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特許7324758インサイチュでのウェハ温度の測定および制御
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-02
(45)【発行日】2023-08-10
(54)【発明の名称】インサイチュでのウェハ温度の測定および制御
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/265 20060101AFI20230803BHJP
   G01K 1/14 20210101ALI20230803BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20230803BHJP
   H01J 37/317 20060101ALI20230803BHJP
   H01J 37/20 20060101ALI20230803BHJP
【FI】
H01L21/265 T
G01K1/14 L
G01K1/14 E
H01L21/265 603D
H01L21/68 R
H01L21/68 N
H01J37/317 B
H01J37/20 A
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020539078
(86)(22)【出願日】2019-04-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-07-29
(86)【国際出願番号】 US2019025116
(87)【国際公開番号】W WO2019191750
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-03-01
(31)【優先権主張番号】62/650,832
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505413587
【氏名又は名称】アクセリス テクノロジーズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】バゲット,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】リース,ロナルド
(72)【発明者】
【氏名】コパリディス,ペトロス
【審査官】鈴木 智之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0345384(US,A1)
【文献】特表2015-533012(JP,A)
【文献】米国特許第05663899(US,A)
【文献】特開2017-083226(JP,A)
【文献】特表2016-534573(JP,A)
【文献】特開2001-274109(JP,A)
【文献】特開2012-074540(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/265
G01K 1/14
H01L 21/683
H01J 37/317
H01J 37/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーマルチャックシステムであって、
サーマルチャック装置と、
サーマルモニタリングデバイスと、
コントローラと、を備えており、
上記サーマルチャック装置は、当該サーマルチャック装置のクランプ表面上にワークピースを選択的に保持し、
上記サーマルチャック装置は、上記クランプ表面を選択的に加熱することによって上記ワークピースを選択的に加熱する1つ以上のヒータを含んでおり、
上記サーマルモニタリングデバイスは、上記ワークピースが上記クランプ表面上に存在している場合に上記ワークピースの表面の温度を決定することにより、測定温度を規定し、
上記コントローラは、上記測定温度に基づいて、上記1つ以上のヒータを選択的に通電し、
上記サーマルモニタリングデバイスは、上記ワークピースの表面に直接的に接触する1つ以上の直接接触サーマルデバイスを含んでおり、
上記1つ以上の直接接触サーマルデバイスのそれぞれは、冗長サーマルデバイスのそれぞれのペアを含んでおり、
冗長サーマルデバイスのそれぞれのペアは、
上記ワークピースの上記表面の1次温度を測定する1次サーマルデバイスと、
上記ワークピースの上記表面の2次温度を測定する2次サーマルデバイスと、を含んでおり、
上記コントローラは、
上記1次温度と上記2次温度との比較に基づいて、上記測定温度の精度を決定し、
上記測定温度の上記精度が所定の閾値を超えた場合に、信号を供給する、サーマルチャックシステム。
【請求項2】
上記1つ以上の直接接触サーマルデバイスは、サーモカップル(TC)および抵抗温度検出器(RTD)のうちの1つ以上を含んでいる、請求項に記載のサーマルチャックシステム。
【請求項3】
冗長サーマルデバイスのそれぞれのペアは、上記ワークピースの上記表面を横切るそれぞれの位置において、上記ワークピースの上記表面の上記温度を決定する、請求項に記載のサーマルチャックシステム。
【請求項4】
上記1つ以上の直接接触サーマルデバイスは、上記ワークピースの上記表面を横切る1つ以上のそれぞれの位置において、上記ワークピースの上記表面に直接的に接触する、請求項に記載のサーマルチャックシステム。
【請求項5】
上記ワークピースの上記表面を横切る上記1つ以上のそれぞれの位置は、(i)上記ワークピースの中央領域と、(ii)上記ワークピースの周辺領域と、を少なくとも含んでいる、請求項に記載のサーマルチャックシステム。
【請求項6】
上記ワークピースの上記表面を横切る上記1つ以上の位置は、上記ワークピースの上記表面を横切る、円周方向に離間した複数の位置を含んでいる、請求項に記載のサーマルチャックシステム。
【請求項7】
上記ワークピースの上記表面は、上記サーマルチャック装置に対向する、上記ワークピースの背面を含んでいる、請求項に記載のサーマルチャックシステム。
【請求項8】
上記コントローラによって上記1つ以上のヒータを選択的に通電することにより、上記測定温度に基づいて、上記1つ以上のヒータの熱出力を選択的に制御する、請求項1に記載のサーマルチャックシステム。
【請求項9】
上記ワークピースにイオンを注入することにより、上記ワークピースに熱を選択的に入力し、上記イオンが注入された位置における上記ワークピースの上記表面の上記温度を上昇させるイオン注入装置をさらに備えており、
上記1つ以上のヒータのそれぞれのうちの1つ以上は、上記位置に関連付けられており、
上記サーマルモニタリングデバイスは、上記位置に近接している上記ワークピースの上記表面の上記温度を監視し、
上記コントローラは、上記位置における上記ワークピースの上記表面の上記温度に基づいて、上記1つ以上のヒータのそれぞれのうちの1つ以上の出力を選択的に制御する、請求項1に記載のサーマルチャックシステム。
【請求項10】
上記1つ以上のヒータは、上記サーマルチャック装置内に埋め込まれている、請求項1に記載のサーマルチャックシステム。
【請求項11】
上記1つ以上のヒータはそれぞれ、抵抗ヒータおよび放射ヒータのうちの一方を含んでいる、請求項1に記載のサーマルチャックシステム。
【請求項12】
熱処理システムであって、
ワークピースを支持するクランプ表面を有するサーマルチャックと、
上記クランプ表面上に存在している上記ワークピースを選択的に加熱する1つ以上のヒータと、
上記ワークピースが上記クランプ表面上に存在している場合に上記ワークピースの温度を決定することにより、測定温度を規定するサーマルモニタリングデバイスと、
上記測定温度に基づいて、上記1つ以上のヒータを選択的に通電するコントローラと、を備えており、
上記サーマルモニタリングデバイスは、上記ワークピースの表面に直接的に接触する1つ以上の直接接触サーマルデバイスを含んでおり、
上記1つ以上の直接接触サーマルデバイスのそれぞれは、冗長サーマルデバイスのそれぞれのペアを含んでおり、
冗長サーマルデバイスのそれぞれのペアは、
上記ワークピースの上記表面の1次温度を測定する1次サーマルデバイスと、
上記ワークピースの上記表面の2次温度を測定する2次サーマルデバイスと、を含んでおり、
上記コントローラは、
上記1次温度と上記2次温度との比較に基づいて、上記測定温度の精度を決定し、
