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特許7324783積層グラフェンをベースとする熱伝導性フィルムおよびフィルムを製造する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-02
(45)【発行日】2023-08-10
(54)【発明の名称】積層グラフェンをベースとする熱伝導性フィルムおよびフィルムを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/194 20170101AFI20230803BHJP
   B32B 5/16 20060101ALI20230803BHJP
   B32B 7/027 20190101ALI20230803BHJP
   B32B 7/03 20190101ALI20230803BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20230803BHJP
   H01L 23/36 20060101ALI20230803BHJP
【FI】
C01B32/194
B32B5/16
B32B7/027
B32B7/03
B32B9/00 A
H01L23/36 D
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020568218
(86)(22)【出願日】2018-06-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-02
(86)【国際出願番号】 SE2018050593
(87)【国際公開番号】W WO2019235983
(87)【国際公開日】2019-12-12
【審査請求日】2021-06-07
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520474428
【氏名又は名称】エスエイチティー スマート ハイ-テック エービー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】リュウ, ヨーアン
(72)【発明者】
【氏名】ワン, ナン
【審査官】磯部 香
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0381832(US,A1)
【文献】国際公開第2016/185688(WO,A1)
【文献】特開2009-295921(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0070612(US,A1)
【文献】特開2014-200926(JP,A)
【文献】特開2014-022450(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/194
B32B 5/16
B32B 7/027
B32B 7/03
B32B 9/00
H01L 23/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直方向に整列した積層グラフェンをベースとする熱伝導性フィルムを製造する方法であって、
第1のグラフェンフィルム(200)を用意すること(100);
第2のグラフェンフィルム(202)を用意すること(102);
第1および第2のグラフェンフィルムの表面(206、208)の上に、第1のグラフェンフィルムを第2のグラフェンフィルムに固定することにより第1および第2のグラフェンフィルム間の粘着強度を改善するよう構成されている、Al 、SiO 、Fe 、NiO 、Cr 、ZnO、Ag、Al、Cu、Ni、Cr、Ti、Mo、Fe、MgおよびLiのうちの1つから形成される針状ナノ粒子であるナノ粒子(204)の層を配列すること(104);
第1のグラフェンフィルム上に粘着剤(210)を配列すること(106);
粘着剤およびナノ粒子の層によって、第1のグラフェンフィルムに第2のグラフェンフィルムを貼り付けること(108);
ナノ粒子の層を配列する工程(104)、粘着剤を配列する工程(106)、およびグラフェンフィルムを貼り付ける工程(108)を繰り返すことによって、所定数のグラフェンフィルム層を含む層状フィルム(212)を形成すること(110)
