IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社内田洋行の特許一覧

特許7324690収納装置の把手ユニット及びこれを備えるラッチ装置
<>
  • 特許-収納装置の把手ユニット及びこれを備えるラッチ装置 図1
  • 特許-収納装置の把手ユニット及びこれを備えるラッチ装置 図2
  • 特許-収納装置の把手ユニット及びこれを備えるラッチ装置 図3
  • 特許-収納装置の把手ユニット及びこれを備えるラッチ装置 図4
  • 特許-収納装置の把手ユニット及びこれを備えるラッチ装置 図5
  • 特許-収納装置の把手ユニット及びこれを備えるラッチ装置 図6
  • 特許-収納装置の把手ユニット及びこれを備えるラッチ装置 図7
  • 特許-収納装置の把手ユニット及びこれを備えるラッチ装置 図8
  • 特許-収納装置の把手ユニット及びこれを備えるラッチ装置 図9
  • 特許-収納装置の把手ユニット及びこれを備えるラッチ装置 図10
  • 特許-収納装置の把手ユニット及びこれを備えるラッチ装置 図11
  • 特許-収納装置の把手ユニット及びこれを備えるラッチ装置 図12
  • 特許-収納装置の把手ユニット及びこれを備えるラッチ装置 図13
  • 特許-収納装置の把手ユニット及びこれを備えるラッチ装置 図14
  • 特許-収納装置の把手ユニット及びこれを備えるラッチ装置 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-02
(45)【発行日】2023-08-10
(54)【発明の名称】収納装置の把手ユニット及びこれを備えるラッチ装置
(51)【国際特許分類】
   E05B 1/00 20060101AFI20230803BHJP
   E05C 3/14 20060101ALI20230803BHJP
   E05C 1/10 20060101ALI20230803BHJP
   E05B 3/00 20060101ALI20230803BHJP
【FI】
E05B1/00 311K
E05C3/14
E05C1/10
E05B1/00 311H
E05B3/00 E
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019207490
(22)【出願日】2019-11-15
(65)【公開番号】P2021080681
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000152228
【氏名又は名称】株式会社内田洋行
(74)【代理人】
【識別番号】100107113
【弁理士】
【氏名又は名称】大木 健一
(72)【発明者】
【氏名】中村 馨
(72)【発明者】
【氏名】千葉 保明
(72)【発明者】
【氏名】安達 青樹
【審査官】秋山 斉昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-62751(JP,A)
【文献】特開平10-82231(JP,A)
【文献】実開平6-18582(JP,U)
【文献】特開平10-317758(JP,A)
【文献】特開2013-231332(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00-3/10
E05B 65/44
E05C 1/00-3/40
A47B 95/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
収納装置の開閉可能な戸を開くときに操作する把手と、前記戸に取り付けられ、前記把手を収納するハウジングとを備え、
前記把手は、前記戸のラッチ機構に接続され、操作されたときにラッチを解除するものであり、
前記把手の前記戸の開く方向へ傾ける動き、及び、引き出す動きが可能に構成され、
ラッチの係合爪をラッチの解除方向へ回動させるための支承、及び、前記係合爪をラッチの解除方向へ移動させるための案内が設けられていることを特徴とする把手ユニット。
【請求項2】
請求項1記載の前記把手ユニットと、ラッチ受けに係合する前記係合爪と、前記把手の操作に基づき動く作用部とを備え、
前記作用部は、前記把手の取付部と、前記案内の前記支承に回動自在に係合する軸部とが設けられ、
前記作用部は、前記把手が取り付けられ、前記軸部が前記支承に係合した状態で、前記把手を前記戸の開く方向へ傾ける動きを受けて前記係合爪をラッチの解除方向へ動かすことを特徴とするラッチ装置。
