフィン類重合用触媒を用いて得られるオレフィン類重合体は、オレフィン類重合体の製造後に、外から酸化防止剤が添加されなくても、酸化防止性がある。
【0131】
そして、オレフィン類重合体において、酸化劣化は、金属成分が存在するオレフィン類重合用固体触媒の近傍で生じ易い。本発明のオレフィン類重合用触媒を用いて得られるオレフィン類重合体では、オレフィン類の重合に用いられたオレフィン類重合用固体触媒の固体触媒成分が、酸化防止剤として機能するチオエーテル基含有内部電子供与性化合物(a)を含有しているので、オレフィン類重合体中の酸化劣化が生じ易い金属成分の極めて近傍に且つ選択的に、酸化防止剤が存在している。そのため、本発明のオレフィン類重合用触媒を用いて得られるオレフィン類重合体は、従来の重合後に外から酸化防止剤が添加されたオレフィン類重合体に比べ、酸化防止剤の含有量が非常に少なく、且つ、耐酸化劣化寿命が長くなる。
【実施例】
【0132】
次に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
【0133】
(実施例1)
<オレフィン重合用固体触媒成分の調製>
窒素ガスで充分置換され、攪拌機を具備した容量500mlの丸底フラスコにジエトキシマグネシウム10g 、トルエン50ml、内部電子供与性化合物として、フタル酸ジ(n-ブチル)(化合物(b1))3.2gを装入して、懸濁液形成した。次いで、四塩化チタン30ml及びトルエン20mlを用いて形成された溶液を、10℃の液温に保持した前記懸濁液中に添加した。
その後、液温を10℃から90℃まで昇温し、攪拌しながら、90℃で2時間反応させた。
反応終了後、得られた固体生成物を90℃のトルエン100mlで4回洗浄し、新たに四塩化チタン30ml及びトルエン70mlを加え、100℃に昇温し、1時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、得られた固体生成物を100℃のトルエン100mlで2回洗浄し、3,3‘-チオジプロピオン酸ジメチル(化合物(a1))0.2gを含むトルエン100mlを加え、100℃で1時間1時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、40℃のn-ヘプタン100mlで10回洗浄して、オレフィン重合用固体触媒成分(A-1)を得た。このとき、ジエトキシマグネシウムに対する3,3‘-チオジプロピオン酸ジメチルの添加量は2.0質量%であり、また、3,3‘-チオジプロピオン酸ジメチル(a1)及びフタル酸ジ(n-ブチル)(b1)の合計添加量に対する3,3‘-チオジプロピオン酸ジメチル(a1)の添加量は5.9質量%である。
この固体触媒成分(A-1)中、Mg含有量は19.7質量%、Ti含有量は2.5質量%、Cl含有量は61.8質量%、S含有量は0.1質量%であった。固体触媒成分(A-1)中のS含有量から見積もられる固体触媒成分(A-1)中の3,3‘-チオジプロピオン酸ジメチル(a1)含有量は0.6質量%であり、フタル酸ジ(n-ブチル)(b1)含有量は18.1質量%であり、内部電子供与性化合物の含有量(3,3‘-チオジプロピオン酸ジメチル(a1)及びフタル酸ジ(n-ブチル)(b1)の合計含有量)は18.7質量%であり、3,3‘-チオジプロピオン酸ジメチル(a1)及びフタル酸ジ(n-ブチル)(b1)の合計含有量に対する3,3‘-チオジプロピオン酸ジメチル(a1)含有量の割合は3.2質量%である。
【0134】
<オレフィン重合触媒の形成及びプロピレン重合>
窒素ガスで完全に置換された内容積2.0リットルの撹拌機付オートクレーブに、トリエチルアルミニウム1.32ミリモル、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン0.13ミリモル及び上記固体触媒成分(A-1)をチタン原子換算で0.0026ミリモル装入し、オレフィン重合用触媒を形成した。
次いで、水素ガス1.5リットル及び液化プロピレン1.4リットルをオートクレーブに装入し、20℃で5分間予備重合を行った後、70℃まで昇温し、70℃で1時間の重合反応を行うことにより、プロピレン重合体を得た。固体触媒成分1g当たりの重合活性は46,200g-PP/g-catであった。
【0135】
<ポリプロピレンの耐酸化劣化寿命の評価>
