(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-02
(45)【発行日】2023-08-10
(54)【発明の名称】アンテナ装置および無線通信装置
(51)【国際特許分類】
H01Q 9/42 20060101AFI20230803BHJP
H01Q 1/24 20060101ALI20230803BHJP
【FI】
H01Q9/42
H01Q1/24 Z
H01Q1/24 C
(21)【出願番号】P 2021552016
(86)(22)【出願日】2019-10-15
(86)【国際出願番号】 JP2019040504
(87)【国際公開番号】W WO2021074969
(87)【国際公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】318012780
【氏名又は名称】FCNT株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古賀 洋平
(72)【発明者】
【氏名】殿岡 旅人
(72)【発明者】
【氏名】▲崎▼田 聡史
(72)【発明者】
【氏名】伴 泰光
(72)【発明者】
【氏名】吉川 学
(72)【発明者】
【氏名】篠島 貴裕
【審査官】赤穂 美香
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-520345(JP,A)
【文献】特開平03-253106(JP,A)
【文献】国際公開第2011/024280(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 9/42
H01Q 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナ装置であって、
グランド基板と、
前記グランド基板に設けられる給電点と、
一方の端部が前記給電点と電気的に接続し、前記グランド基板に対して平行な板状の第1導体素子と、
前記第1導体素子と前記グランド基板との間に配置され、一方の端部が前記グランド基板と電気的に接続し、前記グランド基板に対して平行な板状の第2導体素子と、
前記第1導体素子の他方の端部と前記第2導体素子の他方の端部とを電気的に接続する接続部と、を備え、
前記第1導体素子の幅は、前記第2導体素子の幅よりも広く、
前記第1導体素子および第2導体素子の長さは、前記アンテナ装置を動作させる電波の波長の1/2である、
アンテナ装置。
【請求項2】
前記接続部の長さは、前記アンテナ装置を動作させる電波の波長の1/50以下である、
請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記給電点と前記第1導体素子との間にインダクタおよびキャパシタの少なくとも一方を設ける、
請求項1または2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記第2導体素子と前記グランド基板との間に、インダクタおよびキャパシタの少なくとも一方を設ける、
請求項1から3のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記アンテナ装置は、携帯端末装置に実装され、
前記第1導体素子の少なくとも一部は、前記携帯端末装置の外装である金属フレームによって形成される、
請求項1から4のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記アンテナ装置は、携帯端末装置に実装され、
前記第2導体素子の少なくとも一部は、Laser Direct Structuring(LDS)またはフレキシブル基板を用いて形成される、
請求項1から5のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項7】
前記第1導体素子および前記第2導体素子の少なくとも一方は、メアンダ形状に形成される、
請求項1から6のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項8】
前記第1導体素子の他方の端部に接続され、前記グランド基板と平行な板状の第3導体素子をさらに備え、
前記第3導体素子の長さは、前記第3導体素子をアンテナとして動作させる電波の波長の1/4以下である、
請求項1から7のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項9】
前記給電点と前記第3導体素子との間にインダクタおよびキャパシタの少なくとも一方を設ける、
請求項8に記載のアンテナ装置。
【請求項10】
前記グランド基板に接続された第4導体素子をさらに備え、
前記第4導体素子の長さは、前記第4導体素子をアンテナとして動作させる電波の波長の1/4以下である、
請求項1から9のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項11】
前記第1導体素子の一方の端部および前記接続部の少なくとも一方から、前記アンテナ装置を動作させる電波の波長の1/50以下の距離に、接地された金属部材がさらに設けられる、
請求項1から10のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載のアンテナ装置を実装した、
無線通信装置。
【請求項13】
無線通信装置であって、
請求項11に記載のアンテナ装置を実装し、
前記金属部材は前記無線通信装置の外装である、
