IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社豊田自動織機の特許一覧 ▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-水素充填システム 図1
  • 特許-水素充填システム 図2
  • 特許-水素充填システム 図3
  • 特許-水素充填システム 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-02
(45)【発行日】2023-08-10
(54)【発明の名称】水素充填システム
(51)【国際特許分類】
   F17C 5/06 20060101AFI20230803BHJP
   H01M 8/00 20160101ALI20230803BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20230803BHJP
   H01M 8/0606 20160101ALI20230803BHJP
   F17C 13/02 20060101ALI20230803BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20230803BHJP
【FI】
F17C5/06
H01M8/00 Z
H01M8/04 J
H01M8/04 Z
H01M8/0606
F17C13/02 301Z
G06T7/00 300F
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019147531
(22)【出願日】2019-08-09
(65)【公開番号】P2021028504
(43)【公開日】2021-02-25
【審査請求日】2022-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100212657
【弁理士】
【氏名又は名称】塚原 一久
(72)【発明者】
【氏名】河迫 恵莉加
(72)【発明者】
【氏名】下簗 祐介
【審査官】永田 勝也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-086083(JP,A)
【文献】特開2004-118359(JP,A)
【文献】特開2016-223584(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0164202(US,A1)
【文献】特開2009-138789(JP,A)
【文献】特開平01-051587(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 5/06
H01M 8/00
H01M 8/04
H01M 8/0606
F17C 13/02
G06T 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池車両に搭載される水素タンクに水素を充填可能な水素充填設備と、
前記水素充填設備の近傍に位置する燃料電池車両を撮影するカメラと、
前記カメラによって撮影された前記燃料電池車両の画像を用いて、前記水素充填設備に水素充填の許可または不許可の指示を与える制御装置と、を備え、
前記水素充填設備は、燃料電池産業車両向けの水素充填設備であり、
前記制御装置は、前記カメラによって撮影された前記燃料電池車両の画像を用いた画像認識処理により、前記燃料電池車両が前記燃料電池産業車両に該当するか非燃料電池産業車両に該当するかの判別を行う判別部を有し、
前記判別部は、前記燃料電池産業車両に設けられるマスト、フォーク、カウンタウエイト、及び牽引機を前記燃料電池産業車両の特徴として抽出し、前記燃料電池車両の画像の中に前記特徴に一致する要素が含まれていれば前記燃料電池車両が前記燃料電池産業車両に該当し、前記画像の中に前記特徴に一致する要素が含まれていなければ前記燃料電池車両が前記非燃料電池産業車両に該当すると判別し、
前記判別部で判別した結果、前記燃料電池車両が前記燃料電池産業車両に該当する場合のみ前記水素充填設備に水素充填の許可の指示を与える
水素充填システム。
【請求項2】
前記水素充填設備は、オペレータによって操作される水素充填開始ボタンを有し、
前記判別部は、前記水素充填開始ボタンが押されたときに、前記カメラによって撮影された前記燃料電池車両の画像を取り込んで前記判別を行う
請求項1に記載の水素充填システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記カメラが撮影する画像に基づいて、前記水素充填設備の近傍に前記燃料電池車両が停止したことを感知する感知部を有する