上記測定温度の上記精度が所定の閾値を超えた場合に、信号を供給する、熱処理システム。
【請求項13】
上記1つ以上の直接接触サーマルデバイスは、サーモカップル(TC)および抵抗温度検出器(RTD)のうちの1つ以上を含んでいる、請求項12に記載の熱処理システム。
【請求項14】
上記ワークピースにイオンを選択的に注入するイオン注入装置をさらに備えている、請求項12に記載の熱処理システム。
【請求項15】
上記サーマルチャックは、静電チャックおよび機械的クランププレートのうちの一方を含んでいる、請求項12に記載の熱処理システム。
【請求項16】
サーマルモニタリングシステムであって、
ワークピースを支持するクランプ表面を有するサーマルチャックと、
1つ以上の直接接触サーマルデバイスと、
上記ワークピースを選択的に加熱する1つ以上のヒータと、
コントローラと、を備えており、
上記1つ以上の直接接触サーマルデバイスは、上記ワークピースが上記サーマルチャックの上記クランプ表面上に存在している場合に、上記ワークピースの背面に直接的に接触し、
上記1つ以上の直接接触サーマルデバイスは、上記ワークピースの温度を測定することにより、1つ以上の測定温度を規定し、
上記コントローラは、上記1つ以上の測定温度に基づいて、上記1つ以上のヒータを選択的に通電し、
上記1つ以上の直接接触サーマルデバイスのそれぞれは、冗長サーマルデバイスのそれぞれのペアを含んでおり、
冗長サーマルデバイスのそれぞれのペアは、
上記ワークピースの上記背面の1次温度を測定する1次サーマルデバイスと、
上記ワークピースの上記背面の2次温度を測定する2次サーマルデバイスと、を含んでおり、
上記コントローラは、
上記1次温度と上記2次温度との比較に基づいて、上記測定温度の精度を決定し、
上記測定温度の上記精度が所定の閾値を超えた場合に、信号を供給する、サーマルモニタリングシステム。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[関連出願の参照]
本願は、「IN-SITU WAFER TEMPERATURE MEASUREMENT AND CONTROL」というタイトルが付された2018年3月30日に出願された米国仮出願No.62/650,832の利益を主張する米国非仮出願である。当該米国仮出願の全ての内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[分野]
本開示は概して、ワークピースを処理するためのワークピース処理システムおよびワークピース処理方法に関する。より具体的には、本開示は、イオン注入システムにおけるサーマルチャック上のワークピースの温度を精密かつ正確に制御するためのシステムおよび方法に関する。
【0003】
[背景]
半導体処理では、多くの操作(例:イオン注入)がワークピースまたは半導体ウェハ上において実行されうる。イオン注入処理技術の進歩により、ワークピースにおける様々な注入特性を実現するために、ワークピースにおいて様々なイオン注入温度が採用されうる。例えば従来のイオン注入処理では、典型的には、(i)コールド注入(低温注入)、(ii)ホット注入(高温注入)、および、(iii)いわゆる準室温注入(quasi-temperature implants)という、3つの温度レジームが考慮されている。コールド注入では、ワークピースにおけるプロセス温度は、室温よりも低い温度に維持される。ホット注入では、ワークピースにおけるプロセス温度は、典型的には100~600℃の範囲の高温に維持される。準室温注入では、ワークピースにおけるプロセス温度は、室温よりもわずかに高いが、高温注入において使用される温度よりも低い温度(典型的には、50~100℃の範囲の準室温注入温度)に維持される。
【0004】
例えば、ホット注入は、より一般的となりつつある。ホット注入では、典型的には、プロセス温度は、加熱チャック(heated chuck)とも称される専用の高温の静電チャック(electrostatic chuck)(ESC)によって実現される。注入時には、加熱チャックは、当該加熱チャックの表面にワークピースを保持(ホールド)またはクランプする。従来の高温ESCは、例えば、ESCおよびワークピースをプロセス温度(例:100℃~600℃)まで加熱するために、クランプ表面の下に埋め込まれたヒータのセットを有している。これにより、従来通り、ガスインターフェース(ガス界面)は、クランプ表面からワークピースの背面(裏面)までの熱インターフェース(熱界面)をもたらす。典型的には、高温ESCは、バックグラウンドにおけるチャンバ表面へのエネルギーの放射によって冷却される。
【0005】
また、チルドイオン注入プロセス(冷却イオン注入プロセス)も一般的である。従来、チルドイオン注入プロセスでは、室温のワークピースがチルドチャック(冷却チャック)上に配置される。そして、チルドチャックがチルド温度(例:室温以下の温度)まで冷却されることにより、ワークピースが冷却される。チルドチャックを冷却することにより、イオン注入に起因してワークピースに付与された熱エネルギーが除去される。そして、チルドチャックを通過する熱を除去することによって、注入時にチャックおよびワークピースをチルド温度にさらに維持することができる。
【0006】
また、イオン注入プロセスは、いわゆる「準室温」(例:50~60℃,室温よりもわずかに高いが、ホットイオン注入プロセスにおける温度ほどは高くない温度)においても実行される。この場合、低熱チャック(low-heat chuck)(例:100℃よりも低い温度まで加熱するチャック)が、注入時におけるワークピースの温度を制御するために使用されてきた。
【0007】
[概要]
以下では、本開示の一部の態様についての基本的な理解を提供するために、本開示の簡略化された概要を提示する。本概要は、本開示の広範な概要ではない。本概要は、本発明のキーポイント(key)または重要な要素を特定することも、本発明の範囲を規定することも意図していない。本概要の目的は、後に提示されるより詳細な説明の序文(前置き)として、本開示の一部のコンセプトを簡略化された形式によって提示することである。
【0008】
本開示の様々な例示的な態様は、ワークピースにイオンを注入するためのイオン注入プロセスを助成する。ある例示的な態様によれば、イオン注入システムが提供される。上記イオン注入システムは、イオンビームを形成するように構成されたイオン源と、上記イオンビームを選択的に輸送するように構成されたビームラインアセンブリと、ワークピースにアルミニウムイオンを注入するための上記イオンビームを受け入れるように構成されたエンドステーションと、を有する。
【0009】
ある例示的な態様によれば、サーマルチャックシステム(熱チャックシステム)が提供される。上記サーマルチャックシステムは、サーマルチャック装置(熱チャック装置)を含んでいる。上記サーマルチャック装置は、当該サーマルチャック装置のクランプ表面上にワークピースを選択的に保持するように構成されている。上記サーマルチャック装置は、1つ以上のヒータを含んでいる。上記1つ以上のヒータは、上記クランプ表面を選択的に加熱することによって、上記ワークピースを選択的に加熱するように構成されている。さらに、サーマルモニタリングデバイス(熱監視デバイス)は、上記ワークピースが上記クランプ表面上に存在している場合に上記ワークピースの表面の温度を決定する(determine)ことにより、測定温度(測定された温度)(measured temperature)を規定する(define)ように構成されている。
【0010】
一例として、上記ワークピースの上記表面は、上記サーマルチャック装置に対向する、上記ワークピースの背面(backside surface)を含んでいる。上記コントローラは、上記測定温度に基づいて、上記1つ以上のヒータを選択的に通電する(活動させる,動作させる)(energize)。例えば、上記コントローラによって上記1つ以上のヒータを選択的に通電することにより、上記測定温度に基づいて、上記1つ以上のヒータの熱出力を選択的に制御することができる。
【0011】
