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特許7324742皮膚を保湿するための1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール類
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-02
(45)【発行日】2023-08-10
(54)【発明の名称】皮膚を保湿するための1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール類
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/49 20060101AFI20230803BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20230803BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20230803BHJP
   A61K 31/34 20060101ALI20230803BHJP
   A61P 17/16 20060101ALI20230803BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20230803BHJP
   A61Q 19/08 20060101ALI20230803BHJP
【FI】
A61K8/49
A61K9/14
A61K9/16
A61K31/34
A61P17/16
A61Q19/00
A61Q19/08
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020505407
(86)(22)【出願日】2018-08-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-10-08
(86)【国際出願番号】 FR2018051981
(87)【国際公開番号】W WO2019025730
(87)【国際公開日】2019-02-07
【審査請求日】2021-07-21
(31)【優先権主張番号】1757421
(32)【優先日】2017-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591169401
【氏名又は名称】ロケット フレール
【氏名又は名称原語表記】ROQUETTE FRERES
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ウィルス
(72)【発明者】
【氏名】レオン メンティンク
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第103083282(CN,A)
【文献】特開2008-081474(JP,A)
【文献】特表2016-522187(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A61K 9/00- 9/72
A61K 31/33-31/80
A61K 47/00-47/69
A61P 17/00-17/18
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保湿剤としてイソソルビドを含む局所使用のための製剤であって
記製剤の総重量に比較して、15乾燥重量%~25乾燥重量%のイソソルビド含量を有し、
グリセロールを含まないか、前記製剤の総重量に比較して、グリセロールを1.0重量%以下の含有量で含み、
脂っぽくなくべたつく感触も伴わないことを特徴とする製剤。
【請求項2】
前記製剤は、化粧用製剤、医薬製剤又は動物用製剤である、請求項に記載の製剤。
【請求項3】
グリセロールを含まない、請求項1又は2に記載の製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の対象は、皮膚を保湿するための、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールをベースとする、好ましくはイソソルビドをベースとする組成物の非治療的使用である。
【背景技術】
【0002】
現在、化粧品分野において最も多く使用されている皮膚保湿剤は、グリセロールである。詳細には、グリセロールは、例えばクリーム、ローション、シャワージェル及びシャンプー等の局所使用するための数多くの化粧用製品において、それらに保湿特性を付与するために含有されている。しかし、グリセロールには、大量で使用された場合には、感覚レベル上の幾つかの欠点がある。詳細には、選択される局所用製剤によるが、前記製剤の重量に比較して、20重量%を超える、又はたった10重量%を超えるグリセロール含量でさえ、皮膚に脂っぽく且つべたつく感触をもたらし、不快と判定される。
【0003】
欧州特許出願第1891929A1号明細書は、例えばクリームやローション等の皮膚のための化粧用製剤における皺取り剤としてのイソソルビドの使用について記載している。この出願によると、イソソルビドは、光老化によって誘導される表皮の肥厚化を減少させ、皺を減少させる。だがイソソルビドの保湿効果については、記載されても提案されてもいない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
グリセロールの欠点を考えると、本発明の目的の1つは、これらの脂っぽく且つべたつく感触という欠点を有していないグリセロールの代替品を提供することである。
