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特許7324761コラーゲン含有繊維材料の同時なめし染色方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-02
(45)【発行日】2023-08-10
(54)【発明の名称】コラーゲン含有繊維材料の同時なめし染色方法
(51)【国際特許分類】
   D06P 3/82 20060101AFI20230803BHJP
   C14C 3/02 20060101ALI20230803BHJP
   D06P 3/32 20060101ALI20230803BHJP
   D06P 1/38 20060101ALI20230803BHJP
【FI】
D06P3/82 J
C14C3/02
D06P3/32 B
D06P1/38
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020543501
(86)(22)【出願日】2019-01-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-10
(86)【国際出願番号】 EP2019051825
(87)【国際公開番号】W WO2019158341
(87)【国際公開日】2019-08-22
【審査請求日】2021-12-13
(31)【優先権主張番号】18157088.8
(32)【優先日】2018-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】523053004
【氏名又は名称】ハンツマン・テキスタイル・エフェクツ(スイッツァランド)・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】カッシンガム,ダリル,マイルス
(72)【発明者】
【氏名】レントゲン,ジョージ
(72)【発明者】
【氏名】ツィカス,アタナシス
【審査官】川嶋 宏毅
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-510067(JP,A)
【文献】特開2003-193100(JP,A)
【文献】特表2006-527309(JP,A)
【文献】米国特許第08382857(US,B2)
【文献】米国特許出願公開第2012/0047663(US,A1)
【文献】国際公開第2015/044971(WO,A2)
【文献】米国特許第05176717(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06P
C14C
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コラーゲン含有繊維材料の同時なめし染色方法であって、
前記材料は式(1)及び式(2)の群から選ばれる少なくとも1種の反応染料の含有液で処理される、方法。
【化1】
(式中、
、A及びAは、それぞれ互いに独立して、少なくとも1個のスルホ基を有する、モノアゾ発色団の基、ポリアゾ発色団の基、金属錯体アゾ発色団の基、アントラキノン発色団の基、フタロシアニン発色団の基、ホルマザン発色団の基又はジオキサジン発色団の基を表し、
Bは、有機架橋要素を表し、
、Q、Q及びQは、それぞれ互いに独立して、水素原子又は未置換の若しくは置換された炭素原子数1乃至4のアルキル基を表し、
及びGはハロゲン原子、3-カルボキシピリジン-1-イル基又は3-カルバモイルピリジン-1-イル基を表し、
(Z2-3は、2乃至3個の同一の又は異なる繊維反応性基を表し、
及びZは、それぞれ互いに独立して、同一の又は異なる繊維反応性基を表し、
bは、0又は1の数字を表す。)
【請求項2】
、Z及びZは、それぞれ互いに独立して、式
【化2】
[式中、
Halは、塩素原子又は臭素原子を表し、
は、ハロゲン原子、3-カルボキシピリジン-1-イル基又は3-カルバモイルピリジン-1-イル基を表し、
は、独立してXの意味を有するか、又は繊維反応性ではない置換基を表すか、又は式
【化3】
で表される繊維反応性基を表し、
、R1a及びR1bは、互いに独立して、それぞれハロゲン原子又は炭素原子数1乃至4のアルキル基を表し、
は、水素原子、未置換の又はヒドロキシ基、スルホ基、スルファト基、カルボキシル基若しくはシアノ基若しくは基
【化4】
で置換された炭素原子数1乃至4のアルキル基を表し、
は、水素原子、ヒドロキシ基、スルホ基、スルファト基、カルボキシル基、シアノ基、ハロゲン原子、炭素原子数1乃至4のアルコキシカルボニル基、炭素原子数1乃至4のアルカノイルオキシ基、カルバモイル基、又は基-SO-Yを表し、
alk及びalkは、互いに独立して、直鎖状の又は分岐鎖状の炭素原子数1乃至6のアルキレン基を表し、
aryleneは、未置換の又はスルホ基、カルボキシル基、炭素原子数1乃至4のアルキル基、炭素原子数1乃至4のアルコキシ基若しくはハロゲン原子で置換されたフェニレン基又はナフチレン基を表し、
Qは、基-O-又は-NR-(Rは上記で定義されたとおりである)を表し、
Wは、基-SO-NR-、-CONR-又は-NRCO-(Rは上記で定義されたとおりである)を表し、
Yは、ビニル基又は基-CH-CH-U(Uはアルカリ条件下で脱離可能な基を表す)を表し、
は、基-CH(Hal)-CH-Hal又は-C(Hal)=CH(Halは
塩素原子又は臭素原子を表す)を表し、
l及びmは、互いに独立して、1乃至6の整数を表し、nは0又は1の数字を表し、
は、ハロゲン原子又は炭素原子数1乃至4のアルキルスルホニル基を表し、
は、ハロゲン原子又は炭素原子数1乃至4のアルキル基を表し、
は、水素原子、シアノ基又はハロゲン原子を表す。]で表される基を表す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
、Z及びZは、それぞれ互いに独立して、請求項2に記載の式(3a)、(3b)又は(3f)
[式中、
Yは、ビニル基、β-クロロエチル基又はβ-スルファトエチル基を表し、
1aは、水素原子を表し、
lは、2又は3の数字を表し、
は、ハロゲン原子を表し、
は、炭素原子数1乃至4のアルコキシ基、炭素原子数1乃至4のアルキルチオ基、ヒドロキシ基、アミノ基、未置換の又はアルキル部分がヒドロキシ基、スルファト基若しくはスルホ基で置換されたN-モノ-若しくはN,N-ジ-炭素原子数1乃至4のアルキルアミノ基、モルホリノ基、未置換の又はフェニル環がスルホ基、カルボキシ基、アセチルアミノ基、塩素原子、メチル基若しくはメトキシ基で置換されたフェニルアミノ基又はN-炭素原子数1乃至4のアルキル-N-フェニルアミノ基(アルキル基は未置換であるか又はヒドロキシ基、スルホ基若しくはスルファト基で置換されている)、又は未置換の若しくは1乃至3個のスルホ基で置換されたナフチルアミノ基を表すか、又は
は、式
【化5】
(式中、
Yは、上記で定義されたとおりであり、
は、基-CH(Br)-CH-Br又は-C(Br)=CHを表す。)で表される繊維反応性基を表す。]で表される基を表す、請求項1又は請求項2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
Bは、1、2又は3個の-O-要素で中断されていてもよい、未置換の若しくはヒドロキシ基で置換された炭素原子数2乃至6のアルキレン基、又は1若しくは2個のスルホ基
で置換されたフェニレン基を表し、
及びG は、それぞれ互いに独立して、塩素原子又はフッ素原子を表す、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
、A及びAは、それぞれ互いに独立して、モノアゾ発色団又はポリアゾ発色団を表す、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
、A及びAは、それぞれ互いに独立して、式
【化6】
[式中、
(R0-3は、炭素原子数1乃至4のアルキル基、炭素原子数1乃至4のアルコキシ基、炭素原子数2乃至4のアルカノイルアミノ基、ウレイド基、スルファモイル基、カルバモイル基、スルホメチル基、ハロゲン原子、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基及びスルホ基からなる群からの、0乃至3個の同一の又は異なる置換基を表し、
(R0-2は、ヒドロキシ基、アミノ基、N-モノ-炭素原子数1乃至4のアルキルアミノ基、N,N-ジ-炭素原子数1乃至4のアルキルアミノ基、炭素原子数2乃至4のアルカノイルアミノ基及びベンゾイルアミノ基からなる群からの、0乃至2個の同一の又は異なる置換基を表し、
式(5)中のqは、2又は3の数字、すなわちqは発色団に結合した2又は3個の結合を表す。]
【化7】
[式中、
(R0-2は、上記で定義されたとおりであり、
式(6)中のqは、2又は3の数字、すなわちqは発色団に結合した2又は3個の結合を表す。]
【化8】
[式中、
(R0-3及び(R0-3は、互いに独立して、炭素原子数1乃至4のアルキル基、炭素原子数1乃至4のアルコキシ基、ハロゲン原子、カルボキシ基及びスルホ基からなる群からの、0乃至3個の同一の又は異なる置換基を表し、
式(7)中のqは、2又は3の数字、すなわちqは発色団に結合した2又は3個の結合を表す。]
【化9】
[式中、
及びR10は、それぞれ互いに独立して、水素原子、炭素原子数1乃至4のアルキル基又はフェニル基を表し、
は水素原子、シアノ基、カルバモイル基又はスルホメチル基を表し、
式(8)中のqは、2又は3の数字、すなわちqは発色団に結合した2又は3個の結合を表す。]
【化10】
[式中、
(R110-3は、(R0-3で定義されたとおりであり、
(R120-3は、炭素原子数1乃至4のアルキル基、炭素原子数1乃至4のアルコキシ基、ハロゲン原子、アミノ基、カルボキシ基及びスルホ基からなる群からの、0乃至3個の同一の又は異なる置換基を表し、
(R130-3は、(R0-3で定義されたとおりであるか、又はR13は、基-N=N-Ph(Phは未置換の又は炭素原子数1乃至4のアルキル基、炭素原子数1乃
至4のアルコキシ基、ハロゲン原子、カルボキシ基若しくはスルホ基で置換されたフェニル基を表す)を表し、
sは、0又は1の数字を表し、
式(9)中のqは、2又は3の数字、すなわちqは発色団に結合した2又は3個の結合を表す。]
