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  • 特許-ゴム組成物及びそれを用いたタイヤ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-02
(45)【発行日】2023-08-10
(54)【発明の名称】ゴム組成物及びそれを用いたタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 15/00 20060101AFI20230803BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20230803BHJP
   C08K 3/011 20180101ALI20230803BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20230803BHJP
   C08K 5/40 20060101ALI20230803BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20230803BHJP
   B60C 17/00 20060101ALI20230803BHJP
   B60C 15/06 20060101ALI20230803BHJP
【FI】
C08L15/00
C08K3/013
C08K3/011
C08K3/04
C08K5/40
B60C1/00 Z
B60C17/00 B
B60C15/06 B
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019559602
(86)(22)【出願日】2018-12-07
(86)【国際出願番号】 JP2018045079
(87)【国際公開番号】W WO2019117033
(87)【国際公開日】2019-06-20
【審査請求日】2021-11-01
(31)【優先権主張番号】P 2017238977
(32)【優先日】2017-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018138734
(32)【優先日】2018-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】網谷 基氣
(72)【発明者】
【氏名】宮本 千代
【審査官】横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-029404(JP,A)
【文献】国際公開第2016/143755(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/143756(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/143757(WO,A1)
【文献】特開2010-155550(JP,A)
【文献】特開2017-145341(JP,A)
【文献】国際公開第2017/065304(WO,A1)
【文献】特開平08-143681(JP,A)
【文献】国際公開第2018/230463(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
B60C 1/00
B60C 17/00
B60C 15/06
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分と、充填材と、加硫剤と、加硫促進剤とを含むゴム組成物であって、前記ゴム成分が変性共役ジエン系ゴムを50質量%以上含有し、前記充填材がカーボンブラックを含み、かつ前記加硫促進剤がチウラム系加硫促進剤とチウラム系加硫促進剤以外の加硫促進剤Aとを含み、前記ゴム成分100質量部に対して、前記カーボンブラックを40~60質量部含有し、前記チウラム系加硫促進剤を2.6~5.5質量部含有し、前記加硫促進剤Aを1.0~5.0質量部含有し、前記加硫促進剤Aは、前記チウラム系加硫促進剤より少なく含まれることを特徴とするゴム組成物。
【請求項2】
前記加硫剤中の硫黄分の含有量に対する前記チウラム系加硫促進剤の含有量の質量比(チウラム系加硫促進剤の含有量/加硫剤中の硫黄分の含有量)が0.4~1.2であることを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記ゴム組成物が、軟化剤を含まないか、又は前記ゴム成分100質量部に対して前記軟化剤を4.0質量部以下含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
前記変性共役ジエン系ゴムが、アミン変性ブタジエンゴムであることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項5】
前記カーボンブラックの窒素吸着比表面積が、20~90m/gであることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項6】
前記アミン変性ブタジエンゴムの変性基が、第1級アミノ基であることを特徴とする請求項4に記載のゴム組成物。
【請求項7】
前記ゴム組成物が、前記ゴム成分100質量部に対して、熱硬化性樹脂を含まないか、又は前記ゴム成分100質量部に対して前記熱硬化性樹脂を1.0質量部以下含むことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項8】
前記ゴム組成物が、前記熱硬化性樹脂を含まないことを特徴とする請求項7に記載のゴム組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載のゴム組成物をサイド補強ゴム層及びビードフィラーから選ばれる少なくとも一つの部材に用いたことを特徴とするタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温時における弾性率の低下を抑制し得るゴム組成物、及びそのゴム組成物をサイド補強ゴム層及び/又はビードフィラーに用いたタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤ、特にランフラットタイヤにおいて、サイドウォール部の剛性向上のために、ゴム組成物単独又はゴム組成物と繊維等の複合体によるサイド補強層が配設されている。
このランフラットタイヤにおいて、例えば、通常走行時の転がり抵抗性を損なうことなく、ランフラット耐久性を確保するために、ゴム成分と、その100質量部に対し、カーボンブラック55質量部以上、フェノール樹脂及びメチレン供与体を配合してなるゴム組成物をサイド補強ゴム層及び/又はビードフィラーに用いてなるタイヤが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-155550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように、従来は、ランフラット耐久性を向上させるため、加硫ゴム組成物の剛性を上げてきた。しかし、ランフラットタイヤはランフラットタイヤ以外のタイヤと比べてサイドウォール部の剛性が高いために乗り心地が悪くなっており、改善が求められている。
本発明は、ランフラットタイヤの通常走行時の乗り心地とランフラット走行時の耐久性の両立を可能とするゴム組成物を提供することが課題となっている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[1]ゴム成分と、充填材と、加硫剤と、加硫促進剤とを含むゴム組成物であって、前記ゴム成分が変性共役ジエン系ゴムを50質量%以上含有し、前記充填材がカーボンブラックを含み、かつ前記加硫促進剤がチウラム系加硫促進剤を含み、前記ゴム成分100質量部に対して、前記カーボンブラックを40~60質量部含有し、前記チウラム系加硫促進剤を2.6~5.5質量部含有することを特徴とするゴム組成物である。
【0006】
