(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-02
(45)【発行日】2023-08-10
(54)【発明の名称】端子カバー
(51)【国際特許分類】
H01H 73/20 20060101AFI20230803BHJP
H01H 9/02 20060101ALI20230803BHJP
【FI】
H01H73/20 B
H01H9/02 B
(21)【出願番号】P 2019218193
(22)【出願日】2019-12-02
【審査請求日】2022-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000124591
【氏名又は名称】河村電器産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【氏名又は名称】石田 喜樹
(72)【発明者】
【氏名】加藤 裕明
(72)【発明者】
【氏名】山中 佑太
(72)【発明者】
【氏名】古川 勇樹
【審査官】井上 信
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-224453(JP,A)
【文献】特開2005-93157(JP,A)
【文献】特開平1-272194(JP,A)
【文献】実開平4-123024(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 73/20
H01H 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性を有する係止部と、前記係止部の弾性変形を規制するためのロック部とを有しており、前記係止部の弾性変形を利用して本体ケースに着脱可能な端子カバーであって、
前記係止部が、前記端子カバーに開設された開口縁から所定方向へ突出する基部と、前記基部から前記開口内側へ折り曲げられた連結部と、前記連結部の先端から前記開口内へ向かって前記基部と対向するように延設された弾性部とを備え、前記弾性部の前記基部と対向しない側の表面に係止片が設けられている一方、
前記ロック部が、前記係止部を挟むように立設されているとともに封印線を挿通可能な挿通孔が穿設された一対のリブを備えており、
前記ロック部に挿通される前記封印線が前記基部と前記弾性部との間を通されることによって、前記係止部の弾性変形が規制されることを特徴とする端子カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば分電盤内に設置される回路遮断器等に装着される端子カバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電源側端子や負荷側端子を被覆すべく、回路遮断器の本体ケースに装着される端子カバーには、端子カバーの本体ケースからの不用意な脱落を防止するためのロック構造が設けられている。たとえば特許文献1に記載のものでは、端子カバーに第2のロック部を、回路遮断器の本体ケース側に第2のロック部を夫々設け、端子カバーを本体ケースに装着した状態において両ロック部をワイヤ等で連結することにより、端子カバーを装着状態のままロック可能としている。
【0003】
また、端子カバーに係止片が、本体ケースに被係止部が夫々設けられており、係止片の被係止部への係止により本体ケースに装着可能としたものにあっては、端子カバーに係止片の変形を防止するロック部材を取付可能とし、本体ケースに装着された端子カバーに対してロック部材を取り付け、端子カバーとロック部材とをワイヤ等で連結することにより、端子カバーを装着状態のままロック可能としたものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、回路遮断器の本体ケース側にワイヤを連結するためのロック部を設けるとなると、回路遮断器の小型化に支障をきたすという問題がある。また、端子カバーにロック部材を取り付けるものでは、部品点数が増えることから、コスト高という問題が生じてしまう。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みなされたものであって、本体ケース側にワイヤを連結するためのロック部等を設けることなく、且つ、端子カバーにロック部材を取り付けることなく端子カバーを装着状態のままロックすることができる端子カバーを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、弾性を有する係止部と、前記係止部の弾性変形を規制するためのロック部とを有しており、前記係止部の弾性変形を利用して本体ケースに着脱可能な端子カバーであって、前記係止部が、前記端子カバーに開設された開口縁から所定方向へ突出する基部と、前記基部から前記開口内側へ折り曲げられた連結部と、前記連結部の先端から前記開口内へ向かって前記基部と対向するように延設された弾性部とを備え、前記弾性部の前記基部と対向しない側の表面に係止片が設けられている一方、前記ロック部が、前記係止部を挟むように立設されているとともに封印線を挿通可能な挿通孔が穿設された一対のリブを備えており、前記ロック部に挿通される前記封印線が前記基部と前記弾性部との間を通されることによって、前記係止部の弾性変形が規制されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、係止部が、端子カバーに開設された開口縁から所定方向へ突出する基部と、基部から開口内側へ折り曲げられた連結部と、連結部の先端から開口内へ向かって基部と対向するように延設された弾性部とを備え、弾性部の基部と対向しない側の表面に係止片が設けられている一方、ロック部が、係止部を挟むように立設されているとともに封印線を挿通可能な挿通孔が穿設された一対のリブを備えている。