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特許7324599光ファイバカプラが組み込まれた単一波長双方向トランシーバ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-02
(45)【発行日】2023-08-10
(54)【発明の名称】光ファイバカプラが組み込まれた単一波長双方向トランシーバ
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/42 20060101AFI20230803BHJP
【FI】
G02B6/42
【請求項の数】 14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019049481
(22)【出願日】2019-03-18
(65)【公開番号】P2019197207
(43)【公開日】2019-11-14
【審査請求日】2022-03-14
(31)【優先権主張番号】15/926,308
(32)【優先日】2018-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】チャン, エリック ワイ.
(72)【発明者】
【氏名】コーシンツ, デニス ジー.
(72)【発明者】
【氏名】トルオン, テュオン ケー.
【審査官】山本 元彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0027415(US,A1)
【文献】特開2009-164308(JP,A)
【文献】米国特許第07171081(US,B1)
【文献】特開2006-113455(JP,A)
【文献】特開2013-182276(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0215568(US,A1)
【文献】特開2005-99769(JP,A)
【文献】特開2016-82591(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/26-6/27
G02B 6/30-6/34
G02B 6/42-6/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置であって、
2×1溶融カプラと、
前記2×1溶融カプラに接続された入力/出力光ファイバと、
前記2×1溶融カプラに接続された検出器光学サブアセンブリファイバと、
前記2×1溶融カプラに接続されたレーザ光学サブアセンブリファイバと、
トランシーバ電子回路プリント配線板、前記トランシーバ電子回路プリント配線板に電気結合されたレーザ光学サブアセンブリ、及び前記トランシーバ電子回路プリント配線板に電気結合された検出器光学サブアセンブリを備えるトランシーバと
金属ベースと、を備え、
前記2×1溶融カプラは、前記金属ベースと前記トランシーバ電子回路プリント配線板との間に配置され、更に、前記レーザ光学サブアセンブリ及び前記検出器光学サブアセンブリ、前記トランシーバ電子回路プリント配線板、並びに前記2×1溶融カプラが、前記金属ベースに取り付けられ、
前記レーザ光学サブアセンブリは、前記レーザ光学サブアセンブリファイバに光を送信する位置に設けられたレーザを備え、前記検出器光学サブアセンブリは、前記検出器光学サブアセンブリファイバから光を受信する位置に設けられた光検出器を備える
装置。
【請求項2】
前記トランシーバ電子回路プリント配線板は、前記トランシーバ電子回路プリント配線板の一端に配置された複数のトランシーバ入力/出力金属接点を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
属カバーを更に備え、前記金属カバーは前記金属ベースに取り付けられ、前記金属カバー前記トランシーバ入力/出力金属接点を露出させるように一端において開いていることにより、前記トランシーバ電子回路プリント配線板の前記一端がアプリケーションハードウェアにプラグ装着されたときに当該アプリケーションハードウェアの対応する金属接点が前記トランシーバ入力/出力金属接点と接触することが可能となる、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
フレックス回路のペアを更に備え、前記フレックス回路はそれぞれ、前記レーザ光学サブアセンブリ及び前記検出器光学サブアセンブリを前記トランシーバ電子回路プリント配線板に電気的に接続する、請求項に記載の装置。
【請求項5】
前記金属ベースは当該金属ベースの一端から突出するファイバ先端チューブを備え、前記入力/出力光ファイバは前記ファイバ先端チューブを通り、前記装置はファイバブートを更に備え、前記ファイバブートは、前記ファイバ先端チューブと、前記ファイバ先端チューブの遠位端を超えて突出する前記入力/出力光ファイバの一部とを取り囲む、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記2×1溶融カプラ、前記入力/出力光ファイバ、前記検出器光学サブアセンブリファイバ、及び前記レーザ光学サブアセンブリファイバはガラス製である、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記2×1溶融カプラは、長さ約25mm、及び直径約1.5mmである、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
データ送信システムであって、
ギガビット光ファイバを備える光ケーブルと、
前記光ケーブルの両端に光結合された第1及び第2の2×1溶融カプラと、
前記第1の2×1溶融カプラにそれぞれ光結合された第1のレーザ及び第1の光検出器を備える第1のトランシーバと、
前記第1のトランシーバに接続された第1のスイッチと、
前記第1のスイッチに接続された第1の列線交換ユニットと、
前記第2の2×1溶融カプラにそれぞれ光結合された第2のレーザ及び第2の光検出器を含む第2のトランシーバと
前記第2のトランシーバに接続された第2のスイッチと、
前記第2のスイッチに接続された第2の列線交換ユニットと、を備え、
前記第1及び第2のレーザは、同一の波長を有する光を放射するように構成され
前記第1の列線交換ユニットと第2の列線交換ユニットは、前記第1及び第2のスイッチが閉じられたときに前記光ケーブル、前記第1及び第2の2×1溶融カプラ、並びに前記第1及び第2のトランシーバを経由して通信可能である、
データ送信システム。
【請求項9】
前記ギガビット光ファイバは、プラスチック製である、請求項に記載のデータ送信システム。
