(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-02
(45)【発行日】2023-08-10
(54)【発明の名称】油圧制御システム
(51)【国際特許分類】
F15B 11/02 20060101AFI20230803BHJP
E02F 9/22 20060101ALI20230803BHJP
【FI】
F15B11/02 M
E02F9/22 K
(21)【出願番号】P 2020003371
(22)【出願日】2020-01-14
【審査請求日】2022-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】505236469
【氏名又は名称】キャタピラー エス エー アール エル
(74)【代理人】
【識別番号】100085394
【氏名又は名称】廣瀬 哲夫
(74)【代理人】
【識別番号】100165456
【氏名又は名称】鈴木 佑子
(72)【発明者】
【氏名】中嶌 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】喜安 浩一
【審査官】古▲瀬▼ 裕介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/157531(WO,A1)
【文献】特開2017-020604(JP,A)
【文献】特開2017-053383(JP,A)
【文献】特公平08-023768(JP,B2)
【文献】特開2019-173273(JP,A)
【文献】特開2018-132178(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 11/02
F15B 11/17
E02F 9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一、第二油圧ポンプと、これら第一、第二の少なくとも何れか一方の油圧ポンプを油圧供給源とする複数の油圧アクチュエータと、第一、第二油圧ポンプから各油圧アクチュエータへの供給流量をそれぞれ制御する複数の流量制御弁と、これら流量制御弁を電子制御する制御手段とを備えてなる作業機械の油圧制御システムにおいて、
前記複数の油圧アクチュエータは、第一、第二の両方の油圧ポンプを油圧供給源とする油圧アクチュエータAを含み、該油圧アクチュエータA用の流量制御弁は、第一油圧ポンプから油圧アクチュエータAへの供給流量を制御する第一油圧アクチュエータA用流量制御弁と第二油圧ポンプから油圧アクチュエータAへの供給流量を制御する第二油圧アクチュエータA用流量制御弁とから構成され、制御手段は、油圧アクチュエータA用操作具が操作された場合に、最初に第一、第二油圧ポンプのうち一方の油圧ポンプから油圧アクチュエータAに圧油供給し、油圧アクチュエータA用操作具の操作量の増加に応じて前記一方の油圧ポンプに加えて他方の油圧ポンプからも油圧アクチュエータAに圧油供給するべく前記第一、第二油圧アクチュエータA用流量制御弁を順次作動させて油圧アクチュエータAに対する供給流量制御を行う一方、
油圧制御システムに、油圧アクチュエータA用操作具が操作された場合に油圧アクチュエータAに最初に圧油供給する油圧ポンプを任意に変更するべく第一、第二油圧アクチュエータA用流量制御弁の作動順序を任意に変更できる操作手段
と、第一、第二油圧アクチュエータA用流量制御弁の作動順序を異ならしめた各場合における燃費情報を求める情報取得手段と、該情報取得手段により求められた燃費情報を第一、第二油圧アクチュエータA用流量制御弁の作動順序を変更するための判断情報として提供する情報提供手段とを設けたことを特徴とする油圧制御システム。
【請求項2】
請求項1において、油圧制御システムは、第一、第二油圧アクチュエータA用流量制御弁の下流側に配され、油圧アクチュエータAに対する作動油の給排方向を切換えるとともに油圧アクチュエータAからの排出流量を制御する油圧アクチュエータA用方向切換弁を備え、該油圧アクチュエータA用方向切換弁は、第一または第二の何れか一方の油圧アクチュエータA用流量制御弁の作動時には該一方の流量制御弁で制御された供給流量をそのまま油圧アクチュエータAに流し、第一および第二の両方の油圧アクチュエータA用流量制御弁の作動時には該両方の流量制御弁で制御された供給流量を合流して油圧アクチュエータAに流すことを特徴とする油圧制御システム。
【請求項3】
請求項1または2において、操作手段は、第一、第二油圧アクチュエータA用流量制御弁の作動順序を異ならしめた複数のモードを設定するモード設定手段と、該モード設定手段により設定されたモードの何れかを任意に選択するモード選択手段とを備えることを特徴とする油圧制御システム。
【請求項4】
請求項
1乃至3の何れか一項において、情報取得手段に、該情報取得手段により求められた燃費情報に基づいて奨励する第一、第二油圧アクチュエータA用流量制御弁の作動順序を判断する判断手段を設けたことを特徴とする油圧制御システム。
【請求項5】
請求項1乃至
4の何れか一項において、油圧制御システムは、油圧ショベルに設けられるブームシリンダ、スティックシリンダ、バケットシリンダ、旋回モータの各油圧アクチュエータに対する油給排制御を行うための油圧制御システムであって、前記バケットシリンダは、第一、第二油圧ポンプの何れか一方の油圧ポンプを油圧供給源とし、旋回モータは、第一、第二油圧ポンプの何れか他方の油圧ポンプを油圧供給源とし、ブームシリンダおよびスティックシリンダは、第一、第二の両方の油圧ポンプを油圧供給源とする油圧アクチュエータAであって、ブームシリンダ用の流量制御弁は、第一油圧ポンプからブームシリンダへの供給流量を制御する第一ブーム用流量制御弁と第二油圧ポンプからブームシリンダへの供給流量を制御する第二ブーム用流量制御弁とから構成され、スティックシリンダ用の流量制御弁は、第一油圧ポンプからスティックシリンダへの供給流量を制御する第一スティック用流量制御弁と第二油圧ポンプからスティックシリンダへの供給流量を制御する第二スティック用流量制御弁とから構成される一方、操作手段は、ブーム用操作具が操作された場合の第一、第二ブーム用流量制御弁の作動順序、およびスティック用操作具が操作された場合の第一、第二スティック用流量制御弁の作動順序を任意に変更できることを特徴とする油圧制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の作業機械における油圧制御システムの技術分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、例えば油圧ショベル等の作業機械に設けられる油圧システムのなかには、第一、第二の油圧ポンプと、これら第一、第二油圧ポンプを油圧供給源とする複数の油圧アクチュエータとを備えるとともに、これら複数の油圧アクチュエータのなかに、第一、第二の両方の油圧ポンプを油圧供給源とする大流量油圧アクチュエータを含むものがある。さらに、前記大流量油圧アクチュエータに圧油供給するにあたり、第一、第二の何れか一方の油圧ポンプを主ポンプとして優先的に圧油供給し、他方の油圧ポンプは主ポンプの不足分のみを供給するように構成したものも従来から知られている(例えば、特許文献1参照)。このような油圧システムでは、前記大流量油圧アクチュエータを含む二つ以上の油圧アクチュエータを同時に操作(連動操作)する場合、大流量油圧アクチュエータが第一、第二油圧ポンプのうち何れの油圧ポンプを主ポンプとしているかによって、操作性、作業効率に大きく影響する。例えば、大流量油圧アクチュエータが第一油圧ポンプを主ポンプとし、同時に操作される他の油圧アクチュエータが第二ポンプを油圧供給源とする場合、大流量油圧アクチュエータが主ポンプのみから圧油供給されているあいだは両方の油圧アクチュエータを単独操作と同等に動作せしめることができるが、大流量油圧アクチュエータが第一油圧ポンプを主ポンプとし、同時に操作される他の油圧アクチュエータも第一油圧ポンプを油圧供給源とする場合には、常に第一油圧ポンプの吐出流量を大流量油圧アクチュエータと他の油圧アクチュエータとで分け合うことになるため、操作性、作業効率が低下することになる。
そこで、前記特許文献1のものでは、同時に操作される油圧アクチュエータの組み合わせに応じて、第一、第二油圧ポンプの圧油供給順位に格別の優先付けを行って、当該油圧アクチュエータに対する第一、第二油圧ポンプの供給流量を制御するように構成している。