一例によれば、上記サーマルモニタリングデバイスは、上記ワークピースの表面に直接的に接触するように構成された、1つ以上の直接接触サーマルデバイス(ダイレイトコンタクトサーマルデバイス)を含んでいる。1つ以上の直接接触サーマルデバイスは、例えば、サーモカップル(熱電対)(TC)および抵抗温度検出器(測温抵抗体)(RTD)のうちの1つ以上である。一例として、上記1つ以上の直接接触サーマルデバイスのそれぞれは、冗長サーマルデバイス(余剰サーマルデバイス)(redundant thermal device)のそれぞれのペアを含んでいてもよい。別の例として、冗長サーマルデバイスのそれぞれのペアは、(i)上記ワークピースの上記表面の1次温度(primary temperature)を測定するように構成された1次サーマルデバイス(primary thermal device)と、(ii)上記ワークピースの上記表面の2次温度(secondary temperature)を測定するように構成された2次サーマルデバイス(secondary thermal device)と、を含んでいる。
【0012】
例えば、上記コントローラは、1次温度と2次温度との比較に基づいて、上記測定温度の精度を決定(判定)するように、さらに構成されていてもよい。上記コントローラは、上記測定温度の上記精度が所定の閾値を超えた場合に、信号を供給するように、さらに構成されている。冗長サーマルデバイスのそれぞれのペアは、上記ワークピースの上記表面を横切るそれぞれの位置において、上記ワークピースの上記表面の上記温度を決定するように、さらに構成されている。
【0013】
別の例では、上記1つ以上の直接接触サーマルデバイスは、上記ワークピースの上記表面を横切る1つ以上のそれぞれの位置において、上記ワークピースの上記表面に直接的に接触するように構成されている。上記ワークピースの上記表面を横切る上記1つ以上のそれぞれの位置は、(i)上記ワークピースの中央領域と、(ii)上記ワークピースの周辺領域と、を少なくとも含んでいる。あるいは、上記ワークピースの上記表面を横切る上記1つ以上の位置は、上記ワークピースの上記表面を横切る、円周方向に離間した(circumferentially-spaced)複数の位置を含んでいる。
【0014】
別の例によれば、上記サーマルモニタリングデバイスは、1つ以上の非接触サーマルデバイス(ノンコンタクトサーマルデバイス)を含んでいる。上記1つ以上の非接触サーマルデバイスは、上記ワークピースの上記表面に接触することなく、上記ワークピースの上記表面の上記温度を決定するように構成されている。例えば、上記1つ以上の非接触サーマルデバイスは、放射率検出器(emissivity detector)およびパイロメータ(高温計,放射温度計)のうちの1つ以上を含んでいてもよい。
【0015】
さらに、別の例示的な態様によれば、イオン注入装置は、上記ワークピースにイオンを注入することにより、上記ワークピースに熱を選択的に入力し、上記イオンが注入された位置における上記ワークピースの上記表面の上記温度を上昇させるように構成されている。
【0016】
上記1つ以上のヒータのそれぞれのうちの1つ以上は、上記位置に関連付けられている。上記サーマルモニタリングデバイスは、上記位置に近接している上記ワークピースの上記表面の上記温度を監視するように、さらに構成されている。上記コントローラは、上記位置における上記ワークピースの上記表面の上記温度に基づいて、上記1つ以上のヒータのそれぞれのうちの1つ以上の出力を選択的に制御するように、さらに構成されている。
【0017】
上述の概要は単に、本開示の一部の実施形態における一部の構成についての簡単な概要を与えることを意図している。他の実施形態は、上述の構成に対し、付加的な構成および/または異なる構成を含んでいてもよい。特に、本概要は、本出願の範囲を限定(制限)していると解釈されるべきではない。従って、上述の目的および関連する目的を達成するために、本開示は、以下に説明され、特に特許請求の範囲において挙示される構成を備える。以下の説明および添付の図面は、本開示の特定の例示的な実施形態を詳細に説明する。但し、これらの実施形態は、本開示の原則(原理)が採用されうる様々な方法のうちの一部を示している。本開示の他の目的、利点、および新規な構成は、以下の本開示の詳細な説明を図面と併せて考慮することによって明らかになるであろう。
【0018】
[図面の簡単な説明]
図1は、本開示の一態様に係る例示的な加熱イオン注入システムのブロック図を示す。
【0019】
図2は、本開示の一態様に係るサーマルチャックのクランプ表面の頂部の斜視図である。
【0020】
図3は、本開示の一態様に係るサーマルチャックの底部の斜視図である。
【0021】
図4は、本開示の一態様に係るサーマルチャックの部分断面図である。
【0022】
図5は、本開示の別の態様に係る別のサーマルチャックの部分断面図である。
【0023】
図6は、本開示の別の態様に係るワークピースの温度制御のための例示的な方法を示すブロック図である。
【0024】
図7は、別の態様に係る例示的な制御システムを示すブロック図である。
【0025】
[詳細な説明]
本発明は概して、ワークピース処理システムおよびワークピース処理装置を対象としている。より詳細には、本発明は、ワークピースの温度を制御するように構成された、イオン注入システム内のサーマルチャック(熱チャック)を対象としている。そこで、以下では、図面を参照して本発明を説明する。同様の参照番号は、全体を通して同様の要素(部材)を指すために使用されてもよい。これらの態様の説明は、単に例示的なものであり、限定的な意味合いで解釈されるべきではないことを理解されたい。以下の記載では、説明のために、本発明についての完全な理解を提供すべく、様々な特定の詳細が示されている。但し、当業者であれば、これらの特定の詳細がなくとも本発明を実施できることは明らかであろう。
【0026】
半導体ウェハの処理では、温度の精度(精密性)および制御がますます重要となっている。ワークピースが載置されているサポート(支持体)の温度(例えば、静電チャックの温度)を測定および制御するためのシステムが提供されている。サポートの温度の特性評価(characterization)および分析は、ワークピースの温度を間接的に評価(推定)するために利用される。しかしながら、本開示では、ワークピースサポートの温度に対するこのような依存性は、ワークピースの処理時に温度エラー(温度誤差)をもたらしうると、現時点では考えている。
【0027】
加熱イオン注入プロセスでは、100℃~600℃またはそれ以上の範囲のプロセス温度まで、ワークピースが加熱されうる。例えば、プロセス温度は、注入時にワークピースを支持する静電チャックにおいて部分的に達成され、かつ維持される。本開示の様々な態様に基づき、図1は、例示的なイオン注入システム100を示す。本例におけるイオン注入システム100は、例示的なイオン注入装置101を備えている。但し、様々な他のタイプの真空ベースの半導体処理システム(例:プラズマ処理システムまたは他の半導体処理システム)についても、考慮されている。イオン注入装置101は、例えば、ターミナル102と、ビームラインアセンブリ104と、エンドステーション106とを備えている。
【0028】
一般的に、ターミナル102内のイオン源(イオンソース)108は、ドーパントガスを複数のイオンにイオン化し、イオンビーム112を形成するために、電源110に接続されている。本例におけるイオンビーム112は、質量分析装置114を通って、開口116から出て、かつ、エンドステーション106に向かうように、方向付けられている(導かれる)。エンドステーション106において、イオンビーム112は、ワークピース118(例:シリコンウェハなどの基板、表示パネル等)に衝突する。当該ワークピースは、チャック120に選択的にクランプされている。あるいは、当該ワークピースは、チャック120に選択的に取り付けられている。チャック120は、例えば、静電チャック(ESC)または機械的クランプチャック(メカニカルクランプチャック)を含みうる。当該チャックは、ワークピース118の温度を選択的に制御するように構成されている。注入されたイオンがワークピース118の格子内に埋め込まれると、当該イオンはワークピースの物理的特性および/または化学的特性を変化させる。このため、イオン注入は、半導体デバイスの製造および金属の仕上げ加工、さらには材料科学研究における様々な応用(アプリケーション)に用いられている。
【0029】
本開示のイオンビーム112は、任意の形状(例:ペンシルまたはスポットビーム、リボンビーム、走査ビーム、またはイオンがエンドステーション106へと向けて導かれる任意の他の形態)を取りうる。これらの形態は全て、本開示の範囲内に含まれると考慮されている。