圧力および熱をかけて粘着剤を硬化させることによって、層状フィルムを積層し、これにより積層フィルム(216)を形成すること(112);ならびに
フィルムの表面平面に対して一定の角度で積層フィルムを裁断し、垂直方向に整列した積層グラフェンをベースとする熱伝導性フィルム(218)を形成すること(114)
を含む方法。
【請求項2】
針状ナノ粒子が、5~100nmの範囲の長さを有する、請求項に記載の方法。
【請求項3】
積層フィルムが、5°~85°の範囲の角度で裁断される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
層状フィルムを積層することが、10~300分間の範囲の期間、80℃~200℃の範囲の温度までフィルムを加熱することを含む、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
層状フィルムを積層することが、0.1~3MPaの範囲の圧力をかけることを含む、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
粘着剤及び/又はナノ粒子が、グラフェンフィルムに印刷されるか、計量分配されるか、または噴霧される、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
グラフェンフィルムが、隣接グラフェン層間に乱層整列を有する複数のグラフェン層を含む、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
フィルムの底部表面から上部表面に到達するグラフェンフィルムの複数の層を含む、積層グラフェンをベースとする熱伝導性フィルムであって、グラフェンフィルムの各層が、ナノ粒子の層を含み、ナノ粒子が、第1のグラフェンフィルムを第2のグラフェンフィルムに固定することにより第1のグラフェンフィルムと第2のグラフェンフィルムとの間の粘着強度を改善するよう構成されており、ナノ粒子は、Al、SiO、Fe、NiO、Cr、ZnO、Ag、Al、Cu、Ni、Cr、Ti、Mo、Fe、MgおよびLiのうちの1つから形成される針状ナノ粒子を含み、グラフェンフィルムの各層が、粘着剤層によってグラフェンフィルムの隣接層から隔離されており、グラフェンフィルムの各層が熱伝導性フィルムの表面平面に対して傾斜している、熱伝導性フィルム。
【請求項9】
グラフェンフィルムの傾斜層が、熱伝導性フィルムの表面に対して、5°~85°の範囲の角度を有する、請求項に記載の熱伝導性フィルム。
【請求項10】
グラファイトフィルムが、隣接グラフェン層間に乱層整列を有する複数のグラフェン層を含む、請求項またはに記載の熱伝導性フィルム。
【請求項11】
熱伝導性フィルム中の粘着剤の比率が、10重量%~90重量%の範囲である、請求項から10のいずれか一項に記載の熱伝導性フィルム。
【請求項12】
粘着剤が、ポリウレタン、シリコーンゴム、ポリイミド、エポキシ樹脂およびポリアクリル樹脂のうちの少なくとも1つからなる、請求項から11のいずれか一項に記載の熱伝導性フィルム。
【請求項13】
請求項から12のいずれか一項に記載の熱伝導性フィルムの複数の層を含むサーマルインターフェースマテリアル(400)であって、サーマルインターフェースマテリアルの表面平面に対する熱伝導性フィルムのグラフェンフィルム層の傾斜角度が、サーマルインターフェースマテリアルの底部側から見て、熱伝導性フィルムの層毎に減少している、サーマルインターフェースマテリアル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層グラフェンをベースとする熱伝導性フィルムおよびこのようなフィルムを製造する方法に関する。特に、本発明は、グラフェンフィルムの傾斜層を含む熱伝導性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
現代の電子デバイスおよびシステムの持続的な開発に伴い、その出力密度の向上により、一層高い動作温度を引き起こす。したがって、高性能および長寿命信頼性を確実にするために必要とされる、大きな熱量を除去するための効率的な熱管理が極めて重要になっている。熱散逸にとって非常に重要な要素である従来のサーマルインターフェースマテリアル(TIM)の熱伝導率は、垂直方向において、多くの場合、最大で10W/mK未満、通常、約4または5W/mKである。したがって、この問題を解決するため、炭素材料(例えば、グラファイトナノプレートレット、カーボンナノチューブおよび炭素繊維)をベースとする高性能TIMを開発するために、多大な努力が行われてきた。