また、第一、第二油圧ポンプから各油圧アクチュエータへの供給流量を制御する方向切換弁の上流側に補助弁を設け、該補助弁を他の油圧アクチュエータの操作に応じて絞る或いは遮断することで、第一、第二油圧ポンプから各油圧アクチュエータへの供給流量の優先度合いを調整できるようにした技術も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特公平8-23768号公報
【文献】特開平9-79212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来のものは、何れも、同時に操作される油圧アクチュエータの組み合わせに応じて、各油圧アクチュエータに対する第一、第二油圧ポンプの圧油供給の優先順位が予め設定されている。これらの優先順位は、一般的な作業を行う場合を想定して最も効率的に設定されていると考えられるが、全ての作業に最適とは限らず、さらに、同時に操作される油圧アクチュエータの組み合わせが同じであっても、オペレータが所望する各油圧アクチュエータの作動速度によっては設定された優先順位が優位とは限らないという問題があり、ここに本発明の解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、第一、第二油圧ポンプと、これら第一、第二の少なくとも何れか一方の油圧ポンプを油圧供給源とする複数の油圧アクチュエータと、第一、第二油圧ポンプから各油圧アクチュエータへの供給流量をそれぞれ制御する複数の流量制御弁と、これら流量制御弁を電子制御する制御手段とを備えてなる作業機械の油圧制御システムにおいて、前記複数の油圧アクチュエータは、第一、第二の両方の油圧ポンプを油圧供給源とする油圧アクチュエータAを含み、該油圧アクチュエータA用の流量制御弁は、第一油圧ポンプから油圧アクチュエータAへの供給流量を制御する第一油圧アクチュエータA用流量制御弁と第二油圧ポンプから油圧アクチュエータAへの供給流量を制御する第二油圧アクチュエータA用流量制御弁とから構成され、制御手段は、油圧アクチュエータA用操作具が操作された場合に、最初に第一、第二油圧ポンプのうち一方の油圧ポンプから油圧アクチュエータAに圧油供給し、油圧アクチュエータA用操作具の操作量の増加に応じて前記一方の油圧ポンプに加えて他方の油圧ポンプからも油圧アクチュエータAに圧油供給するべく前記第一、第二油圧アクチュエータA用流量制御弁を順次作動させて油圧アクチュエータAに対する供給流量制御を行う一方、油圧制御システムに、油圧アクチュエータA用操作具が操作された場合に油圧アクチュエータAに最初に圧油供給する油圧ポンプを任意に変更するべく第一、第二油圧アクチュエータA用流量制御弁の作動順序を任意に変更できる操作手段と、第一、第二油圧アクチュエータA用流量制御弁の作動順序を異ならしめた各場合における燃費情報を求める情報取得手段と、該情報取得手段により求められた燃費情報を第一、第二油圧アクチュエータA用流量制御弁の作動順序を変更するための判断情報として提供する情報提供手段とを設けたことを特徴とする油圧制御システムである。
請求項2の発明は、請求項1において、油圧制御システムは、第一、第二油圧アクチュエータA用流量制御弁の下流側に配され、油圧アクチュエータAに対する作動油の給排方向を切換えるとともに油圧アクチュエータAからの排出流量を制御する油圧アクチュエータA用方向切換弁を備え、該油圧アクチュエータA用方向切換弁は、第一または第二の何れか一方の油圧アクチュエータA用流量制御弁の作動時には該一方の流量制御弁で制御された供給流量をそのまま油圧アクチュエータAに流し、第一および第二の両方の油圧アクチュエータA用流量制御弁の作動時には該両方の流量制御弁で制御された供給流量を合流して油圧アクチュエータAに流すことを特徴とする油圧制御システムである。
請求項3の発明は、請求項1または2において、操作手段は、第一、第二油圧アクチュエータA用流量制御弁の作動順序を異ならしめた複数のモードを設定するモード設定手段と、該モード設定手段により設定されたモードの何れかを任意に選択するモード選択手段とを備えることを特徴とする油圧制御システムである。
請求項4の発明は、請求項1乃至3の何れか一項において、情報取得手段に、該情報取得手段により求められた燃費情報に基づいて奨励する第一、第二油圧アクチュエータA用流量制御弁の作動順序を判断する判断手段を設けたことを特徴とする油圧制御システムである。
請求項5の発明は、請求項1乃至4の何れか一項において、油圧制御システムは、油圧ショベルに設けられるブームシリンダ、スティックシリンダ、バケットシリンダ、旋回モータの各油圧アクチュエータに対する油給排制御を行うための油圧制御システムであって、前記バケットシリンダは、第一、第二油圧ポンプの何れか一方の油圧ポンプを油圧供給源とし、旋回モータは、第一、第二油圧ポンプの何れか他方の油圧ポンプを油圧供給源とし、ブームシリンダおよびスティックシリンダは、第一、第二の両方の油圧ポンプを油圧供給源とする油圧アクチュエータAであって、ブームシリンダ用の流量制御弁は、第一油圧ポンプからブームシリンダへの供給流量を制御する第一ブーム用流量制御弁と第二油圧ポンプからブームシリンダへの供給流量を制御する第二ブーム用流量制御弁とから構成され、スティックシリンダ用の流量制御弁は、第一油圧ポンプからスティックシリンダへの供給流量を制御する第一スティック用流量制御弁と第二油圧ポンプからスティックシリンダへの供給流量を制御する第二スティック用流量制御弁とから構成される一方、操作手段は、ブーム用操作具が操作された場合の第一、第二ブーム用流量制御弁の作動順序、およびスティック用操作具が操作された場合の第一、第二スティック用流量制御弁の作動順序を任意に変更できることを特徴とする油圧制御システムである。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明とすることにより、連動操作時に、操作する油圧アクチュエータの組み合わせが同じであっても、個々の作業内容やオペレータの所望の優先順位等に応じて油圧アクチュエータAに最初に圧油供給する油圧ポンプを任意に変更できることになって、連動操作性や作業効率、燃費の向上に貢献できる。また、第一、第二油圧アクチュエータA用流量制御弁の作動順序を判断する判断情報として燃費に関する情報を取得できることになって、燃費削減の達成に貢献できる。
請求項2の発明とすることにより、第一と第二の油圧アクチュエータA用流量制御弁の作動順序の変更を、油圧アクチュエータAからの排出流量制御に関係なく行うことができることになって、システムの簡略化に貢献できる。
請求項3の発明とすることにより、第一、第二の両方の油圧ポンプを油圧供給源とする油圧アクチュエータAが複数あっても、これら複数の油圧アクチュエータA用の第一、第二流量制御弁の作動順序の変更を、モード選択手段でモードを選択するだけの簡単操作で行うことができる。
請求項4の発明とすることにより、オペレータに、奨励される第一、第二油圧アクチュエータA用流量制御弁の作動順序が情報として提供されることになる。
請求項5の発明とすることにより、油圧ショベルの種々の作業の連動操作性の向上や、作業効率、燃費の向上を図れる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図3】コントローラの入出力を示すブロック図である。
【
図4】各モードにおける第一、第二ブーム用流量制御弁、第一、第二スティック用流量制御弁の作動順序を示す図である。
【
図5】「標準モード」における各油圧アクチュエータの操作具操作量と流量制御弁の制御流量との関係を示す図である。
【
図6】「モードA」における各油圧アクチュエータの操作具操作量と流量制御弁の制御流量との関係を示す図である。
【
図7】「モードB」における各油圧アクチュエータの操作具操作量と流量制御弁の制御流量との関係を示す図である。
【
図8】「モードC」における各油圧アクチュエータの操作具操作量と流量制御弁の制御流量との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
図1において、1は本発明の油圧制御システムが搭載された作業機械の一例である油圧ショベルであって、該油圧ショベル1は、クローラ式の下部走行体2、該下部走行体2の上方に旋回自在に支持される上部旋回体3、該上部旋回体3に装着されるフロント作業部4等の各部から構成されており、さらに該フロント作業部4は、基端部が上部旋回体3に上下揺動自在に支持されるブーム5、該ブーム5の先端部に前後揺動自在に支持されるスティック6、該スティック6の先端部に揺動自在に取付けられるバケット7等から構成されているとともに、油圧ショベル1には、前記下部走行体2を走行せしめるための左右の走行モータ8、9(
図2に図示)、上部旋回体3を旋回せしめるための旋回モータ10(