【0030】
例示的な一態様によれば、エンドステーション106は、プロセスチャンバ122(例:真空チャンバ124)を備える。プロセス環境126は、処理チャンバに関連付けられている。一般的に、プロセス環境126は、処理チャンバ122内に存在する。一例では、プロセス環境126は、プロセスチャンバに接続されており、かつ、当該プロセスチャンバを実質的に(ほぼ)排気するように構成された真空源128(例:真空ポンプ)によって生じた真空を含んでいる。
【0031】
一例では、イオン注入装置101は、高温イオン注入をなすように構成されている。ワークピース118は、プロセス温度(例:約100~600℃またはそれ以上)まで加熱される。従って、本例では、チャック120は、サーマルチャック130を含んでいる。当該サーマルチャックは、イオンビーム112への暴露前、暴露中、および/または暴露後に、ワークピース118を支持および保持しつつ、プロセスチャンバ122内において当該ワークピース118をさらに加熱するように構成されている。
【0032】
サーマルチャック130は、例えば静電チャックを含んでいる。当該静電チャックは、周囲または外部環境132(例えば、「大気環境」とも称される)の周囲温度または大気温度よりもかなり大きい処理温度まで、ワークピース118を加熱するように構成されている。加熱システム(ヒーティングシステム)134が、さらに設けられてもよい。当該加熱システムは、(i)サーマルチャック130を加熱し、次いで、(ii)当該サーマルチャック上に存在しているワークピース118を所望の処理温度まで加熱するように構成されている。例えば、加熱システム134は、サーマルチャック130内に配置された1つ以上のヒータ136を用いて、ワークピース118を選択的に加熱するように構成されている。1つ以上のヒータ136は、例えば、1つ以上の抵抗加熱素子を含んでいてもよい。一代替例として、加熱システム134は、放射熱源を含んでいる。この場合、1つ以上のヒータ136は、ワークピース118を選択的に加熱するように構成された、1つ以上のハロゲンランプ、発光ダイオード、および赤外線サーマルデバイスを含んでいる。
【0033】
一部の高温注入では、所望の温度に達するまで、ワークピース118は、プロセス環境126の真空内において、サーマルチャック130上において「ソーク(浸漬)」されてよい。あるいは、イオン注入システム100のサイクル時間を増加させるために、ワークピースは、プロセスチャンバ122に動作可能に連結された1つ以上のチャンバ138A、138B(例:1つ以上のロードロックチャンバ)内において、予熱装置140によって予熱されてもよい。予熱装置140は、例えば、サーマルチャック130と同様に構成された予熱サポート142を含んでいてもよい。
【0034】
ツールアーキテクチャ、プロセス、および所望のスループットに応じて、ワークピース118は、予熱装置140によって第1温度まで予熱されてよい。当該第1温度は、プロセス温度以下である。この場合、第1温度によって、真空チャンバ124内のサーマルチャック130上において、最終的な熱均一化が可能となる。このようなシナリオにより、プロセスチャンバ122への移送中に、ワークピース118から一部の熱を失わせることができる。この場合、プロセス温度への最終加熱(最終的な加熱)は、サーマルチャック130上において行われる。あるいは、ワークピース118は、予熱装置140によって、プロセス温度よりも高い第1温度まで予熱されてもよい。この場合、ワークピースがサーマルチャック130にクランプされるときに所望のプロセス温度に達するために、プロセスチャンバ122への搬送中におけるワークピース118の冷却がちょうど十分であるように、第1温度が最適化されるであろう。
【0035】
熱応答を正確に制御および/または加速させ、かつ、熱輸送のための付加的なメカニズム(機構)を実現するために、ワークピース118の背面は、サーマルチャック130と伝導性連結(conductive communication)させられている。この伝導性連結は、例えば、サーマルチャック130とワークピース118との間の圧力制御されたガスインターフェース(「バックサイドガス(背面ガス)」とも称される)によって実現される。例えば、背面ガスの圧力は、サーマルチャック130の静電力によって概ね制限される。当該圧力は、5~20Torrの範囲に概ね維持されうる。一例として、背面ガスインターフェース厚さ(例:ワークピース118とサーマルチャック130との間の距離)は、ミクロンのオーダ(典型的には、5~20μm)に制御される。この場合、この圧力レジームにおける分子平均自由行程は、インターフェース厚さが遷移分子ガスレジーム(transitional and molecular gas regime)内にシステムを押し込むために十分なほど大きくなる。
【0036】
本開示の別の態様によれば、チャンバ138Bは、冷却装置144を備える。冷却装置144は、イオン注入期間においてイオンがワークピース118に注入された後に、当該ワークピースがチャンバ138B内に配置された場合に、当該ワークピースを冷却するように構成されている。冷却装置144は、例えば、チルドワークピースサポート146を含んでいてもよい。チルドワークピースサポートは、当該チルドワークピースサポート上に存在するワークピース118を、熱伝導によって能動的に冷却するように構成されている。チルドワークピースサポート146は、例えば、コールドプレート(低温プレート,冷却プレート)を備える。コールドプレートは、当該コールドプレートを通過する1つ以上の冷却チャネル(冷却経路)を有する。冷却チャネルを通過する冷却流体は、コールドプレートの表面上に存在しているワークピース118を実質的に冷却する。チルドワークピースサポート146は、他の冷却機構(例:ペルチェクーラー(ペルチェ冷却器)または当業者に知られている別の冷却機構)を含んでいてもよい。
【0037】
別の例示的な態様によれば、コントローラ148がさらに設けられている。コントローラ148は、加熱システム134、予熱装置140、および冷却装置のうちの1つ以上を選択的に通電し、それぞれの位置に存在するワークピース118を選択的に加熱または冷却するように構成されている。例えば、コントローラ148は、(i)予熱装置140によってチャンバ138A内においてワークピース118を加熱し、(ii)サーマルチャック130および加熱システム134によって、プロセスチャンバ122内においてワークピースを所定の温度まで加熱し、(iii)イオン注入装置101によってワークピースにイオンを注入し、(iv)冷却装置144によってチャンバ138B内においてワークピースを冷却し、かつ、(v)1つ以上のワークピース移送装置150A、150Bによって、ワークピースを外部環境132とプロセス環境126との間を選択的に移送するように、構成されていてもよい。
【0038】
一例として、(i)ワークピース移送装置150Bによって、選択されたフロント開口統一ポッド(front opening unified pod)(FOUP)152A、152Bとチャンバ138A、138Bとの間においてワークピースが移送させられ、さらに、(ii)ワークピース移送装置150Aによって、チャンバ138A、138Bとサーマルチャック130との間においてワークピースが移送させられるように、ワークピース118がプロセスチャンバ122の内外へとさらに移送させられてもよい。例えば、コントローラ148は、ワークピース移送装置150A、150Bを制御することにより、FOUP152A、152Bとチャンバ138A、138Bとサーマルチャック130との間において、ワークピースを選択的に移送するように、さらに構成されている。
【0039】
例えば、本開示の図1のシステム100は、さらに有利には、同じサーマルチャック130を利用しつつ、高温注入(例:100~600℃の範囲)および準室温注入(例:20~100℃の範囲)の両方を実行するように、構成されていてもよい。このような構成は、単純性および生産性の両方において、従来のシステムよりも有利である。図1のシステム100は、従来のイオン注入システムの従来のスタートアップ操作(始動操作)において共通的に認識されている様々な欠陥を軽減しつつ、最小限の構成の変更によって、様々な注入スキームにおいて利用可能であるためである。
