(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-02
(45)【発行日】2023-08-10
(54)【発明の名称】ILC2細胞に関連する疾患を処置する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 35/17 20150101AFI20230803BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20230803BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20230803BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20230803BHJP
A61K 38/08 20190101ALI20230803BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20230803BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230803BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230803BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20230803BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20230803BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20230803BHJP
A61P 11/02 20060101ALI20230803BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20230803BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230803BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20230803BHJP
A61P 27/00 20060101ALI20230803BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20230803BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20230803BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20230803BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230803BHJP
【FI】
A61K35/17
A61K31/7088 ZNA
A61K31/7105
A61K31/713
A61K38/08
A61K38/17
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K45/00
A61P1/04
A61P3/04
A61P11/00
A61P11/02
A61P11/06
A61P17/00
A61P17/02
A61P27/00
A61P31/00
A61P37/04
A61P37/08
A61P43/00 107
(21)【出願番号】P 2019533075
(86)(22)【出願日】2017-03-29
(86)【国際出願番号】 IB2017000413
(87)【国際公開番号】W WO2018109540
(87)【国際公開日】2018-06-21
【審査請求日】2020-03-26
【審判番号】
【審判請求日】2021-12-24
(31)【優先権主張番号】20161000089304
(32)【優先日】2016-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】PT
(73)【特許権者】
【識別番号】519215289
【氏名又は名称】リム セラピューティクス,エスエー
【氏名又は名称原語表記】LIMM THERAPEUTICS, SA
【住所又は居所原語表記】198 Avenue de France, 75013 Paris FRANCE
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】ヴェイガ フェルナンデス,ホセ,エンリケ
(72)【発明者】
【氏名】カルドーゾ,ヴァニア リタ デ ファリア
(72)【発明者】
【氏名】チェスネ,ジュリー ミシェル イヴリン
【合議体】
【審判長】岡崎 美穂
【審判官】冨永 みどり
【審判官】齋藤 恵
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-534282(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0172752(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0301079(US,A1)
【文献】Nature,2015年 3月12日,Vol. 519, No. 7542,p. 242-246, Extended Data
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/EMBASE/MEDLINE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グループ2自然リンパ球系細胞(ILC2)の活性または増殖を増加させる方法であって、
ILC2を、ILC2の活性を増加させるのに有効な量のニューロメディンU受容体1(NMUR1)のアゴニストと接触させること
を含み、
NMUR1のアゴニストが、ニューロメディンU(NMU)またはその類似体、あるいはNMUR1に特異的に結合して活性化させる抗体またはその抗原結合断片であり、NMUまたはその類似体が、NMU25、NMU前駆体タンパク質、NMU23またはNMU8であり、および
接触させることが、in vitroである、
前記方法。
【請求項2】
ILC2がILC2拡大プロトコールで接触される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ILC2に関連する疾患の処置における使用のための、活性化されたグループ2自然リンパ球系細胞(ILC2)を含む組成物であって、前記処置は、かかる処置を必要とする対象に、前記疾患を処置するのに有効な量の活性化されたILC2を含む前記組成物を投与することを含み、
活性化されたILC2は、ILC2をNMUR1のアゴニストと接触させることにより誘導され、および
組成物は、ニューロメディンU受容体1(NMUR1)のアゴニストをさらに含み、NMUR1のアゴニストが、ニューロメディンU(NMU)またはその類似体、あるいはNMUR1に特異的に結合して活性化させる抗体またはその抗原結合断片であり、NMUまたはその類似体が、NMU25、NMU前駆体タンパク質、NMU23またはNMU8である、
前記組成物。
【請求項4】
対象がヒトである、請求項
3に記載の組成物。
【請求項5】
疾患が、感染、組織修復、創傷治癒、肥満、2型免疫反応の誘導を増加させることにより処置可能、代謝制御により処置可能、好酸球を増加させることにより処置可能、または、肥満細胞を増加させることにより処置可能、である、請求項
3または
4に記載の組成物。
【請求項6】
対象が、それ以外では活性化されたILC2またはNMUR1のアゴニストによる処置を必要としない、請求項
3~
5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
活性化されたILC2、または活性化されたILC2およびNMUR1のアゴニストが、静脈内、経口、経鼻、直腸内、または皮膚吸収を介して、投与される、請求項
3~
6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
グループ2自然リンパ球系細胞(ILC2)の活性または増殖を減少させる方法であって、
ILC2を、ILC2の活性を減少させるのに有効な量のニューロメディンU受容体1(NMUR1)またはニューロメディンU(NMU)のアンタゴニストと接触させること
を含み、
NMUR1またはNMUのアンタゴニストが、それぞれNMUR1またはNMUに特異的に結合して阻害する抗体、あるいはその抗原結合断片であるか、あるいは、NMUR1またはNMUのアンタゴニストが、NMUR1またはNMUの発現、転写、もしくは翻訳を減少させる阻害性核酸分子であり、および
接触させることが、in vitroである、
前記方法。
【請求項9】
阻害性核酸分子が、siRNA、shRNA、またはアンチセンス核酸分子である、請求項
8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景
グループ2自然リンパ球系細胞(group 2 innate lymphoid cell)(ILC2)は、粘膜バリアに豊富に存在し、2型炎症および組織修復の主要なイニシエーター(initiator)としての役割を果たす1,2。ILC2は、IL-25、IL-33および胸腺間質リンホポエチンを含む細胞外因性サイトカインによって活性化される1,2。以前の報告は、別々のリンパ球サブセットおよび造血系前駆細胞が、食餌性シグナルおよび神経制御因子によって制御されていることを示しており2,3,5-9、ILC2が、神経-免疫(neuro-immune)細胞ユニットとの関連でその機能を発揮する可能性があることを示唆している。
【発明の概要】
【0002】
要約
本明細書に示されるように、神経ペプチドであるニューロメディン(Neuromedin)Uは、神経-ILC2ユニットとの関連で、2型自然免疫の一意的に(uniquely)強力な制御因子であることが見出されている。より具体的には、ILC2はニューロメディンU受容体1(Nmur1)を発現するのに対し、ニューロメディンUは腸神経細胞により発現されることが見出された。ニューロメディンUを伴ったILC2の活性化は、NMUR1依存的に、2型サイトカインであるインターロイキン(IL-5)、IL-13およびアンフィレグリン(Amphiregulin)の迅速かつ強力な産生をもたらした。ニューロメディンUは、ILC2下流のERK活性化、ならびにカルシニューリンサイトカインおよびNFATのカルシウム流入依存的活性化を制御していた。さらに、in vivoにおけるニューロメディンU処置は即時的な2型反応をもたらした。したがって、Nmur1の除去は、減弱した2型反応および不十分な寄生虫感染制御を引き起こした。驚くべきことに、粘膜神経は、ILC2に隣接して発見されており、寄生虫の産生物を直接的に感知して、ニューロメディンUおよび2型自然サイトカインの発現を制御していた。この研究により、粘膜ホメオスタシスの中心における新規な神経-免疫相互作用が明らかになり、これは、神経細胞-ILC2細胞ユニットが、神経-免疫の協調的な求心性(sensory)反応を介した即時的な保護を与える態勢にあることを示している。
【0003】
一つの側面によれば、グループ2自然リンパ球系細胞(ILC2)の活性または増殖を増加させる方法が提供される。前記方法は、ILC2を、ILC2の活性を増加させるのに有効な量のニューロメディンU受容体1(NMUR1)のアゴニストと接触させることを含む。いくつかの態様において、NMUR1のアゴニストは、ニューロメディンU(NMU)またはその類似体、あるいはNMUR1に特異的に結合して活性化させる抗体またはその抗原結合断片である。いくつかの態様において、NMUまたはその類似体は、NMU25、NMU前駆体タンパク質、NMU23またはNMU8である。
【0004】
いくつかの態様において、接触させることは、in vitroにおいてである。いくつかの態様において、ILC2は、ILC2拡大(expansion)プロトコールで接触される。
いくつかの態様において、接触させることは、in vivoにおいてである。いくつかの態様においては、ニューロメディンU受容体1(NMUR1)のアゴニストが対象に投与される。いくつかの態様においては、対象がヒトである。いくつかの態様において、対象は、それ以外ではNMUR1のアゴニストによる処置を必要としない。
【0005】
他の側面によれば、グループ2自然リンパ球系細胞(ILC2)に関連する疾患を処置する方法が提供される。いくつかの態様においては、前記方法は、かかる処置を必要とする対象に、疾患を処置するのに有効な量のニューロメディンU受容体1(NMUR1)のアゴニストを投与することを含む。いくつかの態様において、NMUR1のアゴニストは、ニューロメディンU(NMU)またはその類似体、あるいはNMUR1に特異的に結合して活性化させる抗体またはその抗原結合断片である。いくつかの態様において、NMUまたはその類似体は、NMU25、NMU前駆体タンパク質、NMU23またはNMU8である。いくつかの態様において、対象はヒトである。
【0006】
いくつかの態様において、疾患は、感染、組織修復、創傷治癒、肥満、2型免疫反応の誘導を増加させることにより処置可能(treatable)、代謝制御により処置可能、好酸球を増加させることにより処置可能、または、肥満細胞を増加させることにより処置可能、である。いくつかの態様において、対象は、それ以外ではNMUR1のアゴニストによる処置を必要としない。
いくつかの態様においては、NMUR1のアゴニストが、静脈内、経口、経鼻、直腸内、または皮膚吸収を介して、投与される。
【0007】
他の側面においては、グループ2自然リンパ球系細胞(ILC2)に関連する疾患の処置における使用のための、ニューロメディンU受容体1(NMUR1)のアゴニストであって、前記処置は、かかる処置を必要とする対象に、前記疾患を処置するのに有効な量の前記NMUR1のアゴニストを投与することを含む。いくつかの態様において、NMUR1のアゴニストは、ニューロメディンU(NMU)またはその類似体、あるいはNMUR1に特異的に結合して活性化させる抗体またはその抗原結合断片である。いくつかの態様において、NMUまたはその類似体は、NMU25、NMU前駆体タンパク質、NMU23またはNMU8である。いくつかの態様において、対象はヒトである。
【0008】
いくつかの態様において、疾患は、感染、組織修復、創傷治癒、肥満、2型免疫反応の誘導を増加させることにより処置可能、代謝制御により処置可能、好酸球を増加させることにより処置可能、または、肥満細胞を増加させることにより処置可能、である。いくつかの態様において、対象は、それ以外ではNMUR1のアゴニストによる処置を必要としない。
いくつかの態様において、NMUR1のアゴニストは、静脈内、経口、経鼻、直腸内、または皮膚吸収を介して、投与される。
【0009】
他の側面によれば、グループ2自然リンパ球系細胞(ILC2)に関連する疾患を処置する方法が提供される。前記方法は、疾患を処置するのに有効な量の活性化されたILC2を含む組成物を、かかる処置を必要とする対象に、投与することを含む。いくつかの態様において、組成物は、ニューロメディンU受容体1(NMUR1)のアゴニストをさらに含む。いくつかの態様において、NMUR1のアゴニストは、ニューロメディンU(NMU)またはその類似体、あるいはNMUR1に特異的に結合して活性化させる抗体またはその抗原結合断片である。いくつかの態様において、NMUまたはその類似体は、NMU25、NMU前駆体タンパク質、NMU23またはNMU8である。いくつかの態様においては、対象がヒトである。
【0010】
いくつかの態様において、疾患は、感染、組織修復、創傷治癒、肥満、2型免疫反応の誘導を増加させることにより処置可能、代謝制御により処置可能、好酸球を増加させることにより処置可能、または、肥満細胞を増加させることにより処置可能、である。いくつかの態様において、対象は、それ以外では活性化されたILC2またはNMUR1のアゴニストによる処置を必要としない。いくつかの態様において、活性化されたILC2またはNMUR1のアゴニストは、静脈内、経口、経鼻、直腸内、または皮膚吸収を介して、投与される。
【0011】