【化11】
[式中、
(R110-3及び(R130-3は、互いに独立して、上記で定義されたとおりであり、
(R140-2は、炭素原子数1乃至4のアルキル基、炭素原子数1乃至4のアルコキシ基、ハロゲン原子、カルボキシ基、スルホ基、ヒドロキシ基、アミノ基、N-モノ-炭素原子数1乃至4のアルキルアミノ基、N,N-ジ-炭素原子数1乃至4のアルキルアミノ基、炭素原子数2乃至4のアルカノイルアミノ基及びベンゾイルアミノ基からなる群からの、0乃至2個の同一の又は異なる置換基を表し、
式(10)中のqは、2又は3の数字、すなわちqは発色団に結合した2又は3個の結合を表す。]
【化12】
(式中、
ベンゼン核はこれ以上の置換基を含まないか、又は炭素原子数1乃至4のアルキル基、炭素原子数1乃至4のアルコキシ基、炭素原子数1乃至4のアルキルスルホニル基、ハロゲン原子又はカルボキシ基でさらに置換され、
qは、2又は3の数字、すなわちqは発色団に結合した2又は3個の結合を表す。)
【化13】
(式中、
Pcは、金属フタロシアニン基を表し、
W’は、-OH及び/又は-NR1616’を表し、R16及びR16’は、それぞれ互いに独立して、水素原子又は未置換の又はヒドロキシ基若しくはスルホ基で置換された炭素原子数1乃至4のアルキル基を表し、
15は、水素原子又は炭素原子数1乃至4のアルキル基を表し、
Aは、未置換の又は炭素原子数1乃至4のアルキル基、炭素原子数1乃至4のアルコキシ基、ハロゲン原子、カルボキシ基若しくはスルホ基で置換されたフェニレン基、又は炭素原子数2乃至6のアルキレン基を表し、
kは、1乃至3を表し、
qは、2又は3の数字、すなわちqは発色団に結合した2又は3個の結合を表す。);又は
【化14】
(式中、
A’は、未置換の又は炭素原子数1乃至4のアルキル基、炭素原子数1乃至4のアルコキシ基、ハロゲン原子、カルボキシ基若しくはスルホ基で置換されたフェニレン基、又は炭素原子数2乃至6のアルキレン基を表し、
rは、独立して0、1又は2の数字、好ましくは0又は1の数字を表し、
v及びv’は、それぞれ互いに独立して、0又は1の数字を表す。)で表される基を表す、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
、A及びAは、それぞれ互いに独立して、式(5)、(6)、(9)又は(10)で表される基を表す、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
コラーゲン含有繊維材料が少なくとも1種の式(1)で表される反応染料の含有液で処理される、請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
コラーゲン含有繊維材料が少なくとも1種の式
1a-(Z2-3 (1a)
で表される反応染料と少なくとも1種の式
1b-(Z (1b)
で表される反応染料との含有液で処理される、請求項8に記載の方法
式中、
1aは、式
【化15】
で表される基を表し、
1bは、式
【化16】
で表される基を表し、
(R110-3は、炭素原子数1乃至4のアルキル基、炭素原子数1乃至4のアルコキシ基、炭素原子数2乃至4のアルカノイルアミノ基、ウレイド基、スルファモイル基、カルバモイル基、スルホメチル基、ハロゲン原子、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基及びスルホ基からなる群からの、0乃至3個の同一の又は異なる置換基を表し、
(R120-3は、炭素原子数1乃至4のアルキル基、炭素原子数1乃至4のアルコキシ基、ハロゲン原子、アミノ基、カルボキシ基及びスルホ基からなる群からの、0乃至3個の同一の又は異なる置換基を表し、
(R130-3は、(R110-3で定義されたとおりあるか、又はR13は、基-N=N-Ph(Phは未置換の又は炭素原子数1乃至4のアルキル基、炭素原子数1乃至4のアルコキシ基、ハロゲン原子、カルボキシ基又はスルホ基で置換されたフェニル基を表す)を表し、
(R140-2は、炭素原子数1乃至4のアルキル基、炭素原子数1乃至4のアルコキシ基、ハロゲン原子、カルボキシ基、スルホ基、ヒドロキシ基、アミノ基、N-モノ-炭素原子数1乃至4のアルキルアミノ基、N,N-ジ-炭素原子数1乃至4のアルキルアミノ基、炭素原子数2乃至4のアルカノイルアミノ基及びベンゾイルアミノ基からなる群からの、0乃至2個の同一の又は異なる置換基を表し、
sは、0又は1の数字を表し、
qは、2又は3の数字、すなわちqは発色団に結合した2又は3個の結合を表し、
は、独立して2又は3個の、同一の又は異なる式
-SO-Y (3a)又は
-NH-CO-(CH-SO-Y (3b)
(式中、
Yは、ビニル基、β-クロロエチル基又はβ-スルファトエチル基を表し、
lは、2、3又は4の数字を表す。)で表される繊維反応性基を表す。
【請求項10】
少なくとも1種の反応染料の量はコラーゲン含有繊維材料のピックル質量に基づいて1.0%乃至10%である、請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記液が水性液である、請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記水性液のpHが7乃至10である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記水性液の温度が20乃至50℃である、請求項11又は請求項12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
同時なめし染色が少なくとも1種の無機塩、好ましくは硫酸ナトリウム(グラウバー塩)又は硫酸カリウムの存在下で行われる、請求項11乃至請求項13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
同時なめし染色がカルボン酸の少なくとも1種の塩の存在下で行われる、請求項11乃至請求項14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
請求項1乃至請求項15のいずれか1項に記載の方法によって得られた皮革又は皮革模造品。
【請求項17】
請求項1乃至請求項15のいずれか1項に記載の方法によって得られた皮革若しくは皮革模造品の使用、又は皮革製品若しくは皮革様製品の製造のための、請求項16に記載の皮革若しくは皮革模造品の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコラーゲン含有繊維材料、例えば、大動物の皮(hide)又は小動物の皮(skin)の同時なめし染色方法に関する。発明の方法は皮革製造の2つの工程(なめし及び染色)を組み合わせて単一の工程にすることで、皮革又はボンデッドレザーファイバーなどの、皮革模造品の製造を可能とし、かくして、資源を保護し、環境への影響を減らす。
【背景技術】
【0002】
本発明によるコラーゲン含有繊維材料の同時なめし染色方法は、選択された繊維反応性染料の使用によって達成される。米国特許第8372161号明細書及び米国特許第8382857号明細書は反応染料で皮革を染色する方法を開示する。従来技術の方法は、クロムなめし革から主に判断すると、なめされた後の皮革の着色に関しており、皮革原料の同時なめし染色に関しては何も記載していない。
【0003】
他の重要な農産物、例えばゴム、綿、コーヒー、砂糖、及び米の貿易の価値と同様に皮革の貿易の価値は大きい。したがって、皮革の製造は、製造工程で使用されるすべての化学物質が皮革に残るわけではなく、環境に放出されるという点で、環境に影響を及ぼす。また製品を廃棄する場合、皮革は廃棄物になる。皮革の環境保全性の基準は、例えば、禁止されているアゾ染料、PCP、クロムVI、ホルムアルデヒド、及びブランドによって指定された増え続けるリストなどの、特定の取扱制限有毒物がないこと、又はなめしの方法により判断される。この動きは自動車部門から起きたものであるが、ここ最近では、環境圧力団体、エコ表示、一般大衆向けの小売店、又は製品のポジショニングを通じて競争優位性を得ようとしている人々から起きていた。いわゆるZDHCプログラムは、有害化学物質ゼロ排出に向けて前進するために、繊維、皮革及びフットウェアのバリューチェーンのブランドによって、最近確立された。
【0004】
皮革の歴史は、原始人が食べ物を得るために野生動物を狩猟するところから始まった。死んだ動物の死骸から得られた大動物の皮(hide)や小動物の皮(skin)は、加工されていないテント、衣類及びフットウェアとして使用された。小動物の皮(skin)はすぐに腐敗して、使い物にならなくなるので、保存方法が必要だった。しかし、小動物の皮(skin)を乾燥するなどの、初期の保存方法は、保存及び軟化作用が限られていた。原始人は、タンニン含有の、樹皮、葉、小枝及び特定の木や植物の果実の煎じ汁で処理したのと同じように、焚火の煙が大動物の皮(hide)や小動物の皮(skin)を保存できることを発見した。動物の皮を湿った林床の上に置きっぱなしにして、腐朽葉や植物性腐敗物から放出された化学物質によって自然になめした後、小動物の皮(skin)を保存して皮革を作る方法が発見されたと思われる。かなり後に、柔らかな白い皮革を製造するためのなめし剤として、ミョウバン含有土類塩の使用が発見された。ミョウバン皮革はさまざまな植物中にもともと存在する染料で染色できた。何世紀にもわたって製革は着実に拡大し、中世までにほとんどの町や村には、地場の地域の小川又は川に皮なめし工場があり、小川や川を加工用の水源として、また水車が動力源となっている機械用の動力源として使用した。
【0005】
なめしの全体の目的は、コラーゲンを架橋して安定化させることであり、通常は、大動物の皮(hide)又は小動物の皮(skin)のマトリックスを形成して腐敗を防ぎ、かくして分解を防ぐことである。適切ななめし革はまた、元に戻らないことが多い。別の特性は、未加工の又はなめされていない大動物の皮(hide)又は小動物の皮(skin)に比べて、皮革は湿熱にさらされたとき、収縮に対する耐性がはるかに高くなること
である。つまり、なめしは水熱安定性(一般に水熱収縮温度と呼ばれる)を向上させる。
【0006】