請求項1または2に記載の水素充填システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素充填システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両用の駆動源として、クリーンでエネルギー効率が高い燃料電池が注目されている。燃料電池を駆動源とする燃料電池車両は、燃料電池で発電した電力を利用してモータを駆動することにより走行する。その際、燃料電池は、燃料ガスとなる水素と、酸化剤ガスとなる空気中の酸素との化学反応によって発電するため、発電量に応じて水素を消費する。このため、燃料電池を搭載する燃料電池車両には、所定量の水素を充填可能な水素タンクが搭載されている。
【0003】
燃料電池車両を活用するには、燃料電池車両の水素タンクに水素を充填する水素充填設備が必要になる。水素充填設備には水素充填ノズルが設けられ、燃料電池車両には水素充填ノズルを接続可能な水素充填口が設けられている。そして、実際に燃料電池車両の水素タンクに水素を充填する場合は、水素充填ノズルを燃料電池車両の水素充填口に差し込んで接続し、この接続部分を通して水素タンクに水素を充填する。
【0004】
水素充填設備で燃料電池車両の水素タンクに水素を充填する場合、水素充填設備を制御する設備側制御部と燃料電池車両を制御する車両側制御部との間で無線通信により所定の情報をやりとりして水素の充填を制御する、通信充填と呼ばれる充填制御方式が知られている(たとえば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-121282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、燃料電池車両は、燃料となる水素を充填する必要があるが、水素充填時に適用する水素充填圧は、充填する車両の種別によって少なくとも2種類(複数)存在する。現状、水素充填圧が異なる燃料電池車両は、高圧で水素を水素タンクに充填する燃料電池自動車と、燃料電池自動車よりも低圧で水素を充填する燃料電池産業車両とに大別される。燃料電池自動車は、燃料電池を搭載する普通自動車、バス、トラック等などの自動車である。燃料電池産業車両は、燃料電池を搭載するフォークリフト、トーイング車(牽引車)などの産業車両である。一般的に、燃料電池自動車に適用する水素充填圧は70MPaであり、燃料電池産業車両に適用する水素充填圧は35MPaである。
【0007】
水素充填圧の違いは、水素充填中の断熱圧縮による水素タンクの温度上昇に影響を与える。すなわち、水素充填圧が高いと水素充填中に水素タンクの温度が上がりやすくなる。このため、水素充填圧が高い燃料電池自動車向けの水素充填設備では、水素充填中に水素タンクの温度を管理しながら水素の充填を制御している。具体的には、燃料電池自動車側で水素タンクの温度を検出し、この検出結果を通信機能によって燃料電池自動車側から水素充填設備側へと情報を送信することにより、水素の充填速度等を制御している。このように水素充填圧が高い燃料電池自動車向けの水素充填設備では、燃料電池車両と水素充填設備との間で通信機能を用いて互いに情報を送受信して水素充填を制御している。したがって、水素充填圧が高い燃料電池自動車向けの水素充填設備では、通信機能を有さない燃料電池車両に水素充填が行われない。
【0008】
一方で、水素充填圧が低い燃料電池産業車両向けの水素充填設備では、水素充填中に水素タンクの温度を厳密に管理する必要がない場合、燃料電池産業車両の水素タンクに対して予め決められた充填速度で水素を充填している。したがって、燃料電池産業車両向けの水素充填設備には、水素充填中において車両と水素充填設備との間で水素充填制御用情報のやりとりが不要であり、そのような通信機能が設けられていないことがある。
【0009】
このように、通信機能を有する燃料電池自動車向けの水素充填設備は、車両側と通信する通信機能を有しているため、水素充填対象車両における通信機能の有無によって誤充填を防止することができる。しかしながら、通信機能を有さない燃料電池産業車両向けの水素充填設備では、水素充填ノズルが燃料電池自動車の水素充填口に接続された場合に水素の充填を禁止する必要がある。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、その目的は、燃料電池産業車両向けの水素充填設備において、燃料電池産業車両とは水素充填圧の異なる燃料電池車両への水素の誤充填を防止することができる水素充填システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、燃料電池車両に搭載される水素タンクに水素を充填可能な水素充填設備と、水素充填設備の近傍に位置する燃料電池車両を撮影するカメラと、カメラによって撮影された燃料電池車両の画像を用いて、水素充填設備に水素充填の許可または不許可の指示を与える制御装置と、を備え、水素充填設備は、燃料