(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-02
(45)【発行日】2023-08-10
(54)【発明の名称】印刷システム
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20230803BHJP
【FI】
B41J2/01 101
B41J2/01 125
B41J2/01 301
(21)【出願番号】P 2022010009
(22)【出願日】2022-01-26
(62)【分割の表示】P 2020014350の分割
【原出願日】2013-03-05
【審査請求日】2022-02-24
(32)【優先日】2012-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2012-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2012-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2012-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2012-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2012-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514210005
【氏名又は名称】ランダ コーポレイション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ランダ,ベンジオン
(72)【発明者】
【氏名】シュマイザー,アハロン
(72)【発明者】
【氏名】アシュカナジ,イトシャク
【審査官】長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-097239(JP,A)
【文献】特開平11-042811(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
B41M 1/00-3/08
B41F 16/00-16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.ベルトシームを有する無端のシーム付きのベルトを含む中間転写部材と、
b.シーム付きのベルトの外面にインク
の液滴が
適用されて外面上にインク画像を形成する画像形成ステーションと、
c.インク画像
を乾燥させることによってインク画像から得られ
る残留膜が、ベルトの外面から基体に転写される、インプレッションステーションと、
を含む印刷システムであって、
i.インプレッションステーションは、インプレッションシリンダと圧力シリンダとの間にニップがある、回転するインプレッションシリンダと圧力シリンダとを含み、
ii.圧力シリンダは、圧縮可能なブランケットの端間にブランケット不連続部を残して圧力シリンダの全周未満を覆っている圧縮可能なブランケットを付けており、
iii.ベルトの駆動は
、残留膜をインプレッションステーションに運ぶのに作用し、
iv.ベルトの駆動は、回転する圧力シリンダの表面速度に対して調節されて、ベルトシームがニップを通過するときにはいつでも、ベルトシームが圧縮可能なブランケットの両端の間のブランケット不連続部と揃う、
印刷システム。
【請求項2】
ローラが、ブランケット不連続部における圧力シリンダ上に提供される、請求項1に記載の印刷システム。
【請求項3】
ベルトの移動速度の時間的変化により、ベルトシームがニップを通過するときにベルトシームがブランケットの不連続部と揃う、請求項1又は2に記載の印刷システム。
【請求項4】
ベルトシームがニップを通過するときにベルトシートがブランケット不連続部と揃うようにベルトが加速される、請求項1~3のいずれか一項に記載の印刷システム。
【請求項5】
ニップの上流及び下流にそれぞれ配置された第1のダンサー及び第2のダンサーが、ベルトの駆動の調節に作用する、請求項1~4のいずれか一項に記載の印刷システム。
【請求項6】
ダンサーは、ニップの一方の側のたるみを減少させ、他方の側のたるみを増加させることによってベルトの位相を進める又は遅らせるように作用する、請求項5に記載の印刷システム。
【請求項7】
ニップの上流及び下流にそれぞれ配置された第1のローラ及び第2のローラが、ベルトの駆動の調節に作用する、請求項1~6のいずれか一項に記載の印刷システム。
【請求項8】
前記第1のローラ及び前記第2のローラは、ニップの一方の側のたるみを減少させ、他方の側のたるみを増加させることによってベルトの位相を進める又は遅らせるように作用する、請求項7に記載の印刷システム。
【請求項9】
A.インプレッションシリンダは、グリッパに適応するための不連続部を有し、
B.インプレッションシリンダ、圧力シリンダ、及びベルトの駆動は、ベルトシームがニップを通過するときにいつでも、ベルトシームが(i)圧縮可能なブランケットの端間におけるブランケット不連続部、及び(ii)インプレッションシリンダの不連続部、の両方と揃うように調節されている、
請求項1~8のいずれか一項に記載の印刷システム。
【請求項10】
a.ベルトシームを有する無端のシーム付きのベルトを含む中間転写部材と、
b.シーム付きのベルトの外面にインク
の液滴が
適用されて外面上にインク画像を形成する画像形成ステーションと、
c.インク画像
を乾燥させることによってインク画像から得られ
る残留膜が、ベルトの外面から基体に転写される、インプレッションステーションと、
を含む印刷システムであって、
i.インプレッションステーションは、インプレッションシリンダと圧力シリンダとの間にニップがある、回転するインプレッションシリンダと圧力シリンダとを含み、
ii.ベルトの駆動は
、残留膜をインプレッションステーションに運ぶのに作用し、
iii.ベルトの駆動は、回転する圧力シリンダの表面速度に対して調節されて、ベルトシームがニップを通過するときにはいつでも、ベルトシームが、圧力シリンダの外側に固定され、圧力シリンダとともに回転する所定の位置と揃う、
印刷システム
【請求項11】
ベルトシームを有する無端のシーム付きのベルトを含む中間転写部材、画像形成ステーション、及びインプレッションステーションを含む印刷システムの運転方法であって、
