(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-02
(45)【発行日】2023-08-10
(54)【発明の名称】折戸装置
(51)【国際特許分類】
E06B 3/48 20060101AFI20230803BHJP
E05D 15/06 20060101ALI20230803BHJP
【FI】
E06B3/48
E05D15/06 125C
(21)【出願番号】P 2019158847
(22)【出願日】2019-08-30
【審査請求日】2022-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】井上 裕貴
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-079657(JP,A)
【文献】特開2015-190137(JP,A)
【文献】特開2003-027852(JP,A)
【文献】特開2006-161300(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 3/48
E06B 3/90-3/94
E05D 15/00-15/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部の上部の壁面にアウトセットされ、
見込み方向に沿って面一状に連続する平坦面を有するガイドレール本体を有するガイドレールと、
少なくとも戸先扉体及び戸尻扉体を含む複数の扉体を相互に回動可能に連結し、前記戸先扉体を前記戸尻扉体に向けて折り畳むように構成され、前記ガイドレールに上吊りされる折戸と、
前記ガイドレールと前記壁面との間において、前記壁面に対する前記ガイドレールの離隔距離を調整する離隔距離調整部材と、を備え、
前記離隔距離調整部材は前記ガイドレール本体によって上下から挟むように取り付けられる、折戸装置。
【請求項2】
上枠材及び左右の縦枠材で囲まれる開口部の上部の壁面にアウトセットされ、
見込み方向に沿って面一状に連続する平坦面を有するガイドレール本体を有するガイドレールと、
少なくとも戸先扉体及び戸尻扉体を含む複数の扉体を相互に回動可能に連結し、前記戸先扉体を前記戸尻扉体に向けて折り畳むように構成され、前記ガイドレールに上吊りされる折戸と、
前記ガイドレールと前記壁面との間において、前記壁面に対する前記ガイドレールの離隔距離を調整する離隔距離調整部材と、を備え、
前記折戸は、前記開口部を閉鎖した状態において、前記戸尻扉体側に配置される前記縦枠材を前記戸尻扉体によって覆うように配置され、
前記戸尻扉体と前記戸尻扉体側に配置される前記縦枠材との間に、相互干渉を避ける間隙を有し、
前記離隔距離調整部材は前記ガイドレール本体によって上下から挟むように取り付けられる、折戸装置。
【請求項3】
前記戸尻扉体の戸尻側の端部近傍の前記壁面に、前記間隙を目隠しする縦枠材を有する、請求項2に記載の折戸装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、折戸装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、開口部にインセットされる吊りレールに、吊車によって折戸を上吊りし、折戸を折り畳むことによって開口部を開放した際、折り畳まれたパネルが室内側又は室外側の一方のみに突出するように構成される折戸を備える折戸装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
折戸は、把手側パネル、中間パネル、回転軸側パネルの3枚のパネルからなり、吊りレール内を走行する1つの吊車が、把手側パネルの回転軸と中間パネルの回転軸とに跨って配置されるとともに、回転軸側パネルの上部及び下部にそれぞれ突出する吊元側の回転軸が、吊りレールの内部に配置された受部と床面に設けられた受部とによってそれぞれ支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
開口部に設けられる引き戸等をリフォームによって取り外し、新たな戸体を設置する方法として、開口部の上部の壁面にガイドレールを取り付け、開口部を挟んで配置される二つの室のうちの一方の室側から開口部を塞ぐように戸体をアウトセットする方法がある。
【0006】
