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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-02
(45)【発行日】2023-08-10
(54)【発明の名称】フラッシュ構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B27M 3/00 20060101AFI20230803BHJP
   B32B 3/04 20060101ALI20230803BHJP
   E06B 3/82 20060101ALN20230803BHJP
【FI】
B27M3/00 B
B32B3/04
E06B3/82
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019117699
(22)【出願日】2019-06-25
(65)【公開番号】P2021003818
(43)【公開日】2021-01-14
【審査請求日】2022-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000145437
【氏名又は名称】株式会社ウッドワン
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】増田 望
【審査官】中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-155876(JP,A)
【文献】特開昭64-040303(JP,A)
【文献】特開平11-229514(JP,A)
【文献】特開平10-046929(JP,A)
【文献】特開2017-100326(JP,A)
【文献】実開昭50-100344(JP,U)
【文献】特開2001-018203(JP,A)
【文献】特開平05-214878(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2006-0064042(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B27M 1/00 - 3/38
B32B 1/00 - 3/08
E06B 3/72 - 3/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯材と、前記芯材に固定された面材と、を備えたフラッシュ構造体の製造方法であって、
前記フラッシュ構造体の端部に第1溝を形成する溝形成工程と、
前記第1溝に枠体を挿入する挿入工程と、を含み、
前記溝形成工程では、少なくとも前記芯材の端部を加工し、前記第1溝の底面に前記芯材の外側面が含まれ、かつ、前記第1溝の側壁が前記面材により形成されるように、前記第1溝を形成することを特徴とする、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラッシュ構造体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、建物の開き戸および引き戸、家具の扉、テーブル天板または棚板等には、フラッシュ構造を採用したものが多く使用されている(以下、「フラッシュ構造体」)。フラッシュ構造体の製造方法としては、例えば、芯材の両側縁に枠材を配置して成る芯板の表面に、面材を貼り合わせる方法がある(例えば、特許文献1参照)。また、芯材の替わりに四角形状の枠体として構成された枠材を用い、当該枠体に面材を固着してフラッシュ構造体を製造する方法も開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
また、フラッシュ構造体に芯材を用いる場合、当該芯材としては、蜂の巣状形状の空洞を有する紙製のハニカム材を用いる場合がある(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平01-40303号公報
【文献】特開2011-121191号公報
【文献】特開2000-145311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えばリフォーム等の、既存の建物の形状に合わせてフラッシュ構造体が発注される場合、フラッシュ構造体の寸法は発注ごとに異なることが多い。特に、古い石造りの建物では、フラッシュ構造体が組み付けられる開口部等の寸法がまちまちである。この場合、発注された寸法に合わせたフラッシュ構造体を製造する必要がある。特許文献1および2の製造方法では、縦横の幅が規格外となるような大きさのフラッシュ構造体については、在庫として予め製造しておくことができないため、受注のたびに一からフラッシュ構造体を製造しなければならない。したがって、フラッシュ構造体の製造効率を上げることが困難であるという問題点があった。
【0006】
本発明の一態様は前記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、縦横の幅がどのような大きさであっても効率よく製造でき、またこれによって強度が低い芯材を使用してもフラッシュ構造体の四辺および角を保護することができるフラッシュ構造体を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るフラッシュ構造体は、芯材と、前記芯材に固定された面材と、を備えたフラッシュ構造体であって、前記フラッシュ構造体の端部に形成された第1溝には、枠体が挿入されており、前記第1溝は、少なくとも前記芯材の端部を加工して形成されるとともに、当該加工後において、前記第1溝の底面に前記芯材の外側面が含まれ、かつ、前記第1溝の側壁は前記面材により形成されている。
【0008】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る製造方法は、芯材と、前記芯材に固定された面材と、を備えたフラッシュ構造体の製造方法であって、前記フラッシュ構造体の端部に第1溝を形成する溝形成工程と、前記第1溝に前記枠体を挿入する挿入工程と、を含み、前記溝形成工程では、少なくとも前記芯材の端部を加工し、前記第1溝の底面に前記芯材の外側面が含まれ、かつ、前記第1溝の側壁が前記面材により形成されるように、前記第1溝を形成する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、縦横の幅がどのような大きさであっても効率よく製造できるフラッシュ構造体を実現することができ、またこれによって強度が低い芯材を使用してもフラッシュ構造体の四辺および角を保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施例に係るドアの外観および当該ドアの芯材および枠材の外観を示す斜視図である。