無線通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ素子および無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車載用アンテナを備えた車両、スマートフォン、タブレット型コンピュータ、携帯電話等の無線通信装置において、アンテナの高効率化が求められている。
【0003】
例えば、特許文献1では、折り返した形状のモノポールアンテナが開示されている。このモノポールアンテナは、折り返し前と折り返し後の導体素子がいずれも同一平面上(グランドパターンから同じ高さ)に設けられる。このモノポールアンテナでは、グランドパターンに接続されてから折り返し前までの線幅を太くすることで、グランドパターンが小型化された場合におけるアンテナのインピーダンス調整を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のアンテナでは、アンテナ近傍に金属が存在すると、当該金属の影響を受けてアンテナの放射効率が低下する問題があった。
【0006】
開示の技術の1つの側面は、アンテナ近傍に金属が存在しても、アンテナの放射効率の低下を抑制するアンテナ装置および当該アンテナ装置を実装した無線通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
開示の技術の1つの側面は、次のようなアンテナ装置によって例示される。本アンテナ装置は、グランド基板と、前記グランド基板に設けられる給電点と、一方の端部が前記給電点と電気的に接続し、前記グランド基板に対して平行な板状の第1導体素子と、前記第1導体素子と前記グランド基板との間に配置され、一方の端部が前記グランド基板と電気的に接続し、前記グランド基板に対して平行な板状の第2導体素子と、前記第1導体素子の他方の端部と前記第2導体素子の他方の端部とを電気的に接続する接続部と、を備え、前記第1導体素子の幅は、前記第2導体素子の幅よりも広い。
【発明の効果】
【0008】
開示の技術は、アンテナ近傍に金属が存在しても、アンテナの放射効率の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態に係るアンテナの一例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るアンテナを+Y方向から平面視した場合において、第1導体素子と第2導体素子の位置関係を例示する図である。
【
図3】
図3は、第1比較例に係るアンテナの一例を示す側面図である。
【
図4】
図4は、第2比較例に係るアンテナの一例を示す側面図である。
【
図5】
図5は、第3比較例に係るアンテナの一例を示す図である。
【
図6】
図6は、第4比較例に係るアンテナの一例を模式的に示す側面図である。
【
図7】
図7は、第5比較例に係るアンテナの一例を模式的に示す側面図である。
【
図8】
図8は、アンテナの給電点近傍に金属を置いた状態を例示する図である。
【
図9】
図9は、アンテナの折り返し部近傍に金属を置いた状態を例示する図である。
【
図10】
図10は、アンテナの給電点近傍および折り返し部近傍の両方に金属を置いた状態を例示する図である。
【
図15】
図15は、第1導体素子と第2導体素子の幅の比率と放射効率との関係を例示する図である。
【
図16】
図16は、第1比較例に係るアンテナにおける電流分布を例示する図である。
【
図17】
図17は、実施形態に係るアンテナにおける電流分布を例示する図である。
【
図18】
図18は、第6比較例に係るアンテナの一例を模式的に示す側面図である。
【
図19】
図19は、実施形態に係るアンテナにおける電流の向きを模式的に示す図である。
【
図20】
図20は、第4比較例に係るアンテナにおける電流の向きを模式的に示す図である。
【
図21】
図21は、第5比較例に係るアンテナにおける電流の向きを模式的に示す図である。
【
図22】
図22は、第6比較例に係るアンテナにおける電流の向きを模式的に示す図である。
【
図23】
図23は、第1変形例に係るアンテナを模式的に示す図である。
【
図24】
図24は、第2変形例に係るアンテナを模式的に示す図である。
【
図25】
図25は、第3変形例に係るアンテナを模式的に示す図である。
【
図26】
図26は、第4変形例に係るアンテナを模式的に示す図である。
【
図27】
図27は、第5変形例に係るアンテナを模式的に示す図である。
【
図28】
図28は、第6変形例に係るアンテナを模式的に示す図である。
【
図29】
図29は、第7変形例に係るアンテナを模式的に示す図である。
【
図30】
図30は、実施形態に係るアンテナをスマートフォンに適用した構成を例示する図である。
【
図31】
図31は、適用例に係るスマートフォンが実装するアンテナのS11を例示する図である。
【
図32】
図32は、適用例に係るスマートフォンが実装するアンテナのスミスチャートを例示する図である。
【
図33】
図33は、適用例に係るスマートフォンが実装するアンテナのS11を例示する図である。
【
図34】
図34は、適用例に係るスマートフォンが実装するアンテナのトータル効率を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態について説明する。以下に示す実施形態の構成は例示であり、開示の技術は実施形態の構成に限定されない。本実施形態に係るアンテナ装置は、例えば、以下の構成を備える。
本実施形態に係るアンテナ装置は、
グランド基板と、
前記グランド基板に設けられる給電点と、
一方の端部が前記給電点と電気的に接続し、前記グランド基板に対して平行な板状の第1導体素子と、