【請求項10】
前記第1及び第2の2×1溶融カプラはガラス製であり、長さ約25mm及び直径約1.5mmである、請求項に記載のデータ送信システム。
【請求項11】
前記第1の2×1溶融カプラに接続された入力/出力光ファイバと、
前記第1の2×1溶融カプラに接続された検出器光学サブアセンブリファイバと、
前記第1の2×1溶融カプラに接続されたレーザ光学サブアセンブリファイバと、
を更に備え、
前記第1のトランシーバは、
トランシーバ電子回路プリント配線板と、
前記トランシーバ電子回路プリント配線板に電気的に結合されたレーザ光学サブアセンブリと、
前記トランシーバ電子回路プリント配線板に電気的に結合された検出器光学サブアセンブリと
を備え、
前記レーザ光学サブアセンブリは、前記レーザ光学サブアセンブリファイバに光を送信する位置に設けられたレーザを備え、前記検出器光学サブアセンブリは、前記検出器光学サブアセンブリファイバからの光を受信する位置に設けられた光検出器を備える、請求項に記載のデータ送信システム。
【請求項12】
前記トランシーバ電子回路プリント配線板は、当該トランシーバ電子回路プリント配線板の一端に配置された複数のトランシーバ入力/出力金属接点を備え、前記データ送信システムは金属ベース及び金属カバーを更に備え、前記トランシーバ電子回路プリント配線板及び前記金属カバーは前記金属ベースに取り付けられ,前記金属カバー前記トランシーバ入力/出力金属接点を露出させるように一端において開いていることにより、前記トランシーバ電子回路プリント配線板の前記一端がアプリケーションハードウェアにプラグ装着されたときに、当該アプリケーションハードウェアの対応する金属接点が前記トランシーバ入力/出力金属接点と接触することが可能となる、請求項11に記載のデータ送信システム。
【請求項13】
金属ベースを更に備え、前記第1の2×1溶融カプラは、前記金属ベースと前記トランシーバ電子回路プリント配線板との間に配置され、更に、前記レーザ光学サブアセンブリ及び前記検出器光学サブアセンブリ、並びに前記トランシーバ電子回路プリント配線板は前記金属ベースに取り付けられる、請求項11に記載のデータ送信システム。
【請求項14】
フレックス回路のペアを更に備え、前記フレックス回路は、それぞれ前記レーザ光学サブアセンブリ及び前記検出器光学サブアセンブリを前記トランシーバ電子回路プリント配線板に電気的に接続する、請求項13に記載のデータ送信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示される技術は、概して、電気コンポーネント間での通信を可能にする光ファイバネットワークに関する。
【0002】
光ファイバ双方向トランシーバは、アビオニクスネットワークにおいて展開され、サイズ、重量、及び電力を低減するために銅線ケーブルに取って代わることに成功してきた。更に、次世代の飛行機のため、多数の単芯ファイバ双方向光リンクを飛行機内で使用する大規模高速(例えば、1ギガビット/秒を上回る)スイッチネットワークが提案されてきた。
【0003】
一部のアビオニクスネットワークで使用される既存の双方向トランシーバでは、作動のために2つの波長が必要とされる。これにより、大規模スイッチネットワークシステムの設計者及び設置者には、各光ファイバリンクにおける波長ペアが合致した状態を保つように双方向トランシーバについて注意を払い続けなければならないという負担がかかる。アビオニクスシステムでの使用向けに設計された一部の大規模スイッチネットワークにおいて、波長のペアが合致するように注意を払い続けることは、誤った波長のトランシーバが飛行機の光リンクに設置された際には頻繁な作業のやり直しが必要となり、手間と時間のかかるプロセスである。
【0004】
同一波長を有する光信号を送受信する、別の双方向トランシーバが提案されてきた。提案されたこのトランシーバは、光学サブアセンブリ(OSA)に設置されたビームスプリッタを有しているが、本設計では吸収材を用いてローカルレーザの反射を低減することが必要である。OSAにおける光反射のクロストーク及び拡散が大きいと、双方向光リンク作動が機能しなくなる場合がある。したがって、このビームスプリッタ設計に基づく双方向トランシーバを製造するのは得策ではない。
【発明の概要】
【0005】
以下でやや詳細に開示する主題は、列線交換ユニットなどの電気コンポーネント間における高速データ送信(例えば、1ギガビット/秒を上回る)での通信を可能にする、ビームスプリッタの代替として溶融カプラが組み込まれたプラグ装着可能な単一波長双方向(すなわち単芯ファイバ)トランシーバを対象とする。以下に開示する主題は更に、低コストで広く利用可能な標準的二芯ファイバ高速SFPトランシーバのパッケージングを変更することに基づく作製プロセスを対象とする。
【0006】
一実施形態によれば、2×1マルチモードのガラス製溶融光カプラ(以下、「2×1溶融カプラ」と呼ぶ)がSFPトランシーバパッケージの内側に組み込まれる。2×1溶融カプラは、溶融プロセスにより形成される。2×1溶融カプラを用いることにより、パッケージングが高額となるビームスプリッタの使用が回避されうる。2×1溶融カプラは、ビームスプリッタ手法と異なり、戻り反射光が-40dB以下と非常に少ない。2×1溶融カプラは、トランシーバの前端にあるOSAから離れていることにより、ローカル送信レーザとローカル受信光検出器との間のクロストークをなくす。この組み込み型ガラス製カプラという特徴により、本明細書で提案する単一波長双方向トランシーバ設計は、大規模スイッチングネットワークにおいて光リンクマージンの大きい100メートルエラーフリーGbPOFリンクの作動を可能にする。
【0007】
本明細書で開示する特定の実施形態では、単一波長双方向トランシーバは、スモールフォームファクターコミッティーの後援の下、工業用標準マルチソースアグリーメント(MSA)により規定されたフォームファクター(寸法を含む)を有するスモールフォームファクタープラグ装着可能(SFP)トランシーバである。SFPトランシーバは、様々な光ファイバネットワーキング規格に対し容易に適合され、かつ、1ギガビット/秒よりも速い速度でデータを送信することができる光ファイバ(プラスチック又はガラス製)を採用するアビオニクスシステムの大規模スイッチネットワークに容易に組み込まれうる。しかしながら、本明細書で開示する新規な技術的特徴は、プラグ装着可能トランシーバの寸法が任意の特定のSFP仕様に準拠するか否かに依存するものではない。本明細書に開示する概念を適用するにあたり、SFP仕様に準拠しないプラグ装着可能トランシーバが構築される場合もある。
【0008】