図2】第1の実施例に係るドアの側端部周辺の構造を示す上面図である。
図3】第1の実施例に係るドアの製造方法を示す概略図である。
図4】第1の実施例の変形例に係るドアの製造方法を示す概略図である。
図5】第2の実施例に係るドアの側端部周辺の構造を示す上面図である。
図6】第2の実施例に係るドアの製造方法を示す概略図である。
図7】第2の実施例の変形例に係るドアの製造方法を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔実施例〕
<第1の実施例>
〔ドアの概要〕
図1を用いたドア10の概要の説明では、便宜上、紙面向かって上側を上方、紙面向かって下側を下方、紙面向かって上下方向を縦方向、紙面向かって左右方向を横方向とする。また、紙面向かって手前から奥行きに向かう方向を正面方向とする。なお、図1では、ドア等に設けられているドアハンドル、引き手、蝶番、戸車、およびドアの表面に施される装飾などは省略している。
【0012】
さらに、本発明の一態様に係るフラッシュ構造体は、下記のドア10に限定されない。本発明の一態様に係るフラッシュ構造体としては、例えば、家具の扉、テーブル天板、収納箱部材および棚板なども含まれる。
【0013】
ドア(フラッシュ構造体)10は、フラッシュ構造のドアであり、開き戸、引き戸およびパネル(間仕切り)等を含む。ドア10は、2枚の面材1が芯材3に、表裏両面に固定された構造となっている。なお、本実施形態において、面材1は枠体2の表裏両面にも固定されているが、これは必須ではない。図1には、枠体2および芯材3の表裏両面に面材1が固定された状態101、および、状態101から面材1を省いた、ドア10の内部構造を表す状態102を示している。
【0014】
2枚の面材1と、枠体2および芯材3とは、接着剤によって固定されている。本実施例では、接着剤として酢酸ビニル系の糊(一部、ホットメルト)を使用している。ただし、これらは他の接着剤で固定されていてもよいし、金具によって固定されていてもよい。例えば、枠体2の縦枠2aと、上枠2bおよび下枠2cとが、タッカー等により固定されていてもよい。縦枠2a、上枠2bおよび下枠2cについては後述する。また、2枚の面材1および枠体2は、木質材料で形成されている。ただし、これらは木質材料以外の材料で形成されていてもよい。
【0015】
芯材3は、木質ボードであり、例えばパーティクルボードまたはストランドボード等が挙げられる。また芯材3は、六角形の蜂の巣状形状の空洞を有するハニカム構造の木質材料で形成されていてもよい。この場合、芯材3は、ハニカム構造以外の立体構造を有していてもよく、また、木質材料以外の例えばダンボール等の紙質材料または石膏ボード等により形成されていてもよい。
【0016】
2枚の面材1は、それぞれ、木質の板を加工して得られる部材であり、ドア10の外観を形成する。図2に示すように、面材1は、繊維板1aの表面に突き板1bが貼り付けられて形成されている。繊維板1aは、木質の中密度繊維板(MDF:Medium density fiberboard)等、木質材料の枠体2および紙質材料の芯材3に対する接着性が良好なものが好ましい。また、繊維板1aの材質としては、面材1が枠体2および芯材3に貼り付けられた状態101において、外力によってドア10が撓みにくくなるような硬質のものが好ましい。
【0017】
突き板1bは、ドア10の外観を向上させるための部材であり、材料としては天然木材をスライサーやロータリーレースで薄くスライス加工して得ることができる。この面材1は、表面への型押し等により意匠を施すなどの加工が適宜行われていてもよい。なお、2枚の面材1は、繊維板1aに突き板1bが貼り付けられたものに限定されない。
【0018】
枠体2は、ドア10の大きさと略同一の大きさ、かつ正面から見て外形が長方形状の部材である。状態102に示すように、枠体2は、2本の縦枠2a、上枠2bおよび下枠2cで形成されている。
【0019】
縦枠2a、上枠2bおよび下枠2cは、ともに木質の部材を加工して得られる角材である。本実施例では、上枠2bの縦方向の幅と下枠2cの縦方向の幅とが同一となっている。また、2本の縦枠2aについて、一方の横方向の幅と他方の横方向の幅とが同一となっている。ただし、上枠2bの縦方向の幅と下枠2cの縦方向の幅とが必ずしも同一である必要はない。同様に、2本の縦枠2aについても、一方の横方向の幅と他方の横方向の幅とが必ずしも同一である必要はない。
【0020】
上枠2bの横方向の両端は、縦枠2aにおける上側の端部と当接する位置まで延びており、下枠2cの横方向の両端は、縦枠2aにおける下側の端部と当接する位置まで延びている。具体的には、上枠2bにおける横方向の両端の側面が縦枠2aにおける上側の端部の側面と当接しており、上枠2bの上面と縦枠の上面とが略面一となっている(いわゆる、「縦勝ち」の状態)。同様に、下枠2cにおける横方向の両端の側面が縦枠2aにおける下側の端部の側面と当接しており、下枠2cの下面と縦枠2aの下面とが略面一となっている(「縦勝ち」の状態)。
【0021】
縦枠2a、上枠2bおよび下枠2cが前記のような配置関係で、面材1が貼り付けられた芯材3にそれぞれ組み付けられることにより、縦枠2a、上枠2bおよび下枠2cが枠体2の形状を形成する。状態101に示すように、芯材3は枠体2に取り囲まれている。なお、ドア10はこれに限られず、芯材3の横方向の側面のみに縦枠2aが組み付けられていてもよい。
【0022】
縦枠2a、上枠2bおよび下枠2cについて、これらの各部材の組み付け後の配置関係は、本実施例の配置関係に限定されない。つまり、枠体2がドア10以外のフラッシュ構造体に用いられる場合、枠体2に含まれる前記3つの部材の配置関係が本実施例の配置関係と異なることがある。枠体2が用いられるフラッシュ構造体が、ドア10ではなく例えば棚板の場合、枠体2に含まれる縦枠2aは横方向に配置され、上枠2bおよび下枠2cは縦方向に配置される。言い換えれば、本発明の一態様に係る枠材における縦枠の配置は、「縦」との文言によっては拘束されない。
【0023】
〔ドアの側端部周辺の構造〕