他の側面によれば、ILC2に関連する疾患の処置における使用のための、活性化されたグループ2自然リンパ球(ILC2)を含む組成物であって、前記処置は、かかる処置を必要とする対象に、前記疾患を処置するのに有効な量の活性化されたILC2を含む前記組成物を投与することを含む。いくつかの態様において、組成物は、ニューロメディンU受容体1(NMUR1)のアゴニストをさらに含む。いくつかの態様において、NMUR1のアゴニストは、ニューロメディンU(NMU)またはその類似体、あるいはNMUR1に特異的に結合して活性化させる抗体またはその抗原結合断片である。いくつかの態様において、NMUまたはその類似体は、NMU25、NMU前駆体タンパク質、NMU23またはNMU8である。いくつかの態様において、対象はヒトである。
【0012】
いくつかの態様において、疾患は、感染、組織修復、創傷治癒、肥満、2型免疫反応の誘導を増加させることにより処置可能、代謝制御により処置可能、好酸球を増加させることにより処置可能、または、肥満細胞を増加させることにより処置可能、である。いくつかの態様において、対象は、それ以外では活性化されたILC2またはNMUR1のアゴニストによる処置を必要としない。
いくつかの態様において、活性化されたILC2、または活性化されたILC2およびNMUR1のアゴニストは、静脈内、経口、経鼻、直腸内、または皮膚吸収を介して、投与される。
【0013】
他の側面によれば、グループ2自然リンパ球系細胞(ILC2)の活性または増殖を減少させる方法が提供される。前記方法は、ILC2を、ILC2の活性を減少させるのに有効な量のニューロメディンU受容体1(NMUR1)またはニューロメディンU(NMU)のアンタゴニストと接触させることを含む。いくつかの態様において、NMUR1またはNMUのアンタゴニストは、それぞれNMUR1またはNMUに特異的に結合して阻害する抗体、あるいはその抗原結合断片である。いくつかの態様において、NMUR1またはNMUのアンタゴニストは、NMUR1またはNMUの発現、転写、もしくは翻訳を減少させる阻害性核酸分子である。いくつかの態様において、阻害性核酸分子が、sRNA、shRNA、またはアンチセンス核酸分子である。
【0014】
いくつかの態様において、接触させることはin vitroにおいてである。
他の態様において、接触させることはin vivoにおいてである。いくつかの態様においては、NMUR1またはNMUのアンタゴニストは、対象に投与される。いくつかの態様において、対象はヒトである。いくつかの態様において、対象は、それ以外ではNMUR1またはNMUのアンタゴニストによる処置を必要としない。
【0015】
他の側面によれば、グループ2自然リンパ球系細胞(ILC2)に関連する疾患を処置する方法が提供される。前記方法は、かかる処置を必要とする対象に、疾患を処置するのに有効な量のニューロメディンU受容体1(NMUR1)またはニューロメディンU(NMU)のアンタゴニストを投与することを含む。いくつかの態様において、NMUR1またはNMUのアンタゴニストは、それぞれNMUR1またはNMUに特異的に結合して阻害する抗体、あるいはその抗原結合断片である。いくつかの態様において、NMUR1またはNMUのアンタゴニストは、NMUR1またはNMUの発現、転写、もしくは翻訳を減少させる阻害性核酸分子である。いくつかの態様において、阻害性核酸分子は、sRNA、shRNA、またはアンチセンス核酸分子である。いくつかの態様において、対象はヒトである。
【0016】
いくつかの態様において、疾患は、アレルギー、アレルギー性喘息、食物アレルギー、好酸球性食道炎、アトピー性皮膚炎、線維症、アレルギー性鼻炎、アレルギー性副鼻腔炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、嚢胞性線維症、2型免疫反応を減少させることにより処置可能、好酸球を減少させることにより処置可能、または、肥満細胞を減少させることにより処置可能、である。いくつかの態様において、対象は、それ以外ではNMUR1またはNMUのアゴニストによる処置を必要としない。
いくつかの態様において、NMUR1のアンタゴニストは、静脈内、経口、経鼻、直腸内、または皮膚吸収を介して、投与される。
【0017】
他の側面によれば、ニューロメディンU受容体1(NMUR1)またはニューロメディンU(NMU)のアンタゴニストが、グループ2自然リンパ球系細胞(ILC2)に関連する疾患の処置における使用のために提供され、前記処置は、かかる処置を必要とする対象に、前記疾患を処置するのに有効な量の前記NMUR1またはNMUのアンタゴニストを投与することを含む。いくつかの態様において、NMUR1またはNMUのアンタゴニストは、それぞれNMUR1またはNMUに特異的に結合して阻害する抗体、あるいはその抗原結合断片である。いくつかの態様において、NMUR1またはNMUのアンタゴニストは、NMUR1またはNMUの発現、転写、もしくは翻訳を減少させる阻害性核酸分子である。いくつかの態様において、阻害性核酸分子は、sRNA、shRNA、またはアンチセンス核酸分子である。いくつかの態様において、対象はヒトである。
【0018】
いくつかの態様においては、疾患は、アレルギー、アレルギー性喘息、食物アレルギー、好酸球性食道炎、アトピー性皮膚炎、線維症、アレルギー性鼻炎、アレルギー性副鼻腔炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、嚢胞性線維症、2型免疫反応を減少させることにより処置可能、好酸球を減少させることにより処置可能、または、肥満細胞を減少させることにより処置可能、である。いくつかの態様において、対象は、それ以外ではNMUR1またはNMUのアゴニストによる処置を必要としない。
いくつかの態様において、NMUR1またはNMUのアンタゴニストは、静脈内、経口、経鼻、直腸内、または皮膚吸収を介して、投与される。
【0019】
本発明は、その適用において、以下の説明に記載されるかまたは図面に示される構成および構成要素の配置の詳細に限定されない。本発明は、他の態様が可能であり、様々な方法で実施されるもしくは実行されることが可能である。また、本明細書で使用される表現および用語は、説明のためのものであり、限定するものと見なされるべきではない。「含む(including)」、「含む(comprising)」、「有する」、「含有する」、「含む(involving)」、およびそれらの変形は、その後に列挙される項目およびその均等物ならびに追加の項目を包含することを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
添付の図面は、一定の縮尺で描くことを意図していない。図面において、様々な図に示されている同一またはほぼ同一の各構成要素は、同様の番号で表されている。わかりやすくするため、すべての構成要素がすべての図面においてラベル付けされていない場合がある。図面中において:
【0021】
【
図1】ILC2は、ニューロメディンU受容体1を発現し、ニューロメディンU発現神経細胞に近接して位置している。
図1a、CD4 T細胞、ILC1、ILC2、NCR
-(CD4
+およびCD4
-)ならびにNCR
+ILC3サブセットにおける40種の神経細胞関連mRNA転写物についてのヒートマップ
10。
図1b、ボルケーノプロット(volcano plot)による、ILC2遺伝子発現のILC1、ILC3 NCR
+およびCD4 T細胞
10との比較。Nmur1は赤でハイライトされている。
図1c、他に記載がない場合は、腸粘膜固有層細胞(intestinal lamina propria cell)におけるNmur1の定量RT-PCR解析。リンパ球系共通前駆細胞(CLP);ヘルパー自然リンパ球系共通前駆細胞(Common helper innate lymphoid progenitor)(CHILP);骨髄ILC2前駆細胞(ILC2P);好酸球(Eo);肥満細胞(Mast);マクロファージ(Mo);好中球(Neu);樹状細胞(DC);T細胞(T);B細胞(B);固有層グリア細胞(G)および神経細胞(N);上皮細胞(Ep)。n=6。
図1d、腸細胞群におけるNmuの定量RT-PCR解析。n=6。
図1e、腸粘膜固有層の共焦点解析。緑:神経細胞(Ret
GFP);赤:KLRG1;青緑:CD3。青緑の矢印:T細胞(CD3
+)。赤の矢印:ILC2。
【0022】
【
図2】ニューロメディンUは、NMUR1の活性化を介する、2型自然サイトカインの一意的に強力な制御因子である。
図2a~2f、NmU23によるILC2の内因性活性化。
図2a、腸ILC2における2型サイトカインの遺伝子発現。n=6。
図2b、肺ILC2における2型サイトカインの遺伝子発現。n=6。
図2c、腸ILC2におけるKi67の発現。
図2d、Nmur1コンピテント(competent)および欠損ILC2における、IL-5およびIL-13の発現。
図2e、タンパク質レベルにおける2型自然炎症(innate inflammatory)サイトカイン。n=6。
図2f、自然組織修復サイトカインAREG。n=6。
図2g~2h、NmU23のin vivo投与。
図2g、ILC2由来2型サイトカイン。n=6。
図2h、T細胞由来2型サイトカイン。n=6。
図2i、j、Nmur1のin vivo除去。
図2i、Nmur1
-/-およびそのNmur1
+/+WT同腹仔コントロールからの腸ILC2。WT n=6;Nmur1
-/- n=9。
図2j、Nmur1
-/-の骨髄キメラおよびそのNmur1
+/+WT同腹仔コントロール源におけるILC2由来2型サイトカイン。WT n=6;Nmur1
-/- n=3。エラーバーは、s.e.mを示す。
*P<0.05;
**P<0.01;
***P<0.001;
****P<0.0001;ns 有意でない。
【0023】
【
図3】ニューロメディンUは、ERK1/2およびCa
2+/カルシニューリン/NFATカスケードを介しILC2由来サイトカインを制御する。
図3a~e、ニューロメディンUによる腸ILC2活性化。
図3a、pERK細胞の割合 n=4。pERK発現の平均蛍光強度(MFI)。n=4。
図3b、培地で培養されたILC2におけるIl5、IL13およびCsf2の発現(コントロール)(n=3)、NmU23(n=3)またはNmU23およびERK阻害剤PD98059(n=3)。
図3c、左および中央:Fluo-4AM強度により表されるCa
2+流入。ILC2のベースラインが得られた60秒後にNmU23を加えた(矢印)。右:Ca
2+流入の平均強度。n=3。
図3d、培地で培養されたILC2におけるIl5、IL13およびCsf2の発現(コントロール)(n=6)、NmU23(n=6)またはNmU23およびカルシニューリン阻害剤FK506(n=6)。
図3e、培地で培養されたILC2におけるIl5、IL13およびCsf2の発現(コントロール)(n=3)、NmU23(n=3)またはNmU23およびNFAT阻害剤11R-VIVIT(VIVIT)(n=3)。エラーバーは、s.e.mを示す。
*P<0.05;
**P<0.01;
***P<0.001;
****P<0.0001;ns 有意でない。
【0024】
【
図4】神経制御軸(neuroregulatory axis)NmU-NMUR1は、寄生虫感染に対する保護を与える。マウスに、N. brasiliensisの幼虫を感染させ、48時間の時点で肺を解析した。
図4a、非感染コントロールと比較した、感染マウスからの全肺におけるNmuの発現。n=3。
図4b、肺の炎症細胞は、感染から48時間後に浸潤する。NmU23処理された切片およびコントロール切片を示す。ヘマトキシリンおよびエオシン。
図4c、ミエロペルオキシダーゼ染色(顆粒球)および銀染色(好酸球)肺切片。
図4d、顆粒球および好酸球細胞数(細胞/mm
2)。コントロール n=8;NmU23 n=8。
図4e、Nmur1
-/-およびそのWT同腹仔コントロールをN. brasiliensisに感染させた。ヘマトキシリンおよびエオシン。
図4f、ミエロペルオキシダーゼ染色(顆粒球)および銀染色(好酸球)肺切片。
図4g、顆粒球および好酸球細胞数(細胞/mm
2)。WT n=8;Nmur1
-/- n=8。
図4h、肺における48時間でのN. brasiliensis感染負荷。WT n=3;Nmur1
-/- n=3。スケールバー:50μm。エラーバーは、s.e.mを示す。
*P<0.05;
**P<0.01;
***P<0.001;
****P<0.0001;ns 有意でない。
【0025】
【
図5】ゲノム全域にわたる(genome-wide)ILC2転写プロファイリングおよび神経細胞-ILC2相互作用。
図5a、ILC2、CD4 T細胞、ILC1およびILC3の、加重Unifrac PCoA解析。
図5b、ILC2、CD4 T細胞、ILC1およびILC3集団におけるNmur1の発現レベル。
図5c、
図1e右における共焦点解析の別チャンネル。緑:神経細胞(Ret
GFP);赤:KLRG1;青緑:CD3。
【0026】
【
図6】ニューロメディンUは、NMUR1活性化を介する、肺2型自然サイトカインの強力な制御因子である。
図6a、6b、NmU23によるILC2-内在性活性化。
図6a、肺ILC2におけるIL-5およびIL-13の発現。
図6b、タンパク質レベルにおける2型自然サイトカイン。n=3。
図6c、6d、NmU23のin vivo投与。
図6c、肺におけるILC2由来2型サイトカイン。n=3。
図6d、肺におけるT細胞由来2型サイトカイン。n=3。
図6e、6f、Nmur1のin vivo除去。
図6e、Nmur1
-/-およびそのNmur1
+/+WT同腹仔コントロールにおける肺ILC2。WT n=6;Nmur1
-/- n=9。
図6f、Nmur1
-/-およびそのNmur1
+/+WT同腹仔コントロールにおけるT細胞由来2型サイトカイン。WT n=6;Nmur1
-/- n=6。エラーバーは、s.e.mを示す。
*P<0.05;
**P<0.01;
***P<0.001;
****P<0.0001;ns 有意でない。
【0027】
【
図7】Nmur1はILC2の発達に必要でない。
図7a、7c、競合的(competitive)骨髄キメラ。
図7a、各遺伝子型(CD45.2)について10
6個の細胞を、第三者的(third-party)WT競合相手(CD45.1/CD45.2)による直接的競合(direct competition)において、1:1の比で、非致死的放射線照射(150Rad)NSGマウス(CD45.1)に、静脈内注射した。
図7b、腸におけるドナーILC2の割合および数。WT n=12;Nmur1
-/- n=12。
図7c、肺におけるドナーILC2の割合および数。WT n=12;Nmur1
-/- n=12。エラーバーは、s.e.mを示す。
*P<0.05;
**P<0.01;
***P<0.001;
****P<0.0001;ns 有意でない。
【0028】
【
図8】ニューロメディンUにより調整されている、新規な神経細胞-ILC2ユニット。神経細胞由来のニューロメディンUは、NMUR1依存的にILC2を直接活性化し、寄生虫感染に対する保護を与える炎症および組織修復2型サイトカインの強力な産生をもたらす。ニューロメディンUは、ERKリン酸化およびCa
2+/カルシニューリン/NFATカスケード活性化の下流にある2型サイトカイン発現の誘導を伴ってNMUR1を活性化させる。このモデルは、神経細胞-ILC2細胞ユニットが、ニューロメディンU依存的に、強力かつ即時的な2型反応を一意的に確実にする態勢にあることを示唆している。
【0029】
【
図9】
図9a、肺におけるN. brasiliensis(NB)感染後6日でのNmur1の定量RT-PCR解析。好酸球(Eo);肥満細胞(Mast);マクロファージ(Mo);好中球(Neu);ナイーブ(naive)T細胞(T);2型自然リンパ球系細胞(ILC2)。
図9b、血液からのヒト適応(CD4 T細胞)および2型自然リンパ球ILC2におけるNMUR1発現。
図9c、ペプチドNmU25によるin vitro刺激後のヒトILC2およびTh2における2型サイトカイン遺伝子発現。
図9d、感染前および後(6日目)における肺ILC2におけるNmur1発現。
図9e、リンパ球系共通前駆細胞(CLP);ヘルパー自然リンパ球系共通前駆細胞(CHILP)、骨髄ILC2前駆細胞(ILC2P)およびEo、Mast、Mo、Neu)、樹状細胞(DC);ナイーブT細胞(T);2型ヘルパーT細胞(Th2);メモリーT細胞、B細胞(B)、固有層グリア細胞(G)および神経細胞(N)。n=3~6。