【請求項3】
請求項1記載の前記把手ユニットと、ラッチ受けに係合する前記係合爪と、前記把手の操作に基づき動く作用部と、前記作用部の動きに基づき前記係合爪をラッチの解除方向へ動かす変換機構とを備え、
前記係合爪は、前記案内に係合しラッチの解除方向に動くための係合部が設けられ、
前記作用部は、前記把手の取付部と、前記把手を前記戸の開く方向へ引き出す動きの案内に係合し前記把手を操作したときに前記把手を引き出す方向に動くための係合部とが設けられ、
前記変換機構は、前記作用部の前記把手を引き出す方向の動きを変換して前記係合爪に伝達し、前記係合爪をラッチの解除方向へ移動させることを特徴とするラッチ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロッカーや書類棚のような戸(扉)付きの収納装置の前面開口部に開閉自在に装着される戸のラッチ装置あるいは引き出し用のラッチ装置であって、閉止時に筐体の被係合部と係脱しうるラッチ機構と、このラッチ機構を被係合部と係脱させうるように操作しうる戸の前面に設けた把手とを備える装置に関する。
【背景技術】
【0002】
収納装置の開閉自在の戸として次の2種類がある。
(1)開口部の上部に横に渡した部材と下部に横に渡した部材とにそれぞれ設けられた溝を滑らせて、左右に開閉する引戸。
(2)枢(戸の端の上下につけた突起をかまちの穴にさし込んで開閉させるための装置)または蝶番などの装置によって開閉する戸である開き戸。戸は枢軸を中心として回転する。
また、収納装置として、(3)机やタンスなどに取りつけて抜き差しのできるように造った箱型の引き出しがある。
引戸、開き戸、引き出しにはラッチ装置(掛け金)を設けて不用意に開かないようにしている。開き戸用のラッチ装置と引き出し用のラッチ装置は、構造上類似していて、同じラッチ装置を適用できる(例えば特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3745307号公報 開き戸用のラッチ装置が記載されている。分電盤ボックスの扉体に設置されるものであり、固定枠に対して開閉可能に支持された扉体に取り付けられるハウジング13と、前記ハウジングに前進後退可能に納められたラッチ部材14と、前記ハウジング内にあって前記ラッチ部材を前進方向へ付勢するバネ手段とを備える。操作レバー20を動かして解錠する。解錠方向(操作レバー20を動かす方向)が一通り(横方向)で、扉体を開く方向(手前へ引く)と異なる。
【文献】特許第3758621号公報 引戸用ラッチ付き引き手が記載されている。引戸側端とこの側端が当接する戸枠の一方にラッチ爪31を備えるとともに他方にラッチ爪と係合するラッチ受け9を備え、引き手部10にはラッチ爪とラッチ受けの係合を解除する引き手枠11を備える。引戸を開く際には、引き手枠11に手先を掛けるとその動作に伴ってラッチ片30を引き手枠内に押し込む結果、ラッチ片30が後方回動しラッチ爪31の係合が解除される。
【文献】特許第6025385号公報 引戸用のロック機構付き把手装置が記載されている。引戸側端が当接する戸枠に係合溝30を設け、操作面20と係合爪22とを含むラッチ21を備える把手装置10を引戸側端に設ける。引戸を開く際には、操作面20に手先を掛けるとその動作に伴ってラッチ21が回動し係合溝30の係合が解除される。
【文献】特許第5291173号公報 開き戸と引き出しのロックに用いられるラッチ装置が記載されている。キャビネットやロッカー等を複数上下・左右に並べた収納システムにおいて、把手をいずれの方向からも操作可能であること、すべての把手を同一デザインの同一構造とすることを課題としている。把手1を中央部の支点を中心として上下左右に傾動可能に装着し、前記把手が嵌合する窓孔を設けた作動板を枢着し、前記把手の外周部に、前記作動板を不作動位置から作動位置へ押動しうるようにした突片25を設け、前記把手と作動板とを、不作動位置に向けて付勢する付勢手段を設け、さらに、前記作動板の作動位置側への移動に連動して、前記ラッチを、筐体の被係合部から離脱する非係合位置へ移動させる連係手段24を設けた。
