(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-02
(45)【発行日】2023-08-10
(54)【発明の名称】環境バリア
(51)【国際特許分類】
C23C 4/11 20160101AFI20230803BHJP
C23C 4/10 20160101ALI20230803BHJP
C23C 4/134 20160101ALI20230803BHJP
【FI】
C23C4/11
C23C4/10
C23C4/134
(21)【出願番号】P 2020541357
(86)(22)【出願日】2019-01-31
(86)【国際出願番号】 EP2019052440
(87)【国際公開番号】W WO2019149856
(87)【国際公開日】2019-08-08
【審査請求日】2022-01-13
(32)【優先日】2018-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】511104875
【氏名又は名称】サン-ゴバン サントル ド レシェルシュ エ デテュド ユーロペアン
(74)【代理人】
【識別番号】100085545
【氏名又は名称】松井 光夫
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【氏名又は名称】村上 博司
(72)【発明者】
【氏名】アリマン,アラン
(72)【発明者】
【氏名】ウォーラー,ハワード
【審査官】▲辻▼ 弘輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-363724(JP,A)
【文献】特開2002-080954(JP,A)
【文献】特表2016-505486(JP,A)
【文献】特開2015-172243(JP,A)
【文献】特開2016-138309(JP,A)
【文献】特開2016-097684(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0308836(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第107299345(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 4/00-4/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融された粒子から形成された粉末であって、前記供給粒子の95数量%超が0.85以上の真円度を示し、上記粉末が、酸化物に基づく重量パーセントとして、88%超の、Zr、Hf、Y、Ce、Sc、In、La、Gd、Nd、Sm、Dy、Er、Yb、Eu、Pr、Ho、及びTaから選択される1以上の元素のシリケート、及び10%未満のドーパントを含有し、及び該粉末は
15μm未満であるメジアン粒子サイズD
50、30μm未満である90パーセンタイルの粒子サイズD
90、及び、2未満であるサイズ分散インデックス(D
90-D
10)/D
10、及び
90%超の相対密度を有し、
前記粉末のパーセンタイルD
nは、該粉末における粒子サイズの累積分布曲線における数量パーセント、n%、に対応する粒子サイズであり、該粒子サイズは昇順で分類される、前記粉末。
【請求項2】
5%超である、5μm以下のサイズを有する粒子の数量パーセント、及び/又は
10μm未満であるメジアン粒子サイズ(D
50)、及び/又は
25μm未満である90パーセンタイルの粒子サイズ(D
90)、及び/又は
40μm未満である99.5パーセンタイルの粒子サイズ(D
99.5)、及び/又は
1.5未満であるサイズ分散インデックス(D
90-D
10)/D
10
を有する、請求項1記載の粉末。
【請求項3】
前記メジアン粒子サイズ(D
50)が8μm未満である、請求項1又は2記載の粉末。
【請求項4】
前記元素がY及び/又はYb及び/又はSc及び/又はErである、請求項1~3のいずれか1項記載の粉末。
【請求項5】
前記ドーパントが、アルミニウム、ケイ素、アルカリ又はアルカリ土類金属から選択される元素の酸化物;酸化鉄;LiYO
2;ムライト;アルミノケイ酸バリウム及び/又はストロンチウム;及びイットリウムアルミニウム酸化複合物からなる群から選択される、請求項1~4のいずれか1項記載の粉末。
【請求項6】
下記の工程を含む、請求項1~5のいずれか1項記載の粉末の製造方法
a)粒子供給原料を顆粒化して、20~60ミクロンのメジアンサイズD’
50を有する顆粒から成る粉末を得る工程、ここで該粒子供給原料は、酸化物に基づく重量パーセントとして98%超の、Y、Ce、Sc、In、La、Gd、Nd、Sm、Dy、Er、Yb、Eu、Pr、Ta、Zr、Ho及びHfから選択される1以上の元素のシリケートを含む、
b)上記顆粒から成る粉末を、キャリヤガスを介して、少なくとも1つの注入開口部を通して、注入された顆粒の50数量%超の粉砕を起こす条件下で、プラズマガンにより発生されたプラズマジェットに注入して、溶融された小滴を得る工程、
c)前記溶融された小滴を冷却して、請求項1~5のいずれか1項記載の供給粉末を得る工程、及び
d)任意的に、前記供給粉末の粒子サイズ選択を実施する工程。
【請求項7】
注入された顆粒の70%超(数量パーセントとして)の粉砕を起こすように前記注入条件が決定される、請求項6記載の製造方法。
【請求項8】
注入された顆粒の90%超(数量パーセントとして)の粉砕を起こすように前記注入条件が決定される、請求項7記載の製造方法。