図9f、ペプチドNmU23(100ng/mL)によるin vitro刺激後の腸ILC2およびTh2における2型サイトカイン遺伝子発現。n=3~6。
図9g、腸粘膜固有層の共焦点解析。緑:神経細胞(Ret
GFP);青緑:KLRG1;赤:CD3。青緑:KLRG1。
図9h、ニューロスフィア(neurosphere)由来神経細胞。赤:TUJ1。青:DAPI。
図9i、アラーミン(alarmin)、TLRリガンド、およびN. brasiliensis排泄/分泌タンパク質(NES)によるニューロスフィア由来神経細胞の活性化。
*P<0.05;
**P<0.01;
***P<0.001;
****P<0.0001;ns 有意でない。
【0030】
【
図10】
図10a、NmU23単独(100ng/mL、Phoenix Pharmaceutical)あるいは、NmU23と共に生存サイトカインであるインターロイキン(IL)-2および/またはIL-7(10ng/mL)によりin vitroで一晩刺激した後の、腸ILC2におけるKi67発現。
図10b、NmU23(2日間、4μg/日)のin vivo投与後の腸ILC2における発現。n=5。
図10c、NmU23、マウス組み換えIL-25またはIL-33(R&D)(10、50および100ng/mL、Phoenix Pharmaceutical)により一晩刺激した後の、腸ILC2に貯蔵されたILC2由来2型サイトカイン(IL-5、IL-13およびアンフィレグリン(Areg))。ネガティブコントロール:未刺激ILC2、ポジティブコントロール:ホルボール12-ミリスタート13-アセタート(PMA、50ng/ml)プラス、イオノマイシン(500ng/ml)。n=3。
図10d、NmU23、rIL-25およびrIL-33の用量増加に伴うサイトカイン産生を表すドットプロット。
*P<0.05;
**P<0.01;
***P<0.001;
****P<0.0001;ns 有意でない。
【0031】
【
図11】ILC2は、(
図11a)11R-VIVIT(NFAT活性化を阻害する)(10μM)または(
図11b)シクロスポリンA(CsA、100μM)のいずれかの刺激の前に2時間、FBSを除いた。2型サイトカインの発現を定量RT-PCRで測定した(
図11a、11b)。n=3~6。
図11c、粘膜固有層から除いたILC2をNmU23(100ng/mL)で90分刺激し、固定し、透過処理して、抗NFATモノクローナル抗体(abcam)で染色した。細胞は、共焦点顕微鏡により解析した。
*P<0.05;
**P<0.01;
***P<0.001;
****P<0.0001;ns 有意でない。
【0032】
【
図12】(
図12a~12c)マウスにN. brasiliensisの幼虫を感染させ、NmU23ペプチド(8μg/日)またはPBS(コントロール)で処置した。肺は、感染2日後に解析した。
図12a、コントロール(n=5)と比較した、NmU23処置マウス(n=5)からの肺のILC2反応。
図12b、PBS(n=5)またはNmU23(n=5)で処置した感染マウスの肺における感染負荷。
図12c、コントロールと比較した、NmU23処置した感染マウスの肺における肺出血。(
図12d~12f)マウスにN. brasiliensisの幼虫を感染させ、NmU23ペプチド(8μg/日)またはPBS(コントロール)で処置した。肺および小腸は、感染6日後に解析した。
図12d、好中球および好酸球が、PBSに対しNmu23で処置した感染マウスでは気管支肺胞(BAL)において浸潤している。コントロール n=5;Nmu23 n=5。
図12e、肥満細胞およびマクロファージが、PBSに対しNmu23で処置した感染マウスでは気管支肺胞(BAL)において浸潤している。コントロール n=5;Nmu23 n=5。
図12f、PBS(n=5)またはNmU23(n=5)で処置した感染マウスの小腸における感染負荷。エラーバーは、s.e.mを示す。
*P<0.05;
**P<0.01;
***P<0.001;
****P<0.0001;ns 有意でない。
【0033】
【
図13】Nmur1
-/-およびそのWT同腹仔コントロールを、N. brasiliensisに感染させ、感染6日後に解析した。
図13a、感染後6日目の感染Nmur1
-/-およびそのWT同腹仔コントロールの肺におけるILC2反応。WT n=6; Nmur1
-/- n=8。
図13b、好中球(Neu)および好酸球(Eos)が、感染Nmur1
-/-およびそのWT同腹仔コントロールの気管支肺胞(BAL)において浸潤している。WT n=6;Nmur1
-/- n=7。
図13c、肥満細胞およびマクロファージが、感染Nmur1
-/-およびそのWT同腹仔コントロールの気管支肺胞(BAL)において浸潤している。WT n=6;Nmur1
-/- n=7。エラーバーは、s.e.mを示す。
*P<0.05;
**P<0.01;
***P<0.001;
****P<0.0001;ns 有意でない。
【0034】
【
図14】NmU23により処置された競合的骨髄キメラ。
図14a、各遺伝子型(CD45.2)について10
6個の細胞を、第三者的WT競合相手(CD45.1/CD45.2)による直接的競合において、1:1の比で、非致死的放射線照射(150Rad)NSGマウス(CD45.1)に、静脈内注射した。マウスに、1回、PBSまたはNmU23(20μg)の注射をした。
図14b、肺におけるドナーILC2の割合および数。WT n=5;Nmur1
-/- n=5。
図14c、肺におけるドナーILC2の割合および数。WT n=5;Nmur1
-/- n=5。エラーバーは、s.e.mを示す。
*P<0.05;
**P<0.01;
***P<0.001;
****P<0.0001;ns 有意でない。
【0035】
詳細な説明
グループ2自然リンパ球系細胞(ILC2)は炎症、組織修復、および代謝ホメオスタシスの主要な調節因子である1,2。ILC2の活性化は、宿主由来のサイトカインおよびアラーミンにより示されているが1,2、ILC2がどのように神経細胞由来のシグナルに反応するかについては、不明なままである。
【0036】
本明細書において記載されているように、ILC2はニューロメディンU受容体1(Nmur1)を発現していること、およびニューロメディンUは、ILC2の強力な活性化因子であることが見出された。ニューロメディンUは、NMUR1依存的に、2型サイトカインであるインターロイキン(IL-5)、IL-13およびアンフィレグリンの迅速かつ強力な産生をもたらした。ニューロメディンUは、ILC2下流のERK活性化、ならびにカルシニューリンサイトカインおよびNFATのカルシウム流入依存的活性化を制御していた。In vivoで用いられる場合には、ニューロメディンU処置は即時的な2型反応をもたらした。また、Nmur1の除去は、減弱した2型反応および不十分な寄生虫感染制御を引き起こしたことも示されている。
【0037】
ILC2の活性を増加させる
本明細書において開示される方法は、グループ2自然リンパ球系細胞(ILC2)を、ILC2の活性を増加させるのに有効な量のニューロメディンU受容体1(NMUR1)のアゴニストと接触させることにより、ILC2の活性または増殖を増加させる方法を含む。
本明細書において開示される方法はまた、グループ2自然リンパ球系細胞(ILC2)に関連する疾患を処置する方法であって、かかる処置を必要とする対象に、疾患を処置するのに有効な量のニューロメディンU受容体1(NMUR1)のアゴニストを投与することによる、前記方法を含む。
【0038】
疾患を処置する他の方法は、かかる処置を必要とする対象に、疾患を処置するのに有効な量の活性化されたILC2を含む前記組成物を投与することを含む。これらの方法のいくつかにおいては、活性化されたILC2を含む組成物はまた、ニューロメディンU受容体1(NMUR1)のアゴニストを含む。また、NMUR1のアゴニストは、活性化されたILC2を含む組成物と別に投与されてもよい。
本明細書においてはまた、ILC2に関連する疾患の処置において使用するためのNMUR1のアゴニスト、ならびに、ILC2に関連する疾患の処置において使用するためのILC2(および任意にNMUR1のアゴニスト)を含む組成物も提供される。
【0039】
本明細書において用いられる通り、ニューロメディンU受容体1(NMUR1)は、ロドプシンファミリーの7回膜貫通型受容体であり、FM3、FM-3、GPC-R、Gタンパク質共役型受容体66(GPR66)、およびNMU1Rとしても知られている。本明細書において他の箇所でも記載される通り、NMUR1のアゴニストには、ニューロメディンU(NMU)またはその類似体、NMUR1に特異的に結合して活性化させる抗体またはその抗原結合断片、あるいはNMUR1の低分子リガンドが含まれる。
【0040】
ILC2をNMUR1のアゴニストに接触させることは、ILC2を産生させるために行われるILC2拡張プロトコール(expansion protocol)などのように、in vitroで行われてもよく、また、in vivoで行われてもよい。その中でILC2をNMUR1のアゴニストと接触させることがin vivoで行われる方法のいくつかの態様においては、ヒトなどの対象にNMUR1のアゴニストが投与される。これらの方法のいくつかにおいては、対象は、それ以外ではNMUR1のアゴニストによる処置を必要としない。
【0041】
本開示の方法において、対象はヒトであってもよい。これら方法のいくつかにおいては、対象は、それ以外ではNMUR1のアゴニストによる処置および/または活性化されたILC2による処置を必要としない。本開示の方法により処置可能な疾患には、感染、組織修復、創傷治癒、肥満、2型免疫反応の誘導を増加させることにより処置可能である疾患、代謝制御により処置可能である疾患、好酸球を増加させることにより処置可能である疾患、および、肥満細胞を増加させることにより処置可能である疾患が含まれる。
【0042】
NMUR1のアゴニストおよび/または活性化されたILC2は、あらゆる適した投与経路または送達方法により投与することができる。適した投与経路には、静脈内、経口、経鼻、直腸内、または経皮吸収が含まれる。
NMUR1のアゴニストおよび/または活性化されたILC2は、1日1回、1日2回、1日3回、1日4回、1日おき、1週間に1回、2週間に1回、4週間に1回、(例えば、点滴、パッチ、またはポンプにより)連続的に、などを含む、あらゆる適した間隔で投与することができる。
【0043】
ILC2の活性を減少させる
本明細書において開示されるさらなる方法は、グループ2自然リンパ球系細胞(ILC2)を、ILC2の活性を減少させるのに有効な量のニューロメディンU受容体1(NMUR1)のアンタゴニストまたはニューロメディンU(または両者)のアンタゴニストと接触させることにより、ILC2の活性または増殖を減少させる方法を含む。
【0044】
本明細書において開示される方法はまた、グループ2自然リンパ球系細胞(ILC2)に関連する疾患を処置する方法であって、かかる処置を必要とする対象に、疾患を処置するのに有効な量のニューロメディンU受容体1(NMUR1)のアンタゴニストを投与することによる、前記方法を含む。
本明細書においてはまた、ILC2に関連する疾患の処置における使用のためのNMUR1のアンタゴニストも提供される。
【0045】
本明細書において他の箇所でも記載されている通り、NMUR1のアンタゴニストには、sRNA、shRNA、またはアンチセンス核酸分子などのNMUR1の発現、転写、もしくは翻訳を減少させる阻害性核酸分子;NMUR1に特異的に結合して阻害する抗体、またはその抗原結合断片、あるいはNMUR1の低分子アンタゴニストが含まれる。
【0046】
ILC2をNMUR1のアンタゴニストに接触させることは、in vitroで行われてもよく、また、in vivoで行われてもよい。その中でILC2をNMUR1のアンタゴニストと接触させることがin vivoで行われる方法のいくつかの態様においては、ヒトなどの対象にNMUR1のアンタゴニストが投与される。これらの方法のいくつかにおいては、対象は、それ以外ではNMUR1のアンタゴニストによる処置を必要としない。
本開示の方法において、対象はヒトであってもよい。これら方法のいくつかにおいては、対象は、それ以外ではNMUR1のアンタゴニストによる処置を必要としない。
【0047】
本明細書において開示される、NMUR1のアンタゴニストを投与することにより疾患を処置する方法において、疾患は、アレルギー、アレルギー性喘息、食物アレルギー、好酸球性食道炎、アトピー性皮膚炎、線維症、アレルギー性鼻炎、アレルギー性副鼻腔炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、嚢胞性線維症、2型免疫反応を減少させることにより処置可能である疾患、好酸球を減少させることにより処置可能である疾患、または、肥満細胞を減少させることにより処置可能である疾患であり得る。
【0048】
NMUR1のアンタゴニストは、あらゆる適した投与経路または送達方法により投与することができる。適した投与経路には、静脈内、経口、経鼻、直腸内、または経皮吸収が含まれる。
NMUR1のアンタゴニストは、1日1回、1日2回、1日3回、1日4回、1日おき、1週間に1回、2週間に1回、4週間に1回、(例えば、点滴、パッチ、またはポンプにより)連続的に、などを含む、あらゆる適した間隔で投与することができる。
【0049】
ニューロメディンU受容体1(NMUR1)
NMUR1のアゴニストには、(改変ペプチドおよび複合体を含む)ペプチドアゴニスト、活性化抗体分子、ならびに低分子が含まれる。ペプチドアゴニストには、(NMUもしくはNmUとしても、知られ、本明細書において言及されている)ニューロメディンUまたはその類似体が含まれる。NMUR1アゴニストは、完全にNMUR1に特異的であってもよく、(ニューロメディンU受容体2、NMUR2と比較して)NMUR1に対して選択的に作動する(agonize)ことができてもよく、または、NMUR1およびNMUR2の両者に作動することができてもよい。このようなアゴニストは、NMUR2よりもNMUR1に作動しない場合であっても、有用であり得るが、本明細書において記載される方法において用いられるアゴニストは、NMUR2に対してよりも、より大きい程度にNMUR1に対して作動することが好ましい。本明細書において用いられるように、(ニューロメディンU受容体2、NMUR2と比較して)NMUR1に対して選択的に作動するということは、アゴニストは、NMUR2よりも、NMUR1に対して少なくとも10%、25%、50%、100%、200%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、1000%またはそれを超える程度に、より作動することを意味する。
【0050】
(本明細書においてNMUとしても言及される)ニューロメディンUは、多くの種に保存されている神経ペプチドであり、ブタの小腸から、25アミノ酸残基からなるペプチド(NMU-25)としてまたは8アミノ酸残基からなるペプチド(NMU-8)として、単離された。NMU-8は、ブタNMU25のC末端の8アミノ酸残基からなる。NMU-25はまた、ヒトにおいても存在しており、ヒトにおいて用いるのに好ましい。(NMU-8としても言及される)ヒトNMU-25のC末端の8アミノ酸残基は、ブタNMU-8のC末端8アミノ酸残基のそれと同じである。NMU-25のC末端における8アミノ酸残基は、最も高度に保存されており、このペプチドはNMU-25と同様の活性を有することが示されている。ラットNMUは、23アミノ酸残基からなり、NMU-23として知られている。ラットNMU-23のC末端8残基のアミノ酸配列は、ブタNMU-8のC末端8残基のそれとは、1アミノ酸残基異なる。NMU前駆体タンパク質(およびその切断ペプチド)はまた、本明細書で記載される方法においても用いることができる。NMU前駆体タンパク質は、174アミノ酸の長いタンパク質である。
【0051】
NMU前駆体タンパク質およびNMUのアミノ酸配列は、下記:
NMU前駆体タンパク質
(P48645|NMU_HUMAN Neuromedin-U OS=Homo sapiens GN=NMU PE=1 SV=1)
MLRTESCRPRSPAGQVAAASPLLLLLLLLAWCAGACRGAPILPQGLQPEQQLQLWNEIDDTCSSFLSIDSQPQASNALEELCFMIMGMLPKPQEQDEKDNTKRFLFHYSKTQKLGKSNVVSSVVHPLLQLVPHLHERRMKRFRVDEEFQSPFASQSRGYFLFRPRNGRRSAGFI (配列番号1)
