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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-02
(45)【発行日】2023-08-10
(54)【発明の名称】模擬切開可能組織
(51)【国際特許分類】
   G09B 23/28 20060101AFI20230803BHJP
   G09B 9/00 20060101ALI20230803BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20230803BHJP
   B32B 27/02 20060101ALI20230803BHJP
【FI】
G09B23/28
G09B9/00 Z
B32B27/00 101
B32B27/02
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022002796
(22)【出願日】2022-01-12
(62)【分割の表示】P 2018501269の分割
【原出願日】2016-07-12
(65)【公開番号】P2022051751
(43)【公開日】2022-04-01
【審査請求日】2022-02-09
(31)【優先権主張番号】62/193,143
(32)【優先日】2015-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/257,847
(32)【優先日】2015-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503000978
【氏名又は名称】アプライド メディカル リソーシーズ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】ホフステッター グレゴリー ケイ
(72)【発明者】
【氏名】ブラック ケイティ
【審査官】前地 純一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-128109(JP,A)
【文献】特表2015-502563(JP,A)
【文献】特開2010-243867(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0126746(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 23/00-29/14
G09B 1/00- 9/56
G09B 17/00-19/26
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科的訓練用の模擬組織構造体であって、
シリコーンポリマーの第1の層と、
前記シリコーンポリマーの第1の層との間にギャップを形成して前記シリコーンポリマーの第1の層から間隔をおかれているシリコーンポリマーの第2の層と、
複数のからみ合っている繊維で作られ前記第1の層と前記第2の層との間に配置された第3の層を有し、前記複数のからみ合った繊維は、前記複数のからみ合った繊維の一部が、前記第1の層および/又は前記第2の層の少なくとも一方に埋め込まれ、厚さが薄い領域を前記第1の層及び/又は前記第2の層に提供し実際の解剖体を模すように、ランダムに配置された状態で前記ギャップ内に存在している、
ことを特徴とする模擬組織構造体。
【請求項2】
前記第1の層に隣接する前記第3の層の部分及び/又は前記第2の層に隣接する前記第3の層の部分が、シリコーンで被覆された繊維ストランドを備えている、
請求項1に記載の模擬組織構造体。
【請求項3】
前記第1の層及び/又は前記第2の層の厚さが薄い領域の位置が、手術器具を使用する切開のための起点として機能する隔離されたスポットである、
請求項1または2に記載の模擬組織構造体。
【請求項4】
前記第3の層内に配置された封入体を有し、前記封入体が前記第1の層および前記第2の層の少なくとも一方に接着または埋め込まれている、
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の模擬組織構造体。
【請求項5】
前記封入体は、模擬解剖学的構造体、臓器、血管系、神経、組織、腫瘍、前立腺、前立腺系、静脈、血管、および管腔から成る群から選択されている、
請求項4に記載の模擬組織構造体。
【請求項6】
外科的訓練用の模擬組織構造体を製造する方法であって、
未硬化シリコーンの層を注型用皿の模様付き表面に提供しシリコーンの第1の薄い層を形成するステップと、
前記第1の薄いシートのシリコーンが未硬化である間に、ランダムに配置されポリエステル繊維のからみ合っている層を前記シリコーンの第1の薄いシートの上面に埋め込むステップと、
前記シリコーンの第1の薄いシートの上に又は該シートと並列して、1または2以上の封入体を配列するステップと、
前記シリコーンの第1の薄いシートを、前記からみ合っているポリエステル繊維の埋め込まれた層と1または2以上の封入体とともに硬化させるステップであって、前記からみ合っているポリエステル繊維の層と前記注型用皿の模様付き表面が、前記シリコーンの第1の薄いシート内で手術器具を使用する切開のための起点として機能する厚さが薄い領域を提供し、前記1または2以上の封入体の外科的除去の訓練用の切開平面を提供する、
ことを特徴とする方法。
【請求項7】
前記からみ合っているポリエステル繊維の層を埋め込むステップが、
複数のからみ合っている繊維ストランドを、前記シリコーンの第1の薄いシートの上面に所望の形状、厚さ、および密度で配置するステップと、
前記複数のからみ合っている繊維ストランドを前記シリコーンの第1の薄いシートの中にランダムに突き固め前記繊維ストランドのいくつかが前記繊維ストランドの長さに沿った1または2以上の位置で前記シリコーンの第1の薄いシートに連結されるようにし、前記繊維ストランドの他のいくつかが前記シリコーンの第1の薄いシート上に自由に配置され、さらに別の前記繊維ストランドが緩く互いにからみ合い且つ相互に巻き付き他の繊維ストランドと相対的に動けるようにするステップと、備えている、
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記複数のからみ合った繊維ストランドが、前記埋込みステップの前に、シリコーンで完全に被覆されている、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記1または2以上の封入体を配列するステップが、前記埋込みステップの前または後に行われる、
請求項6乃至8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
未硬化シリコーンの層を第2の注型用皿の滑らかな又は模様付き面につけシリコーンの第2の薄いシートを形成するステップと、
前記第2の薄いシートのシリコーンが未硬化状態である間に、前記硬化したシリコーンの第1の薄いシートを、前記シリコーンの第1の薄いシートのからみ合ったポリエステル繊維の層が前記シリコーンの第2の薄いシートの下面にランダムに埋め込まれるように、前記シリコーンの第2の薄いシートの上に又は並列して配置するステップであって、前記硬化したシリコーンの第1の薄いシートを前記注型用皿から取り外した後に行われるステップと、
前記シリコーンの第2の薄いシートを硬化させるステップと、をさらに備えている、
請求項6乃至9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記硬化したシリコーンの第1の薄いシートを配置するステップの前に、1又は2以上の前記封入体を前記シリコーンの第2のシートの上に配置するステップを備えている、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第2の薄いシートのシリコーンが未硬化である状態の間に、ランダムに配置されたからみ合ったポリエステル繊維の第2の層を、前記シリコーンの第2の薄いシートの下面にランダムに埋め込むステップと、
少なくとも1また2以上の封入体を、該少なくとも1または2以上の封入体が前記シリコーンの第2の薄いシートに直接、接触するように、前記からみ合ったポリエステル繊維の第2の層の上に配置するステップと、を備えている、