溶融カプラが組み込まれたプラグ装着可能な単一波長双方向トランシーバの様々な実施形態を以下でやや詳細に記載するが、それら実施形態の一又は複数は、下記の態様の一又は複数によって特徴づけられうる。
【0009】
以下で詳細に開示する主題の一態様は、2×1溶融カプラと、2×1溶融カプラに接続された入力/出力光ファイバと、2×1溶融カプラに接続された検出器光学サブアセンブリファイバと、2×1溶融カプラに接続されたレーザ光学サブアセンブリファイバと、トランシーバ電子回路プリント配線板、トランシーバ電子回路プリント配線板に電気結合されたレーザ光学サブアセンブリ、及びトランシーバ電子回路プリント配線板に電気結合された検出器光学サブアセンブリを備えるトランシーバとを備える装置である。レーザ光学サブアセンブリは、レーザ光学サブアセンブリファイバに光を送信する位置に設けられたレーザを備える。検出器光学サブアセンブリは、検出器光学サブアセンブリファイバからの光を受信する位置に設けられた光検出器を備える。トランシーバ電子回路プリント配線板は、トランシーバ電子回路プリント配線板の一端に設けられた複数のトランシーバ入力/出力金属接点を備える。
【0010】
いくつかの実施形態によれば、装置は、金属ベース及び金属カバーを更に備え、トランシーバ電子回路プリント配線板及び金属カバーは金属ベースに取り付けられ、金属カバーは、トランシーバ入力/出力金属接点を露出させるように一端において開いていることにより、トランシーバ電子回路プリント配線板の一端がアプリケーションハードウェアにプラグ装着されたときに当該アプリケーションハードウェアの対応する金属接点がトランシーバ入力/出力金属接点と接触することが可能となる。提案される一実装形態では、金属ベースは、金属ベースの一端から突出するファイバ先端チューブを備え、入力/出力光ファイバは、ファイバ先端チューブを通る。装置は、ファイバ先端チューブと、ファイバ先端チューブの遠位端を超えて突出する入力/出力光ファイバの一部とを取り囲むファイバブートを更に備える。
【0011】
以下で詳細に開示する主題の別の態様は、ギガビット光ファイバを備える光ケーブルと、光ケーブルの両端に光結合された第1及び第2の2×1溶融カプラと、第1の2×1溶融カプラにそれぞれ光結合された第1のレーザ及び第1の光検出器を備える第1のトランシーバと、第2の2×1溶融カプラにそれぞれ光結合された第2のレーザ及び第2の光検出器を含む第2のトランシーバとを備えるデータ送信システムである。第1及び第2のレーザは、同一の波長を有するレーザビームを放射するように構成される。
【0012】
以下で詳細に開示する主題の更なる態様は、プラグ装着可能トランシーバパッケージを組み立てるための方法であって、2×1溶融カプラを作製することと、入力/出力光ファイバ、検出器光学サブアセンブリファイバ、及びレーザ光学サブアセンブリファイバを2×1溶融カプラに接続することと、金属ベースの一端から突出するファイバ先端チューブ内に入力/出力光ファイバを挿入することと、2×1溶融カプラを金属ベースに取り付けることと、レーザ光学サブアセンブリ及び検出器光学サブアセンブリを、それぞれのフレックス回路を用いてトランシーバ電子回路プリント配線板に接続することと、検出器光学サブアセンブリファイバの一端を検出器光学サブアセンブリの内側に挿入することと、レーザ光学サブアセンブリファイバの一端をレーザ光学サブアセンブリの内側に挿入することと、レーザ光学サブアセンブリ及び検出器光学サブアセンブリを金属ベースに取り付けることと、2×1溶融カプラがトランシーバ電子回路プリント配線板と金属ベースとの間に位置するように、トランシーバ電子回路プリント配線板を金属ベースの上に位置付けることと、トランシーバ電子回路プリント配線板を、金属ベース上の保持窪み部を有する複数のプリント配線板支柱に取り付けることとを含む方法である。
【0013】
溶融カプラが組み込まれたプラグ装着可能な単一波長双方向トランシーバの他の態様を以下に開示する。
【0014】
上記の特徴、機能、及び利点は、様々な実施形態において個別に実現することが可能であるか、又は更に別の実施形態において組み合わせることが可能である。上記の態様及び他の態様を例示するため、図面を参照して様々な実施形態について以下に記載する。本節で簡潔に記載されている図面はいずれも、原寸に比例しない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】同一波長の光を送受信する二芯ファイバ双方向SFPトランシーバ設計のいくつかの特徴を特定するブロック図である。
図2】LRUのそれぞれのセットが接続される光ネットワークスイッチ間の双方向データ通信を可能にするためのGbPOFリンクを用いた単一波長二芯ファイバSFPトランシーバを有する双方向データ送信システムを表す図である。
図3】GbPOF及びSFPトランシーバを用いた大規模光ネットワークの一実施例を示すブロック図である。
図4】単一波長単芯ファイバSFPトランシーバを形成するために、2×1溶融カプラを単一波長二芯ファイバSFPトランシーバに接続した状態を表すブロック図である。
図5図4に示すトランシーバの単一波長作動の提案された設計を検証するために使用される、実験的構成を示すブロック図である。
図6】一実施形態に係る、プラグ装着可能な単一波長双方向トランシーバの組み立てにおける様々な段階を示す図である。
図7】一実施形態に係る、プラグ装着可能な単一波長双方向トランシーバの組み立てにおける様々な段階を示す図である。
図8】一実施形態に係る、プラグ装着可能な単一波長双方向トランシーバの組み立てにおける様々な段階を示す図である。
図9】一実施形態に係る、プラグ装着可能な単一波長双方向トランシーバの組み立てにおける様々な段階を示す図である。
図10】一実施形態に係る、プラグ装着可能な単一波長双方向トランシーバの組み立てにおける様々な段階を示す図である。
図11】一実施形態に係る、プラグ装着可能な単一波長双方向トランシーバの組み立てにおける様々な段階を示す図である。
図12】一実施形態に係る、プラグ装着可能な単一波長双方向トランシーバの組み立てにおける様々な段階を示す図である。
図13】一実施形態に係る、プラグ装着可能な単一波長双方向トランシーバの組み立てにおける様々な段階を示す図である。
図14】一実施形態に係る、プラグ装着可能な単一波長双方向トランシーバの組み立てにおける様々な段階を示す図である。
図15】一実施形態に係る、プラグ装着可能な単一波長双方向トランシーバの組み立てにおける様々な段階を示す図である。
【0016】
以下では図面を参照するが、異なる図面中の類似の要素には同一の参照番号が付されている。
【発明を実施するための形態】