NMU25
FRVDEEFQSPFASQSRGYFLFRPRN(配列番号2)
NMU23
FKAEYQSPSVGQSKGYFLFRPRN(配列番号3)
NMU8
YFLFRPRN(配列番号4)
の通りである。
【0052】
NMUR1のアゴニストには、天然のNMU配列に対してアミノ酸配列において変異を有するがNMUR1に結合して活性化させる機能を保持しているNMU類似体などの、NMU類似体、誘導体、および複合体が含まれる。NMUの類似体、誘導体、および複合体には、Takayamaらの改変ペプチド(ACS Med Chem Lett. 2015 Mar 12; 6(3): 302-307);InookaらのNMU-8類似体(Bioorg Med Chem. 2017 Feb 21. pii: S0968-0896(17)30108-6);the IngallinellaらのNMUのペグ化誘導体(Bioorg Med Chem. 2012 Aug 1;20(15):4751-9);Neunerらのヒト血清アルブミン(HSA)-NMU複合体(J Pept Sci. 2014 Jan;20(1):7-19);Micewiczの切断(truncated)/脂質複合NMU類似体 (Eur J Med Chem. 2015 Aug 28;101:616-26);およびDalbogeらの脂質化NMU類似体(J Pept Sci. 2015 Feb;21(2):85-94)が含まれる。
【0053】
(いずれも、下記化合物の特定の記述のために参照により本明細書に組み込まれる)US2011/0294735およびWO2007/109135において記載されている通り、さらなるNMUR1アゴニストは、一般式(I)
Z1-ペプチド-Z2 (I)
式中、ペプチドは、アミノ酸配列X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7-X8-X9-X10-X11-X12-X13-X14-X15-X16-X17-X18-X19-X20-X21-X22-X23-X24-X25を有し、ここでアミノ酸1~17は、あらゆるアミノ酸であってもよくまた存在していなくてもよく、ここでアミノ酸X18は、存在していないか、Y、W、F、des-アミノ酸またはアシル基であり;アミノ酸X19は、A、W、Y、Fまたは脂肪族アミノ酸であり;アミノ酸X20は、存在していないか、L、G、サルコシン(Sar)、D-Leu、NMe-Leu、D-AlaまたはAであり;アミノ酸X21は、F、NMe-Phe、 脂肪族アミノ酸、芳香族アミノ酸、AまたはWであり;X22は、R、K、AまたはLであり;アミノ酸X23は、P、Sar、AまたはLであり;アミノ酸X24 は、R、HargまたはKであり;およびアミノ酸X25は、N、あらゆるD-もしくはL-アミノ酸、NleまたはD-Nle、Aであり;ならびにZ1は、任意に存在する保護基であり、これは存在する場合には、N末端のアミノ基に結合しており;およびZ2は、NH2はまたは任意に存在する保護基であり、これは存在する場合には、C末端のカルボキシ基に結合している、
および、その薬学的に許容し得る塩を含む。
【0054】
(下記化合物の特定の記述のために参照により本明細書に組み込まれる)US2012/0094898において記載されている通り、さらなるNMUR1アゴニストには、
PEG20k(AL)-β-Ala-Tyr-Nal(1)-Leu-Phe-Arg-Pro-Arg-Asn-NH2、
PEG20k(AL)-β-Ala-Tyr-Nal(2)-Leu-Phe-Arg-Pro-Arg-Asn-NH2、
PEG20k(AL)-NpipAc-Tyr-Nal(2)-Leu-Phe-Arg-Pro-Arg-Asn-NH2、
PEG20k(AL)-NpipAc-Tyr-Nal(2)-Leu-Phe-Arg-Ala-Arg-Asn-NH2、
PEG20k(AL)-PEG(2)-Tyr-Nal(2)-Leu-Phe-Arg-NMeAla-Arg-Asn-NH2、
PEG20k(AL)-Pic(4)-Tyr-Nal(2)-Leu-Phe-Arg-NMeAla-Arg-Asn-NH2、
PEG20k(AL)-Acp-Tyr-Nal(2)-Leu-Phe-Arg-NMeAla-Arg-Asn-NH2、および
PEG20k(AL)-β-Ala-Tyr-Nal(2)-Leu-Pya(4)-Arg-Pro-Arg-Asn-NH2
からなる群から選択されるペプチド誘導体、または前記ペプチド誘導体のいずれかの塩が含まれる。
【0055】
(下記化合物の特定の記述のために参照により本明細書に組み込まれる)WO2011/005611において記載されている通り、さらなるNMUR1アゴニストには、式
Z1-ペプチド-Z2
式中、ペプチドは、アミノ酸配列X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7-X8-X9-X10-X11-X12-X13-X14-X15-X16-X17-X18-X19-X20-X21-X22-X23-X24-X25を有し、
ここでアミノ酸1~17は、あらゆるアミノ酸であってもよくまた存在していなくてもよく、ここでアミノ酸X18は、存在していないか、TyrもしくはD-Tyr、Leu、Phe、Val、Gln、Nle、GluもしくはD-Glu、Asp、Ala、D-Lys、芳香族アミノ酸、des-アミノ酸またはアシル基であり;アミノ酸X19は、Ala、Trp、Tyr、Phe、Glu、Nva、Nleまたは芳香族アミノ酸であり;アミノ酸X20は、存在していないか、Leu、Gly、サルコシン(Sar)、D-Leu、NMe-Leu、D-Ala もしくはAla、またはあらゆるD-もしくはL-アミノ酸であり;アミノ酸X21は、Phe、NMe-Phe、脂肪族アミノ酸、芳香族アミノ酸、AlaまたはTrpであり;X22は、Arg、Lys、Harg、AlaまたはLeuであり;アミノ酸X23は、Pro、Ser、Sar、AlaまたはLeuであり;アミノ酸X24は、Arg、HargまたはLysであり;およびアミノ酸X25は、Asn、あらゆるD-もしくはL-アミノ酸、Nle、またはD-Nle、D-AlaもしくはAlaであり;Z1は、任意に存在する保護基であり、これは存在する場合には、N末端のアミノ基に結合しており;およびZ2は、NH2はまたは任意に存在する保護基であり、これは存在する場合には、C末端のカルボキシ基に結合している、
および、その薬学的に許容し得る塩を含む組成物が含まれる。
【0056】
(下記化合物の特定の記述のために参照により本明細書に組み込まれる)WO2010/138343において記載されている通り、さらなるNMUR1アゴニストには、ニューロメディンUもしくはその類似体が、非マレイミドもしくは非スクシンイミジル結合によりヒト血清アルブミンのシステイン残基34に結合している、ニューロメディンU受容体アゴニスト、またはその薬学的に許容し得る塩を含む組成物が含まれる。
【0057】
(下記化合物の特定の記述のために参照により本明細書に組み込まれる)WO2009/042053において記載されている通り、さらなるNMUR1アゴニストには、下記式:
Z1-ペプチド-Z2
式中、ペプチドは、アミノ酸配列
ILQRGSGTAAVDFTKKDHTATWGRPFFLFRPRN(配列番号5)を有し、ペプチドは、別のアミノ酸による、アミノ酸配列の1つ以上の挿入または置換を有してもよく、および、ペプチドは、アミノ酸配列の1つ以上の欠失を有してもよく;Z1は、任意に存在する保護基であり、これは存在する場合には、N末端のアミノ基に結合しており;およびZ2は、NH2はまたは任意に存在する保護基であり、これは存在する場合には、C末端のカルボキシ基に結合している;
により表されるニューロメディンU受容体アゴニスト、および、その薬学的に許容し得る塩が含まれる。
【0058】
(下記化合物の特定の記述のために参照により本明細書に組み込まれる)WO2009/044918において記載されている通り、さらなるNMUR1アゴニストには、リンカーを介してメトキシポリエチレングリコールで結合しているアミノ酸配列(ここで、アミノ酸配列は、ニューロメディンUのアミノ酸配列のC末端の少なくとも8アミノ酸を含有しており、ニューロメディンUのアミノ酸配列と同一または実質的に同一である)からなるポリペプチドから選択される、ニューロメディンU誘導体が含まれる。
【0059】
ニューロメディンU受容体1(NMUR1)またはニューロメディンU(NMU)のアンタゴニスト
NMUR1のアンタゴニストには、(改変ペプチドおよび複合体を含む)ペプチドアンタゴニスト、阻害性抗体分子、阻害性核酸分子、ならびに低分子が含まれる。NMUR1アンタゴニストは、完全にNMUR1に特異的であってもよく、(ニューロメディンU受容体2、NMUR2と比較して)NMUR1に対して選択的に拮抗する(antagonize)ことができてもよく、または、NMUR1およびNMUR2の両者に拮抗することができてもよい。このようなアンタゴニストは、NMUR1に対してNMUR2よりも拮抗しない場合であっても、有用であり得るが、本明細書において記載される方法において用いられるアゴニストは、NMUR2に対してよりも、より大きい程度にNMUR1に対して拮抗することが好ましい。本明細書において用いられるように、(ニューロメディンU受容体2、NMUR2と比較して)NMUR1に対して選択的に拮抗するということは、アゴニストは、NMUR2よりも、NMUR1に対して少なくとも10%、25%、50%、100%、200%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、1000%またはそれを超える程度に、より拮抗することを意味する。
【0060】
(下記化合物の特定の記述のために参照により本明細書に組み込まれる)US2011/0165144において記載されている通り、さらなるNMUおよびNMUR1アンタゴニストには、
(i)ニューロメディンU(NMU)特異的阻害性核酸、例えば、NMUに対して特異的に標的化されているsiRNA、アンチセンス、アプタマー、またはリボザイム;
(ii)ニューロメディンU(NMU)阻害性ペプチド、例えば、配列Phe-Arg-Pro-Arg-Asn(配列番号6)を含むペプチド;あるいは
(iii)NMU-R(例えば、NMUR1)に結合して、NMUシグナリングを阻害する(例えば、NMUのNMU-R1への結合を阻害する)、抗体またはそれに結合する抗原結合断片
が含まれる。
【0061】
適したNMUR1アンタゴニストにはまた:
(i)ニューロメディンU受容体1(NMUR1)特異的阻害性核酸、例えば、NMUR1に対して特異的に標的化されているsiRNA、アンチセンス、アプタマー、またはリボザイム;
が含まれてもよく、あるいは、
適したNMUR1アンタゴニストにはまた:
(i)免疫グロブリンFc領域などの、安定性もしくは他の機能のために他のポリペプチド配列に、任意に結合もしくは融合したNMUR1の細胞外部分(例えば、UniProtKB - Q9HB89のアミノ酸1~65)などの、NMUに結合する可溶性NMUR1分子;および
(ii)NMU(例えば、NMU-8、NMU-23、もしくはNMU-25)に結合して、NMUシグナリングを阻害する(例えば、NMUのNMU-R1への結合を阻害する)、抗体またはそれに結合する抗原結合断片
が含まれてもよい。
【0062】
対象とは、ヒトまたは脊椎哺乳動物を意味するものとし、イヌ、ネコ、ウマ、ヤギおよび非ヒト霊長類、例えば、サル、を含むがこれらに限定されない。好ましくは、対象はヒトである。いくつかの態様において、対象は、それ以外ではNMUR1アゴニストまたはNMUR1アンタゴニストによる処置を必要としていない対象である。したがって、具体的に同定された態様において、対象は、NMUR1アゴニストまたはNMUR1アンタゴニストがそれに対して同定された処置形態となっている障害であると、以前に診断されていない対象であってもよい。
【0063】
対象は、本明細書において開示される方法によって処置可能である疾患を有する対象などの、処置を必要とする対象として、最初に同定され、次いでNMUR1アゴニスト(および/または活性化されたILC2)またはNMUR1アンタゴニストにより処置されてもよい。当業者は、本明細書において開示されている方法により処置可能である疾患を有するとして対象を同定するための方法を認識している。
【0064】
本明細書において用いられている通り、「処置する」、「処置された」または「処置している」という用語は、疾患を緩和し(疾患改善)、疾患の症状を緩和し、疾患が悪化するのを防ぎ、または治療のない場合と比較して、疾患の進行を遅延させる、疾患の処置を言う。
本明細書において用いられている通り、「グループ2自然リンパ球系細胞(ILC2)に関連する疾患」は、ILC2が疾患または障害の発症、持続または悪化において何らかの役割を果たす疾患または障害である。
【0065】
本明細書において開示される方法のいくつかにおいて、かかる疾患は、ILC2の活性または増殖を増加させることにより、例えば、ILC2を、ILC2の活性を増加させるのに有効な量のニューロメディンU受容体1(NMUR1)のアゴニストと接触させることにより;かかる処置を必要とする対象に、疾患を処置するのに有効な量のNMUR1のアゴニストを投与することにより;または疾患を処置するのに有効な量の活性化されたILC2(および任意にNMUR1のアゴニスト)を投与することにより、効果的に処置することができる。
【0066】
かかる方法によって処置可能である疾患には、感染、組織修復、創傷治癒、肥満、2型免疫反応の誘導を増加させることにより処置可能である疾患、代謝制御により処置可能である疾患、好酸球を増加させることにより処置可能である疾患、および、肥満細胞を増加させることにより処置可能である疾患が含まれる
【0067】
本明細書において開示される他の方法において、疾患は、ILC2の活性または増殖を減少させることにより、例えば、ILC2を、ILC2の活性を減少させるのに有効な量のニューロメディンU受容体1(NMUR1)のアンタゴニストと接触させることにより;またはかかる処置を必要とする対象に、疾患を処置するのに有効な量のNMUR1のアンタゴニストを投与することにより、効果的に処置することができる。
【0068】
かかる方法によって処置可能である疾患には:アレルギー、アレルギー性喘息、食物アレルギー、好酸球性食道炎、アトピー性皮膚炎、線維症、アレルギー性鼻炎、アレルギー性副鼻腔炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、嚢胞性線維症、2型免疫反応を減少させることにより処置可能である疾患、好酸球を減少させることにより処置可能である疾患、または、肥満細胞を減少させることにより処置可能である疾患、が含まれる。
【0069】
本発明の方法の毒性および有効性は、例えば、LD50(集団の50%に致死的な用量)またはTD50(集団の50%に毒性である用量)、およびED50(集団の50%に治療的に有効な用量)を決定するための、細胞培養物または実験動物における標準的な薬学的手順により決定することができる。毒性効果と治療効果との間の用量比は治療指数であり、これは比LD50/ED50またはTD50/ED50として表すことができる。大きい治療指数を示す治療剤が好ましい。毒性の副作用を示す治療剤を使用することはできるが、その場合には、他の細胞または組織への潜在的な損傷を最小限に抑え、それによって副作用を軽減するために、かかる薬剤を患部組織の部位に標的化する送達システムを用いることが好ましい。
【0070】
細胞培養アッセイおよび/または動物研究から得られたデータは、ヒトにおける使用のための治療剤の投与量の範囲を策定するのに用いることができる。かかる薬剤の投与量は、毒性がほとんどまたは全くないED50を含む、循環濃度の範囲内にあることが好ましい。投与量は、この範囲内で、使用される投与形態および利用される投与経路に依存して変化し得る。本発明の方法で用いられるあらゆる薬剤について、治療有効用量は、細胞培養アッセイから初めに推定することができる。用量は動物モデルで処方して、細胞培養で決定される通りのIC50(すなわち、症状の半分~最大の阻害を達成する試験化合物の濃度)を含む循環血漿濃度範囲を達成することができる。かかる情報は、ヒトにおいて有用な用量をより正確に決定するために用いることができる。
【0071】