【文献】特開2019-107265号公報 開き戸と引き出しのロックに用いられるラッチ装置が記載されている。ハンドルケース40に少なくともハンドル体50を回動可能に軸支し、錠機構70,80を保持可能な施錠装置ケース60をハンドルケースとは別個に形成し、ハンドルケースに施錠装置ケースを着脱可能にせしめるとともに、施錠装置ケースを、ハンドルケースのハンドルケースに収められるハンドル体の回動軸の回動軸方向における一方端側と他方端側、あるいは両端側に選択的に組み合わせ可能とし、ハンドルケース単体での使用と施錠装置付きハンドルケースとを選択可能にした。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1~5記載の技術には次のような問題点があった。
【0005】
従来の戸のラッチ装置は、取り付けられる戸が開き戸用と、引戸用にそれぞれ専用のものが用意されていた(特許文献1、2、3)。両者はデザイン、構造及び作用の点で異なり、共用することはできなかった。
【0006】
開き戸用のラッチ装置では、戸を開くための操作部が開き戸を開く方向である手前に引くことでラッチを解除するようになっているものが多い。特許文献1のようにラッチの解除方向と戸を開く方向が異なるものもあるが、この場合はラッチを解除するための操作部と戸を開くための把手とは別に設けるようにしないと操作しづらいものとなる。
【0007】
引戸用のラッチ装置では、戸を開くための操作部が引戸を開く左右方向に操作することでラッチを解除するようになっているものが多い(特許文献2、3)。
【0008】
開き戸用と引戸用のラッチ装置では、戸の開く方向が異なることに対応して、ラッチを解除するための操作部の操作方向が異なる。このため、ラッチ機構の共用は困難であった。
【0009】
特許文献4は、把手をいずれの方向からも操作可能であること、すべての把手を同一デザインの同一構造とすることを解決課題としている。特許文献4に記載の技術は、いずれも戸の開く方向が手前である開き戸と引き出しのロックに用いられるラッチ装置であり、引戸に適用することはできない。
【0010】
特許文献5は、施錠装置ケースを、ハンドルケースのハンドルケースに収められるハンドル体の回動軸の回動軸方向における一方端側と他方端側、あるいは両端側に選択的に組み合わせ可能とし、ハンドルケース単体での使用と施錠装置付きハンドルケースとを選択可能にしたものであるが、引戸に適用することはできない。
【0011】
異なる収納装置について把手のデザインを統一したいという要請がある(例えば特許文献4)。特許文献4は開き戸(引き出し)についてのデザインの統一を行い、特許文献5は施錠装置の向きを選択できるようにしている。しかし、開き戸・引き出し用と引戸用では戸の開く方向が異なりラッチの解除の操作方向が異なるために、把手のデザインの統一は困難であった(特許文献1、2、3)。同じ把手ユニットを開き戸用のラッチ機構と、引戸用のラッチ機構に使用することは行われていなかった。
【0012】
要するに、引戸と開き戸・引き出しではラッチ機構の動作が全く異なるため、従来の技術では、それぞれを全く別個の装置として設計しており、両者を共通化することができなかった。また、ラッチ機構を解除して戸を開くために操作する把手の形状が引戸と開き戸・引き出しで異なり、デザインを共通化できなかった。
【0013】
この発明は上記課題を解決するためになされたもので、開き戸・引き出し用ラッチ機構と引戸用ラッチ機構のいずれも装着可能な把手ユニットを用いることにより、開き戸と引戸のラッチ装置のデザインを統一することのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明は、収納装置の開閉可能な戸を開くときに操作する把手11と、前記戸に取り付けられ、前記把手を収納するハウジング12とを備え、
前記把手は、前記戸のラッチ機構に接続され、操作されたときにラッチを解除するものであり、
前記把手の前記戸の開く方向へ傾ける動き(左右方向、図8のY方向)、及び、引き出す動き(前後方向、図15のZ方向)が可能に構成され、
ラッチの係合爪14をラッチの解除方向へ回動させるための支承、及び、前記係合爪221をラッチの解除方向へ移動させるための案内(第1案内、支承兼移動ガイド122)とが設けられているものである。
前記把手の貫通孔H1が設けられ、前記把手に連結された作用部が前記貫通孔を通り表面から裏面へ貫通した状態で、前記把手の前記戸の開く方向へ傾ける動き、及び、引き出す動きが可能に保持される。
前記把手を前記戸の開く方向へ引き出す動きの案内として機能する案内(第2案内、ガイド123a)が設けられていてもよい。
【0015】
この発明は、上記把手ユニットと、ラッチ受けに係合する前記係合爪14と、前記把手の操作に基づき動く作用部13とを備え、