図2に図示)、ブーム5、スティック6、バケット7をそれぞれ揺動せしめるためのブームシリンダ11、スティックシリンダ12、バケットシリンダ13等の各種油圧アクチュエータが具備されている。尚、
図1中、3aは上部旋回体3に設けられる運転室である。
【0009】
次いで、前記油圧ショベル1に設けられる油圧制御回路について、
図2に基づいて説明する。
図2において、14、15は可変容量型の第一、第二油圧ポンプ、14a、15aは後述するコントローラ16からの制御信号に基づいて第一、第二油圧ポンプ14、15の容量を可変せしめる容量可変手段、17は油タンク、8~13は前述した左右の走行モータ、旋回モータ、ブームシリンダ、スティックシリンダ、バケットシリンダである。
尚、本実施の形態において、ブームシリンダ11およびスティックシリンダ12は、第一、第二の両方の油圧ポンプ14、15を油圧供給源とする油圧アクチュエータである。また、旋回モータ10、バケットシリンダ13は、第一、第二の何れか一方の油圧ポンプ14、15を供給源とする(本実施の形態では、旋回モータ10は第二油圧ポンプ15を油圧供給源とし、バケットシリンダ13は第一油圧ポンプ14を油圧供給源とする)油圧アクチュエータである。これらブームシリンダ11、スティックシリンダ12、旋回モータ10、バケットシリンダ13は、本発明の油圧アクチュエータに相当し、さらにブームシリンダ11およびスティックシリンダ12は、本発明の油圧アクチュエータAに相当する。また、本実施の形態では、左右の走行モータ8、9は本発明の油圧アクチュエータに相当しない。
【0010】
前記第一油圧ポンプ14は、後述する第一位置Xの走行直進弁18を介して第一ポンプライン19に接続されると共に、左走行用コントロールバルブ20に接続されている。一方、第二油圧ポンプ15は、第二ポンプライン21に接続されると共に、第一位置Xの走行直進弁18を介して右走行用コントロールバルブ22に接続されている。
【0011】
前記走行直進弁18は、後述するコントローラ16から出力される制御信号に基づいて第一位置Xと第二位置Yとに切換る2位置切換弁であって、該走行直進弁18が第一位置Xに位置している状態では、第一油圧ポンプ14の吐出油は第一ポンプライン19および左走行用コントロールバルブ20に供給され、第二油圧ポンプ15の吐出油は第二ポンプライン21および右走行用コントロールバルブ22に供給されるようになっており、また、走行直進弁18が第二位置Yに位置している状態では、第一油圧ポンプ14の吐出油は左右両方の走行用コントロールバルブ20、22に供給され、第二油圧ポンプ15の吐出油は第一、第二両方のポンプライン19、21に供給されるようになっている。そして、コントローラ16は、左右の走行用操作具(図示せず)のみが操作されている場合、或いは走行用操作具以外の他の油圧アクチュエータ用操作具(旋回用、ブーム用、スティック用、バケット用の操作具、何れも図示せず)のみが操作されている場合には、走行直進弁18を第一位置Xに位置するように制御する。一方、左右両方の走行用操作具が操作され、同時に他の油圧アクチュエータ用操作具が操作された場合には、制御信号を出力して走行直進弁18を第二位置Yに切換える。これにより、左右の走行用操作具のみが操作されている場合には、第一位置Xに位置している走行直進弁18によって、第一、第二油圧ポンプ14、15の吐出油が左右の走行用コントロールバルブ20、22を介して左右の走行モータ8、9にそれぞれ供給されることになって、両走行モータ8、9への供給流量を同等にすることができる一方、左右両方の走行用操作具と同時に他の油圧アクチュエータ用操作具が操作された場合には、第一油圧ポンプ14の吐出流量を左右の走行モータ8、9のみで分配して両走行モータ8、9への供給流量を同等にすることができるようになっている。尚、以下の説明では、走行直進弁18が第一位置Xに位置しているとき、つまり、第一油圧ポンプ14の吐出油が第一ポンプライン19および左走行用コントロールバルブ20に供給され、第二油圧ポンプ15の吐出油が第二ポンプライン21および右走行用コントロールバルブ22に供給される場合について説明する。
【0012】
前記左右の走行用コントロールバルブ20、22は、左右の走行モータ8、9に対する給排流量制御を行うと共に給排方向を切換えるパイロット操作式のスプール弁であって、コントローラ16から出力される制御信号に基づいてパイロット圧を出力する走行用電磁比例弁(図示しないが、左走行用前進側電磁比例弁、左走行用後進側電磁比例弁、右走行用前進側電磁比例弁、右左走行用後進側電磁比例弁)に接続される前進側、後進側のパイロットポート20a、20b、22a、22bを備えている。そして、該左右の走行用コントロールバルブ20、22は、前進側、後進側の両パイロットポート20a、20b、22a、22bにパイロット圧が入力されていない状態では、左右の走行モータ8、9に対する給排制御を行わない中立位置Nに位置しているが、前進側パイロットポート20a、22aにパイロット圧が入力されることにより、左走行モータ8、右走行モータ9を前進駆動させるべく第一油圧ポンプ14、第二油圧ポンプ15の吐出油を左走行モータ8、右走行モータ9の一方のポート8a、9aに供給するとともに、他方のポート8b、9bからの排出油を油タンク17に流す前進側作動位置Xに位置し、また、後進側パイロットポート20b、22bにパイロット圧が入力されることにより、左走行モータ8、右走行モータ9を後進駆動させるべく第一油圧ポンプ14、第二油圧ポンプ15の吐出油を左走行モータ8、右走行モータ9の他方のポート8b、9bに供給するとともに、一方のポート8a、9aからの排出油を油タンク17に流す後進側作動位置Yに位置するように構成されているが、前進側作動位置Xまたは後進側作動位置Yに位置しているときの左走行モータ8、右走行モータ9に対する供給流量および排出流量は、走行用電磁比例弁から前進側または後進側パイロットポート20a、20b、22a、22bに出力されるパイロット圧の増減に伴うスプール移動量に応じて供給用弁路および排出用弁路の開口面積が増減することで増減制御されるようになっている。そして、コントローラ16は、左右の走行用操作具が操作された場合に、該走行用操作具の操作量に応じて増減するパイロット圧を出力するように走行用電磁比例弁を制御するようになっており、これにより走行用操作具の操作量に応じた速度で左右の走行モータ8、9を駆動させることができるようになっている。
尚、本実施の形態において、前記左右の走行用コントロールバルブ20、22は、本発明の流量制御弁および方向切換弁に相当しない。因みに、左右の走行モータ8、9のみ或いは他の油圧アクチュエータと連動駆動させる場合の操作性は、前述した走行直進弁18によって確保されるようになっている。
【0013】
一方、前記第一油圧ポンプ14に接続される第一ポンプライン19からは、第一ブーム用供給油路23、第一スティック用供給油路24、バケット用供給油路25が互いにパラレルとなる状態で分岐形成されており、また、第二油圧ポンプ15に接続される第二ポンプライン21からは、第二ブーム用供給油路26、旋回用供給油路27、第二スティック用供給油路28が互いにパラレルとなる状態で分岐形成されている。そして、これら第一ブーム用、第一スティック用、バケット用、第二ブーム用、旋回用、第二スティック用の各供給油路23~28には、それぞれ第一ブーム用、第一スティック用、バケット用、第二ブーム用、旋回用、第二スティック用の各流量制御弁30~35が配設されている。
尚、前記第一ブーム用、第一スティック用、バケット用、第二ブーム用、旋回用、第二スティック用の各流量制御弁30~35は、本発明の流量制御弁に相当する。さらに、第一ブーム用、第一スティック用の流量制御弁30、31は、本発明の油圧アクチュエータA第一流量制御弁に相当し、第二ブーム用、第二スティック用の流量制御弁33、35は、本発明の油圧アクチュエータA第二流量制御弁に相当する。
【0014】
前記第一ブーム用、第一スティック用、バケット用、第二ブーム用、旋回用、第二スティック用の各流量制御弁30~35は、コントローラ16から出力される制御信号に基づいて作動する各流量制御用電磁弁(第一ブーム流量制御用電磁比例弁40、第一スティック流量制御用電磁比例弁41、バケット流量制御用電磁比例弁42、第二ブーム流量制御用電磁比例弁43、旋回流量制御用電磁比例弁44、第二スティック流量制御用電磁比例弁45、何れも