なめしの品質は、“水熱安定性”(より一般的には“収縮温度”と呼ばれる)を測定することによって判断される。大動物の皮(hide)、小動物の皮(skin)及び皮革が水中で徐々に加熱されると、それらは急激な、不可逆的な収縮を受ける温度に達する。未加工の大動物の皮(hide)又は小動物の皮(skin)は約65℃の温度で容易に収縮するのに対して、なめしは収縮が起こる点をより高い温度まで上昇させる。この耐湿熱性の向上は、例えば、皮革が、製造工程の一部として湿気や高温にさらされる、幅広い種類のフットウエアを作るとき、皮革に対する重要な要求事項である。
【0007】
今日では、例えば、クロムなめし、植物なめし及びアルデヒドなめしなどの、さまざまななめし剤を用いたいろいろな異なる加工がタンレザーに使用されている。さまざまな種類のなめし(一次なめしと再なめしの両方)は得られる皮革の耐湿熱性のレベルなどを含めて、さまざまな物理的特性を生じさせる。
【0008】
これらの技術の環境に対する影響を特徴付ける重要な基準のすべてを検討するとき、一般的に適用されている示されたなめし技術のいずれも、他のものに対する十分な環境上の利点がない。多くの人々は、タンニンなめし革は好ましい環境プロファイルを持っていると考えるが、これは目の前にある事実の裏付けがない。一方、クロムなめし革は、ミネラル含有量の理由で、あまり望ましくないと考えられることが多い。アルデヒドなめし革は自動車部門の要求を満たし、EN71/3に従う必要がある子ども向け製品内のニッチに適するように思われるが、取り扱い、排水処理、及びより高いエネルギー消費問題を有する可能性がある。さらに、アルデヒドなめしは今や重要な立法審査の対象になりつつある。
【0009】
非金属なめしはまさにアニオン性の皮革を生み出す。他のなめし剤、通常、すべてアニオン性であるシンタン、染料、及び加脂剤などの、皮革加工に使用される他の薬剤の吸尽及び固着は、コラーゲン上の機能部位の数が使い尽くされるにつれてますます難しくなる。これは当業者によく知られており、従って、染料はただコラーゲンマトリックス中に反応部位を有さないので、例えば、無金属皮革表面に真っ黒なアニオン染色をするのが難しい場合がある。
【0010】
皮革の環境への影響のかなりの部分は、大動物の皮(hide)から完成した皮革に至るまでの、製造工程にある。この点で、皮革がどれだけ環境に配慮しているかを決定するのは、化学的選択に加えて、なめし革業者の環境スチュワードシップの実践である。これらの問題に取り組んでいる世界をリードするブランドのいくつかにより取り入れられたモデルに従って、最も重大な潜在的影響を及ぼす製革の以下の領域を特定できる:規制物質の管理、エネルギー消費、大気排出、廃棄物管理(有害及び無害の廃棄物管理)、水の消費、製造工程の管理、排水処理、クロム管理及び材料の追跡可能性。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】米国特許第8372161号明細書
【文献】米国特許第8382857号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、可能な限り上記の問題に対処し、特に廃棄物を減らし、エネルギー及び水の消費量を減らし、規制物質の使用を回避するか又は低減する新しい方法が必要である。本発明の方法は、なめし剤として作用すると同時に、コラーゲン含有繊維原料に色を付け
る反応染料を適用することによって、なめし剤の使用にとって代わるものである。本発明の方法においては、なめし及び染色は未固着染料の良好な吸尽、良好な固着収率及び良好な洗浄性と共に達成される。2つの態様は、目的の二重性のためにコラーゲン上の同じ反応部位を有効に活用する単一の工程による本発明の方法により達成できる。同時に、水熱安定性を所望のレベルまで高める。染色及びなめした繊維製品は、色の濃さ及び染色堅牢度、並びに移染安定性の点で、特に摩擦堅牢度、湿潤堅牢度及び耐汗性並びに移染堅牢度の点で、高い品質要求を満たす。
【課題を解決するための手段】
【0013】
したがって、本発明はコラーゲン含有繊維材料の同時なめし染色方法であって、前記材料は式(1)及び式(2)の群から選ばれる少なくとも1種の反応染料の含有液で処理される、方法に関する。
【化1】
(式中、
、A及びAは、それぞれ互いに独立して、少なくとも1個のスルホ基を有する、モノアゾ発色団の基、ポリアゾ発色団の基、金属錯体アゾ発色団の基、アントラキノン発色団の基、フタロシアニン発色団の基、ホルマザン発色団の基又はジオキサジン発色団の基を表し、
Bは、有機架橋要素を表し、
、Q、Q及びQは、それぞれ互いに独立して、水素原子又は未置換の若しくは置換された炭素原子数1乃至4のアルキル基を表し、
及びGはハロゲン原子、3-カルボキシピリジン-1-イル基又は3-カルバモイルピリジン-1-イル基を表し、
(Z2-3は、2乃至3個の同一の又は異なる繊維反応性基を表し、
及びZは、それぞれ互いに独立して、同一の又は異なる繊維反応性基を表し、
bは、0又は1の数字を表す。)
【0014】
本発明との関係においては、“コラーゲン含有繊維材料”は、動物の皮、例えば、スエード革を製造するための動物の皮の裏面、からの切り離しなど、ほぼ無傷で当初の繊維構造がある生皮、大動物の皮(hide)又は小動物の皮(skin)であると理解されるべきである。さらに、その他の適切なコラーゲン源、皮革の生産で生じた廃棄物や削りくずなどの、廃棄される/低品質のコラーゲン、又は他の天然若しくは合成コラーゲン源からのコラーゲン繊維材料を含む。前記のその他の適切なコラーゲン源からのコラーゲン繊維材料は、例えば、ボンデッドレザーや水流交絡皮革様物を製造するための、追加の加工に適したシート状物や繊維に再形成する前後いずれかにおいて本発明の方法に従って処理される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の方法は、1種又は2種以上、例えば、2種、3種以上の、式(1)及び(2)の群から選ばれる反応染料で行われる。2種、3種以上の反応染料は一般式(1)で定義
された染料の群、若しくは一般式(2)で定義された染料の群のどちらか一方、又は一般式(1)及び式(2)で定義された染料の大群から選ぶことができる。
【0016】
特定の実施態様によると、本発明の方法は少なくとも1種の、式(1)で表される反応染料を用いて行われる。
【0017】
式(2)で表される反応染料において、Q、Q、Q及びQの炭素原子数1乃至4のアルキル基は直鎖又は分岐鎖である。炭素原子数1乃至4のアルキル基は、例えばヒドロキシ基、スルホ基、スルファト基、シアノ基又はカルボキシ基で、さらに置換されていてもよい。次の基は例として言及し得る:メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基及びtert-ブチル基、並びに対応するヒドロキシ-、スルホ-、スルファト-、シアノ-又はカルボキシ-置換された基。置換基として好ましくは、ヒドロキシ基、スルホ基及びスルファト基であり、特にヒドロキシ基及びスルファト基であり、好ましくはヒドロキシ基である。
【0018】
及びQは好ましくは水素原子又は炭素原子数1乃至4のアルキル基であり、特に水素原子である。
【0019】
及びQは好ましくはそれぞれ互いに独立して、水素原子又は未置換の又はヒドロキシ-、スルホ-、スルファト-、シアノ-若しくはカルボキシ-置換された炭素原子数1乃至4のアルキル基である。興味のある実施態様によると、基Q及びQの一方はヒドロキシ-、スルホ-、スルファト-、シアノ-又はカルボキシ-置換された炭素原子数1乃至4のアルキル基であり、基Q及びQの他方は水素原子又は炭素原子数1乃至4のアルキル基であり、特に水素原子である。
【0020】
及びQは特に好ましくはそれぞれ互いに独立して、水素原子又は炭素原子数1乃至4のアルキル基であり、特に水素原子である。
【0021】
及びGは好ましくはそれぞれ互いに独立して、ハロゲン原子、例えば、塩素原子又はフッ素原子であり、特に塩素原子である。
【0022】
有機架橋要素Bとして、例えば、下記が考慮される:
1、2又は3個の、-NH-、-N(CH)-及び-O-からなる群、特に-O-からの要素で中断されていてもよい、未置換であるか又はヒドロキシ基、スルホ基、スルファト基、シアノ基若しくはカルボキシ基で置換された炭素原子数2乃至12のアルキレン基、特に炭素原子数2乃至6のアルキレン基;
Bについて言及したアルキレン基の好ましい置換基はヒドロキシ基、スルホ基及びスルファト基であり、特にヒドロキシ基である;
未置換であるか又は炭素原子数1乃至4のアルキル基、炭素原子数1乃至4のアルコキシ基、炭素原子数2乃至4のアルカノイルアミノ基、スルホ基、ハロゲン原子若しくはカルボキシ基、特に炭素原子数1乃至4のアルキル基で置換されたシクロヘキシレン基などの、炭素原子数5乃至9のシクロアルキレン基;
未置換であるか又はシクロヘキシレン環が炭素原子数1乃至4のアルキル基で置換されたメチレン-シクロヘキシレン-メチレン基;
未置換であるか又は炭素原子数1乃至4のアルキル基、炭素原子数1乃至4のアルコキシ基、炭素原子数2乃至4のアルカノイルアミノ基、スルホ基、ハロゲン原子若しくはカルボキシ基、好ましくは、スルホ基で置換された炭素原子数1乃至6のアルキレンフェニレン基、又は好ましくはフェニレン基。
【0023】
式-N(Q)-B-N(Q)-で表される基として適しているのは、また

【化2】
で表される基である。
【0024】
好ましくは、Bは1、2又は3個の、-NH-、-N(CH)-及び-O-からなる群、特に-O-からの要素で中断されていてもよい、未置換であるか又はヒドロキシ基、スルホ基、スルファト基、シアノ基若しくはカルボキシ基で置換された炭素原子数2乃至12のアルキレン基;又は
未置換であるか又は炭素原子数1乃至4のアルキル基、炭素原子数1乃至4のアルコキシ基、炭素原子数2乃至4のアルカノイルアミノ基、スルホ基、ハロゲン原子若しくはカルボキシ基で置換されたフェニレン基である。
【0025】
Bは特に1、2又は3個の-O-要素で中断されていてもよい、未置換であるか若しくはヒドロキシ基で置換された炭素原子数2乃至6のアルキレン基、又は1若しくは2個のスルホ基で置換されたフェニレン基である。
【0026】