【0005】
様々な製品、特に様々なポリオールを使用した集中的な研究及び調査の後に、本出願人は、皮膚に脂っぽく且つべたつく感触を残すことなく高い保湿力を有する特定のポリオールを選択することによって、この目的を達成できることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
従って、本発明は、皮膚を保湿するための、少なくとも1種の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール、特にイソソルビドを含む組成物の非治療的使用並びにさらに保湿剤として少なくとも1種の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールを含む局所使用のための組成物に関するが、この少なくとも1種の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールは、特にイソソルビドである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
あらゆる予想に反して、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール類、特にイソソルビドは、即時的及び持続的方法のどちらにおいても、優れた保湿力を有する皮膚保湿剤であることが証明された。グリセロールとは異なり、少なくとも1種の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールを含む組成物を用いて処方された局所使用のための製剤は、皮膚に乾いたパウダー状の感触を残す。製剤が大量に、即ち10乾燥重量%超、又は20乾燥重量%超で使用された場合でさえ、少なくとも1種の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールを含む組成物は、脂っぽく且つべたつく感触を生じさせることがない。さらに、及び極めて有益にも、本組成物は、グリセロールに比してはるかにみずみずしい感触を提供する。さらに、本出願人は、少なくとも1種の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールを含む組成物を用いて処方された局所使用のための製剤が、グリセロールを用いて処方されたコントロール製剤よりも皮膚上ではるかに伸び易く、皮膚内へより良好に浸透す
ることに注目した。
【0008】
本出願を通して、保湿力とは、局所使用のための製剤が表皮の表面層を保湿する能力に関する:前記製剤中に含有される水は、この層内に輸送されることになる。感覚的観点からは、保湿力は、みずみずしい感触を生じさせる。この保湿力は、例えば、実施例のセクションにおいてその使用により詳細に説明される、皮膚の表面層の水和状態を測定するための科学的に認められた方法である皮膚水和計測法(corneometry)によって計測され得る。
【0009】
保湿力は、皮膚の表面で測定されるが表皮層内では測定されない他の特性と混同されてはならない。これは、例えば、感触について当てはまる。ある種の感触の特徴は保湿力には左右されない;従って、局所使用のための製剤は、例えばグリセロールをベースとする場合は脂っぽく且つべたつく感触を生じさせる、又は反対に本発明の場合のように乾いたパウダー状の感触を生じさせることがある。所定の場合、この感触は、保湿力に影響を受けることがある:表皮の上層のより良好な水和は皮膚をよりやわらかく且つより弾性にさせる。しかしいずれにせよ、この感触は、皮膚の表面では測定されるが、表皮層内では測定されない特性を意味する。
【0010】
これらの特性が本出願の実施例及び特性解析の対象であるので、それらに関連する試験は、選択された基準枠:保湿力については表皮の表面層及び感触については表皮の表面を明確に規定する。
【0011】
簡潔にジアンヒドロヘキシトール類若しくはイソヘキシド類とも呼ばれる1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール類は、例えば、ソルビトール、マンニトール及びイジトール等のC6ポリオール類(ヘキシトール類)の二重内部脱水の生成物である。本出願では、用語「1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール」には、イソソルビド(1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール)、イソマンニド(1,4:3,6-ジアンヒドロマンニトール)、イソイジド(1,4:3,6-ジアンヒドロイジトール)が含まれる。さらに、本発明によって使用される組成物は、単一の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール、好ましくはイソソルビド、又は上記の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール類の任意の混合物を含有し得る。本発明によって使用される少なくとも1種の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールを含む組成物は、固体形態、好ましくは結晶形態、特に粉末若しくはフレークの形態、又は液体形態で使用され得る。第一の場合には、固体形態にある本組成物は、必ずしも完全に無水ではないので、このため特に約5重量%までの少量の水を含有し得る。第二の場合には、本組成物は、一般には1重量%~95重量%の間であり得る固形分を有する少なくとも1種の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールのペースト又は水溶液である。好ましくは、物流費及び貯蔵経費だけではなく、局所使用のための製剤の製造中の使用の容易さの理由から、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの濃縮液、即ち30重量%超、好ましくは50重量%超及びさらにより好ましくは70重量%超の固形分を有する濃縮液が選択される可能性が高いであろう。特に、75重量%~85重量%の固形分を有する1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール組成物が使用されるであろう。