図3に図示)によりパイロット操作されて流量制御を行うポペット弁であって、第一ブーム用流量制御弁30は、第一油圧ポンプ14からブームシリンダ11への供給流量を制御して後述するブーム用方向切換弁36に流す。また、第一スティック用流量制御弁31は、第一油圧ポンプ14からスティックシリンダ12への供給流量を制御してスティック用方向切換弁37に流す。また、バケット用流量制御弁32は、第一油圧ポンプ14からバケットシリンダ13への供給流量を制御してバケット用方向切換弁38に流す。また、第二ブーム用流量制御弁33は、第二油圧ポンプ15からブームシリンダ11への供給流量を制御してブーム用方向切換弁36に流す。また、旋回用流量制御弁34は、第二油圧ポンプ15から旋回モータ10への供給流量を制御して旋回用方向切換弁39に流す。また、第二スティック用流量制御弁35は、第二油圧ポンプ15からスティックシリンダ12への供給流量を制御してスティック用方向切換弁37に流す。さらに、これら各流量制御弁30~35は逆流防止機能を有しており、第一、第二油圧ポンプ14、15から対応する各方向切換弁36~39への油の流れは許容するが、逆流は阻止するようになっている。
【0015】
前記ブーム用方向切換弁36は、第一ブーム用流量制御弁30および第二ブーム用流量制御弁33の下流側に配されており、これら第一ブーム用流量制御弁30または第二ブーム用流量制御弁33からの流量、あるいは第一ブーム用流量制御弁30および第二ブーム用流量制御弁33からの流量が合流して供給される。また、スティック用方向切換弁37は、第一スティック用流量制御弁31および第二スティック用流量制御弁35の下流側に配されており、これら第一スティック用流量制御弁31または第二スティック用流量制御弁35からの流量、あるいは第一スティック用流量制御弁31および第二スティック用流量制御弁35からの流量が合流して供給される。また、バケット用方向切換弁38は、バケット用流量制御弁32の下流側に配されており、該バケット用流量制御弁32からの流量が供給される。また、旋回用方向切換弁39は、旋回用流量制御弁34の下流側に配されており、該旋回用流量制御弁34からの流量が供給される。
そして、前記ブーム用、スティック用、バケット用、旋回用の各方向切換弁36~39は、後述するように、前記第一、第二ブーム用流量制御弁30、33、第一、第二スティック用流量制御弁31、35、バケット用流量制御弁32、旋回用流量制御弁34からの供給流量を制御することなくそのままブームシリンダ11、スティックシリンダ12、バケットシリンダ13、旋回モータ10に流すように構成されている。
【0016】
次いで、前記ブーム用、スティック用、バケット用、旋回用の方向切換弁36~39について詳細に説明すると、これらブーム用、スティック用、バケット用、旋回用の方向切換弁36~39は、前記コントローラ16から出力される制御信号に基づいてパイロット圧を出力する各電磁比例弁(ブーム用伸長側電磁比例弁46a、ブーム用縮小側電磁比例弁46b、スティック用伸長側電磁比例弁47a、スティック用縮小側電磁比例弁47b、バケット用伸長側電磁比例弁48a、バケット用縮小側電磁比例弁48b、左旋回用電磁比例弁49a、右旋回用電磁比例弁49b、何れも
図3に図示)によりパイロット操作されるクローズドセンタ型のスプール弁であって、後述するように、対応する油圧アクチュエータ(ブームシリンダ11、スティックシリンダ12、バケットシリンダ13、旋回モータ10)に対する作動油の給排方向を切換えるとともに、油圧アクチュエータからの排出流量制御は行うが油圧アクチュエータへの供給流量制御は行わないように構成されている。
まず、ブーム用方向切換弁36について説明すると、該ブーム用方向切換弁36は、コントローラ16から出力される制御信号に基づいてパイロット圧を出力するブーム用伸長側電磁比例弁46a、ブーム用縮小側電磁比例弁46bに接続される伸長側、縮小側のパイロットポート36a、36bを備えている。そして、伸長側、縮小側の両パイロットポート36a、36bにパイロット圧が入力されていない状態では、ブームシリンダ11に対する油給排を行わない中立位置Nに位置しているが、伸長側パイロットポート36aにパイロット圧が入力されることにより伸長側作動位置Xに切換わって、第一、第二ブーム用流量制御弁30、33からの供給流量をヘッド側油室11aに供給し、且つ、ロッド側油室11bからの排出油を油タンク17に流す。また、縮小側パイロットポート36bにパイロット圧が入力されることにより縮小側作動位置Yに切換わって、第一、第二ブーム用流量制御弁30、33からの供給流量をロッド側油室11bに供給し、且つ、ヘッド側油室11aからの排出油を油タンク17に流すとともに、ヘッド側油室11aからの排出油の一部を再生油としてロッド側油室11bに供給するように構成されている。そして、伸長側、縮小側作動位置X、Yのブーム用方向切換弁36の開口面積は、第一、第二ブーム用流量制御弁30、33からの流量をブームシリンダ11のヘッド側油室11a、ロッド側油室11bに供給する供給用弁路の開口面積については、前記第一、第二ブーム用流量制御弁30、33の開口面積に対して十分に大きく設定されていて、第一、第二ブーム用流量制御弁30、33で制御された供給流量がそのままヘッド側油室11a、ロッド側油室11bに供給されるようになっている。一方、ブームシリンダ11のヘッド側油室11a、ロッド側油室11bからの油を排出する排出側弁路の開口面積は、伸長側、縮小側パイロットポート36a、36bに入力されるパイロット圧、つまり、コントローラ16からブーム用伸長側電磁比例弁46a、ブーム用縮小側電磁比例弁46bに出力される制御信号に基づいて増減制御され、該ブーム用方向切換弁36の排出用弁路の開口面積によって、ヘッド側油室11a、ロッド側油室11bからの排出流量が増減制御されるようになっている。これにより、ブーム用方向切換弁36は、ブームシリンダ11に対する作動油の給排方向を切換えるとともに、ブームシリンダ11からの排出制御は行うが、ブームシリンダ11への供給流量の制御は行わずに、第一、第二ブーム用流量制御弁30、33で制御された供給流量をそのままブームシリンダ11に供給するように構成されている。
【0017】
また、スティック用方向切換弁37、バケット用方向切換弁38、旋回用方向切換弁39は、前記ブーム用方向切換弁36と同様のものであるため簡単に説明すると、スティック用方向切換弁37は、スティック用伸長側電磁比例弁47a、スティック用縮小側電磁比例弁47bにより、バケット用方向切換弁38は、バケット用伸長側電磁比例弁48a、バケット用縮小側電磁比例弁48bにより、旋回用方向切換弁39は、左旋回用電磁比例弁49a、右旋回用電磁比例弁49bによりそれぞれパイロット操作されて、中立位置Nから作動位置XまたはYに切換わるとともに、作動位置X、Yの開口面積は、第一、第二スティック用、バケット用、旋回用の各流量制御弁31、35、32、34からの供給流量をスティックシリンダ12、バケットシリンダ13、旋回モータ10に供給する供給用弁路の開口面積については、各流量制御弁31、35、32、34の開口面積に対して十分に大きく設定されていて、各流量制御弁31、35、32、34で制御された供給流量がそのままスティックシリンダ12、バケットシリンダ13、旋回モータ10に供給されるようになっている。また、スティックシリンダ12、バケットシリンダ13、旋回モータ10からの排出油を油タンク17に流す排出用弁路の開口面積は、コントロール16から対応する各電磁比例弁47a、47b、48a、48b、49a、49bに出力される制御信号に基づいて増減制御され、これら排出用弁路の開口面積の増減制御によって、スティックシリンダ12、バケットシリンダ13、旋回モータ10からの排出流量が増減制御されるようになっている。これにより、スティック用方向切換弁37、バケット用方向切換弁38、旋回用方向切換弁39は、それぞれスティックシリンダ12、バケットシリンダ13、旋回モータ10に対する作動油の給排方向を切換えるとともに、スティックシリンダ12、バケットシリンダ13、旋回モータ10からの排出流量の制御は行うが、スティックシリンダ12、バケットシリンダ13、旋回モータ10への供給流量の制御は行わずに、第一、第二スティック用、バケット用、旋回用の各流量制御弁31、35、32、34で制御された供給流量をそのままスティックシリンダ12、バケットシリンダ13、旋回モータ10に供給するように構成されている。
【0018】
さらに、
図2において、51、52は第一、第二ポンプライン19、21からそれぞれ分岐形成されて油タンク17に至る第一、第二ブリードラインであって、これら第一、第二ブリードライン51、52には、それぞれ第一、第二ブリード弁53、54が配設されている。これら第一、第二ブリード弁53、54は、第一、第二ブリード用電磁比例弁55、56(