【0040】
図2には、例示的なサーマルチャック130が示されている。当該サーマルチャックは、例えば、主に2つの役割(機能)を果たす。すなわち、当該サーマルチャックは、(i)図1のワークピース118を当該サーマルチャックに選択的にクランプする役割、および、(ii)ワークピースを加熱および/または冷却する役割を果たす。図2に示される1つ以上の接地ピン(グラウンドピン)154は、例えば、ワークピースの電気的接地のために設けられている。複数のメサ156は、図1のワークピース118との接触を最小限に抑え、かつ、粒子汚染を緩和するために、サーマルチャック130のクランプ表面158上に設けられている。
【0041】
本開示の1つの例示的な態様によれば、1つ以上のサーマルモニタリングデバイス160A~160Cがさらに設けられている。以下により詳細に説明する通り、サーマルモニタリングデバイス160A~160Cは、例えば、ワークピースが図2のクランプ表面158上に存在している場合に、図1のワークピース118の温度を決定することにより、測定温度を規定するように構成されている。3つのサーマルモニタリングデバイス160が例示されているが、任意の数のサーマルモニタリングデバイスおよびその構成が、本開示の範囲内に含まれていると考慮されていることに留意されたい。
【0042】
図3は、例えば、サーマルチャック130(例:ESC)の背面162を示す。図3の例では、複数のインターフェース164A~164C(例:機械的インターフェースおよび/または電気的インターフェース)が、当該サーマルチャックのために設けられている。例えば、第1インターフェース164Aは、高電圧静電電極(不図示)のために設けられている。当該高電圧静電電極は、ワークピースをサーマルチャック130に静電的に吸着する(attract)ように構成されている。第2インターフェース164Bは、1つ以上のヒータ166A、166Bに電力を供給するために設けられている。図1のコントローラ148は、図2の1つ以上のサーマルモニタリングデバイス160A~160Cから取得した測定温度に基づいて、図3の1つ以上のヒータを選択的に通電するように、さらに構成されている。本例では、図3の1つ以上のヒータ136は、マルチゾーンヒータ(例えば、抵抗加熱素子166A、166Bとして図示されている)を含んでいる。当該マルチゾーンヒータは、サーマルチャック130内に埋め込まれている。当該マルチゾーンヒータは、1つ以上のヒータにそれぞれ関連する1つ以上の位置168A、168Bを選択的に加熱するように構成されている。コントローラ148は、例えば、1つ以上のサーマルモニタリングデバイス160のそれぞれから取得した測定温度に基づいて、1つ以上のヒータの熱出力を選択的に制御するように、1つ以上のヒータ136を選択的に通電するように構成されている。
【0043】
一例として、図1のイオン注入装置101によるワークピース118へのイオンの注入は、当該ワークピースに選択的に熱を入力する。その結果、イオンが注入される位置(例:ワークピースに衝突するイオンビーム112の位置)に近接している位置において、ワークピースの表面の温度が上昇する。例えば、図3の1つ以上のヒータ136のそれぞれのうちの1つ以上は、上記位置に関連付けられている。この場合、後述するように、サーマルモニタリングデバイス160は、上記位置に近接しているワークピース118の表面の温度を監視するように、さらに構成されている。従って、図1のコントローラ148は、上記位置におけるワークピース118の表面の温度に基づいて、1つ以上のヒータ166のそれぞれの出力を選択的に制御するように、さらに構成されている。
【0044】
図3の概略図には明示的に示されていないが、例えば、1つ以上のヒータ136は、サーマルチャックの1つ以上の位置168A、168B(例:サーマルチャックの中心領域および周辺領域のうちの1つ以上)を加熱するために、サーマルチャック130内に配置されてもよい。また、1つ以上のヒータ136は、ワークピースの所望の加熱のために、軸方向および/または半径方向に配置されてもよい。例えば、第3インターフェース164Cは、精密かつ正確な温度制御を目的として、図2のサーマルチャック130に関連付けられた1つ以上のサーマルモニタリングデバイス160A~160Cから、図1のコントローラ148への温度フィードバックを行うために、さらに設けられている。
【0045】
本開示の別の例示的な態様に基づき、図4は、サーマルチャック130の部分(一部)200を例示する。例えば、キャリアプレート202が図示されている。当該キャリアプレートによって、ワークピース118は、サーマルチャック130のクランプ表面158に選択的にクランプされる。一例として、キャリアプレート202は、1つ以上の高電圧電極204を有するセラミック材料によって構成されている。高電圧電極204は、キャリアプレート202内に埋め込まれている。あるいは、高電圧電極204は、キャリアプレート202に関連付けられている。1つ以上の高電圧電極204は、ワークピース118をサーマルチャック130に静電的に吸着するように構成されている。これにより、静電チャック(ESC)が概ね規定される。代替的または付加的に、サーマルチャック130は、1つ以上の機械的クランプ部材205を有していてもよい。機械的クランプ部材205は、ワークピース118をキャリアプレート202に選択的に機械的にクランプするように構成されている。この場合、サーマルチャックは、機械的チャックを概ね規定する。
【0046】
例えば、キャリアプレート202は、1つ以上のヒータ136(例:1つ以上の抵抗加熱素子166A、166B)を有するヒータプレート206と接合または一体化されていてもよい。1つ以上のヒータ136は、ヒータプレート206に関連付けられている。例えば、ヒータプレート206は、セラミック材料によって構成されていてもよい。この場合、1つ以上のヒータ136は、ヒータプレート内に埋め込まれている。ヒータプレート206およびキャリアプレート202は、別々のプレートであってもよいし、あるいは1つのプレートに一体化(統合)されてもよいことに留意されたい。例えば、1つ以上のヒータ136は、注入プロセス中に、図1のワークピース118の温度を能動的に上昇させる(heat)または維持するように、構成されてよい。例えば、図4の1つ以上のヒータ136は、必要に応じて、ワークピース温度を200~500℃または様々な他の上昇温度へと上昇させてもよいし、あるいは、当該上昇温度を維持してもよい。1つ以上のヒータ136は、任意の数の、(i)抵抗加熱素子166A、166B、(ii)放射ヒータ(不図示)、または、(iii)ワークピース118を加熱するように構成された任意の他の加熱装置、を含んでいてもよい。1つ以上のヒータ136は、これらの任意の組み合わせを含んでもよい。本例では、熱がキャリアプレート202を通ってワークピースへと移動することにより、ワークピース118が加熱されうる。
【0047】
別の例によれば、キャリアプレート202のクランプ表面158と当該クランプ表面158上に存在するワークピース118との間の背面ギャップ208に、背面ガス(不図示)が設けられている。これにより、ワークピースへと(またはワークピースから)熱を有利に移動させることができる。例えば、1つ以上のヒータ136からワークピース118へと熱を伝導し、温度を有利に提供または維持するために、背面ガス層210が、背面ギャップ208(例:約10ミクロン)内に設けられている。あるいは、別の例では、背面ガス層210は、冷却モードにおいて、ワークピース118からサーマルチャック130へと熱を伝導することができる。
【0048】
一例として、図2の1つ以上のサーマルモニタリングデバイス160A~160Cは、図4に示される1つ以上の直接接触サーマルデバイス212を含んでいる。当該1つ以上の直接接触サーマルデバイスは、ワークピース118の背面214に直接的に接触するように構成されている。例えば、図4の1つ以上の直接接触サーマルデバイス212は、サーモカップル(TC)および抵抗温度検出器(RTD)のうちの1つ以上を含んでいる。例えば、1つ以上の直接接触サーマルデバイス212のそれぞれは、ワークピース118の小さい接触領域と接触するために、実質的に平滑な表面を有していてもよい。また、1つ以上の直接接触サーマルデバイス212のそれぞれは、ワークピースと実質的に一致するように設定された熱質量(thermal mass)を有していてもよい。これにより、当該直接接触サーマルデバイスと当該ワークピースとの間での放熱(heat sinks)または熱移動を排除できる。