【0003】
グラフェンをベースとする熱導電性粘着剤中のグラフェンの搭載量を増加させることによってその熱伝導率を向上するために、かなり多くの検討が費やされてきた。しかし、グラフェン含有量が高すぎる場合、製造プロセスにとって実用的ではない。
【0004】
2次元の六角形格子で配列した、たった1つの原子層からなる炭素の驚くべき同素体であるグラフェンは、超高速電子移動度、超高機械強度、および非常に優れた熱性能(面内熱伝導率=5000W/mK)などのいくつかの特有の性質を示す。その上、多様な機能、とりわけ電子デバイスにおける用途を満たすよう、グラフェンを特定の構造に配列させることが必要である。
【0005】
TIMの場合、垂直方向における高い熱伝導率が必要である。したがって、接触固体界面の正常方向への熱散逸を容易にする、垂直方向に整列させた構成にグラフェンを組み立てることが必須である。整列させたグラフェンシートを圧縮することによって、垂直方向に整列したグラファイトフィルムを調製することが既に報告されている。しかし、自動的におよびコスト面で効率的にこのようなタイプの材料を作製することは困難である。さらに、グラファイトの剛性が高いことおよびその層間結合強度が弱いため、垂直方向に組み立てられたグラファイトコンポジットは、高い硬度を示し、組み立て方向に垂直な方向では脆い。
【0006】
したがって、高い面外熱伝導率を有するサーマルインターフェースマテリアルの有用性を高めるため、グラフェンを垂直方向に整列するための改善方法が望まれている。
【発明の概要】
【0007】
先行技術の上記および他の欠点を鑑み、本発明の目的は、熱伝導性フィルムの製造方法の改善を提供することである。
【0008】
本発明の第1の態様によれば、垂直方向に整列した積層グラフェンをベースとする熱伝導性フィルムを製造する方法が提供される。第1のグラフェンフィルムを用意すること;第2のグラフェンフィルムを用意すること;第1のグラフェンフィルムの表面に、第1のグラフェンフィルムと第2のグラフェンフィルムとの間の粘着強度を改善するよう構成されているナノ粒子の層を配列させること;第1のグラフェンフィルムに粘着剤を配列すること;粘着剤およびナノ粒子の層によって、第1のグラフェンフィルムに第2のグラフェンフィルムを貼り付けること;ナノ粒子の層を配列する工程、粘着剤を配列する工程、およびグラフェンフィルムを貼り付ける工程を繰り返すことによって、所定数のグラフェンフィルム層を含む層状フィルムを形成すること;ならびに、圧力および熱を適用して粘着剤を硬化させることによって層状フィルムを積層し、それにより積層フィルムを形成すること;積層フィルムをフィルムの表面平面に関して一定の角度で裁断して、垂直方向に整列した積層グラフェンをベースとする熱伝導性フィルムを形成することを含む、方法。
【0009】
得られた熱伝導性フィルムが垂直方向に整列していることとは、該フィルムが、フィルムの表面平面に対して傾斜しているグラフェンフィルム層を備えており、グラフェンフィルムの各層が、熱伝導性フィルムを通り、熱伝導性フィルムの底部表面から上部表面にまで到達していることを意味する。
【0010】
本グラフェンフィルムは、グラフェンフィルムを形成するよう配列されている複数のグラフェン層を含むと考えることができる。本グラフェンフィルムは、例えば、2~100μmの範囲の平均外側サイズを有するグラフェンフレークから形成され得る。したがって、本グラフェンフィルムは、連続グラフェン層であることを必要としない。代わりに、本グラフェンフィルムは、グラフェン層の積層体からなってもよく、したがって、本グラフェンフィルムは、グラフェンをベースとするフィルムと考えることができる。このようなグラフェンフィルム中のグラフェンフレークの側面部サイズにより、該材料中の結晶粒界の量が決まる。結晶粒界は、フォノン散乱をかなり増大させて、それにより熱伝導率を低下させ得るので、グラフェンフレークの外側サイズを増大させて、結晶粒界の量を低減させ、これによりグラフェンフィルムの面内熱伝導率を改善することが望ましい。
【0011】