図3に図示)から出力されるパイロット圧により作動して、第一、第二油圧ポンプ14、15から第一、第二ブリードライン51、52を経由して油タンク17に流れるブリード流量を増減制御するようになっているが、上記第一、第二ブリード用電磁比例弁55、56は、コントローラ16から出力される制御信号に基づいて第一、第二ブリード弁53、54への出力パイロット圧を増減制御するようになっている。
【0019】
一方、前記コントローラ16(本発明の制御手段に相当する)は、
図3のブロック図に示す如く、ブーム用操作具の操作方向および操作量を検出するブーム用操作検出手段60、スティック用操作具の操作方向および操作量を検出するスティック用操作検出手段61、バケット用操作具の操作方向および操作量を検出するバケット用操作検出手段62、旋回用操作具の操作方向および操作量を検出する旋回用操作検出手段63、第一油圧ポンプ14の吐出圧を検出する第一ポンプ圧力センサ64、第二油圧ポンプ15の吐出圧を検出する第二ポンプ圧力センサ65、ブームシリンダ11のヘッド側、ロッド側の負荷圧をそれぞれ検出するブーム用圧力センサ66a、66b、スティックシリンダ12のヘッド側、ロッド側の負荷圧をそれぞれ検出するスティック用圧力センサ67a、67b、バケットシリンダ13のヘッド側、ロッド側の負荷圧をそれぞれ検出するバケット用圧力センサ68a、68b、旋回モータ10の左旋回側、右旋回側の負荷圧をそれぞれ検出する旋回用圧力センサ69a、69b、後述するモード設定手段70、モード選択手段71等からの信号を入力し、これら入力信号に基づいて、前記第一ブーム流量制御用電磁比例弁40、第二ブーム流量制御用電磁比例弁43、第一スティック流量制御用電磁比例弁41、第二スティック流量制御用電磁比例弁45、バケット流量制御用電磁比例弁42、旋回流量制御用電磁比例弁44、ブーム用伸長側、縮小側電磁比例弁46a、46b、スティック用伸長側、縮小側電磁比例弁47a、47b、バケット用伸長側、縮小側電磁比例弁48a、48b、左旋回用、右旋回用電磁比例弁49a、49b、第一ブリード用電磁比例弁55、第二ブリード用電磁比例弁56、第一油圧ポンプ14の容量可変手段14a、第二油圧ポンプ15の容量可変手段15a等に制御信号を出力して、ブームシリンダ11、スティックシリンダ12、バケットシリンダ13、旋回モータ10に対する油給排制御や、第一、第二ブリードライン51、52のブリード流量制御、第一、第二油圧ポンプ14、15の吐出流量制御等を行うように構成されている。尚、前記ブーム用操作具、スティック用操作具は、本発明の油圧アクチュエータA用操作具に相当する。また、コントローラ16は、前述した走行直進弁18の切換制御や、左右の走行モータ8、9に対する油給排制御も行うが、これらの制御についての説明はここでは省略する。
【0020】
ここで、後述するように、第一、第二の両方の油圧ポンプ14、15を圧油供給源とするブームシリンダ11への圧油供給は、ブーム用操作具が操作された場合に、最初に第一、第二のうち一方の油圧ポンプ14または15からブームシリンダ11に圧油供給するべく第一、第二のうち一方のブーム用流量制御弁30または33が作動し、ブーム用操作具の操作量の増加に応じて前記一方の油圧ポンプ14または15に加えて他方の油圧ポンプ15または14からも圧油供給するべく他方のブーム用流量制御弁33または30も作動するように構成されている。同様に、第一、第二の両方の油圧ポンプ14、15を圧油供給源とするスティックシリンダ12への圧油供給も、スティック用操作具が操作された場合に、最初に第一、第二のうち一方のスティック用流量制御弁31または35が作動し、スティック用操作具の操作量の増加に応じて他方のスティック用流量制御弁35または31も作動するように構成されている。そして、これら第一、第二ブーム用流量制御弁30、33および第一、第二スティック用流量制御弁用31、35の作動順序は、前記モード設定手段70およびモード選択手段71によって、任意に変更することができるようになっている。
【0021】
前記モード設定手段70、モード選択手段71は、例えば運転室3aに配設される操作パネル(図示せず)やモニタ装置(図示せず)、あるいはコントローラ16に接続されるパソコン(図示せず)等に設けられる操作手段(ダイヤルやスイッチ、タッチパネル、キーボード等)であって、モード設定手段70によって、前記第一、第二ブーム用流量制御弁30、33および第一、第二スティック用流量制御弁31、35の作動順序を異ならしめた複数のモードを任意に設定することができるようになっており、また、モード選択手段71によって、モード設定手段70で設定された複数のモードのなかから何れかを任意に選択できるようになっている。
本実施の形態では、前記モード設定手段70によって「標準モード」、「モードA」、「モードB」、「モードC」の4つのモードが設定されており、第一、第二ブーム用流量制御弁30、33、第一、第二スティック用流量制御弁31、35のうち最初に作動する方を「ファースト」、操作量の増加に応じて後から作動する方を「セカンド」とすると、
図4に示すごとく、「標準モード」では第一ブーム用流量制御弁30および第二スティック用流量制御弁35が「ファースト」、第二ブーム用流量制御弁33および第一スティック用流量制御弁31が「セカンド」に設定され、「モードA」では第一ブーム用流量制御弁30および第一スティック用流量制御弁31が「ファースト」、第二ブーム用流量制御弁33および第二スティック用流量制御弁35が「セカンド」に設定され、「モードB」では第二ブーム用流量制御弁33および第二スティック用流量制御弁35が「ファースト」、第一ブーム用流量制御弁30および第一スティック用流量制御弁31が「セカンド」に設定され、「モードC」では第二ブーム用流量制御弁33および第一スティック用流量制御弁31が「ファースト」、第一ブーム用流量制御弁30および第二スティック用流量制御弁35が「セカンド」に設定されている。そして、これら「標準モード」、「モードA」、「モードB」、「モードC」の4つのモードのなかから何れかのモードを、モード選択手段71によって任意に選択できるようになっている。尚、前記モード設定手段70およびモード選択手段71は、本発明の操作手段を構成する。
【0022】
ついで、前記コントローラ16の行う制御について説明する。
コントローラ16は、ブーム用、スティック用、バケット用、旋回用の各操作検出手段60~63から検出信号が入力されると、各操作具の操作方向および操作量に応じて、ブームシリンダ11、スティックシリンダ12、バケットシリンダ13、旋回モータ10に対する目標供給流量および目標排出流量を求める。そして、ブームシリンダ11、スティックシリンダ12、バケットシリンダ13、旋回モータ10に対する油の給排方向が操作具の操作方向に対応し、且つ、ブームシリンダ11、スティックシリンダ12、バケットシリンダ13、旋回モータ10からの排出流量が目標排出流量となるよう、ブーム用、スティック用、バケット用、旋回用の各方向切換弁36~39にパイロット圧を出力する各電磁比例弁46a、46b~49a、49b(ブーム用伸長側電磁比例弁46a、ブーム用縮小側電磁比例弁46b、スティック用伸長側電磁比例弁47a、スティック用縮小側電磁比例弁47b、バケット用伸長側電磁比例弁48a、バケット用縮小側電磁比例弁48b、左旋回用電磁比例弁49a、右旋回用電磁比例弁49b)に制御指令を出力する。
【0023】
さらにコントローラ16は、ブームシリンダ11、スティックシリンダ12、バケットシリンダ13、旋回モータ10に前記目標供給流量が供給されるよう、第一、第二ブーム用流量制御弁30、33、第一、第二スティック用流量制御弁31、35、バケット用流量制御弁32、旋回用流量制御弁34にパイロット圧を出力する各電磁比例弁40~45(第一、第二ブーム流量制御用電磁比例弁40、43、第一、第二スティック流量制御用電磁比例弁41、45、バケット流量制御用電磁比例弁42、旋回流量制御用電磁比例弁44)に制御信号を出力する。この場合に、第一、第二油圧ポンプ14、15の何れか一方の油圧ポンプを油圧供給源とするバケットシリンダ13、旋回モータ10については、バケット用流量制御弁32、旋回用流量制御弁34から目標供給流量が供給されるように制御される。
【0024】