この方法は、戸体が引き戸である場合には問題はない。しかし、戸体が複数の扉体を回動させながら折り畳むように構成される折戸である場合は、扉体が回動し得るだけのスペースが必要となるため、折戸を開口部にアウトセットすることが困難である。特許文献1は、折り畳んだ際に一方の室側に突出しないように構成される折戸を開示する。しかし、例えば開口部を形成する縦枠材が、壁面から室側に張り出すように設けられる場合、折戸の開閉操作時に、折戸と縦枠材とが干渉するおそれがある。
【0007】
本開示は、一方の室側から開口部を塞ぐように折戸をアウトセットしても、折戸と縦枠材とが干渉するおそれのない折戸装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の折戸装置は、開口部の上部の壁面にアウトセットされるガイドレールと、少なくとも戸先扉体及び戸尻扉体を含む複数の扉体を相互に回動可能に連結し、前記戸先扉体を前記戸尻扉体に向けて折り畳むように構成され、前記ガイドレールに上吊りされる折戸と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】折戸を平面で示す折戸装置の横断面図である。
【
図4】折戸及びガイドレールを二点鎖線で示す折戸装置の斜視図である。
【
図5】ガイドレールの取付構造を示す縦断面図である。
【
図7A】開操作の途中の折戸を平面視した説明図である。
【
図7B】開操作が終了した折戸を平面視した説明図である。
【
図7C】他の実施形態に係る開操作が終了した折戸を平面視した説明図である。
【
図8】折戸の吊元側の回動軌道を説明する図である。
【
図9】ガイドレールの取付構造の他の実施形態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1、
図2、
図3及び
図4に示すように、建物躯体の壁部100は、上枠材101と、床面FLから上方に延びる左右の縦枠材102,103と、によって構成される既設の三方枠の内側に開口部104を有する。壁部100は、建物内の2つの室R1、R2を仕切る壁部であり、開口部104によって室R1と室R2とを連通させている。上枠材101及び左右の縦枠材102,103は、壁部100の壁厚よりも幅広に形成され、室R1側及び室R2側にそれぞれ僅かに張り出している。
【0011】
折戸装置1は、折戸2と、折戸2を摺動可能に上吊りするガイドレール3と、を有し、2つの室R1、R2のうちの一方の室R1から、開口部104を塞ぐようにアウトセットされる。この折戸装置1は、開口部104に対して容易に後付けすることができるため、室内をリフォームする際に好適に使用することができる。
【0012】
折戸2は、
図3における左側が戸先側、右側が戸尻側であり、開口部104の幅寸法よりもやや幅広の幅寸法を有し、且つ、開口部104の高さ寸法よりもやや高い高さ寸法を有する。折戸2の戸先側は、縦枠材102のやや内側に配置されている。詳しくは、
図3に示すように、折戸2の戸先側は、開口部104に対して、開口部104の見込み方向の外側である室R1に配置されるとともに、開口部104の幅方向の内側に配置される。したがって、折戸2の戸先側は、縦枠材102には当接していない。折戸2を室R1及び室R2のいずれから観察しても、折戸2の戸先側と縦枠材102とは重なっていない。なお、開口部104の見込み方向とは、開口部104を境にして室R1と室R2とに亘る方向である。
【0013】
折戸2の戸尻側は、縦枠材103よりもやや外側に配置され、縦枠材103を覆っている。詳しくは、
図3に示すように、折戸2の戸尻側は、開口部104に対して、開口部104の見込み方向の外側である室R1に配置されるとともに、開口部104の幅方向の外側に配置される。したがって、折戸2の戸尻側も、縦枠材103には当接していない。しかし、折戸2を室R1から観察した場合、折戸2の戸尻側は、縦枠材103と重なり、縦枠材103を覆い隠している。
【0014】
折戸2の戸先側に配置される縦枠材102の内側には、縦枠材102とほぼ同じ厚みの板材からなる戸先側の新設縦枠材105が、室R1に向けて更に突出するように取り付けられている。新設縦枠材105は、床面FLから上方に延びており、アウトセットされる折戸2の戸先側の端面に対向するように配置されている。新設縦枠材105の上下方向の長さは、縦枠材102の上下方向の長さよりも僅かに長い。そのため、
図2に示すように、新設縦枠材105は、縦枠材102と重なり合う部位の上端に、上枠材101の端部を納めるためのL形の切り欠き部105aを有している。