本発明は、有利で、適合性のある性質を有する熱伝導性フィルムが、記載されている方法により製造され得ることを具現化したことに基づいている。粘着剤とグラフェンフィルムとの比を制御することによって、得られた熱伝導性フィルムの可撓性および引張強度を、制御することができ、公知の垂直方向に整列したグラフェンまたはグラファイトをベースとするフィルムに比べてかなり向上することができる。実際に、粘着剤のグラフェンに対する比の選択に応じて、フィルムの可撓性と熱的性質と間のトレードオフがあり得る。さらなる利点は、面内熱伝導率と面外熱伝導率との間の関係は、グラフェン層の傾斜角度を制御することによって制御し得ることである。したがって、記載されているフィルムは、垂直方向と、フィルムの面の選択した方向の両方に、高い熱輸送をもたらすことができる。
【0012】
熱伝導性フィルム中のグラフェン層の傾斜角度のために、フィルムが変形している間の亀裂形成を防止することができる。垂直方向、すなわちフィルムの表面に対して力をかけると、力の一部は、グラフェンフィルムを介して接着層にまで通過し、接着層により吸収される。この構造体により多くの力がかけられるほど、より多くの力が接着層に運ばれて、この層により吸収され、したがって、グラフェンフィルム構造体の損傷が低減する。力が解放された後に、各接着層に蓄えられたエネルギーにより、組み立てられた全構造体を元の位置へと復元させる。
【0013】
本発明の一実施形態によれば、ナノ粒子の層は、第1のグラフェンフィルムを第2のグラフェンフィルムに固定するよう構成されている針状ナノ粒子を含んでもよい。ナノ粒子の固定の使用は、グラフェンフィルムの隣接層間の粘着をかなり増強するよう働くことができることが見出された。ナノ粒子はまた、クモ様形状を有していてもよく、この場合、いくつかの針状構造体が、中央部から突き出ている。
【0014】
本発明の一実施形態によれば、ナノ粒子は、有利には、Al、SiO、Fe、NiO、Cr、ZnO、Ag、Al、Cu、Ni、Cr、Ti、Mo、Fe、MgおよびLiのうちの1つから形成される針状ナノ粒子とすることができる。上述の材料を使用して、固定に使用するのに好適なナノ構造体を形成することができることが見出された。
【0015】
本発明の一実施形態によれば、針状ナノ粒子は、5~100nmの範囲の長さを有することができる。したがって、クモ様構造体は、約5~200nmの範囲の直径を有する。
【0016】
本発明の一実施形態によれば、積層フィルムは、該フィルムの表面平面に対して、5°~85°の範囲の角度で裁断される。これにより、角度が低い場合、積層フィルムは、主に、垂直方向に熱を伝導する一方、角度が高い場合、熱伝導は、主に、水平方向になる。したがって、垂直方向に整列した積層グラフェンをベースとする熱伝導性フィルムの性質は、フィルム形成の際に使用される裁断角度を制御することによって制御され得る。
【0017】
本発明の一実施形態によれば、層状フィルムの積層は、10~300分間の範囲の期間、80℃~200℃の範囲の温度にフィルムを加熱して、粘着剤を硬化させて、最終フィルムを形成することを含む。必要な時間および温度は、粘着剤の選択に基づいて決定され得る。
【0018】
本発明の一実施形態によれば、層状フィルムの積層は、0.1~3MPaの範囲の圧力をかけることを含む。最終フィルムの性質は、積層に使用されるパラメーターに依存するであろう。
【0019】
本発明の一実施形態によれば、粘着剤は、グラフェンフィルム上に印刷されても、計量分配されても、または噴霧されてもよい。印刷は、例えば、スクリーン印刷またはステンシル印刷を使用して行われてもよい。さらに、粘着剤が堆積されている表面のサイズに関わらず、記載されている方法のすべてが、原理的に行われ得る。それにより、積層構造体の任意のサイズが取り扱われ得る、容易に規模変更可能な方法が提供される。
【0020】
本発明の一実施形態によれば、ナノ粒子は、粘着剤上に印刷される、計量分配される、または噴霧される。
【0021】
本発明の一実施形態によれば、積層フィルムは、ワイヤ裁断または鋸裁断を使用して裁断されてもよい。最終フィルムの厚さは、原理的に、任意に選択されてもよい。例えば、厚さは、10μm~1cmの範囲であってもよい。
【0022】