[2]前記加硫剤中の硫黄分の含有量に対する前記チウラム系加硫促進剤の含有量の質量比(チウラム系加硫促進剤の含有量/加硫剤中の硫黄分の含有量)が0.4~1.2である[1]に記載のゴム組成物である。
【0007】
[3]前記ゴム組成物が、軟化剤を含まないか、又は前記ゴム成分100質量部に対して前記軟化剤を4.0質量部以下含むことを特徴とする[1]又は[2]に記載のゴム組成物である。
【0008】
[4]前記変性共役ジエン系ゴムが、アミン変性ポリブタジエンである[1]~[3]のいずれか1つに記載のゴム組成物である。
【0009】
[5]前記ゴム組成物が、さらにチウラム系加硫促進剤以外の加硫促進剤Aを含み、前記ゴム成分100質量部に対して、前記加硫促進剤Aを1.0~5.0質量部含む[1]~[4]のいずれか1つに記載のゴム組成物である。
【0010】
[6]前記カーボンブラックの窒素吸着比表面積が、20~90m/gである[1]~[5]のいずれか1つに記載のゴム組成物である。
【0011】
[7]前記アミン変性ポリブタジエンの変性基が、第1級アミノ基である[4]~[6]のいずれか1つに記載のゴム組成物である。
【0012】
[8]前記ゴム組成物が、熱硬化性樹脂を含まないか、又は前記ゴム成分100質量部に対して、前記熱硬化性樹脂を1.0質量部以下含む[1]~[7]のいずれか1つに記載のゴム組成物である。
【0013】
[9]前記ゴム組成物が、前記熱硬化性樹脂を含まないことを特徴とする[8]に記載のゴム組成物である。
【0014】
[10][1]~[9]のいずれか1つに記載のゴム組成物をサイド補強ゴム層及びビードフィラーから選ばれる少なくとも一つの部材に用いたことを特徴とするタイヤである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、通常走行時の乗り心地とランフラット走行時の耐久性の両立を良好に達成したゴム組成物を提供することができ、更にそのゴム組成物をサイド補強ゴム層及びビードフィラーから選ばれる少なくとも一つの部材に用いたことを特徴とするランフラットタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明のタイヤの一実施態様の断面を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のゴム組成物は、ゴム成分と、充填材と、加硫剤と、加硫促進剤とを含むゴム組成物であって、前記ゴム成分が変性共役ジエン系ゴムを50質量%以上含有し、前記充填材がカーボンブラックを含み、かつ前記加硫促進剤がチウラム系加硫促進剤を含み、前記ゴム成分100質量部に対して、前記カーボンブラックを40~60質量部含有し、前記チウラム系加硫促進剤を2.6~5.5質量部含有することを特徴とするゴム組成物であり、未加硫ゴム組成物である。
【0018】
(ゴム成分)
本発明のゴム組成物に用いられるゴム成分は、変性共役ジエン系ゴムを50質量%以上含有する。カーボンブラックとの相互作用を高め、ランフラットタイヤ用サイド補強ゴムの発熱を低減し(即ち、低発熱性を向上し)、ランフラット走行時の耐久性を向上するためである。
変性共役ジエン系ゴムは1種類のみ用いてもよいが、2種以上用いてもよい。ゴム成分は、変性共役ジエン系ゴムを100質量%含有しても良いが、変性共役ジエン系ゴムの残余として、天然ゴム及び/又は非変性共役ジエン系ゴムを50質量%以下含有することが好ましい。引張強度、破壊伸びなどの破壊特性を向上する観点から、天然ゴムと変性共役ジエン系ゴムとを併用することが好ましい。ゴム成分中の天然ゴムの割合は、引張強度、破壊伸びなどの破壊特性をより向上する観点から、10~50質量%が好ましく、20~50質量%がより好ましく、30~40質量%が特に好ましい。即ち、ゴム成分中の変性共役ジエン系ゴムの割合は、50~90質量%が好ましく、50~80質量%がより好ましく、60~70質量%が特に好ましい。ゴム成分の50~90質量%を変性共役ジエン系ゴムとすることにより、低発熱性が向上(発熱が低減)し、ランフラット耐久性を向上することができる。
ゴム成分は、本発明の効果を損なわない限度において非ジエン系ゴムを含んでいてもよい。
【0019】
本発明に係るゴム成分中の変性共役ジエン系ゴムは、カーボンブラックとの相互作用をさらに高め、ランフラットタイヤ用サイド補強ゴムの発熱を更に低減(低発熱性を更に向上)する観点から、変性ブタジエンゴムを含むことが好ましい。
変性ブタジエンゴムは、カーボンブラックと相互作用する官能基を少なくとも一つ有する変性ブタジエンゴムであることが好ましい。カーボンブラックと相互作用する官能基は、カーボンブラックと親和性を有する官能基が好ましく、具体的には、スズ含有官能基、ケイ素含有官能基及び窒素含有官能基からなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。
【0020】
本発明に係る変性ブタジエンゴムは、高温時の弾性率を高くしてランフラット耐久性を向上させる観点からミクロ構造中のビニル結合含量が20~50質量%であることが好ましく、25~50質量%であることがより好ましい。
【0021】
変性ブタジエンゴムがスズ含有官能基、ケイ素含有官能基及び窒素含有官能基からなる群から選択される少なくとも一種の官能基を少なくとも一つ有する変性ブタジエンゴムである場合、変性ブタジエンゴムは、スズ含有化合物、ケイ素含有化合物又は窒素含有化合物等の変性剤で変性され、スズ含有官能基、ケイ素含有官能基又は窒素含有官能基等を導入したものであることが好ましい。
ブタジエンゴムの重合活性部位を変性剤で変性するにあたって、使用する変性剤としては、窒素含有化合物、ケイ素含有化合物及びスズ含有化合物が好ましい。この場合、変性反応により、窒素含有官能基、ケイ素含有官能基又はスズ含有官能基を導入することができる。
このような変性用官能基は、ポリブタジエンの重合開始末端、主鎖及び重合活性末端のいずれかに存在すればよい。
【0022】
上記変性剤として用いることができる窒素含有化合物は、置換若しくは非置換のアミノ基、アミド基、イミノ基、イミダゾール基、ニトリル基又はピリジル基を有することが好ましい。該変性剤として好適な窒素含有化合物としては、ジフェニルメタンジイソシアネート、クルードMDI、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等のイソシアネート化合物、4-(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4-(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4-ジメチルアミノベンジリデンアニリン、4-ジメチルアミノベンジリデンブチルアミン、ジメチルイミダゾリジノン、N-メチルピロリドンヘキサメチレンイミン等が挙げられる。
【0023】
また、上記変性剤として用いることができるケイ素含有化合物としては、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、N-(1-メチルプロピリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-(3-トリエトキシシリルプロピル)-4,5-ジヒドロイミダゾール、3-メタクリロイロキシプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリルプロピルコハク酸無水物、3-(1-ヘキサメチレンイミノ)プロピル(トリエトキシ)シラン、(1-ヘキサメチレンイミノ)メチル(トリメトキシ)シラン、3-ジエチルアミノプロピル(トリエトキシ)シラン、3-ジメチルアミノプロピル(トリエトキシ)シラン、2-(トリメトキシシリルエチル)ピリジン、2-(トリエトキシシリルエチル)ピリジン、2-シアノエチルトリエトキシシラン、テトラエトキシシラン等が挙げられる。これらケイ素含有化合物は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、該ケイ素含有化合物の部分縮合物も用いることができる。
【0024】
更に、上記変性剤としては、下記式(I):