電池産業車両向けの水素充填設備であり、制御装置は、カメラによって撮影された燃料電池車両の画像を用いた画像認識処理により、燃料電池車両が燃料電池産業車両に該当するか非燃料電池産業車両に該当するかの判別を行う判別部を有し、判別部は、燃料電池産業車両に設けられるマスト、フォーク、カウンタウエイト、及び牽引機を燃料電池産業車両の特徴として抽出し、燃料電池車両の画像の中に特徴に一致する要素が含まれていれば燃料電池車両が燃料電池産業車両に該当し、画像の中に特徴に一致する要素が含まれていなければ燃料電池車両が非燃料電池産業車両に該当すると判別し、判別部で判別した結果、燃料電池車両が燃料電池産業車両に該当する場合のみ水素充填設備に水素充填の許可の指示を与えるものである。
【0012】
本発明に係る水素充填システムにおいて、水素充填設備は、オペレータによって操作される水素充填開始ボタンを有し、判別部は、水素充填開始ボタンが押されたときに、カメラによって撮影された燃料電池車両の画像を取り込んで判別を行うものであってもよい。
【0013】
本発明に係る水素充填システムにおいて、制御装置は、カメラが撮影する画像に基づいて、所定の領域に燃料電池車両が停止したことを感知する感知部を有するものであってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、燃料電池産業車両向けの水素充填設備において、燃料電池産業車両とは水素充填圧の異なる燃料電池車両への水素の誤充填を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係る水素充填システムが備える水素充填設備と水素充填の対象となる燃料電池車両の構成を示す概略図である。
図2】本発明の実施形態に係る水素充填システムの概略図である。
図3】本発明の実施形態に係る水素充填システムのブロック図である。
図4】本発明の実施形態に係る燃料電池システムで行われる処理および動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施形態に係る水素充填システムが備える水素充填設備と水素充填の対象となる燃料電池車両の構成を示す概略図である。
図示した水素充填設備11は、燃料電池車両に搭載される水素タンクに水素を充填可能な設備である。一般に、水素充填の対象となる燃料電池車両には、第1の充填圧で水素を充填すべき燃料電池産業車両、および、第1の充填圧と異なる第2の充填圧で水素を充填すべき非燃料電池産業車両が少なくとも含まれる。水素充填設備11は、燃料電池産業車両向けの水素充填設備である。
【0018】
燃料電池産業車両としては、フォークリフト、トーイング車(牽引車)などの産業車両を挙げることができる。本実施形態においては、燃料電池車両12がフォークリフトである場合を例に挙げて説明する。非燃料電池産業車両は、燃料電池産業車両以外の燃料電池車両を意味する。非燃料電池産業車両としては、燃料電池を搭載する普通自動車、バス、トラック等などの燃料電池自動車を挙げることができる。燃料電池産業車両の水素タンクに水素を充填するときに適用される充填圧は35MPa(第1の充填圧)であり、燃料電池自動車の水素タンクに水素を充填するときに適用される充填圧は70MPa(第2の充填圧)である。
【0019】
図1に示す水素充填設備11は燃料電池産業車両向けの水素充填設備であるため、水素充填圧は燃料電池産業車両に適合する35MPaに設定されている。水素充填設備11は、ディスペンサとも呼ばれるもので、図示しない水素貯蔵タンク、水素圧縮機、水素蓄圧器、プレクーラー等と共に、水素ステーションに設置される。
【0020】
燃料電池車両12は、燃料電池式のフォークリフトである。燃料電池車両12は、走行用モータと荷役用モータを備え、燃料電池が発電する電気エネルギーによって各々のモータを駆動する産業車両である。
【0021】
燃料電池車両12は、燃料電池ユニット15と、マスト16と、フォーク17と、バランスウェイト18と、水素タンク21と、水素充填口22と、フューエルリッド23とを備えている。燃料電池ユニット15は、図示はしないが、発電源となる燃料電池と、燃料電池に水素を供給する水素供給系と、燃料電池に空気を供給する空気供給系と、燃料電池から排出されるオフガスを排気する排気系と、オフガスに含まれる水素を循環させる循環系と、オフガスに含まれる生成水を排水する排水系とを備えている。
【0022】
マスト16およびフォーク17は、燃料電池車両12の前部に設けられている。マスト16は、燃料電池車両12の車幅方向の両側に1つずつ立設されている。フォーク17は、マスト16に沿って昇降動作するものである。バランスウェイト18は、燃料電池車両12の後部に設けられている。水素タンク21は、燃料電池に供給される水素を貯めておくためのタンクであって、燃料電池と共に燃料電池車両12に搭載される。水素充填口22は、水素タンク21に水素を充填するための充填口であって、レセプタクルとも呼ばれる。フューエルリッド23は、燃料電池車両12の車体側面部に開閉可能に設けられている。フューエルリッド23は、水素充填のために水素充填口22を露出させたり、水素非充填時に水素充填口22を遮蔽したりするための板状部材である。