本明細書中では、ドア10、面材1、縦枠2aおよび芯材3のそれぞれにおける、縦方向に伸びる側面の端部を「側端部」と称する。また、図2の説明では、便宜上、紙面向かって前側を上方、紙面向かって後側を下方、紙面向かって前後方向を縦方向、紙面向かって左右方向を横方向、紙面向かって上下方向を厚さ方向とする。このことは、図3図7についても同様である。
【0024】
なお、以降はドア10の左側の側端部周辺を例に挙げて構造について説明するが、ドア10の右側の側端部周辺の構造、および、上側または下側の端部周辺の構造についても同様であってよい。
【0025】
(面材1が固定された芯材3)
図2には、ドア10の側端部周辺において、芯材3に面材1が固定された状態を示す状態201と、面材1が固定された芯材3の側端部(端部)3aに、縦枠2aを挿入して固定するための挿入溝(第1溝)4が形成された状態202と、挿入溝4に縦枠2aが挿入され、ドア10の側端部の角が曲面加工された状態203とが示されている。
【0026】
図2の状態201に示すように、ドア10の製造途中においては、芯材3の表裏両面に面材1が固定されている。この状態の側端部に、以下に説明する挿入溝4が形成され、当該挿入溝4に縦枠2aが挿入される。
【0027】
(挿入溝)
図2の状態202に示すように、挿入溝4は、芯材3の側端部3aを切削加工して形成されている。挿入溝4は、縦枠2aを挿入するための溝であり、ドア10の側端部が開口しているとともに横方向に延伸するように形成されている。ドア10の側端部において、挿入溝4が形成されている領域には芯材3は残存していない。これにより、縦枠2aが挿入溝4に挿入された状態では、ドア10の側端部から芯材3を視認できないため、ドア10の外観を良好にできる。縦枠2aが挿入溝4に挿入された状態については、後述する。
【0028】
また本実施例において、挿入溝4は、芯材3の側端部3aに加えて面材1の一部を切削加工して形成されている。面材1の一部とは、繊維板1aの厚さの一部である。芯材3に加えて面材1の一部まで切削加工して挿入溝4を形成する構成によれば、挿入溝4の側壁4bを形成している部分の面材1の厚さを切削加工により調製することにより、挿入溝4の大きさを任意に調整できる。したがって、後述するように挿入溝4に挿入される縦枠2aの厚さが、芯材3の厚さよりも厚い場合であっても、縦枠2aを挿入可能な大きさの挿入溝4を形成できる。
【0029】
挿入溝4の底面4aは、一部に芯材3の外側面3bを含む。また、前記の切削加工後において、芯材3の外側面3bと略平行となる平面が面材1に形成され、底面4aには面材1の当該平面が含まれている。面材1の前記平面は、前記の切削加工によって、面材1における挿入溝4の側壁4bを形成する部分が面材1の他の部分よりも薄くなるため、これらの、厚さが異なる2つの部分の境界に形成される段差として形成される平面である。また、挿入溝4に形成されている側壁4bは、前記の切削加工後に、厚さ方向に一部残存した面材1によって形成されている。
【0030】
挿入溝4の深さは、本実施例においては、挿入される縦枠2aの横方向の幅と略同一となるように形成されている。ここで、挿入溝4の深さとは、挿入溝4が形成された直後の面材1の先端面(端面)1-1の配置位置から、挿入溝4の底面4aの配置位置までの、横方向の距離を示す。なお、挿入溝4の深さは、縦枠2aの横方向の幅と略同一またはそれ以上となることが好ましいが、これに限られない。
【0031】
図2の状態203に示すように、挿入溝4には縦枠2aが挿入されている。本実施例において、挿入溝4は、縦枠2aの厚さおよび横方向の幅と略同一の大きさとなるように形成されている。そのため、縦枠2aを挿入溝4の底面4aに当接する位置まで挿入した場合、縦枠2aは、略隙間なく挿入溝4に嵌合する。
【0032】
縦枠2aは、挿入溝4の底面4aおよび側壁4bの少なくとも一方と、接着剤によって固定されている。本実施例では、接着剤として酢酸ビニル系の糊(一部、ホットメルト)を使用している。ただし、これらは他の接着剤で固定されていてもよいし、金具によって固定されていてもよい。
【0033】
(角が曲面形状)
また、本実施例において、縦枠2aが挿入溝4に挿入された後に、面材1の先端面1-1と、縦枠2aの角部2a-2とに切削加工が施され、ドア10における側端部の角が曲面として形成されている。言い換えれば、面材1の先端面1-1と、縦枠2aにおける外側の角部2a-2の面とが一連となって、外側に凸となる曲面を形成するように加工されている。これによりドア10の側端部は、図1の状態101において点線で示す、面材1と縦枠2aとの境界部分が、前記の一連の曲面に含まれる形状となる。そのため、面材1と縦枠2aとの境界部分が、面材1および縦枠2aの備える木質材料様の模様に紛れやすくなり、視認困難となる。したがって、ドア10の側端部における外観が良好となる。なお、面材1および縦枠2aの備える模様は、木質材料様の模様に限定されない。
【0034】
また、縦枠2aと面材1の突き板1bとを、同じ樹種の木質材料により構成した場合は、ドア10の略全体が同一の樹種による質感を有するため、外観が特に良好となる。その際、面材1の先端面1-1において繊維板1aが現れる部分は、他の部分とは異なる質感を有することになるが、上記の切削加工によって、面材1における挿入溝4の側壁4bを形成する部分が面材1の他の部分よりも薄くなる。そのため、面材1の先端面1-1に現れる繊維板1aの先端部分が細くなり視認されづらくなる事で、ドア10の外観がより良好となる。
【0035】
〔ドアの製造方法〕
ドア10は、例えば、図3のS1~S4の各工程を踏むことによって製造することができる。なお、図3に示す製造方法は、ドア10における左側の側端部の加工を例に挙げて記載しているが、右側の側端部並びに上側および下側の端部についても同様に加工する。また、図3に示す製造方法は、ドア10以外のフラッシュ構造体にも適用することができる。
【0036】
(固定工程)
まず、芯材3の表裏両面に面材1を固定する(S1、固定工程)。本実施例において、面材1は繊維板1aおよび突き板1bにより形成されている。具体的には、予め2枚の面材1および芯材3を温めておき、ロールスプレッダ(不図示)を用いて芯材3に糊を塗布する。なお、ロールスプレッダ以外の塗布装置を用いて糊を塗布してもよい。また、面材1に糊を塗布してもよいし、面材1および芯材3の両方に糊を塗布してもよい。
【0037】
次に、一方の面材1に芯材3を載置した後、他方の面材1を芯材3に載置する。そして、プレス機(不図示)を用いて、2枚の面材1と芯材3とで構成される構造体を上下方向から加圧し、しばらく接着養生する。
【0038】