請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記シリコーンの第1の薄いシートと前記シリコーンの第2の薄いシートの周縁を密封接触させ繊維のポケットを形成するステップを更に備えている、
請求項10ないし12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記注型用皿から硬化した前記シリコーンの第1の薄いシートを取り外すステップと、
前記硬化したシリコーンの第1の薄いシートを内蔵モデルの中に採用するステップと、を備えている、
請求項6に記載の方法。
【請求項15】
前記内蔵モデルが、
模擬腸を有する腹部臓器であって、前記硬化したシリコーンの第1の薄いシートが模擬腸間膜を表す腹部臓器と、
模擬骨盤の一部と前記硬化したシリコーンの第1の薄いシートとを有する骨盤モデルと、を備えている、
請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、一般に、外科的訓練ツールに関し、特に、腹腔鏡下手術、内視鏡下手術および低侵襲手術に関連した(しかしながら、これらには限定されない)種々の外科的技術および手技を教示するとともに練習させる模擬組織構造体およびモデルに関する。
【0002】
〔関連出願の説明〕
本願は、2015年7月16日に出願された米国特許仮出願第62/193,143号(発明の名称:Simulated dissectable tissue)および2015年11月20日に出願された米国特許仮出願第62/257,847号(発明の名称:Simulated dissectable tissue)の優先権および権益主張出願であり、米国特許仮出願第62/193,143号を参照により引用し、その記載内容全体を本明細書の一部とするとともに米国特許仮出願第62/257,847号を参照により引用し、その記載内容全体を本明細書の一部とする。
【背景技術】
【0003】
新たな外科的技術(術式)を学習する医学生ならびに熟練医は、自分達が患者としての人間に対して手術を行う資格を得る前に大がかりな訓練を受けなければならない。この訓練は、種々の形式の組織を切断し、穿通し、クランプし、把持し、ステープル留めし、焼灼し、縫合するための種々の医療器具を用いる適正な技術を教示しなければならない。訓練を受ける人(訓練生)が遭遇する場合のある場面の範囲は、広い。例えば、種々の器官ならびに患者の解剖学的構造および疾患が提示される。種々の組織層の厚さおよびコンシステンシーもまた、身体の一部分と隣りの部分とでは様々であり、しかも患者ごとに様々な場合があろう。互いに異なる手技には互いに異なる技能が要求される。さらに、訓練生は、例えば患者の体格や病態、標的組織の隣接の解剖学的景観および景観や標的組織が容易にアクセス可能であるか比較的アクセス不能であるかという要因によって影響を受ける種々の解剖学的環境中において技術を練習しなければならない。
【0004】
外科的訓練の1つまたは2つ以上の観点について多くの教示補助具、訓練器具、模擬訓練装置(シミュレータ)およびモデル臓器が利用可能である。しかしながら、遭遇する可能性がありかつ内視鏡下の手技、腹腔鏡下の手技、低侵襲手術手技(外科的処置)を練習するために使用できるモデルまたは模擬組織要素が要望されている。腹腔鏡下手術では、トロカールまたはカニューレを挿入して体内腔にアクセスしたりカメラ、例えば腹腔鏡の挿入のためのチャネルを作ったりする。カメラは、ライブビデオフィードキャプチャリング画像を提供し、次にこれら画像を1つまたは2つ以上のモニタで外科医に表示する。少なくとも1つの追加の小さな切開創が作られ、かかる切開創を通って別のトロカール/カニューレを挿入してモニタ上で観察される手技を実施するために外科用器具を挿通させることができる経路を作る。標的組織場所、例えば腹部は、典型的には、二酸化炭素ガスを送り出して体内腔に通気しまたは注入して外科医により用いられるスコープおよび器具を受け入れるのに足るほど広い作業空間を作ることによって拡張される。組織腔内のガス注入圧力は、専用トロカールを用いることによって維持される。腹腔鏡下手術は、開放手技と比較した場合、多くの利点を提供する。これら利点としては、切開創が小さいということに起因して、疼痛が軽いこと、出血が少ないこと、回復期間が短いことが挙げられる。
【0005】
腹腔鏡下または内視鏡下低侵襲手術では、開放手術と比較して技能レベルの高いことが要求される。というのは、標的組織は、医師によって直接観察されることがないからである。標的組織は、小さな開口部を通ってアクセスされる手術部位の一部分を表示するモニタにより観察される。したがって、医師は、組織平面を視覚的に見定め、二次元観察スクリーン上における三次元奥行き覚、器具の手渡し、縫合、高精度切断ならびに組織および器具の操作を練習する必要がある。典型的には、特定の解剖学的構造または手技を模倣するモデルが模擬骨盤または腰部訓練器具内に配置され、この訓練器具では、解剖学的モデルは、医師による直接可視化(直視化)から隠されている。訓練器具に設けられたポートは、器具を通して直視化から隠された解剖学的モデルに対して行われる技術を練習するために用いられる。模擬骨盤訓練器具は、腹腔鏡下手術で用いられる基本的な技能および典型的な技術、例えば把持、操作、切断、結び目を作ること、縫合、ステープル留め、焼灼ならびにこれら基本的な技能を利用した特定の外科的処置をどのように実施するかについて外科医および研修医を訓練する機能的かつ安価であり、しかも実用的な手段となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
外科医が外科的技術または術式を訓練することができる模擬骨盤訓練器具用の臓器モデルが必要とされる。これら臓器モデルは、外科医が術式を適切に学習するとともに自分の技量を向上させることができるよう本物のようである必要がある。現在、大抵の模擬組織構造体は、シリコーンで作られている。一方、シリコーンは、極めて弾性が高く、切断されると、シリコーンは、迅速にリバウンドする。他方、本物の組織は、操作されても十分にはリバウンドしない。さらに、シリコーンは、切れ目または穴があるとかなり容易に裂けるが、このシリコーンは、欠陥が存在していない場合には裂けに抵抗する。他方、本物の組織は、容易に切開が行われる。また、組織表面をくっつけると、本物に近いインターフェースを望む場合には、別の問題点、例えば過度の粘着性が生じる。したがって、本物に見えるだけでなく外科的に切開されて操作されているときに本物の組織の感触で機能するシリコーンで模擬組織構造体を作るという課題が存在する。本発明は、かかる模擬組織構造体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一観点によれば、外科的訓練用の模擬組織構造体が提供される。模擬組織構造体は、上面および下面を備える平板状シートの形態をしたシリコーンポリマーの第1の層を有し、上面と下面との間に厚さが定められている。模擬組織構造体は、上面および下面を備える平板状シートの形態をしたシリコーンポリマーの第2の層を有し、上面と下面との間に厚さが定められている。第2の層は、第1の層の上面が第2の層の下面に向くよう第1の層から間隔を置いて配置されている。模擬組織構造体は、第1の層と第2の層との間に配置された複数のからみ合っている繊維で作られた第3の層を有する。第3の層の複数のからみ合った繊維のうちの少なくとも一部は、第1の層および第2の層のうちの少なくとも一方の中に埋め込まれている。
【0008】
本発明の別の観点によれば、外科的訓練用の模擬組織構造体が提供される。模擬組織構造体は、上面および下面を備えたシリコーンポリマーの第1の層を有する。模擬組織構造体は、上面および下面を備えたシリコーンポリマーの第2の層を有する。第2の層は、第1の層の上面が第2の層の下面に向くよう第1の層から間隔を置いて配置されている。模擬組織構造体は、第1の層と第2の層との間に配置された複数のからみ合っている繊維で作られた第3の層を更に有する。第3の層は、上面および下面を有する。第3の層の下面の少なくとも一部は、第1の層の上面内に埋め込まれている。模擬組織構造体は、第1の層と第2の層との間に配置された複数のからみ合った繊維で作られた第4の層を有する。第4の層は、第2の層の下面のところで第2の層内に埋め込まれている。模擬組織構造体は、第3の層と第4の層との間に配置された第1の封入体を有する。