【請求項9】
前記工程b)において、前記注入条件は、40~65kWの電力を有し、且つ、各注入開口部経由で注入された顆粒の質量が、該注入開口部の表面積1mm
2当たり10g/分超であるプラズマジェットを発生するプラズマガンと同一の、顆粒の粉砕速度をもたらすように適合される、請求項6~8のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項10】
各注入開口部経由で注入された顆粒の質量が、前記注入開口部の表面積1mm
2当たり15g/分超である、請求項9記載の製造方法。
【請求項11】
前記注入開口部は、該注入開口部の等価直径の少なくとも1倍超の長さを有する注入チャンネルを規定する、請求項6~10のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項12】
前記長さが、前記等価直径の少なくとも2倍超である、請求項11記載の製造方法。
【請求項13】
工程b)において、顆粒から形成された粉末の流速は、プラズマガン電力1kW当たり3g/分未満である、請求項6~12のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項14】
前記顆粒化が噴霧を含む、請求項6~13のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項15】
請求項1~5のいずれか1項記載の粉末又は請求項6~14のいずれか1項に従い製造された粉末を熱溶射する工程を含む、熱溶射方法。
【請求項16】
前記粉末が、当該基体
を環境バリアコーティング
で少なくとも部分的に被覆するように、前記基体上に熱溶射される、請求項15に記載の熱溶射方法。
【請求項17】
請求項16に記載の熱溶射方法と、1200℃超の温度を有する環境において、前記環境バリアコーティングによって少なくとも部分的に被覆された前記基体を使用することを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境バリアコーティング物を形成する為の、プラズマ溶射により沈着されるように意図された供給粉末、そのような供給粉末を製造する為の方法、及び上記供給粉末をプラズマ溶射することにより得られた環境バリアコーティング物により保護された物体に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコンカーバイド(SiC)、特にSiC-SiC又はSiC-Si3N4複合物に基づく複合材料は、いくつかの用途、例えばガスタービン、熱交換器、又は内燃機関、において特に有用な高温機械特性を示す。そのような複合材料は、経済上及び環境上の制約に応える為に、ジェットエンジンの燃焼室内のガスの温度を、1200℃を上回り、実際には最高1400℃にまで上昇させなければならない航空産業内のエンジン製造業者にとって、特に有用である。
【0003】
しかしながら、水環境では、すなわち水及び/又は水蒸気の存在下では、米国特許第6254935号明細書に特に記載されているように、シリコンカーバイドベースの複合物は、分解する傾向を有する。このような複合物を保護する為に、シリカを含む環境バリアコーティング物、すなわちEBCが、慣用的に適用される。有利には、環境バリアコーティング物は、高温での、酸化する水環境、特には水蒸気の存在下で、複合物が過剰に急速に分解するのを防止する。
【0004】
しかしながら、極端な条件下ではシリカは揮発しうる。この揮発を抑える為に、ムライトをベースにしたコーティング物が、ORNL(Oak Ridge National Laboratory)により提案されており、またアルミノケイ酸バリウムストロンチウム(BSAS)をベースにしたコーティング物が、1990年代及び2000年代にNASAにより開発された。
【0005】
米国特許出願公開第2009/0202735号明細書も、溶融粒子(プラズマ溶射により噴霧される)から形成された粉末から製造されたコーティング物について開示する。
【0006】
有利にも、SiCの膨脹係数に近い膨脹係数及びBSASの安定性を上回る湿潤空気中での安定性を示す希土類金属のシリケートをベースにした環境バリアコーティング物も公知である。例えば、国際公開第2010/072978A1号パンフレットは、Y2Si2O7粉末を使用するケイ酸イットリウムの下部層のプラズマ溶射、更にムライト及びケイ酸イットリウムの外部層の沈着について開示する。しかしながら、湿潤空気に対する耐性については、なおも改善の余地を残す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特に、セラミックマトリックス複合材料からなる、特にSiC-SiCからなる、部品の保護、より詳細にはジェットエンジンの燃焼室の保護、について効率の改善を示し、及び
単純なプラズマ溶射により製造されうる、
環境バリアコーティング物に対する継続的な必要性が存続している。
【0008】
本発明の1つの目的は、このような必要性を満たすことである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に従えば、この目的は、溶融された粒子(以後「供給粒子」)から形成された粉末(以後「供給粉末」)であって、上記供給粒子の95数量%超が0.85以上の真円度を示し、上記粉末が、酸化物に基づく重量パーセントとして88%超の、好ましくは90%超の、実際には95%超の、又は98%超の、又は99%超の、Zr、Hf、Y、Ce、Sc、In、La、Gd、Nd、Sm、Dy、Er、Yb、Eu、Pr、Ho、及びTaから選択され、好ましくはZr、Hf、Y、Ce、Sc、In、La、Gd、Nd、Sm、Dy、Er、Yb、Eu、Pr、及びTaから選択され、好ましくはY、Yb、Sc、及びErから選択される、1以上の元素のシリケート、及び10%未満、好ましくは5%未満、のドーパントを含有し、及び該粉末は、