前記第1導体素子と前記グランド基板との間に配置され、一方の端部が前記グランド基板と電気的に接続し、前記グランド基板に対して平行な板状の第2導体素子と、
前記第1導体素子の他方の端部と前記第2導体素子の他方の端部とを電気的に接続する接続部と、を備え、
前記第1導体素子の幅は、前記第2導体素子の幅よりも広く、
前記第1導体素子および第2導体素子の長さは、前記アンテナ装置を動作させる電波の波長の1/2である。
【0011】
グランド基板は接地された基板である。第2導体素子は、グランド基板と電気的に接続されることで、接地される。第2導体素子は、第1導体素子と前記グランド基板との間に配置される。すなわち、第1導体素子と第2導体素子は、平面視において重なるように配置される。第1導体素子が給電点2に接続され、かつ、第1導体素子の方が第2導体素子よりも広く形成されるため、第1導体素子には第2導体素子よりも強い電流が流れやすい。そのため、グランド基板には、第1導体素子を流れる電流とは逆向きの電流がグランド基板にも生じる。第1導体素子を流れる電流と逆向きの電流は、第2導体素子を流れる電流と同じ向きである。そのため、グランド基板上における第2導体素子を流れる電流とは逆向きの電流が弱められる。このような特徴を有するアンテナ装置は、熱損失によるアンテナの放射効率低下を低減することができる。また、本明細書において説明するように、アンテナ装置の近傍に金属が存在しても、アンテナ装置の放射効率の低減を抑制できるとともに、さらなる放射効率の向上も望むことができる。
【0012】
また、前記接続部の長さは、前記アンテナ装置を動作させる電波の波長の1/50以下としてもよい。すなわち、接続部の長さがこのように規定することで、第1導体素子と第2導体素子の間隔も、アンテナ装置を動作させる電波の波長の1/50以下としてもよい。
【0013】
本アンテナ装置は、さらに、次の特徴を備えてもよい。前記給電点と前記第1導体素子との間にインダクタおよびキャパシタの少なくとも一方を設ける。このような特徴を備えるアンテナ装置は、キャパシタの静電容量やインダクタのインダクタンスを適宜調整することで、第1導体素子および第2導体素子の物理的な長さを変更することなく、アンテナ装置を共振させる周波数を変更することができる。また、インダクタやキャパシタは、前記第2導体素子と前記グランド基板との間に設けてもよい。
【0014】
本アンテナ装置は、さらに、次の特徴を備えてもよい。前記アンテナ装置は、携帯端末装置に実装され、前記第1導体素子の少なくとも一部は、前記携帯端末装置の外装である金属フレームによって形成される。このような特徴を備えるアンテナ装置は、携帯端末装置の外装である金属外装フレームを第1導体素子の少なくとも一部として用いることで、金属フレームが区画する領域内においてアンテナ装置が占める領域を減少させることができる。そのため、このような特徴を備えるアンテナ装置は、携帯端末装置を小型化させたり、より多くの電子部品を携帯端末装置に実装させたりすることができる。また、前記第2導体素子の少なくとも一部は、Laser Direct Structuring(LDS)またはフレキシブル基板を用いて形成されてもよい。
【0015】
本アンテナ装置は、さらに、次の特徴を備えてもよい。前記第1導体素子および前記第2導体素子の少なくとも一方は、メアンダ形状に形成される。第1導体素子および第2導体素子の少なくとも一方をメアンダ形状とすることで、アンテナ装置の一層の小型化が図れる。
【0016】
本アンテナ装置は、さらに、次の特徴を備えてもよい。前記第1導体素子の他方の端部に接続され、前記グランド基板と平行な板状の第3導体素子をさらに備え、前記第3導体素子の長さは、前記第3導体素子をアンテナとして動作させる電波の波長の1/4以下であってもよい。また、前記グランド基板に接続された第4導体素子をさらに備え、前記第4導体素子の長さは、前記第4導体素子をアンテナとして動作させる電波の波長の1/4以下であってもよい。このような特徴を備えることで、アンテナ装置は複数の周波数(マルチバンド)で動作することができる。
【0017】
本アンテナ装置は、さらに、次の特徴を備えてもよい。前記第1導体素子の一方の端部および前記接続部の少なくとも一方から、前記アンテナ装置を動作させる電波の波長の1/50以下の距離に、接地された金属部材がさらに設けられる。第1導体素子の一方の端部(給電点に接続される箇所)および接続部の少なくとも一方の近傍に金属部材が設けられることで、本アンテナ装置の放射効率を高めることができる。
【0018】
また、開示の技術は、上記少なくともいずれかの特徴を備えるアンテナ装置を実装した無線通信装置であってもよい。本無線通信装置において、前記金属部材は前記無線通信装置の外装であってもよい。
【0019】
<実施形態>
以下、図面を参照して実施形態についてさらに説明する。
図1は、実施形態に係るアンテナの一例を示す斜視図である。アンテナ1は、給電線11、第1導体素子12、第2導体素子13、折り返し部14、グランド線15およびグランド基板3を含む。以下、本明細書において、
図1の右手前側を+X方向、
図1の左奥側を-X方向、
図1の上を+Y方向、
図1の下を-Y方向と称する。
【0020】
グランド基板3は、接地されたグランド面3aを備える基板である。グランド基板3は、アンテナ1への給電を行う給電点2も備える。グランド基板3は、各種電子部品を実装するプリント基板であってもよい。グランド基板3の全面がグランド面3aであってもよい。
【0021】