ZX (I)
[式中、Rは、それぞれ独立して炭素数1~20のアルキル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、炭素数6~20のアリール基及び炭素数7~20のアラルキル基からなる群から選択され;Zは、スズ又はケイ素であり;Xは、それぞれ独立して塩素又は臭素であり;aは0~3で、bは1~4で、但し、a+b=4である]で表される変性剤も好ましい。なお、式(I)の変性剤で変性して得られる変性ブタジエンゴムは、少なくとも一種のスズ-炭素結合又はケイ素-炭素結合を有する。
【0025】
式(I)のRとして、具体的には、メチル基、エチル基、n-ブチル基、ネオフィル基、シクロヘキシル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基等が挙げられる。また、式(I)の変性剤として、具体的には、SnCl、RSnCl、R SnCl、R SnCl、SiCl、RSiCl、R SiCl、R SiCl等が好ましく、SnCl及びSiClが特に好ましい。
【0026】
変性ブタジエンゴムとしては、以上の中でも、ランフラットタイヤ用サイド補強ゴムを低発熱化し、耐久寿命を延ばす観点から、窒素含有官能基を有する変性ブタジエンゴムであることが好ましく、アミン変性ブタジエンゴムであることがより好ましい。即ち、ゴム成分中の変性共役ジエン系ゴムは、カーボンブラックとの相互作用を特に高め、ランフラットタイヤ用サイド補強ゴムの発熱を特に低減(低発熱性を特に向上)する観点から、アミン変性ブタジエンゴムを含むことが好ましく、アミン変性ブタジエンゴムのみであることがより好ましい。
【0027】
(アミン変性ブタジエンゴムの変性基)
アミン変性ブタジエンゴムは、変性用アミン系官能基として、第1級アミノ基又は第2級アミノ基が好ましく、脱離可能基で保護された第1級アミノ基又は脱離可能基で保護された第2級アミノ基を導入したものがより好ましく、これらアミノ基に加え、さらにケイ素原子を含む官能基を導入したものが更に好ましい。
脱離可能基で保護された第1級アミノ基(保護化第1級アミノ基ともいう。)の例としては、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノ基を挙げることができ、脱離可能基で保護された第2級アミノ基の例としてはN,N-(トリメチルシリル)アルキルアミノ基を挙げることができる。このN,N-(トリメチルシリル)アルキルアミノ基含有基としては、非環状残基、及び環状残基のいずれであってもよい。
上記のアミン変性ブタジエンゴムのうち、保護化第1級アミノ基で変性された第1級アミン変性ブタジエンゴムが更に好適である。
前記ケイ素原子を含む官能基としては、ケイ素原子にヒドロカルビルオキシ基及び/又はヒドロキシ基が結合してなるヒドロカルビルオキシシリル基及び/又はシラノール基を挙げることができる。
このような変性用官能基は、好ましくはブタジエンゴムの重合末端、より好ましくは同一重合活性末端に、脱離可能基で保護されたアミノ基と、ヒドロカルビルオキシ基及びヒドロキシ基が結合したケイ素原子を1以上(例えば、1又は2)とを有するものである。
【0028】
ブタジエンゴムの活性末端に、保護化第1級アミンを反応させて変性させるには、該ブタジエンゴムは、少なくとも10%のポリマー鎖がリビング性又は擬似リビング性を有するものが好ましい。このようなリビング性を有する重合反応としては、有機アルカリ金属化合物を開始剤とし、有機溶媒中で共役ジエン化合物単独、又は共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とをアニオン重合させる反応か、あるいは有機溶媒中でランタン系列希土類元素化合物を含む触媒による共役ジエン化合物単独、又は共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とを配位アニオン重合させる反応が挙げられる。前者は、後者に比較して共役ジエン部分のビニル結合含有量の高いものを得ることができるので好ましい。ビニル結合含量を高くすることによって耐熱性を向上させることができる。
【0029】
(重合開始剤)
アニオン重合の開始剤として用いられる有機アルカリ金属化合物としては、有機リチウム化合物が好ましい。有機リチウム化合物としては、特に制限はないが、ヒドロカルビルリチウム及びリチウムアミド化合物が好ましく用いられ、前者のヒドロカルビルリチウムを用いる場合には、重合開始末端にヒドロカルビル基を有し、かつ他方の末端が重合活性部位であるブタジエンゴムが得られる。また、後者のリチウムアミド化合物を用いる場合には、重合開始末端に窒素含有基を有し、他方の末端が重合活性部位であるブタジエンゴムが得られる。
【0030】
前記ヒドロカルビルリチウムとしては、炭素数2~20のヒドロカルビル基を有するものが好ましく、例えばエチルリチウム、n-プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-オクチルリチウム、n-デシルリチウム、フェニルリチウム、2-ナフチルリチウム、2-ブチルフェニルリチウム、4-フェニルブチルリチウム、シクロへキシルリチウム、シクロペンチルリチウム、ジイソプロペニルベンゼンとブチルリチウムとの反応生成物等が挙げられるが、これらの中で、特にn-ブチルリチウムが好適である。
【0031】
一方、リチウムアミド化合物としては、例えばリチウムヘキサメチレンイミド、リチウムピロリジド、リチウムピぺリジド、リチウムへプタメチレンイミド、リチウムドデカメチレンイミド、リチウムジメチルアミド、リチウムジエチルアミド、リチウムジブチルアミド、リチウムジプロピルアミド、リチウムジへプチルアミド、リチウムジへキシルアミド、リチウムジオクチルアミド、リチウムジ-2-エチルへキシルアミド、リチウムジデシルアミド、リチウム-N-メチルピペラジド、リチウムエチルプロピルアミド、リチウムエチルブチルアミド、リチウムエチルベンジルアミド、リチウムメチルフェネチルアミド等が挙げられる。これらの中で、カーボンブラックに対する相互作用効果及び重合開始能の点から、リチウムヘキサメチレンイミド、リチウムピロリジド、リチウムピぺリジド、リチウムへプタメチレンイミド、リチウムドデカメチレンイミド等の環状リチウムアミドが好ましく、特にリチウムヘキサメチレンイミド及びリチウムピロリジドが好適である。
これらのリチウムアミド化合物は、一般に、第2級アミンとリチウム化合物とから、予め調製したものを重合に使用することができるが、重合系中(in-Situ)で調製することもできる。また、この重合開始剤の使用量は、好ましくは単量体100g当たり、0.2~20ミリモルの範囲で選定される。
【0032】
前記有機リチウム化合物を重合開始剤として用い、アニオン重合によってブタジエンゴムを製造する方法としては、特に制限はなく、従来公知の方法を用いることができる。
具体的には、反応に不活性な有機溶剤、例えば脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素化合物等の炭化水素系溶剤中において、共役ジエン化合物又は共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物を、前記リチウム化合物を重合開始剤として、所望により、用いられるランダマイザーの存在下にアニオン重合させることにより、目的の活性末端を有するブタジエンゴムが得られる。
また、有機リチウム化合物を重合開始剤として用いた場合には、前述のランタン系列希土類元素化合物を含む触媒を用いた場合に比べ、活性末端を有するブタジエンゴムのみならず、活性末端を有する共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物の共重合体も効率よく得ることができる。
【0033】