立山科学工業株式会社製小型メルトインデクサL-248-4531にプロピレン重合体を5g入れ、230℃に加温して1000秒保持した後、溶融流れ性(MFR)を測定(MFR-1)し、ASTM D 1238、JIS K 7210に準じて測定したMFR(MFR-2)との比を求めたところ、MFR-1/MFR-2=3.3であった。
【0136】
(実施例2)
<オレフィン重合用固体触媒成分の調製>
内部電子供与性化合物として、3,3‘-チオジプロピオン酸ジメチル(a1)0.2gに代えて、3,3‘-チオジプロピオン酸ジメチル(a1)0.6gを用いたこと以外は、実施例1と同様に行い、固体触媒成分(A-2)を得た。このとき、ジエトキシマグネシウムに対する3,3‘-チオジプロピオン酸ジメチルの添加量は6.0質量%であり、また、3,3‘-チオジプロピオン酸ジメチル(a1)及びフタル酸ジ(n-ブチル)(b1)の合計添加量に対する3,3‘-チオジプロピオン酸ジメチル(a1)の添加量は15.8質量%である。
この固体触媒成分(A-2)中、Mg含有量は19.5質量%、Ti含有量は3.0質量%、Cl含有量は61.0質量%、S含有量は0.5質量%であった。固体触媒成分(A-2)中のS含有量から見積もられる固体触媒成分(A-2)中の3,3‘-チオジプロピオン酸ジメチル(a1)含有量は3.1質量%であり、フタル酸ジ(n-ブチル)(b1)含有量は15.2質量%であり、内部電子供与性化合物の含有量(3,3‘-チオジプロピオン酸ジメチル(a1)及びフタル酸ジ(n-ブチル)(b1)の合計含有量)は15.7質量%であり、3,3‘-チオジプロピオン酸ジメチル(a1)及びフタル酸ジ(n-ブチル)(b1)の合計含有量に対する3,3‘-チオジプロピオン酸ジメチル(a1)含有量の割合は19.7質量%である。
【0137】
<オレフィン重合触媒の形成及びプロピレン重合>
固体触媒成分(A-1)に代えて、固体触媒成分(A-2)を用いること以外は、実施例1と同様に行った。その結果、固体触媒成分1g当たりの重合活性は13,300g-PP/g-catであった。
【0138】
<ポリプロピレンの耐酸化劣化寿命の評価>
固体触媒成分(A-1)で得られたポリプロピレン重合体に代えて、固体触媒成分(A-2)で得られたポリプロピレン重合体とすること以外は、実施例1と同様に行った。その結果、MFR-1/MFR-2=4.5であった。
【0139】
(実施例3)
<オレフィン重合用固体触媒成分の調製>
内部電子供与性化合物として、3,3‘-チオジプロピオン酸ジメチル(a1)0.2gに代えて、3-チアアジピン酸ジメチル(a2)0.6gを用いたこと以外は、実施例1と同様に行い、固体触媒成分(A-3)を得た。このとき、ジエトキシマグネシウムに対する3-チアアジピン酸ジメチル(a2)の添加量は6.0質量%であり、また、3-チアアジピン酸ジメチル(a2)及びフタル酸ジ(n-ブチル)(b1)の合計添加量に対する3-チアアジピン酸ジメチル(a2)の添加量は15.8質量%である。
この固体触媒成分(A-3)中、Mg含有量は18.9質量%、Ti含有量は2.9質量%、Cl含有量は60.8質量%、S含有量は0.5質量%であった。固体触媒成分(A-3)中のS含有量から見積もられる固体触媒成分(A-3)中の3-チアアジピン酸ジメチル(a2)含有量は2.9質量%であり、フタル酸ジ(n-ブチル)(b1)含有量は15.4質量%であり、内部電子供与性化合物の含有量3-チアアジピン酸ジメチル(a2)及びフタル酸ジ(n-ブチル)(b1)の合計含有量)は15.9質量%であり、3-チアアジピン酸ジメチル(a2)及びフタル酸ジ(n-ブチル)(b1)の合計含有量に対する3-チアアジピン酸ジメチル(a2)含有量の割合は18.2質量%である。
【0140】
<オレフィン重合触媒の形成及びプロピレン重合>
固体触媒成分(A-1)に代えて、固体触媒成分(A-3)を用いること以外は、実施例1と同様に行った。その結果、固体触媒成分1g当たりの重合活性は8,200g-PP/g-catであった。
【0141】
<ポリプロピレンの耐酸化劣化寿命の評価>
固体触媒成分(A-1)で得られたポリプロピレン重合体代えて、固体触媒成分(A-3)で得られたポリプロピレン重合体とすること以外は、実施例1と同様に行った。その結果、MFR-1/MFR-2=6.9であった。
【0142】
(実施例4)
<オレフィン重合用固体触媒成分の調製>