【0049】
例えば、1つ以上の直接接触サーマルデバイス212は、1つ以上のバネ負荷デバイス(不図示)(例:バネ負荷TC)を含んでいてもよい。1つ以上のバネ負荷デバイスは、ワークピース118がサーマルチャック130上に配置された場合に、当該ワークピースが当該1つ以上のバネ負荷デバイスに最小限の接触圧力によって圧力を印加するように応答する(compliant)。
【0050】
一例として、1つ以上の直接接触サーマルデバイス212のそれぞれは、冗長サーマルデバイス216A、216Bのペアを含んでいる。冗長サーマルデバイスの各ペアは、(i)ワークピース118の背面214の1次温度を測定するように構成された1次サーマルデバイス(216A)と、(ii)当該ワークピースの当該背面の2次温度を測定するように構成された2次サーマルデバイス(216B)と、を含んでいる。そこで、図1のコントローラ148は、1次温度と2次温度との比較に基づいて、測定温度の精度を決定するように、さらに構成されている。例えば、コントローラ148は、測定温度の精度が所定の閾値を超えた場合に、ワークピース118に対する処理を停止するように、さらに構成されていてもよい。例えば、図4の冗長サーマルデバイス216A、216Bの各ペアは、ワークピースの背面のそれぞれの位置218A、218B(例:サーマルチャック130の1つ以上の位置168A、168Bに関連する位置)における、ワークピース118の背面214の温度を決定するように構成されていてもよい。
【0051】
別の例として、図5は、サーマルモニタリングデバイス160Dの一例を示す。サーマルモニタリングデバイス160Dは、1つ以上の非接触サーマルデバイス220を含んでいる。非接触サーマルデバイス220は、ワークピースの表面に接触することなく、ワークピース118の表面(例:上面222)の温度を決定するように構成されている。例えば、1つ以上の非接触サーマルデバイス220は、ワークピースに物理的に接触することなくワークピース118の温度を決定するように構成された、放射率検出器およびパイロメータのうちの1つ以上を含んでいる。1つ以上の非接触サーマルデバイス220は、ワークピース118に対する処理を妨げなければ、サーマルチャック130の近傍に配置されていてもよい。一例において、ワークピース移送装置224は、サーマルチャック130(およびワークピース118)を1つ以上の方向に選択的に移送するように構成されている。例えば、ワークピース移送装置224は、(i)イオン注入のために、図1のイオンビーム112を通過するようにワークピース118を選択的に移動させるように、および/または、(ii)ワークピースの温度を決定するために、1つ以上の非接触サーマルデバイス220の近傍へとワークピースを移送するように、構成されていてもよい。例えば、ワークピース移送装置224は、ワークピース118を3次元的に選択的に移動(並進)および/または回転させるように、構成されていてもよい。
【0052】
例えば、図1のコントローラ148は、図5のワークピース移送装置224を制御することにより、サーマルチャック130およびワークピース118を1つ以上の温度測定位置へと移送するように、さらに構成されていてもよい。この場合、1つ以上の非接触サーマルデバイス220は、ワークピースが1つ以上の測定位置に存在している場合に、ワークピース118の表面の温度を決定するように構成されている。1つ以上の非接触サーマルデバイス220は、例えば、空間内に固定されていてもよい。この場合、1つ以上の測定位置は、1つ以上の非接触サーマルデバイスに対するワークピース118の1つ以上のそれぞれの位置および/または角度方向(角度方位)を含んでいる。あるいは、図示されていないが、1つ以上の非接触サーマルデバイス220は、ワークピース118に対する1つ以上の温度測定位置へと移送されてもよい。
【0053】
本開示の別の態様において、図6は、ワークピースの温度を制御するための方法300を例示する。例示的な方法は、一連のアクト(行為)またはイベント(事象)として本明細書において例示および記載されている。但し、本開示はこのようなアクトまたはイベントの例示された順序によって限定されないことを理解されたい。本開示に従って、一部のステップ(工程)は、本明細書において例示および記載された順序とは別の異なる順序で、および/または、他のステップと同時に実行されうるためである。さらに、本開示に係る方法を実施するために、例示されたすべてのステップが必要とされるわけではない。また、これらの方法は、本明細書において例示および記載されたシステムに関連して実行されてもよいし、あるいは例示されていない他のシステムに関連して実行されてもよい。
【0054】
一例として、図6に示す方法300は、サーマルチャック上に配置されたワークピースの温度を制御する。例えば、アクト302では、ワークピースは、サーマルチャックのクランプ表面上に選択的に保持される。アクト304では、サーマルチャックに関連する1つ以上のヒータを選択的に通電することによって、サーマルチャックのクランプ表面が選択的に加熱される。これにより、ワークピースの1つ以上の位置が選択的に加熱される。アクト306では、サーマルモニタリングデバイスを用いて、ワークピースがサーマルチャックのクランプ表面上に存在している場合における、ワークピースの表面の温度が決定される。これにより、測定温度が規定される。ワークピースの温度は、(i)ワークピースの表面を温度測定デバイスに直接的に接触させることによって、または、(ii)非接触サーマルデバイスによってワークピースの放射率または温度を測定することによって、決定されてよい。あるいは、ワークピースの温度は、両者の組み合わせによって、決定されてもよい。アクト308では、測定温度に基づいて、1つ以上のヒータが選択的に通電させられる。これにより、ワークピース自体の精密かつ正確な温度制御が有利に実現される。
【0055】
別の態様に基づき、上述の方法は、コントローラ、汎用コンピュータ、またはプロセッサベースシステムのうちの1つ以上において、コンピュータプログラムコードを使用して実行されてよい。図7に示すように、別の実施形態に係るプロセッサベースシステム400のブロック図が提供されている。プロセッサベースシステム400は、汎用コンピュータプラットフォームであり、本明細書において説明されている処理を実行するために使用されてよい。プロセッサベースシステム400は、処理ユニット402(例:デスクトップコンピュータ、ワークステーション、ラップトップコンピュータ、または特定のアプリケーション用にカスタマイズされた専用ユニット)を含んでいてもよい。プロセッサベースシステム400には、(i)ディスプレイ404と、(ii)1つ以上の入出力装置406(例:マウス、キーボード、プリンタ)とが、設けられていてもよい。処理ユニット402は、(i)中央処理ユニット(CPU)408、(ii)メモリ410、(iii)マスストレージデバイス412、(iv)ビデオアダプタ414、および、(v)バス418に接続されたI/Oインターフェース(入出力インターフェース)416を、含んでいてもよい。
【0056】
バス418は、メモリバス、メモリコントローラ、ペリフェラルバス(周辺装置バス)、またはビデオバスを含む、複数のバスアーキテクチャのうちの任意の1つ以上のタイプであってよい。CPU408は、任意のタイプの電子データプロセッサを含みうる。メモリ410は、スタティックランダムアクセスメモリ(静的ランダムアクセスメモリ)(SRAM)、ダイナミックランダムアクセスメモリ(動的ランダムアクセスメモリ)(DRAM)、またはリードオンリーメモリ(読み出し専用メモリ)(ROM)などの、任意のタイプのシステムメモリを含んでいてもよい。
【0057】
マスストレージデバイス412は、(i)データ、プログラム、および他の情報を記憶し、かつ、(ii)当該データ、当該プログラム、および当該他の情報を、バス418を介してアクセス可能とするように構成された、任意のタイプのストレージデバイスを含んでいてもよい。例えば、マスストレージデバイス412は、ハードディスクドライブ、磁気ディスクドライブ、または光ディスクドライブのうちの1つ以上を含んでいてもよい。
