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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-02
(45)【発行日】2023-08-10
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/70 20060101AFI20230803BHJP
   A47C 7/28 20060101ALI20230803BHJP
【FI】
B60N2/70
A47C7/28 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019189751
(22)【出願日】2019-10-16
(65)【公開番号】P2021062825
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小堀 建一
(72)【発明者】
【氏名】西井 渉
(72)【発明者】
【氏名】古田 将也
(72)【発明者】
【氏名】仲澤 孝俊
(72)【発明者】
【氏名】御園生 大嗣
(72)【発明者】
【氏名】水越 敏充
(72)【発明者】
【氏名】中島 啓
(72)【発明者】
【氏名】長友 広光
(72)【発明者】
【氏名】福田 優樹
【審査官】松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-161916(JP,A)
【文献】特開2014-42855(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0106136(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00-2/90
A47C 7/02,7/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッション及びシートバックを備える乗物用シートであって、
前記シートクッション及び/又は前記シートバックが、
第1方向に互いに離間して配置され、前記第1方向に直交する第2方向に延在する2本の第1フレームと、
前記第2方向に互いに離間して配置され、前記第1フレーム間にて前記第1方向に延在する2本の第2フレームと、
前記第1方向に互いに離間して、前記第2フレーム間に架設された複数の架設線材、及び、前記架設線材に支持され、かつ前記架設線材間に延設された部分を含む板状のベース部を含み、乗員の荷重を支持する受圧部材とを備え、
前記ベース部は、前記第1方向に延在して前記架設線材に連結する第1突条を含み、
少なくとも一部の前記第1突条は、前記架設線材の近傍に低剛性部を有することを特徴とする乗物用シート。
【請求項2】
前記ベース部は、前記第1フレーム及び前記第2フレームにより画定される平面に対して略平行なベース本体部と、前記ベース本体部の前記第1方向の端縁部から前記乗員側に向けて傾斜するように延出するベース傾斜部とを含み、
少なくとも一部の前記第1突条は、前記ベース本体部から前記ベース傾斜部に渡って延在することを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項3】
前記架設線材は、少なくとも部分的に前記ベース傾斜部における前記ベース本体部の近傍に配置された側部架設線材を含み、
前記低剛性部は、前記第1突条における前記ベース傾斜部の基端から前記側部架設線材までの間に設けられたことを特徴とする請求項2に記載の乗物用シート。
【請求項4】
前記ベース部は、前記第1突条の近傍に設けられた複数の貫通孔を有することを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の乗物用シート。
【請求項5】
前記ベース本体部は、前記第1突条に交差するように前記第2方向に延在する第2突条を含み、
前記低剛性部は、前記第2突条よりも、前記第1方向における外側に位置することを特徴とする請求項2又は3に記載の乗物用シート。
【請求項6】
前記第1突条及び前記第2突条は、それぞれ複数設けられ、
前記ベース部は、前記第1突条及び前記第2突条に囲まれた複数の枠内に、貫通孔を有することを特徴とする請求項5に記載の乗物用シート。
【請求項7】
前記ベース本体部は、第1平板部と、前記第1平板部の前記第2方向の端縁に連結し、前記第1平板部に対して角度をなす第2平板部とを含み、
前記第2突条は、前記第1平板部と前記第2平板部との間で分割されていることを特徴とする請求項5又は6に記載の乗物用シート。
【請求項8】
前記ベース部は、部分的に互いに対向する縁によって画定される開口を有するとともに、前記縁の一方から前記乗員とは反対側に向かった後、前記縁の他方の側に向かって延出し、線状の部材を引っ掛けて保持可能な引掛片を含むことを特徴とする請求項1~7の何れか一項に記載の乗物用シート。
【請求項9】
前記第1突条は、前記ベース部における前記乗員を支持する面とは反対側の面に設けられたことを特徴とする請求項1~8の何れか一項に記載の乗物用シート。
【請求項10】