特定の態様において、医薬組成物は、例えば、少なくとも約0.1%の活性化合物を含み得る。他の態様において、活性化合物は、単位重量の約2%~約75%、または例えば約25%~約60%、およびその中で誘導可能なあらゆる範囲を含み得る。他の、より高いパーセンテージの活性化合物もまた用いることができる。
【0072】
いくつかの態様において、医薬組成物はまた滅菌されていてもよく、好ましくは滅菌されている。他の態様において、化合物は単離されてもよい。本明細書において用いられる通り、用語「単離された」とは、参照の物質がその天然の環境、例えば細胞、から取り出されることを意味する。したがって、単離された生物学的物質は、いくつかまたはすべての細胞構成成分、すなわち天然物質が天然に存在しているところの細胞の構成成分(例えば、細胞質または膜構成成分)を含まなくてもよい。核酸分子の場合、単離された核酸には、PCR産物、単離されたRNA、siRNAなどの合成的に(例えば化学的に)生成されたRNA、アンチセンス核酸、アプタマー等が含まれる。単離された核酸分子には、プラスミド、コスミド、または他のベクターに挿入されてキメラ組換え核酸構築物の一部を形成するか、あるいはそれをコードする核酸の発現によって産生される、配列が含まれる。したがって、特定の態様において、組換え核酸は単離された核酸である。単離されたタンパク質は、それが細胞内で会合する他のタンパク質もしくは核酸もしくはその両方と会合してもよく、または膜結合タンパク質であれば細胞膜と会合してもよく、あるいは合成的に(例えば、化学的に)産生されてもよく、またはそれをコードする核酸の発現によって産生されてもよい。ILC2細胞などの単離された細胞は、それが生物中に見出される解剖学的部位から取り出されてもよく、または単離された細胞もしくは細胞集団のin vitroでの拡大によって産生されてもよい。単離された物質は精製されていてもよいが、必ずしもその必要はない。
【0073】
タンパク質、核酸、または細胞もしくは細胞集団に関して「精製された」という用語は、所望の目的のために医師がその精製された物質を使用するのに十分な程度まで、所望の物質を混入物質から分離することを指す。好ましくは、これは、出発物質または天然物質について、少なくとも1桁分の精製が達成され、より好ましくは2または3桁分、最も好ましくは4または5桁分の精製が達成されることを意味する。特定の態様において、精製されたNMUR1のアゴニストまたはNMUR1のアンタゴニストまたはILC2集団は、全タンパク質または核酸または細胞集団のうちの、場合により重量で、少なくとも60%、少なくとも80%、または少なくとも90%である。特定の態様において、精製されたNMUR1のアゴニストまたはNMUR1のアンタゴニストまたはILC2集団は、標準的な関連実験プロトコールによってアッセイされるように、均一に精製される。
いくつかの態様において、精製およびまたは単離された分子は、合成分子である。
【0074】
本明細書に記載の化合物の対象用量は、典型的には、約0.1μg~10,000mg、より典型的には約1μg/日~8000mg、最も典型的には約10μg~100μgの範囲である。対象の体重の観点から述べると、典型的な投薬量の範囲は、投与あたり、約1μg/kg/体重、約5μg/kg/体重、約10μg/kg/体重、約50μg/kg/体重、約100μg/kg/体重、約200μg/kg/体重、約350μg/kg/体重、約500μg/kg/体重、約1mg/kg/体重、約5mg/kg/体重、約10mg/kg/体重、約50mg/kg/体重、約100mg/kg/体重、約200mg/kg/体重、約350mg/kg/体重、約500mg/kg体重から、約1000mg/kg体重またはそれ以上まで、およびその中で導き出せるあらゆる範囲である。本明細書に列挙した数から導き出せる範囲の非限定的な例において、上記の数値に基づき、約1mg/kg/体重~約100mg/kg/体重、約5μg/kg/体重~約500mg/kg/体重などの範囲を投与することができる。絶対量は、同時処置、用量数、および年齢、身体状態、サイズおよび体重を含む個々の患者のパラメータを含む様々な要因に依存する。これらは当業者によく知られた要因であり、日常的な実験のみで対処することができる。一般に、最大用量、すなわち妥当な医学的判断による最も高い安全な用量、を使用することが好ましい。本発明の分子の複数用量もまた意図される。
【0075】
本明細書に記載の化合物および/または細胞は、本明細書に記載の疾患の処置のために、単独で他の活性治療薬なしで使用してもよく、または他の治療化合物と組み合わせてもよい。
【0076】
本明細書に記載の化合物および細胞と組み合わせて使用する場合には、副作用を回避するために、いくつかの例では既知の治療薬の投薬量を減らすことができる。いくつかの例において、本明細書に記載の化合物および/または細胞を別の治療薬とともに投与する場合、本明細書に記載の化合物および/または細胞または既知の治療薬のいずれかの治療用量未満、あるいは両者の治療用量未満を、対象の処置に使用することができる。本明細書で使用される「治療用量未満」とは、他の薬剤の非存在下で投与された場合に、対象において治療結果を生じるであろう投薬量より少ない投薬量をいう。したがって、既知の治療薬の治療用量未満とは、本明細書に記載の化合物および細胞の投与の非存在下では、対象において所望の治療結果を生じないであろうものである。本明細書に記載される疾患の既存の治療薬は、医学の分野でよく知られており、Remington's Pharmaceutical Sciencesなどの参考文献;ならびに医療の専門家が処置の指針として信頼している多くの他の医学文献において記載され得る。
【0077】
本明細書に記載の化合物および/または細胞を他の治療剤と組み合わせて投与する場合、かかる投与は、同時または逐次的であってよい。他の治療剤が同時に投与される場合、それらは同じかまたは別の製剤中で投与することができるが、同時に投与される。他の治療剤ならびに本明細書に記載の化合物および/または細胞の投与はまた、時間的に分離することもでき、これは、他の治療剤が、本明細書に記載の化合物および細胞の投与の前後いずれかの、異なる時間に投与されることを意味する。これらの化合物の投与間の時間間隔は数分であってもよく、またはそれより長くてもよい。
【0078】
本発明の活性剤(例えば、本明細書に記載の化合物および細胞)は、疾患を処置するのに有効な量で、対象に投与される。本発明のいくつかの側面によれば、有効量は、処置される疾患に依存して、NMUR1アゴニスト(および/または活性化されたILC2)またはNMUR1アンタゴニスト単独、あるいは別の薬剤との組み合わせの量であり、これは、組み合わせもしくは同時投与または単独投与されると、疾患に対する治療的応答をもたらす。生物学的効果は、疾患または疾患に起因する症状の、緩和および/または完全な消失であり得る。別の態様において、生物学的効果は、例えば、疾患の症状がないことにより証明される通りの、疾患の完全な解消である。
【0079】
本明細書に記載の疾患の処置における本発明の方法において用いられる化合物(すなわち、アゴニスト、アンタゴニスト、またはILC2のいずれか)の有効量は、用いられる特定の化合物、化合物の送達様式、およびそれが単独でまたは組み合わせて用いられるかどうかに依存して変化し得る。あらゆる特定の用途のための有効量はまた、処置される疾患、投与される特定の化合物、対象のサイズ、または疾患もしくは状態の重篤度などの要因に依存して変化し得る。当業者は、過度の実験を必要とすることなく、当該分野で知られている日常的かつ受け入れられた方法を用いて、本発明の特定分子の有効量を経験的に決定することができる。本明細書において提供される教示と組み合わせて、様々な活性化合物から選択し、ならびに、効力、相対的バイオアベイラビリティ、患者の体重、有害な副作用の重篤度および好ましい投与様式などの因子を検討することによって、実質的な毒性を引き起こさないが特定の対象を処置するのに有効な、効果的な治療処置レジメンを計画することができる。
【0080】
本発明の医薬組成物は、薬学的に許容し得る担体中に溶解または分散された、有効量の1つ以上の薬剤を含む。「薬学的または薬理学的に許容し得る」という語句は、動物(例えば、ヒト)に適切に投与された場合に、有害な、アレルギー性のまたは他の不適当な反応を生じない、分子実体および組成物をいう。さらに、動物(例えば、ヒト)投与では、調製物は、関連する政府規制機関によって要求される通りの、無菌性、発熱原性、一般的安全性および純度の基準を満たすべきであることが理解される。化合物は、一般にヒトへの投与に適している。この用語は、化合物または組成物が無毒性かつ十分に純粋であるために、ヒトへの投与前に、化合物または組成物のさらなる操作を必要としないことを要求する。
【0081】
本明細書において用いられる通り、「薬学的に許容し得る担体」には、あらゆるおよび全ての溶媒、分散媒、コーティング、界面活性剤、酸化防止剤、防腐剤(例えば抗菌剤、抗真菌剤)、等張剤、吸収遅延剤、塩、防腐剤、薬物、薬物安定剤、ゲル、結合剤、賦形剤、崩壊剤、潤滑剤、甘味剤、香味剤、色素、同様の物質およびこれらの組合せであって、当業者に既知のものが含まれる(例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Remington's Pharmaceutical Sciences(1990)を参照。)。あらゆる従来の担体が活性成分と不適合である場合を除いて、治療または医薬組成物におけるそれらの使用が考慮される。
【0082】
本明細書に記載の通りに用いられる治療用組成物は、それらが固体、液体またはエアロゾル形態で投与されるかどうか、および注入などの投与経路について滅菌である必要があるかどうかに応じて、異なる種類の担体を含むことができる。本明細書に記載の化合物および/または細胞は、静脈内、皮内、動脈内、病巣内、頭蓋内、関節内、鼻腔内、硝子体内、膣内、直腸内、局所(topically)、筋肉内、腹腔内、皮下、膀胱内、粘膜、経口、局所(locally)、吸入により(例えば、エアロゾル吸入)、注入により、連続的点滴を含む点滴により、局部的灌流により、カテーテルを介して、灌流を介して、クリームで、脂質組成物(例えば、リポソーム)で、または当業者に知られている他の方法また前記のあらゆる組合せにより(例えば、Remington's Pharmaceutical Sciencesを参照)、および処置される疾患に適切であるように、投与することができる。
【0083】
あらゆる場合において、組成物は、1つ以上の構成成分の酸化を遅らせるために様々な酸化防止剤を含むことができる。さらに、微生物活動の抑制は、パラベン(例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン)、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールまたはそれらの組み合わせを含むがこれに限定されない、様々な抗菌剤および抗真菌剤などの防腐剤によって、もたらすことができる。
【0084】
本明細書に記載の化合物は、遊離塩基、中性または塩の形態で組成物中に製剤化することができる。薬学的に許容し得る塩には、酸付加塩、例えばタンパク質性組成物の遊離アミノ基により形成されたもの、あるいは、塩酸もしくはリン酸などの無機酸、または酢酸、シュウ酸、酒石酸またはマンデル酸などの有機酸により形成されたものが含まれる。遊離カルボキシル基により形成される塩はまた、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウムまたは水酸化第二鉄などの無機塩基;あるいはイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジンまたはプロカインなどの有機塩基に由来することができる。
【0085】
本明細書に記載の化合物および/または細胞が液体形態中に存在する態様においては、担体は、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、脂質(例えば、トリグリセリド、植物油、リポソーム)およびそれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない、溶媒または分散媒であってもよい。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用により;例えば液体ポリオールまたは脂質などの担体中での分散による必要な粒子サイズの維持により;例えばヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤の使用により;あるいは、かかる方法の組み合わせにより、維持することができる。多くの場合、例えば糖、塩化ナトリウムまたはそれらの組み合わせなどの等張剤を含むことが好ましいであろう。
【0086】
本明細書に記載の化合物および/または細胞は、様々な方法で、および異なるクラスのレシピエントに投与することができる。いくつかの例において、投与は長期的である。長期的投与とは、疾患を処置するための薬物の長い期間にわたる投与をいう。長期的投与は、必要に応じて行われてもよく、または定期的に計画された間隔で行われてもよい。例えば、本明細書に記載の化合物および/または細胞は、1日2回、1日3回、1日4回、1日おき、週に1回、2週間に1回、4週間に1回、(例えば、点滴、パッチ、またはポンプにより)連続的に等で、投与され得る。
【0087】
本明細書に記載の化合物および/または細胞は、組織に直接投与することができる。直接的組織投与は、直接注射によって達成してもよい。化合物は1回投与してもよく、または複数回投与で投与してもよい。複数回投与する場合は、化合物は異なる経路で投与してもよい。例えば、最初の(または最初の数回の)投与は患部組織に直接行ってもよく、後の投与は全身的であってよい。
【0088】
本明細書に記載の化合物および/または細胞は、薬学的に許容し得る濃度の塩、緩衝剤、防腐剤、適合性担体、アジュバントおよび任意に他の治療成分を日常的に含有し得る、薬学的に許容し得る溶液で投与される。
本明細書に記載の方法によれば、本明細書に記載の化合物および/または細胞は、医薬組成物で投与することができる。一般に医薬組成物は、本発明の化合物および薬学的に許容し得る担体を含む。本明細書に記載の化合物および/または細胞に有用な薬学的に許容し得る担体は、当業者によく知られている。本明細書において用いられる通り、薬学的に許容し得る担体は、本明細書に記載の化合物および/または細胞の生物学的活性の有効性に干渉しない、非毒性物質を意味する。
【0089】
薬学的に許容し得る担体には、希釈剤、充填剤、塩、緩衝剤、安定剤、可溶化剤および当該分野でよく知られている他の物質が含まれる。特にペプチドに対する薬学的に許容し得る担体の例は、米国特許第5,211,657号に記載されている。かかる調製物は通常、塩、緩衝剤、防腐剤、適合性担体、および任意に他の治療剤を含有してもよい。医薬に用いられる場合、塩は薬学的に許容し得るものであるべきだが、薬学的に許容し得ない塩は、その薬学的に許容し得る塩を調製するために便宜的に使用してもよく、本発明の範囲から排除されない。かかる薬理学的および薬学的に許容し得る塩には、限定されないが、以下の酸:塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、クエン酸、ギ酸、マロン酸、コハク酸などから調製されるものが含まれる。また、薬学的に許容し得る塩は、ナトリウム、カリウムまたはカルシウム塩などの、アルカリ金属塩またはアルカリ土類塩として調製することができる。
【0090】
本明細書に記載の化合物および/または細胞は、錠剤、カプセル、粉末、顆粒、軟膏、溶液、坐剤、吸入剤および注射剤、ならびに経口、非経口または外科的投与のための通常の方法などの、固体、半固体、液体または気体形態の製剤中に製剤化することができる。本発明はまた、インプラントなどによる局所投与用に製剤化された医薬組成物も包含する。
【0091】
経口投与に適した組成物は、カプセル、錠剤、ロゼンジなどの個別の単位として提供されてもよく、それぞれが所定量の活性剤を含有する。他の組成物には、シロップ、エリキシルまたはエマルジョンなどの、水性液体または非水性液体中の懸濁液が含まれる。
【0092】