なお、面材1が固定された芯材3は、ドア10の材料として予め用意されたものを本製造方法において使用してもよい。面材1が固定された芯材3は、縦横の幅を任意の大きさにカットすることが容易であるため、異なる大きさのドア10を製造するための材料として好適である。面材1が固定された芯材3は、次の溝形成工程に進む前に、ドア10の製造者等が所望する大きさになるように、縦横の幅が調整される。
【0039】
したがって、面材1が固定された芯材3を保管しておくことで、ドア10の縦横の幅が確定してから面材1が固定された芯材3の大きさを調整できるため、ドア10の製造工程、構成部材の品種管理、在庫管理等を簡略化できる。
【0040】
(溝形成工程)
固定工程の後、ダブルテノーナ20を用いて芯材3の側端部3aおよび面材1における繊維板1aの厚さ方向の一部を切削加工し、挿入溝4を形成する(S2、溝形成工程)。本実施例では、1回の溝形成工程で芯材3の左右両側の側端部3aを同時に加工している。ただし、例えばテノーナ(不図示)を用いて、1回の溝形成工程で芯材3の片方の側端部3aを加工してもよい。
【0041】
挿入溝4は、後述する挿入工程にて挿入される縦枠2aの厚さおよび横方向の幅に合わせた大きさとなるように形成される。このとき、芯材3の側端部3aに加えて面材1の厚さ方向の一部も切削加工し、当該縦枠2aを挿入可能な挿入溝4を形成する。
【0042】
(挿入工程)
溝形成工程の後、溝形成工程により形成された挿入溝4に、圧入機(不図示)を用いて縦枠2aを挿入する(S3、挿入工程)。縦枠2aは、挿入溝4の底面4aに当接するまで挿入溝4の内側に押し込んで挿入される。このとき、挿入溝4の底面4aおよび側壁4bの内側面には糊を塗布している。なお、糊は底面4aと側壁4bの内側面との、いずれか一方のみに塗布していてもよい。そして、挿入溝4に縦枠2aが挿入された後、プレス機(不図示)および圧入機を用いて、縦枠2aを表裏面から厚さ方向に加圧し、また挿入溝4への挿入方向に加圧し、しばらく接着養生する。
【0043】
このように、面材1が固定された芯材3の縦横の幅を調整した後に、ドア10の側端部に挿入溝4を形成して縦枠2a等が挿入される。言い換えれば、面材1が固定された芯材3の大きさに合わせて、枠体2の大きさを任意に調整可能である。したがって、縦横の幅が様々な大きさのドア10を効率的に製造することができる。
【0044】
(曲面形成工程)
挿入工程の後、面材1の先端面1-1および縦枠2aの角部2a-2の面が連続した曲面を形成するように、先端面1-1および角部2a-2に対して加工を施す(S4、曲面形成工程)。当該加工は、ドア10の表裏両側の角に対して行う。
【0045】
具体的には、まず面材1の先端面1-1および縦枠2aの外側面2a-1の配置位置が厚さ方向で大まかに揃うように、面材1の先端面1-1を、サンダー30を用いて切削加工する。当該切削加工には、テノーナを用いてもよい。続けて、面材1の先端面1-1と、当該先端面1-1と隣り合う縦枠2aの角部2a-2とにより形成されるドア10の角について、角形状ではなく曲面形状となるように、まとめてサンダー30により切削加工する。当該切削加工には、面取り刃を用いてもよい。これにより、縦枠2aの外側面2a-1から2枚の面材1のそれぞれの表面まで、先端面1-1を介して一連の曲面として形成することができる。
【0046】
なお、本実施例ではドア10の角が曲面状となるように加工しているが、面材1と縦枠2aとの接合部によって生じる意匠の乱れを生じない範囲内で、ドア10の角が直線状となるように面取り加工を行ってもよい。
【0047】
以上の各工程を踏むことにより、ドア10における縦方向の片側部分の加工が終了する。前記の片側部分の加工が終了すると、ドア10における縦方向の中心軸を回転中心としてドア10を180°反転させて、前記の片側部分と同じようにドア10における縦方向の逆側部分の加工を行う。また、さらにドア10における厚さ方向の中心軸を回転中心としてドア10を90°反転させて、前記の片側部分と同じようにドア10における上側部分および下側部分の加工を行ってもよい。
【0048】
もちろん、前記の溝形成工程から曲面形成工程までの各工程において、それぞれの加工機にドア10を送る際に、例えばテノーナをダブルテノーナとするように、それぞれの加工機をドア10の両側に配置してもよい。このようにして加工することにより、一度にドア10の両方の側端部を加工することができ、生産性をより向上させることができる。
【0049】
〔変形例〕
本発明の一実施例に係るドア10には、複数のバリエーションが想定される。例えば、挿入溝4は、芯材3の側端部3aのみ切削加工され、面材1の厚さの一部は加工されずに形成されたドア10aが、ドア10のバリエーションとして想定される。
【0050】
具体的には、縦枠2aの厚さが芯材3の厚さと略同一とし、芯材3の側端部3aのみ切削加工することにより、縦枠2aが略隙間なく嵌合可能な大きさの挿入溝4を形成すればよい。これにより、挿入溝4を形成するために、芯材3と面材1との、異なる2つの部材を同時に切削加工する必要がない。そのため、挿入溝4の切削加工において、芯材3の材質に最適化した加工条件を容易に選択できる。また、面材1の厚さについて、その一部が切削加工されることを想定した厚さとする必要がない。したがって、面材1により薄い材料を使用することができる。
【0051】
面材1の一部を切削加工する場合には、面材1の種類によっては、切削中に面材が破損しないよう、面材1の振動を抑える必要がある。そのために、例えば面材1を外側から吸着するなどの保持が必要となる場合や、面材1が石膏ボード等の切削しにくい材質である場合は、切削速度を下げるなどの対応をする必要があるが、芯材3のみを切削加工する場合は、このような対応を省く事ができる。
【0052】
本変形例に係るドア10aは、例えば、図4のS11~S14の各工程を踏むことによって製造することができる。なお、図4に示す製造方法は、ドア10aにおける左側の側端部の加工を例に挙げて記載しているが、右側の側端部並びに上側および下側の端部についても同様に加工する。また、図4に示す製造方法は、ドア10a以外のフラッシュ構造体にも適用することができる。
【0053】
まず、芯材3の表裏両面に面材1を固定する(S11、固定工程)。本工程については図3のS1と同様のため、ここでは説明を省略する。
【0054】
固定工程の後、ダブルテノーナ20を用いて芯材3の側端部3aを切削加工し、挿入溝4を形成する(S12、溝形成工程)。本変形例では、1回の溝形成工程で芯材3の左右両側の側端部3aを同時に加工している。ただし、例えばテノーナ(不図示)を用いて、1回の溝形成工程で芯材3の片方の側端部3aを加工してもよい。