第1導体素子12は、グランド面3aに対して平行な板状に形成された導体素子である。第1導体素子12の+X側の端部には給電線11によって給電点2に接続され、-X側の端部には折り返し部14が接続される。第1導体素子12の長さ(+X側の端部から-X側の端部までの長さ)は、アンテナ1を共振させる電波の波長λの1/2以下(例えば、0.43λ)に設定する。第1導体素子12とグランド面3aとの間には、第2導体素子13が配置される。
【0022】
第2導体素子13は、グランド面3aに対して平行な板状に形成された導体素子である。第2導体素子13の-Y側の端部は、折り返し部14によって第1導体素子12の-Y側の端部と接続する。第2導体素子12の+X側の端部は、グランド線15を介してグランド基板3のグランド面3aに接続されることで接地される。第2導体素子13の幅は、第1導体素子12の幅よりも狭く形成される。第2導体素子13の幅は、例えば、第1導体素子12の幅の1/5である。また、第1導体素子12と第2導体素子13のY方向における距離は、アンテナ1を共振させる電波の波長λの1/50以下が好ましい。
【0023】
折り返し部14は、第1導体素子12の-Y側の端部から第2導体素子13の-Y側の端部に向けて延びる導体素子である。折り返し部14によって、第1導体素子12と第2導体素子13とが電気的に接続される。
【0024】
図2は、実施形態に係るアンテナを+Y方向から平面視した場合において、第1導体素子と第2導体素子の位置関係を例示する図である。
図2では、第2導体素子13は点線で示される。第1導体素子の長手方向に延びる中心線と第2導体素子13の長手方向に延びる中心線とが平面視において重なる。第1導体素子12の-X方向の端部と第2導体素子13の-X方向の端部とは、平面視において重なる。また、第2導体素子13は、第2導体素子13の+X方向の端部が第1導体素子12の+X方向の端部に可及的に近づくように配置される。すなわち、第2導体素子13の長さは、第1導体素子12の長さに可及的に近づくように設計される。このため、第1導体素子12の長さは、アンテナ1の長さということができる。
【0025】
<第1比較例>
ここで、比較例について検討する。
図3は、第1比較例に係るアンテナの一例を示す側面図である。
図3に例示されるアンテナ100は、給電線11、第1導体素子102、第2導体素子103、折り返し部14、グランド線15およびグランド基板3を含む。アンテナ100は、第1導体素子102および第2導体素子103が板状ではなく線状に形成されることで第1導体素子102の幅と第2導体素子103の幅が等しい点で、実施形態に係るアンテナ1とは異なる。
【0026】
<第2比較例>
図4は、第2比較例に係るアンテナの一例を示す側面図である。
図4に例示されるアンテナ100aは、給電線11、第1導体素子102、第2導体素子103、折り返し部14、グランド線15およびグランド基板3を含む。アンテナ100aは、第1導体素子102がグランド線15によってグランド基板3のグランド面3aに接続されることで接地され、第2導体素子103が給電線11によって給電点2と接続される点で、第1比較例にアンテナ100とは異なる。換言すれば、アンテナ100aは、アンテナ100の給電点とグランドとを入れ替えたアンテナということができる。
【0027】
<第3比較例>
図5は、第3比較例に係るアンテナの一例を示す図である。
図5に例示されるアンテナ110は、給電線111、第1導体素子112、第2導体素子113、折り返し部114、グランド線115およびグランド基板3を含む。アンテナ110は、第1導体素子112とグランド基板3のグランド面3aとの距離と、第2導体素子113とグランド面3aとの距離が等しく、第1導体素子112がグランド線115を介してグランド面3aと接続され、第1導体素子112よりも細く形成される第2導体素子113が給電線111を介して給電点(図示を省略)から給電される点で、実施形態に係るアンテナ1とは異なる。なお、第3比較例に係るアンテナ110は、特許文献1(特開2016-165035号公報)に記載されたアンテナである。
【0028】
<第4比較例>
図6は、第4比較例に係るアンテナの一例を模式的に示す側面図である。
図6に例示されるアンテナ120は、給電線11、第1導体素子12、第2導体素子13、折り返し部14、グランド線15およびグランド基板3を含む。
図6では、第1導体素子12および第2導体素子13の幅を、第1導体素子12および第2導体素子13の高さに置き換えて模式的に示している。アンテナ120は、第1導体素子12がグランド線15によってグランド基板3のグランド面3aに接続されることで接地され、第2導体素子13が給電線11によって給電点2に接続される点で、実施形態に係るアンテナ1とは異なる。換言すれば、アンテナ120は、アンテナ1の給電点とグランドとを入れ替えたアンテナということができる。
【0029】
<第5比較例>
図7は、第5比較例に係るアンテナの一例を模式的に示す側面図である。
図7に例示されるアンテナ130は、給電線11、第1導体素子132、第2導体素子133、折り返し部14、グランド線15およびグランド基板3を含む。
図7では、
図6と同様に、第1導体素子132および第2導体素子133の幅を、第1導体素子132および第2導体素子133の高さに置き換えて模式的に示している。アンテナ130は、第2導体素子133の幅が第1導体素子123の幅の5倍になっている点で、実施形態に係るアンテナ1とは異なる。
【0030】
<アンテナの放射効率>
実施形態に係るアンテナ1と比較例に係るアンテナの放射効率について検証した。本検証において、給電線11、第1導体素子、第2導体素子、折り返し部、グランド線の導電率を5.8×105S/m、第1導体素子とグランド面3aとの距離をλ/30とした。
【0031】