そして、ロック部に挿通される封印線が基部と弾性部との間を通されることによって、係止部の弾性変形が規制され、結果として本体ケースに装着状態にある端子カバーが装着状態のままロックされるようになっている。したがって、たとえば回路遮断器の本体ケースに端子カバーをロックするための構造を設ける必要がなく、本体ケースの小型化に支障をきたすようなことがない。また、端子カバーに別途ロック部材を取り付ける必要もなく、部品点数の削減、ひいては低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】端子カバーが装着され、且つ、ロックされた状態にある回路遮断器を示した斜視説明図である。
【
図2】電源側端子が端子カバーによって被覆されていない状態にある回路遮断器を示した斜視説明図である。
【
図4】(a)は端子カバーを正面から示した説明図であり、(b)は端子カバーを側方から示した説明図である。
【
図5】端子カバーが装着され、且つ、ロックされている状態の回路遮断器の要部断面を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態となる端子カバー、及び端子カバーが装着される回路遮断器について図面にもとづき詳細に説明する。
図1は、端子カバー10、10が装着され、且つ、ロックされた状態にある回路遮断器1を示した斜視説明図である。
図2は、電源側端子5が端子カバー10によって被覆されていない状態にある回路遮断器1を示した斜視説明図である。
図3は、端子カバー10の斜視説明図である。
図4(a)は、端子カバー10を正面から示した説明図であり、
図4(b)は、端子カバー10を側方から示した説明図である。
図5は、端子カバー10が装着され、且つ、ロックされている状態の回路遮断器1の要部断面を示した説明図である。
【0011】
回路遮断器1は、基台2上にカバー部材3を組み付けてなる合成樹脂製の本体ケースを有するものであって、本体ケースの後部には電源側端子5が、前部には負荷側端子(図示せず)が夫々備えられている。負荷側端子及び電源側端子5は、左右方向に並べて設けられた3つの電線接続部5a~5c(負荷側端子の電線接続部については図示せず)を有している。また、各電線接続部5a~5cの左右には、電線接続部同士若しくは隣に設置されるであろう回路遮断器の電線接続部との絶縁を図るべく、上方へ突出する絶縁壁7、7・・が夫々設けられている。したがって、各電線接続部5a~5cは、本体ケースに対して上方及び前方(若しくは後方)に露出していることになる。
【0012】
また、本体ケース内には、負荷側端子から後方へ延びる前側電路(図示せず)、電源側端子5から前方へ延びる後側電路(図示せず)、前側電路と後側電路とを接続/遮断させる可動接点部材(図示せず)、及び電路を遮断する方向へ可動接点部材を作動させるための遮断機構部(図示せず)等が設けられている。さらに、本体ケースの上面で、負荷側端子と電源側端子5との間となる位置には、遮断機構部を介して可動接点部材を作動させることで、電路をオン/オフ操作するためのハンドル6が設けられている。そして、このような回路遮断器1に対し、負荷側端子や電源側端子5を被覆するための端子カバー10、10が装着可能となっている。
【0013】
ここで、本発明の要部である端子カバー10について詳細に説明する。
端子カバー10は、側面視L字状に成形された合成樹脂製部材であって、装着時に絶縁壁7、7・・上に配され、負荷側端子や電源側端子5の上方を覆う被覆部11と、被覆部11から下方へ延設され、装着時に絶縁壁7、7・・の前方や後方に位置する規制部12とを有する。被覆部11は、本体ケースの左右幅と同じ左右長さ、及び絶縁壁7の前後長さと同じ前後長さを有する板状に成形されている。また、被覆部11における装着時に絶縁壁7上に位置する箇所には、開口13が開設されており、当該開口13箇所に、装着時に本体ケースに係止する係止部14と、端子カバー10を装着状態のままロックするロック部15とが設けられている。
【0014】