【0058】
ビデオアダプタ414およびI/Oインターフェース416は、外部入出力装置を処理ユニット402に接続するためのインターフェースを提供する。入出力装置の例は、(i)ビデオアダプタ414に接続されたディスプレイ404、および、(ii)I/Oインターフェース416に結合されたI/Oコンポーネント(入出力コンポーネント)406(例:マウス、キーボード、プリンタ等)を含んでいる。他のデバイスが、処理ユニット402に接続されてもよい。付加的なまたはより少数のインターフェースカードが使用されてもよい。例えば、シリアルインターフェースカード(不図示)を使用して、プリンタのシリアルインターフェースが提供されてもよい。また、処理ユニット402は、ネットワークインターフェース420を含んでいてもよい。ネットワークインターフェース420は、ローカルエリアネットワーク(LAN)またはワイドエリアネットワーク(WAN)422への有線リンクまたは無線リンクである。
【0059】
プロセッサベースシステム400は、他のコンポーネントを含んでもよいことに留意されたい。例えば、プロセッサベースシステム400は、電源、ケーブル、マザーボード、リムーバブルストレージメディア(取り外し可能なストレージメディア)、ケースなどを含んでいてもよい。これらの他のコンポーネントは図示されていないが、プロセッサベースのシステム400の一部であると考慮されている。
【0060】
本開示の実施形態は、例えばCPU408によって実行されるプログラムコードによって、プロセッサベースシステム400に実装されてもよい。また、上述した実施形態に係る様々な方法は、プログラムコードによって実装されてもよい。従って、ここでの明示的な説明は省略する。
【0061】
さらに、図1図5における様々なモジュールおよびデバイスは、図7の1つ以上のプロセッサベースシステム400に実装され、かつ、当該プロセッサベースシステム400によって制御されてよいことに留意されたい。異なるモジュールとデバイスとの間の通信は、モジュールがどのように実装されるかに応じて変更されうる。モジュールが1つのプロセッサベースシステム400に実装されている場合、CPU408による異なるステップのためのプログラムコードの実行の合間に、メモリ410またはマスストレージデバイス412にデータが保存されてよい。次いで、当該データは、各ステップの実行中に、バス418を介してメモリ410またはマスストレージデバイス412にアクセスするCPU408によって提供されてもよい。モジュールが異なるプロセッサベースシステム400に実装されている場合、または別のストレージシステム(例:個別のデータベース)からデータが提供される場合には、I/Oインターフェース416またはネットワークインターフェース420を介して、複数のシステム400間にデータが提供されてよい。同様に、デバイスまたはステージによって提供されるデータは、I/Oインターフェース416またはネットワークインターフェース420によって、1つ以上のプロセッサベースシステム400に入力されてもよい。当業者であれば、様々な実施形態の範囲内において考慮されているシステムおよび方法を実施する場合における、他の変形(変更)および修正を容易に理解するであろう。
【0062】
そこで、以下により詳細に説明する通り、本開示は、熱処理を受けるワークピース(例:高温イオン注入を受ける図1のワークピース118)に対する正確な温度制御を提供する。温度センサまたはサーマルモニタリングデバイス160(例:パイロメータ、放射率センサ、TC、RTD、または同様のデバイスのうちの1つ以上)は、ワークピース118の温度を監視し、かつ、サーマルチャック130(例えば、加熱プラテン)を制御するように、実装されている。これにより、処理または注入に伴い、ワークピースの温度をより精密かつ正確に制御できる。例えば、サーマルモニタリングデバイス160は、(i)ワークピース118のリアルタイム温度監視を提供し、かつ、(ii)この情報を制御システム148、400に供給することにより、サーマルチャック130の温度を動的に制御する。これにより、ワークピースの指定温度(特定の温度)を実現できる。
【0063】
例えば、サーマルモニタリングデバイス160は、図5の例に示される非接触サーマルデバイス220(例:放射率センサ)を含んでいてもよい。この場合、センサは、ワークピースに対する処理全体を通じてワークピース118の放射率を正確に測定するために、図1のシステム100に統合(一体化)されている。例えば、ワークピース118の放射率は、プロセス条件(例:注入プロセス条件)、ワークピースの材料組成、温度、および/またはワークピース上の任意のコーティングについての関数として変化しうる。例えば、本開示の放射率測定は、ワークピース118のより正確かつ安定した温度を維持できるように、他の温度測定に提供(フィード)するために利用されてもよい。(例えば、注入電流、背面ガス流、冷媒流、ヒータ電力などによって)ワークピース118の温度が変化した場合、温度センサは、制御システム148、400を用いてそのような温度変化に応答(反応)するために利用されてもよい。
【0064】
例えば、サーマルモニタリングデバイス160としてのパイロメータは、非接触式の温度測定および制御を提供するための閉ループシステムにおける制御フィードバックとして利用されてよい。パイロメータからの温度データは、サーマルチャック130の1つ以上のヒータ136への電力入力(パワー入力)を制御するために、制御システム148、400にフィードバックされてもよい。この場合、制御は、ワークピース118の測定温度に基づいている。従って、ワークピース118の温度変化が測定された場合、そのような温度変化を補償するために、サーマルチャック130に関連する1つ以上のヒータ136のうちの様々なヒータが制御されてよい。このように、チャック単独の温度についての従来の測定とは対照的に、ワークピース118の実際の温度を利用することによって、正確なシステム制御が実現されうる。例えば、図5の非接触サーマルデバイス220としてのパイロメータは、サーマルチャック130と対向しない上流側(例:ワークピースの上面222)からワークピース118の温度を測定するように配置されていてもよい。あるいは、非接触サーマルデバイス220は、ワークピース118の背面214上に照準線(line-of-sight)が設けられるように、サーマルチャック130上に統合(一体化)されていてもよい。
【0065】
例えば、ワークピース118に接触するサーマルモニタリングデバイス160(例:図4に例示されているRTDおよび/またはサーモカップル)を利用する場合には、ワークピースの背面214を接触させることができる。但し、ワークピース118の上流側または頂部222が、RTDまたはTCによって接触されてもよい。あるいは、頂部222および背面214の両方が接触されてもよいと考慮されている。図5の非接触サーマルデバイス220(例:パイロメータまたは放射率センサ)は、図1のプロセスチャンバ122の側面(例:ワークピース118から1~2フィート離れた位置)に取り付けられてよい。例えば、図4の直接接触サーマルデバイス212の場合、当該デバイスは著しく小さいセンサを含んでいる。このため、ワークピース118の背面214との接触は、上面222との接触に比べて好適でありうる。但し、いずれの配置も、本開示の範囲内に含まれると考慮されている。
【0066】
ワークピース118の温度測定のための複数の位置が、さらに考慮されている。例えば、均一性(統一性)を目的として、ワークピースの周囲の複数の位置において、温度が監視されてよい(例えば、より良好な均一性を目的として、内側ゾーンおよび外側ゾーンが調整し制御されてよい)。従って、複数の位置に複数のサーマルモニタリングデバイス160を設けることは、均一性および温度精度を有利に向上させる。
【0067】