経口投与については、化合物は、活性化合物を当分野でよく知られている薬学的に許容し得る担体と組み合わせることによって、容易に製剤化することができる。かかる担体は、本発明の化合物を、処置される対象による経口摂取のための錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などとして、製剤化することを可能にする。経口使用のための医薬調製物は、固体賦形剤として得ることができ、任意に、得られた混合物を粉砕し、所望により適切な助剤を加えた後に、顆粒混合物を加工して、錠剤または糖衣錠コアを得る。適切な賦形剤は、特に、ラクトース、スクロース、マンニトール、またはソルビトールを含む糖;例えばトウモロコシデンプン、コムギデンプン、米デンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース調製物、および/またはポリビニルピロリドン(PVP)などの充填剤である。所望により、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、または、アルギン酸もしくは、アルギン酸ナトリウムなどのその塩、などの崩壊剤を添加してもよい。任意に、経口製剤はまた、生理食塩水または内部酸性条件を中和するための緩衝液中に製剤化してもよく、または全く担体なしで投与してもよい。
【0093】
糖衣錠コアには適切なコーティングが施される。この目的のために、濃縮糖溶液を用いることができ、これは任意に、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタン、ラッカー溶液、および適切な有機溶媒または溶媒混合物を含み得る。識別のために、または活性化合物用量の異なる組合わせを特徴付けるために、色素または顔料を錠剤または糖衣錠コーティングに添加してもよい。
【0094】
経口で用いることができる医薬製剤には、ゼラチン製のプッシュフィット(push-fit)カプセル、ならびにゼラチンおよびグリセロールまたはソルビトールなどの可塑剤でできた軟質密封カプセルが含まれる。プッシュフィットカプセルは、活性成分を、ラクトースなどの充填剤、デンプンなどの結合剤、および/またはタルクまたはステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、および任意に安定剤と混合して含有することができる。軟質カプセルにおいて、活性化合物は、脂肪油、流動パラフィン、または液体ポリエチレングリコールなどの適切な液体に溶解または懸濁されてもよい。さらに、安定剤を添加してもよい。経口投与用に製剤化されたマイクロスフェアを用いることもできる。かかるマイクロスフェアは、当該分野において十分に定義されている。経口投与のための全ての製剤は、かかる投与に適した投薬量でなければならない。
口腔投与のために、組成物は、従来の方法で製剤化された錠剤またはロゼンジの形態をとり得る。
【0095】
吸入による投与のために、本明細書に記載の化合物および/または細胞は、適切な推進剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、または他の適切なガスの使用による、加圧パックまたはネブライザーからのエアロゾルスプレー提示の形態で、便利に送達することができる。加圧エアロゾルの場合において、投薬量単位は、計量された量を送達するためのバルブを提供することによって決定され得る。吸入器または注入器での使用のための、例えばゼラチンなどのカプセルおよびカートリッジは、化合物およびラクトースまたはデンプンなどの適切な粉末基剤との粉末混合物を含有するように、製剤化することができる。エアロゾル送達システムを調製するための技術は、当業者によく知られている。一般に、かかるシステムは、活性剤の生物学的特性を著しく減弱させない構成成分を利用すべきである(例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences参照)。当業者は、過度の実験に頼ることなく、エアロゾルを製造するための様々なパラメータおよび条件を、容易に決定することができる。
【0096】
化合物は、それらを全身に送達することが望ましい場合、例えば、ボーラス注射または連続的な点滴などの、注入による非経口投与のために製剤化することができる。注射用製剤は、単位剤形、例えば、アンプルまたは複数用量容器中に、防腐剤を加えて提供することができる。組成物は、油性または水性ビヒクル中の懸濁液、溶液またはエマルジョンなどの形態をとり、懸濁剤、安定化剤および/または分散剤などの処方剤を含有し得る。
【0097】
非経口投与のための製剤には、滅菌の水性または非水性溶液、懸濁液およびエマルジョンが含まれる。非水性溶媒の例としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、およびオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルである。水性担体には、水、アルコール/水溶液、エマルジョンまたは懸濁液(生理食塩水および緩衝媒体を含む)が含まれる。非経口ビヒクルには、塩化ナトリウム溶液、リンガーデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸リンガーまたは固定油が含まれる。静脈内ビヒクルには、流体および栄養補充剤、電解質補充剤(リンガーデキストロースに基づくものなど)等が含まれる。防腐剤および他の添加剤、例えば抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤、および不活性ガスなども存在してよい。より低い用量は、静脈内投与などの他の投与形態から生じる。対象における応答が最初の用量で不十分である場合には、より高い用量(または異なるより局所的な送達経路による、効果的なより高い用量)を、患者の耐容性が許す範囲で使用してもよい。1日に複数回の投与は、化合物の適切な全身レベルを達成するために考慮される。
【0098】
さらに他の態様において、本明細書に記載の化合物および/または細胞用のビヒクルは、哺乳動物レシピエントへの移植に適した生体適合性のマイクロ粒子またはインプラントである。例示的な生体内分解性インプラントは、当該分野において知られている。インプラントは、マイクロスフェア(薬剤が固体ポリマーマトリックス全体に分散されている)またはマイクロカプセル(薬剤がポリマーシェルのコアに貯蔵されている)などのマイクロ粒子の形態のポリマーマトリックスであってもよい。薬剤を含有するためのポリマーマトリックスの他の形態には、フィルム、コーティング、ゲル、インプラント、およびステントが含まれる。ポリマーマトリックスデバイスのサイズおよび組成は、マトリックスデバイスが移植される組織において好ましい放出動態をもたらすように選択される。ポリマーマトリックスデバイスのサイズはさらに、用いられる送達方法、典型的には組織への注射、あるいは鼻および/または肺領域へのエアロゾルによる懸濁液の投与に従って選択される。ポリマーマトリックス組成物は、良好な分解速度を有し、また生体接着性の材料で形成されるように選択することができ、デバイスが血管、肺、または他の表面に投与された場合の移動の有効性をさらに高める。マトリックス組成物はまた、分解せず、むしろ長期間にわたって拡散により放出するよう選択することもできる。
【0099】
本明細書に記載の化合物および/または細胞を対象に送達するために、非生分解性および生分解性の両方のポリマーマトリックスを用いることができる。生分解性マトリックスが好ましい。かかるポリマーは、天然または合成ポリマーであってもよい。ポリマーは、放出が所望される期間に基づいて、一般的には数時間から1年またはそれ以上のオーダーで選択される。典型的には、数時間から3~12ヶ月の範囲の放出が最も望ましい。ポリマーは任意に、水中で重量の約90%まで吸収することができるヒドロゲルの形態であり、これはさらに、任意に多価イオンまたは他のポリマーと架橋されている。
【0100】
一般に、本明細書に記載の化合物および/または細胞は、拡散による、またはより好ましくはポリマーマトリックスの分解による、生体内分解性インプラントを用いて送達され得る。生分解性送達システムを形成するために用いることができる例示の合成ポリマーには、以下が含まれる:ポリアミド、ポリカーボナート、ポリアルキレン、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンオキシド、ポリアルキレンテレフタラート、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルエステル、ポリビニルハライド、ポリビニルピロリドン、ポリグリコリド、ポリシロキサン、ポリウレタンおよびそのコポリマー、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、セルロースエーテル、セルロースエステル、ニトロセルロース、アクリルエステルおよびメタクリルエステルのポリマー、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、セルロースアセタート、セルロースプロピオナート、セルロースアセタートブチラート、セルロースアセタートフタラート、カルボキシエチルセルロース、セルローストリアセタート、セルロース硫酸ナトリウム塩、ポリ(メチルメタクリラート)、ポリ(エチルメタクリラート)、ポリ(ブチルメタクリラート)、ポリ(イソブチルメタクリラート)、ポリ(ヘキシルメタクリラート)、ポリ(イソデシルメタクリラート)、ポリ(ラウリルメタクリラート)、ポリ(フェニルメタクリラート)、ポリ(メチルアクリラート)、ポリ(イソプロピルアクリラート)、ポリ(イソブチルアクリラート)、ポリ(オクタデシルアクリラート)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンテレフタラート)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリビニルアセタート、ポリビニルクロリド、ポリスチレンおよびポリビニルピロリドン。
【0101】
非生分解性ポリマーの例には、エチレンビニルアセタート、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリアミド、それらのコポリマーおよび混合物が含まれる。
他の送達システムには、時間放出、遅延放出または持続放出送達システムが含まれ得る。かかるシステムは、化合物の反復投与を避けることができ、対象および医師の利便性を高める。多くの種類の放出送達システムが利用可能であり、当業者に知られている。それらには、ポリ(ラクチド-グリコリド)、コポリオキサレート、ポリカプロラクトン、ポリエステルアミド、ポリオルトエステル、ポリヒドロキシ酪酸、およびポリ無水物などの、ポリマーベースシステム、が含まれる。かかる送達システムはまた、コレステロールなどのステロール、コレステロールエステルおよび脂肪酸またはモノ-、ジ-およびトリ-グリセリドなどの中性脂肪を含む脂質などの、非ポリマーシステム;ヒドロゲル放出システム;シラスティックシステム;ペプチドベースのシステム;ワックスコーティング;従来の結合剤および賦形剤を用いた圧縮錠剤;部分融合インプラント;等が含まれる。さらに、ポンプベースのハードウェア送達システムを用いることができ、そのうちのいくつかは移植のために適合される。
【0102】
長期持続放出インプラントの使用は、慢性疾患の処置に特に適している場合がある。長期放出は、本明細書において用いられる通り、インプラントが、治療レベルの活性成分を少なくとも30日間、好ましくは少なくとも60日間、送達するように構築され配置されることを意味する。長期持続放出インプラントは当業者によく知られており、上記のシステムのいくつかを含む。
【0103】
したがって、本明細書に記載される化合物および/または細胞は、いくつかの態様において、治療または研究用途におけるそれらの使用を容易にするために、製薬または研究キットに組み立てられてもよい。キットは、本発明の構成成分を収容する1つ以上の容器および使用説明書を含んでよい。具体的には、かかるキットは、本明細書に記載される1つ以上の化合物および/または細胞を、意図された治療用途およびこれらの薬剤の適切な投与について記載する説明書とともに、含んでもよい。特定の態様において、キット内の本明細書に記載の化合物および/または細胞は、特定の用途および薬剤の投与方法に適した医薬製剤および投薬量であることができる。
【0104】
キットは、パウチ内にばらばらにパックされた付属品、1つ以上のチューブ、容器、ボックスまたはバッグを伴った、ブリスターパウチ、シュリンク包装パウチ、真空密閉可能パウチ、密閉可能な熱成形トレイ、または類似のパウチまたはトレイ形態などの様々な形態をとることができる。付属品を追加した後にキットを殺菌してもよく、それにより容器内の個々の付属品をそれ以外では包装されていなくてよいようにする。キットは、放射線滅菌、加熱滅菌、または当該分野で知られている他の滅菌方法などの、あらゆる適切な滅菌技術を用いて滅菌することができる。キットはまた、特定の用途に応じて、他の構成要素、例えば、容器、細胞培地、塩、緩衝液、試薬、シリンジ、針、消毒剤の適用または除去のためのガーゼなどの布地、使い捨て手袋、投与前の薬剤のサポートなどを含んでもよい。
【0105】
本発明はまた、完成し包装およびラベル付けされた医薬品をも包含する。この製造品は、適当な単位剤形を、ガラスバイアルまたは密閉された他の容器などの適当な器または容器の中に含む。非経口投与に適した剤形の場合、活性成分は滅菌されており、粒子状物質非含有溶液として投与するのに適している。すなわち、本発明は非経口溶液および凍結乾燥粉末の両方を包含し、それぞれは滅菌されており、後者は注射前に再構成するのに適している。また、単位剤形は、経口、経皮、局所または粘膜送達に適した固体であってもよい。
以下の例は、本発明の実施の具体例を説明するために提供され、本発明の範囲を限定することを意図しない。当業者には明らかであるように、本発明は、様々な組成物および方法において用途が見出されるであろう。
【0106】
例
材料および方法
マウス:C57BL/6J(B6)マウスはCharles Riverから購入した。
Nod/Scid/Gamma(NSG)マウスは、 Jackson Laboratoryから購入した。Nmur1欠失を含む、系C57BL/6N-Nmur1tm1.1(KOMP)Vlcgの精子をアメリカ合衆国のUniversity of California Davis and Children’s Hospital Oakland Research Instituteにあるthe KOMP Repositoryから得た。Nmur1-/-マウスは、Champalimaud Centre for the Unknown, Portugalでのin vitro受精により作製した。RetGFP
16 マウスは、C57BL/6Jバックグラウンドであった。すべての系統をiMM Lisboa動物施設で交配、維持した。マウスは、特定病原体非感染条件下で、共飼育の同腹仔コントロールと系統的に比較した。雄と雌の両方をこの研究では使用した。すべての動物実験は、国家および制度上の倫理委員会、それぞれDirecao Geral de VeterinariaおよびiMM Lisboa ethical committeeによって承認された。他に記述されていない限り、ランダム化およびブラインドは使用しなかった。パワー解析を行って、実験マウスの数を推定した。
【0107】
遺伝子発現マイクロアレイデータの解析:神経系経路に関連する239種の遺伝子プロファイルを、Affymetrix Mouse Gene 1.0 ST Array データセット(GEO accession number GSE37448)10に基づいて、マウスリンパ球系細胞において行った。(バックグラウンド修正および標準化を含む)マイクロアレイデータの前処理は、統計ソフトウェアenvironment R32のためのBioconductor package affy31が含まれるロバスト(robust)マルチアレイ(RMA)法を適用して行った。線形モデルおよびB(経験的ベイズ)統計を示差遺伝子発現解析において採用し、Bioconductor package limma33を用いた。マイクロアレイデータ解析に関連するプロットは、Rで作製した。
【0108】
骨髄移植:Nmur1-/-およびWT同腹仔コントロールの骨髄細胞を大腿骨および脛骨から流出させた。骨髄細胞は、Dynabeads Biotin Binder (Thermo Fisher Scientific)を用い、製造者の説明書にしたがって、CD3枯渇させた(CD3-depleted)。各遺伝子型(CD45.2)について106個の細胞を、第三者的WT競合相手(CD45.1/CD45.2)による直接的競合において、1:1の比で、非致死的放射線照射(150Rad)NSGマウス(CD45.1)に、静脈内注射した。マウスは、移植後8週間で解析した。