【0015】
新設縦枠材105には、戸当たり106が取り付けられている。戸当たり106は、新設縦枠材105の長さ方向に沿って設けられた溝部105bに配置されている。戸当たり106は、折戸2が閉じられた際に、室R2側から戸先に当接するように配置されている。新設縦枠材105には、戸当たり106に代えて、又は、戸当たり106に加えて、折戸2を閉状態に保持するためのラッチ、錠等を設けてもよい。
【0016】
図3及び
図4に示すように、壁部100における室R1側に面する壁面100aには、折戸2の戸尻側の端部22aの近傍の縦枠材103よりも外側に、折戸2の高さ方向の全長に亘るスペーサ材107が取り付けられている。スペーサ材107は、縦枠材103を挟んで開口部104と反対側の壁面100aに取り付けられる戸尻側の新設縦枠材である。スペーサ材107は、折戸2の戸尻側の端部と縦枠材103及び壁面100aとの間に形成される間隙Gを目隠ししている。
【0017】
折戸2は、
図1及び
図3に示すように、最も戸先側に配置される戸先扉体21と、最も戸尻側に配置される戸尻扉体22と、戸先扉体21及び戸尻扉体22の間に配置される中間扉体23と、の3枚の扉体を有し、戸先扉体21及び中間扉体23を戸尻扉体22に向けて折り畳むことによって開口部104を開放するように構成される。中間扉体23と戸尻扉体22とは、ほぼ同じ幅を有し、戸先扉体21は、戸尻扉体22及び中間扉体23のほぼ倍の幅を有する。
【0018】
戸先扉体21と中間扉体23とは、上下端部にそれぞれ配置されるヒンジ部24aによって連結され、中間扉体23と戸尻扉体22とは、上下端部にそれぞれ配置されるヒンジ部24bによって連結される。ヒンジ部24a,24bは、ギヤが噛合したギヤ構造を有する。開口部104を閉じた状態の折戸2において、ヒンジ部24aは、戸先扉体21と中間扉体23との間から室R1側に僅かに突出した位置に設けられ、ヒンジ部24bは、中間扉体23と戸尻扉体22との間から室R2側に僅かに突出した位置に設けられている。
【0019】
戸先扉体21は、上端部に、後述するガイドレール3に走行可能に収容される吊車25を有する。吊車25は、本体部251の両側部に4つのローラ252を有し、戸先扉体21から上方に突出する第1回動軸253に対して回動可能に取り付けられている。第1回動軸253は、戸先扉体21における戸尻側である中間扉体23側の端部に配置され、開閉操作時にガイドレール3に沿って移動する戸先扉体21の可動回動軸を構成する。戸先扉体21の戸先側の両面には、それぞれ開閉操作用のハンドル211が取り付けられている。
【0020】
戸尻扉体22は、上端部に、後述するガイドレール3に走行可能に収容される吊車27を有する。吊車27は、戸先扉体21の吊車25と同一構造であってもよい。吊車25と同一構造の吊車27は、本体部271の両側部に4つのローラ272を有し、戸尻扉体22から上方に突出する第2回動軸273に対して回動可能に取り付けられる。第2回動軸273は、戸尻扉体22における中間扉体23側と反対側に位置する端部に配置され、戸尻扉体22の上部の固定回動軸を構成する。
【0021】
戸尻扉体22は、
図1に示すように、下端部に、建物躯体の床面FLに向けて突出する軸部28を有する。軸部28は、吊車27の第2回動軸273と同軸上に配置され、床面FLに固定された軸受け281によって回動可能に支持されている。この軸部28は、戸尻扉体22の下部の固定回動軸を構成する。
【0022】
中間扉体23は、上端部に、後述するガイドレール3の溝部311dに対して摺動可能に嵌合するガイド円板26を有する。ガイド円板26は、中間扉体23における戸先扉体21側の端部の上面から上方に突出する第3回動軸261に同軸状に取り付けられている。この第3回動軸261は、開閉操作時にガイドレール3に沿って移動する中間扉体23の可動回動軸を構成する。
【0023】
ガイドレール3は、開口部104の上部における室R1側に面する壁面100aに、上枠材101に対して平行に取り付けられている。壁面100aには、ガイドレール3の長さと同じ長さを有する断面矩形状の下地材4が、室R1側に面する側面4aから打ち込まれるねじSC1によって固定され、室R1に向けて突出している。
【0024】