繊維反応性基Z、Z及びZは一般に繊維反応性織物染料の分野で知られており、セルロースのヒドロキシ基、ウール及びシルク中のアミノ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基及びチオール基と反応して共有化学結合を形成できるものを意味すると理解されることが知られている。繊維反応性基は一般に発色団の基A、A及びAに直接又は架橋要素を介して結合される。適切な繊維反応性基Z、Z及びZは、例えば、脂肪族基、芳香族基又は複素環式基上で脱離可能な、少なくとも1種の置換基を含むものであるか、又は言及された基が繊維材料と反応できる基、例えばビニル基を含むものである。そのような繊維反応性基はそれ自体が公知であり、それらの多くは例えばベンカタラマンの“合成染料の化学”第6巻、1-209ページ、アカデミックプレス、ニューヨーク、ロンドン 1972年(Venkataraman “The Chemistry of Synthetic Dyes” volume6,pages1-209,Academic Press,New York,London 1972)又は欧州特許出願公開第625549号明細書及び米国特許第5684138号明細書に記載されている。
【0027】
式(1)で表される染料は2又は3個の、同一の又は異なる繊維反応性基Zを含む。好ましくは、繊維反応性基Zはコラーゲン基質と効果的に架橋させる立体配置で発色団の基Aに結合している、すなわち繊維反応性基Zはコラーゲン基質の遠い部位で効果的に反応するために、互いに遠く離れている。
【0028】
好ましくは繊維反応性基Z、Z及びZはそれぞれ互いに独立して、式
【化3】
[式中、
Halは、塩素原子又は臭素原子を表し、
は、ハロゲン原子、3-カルボキシピリジン-1-イル基又は3-カルバモイルピリジン-1-イル基を表し、
は、独立してXの意味を有するか、又は繊維反応性ではない置換基を表すか、又は式
【化4】
で表される繊維反応性基を表し、
、R1a及びR1bは、互いに独立して、それぞれハロゲン原子又は炭素原子数1乃至4のアルキル基を表し、
は、水素原子、未置換の又はヒドロキシ基、スルホ基、スルファト基、カルボキシル基若しくはシアノ基若しくは基
【化5】
で置換された炭素原子数1乃至4のアルキル基を表し、
は、水素原子、ヒドロキシ基、スルホ基、スルファト基、カルボキシル基、シアノ基、ハロゲン原子、炭素原子数1乃至4のアルコキシカルボニル基、炭素原子数1乃至4のアルカノイルオキシ基、カルバモイル基、又は基-SO-Yを表し、
alk及びalkは、互いに独立して、直鎖状の又は分岐鎖状の炭素原子数1乃至6のアルキレン基を表し、
aryleneは、未置換の又はスルホ基、カルボキシル基、炭素原子数1乃至4のアルキル基、炭素原子数1乃至4のアルコキシ基若しくはハロゲン原子で置換されたフェニレン基又はナフチレン基を表し、
Qは、基-O-又は-NR-(Rは上記で定義されたとおりである)を表し、
Wは、基-SO-NR-、-CONR-又は-NRCO-(Rは上記で定義されたとおりである)を表し、
Yは、ビニル基又は基-CH-CH-U(Uはアルカリ条件下で脱離可能な基を表す)を表し、
は、基-CH(Hal)-CH-Hal又は-C(Hal)=CHを表し、H
alは塩素原子又は臭素原子を表し、
l及びmは、互いに独立して、1乃至6の整数を表し、nは0又は1の数字を表し、
は、ハロゲン原子又は炭素原子数1乃至4のアルキルスルホニル基を表し、
は、ハロゲン原子又は炭素原子数1乃至4のアルキル基を表し、
は、水素原子、シアノ基又はハロゲン原子を表す。]で表される基である。
【0029】
アルカリ条件下で脱離可能な基Uは、例えば、-Cl、-Br、-F、-OSOH、-SSOH、-OCO-CH、-OPO、-OCO-C、-OSO-炭素原子数1乃至4のアルキル基又は-OSO-N(炭素原子数1乃至4のアルキル基)である。Uは好ましくは式-Cl、-OSOH、-SSOH、-OCO-CH、-OCO-C又は-OPOで表される基であり、特に-Cl又は-OSOHであり、特に好ましくは-OSOHである。
【0030】
したがって、適切な基Yの例はビニル基、β-ブロモ-又はβ-クロロエチル基、β-アセトキシエチル基、β-ベンゾイルオキシエチル基、β-ホスファトエチル基、β-スルファトエチル基及びβ-チオスルファトエチル基である。Yは好ましくはビニル基、β-クロロエチル基又はβ-スルファトエチル基であり、特にビニル基又はβ-スルファトエチル基である。
【0031】
、R1a及びR1bは互いに独立して、それぞれ好ましくは水素原子、メチル基又はエチル基であり、特に好ましくは水素原子である。
【0032】
は好ましくは水素原子又はメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基又はtert-ブチル基などの、炭素原子数1乃至4のアルキル基であり、特に好ましくは水素原子、メチル基又はエチル基である。Rは特に好ましくは水素原子である。
【0033】
は好ましくは水素原子である。
【0034】
l及びmは互いに独立して、好ましくは2、3又は4の数字であり、特に好ましくは2又は3の数字である。
【0035】
特に好ましくは、lが3の数字であり、mが2の数字である。
【0036】
繊維反応性ではない置換基Tは、例えば、下記の基である:
ヒドロキシ基;
例えばメトキシ基、エトキシ基、n-若しくはイソプロポキシ基又はn-、sec-、イソ-若しくはtert-ブトキシ基、特にメトキシ基又はエトキシ基の、炭素原子数1乃至4のアルコキシ基;言及された基は未置換であるか又はアルキル部分が、例えば炭素原子数1乃至4のアルコキシ基、ヒドロキシ基、スルホ基若しくはカルボキシル基で置換されている;
例えばメチルチオ基、エチルチオ基、n-若しくはイソプロピルチオ基又はn-ブチルチオ基の、炭素原子数1乃至4のアルキルチオ基;言及された基は未置換であるか又はアルキル部分が、例えば炭素原子数1乃至4のアルコキシ基、ヒドロキシ基、スルホ基若しくはカルボキシル基で置換されている;
アミノ基;
モルホリノ基;
N-モノ-又はN,N-ジ-炭素原子数1乃至6のアルキルアミノ基、好ましくはN-モノ-又はN,N-ジ-炭素原子数1乃至4のアルキルアミノ基;言及された基は未置換であり、中断されていないか又はアルキル部分が酸素原子で中断されているか又はアルキ
ル部分が、例えば炭素原子数2乃至4のアルカノイルアミノ基、炭素原子数1乃至4のアルコキシ基、ヒドロキシ基、スルホ基、スルファト基、カルボキシ基、シアノ基、カルバモイル基若しくはスルファモイル基で置換されている;例として、N-メチルアミノ基、N-エチルアミノ基、N-プロピルアミノ基、N,N-ジ-メチルアミノ基又はN,N-ジ-エチルアミノ基、N-β-ヒドロキシエチルアミノ基、N,N-ジ-β-ヒドロキシエチルアミノ基、N-2-(β-ヒドロキシエトキシ)エチルアミノ基、N-2-[2-(β-ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エチルアミノ基、N-β-スルファトエチルアミノ基、N-β-スルホエチルアミノ基、N-カルボキシメチルアミノ基、N-β-カルボキシエチルアミノ基、N-α,β-ジカルボキシエチルアミノ基、N-α,γ-ジカルボキシプロピルアミノ基、N-エチル-N-β-ヒドロキシエチルアミノ基又はN-メチル-N-β-ヒドロキシエチルアミノ基がある;
未置換の基とシクロアルキル環が、例えば炭素原子数1乃至4のアルキル基、特にメチル基、又はカルボキシ基で置換された基との両方を含む、例えばシクロヘキシルアミノ基の、炭素原子数5乃至7のシクロアルキルアミノ基;
未置換の基とフェニル環が、例えば炭素原子数1乃至4のアルキル基、炭素原子数1乃至4のアルコキシ基、炭素原子数2乃至4のアルカノイルアミノ基、カルボキシ基、カルバモイル基、スルホ基又はハロゲン原子で置換された基との両方を含む、フェニルアミノ基又はN-炭素原子数1乃至4のアルキル-N-フェニルアミノ基、例えば2-,3-若しくは4-クロロフェニルアミノ基、2-,3-若しくは4-メチルフェニルアミノ基、2-,3-若しくは4-メトキシフェニルアミノ基、2-,3-若しくは4-スルホフェニルアミノ基、ジスルホフェニルアミノ基又は2-,3-若しくは4-カルボキシフェニルアミノ基;
未置換であるか又はナフチル環が、例えばスルホ基、好ましくは1乃至3個のスルホ基で置換された基で置換されたナフチルアミノ基、例えば1-若しくは2-ナフチルアミノ基、1-スルホ-2-ナフチルアミノ基、1,5-ジスルホ-2-ナフチルアミノ基又は4,8-ジスルホ-2-ナフチルアミノ基;又は
未置換であるか又はフェニル部分が、例えば炭素原子数1乃至4のアルキル基、炭素原子数1乃至4のアルコキシ基、カルボキシ基、スルホ基又はハロゲン原子で置換されたベンジルアミノ基。
【0037】
繊維反応性ではない基Tは好ましくは炭素原子数1乃至4のアルコキシ基;炭素原子数1乃至4のアルキルチオ基;ヒドロキシ基;アミノ基;アルキル部分がヒドロキシ基、スルファト基又はスルホ基で任意に置換されたN-モノ-又はN,N-ジ-炭素原子数1乃至4のアルキルアミノ基;モルホリノ基;未置換であるか又はフェニル環がスルホ基、カルボキシ基、アセチルアミノ基、塩素原子、メチル基若しくはメトキシ基で置換されかつアルキル基が未置換であるか又はヒドロキシ基、スルホ基若しくはスルファト基で置換されたフェニルアミノ基又はN-炭素原子数1乃至4のアルキル-N-フェニルアミノ基、又は未置換であるか又は1乃至3個のスルホ基で置換されたナフチルアミノ基である。
【0038】
繊維反応性ではない、特に好ましい基Tはアミノ基、N-メチルアミノ基、N-エチルアミノ基、N-β-ヒドロキシエチルアミノ基、N-メチル-N-β-ヒドロキシエチルアミノ基、N-エチル-N-β-ヒドロキシエチルアミノ基、N,N-ジ-β-ヒドロキシエチルアミノ基、N-β-スルファトエチルアミノ基、N-β-スルホエチルアミノ基、モルホリノ基、2-,3-若しくは4-カルボキシフェニルアミノ基、2-,3-若しくは4-スルホフェニルアミノ基又はN-炭素原子数1乃至4のアルキル-N-フェニルアミノ基である。
【0039】
は好ましくはハロゲン原子、例えばフッ素原子又は臭素原子であり、特に好ましくは塩素原子である。
【0040】
、X及びXのハロゲン原子は、例えば、フッ素原子、塩素原子又は臭素原子であり、特に塩素原子又はフッ素原子である。
【0041】
の炭素原子数1乃至4のアルキルスルホニル基は、例えば、エチルスルホニル基又はメチルスルホニル基であり、特にメチルスルホニル基である。
【0042】