アンテナを無線通信装置に実装する場合、当該無線通信装置の金属フレームや他の電子部品等の金属がアンテナの近傍に存在することが多いと想定される。そこで、本検証では、アンテナの給電点近傍に金属を置いた場合(
図8に模式的に示す)、アンテナの折り返し部近傍に金属を置いた場合(
図9に模式的に示す)、アンテナの給電点近傍および折り返し部近傍の両方に金属を置いた場合(
図10に模式的に示す)についても検証した。ここで、アンテナの給電点近傍に置いた金属401と第1導体素子との間隔D
1は1mm、アンテナの折り返し部近傍に置いた金属402と折り返し部との間隔D
2は1mmとする。金属401および金属402は、グランド基板3と接続されることで、接地されている。
【0032】
(第1検証)
第1検証では、導体素子を板状に形成することによる放射効率への影響を検証する。第1検証では、第1比較例と実施形態について放射効率の比較を行った。
図11は、第1検証の結果を示す図である。
図11を参照すると、第1比較例に係るアンテナ100の放射効率は-4.5dbであるのに対して、実施形態に係るアンテナ1の放射効率は-3.0dbとなる。すなわち、実施形態に係るアンテナ1は、第1比較例に係るアンテナ100よりも、放射効率を1.5db改善できることが理解できる。
【0033】
また、実施形態に係るアンテナ1では、折り返し部近傍に金属402を置いた場合には、放射効率が-2.6dbに改善される。また、実施形態に係るアンテナ1では、給電点近傍に金属401がおかれても放射効率がほぼ低下しないことが理解できる。
【0034】
(第2検証)
第2検証では、第1導体素子をグランドに接続し、第2導体素子を給電点に接続する場合における放射効率への影響を検証する。第2検証では、第2比較例、第4比較例について放射効率の比較を行った。
図12は、第2検証の結果を示す図である。
図12を参照すると、第2比較例に係るアンテナ100aの放射効率は-4.9dbであり、第4比較例に係るアンテナ120の放射効率は-4.3dbである。すなわち、第1導体素子および第2導体素子を板状に形成することで、放射効率が0.6db改善されていることが理解できる。しかしながら、折り返し部の近傍に金属402を置いたり、給電点近傍に金属401を置いたりすると、第1導体素子および第2導体素子を板状に形成した第4変形例に係るアンテナ120の放射効率は低下することが理解できる。すなわち、第1導体素子をグランドに接続し、第2導体素子を給電点に接続すると、実施形態に係るアンテナ1とは異なり、折り返し部近傍や給電点近傍に金属401、402を配置することによる放射効率の向上は期待できないことが理解できる。
【0035】
(第3検証)
第3検証では、第1導体素子の幅よりも第2導体素子の幅を大きくした場合における放射効率への影響を検証する。第3検証では、第1比較例および第5比較例について検証を行った。
図13は、第3検証の結果を示す図である。
図13を参照すると、第1比較例に係るアンテナ100の放射効率は-4.5dbであり、第5比較例に係るアンテナ130の放射効率は-4.2dbである。すなわち、第2導体素子の幅を第1導体素子よりも大きくすることで、放射効率が0.3db改善されていることが理解できる。しかしながら、折り返し部の近傍に金属402を置いたり、給電点近傍に金属401を置いたりすると、第5変形例に係るアンテナ130の放射効率は低下することが理解できる。すなわち、グランド面3aに近い第2導体素子の幅の方が1導体素子の幅よりも大きく形成すると、実施形態に係るアンテナ1とは異なり、折り返し部近傍や給電点近傍に金属401、402を配置することによる放射効率の向上は期待できないことが理解できる。
【0036】
(第4検証)
第4検証では、特許文献1としても挙げた第3比較例に係るアンテナ110の放射効率について検証する。
図14は、第4検証の結果を示す図である。
図14を参照すると、第3比較例に係るアンテナ110の放射効率は-4.3dbとなることが理解できる。すなわち、
図11に例示される第1比較例に係るアンテナ100の放射効率や
図12に例示される第2比較例に係るアンテナ100aの放射効率からは改善されていることが理解できる。しかしながら、折り返し部の近傍に金属402を置いたり、給電点近傍に金属401を置いたりすると、第3変形例に係るアンテナ110の放射効率は低下することが理解できる。すなわち、第1導体素子とグランド基板3のグランド面3aとの距離と、第2導体素子とグランド面3aとの距離が等しくすると、実施形態に係るアンテナ1とは異なり、折り返し部近傍や給電点近傍に金属401、402を配置することによる放射効率の向上は期待できないことが理解できる。
【0037】
(第5検証)
第5検証では、実施形態に係るアンテナ1について、第1導体素子12と第2導体素子13の幅の比率とアンテナ1の放射効率との関係について検証する。
図15は、第1導体素子と第2導体素子の幅の比率と放射効率との関係を例示する図である。
図15では、(第1導体素子12の幅:第2導体素子13の幅)と放射効率とが対応付けられている。
図15を参照すると理解できるように、第2導体素子13の幅に対する第1導体素子12の幅をより幅広とすることで、アンテナ1の放射効率が向上することが理解できる。
【0038】
第1検証から第4検証により、
図13に例示される実施形態に係るアンテナ1の放射効率-3.0dbは、いずれの比較例に係るアンテナの放射効率よりも高いことが理解できる。また、いずれの比較例に係るアンテナも、折り返し部近傍や給電点近傍に金属401、402が配置されると放射効率が低下する。一方、実施形態に係るアンテナ1は、折り返し部や給電点近傍に金属401、402が配置されることで、放射効率をさらに高めることができる。なお、放射効率を高めるには、金属401と第1導体素子との間隔D