15μm未満であるメジアン粒子サイズD50、30μm未満である90パーセンタイル粒子サイズD90、及び2未満である、10パーセンタイル粒子サイズD10に対するサイズ分散インデックス(D90-D10)/D10、及び
90%を上回る、好ましくは95%を上回る、相対密度
を有する、粉末により達成される。
【0010】
該シリケートは好ましくは、モノシリケート又はジシリケートであり、実際には、これら2種類のシリケートの混合物でさえある。
【0011】
1μm未満の半径を有する細孔の累積比体積は好ましくは、粉末のバルク容積の10%未満である。
【0012】
それ故に、本発明に従う供給粉末は、球状の粒子から概ね構成される非常に純粋な粉末である。この粉末は、特に、D10に対する粒子サイズ分散が非常に低いことに起因して、30μmを上回るサイズを示す粒子が少ないことに起因して、及び相対密度が非常に高いことに起因して、注目に値する。
【0013】
最後の特徴は、中空の粒子が非常に少量であり、実際には、本質的にゼロさえも示唆する。粒子サイズ分布は、溶射期間中の非常に均質な溶融を保証する。
【0014】
高温多湿雰囲気に対する耐性が、特に有効であることが証明されている。
【0015】
最後に、本発明に従う供給粉末は高流動性を有するが、それは複雑な供給デバイスを用いなくても環境バリアコーティング物の製造を可能にする。
【0016】
本発明に従う供給粉末は、下記の任意的な特徴のうちの1以上も含みうる。
上記粒子の95数量%超、好ましくは99数量%超、好ましくは99.5数量%超、が、0.87以上の、好ましくは0.90以上の、真円度を有する、
該粉末は、99.9%超の、99.950%超の、99.990%超の、好ましくは99.999%超の、上記シリケートを含有する;従って、他の酸化物の量は非常に低いため本発明に従う供給粉末にて得られる結果において有意な効果を有することはできない、
該酸化物は、該粉末の重量の98%超、99%超、99.5%超、99.9%超、99.95%超、99.985%超、又は99.99%超を占める、
5μm以下のサイズを有する粒子の数量パーセントは、5%を上回る、好ましくは10%を上回る、
0.5μm以上のサイズを有する粒子の数量パーセントは、10%を上回る、
該粉末中のメジアン粒子サイズ(D50)は、0.5μmを上回り、好ましくは1μmを上回り、実際には2μmを上回り、及び/又は13μm未満、好ましくは12μm未満、好ましくは10μm未満、若しくは8μm未満、である、
10パーセンタイル粒子サイズ(D10)が、0.1μmを上回り、好ましくは0.5μmを上回り、好ましくは1μmを上回り、又は2μmを上回る、
90パーセンタイル粒子サイズ(D90)が、25μm未満、好ましくは20μm未満、好ましくは15μm未満、である、
99.5パーセンタイル粒子サイズ(D99.5)が、40μm未満、好ましくは30μm未満、である、
サイズ分散インデックス(D90-D10)/D10が、好ましくは1.5未満である、これはより優れたコーティング密度を有利にもたらす、
該粉末は好ましくは、単峰性(monomodal)の粒子サイズ分布、換言すれば単一のメインピークを示す、
1μm未満の半径を有する細孔の累積比体積は、該粉末のバルク容積の8%未満、好ましくは6%未満、好ましくは5%未満、好ましくは4%未満、好ましくは3.5%未満、である、
該ドーパントは、アルミニウム、ケイ素、アルカリ又はアルカリ土類金属から選択される元素の酸化物;酸化鉄、より詳細にはFe3O4又はFe2O3;LiYO2;ムライト;アルミノケイ酸バリウム及び/又はストロンチウム;イットリウムアルミニウム酸化複合物、好ましくはYAG(約58重量%の酸化イットリウムを含むイットリウムアルミニウムガーネット、Y3Al5O12)、及び/又はYAP(約68.9重量%の酸化イットリウムを含むイットリウムアルミニウムペロブスカイト)からなる群から選択される、
該シリケート及び該ドーパントは総合して、該粉末の重量の90%超、実際には95%超、又は98%超、又は99%超をも、好ましくは実質的に100%、を占める、
該ドーパントの含有量は、上記粉末の、酸化物に基づく重量パーセントとして0.1%超、好ましくは0.5%超、実際には1%超、実際には3%超を占める;
該供給粉末の比表面積は好ましくは、0.4m2/g未満、好ましくは0.3m2/g未満、である。
【0017】
本発明は、本発明に従う供給粉末を製造する為の方法であって、下記の連続的な工程を含む、方法に更に関する。
a)粒子供給原料を顆粒化して、20~60ミクロンのメジアンサイズD’50を有する顆粒から形成された粉末を得ること、ここで該粒子供給原料は、酸化物に基づく重量パーセントとして98%超の、Zr、Hf、Y、Ce、Sc、In、La、Gd、Nd、Sm、Dy、Er、Yb、Eu、Pr、Ho、及びTaから選択され、好ましくはZr、Hf、Y、Ce、Sc、In、La、Gd、Nd、Sm、Dy、Er、Yb、Eu、Pr、及びTaから選択され、好ましくはY、Yb、Sc、及びErから選択される、1以上の元素のシリケートを含む、