【0009】
本発明の別の観点によれば、外科的訓練用の模擬組織構造体が提供される。模擬組織構造体は、第1のルーメンを備えた第1の管を有する。第1の管は、内側層、外側層および中間層を有する。外側層は、中間層によって内側層に連結されている。中間層は、一部が内側層内に埋め込まれかつ一部が外側層内に埋め込まれた複数のからみ合った繊維で作られている。模擬組織構造体は、第2のルーメンを備えた第2の管を有する。第2の管は、外側層および内側層を有する。第1の管は、第2のルーメンの内側に配置されている。模擬組織構造体は、第2の管の内側層と第1の管の外側層との間に配置された封入体を更に有する。
【0010】
本発明の別の観点によれば、外科的訓練用の模擬組織構造体が提供される。模擬組織構造体は、シリコーンで作れられた第1の層およびシリコーンで作られた第2の層を有し、第1の層と第2の層は、第1の層と第2の層との間に機械的リンケージを作るよう一部が第1の層内に埋め込まれかつ一部が第2の層内に埋め込まれたルーズな繊維で作られた第3の層によって相互に連結されている。第1の層に隣接した第3の層の一部および第2の層に隣接した第3の層の一部は、シリコーンで被覆された繊維ストランドを有する。解剖学的構造体を真似た封入体が第1の層と第2の層との間に配置されている。ポリエステル繊維の第3の層は、封入体の外科的切除の練習のための本物のような切開平面を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の模擬組織構造体の断面側面図である。
図2A】本発明の注型用皿の上から見た斜視図である。
図2B】本発明の注型用皿およびシリコーンの第1の層の上から見た斜視図である。
図2C】本発明の注型用皿、シリコーンの第1の層および繊維層の上から見た斜視図である。
図3A】本発明の模擬組織構造体を備えた状態で作られた臓器モデルの上から見た斜視図である。
図3B】本発明の模擬組織構造体を備えた状態で作られた臓器モデルの上から見た斜視図である。
図3C】本発明の模擬組織構造体を備えた状態で作られた臓器モデルの上から見た断面斜視図である。
図4】本発明の模擬組織構造体を備えた状態で作られた臓器モデルの上から見た断面斜視図である。
図5】本発明の外科的訓練器具の上から見た斜視図である。
図6】本発明の模擬直腸モデルの分解組立て図である。
図7】本発明の模擬直腸モデルの断面図である。
図8】本発明の模擬直腸モデルの部分断面図である。
図9A】本発明の注型用皿、シリコーンの第1の層および繊維の第1の層の断面図である。
図9B】本発明の注型用皿、シリコーンの第2の層、繊維の第2の層および模擬血管の上方に配置された図9Aのシリコーンの第1の層および繊維の第1の層の断面図である。
図10A】本発明の注型用皿の平面図である。
図10B】本発明の図10Aの注型用皿の側面図である。
図11A】本発明の注型用皿、ウェットフォームの層および繊維の層の側面図である。
図11B】本発明のシリコーンの第2の層の上方に配置された図11Aの繊維の第1の層およびフォームの層の側面図である。
図11C】本発明の繊維の第2の層、シリコーンの第3の層および人工血管の下に配置された図11Bの繊維の第1の層、フォームの層およびシリコーンの第2の層の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の模擬組織構造体30が図1に示されている。構造体30は、上面36,38および下面40,42をそれぞれ備えた第1の層32および第2の層34を有する。第1の層32と第2の層34は、第1の層と第2の層との間に隙間46を定める第3の層44によって相互に連結されている。模擬組織構造体30は、オプションとして、第1の層32と第2の層34との間に配置された封入体または混入体48を更に有するのが良い。封入体48としては、模擬血管、模擬静脈、模擬腫瘍、模擬管、模擬血管系、模擬神経、模擬脂肪堆積物、模擬病理学的構造または他の模擬解剖学的構造が挙げられる。封入体48は、代表的には、シリコーンで作られるが、他のポリマーまたは他の適当な材料で作られても良く、しかも本物のような形、色および形態に作られるのが良い。
【0013】
第3の層44は、繊維50の長さに沿う1つまたは2つ以上の場所で第1の層32および/または第2の層34に連結された複数の1つまたは2つ以上の非整列状態でランダムに配置された不織繊維50を有する。繊維50は、製造プロセス中、第1の層32および第2の層34のうちの1つまたは2つ以上の中に埋め込まれることによって第1の層32および第2の層34のうちの1つまたは2つ以上に連結され、この製造プロセスについては以下に詳細に説明する。各繊維は、ストランド、フィラメント、ヤーン、マイクロファイバまたは超極細繊維などの形態をしているのが良く、各繊維は、長さ、第1の自由端部、第2の自由端部を有する。繊維を連結するのに接着剤は用いられていない。第3の層44の繊維は、隙間46内にランダムに配置された仕方で位置している。繊維50の1本のストランドが1つの場所で第1の層32に連結されるのが良く、次にこの場合もまた繊維の長さに沿う別の場所で第1の層32に連結されまたは第2の層に連結されるのが良く、その自由端部は、第1または第2の層内に埋め込まれても良くまたは埋め込まれなくても良い。繊維50の何本かのストランドは、第1の層32または第2の層34に連結されておらず、これら何本かのストランドは、第1の層32と第2の層34との間に自由に配置されている。繊維50の何本かのストランドは、互いにからみ合わされるとともにルーズな仕方で他のストランドとからみ合わされるとともにまたはより合わされていて、これらストランドは、他のストランドに対して動くことができるようになっている。繊維は、繊維の長さに沿う1つまたは2つ以上の場所で対向したまたは第2の層34に連結されるよう隙間46をまたぐのが良い。複数の繊維ストランドではなく、単一の繊維ストランドを用いて第3の層44を構成することが可能である。単一の繊維ストランドは、層32,34相互間の隙間46を埋めるための短いストランドの使用と比較して、同じ隙間46を満たすとともに作る上で長さが長い。繊維は、任意適当な材料、例えばポリエステル、ポリアミド、アクリル樹脂、アセテート、ポリオレフィン、コットン(綿)、ファイバーフィル、ポリマー、プラスチック、スパンデックスもしくは他の適当な繊維、天然繊維、非吸収性繊維、合成繊維または繊維状材料から選択される。材料は、織られても良く、織られなくても良く、あるいは部分的に織られても良い。ファイバーフィルムは、代表的には、ガーネッテッィングによって作られ、このガーネッティングでは、ガーネット機が繊維を取ってこれらをバット形態にくしけずる。ガーネット機は、次に、繊維を折り曲げて裁断し、それにより短くかつ互いに塊にされたストランドを作る。繊維は互いにもつれ、からみ、そして塊になる。
【0014】
第1の層32および第2の層34のうちの1つまたは2つ以上は、その上面36,38とその下面40,42との間に実質的に一様な厚さを有し、それにより実質的に扁平な形態が構成されている。一形態では、第1の層32および第2の層34は、その上面36,38とその下面40,42との間に実質的に一様な厚さを有する。第2の層34の下面42は、第1の層32の上面36に向いている。繊維50が第1の層32および第2の層34のうちの一方に取り付けられている場所では、層32,34は、減少した厚さを有し、その理由は、厚さの一部が繊維それ自体の厚さによって取られているからである。第1および第2の層32,34は、任意適当なエラストマー材料、例えばシリコーンで作られている。一形態では室温加硫用シリコーンが用いられる。一形態では、第2の層34が省かれ、模擬組織構造体30は、第1の層32および第1の層32に連結された繊維の第3の層44だけを有する。
【0015】