【0017】
光ファイバは、その軸に沿って光を送信する円筒状の誘電体導波管である。ファイバは、透明なクラッド層(以下、「クラッド」と呼ぶ)によって取り囲まれる透明なコアから構成され、これらは両方とも誘電材料で作られる。光は、内部全反射現象によってコアの中に保たれる。光信号をコア内に封じ込めるため、当該コアの屈折率はクラッドの屈折率よりも大きい。コアとクラッドとの境界面は、ステップインデックスファイバに見られるように急峻であるか、又はグレーデッドファイバに見られるように斬進的でありうる。光ファイバは、ガラスまたはプラスチック製であり得る。
【0018】
プラスチック製光ファイバ(POF)を用いた光ネットワーキングは、重量、サイズ、帯域幅、電力、及び電磁イミュニティの点で銅線よりも有利である。POFは、取り扱い、設置、及びメンテナンスの容易性の点でガラス製光ファイバ(GOF)よりも有利である。POFコアの材料は、アクリレートからパーフルオロポリマーまで多岐にわたりうる。POFインデックスプロファイルは、ステップインデックスからグレーデッドインデックスまで多岐にわたりうる。POFの幾何学形状は、単芯から多芯まで多岐にわたりうる。POFを使用することで、相当な軽量化につながりうる。軽量化は、重量が軽くなることで燃料消費の低減及び排気の抑制につながりうる飛行機などのビークル搭載型ネットワークにとって重要でありうる。
【0019】
光ファイバシステムにおいては、2つの光ファイバを溶融して縦並び構成とし、つながった長さの光ファイバを提供するのが典型的である。また、1つの光ファイバの伸長部分を別の光ファイバの伸長部分に溶融し、溶融したファイバ間に光信号が伝送されるよう、光ファイバ同士を横並び構成となるように溶融するのも一般的である。本明細書で「2×1溶融カプラ」と称する、このような横並び構成の溶融光インターフェースにより、溶融光ファイバ間での光信号の低挿入損失、低反射、及び均等分割が可能となる。
【0020】
任意の数の列線交換ユニット(LRUs)を互いに接続して、アビオニクスシステム内の通信を実現することが一般的に行われている。例えば、飛行機などのビークルの前方部分にある任意の数のLRUは、ビークルの後方部分にある任意の数のLRUに接続されている。各LRUを他のあらゆるLRUに接続することで、極端に多くの接続が生じうる。更に、LRU間の接続の多くが長いことで、光の損失につながる場合がある。
【0021】
光ファイバネットワークは、高速、低重量、及び電磁干渉イミュニティといった、銅線ネットワークに優る利点を有している。民間飛行機の多くの型は、サイズ、重量、及び電力の低減のために光ファイバネットワークを有する。いくつかの場合において、飛行機のGOFケーブルが多数であることは、製造コストの高さに影響を与える重要なファクターである。飛行機に光ファイバネットワークを設置するコストを低減するためには、飛行機で使用する光ファイバケーブルの数を減らす必要がある。
【0022】
光ファイバ双方向トランシーバは、アビオニクスネットワークにおいて展開され、サイズ、重量、及び電力を低減するために銅線ケーブルに取って代わることに成功してきた。本明細書では、変更したスモールフォームファクタープラグ装着可能(SFP)単一波長双方向トランシーバに低損失低反射戻り光ファイバカプラを組み込む設計及び作製プロセスが開示される。本明細書で開示される単一波長双方向トランシーバは、1ギガビット/秒よりも速い速度でデータを送信することができる光ファイバ(プラスチック又はガラス製)を採用するアビオニクスシステムの大規模スイッチネットワークに組み込まれうる。本明細書では、このようなプラスチック製光ファイバを「ギガビットプラスチック製光ファイバ」(GbPOF)と呼ぶ。ギガビットプラスチック製光ファイバは、延性のパーフルオロポリマーで作られ、ケーブルがきつく曲げられている間も破損しない。GbPOFの一実施例は、55ミクロンのコア径と500ミクロンのクラッド径とを有する。本明細書では、上述のガラス製光ファイバのことを「ギガビットガラス製光ファイバ」(GbGOF)と呼ぶ。GbGOFの一実施例は、50ミクロンのコア径と125ミクロンのクラッド径を有するOM4マルチモードガラス製光ファイバである。このGbGOFは、最大400メートルまでの距離にわたり、10ギガビット/秒の帯域幅を有する。本明細書で提案するトランシーバの設計は、少なくとも100メートルの光リンクの距離を有するGbPOFネットワークをサポートできることが実験により実証されている。
【0023】
溶融カプラが組み込まれたプラグ装着可能な単一波長双方向トランシーバの例示的な実施形態を、以下でやや詳細に説明する。しかしながら、本明細書中には、実際の実装形態の特徴が全て記載されているわけではない。こうした実際の実施形態の開発においては、実装形態によって異なるシステム関連及び事業関連の制約の順守といった、開発者の特定の目的を達成するために、複数の実装形態ごとに固有の判断を行う必要があることは、当業者に理解されるであろう。さらに、こうした開発に伴う努力は、複雑で時間のかかる可能性もあるが、本開示から恩恵を受ける当業者にとって、所定の日常業務であることは、理解されるであろう。
【0024】
飛行機の列線交換ユニット間における高速データ送信(例えば、1ギガビット/秒を上回る)での光通信を可能にするための光ファイバネットワークの様々な実施形態を、説明のため以下に詳細に記載する。しかしながら、本明細書で開示する光ファイバネットワークの実装は、飛行機の環境のみに限定されず、他の種類のビークルに搭載される光ファイバネットワーク、又は他の種類の光ファイバネットワーク(例えば、地上における長距離のデータセンターとファイバー・トゥ・ザ・ホーム/オフィス(fiber-to-the-home/office)との間の用途)で利用することができる。更に、以下でやや詳細に開示する特定の例示的な実施形態はGbPOFを採用するが、代替的な実施形態ではGbGOFを採用してもよい。
【0025】
1ギガビット/秒超の高速単一波長トランシーバの一種は、送信(Tx)出力光信号用の1つのファイバと、受信(Rx)入力光信号用の別のファイバとを有する。送信機は、レーザドライバ及び送信機(Tx)集積回路に接続された高速レーザダイオードを有する。受信機は、増幅器及び受信機(Rx)集積回路に接続された高帯域幅検出器を有する。
【0026】
図1は、同一波長λの光を送受信する単一波長二芯ファイバトランシーバ2のいくつかの特徴を特定する図である。[本明細書で使用する場合、コヒーレントレーザ光の文脈における「波長」という用語は、分光幅の狭いレーザ光の中心波長を意味する。]この単一波長二芯ファイバトランシーバ2は、SFP仕様に準拠するように構成されうる。