【0055】
挿入溝4は、挿入工程にて挿入される縦枠2aの厚さおよび幅に合わせた大きさとなるように形成される。本変形例においては、縦枠2aの厚さと、芯材3の厚さとが略同一である場合を想定している。そのため、芯材3の側端部3aのみを切削加工することで、縦枠2aの厚さに合わせた大きさの挿入溝4を形成できる。
【0056】
なお、続くS13(挿入工程)は図3のS3と同様であり、S14(曲面形成工程)は図3のS4と同様のため、ここでは説明を省略する。
【0057】
以上の各工程を踏むことにより、ドア10aにおける縦方向の片側部分の加工が終了する。前記の片側部分の加工が終了すると、ドア10aにおける縦方向の中心軸を回転中心としてドア10aを180°反転させて、前記の片側部分と同じようにドア10aにおける縦方向の逆側部分の加工を行う。また、さらにドア10aにおける厚さ方向の中心軸を回転中心としてドア10aを90°反転させて、前記の片側部分と同じようにドア10aにおける上側部分および下側部分の加工を行う。
【0058】
<第2の実施例>
本発明の第2の実施例について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、前記の第1の実施例にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0059】
本実施例に係るドア11は、図5に示すように、側端部の形状が第1の実施例に係るドア10と異なっている。図5には、ドア11の側端部に形成された挿入溝4に縦枠2aが挿入され、面材1の側端部1cに奥溝5aおよび先端溝5bが形成された状態501と、面材1の側端部1cが、縦枠2aの外側面2a-1に向かって折り曲げられた状態502とが示されている。
【0060】
〔面材の側端部の折り曲げ構造〕
図5の状態501に示すように、本実施例において、挿入溝4は、その深さが縦枠2aの横方向(挿入方向)の幅よりも大きくなるように形成されている。そのため、ドア11の側端部において、挿入溝4に縦枠2aを、挿入溝4の底面4aに当接するまで挿入した後には、2枚の面材1において、縦枠2aよりも外側に配置される2つの側端部(端部)1cが形成される。
【0061】
側端部1cの横方向の長さは、2つの側端部1cが縦枠2aに固定された状態において、外部から外側面2a-1を視認することができない程度の、所定の長さとなっている。「2つの側端部1cが縦枠2aに固定された状態」は、ドア11の側端部の構造的には、2つの先端1c-1および2つの側端部1cの折り曲げが完了した状態と同じ状態である。なお、2つの先端1c-1および2つの側端部1cの折り曲げの詳細については、後述する。
【0062】
ここで、「側端部1cの横方向の長さ」とは、縦枠2aの外側面2a-1の配置位置を基準として、当該配置位置から面材1の先端面1-1までの距離を指す。また、「外部から外側面2a-1を視認することができない」とは、縦枠2aに固定された2つの側端部1cの境界に形成される隙間から、奥行き方向を一定程度離れた位置で視認した場合に、外側面2a-1の外観が把握できないことを指す。例えば、前記の隙間に目を近づけて奥行き方向を視認した場合に外側面2a-1の外観が把握できたとしても、一定程度離れた位置で視認した場合に外側面2a-1の外観が把握できないのであれば、「外部から外側面2a-1を視認することができない」といえる。
【0063】
(奥溝および先端溝)
図5の状態501に示すように、2つの側端部1cのそれぞれには、奥溝(第2溝)5aおよび先端溝5bが形成されている。2つの側端部1cのそれぞれについて、奥溝5aは先端溝5bよりも縦枠2a側に形成されている。また、2つの側端部1cのそれぞれについて、先端溝5bは側端部1cの先端1c-1付近に形成されている。
【0064】
芯材3の表面に固定された面材1の側端部1cにおける、奥溝5aおよび先端溝5bの形成位置は、芯材3の裏面に固定された面材1の側端部1cにおける、奥溝5aおよび先端溝5bの形成位置と略同一となっている。奥溝5aは、側端部1cを外側面2a-1に向けて折り曲げるための溝であり、側端部1cの内側面1d側が開口しているとともに縦方向に延伸している。奥溝5aの横方向の断面は、略W字形状となっている。なお、奥溝5aの形状はこれに限られない。
【0065】
先端溝5bは、側端部1cの先端1c-1を当該側端部1cの折り曲げ方向と同じ方向に折り曲げるための溝である。状態501に示すように、先端溝5bについても奥溝5aと同様、側端部1cの内側面1d側が開口しており、縦方向に延伸している。先端溝5bにおける横方向の断面は、面材1と直交する縦方向の面を基準として略左右対称の略二等辺三角形状となっている。
【0066】
このように先端溝5bを形成し、2つの側端部1cの先端1c-1を折り曲げた上で、さらに2つの側端部1cを折り曲げて縦枠2aに固定することにより、この固定が完了した状態において2つの側端部1cの先端面1c-2が互いに対向し、隣接する。言い換えれば、2つの側端部1cの横方向の長さは、2つの先端1c-1および2つの側端部1cの折り曲げおよび固定が完了した状態において、外部から縦枠2aの外側面2a-1を視認することができない程度の長さになっている。
【0067】
ここで、「2つの側端部1cの折り曲げおよび固定が完了した状態」とは、2つの側端部1cの表面が略面一になり、かつ、2つの側端部1cの表面が縦枠2aの外側面2a-1に対して略平行に配置された状態のことを指す。
【0068】
以上のことから、縦枠2aに固定された2つの側端部1cの境界に形成される隙間を外部から視認した場合に、隙間の奥行き方向に見える2つの先端1c-1の外観が、2つの側端部1cの外観と統一される。そのため、ドア11の側端部の外観が良好となる。
【0069】
また、縦枠2aに固定された2つの側端部1cの境界に形成される隙間は、外部から該隙間の奥行き方向を視認した場合に、外側面2a-1の外観を把握できない程度に狭くなっている。そのため、ドア11の側端部の外観が良好となる。
【0070】
なお、2つの側端部1cのそれぞれに先端溝5bを形成することは必須ではない。一方の側端部1cにのみ先端溝5bを形成してもよいし、2つの側端部1cともに先端溝5bを形成しなくてもよい。言い換えれば、一方の側端部1cの先端1c-1のみ折り曲げてもよいし、2つの側端部1cともに先端1c-1を折り曲げなくてもよい。
【0071】