内部電子供与性化合物として、3,3‘-チオジプロピオン酸ジメチル(a1)0.2gに代えて、3,3‘-チオジプロピオン酸ビス(2-エチルヘキシル)(a3)1.2gを用いたこと以外は、実施例1と同様に行い、固体触媒成分(A-4)を得た。このとき、ジエトキシマグネシウムに対する3,3‘-チオジプロピオン酸ビス(2-エチルヘキシル)(a3)の添加量は12.0質量%であり、また、3,3‘-チオジプロピオン酸ビス(2-エチルヘキシル)(a3)及びフタル酸ジ(n-ブチル)(b1)の合計添加量に対する3,3‘-チオジプロピオン酸ビス(2-エチルヘキシル)(a3)の添加量は27.3質量%である。
この固体触媒成分(A-4)中、Mg含有量は19.3質量%、Ti含有量は2.9質量%、Cl含有量は61.8質量%、S含有量は0.3質量%であった。固体触媒成分(A-4)中のS含有量から見積もられる固体触媒成分(A-4)中の3,3‘-チオジプロピオン酸ビス(2-エチルヘキシル)(a3)含有量は3.8質量%であり、フタル酸ジ(n-ブチル)(b1)含有量は14.2質量%であり、内部電子供与性化合物の含有量3,3‘-チオジプロピオン酸ビス(2-エチルヘキシル)(a3)及びフタル酸ジ(n-ブチル)(b1)の合計含有量)は18.0質量%であり、3,3‘-チオジプロピオン酸ビス(2-エチルヘキシル)(a3)及びフタル酸ジ(n-ブチル)(b1)の合計含有量に対する3,3‘-チオジプロピオン酸ビス(2-エチルヘキシル)(a3)含有量の割合は21.1質量%である。
【0143】
<オレフィン重合触媒の形成及びプロピレン重合>
固体触媒成分(A-1)に代えて、固体触媒成分(A-4)を用いること以外は、実施例1と同様に行った。その結果、固体触媒成分1g当たりの重合活性は26,600g-PP/g-catであった。
【0144】
<ポリプロピレンの耐酸化劣化寿命の評価>
固体触媒成分(A-1)で得られたポリプロピレン重合体に代えて、固体触媒成分(A-4)で得られたポリプロピレン重合体とすること以外は、実施例1と同様に行った。その結果、MFR-1/MFR-2=3.8であった。
【0145】
(実施例5)
<オレフィン重合用固体触媒成分の調製>
内部電子供与性化合物として、3,3‘-チオジプロピオン酸ジメチル(a1)0.2gに代えて、3,3‘-チオジプロピオン酸ビス(2-エチルヘキシル)(a3)0.3gを用いたこと以外は、実施例1と同様に行い、固体触媒成分(A-5)を得た。このとき、ジエトキシマグネシウムに対する3,3‘-チオジプロピオン酸ビス(2-エチルヘキシル)(a3)の添加量は3.0質量%であり、また、3,3‘-チオジプロピオン酸ビス(2-エチルヘキシル)(a3)及びフタル酸ジ(n-ブチル)(b1)の合計添加量に対する3,3‘-チオジプロピオン酸ビス(2-エチルヘキシル)(a3)の添加量は8.6質量%である。
この固体触媒成分(A-5)中、Mg含有量は19.6質量%、Ti含有量は2.6質量%、Cl含有量は61.4質量%、S含有量は0.1質量%であった。固体触媒成分(A-5)中のS含有量から見積もられる固体触媒成分(A-5)中の3,3‘-チオジプロピオン酸ビス(2-エチルヘキシル)(a3)含有量は1.0質量%であり、フタル酸ジ(n-ブチル)(b1)含有量は17.7質量%であり、内部電子供与性化合物の含有量3,3‘-チオジプロピオン酸ビス(2-エチルヘキシル)(a3)及びフタル酸ジ(n-ブチル)(b1)の合計含有量)は18.7質量%であり、3,3‘-チオジプロピオン酸ビス(2-エチルヘキシル)(a3)及びフタル酸ジ(n-ブチル)(b1)の合計含有量に対する3,3‘-チオジプロピオン酸ビス(2-エチルヘキシル)(a3)含有量の割合は5.3質量%である。
【0146】
<オレフィン重合触媒の形成及びプロピレン重合>
固体触媒成分(A-1)に代えて、固体触媒成分(A-5)を用いること以外は、実施例1と同様に行った。その結果、固体触媒成分1g当たりの重合活性は51,500g-PP/g-catであった。
【0147】
<ポリプロピレンの耐酸化劣化寿命の評価>
固体触媒成分(A-1)で得られたポリプロピレン重合体に代えて、固体触媒成分(A-5)で得られたポリプロピレン重合体とすること以外は、実施例1と同様に行った。その結果、MFR-1/MFR-2=4.8であった。
【0148】
(実施例6)
<オレフィン重合用固体触媒成分の調製>
内部電子供与性化合物として、フタル酸ジ(n-ブチル)(b1)3.2gに代えて、(2-イソプロピル)(2-イソペンチル)-3,3-ジメトキシプロパン(b2)2.4gを用いたこと以外は、実施例1と同様に行い、固体触媒成分(A-6)を得た。