1および金属402と折り返し部との間隔D
2はλ/50が好ましい。金属401、402は、「金属部材」の一例である。
【0039】
<電流の強度分布とアンテナ1の性能の関係>
実施形態に係るアンテナ1が上記比較例に係るアンテナよりも高い放射効率を実現できる仕組みを検討するため、アンテナにおける電流分布をシミュレーションした。まず、第1比較例に係るアンテナ100における電流分布と実施形態に係るアンテナ1における電流分布とを比較する。この比較では、折り返し部や給電点近傍に金属401、402を配置した状態における電流分布を比較する。
【0040】
図16は第1比較例に係るアンテナにおける電流分布を例示する図であり、
図17は実施形態に係るアンテナにおける電流分布を例示する図である。
図16および
図17では、三角形(△)の大きさが大きいほど強い電流が生じていることを例示する。
図16において、電流分布402は第1導体素子102上の電流分布を例示し、電流分布403は第2導体素子103上の電流分布を例示し、電流分布413はグランド基板3上の電流分布を例示する。また、
図17において、電流分布302は第1導体素子12上の電流分布を例示し、電流分布303は第2導体素子13上の電流分布を例示し、電流分布313はグランド基板3上の電流分布を例示する。
【0041】
図16に例示されるアンテナ100における電流分布では、線状に形成された第1導体素子102および第2導体素子103に電流が集中して分布するとともに、グランド面3aにおいて、第2導体素子103を流れる電流とは逆向きの電流が強く分布していることが理解できる。一方、
図17に例示されるアンテナ1における電流分布では、第2導体素子13よりも幅広に形成された第1導体素子12上において電流分布が分散しているとともに、グランド面3aにおいて生じる第2導体素子13を流れる電流とは逆向きの電流が
図16に例示されるアンテナ100よりも広い範囲に分散していることが理解できる。
【0042】
さらに、第1導体素子と第2導体素子について、幅を広くする導体素子を入れ替えた場合や、給電点に接続する導体素子とグランドに接続する導体素子を入れ替えた場合における電流分布を検討する。この検討のため、第5比較例に係るアンテナ130において、第1導体素子132をグランド線15によってグランド基板3のグランド面3aに接続し、第2導体素子133を給電線11で給電点2に接続した第6比較例に係るアンテナ103a(
図18に例示)を挙げる。
【0043】
すなわち、実施形態に係るアンテナ1、第4比較例に係るアンテナ120、第5比較例に係るアンテナ130および第6比較例に係るアンテナ130aを比較することで、第1導体素子と第2導体素子について、幅を広くする導体素子を入れ替えた場合や、給電点に接続する導体素子とグランドに接続する導体素子を入れ替えた場合における電流分布を検討する。
【0044】
図19は、実施形態に係るアンテナにおける電流の向きを模式的に示す図である。
図19では、電流の向きが矢印で例示される。
図19を参照すると理解できるように、第1導体素子12を流れる電流と第2導体素子13を流れる電流とは逆向きになっている。ここで、第1導体素子12が第2導体素子13よりも幅広に設計されているとともに、第1導体素子12が給電点2に接続されている。このことから、第1導体素子12には、第2導体素子13よりも強い電流が流れることになる。そのため、第1導体素子12の方が第2導体素子13よりもグランド面3aから離れているにもかかわらず、第1導体素子12を流れる電流とは逆向きの電流がグランド面3aにも生じる。すなわち、実施形態に係るアンテナ1では、第2導体素子13を流れる電流と同じ向きの電流がグランド面3aにも生じる。グランド面3aにおいて、第2導体素子13を流れる電流と逆向きに流れる電流の強さは弱められることになる。
【0045】
図20は、第4比較例に係るアンテナにおける電流の向きを模式的に示す図である。第4比較例に係るアンテナ120では、上記の通り、第1導体素子12がグランド基板3のグランド面3aに接続され、第2導体素子13が給電点2に接続される。そのため、第2導体素子13には、第1導体素子12よりも強い電流が流れることになる。第2導体素子13の方がグランド面3aに近く、また、第2導体素子13の方が第1導体素子12よりも強い電流が流れることから、グランド面3aを流れる電流に対する第1導体素子12の影響力は実施形態に係るアンテナ1と比較すると低下する。そのため、グランド面3aには、第2導体素子13を流れる電流の影響を強く受けることで、第2導体素子13を流れる電流とは逆向きの電流が生じる。
【0046】
図21は、第5比較例に係るアンテナにおける電流の向きを模式的に示す図である。第5比較例に係るアンテナ130では、上記の通り、第1導体素子132よりも第2導体素子133の方が幅広に設計される。そのため、第2導体素子132には強い電流が流れやすくなる。また、第2導体素子133の方が、第1導体素子132よりもグランド面3aに近い位置に設けられている。そのため、グランド面3aには、第2導体素子133を流れる電流の影響を強く受けることで、第2導体素子133を流れる電流とは逆向きの電流が生じる。
【0047】
図22は、第6比較例に係るアンテナにおける電流の向きを模式的に示す図である。第6比較例に係るアンテナ130aでは、上記の通り、第1導体素子132がグランド面3aに接続され、第2導体素子133が給電点2に接続される。そのため、アンテナ130aでは、第5比較例に係るアンテナ130よりも、第2導体素子133に強い電流が流れやすくなる。そのため、グランド面3aには、第2導体素子133を流れる電流の影響を強く受けることで、第2導体素子133を流れる電流とは逆向きの電流が生じる。