一方、第一、第二油圧ポンプ14、15の両方の油圧ポンプを油圧供給源とするブームシリンダ11、スティックシリンダ12については、コントローラ16は、モード選択手段71からの信号に基づいて、前述した「標準モード」、「モードA」、「モードB」、「モードC」の4つのモードのうち何れのモードが選択されているかを判断する。そして、各モードにおいて設定された順序(前述した「ファースト」、「セカンド」の順)で第一、第二ブーム用流量制御弁30、33、第一、第二スティック用流量制御弁31、35を作動させて、これら第一、第二ブーム用流量制御弁30、33、第一、第二スティック用流量制御弁31、35からブームシリンダ11、スティックシリンダ12に目標供給流量が供給されるように制御する。この場合、まず最初に作動させる第一または第二の何れか一方のブーム用、スティック用流量制御弁(「ファースト」に設定されたブーム用、スティック用流量制御弁)からの供給流量が目標供給流量となるように制御し、ブーム用操作具、スティック用操作具の操作量の増加に伴い目標供給流量が上記一方のブーム用、スティック用流量制御弁からの供給流量だけでは不足する場合には、上記一方のブーム用、スティック用流量制御弁に加えて他方のブーム用、スティック用流量制御弁(「セカンド」に設定されたブーム用、スティック用流量制御弁)も作動させ、これら一方のブーム用、スティック用流量制御弁からの供給流量と他方のブーム用、スティック用流量制御弁からの供給流量との合計流量が目標供給流量となるように制御される。
【0025】
さらにコントローラ16は、ブーム用、スティック用、バケット用、旋回用の各操作検出手段60~63から検出信号が入力されると、これら検出信号に基づいて、操作具操作量の増加に応じて第一、第二油圧ポンプ14、15の吐出流量を増加させるべく目標吐出流量を求め、該目標吐出流量が得られるように第一、第二油圧ポンプ14、15の容量可変手段14a、15aに制御信号を出力する。この場合、操作されたブームシリンダ11、スティックシリンダ12、バケットシリンダ13、旋回モータ10の油圧供給源となる第一、第二油圧ポンプ14、15に応じて、第一、第二油圧ポンプ14、15の吐出流量は個別制御される。
【0026】
さらにコントローラ16は、ブーム用、スティック用、バケット用、旋回用の各操作検出手段60~63から検出信号が入力されると、これら検出信号に基づいて、操作具操作量の増加に応じて第一、第二油圧ポンプ14、15から油タンク17に流れるブリード流量を減少(ブリード流量ゼロを含む)させるべく、第一、第二ブリード用電磁比例弁55、56に制御信号を出力して第一、第二ブリード弁53、54を制御する。この場合、操作されたブームシリンダ11、スティックシリンダ12、バケットシリンダ13、旋回モータ10の油圧供給源となる第一、第二油圧ポンプ14、15に応じて、第一、第二ブリードライン51、52のブリード流量は個別制御される。
【0027】
次いで、前記「標準モード」、「モードA」、「モードB」、「モードC」の各モードにおける流量制御弁30~35の作動について、
図5~
図8に基づいて具体的に説明する。これらの図は、ブーム用、スティック用、バケット用、旋回用の操作具操作量と、第一、第二ブーム用流量制御弁30、33、第一、第二スティック用流量制御弁31、35、バケット用流量制御弁32、旋回用流量制御弁34の制御流量との関係を示す図であって、実線は第一油圧ポンプ14を圧油供給源とする制御流量、点線は第二油圧ポンプ15を油圧供給源とする制御流量である。
【0028】
まず、
図5に示す「標準モード」では、ブーム用操作具が操作された場合、最初に第一ブーム用流量制御弁30が作動して、該第一ブーム用流量制御弁30により流量制御された第一油圧ポンプ14の吐出油がブームシリンダ11に供給される。ブーム用操作具の操作量が増加すると第二ブーム用流量制御弁33も作動して、前記第一油圧ポンプ14からの供給圧油に加えて、第二ブーム用流量制御弁33により流量制御された第二油圧ポンプ15の吐出油もブームシリンダ11に供給される。
さらに、「標準モード」では、スティック用操作具が操作された場合、最初に第二スティック用流量制御弁35が作動して、該第二スティック用流量制御弁35により流量制御された第二油圧ポンプ15の吐出油がスティックシリンダ12に供給される。スティック用操作具の操作量が増加すると第一スティック用流量制御弁31も作動して、前記第二油圧ポンプ15からの供給圧油に加えて、第一スティック用流量制御弁31により流量制御された第一油圧ポンプ14の吐出油もスティックシリンダ12に供給される。
さらに、「標準モード」では、バケット用操作具が操作された場合、バケット用流量制御弁32が作動して、該バケット用流量制御弁32により流量制御された第一油圧ポンプ14の吐出油がバケットシリンダ13に供給される。
さらに、「標準モード」では、旋回用操作具が操作された場合、旋回用流量制御弁34が作動して、該旋回用流量制御弁34により流量制御された第二油圧ポンプ15の吐出油が旋回モータ10に供給される。
而して、この「標準モード」では、第一、第二の両方の油圧ポンプ14、15を油圧供給源とする油圧アクチュエータであるブームシリンダ11およびスティックシリンダ12については、ブームシリンダ11には最初に第一油圧ポンプ14から圧油供給され、また、スティックシリンダ12には最初に第二油圧ポンプ15から圧油供給されることになって、最初に圧油供給される油圧供給源を異にする。また、第一、第二の何れか一方の油圧ポンプ14、15を油圧供給源とする油圧アクチュエータであるバケットシリンダ13および旋回モータ10についても、バケットシリンダ13には第一油圧ポンプ14から圧油供給され、旋回モータ10には第二油圧ポンプ15から圧油供給されることになって、油圧供給源を異にする。これにより、油圧ショベル1で行う掘削、ダンプ積み込み等の一般的な作業を行う場合において、連動操作されるブームシリンダ11、スティックシリンダ12、バケットシリンダ13、旋回モータ10の各油圧アクチュエータに第一、第二油圧ポンプ14、15の吐出油をバランス良く分配できることになって、汎用性に優れる。
【0029】
一方、
図6に示す「モードA」では、ブーム用操作具が操作された場合、最初に第一ブーム用流量制御弁30が作動して、該第一ブーム用流量制御弁30により流量制御された第一油圧ポンプ14の吐出油がブームシリンダ11に供給される。ブーム用操作具の操作量が増加すると第二ブーム用流量制御弁33も作動して、前記第一油圧ポンプ14からの供給圧油に加えて、第二ブーム用流量制御弁33により流量制御された第二油圧ポンプ15の吐出油もブームシリンダ11に供給される。
さらに、「モードA」では、スティック用操作具が操作された場合、最初に第一スティック用流量制御弁31が作動して、該第一スティック用流量制御弁31により流量制御された第一油圧ポンプ14の吐出油がスティックシリンダ12に供給される。スティック用操作具の操作量が増加すると第二スティック用流量制御弁35も作動して、前記第一油圧ポンプ14からの供給圧油に加えて、第二スティック用流量制御弁35により流量制御された第二油圧ポンプ15の吐出油もスティックシリンダ12に供給される。
さらに、「モードA」において、バケット用操作具、旋回用操作具が操作された場合には、前述した「標準モード」と同様に、第一油圧ポンプ14の吐出油がバケットシリンダ13に供給され、第二油圧ポンプ15の吐出油が旋回モータ10に供給される。
而して、この「モードA」では、第一、第二の両方の油圧ポンプ14、15を油圧供給源とするブームシリンダ11およびスティックシリンダ12については、共に最初に第一油圧ポンプ14から圧油供給される。一方、第一、第二の何れか一方の油圧ポンプ14、15を油圧供給源とするバケットシリンダ13および旋回モータ10については、バケットシリンダ13には第一油圧ポンプ14から圧油供給され、旋回モータ10には第二油圧ポンプ15から圧油供給される。これにより、ブームシリンダ11、スティックシリンダ12の操作量が少ない場合(ブームシリンダ11、スティックシリンダ12をゆっくり動かす場合)には、第一油圧ポンプ14の吐出油をブームシリンダ11、スティックシリンダ12、バケットシリンダ13で分配する一方、第二油圧ポンプ15の吐出油は旋回モータ10が独占できることになり、よって、前述した「標準モード」と比して、旋回モータ10を他の油圧アクチュエータと圧油供給源を共用しない状態で作動させることができる領域が増加して、旋回を優先させる作業や、旋回とブーム5、スティック6、バケット7のゆっくりとした操作とを組み合わせた作業、あるいはブーム5、スティック6、バケット7の何れか一つと旋回とを組み合わせた作業等を行う場合の連動操作性、作業効率の向上を図れる。
【0030】
また、
図7に示す「モードB」では、ブーム用操作具が操作された場合、最初に第二ブーム用流量制御弁33が作動して、該第二ブーム用流量制御弁33により流量制御された第二油圧ポンプ15の吐出油がブームシリンダ11に供給される。ブーム用操作具の操作量が増加すると第一ブーム用流量制御弁30も作動して、前記第二油圧ポンプ15からの供給圧油に加えて、第一ブーム用流量制御弁30により流量制御された第一油圧ポンプ14の吐出油もブームシリンダ11に供給される。