2つの側端部1cともに先端溝5bを形成しない場合、2つの側端部1cの横方向の長さは、2つの側端部1cの折り曲げおよび固定が完了した状態において、外部から縦枠2aの外側面2a-1を視認することができない程度の長さになっていればよい。
【0072】
図5の状態502に示すように、2枚の面材1の側端部1cが折り曲げられ、縦枠2aに固定された状態では、2つの側端部1cの内側面1dおよび面材1の先端面1-1が、縦枠2aの外側面2a-1に当接する。
【0073】
〔ドアの製造方法〕
ドア11は、例えば、図6のS21~S30の各工程を踏むことによって製造することができる。なお、図6に示す製造方法は、ドア11における左側の側端部の加工を例に挙げて記載しているが、右側の側端部並びに上側および下側の端部についても同様に加工する。また、図6に示す製造方法は、ドア11以外のフラッシュ構造体にも適用することができる。
【0074】
なお、図6において、簡略化のため面材1に含まれる繊維板1aおよび突き板1bの図示を省略しているが、これは面材1が繊維板1aおよび突き板1bを含まないことを意図するものではない。これは、図7においても同様である。
【0075】
(固定工程)
まず、芯材3の表裏両面に面材1を固定する(S21、固定工程)。本工程については図3のS1と同様のため、ここでは説明を省略する。
【0076】
(溝形成工程)
固定工程の後、ダブルテノーナ20を用いて芯材3の側端部3aおよび面材1の厚さ方向の一部を切削加工し、挿入溝4を形成する(S22、溝形成工程)。本実施例では、1回の溝形成工程で芯材3の左右両側の側端部3aを同時に加工している。ただし、例えばテノーナ(不図示)を用いて、1回の溝形成工程で芯材3の片方の側端部3aを加工してもよい。
【0077】
本実施例において挿入溝4は、後述する挿入工程にて挿入される縦枠2aの幅よりも、挿入溝4の深さの方が大きくなるように形成される。これにより、次工程において挿入溝4に縦枠2aが挿入および固定された状態において、面材1の2つの側端部1cが形成される。
【0078】
(挿入工程)
溝形成工程の後、溝形成工程により形成された挿入溝4に、圧入機(不図示)を用いて縦枠2aを挿入する(S23、挿入工程)。縦枠2aは、挿入溝4の底面4aに当接するまで挿入溝4の内側に押し込んで挿入される。このとき、挿入溝4の底面4aおよび側壁4bの内側面には糊を塗布している。なお、糊は底面4aと側壁4bの内側面との、いずれか一方のみに塗布していてもよい。そして、挿入溝4に縦枠2aが挿入された後、プレス機(不図示)および圧入機を用いて、縦枠2aを表裏面から厚さ方向に加圧し、また挿入溝4への挿入方向に加圧し、しばらく接着養生する。
【0079】
(先端面加工工程)
挿入工程の後、2つの側端部1cについて、横方向の長さが所定の長さになるように、面材1の2つの先端面1-1を加工する(S24、先端面加工工程)。2つの先端面1-1の加工は縦軸加工機40を用いて行う。
【0080】
具体的には、縦枠2aの外側面2a-1の配置位置を基準として、当該配置位置からの側端部1cの横方向の長さが、一方の側端部1cと他方の側端部1cとで略同一となるように、2つの先端面1-1を加工する。なお、2つの先端面1-1の加工は、縦軸加工機40以外の加工装置を用いて行ってもよい。
【0081】
前記の所定の長さは、2つの先端1c-1および2つの側端部1cの折り曲げおよび縦枠2aへの固定が完了した状態において、外部から外側面2a-1を視認することができない程度の長さとなる。具体的には、前記の所定の長さは、ドア11の規定の厚さによって決まる。ドア11の規定の厚さは、芯材3の厚さに2枚分の面材1の厚さを加えた値となる。このようなドア11の規定の厚さに基づけば、前記の所定の長さは、面材1の厚さ(先端1c-1の折り曲げ分を含む)と、溝5bの幅と、芯材3の厚さに1/2を乗じた値とを加えた値となる。
【0082】
(先端溝形成工程および第1折り曲げ工程)
先端面加工工程の後、2つの側端部1cのそれぞれについて、先端1c-1付近に先端溝5bを形成する(S25、先端溝形成工程)。このとき、まず一方の側端部1cを加工した後、他方の側端部1cを加工する。
【0083】
具体的には、略45°傾斜させた状態の丸鋸50の刃先を、先端1c-1付近の内側面1dに当てて、2枚の面材1が縦枠2aおよび芯材3の表裏両面に固定された構造体を送りながら(移動させながら)加工する。丸鋸50は、外径の大きな刃を有しており、上下水平倣い加工機(不図示)に備えられている。なお、これら以外の加工装置を用いて先端溝5bを形成してもよい。例えば、先端溝5bは、先端面が平面形状で、かつドリル状のビットで加工することもできる。
【0084】
先端溝形成工程の後、2つの側端部1cのそれぞれについて、先端1c-1を外側面2a-1に向けて(側端部1cの折り曲げ方向と同じ方向に)折り曲げる(S26、第1折り曲げ工程)。
【0085】
(奥溝形成工程)
第1折り曲げ工程の後、2つの側端部1cのそれぞれについて、側端部1cにおける外側面2a-1付近に奥溝5aを形成する(S27、奥溝形成工程)。このとき、本実施例においては、回転刃60を用いて2つの側端部1cを同時に加工する。なお、より小さな回転刃(不図示)等を用いて、まず一方の側端部1cを加工した後、他方の側端部1cを加工してもよい。
【0086】
具体的には、回転刃60の上下方向の幅は、挿入溝4に挿入でき、かつ回転刃60の刃先が2つの側端部1cに当たって、同時に切削加工を施すことができる幅である。また、図6に示すように、回転刃60は奥溝5aの横方向の断面形状に対応した、断面略W形状の刃先を備えている。このような回転刃60を2つの側端部1cに当てて、2枚の面材1が縦枠2aおよび芯材3の表裏両面に固定された構造体を送りながら加工する。
【0087】
このような回転刃60を用いることで、2つの側端部1cに同時に奥溝5aを形成できるため、ドア10の生産効率を向上させることができる。
【0088】
(糊吹き付け工程および第2折り曲げ工程)
奥溝形成工程の後、糊ノズル70から2つの側端部1cの内側面1dから縦枠2aの外側面2a-1にかけて糊を噴射し、当該内側面1d等に糊を塗布する(S28、糊吹き付け工程)。糊ノズル70は、糊をスプレーするための噴き出しノズルである。
【0089】
糊吹き付け工程の後、2つの側端部1cを縦枠2aの外側面2a-1に向けて折り曲げる(S29、第2折り曲げ工程)。次に、2つの側端部1cの折り曲げが完了した状態において、ローラープレス(不図示)で2つの側端部1cを押圧して、2つの側端部1cと縦枠2aとを密着させる(S30)。なお、当該押圧はローラープレス以外の加圧装置で行ってもよい。