【0027】
図1に示す実施例では、単一波長二芯ファイバトランシーバ2は、レーザ4と光検出器8とを含む。レーザ4には、高光出力及び低モーダルノイズのための、シングルモード分布帰還型(DFB)レーザ、マルチモードファブリペロー(FP)レーザ、又は垂直共振器面発光レーザ(VCSEL)を実装することができる。光検出器8には、受信機の感度を高くするため、高応答性p型真性n型(PIN)フォトダイオード又はアバランシェフォトダイオードを実装することができる。
【0028】
レーザ4は、対応付けられた列線交換ユニット(図示しない)からそれぞれ送信電気信号線12a及び12bを介して差動送信信号Tx及びTxを受信したことに応じて、波長λの光を放射するようにレーザドライバ及び送信回路6によって駆動される。レーザドライバ及び送信回路6は、それら差動信号を、レーザ4により送信されることとなるデータを表すデジタル信号に変換する電気回路を含む。
【0029】
反対に、光検出器8は、波長λの光を受け取り、検出した当該光を、検出増幅器及び受信回路10に供給される電気デジタル信号に変換する。検出増幅器及び受信回路10は、それら電気デジタル信号を、受信したデータを表す電気差動受信信号Rx及びRxに変換する電気回路を含む。電気差動受信信号Rx及びRxは、それぞれ受信電気信号線14a及び14bを介して、列線交換ユニットの他の回路に送信される。
【0030】
レーザ4は、ガラス製光ファイバ18aに光結合され、光検出器8は、ガラス製光ファイバ18bに光結合される。両方のガラス製光ファイバ18a及び18bは、典型的には、ファイバの長さに沿って送信される波長λを有するいかなる光についても光損失が最小となるように選択された屈折率を有する同一の材料で作られるコアを有する。図1に示す単一波長二芯ファイバトランシーバ2は、トランシーバ電力供給線16を介して、電圧Vccを有する電力を受信する。
【0031】
図1に示す単一波長二芯ファイバトランシーバ2は、約5.8cm×1cm×1cmの寸法を用いる工業用マルチソースアグリーメント(MSA)規格に準拠してパッケージングされうる。レーザドライバ及び送信回路6、並びに検出増幅器及び受信回路10は、LRUに接続されるスイッチングネットワークのギガビット・イーサネット(GBE)スイッチなどのアプリケーションハードウェア内に単一波長二芯ファイバトランシーバ2をプラグ装着可能にする両面プリント配線板(PWB)(図1には示していない)に表面装着される。
【0032】
次世代アビオニクスシステム設計の1つにおいては、サイズ、重量、及び電力低減のため、重くてかさばり、且つ高価な銅線ケーブルにとって代わるべく、ギガビットプラスチック製光ファイバ(GbPOF)接続を用いた大規模高速スイッチングネットワークが使用されるだろう。このシステムの要件をサポートする主要なコンポーネントは、多数のLRUの相互光接続を提供する大規模スイッチングネットワークのスイッチにプラグ装着可能な高速トランシーバである。
【0033】
図2は、LRUのそれぞれのセット22a及び22b(以下、「複数のLRU22a及び22b」と呼ぶ)が接続されるネットワークスイッチ20aと20bとの間で双方向データ通信を可能にするGbPOFリンク32と共に4つの単一波長二芯ファイバトランシーバ2a~2dを有する双方向データ送信システムのための設計概念を示す。本実施例では、各GbPOFリンク32の一端は、それぞれのコネクタ24及びそれぞれのガラス製光ファイバ18aを介してそれぞれのレーザ4に光結合され、各GbPOFリンク32の他の一端は、それぞれのコネクタ26及びそれぞれのガラス製光ファイバ18bを介してそれぞれの光検出器8に光結合される。
【0034】
しかしながら、図2に示すタイプの大規模スイッチングネットワークでは、LRU接続のための非常に多くのスイッチが存在しうる。GbPOFリンク及びSFPトランシーバを用いた大規模スイッチングネットワーク34の一実施例を、図3に示す。この大規模スイッチングネットワーク34は、第1の複数のLRU22aに電気結合された、プラグ装着されたSFPトランシーバを有する第1の複数のスイッチ36a~36cと、第2の複数のLRU22bに電気結合された、プラグ装着されたSFPトランシーバを有する第2の複数のスイッチ38a~38cと、プラグ装着されたSFPトランシーバを有する第1の複数のスイッチ36a~36c及び第2の複数のスイッチ38a~38cに光結合され、プラグ装着されたSFPトランシーバを有する第3の複数のスイッチ40a~40dを含む。
【0035】
図3に示すタイプの大規模スイッチングネットワーク34では、二芯ファイバのシステムから単芯ファイバ双方向システムに変更することにより、ファイバの数が1つのトランシーバにつき2つから1つに減ることで、設置及び労働コストが半減するだろう。本明細書で開示する単一波長双方向型のプラグ装着可能トランシーバにより、このような単一波長双方向システムが実現可能となる。以下でやや詳細に開示する設計及び実装プロセスは、GbPOFの用途向けに最適化された単一波長・単芯ファイバ双方向プラグ装着可能トランシーバを提供する。GbPOFを使用することで、高価で脆弱なガラス製光ファイバの代替となり、これによって更に飛行機上の光ファイバスイッチネットワークの設置及び再作業のコストが低減される。
【0036】
図4は、単一波長双方向(すなわち単芯ファイバ)トランシーバ102を形成するために、低光損失低反射戻り光の2×1溶融カプラ64を単一波長二芯ファイバトランシーバ2に接続した状態を表すブロック図である。具体的には、2×1溶融カプラ64は、(1)GbPOFリンク(図4には示していない)に接続及び光結合された入力/出力光ファイバ66、(2)コネクタ44によってガラス製光ファイバ18b(当該ガラス製光ファイバ18bは、単一波長二芯ファイバトランシーバ2の光検出器8に光結合される)に接続及び光結合される検出器光学サブアセンブリ(OSA)ファイバ68、及び(3)コネクタ42によってガラス製光ファイバ18a(当該ガラス製光ファイバ18aは、単一波長二芯ファイバトランシーバ2のレーザ4に光結合される)に接続及び光結合されるレーザ光学サブアセンブリ(OSA)ファイバ70を含む。代替的に、レーザOSAファイバ70及び検出器OSAファイバ68は、ガラス製光ファイバ18a及び18bを使用することなくレーザ4及び検出器8に直接結合してもよく、この点はこれらファイバが同じタイプのマルチモードガラス製光ファイバであることに起因する。
【0037】