次に、図2A図2Cを参照して模擬組織構造体30を製造する方法について説明する。模様付き表面54を備えた注型用皿52を用意する。別の形態では、注型用皿52は、滑らかな表面を有する。未硬化状態の室温加硫用シリコーンを用意し、これを図2Bに示されているように注型用皿52の模様付き表面54上に均等に塗布し、それにより薄い第1の層32を形成する。ヘラ(スパチュラ)を用いてシリコーンを薄い第1の層32中に均等にカレンダー仕上げするのが良い。第1の層32のシリコーンが未硬化状態にある間、第3の層44を被着させる。特に、ポリエステル繊維50の層を第1の層32が依然としてウェット(濡れた)状態にある間、第1の層32の上面36上に配置する。ポリエステル繊維50を所望の形状、厚さおよび密度の状態に配置する。次に、繊維50を第1の層32中に突き固めて繊維を第1の層32中にランダムな仕方で埋め込むのを助ける。繊維50の幾つかの部分をシリコーン内に埋め込み、そして大部分を空気に露出させてこれら大部分が次のシリコーン注型で埋め込みに利用できる状態にする。
【0016】
任意のオプションとしての注入体48を第1の層32の上面36上に載せまたはこれと並置状態に配置する。封入体48を配置し、その後ポリエステル繊維50を被着させる。別の形態では、封入体48をポリエステル繊維50が配置された後に配置する。封入体48がポリエステル繊維50の前に配置される場合、封入体48は、シリコーンが硬化しているときに第1の層32にくっついたままになるであろう。封入体48がポリエステル繊維50の後に配置される場合、第1の層32のウェットシリコーンと直接的な接触状態にある封入体48の部分だけがシリコーンの硬化しているときに第1の層32にくっついたままになるであろう。それにより、封入体を選択的に第1の層および/または第2の層のいずれかにくっつけて外科医が注意深いかつ選択的な切開を採用した状態で、封入体48の模擬外科的切除において封入体の除去を練習するための真に迫ったシナリオを設定することができる。また、第1の層32のウェットシリコーンと接触状態にある繊維50の部分だけが第1の層32にくっついたままになるであろう。第1の層32のシリコーンは、硬化し、それにより繊維の部分を第1の層32中に十分に埋め込む。一形態では、封入体48を第1の層32が硬化した後に第1の層32上に配置し、それによりこの中には埋め込まれないようにする。同様に、第3の繊維層44を硬化済みの第1の層32上に配置し、それにより、これに結合状態にならないようにする。
【0017】
第1の層32を硬化させた後、模様付きの第1の層32を注型用皿52から取り外す。代表的には、シリコーンの極めて薄いシートは、モールド剥離層が注型用皿を被覆している場合であっても注型用皿52から取り外すのが困難である。しかしながら、シリコーンの硬化時に第1の層32に取り付けられた繊維50が存在しているので、シリコーンの極めて薄い層を注型用皿から取り外すことができ、この場合、結果として層が裂けまたは損傷を受けることはない。相互連結状態の埋め込み繊維50は、薄い層を注型用皿から穏やかに引き離すのを助ける。それゆえ、繊維層44は、組織構造体30の耐引き裂き性を高め、かかる繊維層44により、有利には、シリコーンの極めて薄い層を注型して裂けがない状態で注型用皿から安全に取り外すことができる。模様付き注型用皿52は、有利には、ウェットシリコーンが注型用皿の深い場所の中にたまるので、減少した厚さの場所を提供する。一形態では、注型用皿52の表面模様は、層全体にわたって多数の小さな穴を作る。これらの穴は、比較的認識できず、と言うのは、有利には、繊維層は、光がウェット状態の生きている組織を真似た艶のある繊維から多くの方向に反射されるので見た目に光沢のある組織を提供する。さらに、これらの穴は、シリコーンの第1の層32に裂けを生じさせる起点として働き、これは、有利には、切開を模倣する上で有利であり、と言うのは、上述したように、シリコーンの欠陥がシリコーンの大きなかつ多くの場合には非現実的な耐裂け性に打ち勝つのを助けるからである。しかしながら、シリコーンの第1の層32が薄く作られているので、この第1のシリコーン層は、脱型して取り出すのがより困難になる。注型用皿52内に位置している間に未硬化シリコーンの頂部上に配置される追加の繊維50は、シリコーンとの複合体を形成し、それにより、極めて薄いシートを脱型するのが可能になる。さらに、有利には、第1の層32のシリコーンが依然として未硬化状態にある間に第1の層32の頂部上にかつこれと関連して繊維50を設けることにより、シリコーンを繊維50に引き込んだり注型用皿52から引き離したりする繊維を製作する際に用いられる材料の種類に応じて、毛管作用または吸収性が得られる。この毛管作用の結果として、第1および第2の層32,34の注型中に極めて薄いスポットおよび均等な小さな穴が得られ、これらスポットおよび小穴は、外科用器具を用いて切開するのが容易でありしかもリアルである。この毛管作用は、模様が付いていないで滑らかな注型用皿上へのシートの形成を可能にし、層32,34がシリコーンの減少した厚さの場所を有するという同じ望ましい最終結果が得られる。シリコーン層32,34内の減少した厚さの隔離されたスポットは、メスによるリアルな切開を真似た裂けのための起点として働く。毛管状作用は、シリコーンが未硬化状態にあるときに繊維50がシリコーン上に配置されたときに起こり、そしてその結果として、繊維ストランドの少なくとも一部がポリマーまたはシリコーンポリマーで被覆されるようになる。シリコーンは、十分にマイクロファイバまたは超極細繊維に結合し、有利には、繊維が互いに当たって動かされたときに摩擦を減少させ、それによりつるつるしたほぼウェット状のインターフェースが作られる。一形態では、繊維の全てを被覆し、その後第1および第2の層のうちの1つまたは一方の中に埋め込む。第3の層44の繊維50を整えずまたは整列させず、ランダムにからみ合わせる。このからみ合った形態は、シリコーンの自然なリバウンドに抵抗し、それにより特に腹腔鏡下手術の際のように切れ味の鈍い切開を行っている際に組織構造体30のリアルな感触を大幅に高める。と言うのは、繊維が互いに対して滑り/動くことができ、それによりシリコーンの弾性を減衰させるからである。また、繊維50のからみ合った形態により、第1の層32と第2の層34の分離を、シリコーンまたは他の接着剤でくっつけられた層を引くのではなく、からみ合った繊維を引くという機能にする。ある意味では、繊維は、第1の層32と第2の層34との間の接着剤層または機械的リンケージとして働く。接着は、第3の層44のからみ合った繊維および層32,34へのこれらの接着度で決まる。第1の層と第2の層を引き離す際にからみ合った繊維を分離することにより、外科医は、大きな力を単に用いるのではなく、組織を配慮する技術を採用してこれを練習することができ、と言うのは、モデルがシリコーンで作られており、隣り合う層は、接着剤などで互いにしっかりとくっつけられているからである。したがって、本発明は、切開可能な組織モデルを製作する上で極めて効果的である。
【0018】
模擬組織構造体30を製造する方法は、シリコーンの第2の層34を用意するステップを含む。シリコーンの第2の層34を滑らかなまたは模様付き注型用皿に被着させてシリコーンの薄い層を作る。ヘラを用いてシリコーンを薄い第2の層34中に均等にカレンダー仕上げするのが良い。第2の層34のシリコーンが未硬化状態にある間、先に形成した第1の層32と第3の層44の組み合わせを第2の層34のシリコーンが未硬化状態にある間に第2の層34の下面42に被着させる。特に、ポリエステルファイバ50の第3の層44を第2の層34の下面42上に配置する。次に、繊維50を第2の層34上に突き固めて繊維50を第2の層34中に埋め込むのを助ける。オプションとして、任意のオプションとしての封入体または混入体48を第2の層34の下面42上に施す。封入体48を配置し、その後ポリエステルファイバ50を被着させる。封入体48は、繊維層と一緒になって、シリコーンが硬化しているときに第2の層34にくっつけられた状態になることができる。一形態では、第2の層34を硬化させ、その後第1の層32および第3の層44を第1の層32だけへの繊維のくっつけが望ましい場合、第2の層34上に重ねる。
【0019】