b)上記顆粒から形成された粉末を、キャリヤガスを介して、少なくとも1つの注入開口部を通して、注入された顆粒の、数量によるパーセントとして、50%超、好ましくは60%超、好ましくは70%超、好ましくは80%超、好ましくは90%超が、溶融する前に粉砕を起こす条件下で、プラズマガンにより発生されたプラズマジェットに注入して、次いで該顆粒及び顆粒の小片を溶融させて小滴を得ること、
c)上記小滴を冷却して、本発明に従う供給粉末を得ること、
d)任意的に、上記供給粉末について、好ましくは篩分けにより又は空気圧分級(pneumatic classification)により、粒子サイズ選択を実施すること。
【0018】
該粉末の激しい注入は、該供給粉末のメジアンサイズの低下、及び中空粒子の割合の低下を同時に可能にする有利な効果を有する。従って、非常に高い相対密度を得ることを可能にする。
【0019】
好ましくは、該プラズマガンは、40kWを上回り、好ましくは50kWを上回り、及び/又は65kW未満、好ましくは60kW未満、の電力を有する。
【0020】
好ましくは、該プラズマガンは、40~65kWの電力を有し、及び好ましくは各注入開口部経由で、注入開口部毎に注入される顆粒の重量と上記注入開口部の表面積との比は、上記注入開口部の表面積1mm2当たり10g/分を上回り、好ましくは15g/分を上回り、好ましくは16g/分を上回り、好ましくは17g/分以上、である。
【0021】
該注入開口部、好ましくは各注入開口部、は該注入開口部の等価直径の1倍超、好ましくは2倍超、又は実際には3倍を上回る長さを有するチャンネルから好ましくはなる。
【0022】
好ましくは、注入される顆粒から形成された粉末の流速は、プラズマガンの電力1kW当たり3g/分未満、好ましくは2g/分未満、である。
【0023】
工程a)とb)との間に中間的な焼結工程、好ましくは緻密化、は存在しない。この中間の緻密化工程が存在しないことは、該供給粉末の純度を有利に改善する。同様に、このことは、工程b)における該顆粒の粉砕を促進する。
【0024】
本発明に従う粉末を製造する為の方法は、下記の任意的な特徴のうちの1以上も含みうる。
工程a)において、顆粒化は好ましくは、噴霧(atomization)又はスプレー乾燥又はペレット化(ペレットへの変換)のプロセスである、
工程a)において、該顆粒から形成された該粉末の鉱物組成は、酸化物に基づく重量パーセントとして、98.5%超、好ましくは99%超、好ましくは99.5%超、好ましくは99.9%超、99.5%超、99.99%超、好ましくは99.999%超、の上記シリケートを含む、
該顆粒から形成された該粉末のメジアン真円度C50は、好ましくは0.85を上回り、好ましくは0.90を上回り、好ましくは0.95を上回り、より好ましくは0.96を上回る、
該顆粒から形成された該粉末の真円度5パーセンタイルC5は、好ましくは0.85以上、好ましくは0.90以上、である、
該顆粒から形成された該粉末のメジアンアスペクト比A50は、好ましくは0.75を上回り、好ましくは0.8を上回る、
該顆粒から形成された該粉末の比表面積は、好ましくは15m2/g未満、好ましくは10m2/g未満、好ましくは8m2/g未満、好ましくは7m2/g未満、である、
該顆粒から形成された該粉末の、水銀ポロシメトリーにより測定される、1μm未満の半径を有する細孔の累積体積は、好ましくは0.5cm3/g未満、好ましくは0.4cm3/g未満、又はより好ましくは0.3cm3/g未満、である、
該顆粒から形成された該粉末の嵩密度は、好ましくは0.5g/cm3を上回り、好ましくは0.7g/cm3を上回り、好ましくは0.90g/cm3を上回り、好ましくは0.95g/cm3を上回り、好ましくは1.5g/cm3未満、好ましくは1.3g/cm3未満、好ましくは1.1g/cm3未満、である、
該顆粒から形成された該粉末の10パーセンタイルの粒子サイズ(D’10)は、好ましくは10μmを上回り、好ましくは15μmを上回り、好ましくは20μmを上回る、
該顆粒から形成された該粉末の90パーセンタイルの粒子サイズ(D’90)は、好ましくは90μm未満、好ましくは80μm未満、好ましくは70μm未満、好ましくは65μm未満、である、
該顆粒から形成された該粉末は、好ましくは20~60ミクロンのメジアンサイズD’50を有する、
該顆粒から形成された該粉末は、好ましくは20~25μmのパーセンタイルD’10及び60~65μmのD’90を有する、
該顆粒から形成された該粉末の99.5パーセンタイル粒子サイズ(D’99.5)は、好ましくは100μm未満、好ましくは80μm未満、好ましくは75μm未満、である、
該顆粒から形成された該粉末のD’50に対するサイズ分散インデックス(D’90-D’10)/D’50は、好ましくは2未満、好ましくは1.5未満、好ましくは1.2未満、より好ましくは1.1未満、である、
工程b)において、各注入開口部の直径は、2mm未満、好ましくは1.8mm未満、好ましくは1.7mm未満、好ましくは1.6mm未満、である、
工程b)において、注入条件は、40~65kWの電力を有し、及びプラズマジェットを発生するプラズマガンの条件と等価であるが、その場合、注入開口部経由、好ましくは各注入開口部経由で注入される顆粒の重量(上記注入開口部の表面積1mm2当たりg/分で表される)は、1mm2当たり10g/分を上回り、好ましくは1mm2当たり15g/分を上回り、「等価」とは「顆粒の粉砕の割合(注入された顆粒の数で割り算された粉砕後の顆粒の数)が同一であるように適合される」ことを意味するものと理解される、