の炭素原子数1乃至4のアルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、n-若しくはイソ-プロピル基又はn-、イソ若しくはtert-ブチル基であり、特にメチル基である。
【0043】
及びXは互いに独立して、好ましくは塩素原子又はフッ素原子である。
【0044】
は好ましくはシアノ基又は塩素原子である。
【0045】
Halは、好ましくは臭素原子である。
【0046】
alk及びalkは互いに独立して、例えば、メチレン基、エチレン基、1,3-プロピレン基、1,4-ブチレン基、1,5-ペンチレン基若しくは1,6-へキシレン基又はそれらの分岐した異性体である。
【0047】
alk及びalkは互いに独立して、好ましくはそれぞれ炭素原子数1乃至4のアルキレン基であり、特に好ましくはエチレン基又はプロピレン基である。
【0048】
aryleneは好ましくは未置換であるか又は、例えばスルホ基、メチル基、メトキシ基又はカルボキシ基で置換された1,3-若しくは1,4-フェニレンン基であり、特に好ましくは未置換の1,3-又は1,4-フェニレン基である。
【0049】
Qは好ましくは-NH-又は-O-であり、特に好ましくは-O-である。
【0050】
Wは好ましくは式-CONH-又は式-NHCO-で表される基であり、特に式-CONH-で表される基である。
【0051】
nは好ましくは0の数字である。
【0052】
式(4a)乃至(4f)で表される繊維反応性基は好ましくはWが式-CONH-で表される基であり、R、R及びRがそれぞれ水素原子であり、Qが基-O-又は基-NH-であり、alk及びalkが互いに独立して、それぞれエチレン基又はプロピレン基であり、aryleneが未置換であるか又はメチル基、メトキシ基、カルボキシ基若しくはスルホ基で置換されたフェニレン基であり、Yがビニル基又はβ-スルファトエチル基であり、Yが-CHBr-CHBr又は-CBr=CHであり、そしてnが0の数字であるものである。
【0053】
特に好ましくは、繊維反応性基Z、Z及びZはそれぞれ互いに独立して、式(3a)、(3b)又は(3f)[式中、Yはビニル基、β-クロロエチル基又はβ-スルファトエチル基を表し、R1aは水素原子を表し、lは2又は3の数字を表し、Xはハロゲン原子を表し、Tは炭素原子数1乃至4のアルコキシ基、炭素原子数1乃至4のアルキルチオ基、ヒドロキシ基、アミノ基、未置換の又はアルキル部分がヒドロキシ基、スルファト基若しくはスルホ基で置換されたN-モノ-若しくはN,N-ジ-炭素原子数1乃至4のアルキルアミノ基、モルホリノ基、未置換の又はフェニル環がスルホ基、カルボキシ基、アセチルアミノ基、塩素原子、メチル基若しくはメトキシ基で置換されたフェニル
アミノ基又はN-炭素原子数1乃至4のアルキル-N-フェニルアミノ基(アルキル基は未置換であるか又はヒドロキシ基、スルホ基若しくはスルファト基で置換されている)、又は未置換の若しくは1乃至3個のスルホ基で置換されたナフチルアミノ基を表すか、又はTは式
【化6】
特に(4b’)又は(4c’)
(式中、
Yは、上記で定義されたとおりであり、
は、基-CH(Br)-CH-Br又は-C(Br)=CHを表す。)で表される繊維反応性基を表す。]で表される基である。
【0054】
モノアゾ発色団の基、ポリアゾ発色団の基、金属錯体アゾ発色団の基、アントラキノン発色団の基、フタロシアニン発色団の基、ホルマザン発色団の基又はジオキサジン発色団の基として基A、A及びAは、その基本構造に結合された有機染料中に慣用の置換基を有していてもよい。
【0055】
基A、A及びAにおける置換基の例としては、下記を挙げることができる:
1乃至4個の炭素原子を有する炭素原子数1乃至4のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基又はブチル基などであり、該アルキル基は例えばヒドロキシ基、スルホ基又はスルファト基でさらに置換することが可能である;1乃至4個の炭素原子を有する炭素原子数1乃至4のアルコキシ基、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソポロポキシ基又はブトキシ基などであり、該アルキル基は、例えばヒドロキシ基、スルホ基又はスルファト基でさらに置換することが可能である;未置換であるか又は炭素原子数1乃至4のアルキル基、炭素原子数1乃至4のアルコキシ基、ハロゲン原子、カルボキシ基若しくはスルホ基で置換されたフェニル基;1乃至8個の炭素原子を有するアシルアミノ基、特にそのような炭素原子数2乃至4のアルカノイルアミノ基、例えば、アセチルアミノ基又はプロピオニルアミノ基;未置換であるか又はフェニル環が炭素原子数1乃至4のアルキル基、炭素原子数1乃至4のアルコキシ基、ハロゲン原子若しくはスルホ基で置換されたベンゾイルアミノ基;未置換であるか又はフェニル環が炭素原子数1乃至4のアルキル基、炭素原子数1乃至4のアルコキシ基、ハロゲン原子若しくはスルホ基で置換されたフェニルアミノ基;N,N-ジ-β-ヒドロキシエチルアミノ基;N,N-ジ-β-スルファトエチルアミノ基;スルホベンジルアミノ基;N,N-ジスルホベンンジルアミノ基;アルコキシ基に1乃至4個の炭素原子を有する炭素原子
数1乃至4のアルコキシカルボニル基、例えばメトキシカルボニル基又はエトキシカルボニル基など;1乃至4個の炭素原子を有する炭素原子数1乃至4のアルキルスルホニル基、例えばメチルスルホニル基又はエチルスルホニル基など;アミノ基;シアノ基;ハロゲン原子、例えばフッ素原子、塩素原子又は臭素原子など;カルバモイル基;アルキル基に1乃至4個の炭素原子を有するN-アルキルカルバモイル基、例えばN-メチルカルバモイル基又はN-エチルカルバモイル基など;スルファモイル基;それぞれ1乃至4個の炭素原子を有するN-モノ-又はN,N-ジ-アルキルスルファモイル基、例えばN-メチルスルファモイル基、N-エチルスルファモイル基、N-プロピルスルファモイル基、N-イソプロピルスルファモイル基又はN-ブチルスルファモイル基などであり、該アルキル基は例えばヒドロキシ基又はスルホ基でさらに置換することが可能である;N-(β-ヒドロキシエチル)-スルファモイル基;N,N-ジ(β-ヒドロキシエチル)スルファモイル基;未置換であるか又は炭素原子数1乃至4のアルキル基、炭素原子数1乃至4のアルコキシ基、ハロゲン原子、カルボキシ基若しくはスルホ基で置換されたN-フェニルスルファモイル基;ウレイド基;ヒドロキシ基;カルボキシ基;スルホメチル基又はスルホ基。
【0056】
好ましくは、式(2)で表される染料中のbは1の数字である。
【0057】
、A及びAそれぞれ互いに独立して、モノアゾ発色団の基又はポリアゾ発色団の基を表す場合、特に、下記の基が考慮される:
【0058】
【化7】
[式中、
(R0-3は、炭素原子数1乃至4のアルキル基、炭素原子数1乃至4のアルコキシ基、炭素原子数2乃至4のアルカノイルアミノ基、ウレイド基、スルファモイル基、カルバモイル基、スルホメチル基、ハロゲン原子、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基及びスルホ基からなる群からの、0乃至3個の同一の又は異なる置換基を表し、
(R0-2は、ヒドロキシ基、アミノ基、N-モノ-炭素原子数1乃至4のアルキルアミノ基、N,N-ジ-炭素原子数1乃至4のアルキルアミノ基、炭素原子数2乃至4のアルカノイルアミノ基及びベンゾイルアミノ基からなる群からの、0乃至2個の同一の又は異なる置換基を表し、
式(5)中のqは、2又は3の数字、すなわちqは発色団に結合した2又は3個の結合を表す。]
【化8】
[式中、
(R0-2は、上記で定義されたとおりであり、
式(6)中のqは、2又は3の数字、すなわちqは発色団に結合した2又は3個の結合を表す。]
【化9】
[式中、
(R0-3及び(R0-3は、互いに独立して、炭素原子数1乃至4のアルキル基、炭素原子数1乃至4のアルコキシ基、ハロゲン原子、カルボキシ基及びスルホ基からなる群からの、0乃至3個の同一の又は異なる置換基を表し、
式(7)中のqは、2又は3の数字、すなわちqは発色団に結合した2又は3個の結合を表す。]
【化10】
[式中、
及びR10は、それぞれ互いに独立して、水素原子、炭素原子数1乃至4のアルキル基又はフェニル基を表し、
は水素原子、シアノ基、カルバモイル基又はスルホメチル基を表し、
式(8)中のqは、2又は3の数字、すなわちqは発色団に結合した2又は3個の結合を表す。]
【化11】
[式中、
(R110-3は、(R0-3で定義されたとおりであり、
(R120-3は、炭素原子数1乃至4のアルキル基、炭素原子数1乃至4のアルコ
キシ基、ハロゲン原子、アミノ基、カルボキシ基及びスルホ基からなる群の、0乃至3個の同一の又は異なる置換基を表し、
(R130-3は、(R0-3で定義されたとおりであるか、又はR13は、基-N=N-Ph(Phは未置換の若しくは炭素原子数1乃至4のアルキル基、炭素原子数1乃至4のアルコキシ基、ハロゲン原子、カルボキシ基又はスルホ基で置換されたフェニル基を表す)を表し、
sは、0又は1の数字を表し、
式(9)中のqは、2又は3の数字、すなわちqは発色団に結合した2又は3個の結合を表す。]
【化12】
[式中、
(R110-3及び(R130-3は、互いに独立して、上記で定義されたとおりであり、
(R140-2は、炭素原子数1乃至4のアルキル基、炭素原子数1乃至4のアルコキシ基、ハロゲン原子、カルボキシ基、スルホ基、ヒドロキシ基、アミノ基、N-モノ-炭素原子数1乃至4のアルキルアミノ基、N,N-ジ-炭素原子数1乃至4のアルキルアミノ基、炭素原子数2乃至4のアルカノイルアミノ基及びベンゾイルアミノ基からなる群からの、0乃至2個の同一の又は異なる置換基を表し、
式(10)中のqは、2又は3の数字、好ましくは2の数字、すなわちqは発色団に結合した、2又は3個の結合、好ましくは2個の結合を表す。]
【0059】
、A及びAそれぞれ互いに独立して、ホルマザン染料の基を表す場合、特に、下記の基が考慮される:
【0060】
【化13】
(式中、
ベンゼン核はこれ以上の置換基を含まないか、又は炭素原子数1乃至4のアルキル基、炭素原子数1乃至4のアルコキシ基、炭素原子数1乃至4のアルキルスルホニル基、ハロゲン原子又はカルボキシ基でさらに置換され、
qは、2又は3の数字、すなわちqは発色団に結合した2又は3個の結合を表す。)