一形態では、所望の形状の中央窓を備えたフレームを用意する。フレーム(図示せず)を第1の層32の下面40に当てて第2の層34の方へ押し下げ、それにより第1の層32の周囲を第2の層34の未硬化シリコーンに密着させて第3の層44をこれら層相互間に捕捉して封入体48のあるなしを問わず繊維50のポケットを作る。一形態では、第1および第2の層32,34の周囲領域は、繊維がなく、それにより第1の層32と第2の層34を互いに直接接触させてポケットを作るとともにこれを実質的に密封する。別の形態では、ポケットを作らず、模擬組織構造体30の側部を図1に示すように開いたままにしておく。第2の層34のシリコーンを完全に硬化させ、その結果、第3の層が第1の層32の上面36および第2の層34の下面42に取り付けるとともにこれらの中にサンドウィッチのような仕方で埋め込む。第1の層32および第2の層34のうちの一方は、他方の層よりも厚さが大きいのが良い。別の形態では、第1の層32と第2の層34の両方は、同一の厚さを有する。
【0020】
模擬組織構造体30の最も基本的な形態は、シリコーンの第1のシート状層32の片側に繊維50を取り付けたものである。この基本的な形態を他のプロセスと組み合わせて外面または内面上に設けられたシリコーンの追加の層、繊維および封入体を有する複雑さがますます高いモデルを作ることができる。繊維50が片側に追加されたシリコーンの第1の層32を硬化させて注型用皿52から取り外した後、シリコーンの第2の層34を同じ注型用皿52に被着させるのが良く、そして先に作られた第1の層32を取り付け状態の第3の層44と一緒に未硬化状態の第2の層34上に繊維側を下に向けた状態で配置するのが良い。その結果、外部にシリコーンの薄い層を備えるとともに内部に超極細繊維および封入体を備えたサンドウィッチが種々の度合いの埋め込み度および/またはくっつき度ならびに種々の埋め込み場所および/またはくっつき場所を有する。次に、この集成体を単独で用いることができまたは大きくかつより複雑なモデルへのコンポーネントとして用いることができる。第1および第2の層の厚さは、約1.0ミリメートル~7.0ミリメートルであり、好ましくは0.5ミリメートル~3ミリメートルである。第3の層は、約2.5ミリメートル~25.0ミリメートルである。
【0021】
大型モデルで採用されるべき模擬組織構造体30の一実施例が図3A図3Cに示されている。図3A図3Cは、本発明の模擬組織構造体30を備えた骨盤モデル56を示している。骨盤モデル56は、模擬骨盤の一部分58を有する。模擬組織構造体30は、繊維50の第1の層32および第3の層44だけを有し、シリコーンの第2の層34は設けられていない。第1の層32の上面36は、繊維50が第1の層32と模擬骨盤との間に配置されるよう模擬骨盤58の方へ向いている。模擬骨盤58は、本発明の模擬組織構造体を取り付けるアーマチュアとしての役目を果たす。本発明の模擬組織構造体30を、他の解剖学的特徴部を有するよう示された模擬骨盤58に被せ、かかる他の解剖学的特徴部としては、第1の層32の内部の管59および欠陥部60が挙げられるが、これらには限定されない。第1の層32の縁部を図3Bに示されているように模擬骨盤58の裏側にそしてオプションとして第1の層32に沿う他の選択された領域の処にくっつける。骨盤モデル56に腹腔鏡を採用した外科医が接近すると、先ず最初に第1の層32の下面40を可視化する。第1の層32の模様付き表面および薄い第1の層32の下に位置する第3の層44の変化する配置および配列のため、モデル56は、模様付きなしでまたは下に位置する繊維層44なしでもシリコーンの一様な層よりもよりリアルに見えるであろう。模擬解剖学的構造体および/または封入体48を採用する場合、第1の層44は、有利には、模擬解剖学的構造体/封入体を部分的に覆い隠すのに役立ち、それによりこれら模擬解剖学的構造体/封入体を識別するのを困難にし、それにより切開の練習を医師にとってよりリアルにかつ困難にする。より多くの繊維を有する領域よりも第3の層44の厚い領域は、繊維の厚さの小さい第3の層44の薄い領域よりも下に位置する構造体/封入体48を覆い隠す。また、第1の層32は、それ自体厚さが様々であって良く、それにより下に位置する構造体/組織の互いに異なる可視化度の実現を可能にする。第1の層32は、赤色または桃色に染色されているのが良い。明るい色のまたは白色の繊維50は、上に位置する第1の層32をある特定の場所では色において明るく見えるようにする。下に位置する繊維の第3の層44により、第1の層32は、繊維がなくまたは繊維が少ない他の場所と比較してある特定の領域において明るい赤色または明るい桃色に見えるようになる。すると、外科医は、メスまたは切れ味の鈍い外科用器械で切開創62を作る練習を行う。切開創62が図3Aおよび図3Cに示されている。切開創62を作ると、第1の層32は、シリコーンそれ自体の弾性に起因してリバウンドすることはなく、その結果、切開創62は、非現実的に速い速度でまたは応答で閉じるように見える。これとは異なり、切開創62は、繊維層44がシリコーンそれ自体の弾性を減衰させまたは抑制する結果として、図示のように実質的に開いたままであろう。また、繊維層の助けによりシリコーンの極めて薄い層を成形することができるので、結果として得られるシリコーンの薄い層は、厚さが小さくしかもリバウンド性が低い。腹腔鏡による観察下において、ポリエステル繊維50は、繊維50が種々の方向に光を反射するので光沢があるように見え、それにより、有利には、液体がモデル内に存在する液体の助けなしでも、模擬組織構造体30が本物の組織のように濡れてまたは水分を持ったように見えるようにする。腹腔鏡下シミュレーションでは、模擬組織構造体は、シミュレータの外部ではまたは腹腔鏡によるシミュレーション環境の外側ではかつ裸眼で観察したときに本物のようには見えない場合があるが、可視化が人工的に照明された空胴性訓練装置内のスコープを介して行われるので、腹腔鏡によるシミュレーション環境の外側で用いられる開放手技に適した臓器については達成できない現実的な利点を達成するためにある特定の危険を冒す場合がある。本質的には、第3の層44の繊維50は、裸眼で観察したときに臓器または組織シミュレーションとして極めて非現実的に見える場合があるが、腹腔鏡下訓練環境内においては極めてリアルに見えるとともに挙動することができ、これについては以下に詳細に説明する。切開創62が作られた後、管59および下に位置する人工的組織構造体60を含む封入体48を露出させる。
【0022】
次に図4を参照すると、本発明の模擬組織構造体30が臓器モデルに採用されている別の実施例が示されている。図4は、本発明の模擬組織構造体30を構成する模擬腸間膜または網層68の頂部に位置する模擬腸を含む腹部臓器モデル64を示している。構造体30の底面40は、上方に向いており、血管系70が第1の層32に取り付けられた封入体48として設けられている。血管系70は、第1の層32に取り付けられ、その後繊維50の第3の層44が埋め込まれる。それゆえ、血管系は、第1の層32越しに明確に視認できる。模擬腸間膜層68は、黄色に染色されたシリコーンで作られ、血管系は、色が赤色でありシリコーンで作られている。
【0023】
実質的に扁平なまたはポケット状の模擬組織構造体30を形成する方法を上記において説明したが、次に、本発明の管状模擬組織構造体30を形成する方法について説明する。未硬化シリコーンを用意し、これを回転中のマンドレルに均等に塗布して第1の層32を形成する。第1の層32のシリコーンが依然としてウェット状態にある間、ポリエステル繊維層を被着させて繊維50の第3の層44を形成する。繊維をランダムにまたは均等に被着させまたは巧妙に被着させて多かれ少なかれ繊維が意図的に配置されて所望の模擬結果をもたらす領域を形成する。シリコーンの第1の層32を硬化させて繊維50を第1の層32中に埋め込む。硬化後の第1の層32をマンドレルから剥がし、この硬化後の第1の層は、筒の形を有し、第1の層32の下面40は、筒の内部を形成するとともに筒のルーメンを画定している。第1の層32および第3の層44の筒の形を裏返して繊維層44を内方に配置し、第1の層32の下面40は、筒の滑らかな外面を形成する。封入体48を第1の層32を裏返した後かまたは第1の層32の形成前かのいずれかに筒の外面に取り付けるのが良い。別の形態では、筒は裏返しにされない。未硬化シリコーンの第1のストリップを表面に被着させる。第1のストリップは、管状の第1の層32の長さにほぼ等しい長さを有する。