前記炭化水素系溶剤としては、炭素数3~8のものが好ましく、例えばプロパン、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、プロペン、1-ブテン、イソブテン、トランス-2-ブテン、シス-2-ブテン、1-ペンテン、2-ペンテン、1-へキセン、2-へキセン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。
また、溶媒中の単量体濃度は、好ましくは5~50質量%、より好ましくは10~30質量%である。尚、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物を用いて共重合を行う場合、仕込み単量体混合物中の芳香族ビニル化合物の含量は55質量%以下の範囲が好ましい。
【0034】
(変性剤)
本発明においては、上記のようにして得られた活性末端を有するブタジエンゴムの活性末端に、変性剤として、保護化第1級アミン化合物を反応させることにより、第1級アミン変性ブタジエンゴムを製造することができ、保護化第2級アミン化合物を反応させることにより、第2級アミン変性ブタジエンゴムを製造することができる。上記保護化第1級アミン化合物としては、保護化第1級アミノ基を有するアルコキシシラン化合物が好適であり、保護化第2級アミン化合物としては、保護化第2級アミノ基を有するアルコキシシラン化合物が好適である。
【0035】
上記アミン変性ブタジエンゴムを得るための変性剤として用いられる保護化第1級アミノ基を有するアルコキシシラン化合物としては、例えばN,N-ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、1-トリメチルシリル-2,2-ジメトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノエチルトリメトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノエチルトリエトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノエチルメチルジメトキシシラン及びN,N-ビス(トリメチルシリル)アミノエチルメチルジエトキシシラン等を挙げることができ、好ましくは、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン又は1-トリメチルシリル-2,2-ジメトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタンである。
【0036】
また、上記アミン変性ブタジエンゴムを得るための変性剤としては、N-メチル-N-トリメチルシリルアミノプロピル(メチル)ジメトキシシラン、N-メチル-N-トリメチルシリルアミノプロピル(メチル)ジエトキシシラン、N-トリメチルシリル(ヘキサメチレンイミン-2-イル)プロピル(メチル)ジメトキシシラン、N-トリメチルシリル(ヘキサメチレンイミン-2-イル)プロピル(メチル)ジエトキシシラン、N-トリメチルシリル(ピロリジン-2-イル)プロピル(メチル)ジメトキシシラン、N-トリメチルシリル(ピロリジン-2-イル)プロピル(メチル)ジエトキシシラン、N-トリメチルシリル(ピペリジン-2-イル)プロピル(メチル)ジメトキシシラン、N-トリメチルシリル(ピペリジン-2-イル)プロピル(メチル)ジエトキシシラン、N-トリメチルシリル(イミダゾール-2-イル)プロピル(メチル)ジメトキシシラン、N-トリメチルシリル(イミダゾール-2-イル)プロピル(メチル)ジエトキシシラン、N-トリメチルシリル(4,5-ジヒドロイミダゾール-5-イル)プロピル(メチル)ジメトキシシラン、N-トリメチルシリル(4,5-ジヒドロイミダゾール-5-イル)プロピル(メチル)ジエトキシシランなどの保護化第2級アミノ基を有するアルコキシシラン化合物;N-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-(1-メチルエチリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-エチリデン-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-(1-メチルプロピリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-(4-N,N-ジメチルアミノベンジリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-(シクロヘキシリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミンなどのイミノ基を有するアルコキシシラン化合物;3-ジメチルアミノプロピル(トリエトキシ)シラン、3-ジメチルアミノプロピル(トリメトキシ)シラン、3-ジエチルアミノプロピル(トリエトキシ)シラン、3-ジエチルアミノプロピル(トリメトキシ)シラン、2-ジメチルアミノエチル(トリエトキシ)シラン、2-ジメチルアミノエチル(トリメトキシ)シラン、3-ジメチルアミノプロピル(ジエトキシ)メチルシラン、3-ジブチルアミノプロピル(トリエトキシ)シランなどのアミノ基を有するアルコキシシラン化合物なども挙げられる。
これらの変性剤は、一種単独で用いてもよく、二種以上組み合わせて用いてもよい。またこの変性剤は部分縮合物であってもよい。
ここで、部分縮合物とは、変性剤のSiOR(Rはアルキル基等)の一部(全部ではない)が縮合によりSiOSi結合したものをいう。
【0037】
前記変性剤による変性反応において、該変性剤の使用量は、好ましくは0.5~200mmol/kg・ブタジエンゴムである。同使用量は、さらに好ましくは1~100mmol/kg・ブタジエンゴムであり、特に好ましくは2~50mmol/kg・ブタジエンゴムである。ここで、ブタジエンゴムとは、製造時又は製造後、添加される老化防止剤等の添加剤を含まないブタジエンゴムの質量を意味する。変性剤の使用量を前記範囲にすることによって、充填材、特にカーボンブラックの分散性に優れ、ランフラットタイヤ用サイド補強ゴムの耐破壊特性及び低発熱性が改良される。
なお、前記変性剤の添加方法は、特に制限されず、一括して添加する方法、分割して添加する方法、あるいは、連続的に添加する方法等が挙げられるが、一括して添加する方法が好ましい。
また、変性剤は、重合開始末端や重合終了末端以外に重合体主鎖や側鎖のいずれに結合させることもできるが、重合体末端からエネルギー消失を抑制して低発熱性を改良しうる点から、重合開始末端あるいは重合終了末端に導入されていることが好ましい。
【0038】
(縮合促進剤)
本発明では、前記した変性剤として用いる保護化第1級アミノ基を有するアルコキシシラン化合物が関与する縮合反応を促進するために、縮合促進剤を用いることが好ましい。
このような縮合促進剤としては、第三アミノ基を含有する化合物、又は周期律表(長周期型)の3族、4族、5族、12族、13族、14族及び15族のうちのいずれかの属する元素を一種以上含有する有機化合物を用いることができる。さらに縮合促進剤として、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ビスマス(Bi)、アルミニウム(Al)、及びスズ(Sn)からなる群から選択される少なくとも一種以上の金属を含有する、アルコキシド、カルボン酸塩、又はアセチルアセトナート錯塩であることが好ましい。
ここで用いる縮合促進剤は、前記変性反応前に添加することもできるが、変性反応の途中及び又は終了後に変性反応系に添加することが好ましい。変性反応前に添加した場合、活性末端との直接反応が起こり、活性末端に保護された第一アミノ基を有するヒドロカルビロキシ基が導入されない場合がある。
縮合促進剤の添加時期としては、通常、変性反応開始5分~5時間後、好ましくは変性反応開始10分~1時間後、より好ましくは変性反応開始15分~1時間後である。
【0039】