【0023】
水素充填設備11は、アイランド31に設置されている。水素充填設備11は、水素充填ホース34と、水素充填ホース34の一端部に設けられた水素充填ノズル36と、操作用のタッチパネル38と、を備えている。水素充填ホース34は、図示しない水素貯蔵タンクから開閉弁(図示せず)を介して供給される水素を水素充填ノズル36へと導くものである。水素充填ホース34は、可撓性を有するホースによって構成されている。水素充填ノズル36は、燃料電池車両12の水素充填口22に接続可能なノズルである。タッチパネル38は、情報表示機能と情報入力機能とを有する。タッチパネル38は、各種の画面を情報として表示するとともに、その画面中に必要に応じて各種のボタンを表示し、そのボタンを通して入力を受け付けるものである。タッチパネル38に表示される画面には、たとえば、水素充填の作業手順を案内する案内画面や、何らかのエラーを表示するエラー画面などがある。また、タッチパネル38の画面中に表示されるボタンには、水素充填開始ボタン39が含まれる。水素充填開始ボタン39は、オペレータによって操作されるボタン(スイッチ)であって、オペレータが水素充填の開始を指示するための操作ボタンとなる。なお、水素充填開始ボタン39は、タッチパネル38とは別に設けられる機械式のボタン(スイッチ)であってもよい。
【0024】
図2は、本発明の実施形態に係る水素充填システムの概略図である。
図2に示すように、水素充填システム1は、水素ステーションに適用されるものであって、上述した水素充填設備11の他に、撮影用のカメラ51と、水素充填システム1全体の処理を制御する制御装置52とを備えている。
【0025】
カメラ51は、水素ステーションの天井などに設置されるものである。水素充填設備11の近傍には、燃料電池車両12を停止すべき所定の領域33が予め設定されている。所定の領域33は、目印となる枠線などで示される。カメラ51は、所定の領域33に位置する燃料電池車両12を撮影するものである。水素ステーションでは、高圧ガス保安法の適用により、電気的接点を持つ製品は、防爆仕様になっていない場合は、規定の範囲内に設定できないことになっている。このため、防爆仕様ではないカメラ51を水素ステーションに設置する場合は、防爆範囲を外れた位置にカメラ51を設置する必要がある。
【0026】
カメラ51、制御装置52および水素充填設備11は、それぞれ通信機能を有する。具体的には、カメラ51は、制御装置52に対して画像データを送信する機能を有し、制御装置52は、その画像データを受信する機能を有する。また、制御装置52は、水素充填設備11に対して水素充填を制御するための制御信号を送信する機能を有し、水素充填設備11は、その制御信号を受信する機能を有する。水素充填を制御するための制御信号とは、水素充填設備11に対して水素充填の許可または不許可の指示を与える信号である。
【0027】
図3は、本発明の実施形態に係る水素充填システムのブロック図である。
図3に示すように、水素充填設備11は、上述したタッチパネル38および水素充填開始ボタン39の他に、ノズル着脱センサ41と、開閉弁駆動部42とを備えている。ノズル着脱センサ41は、水素充填ノズル36の着脱状態を検出するセンサである。ノズル着脱センサ41は、水素充填設備11の所定位置に水素充填ノズル36が取り付けられた状態ではオフ状態となり、水素充填設備11の所定位置から水素充填ノズル36が取り外された状態ではオン状態となる。開閉弁駆動部42は、上記水素貯蔵タンクから水素充填ホース34へと至る水素供給路に設けられる上記開閉弁を開閉動作させるものである。開閉弁駆動部42が開閉弁を開状態とした場合は、水素貯蔵タンクから水素充填ホース34に水素が供給され、開閉弁駆動部42が開閉弁を閉状態とした場合は、水素貯蔵タンクから水素充填ホース34に水素が供給されない。
【0028】
制御装置52は、車両の停止を感知する感知部55と、車両の種別を判別する判別部56と、判別部56の判別結果を基に上記制御信号を出力する制御信号出力部57とを備えている。感知部55は、カメラ51が撮影する画像に基づいて、所定の領域33に燃料電池車両12が停止したことを感知するものである。カメラ51は、所定の領域33を含む広い視野で撮影する。感知部55は、カメラ51の視野内に燃料電池車両12が移動してくると、カメラ51から送信される画像データを用いて燃料電池車両12の動き(走行状態)を監視し、この監視中に燃料電池車両12の動きが所定の領域33で止まると、燃料電池車両12が所定の領域33に停止したと認識する。