管状の第1の層32および第3の層44を第1のストリップに整列させてこれらの組み合わせの第1の面が未硬化状態の第1のストリップに向いた状態で第1のストリップ上に載せ、そしてこれを突き固めて繊維50を第1のストリップ中に埋め込む。第1のストリップを硬化させて第3の層44の繊維50を第1のストリップ中に埋め込む。未硬化シリコーンの第2のストリップを表面に被着させる。第2のストリップは、管状の第1の層32の長さにほぼ等しい長さを有する。管状の第1の層32、第3の層44および第1のストリップを第2のストリップのシリコーンが依然としてウェット状態にある間に第2のストリップ上に載せて第3の層44の繊維50を埋め込む。管状の第1の層32を第1のストリップからオフセットした状態で第2のストリップに被着し、第3の層44の露出繊維の隣接の部分がウェットな第2のストリップに好ましくに第1のステップに隣接した状態でかつ第1のストリップを僅かに覆った状態で接触してほぼ連続した第2の層34を形成するようにする。このプロセスを繰り返し実施して第2の層34を複数のまたは任意の数のシリコーン区分またはストリップから形成する。ストリップは、円筒形表面を適切に覆って第3の層を第2の層34中に埋め込むことができれば長方形であっても良く三角形であっても良くまたは任意他の形状であっても良い。異なる臓器モデル、例えば腸を管状の形を備えた模擬組織構造体30で形成することができ、任意の封入体48を繊維層44の被着前にまたは繊維層44の後に第1の層32のいずれか一方の側に直接または第2の層34に直接設けても良い。別の形態では、第2の層34を被着させず、模擬組織構造体は、第1、第2および第3の層ならびに封入体48を有する。
【0024】
別の形態では、それ自体または別の大型モデルまたは組織構造体、例えば図3A図3Cおよび図4を参照して上述した腹部臓器モデル64または骨盤モデル56の一部として形成された模擬組織構造体30は、図5に示されている模擬腹腔鏡的環境、例えば外科的訓練器具10内に配置されるよう寸法決めされるとともに形作られている。当然のことながら、模擬組織構造体は、開放外科的処置を練習するのにも使用できる。
【0025】
患者の胴、例えば腹部領域を模倣して作られた外科的訓練器具10が図5に示されている。外科的訓練器具10は、ユーザから実質的に隠されていて、本明細書に記載する模倣されもしくは生きている組織またはモデル器官もしくは訓練モデル等を受け入れる本体キャビティ12を備えている。本体キャビティ12にはユーザが器具を用いて本体キャビティ12内に見えるように設けられた組織または練習用モデルに対して手術法を実施することにより穿通される組織模擬領域14を介してアクセスされる。本体キャビティ12は、組織模擬領域を通ってアクセス可能であるものとして示されているが、変形例として、手を使ったアクセス器具または単一部位ポート器具を用いて本体キャビティ12にアクセスしても良い。例示の外科的訓練器具が2011年9月29日に出願された米国特許出願第13/248,449号明細書(発明の名称:Portable Laparoscopic Trainer)に記載されており、この米国特許出願を参照により引用し、その記載内容全体を本明細書の一部とする。外科的訓練器具10は、腹腔鏡下または他の低侵襲手術手技を練習するのに特に好適である。
【0026】
依然として図5を参照すると、外科的訓練器具10は、少なくとも1本のレッグ又は脚20によって基部18に連結されるとともにこの基部から間隔を置いて設けられた頂部カバー16を有している。図5は、複数のレッグ20を示している。外科的訓練器具10は、患者の胴、例えば腹部領域を模倣して作られている。頂部カバー16は、患者の前方表面を表しており、頂部カバー16と基部18との間の空間12は、器官が存在する患者の内部または体内腔を表している。外科的訓練装置10は、患者が手術手技を受ける場合の模擬(シミュレーション)において種々の手術手技およびこれらと関連した器械を教示し、練習し、そして実証するための有用なツールである。外科用器械は、組織模擬領域14を通るとともに頂部カバー16にあらかじめ設けられた孔22を通ってキャビティ12中に挿入される。種々のツールおよび技術を用いて頂部カバー16を穿通し、それにより頂部カバー16と基部18との間に配置された模擬器官または練習用モデルに対して模擬手技を実施することができる。基部18は、模擬組織モデルまたは生きている組織をステージングしまたは保持するためのモデル受け入れ領域24またはトレーを有する。基部18のモデル受け入れ領域24は、モデル(図示せず)を定位置に保持するフレーム状要素を有している。模擬組織モデルまたは生きている器官を基部18上に保持するのを助けるため、引っ込み可能なワイヤに取り付けられたクリップが場所26のところに設けられている。引っ込み可能なワイヤは、伸長され、次にクリップ留めされて組織モデルを組織模擬領域14の実質的に下の定位置に保持する。組織モデルを保持する他の手段としては、モデル受け入れ領域24内で基部18に取り付けられたフック・アンド・ループ式(所謂マジックテープ(登録商標)式または面ファスナー型)締結材料のパッチが挙げられ、このフック・アンド・ループ式締結材料のパッチは、モデルに取り付けられたフック・アンド・ループ式締結材料の補足し合う小片に取り外し可能に連結可能である。
【0027】
頂部カバー16にヒンジ留めされたビデオディスプレイモニタ28が図5に閉じられた向きで示されている。ビデオモニタ28は、画像をモニタに送る種々の視覚的システムに接続可能である。例えば、あらかじめ設けられた孔22またはキャビティ内に設けられたウェブカム(ウェブカメラ)のうちの一方を通って挿入され、そして模擬手技を観察するために用いられる腹腔鏡をビデオモニタ28および/またはモバイルコンピューティング装置に接続して画像をユーザに提供するのが良い。また、音声記録または送り出し手段もまた提供されて訓練装置10と一体化され、それにより音声および視覚的機能を提供するのが良い。携帯式記憶装置、例えばフラッシュドライブ、スマートフォン、ディジタルオーディオもしくはビデオプレーヤまたは他のディジタルモバイル装置もまた実証目的で訓練手技を記録するとともに/あるいはあらかじめ記録された映像をモニタ上にプレイバックするために設けられる。当然のことながら、音声視覚的出力をモニタよりも大きなスクリーンに提供する接続手段が設けられる。別の変形例では、頂部カバー16は、ビデオディスプレイを備えておらず、ラップトップ型コンピュータ、モバイルディジタル装置またはタブレットと接続し、これをワイヤまたはワイヤレスで訓練装置に接続する手段を含む。
【0028】
組立て時、頂部カバー16は、レッグ20が実質的に周囲に沿って配置されるとともに頂部カバー16と基部18との間に相互に連結された状態で基部18の真上に位置決めされる。頂部カバー16と基部18は、実質的に同一の形状および寸法のものでありかつ実質的に同一の周囲外形を有している。内部キャビティは、視界から部分的にまたは完全に隠されている。図5に示されている変形例では、レッグ部は、周囲光が内部キャビティをできるだけ多く照明することができ、しかも有利には、携帯性に都合がいいようにできるだけ軽量化をもたらすために開口部を有している。頂部カバー16は、レッグ部20から取り外し可能であり、レッグ部20は、基部18に対して取り外し可能でありまたは基部18に対してヒンジ等により折り畳み可能である。したがって、非組立て状態の訓練装置10は、携帯を容易にする減少高さを有している。本質的には、外科的訓練装置10は、ユーザからは隠されている模擬本体キャビティ12を備えている。本体キャビティ12は、少なくとも1つの組織模擬領域14および/または頂部カバー16に設けられた孔22を介してアクセス可能である少なくとも1つの手術モデルを受け入れるよう構成されており、ユーザは、孔22を通ってモデルにアクセスして腹腔鏡下または内視鏡下低侵襲手術法を練習することができる。
【0029】
次に図6図8を参照して、模擬組織構造体30の複合体を含む模擬直腸モデル100について以下に説明する。模擬直腸モデル100は、シリコーンで作られた第1の管102を有する。第1の管102は、第1の管102が縫合糸を保持することができるよう埋め込み状態のメッシュ材料を有するのが良く、縫合糸は、抜けることがなくまたはシリコーンを裂くことがないようになっている。第1の管102は、近位端と遠位端との間に延びる第1のルーメン103を有する。