飛行機の前方部分のトランシーバを飛行機の後方部分のトランシーバに接続する光ファイバ経路の一部は長さが長いため、コネクタを用いて、長さの短い複数の光ファイバを直列に光結合するのが一般的である。多種多様なタイプの光ファイバコネクタが存在し、市販されている。したがって、図4は、光ファイバコネクタの特定の構成やタイプを示そうとするものではない。コネクタ42及び44の各々は、略円柱構造を有しうる。更に、一部のコネクタが、2つの光ファイバデバイスの端部を互いに接触させるように押しつけるためのばね及び関連する構造を含むことは周知の事項である。このようなばね及び関連する構造も、図4には示されていない。
【0038】
プラグ装着可能なパッケージ(図4には示していない、図14を参照)に組み込まれると、2×1溶融カプラ64と単一波長二芯ファイバトランシーバ2とが、ネットワークスイッチへとプラグ装着可能な単一波長双方向トランシーバ102を形成する。2つのこうした単一波長双方向トランシーバ102は、直列接続された一又は複数のGbPOFリンクからなるGbPOFケーブルを介して互いに接続及び光結合された、それぞれの入力/出力光ファイバ66を有することができる。このように接続された2つの単一波長双方向トランシーバ102により、アビオニクスシステム内のそれぞれのLRUが互いに通信することが可能となる。
【0039】
図4に示す設計は、少なくとも100メートルの光リンク距離を有するGbPOFネットワークをサポート可能であることが実験により実証された。この溶融カプラ手法の1つの利点は、いくつかの他の単一波長単芯ファイバトランシーバでビームスプリッタを使用する際に起こりうる、ローカルレーザからローカル検出器への光信号の拡散がなくなることである。2×1溶融カプラ64からの光信号の戻り反射光も、-40dB未満と非常に少ない。これら2つの要因により、単一波長単芯ファイバ構成が実現可能となる。
【0040】
図5は、単一波長二芯ファイバSFPトランシーバ(図5には示していない)がそれぞれのメディアコンバータ46a及び46bにプラグ装着された状態で、外部2×1溶融カプラ64a及び64bを用いて単一波長双方向トランシーバの作動の概念を試験するために使用される実験的構成を示すブロック図である。2×1溶融カプラ64a及び64bは、図4に示す方式で単一波長二芯ファイバSFPトランシーバに光結合された。具体的には、2×1溶融カプラ64aの検出器光学サブアセンブリファイバ68は、メディアコンバータ46aにプラグ装着された単一波長二芯ファイバSFPトランシーバの光検出器8に光結合され、一方、2×1溶融カプラ64aのレーザ光学サブアセンブリファイバ70は、同じ単一波長二芯ファイバSFPトランシーバのレーザ4に光結合された。同様に、2×1溶融カプラ64bの検出器光学サブアセンブリファイバ68は、メディアコンバータ46bにプラグ装着された単一波長二芯ファイバSFPトランシーバの光検出器8に光結合され、一方、2×1溶融カプラ64bのレーザ光学サブアセンブリファイバ70は、同じ単一波長二芯ファイバSFPトランシーバのレーザ4に光結合される。更に、2×1溶融カプラ64aの入力/出力光ファイバ66は、コネクタ24によってGbPOFリンク32aに接続及び光結合され、2×1溶融カプラ64bの入力/出力光ファイバ66は、コネクタ26によってGbPOFリンク32bに接続及び光結合され、GbPOFリンク32a及び32bは、コネクタ25によって互いに接続及び光結合される。
【0041】
図5に示す構成を用いて実施された実験では、2つの二芯ファイバSFPトランシーバがそれぞれ2つの2×1溶融カプラ64a及び64bに接続され、100メートルのGbPOFループが2×1溶融カプラ64a及び64bの入力/出力ファイバ66a及び66bに接続された。二芯ファイバSFPトランシーバは、2つのCAT5ケーブル98a及び98bを介して、コンピュータにより制御されるGBEテスター48にインターフェース接続された2つのギガビット・イーサネット(GBE)メディアコンバータ46a及び46bにプラグ装着された。この光リンク作動の間、GBEテスター48は、双方向GBEパケットを送受信し、ビットエラー及びパケット損失についてチェックを行った。実験結果は、図4に示す単一波長設計によってエラーフリーGBE作動が達成されたことを示した。具体的には、試験結果は、10億を超えるGBEパケットが100メートルのGbPOFリンクを通じて、パケットを何ら損失することなく0ビットエラーで通信されたことを示した。
【0042】
図4は、外部2×1溶融カプラ64を単一波長二芯ファイバトランシーバ2と組み合わせて単一波長双方向トランシーバ102を形成する設計を示す。本設計は、例えばSFP型のプラグ装着可能パッケージにおいて具現化されうる。2×1溶融カプラ64をSFP型の単一波長二芯ファイバトランシーバに組み込むための1つの方法を、図6図15に示す。この組み込み型のプラグ装着可能な単一波長双方向トランシーバを組み立てるためのステップ及び原理を、図6図15を参照して以下で説明する。
【0043】
図6は、一実施形態に係るプラグ装着可能トランシーバのための金属ベース50の三次元可視化図である。この金属ベース50は、好ましくは低コストのダイキャスト鋳造プロセスにより形成される。金属ベース50は、次の特徴:4つのPWB支柱52a~52d;受信OSAホルダ54;送信OSAホルダ56;aPWBねじポスト58;ファイバ先端チューブ60;及びカプラホルダ62を含むように設計される。PWB支柱52a~52dは、PWB(図6には示していない、図10のトランシーバ電子回路PWB74を参照)の「プラグ装着及び取り外し」操作が可能となるようにPWBが据えられることとなる、特殊設計の窪んだ溝部を有する。PWBねじポスト58は、金属ベース50の上にPWBをしっかりと装着するために使用される。金属ベース50はまた、2×1溶融カプラ(図6には示していない,図7の2×1溶融カプラ64を参照)の入力/出力ファイバを挿入するためのファイバ先端チューブ60も有する。金属ベース50は中央部に、金属ベース50上の適切な位置に2×1溶融カプラを装着するためのカプラホルダ62を有する。
【0044】
図7は、金属ベース50上へと取り付ける準備段階の2×1溶融カプラ64の三次元可視化図である。提案される一実装形態によれば、図7に示すように、金属ベース50は、長さ55.5mm、幅12.8mmであり、2×1溶融カプラ64は長さ25mm、直径1.5mmである。このように2×1溶融カプラ64を小型化することにより、2×1溶融カプラ64はSFPトランシーバの内側に埋め込むことができる。
【0045】