【0029】
判別部56は、カメラ51によって撮影された燃料電池車両の画像を用いた画像認識処理により、所定の領域33に位置する燃料電池車両が燃料電池産業車両に該当するか否かを判別する処理(以下、「判別処理」ともいう。)を行うものである。判別部56が判別する車両の種別には、先述した燃料電池産業車両と非燃料電池産業車両とがある。判別部56は、人工知能を用いた画像認識によって車両の種別を判別する。人工知能を用いた画像認識では、所定数の燃料電池産業車両の画像データを入力し、その画像データから機械学習やディープラーニングを用いて燃料電池産業車両の特徴を抽出させる。そして、判別すべき燃料電池車両の画像を含む画像データがカメラ51から制御装置52へと送信された場合に、判別部56は、この画像データに含まれる燃料電池車両の画像の中に、燃料電池産業車両の特徴に一致する要素が含まれていれば、該燃料電池車両が燃料電池産業車両に該当すると判断し、含まれていなければ燃料電池産業車両に該当しないと判断する。
【0030】
なお、人工知能を用いた画像認識において、燃料電池産業車両の画像データから抽出する特徴としては、次のような特徴を挙げることができる。すなわち、図1に示す燃料電池車両(フォークリフト)12の場合は、車両前部にマスト16が存在すること、車両前部にフォーク17が存在すること、車両後部にバランスウェイト18が存在すること、が特徴として挙げられる。また、トーイング車(牽引車)の場合は、車両後部に牽引機が存在することが特徴として挙げられる。
【0031】
制御信号出力部57は、判別部56の判別結果に応じて、水素充填を制御するための制御信号を出力するものである。水素充填を制御するための制御信号には、水素充填を許可する旨の制御信号(以下、「水素充填許可信号」という。)と、水素充填を不許可(禁止)とする旨の制御信号(以下、「水素充填不許可信号」という。)とがある。制御信号出力部57がいずれの制御信号を出力するかは、判別部56の判別結果によって決まる。すなわち、所定の領域33に位置する燃料電池車両が燃料電池産業車両に該当すると判別部56が判別した場合、制御信号出力部57は、水素充填設備11に対して水素充填の許可の指示を与えるべく、水素充填許可信号を水素充填設備11に出力する。また、所定の領域33に位置する燃料電池車両が燃料電池産業車両に該当しないと判別部56が判別した場合、制御信号出力部57は、水素充填設備11に対して水素充填の不許可の指示を与えるべく、水素充填不許可信号を水素充填設備11に出力する。
【0032】
続いて、本発明の実施形態に係る燃料電池システムで行われる処理および動作について図4を用いて説明する。
まず、制御装置52においては、カメラ51から送信されてくる画像データを用いて、水素充填設備11近傍の所定の領域33に燃料電池車両が停止したか否かを判断する(ステップS1)。この判断は感知部55で行う。そして、所定の領域33に燃料電池車両が停止したと感知部55が判断すると、水素充填設備11においては、水素充填ノズル36がオペレータによって取り外されたどうかを、ノズル着脱センサ41のオンオフ状態に基づいて判断する(ステップS2)。具体的には、ノズル着脱センサ41がオフ状態のままであればステップS2でNoと判断し、ノズル着脱センサ41がオフ状態からオン状態に切り替わるとステップS2でYesと判断する。なお、オペレータは、水素充填設備11の所定位置から水素充填ノズル36を取り外した後、燃料電池車両12の水素充填口22に水素充填ノズル36を差し込んで接続することになる。
【0033】
次に、水素充填設備11においては、水素充填開始ボタン39がオペレータによって押されたかどうかを判断する(ステップS3)。そして、水素充填開始ボタン39が押されたことを知らせる通知信号が水素充填設備11から制御装置52に送られると、判別部56は、カメラ51によって撮影された画像データを取り込む(ステップS4)。このとき、カメラ51によって撮影された画像データには、所定の領域33に停止している燃料電池車両の画像が含まれる。図2においては、フォークリフトである燃料電池車両12が所定の領域33に停止した状態を示している。
【0034】
次に、判別部56は、上記ステップS4においてカメラ51によって撮影された燃料電池車両の画像データを用いた画像認識処理により、所定の領域33に位置する燃料電池車両が燃料電池産業車両に該当するか否かを判別する(ステップS5)。この判別結果において、所定の領域33に位置する燃料電池車両が燃料電池産業車両に該当する場合、すなわちステップS5でYesと判断した場合は、制御信号出力部57は、水素充填許可信号を水素充填設備11に出力する(ステップS6)。これにより、水素充填設備11においては、開閉弁駆動部42が開閉弁を開くため、水素充填ノズル36と水素充填口22との接続部分を通して水素タンク21に水素の充填が開始される(ステップS7)。