注入開口部、好ましくは各注入開口部、は、好ましくは断面が円形であり、上記注入開口部の等価直径よりも少なくとも1倍、好ましくは少なくとも2倍、実際には3倍を上回る、長さを有する、好ましくは円筒形の注入チャンネルを定義し、該等価直径は、該注入開口部と同一の表面積を有するディスクの直径である、
工程b)において、顆粒から形成された該粉末の流速は、該プラズマガンの電力1kW当たり3g/分未満、好ましくは2g/分未満、である、
該キャリヤガスの流速(注入開口部毎(すなわち、「粉末ライン」毎))は、5.5 L/分を上回り、好ましくは5.8 L/分を上回り、好ましくは6.0 L/分を上回り、好ましくは6.5 L/分を上回り、好ましくは6.8 L/分を上回り、好ましくは7.0 L/分を上回る、
該顆粒から形成された粉末は、注入開口部毎に20g/分を上回り、好ましくは25g/分を上回る、及び/又は60g/分未満、好ましくは50g/分未満、好ましくは40g/分未満、の供給流速で該プラズマジェット中に注入される、
顆粒の全供給流速(全注入開口部について累積的)は、70g/分を上回り、好ましくは80g/分を上回り、及び/又は好ましくは180g/分未満、好ましくは140g/分未満、好ましくは120g/分未満、好ましくは100g/分未満、である、及び
好ましくは、工程c)において、溶融小滴の冷却は、最低500℃、平均冷却速度は50000~200000℃/秒、好ましくは80000~150000℃/秒、である。
【0025】
本発明は、本発明に従う供給粉末を基体上にプラズマ溶射して環境バリアコーティング物を得る工程を含む、熱溶射法にも関する。
【0026】
基体は好ましくは、「SiC-SiC」又は「SiC-Si3N4」と呼ばれる、SiC又はSi3N4マトリックスにより結合されたSiC粒子から構成される複合物である。
【0027】
本発明は、基体及び該基体を少なくとも部分的に被覆する環境バリアコーティング物を含む物体にも関係し、該環境バリアコーティング物は、本発明に従う又は本発明に従う方法により製造される供給粉末の熱溶射、好ましくはプラズマ熱溶射により得られるものである。該物体は、1200℃を上回る温度を有する環境で使用するのに特に優れて好適である。
【0028】
上記環境バリアコーティング物は好ましくは、酸化物に基づく重量パーセントとして、98%超の、Zr、Hf、Y、Ce、Sc、In、La、Gd、Nd、Sm、Dy、Er、Yb、Eu、Pr、及びTaから選択され、好ましくはY、Yb、Sc、及びErから選択される1以上の元素のシリケートを含み、並びに好ましくは1.5%以下の多孔性を示し、該多孔性は、本明細書で以下に記載される、上記環境バリアコーティング物の研磨された断面の写真上で測定される。上記環境バリアコーティング物の多孔性は好ましくは、1%未満である。
【0029】
上記環境バリアコーティング物は好ましくは、酸化物に基づく重量パーセントとして、98.5%超、好ましくは99%超、好ましくは99.5%超、好ましくは99.9%超、99.95%超、99.97%超、99.98%超、99.99%超、好ましくは99.999%超の上記シリケートを含む。
【0030】
このような環境バリアコーティング物は、本発明に従う熱溶射法を用いて製造されうる。
【0031】
該基体は、熱交換器又は内燃機関のガスタービンの一部でありうる。
【0032】
本発明は、1000℃超、1100℃超、1200℃超、若しくは1300℃を上回る温度環境において、及び/又は水環境において、部品を保護する為の、そのような環境バリアコーティング物の使用にも関係する。
【0033】
定義
「不純物」は、出発物質と共に意図せずに及び必然的に導入される、又は構成成分間の反応に起因する、不可避の構成成分である。該不純物は、必要な構成成分ではなく、許容される構成成分にすぎない。純度の程度は好ましくは、GDMS(グロー放電質量分析法)により測定され、これは、ICP-AES(誘導結合プラズマ原子発光分析法)よりも正確である。
【0034】
粉末の粒子の「真円度」は、慣用的に、以下の方式で決定される:
粉末が平板ガラス上に分散される。個々の粒子の画像が、粒子の焦点を保ち、該ガラス板の下面から該粉末に光を当てながら、光学顕微鏡下で分散された粉末をスキャニングすることにより得られる。これらの画像は、Malvernより販売されているMorphologi(登録商標)G3型のデバイスを使用して分析されうる。
【0035】
図4に示すように、粒子P’の「真円度」Cを評価する為に、この粒子の画像上で、粒子P’の面積A
pに等しい面積を有するディスクDの周囲の長さP
Dが決定される。この粒子の周囲の長さP
pも決定される。真円度は比P
D/P
pに等しい。従って、
【0036】
【数1】
である。粒子の形状が引き伸ばされるほど、真円度は低下する。Sysmex FPIA3000に関するユーザーマニュアルも、この手順を記載している(www.malvern.co.ukの「detailed specification sheets」を参照)。
【0037】
真円度のパーセンタイル(後述される)を決定する為に、該粉末は平板ガラス上に注がれ、そして上記説明のように観測される。該粉末の計測数は、該粉末がどのような方法でガラス板上に注がれたとしても、測定されたパーセンタイルが実質的に同一であるように、250を上回るべきである。
【0038】
粒子のアスペクト比Aは、該粒子の幅(その長さ方向に対して直角のその最大寸法)とその長さ(その最大寸法)との比として定義される。
【0039】