前記作用部は、前記把手の取付部と、前記案内(第1案内、支承兼移動ガイド122)の前記支承に回動自在に係合する軸部132aとが設けられ、
前記作用部は、前記把手が取り付けられ、前記軸部が前記支承に係合した状態で、前記把手を前記戸の開く方向へ傾ける動きを受けて前記係合爪をラッチの解除方向へ動かすことを特徴とするラッチ装置である。
【0016】
この発明は、上記把手ユニットと、ラッチ受けに係合する前記係合爪221と、前記把手の操作に基づき動く作用部21と、前記作用部の動きに基づき前記係合爪をラッチの解除方向へ動かす変換機構214、224とを備え、
前記係合爪は、前記案内(第1案内、支承兼移動ガイド122)に係合しラッチの解除方向に動くための係合部222が設けられ、
前記作用部は、前記把手の取付部と、前記把手を前記戸の開く方向へ引き出す動きの案内(第2案内、ガイド123a)に係合し前記把手を操作したときに前記把手を引き出す方向(前後方向、図15のZ方向)に動くための係合部212、213とが設けられ、
前記変換機構は、前記作用部の前記把手を引き出す方向の動きを変換して前記係合爪に伝達し、前記係合爪をラッチの解除方向(図15のY’方向)へ移動させることを特徴とするラッチ装置である。
【0017】
上記把手ユニットは、貫通孔が前記把手を前記戸の開く方向へ傾ける動き、及び、引き出す動きのいずれも許容しているとともに、ラッチの係合爪をラッチの解除方向へ回動させる動き、及び、ラッチの解除方向へ移動させる動きを可能とする第1案内と、前記把手を前記戸の開く方向へ引き出す動きの案内として機能する第2案内とが設けられているので、引戸用ラッチ機構(作用部13、係合爪14)と開き戸用ラッチ機構(作用部21、係合爪ユニット22)のいずれも組み込むことが可能である。引戸用ラッチ機構と開き戸用ラッチ機構のいずれも表面から見ると同じ形状をしている。同じ意匠にできる。
【発明の効果】
【0018】
本願発明によれば、共通の把手ユニットに対し、引戸用ラッチ機構を組み込むことも、開き戸・引き出し用ラッチ機構を組み込むこともどちらも可能である。把手ユニットの共通化によりコストダウンを実現できるとともに、引戸と開き戸・引き出しのいずれについても把手のデザインを共通化できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】発明の実施の形態に係る引戸用のラッチ装置の斜視図である。
図2】発明の実施の形態に係る引戸用のラッチ装置の分解斜視図である。
図3】(a)把手の正面側斜視図、(b)同じく背面側斜視図である。
図4】(a)ハウジングの正面側斜視図、(b)同じく背面側斜視図である。
図5】(a)作用部及び係合爪の正面側斜視図、(b)同じく背面側斜視図である。
図6】(a)係合爪を作用部に嵌め込む説明図、(b)嵌め込み後の斜視図である。
図7】(a)発明の実施の形態に係る引戸用のラッチ装置の斜視図、(b)同じく背面側斜視図である。
図8】(a)ラッチ受けに係合した状態を示す引戸用のラッチ装置の断面斜視図、(b)係合が解除された状態を示す引戸用のラッチ装置の断面斜視図である。
図9】(b)発明の実施の形態に係る開き戸用のラッチ装置の正面側斜視図、(b)背面側斜視図である。
図10】発明の実施の形態に係る開き戸用のラッチ装置の分解斜視図である。
図11】(a)作用部の正面側斜視図、(b)同じく背面側斜視図である。
図12】(a)係合爪ユニット及びラッチ受けの正面側斜視図、(b)同じく背面側斜視図である(ラッチ受けを係合爪ユニットから離隔させた通常とは異なる状態を示す)。
図13】係合爪ユニットが上下動することの説明図(断面図)、(a)上下動ガイド124と係合爪223の状態、(b)上下動ガイド122bと係合爪222の状態を示す。
図14】係合の非解除状態の引戸用ラッチ装置の説明図(断面図)、(a)ガイド123aを突起212と213で挟んだ状態、(b)前後動を上下動に変換する機構の断面図、(c)係合爪221が係合爪61に係合した状態を示す。
図15】係合の解除状態の引戸用ラッチ装置の説明図(断面図)、(a)ガイド123aを突起212と213で挟んだ状態、(b)前後動を上下動に変換する機構の断面図、(c)係合爪221と係合爪61の係合が解除された状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
発明の実施の形態について、図面を参照して説明を加える。引き出しのラッチ装置には開き戸のラッチ装置を適用できるので、以下の説明ではもっぱら開き戸のラッチ装置を例にとり説明を加える。
【0021】