図7から分かるように、2×1溶融カプラ64の一端は入力/出力光ファイバ66に接続及び光結合され、他端は分岐している。当該分岐端は、2×1溶融カプラ64の入力ファイバである検出器OSAファイバ68及びレーザOSAファイバ70に接続及び光結合される。レーザOSAファイバ70は、検出器OSAファイバ68よりも短い。入力/出力光ファイバ66は、単一波長双方向トランシーバの入出力光信号に光結合する。全てのファイバの端面は、欠陥のない仕上がりとなるようクリーブされる。
【0046】
図8は、金属ベース50上への2×1溶融カプラ64の取り付け、及びファイバ先端チューブ60上へとスライドされるファイバブート72の位置付けを示す三次元可視化図である。具体的には、2×1溶融カプラ64の入力/出力光ファイバ66が、金属ベース50のファイバ先端チューブ60内に挿入される。同時に、2×1溶融カプラ64は、金属ベース50の中央部のカプラホルダ62上に位置付けられる。2×1溶融カプラ64は、宇宙用途向けエポキシを用いてカプラホルダ62に取り付けられる。この位置において、検出器OSAファイバ68の遠位端部は、受信OSAホルダ54の上方に配置され、レーザOSAファイバ70の遠位端部は、送信OSAホルダ56の上方に配置される。その後、金属ベース50の先端チューブ60の直径に適合するファイバブート72が、ファイバ先端チューブ60上へとスライドされるように準備される。ファイバブート72がファイバ先端チューブ60上にスライドされると、図9に示すように入力/出力光ファイバ66の遠位端はファイバブート72を超えて突出する。
【0047】
図9は、金属ベース50、2×1溶融カプラ64、及びファイバブート72を含む光学アセンブリ100の三次元可視化図である。本図は、ファイバブート72がファイバ先端チューブ60上にスライドされた後、入力/出力光ファイバ66がファイバブート72を貫通し、入力/出力光ファイバ66の遠位端がファイバブート72の端部を超えて突出した、光学アセンブリ100の状態を示している。ファイバブート72は、宇宙用途向けエポキシを用いて金属ベース50に取り付けられる。ファイバブート72は、入力/出力光ファイバ66のためのストレインリリーフ、そして入力/出力光ファイバ66のための曲げ半径リミッタをもたらし、過度な曲げに起因する破損を防止する。
【0048】
図10は、図9に示す光学アセンブリ100に装着されるように設計された、PBWアセンブリ(図10には示していない、図11のPBWアセンブリ92を参照)のコンポーネント(組み立て前)の三次元拡大可視化図である。図10に示すコンポーネントは、以下:(a)プリント送受信回路及び取り付けられた関連電子チップを有するトランシーバ電子回路PWB74;(b)トランシーバ電子回路PWB74に接続された一端と、複数の検出器用はんだ孔77aを有する他端とを有するフレックス回路76;(c)トランシーバ電子回路PWB74に接続された一端と、複数のレーザ用はんだ孔77bを有する他端とを有するフレックス回路78;(d)プラグ装着後にアプリケーションハードウェアとの電気的接続を行うため、トランシーバ電子回路PWB74のプラグ装着可能な端部に配置された複数(例えば、20個)のトランシーバ入力/出力金属接点80;(e)トランシーバ電子回路PWB74に形成されたねじ貫通孔82;(f)トランジスタアウトライン(TO)カン84内の検出器;(g)TOカン84内の検出器が収容される検出器ハウジング86;(h)TOカン84内の検出器のベースに接続された複数の検出器用はんだピン87a;(i)TOカン88内のレーザ;(j)TOカン88内のレーザが収容されるレーザハウジング90;及び(k)TOカン88内のレーザのベースに接続された複数のレーザ用はんだピン87bを含む。2つのフレックス回路76及び78は、検出器用はんだピン87a及びレーザ用はんだピン87bとの高帯域幅接続向けに作製される。フレックス回路76及び78は、レーザ及び検出器をトランシーバ電子回路PWB74の送信及び受信電子機器に電気的に接続するためのはんだ孔を有する円形パッドを有するように準備される。好ましいレーザの波長は1270から1310nmの範囲であり、この範囲においてGbPOFの光の損失は最小となる。
【0049】
図11は、PBWアセンブリ92の三次元拡大可視化図である。組み立て方法(図11には示していない)は、以下のステップを含む:(a)TOカン84内の検出器が検出器ハウジング86の内側に設置され、検出器OSA101が形成される;(b)検出器OSA101の複数の検出器用はんだピン87aがそれぞれ、フレックス回路76に形成された複数の検出器用はんだ孔77aに挿入されるように、検出器OSA101が位置付けられる;(c)次いで、検出器OSA101の複数の検出器用はんだピン87aが、フレックス回路76の複数の検出器用はんだ孔77aにはんだ付けされる;(d)TOカン88内のレーザがレーザハウジング90の内側に設置され、レーザOSA103が形成される;(e)レーザOSA103の複数のレーザ用はんだピン87bがそれぞれ、フレックス回路78に形成された複数のレーザ用はんだ孔77bに挿入されるように、レーザOSA103が位置付けられる;且つ(f)次いで、レーザOSA103の複数のレーザ用はんだピン87bがフレックス回路78の複数のレーザ用はんだ孔77bにはんだ付けされる。
【0050】
図12に示すように、完成したPWBアセンブリ92は、2×1溶融カプラ64が装備された金属ベース50に取り付けられるように準備される。金属PWBねじ94は、PWBアセンブリ92を光学アセンブリ100に固定するために金属ベース50上のPWBねじポスト58にねじ込まれるよう準備が整った状態で示されている。具体的には、組み立て方法(図12には示していない)は、以下のステップを伴う。(a)まず、金属ベース50の4つのPWB支柱52a~52dの窪み部、並びに受信OSAホルダ54及び送信OSAホルダ56に少量の宇宙用途向けエポキシが塗布される。(b)次いで、レーザOSAファイバ70及び検出器OSAファイバ68が、それぞれレーザOSA103及び検出器OSA101内に挿入される。(c)次に、2×1溶融カプラ64がトランシーバ電子回路PWB74の下方に位置するように、PWBアセンブリ92が金属ベース50に装着される。レーザOSA103及び検出器OSA101は、それぞれ受信OSAホルダ54及び送信OSAホルダ56のエポキシ被覆された窪み部に据えられる。加えて、トランシーバ電子回路PWB74が、4つのPWB支柱52a~52dのエポキシ被覆された窪み部に据えられる。4つのPWB支柱52a~52dの窪み部の宇宙用途向けエポキシは、トランシーバ電子回路PWB74を金属ベース50に取り付けるために使用され、受信OSAホルダ54及び送信OSAホルダ56の窪み部の宇宙用途向けエポキシは、それぞれレーザOSA103及び検出器OSA101を金属ベース50に取り付けるために使用される。(d)次いで、PWBねじ94がPWBねじ貫通孔82に挿入され、金属ベース50のPWBねじポスト58内にしっかりとねじ込まれる。こうしてPWBアセンブリ92は、図13に示す単一波長双方向トランシーバ102の「プラグ装着及び取り外し」機能を果たすために金属ベース50にしっかりと取り付けられる。