縮合促進剤としては、具体的には、例えば、テトラメトキシチタニウム、テトラエトキシチタニウム、テトラ-n-プロポキシチタニウム、テトライソプロポキシチタニウム、テトラ-n-ブトキシチタニウム、テトラ-n-ブトキシチタニウムオリゴマー、テトラ-sec-ブトキシチタニウム、テトラ-tert-ブトキシチタニウム、テトラ(2-エチルヘキシル)チタニウム、ビス(オクタンジオレート)ビス(2-エチルヘキシル)チタニウム、テトラ(オクタンジオレート)チタニウム、チタニウムラクテート、チタニウムジプロポキシビス(トリエタノールアミネート)、チタニウムジブトキシビス(トリエタノールアミネート)、チタニウムトリブトキシステアレート、チタニウムトリプロポキシステアレート、チタニウムエチルヘキシルジオレート、チタニウムトリプロポキシアセチルアセトネート、チタニウムジプロポキシビス(アセチルアセトネート)、チタニウムトリプロポキシエチルアセトアセテート、チタニウムプロポキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、チタニウムトリブトキシアセチルアセトネート、チタニウムジブトキシビス(アセチルアセトネート)、チタニウムトリブトキシエチルアセトアセテート、チタニウムブトキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、チタニウムテトラキス(アセチルアセトネート)、チタニウムジアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、ビス(2-エチルヘキサノエート)チタニウムオキサイド、ビス(ラウレート)チタニウムオキサイド、ビス(ナフテネート)チタニウムオキサイド、ビス(ステアレート)チタニウムオキサイド、ビス(オレエート)チタニウムオキサイド、ビス(リノレート)チタニウムオキサイド、テトラキス(2-エチルヘキサノエート)チタニウム、テトラキス(ラウレート)チタニウム、テトラキス(ナフテネート)チタニウム、テトラキス(ステアレート)チタニウム、テトラキス(オレエート)チタニウム、テトラキス(リノレート)チタニウム、テトラキス(2-エチル-1,3-ヘキサンジオラト)チタン等のチタニウムを含む化合物を挙げることができる。
【0040】
また、例えば、トリス(2-エチルヘキサノエート)ビスマス、トリス(ラウレート)ビスマス、トリス(ナフテネート)ビスマス、トリス(ステアレート)ビスマス、トリス(オレエート)ビスマス、トリス(リノレート)ビスマス、テトラエトキシジルコニウム、テトラ-n-プロポキシジルコニウム、テトライソプロポキシジルコニウム、テトラ-n-ブトキシジルコニウム、テトラ-sec-ブトキシジルコニウム、テトラ-tert-ブトキシジルコニウム、テトラ(2-エチルヘキシル)ジルコニウム、ジルコニウムトリブトキシステアレート、ジルコニウムトリブトキシアセチルアセトネート、ジルコニウムジブトキシビス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムトリブトキシエチルアセトアセテート、ジルコニウムブトキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムジアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、ビス(2-エチルヘキサノエート)ジルコニウムオキサイド、ビス(ラウレート)ジルコニウムオキサイド、ビス(ナフテネート)ジルコニウムオキサイド、ビス(ステアレート)ジルコニウムオキサイド、ビス(オレエート)ジルコニウムオキサイド、ビス(リノレート)ジルコニウムオキサイド、テトラキス(2-エチルヘキサノエート)ジルコニウム、テトラキス(ラウレート)ジルコニウム、テトラキス(ナフテネート)ジルコニウム、テトラキス(ステアレート)ジルコニウム、テトラキス(オレエート)ジルコニウム、テトラキス(リノレート)ジルコニウム等のビスマスまたはジルコニウムを含む化合物を挙げることができる。
【0041】
また、例えば、トリエトキシアルミニウム、トリ-n-プロポキシアルミニウム、トリイソプロポキシアルミニウム、トリ-n-ブトキシアルミニウム、トリ-sec-ブトキシアルミニウム、トリ-tert-ブトキシアルミニウム、トリ(2-エチルヘキシル)アルミニウム、アルミニウムジブトキシステアレート、アルミニウムジブトキシアセチルアセトネート、アルミニウムブトキシビス(アセチルアセトネート)、アルミニウムジブトキシエチルアセトアセテート、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、トリス(2-エチルヘキサノエート)アルミニウム、トリス(ラウレート)アルミニウム、トリス(ナフテネート)アルミニウム、トリス(ステアレート)アルミニウム、トリス(オレエート)アルミニウム、トリス(リノレート)アルミニウム等のアルミニウムを含む化合物を挙げることができる。
【0042】
上述の縮合促進剤の内、チタン化合物が好ましく、チタン金属のアルコキシド、チタン金属のカルボン酸塩、又はチタン金属のアセチルアセトナート錯塩が特に好ましい。
この縮合促進剤の使用量としては、前記化合物のモル数が、反応系内に存在するヒドロカルビロキシ基総量に対するモル比として、0.1~10となることが好ましく、0.5~5が特に好ましい。縮合促進剤の使用量を前記範囲にすることによって縮合反応が効率よく進行する。
なお、縮合反応時間は、通常、5分~10時間、好ましくは10分~5時間、より好ましくは15分~5時間程度である。縮合反応時間を前記範囲にすることによって縮合反応を円滑に完結することができる。
また、縮合反応時の反応系の圧力は、通常、0.01~20MPa、好ましくは0.05~10MPaである。
ゴム成分中の変性ゴムの含有量は、10~90質量%であることが好ましく、20~80質量%がより好ましい。
【0043】
〔充填材〕
本発明のゴム組成物に含まれる充填材には、カーボンブラックが含まれることが好ましい。充填材は、カーボンブラック単独であっても良いし、カーボンブラックに加えて、シリカ、クレー等の補強性無機充填材を含んでいても良い。充填材中にカーボンブラックが50質量%以上含まれることが好ましく、70質量%以上含まれることがより好ましく、80質量%以上含まれることが更に好ましく、90質量%以上含まれることが特に好ましい。
本発明のゴム組成物に含まれる充填材中のカーボンブラックは、窒素吸着比表面積が、20~90m/gであることが好ましく、20~80m/gであることがより好ましく、20~60m/gであることが更に好ましい。カーボンブラックの窒素吸着比表面積がこの範囲にあることにより、ランフラットタイヤ用サイド補強ゴムは、補強性と低発熱性のバランスに優れる。窒素吸着比表面積は、JIS K 6217-2:2001に基づき測定される。
【0044】
また、上記カーボンブラックのジブチルフタレート吸油量が110mL/100g以上であることが、ランフラットタイヤ用サイド補強ゴムの剛性を高めるため、好ましい。ジブチルフタレート吸油量は高い程良く、通常160mL/100g以下が好ましい。ジブチルフタレート吸油量は、JIS K 6217-4:2008に基づき測定される。
なお、必要に応じ、上記特性以外のカーボンブラックを更に含有していてもよい。
【0045】
上記のような大粒径の高ストラクチャーのカーボンブラックは、防振ゴム、免震ゴム等に代表される制振ゴム材料に用いられることがあるが、防振ゴムは自動車エンジンの振動を車内に伝えないようにするための柔軟なゴムである。それに対し、本発明の加硫ゴムは、100℃における25%伸長時モジュラス引張弾性率が1.2MPa以上となる弾性率の大きなゴムである。本発明の加硫ゴムを、例えば、ランフラットタイヤのサイド補強ゴムに用いる場合、サイド補強ゴムは、高圧縮力条件下、及び高温条件下でも走行車体を支える補強部材であり、制振ゴム材料とは使用環境及び目的が大きく異なる。防振ゴムもエンジン荷重を支える部材と捉え得るが、サイド補強ゴムにおいては、高速走行する乗用車から受ける厳しい条件で短時間の入力である一方、防振ゴムにおいては、エンジンから受ける比較的マイルドな条件で長期間の入力であり、全く異なる。
【0046】