【0035】
これに対し、判別部56による判別結果において、所定の領域33に位置する燃料電池車両が燃料電池産業車両に該当しない場合、すなわちステップS5でNoと判断した場合は、制御信号出力部57は、水素充填不許可信号を水素充填設備11に出力する(ステップS8)。これにより、水素充填設備11においては、開閉弁駆動部42が開閉弁を閉じた状態に保持するため、水素の充填が開始されずに、タッチパネル38の画面にエラーメッセージが表示される(ステップS9)。タッチパネル38の画面には、「この車両は水素の充填が許可された車両ではありませんので水素充填ノズルを元の位置に戻して速やかに車両を移動してください。」などのエラーメッセージを表示するとよい。これにより、燃料電池産業車両に対しては水素の充填を許可し、非燃料電池産業車両に対しては水素の充填を禁止することができる。
【0036】
このように、本発明の実施形態においては、水素充填設備11の近傍(所定の領域33)に位置する燃料電池車両12を撮影するカメラ51を備え、このカメラ51で撮影した燃料電池車両12の画像を用いて、その燃料電池車両12が燃料電池産業車両に該当するか否かを判別部56で判別する。そして、水素充填設備11の近傍に位置する燃料電池車両12が燃料電池産業車両に該当する場合のみ水素充填設備11に水素充填の許可の指示を与える。これにより、燃料電池産業車両向けの水素充填設備11において、非燃料電池産業車両である燃料電池自動車への水素の充填が禁止される。このため、燃料電池産業車両向けの水素充填設備11において、燃料電池自動車の水素タンクに対する水素の誤充填を防止することができる。また、本実施形態では、燃料電池車両に対して何らかの部品や機能を追加する必要がないため、車両コストに影響を及ぼさないとともに、すでに販売された燃料電池車両やメーカーの異なる燃料電池車両なども対象に、水素充填の許可または不許可を判別することができる。
【0037】
また、本発明の実施形態においては、水素充填設備11の水素充填開始ボタン39が押されたときに、カメラ51によって撮影された燃料電池車両12の画像を判別部56が取り込んで判別処理を行う構成を採用している。これにより、水素充填を開始する直前に所定の領域33に位置する燃料電池車両12をカメラ51で撮影し、その燃料電池車両12の画像を用いて判別処理を行うことができる。
【0038】
また、本発明の実施形態においては、カメラ51が撮影する画像に基づいて、水素充填設備11の近傍に燃料電池車両12が停止したことを感知する感知部55を有する構成を採用している。これにより、水素充填設備11の近傍に燃料電池車両12が停止したことを専用のセンサ(たとえば、接近センサ、重量センサなど)を使用して感知する必要がないため、システム構成を簡素化することができる。
【0039】
なお、本発明の技術的範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の構成要件やその組み合わせによって得られる特定の効果を導き出せる範囲において、種々の変更や改良を加えた形態も含む。
【0040】
たとえば、上記実施形態においては、水素充填設備11の水素充填開始ボタン39が押されたときに、カメラ51によって撮影された燃料電池車両12の画像を判別部56が取り込んで判別処理を行う構成を採用したが、本発明はこれに限らない。すなわち、ステップS1で車両の停止を感知してから、ステップS2で水素充填ノズル36の取り外しを検知するまでの間に、カメラ51による撮影と判別部56による判別処理とを行うことも可能である。ただし、その場合は、制御信号出力部57が水素充填許可信号または水素充填不許可信号を出力した後に、燃料電池車両が所定の領域33から移動し、その後、別の燃料電池車両が所定の領域33に停止することも想定され、その場合にはカメラ51による撮影と判別部56による判別処理とを再度やり直す必要がある。このため、水素充填設備11の水素充填開始ボタン39が押されたときに、カメラ51による撮影と判別部56による判別処理とを行うことが好ましい。
【0041】
また、上記実施形態においては、画像認識によって車両の種別を判別するために、燃料電池産業車両の画像データを入力してその特徴を抽出するとしたが、これに限らず、非燃料電池産業車両の画像データを入力してその特徴を抽出してもよい。また、燃料電池産業車両の画像データと非燃料電池産業車両の画像データの両方を入力してそれぞれの特徴を抽出してもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 水素充填システム、11 水素充填設備、12 燃料電池車両、21 水素タンク、39 水素充填開始ボタン、51 カメラ、52 制御装置、55 感知部、56 判別部。
図1
図2
図3
図4