前記低剛性部は、前記第1突条の先端から基端に向かう切欠であることを特徴とする請求項1~9の何れか一項に記載の乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フレームに架設されて乗員を支持する受圧部材を備えた乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、乗物用シートにおいて、シートクッションフレームに架設されて乗員を支持する受圧部材を、板状の樹脂部材によって形成したものが記載されている。特許文献1に記載の受圧部材は、ワイヤーとワイヤー被覆部につながったリブを含むことにより、高い剛性を得ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-161913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
受圧部材には、乗員を安定して支持するために高い剛性が求められる一方で、乗員が快適に座れるように適度な可撓性を有することが求められる。特許文献1に記載の受圧部材は高い剛性を有するものの、可撓性については改善が望まれていた。このような問題に鑑み、本発明は、必要な剛性を確保しつつ適度な可撓性を有する受圧部材を備える乗物用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、シートクッション(2)及びシートバック(3)を備える乗物用シート(1)であって、前記シートクッション及び/又は前記シートバックが、第1方向(後述の実施形態においては左右方向)に互いに離間して配置され、前記第1方向に直交する第2方向(後述の実施形態においては前後方向)に延在する2本の第1フレーム(8)と、前記第2方向に互いに離間して配置され、前記第1フレーム間にて前記第1方向に延在する2本の第2フレーム(9)と、前記第1方向に互いに離間して、前記第2フレーム間に架設された複数の架設線材(11)、及び、前記架設線材に支持され、かつ前記架設線材間に延設された部分を含む板状のベース部(12)を含み、乗員の荷重を支持する受圧部材(6)とを備え、前記ベース部は、前記第1方向に延在して前記架設線材に連結する第1突条(18)を含み、少なくとも一部の前記第1突条は、前記架設線材の近傍に低剛性部(19)を有することを特徴とする。
【0006】
この構成によれば、互いに連結する架設線材及び第1突条によって高くなり過ぎた剛性が、低剛性部を設けることによって低減でき、必要な剛性を確保しつつ適度な可撓性を有する受圧部材を得ることができる。
【0007】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、上記構成において、前記ベース部は、前記第1フレーム及び前記第2フレームにより画定される平面に対して略平行なベース本体部(14)と、前記ベース本体部の前記第1方向の端縁部から前記乗員側に向けて傾斜するように延出するベース傾斜部(15)とを含み、少なくとも一部の前記第1突条は、前記ベース本体部から前記ベース傾斜部に渡って延在することを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、ベース本体部及びベース傾斜部間に延在する第1突条によって、ベース本体部及びベース傾斜部間の剛性を高めることができる。
【0009】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、上記構成において、前記架設線材は、少なくとも部分的に前記ベース傾斜部における前記ベース本体部の近傍に配置された側部架設線材(11b)を含み、前記低剛性部は、前記第1突条における前記ベース傾斜部の基端から前記側部架設線材までの間に設けられたことを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、低剛性部が、ベース傾斜部とベース本体部との互いの境界ではなく、ベース傾斜部の基端から側部架設線材までの間に設けられることにより、剛性が低下し過ぎることを抑制できるとともに、ベース傾斜部のベース本体部に対する可撓性を向上させ、剛性と可撓性とのバランスをとることができる。
【0011】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、上記構成の何れかにおいて、前記ベース部は、前記第1突条の近傍に設けられた複数の貫通孔(21)を有することを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、貫通孔によって、軽量化されるとともに通気性が向上し、貫通孔及び第1突条によってベース部の剛性及び可撓性を調整できる。
【0013】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、上記のベース本体部を備える構成の何れかにおいて、前記ベース本体部は、前記第1突条に交差するように前記第2方向に延在する第2突条(20)を含み、前記低剛性部は、前記第2突条よりも、前記第1方向における外側に位置することを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、第2突条により、ベース本体部における第1方向の内側の剛性を向上できるとともに、低剛性部によって、ベース部における第1方向の外側の剛性及び可撓性を調整できる。