【0109】
in vitroおよびin vivoニューロメディンU活性化:in vitro実験では、精製した肺および小腸の粘膜固有層ILC2は、刺激前には2時間、FBS欠乏状態にし、37℃で(10%ウシ胎児血清(FBS)、1%hepes、ピルビン酸ナトリウム、グルタミン、ストレプトマイシンおよびペニシリンを補充した)コンプリートRPMI中で培養した。mRNA解析では、ILC2は、組み換えマウスニューロメディンU23ペプチド(NmU23、100ng/mL;Phoenix pharmaceuticals)で一晩刺激した。NmU23で刺激されたILC2およびコントロールILC2の両者を、IL-2およびIL-7(10ng/mL;Peprotech)の存在下で培養した。ILC2は、RLTバッファー(Qiagen)を用いて溶解した。サイトカインタンパク質解析では、ILC2は、細胞内染色前の12時間にわたり、ブレフェルジンA(eBioscience)のみと共にインキュベートした。in vivo実験では、B6マウスは、N. brasiliensis感染の間にNmU23ペプチド(2μg/日)を、または単回用量のNmU23(20μg)を、腹腔内注射し、8時間後に解析した。コントロールマウスは、PBS単独で処置した。
【0110】
寄生虫感染:N. brasiliensisは、以前に記載した通り34、Lewisラットで月1回継代することにより維持した。感染性(iL3)寄生虫は、Nicola Harris氏(Lausanne, Switzerland)から供与された。iL3幼虫は、15分間、ペニシリン/ストレプトマイシン(300U/mL;Thermo Fisher Scientific)、ゲンタマイシン (1.5mg/mL;Sigma)およびテトラサイクリン(30μg/mL;Sigma)で処置し、PBSで洗浄して、立体顕微鏡で計数した。200μLの滅菌PBS中、500iL3で、21G針を用いて、マウスに皮下注射した。感染後2日目にマウスを犠牲にし、肺を回収して解析した。
【0111】
感染の負荷:肺への寄生負荷は、細かく刻んだ肺において定量し、これは、以前に記載した通りである34。肺を滅菌ガーゼにのせ、PBSを含有する50mLチューブ中で、37℃にて4時間懸濁した。チューブの底へ移動した生存寄生虫を、立体顕微鏡で計数した(steREO Lumar V12; Zeiss)。
【0112】
細胞の単離:肺は、心臓の右心室を経て、冷却PBSおよび2%ヘパリンを含む溶液で灌流して、続いて細かく刻み、ゆるやかな撹拌下で、37℃にて1時間、コラゲナーゼD(0.1mg/mL;Roche)およびDNaseI(20U/mL;Affymetrix)を加えたコンプリートRPMI中で消化した。小腸粘膜固有層細胞の単離では、腸をPBSで十分に洗い流し、1cm片にカットして、2%FBS、1%hepesおよび5mM EDTAを含有するPBS中で30分間振盪して、上皮内細胞および上皮細胞を除いた。次いで、小腸を、ゆるやかな撹拌下で、37℃にて30分間、コンプリートRPMI中で、コラゲナーゼD(0.5mg/mL;Roche)およびDNaseI(20U/mL;Affymetrix)により消化した。腸神経細胞およびグリア細胞は、以前に記載した通りに単離した34。簡単には、単離された組織を、ゆるやかな撹拌下で、37℃にて30分間、コンプリートRPMI中で、Liberase TM (7,5μg/mL;Roche)およびDNaseI(20U/mL;Affymetrix)により消化した。消化された器官は、100μmセルストレーナー(BD Biosciences)を通してばらばらにした。肺および小腸懸濁液からさらにリンパ球を精製するため、40~80%パーコール勾配遠心(室温で2400rpm、30分間)を用いた。肺、小腸、および骨髄調製物からの赤血球は、RBC溶解バッファー(eBioscience)を用いて溶解した。
【0113】
フローサイトメトリーおよび細胞ソーティング:細胞内染色は、IC固定/透過処理キット(eBioscience)を用いて行った。フローサイトメトリー解析および細胞ソーティングは、BD LSRFORTESSAおよびBD FACSAriaフローサイトメーター(BD Biosciences)を用いて行った。データ解析は、FlowJoソフトウェア (Tristar)を用いて行った。ソーティングされた集団は、純度>95%であった。細胞懸濁液は、抗CD45(30-F11)、抗TER119(TER-119)、TCRβ(H57-597)、抗CD3ε(eBio500A2)、抗CD19(eBio1D3)、抗NK1.1(PK136)、抗CD11c(N418)、抗Gr1(RB6-8C5)、抗CD11b(Mi/70)、抗CCR6(29‐2L17)、抗CD127(IL-7Rα;A7R34)、抗α4β7(DATK32)、 抗Flt3 (A2F10)、抗CD25(PC61.5)、抗cKit(2B8)、抗Thy1.2(53-2.1)、抗CD49b(DX5)、抗CD49a(HMa1)、抗TCRδ(GL3)、抗Nkp46(29A1.4)、抗CD4(GK1.5)、抗CD31(390)、抗IL-13(eBio13A), 抗IL-4(AAB11)、抗CSF2(MP1-22E9)、抗F4/80(BM8)、抗FcεR1(MAR-1)、7AAD生存色素、抗マウスCD16/CD32(Fc block)(すべて eBioscienceから);抗CD8α(53-6.7)、抗KLRG1(2F1)、抗sca1(D7)、抗CCR3(J073E)、抗MHC-II(M5/114.15.2)(Biolegendから);抗IL-5(MH9A3)(BD Biosciencesから)、抗アンフィレグリン(R&D)を用いて染色した。LIVE/DEAD Fixable Aqua Dead Cell Stain KitはInvitrogenから購入した。細胞集団は以下のように定義した:ILC2-CD45+Lin-Thy1.2+KLRG1+Sca1+;ILC3-CD45+Lin-Thy1.2hiIL7Rα+RORγt+;ILC3サブセットについては、さらなるマーカーを採用した:LTi-CCR6+Nkp46-;ILC3 NCR--CCR6-Nkp46-;ILC3 NCR+:CCR6-Nkp46+;NK細胞-CD45+Lin-NKp46+NK1.1+CD49b+CD49a-CD127-;系統は、CD3ε、CD8α、TCRβ、TCRγδ、CD19、Gr1、CD11cおよびTER119によって構成された;腸グリア細胞-CD45-CD31-TER119-CD49b+;T細胞-CD45+CD3+TCRβ+;B細胞-CD45+CD19+;腸神経細胞-CD45-CD31-TER119-RET+;好酸球-MHC-II-CCR3hiGR1int;好中球-MHC-II-CCR3-GR1hi;マクロファージ-CD3-MHC-II+F4/80+;肥満細胞/好塩基球-CD3-FcεR1+;リンパ球系共通前駆細胞(CLP)-Lin-CD127+Flt3+Sca1intcKitint;ヘルパー自然リンパ球系共通前駆細胞(CHILP)-Lin-CD127+α4β7+Flt3-CD25-;ILC2 前駆細胞(ILC2P)-Lin-CD127+α4β7+Flt3-CD25+。
【0114】
定量RT-PCR:全RNAを、RNeasyマイクロキット(Qiagen)を用い、製造者のプロトコールに従って抽出した。RNA濃度は、Nanodrop分光光度計(Nanodrop Technologies)を用いて測定した。定量リアルタイムRT-PCRは、以前に記載した通りに実施した5、8。Hprt1、GapdhおよびEef1a1を、ハウスキーピング遺伝子として用いた。TaqManアッセイ(Applied Biosystems)では、RNAをHigh Capacity RNA-to-cDNAキット(Applied Biosystems)を使用して逆転写した後、プレ増幅PCRをTaqMan PreAmp Master Mix(Applied Biosystems)を用いて行った。TaqMan Gene Expression Master Mix(Applied Biosystems)をリアルタイムPCRに用いた。TaqMan Gene Expression Assays(Applied Biosystems)は、下記の通りであった:Hprt1 Mm00446968_m1; Gapdh Mm99999915_g1; Eef1a1 Mm01973893_g1; Il5 Mm00439646_m1; Il13 Mm00434204_m1; Areg Mm01354339_m1; Il4 Mm00445259_m1; Csf2 Mm01290062_m1; Gata3 Mm00484683_m1; Rora Mm01173766_m1; Nmu Mm00479868_m1; Nmur1 Mm04207994_m1。リアルタイムPCR分析は、ABI Prism 7900HT Sequence Detection SystemまたはStepOne Real-Time PCR system(Applied Biosystems)を用いて行った。
【0115】
細胞シグナリング:小腸および肺から精製したILC2は、NmU23によるin vitro活性化の前に2時間、37℃でFBS欠乏状態にした。ERKリン酸化(Cell Signaling Technology)を調べるため、精製したILC2を、細胞内染色前に10分間、IL-2およびIL-7(10ng/mL;Peprotech)の存在下でNmU23(100ng/mL;Phoenix pharmaceuticals)により活性化させた。ERK、カルシニューリン、およびNFATの活性化を調べるため、ILC2は、それらの各阻害剤とともに1時間培養し、次いでmRNA発現解析の前に一晩NmU23により刺激した。ERK阻害剤-PD98059(Sigma);カルシニューリン阻害剤-FK506(Tocris Bioscience);NFAT阻害剤-11R-VIVIT(Tocris Bioscience)。
【0116】
カルシウムシグナリング:小腸から精製したILC2を、IL-2およびIL-7(10ng/mL)と共に培養し、カルシウムシグナリング実験の前に6時間、FBS欠乏状態にした。ILC2は、Fluo-4 Direct Calcium Assay Kit (Thermo Fisher Scientific)を用い、製造者のプロトコールにしたがって染色した。Fluo-4AMにより表されるカルシウム(Ca2+)流入は、以前に記載した通り36、BD Accuri C6フローサイトメーター(BD Biosciences)で経時的に記録した。組み換えマウスNmU23は、ILC2ベースライン記録の60秒後に加えた。データは、ILC2ベースライン反応と組み換えマウスNmU23添加後の反応ピークとの間のCa2+流入動態の平均値により表した。
【0117】
組織病理学的解析:マウスを頸椎脱臼により犠牲にし、右肺の尾状葉を回収して、10%中性緩衝ホルマリンで固定し、パラフィン包埋処理を行った。一連の4μm切片を、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)染色し、銀染色およびミエロペルオキシダーゼ(MPO)についての免疫組織化学を行った。簡単には、標準的プロトコールを用い、Dako PTモジュールで抗原熱賦活化を低pHにて行い37、続いて1次抗体(ウサギポリクローナル抗ヒトミエロペルオキシダーゼ、Dako Corp)とインキュベートした。ENVISION kit(ペルオキシダーゼ/DAB 検出システム、Dako Corp)を用いたインキュベートの後、ハリスヘマトキシリン対比染色(Bio Otica)を行った。ネガティブコントロールには、1次抗体が存在しないものも含まれていた。スライドは、実験グループがわからない状態で病理学者により解析され、イメージは、Leica MC170 HD顕微鏡カメラに連結した Leica DM2500顕微鏡で取得した。肺の炎症細胞浸潤の定量は、MPO染色切片で、視野当たり0.2mm2に対応する元の20倍大でMPO陽性細胞を手動で計数することにより行った。肺好酸球の定量は、銀染色切片で、好酸球性粒状細胞質を有する顆粒球の数を低倍率視野(視野当たり1mm2)において手動で計数することにより行った。
【0118】
顕微鏡:厚い内臓切片の腸の解析は、4℃で一晩、4%PFAで固定し、次いで、4%低融点アガロース(Invitrogen)に包埋した。Leica VT1200/VT1200 Sビブラトームを用いて100μmの切片を得た。切片は、それぞれ、4℃で、一晩または1~2日間、以下の抗体:マウスモノクローナル抗KLRG1 (2F1/KLRG1; Biolegend);抗CD3 (17A2; Biolegend)を用いてインキュベートした。A647ヤギ抗ハムスターおよびA568ヤギ抗ラットは Invitrogenから購入した。PBSで数回洗浄した後、試料は、室温で3時間、抗体とインキュベートし、次いでMowiol中にマウントした5。試料は、EC Plan-Neofluar 10x/0.30 M27、Plan Apochromat 20x/0.8 M27およびEC Plan-Neofluar 40x/1.30 対物レンズを用いてZeiss LSM710共焦点顕微鏡において観察した。
【0119】
統計:結果は、平均値±SEMとして示されている。統計的解析はGraphPad Prismソフトウェア(GraphPad Software, La Jolla, Calif)を用いて行った。にはMicrosoft Excelを使用した。スチューデントt検定を等分散集団で行った。異なる分散を有する試料には、対応のない(unpaired)t検定を、適用した。結果は、*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、****P<0.0001で有意とみなした。
【0120】
例1:ILC2におけるニューロメディンU受容体1(Nmur1)の発現
グループ2自然リンパ球系細胞(ILC2)は、粘膜バリアに豊富に存在し、2型炎症および組織修復の主要なイニシエーター(initiator)としての役割を果たす1,2。ILC2は、IL-25、IL-33および胸腺間質リンホポエチンを含む細胞外因性サイトカインによって活性化される1,2。以前の報告は、別々のリンパ球サブセットおよび造血系前駆細胞が、食餌性シグナルおよび神経制御因子によって制御されていることを示しており2,3,5-9、ILC2が、神経-免疫細胞ユニットとの関連でその機能を発揮する可能性があることを示唆している。
【0121】
ILC2が直接的かつ選択的に神経細胞由来の分子を認識するかどうかを調べるため、ILC2の、その適応対応群(ヘルパーTリンパ球)および自然対応群(IL1およびILC3)
10に対する、ゲノム全域にわたる転写プロファイリングを採用した(
図1a~b)。この解析では、ニューロメディンU受容体1(Nmur1)遺伝子を、ILC1、ILC3およびヘルパーT細胞と比較した場合、選択的にILC2において濃縮されているものとして同定した(
図1a~1bおよび
図5a、5b)。この発見は、ILC1、ILC3、NK細胞、好酸球、肥満細胞、マクロファージ、好中球、樹状細胞、T細胞およびB細胞を含む免疫細胞の複数のサブセットにおける、独立的な定量発現アッセイにより確認された(
図1c)。
【0122】
Nmur1は、ニューロメディンUに対する膜貫通型受容体をコードする。後者は、脳において見出される分泌される神経ペプチドであり、胃腸管において高度に発現している
11-14。このように、ニューロメディンU(NMU)は、神経栄養因子受容体RET
11-13、15をも発現している腸神経細胞により、産生されることが示された。同意されていることであるが、固有粘膜層神経細胞は、ニューロメディンU遺伝子(Nmu)の主たる発現場であった一方、これらの転写物は、腸神経グリア細胞および上皮細胞においては検出されなかった(
図1d)。同様に、樹状細胞、マクロファージおよびB細胞を含む、すべての解析された免疫細胞サブセットは、有意なNmu発現がみられなかった(
図1d)。驚くべきことに、腸神経細胞のレポーターマウス(Ret
GFP)
16により、固有粘膜層CD3
-KLRG1
+ 候補ILC2が腸粘膜固有層Ret
GFP神経細胞ネットワークに隣接していることが明らかになった(