(A)引戸用のラッチ装置
引戸の構造、及び、ラッチ装置の取り付け態様は公知であるので図示は省略する。例えば、引戸は、収納装置本体の前面開口部の戸枠の上下にそれぞれ設けられた2本のレール又は溝を備え、そこに右方外戸と左方内戸の2枚構成からなる引戸が左右移動可能に配置されているようなものである。引戸の左右の戸枠側には取付穴が設けられ、これに引戸用のラッチ装置が取り付けられる。ラッチ装置に当接する戸枠側の位置にはラッチ受けが設けられ、これにラッチ装置の係合爪が係合するようになっている。
【0022】
図1は、発明の実施の形態に係る引戸用のラッチ装置1を示す。ラッチ装置1は引戸の端に取り付けられ表側からは把手11とハウジング12のみが見える。ラッチ装置1は戸を閉めた状態で戸枠側のラッチ受け50と係合する。図1はその状態を示す。図1では引戸と戸枠の表示は省略している。
【0023】
図2の分解図に示すように、ラッチ装置1は、細長い把手11、把手11の周囲を覆うカバーであり把手11の収納部であるハウジング12、把手11がネジ止めで取り付けられるとともに、ハウジング12の支承兼移動ガイド122(図4参照)で回動可能に支持される作用部13、作用部13に取り付けられる係合爪(係合凸部)14、ラッチ機構カバー16をハウジング12にネジ止めする際に用いられるスペーサ15、作用部13及び係合爪14を覆い目隠しとなるラッチ機構カバー16とからなる。ラッチ機構カバー16の一部が切り欠かれていて係合爪14を突出させ、ラッチ受け50に係合させる。図2では戸枠側に取り付けられるラッチ受け50の表示は省略している。図2の各要素は例えば射出成形による樹脂製部品である。スペーサ15は異なる板厚に対応するためのものであり、省略することが可能である。図の例ではラッチ機構カバー16で板を挟み込んでラッチ装置を戸に固定するようになっているが、他の手段(嵌め込み、係合爪、ネジ止め等)で固定するようにもできる。目隠しが不要であればラッチ機構カバー16は無くてもよい。図の例では、ハウジング12、支承兼移動ガイド122、ガイド123aなどは一体であるがこれに限定されない。別パーツを組み付けたものでもよい。これも本発明の実施の形態に含まれる。
【0024】
図3図6を参照して把手11、ハウジング12、作用部13、係合爪(係合凸部)14の詳細について説明を加える。スペーサ15、ラッチ機構カバー16の構造は簡単であり図2で理解できると思われるので詳細説明は省略する。
【0025】
図3を参照すると、把手11は、頭部が胴部よりも少し大きくなっている棒状の部材であり、下面には2つのネジ穴111が設けられている。止めネジがネジ用貫通孔131を通してネジ穴111に螺合することにより、把手11が作用部13に取り付けられ、一体となる。
【0026】
図4を参照すると、ハウジング12は把手11を通す貫通孔H1を備えるとともに、裏面側には、作用部13をその施錠(ラッチ受けとの係合)及び解錠(ラッチ受けとの係合の解除)の動作を可能にしつつ保持するための構造を備える(符号122~124)。貫通孔H1は把手11の形状とほぼ同じであるが、それよりも大きく、把手11の動きを妨げないようになっている。把手11は作用部13と一体になって動く。引戸にはハウジング12の形状に合せて開口が設けられ、ハウジング12がそこに嵌まり込むことでラッチ装置1が引戸に取り付けられる。これに加えて、ラッチ機構カバー16で板を挟み込んで固定する、あるいは係合爪、ネジ止め等で固定してもよい。
【0027】
ハウジング12の裏面両端、貫通孔H1の端の近傍には円筒の先端に開口してネジ穴121が設けられている。ラッチ機構カバー16で板を挟み込んで固定する場合、止めネジがラッチ機構カバー16の貫通孔及びスペーサ15を通してネジ穴121に螺合することにより、ラッチ機構カバー16が取り付けられる(嵌め込みで固定する場合は不要)。
【0028】
同じく裏面には、2つの支承兼移動ガイド122が設けられている。支承兼移動ガイド122は貫通孔H1を避けて設けられ、ハウジング12の左右方向(図8のY方向)に互いに並行に延びる板状の部材(突起)である。支承兼移動ガイド122にはそれぞれ支承(開口、又は凸部)122aが設けられている。2つの支承122aを結ぶ直線は把手貫通孔H1、つまり把手11の長手方向に並行になっている。これにより引戸を開ける方向(解錠の方向、図8の矢印Y)に把手11を動かすと(傾けると)、作用部13は2つの支承122aを結ぶ直線を軸に回動する。
【0029】