【0015】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、上記構成において、前記第1突条及び前記第2突条は、それぞれ複数設けられ、前記ベース部は、前記第1突条及び前記第2突条に囲まれた複数の枠内に、貫通孔(21)を有することを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、貫通孔によって、軽量化されるとともに通気性が向上し、貫通孔、第1突条、及び第2突条によって、ベース部の剛性及び可撓性を調整できる。
【0017】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、上記の第2突条を備える構成の何れかにおいて、前記ベース本体部は、第1平板部(14a)と、前記第1平板部の前記第2方向の端縁に連結し、前記第1平板部に対して角度をなす第2平板部(14b)とを含み、前記第2突条は、前記第1平板部と前記第2平板部との間で分割されていることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、第2突条が存在する部分の周辺で剛性を高めることができ、第2突条が第1平板部と第2平板部との間で分割されていることにより、第2平板部の第1平板部に対する可撓性を向上できる。
【0019】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、上記構成の何れかにおいて、前記ベース部は、部分的に互いに対向する縁によって画定される開口(23)を有するとともに、前記縁の一方から前記乗員とは反対側に向かった後、前記縁の他方の側に向かって延出し、線状の部材を引っ掛けて保持可能な引掛片(24)を含むことを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、引掛片は、裏面側に延出するため乗員の座り心地に影響を与えず、作業員は、裏面側に保持された線状の部材を開口から目視で確認できる。
【0021】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、上記構成の何れかにおいて、前記第1突条は、前記ベース部における前記乗員を支持する面とは反対側の面に設けられたことを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、第1突条は、裏面側に設けられるため乗員の座り心地に影響を与えない。
【0023】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、上記構成の何れかにおいて、前記低剛性部は、前記第1突条の先端から基端に向かう切欠であることを特徴とする。
【0024】
この構成によれば、低剛性部が切欠であるため、低剛性部を容易に成形することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、互いに連結する架設線材及び第1突条によって高くなり過ぎた剛性が、低剛性部を設けることによって低減でき、必要な剛性を確保しつつ適度な可撓性を有する受圧部材を得ることができる。
【0026】
本発明の少なくともいくつかの実施形態によれば、ベース本体部及びベース傾斜部間に延在する第1突条によって、ベース本体部及びベース傾斜部間の剛性を高めることができる。
【0027】
本発明の少なくともいくつかの実施形態によれば、低剛性部が、ベース傾斜部とベース本体部との互いの境界ではなく、ベース傾斜部の基端から側部架設線材までの間に設けられることにより、剛性が低下し過ぎることを抑制できるとともに、ベース傾斜部のベース本体部に対する可撓性を向上させ、剛性と可撓性とのバランスをとることができる。
【0028】
本発明の少なくともいくつかの実施形態によれば、貫通孔によって、軽量化されるとともに通気性が向上し、貫通孔及び第1突条によってベース部の剛性及び可撓性を調整できる。
【0029】
本発明の少なくともいくつかの実施形態によれば、第2突条により、ベース本体部における第1方向の内側の剛性を向上できるとともに、低剛性部によって、ベース部における第1方向の外側の剛性及び可撓性を調整できる。
【0030】
本発明の少なくともいくつかの実施形態によれば、貫通孔によって、軽量化されるとともに通気性が向上し、貫通孔、第1突条、及び第2突条によって、ベース部の剛性及び可撓性を調整できる。
【0031】
本発明の少なくともいくつかの実施形態によれば、第2突条が存在する部分の周辺で剛性を高めることができ、第2突条が第1平板部と第2平板部との間で分割されていることにより、第2平板部の第1平板部に対する可撓性を向上できる。
【0032】
本発明の少なくともいくつかの実施形態によれば、引掛片は、裏面側に延出するため乗員の座り心地に影響を与えず、作業員は、裏面側に保持された線状の部材を開口から目視で確認できる。
【0033】
本発明の少なくともいくつかの実施形態によれば、第1突条は、裏面側に設けられるため乗員の座り心地に影響を与えない。
【0034】
本発明の少なくともいくつかの実施形態によれば、低剛性部が切欠であるため、低剛性部を容易に成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】実施形態に係る乗物用シートの斜視図
図2】実施形態に係るフレーム及び受圧部材の斜視図
図3】実施形態に係る受圧部材の底面図
図4図3におけるIV-IV線に沿った断面図