アスペクト比のパーセンタイルを決定する為に、該粉末は平板ガラス上に注がれ、そして該粒子の長さ及び幅を測定する為に、上記説明のように観測される。粒子の計測数は、該粉末が該ガラス板上に注がれる方法がどのようであるとしても、測定されたパーセンタイルが実質的に同一であるように、250を上回るべきである。
【0040】
粒子から形成された粉末の粒子について、その特性Mのパーセンタイル又は「センタイル」である10(M10)、50(M50)、90(M90)、及び99.5(M99.5)、より一般的に「n」Mnは、該粉末の該粒子のこの特性に関係する累積度数分布曲線に基づき、それぞれ10%、50%、90%、99.5%、及びn%の数量パーセントに対するこの特性の数値であり、この特性に関係する数値が昇順で分類される。特に、パーセンタイルDn(又は顆粒から形成された粉末の場合D’n)、An、及びCnは、サイズ、アスペクト比、及び真円度とそれぞれ関連する。
【0041】
例えば、該粉末の該粒子の10数量%はD10未満のサイズを有し、該粒子の90数量%はD10以上のサイズを有する。サイズに関係するパーセンタイルは、レーザー粒子サイズ分析装置を用いて生み出される粒子サイズ分布により決定されることができる。
【0042】
同様に、該粉末の粒子の5数量%は、C5パーセンタイル未満の真円度を有する。換言すれば、この粉末の粒子の95数量%は、C5以上の真円度を有する。
【0043】
50パーセンタイルは、慣用的に「メジアン」パーセンタイルとして知られている。例えば、C50は、慣用的に「メジアン真円度」として知られている。同様に、D50パーセンタイルは、慣用的に「メジアンサイズ」として知られている。A50パーセンタイルも、やはり慣用的に「メジアンアスペクト比」を意味する。
【0044】
「粒子のサイズ」とは、レーザー粒子サイズ分析装置用いて実施される粒子サイズ分布の特徴付けにより、慣用的に与えられる粒子のサイズを意味するものと理解される。使用されるレーザー粒子サイズ分析装置は、Horiba製Partica LA-950でありうる。
【0045】
予め決定された最大サイズ以下のサイズを有する粒子の数量パーセント又は数量画分は、レーザー粒子サイズ分析装置を使用して決定されうる。
【0046】
粉末1g当たりのcm3として表される、1μm未満の半径を有する細孔の累積比体積は、典型的に、標準ISO15901-1に基づき水銀ポロシメトリーにより測定される。累積比体積は、粉体工学ポロシメーターを用いて測定されうる。
【0047】
cm3/gとして表される粉末バルク容積は、該粉末の嵩密度の逆数である。
【0048】
粒子粉末の「嵩密度」Pは、典型的に上記粒子のバルク容積の合計で割り算された粉末の重量の比として定義される。実際には、Pは、200MPaの圧力において、粉体工学ポロシメーターを用いて測定されうる。
【0049】
粉末の「相対密度」は、その真の密度で割り算されたその嵩密度に等しい。該真の密度は、ヘリウムピクノメトリー(Helium Pycnometry)により測定されうる。
【0050】
環境バリアコーティング物の「空隙率」は、該バリアコーティング物の研磨された断面の画像分析により評価されうる。コーティングされた基体は、研究室の裁断機を使用して、例えばアルミナ基板のカッティングディスクを有するStruers Discotomデバイスを使用して、切片化される。次に、該環境バリアコーティング物のサンプルは、例えばStruers Durocitタイプの低温封止樹脂を使用して、樹脂中に封止される。次に、封止されたサンプルは、研磨媒体を使用して微粉度を増加させながら研磨される。適した研磨用懸濁物と共に、サンドペーパー、又は好ましくは研磨ディスク、を使用することができる。慣用的な研磨手順は、サンプルのドレッシングから(例えば、Struers Piano220研削用ディスクを用いて)開始し、次に研削用懸濁物に伴う研磨布を替えながら行われる。砥粒のサイズは、各微細研磨工程において低下し、ダイヤモンド砥粒のサイズは、例えば9ミクロンから開始し、次に3ミクロンになり、1ミクロンで終了する(Struers DiaProシリーズ)。砥粒の各サイズにおいて、光学顕微鏡下で観測された空隙率が一定に留まり次第、研磨は停止される。該サンプルは、工程間で、例えば水を用いて、慎重に洗浄される。1μmのダイヤモンドを用いた研磨工程後の最終研磨工程は、柔軟なフェルト布地と併用されるコロイドシリカ(OP-U Struers、0.04μm)を使用して実施される。洗浄の後、研磨済みのサンプルは、光学顕微鏡により、又はSEM(走査型電子顕微鏡)によりすぐに観察されることができる。その優れた分解能及び際立ったコントラストを有するため、分析対象として意図される画像を得るためにはSEMが好ましい。該空隙率は、閾値を調整しながら画像分析ソフトウェア(例えば、ImageJ、NIH)を使用して、画像から決定されうる。該空隙率は、該環境バリアコーティング物の断面における表面積のパーセントとして与えられる。
【0051】
「比表面積」は、Journal of the American Chemical Society 60 (1938), 309~316に記載されるような、BET(Brunauer Emmet Teller)法により慣用的に測定される。
【0052】
「顆粒化」操作は、バインダー、例えばポリマーバインダー、を使用して粒子を凝集させて、任意的に顆粒でありうる凝集した粒子を形成する方法である。顆粒化は、これらの方法に限定されないが、特に、噴霧若しくはスプレー乾燥、及び/又は顆粒化装置若しくはペレット化装置の使用を含む。典型的には、バインダーは、酸化物を実質的に含まない。