この固体触媒成分(A-6)中、Mg含有量は19.8質量%、Ti含有量は2.5質量%、Cl含有量は61.0質量%、S含有量は0.4質量%であった。固体触媒成分(A-6)中のS含有量から見積もられる固体触媒成分(A-6)中の3,3‘-チオジプロピオン酸ジメチル(a1)含有量は2.7質量%であり、(2-イソプロピル)(2-イソペンチル)-3,3-ジメトキシプロパン(b2)含有量は16.0質量%であり、内部電子供与性化合物の含有量3,3‘-チオジプロピオン酸ジメチル(a1)及び(2-イソプロピル)(2-イソペンチル)-3,3-ジメトキシプロパン(b2)の合計含有量)は18.7質量%であり、3,3‘-チオジプロピオン酸ビス(2-エチルヘキシル)(a3)及びフタル酸ジ(n-ブチル)(b1)の合計含有量に対する3,3‘-チオジプロピオン酸ジメチル(a1)含有量の割合は14.4質量%である。
【0149】
<オレフィン重合触媒の形成及びプロピレン重合>
固体触媒成分(A-1)に代えて、固体触媒成分(A-6)を用いること以外は、実施例1と同様に行った。その結果、固体触媒成分1g当たりの重合活性は8,100g-PP/g-catであった。
【0150】
<ポリプロピレンの耐酸化劣化寿命の評価>
固体触媒成分(A-1)で得られたポリプロピレン重合体に代えて、固体触媒成分(A-6)で得られたポリプロピレン重合体とすること以外は、実施例1と同様に行った。その結果、MFR-1/MFR-2=2.1であった。
【0151】
(比較例1)
<オレフィン重合用固体触媒成分の調製>
内部電子供与性化合物として、3,3‘-チオジプロピオン酸ジメチル(化合物(a1))0.2gを用いないこと以外は、実施例1と同様に行い、固体触媒成分(B-1)を得た。
この固体触媒成分(B-1)中、Mg含有量は20.8質量%、Ti含有量は3.3質量%、Cl含有量は61.5質量%であった。固体触媒成分(B-1)中のフタル酸ジ(n-ブチル)(b1)含有量は18.9質量%である。
【0152】
<オレフィン重合触媒の形成及びプロピレン重合>
固体触媒成分(A-1)に代えて、固体触媒成分(B-1)を用いること以外は、実施例1と同様に行った。その結果、固体触媒成分1g当たりの重合活性は52,100g-PP/g-catであった。
【0153】
<ポリプロピレンの耐酸化劣化寿命の評価>
固体触媒成分(A-1)で得られたポリプロピレン重合体に代えて、固体触媒成分(B-1)で得られたポリプロピレン重合体とすること以外は、実施例1と同様に行った。その結果、MFR-1/MFR-2=8.5であった。
【0154】
(比較例2)
<オレフィン重合用固体触媒成分の調製>
内部電子供与性化合物として、3,3‘-チオジプロピオン酸ジメチル(a1)0.2gに代えて、ピメリン酸ジメチル(c1)0.6gを用いたこと以外は、実施例1と同様に行い、固体触媒成分(B-2)を得た。
この固体触媒成分(B-2)中、Mg含有量は19.8質量%、Ti含有量は2.5質量%、Cl含有量は61.2質量%であった。固体触媒成分(B-2)中のフタル酸ジ(n-ブチル)(b1)含有量は14.2質量%であり、ピメリン酸ジメチル(c1)の含有量は3.5質量%である。
【0155】
<オレフィン重合触媒の形成及びプロピレン重合>
固体触媒成分(A-1)に代えて、固体触媒成分(B-2)を用いること以外は、実施例1と同様に行った。その結果、固体触媒成分1g当たりの重合活性は9,800g-PP/g-catであった。
【0156】
<ポリプロピレンの耐酸化劣化寿命の評価>
固体触媒成分(A-1)で得られたポリプロピレン重合体に代えて、固体触媒成分(B-2)で得られたポリプロピレン重合体とすること以外は、実施例1と同様に行った。その結果、MFR-1/MFR-2=10.3であった。
【0157】
実施例1~実施例6においては、マグネシウム、チタン、ハロゲン、硫黄及び酸素を含有するオレフィン類重合用固体触媒成分、特定の有機アルミニウム化合物及び外部電子供与性化合物の接触反応物であるオレフィン類重合用触媒の存在下にプロピレン重合を行って得られたプロピレン重合体は、MFR-1/MFR-2が7以下の低い値を示していることから耐酸化劣化寿命が長いことが分かる。
【0158】
一方、比較例1、比較例2においては、MFR-1/MFR-2が8以上となり、触媒中に硫黄を含まないことから耐酸化劣化寿命を示す重合体が得られないことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0159】
本発明によれば、重合後に外から酸化防止剤を添加する必要がなく、且つ、耐酸化劣化寿命が長いオレフィン類重合体を提供することができる。