さらに、冗長サーマルモニタリングデバイス160(例:冗長TC/RTD)は、デバイスの潜在的な高い故障率に対処するために、各ゾーンに設けられてよい。複数の冗長TC/RTDを設けることによって、1つが故障した場合に、残りのTC/RTDからの出力を互いに比較することができる。それゆえ、1次センサと2次(例:冗長)センサとの間において、大きい温度差が確認された場合、そのようなシナリオはTCまたはRTDの故障として特定されうる。そして、システムは、TC/RTDの出力に整合させるように(1つ以上の)ヒータ136を駆動しようと試みるのではなく、「ホールド(停止)」モードに移行(placed)されうる。例えば、冗長性を目的として、冗長TC/RTDは、互いに近接して配置されてよい。そして、均一性を目的として、TC/RTDのペアは、サーマルチャック130の周囲の様々な位置に配置されてよい。例えば、冗長TC/RTDは、TC/RTDの「健全性(良好性)」(health)を評価するために、1次TC/RTDの隣に配置されてよい。一例として、均一性についての理解を提供するために、TC/RTDは、互いに対して120°~180°に配置されてもよい。
【0068】
例えば、図5に例示されている高温測定または非接触熱感知のために、ワークピース118は、温度測定に適した所定の位置へと移送されてもよい。例えば、非接触サーマルデバイス220(例:パイロメータ)は空間内に固定されていてもよい。その一方で、ワークピース118は、ワークピース移送装置224(例:モバイルアーム)に取り付けられたサーマルチャック130上に保持されていてもよい。この場合、ワークピース118を、異なる位置に移動させることができる。これにより、エッジ、中間、120°のオフセット等を捕捉(キャプチャ)し、ワークピースの温度の均一性についての十分な理解を得ることができる。別の例では、様々な角度位置を捕捉するために、ワークピースを回転させてもよい。一部の例では、パイロメータは、ワークピース平面に対して垂直であり、かつ、当該ワークピース平面にできるだけ近接している(例:ワークピース118から数インチ未満だけ離間している)ことが望ましいであろう。
【0069】
本開示は、ワークピース118の測定温度に基づいて、1つ以上のヒータ136を有利に制御する。当該ヒータ136は、イオン注入に伴って制御されてよい。例えば、パイロメータは、図1のイオンビーム112のスキャン長(走査長)の頂部に向かうように、方向付けられてよい(例:ワークピース118は、イオンビームの前方(正面)において、特定のスキャンの頂部から底部へと移送させられる)。従って、例えば、パイロメータは、各スキャンの頂部において温度データを取得するように構成されてよい。あるいは、ワークピース118の側面(例:左または右)、中央、または他の領域における温度が、同様に測定されてもよい。
【0070】
一例として、図4に例示されている直接接触サーマルデバイス212は、(i)ワークピース118の背面214に関連付けられていてよく、かつ、(ii)サーマルチャック130に接続されていてもよい。この場合、注入の全体に亘り、連続的な温度監視を実現することができる。例えば、イオンビームパワー(イオンビーム電力)は、ワークピース118の温度を変化させうる(例えば、図1のイオンビーム112に由来するパワー/熱を付与することは、ワークピースの温度に影響を及ぼす)。従って、本開示は、ワークピースが載置されているサーマルチャック130の温度を単に測定するのではなく、イオンビーム112によって引き起こされるワークピース118の温度変化を捕捉し、ワークピースの温度を有利に測定する装置およびシステムを提供する。一般的に、サーマルチャック130の温度は、ワークピース118の温度からは分離されている(decoupled)。このため、本開示は、イオンビームパワーが熱をワークピースに付与する場合であっても、正確な温度制御を提供する。当該正確な温度制御は、サーマルチャックの温度のみを測定する従来の測定装置を使用した場合には、これまでは不可能であった。本開示は、有利であることに、ワークピース118の温度を監視する。これにより、ワークピース温度の変化は、注入中のサーマルチャック内の1つ以上のヒータ136への入力パワー(入力電力)の変化に対処されうる。
【0071】
本開示の1つ以上の直接接触サーマルデバイス212は、ビーム衝突後すぐに、正確であり、かつほぼ即時的な測定データを提供する。1つ以上の直接非接触サーマルデバイス(direct non-contact thermal device)220は、例えばワークピース118がパイロメータによって監視されている(in view of the pyrometer)場合、上述のようなほぼ瞬時的な応答を同様に提供することができる。パイロメータによる温度監視を実現するために、例えば、各スロースキャンパス(低速走査経路)を利用して、上述の通り温度データが取得されてよい。この場合、これに応じてサーマルチャック130を調整して、温度を制御することができる。例えば、ワークピース118が図1のイオンビーム112を通過する回数が多いほど、ワークピースがイオンビームに暴露される時間が長くなり、温度のより大きい変化が生じうる。従って、イオンビーム112の正面において、ワークピース118の通過が1回のみである場合には、イオンビームの正面においてあまり時間が費やされないことに起因して、最小限の熱変化が生じるであろう。但し、ワークピース118がイオンビーム112を通過する回数が多いほど、より多くの温度データが取得され、温度が変化する可能性がより高くなり、温度を制御する機会がより多くなる。
【0072】
そこで、本開示は、ワークピース118の温度のフィードバックに基づいて、サーマルチャック130内の1つ以上のヒータ136を制御する。例えば、加熱の制御は、背面ガス流とは無関係に、1つ以上のヒータを制御することによってさらに実現されてもよい。
従って、本開示は、ビームパワー、背面ガス流(背面ガスフロー)などに依存せずに、ワークピース118の温度を制御する場合に有益である。
【0073】
(i)TCまたはRTDなどの直接接触サーマルデバイス、および/または、(ii)放射率センサまたはパイロメータなどの非接触サーマルデバイスの利用について、具体的に説明されている。但し、ワークピース118の温度を直接的に測定するように構成された任意のタイプのセンサが、本開示の範囲内に含まれると考慮されている。
【0074】
さらに別の例では、ワークピースがサーマルチャック130上に存在していない場合、図1のコントローラ148は、1つ以上のヒータ136に対する一定の電力を維持するように構成されてもよいと、本開示では考慮されている。そこで、例えば、上述の制御を提供するとともに、ワークピースの移送中にサーマルチャックの温度を維持できるように、放射率センサは、1つ以上の直接非接触サーマルデバイス220の1つとして、ワークピース118とサーマルチャック130との温度差(difference)を検出するように構成されていてもよい。
【0075】
本開示は、1つ以上の特定の好適な実施形態に関して図示および説明されてきたが、本明細書および添付の図面を読んで理解すれば、同等の変更および修正が当業者に想起されることは明らかである。特に、上述のコンポーネント(アセンブリ、デバイス、回路など)によって実行される様々な機能に関して、そのようなコンポーネントを説明するために使用されるターム(「手段」への言及を含む)は、特に断りのない限り、本明細書において例示された本開示の実施形態において機能を実行する開示された構造と構造的に同等ではないにもかかわらず、説明されたコンポーネントの指定された機能を実行する(すなわち、機能的に同等である)任意のコンポーネントに対応することが意図されている。加えて、本開示の特定の構成は、複数の実施形態のうちの1つのみに関して開示されているが、そのような構成は任意の所与または特定のアプリケーション(用途)に対して所望され、かつ有利であり得るように、他の実施形態の1つ以上の他の構成と組み合わせられてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0076】
図1】本開示の一態様に係る例示的な加熱イオン注入システムのブロック図を示す。
図2】本開示の一態様に係るサーマルチャックのクランプ表面の頂部の斜視図である。
図3】本開示の一態様に係るサーマルチャックの底部の斜視図である。
図4】本開示の一態様に係るサーマルチャックの部分断面図である。
図5】本開示の別の態様に係る別のサーマルチャックの部分断面図である。
図6】本開示の別の態様に係るワークピースの温度制御のための例示的な方法を示すブロック図である。
図7】別の態様に係る例示的な制御システムを示すブロック図である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7