下地材4は、離隔距離調整部材の一例である。ガイドレール3は、下地材4を介して壁面100aに取り付けられることによって、壁面100aから離隔し、室R1側に大きく突出している。壁面100aに対するガイドレール3の離隔距離は、下地材4の大きさ、具体的には、下地材4の壁面100aからの突出高さによって規定される。下地材4の突出高さを適宜選定することにより、壁面100aに対するガイドレール3の離隔距離を所望の距離に調整することができる。
【0025】
下地材4によってガイドレール3が壁面100aから離隔して設けられることにより、ガイドレール3によって上吊りされる折戸2も、壁面100aから離隔する。本開示における下地材4の壁面100aからの突出高さは、
図3に示すように、折戸2の戸尻側の端部に配置される既設の縦枠材103の室R1側の端部103aと折戸2との間に、相互干渉を避ける間隙Gが形成されるように設定される。この間隙Gが形成されることによって、折戸2は壁面100aから離隔し、壁面100aとの間にも間隙を有する。
【0026】
ガイドレール3は、アルミニウム等の金属により押し出し成形されたガイドレール本体31と、ガイドレール本体31の外側を覆う樹脂カバー32と、ガイドレール3の長さ方向の両端部にそれぞれ取り付けられる樹脂キャップ33,33と、を有する。ガイドレール本体31及び樹脂カバー32は、上枠材101の長さよりも長尺に延びており、折戸2の幅に対応するガイドレール3の全長を規定している。
【0027】
図5及び
図6に示すように、ガイドレール本体31は、折戸2の吊車25,27を収容する走行部311と、走行部311よりも壁面100a側に配置される第1の固定片312と、第1の固定片312の下端部から壁面100a側に向けて延びる第2の固定片313と、を一体に有する。
図4では、ガイドレール3の樹脂キャップ33、縦枠材102及び新設縦枠材105の図示を省略している。
【0028】
走行部311は、それぞれガイドレール3の長さ方向に延びる上壁部311aと、上壁部311aの室R1側の端縁及び室R2側の端縁からそれぞれ垂下する一対の平行な側壁部311b,311bと、側壁部311b,311bの下端縁から互いに近接する方向にそれぞれ延びる一対のレール部311c,311cと、で構成され、内側に吊車25,27の収容空間を形成する。レール部311c,311c同士は離隔しており、レール部311c,311cの間には溝部311dが形成されている。走行部311は、下面311eが上枠材101の上面101aとほぼ同一面となるように、ガイドレール3における下方側に片寄って配置されている。
【0029】
走行部311における室R1側に配置される側壁部311bには、室R1側に向けて略水平方向に突出する上部突出片314及び下部突出片315が一体に設けられている。上部突出片314及び下部突出片315は、後述する樹脂カバー32の取り付け部となる部位であり、走行部311から室R1側に向けてほぼ同一の突出量で互いに平行に突出している。下部突出片315の先端は、上方に向けて直角に屈曲する立ち上がり部315aを有している。
【0030】
第1の固定片312は、ガイドレール本体31を下地材4に対して固定するための固定部であり、下地材4の側面4aに対して平行に配置される。ガイドレール3の上下方向に沿う第1の固定片312の幅は、下地材4の側面4aとほぼ同一幅に形成されている。第1の固定片312は、走行部311に対して下地材4側及び壁面100a側に離隔して配置され、走行部311の下面311eと同じ高さの位置から走行部311の高さのほぼ倍の高さの位置まで、下地材4の側面4aに沿って上下方向に延びている。
【0031】
第1の固定片312と走行部311とは、上部連結板316及び下部連結板317によって一体に連結されている。上部連結板316は、第1の固定片312の上下方向の中央部よりもやや上方寄りの部位から、走行部311の室R2側に配置される側壁部311bと上壁部311aとの連結部位にかけて、下り傾斜するように設けられている。下部連結板317は、走行部311の室R2側に配置される側壁部311bの下端部と第1の固定片312の下端部とを略水平に連結している。
【0032】
第1の固定片312の上端部には、第1の固定片312に対して直交するとともに、下地材4の上面4bに対して平行に延びる上端片318が設けられている。上端片318は、第1の固定片312の上端部から室R2側に向けて延びる第1片部318aと、第1の固定片312の上端部から室R1側に向けて延びる第2片部318bと、で構成される。第1片部318aは、下地材4の上面4bに当接している。第2片部318bは、後述する樹脂カバー32の取り付け部を構成する。