【0012】
1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール類は、デンプンの変換に由来する天然生成物であるので、それらは依然として例えば、カラメル化糖や熱反応若しくはメイラード反応に由来する生成物等の不純物を含有している。これは、それらが一般に乾燥重量含量が単一1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールから本質的に成る組成物の形態で使用される理由である。本発明の意味においては、表現「乾燥重量含量は、少なくとも1種の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールから本質的に成る」は、少なくとも75重量%(乾燥/乾燥)及び好ましくは少なくとも90重量%(乾燥/乾燥)の1,4:3,6-
ジアンヒドロヘキシトール含量を意味すると理解されている。本発明によって使用される組成物の純度又は言い換えれば総固形分に比較した組成物の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの乾燥重量含量は、その皮膚保湿力に関してそれ自体が最重要であるとは思われないが、しかし官能的、感覚的若しくは安全性の理由からは、総固形分に比較した組成物の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの乾燥重量含量ができる限り高いことが好ましい。このため、その乾燥重量含量が、特に蒸留又は結晶化の工程後に得られる、可能な限り最も精製された形態にある1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールから本質的に成る組成物が利用されるであろう。
【0013】
従って、これらの非精製1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール組成物の一部が含有し得る、例えばキャラメル化糖や熱反応若しくはメイラード反応由来の生成物等の着色若しくは臭気不純物の存在は、本組成物の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの総固形分に比較して、2%未満、さらに好ましくは1%未満及びいっそうさらに好ましくは0.5%未満にさえ制限されるであろう。理想的には、着色若しくは臭気不純物の存在は、この固形分に比較して、0.2%未満及び好ましくはこの固形分に比較して0.1%未満である。さらにより優先的には、本組成物は、無色であり、完全に無臭である。このため、有益には、本発明によって使用される組成物は、その乾燥重量含量が単一の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールから本質的に成る組成物から調製される、又はその組成物を含み、この乾燥重量含量は、少なくとも98%と同等であり、好ましくは少なくとも99%と同等であり、及びより好ましくは少なくとも99.5%と同等である。
【0014】
上述したように、本発明によって使用される組成物は、数種の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール類又は単一の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール、好ましくはイソソルビドを含み得る。この組成物は、単独で、又は局所使用のための製剤を調製するために重要であり得る他の生成物、例えば、特に例えばベタイン、ソルビトール、キシリトール、グリセロール若しくはアセトアミドエトキシエタノール等の他の保湿剤、又は例えばデンプン等の皮膚に対して活性である、若しくは官能的効果を有する何か他の生成物との混合物として使用され得る。
【0015】
本発明の状況においては、好ましくは少なくとも1種の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールがイソソルビドである組成物が使用される。上述したように、これは、総固形分に比較して、少なくとも98.5乾燥重量%、好ましくは少なくとも99乾燥重量%及びさらにより優先的には少なくとも99.5乾燥重量%と同等である含量のイソソルビドを有する固体形態若しくは液体形態で使用され得る。優先的には、イソソルビドは、液体形態で使用される。本出願人の会社が商標名POLYSORB(登録商標)を付けて販売している一連のイソソルビドは、本発明のために特に適合する。
【0016】