【0048】
アンテナにおいて、第2導体素子を流れる電流とグランド基板3のグランド面3aを流れる電流の向きが逆向きになると、熱損失が生じることにより、アンテナの放射効率が低下する。第4比較例、第5比較例、第6比較例のいずれも第2導体素子を流れる電流とは逆向きの電流がグランド面3aに流れることで、熱損失によって放射効率が低下することになる。一方で、実施形態に係るアンテナ1では、上記の通り、第2導体素子13を流れる電流と逆向きに流れる電流の強さが弱められることで、第4比較例、第5比較例および第6比較例よりも熱損失による放射効率の低下が低減できる。すなわち、実施形態に係るアンテナ1は、第4比較例、第5比較例、第6比較例のいずれに係るアンテナよりも、高い放射効率を実現できる。
【0049】
<実施形態の効果>
実施形態に係るアンテナ1は、第1導体素子12を給電2に接続するとともに第1導体素子12の幅を第2導体素子13よりも幅広に設計した。その結果、第1導体素子12には第2導体素子13よりも強い電流が流れるようになり、グランド面3aに第1導体素子12に流れる電流とは逆向きの電流を生じさせることができる。このことにより、グランド面3aにおいて第2導体素子13に流れる電流とは逆向きに流れる電流を弱めることになり、熱損失による放射効率の低下を抑制できる。
【0050】
また、第1検証から第4検証により、アンテナの近傍に金属401、402が存在する場合において、比較例に係るアンテナは放射効率が低下する一方で、実施形態に係るアンテナ1は放射効率をさらに高ることができる。
【0051】
<第1変形例>
実施形態に係るアンテナ1は、様々な変形を行うことができる。
図23は、第1変形例に係るアンテナを模式的に示す図である。第1変形例に係るアンテナ1aは、第1導体素子13の+X側の端部から+X方向に延びる第3導体素子12aをさらに備える点で、実施形態に係るアンテナ1とは異なる。
図23の点線L1は、第1導体素子12と第3導体素子12aとの境界を模式的に示す。第3導体素子12aの長さ(X方向の長さ)は、第3導体素子12aを共振させる電波の波長λ
3の1/4以下とすればよい。このように設計することで、第3導体素子12aを波長λ
3の電波に共振するモノポールアンテナとして動作させることができる。第1変形例において、折り返し部14の近傍に金属402を配置してもよい。金属402は、例えば、アンテナ1aとは異なるアンテナであってもよい。
【0052】
<第2変形例>
図24は、第2変形例に係るアンテナを模式的に示す図である。第2変形例に係るアンテナ1bは、第1導体素子12のX側の端部から+Y方向に延びる接続線16を介して第1導体素子12に接続され、接続線16から-X方向に延びる第4導体素子17をさらに備える点で、実施形態に係るアンテナ1とは異なる。第4導体素子17の長さ(X方向の長さ)は、第4導体素子17を共振させる電波の波長λ
4の1/4以下とすればよい。このように設計することで、第4導体素子17を波長λ
4の電波に共振するモノポールアンテナとして動作させることができる。第4導体素子17は、「第3導体素子」の一例である。
【0053】
<第3変形例>
図25は、第3変形例に係るアンテナを模式的に示す図である。第3変形例に係るアンテナ1cは、グランド線11aによってグランド面3aと接続される第5導体素子18が設けられる点で、実施形態に係るアンテナ1とは異なる。第5導体素子18は、第1導体素子12、第2導体素子13、折り返し部14、給電線11、グランド線15のいずれとも接触しない。第5導体素子18の長さ(X方向の長さ)は、第5導体素子18を共振させる電波の波長λ
5の1/4以下とすればよい。このように設計することで、第5導体素子18を波長λ
5の電波に共振するモノポールアンテナとして動作させることができる。第5導体素子18は、「第4導体素子」の一例である。
【0054】
<第4変形例>
図26は、第4変形例に係るアンテナを模式的に示す図である。第4変形例に係るアンテナ1dは、給電線11にキャパシタ71が設けられる。また、給電線11において、キャパシタ11と第1導体素子12との間から分岐してグランド面3aに接続されるグランド線15aが設けられる。グランド線15aには、インダクタ72が設けられる。キャパシタ71は、例えば、短縮コイルである。また、インダクタ72は、例えば、延長インダクタである。キャパシタ71の静電容量およびインダクタ72のインダクタンスを適宜決定することで、アンテナ1dが共振する電波の波長を変更することができる。
【0055】
<第5変形例>
図27は、第5変形例に係るアンテナを模式的に示す図である。第5変形例に係るアンテナ1eは、グランド線15にキャパシタ71aが設けられる。第5変形例では、キャパシタ71aの静電容量を適宜決定することで、アンテナ1eが共振する電波の波長を変更することができる。
【0056】
<第6変形例>
図28は、第6変形例に係るアンテナを模式的に示す図である。第6変形例に係るアンテナ1fは、グランド線15にインダクタ72aが設けられる。第6変形例では、インダクタ72aのインダクタンスを適宜決定することで、アンテナ1fが共振する電波の波長を変更することができる。
【0057】
<第7変形例>
図29は、第7変形例に係るアンテナを模式的に示す図である。第7変形例に係るアンテナ1gは、第1導体素子12aがメアンダ形状とされている。なお、