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、前後、左右及び上下の方向は、車両の前後、左右及び上下の方向に従う。
【0037】
図1に示すように、シート1は、車両の運転席又は助手席として使用され、シートクッション2、シートバック3及びヘッドレスト4を有する。また、図1及び図2に示すように、シートクッション2は、スライドレール(図示せず)を介して車室の床に支持される枠形のフレーム5と、フレーム5に架設された受圧部材6と、フレーム5及び受圧部材6の上に配置されたウレタンフォーム等からなる可撓性のパッド(図示せず)と、パッドを覆う表皮材7とを備える。
【0038】
図2及び図3に示すように、フレーム5は、左右方向に互いに離間して配置され、前後方向に延在する2本の第1フレーム8と、前後方向に互いに離間して配置され、2本の第1フレーム8間にて左右方向に延在する2本の第2フレーム9と、その大部分が前方の第2フレーム9よりも前方に位置するパンフレーム10とを含む。各々の第1フレーム8は、板金から形成された前後に長い長尺材であり、上下にフランジが形成されている。各々の第2フレーム9は、左右方向に延在する金属製のパイプを含む。パンフレーム10は、板金から形成され、概ね座面の前部に沿った表面を有する。
【0039】
図2図4に示すように、受圧部材6は、概ね、枠形のフレーム5内に位置するようにフレーム5に支持され、パンフレーム10よりも後方に位置し、表皮材7及びパッドを介して乗員の荷重を弾発的に支持する。受圧部材6は、左右方向に互いに離間して、2本の第2フレーム9間に架設された複数の架設線材11と、架設線材11に支持され、かつ架設線材11間に延設された部分を含む板状のベース部12とを含む。ベース部12を構成する素材は、概ね左右方向に延在してベース部12を補強する補強線材13と樹脂とを含む。架設線材11及び補強線材13は、樹脂よりも剛性が高い部材であり、例えば、金属製のワイヤーである。受圧部材6は、架設線材11及び補強線材13を金型内に挿入してその回りに樹脂を注入して両者を一体化するインサート成形で製造されてもよい。受圧部材6は、左右方向に直交する平面に対して、略鏡像対称形をなす。
【0040】
架設線材11は、左右方向の中央に位置する中央架設線材11aと、中央架設線材11aよりも左右それぞれの外方に位置する側部架設線材11bとを含む。架設線材11は、前端部で前方の第2フレーム9に上方から係合し、そこから後方に向かって延出した後、屈曲してやや後傾して上方に延出し、後方の第2フレーム9に上方から係合している。
【0041】
ベース部12は、第1フレーム8及び第2フレーム9により画定される平面に対して略平行なベース本体部14と、ベース本体部14の後部の左右方向の端縁部から乗員側(上側)に向けて傾斜するように延出するベース傾斜部15と、ベース本体部14及びベース傾斜部15の後端からやや後傾して上方に延出する立壁部16とを含む。ベース本体部14が、乗員の臀部を下方から支持し、ベース傾斜部15が乗員の臀部を側方から支持する。
【0042】
ベース本体部14及びベース傾斜部15は、架設線材11の略前後方向に延在する部分に支持され、立壁部16は、側部架設線材11bの後側の、やや後傾して上下方向に延在する部分に連結されている。補強線材13は、ベース本体部14及びベース傾斜部15に含まれる。ベース本体部14及びベース傾斜部15の裏面側には、架設線材11及び補強線材13を被覆してビード状に盛り上がった樹脂による被覆部17が形成されている。なお、ベース本体部14及びベース傾斜部15において、乗員を支持する上方を向いた面を表面、その反対、すなわち下方を向いた面を裏面と記す。側部架設線材11bの前後方向に延在する部分の後部が、ベース傾斜部15における基端近傍部分(左右方向におけるベース本体部14に近接する部分)を通り、前後方向に延在する部分の前部がベース本体部14を通る。
【0043】
ベース本体部14及びベース傾斜部15の裏面には、左右方向に延在する第1突条18が設けられ、その周辺部分の剛性を向上させている。第1突条18は、ベース部12の前後方向の中間部に6本設けられ、前後に等間隔に互いに離間している。前方からの1本目及び2本目の第1突条18は、中央架設線材11aの被覆部17から、ベース本体部14の左右方向の中間位置まで延出している。左右を合わせると、1本目及び2本目の第1突条18は、ベース本体部14の左右方向幅の1/3~2/3程度の長さを有する。3~6本目の第1突条18は、中央架設線材11aの被覆部17から延出し、側部架設線材11bのベース傾斜部15を通過している部分に被覆部17を介して連結している。3~6本目の第1突条18は、側部架設線材11bの近傍に、好ましくは、ベース傾斜部15の基端から側部架設線材11bまでの間に、さらに好ましくは、ベース傾斜部15の基端よりも側部架設線材11bに近い位置に、低剛性部19を有する。低剛性部19は、容易に形成できるように、第1突条18の先端から基端に向かっての切欠とすることが好ましいが、切欠に代えて又は加えて、第1突条18の幅を薄肉としてもよい。低剛性部19が設けられた部分は剛性が低下し、受圧部材6は、低剛性部19を通り第1突条18に直交してベース部沿った線を中心にして折れ曲がる方向に撓みやすくなる。
【0044】