【0033】
第2の固定片313は、ガイドレール本体31を下地材4に対して固定するためのもう一つの固定部であり、第1の固定片312の下端部から、走行部311とは反対方向である室R2側に向けて、略水平方向に延びている。第2の固定片313は、第1の固定片312に対して直交し、且つ、下地材4の下面4cに対して平行に配置されている。第2の固定片313の見込み方向に沿う幅は、下地材4の下面4cの見込み方向に沿う幅とほぼ同一である。見込み方向とは、開口部104を挟んで室R1と室R2とに亘る方向であり、
図4における左右方向である。第2の固定片313は、下地材4の下面4cの全体を覆って目隠しするため、下面側から見たガイドレール3の意匠性も向上する。
【0034】
ガイドレール本体31は、第1の固定片312を下地材4の側面4aに当接させるとともに、上端片318の第1片部318aと第2の固定片313とによって、下地材4を上下から挟むように下地材4に取り付けられる。上枠材101の上面101aにおける室R1側に張り出した部位と下地材4の下面4cとの間には、第2の固定片313の厚みに相当する隙間108が形成されている。第2の固定片313は、この隙間108内に挿入されている。
【0035】
ガイドレール本体31が下地材4に対して取り付けられた後、第1の固定片312及び第2の固定片313が、固定部材であるねじSC2,SC3によってそれぞれ固定される。ねじSC2は、第1の固定片312における上部連結板316との連結部位よりも上方に配置される固定片上部312aに、壁面100aに対して垂直な方向から打ち込まれる。これによって、第1の固定片312は、下地材4の側面4aに対して固定される。ねじSC3は、第2の固定片313に、下方から上方に向けて打ち込まれる。これによって、第2の固定片313は、下地材4の下面4cに対して固定される。ねじSC2とねじSC3とは、ガイドレール本体31の長さ方向に間隔をおいて、複数本ずつ設けられる。
【0036】
このように、ガイドレール本体31は、互いに略直交する方向に打ち込まれるねじSC2,SC3によって、ガイドレール本体31の上部と下部とにおいて下地材4に対して固定される。これによって、ガイドレール本体31は、下地材4の壁面100aからの突出高さに応じた離隔距離で壁面100aから離隔して取り付けられる。ガイドレール本体31は、互いに直交する第1の固定片312と第2の固定片313とによって強固に固定されるため、耐荷重性が向上し。折戸2の荷重によって変形等を生じるおそれはない。ガイドレール本体31は、第1の固定片312及び第2の固定片313を含めて一体に押し出し形成されているため、第1の固定片312及び第2の固定片313にそれぞれねじSC2,SC3を打つだけで、走行部311を一体に有するガイドレール本体31を固定することができる。
【0037】
ガイドレール本体31において、第2の固定片313と下部連結板317とは、両者間に間隙や溝部等が形成されることなく、面一状に連続している。そのため、ガイドレール本体31を下面から観察した場合、レール部311c、下部連結板317及び第2の固定片313は、見込み方向に沿って面一状に連続する平坦面を形成する。走行部311の下部と第1の固定片312及び第2の固定片313とが、下部連結板317によって略水平方向に一体化されるため、ガイドレール3における走行部311の支持構造が強化され、ガイドレール3の耐荷重性がより向上する。
【0038】
樹脂カバー32は、
図5に示すように、ガイドレール本体31の室R1側に面する前面側を覆う前面カバー部321と、ガイドレール本体31の上面側を覆う上面カバー部322と、を一体に有するL型に形成されている。
【0039】
前面カバー部321は、ガイドレール本体31の第1の固定片312と平行に配置され、ガイドレール本体31の前面側を完全に覆い隠している。前面カバー部321の内面321aには、ガイドレール本体31の上部突出片314の位置に対応して、上部突出片314を室R1側から挟着する一対の挟着片324と、ガイドレール本体31の下部突出片315の位置に対応して、下部突出片315の下面側を室R1側から支持する支持片325と、が突設されている。
【0040】