【0090】
2つの側端部1cの折り曲げが完了した状態において、2つの側端部1cの内側面1dおよび先端面1-1が外側面2a-1に当接する。そのため、2つの側端部1cをローラープレスで押圧しても、2つの側端部1cがドア11の中央に向けて押し込まれたりすることがなく、2つの側端部1cと縦枠2aとを密着固定させることができる。これにより、2つの側端部1cの合わせ目に凹みや突出などが起こらず、縦全体に渡って均一な表面合わせを実現することができる。
【0091】
以上の各工程を踏むことにより、ドア11における縦方向の片側部分の加工が終了する。前記の片側部分の加工が終了すると、ドア11における縦方向の中心軸を回転中心としてドア11を180°反転させて、前記の片側部分と同じようにドア11における縦方向の逆側部分の加工を行う。また、さらにドア11における厚さ方向の中心軸を回転中心としてドア11を90°反転させて、前記の片側部分と同じようにドア11における上側部分および下側部分の加工を行う。
【0092】
もちろん、前記の溝形成工程から第2折り曲げ工程までの各工程において、それぞれの加工機にドア11を送る際に、例えばテノーナをダブルテノーナとするように、それぞれの加工機をドア11の両側に配置してもよい。このようにして加工することにより、一度にドア11の両方の側端部を加工することができ、生産性をより向上させることができる。
【0093】
〔変形例〕
本発明の一実施例に係るドア11には、複数のバリエーションが想定される。例えば、ドア11の工場出荷後等に、ドア11が用いられる建物等の構造に合わせて、ドア11の側端部が縦方向に切断されてもよい。このようなドア11の使用方法が想定される場合には、例えばドア11の側端部において、ドア11の外観を良好にするために、面材1の側端部1cを折り曲げる加工を施していないドア11aが、本実施例のバリエーションとして想定される。
【0094】
また、ドア11aの側端部が、工場出荷後等に縦方向に切断されることにより得られる、ドア11aよりも横方向の幅が小さいドア11bについても、本実施例の別のバリエーションとして想定される。また、ドア11bは、ドア11aの側端部および/または、ドア11aの上側および/または下側の端部を横方向に切断することにより得られてもよい。
【0095】
このようなドア11aによれば、ドア11aの製造者等は、後に切断される側端部の外観を良好にするために、面材1の側端部1cを折り曲げる等の加工を施す必要がない。したがって、ドア11aの製造工程を簡略化できるため、ドア11aを安価に供給できる。また、ドア11aの購入者等は、安価に入手したドア11aにより、ドア11aの側端部を切断し、縦横の幅が所望の大きさとなるドア11bを自作することができる。
【0096】
ドア11aは、例えば、図7のS31~S35の各工程を踏むことによって製造することができる。なお、図7に示す製造方法は、ドア11aにおける左側の側端部の加工を例に挙げて記載しているが、右側の側端部についても同様に加工する。また、図7に示す製造方法は、ドア11a以外のフラッシュ構造体にも適用することができる。
【0097】
まず、芯材3の表裏両面に面材1を固定する(S31、固定工程)。本工程については図3のS1と同様のため、ここでは説明を省略する。
【0098】
固定工程の後、ダブルテノーナ20を用いて芯材3の側端部3aおよび面材1の厚さ方向の一部を切削加工し、挿入溝4を形成する(S22、溝形成工程)。ここで、本変形例においては、横方向の幅が、ドア11における縦枠2aの横方向の幅よりも大きい縦枠2aが、挿入溝4に挿入される。
【0099】
これは、横方向の幅が大きい縦枠2aを用いてドア11aを製造することにより、ドア11aの側端部を縦方向に切断しても、縦枠2aの一部が残存しやすくできるためである。言い換えれば、横方向の幅が大きい縦枠2aを用いることにより、ドア11aの側端部において、切断可能な横方向の幅を長くすることができる。
【0100】
したがって、本変形例においては、挿入溝4の深さが、少なくとも縦枠2aの横方向の幅以上となるように、挿入溝4が形成される。なお、ドア11aにおける縦枠2aの横方向の幅が、ドア11における縦枠2aの横方向の幅よりも大きいことは必須ではない。
【0101】
溝形成工程の後、溝形成工程により形成された挿入溝4に、圧入機(不図示)を用いて縦枠2aを挿入する(S33、挿入工程)。縦枠2aは、挿入溝4の底面4aに当接するまで挿入溝4の内側に押し込んで挿入される。このとき、挿入溝4の底面4aおよび側壁4bの内側面には糊を塗布している。なお、糊は底面4aと側壁4bの内側面との、いずれか一方のみに塗布していてもよい。そして、挿入溝4に縦枠2aが挿入された後、プレス機(不図示)および圧入機を用いて、縦枠2aを表裏面から厚さ方向に加圧し、また挿入溝4への挿入方向に加圧し、しばらく接着養生する。
【0102】
挿入工程の後、面材1の先端面1-1および縦枠2aの外側面2a-1の配置位置が厚さ方向で揃うように、面材1の2つの先端面1-1を加工する(S34、先端面加工工程)。2つの先端面1-1の加工は縦軸加工機40を用いて行う。なお、2つの先端面1-1の加工は、縦軸加工機40以外の加工装置を用いて行ってもよい。
【0103】
以上の各工程を踏むことにより、ドア11aにおける縦方向の片側部分の加工が終了する。前記の片側部分の加工が終了すると、ドア11aにおける縦方向の中心軸を回転中心としてドア11aを180°反転させて、前記の片側部分と同じようにドア11aにおける縦方向の逆側部分の加工を行う。また、さらにドア11aにおける厚さ方向の中心軸を回転中心としてドア11aを90°反転させて、前記の片側部分と同じようにドア11aにおける上側部分および下側部分の加工を行う。
【0104】
ドア11aは、例えば工場出荷後等に、ドア11aが用いられる建物等の構造に合わせて、側端部が縦方向に切断される。具体的には、ドア11aの側端部において、挿入溝4の底面4aの配置位置から縦枠2aの外側面2a-1までの間の任意の位置に、丸鋸80の刃先を当てて、ドア11aを上下方向に送りながら(移動させながら)切断する(S25、現場切断工程)。
【0105】