【化14】
(式中、
Pcは、金属フタロシアニン基、特に銅又はニッケルフタロシアニン基を表し、
W’は、-OH及び/又は-NR1616’を表し、R16及びR16’は、それぞれ互いに独立して、水素原子又は未置換の又はヒドロキシ基若しくはスルホ基で置換された炭素原子数1乃至4のアルキル基を表し、
15は、水素原子又は炭素原子数1乃至4のアルキル基を表し、
Aは、未置換の又は炭素原子数1乃至4のアルキル基、炭素原子数1乃至4のアルコキシ基、ハロゲン原子、カルボキシ基若しくはスルホ基で置換されたフェニレン基、又は炭素原子数2乃至6のアルキレン基を表し、
kは、1乃至3を表し、
qは、2又は3の数字、すなわちqは発色団に結合した2又は3個の結合を表す。)
【0061】
、A及びAがジオキサジン染料の基を表す場合、特に、下記の基が考慮される:
【0062】
【化15】
(式中、
A’は、未置換の又は炭素原子数1乃至4のアルキル基、炭素原子数1乃至4のアルコキシ基、ハロゲン原子、カルボキシ基若しくはスルホ基で置換されたフェニレン基、又は炭素原子数2乃至6のアルキレン基を表し、
rは、独立して0、1又は2の数字、好ましくは0又は1を表し、
v及びv’は、それぞれ互いに独立して、0又は1の数字を表す。)
【0063】
本発明の特定の実施態様において、A、A及びAはそれぞれ互いに独立して、モノアゾ発色団の基、ポリアゾ発色団の基、金属錯体アゾ発色団の基、ホルマザン発色団の基又はジオキサジン発色団の基である。
【0064】
本発明の特定の実施態様において、A、A及びAはそれぞれ互いに独立して、モノアゾ発色団の基、ポリアゾ発色団の基、又はジオキサジン発色団の基である。
【0065】
本発明の特に好ましい実施態様において、A、A及びAはそれぞれ互いに独立して、モノアゾ発色団の基又はポリアゾ発色団の基である。
興味深いモノアゾ発色団又はポリアゾ発色団は式(5)、(6)、(9)及び(10)で表される基であり、特に式(9)及び(10)で表される基である。
【0066】
特別な関心が与えられるのは下記式で表される反応染料である。
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
【化24】
【化25】
【化26】
【0067】
本発明の特に好ましい実施態様において、式(6a)、(6b)、(9a)、(9b)、(9c)、(9m)、(9n)、(10a)、(10b)、(10c)、(10d)、(10e)、(10f)、(10g)、(10o)、(10p)、(10u)、(10w)、(10x)、(10y)、(10z)及び式(202)で表される染料が使用される。
【0068】
別の実施態様によれば、本発明の方法は少なくとも1種の式
1a-(Z2-3 (1a)
で表される反応染料と少なくとも1種の式
1b-(Z (1b)
で表される反応染料とで実施される。
式中、
1aは、式(9)で表される基を表し、
1bは、式(10)で表される基を表し、
は、独立して2乃至3個の、同一又は異なる式(3a)又は式(3b)で表される繊維反応性基、好ましくは式(3a)で表される基を表し、
式(3a)、(3b)、(9)及び(10)で表される基は、例えば、黒色に染色した/なめした皮革又は皮革様物を得るために定義され、好ましくは上記で定義されたとおりである。
【0069】
式(1)及び(2)で表される反応染料は遊離酸の形態か又は、好ましくは、その塩の形態のいずれかである。考慮される塩は、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩及びアンモニウム塩又は有機アミンの塩である。ナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩及びアンモニウム塩並びにモノ-、ジ-及びトリ-エタノールアミンの塩、好ましくはナトリウム塩及びカリウム塩が例として挙げられる。
【0070】
式(1)及び(2)で表される反応染料は既知であるか又は例えば、通常のジアゾ化反応、カップリング反応及び縮合反応によって、既知化合物と同様に得ることができる。式(9)で表されるポリアゾ染料は、例えば、米国特許第6160101号明細書及び米国特許第5817779号明細書に記載されている。式(10)で表されるポリアゾ染料は、例えば、西独国特許出願公開第960534号明細書(6及び7頁)、国際公開第2012/136428号、欧州特許出願公開第1608708号明細書、米国特許第6537332号明細書及び米国特許第4622390号明細書に記載されている。式(11)で表されるホルマザン染料は、例えば、国際公開第2017/129297号に記載されている。式(13)で表されるジオキサジン染料は、例えば、米国特許第5772698号明細書及び米国特許第7905928号明細書に記載されている。前記繊維反応性染料は織物染色の技術分野で周知である。
【0071】
一実施態様において、本発明の方法は水性液中で実施される。水性液という用語は純水性加工液、又は部分的な水/溶剤に基づく系(a partial water/solvent based system)を含むことを意図しており、溶剤は、例えば、水と混和する又は混和しない有機溶剤である。特定の実施態様において、水性液は溶剤を含まない水である。
【0072】
水性液の代わりに他の非水性液、例えば、再利用可能な完全溶剤に基づく系、共晶溶媒、例えば、塩化コリン、又は超臨界液体、例えば、超臨界COが考慮され得る。加水分解を減らして、特に、水性廃棄物量をなくせるので、非水系は魅力的である。
【0073】
水性液のpHは通常、pH10を超えない、好ましくは9.5であるが、特定の状況下でpH10を超えて、例えば、pH12.6に達してもよい。特定の実施態様によれば、本発明の方法は、pH7乃至10の水性液中でのコラーゲン含有繊維材料の処理を含む。より具体的には、液のpHは8乃至9.5の範囲であり、特に8.5乃至9.1の範囲である。アルカリ性のpHでは、染料はコラーゲン繊維に共有結合的に固着し、コラーゲン基質を架橋すると同時に染色する。
【0074】
基本的に、コラーゲン含有繊維材料及び染料を含有する水性液のpHを調整するために
、任意の所望のアルカリ及び緩衝系を使用することができる。例として、炭酸ナトリウム(ソーダ灰)、炭酸カリウム及び重炭酸ナトリウムなどのアルカリ金属炭酸塩及び重炭酸塩、また例えば、水溶液として、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物、メタけい酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム又はピロリン酸カリウムなどのピロリン酸塩、リン酸三カリウム、リン酸三ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三カリウム、エデト酸ナトリウム、EDTA四ナトリウム、ホウ砂/水酸化ナトリウム水溶液緩衝液及びリン酸緩衝液がある。好ましいのは、重炭酸ナトリウム、ソーダ灰及び水酸化ナトリウムであり、特に重炭酸ナトリウム及びソーダである。
【0075】
架橋及び染色を達成するのに必要な温度は、有利には50℃以下、特に45℃以下、より好ましくは40℃以下である。有利には、温度は20℃乃至50℃の範囲であり、好ましくは25℃乃至45℃の範囲であり、特に25℃乃至40℃の範囲である。
【0076】
コラーゲン含有繊維材料は、pH及び温度に応じて、例えば0.5乃至12時間までの間、適切に処理される。特に、8乃至9.5の範囲におけるより高いpH値では、必要な処理時間は0.5乃至8時間の範囲である。
【0077】
なめされていない大動物の皮(hide)又は小動物の皮(skin)は、等電点から離れるにつれて、さまざまな程度に膨張する傾向がある。膨張はコラーゲン繊維内の反発によって生み出される。本発明の方法による同時なめし染色は、例えば、無機塩を水性液に添加することによって、膨張を制御又は抑制するために、少なくとも1種の無機塩、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム(グラウバー塩)及び硫酸カリウム、好ましくは硫酸ナトリウム及び硫酸カリウムの存在下で適切に実施される。
【0078】
本発明の方法を実施する場合、大動物の皮(hide)又は小動物の皮(skin)の膨張は、カルボン酸の少なくとも1種の塩を水性液に添加することにより、同様に制御又は抑制され得る。カルボン酸の少なくとも1種の塩は上記に示した少なくとも1種の無機塩の代わりに又は、その代わりに、上記に示した少なくとも1種の無機塩と組み合わせて若しくは混合して適用することができる。カルボン酸の適切な塩は、例えば、ギ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、アジピン酸二ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)四ナトリウム、N,N-ビス(カルボキシラトメチル)-グルタミン酸四ナトリウム、フマル酸二ナトリウム、グルタル酸二ナトリウム、マレイン酸二ナトリウム、マロン酸二ナトリウム、ニトリロ三酢酸三ナトリウム、コハク酸二ナトリウム及びシュウ酸二ナトリウムの群から選ばれ、好ましくはギ酸ナトリウム及びエチレンジアミン四酢酸(EDTA)四ナトリウムから選ばれる。同様に、カリウム塩又は他の適切な塩がカルボン酸の示された塩のナトリウム塩の代わりに、本発明の方法を実施するために考慮される。
【0079】
特定の実施態様において、本発明の方法は硫酸ナトリウム(グラウバー塩)とギ酸ナトリウム又はエチレンジアミン四酢酸(EDTA)四ナトリウムとの混合物の存在下で実施される。
【0080】
式(1)及び(2)の群から選ばれる少なくとも1種の反応染料によるコラーゲン含有繊維材料の処理に使用される液は、一般になめし効果に寄与しない、他の通常の酸又は直接染料を含んでいてもよい。液はまた、他の通常の反応染料を含んでいてもよい。他の通常の染料の割合は、例えば、液中の染料の総量に基づいて、0.5乃至50質量%の範囲であり、好ましくは1乃至20質量%の範囲である。
【0081】
染料の量は、使用されるコラーゲン含有繊維材料のピックル質量に基づいて、通例、少なくとも0.5質量%であり、しばしば少なくとも1.0質量%であり、特に2質量%で