1つの実施形態によると、少なくとも1種の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールを含む組成物、特にイソソルビドを含む組成物は、局所使用のための製剤中に組み込まれる。本発明のためには、局所使用のための製剤は、ヒト又は動物の皮膚と接触することが意図される任意の組成物を意味すると理解されている。従って局所使用のための組成物は、化粧用組成物、医薬組成物又は動物用組成物であり得る。局所使用のための製剤の非限定的例としては、ローション、クリーム、セラム、ジェル、軟膏、バーム、液状石鹸若しくはシャワージェル、シャンプー、ムース、ファンデーション、制汗剤及びデオドラントが挙げられる。これらの製剤は、少なくとも1種の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールを含む組成物に加えて、局所使用のための製剤、例えば化粧用、製薬用及び/又は動物用有効成分、並びに例えば防腐剤、可溶化剤若しくは香料等の局所使用のための製剤において慣習的に使用される他の成分を含み得る。局所使用のための製剤は、さらに例えば、ベタイン、ソルビトール、キシリトール、グリセロール若しくはアセトアミドエトキシエタノール等の他の保湿剤又は例えばデンプン等の皮膚に対して活性である、若しく
は官能的効果を有する何か他の生成物もまた含み得る。
【0017】
その保湿力及び優れた官能的特性のおかげで、少なくとも1種の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールを含む組成物は、局所使用のための製剤において保湿剤として慣習的に使用されているグリセロールの完全若しくは部分的代替品として使用され得る。好ましくは、これは完全にグリセロールに置き換えられる。この場合、局所使用のための製剤は、グリセロールを非含有である。又は、局所使用のための製剤は、グリセロールを本製剤の総重量に比較して、特に10重量%以下、好ましくは5重量%以下及びより優先的には1重量%以下の低含量で含有し得る。
【0018】
局所使用のための製剤の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの総含量は、本製剤の総重量に比較して、0.1乾燥重量%~50乾燥重量%、好ましくは1乾燥重量%~40乾燥重量%、より優先的には5乾燥重量%~30乾燥重量%及びよりさらにいっそう10乾燥重量%~25乾燥重量%であり得る。局所使用のための製剤における含量に関して単数形にある用語「1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール」は、それが単一の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール又は数種の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール類の含量であり得ることを意味する。
【0019】
少なくとも1種の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールを保湿剤として含む組成物の使用には、上記で説明した多数の利点がある。極めて特別には、少なくとも1種の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの保湿剤としての使用には、高含量で、特に本組成物の総重量に比較して、10乾燥重量%以上の総1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール含量で使用された場合でさえ、脂っぽく且つ/又はべたつく感触を与えないだけではなく乾いたパウダー状の感触を与えるという利点がある。従って、局所使用のための製剤の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール含量は、有益には本製剤の総重量に比較して、10乾燥重量%以上、好ましくは15乾燥重量%以上又は20乾燥重量%以上である。有益には、この含量は、本製剤の総重量に比較して、40乾燥重量%、好ましくは30乾燥重量%及びさらにより優先的には25乾燥重量%を超えないであろう。
【0020】
本発明は、保湿剤を含む局所使用のための製剤にさらに関するが、前記保湿剤は、上述した少なくとも1種の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールを含む組成物である。上記に指示したように、本組成物は、特にグリセロールを全く含まない可能性がある。
【0021】
本発明のまた別の対象は、上述した局所使用のための製剤を皮膚の表面に塗布する工程を含む、皮膚を保湿するための方法である。
【0022】
必然的に、本発明の他の実施形態は、当業者であればそれにより、下記の特許請求項によって規定された本発明の範囲から逸脱することなく想定することができよう。
【0023】
以下では、下記の非限定的な実施例において本発明について例示する。
【実施例
【0024】
実施例1:
様々なポリオール類を局所使用のための製剤としてのボディミルク内に組み込んだ。パネリスト5人は、処方各々の塗布後の皮膚上の感触について、0.2gの製品を前腕上の1cm×5cmの表面積に渡って塗り、10回転によって塗り広げ、2分間の待機時間を置いた後に評価した。
【0025】
ローションの組成は、下記の通りであった(総重量に比した重量%):
【0026】
【表1】
【0027】
手順
1/ 磁気攪拌装置を用いて、混合物A及びBを別個に調製し、70℃に加熱する。
2/ 2分間に渡りローター・ステーターを用いてAをBに加え、次にこの混合物を緩徐に攪拌しながらデフロキュレーター(解膠装置)を通過させる。