ゴム組成物中のカーボンブラックの含有量は、本発明のゴム組成物の主要な用途であるランフラットタイヤ用サイド補強ゴムの低発熱性と補強性を両立させる観点から、ゴム成分100質量部に対して、40~60質量部であることを要し、42~60質量部であることが好ましく、44~60質量部であることがより好ましく、45~60質量部であることが更に好ましい。カーボンブラックの含有量が、ゴム成分100質量部に対して、40質量部以上であれば、ランフラット走行時の耐久性が良好となり、60質量部以下であれば、乗り心地が良好となる。
【0047】
〔加硫剤、加硫促進剤〕
ゴム組成物は、加硫剤を含む。加硫剤としては、通常、硫黄が用いられる。加硫剤は、硫黄分として、ゴム成分100質量部に対して、3.0~6.0質量部であることが好ましく、3.0~5.5質量部であることがより好ましく、3.5~5.5質量部であることが更に好ましい。加硫剤としては、硫黄が好ましい。硫黄以外の加硫剤としては、モルホリン・ジスルフィド等が挙げられる。
【0048】
ゴム組成物は、また、ゴム成分の加硫を促進するために、加硫促進剤を含有することが好ましく、加硫後のゴム組成物のモノスルフィドを高くして、ポリスルフィド比率を30%以下とすることが、耐久性を向上する観点から好ましい。この観点から、本発明に係る加硫促進剤は、チウラム系加硫促進剤を含むものである。
チウラム系加硫促進剤は、側鎖炭素数が4以上であることが好ましく、6以上であることがより好ましく、8以上であることが更に好ましい。側鎖炭素数が4以上であることで、ゴム組成物中でのチウラム系加硫促進剤の分散が優れ、均一な架橋網目が構成され易い。
側鎖炭素数が4以上のチウラム系加硫促進剤としては、例えば、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド、テトラキス(n-ドデシル)チウラムジスルフィド、テトラキス(ベンジル)チウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、テトラベンジルチウラムジスルフィド等が挙げられ、中でも、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィドが好ましい。
【0049】
本発明のゴム組成物が含有する加硫促進剤はチウラム系加硫促進剤を含み、ゴム組成物に用いる加硫剤中の硫黄分の含有量に対するチウラム系加硫促進剤の含有量の質量比(チウラム系加硫促進剤の含有量/加硫剤中の硫黄分の含有量)が0.4~1.2であることが好ましく、0.5~1.1であることがより好ましく、0.6~1.1であることが更に好ましい。
加硫促進剤はゴム成分に比べ極性が高いため、ゴム成分の表面から加硫促進剤が析出すること(ブルーム現象)がある。加硫ゴムが所定の弾性率を得るためには多量の加硫促進剤を添加することが求められるが、質量比(チウラム系加硫促進剤の含有量/加硫剤中の硫黄分の含有量)を0.4~1.2とすることで、ブルーム現象を抑制することができるため、未加硫ゴム組成物の加工での接着不良、最終製品の外観不良等を抑制することができる。
また、ゴム組成物中のチウラム系加硫促進剤は、ゴム成分100質量部に対して、2.6~5.5質量部含有することが、ランフラットタイヤの通常走行時の乗り心地とランフラット走行時の耐久性の両立を好適に満足するために肝要であり、3.0~5.5質量部含有することが好ましく、3.5~5.5質量部含有することが更に好ましい。チウラム系加硫促進剤が2.6質量部以上であれば、ランフラット走行時の耐久性が良好となり、5.5質量部以下であれば、乗り心地が良好となる。
【0050】
所望の加硫トルク、加硫速度を得るために、チウラム系加硫促進剤以外の加硫促進剤A、加硫遅延剤等を合わせて用いてもよい。
ゴム成分100質量部に対し、チウラム系加硫促進剤を2.6~5.5質量部含み、かつチウラム系加硫促進剤以外の加硫促進剤Aを1.0~5.0質量部、好ましくは1.0~4.0質量部、更に好ましくは1.0~3.5質量部含むことで、加硫後のゴム組成物の高温(例えば、180℃)での弾性率をより高くすることができ、タイヤのサイド補強ゴムに適用した場合、タイヤのサイドウォールのたわみを抑制することができる。
加硫促進剤Aとしては、スルフェンアミド系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、ジチオカルバミン酸系加硫促進剤、キサントゲン酸系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤、チオウレア系加硫促進剤等が挙げられる。これらの内、スルフェンアミド系加硫促進剤が好ましい。スルフェンアミド系加硫促進剤としては、N-(tert-ブチル)-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-(tert-ブチル)-ジ(ベンゾチアゾール)スルフェンアミド、N-オキシジエチレン-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド等が挙げられる。加硫促進剤Aは、1種類以上用いられる。
チウラム系加硫促進剤を2.6質量部以上とすること、チウラム系以外の加硫促進剤を1.0質量部以上とすること、及び硫黄含有加硫剤の硫黄分を3質量部以上とすることにより、ランフラット走行時の耐久性をより良好にすることができ、通常走行時の乗り心地をより好適にすることができる。
本発明のゴム組成物において、チウラム系加硫促進剤以外の加硫促進剤Aは、チウラム系加硫促進剤より少なく含まれることが好ましい。
【0051】
本発明のゴム組成物は、ムーニー粘度(ML1+4,130℃)が、好ましくは40~100、より好ましくは50~90、更に好ましくは60~85である。ムーニー粘度が上記範囲であることで、製造加工性を損なわずに、耐破壊特性を始めとするランフラットタイヤ用サイド補強ゴム物性が十分に得られる。
【0052】
(軟化剤)
本発明のゴム組成物は、軟化剤を含まないか、又はゴム成分100質量部に対して前記軟化剤を4.0質量部以下含むことが好ましい。ゴム成分100質量部に対して軟化剤を3.0質量部以下含むことがより好ましく、1.0質量部以下含有することが更に好ましく、軟化剤を含まないことが特に好ましい。
本発明のゴム組成物には、必要に応じ、サイド補強ゴムの柔軟性を高め(向上し)、乗り心地を向上するために軟化剤が用いられても良く、この場合は、軟化剤を0.01質量部以上含むことが好ましい。
軟化剤の含有量を少なく、又は含有しないことにより、室温での弾性率に対する高温(例えば、180℃)での弾性率の比を高くすることができ、タイヤのサイド補強ゴムに適用した場合、タイヤのサイドウォールのたわみを抑制することができる。このランフラット走行時の耐久性の向上の観点からは、軟化剤を含まないことが好ましい。
本発明に係る軟化剤は、熱可塑性樹脂及びオイルから選ばれる1種以上からなることが好ましい。
熱可塑性樹脂としては、高温時に軟化又は液体状となり、サイド補強ゴムの柔軟性を向上し、乗り心地を向上するものであれば良い。例えば、C5系(シクロペンタジエン系樹脂、ジシクロペンタジエン系樹脂を含む)、C9系、C5/C9混合系等の各種石油系樹脂、テルペン系樹脂、テルペン-芳香族化合物系樹脂、ロジン系樹脂、フェノール樹脂、アルキルフェノール樹脂等の粘着付与剤(硬化剤を含まない)などが用いられる。
オイルとは、常温で液状の軟化剤をいい、パラフィン系オイル、ナフテン系オイル、芳香族系オイル等の各種プロセスオイルが挙げられる。
【0053】
(熱硬化性樹脂)
本発明のゴム組成物は、熱硬化性樹脂を含まないか、又はゴム成分100質量部に対して、前記熱硬化性樹脂を1.0質量部以下含むことが好ましい。熱硬化性樹脂を0.5質量部以下含むことがより好ましく、熱硬化性樹脂を含まないことが更に好ましい。
本発明のゴム組成物は、熱硬化性樹脂の含有量が少ない程、柔軟となり、本発明のゴム組成物を用いたランフラットタイヤの静的縦バネ定数が小さくなるので、ランフラットタイヤの乗り心地性が良好となる。
必要により熱硬化性樹脂を含む場合は、ゴム成分100質量部に対して、0.01質量部以上含むことが好ましい。
熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂などの樹脂が挙げられる。フェノール樹脂の硬化剤としては、ヘキサメチレンテトラミン等が挙げられる。
【0054】
本発明のゴム組成物には、上記成分と共に、通常のゴム組成物に配合され使用される配合剤を含有させることができる。例えば、カーボンブラック及びシリカ以外の各種充填材(例えば、タルク、炭酸カルシウム等)、シランカップリング剤、加硫促進助剤、加硫遅延剤、亜鉛華、ステアリン酸、ワックス、老化防止剤、相容化剤、作業性改善剤、滑剤、紫外線吸収剤、分散剤、均質化剤などの一般的に配合される各種配合剤を挙げることができる。
【0055】
老化防止剤としては、公知のものを用いることができ、特に制限されないが、フェノール系老化防止剤、イミダゾール系老化防止剤、アミン系老化防止剤などを挙げることができる。これら老化防止剤の配合量は上記ゴム成分100質量部に対し、通常0.5~10質量部、好ましくは1~5質量部である。
【0056】
ゴム組成物を得る際、上記各成分の配合方法に特に制限はなく、全ての成分原料をオープンロールで順次配合して1段階で混練しても良いが、加硫剤及び加硫促進剤以外の原料を混練りするマスターバッチ練り段階の後、加硫剤及び加硫促進剤を配合する最終混練り段階を含む、複数の混練段階で混練することが好ましい。なお、混練に際してはロール、インターナルミキサー、バンバリーローター等の混練機を用いることができる。更に、シート状や帯状等に成形する際には、押出成形機、プレス機等の公知の成形機を用いればよい。
【0057】
<タイヤ、ランフラットタイヤ>
本発明のゴム組成物は、タイヤ、特にランフラットタイヤのサイド補強ゴム層及びビードフィラーから選ばれる少なくとも一つの部材に用いられることが好ましい。
以下、サイド補強ゴム層を有するランフラットタイヤの構造の一例について、図1を用いて説明する。
図1は、本発明に係るランフラットタイヤの一実施態様の断面を示す模式図であり、本発明に係るランフラットタイヤを構成するサイド補強ゴム層8等の各部材の配置を説明するものである。
【0058】
図1において、本発明のランフラットタイヤ(以下、単に、「タイヤ」と称することがある)の好適な実施態様は、一対のビードコア1、1’(1’は図示せず)間にわたってトロイド状に連なり、両端部が該ビードコア1をタイヤ内側から外側へ巻き上げられる少なくとも1枚のラジアルカーカスプライからなるカーカス層2と、該カーカス層2のサイド領域のタイヤ軸方向外側に配置されて外側部を形成するサイドゴム層3と、該カーカス層2のクラウン領域のタイヤ径方向外側に配置されて接地部を形成するトレッドゴム層4と、該トレッドゴム層4と該カーカス層2のクラウン領域の間に配置されて補強ベルトを形成するベルト層5と、該カーカス層2のタイヤ内方全面に配置されて気密膜を形成するインナーライナー6と、一方の該ビードコア1から他方の該ビードコア1’へ延びる該カーカス層2本体部分と該ビードコア1に巻き上げられる巻上部分との間に配置されるビードフィラー7と、該カーカス層のサイド領域の該ビードフィラー7側部からショルダー区域10にかけて、該カーカス層2と該インナーライナー6との間に、少なくとも1枚の、タイヤ回転軸に沿った断面形状が略三日月形のサイド補強ゴム層8と、を具えるタイヤである。
本発明のゴム組成物をサイド補強ゴム層8及びビードフィラー7から選ばれる少なくとも一つの部材に用いた本発明に係るランフラットタイヤは、耐久寿命に優れる。
【0059】
タイヤのカーカス層2は少なくとも1枚のカーカスプライからなっているが、カーカスプライは2枚以上であってもよい。また、カーカスプライの補強コードは、タイヤ周方向に対し実質的に90°をなす角度で配置することができ、補強コードの打ち込み数は、35~65本/50mmとすることができる。また、カーカス層2のクラウン領域のタイヤ径方向外側に、2層の第1ベルト層と第2ベルト層とからなるベルト層5が配設されているが、ベルト層5の枚数もこれに限られるものではない。なお、第1ベルト層と第2ベルト層は、撚り合わされることなくタイヤ幅方向に並列に引き揃えられた複数本のスチールコードがゴム中に埋設されてなるものを用いることができ、例えば、第1ベルト層と第2ベルト層は、層間で互いに交差するように配置されて、交差ベルトを形成してもよい。
【0060】
さらに、タイヤは、ベルト層5のタイヤ径方向外側には、ベルト補強層(図示しない)が配置されていてもよい。ベルト補強層の補強コードは、タイヤ周方向における引張剛性の確保が目的であるので、高弾性の有機繊維からなるコードを用いることが好ましい。有機繊維コードとしては、芳香族ポリアミド(アラミド)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート、レーヨン、ザイロン(登録商標)(ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)繊維)、脂肪族ポリアミド(ナイロン)等の有機繊維コード等を用いることができる。
【0061】
さらにまた、タイヤは、サイド補強層の外、図示はしないが、インサート、フリッパー等の補強部材を配置してもよい。ここで、インサートとは、ビード部3からサイド部2にかけて、タイヤ周方向に配置される、複数本の高弾性の有機繊維コードを並べてゴムコーティングした補強材である(図示せず)。フリッパーとは、カーカスプライの、ビードコア1又は1’間に延在する本体部と、ビードコア1又は1’の周りに折り返された折り返し部との間に配設され、ビードコア1又は1’およびそのタイヤ径方向外側に配置されるビードフィラー7の少なくとも一部を内包する、複数本の高弾性の有機繊維コードを並べてゴムコーティングした補強材である。インサートおよびフリッパーの角度は、好ましくは周方向に対して30~60°である。
【0062】
一対のビード部にはそれぞれビードコア1、1’が埋設され、カーカス層2はこのビードコア1、1’の周りにタイヤ内側から外側に折り返して係止されているが、カーカス層2の係止方法についても、これに限られるものでもない。例えば、カーカス層2を構成するカーカスプライのうち、少なくとも1枚のカーカスプライは、ビードコア1、1’の周りにタイヤ幅方向内側から外側に向かって折り返されて、その折返し端がベルト層5とカーカス層2のクラウン部との間に位置する、いわゆるエンベロープ構造としてもよい。さらにまた、トレッドゴム層4の表面には適宜トレッドパターンが形成されていてもよく、最内層にはインナーライナー6が形成されていてもよい。タイヤ内に充填する気体としては、通常のまたは酸素分圧を変えた空気、もしくは窒素等の不活性ガスを用いることができる。
【0063】
(タイヤの作製)
本発明に係るタイヤ、特にランフラットタイヤは、本発明のゴム組成物をサイド補強ゴム層8及びビードフィラー7から選ばれる少なくとも一つの部材に用いる他は、通常のランフラットタイヤの製造方法によって製造される。
すなわち、各種配合剤を含有させたゴム組成物が未加硫の段階で各部材に加工され、タイヤ成形機上で通常の方法により貼り付け成形され、生タイヤが成形される。この生タイヤを加硫機中で加熱加圧して、ランフラットタイヤが得られる。
【実施例
【0064】
<実施例1、3、4及び6、比較例1及び3>
〔ゴム組成物の調製〕
下記表1に示す配合組成で各成分を混練し、6種のゴム組成物を調製する
なお、ゴム組成物の調製に用いた変性ブタジエンゴムは、次の方法により製造する
【0065】
〔第1級アミン変性ブタジエンゴムPの製造〕
(1)未変性ポリブタジエンの製造
窒素置換された5Lオートクレーブに、窒素下、シクロヘキサン1.4kg、1,3-ブタジエン250g、2,2-ジテトラヒドロフリルプロパン(0.285mmol)シクロヘキサン溶液として注入し、これに2.85mmolのn-ブチルリチウム(BuLi)を加えた後、攪拌装置を備えた50℃温水浴中で4.5時間重合を行。1,3-ブタジエンの反応転化率は、ほぼ100%であ。この重合体溶液の一部を、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール1.3gを含むメタノール溶液に抜き取り重合を停止させた後、スチームストリッピングにより脱溶媒し、110℃のロールで乾燥して、変性前のポリブタジエンを得。得られた変性前のポリブタジエンについてミクロ構造(ビニル結合含量)を測定すると、ビニル結合含量は30質量%となる