上面カバー部322は、ガイドレール本体31の第2の固定片313と平行に配置されている。上面カバー部322は、前面カバー部321の上端から壁面100a側に向けて延び、ガイドレール本体31から下地材4の上面4bに亘るほぼ全体を覆い隠している。上面カバー部322の内面322aには、ガイドレール本体31の上端片318の第1片部318aを室R1側から挟着する挟着片323が設けられている。挟着片323は、上面カバー部322と平行に配置され、室R2側に向けて延びている。
【0041】
樹脂カバー32は、下地材4に固定されたガイドレール本体31に対して、室R1側から着脱可能に取り付けられる。具体的には、前面カバー部321の挟着片324が、ガイドレール本体31の上部突出片314を上下から挟着するとともに、前面カバー部321の支持片325が、ガイドレール本体31の下部突出片315の下面側を支持する。挟着片324と支持片325とは、ガイドレール本体31の上部突出片314と下部突出片315とを挟持する。ガイドレール本体31の下部突出片315の立ち上がり部315aは、前面カバー部321の内面321aに当接し、前面カバー部321を安定して支持する。更に、上面カバー部322の挟着片323が、ガイドレール本体31の上端片318の第2片部318bを挟着する。
【0042】
樹脂キャップ33,33は、ガイドレール本体31及び樹脂カバー32の両端面の形状に対応する矩形状に形成される。樹脂キャップ33,33は、
図1、
図2及び
図3に示すように、下地材4を含むガイドレール本体31及び樹脂カバー32の両端面を覆い隠すように着脱可能に取り付けられる。
【0043】
このようにして壁面100aにアウトセットされるガイドレール3に対して折戸2を取り付ける際は、少なくとも一方の樹脂キャップ33を取り付ける前のガイドレール本体31の走行部311に対して、折戸2の吊車25,27をスライドさせながら挿入するとともに、ガイド円板26を走行部311のレール部311c,311c間の溝部311dに嵌合させる。折戸2は、2つの吊車25,27によって上吊りされるため、走行部311の長さ方向に沿って折戸2を移動させることが可能であり、折戸2の位置調整を容易に行うことができる。折戸2の位置調整が完了した後、戸尻側の吊車27を、走行部311内で移動不能となるように、図示しない固定金具等を用いて固定するとともに、戸尻側の下端部の軸部28を、床面FL上の軸受け281に係合させる。
【0044】
ガイドレール3に取り付けられた折戸2は、
図3に示すように、折戸2の戸先扉体21、中間扉体23、戸尻扉体22を直列状に展開させることによって、開口部104を閉鎖する。戸先扉体21は、新設縦枠材105の見込み面に対向するように配置され、戸尻扉体22は、既設の縦枠材103を室R1側から覆うように配置される。ガイドレール3は、下地材4を介して壁面100aから室R1側に突出しているため、開口部104を閉鎖した折戸2は、壁面100aから離隔して配置される。そのため、室R1側に張り出すように設けられている縦枠材102,103と折戸2との干渉は容易に回避される。下地材4を使用してガイドレール3を取り付けることによって、壁面100aからの折戸2の離隔の程度、即ち、縦枠材102,103との干渉回避の程度を容易に調整することができる。ガイドレール3を壁面100aから離隔させることによって生じる折戸2の戸先扉体21と縦枠材102との間の隙間は、新設縦枠材105によって塞がれる。折戸2の戸尻扉体22と壁面100aとの間の隙間は、スペーサ材107によって塞がれる。
【0045】
折戸2の開放動作は次のようにして行われる。折戸2のハンドル211を室R1側に向けて操作すると、
図7Aに示すように、戸先扉体21が、可動回動軸を構成する吊車25の第1回動軸253を中心に室R1側に回動する。戸先扉体21の回動動作は、ヒンジ部24aを介して中間扉体23に伝達され、中間扉体23も、可動回動軸を構成する第3回動軸261を中心に室R1側に回動する。これによって、戸先扉体21と中間扉体23とが、室R1側に突出するように折り畳まれ始める。更に、中間扉体23の回動動作は、ヒンジ部24bを介して戸尻扉体22に伝達され、戸尻扉体22も、第2回動軸273及び軸部28を中心に室R1側に回動する。これによって、中間扉体23と戸尻扉体22とが、室R1側に突出するように折り畳まれ始める。
【0046】
戸尻扉体22の第2回動軸273及び軸部28は固定回動軸を構成するため、ガイドレール3に対する戸尻扉体22の回動軸の位置は不動である。そのため、戸先扉体21は、吊車25が走行部311内を戸尻側に向けて走行することによって、回動しながら戸尻扉体22に向けて移動する。これに伴い、中間扉体23は、ガイド円板26が溝部311dを戸尻側に向けて摺動することによって、回動しながら戸尻扉体22に向けて移動する。その結果、