【0030】
模擬直腸モデル100は、第2のルーメン105を備えるとともに近位端と遠位端との間に延びる第2の管104を更に有する。第2の管104は、黄色のウレタンフォームで作られている。フォームの層を形成し、次に円筒形の形状に折り曲げ、そして端を互いにくっつけて管を形成する。ウレタンフォームの第2の管104の前端部は、図6に示されているように薄い。第2のルーメン105は、第1の管102を同心状の仕方で第2のルーメン105内に受け入れるよう寸法決めされている。第2の管104は、シアノアクリレートグルーを用いて第1の管102にくっつけられている。
【0031】
モデル100は、第3の管106を更に有する。第3の管106は、第1の層32、第2の層34および第3のルーメン107を構成する円筒形管の状態に形成されたポリフィル繊維50の第3の層44を有する上述したのと同じ模擬組織構造体30である。第3の管106の第1の層32は、色が黄色であり、第2の層34は、色が白色である。第3の層44は、白色ポリフィル繊維で作られている。第3のルーメン107の直径は、第2の管104を偏心した仕方で第3のルーメン107内に受け入れるよう寸法決めされている。第3の管106は、接着剤、例えばシアノアクリレートグルーで第2の管104にくっつけられている。
【0032】
模擬直腸モデル100は、第4の管108を更に有する。第4の管108は、第1の層32およびポリフィル繊維50の第3の層44を有する上述したのと同じ模擬組織構造体30であるが、第2の層34を備えておらず、この第2の層34は、円筒形管の状態に形成されて第4のルーメン109を形成し、自由ポリフィル繊維の第3の層44が第4のルーメン109に向くようになっている。第2の層34は、色が桃色である。第3の層44は、白色のポリフィル繊維で作られている。一形態では、第4の管108は、色が白色である第2の層34を有する。第4のルーメン109の直径は、第3の管106を同心状の仕方で第4のルーメン109内に受け入れるよう寸法決めされている。第4の管108は、選択された領域について接着剤で第3の管106にくっつけられている。
【0033】
模擬直腸モデル100は、第3の管106と第4の管108との間に配置された模擬前立腺系110を更に有する。模擬前立腺系110は、モデル100の前側のところに配置されている。模擬前立腺系110は、模擬前立腺、模擬精嚢、模擬膀胱、模擬尿道、および模擬精管を含む。模擬尿道および模擬精管は、中実管の状態に形成されたシリコーンで作られている。模擬精嚢は、模擬精管上に被覆成形されたウレタンフォームで作られている。模擬前立腺は、模擬尿道上に被覆成形されたウレタンフォームで作られている。
【0034】
模擬直腸モデル100は、モデル100の前側のところで第4の管108と第3の管106との間に配置された状態で模擬前立腺系110を包囲している追加のポリフィル材料を更に有する。
【0035】
模擬直腸モデル100は、下結腸内にあるガンについて経肛門的全直腸間膜切除術(TaTME)を練習するのに素晴らしいと言えるほど適している。かかる外科的手技では、ガン性模擬直腸中に挿入されたチャネルに連結された封止可能なポートを経て肛門から接近する。巾着縫合が直腸のガン性部分を封止する。巾着縫合は、モデル100のユーザが練習することができる縫合技術の一形式である。この巾着縫合では、直腸の周囲周りを縫合し、そしてこれをきつくまたはぴんと引いて腫瘍を含む直腸の領域を封止する。第1の管102は、巾着縫合糸を定位置に保持するために管のシリコーン層内に埋め込まれたメッシュを有する。第1の管102のシリコーン層により、巾着縫合糸をきつく引くことができる。次に外科医は、直腸間膜を表す第2の管104を後方に切り裂く。外科医は、引き続き第3の管106の第1の層32を切開し、次に第3の管106の第3の層44をその円周方向に切開し、その際、第3の管106の第2の層34を穿刺しないよう注意し、と言うのは、そうすると、隣接の模擬前立腺系110が危険にさらされるからである。第3の管106の第1の層32は、黄色であり、これは、模擬直腸間膜、第2の管104と同じ色であり、したがって第2の管104と識別するのが困難になる。第3の層44をその円周方向に切開している間、第2の層34を穿刺しないよう注意を払わなければならず、と言うのは、第3の層44は、白色ポリフィルで作られ、第2の層34は、白色シリコーンで作られ、それによりこれらを識別するのが困難であり、かくして医師が相当な注意を払う練習を教示する。第4の管108および特に第4の管108の第2の層34は、赤色であり、これは、筋および骨盤底を表している。第4の管108の第2の層34を偶発的に切開したりこの場所において円周方向に切開を進めたりすることにより、場合によっては、模擬前立腺系110との交差が生じる場合があり、このモデル100は、外科医にこれを回避することを教示する。第3の管106の第3の層44内での切開により、模擬前立腺系110の安全な切除が行われる。後方に切開した後、前方切開が第3の管106に達するまで模擬直腸間膜(第2の管104)の薄い区分を切開することによって始まる。第3の管106、特に第3の管106の第3の層44内で行われているとき、切開は、この切開が後方切開と出会うまで円周方向に進む。模擬直腸間膜(第2の管104は)は、減少した厚さの領域を有し、第3の管106は、第2の管104に取り付けられかつ黄色の第1の層32と黄色の第2の管104と比較したときに見分けがつかないほどに着色されている。模擬前立腺系110は、図7に示されているように第3の管106の頂部上に位置し、この模擬前立腺系は、ポリフィル繊維112で包囲され、それにより、第3の管106内で切開を行っている間、第3の管106の第3の層44のポリフィル繊維から識別するのが困難になる。切開は、骨盤腔が壊れるまで進む。
【0036】
模擬直腸モデル100の近位端部は、経肛門アダプタに取り付けられるのが良い。経肛門アダプタは、外科的訓練装置10の横からモデル100中への接近を可能にするよう頂部カバー16を外科的訓練装置10の基部18から離隔させるために用いられるレッグ20である。経肛門アダプタは、第1の管102の第1のルーメン103に連結されている開口部を有する。経肛門アダプタの開口部を包囲した状態で、軟質シリコーンが肛門を模倣するよう設けられている。外科的TaTMA手技の実施は、円周方向巾着縫合糸が経肛門アダプタの近位側に配置され、模擬前立腺経が経肛門アダプタの遠位側に配置された状態で経肛門アダプタの開口部を通って行われる。
【0037】
模擬直腸モデル100を製造するには、先ず最初にメッシュシースをマンドレルに取り付け、未硬化シリコーンをメッシュ上に塗布する。第2の管104(模擬間膜直腸)は、平べったいシートの状態に注型されるウレタンフォームで作られている。フォームは、薄い区分を有するよう注型されている。模擬直腸間膜を第1の管102周りで筒の状態に巻いて第2の管104を作る。シアノアクリレートグルーをプライマと一緒に用いて第2の管104の厚い部分を一緒にして模擬直腸100の後方側にくっつける。第3の管106を形成するため、黄色のシリコーンの薄い平板状のシートをフォーム上に注型して第1の層32を作る。第1の層32のシリコーンが依然としてウェットな状態にある間、ポリフィルの層を均等に頂部上に配置してポリフィルの第3の層44を作る。第1の層32が硬化した後、これを脱型する。白色に着色されまたは透明なシリコーンの新たな層をフォーム上に注型して第2の層34を形成する。先に硬化した第1の層32をポリフィルの第3の層44と一緒にポリフィルの第3の層44が第2の層34のウェットシリコーンに触れた状態で頂部上に配置する。この集成体を脱型しそしてこれを第2の管104に巻き付けて円筒形の第3の管106を形成し、シアノアクリレートグルーを用いてこの円筒形の第3の管を第2の管104にくっつける。第4の管108を第3の管106とほぼ同じ仕方で形成する。
【0038】