ベース本体部14の裏面には、前後方向に延在する第2突条20が設けられ、その周辺部分の剛性を向上させている。第1突条18及び第2突条20は、互いに交差して格子状の枠を構成する。前方から3本目と4本目の第1突条18の間には、第2突条20は設けられていない。ベース本体部14は、後部に位置する第1平板部14aと、第1平板部14aに対してわずかに上方に傾斜するように第1平板部14aの前端から延出する第2平板部14bとを含む。第1平板部14aと第2平板部14bとの境界は、前方から3本目と4本目の第1突条18の間に位置する。そのため、第2突条20が第1平板部14aと第2平板部14bとの間で連続せずに分割されており、受圧部材6は、第1平板部14aと第2平板部14bとの境界で撓み易い。また、その境界の前方及び後方の部分は、第2突条20が存在するため、撓み難い。
【0045】
ベース本体部14には、第1突条18及び第2突条20に近接して、円形の輪郭の複数の貫通孔21が形成されている。複数の貫通孔21は、互いに、前後左右に等間隔で配置される。第1突条18及び第2突条20によって格子状の枠が形成されている部分では、その枠の中央に貫通孔21が設けられている。前方から1番目及び2番目の第1突条18の前方、並びに3番目及び4番目の第1突条18の間には、格子状の枠はないが貫通孔21が形成されている。貫通孔21を設けることによって、受圧部材6が軽量化され、通気性が向上する。また、貫通孔21を設けることによって低下した剛性は、第1突条18及び第2突条20によって補われ、剛性と可撓性とが調整される。
【0046】
ベース本体部14の第1平板部14a及び立壁部16の間には、下縁が第1平板部14aに連結し、後縁が立壁部16の前面に連結した側面視で三角形状の平板からなるリブ22が設けられ、両者間を補強している。
【0047】
第2平板部14bにおける、前方から1番目及び2番目の第1突条18の左右方向の外方には、引掛部開口23及び引掛片24が設けられている。引掛部開口23を画定する縁は、互いに対向する前縁と後縁とを含む。引掛片24は、引掛部開口23を画定する後縁から裏面側に向かった後、引掛部開口23を画定する前縁側に向かって第2平板部14bに略平行に延出する。引掛片24の成形が容易になるように、引掛片24の側縁及び前縁は、第2平板部14bに直交する方向から見て、引掛部開口23を画定する側縁及び前縁よりも内方に位置する。引掛片24の上面と、第2平板部14bの主要部の裏面とが協働してワイヤーハーネス等の線状の部材を挟持することによって、引掛片24は、線状の部材を保持できる。また、シート1(図1参照)の組み立て中に、作業員が、線状の部材が引掛片24に保持されていることを、引掛部開口23から確認できる。引掛部開口23を設けることによって生じる剛性の低下は、その周囲の第1突条18及び第2突条20によって補われる。引掛片24は、第2平板部14bの裏面側に延出しているため、乗員のシート1(図1参照)への座り心地を低下させない。なお、引掛部開口23及び引掛片24は、第1平板部14aや、ベース傾斜部15に設けてもよい。また、引掛片24は、引掛部開口23の前縁や側縁から裏面側に向かった後、その縁に対向する縁の側に向かって延出してもよい。
【0048】
また、第1平板部14aの後部には、表皮材7の端部に取り付けられた複数のフック(図示せず)を係止するとともに受圧部材6の撓みを調整するフック係止孔25が設けられている。第2平板部14bの左右方向の中央には、乗員の着座を検出する圧力センサ(図示せず)が載置されるセンサ載置部26が設けられ、その左右には、シート1(図1参照)の表面に対して空気を吸引又は送風して湿度を調整するための空気用開口27が設けられている。また、ベース本体部14及びベース傾斜部15には、ワイヤーハーネス等の線状部材28を把持するクリップ29を取り付けるためのクリップ取付孔30が設けられている。
【0049】
第1突条18が架設線材11に交差する部分では、剛性が高くなりすぎるおそれがあったが、第1突条18に低剛性部19を設けることによって、剛性を調整し、適度な可撓性を得ることができる。第1突条18における側部架設線材11bの近傍に低剛性部19を設けることによって、ベース傾斜部15がベース本体部14に対して撓み易くなり、ベース傾斜部15が乗員の臀部の側方を支持し易くなり、座り心地が向上する。また、第1平板部14a及び第2平板部14b間で、第2突条20が分割されていることにより、第2平板部14bが第1平板部14aに対して撓み易くなり、座り心地が向上する。このように、受圧部材6は、必要な剛性を確保しつつ適度な可撓性を有する。
【0050】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。第1フレーム8が左右方向に延在し、第2フレーム9が前後方向に延在してもよい。フレーム5及び受圧部材6は、シートバック3に適用されてもよい。シート1は、車両以外の乗物、例えば飛行機等のシートに適用してもよい。
【符号の説明】
【0051】
1:シート(乗物用シート)
2:シートクッション
3:シートバック
6:受圧部材
8:第1フレーム
9:第2フレーム
11:架設線材
11b:側部架設線材
12:ベース部
14:ベース本体部
14a:第1平板部
14b:第2平板部
15:ベース傾斜部
18:第1突条
19:低剛性部
20:第2突条
21:貫通孔
23:引掛部開口(開口)
24:引掛片
図1
図2
図3
図4