符号122b、123及び124については、後述の開き戸用のラッチ装置の説明において記述する。
【0030】
把手11及びハウジング12は、図1の引戸用のラッチ装置と後述の開き戸用のラッチ装置で同じものである。
【0031】
図5を参照すると、作用部13は棒状の部材であり、その両端に設けられる把手止めネジ用貫通孔131、棒状の部材の中間にこれに直角に突き出した2つ係合爪ガイド132(これらは互いに並行、それらの間隔は支承兼移動ガイド122の間隔に対応)、2つ係合爪ガイド132の中間に設けられ、ハウジング12の支承122aに嵌まり込む軸突起(凸部、凹部)132a(これによりラッチ機構13、14はハウジング12に回動自在に支持される)、係合爪ガイド132に設けられるガイド(線条突起)132b、棒状の部材の中央から直角に軸突起132a側に突き出した板状の弾性部材133(一体成形の樹脂性であり適度の可撓性弾性を有する)、作用部13の裏面、2つ係合爪ガイド132の間に設けられる第1突起134、第2突起135を備える。
【0032】
係合爪14は、両側面に設けられたガイド(線条突起)141、背面側に突き出した板状の第1係止部142、背面裏面の第2係止部143を備える。係合爪14は、作用部13にスライドして挿入され、嵌め込まれる。
【0033】
図6にその様子を示す。係合爪14を同図(a)の矢印アの方向に作用部13に差し込むと、ガイド132bの溝の部分をガイド141が進み、第1係止部142が第1突起134を乗り越えてパチンと嵌まり込む。このとき第2係止部143も第2突起135に嵌まり込むことで、係合爪14は第1突起134と第2突起135の間でしっかりと保持される。同図(b)は保持状態を示す。
【0034】
図7(a)はラッチ装置1の表面を示し、同図(b)は裏面を示す。図7は、ラッチ装置1の係合爪14がラッチ受け50に係合している状態を示す。図8(a)はその断面斜視図を示す。
【0035】
把手11とハウジング12の間に手を入れ、戸を開く方向である図8(b)の矢印Yへ力を加えると、把手11及び作用部13が支承112aを中心に回動し、係合爪14の先端が上昇する。これにより係合が解除される。このとき、係合爪14の背面は下降しハウジング12との間に隙間が生じる(図8(b)の符号A)。また、弾性部材133の先端はハウジング12の裏面に当接し撓み、把手11の戻る方向に反力が生じる。なお、図8(b)では作図の都合上、弾性部材133の先端がハウジング12の裏面に食い込んでいるが(同符号B)、実際にはそのようなことはない。
【0036】
以上の説明では、支承122aが開口(凹部)で、これに回動自在に嵌まり込む軸突起132aが凸部であったが、凹凸の関係は反対でもよい。支承122aが凸部で、対応する符号132aが凹部であってもよい。
【0037】
(B)開き戸・引き出し用のラッチ装置
開き戸・引き出しの構造、及び、ラッチ装置の取り付け態様は公知であるので図示は省略する。例えば、開き戸は、収納装置本体の前面開口部の戸枠の左右両方(開き戸2枚)又は一方(開き戸1枚)に設けられたヒンジにより回動自在に取り付けられるものである。開き戸のヒンジの反対側に開き戸用のラッチ装置が取り付けられる。ラッチ装置は開き戸の上辺端、中央端(開き戸1枚の場合)、下辺端のいずれかに取り付けられる。ラッチ装置に当接する戸枠側の位置にはラッチ受けが設けられ、これにラッチ装置の係合爪が係合するようになっている。引き出しは、机やタンスなどに取りつけて抜き差しのできるように造った箱型の収納装置である。引き出しのラッチ装置は、多くの場合その前面の上辺端に取り付けられる。ラッチ装置に当接する枠側の位置にはラッチ受けが設けられる。
以下において、主に開き戸を例にとり説明を加える。
【0038】
発明の実施の形態に係る開き戸用のラッチ装置は、その把手の長手方向を水平(上辺端、下辺端取付の場合)又は垂直(中央端取付の場合)に取り付けられる。以下において、説明の便宜上、開き戸のヒンジが右端、開き戸用のラッチ装置が下辺の左端に取り付けられたものとし、把手の長手方向を左右、これと直角の方向を上下、開き戸の開閉方向を前後とする。ただし、図14図15の説明において図面での方向を記載することもある。
【0039】
図9は、発明の実施の形態に係る開き戸用のラッチ装置2を示す。ラッチ装置2は開き戸に取り付けられ表側からは把手11とハウジング12のみが見える。ラッチ装置2は戸を閉めた状態で戸枠側のラッチ受け60と係合する。図9はその状態を示す。図9では開き戸と戸枠の表示は省略している。
【0040】