本発明の一実施形態によれば、グラフェンフィルムは、有利には、隣接グラフェン層間に乱層整列を有する複数のグラフェン層を備えてもよい。隣接グラフェン層間に乱層整列を有するグラフェンフィルムまたはグラファイトフィルムは、公知のグラフェンをベースとする熱拡散性材料およびグラファイト熱拡散性材料に比べて、面内熱伝導率の大きな改善を示すことが見出された。改善された熱伝導率は、乱層構造体の場合のより弱い層間結合の結果として、フォノン散乱の低減により説明され得る。比較すると、秩序よく整列したグラフェン層間の強力な層間結合により、フォノンの深刻な界面散乱がもたらされ、グラファイトフィルムの熱伝導率を低減させることができる。
【0023】
本発明の一実施形態によれば、積層フィルム中の粘着剤の比率は、10重量%~90重量%の範囲である。それによって、フィルムの可撓性および熱的性質は、粘着剤とグラフェンフィルム層との比を制御することによって、制御することができる。高い可撓性を有する熱伝導性フィルムは、フィルムが、外部圧にさらされる用途、および一層剛直なフィルムが、亀裂のリスクをもたらす用途に必要とされ得る。
【0024】
本発明の一実施形態によれば、粘着剤は、ポリウレタン、シリコーンゴム、ポリイミド、エポキシ樹脂およびポリアクリル樹脂のうちの少なくとも1つからなることができる。特に、グラフェンフィルムを一緒に接合させるために使用される粘着剤は、高弾性という性質を有する、シリコーンゴムをベースとするポリマーとすることができる。シリコーンゴムをベースとするポリマーの使用により、組み立てたグラフェンフィルム構造体の可撓性および圧縮比を改善することができる。
【0025】
本発明の第2の態様によれば、フィルムの底部表面から上部表面に到達する複数の、グラフェンフィルムの層を含む、積層グラフェンをベースとする熱伝導性フィルムであって、グラフェンフィルムの各層が、粘着剤層によってグラフェンフィルムの隣接層から隔離されており、グラフェンフィルムの各層が、熱伝導性フィルムの表面平面に対して傾斜している、熱伝導性フィルムが提供される。
【0026】
本発明の第2の態様の効果および特徴は、本発明の第1の態様と関連して、上で記載されている効果および特徴とかなり類似している。
【0027】
さらに、本発明の特徴、および本発明による利点は、添付の特許請求の範囲および以下の記載を検討すると明白となろう。当業者は、本発明の異なる特徴を組み合わせて、本発明の範囲から逸脱することなく、以下に記載されているもの以外の実施形態を生成することができることを認識している。
【0028】
これより、本発明のこれらの態様および他の態様を、本発明の例となる実施形態を示す添付の図面を参照しながら一層詳細に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の実施形態による方法の一般的な工程を概説するフロー図である。
図2A-B】本発明の実施形態による方法の工程を示す概略図である。
図2C-D】本発明の実施形態による方法の工程を示す概略図である。
図2E-F】本発明の実施形態による方法の工程を示す概略図である。
図2G-H】本発明の実施形態による方法の工程を示す概略図である。
図3】本発明の実施形態による方法の詳細を示す概略図である。
図4】本発明の実施形態による熱伝導性フィルムを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
これより、現在のところ好ましい本発明の実施形態が示されている、添付の図面を参照しながら、本発明を、本発明のこれ以降に一層完全に記載する。しかし、本発明は、多数の異なる形態で具現化され得、本明細書において記載されている実施形態への限定として解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、完璧性および完全性のために提示されており、当業者に本発明の範囲を完全に伝達するものである。同様の参照特徴は、同様の要素の全体を指す。
【0031】
図1は、本発明の実施形態による方法の一般的な工程を概説するフローチャートであり、本方法は、該方法の工程を概略的に例示している図2をさらに参照して記載される。
【0032】