図29では第1導体素子12aをメアンダ形状としたが、第2導体素子13をメアンダ形状としてもよく、また、第1導体素子12や第2導体素子13の一部をメアンダ形状としてもよい。メアンダ形状を採用することで、アンテナ1gを小型化することができる。
【0058】
<適用例>
図30は、実施形態に係るアンテナをスマートフォンに適用した構成を例示する図である。
図30は、スマートフォン500のディスプレイ側の外装を外した状態を例示する。スマートフォン500では、側面を枠状の金属フレーム510で囲んでいる。金属フレーム510によって区画される領域には、グランド基板3が設けられる。スマートフォン500では、第1導体素子12として金属フレーム510のうち、スリット511、512で区切られた領域を使用する。また、第2導体素子13は、金属フレーム510によって区画された領域内に配置されたフレキシブル基板上の導体パターンや、Laser Direct Structuring(LDS)によって形成することができる。
【0059】
上述の通り、アンテナ1は、給電点2の近傍や折り返し部14の近傍に金属が存在することで、放射効率を高めることができる。そのため、適用例に係るスマートフォン500では、金属フレーム510がアンテナ1の近傍に存在することで、アンテナ1の放射効率を高めることができる。なお、実施形態に係るアンテナ1は、スマートフォン500以外にも、タブレット型コンピュータ、携帯電話、車載用アンテナ等の無線通信装置に適用することが可能である。
【0060】
図31は、適用例に係るスマートフォンが実装するアンテナのS11を例示する図である。また、
図32は、適用例に係るスマートフォンが実装するアンテナのスミスチャートを例示する図である。
図31および
図32は、アンテナに整合回路を設けていない場合について例示する。
図31および
図32では、参考のために、アンテナ1をスマートフォン500に実装していない場合(すなわち、金属フレーム510がアンテナ1の近傍に存在しない場合)のデータおよび、第1導体素子12と第2導体素子13の幅を等しくした第1比較例に係るアンテナ100のデータも例示している。
図31および
図32において、2点鎖線はスマートフォン500にアンテナ1を実装した場合のデータを例示する。また、実線はアンテナ1の近傍に金属フレーム510が存在しない場合のデータを例示する。2本の点線のうち、大きい点で示される点線は、アンテナ100をスマートフォン500に実装した場合のデータを例示する。2本の点線のうち、小さい点で示される点線はアンテナ100の近傍に金属フレーム510が存在しない場合のデータを例示する。
【0061】
図31を参照すると理解できるように、スマートフォン500にアンテナ1を実装した場合とアンテナ1の近傍に金属フレーム510が存在しない場合とでは、S11が下がる周波数がいずれも1.6GHz近傍である。一方、アンテナ100をスマートフォン500に実装した場合とアンテナ100の近傍に金属フレーム510が存在しない場合とでは、S11が下がる周波数が1.6GHよりも高い周波数に遷移していることが理解できる。
【0062】
また、
図32を参照すると理解できるように、アンテナ1の近傍に金属フレーム510が存在しない場合、アンテナ100をスマートフォン500に実装した場合、アンテナ100の近傍に金属フレーム510が存在しない場合のいずれも、スマートフォン500にアンテナ1を実装した場合よりも放射抵抗が下がっていることが理解できる。
【0063】
図31および
図32により、アンテナ1の近傍に金属を置くことで放射抵抗を上げることができることが理解できる。また、第1導体素子12を第2導体素子13よりも幅広に設計することで共振する周波数を遷移させるとともに、放射抵抗を上げることができることが理解できる。
【0064】
図33は、適用例に係るスマートフォンが実装するアンテナのS11を例示する図である。また、
図34は、適用例に係るスマートフォンが実装するアンテナのトータル効率を例示する図である。
図33および
図34は、アンテナ1に整合回路を設けた場合について例示する。
図33の縦軸はS11(db)を例示し、横軸は周波数(GHz)を例示する。
図34の縦軸はトータル効率(db)を例示し、横軸は周波数(GHz)を例示する。
【0065】
図33および
図34を参照すると、アンテナ1では、1.5GHz付近でS11のグラフが谷になるとともに、トータル効率のグラフでは山になっている。すなわち、アンテナ1は、1.5GHz付近の周波数に対して、良好な性能を示すことが理解できる。なお、上記各比較例として挙げたアンテナをスマートフォン500に適用した場合における1.5GHz付近のトータル効率は-8db程度である。一方、アンテナ1をスマートフォン500に適用した場合における1.5GHz付近におけるトータル効率は-2dbとなる。すなわち、アンテナ1では、1.5GHz付近の周波数において、比較例に係る各アンテナよりも6db程度放射効率が改善されていることが理解できる。
【0066】
以上で開示した実施形態や変形例はそれぞれ組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0067】
1、100、100a、110、120、130、130a・・・アンテナ
2・・・給電点
3・・・グランド基板
3a・・・グランド面
11、101・・・給電線
12、102、132・・・第1導体素子
13、103、133・・・第2導体素子
12a・・・第3導体素子
16・・・接続線
17・・・第4導体素子
18・・・第5導体素子
14・・・折り返し部
15、105・・・グランド線
71・・・キャパシタ
72・・・インダクタ
401、402・・・金属