図1eおよび
図5c)。まとめると、これらのデータは、NMU-NMUR1相互作用により調整されている、パラクリン神経細胞-ILC2クロストークを示唆している。
【0123】
例2:ニューロメディンUによるILC2の活性化
この仮説を調査するため、腸および肺由来ILC2を精製し、ニューロメディンU(NmU23神経ペプチド)により活性化した(
図2a-2f)。驚異的なことに、NmU23によるILC2の細胞自律的活性化は、炎症誘発性および組織保護2型サイトカイン遺伝子であるIl5、Il13、AregおよびCsf2の迅速かつ非常に強力な発現をもたらし、これは、2型マスター転写因子Gata3の発現の増加と並行していた(
図2a、2b)。同様の発見がヒトILC2において得られた(
図9b、c)。ILC2のNmU23依存的活性化は、Ki67により測定された通り、ILC2増殖を増加させた(
図2c;
図10a、10b)。NmUは、オーファンクラスAのGタンパク質共役型受容体であるNMUR1およびNMUR2
14に対して、同様の親和性で結合することが示された。
【0124】
NMUR1活性化がNMU依存的ILC2活性化と型サイトカイン産生との間の分子的リンク(link)であることの形式的な定義は、Nmur1の遺伝子的除去により提供された。NmU23による精製ILC2の活性化は、NMUR1依存的に、2型サイトカインタンパク質IL-5およびIL-13の強力な発現を引き起こした(
図2d~2fおよび
図6a、6b)。
【0125】
重要なことに、神経ペプチドNmU23のin vivo投与は、ILC2からの即時的かつ選択的な2型サイトカイン産生をもたらした一方で、その適応ヘルパーT細胞由来の対応群は、変化しないままであった(
図2g、2hおよび
図6c、6d)。同意されていることであるが、Nmur1欠損マウスは、損なわれていないILC2コンパートメントを有しているが、その野生型(WT)同腹仔コントロールと比較した場合には、自然IL-5およびIL-3発現が減少していた(
図2i、2J;
図6e、6f;および7a~7c)。ヘルパーT細胞由来サイトカインが、Nmur1ノックアウトマウスにおいては変化しないままであることは、特筆すべきことであった(
図6f)。
これらのデータは、神経ペプチドであるニューロメディンUが、NMUR1を介する、2型自然炎症および組織修復サイトカインの強力な制御因子であることを示している。
【0126】
例3:ILC2における活性化されたNMUR1によるシグナリング
ニューロメディンUがどのように2型自然反応を制御しているのかをさらに調べるため、ILC2における活性化されたNMUR1により提供されるシグナリング合図を調査した。神経細胞においては、ニューロメディンU受容体の活性化がカルシウム(Ca
2+)流入およびERK1/2活性化を引き起こす一方で、NFAT活性は、2型サイトカイン産生を必要とする
17-20。ニューロメディンUにより誘導されるILC2の活性化は、即時的かつ効率的なERK1/2活性化を引き起こす一方で、NmU23により誘導されるILC2活性化におけるERK活性の阻害は、2型サイトカイン遺伝子発現の減弱をもたらした(
図3a、3b)。
【0127】
ニューロメディンUにより誘導されるILC2の活性化についての解析はまた、即時的かつ強いCa
2+流入を引き起こしたが、これはNmU23により誘導される2型反応におけるカルシウム依存的セリン/スレオニンタンパク質ホスファターゼであるカルシニューリンの役割を示唆している(
図3c)。同意されていることであるが、NmU23活性化におけるカルシニューリンの阻害は、自然Il5、Il13およびCsf2発現の減弱を引き起こした(
図3d)。
【0128】
最後に、NmU23により誘導されるNMUR1活性化におけるNFAT活性の阻害は、同様のIl5、Il13およびCsf2の減少を引き起こした(
図3e)。したがって、神経細胞由来のペプチドであるニューロメディンUは、NMUR1を活性化することにより、ILC2内因性に働くことができ、これが、Ca
2+/カルシニューリン/NFATカスケードおよびERK1/2リン酸化の下流の2型自然サイトカインを制御していることが結論づけられた。
【0129】
例4:ILC2による粘膜防御の制御
神経ペプチドが粘膜防御を制御しているかどうかを調査するため、NMUR1シグナルの変化の程度が、寄生蠕虫であるN. brasiliensis
21による感染直後および適応T細胞反応が確立される前において、粘膜攻撃性をどのように制御することができるかを調べた。驚くべきことに、WTマウスにおけるN. brasiliensisによる感染は、肺でのNmu発現の強力な増加をもたらし(
図4a)、これは、ニューロメディンUが寄生虫感染に対するin vivo反応を制御し得ることを示唆している。したがって、N. brasiliensis感染マウスにおける神経ペプチドNmU23の投与は、ビヒクル(PBS)処置したその対応群と比較して、肺における好酸球の増加により特徴付けられる、非常に強くかつ即時的な2型自然反応をもたらした(
図4b~4d)。
【0130】
2型自然反応におけるNMUR1の役割をさらに調査するため、Nmur1欠損マウスおよびその同腹仔コントロールをN. brasiliensisに感染させた(
図4e~4i)。驚くべきことに、そのWT同腹仔コントロールと比較した場合に、Nmur1ノックアウトマウスは、減少した2型反応を有し、とりわけ顕著に好酸球および顆粒球浸潤が減少した(
図4e~4g)。これらの発見と一致して、Nmur1欠損マウスは、増加したN. brasiliensis感染負荷を有していた(
図4i)。まとめると、これらのデータは、神経ペプチドであるニューロメディンUが、in vivoにおける2型反応を制御する合図を提供し、それにより寄生虫感染に対する即時的な粘膜保護を増加させることを示している。
【0131】
例5:ILC2細胞によるシグナル統合
ILC2が、環境的なシグナルを認識し、統合しおよび反応するメカニズムを解明することは、組織および器官ホメオスタシスを理解するために重要である。本明細書において報告される結果は、ILC2とその環境との間の予期しなかった関係を確立する。ニューロメディンUにより調整される新規な神経細胞-ILC2ユニットが解明された(
図8)。この神経ペプチドは、NMUR1依存的にILC2を活性化し、ERKリン酸化およびCa
2+/カルシニューリン/NFATカスケード下流の強力な2型自然サイトカイン産生をもたらす(
図8)。
【0132】
IL-25、IL33および胸腺間質リンホポエチンを含むサイトカインシグナルを、ILC2が統合することは、十分に確立されている一方で、本明細書において報告される結果は、ILC2が、異なる胚葉由来の組織からのシグナルをより広く統合して、2型炎症および組織修復反応ならびに臓器防御を同時に制御することができることを示している。したがって、神経細胞-ILC2細胞ユニットは、ニューロメディンU依存的に、強力かつ即時的な2型反応を一意的に確実にする態勢にあることが提案される(
図8)。
【0133】
以前の研究は、ILC2が、栄養分の感知、代謝、組織修復および感染制御を含む、複数のホメオスタシスプロセスに関与していることを示している1,2,21,23-27。本願明細書では、ニューロメディンUが、神経細胞活性、2型自然反応および粘膜保護の間の分子的リンクであることを示している。したがって、神経細胞活性とILC2依存性の免疫制御との連携は、進化全般にわたった環境的負荷に対する、強力で、効率的、かつ統合された複数組織での反応を確実にし得る。とりわけ、協調的なニューロメディンU依存性平滑筋収縮14および2型自然免疫は、哺乳動物の親密な進化のパートナーであった寄生虫を制御するために共進化してきた可能性がある。この仮説に一致して、ニューロメディンUは、哺乳類、両生類、鳥類、および魚類種にわたって高度に保存されている14。最後に、現在のデータと他の独立した研究は、粘膜神経システムが、ILCおよびマクロファージをパートナーとして、局部組織の制御を確実にすることを示しており3,4,28,29;したがって、生物体レベルでの生理機能およびホメオスタシスを制御する神経免疫求心性ユニットの存在を推測することは魅力的である。
【0134】
例6:Nmur1の選択的発現およびILC2の活性化
転写解析は、ILC1、ILC3および2型ヘルパーT細胞と比較して、ニューロメディンU受容体1(Nmur1)遺伝子をILC2において選択的に濃縮されているものとして同定した(
図1a、1bおよび
図5a、5b)。この発見は、ILC1、ILC3、NK細胞、好酸球、肥満細胞、マクロファージ、好中球、樹状細胞、T細胞およびB細胞を含む免疫細胞の複数のサブセットにおける、独立的な定量発現アッセイにより確認された(
図9e)。この発見に一致して、NmU23によるILC2の活性化は、即時的な自然Il5およびIl13の上方制御をもたらしたのに対し、その適応T細胞対応群は変化しないままであった(
図9f)。特筆すべきことに、N. brasiliensisによる感染後、Nmur1発現は、ILC2において選択的に増加した(
図9a、9d)。
【0135】
粘膜固有層における神経細胞は、ニューロメディンU遺伝子(Nmu)の主たる発現場であることが見出された一方で、その転写物は、腸神経グリアおよび上皮細胞においては検出されなかった(
図1d)。同様に、好酸球、樹状細胞、マクロファージ、B細胞およびT細胞を含む、すべての解析された免疫細胞サブセットは、有意なNmu発現を示さなかった(
図1d)。驚くべきことに、腸神経細胞のレポーターマウス(Ret
GFP)により、CD3
-KLRG1
+候補ILC2が、隣接する神経細胞から4.716μm±0.656で見出されたのに対し、その適応T細胞対応物では、有意により長い距離(8.623μm±1.447)で見出された(
図1e;
図5c;および
図9g)。驚異的なことに、N. brasiliensis/分泌タンパク質(NES)により刺激されたニューロスフィア由来の神経細胞は、急速にNmu発現を上方制御したが(
図9h、i)、これは、神経細胞が直接的に寄生虫産生物を感知してNMU産生を制御することができることを示している。
【0136】
例7:ILCの活性化において発現される2型サイトカイン
腸および肺由来のILC2を精製し、ニューロメディンU(NmU23神経ペプチド)により活性化させた(
図2a~2f)。驚異的なことに、NmU23によるILC2の細胞自律的活性化は、炎症誘発性および組織保護2型サイトカイン遺伝子であるIl5、Il13、Areg およびCsf2の迅速かつ非常に強力な発現をもたらし、これは、2型マスター転写因子Gata3の発現の増加と並行していた(
図2a、2b)。同様の発見がヒトILC2において得られた(
図9b、c)。ILC2のNmU23依存的活性化は、in vitroおよびin vivoにおいてKi67により測定された通り、ILC2増殖を増加させた(
図2cおよび
図10a、10b)。
【0137】
続いて、NMU、IL-33およびIL-25に対するILC2の反応を、用量依存的に比較した。驚くべきことに、そのサイトカイン対応物と比較した場合、NMU、IL-33およびIL-25によるILC2の活性化は、自然IL-5およびIL-13の迅速かつ非常に強力な発現を引き起こした。NMUにより誘導される2型自然サイトカインのこの即時的な上方制御は、PMA-イオノマイシンによる活性化で観察される効果と同等であったが、これはニューロメディンUがILC2由来の2型サイトカインの一意的に強力な制御因子であることを示している(
図10c、10d)。
【0138】
例8:NFATに対する、Nmu23により誘導される細胞活性化の効果
ニューロメディンUにより誘導されるILC2の活性化は、即時的かつ効率的なERK1/2活性化を引き起こす一方で、NmU23により誘導されるILC2活性化におけるERK活性の阻害は、2型サイトカイン遺伝子発現の減弱をもたらした(
図3a、3b)。ニューロメディンUにより誘導されるILC2の活性化についての解析はまた、即時的かつ強いCa
2+流入を引き起こしたが、これはNmU23により誘導される2型反応におけるカルシウム依存的セリン/スレオニンタンパク質ホスファターゼであるカルシニューリンの役割を示唆している(
図3c)。
【0139】
同意されていることであるが、NmU23活性化におけるカルシニューリンもしくはそのNFATとの相互作用の阻害は、自然Il5、Il13およびCsf2発現の減弱を引き起こした(
図3dおよび
図11a、11b)。同意されていることであるが、NmU23により誘導される細胞活性化は、ILC2の細胞質から核への、NFATの効率的な移行を引き起こした(
図11c)。最後に、NmU23により誘導されるNMUR1活性化におけるNFAT活性の阻害は、同様のIl5、Il13およびCsf2の減少を引き起こした(
図3e)。したがって、神経細胞由来のペプチドであるニューロメディンUは、NMUR1を活性化することにより、ILC2内因性に働くことができ、これが、2型自然サイトカインを制御していることが結論づけられた。
【0140】
例9:N. brasiliensis感染マウスにおけるNmU23処置の効果
神経ペプチドが粘膜防御を制御しているかどうかを調査するため、NMUR1シグナルの変化の程度が、寄生蠕虫であるN. brasiliensisによる感染直後および適応T細胞反応が確立される前において、粘膜攻撃性をどのように制御することができるかを調べた。驚くべきことに、WTマウスにおけるN. brasiliensisによる感染は、肺でのNmu発現の強力な増加をもたらしたが(
図4a)、これは、ニューロメディンUが寄生虫感染に対するin vivo反応を制御し得ることを示唆している。したがって、N. brasiliensis感染マウスにおける神経ペプチドNmU23の投与は、ビヒクル(PBS)処置したその対応群と比較して、」肺におけるILC2由来のIL-5、IL-13、およびアンフィレグリンの増加ならびに好酸球の増加により特徴付けられる、非常に強くかつ即時的な2型自然反応をもたらした(
図4b~4dおよび
図12a)。したがって、N. brasiliensis感染マウスにおけるNmU23処置は、肺出血の減少、ならびに肺および腸寄生虫負荷の減少を引き起こした(
図12b、12f)。
【0141】
例10:Nmur1欠損マウスを用いたNMUR1の役割の確認
2型自然反応におけるNMUR1の役割をさらに調査するため、Nmur1欠損マウスおよびその同腹仔コントロールをN. brasiliensisに感染させた(
図4e~4i)。驚くべきことに、そのWT同腹仔コントロールと比較した場合に、Nmur1ノックアウトマウスは、減少した2型反応を有し、とりわけ顕著に、ILC2由来のIL-5、IL13およびアンフィレグリンが減少し、好酸球および顆粒球浸潤が減少した(
図4e~4gおよび
図13a~13c)。これらの発見と一致して、Nmur1欠損マウスは、肺および腸における増加したN. brasiliensis感染負荷を有していた(
図4iおよび
図13c)。まとめると、これらのデータは、神経ペプチドであるニューロメディンUが、in vivoにおける2型反応を制御する合図を提供し、それにより寄生虫感染に対する即時的な粘膜保護を増加させることを示している。
【0142】
例11:ILC2の活性化は、in vivoにおける2型自然サイトカイン産生を引き起こす
NMUR1を介するILC2の自律的活性化とin vivoにおける2型自然サイトカイン産生との間の関連を形式的に確立するため、NMUR1が十分であるBM細胞と欠損しているBM細胞との骨髄(BM)混合キメラを行った。NMU投与後、Nmur1欠損ILC2は、その野生型競合的対応群と比較して、自然IL-5およびIL-13の発現が減少していた(
図14a、14b)。特筆すべきことに、Nmur1欠損T細胞またはコンピテントT細胞では、これら2型サイトカインの発現は変化しないままであった(
図14c)。したがって、NMU-NMUR1は、ILC2内因性に、in vivoにおける2型自然サイトカイン発現を制御するように働く。
【0143】
【0144】
【0145】
【0146】
本発明の少なくとも1つの態様のいくつかの側面をこのように説明したが、当業者には様々な変更、修正、および改良が容易に想起されるであろうことが理解されるべきである。かかる変更、修正、および改良は、本開示の一部であることが意図され、本発明の精神および範囲内にあることが意図される。したがって、前述の説明および図面は、単なる例示である。
【配列表】