係止部14は、開口13縁から下方へ延びる基部14aと、基部14aの下端から開口13内側へ折り曲げられた連結部14bと、連結部14bの先端から開口13内まで基部14aに対向するように上方へ延びる弾性部14cとを有しており、弾性部14cの表面(基部14aと対向していない側の面)に係止爪14dが突設されている。弾性部14cの先端と基部14aとは離隔しており、弾性部14cの先端は基部14a側へ撓ませることができる。また、ロック部15は、被覆部11の上面に立設された一対のリブ15a、15aであり、一対のリブ15a、15aは、係止部14を左右から挟むように対向している。また、各リブ15aには、ワイヤ20を左右へ挿通可能な挿通孔15bが穿設されている。なお、規制部12には、上方へ切り欠かれて、回路遮断器1へ装着する際に電線接続部5a~5cに接続されているケーブル(図示せず)との干渉を防止するとともに、電線接続部5a~5cを露出させるための切り欠き部16、16・・が設けられている。
【0015】
そして、上記端子カバー10を回路遮断器1へ装着するにあたっては、絶縁壁7の上面に開設された装着孔8内へ係止部14を挿入すればよい。すると、係止爪14dによって弾性部14cが基部14a側へ撓みながら装着孔8内をすすみ、装着孔8内に設けられている係止段部8aに係止爪14dが係止することによって、弾性部14cが通常の起立姿勢に復帰して端子カバー10が回路遮断器1に装着されることになる。また、端子カバー10を取り外す際には、弾性部14cを基部14a側へ押し込んで撓ませ、係止爪14dと係止段部8aとの係止を解除するとともに、当該状態のまま端子カバー10を上方へ移動させ、装着孔8から係止部14を抜き取ればよい。なお、装着状態にある端子カバー10においては、規制部12が絶縁壁7、7・・の前方や後方に位置しており、端子カバー10の前後方向へのがたつきが抑制されている。
【0016】
一方、装着状態のまま端子カバー10をロックするにあたっては、ロック部15にワイヤ20を挿通させればよい(
図1に示すように、一方のリブ15aから他方のリブ15aにかけてワイヤ20を挿通させればよい)。このとき、ワイヤ20が基部14aと弾性部14cとの間を通るように挿通させることで、弾性部14cを基部14a側へ撓ませることができなくなり、結果として端子カバー10が装着状態のままロックされることになる。
【0017】
以上のように構成される端子カバー10によれば、係止部14として、開口13縁から下方へ延びる基部14aと、基部14aの下端から開口13内側へ折り曲げられた連結部14bと、連結部14bの先端から開口13内まで基部14aに対向するように上方へ延びる弾性部14cとを備えるとともに、弾性部14cの表面(基部14aと対向していない側の面)に係止爪14dを突設している。また、ロック部15として、被覆部11の上面に立設された一対のリブ15a、15aを備え、一対のリブ15a、15aを、係止部14を左右から挟むように対向させるとともに、各リブ15aに、ワイヤ20を左右へ挿通可能な挿通孔15bを穿設している。そして、端子カバー10の係止部14を、絶縁壁7の上面に開設された装着孔8内へ挿入させ、係止爪14dを装着孔8内に設けられている係止段部8aに係止させることによって、端子カバー10を回路遮断器1に装着可能とするとともに、装着状態のままロック部15にワイヤ20を挿通させ、該ワイヤ20を基部14aと弾性部14cとの間を通すことで、弾性部14cが基部14a側へ撓むことができなくなり、結果として端子カバー10が装着状態のままロックされるようにした。したがって、回路遮断器1の本体ケースに端子カバー10をロックするための構造を設ける必要がなく、本体ケースの小型化に支障をきたすようなことがない。また、端子カバー10に別途ロック部材を取り付ける必要もなく、部品点数の削減、ひいては低コスト化を図ることができる。
【0018】
なお、本発明の端子カバーに係る構成は、上記実施形態のものに何ら限定されることはなく、端子カバーの全体的な構造は勿論、端子カバーのロックに係る構成についても、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で必要に応じて適宜変更することができる。
【0019】
たとえば、回路遮断器へ装着される端子カバーについて説明しているが、本発明は、回路遮断器ではなく、切替開閉器へ装着される端子カバーとしても好適に採用することができる。
また、上記実施形態では、端子カバーの被覆部に係止部及びロック部を設けているが、端子カバーの規制部に係止部及びロック部を設けても何ら問題はなく、係止部及びロック部の位置については適宜設計変更可能である。
さらに、上記実施形態では、端子カバーに係止部とロック部とを夫々1つずつ設けているが、端子カバーに複数の係止部を設けてもよいし、それに伴いロック部についても複数設けることは可能である。なお、係止部が複数ある場合、それらのうちの1つにしかロック部を設けないという構成も当然可能である。
【符号の説明】
【0020】
1・・回路遮断器、2・・基台(本体ケース)、3・・カバー部材(本体ケース)、5・・電源側端子、5a、5b、5c・・電線接続部、7・・絶縁壁、8・・装着孔、8a・・係止段部、10・・端子カバー、11・・被覆部、12・・規制部、13・・開口、14・・係止部、14a・・基部、14b・・連結部、14c・・弾性部、14d・・係止爪、15・・ロック部、15a・・リブ、15b・・挿通孔、20・・ワイヤ(封印線)。