【0066】
(2)第1級アミン変性ブタジエンゴムPの製造
上記(1)で得られた重合体溶液を、重合触媒を失活させることなく、温度50℃に保ち、第1級アミノ基が保護されたN,N-ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン1129mg(3.364mmol)を加えて、変性反応を15分間行
この後、縮合促進剤であるテトラキス(2-エチル-1,3-ヘキサンジオラト)チタン8.11gを加え、更に15分間攪拌する
最後に反応後の重合体溶液に、金属ハロゲン化合物として四塩化ケイ素242mgを添加し、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾールを添加する。次いで、スチームストリッピングにより脱溶媒及び保護された第1級アミノ基の脱保護を行い、110℃に調温されたロールによりゴムを乾燥し、第1級アミン変性ブタジエンゴムPを得
得られた第1級アミン変性ブタジエンゴムPについてミクロ構造(ビニル結合含量)を測定した結果、ビニル結合含量は30質量%となる
【0067】
〔ランフラットタイヤの製造〕
次いで、得られた6種のゴム組成物を、図1に示すサイド補強ゴム層8及びビードフィラー7に配設し、それぞれタイヤサイズ255/65R18のサイズの乗用車用ラジアルランフラットタイヤを定法に従って製造する。なお、各試作タイヤのサイド補強ゴム層の最大厚みは14.0mmとし、サイド補強ゴム層の形状は、いずれも同一とする。ビードフィラー形状も、いずれも同一とする。各試作タイヤの乗り心地性及びランフラット耐久性を下記の方法で評価する。結果を表1に示す。
【0068】
[乗り心地性評価〕
ランフラットタイヤの乗り心地性を以下の方法で評価する
乗り心地性は、6種のタイヤサイズ255/65R18のタイヤ(サイド補強ゴム層の最大厚みは、いずれも14.0mm)を用い、比較例1のタイヤの静的縦バネ定数の大きさを指数100として、各試作タイヤの静的縦バネ定数を指数表示する。ここで、静的縦バネ定数とは、タイヤに1mmの縦たわみを与えるために必要な静的縦荷重をいう。静的縦バネ定数が小さい程、路面から受ける衝撃を吸収し易く、乗り心地が良い。
乗り心地性 指数=[(各試作タイヤの静的縦バネ定数) /(比較例1の試作タイヤの静的縦バネ定数)]×100
指数値が小さい程、乗り心地性能に優れることを示す。
【0069】
[ランフラット耐久性]
各供試タイヤ(タイヤサイズ255/65R18のラジアルタイヤ)を内圧非充填状態でドラム走行(速度80km/h)させ、タイヤが走行不能になるまでのドラム走行距離をランフラット走行距離とし、比較例1のランフラットタイヤのランフラット走行距離を100とした指数でランフラット耐久性を表わ。指数が大きいほど、ランフラットタイヤの耐久寿命性は良好である。
ランフラット耐久性 指数 =
{(各試作タイヤのランフラット走行距離)/(比較例1の試作タイヤのランフラット走行距離)}×100
【0070】
<実施例2及び5、比較例2及び4>
〔ゴム組成物の調製〕
下記表1に示す配合組成で各成分を混練し、4種のゴム組成物を調製する。
なお、ゴム組成物の調製に用いる変性ブタジエンゴムは、上記の第1級アミン変性ブタジエンゴムPを用いる。
【0071】
〔ランフラットタイヤの製造〕
次いで、得られる4種のゴム組成物を、図1に示すサイド補強ゴム層8及びビードフィラー7に配設し、それぞれタイヤサイズ255/65R18のサイズの乗用車用ラジアルランフラットタイヤを定法に従って製造する。なお、各試作タイヤのサイド補強ゴム層の最大厚みは14.0mmとし、サイド補強ゴム層の形状は、いずれも同一とする。ビードフィラー形状も、いずれも同一とする。各試作タイヤの乗り心地性及びランフラット耐久性を下記の方法で評価する。結果を表1に示す。
【0072】
[乗り心地性評価〕
ランフラットタイヤの乗り心地性を以下の方法で評価する。
乗り心地性は、4種のタイヤサイズ255/65R18のタイヤ(サイド補強ゴム層の最大厚みは、いずれも14.0mm)を用い、比較例1のタイヤの静的縦バネ定数の大きさを指数100とする、各試作タイヤの静的縦バネ定数を指数表示する。ここで、静的縦バネ定数とは、上記の通りである。静的縦バネ定数が小さい程、路面から受ける衝撃を吸収し易く、乗り心地が良い。
乗り心地性 指数=[(各試作タイヤの静的縦バネ定数) /(比較例1の試作タイヤの静的縦バネ定数)]×100
指数値が小さい程、乗り心地性能に優れることを示す。
【0073】
[ランフラット耐久性]
各供試タイヤ(タイヤサイズ255/65R18のラジアルタイヤ)を内圧非充填状態でドラム走行(速度80km/h)させ、タイヤが走行不能になるまでのドラム走行距離をランフラット走行距離とし、比較例1のランフラットタイヤのランフラット走行距離を100とする指数でランフラット耐久性を表わす。指数が大きいほど、ランフラットタイヤの耐久寿命性は良好である。
ランフラット耐久性 指数 =
{(各試作タイヤのランフラット走行距離)/(比較例1の試作タイヤのランフラット走行距離)}×100
【0074】
【表1】
【0075】
表1の各成分の詳細は以下のとおりである。
*1: 天然ゴム(NR):RSS#1
*2: 第1級アミン変性ブタジエンゴムP:上記の第1級アミン変性ブタジエンゴムPの製造で得られた変性ブタジエンゴム
*3: カーボンブラック1 FEF:N550、旭カーボン株式会社製「旭#60」〔窒素吸着法比表面積40m/g、DBP吸油量114ml/100g〕
*4: カーボンブラック2:旭カーボン株式会社製「旭#52」〔窒素吸着法比表面積28m/g、DBP吸油量128ml/100g〕
*5: DCPD樹脂:ジシクロペンタジエン系石油樹脂、日本ゼオン社製「クイントン1105」
*6: フェノール樹脂:住友ベークライト株式会社製、商品名「スミライトレジンPR-50731」
*7: ヘキサメチレンテトラミン:和光純薬株式会社製
*8: ステアリン酸:新日本理化社製「ステアリン酸50S」
*9: 亜鉛華:ハクスイテック社製「3号亜鉛華」
*10: 老化防止剤(6C):N-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン、大内新興化学工業社製「ノクラック 6C」
*11: チウラム系加硫促進剤 TOT:テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド、大内新興化学工業社製「ノクセラー TOT-N」
*12: スルフェンアミド系加硫促進剤 NS: N-(tert-ブチル)-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、三新化学工業株式会社製、商品名「サンセラーNS-G」
*13: 硫黄:鶴見化学社製「粉末硫黄」
【0076】
表1から、実施例1、3、4及び6のランフラットタイヤは、比較例1及び3のランフラットタイヤと比較して、通常走行時の乗り心地性とランフラット走行時の耐久性の両立を良好に達成することがわかる。
また、表1から、実施例2及び5のランフラットタイヤは、比較例2及び4のランフラットタイヤと比較して、通常走行時の乗り心地性とランフラット走行時の耐久性の両立を良好に達成することがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明のゴム組成物は、通常走行時の乗り心地とランフラット走行時の耐久性の両立を良好に達成し得るので、ランフラットタイヤに好適に用いられる。
【符号の説明】
【0078】
1 ビードコア
2 カーカス層
3 サイドゴム層
4 トレッドゴム層
5 ベルト層
6 インナーライナー
7 ビードフィラー
8 サイド補強ゴム層
10 ショルダー区域
図1