図10の分解図に示すように、ラッチ装置2は、把手11、把手11を覆うとともに把手11の貫通孔H1の設けられたハウジング12、把手11がネジ止めで取り付けられ、これとともに前後に移動可能なようにハウジング12に取り付けられる作用部21、作用部21に係合し、把手12及び作用部21の前後に動きに伴い上下に動く係合爪ユニット22、ラッチ機構カバー16をハウジング12にネジ止めする際に用いられるスペーサ15、作用部13を覆うラッチ機構カバー16とからなる。図10では戸枠側に取り付けられるラッチ受け50の表示は省略している。図10の各要素は例えば射出成形による樹脂製部品である。スペーサ15は異なる板厚に対応するためのものであり、省略することが可能である。図の例ではラッチ機構カバー16で板を挟み込んでラッチ装置を戸に固定するようになっているが、他の手段(嵌め込み、係合爪、ネジ止め等)で固定するようにもできる。ラッチ機構カバー16は無くてもよい。
【0041】
把手11、ハウジング12、スペーサ15、ラッチ機構カバー16は、図2に示したものと同じであり、それらの説明は省略する。
【0042】
図11図13を参照して作用部21、係合爪ユニット22の詳細について説明を加える。
【0043】
作用部21と係合爪ユニット22は、いずれも左右対称の形状をしている。
【0044】
図11を参照すると、作用部21は概ね棒状であるが、その中間部は係合爪ユニット22の動きを妨げないように切り欠かれている(薄くなっている)。その部分を係合爪ユニット22が上下する。作用部21は、棒状の部材の両端に設けられた把手止めネジ用貫通孔211、両端にそれぞれ2つ設けられる突起212,213を備える。作用部21の切り欠かれた部分の内側、係合爪ユニット22の側面に接する部分には、三角形の凹部214が設けられている。凹部214は、三角形凸部224とともに、把手11と一体化した作用部21の前後動を上下動に変換する機構を構成する。
【0045】
図12を参照すると、係合爪ユニット22は、ラッチ受け60の係合爪61に係合する係合爪221とこれの反対側に設けられる半円形の弾性部材225と、係合爪221寄りの側面に設けられる係合爪223、224と、貫通孔H2に沿って設けられる係合爪222を備える。貫通孔H2は、弾性部材225近傍に上下方向に細長く形成されている。係合爪222,223がハウジング12の上下動ガイド122b、124に摺接することにより動きが規制され、係合爪ユニット22は上下方向にのみ摺動するようになっている。
【0046】
図13(a)は、2つの上下動ガイド124を含む平面における断面を示す。係合爪ユニット22の係合爪223がハウジング12の上下動ガイド124に係合している。このため係合爪ユニット22は前後方向に動くことができず、上下方向にのみ摺動する。図13(b)は、2つの支承兼移動ガイド122を含む平面における断面を示す。係合爪ユニット22の係合爪222がハウジング12の上下動ガイド122bに係合している。上下動ガイド122bは支承兼移動ガイド貫通孔H2を通り係合爪222に摺接する。このため係合爪ユニット22は前後方向に動くことができず、上記係合爪223と上下動ガイドの係合と相まって上下方向にのみ摺動する。なお、係合爪222のみで係合爪ユニット22についてこのような移動規制が可能であれば、係合爪223は無くてもよい。
【0047】
他方、作用部21は、その突起212,213がハウジング12の裏面に前後方向に延びる前後動ガイド123のガイド123a(第2案内)を挟んでいるので前後方向にのみ摺動する(図14(a)、図15(a)参照)。
【0048】
把手11を引くことにより作用部21が動き、そして係合爪ユニット22が動く。上記のように動く方向が限定されていて、しかも、作用部21は前後動を上下動に変換する機構214、224を介して連結されているので、把手11を引くことにより係合爪ユニット22が上方、つまり係合を解除する方向へ動く。
【0049】
開き戸用ラッチ装置の動作について、図14及び図15を参照して説明を加える。
【0050】