【0053】
「顆粒」は、0.8以上の真円度を有する凝集した粒子である。
【0054】
緻密化工程は、顆粒内で、有機バインダーによる結合を、拡散接合に置き換えるように意図された操作である。一般的に、加熱処理によるが、該顆粒を完全に溶融させずに実施される。
【0055】
プラズマ溶射法の「沈着収率」は、該基体上に沈着された物質の量をプラズマジェット内に注入された供給粉末の量で割り算した比として定義され、重量パーセントとして表される。
【0056】
「溶射生産性」は、単位時間当たりの沈着された物質の量として定義される。
【0057】
L/分で表される流速が「標準」であり、すなわち、1barの圧力下、20℃の温度で測定される。
【0058】
「~を含有すること(to contain)」又は「~を含むこと(to comprise)」は、別途明示されない限り、非限定的と理解すべきである。
【0059】
別途明示されない限り、全ての組成物のパーセントは、酸化物の重量に基づく重量パーセントである。
【0060】
該粉末の特性は、実施例で使用される特徴付け方法により評価されうる。
【0061】
本発明の他の特徴及び長所は、下記の説明を閲読し、添付の図面を検討すれば、より明確になろう。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【
図1】
図1は、本発明に従う方法の工程a)を図式的に表す図である。
【
図2】
図2は、本発明に従う供給粉末を製造する為のプラズマトーチを図式的に表す図である。
【
図3】
図3は、本発明に従う供給粉末を製造する為の方法を図式的に表す図である。
【
図4】
図4は、粒子の真円度を評価するのに使用される方法について例証する図である。
【発明を実施するための形態】
【0063】
供給粉末を製造する為の方法
図1は、本発明に従う供給粉末を製造する為の方法について、その工程a)の1つの実施態様を例証する。
【0064】
任意の公知の顆粒化法が使用されうる。特に、当業者は、顆粒化に適するスリップを調製する方法を知っている。
【0065】
1つの実施態様では、バインダー混合物は、PVA(ポリビニルアルコール)2を、脱イオン水4に添加することにより調製される。次に、このバインダー混合物6は、5μmフィルター8を通じて濾過される。粉末化されたシリケート10(例えば99.99%の純度)からなり、1μmのメジアンサイズを有する粒子状供給原料は、濾過されたバインダー混合物に混合されて、スリップ12を形成する。該スリップは、重量として、例えば55%のシリケート及び0.55%のPVAを含有しうるが、100%までの残部は水からなる。このスリップは、噴霧機(atomizer)14中に注入されて、顆粒から形成された粉末16を得る。当業者は、所望の粒子サイズ分布を得るために該噴霧機を適合する方法を知っている。
【0066】
顆粒は、好ましくは3μm未満、好ましくは2μm未満、好ましくは1.5μm未満、のメジアンサイズを有する酸化物材料からなる粒子の凝集物であるのが好ましい。
【0067】
該顆粒から形成された粉末は篩分けされ(例えば、5mmの篩18)、該噴霧機の壁から落下した残留物が存在する可能性を取り除くことができる。
【0068】
得られた粉末20は、「噴霧乾燥に限定された」又はSDOの、顆粒から形成された粉末である。
【0069】
図2及び
図3は、本発明に従う供給粉末を製造する為の方法について、その溶融工程b)の1つの実施態様を例証する。
【0070】
例えば、
図1で例証される方法に従い製造されるような、SDO顆粒粉末20は、プラズマガン24、例えばProplasma HPプラズマトーチ、により発生されたプラズマジェット22中に、注入装置21によって注入される。慣用的な注入及びプラズマ溶射デバイスが、顆粒から形成されたSDO粉末をキャリヤガスと混合し、そうして得られた混合物をホットプラズマの中心部に注入する為に使用されうる。
【0071】
しかしながら、注入された顆粒粉末は緻密化される必要はなく(SDO)、また該プラズマジェットへの注入は、顆粒の破壊を促進する為に激しくなされるべきである。衝撃の強度は該顆粒の粉砕強度、従って製造される粉末のメジアンサイズを決定する。
【0072】
当業者は、工程c)又はd)の終了時に得られた供給粉末が本発明に従う粒子サイズ分布を有するように、該顆粒を激しく注入する為に注入パラメーターを適合する方法を知っている。
【0073】
より詳細には、当業者は、
顆粒の注入軸Yとプラズマジェットの軸Xとの間の注入角度θを90°に接近させること
注入開口部の表面積1mm2当たりの粉末の流速を増加させること、
ガンの電力1kW当たりの粉末の流速(g/分)を低下させること、及び
プラズマ誘発性のガスの流速を増加させること
が顆粒の破壊を促進する因子であることを認識している。
【0074】
特に、国際公開第2014/083544号パンフレットは、下記の実施例に記載されているような、顆粒の50数量%超の破壊を可能にする注入パラメーターについて開示していない。
【0075】
非常に高速で流れる非常に粘稠なプラズマジェット中に該粒子を分散する為に、該粒子を急速に注入することが好ましい。
【0076】