【0028】
試験の結果は表1に要約した:
【0029】
【表2】
【0030】
これらの結果は、試験したポリオール類中でイソソルビドだけが脂っぽくなくべたつく感触も伴わないボディミルクを得ることを可能にすることを明白に証明している。さらに、イソソルビドは、極めて心地のよい、乾いたパウダー状の感触を皮膚に与える。
【0031】
実施例2:
イソソルビドの保湿効率をソルビトール、キシリトール、ベタイン及びグリセロールの
保湿効率と比較した。このため、これらのポリオール類をジェル形態にある局所使用のための化粧用製剤に組み込んだ。
【0032】
ジェルの組成は、下記の通りであった(総重量に比した重量%):6重量%のイソソルビド、ソルビトール、キシリトール、ベタイン若しくはグリセロール及び水中で1重量%のゲル化カルボマー。プラセボは、水中でたった1重量%のゲル化カルボマーから成る。
【0033】
局所使用のための製剤各々の保湿効率は、皮膚水和計測法によって評価した。皮膚水和計測法は、皮膚の表面層の水和を測定するための科学的に認められた方法である。皮膚水和計測法は、表在性角質層の静電容量の決定に基づく。
【0034】
本試験は、年齢が18歳~65歳の健常志願者を用いて実施した。5種の処方各々の保湿効率は、実験室内における前腕の内面上への塗布1時間後、2時間後及び4時間後に評価した。評価は、製品の塗布1時間後(T1h)、2時間後(T2h)及び4時間後(T4h)の塗布ゾーンの水和レベルを製品の塗布前(T0)に測定した水和レベルと比較することによって実施した。
【0035】
各処方について、非閉塞性経皮モードにおいて、およそ2mg/cm2の量を3×3cmの領域に塗布した。5種の処方を用いて処置したゾーンに加えて、2つの追加のゾーン:1つはプラセボを用いて処置したゾーン、もう1つは試験期間中に全く処置を行わなかったゾーンを評価した。
【0036】
測定は、Multiprobe Adapter System MPA(登録商標)(Courage-Khazaka GmbH、独国)に含まれるCorneometer(登録商標)CM285を用いて実施した。この機器は、およそ15μmの深さでの表皮の含水量に比例する表皮の静電容量を決定する。この方法は、水の誘電率81と他の物質の誘電率(<7)との差に基づく。Corneometerのプローブ(表面積:49mm)は、鉛筆を用いて事前に範囲を定めた試験領域に対して垂直に配置する。静電容量の測定は、1秒間で十分である。各測定を2回実施し、2回の測定の平均値を記録する。この機器は、0~130の範囲に及ぶ任意単位の数値を表示し、許容誤差は±3%である。
【0037】
各志願者は、過度の発汗若しくはストレスに起因する異常な結果を回避するために、Corneometer(登録商標)を用いる各測定の前には、空調管理された室内でおよそ1分間安静にした。
【0038】
下記の表2には、任意単位(AU)で表した平均水和値を報告した。T0~T1h、T2h~T4hの間の水和の変量は、各々表3に示した。
【0039】
【表3】
【0040】
【表4】
【0041】
全てのポリオール類が即時的(短期間、即ち1時間後の)水和及び経時的(即ち2時間後若しくは4時間後の)水和の維持の両方の観点から同一の作用を有している訳ではないことは特筆すべきであり、驚くべきことである。イソソルビドを除く大多数のポリオール類は、経時的に皮膚の水和を維持することを可能にしない。短期間の水和と経時的な水和の維持(T4h対T0)の両方を極めて良好に満足させるのは、イソソルビドだけである。この観点から、イソソルビドは、ベタインの保湿力に匹敵する、満足できる保湿力をジェルにもたらす。
【0042】
実施例3:
1種は保湿剤としてイソソルビドを含み、もう1種はグリセロールを含む、局所使用のための製剤としての2種のボディミルクに関するブラインド判別官能評価分析は、テクスチャー官能評価分析の専門家である37人のパネリストを用いて実施した。
【0043】
評価した2種のボディミルクの組成物は、実施例1に提示した組成物に相当する。
【0044】
試験の実施
比較のために、2種のボディミルクが提供され、各パネリストに無作為割り付けされた。試験1回に付き2対の製品が評価される。
【0045】
各製品に対して、パネリストは、表皮の表面で次の記述子を評価しなければならない:みずみずしい、伸び、脂っぽい、べたつく、やわらかい、浸透する。
【0046】
各パネリストは、記述子を0~10のスケール上に記録する。
【0047】
評価プロトコール
前腕は、事前に洗浄しておく。次に、製品を評価するために各パネリストの前腕上に5cm(1×5)の表面積を有する2つの塗布ゾーンを描く。評価するために範囲を定めた領域に、0.2gの各製品を塗布する。
【0048】
製品の伸びに関連する記述子を評価するための基準は下記の表4に示し、感触に関連する基準は表5及び6各々に示した。
【0049】
【表5】
【0050】
【表6】
【0051】
【表7】
【0052】
2種のボディミルク各々についての各記述子の平均値は、表7に示した。
【0053】
【表8】
【0054】
これらの結果は、保湿剤としてイソソルビドを含有するボディミルクがグリセロールを含有する比較ボディミルクよりもべたつき且つ脂っぽさが有意に少ないことを証明している。さらに、イソソルビドを含有するボディミルクは、より良好に伸び、より大きなみずみずしい感触を提供し、よりやわらかく、より高度に浸透する。結論として、グリセロールの完全代替品としてのイソソルビドの使用は、グリセロールが提供することのできない、消費者が所望する官能的利点を生じさせる。