このように現場切断工程を踏むことにより、ドア11aにおける縦方向の片側部分の加工が終了する。さらに、ドア11aにおける縦方向の逆側部分についても加工を行う場合には、前記の片側部分の加工が終了すると、ドア11aにおける縦方向の中心軸を回転中心としてドア11aを180°反転させて、前記の片側部分と同じようにドア11aにおける縦方向の逆側部分の加工を行う。また、さらにドア11aにおける厚さ方向の中心軸を回転中心としてドア11aを90°反転させて、前記の片側部分と同じようにドア11aにおける上側部分および下側部分の加工を行ってもよい。ドア11aにおける少なくとも1つの端部の加工を行うことにより、ドア11aよりも小さいドア11bが得られる。
【0106】
ここで、現場切断工程におけるドア11aの切断位置が、ドア11aの側端部において、挿入溝4の底面4aの配置位置から縦枠2aの外側面2a-1までの間の任意の位置であることから、切断後のドア11bの側端部には縦枠2aが残存する。そのため、現場切断工程後においても枠体2が残存し、ドア11bの強度を保つことができる。また、ドア11bの側端部に芯材3が露出することがないため、ドア11bの外観を良好にできる。
【0107】
なお、ドア11bの切断前の状態はドア11aに限られず、例えば第1の実施例に示したドア10または本実施例に示したドア11の側端部または上方もしくは下方の端部を切断して得られたドア11bについても、本発明の範疇に含まれる。
【0108】
<まとめ>
本発明の態様1に係る製造方法は、フラッシュ構造体(ドア10)であって、芯材(3)と、前記芯材に固定された面材(1)と、を備えたフラッシュ構造体であって、前記フラッシュ構造体の端部に形成された第1溝(挿入溝4)には、枠体(2)が挿入されており、前記第1溝は、少なくとも前記芯材の端部(側端部3a)を加工して形成されるとともに、当該加工後において、前記第1溝の底面(4a)に前記芯材の外側面(3b)が含まれ、かつ、前記第1溝の側壁(4b)は前記面材により形成されている。
【0109】
前記の構成によれば、芯材の大きさに合わせて、後から枠体を芯材に挿入することでフラッシュ構造体を製造できる。面材が固定された芯材は、その縦横の幅を任意の大きさにカットすることが容易であるため、縦横の幅が様々な大きさとなるフラッシュ構造体を製造するための材料として保管しておき、製造すべきフラッシュ構造体の大きさが決まった時点で、当該大きさに加工することができる。そして、縦横の幅を任意の大きさに調整した、面材が固定された芯材の端部を加工し、枠体を挿入することで様々な大きさのフラッシュ構造体が製造できるため、当該製造のために保管しておいた材料から順次使用できる。以上より、効率的に、かつ、縦横の幅を様々な大きさにより製造できるフラッシュ構造体を実現できる。
【0110】
また、第1溝の側壁は面材により形成されており、枠体は第1溝に挿入されている。したがって、枠体と芯材との境界部分は面材により覆われており外部からは視認できないため、フラッシュ構造体の外観を良好にできる。また、枠体が、第1溝に挿入されることより、強度が低い芯材を使用してもフラッシュ構造体の四辺および角を保護することができる。
【0111】
本発明の態様2に係るフラッシュ構造体は、前記態様1において、前記面材は、前記側壁を形成している部分の厚さが他の部分の厚さよりも薄くてもよい。
【0112】
前記の構成によれば、第1溝の大きさを、第1溝の側壁を形成している面材の厚さを変更することにより調整できる。したがって、第1溝に挿入される枠体の厚さが、芯材の厚さよりも厚い場合であっても、当該枠体を挿入可能な第1溝を形成できる。また、枠体の第1溝への挿入時に、枠体が段差に引っ掛かるため、当該挿入時における枠体の位置決めが容易になる。
【0113】
また、面材における第1溝の側壁を形成する部分が、面材の他の部分よりも薄くなるため、面材の先端面に現れる繊維板の先端部分が細くなり、視認されづらくなる事で、より外観が良好となる。
【0114】
本発明の態様3に係るフラッシュ構造体は、前記態様1または2において、前記面材の端面(1-1)と、前記枠体における外側の角部(2a-2)の面とが一連となって、外側に凸となる曲面を形成していてもよい。前記の構成によれば、面材と枠体との境界部分が一連となる曲面として形成される。これにより、面材と枠体との境界部分が、面材および枠体の備える木質材料様の模様に紛れて視認困難となる。したがって、フラッシュ構造体の端部における外観が良好となる。
【0115】
本発明の態様4に係るフラッシュ構造体は、前記態様1から3のいずれかにおいて、前記枠体は、前記第1溝への挿入方向の幅が前記第1溝の深さよりも小さく、前記面材において前記枠体よりも外側に配置される部分である前記面材の端部(側端部1c)には、前記枠体の外側面(2a-1)に向けて折り曲げるための第2溝(奥溝5a)が形成されており、前記面材の端部は、前記枠体の外側面に向けて折り曲げられ、前記面材の内側面(1d)が前記枠体の外側面に当接していてもよい。
【0116】
前記の構成によれば、枠体の幅が第1溝の深さよりも小さい。そのため、枠体の外側面に向けて折り曲げることが可能な、面材の端部を形成できる。また、面材の端部には第2が形成されているため、前記の折り曲げが容易である。さらに、面材の端部は、その内側面が枠体の外側面に当接するように折り曲げられている。そのため、フラッシュ構造体の側端部において、枠体の外側面は面材の端部によって覆われている。したがって、フラッシュ構造体の全体が、側端部を含めて一様に面材により覆われることで、統一感のある良好な外観が得られる。
【0117】
本発明の態様5に係る製造方法は、芯材(3)と、前記芯材に固定された面材(1)と、を備えたフラッシュ構造体の製造方法であって、前記フラッシュ構造体(ドア10)の端部に第1溝(4)を形成する溝形成工程と、前記第1溝に前記枠体(2)を挿入する挿入工程と、を含み、前記溝形成工程では、少なくとも前記芯材の端部(側端部1c)を加工し、前記第1溝の底面(4a)に前記芯材の外側面(3b)が含まれ、かつ、前記第1溝の側壁(4b)が前記面材により形成されるように、前記第1溝を形成する。
【0118】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0119】
1 面材
1c 側端部(面材の端部)
1d 内側面
1-1 先端面(面材の端面)
2 枠体
2a-1 外側面(枠体の外側面)
2a-2 角部
3 芯材
3a 側端部(芯材の端部)
3b 外側面(芯材の外側面)
4 挿入溝(第1溝)
4a 底面
4b 側壁
5a 奥溝(第2溝)
10、10a、11、11a、11b ドア(フラッシュ構造体)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7