第4の管108を形成するため、白色または透明なシリコーンの薄い平板状シートをフォーム上に注型して第1の層32を作る。第1の層32のシリコーンが依然としてウェットな状態にある間、ポリフィルの層を均等に頂部上に配置してポリフィルの第3の層44を作る。第3の層44が図7に示されているように厚い領域を作るために多量のポリフィル繊維を追加する。第1の層32が硬化した後、第3の層44をくっつけ、そして第1の層32と第3の層44の組み合わせを脱型する。赤色に着色されたシリコーンの新たな層をフォーム上に注型して第4の管108の第2の層34を形成する。先に硬化した第1の層32をポリフィルの第3の層44と一緒にポリフィルの第3の層44が第2の層34のウェットシリコーンに触れた状態で頂部上に配置する。いったん硬化すると、この集成体を脱型し、そして第3の管106に巻き付けて円筒形の第4の管108を形成し、シアノアクリレートグルーまたはシアノシリコーンドットを用いてこの円筒形の第4の管を第3の管106にくっつける。模擬前立腺系110をあらかじめ形成し、そして第3の管106と第4の管108との間に配置する。
【0039】
次に図9Aを参照すると、模様付き成形面を有する注型用皿52が示されている。この表面は、厚さが様々であるのが良い。未硬化シリコーンの第1の層32を注型用皿52内に注ぎ込む。この未硬化シリコーンが硬化する前に、繊維の第3の層44aを第1の層32の頂部上に配置して第3の層44aの片側の繊維が第1の層32中に埋め込まれるようにする。第1の層32を硬化させる。硬化後、第1の層32を第3の層44aの助けにより注型用皿52から取り外す。第3の層44aおよび第1の層32を注型用皿52から引き上げる。第3の層44aが第1の層32にくっつけられているので、第3の層44aを引き上げると、第3の層44aの繊維は、取り出し力を分布させて有利には、薄い第1の層32が取り出し中に裂けるのを阻止する。第1の層32と第3の層44aの組み合わせを取り出した後、これを裏返しにして図9Bに示されているようにウェットシリコーンの第2の層34と一緒に第2の注型用皿52に並置した状態に配置する。繊維の別の第3の層44bをウェットシリコーンの第2の層32上に配置する。封入体48を第3の層44bを覆って配置する。封入体48の一部を第2の層34に接触させ、この一部は、第2の層34が硬化を終えたときに第2の層34内に埋め込まれたままである。第3の層44bもまた、第2の層34中に埋め込む。一形態では、封入体48は、第2の層34内には埋め込まれず、これら封入体は、第3の層44a,44b相互間に配置される。第1の層32を第3の層のうちの一方44aと一緒に第2の層34、封入体48および他方の第3の層44bに被着させると、構成が完了する。別の形態では、第1の層32を第2の層34が依然として未硬化状態にある間に第2の層34に接触させて第1の層32をくっつけ、そして封入体48および第3の層44a,44bを含むポケットを作る。別の形態では、第3の層44aもまた部分的に、シリコーンが依然としてウェットな状態にある間に第2の層34中に埋め込んで第3の層44aを第2の層34中に埋め込む。図9Bに示されている封入体48は、シリコーンで作られた血管系であるが、本発明はこれには限定されず、封入体48は、任意の封入体、解剖学的構造、ランドマーク、臓器、神経、組織、腫瘍などであって良い。
【0040】
次に図10および図11を参照するとともに特に図10Aおよび図10Bを参照すると、未硬化シリコーンを受け入れる2本のチャネル72を備えた注型用皿52が示されている。2本のチャネル72が示されているが、未硬化材料を受け入れる任意のパターンを受け入れて所望の構造体を形成するための任意のパターンを採用することができ、かかる所望の構造体としては、解剖学的構造体およびランドマーク、組織、神経、血管系、腫瘍、臓器などが挙げられるが、これらには限定されない。材料としては、未硬化シリコーン、未硬化ウレタンフォーム、未硬化シリコーンフォームなどが挙げられる。一形態では、ウェットな未硬化ウレタンフォームをチャネル72中に注ぎ込んで図11Aに示されているように第1の封入体48aを作る。第1の繊維層44aをチャネル72内で未硬化フォーム48aの頂部上に配置して第1の層44aを未硬化フォーム中に埋め込む。チャネル72内の未硬化シリコーンを硬化させ、その結果、このシリコーンは、第1の繊維層44aにくっつけられた状態になる。第1の繊維層44aを成形された封入体48aと一緒に注型用皿52から取り外して図11Bに示されているように未硬化シリコーンの第1の層32に並置させる。第1の繊維層44aをこれに取り付けられた第1の封入体48aと一緒に、シリコーンが依然としてウェットな状態にある間に第1の層32中に押し込んで第1の封入体48aおよび第1の繊維層44aを図11Cに示されているように第1の層32中に埋め込む。第1の封入体48aは、神経を示すとともにこれら神経を真似るよう形作られているが、第1の封入体48aは、模擬組織構造体に適した封入体のどのような形式であっても良い。繊維で作られた第2の繊維層44bを1つまたは2つ以上の第2の封入体48bと一緒に用意する。第2の封入体48bを第1の繊維層44aおよび第1の封入体48aに関して上述したのと同じ仕方で第2の繊維層44bに取り付け、これら第2の封入体は、シリコーン、シリコーンフォーム、ウレタンフォームなどで作られるのが良い。1つまたは2つ以上の第2の封入体48bを成形するためのパターンを備えた注型用皿を用意する。パターンに例えばウェットシリコーンを充填し、そして未硬化の状態にある間、第2の繊維層44bを注型用皿および第2の封入体48bのウェットシリコーン上に重ねて第2の封入体48bを第2の繊維層44bの第1の側に沿って第2の繊維層44bに埋め込むとともにこれに取り付ける。第2の繊維層44bの第2の側を第2の層34が依然として未硬化状態にある間に第2の層34中に埋め込む。第2の封入体48bおよび第2の層34を硬化させると、第2の繊維層44bおよび第2の層34を第2の封入体48bと一緒にそれぞれの注型用皿から取り外して第1の繊維層44a、第1の層32および第1の封入体48a上に配置し、それによりサンドウィッチのような模擬組織構成体を作る。第2の封入体48bは、血管系または任意他の解剖学的構造体、組織、臓器、神経、腫瘍などを真似るよう形作られている。第1の繊維層44aおよび第2の繊維層44bのうちの1つまたは2つ以上は、封入体48a,48bのうちの任意の1つまたは2つ以上をスケルトン化するための理想的な切開経路を作り、繊維を通る切開経路は、本物に近い見た目と感触を作り、繊維は、これらの繊維層および封入体を取り出しのために分離して露出させるよう切断可能であるとともに/あるいはこれらの間隔が拡張可能である。
【0041】
モデル30の任意の部分を1種類または2種類以上の有機塩基ポリマーで作ることができ、かかる有機塩基ポリマーとしては、ヒドロゲル、単独重合体ヒドロゲル、多重合体ヒドロゲル、ゴム、ラテックス、ニトリル、タンパク、ゼラチン、コラーゲン、ソイ、非有機塩基ポリマー、例えば熱可塑性エラストマー、クラトン、シリコーン、フォーム、シリコーンを主成分とするフォーム、ウレタンを主成分とするフォーム、およびエチレンビニルアセテートフォームなどが挙げられるがこれらには限定されない。任意の塩基ポリマー中には、1種類または2種類以上の充填剤、例えば布、織り繊維または不織繊維、ポリエステル、ナイロン、コットンおよびシルクを採用することができ、導電性充填剤材料、例えば黒鉛、白金、銀、金、銅、その他の添加剤、ゲル、油、コーンスターチ、ガラス、ドロマイト、炭酸塩鉱物、アルコール、デドナ(deadner)、シリコーン油、顔料、フォーム、ポロキサマー(poloxamer)、コラーゲン、ゼラチンなどを採用することができる。用いられる接着剤としては、シアノアクリレート系、シリコーン系、エポキシ系、スプレー型接着剤、ゴム系接着剤などが挙げられるがこれらには限定されない。
【0042】
本明細書において開示した実施形態および変形例に対して種々の改造を行うことができることは言うまでもない。したがって、上述の説明は、本発明を限定するものと解されるべきではなく、単に好ましい実施形態の例示として解されるべきである。当業者であれば、本発明の範囲および精神の範囲内で他の改造例を想到するであろう。
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図11C