ある。特定の実施態様において、染料の量はコラーゲン含有繊維材料のピックル質量に基づいて少なくとも3質量%である。染料は、一般にコラーゲン含有繊維材料のピックル質量に基づいて、15質量%までの量で使用される。有利には、本発明の方法に従って使用される染料の量は、使用されるコラーゲン含有繊維材料のピックル質量に基づいて、0.5%乃至15%の範囲であり、好ましくは1.0%乃至10%の範囲であり、特に2%乃至8%の範囲である。コラーゲン含有繊維材料の乾燥質量に基づいて、染料の量は、適切には1.0%乃至50%であり、好ましくは3%乃至30%であり、特に5%乃至20%である。
【0082】
適切には、皮革の製造に使用されるプロセス薬品の量は、大動物の皮(hide)の質量を参照することにより定量化される。しかし、大動物の皮(hide)の含水量、したがって、その質量は、例えば、硬化、水戻し、塗装、石灰漬け、裏打ち、脱灰、酵解、浸酸、脱脂、及びなめしの、個々のさまざまな処理工程の間は変化することが知られている。したがって、プロセス薬品の量はコラーゲン含有繊維材料の乾燥質量を参照できる。あるいは、ある処理工程後の大動物の皮(hide)の質量、例えば、浸酸後のコラーゲン含有繊維材料の質量、すなわち上記のようなコラーゲン含有繊維材料のピックル質量を参照できる。浸酸後、大動物の皮(hide)は、通常、大動物の皮(hide)の質量に基づいて、約30%のコラーゲンと約70%の水で構成される。
【0083】
液はまた、通常のアニオン性染色助剤、非イオン界面活性物質も含んでいてもよく、また再なめしに通常使用されるなめし材料、例えば、ポリマーの再なめし材料、合成の再なめし材料、植物の再なめし材料及び加脂剤も含んでいてもよい。再なめしは、本発明の方法(染色/なめし)によるコラーゲン含有材料の処理に続いて、同じ浴中で又は、好ましくは、別の浴中で、適切に実施される。
【0084】
通常、本発明による方法は、第1段階において、コラーゲン含有繊維材料を、pH7未満、例えば、pH5.0乃至5.5の染料含有液で処理することにより、段階的に実施される。興味深い実施態様において、第1段階としての染料含有液による処理は、pH7をわずかに超える、例えば、pH7.5乃至8.5又はpH8.0乃至8.5で実施される。この段階は、コラーゲン含有繊維材料の断面に染料を均一に分散させる役割を果たし、これは、より厚い大動物の皮(hide)や小動物の皮(skin)の場合に重要である。続いて、第2段階において、染料は、少なくとも8、例えば、8乃至9.5の範囲、特に8.5乃至9.1の範囲のpH値で上記の方法で固着される。固着段階の前に分散段階を設けることなく、一段階過程で染色を実施することも可能である。
【0085】
一般に、染料は液からよく吸尽され、固着収率は高い、すなわち染料は液からほぼ定量的に吸尽されて、コラーゲンに固着し、洗浄は必ずしも必要ではない。適切には、染色及びなめされた材料の洗浄は、残存する化学的に未固着の染料を除去するために、染色/なめし作業後に実施される。後の洗浄段階は、染色及びなめされた材料を1回以上、例えば1乃至4回、水で洗い流すことにより実施される。水の量は一般的に、例えば、コラーゲン材料の質量、例えば、ピックル質量に基づいて、100%乃至500%の範囲である。単一の洗浄段階の時間は、通常、5分乃至60分の範囲内であり、特に20乃至35℃の温度で10分乃至30分の範囲内だろう。有利には、洗浄は、市販のソーピング剤又は後洗浄剤(afterclearing agent)、例えば、ハンツマンのERIOPON(登録商標)WFEの存在下で実施される。適切には、少量の酸、例えば、ギ酸を第1洗浄段階の洗浄水に加えて、ソーピング剤を用いた第2の洗浄前に、コラーゲン材料のpHを約pH7.5まで下げる。上記の洗浄段階の一つ以上が、再なめし及び加脂前に実施されることが好ましい。有利には、洗浄後かつさらなる処理前に、コラーゲン材料のpHをpH約5.5乃至6にする。
【0086】
染色/なめし及び再なめし作業後に、一般に皮革を所望の触覚性に調整する目的で加脂作業をする。しかしながら、再なめし及び加脂は1つの処理段階で実施することもできる。加脂段階はウエットエンド作業のいかなる段階でも実施でき、ウエットエンド作業の終わりに実施することが好ましい。
【0087】
一般に、加脂だけでなく再なめしも作業の終わりに酸性化により固着される、すなわち染色/なめし及び任意の再なめしと加脂との後に、最終的な酸性化が行われる。通常は、酸性化のため、水性処理浴のpHは酸、例えば、ギ酸の添加により3.0乃至3.5の値に調整される。
【0088】
本発明の方法によるコラーゲン含有繊維材料の処理(再なめし、加脂及び任意の後処理)は従来どおりの方法、例えば、ドラム中、又はパドル中で行う。そのような方法は従来技術、例えば、「Bibliothek des Leders」、3巻(なめし剤、なめし及び再なめし)[1985]、4巻(製革における脱脂、加脂及び疎水化)[1987]及び5巻(皮革の染色)[1987]Umschau Verlag、「Leather Technicians Handbook」、1983、J.H.Sharphouse著、Leather Producers Association出版、及び「Fundamentals of Leather Manufacturing」、1993、E.Heidenmann著、Eduard Roether KG出版に広範に記述されている。
【0089】
本発明の方法に従って、染色してなめしたコラーゲン含有材料は、色合いの深さが非常に高い時でさえ優れた堅牢度を示す皮革又は皮革模造品を生成する。摩擦堅牢度、並びに特に洗浄堅牢度、汗堅牢度及び移染堅牢度が特に優れているが、これは通常、染色された皮革の場合には不可能ではないにしても達成が非常に困難である。本発明の方法に従って得られた皮革は、水熱安定性の向上を呈し、また移染堅牢度試験において、高湿度で高温の時でさえ、接触材料の汚染が実質的にないことを呈する。したがって、本発明のもう一つの目的は、本発明の方法によって得られた製品、すなわち皮革又は皮革模造品である。
【0090】
本発明の方法に従って得られた皮革又は例えば、ボンデッドレザーファイバーなどの、皮革模造品は、例えば、履物、衣服、自動車、航空、手に付ける衣類(handwear)、携帯用通信装置及び手持ち式コンピュータ装置、並びに家具業界のいかなる皮革又は皮革様製品を製造するために使用できる。個々の製品に要求される助剤、加脂剤、疎水化剤及び再なめし用材料による処理によって、個々の皮革又は皮革様製品に要求される触覚、機械的及び物理的特性を従来どおりの方法で達成できる。日光堅牢度は通常のUV吸収剤、例えば、ハンツマンのUV-Fast(登録商標)W LIQによる処理によって向上することができる。したがって、本発明のまたもう一つの目的は、皮革又は皮革様製品、例えば、自動車の座席、自動車の計器パネル、ドア張り及び天井、靴、手袋、ジャケット、ズボン、バイクウェア、バッグ、アクセサリー、高級な皮革商品、携帯用通信装置及び手持ち式コンピュータ装置用のカバー、椅子並びに長椅子の製造のための、本発明の方法によって得られる皮革又は皮革模造品の使用である。
【実施例
【0091】
下記の実施例は本発明を説明するのに役立つ。別途指示されない限り、温度は摂氏の度で示され、部は質量部であり、百分率は質量パーセントに関する。質量部はキログラム対リットルの比における体積部に関する。下記の百分率はすべて、原料、例えば、生皮、大動物の皮(hide)又は小動物の皮(skin)のピックル質量に基づいている。
【0092】
方法:
染色してなめした皮革の水熱安定性は、皮革技術者化学者協会(SLTC)によって定
められたmethod SLP18(IUP/16;BS3144:method17)に基づくLeather Shrinkage Temperature Indicator machine(Ionic Instruments 1978 Ltd)により、試験した。水堅牢度及び汗堅牢度は、それぞれSLF412(IUF421)及びSLF426(IUF426)に従って試験した。
【0093】
実施例1:

なめしと染色
本発明の方法を行うために、ピックルから開始することは一般的ではないが、この時点で生皮が保存状態に保たれていたので、ピックル品を使用した。ピックルしたヤギ皮を0.15%のEusapon(登録商標)OC(BASFの脱脂剤)及び1.5%の重炭酸ナトリウムを含む150%のNaCl水溶液(8%)で中性化し、一晩置いた。液のpHは5.0乃至5.4の範囲であった。このように処理したピックルヤギ皮を水抜き、pH5.0で100%の水で2回洗浄して、小動物の皮(skin)の脱酸に使用した塩化ナトリウム並びに遊離した天然の油脂、他の塩及び構造中から遊離したタンパク質の破片を除去した。洗浄したヤギ皮を30℃の温度で30%の水を含むドラムに入れ、pHをpH5.0に調整して、81部の式(10g)で表される染料及び19部の式(9b)で表される染料を含む3%の染料混合物を加えた。ドラムを90分間稼働して、染料浸透を達成した。続いて、8%の硫酸ナトリウムを加えて、ドラムをもう30分間稼働した。その後、炭酸ナトリウム(ソーダ灰)の水溶液と重炭酸ナトリウムの水溶液とを次のように段階的に加えた:(i)5%の重炭酸ナトリウム水溶液 0.5%、ドラムを10分間稼働;(ii)5%の重炭酸ナトリウム水溶液 0.5%、ドラムを10分間稼働;(iii)5%の炭酸ナトリウム水溶液 0.25%、ドラムを10分間稼働;(iv)5%の炭酸ナトリウム水溶液 0.25%、ドラムを10分間稼働;(v)20%の炭酸ナトリウム水溶液 0.25%、ドラムを10分間稼働。次に、液の温度を40℃まで上げた。定期的にチェックして炭酸ナトリウムで調整することにより、pHを8.8乃至9.0に維持した。ドラムをもう6時間稼働した。このように処理したヤギ皮を水抜きし、35℃で20分間、1%のギ酸(10%溶液)を2回添加した100%の水で洗浄し、pHを7.5まで下げた。処理して洗浄したヤギ皮を、次に20分間、ERIOPON(登録商標)WFEを含む水浴を用いた洗浄段階におき、水抜きし、10分間真水で洗浄した。このように処理したヤギ皮を24時間熟成した。黒色に染色してなめした皮革が得られ、該皮革は84℃の熱水安定性と水堅牢度及び汗堅牢度5とを示した。
【0094】
再なめし:
染色してなめした皮革を45℃で150%の水に浸し、3分割のギ酸を加えて、pHを5.2乃至5.5に調整した。このように処理した皮革を水抜きして、洗浄し、次に40℃で75%の水に浸した。8%の、市販のスルホン系シンタンを加えて、浸漬した皮革を30分間処理し、続いて10%の、市販のアニオン性加脂剤を添加し、60分間さらに処理した。ギ酸を55分かけて連続的に加えて、3.0乃至3.3のpHにした。処理をこのpHでさらに30分間を続けた。製品を水抜きしてしてきれいな液で洗浄し、その後水抜きし、乾燥させる前に24時間保管した。
【0095】
実施例2乃至14:
実施例1に記載された3%の染料混合物の代わりに、実施例2乃至14に記載されたような染料又は染料混合物の量を使用したことを除いて、実施例1の手順を繰り返した。
【0096】
実施例2:67部の式(10f)で表される染料、17部の式(9m)で表される染料並びに16部の、式(10a)、(10b)、(10c)及び(10d)で表される染料の混合物を含む3%の染料混合物。黒色に染色してなめした皮革が得られ、該皮革は83
℃の熱水安定性を有していた。
【0097】
実施例3:74部の式(10f)で表される染料、15部の式(9a)で表される染料及び11部の式(10e)で表される染料を含む3%の染料混合物。黒色に染色してなめした皮革が得られ、該皮革は82℃の熱水安定性を有していた。
【0098】
実施例4:78部の式(10f)で表される染料及び22部の式(9a)で表される染料を含む3%の染料混合物。黒色に染色してなめした皮革が得られ、該皮革は85℃の熱水安定性を有していた。
【0099】
実施例5:3%の式(9b)で表される染料。オレンジ色から橙褐色に染色してなめした皮革が得られ、該皮革は85℃の熱水安定性を有していた。
【0100】
実施例6:3%の式(10x)で表される染料。緋色に染色してなめした皮革が得られ、該皮革は86℃の熱水安定性を有していた。
【0101】
実施例7:3%の式(6a)で表される染料。赤色に染色してなめした皮革が得られ、該皮革は84℃の熱水安定性を有していた。
【0102】
実施例8:3%の式(202)で表される染料。黄色に染色してなめした皮革が得られ、該皮革は86℃の熱水安定性を有していた。
【0103】
実施例9:3%の式(10e)で表される染料。赤色に染色してなめした皮革が得られ、該皮革は79℃の熱水安定性を有していた。
【0104】
実施例10:3%の式(9m)で表される染料。オレンジ色に染色してなめした皮革が得られ、該皮革は80℃の熱水安定性を有していた。
【0105】
実施例11:3%の式(9a)で表される染料。オレンジ色から橙褐色に染色してなめした皮革が得られ、該皮革は80℃の熱水安定性を有していた。
【0106】
実施例12:3%の式(10f)で表される染料。濃紺-黒色に染色してなめした皮革が得られ、該皮革は82℃の熱水安定性を有していた。
【0107】
実施例13:3%の式(10g)で表される染料。濃紺に染色してなめした皮革が得られ、該皮革は83℃の熱水安定性を有していた。
【0108】
実施例14:3%の式(10o)で表される染料。濃紺に染色してなめした皮革が得られ、該皮革は81℃の熱水安定性を有していた。
【0109】
実施例15:

なめしと染色:
ピックルしたヤギ皮を1.5%の重炭酸ナトリウムを含む150%のNaCl水溶液(8%)で中性化し、一晩置いた。液のpHは5.4乃至5.6の範囲であった。このように処理したピックルヤギ皮を水抜きし、pH5.5で100%の水で2回洗浄して、小動物の皮(skin)の脱酸に使用した塩化ナトリウム並びに遊離した天然の油脂、他の塩及び構造中から遊離したタンパク質の破片を除去した。洗浄したヤギ皮を30℃の温度で30%の水を含むドラムに入れ、pHをpH5.5に調整して、81部の式(10g)で表される染料及び19部の式(9b)で表される染料を含む3.5%の染料混合物を加え
た。ドラムを90分間稼働して、染料浸透を達成した。続いて、8%のエチレンジアミン四酢酸(EDTA)四ナトリウムを加えて、ドラムをもう30分間稼働した。その後、炭酸ナトリウム(ソーダ灰)の水溶液と重炭酸ナトリウムの水溶液とを次のように段階的に加えた:(i)15%の重炭酸ナトリウム水溶液 3%を30分かけて複数回に分けて加えた、及び(ii)15%の炭酸ナトリウム水溶液 2%を30分かけて複数回に分けて加えた。次に、液の温度を35℃まで上げた。定期的にチェックして炭酸ナトリウムで調整することにより、pHを8.9乃至9.1に維持した。ドラムをもう8時間稼働した。このように処理したヤギ皮を水抜きし、40℃で20分間、150%の水で洗浄して、水抜きし、30分間、1.5%のクエン酸及び1.0%のクエン酸三ナトリウムを添加した100%の水で再び洗浄し、pHを約6.0まで下げた。処理して洗浄したヤギ皮を、次に最終的な水抜き、15分間、100%の水を用いた洗浄段階においた。このように処理したヤギ皮を24時間熟成した。黒色に染色してなめした皮革が得られ、該皮革は84℃の熱水安定性を示した。
【0110】
再なめし:
染色してなめした皮革を50℃で75%の水に浸し、8%の、市販のスルホン系シンタンを加えた。浸漬した皮革を30分間処理し、続いて1%の、市販の充填剤及び10%の、高アニオン性皮革に適切な市販のアニオン性加脂剤を添加した。処理を45分間続けた。これら化学物質の固着は、3.0乃至3.3のpHに調整するために、120分かけて少量のギ酸を加えることで達成した。処理をさらに30分間続けた。このように処理した皮革を水抜きして、50℃で15分間100%の水で洗浄した。その後、皮革を水抜きし、75%の水及びハンツマンの1%のALBAFIX(登録商標)ECOを加えることによって、30℃で30分間処理した。製品を水抜きし、乾燥させる前に24時間保管した。
【0111】
実施例16:

なめしと染色
ピックルした牛皮を3%の重炭酸ナトリウムを含む150%のNaCl水溶液(8%)で中性化し、一晩置いた。液のpHは6.8乃至7.0の範囲であった。このように処理したピックル牛皮を水抜きし、pH5.5で100%の水で2回洗浄して、大動物の皮(hide)の脱酸に使用した塩化ナトリウム並びに遊離した天然の油脂、他の塩及び構造中から遊離したタンパク質の破片を除去した。それから、大動物の皮(hide)の断面積を通じて7.8乃至8.0のpHにするために、洗浄した牛皮を100%の水及び2%の重炭酸ナトリウムの未使用のフロート中で処理し、3時間続けた。それから、処理した牛皮を水抜きし、100%の水で1回洗浄し、アルカリ性の重炭酸ナトリウムを取り除いたが、牛皮はpH8.0の状態にしておいた。それから、牛皮を35℃の温度で15%の水を含むドラムに入れ、75部の式(10g)で表される染料及び25部の式(9b)で表される染料を含む4.75%の染料混合物を加えた。ドラムを90分間稼働して、染料浸透を達成した。続いて、5%の硫酸ナトリウム及び2.5%のギ酸ナトリウムを加えて、ドラムをもう30分間稼働した。その後、炭酸ナトリウム(ソーダ灰)の水溶液と重炭酸ナトリウムの水溶液とを次のように段階的に加えた:(i)15%の重炭酸ナトリウム水溶液 2%を30分かけて複数回に分けて加えた、及び(ii)15%の炭酸ナトリウム水溶液 1%を30分かけて複数回に分けて加えた。定期的にチェックして炭酸ナトリウムで調整することにより、pHを8.9乃至9.1に維持した。ドラムをもう8時間稼働した。このように処理した牛皮を水抜きし、40℃で20分間、150%の水と3%の硫酸とで洗浄して、pHを7.0乃至7.2まで下げて、水抜きし、30分間、0.5%の硫酸を添加した100%の水で再び洗浄し、pHを約6.0まで下げた。処理して洗浄した大動物の皮(hide)を、次に最終的な水抜き、15分間、100%の水を用いた洗浄段階においた。このように処理した大動物の皮(hide)を24時間熟成した。黒
色に染色してなめした皮革が得られ、該皮革は80℃の熱水安定性を示した。
【0112】
実施例17:

なめしと染色
本実施例17は、大動物の皮(hide)又は小動物の皮(skin)が酵解段階後、加工を開始しているかのように加工を実施し、該大動物の皮(hide)又は小動物の皮(skin)は既に断面のpHが8.0であり、なめし工程を妨げるいかなる2価の陽イオン又は他の種を含まないものである。牛皮を35℃の温度で15%の水を含むドラムに入れ、78部の式(10g)で表される染料及び22部の式(9b)で表される染料を含む4.5%の染料混合物を加えた。ドラムを90分間稼働して、染料浸透を達成した。続いて、5%の硫酸ナトリウム及び2.5%のギ酸ナトリウムを加えて、ドラムをもう30分間稼働した。その後、炭酸ナトリウム(ソーダ灰)の水溶液と重炭酸ナトリウムの水溶液とを次のように段階的に加えた:(i)15%の重炭酸ナトリウム水溶液 1.5%を30分かけて複数回に分けて加えた、及び(ii)15%の炭酸ナトリウム水溶液 1%を30分かけて複数回に分けて加えた。定期的にチェックして炭酸ナトリウムで調整することにより、pHを8.9乃至9.1に維持した。ドラムをもう8時間稼働した。このように処理した牛皮を水抜きし、40℃で20分間、150%の水と3%の硫酸とで洗浄して、pHを7.0乃至7.2に下げて、水抜きし、30分間、0.5%の、市販のソーピング剤又は後洗浄剤(afterclearing agent)、例えば、ハンツマンのERIOPON(登録商標)WFEを添加した100%の水で再び洗浄した。それから、処理して洗浄した大動物の皮(hide)を最終的な水抜き、15分間、100%の水を用いた洗浄段階においた。このように処理した大動物の皮(hide)を24時間熟成した。黒色に染色してなめした皮革が得られ、該皮革は80℃の熱水安定性を示した。
【0113】
方法16及び17に対する再なめし:

染色してなめした皮革を30℃で50%の水に浸し、4%の、市販のスルホン系又はジフェニル系シンタン及び4%の市販の植物なめし材、例えば、タラを加えた。浸漬した皮革を30分間処理し、続いて3%の、市販の充填剤と15%の、高アニオン性皮革に適切な市販のアニオン性加脂剤とを添加し、さらに50℃で50%の水を入れた。処理を45分間続けた。これら化学物質の固着は、3.0乃至3.3のpHに調整するために、60分かけて少量のギ酸を加えることで達成した。処理をさらに30分間続けた。このように処理した皮革を水抜きして、50℃で15分間100%の水で洗浄した。製品を水抜きし、乾燥させる前に24時間保管した。