図14は、非解除状態の引戸用ラッチ装置を示す。同図(a)はガイド123aの位置で切った断面を示す。ガイド123aを突起212と213で挟んでいるが、その位置はガイド123aの下端にある。同図(b)は三角形凹部214、三角形凸部224の位置で切った断面を示す。三角形凸部224が三角形凹部214の中に入り込み、それらの斜面同士が摺接している。これら214,224は、前後動を上下動に変換する機構を構成する。三角形凸部224は、三角形凹部214の逆三角形の上部にある。同図(c)に示すように、同図(a)(b)の状態で係合爪221は係合爪61に係合している。弾性部材225が下側に押していたとしても三角形凸部224が三角形凹部214の端(頂点)にあるので、図示以上に係合爪ユニット22が動くことはない。係合爪ユニット22の係合爪223がハウジング12の上下動ガイド124に摺接し、上下方向にのみ摺動するのは図13を参照して説明した通りである。
【0051】
図15は、解除状態の引戸用ラッチ装置を示す。矢印Z方向へ把手11を引くと図のような状態になる。同図(a)はガイド123aの位置で切った断面を示す。ガイド123aを突起212と213で挟んでいるが、把手11を手前に引いているので、突起212と213の位置は、図14(a)よりも上(ラッチの取付方向でいうと手前側)にある。同図(b)は三角形凹部214、三角形凸部224の位置で切った断面を示す。把手11を手前に引いているので三角形凸部224が三角形凹部214の斜辺を滑り、同図で左側(ラッチの取付方向でいうと上側)に移動する(矢印Y’の方向)。前述のように、係合爪22は同図の上下方向(ラッチの取付方向でいうと前後方向)には動けない。この移動により同図(c)に示すように、同図(a)(b)の係合爪221は係合爪61から離れた解錠状態にある。このとき弾性部材225は圧縮され反発力を発生している。把手11を引くのをやめると図14の状態に戻る。作図の都合上、弾性部材225の端がハウジング12、カバー16の外に出ているが、実際はそれらの内部に納まっている。
【0052】
以上の例では、前後動を上下動に変換する機構として三角形凸部224が三角形凹部214の斜辺を摺動するものを示した。これに限らず他の機構を採用することもできる。例えば、溝を突起が摺動するものや、クランクで作用の向きを変えるものであってもよい。
【0053】
以上説明を加えたように、ラッチ装置のハウジング12の支承兼移動ガイド122に、引戸用ラッチ装置においてはラッチ機構の支承(軸受)としての機能をもたせ、開き戸・引き出し用ラッチ装置においてはラッチ機構の移動規制手段としての機能をもたせるようにしたので、共通の把手ユニット11,12に対し、引戸用ラッチ機構13、14を組み込むことも、開き戸・引き出し用ラッチ機構21、22を組み込むこともどちらも可能である。把手アセンブリの共通化によりコストダウンを実現できるとともに、引戸と開き戸・引き出しのいずれについても把手のデザインを共通化できる。
【0054】
発明の実施の形態に係るラッチ装置は、引戸と開き戸・引き出しのいずれについてもラッチを解除するために把手を操作する方向と戸を開く方向が同じであり、ひとつの操作で戸を開くことができる。弾性部材を備えるので、閉じるときには戸を戻すだけでラッチをかけることができる。
【0055】
本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0056】
1 引戸用ラッチ装置
2 開き戸・引き出し用ラッチ装置
11 把手
12 ハウジング
13 作用部
14 係合爪(係合凸部)
15 スペーサ
16 ラッチ機構カバー
21 作用部
22 係合爪ユニット
50 ラッチ受け
51 係合爪(係合溝、係合凹部)
60 ラッチ受け
61 係合爪
111 把手のネジ穴
121 ハウジングのネジ穴
122 支承兼移動ガイド(第1案内)
122a 支承(開口、凸部)
122b 上下動ガイド(線条突起)
123 前後動ガイド
123a ガイド(第2案内)
124 上下動ガイド
131 把手止めネジ用貫通孔
132 係合爪ガイド
132a 軸突起(凸部、凹部)
132b ガイド(線条突起)
133 弾性部材
134 第1突起
135 第2突起
141 ガイド(線条突起)
142 作用部との第1係止部
143 作用部との第2係止部
211 把手止めネジ用貫通孔
212 突起(係合部)
213 突起(係合部)
214 三角形凹部(前後動を上下動に変換する機構)
221 係合爪
222 上下動ガイドに係合する係合爪(係合部)
223 上下動ガイドに係合する係合爪
224 三角形凸部(前後動を上下動に変換する機構)
225 弾性部材
H1 把手貫通孔
H2 支承兼移動ガイド貫通孔
Y 把手を傾ける方向(引戸を開ける方向)
Y’ 係合爪のラッチの解除方向
Z 把手を引き出す方向(開き戸を開ける方向)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15