図7Bに示すように、戸先扉体21、戸尻扉体22及び中間扉体23は、互いに平行に重なり合うように折り畳まれ、開口部104を開放する。このとき、戸先扉体21と中間扉体23のそれぞれの可動回動軸である第1回動軸253、第3回動軸261は、互いに近接する側の端部に配置されるため、
図7Bに示すように、開口部104を開放した折戸2は、ガイドレール3から室R1側に向けて突出するように折り畳まれ、室R2側に大きく突出することはない。
【0047】
開口部104を開放した折戸2は、室R2側に大きく突出することはないため、開口部104に対するガイドレール3の長さ、折戸2の各扉体の大きさ、ストッパの位置等を適宜調整することにより、
図7Cに示すように、折戸2の全開時に、折り畳まれた折戸2が開口部104の開口幅内に重ならないようにすることも可能である。これによれば、折戸2の全開時に開口部104を最大限有効に活用できるため、例えば車いす、介護ベッド等の移動も容易に行える。
【0048】
図8に示すように、折戸2の戸尻扉体22が開閉動作する際、第2回動軸273よりも更に戸尻側の端部22aは、第2回動軸273を中心にして二点鎖線で示す回動軌道を形成する。この回動軌道は、実線で示すように開口部104を閉鎖した状態の戸尻扉体22よりも壁面100a側に突出する。しかし、ガイドレール3が下地材4を介して壁面100aから離隔して取り付けられることによって、戸尻扉体22と縦枠材103の端部103aとの間には、相互干渉を避けることができる間隙Gが設けられるため、縦枠材103や縦枠材103を挟んで開口部104と反対側の壁面100aと干渉することはなく、折戸2の開閉動作に支障を来たすおそれはない。
【0049】
スペーサ材107は、戸尻扉体22の端部22aに対向する端面に、戸尻扉体22の端部22aの回動軌道を避けるように凹設された凹部107aを有する。これによって、スペーサ材107は、可及的に戸尻扉体22の端部22a及び縦枠材103に近接させることができる。スペーサ材107の外側面107bは、開口部104を閉鎖した状態の戸尻扉体22の端面22bと面一状になるように配置されている。そのため、
図1、
図3及び
図8に示すように、室R1側から折戸装置1を観察した際に、スペーサ材107が目視されることはなく、折戸装置1の見栄えを更に良好にすることができる。更に、折戸2の戸尻扉体22とスペーサ材107との間に異物や指等が挟まりにくい効果もある。
【0050】
図5に示すように、ガイドレール3は、走行部311の下面311eから上枠材101の室R1側に面する側面101bに亘って略水平な平坦面を有するため、折戸2と上枠材101の側面101bとの間の幅Wに亘る空間には、ガイドレール3から下方に突出するものが何も存在していない。そのため、戸先扉体21、戸尻扉体22及び中間扉体23の回動軌道が、ガイドレール3と干渉することはない。その結果、折戸2とガイドレール3との間を可及的に近接させて両者間の隙間を小さくすることが可能であり、隙間からガイドレール3の固定部が視認されにくくなり、折戸装置1の意匠性も向上する。
【0051】
図9に示すように、壁面100aと上枠材101の側面101bとが面一状に配置される場合にも、下地材4を介してガイドレール3をアウトセットすることが可能である。この場合、下地材4は、壁面100aから上枠材101の側面101bにかけて取り付けられてもよい。
【0052】
以上の実施形態では、開口部104を形成する既設枠を取り外すことなく、折戸2を開口部104にアウトセットするように構成される折戸装置1を例示した。しかし、折戸装置1は、リフォームの際に開口部104を形成する既設枠の一部又は全部を取り外して折戸2をアウトセットしてもよいし、新築の建物の開口部にも取り付け可能である。
【0053】
折戸装置1に使用される折戸2は、少なくとも戸先扉体21及び戸尻扉体22を有していればよく、3枚の扉体によって構成されるものに限定されない。
【符号の説明】
【0054】
1 折戸装置
2 戸体
21 戸先扉体
22 戸尻扉体
25,27 吊車
3 ガイドレール
311 走行部
311e (走行部の)下面
312 第1の固定片
313 第2の固定片
4 下地材
4a (下地材の)側面
4c (下地材の)下面
100a 壁面
104 開口部
SC2,SC3 固定部材