本方法は、図2Aに例示されている通り、第1のグラフェンフィルム200を用意する100、および第2のグラフェンフィルム202を用意する102を含む。本文脈において使用するのに好適なグラフェンフィルムは、水性懸濁液中酸化グラフェンシートを用意すること;基材を用意すること;基材上に懸濁液を提供すること;基材上の懸濁液を加熱して、自己集合によりグラフェンをベースとするフィルムを形成すること;基材からグラフェンをベースとするフィルムを剥離すること;不活性雰囲気(inert ambient)中、2800~3300℃の範囲の温度で、グラフェンをベースとするフィルムに熱アニーリングを行うこと;およびグラフェンをベースとするフィルムを、50~300MPaの範囲の圧力で圧縮することにより形成することができる。上記の方法によって、大規模で実現可能な、超高面内熱伝導率を有する自立グラフェンフィルム(GF)を生成する方法が提供される。高い面内熱伝導率を有するグラフェンフィルムのさらなる詳細、およびこのようなフィルムを製造する方法は、PCT/SE2017/050185に見出すことができる。
【0033】
グラフェンフィルム200、202はまた、隣接グラフェン層間に乱層整列を有する複数のグラフェン層を備えてもよい。隣接グラフェン層間に乱層整列を有するグラファイトフィルムは、他の公知のグラフェンをベースとする熱拡散性材料およびグラファイト熱拡散性材料に比べて、面内熱伝導率の改善を示し得ることが見出された。隣接グラフェン層間に乱層整列を有する複数のグラフェン層を含むグラフェンフィルムのさらなる詳細は、PCT/SE2018/000009に見出すことができる。
【0034】
次に、図2Bに例示されている通り、本方法は、第1および第2のグラフェンフィルム200、202の表面206、208の上にナノ粒子204の層を配列する104を含み、ナノ粒子204は、第1のグラフェンフィルム200と第2のグラフェンフィルム202との間の粘着強度を改善するよう構成されている。図2Cは、第1のグラフェンフィルム200上に粘着剤210を配列する以下の工程106を例示している。
【0035】
ナノ粒子204の層は、各グラフェンフィルム200、202と粘着剤210と粘着を改善することによって、第1のグラフェンフィルム200を第2のグラフェンフィルム200に固定するよう構成されている、針状ナノ粒子204を含むことが有利である。針状ナノ粒子は、5~100nmの範囲中の長さ、および5:1~50:1の範囲の長さと幅の間のアスペクト比を有する、1つの細長い構造体からなることができる。
【0036】
しかし、固定に使用可能なナノ粒子はまた、複数の、多少なりとも無作為に連結された針様ナノ構造体を含んで、例えば、クモ様ナノ構造体を形成することができる。さらに、記載されているナノ粒子のタイプは、例えば、Al、SiO、Fe、NiO、Cr、ZnO、Ag、Al、Cu、Ni、Cr、Ti、Mo、Fe、MgおよびLiから形成され得る。ナノ粒子と粘着剤のどちらも、グラフェンフィルム上に印刷されても、計量分配されても、または噴霧されてもよい。
【0037】
ナノ粒子204および粘着剤210が、一旦、グラフェンフィルムに堆積されると、第2のグラフェンフィルム202が、粘着剤210およびナノ粒子204の層によって、第1のグラフェンフィルム200に貼り付けられて108、図2Dに例示されている層状フィルム212をもたらす。ナノ粒子204は、グラフェンフィルム表面の不規則な部分および不均質な部分に固定された状態になり、ひいては、粘着剤210は、グラフェンフィルム表面とナノ粒子の両方への接合を形成する。それによって、第1のグラフェンフィルム200と第2のグラフェンフィルム202との間の粘着は、粘着剤しか使用されていない場合と比べて、かなり改善されている。
【0038】
例示的な例によれば、10μmの厚さを有するグラフェンフィルムは、シリコーンゴムの群に属する、ポリジメチルシロキサンの形態の粘着剤によってコーティングされた。テトラヒドロフランは、ポリジメチルシロキサンの粘度を調節するための溶媒として使用した。テトラヒドロフラン中のポリジメチルシロキサンの濃度は、25~75重量%の範囲である。堆積工程は、フィルムコーターを使用して行った。ポリジメチルシロキサンのコーティング厚さは、コーティング用棒のスレッド深さ(thread depth)によって画定される。粘着剤のコーティング後、グラフェンフィルムを1~20分間、約50~70℃まで加熱して、テトラヒドロフランを除去した。粘着剤層の厚さは、最終積層構造体における、グラフェンフィルムと粘着剤との所望の比率に基づいて選択されてもよい。
【0039】