さらに、「モードB」では、スティック用操作具が操作された場合、最初に第二スティック用流量制御弁35が作動して、該第二スティック用流量制御弁35により流量制御された第二油圧ポンプ15の吐出油がスティックシリンダ12に供給される。スティック用操作具の操作量が増加すると第一スティック用流量制御弁31も作動して、前記第二油圧ポンプ15からの供給圧油に加えて、第一スティック用流量制御弁31により流量制御された第一油圧ポンプ14の吐出油もスティックシリンダ12に供給される。
さらに、「モードB」において、バケット用操作具、旋回用操作具が操作された場合には、前述した「標準モード」、「モードA」と同様に、第一油圧ポンプ14の吐出油がバケットシリンダ13に供給され、第二油圧ポンプ15の吐出油が旋回モータ10に供給される。
而して、この「モードB」では、第一、第二の両方の油圧ポンプ14、15を油圧供給源とするブームシリンダ11およびスティックシリンダ12については、共に最初に第二油圧ポンプ15から圧油供給される。一方、第一、第二の何れか一方の油圧ポンプ14、15を油圧供給源とするバケットシリンダ13および旋回モータ10については、バケットシリンダ13には第一油圧ポンプ14から圧油供給され、旋回モータ10には第二油圧ポンプ15から圧油供給される。これにより、ブームシリンダ11、スティックシリンダ12の操作量が少ない場合には、第二油圧ポンプ15の吐出油をブームシリンダ11、スティックシリンダ12、旋回モータ10で分配する一方、第一油圧ポンプ14の吐出油はバケットシリンダ13が独占できることになり、よって、前述した「標準モード」と比して、バケットシリンダ13を他の油圧アクチュエータと圧油供給源を共用しない状態で作動させることができる領域が増加して、バケット7を優先させる作業や、ブーム5、スティック6、旋回の何れか一つとバケット7とを組み合わせた作業(例えば、ブーム5の上昇とバケット7のイン、アウトを組み合わせた作業)等を行う場合の連動操作性、作業効率の向上を図れる。
【0031】
さらに、
図8に示す「モードC」では、ブーム用操作具が操作された場合、最初に第二ブーム用流量制御弁33が作動して、該第二ブーム用流量制御弁33により流量制御された第二油圧ポンプ15の吐出油がブームシリンダ11に供給される。ブーム用操作具の操作量が増加すると第一ブーム用流量制御弁30も作動して、前記第二油圧ポンプ15からの供給圧油に加えて、第一ブーム用流量制御弁30により流量制御された第一油圧ポンプ14の吐出油もブームシリンダ11に供給される。
さらに、「モードC」では、スティック用操作具が操作された場合、最初に第一スティック用流量制御弁31が作動して、該第一スティック用流量制御弁31により流量制御された第一油圧ポンプ14の吐出油がスティックシリンダ12に供給される。スティック用操作具の操作量が増加すると第二スティック用流量制御弁35も作動して、前記第一油圧ポンプ14からの供給圧油に加えて、第二スティック用流量制御弁35により流量制御された第二油圧ポンプ15の吐出油もスティックシリンダ12に供給される。
さらに、「モードC」において、バケット用操作具、旋回用操作具が操作された場合には、前述した「標準モード」、「モードA」、「モードB」と同様に、第一油圧ポンプ14の吐出油がバケットシリンダ13に供給され、第二油圧ポンプ15の吐出油が旋回モータ10に供給される。
而して、この「モードC」では、第一、第二の両方の油圧ポンプ14、15を油圧供給源とするブームシリンダ11およびスティックシリンダ12については、ブームシリンダ11には最初に第二油圧ポンプ15から圧油供給され、また、スティックシリンダ12には最初に第一油圧ポンプ14から圧油供給される。一方、第一、第二の何れか一方の油圧ポンプ14、15を油圧供給源とするバケットシリンダ13および旋回モータ10については、バケットシリンダ13には第一油圧ポンプ14から圧油供給され、旋回モータ10には第二油圧ポンプ15から圧油供給される。これにより、スティックシリンダ12の最初の油圧供給源と旋回モータ10の油圧供給源とが異なることになって、スティック6と旋回との連動操作性、作業効率の向上が図れるとともに、ブームシリンダ11の最初の油圧供給源とスティックシリンダ12の最初の油圧供給源とが異なるため、ブーム5とスティック6との連動操作については、「標準モード」と同等の操作性を確保できる。
【0032】
叙述の如く構成された本形態において、油圧ショベル1の油圧制御システムは、第一、第二油圧ポンプ14、15と、これら第一、第二の少なくとも何れか一方の油圧ポンプ14、15を油圧供給源とする複数の油圧アクチュエータ11~13、10(ブームシリンダ11、スティックシリンダ12、バケットシリンダ13、旋回モータ10)と、第一、第二油圧ポンプ14、15から各油圧アクチュエータ11~13、10への供給流量をそれぞれ制御する複数の流量制御弁30~35(第一、第二ブーム用流量制御弁30、33、第一、第二スティック用流量制御弁31、35、バケット用流量制御弁32、旋回用流量制御弁34)と、これら流量制御弁30~35を電子制御するコントローラ16等を備えて構成されているが、前記複数の油圧アクチュエータのうちブームシリンダ11およびスティックシリンダ12は、第一、第二の両方の油圧ポンプ14、15を油圧供給源とし、ブームシリンダ11用の流量制御弁は、第一油圧ポンプ14からブームシリンダ11への供給流量を制御する第一ブーム用流量制御弁30と第二油圧ポンプ15からブームシリンダ11への供給流量を制御する第二ブーム用流量制御弁33とから構成され、また、スティックシリンダ12用の流量制御弁は、第一油圧ポンプ14からスティックシリンダ12への供給流量を制御する第一スティック用流量制御弁31と第二油圧ポンプ15からスティックシリンダ12への供給流量を制御する第二スティック用流量制御弁35とから構成されている。そして、コントローラ16は、ブーム用操作具が操作された場合に、最初に第一、第二油圧ポンプ14、15のうち何れか一方の油圧ポンプからブームシリンダ11に圧油供給し、ブーム用操作具の操作量の増加に応じて前記一方の油圧ポンプに加えて他方の油圧ポンプからもブームシリンダ11に圧油供給するべく前記第一、第二ブーム用流量制御弁30、33を順次作動させてブームシリンダ11に対する供給流量制御を行い、同様に、スティック用操作具が操作された場合に、最初に第一、第二油圧ポンプ14、15のうち何れか一方の油圧ポンプからスティックシリンダ12に圧油供給し、スティック用操作具の操作量の増加に応じて前記一方の油圧ポンプに加えて他方の油圧ポンプからもスティックシリンダ12に圧油供給するべく第一、第二スティック用流量制御弁31、35を順次作動させてスティックシリンダ12に対する供給流量制御を行うように構成されているが、この場合に、油圧制御システムには、第一と第二のブーム用流量制御弁30、33、第一と第二のスティック用流量制御弁31、35の作動順序を任意に変更できる操作手段(モード設定手段70およびモード選択手段71)が設けられており、該操作手段によって第一と第二のブーム用流量制御弁30、33、第一と第二のスティック用流量制御弁31、35の作動順序を変更することで、ブーム用、スティック用操作具が操作された場合にブームシリンダ11、スティックシリンダ12に最初に圧油供給する油圧ポンプ14または15を任意に変更できることになる。
【0033】
この結果、第一、第二の両方の油圧ポンプ14、15から圧油供給されるブームシリンダ11、スティックシリンダ12を含む複数の油圧アクチュエータを同時に操作する連動操作時に、操作する油圧アクチュエータの組み合わせが同じであっても、個々の作業内容やオペレータの所望の優先順位等に応じて、オペレータが任意にブームシリンダ11、スティックシリンダ12に最初に圧油供給する油圧ポンプ14または15を変更できることになって、連動操作性や作業効率、燃費の向上に貢献できる。しかも、ブームシリンダ11、スティックシリンダ12に最初に圧油供給する油圧ポンプ14または15の変更は、第一油圧ポンプ14からブームシリンダ11、スティックシリンダ12への供給流量を制御する第一ブーム用、第一スティック用流量制御弁30、31と、第二油圧ポンプ15からブームシリンダ11、スティックシリンダ12への供給流量を制御する第二ブーム用、第二スティック用流量制御弁33、35との作動順序を変更することで行う構成であるから、油圧制御システムの回路を変更したり別途部材を追加したりする必要がなく、コスト抑制に貢献できる。
【0034】