【0051】
図13は、前述の段落で記載した組み立て方法が完了した際、2×1溶融カプラ64がトランシーバ電子回路PWB74の下方に配置されるように金属ベース50に取り付けられたPBWアセンブリ92の三次元可視化図である。この組み立て方法から得られる製品が、単一波長双方向トランシーバ102である。
【0052】
トランシーバ組み立てプロセスの完了後、単一波長双方向トランシーバ102は、図14に示す金属カバー96により部分的に覆われうる。金属カバー96は、単一波長双方向トランシーバ102の形状及び寸法に適合するが、トランシーバ入力/出力金属接点80を露出させるように一端において開いている。これにより、単一波長双方向トランシーバ102がアプリケーションハードウェア内にプラグ装着されたときに、アプリケーションハードウェアの対応する金属接点がトランシーバ入力/出力金属接点80に接触することが可能となる。
【0053】
図15は、宇宙用途向けエポキシを用いて金属ベース50の側面に取り付けられた金属カバー96の三次元可視化を表す図である。金属カバー96は、環境面及び電磁面で単一波長双方向トランシーバ102を保護する。トランシーバ組み立てプロセスは、本ステップの後に完了する。単一波長双方向トランシーバ102はこの時点で、アプリケーションハードウェア(例えば、スイッチングネットワークのスイッチ)にプラグ装着可能及び取り外し可能である。単一波長双方向トランシーバ102の寸法は、SFP仕様に適合しうる。
【0054】
総括すると、本開示は、低反射戻り光及び低クロストークのマルチモード2×1ガラス製光ファイバ溶融カプラを、既存の二芯ファイバSFPトランシーバにハイブリッド組み込みすることを用いて提案されてきた。この手法により、結果として得られる単一波長双方向トランシーバ設計において、十分に確立された二芯ファイバSFPトランシーバの有益な特徴を全て維持しつつ、ローカル送信機とローカル受信機との間でのクロストークの問題をなくすことが可能となる。提案された作製プロセスは、低コストであり、且つ次世代の燃料効率のよい飛行機の大規模スイッチングネットワーク要件をサポートするように製造可能である。加えて、本明細書で開示される技術的特徴は、飛行機の光ファイバケーブルの総数の低減により大幅なコスト節約につながるため、価値の高いものである。
【0055】
上記のシステムは、代替的には全ガラス製光ファイバを用いて実装してもよい。GbPOFの使用は、ガラス製ファイバが飛行機における設置にとっての問題となる場合の特殊用途(又は解決策)である。しかしながら、ガラス製光ファイバの設置は、地上における長距離のデータセンターとファイバー・トゥ・ザ・ホーム/オフィスとの間の用途(非宇宙航空)の多くにとっては大きな問題となるものではない。
【0056】
様々な実施形態を参照して光ネットワークシステムについて説明してきたが、当業者であれば、本明細書の教示から逸脱することなく、様々な変更を行うことができ、その要素を均等物に置き換えることが可能であると理解できるであろう。加えて、本明細書に開示された着想及び着想の実施化を特定の状況に適応させるために、多くの修正を行うことが可能である。したがって、特許請求の範囲の対象である主題は、開示した実施形態に限定されないことが意図されている。
【0057】
以下に記載される方法の請求項は、請求項の文言により請求項に列挙されているステップのうちの幾つかあるいは全てが実施される特定の順序を示す条件が明確に指定されている又は宣言されていない限り、これらのステップがアルファベット順(本明細書中の任意のアルファベット順はあらかじめ列挙されているステップを参照する目的でのみ使用されている)又はこれらのステップが列挙されている順に実施されることが要求されると解釈すべきではない。また、方法の請求項は、請求項の文言によりそのような解釈を除外する条件が明確に宣言されていない限り、同時に又は交互に実施される2つ以上のステップのいかなる部分も除外するものと解釈すべきでない。
【0058】
以下の段落は、本発明の実施形態の更なる態様を説明する。
【0059】
A1.プラグ装着可能トランシーバパッケージを組み立てるための方法であって、
2×1溶融カプラを作製することと、
入力/出力光ファイバ、検出器光学サブアセンブリファイバ、及びレーザ光学サブアセンブリファイバを2×1溶融カプラに接続することと、
金属ベースの一端から突出するファイバ先端チューブ内に入力/出力光ファイバを挿入することと、
2×1溶融カプラを金属ベースに取り付けることと、
レーザ光学サブアセンブリ及び検出器光学サブアセンブリを、それぞれのフレックス回路を用いてトランシーバ電子回路プリント配線板に接続することと、
検出器光学サブアセンブリファイバの一端を検出器光学サブアセンブリの内側に挿入することと、
レーザ光学サブアセンブリファイバの一端をレーザ光学サブアセンブリの内側に挿入することと、
レーザ光学サブアセンブリ及び検出器光学サブアセンブリを金属ベースに取り付けることと、
2×1溶融カプラがトランシーバ電子回路プリント配線板と金属ベースとの間に位置するように、トランシーバ電子回路プリント配線板を金属ベースの上に位置付けることと、
トランシーバ電子回路プリント配線板を、金属ベース上の保持窪み部を有する複数のプリント配線板支柱に取り付けることと
を含む方法。
【0060】
A2.ファイバ先端チューブ上にファイバブートをスライドさせることと、
金属ベース上でファイバブートをファイバ先端チューブに取り付けることと
を更に含む、段落A1に記載の方法。
【0061】
A3.レーザ光学サブアセンブリ及び検出器光学サブアセンブリ、並びにトランシーバ電子回路プリント配線板を覆うように金属カバーを置くことと、金属カバーを金属ベースに取り付けることとを更に含み、金属カバーは、トランシーバ電子回路プリント配線板上の複数のトランシーバ入力/出力金属接点を露出させるように一端において開いていることにより、トランシーバ電子回路プリント配線板の開口端がアプリケーションハードウェアにプラグ装着されたときに、当該アプリケーションハードウェアの対応する金属接点がトランシーバ入力/出力金属接点に接触することが可能となる、段落A1に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15