上記の記載は、互いに、2枚のグラフェンフィルム202、204を貼り付ける方法を概説している。次に、本方法は、ナノ粒子の層を配列する工程104、粘着剤を配列する工程106、およびグラフェンフィルムを貼り付ける工程108を繰り返すことによって、所定数のグラフェンフィルム層を含む層状フィルム212を形成すること110を含む。図2Eに例示されているいくつかの層状フィルム212を組み合わせることによって、または記載されているナノ粒子204および粘着剤210によって互いに貼り付けたグラフェン層の成長中の積層体にこの時点で1つのグラフェン層を貼り付けることによって、所望の厚さの層状フィルム214を実現することができる。
【0040】
層の所望の数を含む層状フィルム214は、図2Fに例示されている通り、加圧器具215を使用して圧力をかけ、加熱して、粘着剤210を硬化し、これによって積層フィルム216を形成することによって積層される112。この圧力は、0.1~3MPaの範囲である。組み立てられた積層フィルム216は、続いて、硬化させるために炉内に入れられる。この硬化温度は、80~200℃の範囲であり、硬化時間は、10~300分間の範囲である。
【0041】
最終工程は、フィルムの表面平面216に対して一定の角度で積層フィルム214を裁断し114、垂直方向に整列した積層グラフェンをベースとする熱伝導性フィルム218を形成することを含む。裁断は、例えば、他の裁断方法も可能な場合でさえも、ワイヤ裁断またはダイヤモンド鋸を使用して行われてもよい。フィルムが垂直方向に整列しているとは、ここでは、各グラフェンフィルム層が、積層フィルム218を介して、フィルム218の底部表面220から上部表面222に到達していることを意味する。
【0042】
積層フィルム214を傾斜したホルダー中に配列させて、垂直方向に裁断することによって、このフィルムを裁断することも可能であり、これにより、製造手順を単純化することができる。切断後、積層フィルム218の表面220、222は、有利には、研磨されて、その表面を滑らかにしてもよい。最終フィルムの表面粗さは、好ましくは1μm未満となる218である。
【0043】
図3は、互いに貼り付けた2枚のグラフェンフィルム200、202の例示を拡大したものであり、ここでは、どのように、ナノ粒子204が、2枚のグラフェンフィルム200、202の表面に貼り付けられ、粘着剤210に埋め込まれているかが示されている。したがって、ナノ粒子204は、ナノ粒子204の長さよりもかなり厚くなり得る、粘着剤210中に存在することになろう。
【0044】
図4は、上記の熱伝導性フィルムの複数の層を含むサーマルインターフェースマテリアル400であって、サーマルインターフェースマテリアル400の表面平面402に対する熱伝導性フィルムのグラフェンフィルム層の傾斜角度406a~cが、サーマルインターフェースマテリアルの底部側404から見て、熱伝導性フィルムの層毎に低下している、サーマルインターフェースマテリアル400を例示している。それによって、熱伝達の主な方向は、サーマルインターフェースマテリアル400が貼り付けられている表面からの距離に伴い変化する。特に、図4に例示されている構造において、熱伝達の主な方向は、表面からの距離の増加に伴い、垂直方向から水平方向に変わる。これにより、特定の用途の要件に適合可能な、熱伝導の一層の制御および調節が可能となる。
【0045】
本発明が、その例示する実施形態を参照しながら記載されている場合でさえも、多数の異なる変形、修正などが、当業者に明白となろう。同様に、本方法の一部は、省略されていてもよく、入れ替えられてもよく、または様々な方法で手を加えられてもよく、本方法は、依然として、本発明の機能性を発揮することが可能であることに留意すべきである。
【0046】
さらに、特許請求された発明を実施する際に、当業者によって、図面、本開示および添付の特許請求の範囲の検討から、開示した実施形態に対する変形形態が理解され、行われ得る。特許請求の範囲において、用語「含む」とは、他の要素または工程を排除するものではなく、「1つの(a)」または「1つの(an)」という不定冠詞は、複数を排除するものではない。ある尺度が、相互に異なる独立した特許請求の範囲に列挙されているという単なる事実は、利益をもたらすために、これらの尺度の組合せを使用することはできないということを示すものではない。
図1
図2A-B】
図2C-D】
図2E-F】
図2G-H】
図3
図4