さらに、油圧制御システムには、前記第一、第二ブーム用流量制御弁30、33、第一、第二スティック用流量制御弁31、35の下流側に配され、ブームシリンダ11、スティックシリンダ12に対する作動油の給排方向を切換えるとともにブームシリンダ11、スティックシリンダ12からの排出流量を制御するブーム用方向切換弁36、スティック用方向切換弁37を備えているが、該ブーム用方向切換弁36、スティック用方向切換弁37は、第一または第二の何れか一方のブーム用流量制御弁30または33、スティック用流量制御弁31または35の作動時には、該一方のブーム用流量制御弁30または33、スティック用流量制御弁31または35で制御された供給流量をそのままブームシリンダ11、スティックシリンダ12に流し、第一および第二の両方のブーム用流量制御弁30、33、スティック用流量制御弁31、35の作動時には、これら両方のブーム用流量制御弁30、33、スティック用流量制御弁31、35で制御された供給流量を合流してブームシリンダ11、スティックシリンダ12に流すことになる。
【0035】
而して、ブームシリンダ11、スティックシリンダ12への供給流量の制御は、第一油圧ポンプ14からの供給流量を制御する第一ブーム用、第一スティック用流量制御弁30、31と、第二油圧ポンプ15からの供給流量を制御する第二ブーム用、第二スティック用流量制御弁33、35とによって行われる一方、ブームシリンダ11、スティックシリンダ12からの排出流量の制御はブーム用方向切換弁36、スティック用方向切換弁37によって行われることになり、この結果、ブームシリンダ11、スティックシリンダ12の供給流量制御と排出流量制御とを個別の弁で別々に制御できることになって、供給流量と排出流量との関係を作業内容等に応じて容易に変更できるとともに、第一と第二のブーム用流量制御弁30、33、スティック用流量制御弁31、35の作動順序の変更を、ブームシリンダ11、スティックシリンダ12からの排出流量制御に関係なく行うことができることになって、作動順序の変更が排出流量制御に影響しないように格別に配慮する必要がなく、システムの複雑化を回避できる。
【0036】
さらに、このものにおいて、第一、第二ブーム用流量制御弁30、33、第一、第二スティック用流量制御弁31、35の作動順序を任意に変更するための操作手段は、第一、第二ブーム用流量制御弁30、33、第一、第二スティック用流量制御弁31、35の作動順序を異ならしめた複数のモードを設定するモード設定手段70と、該モード設定手段70により設定された複数のモードの何れかを任意に選択するモード選択手段71とから構成されている。而して、モード設定手段70によって予めモードを設定しておくことで、第一、第二の両方の油圧ポンプ14、15を油圧供給源とする油圧アクチュエータが複数あっても、これら複数の油圧アクチュエータ用の第一、第二流量制御弁の作動順序の変更を、モード選択手段71でモードを選択するだけの簡単操作で行うことができる。
【0037】
さらに、本実施の形態では、油圧ショベル1に設けられるブームシリンダ11、スティックシリンダ12、バケットシリンダ13、旋回モータ10の各油圧アクチュエータに対する油給排制御に本発明が実施されていて、バケットシリンダ13は、第一、第二油圧ポンプ14、15の何れか一方の油圧ポンプを油圧供給源とし、旋回モータ10は、第一、第二油圧ポンプ14、15の何れか他方の油圧ポンプを油圧供給源とし、ブームシリンダ11およびスティックシリンダ12は、第一、第二の両方の油圧ポンプ14、15を油圧供給源とする油圧アクチュエータであり、ブームシリンダ11用の流量制御弁は、第一油圧ポンプ14からブームシリンダ11への供給流量を制御する第一ブーム用流量制御弁30と第二油圧ポンプ15からブームシリンダ11への供給流量を制御する第二ブーム用流量制御弁33とから構成され、スティックシリンダ12用の流量制御弁は、第一油圧ポンプ14からスティックシリンダ12への供給流量を制御する第一スティック用流量制御弁31と第二油圧ポンプ15からスティックシリンダ12への供給流量を制御する第二スティック用流量制御弁35とから構成される一方、操作手段(モード設定手段70およびモード選択手段71)は、ブーム用操作具が操作された場合の第一、第二ブーム用流量制御弁30、33の作動順序、およびスティック用操作具が操作された場合の第一、第二スティック用流量制御弁31、35の作動順序を任意に変更できることになる。そして、この様に油圧ショベル1に設けられたブームシリンダ11、スティックシリンダ12、バケットシリンダ13、旋回モータ10に本発明を実施することによって、油圧ショベル1の種々の作業の連動操作性の向上や、作業効率、燃費の向上を図れる。
【0038】
尚、本実施の形態の形態は上記実施の形態に限定されないことは勿論であって、例えば、油圧制御システムに、第一、第二油圧アクチュエータA用流量制御弁の作動順序を異ならしめた各場合における燃費情報を求める情報取得手段と、該情報取得手段により求められた燃費情報を第一、第二油圧アクチュエータA用流量制御弁の作動順序を変更するための判断情報としてオペレータに提供する情報提供手段を設けることもできる。この場合、燃費情報としては、例えば平均出力や平均燃費があり、平均出力は、流量制御弁や方向切換弁を制御するコントローラ(制御手段)が保有する第一、第二油圧ポンプのポンプ圧力データや容量可変データ(第一、第二油圧ポンプの吐出圧を検出するポンプ圧力センサの検出値や、第一、第二油圧ポンプの容量可変手段に出力する制御指令値等)等に基づいて瞬時出力値を求め、該瞬時出力値を積算して時間で割ることにより求めることができ、また、平均燃費は、エンジンコントローラから燃料噴射データを入力し、該燃料噴射データに基づいて瞬時燃費値を求め、該瞬時燃費値を積算して時間で割ることにより求めることができる。そして、情報取得手段は、第一、第二油圧アクチュエータA用流量制御弁の作動順序を異ならしめた各場合(第一、第二油圧アクチュエータA用流量制御弁の作動順序を異ならしめた複数のモードが設定されている場合には各モード)において、前述したようにして燃費情報(平均出力および/または平均燃費)を求める一方、情報提供手段は、該情報取得手段で求められた燃費情報を、第一、第二油圧アクチュエータA用流量制御弁の作動順序を変更するときの判断情報(モードを選択するための判断情報)として、モニタ等に表示してオペレータに提供するように構成されている。尚、前述した平均燃費とは通常相関関係にあるため、平均出力または平均燃費の何れか一方のみを燃費情報として求めて情報提供する構成としてもよい。また、情報取得手段が燃費情報を取得するにあたり、情報取得のための専用のモードを設定し、該モード中にユーザーにとって代表的な作業を行いながら燃費情報を取得する構成にしても良いし、このようなモードを設定することなく普段の作業中において燃費情報を取得する構成にしても良い。
【0039】
さらに、前記情報取得手段に、該情報取得手段により求められた燃費情報に基づいて奨励する第一、第二油圧アクチュエータA用流量制御弁の作動順序を判断する自動判断手段を設ける構成にすることもできる。この場合には、自動判断手段により判断された奨励する作動順序の情報が、情報提供手段によりオペレータに提供される。
【0040】
そして、この様に、第一、第二油圧アクチュエータA用流量制御弁の作動順序を異ならしめた各場合(第一、第二油圧アクチュエータA用流量制御弁の作動順序を異ならしめた複数のモードが設定されている場合には各モード)における燃費情報(例えば、平均出力または/および平均燃費)を求める情報取得手段や、該情報取得手段により求められた情報に基づいて奨励する第一、第二油圧アクチュエータA用流量制御弁の作動順序を判断する自動判断手段を設けることにより、オペレータは、第一、第二油圧アクチュエータA用流量制御弁の作動順序を判断する判断情報として燃費に関する情報を取得できることになって、燃費削減の達成に大きく貢献できる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、第一、第二の両方の油圧ポンプから圧油供給される油圧アクチュエータを備えた作業機械の油圧制御システムに利用することができる。
【符号の説明】
【0042】
10 旋回モータ
11 ブームシリンダ
12 スティックシリンダ
13 バケットシリンダ
14 第一油圧ポンプ
15 第二油圧ポンプ
16 コントローラ
30 第一ブーム用流量制御弁
31 第一スティック用流量制御弁
33 第二ブーム用流量制御弁
35 第二スティック用流量制御弁
36 ブーム用方向切換弁
37 スティック用方向切換弁
70 モード設定手段
71 モード選択手段