注入された顆粒が該プラズマジェットと接触するとき、該顆粒は強力な衝撃を受け、小片に分解することができる。該プラズマジェットを貫通する為に、緻密化されていない、特には未焼結の、分散されるべき顆粒が、高い運動エネルギーの恩恵を受けるほど十分に高速で注入されるが、しかしながら、このスピードは、良好な粉砕効率を保証する為に制限される。該顆粒の緻密化がなければ、その機械的強度は低下し、従ってこのような衝撃に対するその耐性は低下する。
【0077】
当業者は、該顆粒のスピードは、該キャリヤガスの流速及び該注入開口部の直径により決定されることを知っている。
【0078】
該プラズマジェットのスピードもやはり高い。好ましくは、プラズマ誘発性ガスの流速は、選択されたアノード(anode)直径に対して、トーチの製造業者により推奨されるメジアン値を上回るのが好ましい。好ましくは、プラズマ誘発性ガスの流速は、50 L/分を上回り、好ましくは55 L/分を上回る。
【0079】
当業者は、該プラズマジェットのスピードは、小直径アノード(anode)を使用することで、及び/又は一次ガスの流速を上げることにより増加しうることを認識している。
【0080】
好ましくは、該一次ガスの流速は、40 L/分を上回り、好ましくは45 L/分を上回る。
【0081】
好ましくは、二次ガス、好ましくは分子水素(H2)ガス、の流速と、プラズマ誘発性ガス(一次及び二次ガスから構成される)の流速との比は、20%~25%である。
【0082】
もちろん、該二次ガスの流速により特に影響を受ける該プラズマジェットのエネルギーは、該顆粒を溶融させるのに十分高くなければならない。
【0083】
該顆粒から形成された粉末は、好ましくは液体を一切用いずに、キャリヤガスを用いて注入される。
【0084】
プラズマジェット22内では、該顆粒は小滴25に溶融される。該プラズマガンは好ましくは、溶融が実質的に完全であるように調整される。
【0085】
該溶融の有利な効果は、不純物の含有量の低下を可能にする。
【0086】
該プラズマジェットのホットゾーンから抜け出る際に、該小滴は、周辺の冷気の他に、冷却ガス、好ましくは空気、の強制的循環26によっても急速に冷却される。該空気は、水素の還元効果を有利に制限する。
【0087】
好ましくは、該プラズマトーチは、該プラズマジェットに注入された顆粒から形成された該粉末を加熱し、その結果生じた該小滴を冷却する為に、冷却流体、好ましくは空気、を注入するように配置された少なくとも1つのノズルを備える。該冷却流体は、該プラズマジェットの下流方向に注入されるのが好ましく(
図2に示すように)、且つ上記小滴の経路と該冷却流体の経路との間の角度γは、好ましくは80°以下、好ましくは60°以下、及び/又は10°以上、好ましくは20°以上、好ましくは30°以上、である。好ましくは、任意のノズルの注入軸Y及び該プラズマジェットの軸Xは交差している。
【0088】
好ましくは、注入軸Yと該プラズマジェットの軸Xとの間の注入角度θは、85°を上回り、好ましくはおよそ90°である。
【0089】
好ましくは、強制的冷却は、冷却ガスの実質的に円錐状又は環状の流れを作り出すためにプラズマジェット22の軸Xの周辺に配置された一連のノズル28により生み出される。
【0090】
プラズマガン24は、地面に対して垂直に配置される。好ましくは、垂直と該プラズマジェットの軸Xとの間の角度αは、30°未満、20°未満、10°未満、好ましくは5°未満、好ましくは実質的にゼロ、である。それ故に、有利には、冷却ガスの流れは、該プラズマジェットの軸Xに関して完全に中央に位置する。
【0091】
好ましくは、該アノード(anode)の外面と冷却ゾーン(そこで該小滴が、注入された冷却流体と接触する)との間の最低距離dは、50mm~400mm、好ましくは100mm~300mm、である。
【0092】
有利には、該強制的冷却は、焼締チャンバー32内の懸濁中にて、非常に大きく高温の粒子と小粒子との間の接触に起因する二次粒子の生成を制限する。更に、このような冷却操作は、処理機器の全体的なサイズ、特に収集チャンバーのサイズ、の低下を可能にする。
【0093】
小滴25を冷却すれば、焼締チャンバー32の下方部分において取り除かれ得る供給粒子30を得ることが可能になる。
【0094】
該焼締チャンバーは、サイクロン34と接続されうるが、そこから流出する排気ガスは、非常に微細な粒子40を分離する為に塵埃コレクター36に向けられている。該構成に応じて、本発明に基づくいくつかの供給粒子は該サイクロン内でも収集されうる。好ましくは、これらの供給粒子は、特にエアセパレーターを用いて、分離されることができる。
【0095】
任意的に、収集された供給粒子38は、メジアンサイズD50が15ミクロン未満であるように濾過されうる。
【0096】
下記の表1は、本発明に従う供給粉末を製造する為の好ましいパラメーターを提供する。カラムの特性は好ましくは組み合わされるが、しかし必ずしもそうではない。2つのカラムの特性も組み合わされうる。
【0097】
【0098】
該「ProplasmaHP」プラズマトーチは、Saint-Gobain Coating Solutionsより販売されている。このトーチは、国際公開第2010/103497号パンフレットに記載されているトーチT1に対応する。
【0099】
テストは、本発明に従う供給粉末が、90%を上回り、実際には95%をも上回る相対密度を示すことを示している。
【0100】
従って、本発明は、該環境バリアコーティング物上で非常に高密度を実現するサイズ分布及び相対密度を示す供給粉末を提供する。更に、この供給粉末は、良好な生産性を伴って、効率的にプラズマ溶射されうる。
【0101】
当然のことながら、本発明は、記載され示されている実施態様に限定されない。