ここで前記インプレッションステーションは、インプレッションシリンダと圧力シリンダとの間にニップがある、インプレッションシリンダと圧力シリンダとを含み、圧力シリンダは、圧縮可能なブランケットの端間にブランケット不連続部を残して圧力シリンダの全周未満を覆っている圧縮可能なブランケットを付けており、
前記方法は、
a.画像形成ステーションにおいて、シーム付きのベルトの外面にインク
の液滴を
適用して、外面上にインク画像を形成すること、
b.ベルトを駆動して、インク画像
を乾燥させることによってインク画像から得られ
る残留膜をインプレッションステーションに運ぶこと、
c.インプレッションステーションにおいて、ベルトの外面から基体に
、残留膜を転写すること、
を含み、
ベルトの駆動は、回転する圧力シリンダの表面速度に対して調節されて、ベルトシームがニップを通過するときにはいつでも、ベルトシームが、圧縮可能なブランケットの両端の間のブランケット不連続部と揃う、
印刷システムの運転方法。
【請求項12】
ローラが、ブランケット不連続部における圧力シリンダ上に提供される、請求項11に記載の運転方法。
【請求項13】
ベルトの移動速度の時間的変化により、ベルトシームがニップを通過するときにベルトシームがブランケットの不連続部と揃う、請求項11又は12に記載の運転方法。
【請求項14】
ベルトシームがニップを通過するときにベルトシートがブランケット不連続部と揃うようにベルトが加速される、請求項11~13のいずれか一項に記載の運転方法。
【請求項15】
ニップの上流及び下流にそれぞれ配置された第1のダンサー及び第2のダンサーが、ベルトの駆動の調節に作用する、請求項11~14のいずれか一項に記載の運転方法。
【請求項16】
ダンサーは、ニップの一方の側のたるみを減少させ、他方の側のたるみを増加させることによってベルトの位相を進める又は遅らせるように作用する、請求項15に記載の運転方法。
【請求項17】
ニップの上流及び下流にそれぞれ配置された第1のローラ及び第2のローラが、ベルトの駆動の調節に作用する、請求項11~16のいずれか一項に記載の運転方法。
【請求項18】
前記第1のローラ及び前記第2のローラは、ニップの一方の側のたるみを減少させ、他方の側のたるみを増加させることによってベルトの位相を進める又は遅らせるように作用する、請求項17に記載の運転方法。
【請求項19】
A.インプレッションシリンダは、グリッパに適応するための不連続部を有し、
B.インプレッションシリンダ、圧力シリンダ、及びベルトの駆動は、ベルトシームがニップを通過するときにいつでも、ベルトシームが、(i)圧縮可能なブランケットの端間におけるブランケット不連続部、及び(ii)インプレッションシリンダの不連続部、の両方と揃うように調節されている、
請求項11~18のいずれか一項に記載の運転方法。
【請求項20】
ベルトシームを有する無端のシーム付きのベルトを含む中間転写部材、画像形成ステーション、及びインプレッションステーションを含む印刷システムの運転方法であって、
ここで前記インプレッションステーションは、インプレッションシリンダと圧力シリンダとの間にニップがある、インプレッションシリンダと圧力シリンダとを含み、
前記方法は、
a.画像形成ステーションにおいて、シーム付きのベルトの外面にインク
の液滴を適用して、外面上にインク画像を形成すること、
b.ベルトを駆動して、インク画像
を乾燥させることによってインク画像から得られ
る残留膜をインプレッションステーションに運ぶこと、
c.インプレッションステーションにおいて、ベルトの外面から基体に
、残留膜を転写すること、
を含み、
ベルトの駆動は、回転する圧力シリンダの表面速度に対して調節されて、ベルトシームがニップを通過するときにはいつでも、ベルトシームが、圧力シリンダの外側に固定され、圧力シリンダとともに回転する所定の位置と揃う、
印刷システムの運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷システムに関する。
【背景技術】
【0002】
両出願とも参照により本明細書に組み込まれる、米国特許仮出願第61/606,913号に基づく優先権を主張する同時係属のPCT出願番号PCT/IB2013/051716(代理人整理番号LIP5/001PCT)は、インク画像を形成するためにインクの液滴を中間転写部材上に誘導することを含む印刷プロセスを開示し、このインクは、水性キャリア中に有機ポリマー樹脂と着色剤(例えば顔料又は染料)とを含む。ベルト又はドラムとすることができる中間転写部材は疎水性の外面を有し、これにより、各インク液滴が中間転写部材に当たると拡散してインク膜を形成する。中間転写部材の表面が濡れることによって各インク液滴を拡散させることなく、各液滴によって形成されるインク膜が収縮する及び中間転写部材上に小球を形成する傾向を打ち消すために措置がとられる。インク画像は、次に、中間転写部材によって運ばれている間に加熱され、インク画像から水性キャリアが蒸発し、樹脂と着色剤との残留膜が後に残り、これは次いで、基体上に転写される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、このような印刷プロセスに採用され得るが他のオフセット印刷システムでの用途も見出され得る中間転写部材の構成に関係がある。上述の出願で説明される中間転写部材は、疎水性の外面を備える剥離層と補強層とを有する可撓性ブランケットを含む連続ループベルトである場合がある。中間転写部材はまた、基体の表面への剥離層の順応性を提供するため、熱の貯蔵部又は熱の部分障壁として作用するため、剥離層に静電荷が印加されることを可能にするため、全体としてまとまった/一体のブランケット構造を形成する異なる層同士を接続するため、及び/又はそれらの間の分子の移動を防ぐために、付加的な層、例えば、圧縮可能層及び順応(conformational)層を含む場合がある。その支持構造体の上を回転する際のブランケット上の摩擦抵抗を制御するために、内側層をさらに提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様によれば、インク画像を形成するために水性キャリア中に有機ポリマー樹脂と着色剤とを含むインクの液滴を中間転写部材の外面に適用する画像形成ステーションと、樹脂と着色剤との残留膜を残すためにインク画像を乾燥させる乾燥ステーションと、残留膜を基体に転写するインプレッションステーションとを備える印刷システムであって、中間転写部材が薄い可撓性の実質的に伸張しないベルトを含み、インプレッションステーションが、インプレッションシリンダと、圧力シリンダとの係合中にベルトをインプレッションシリンダに付勢してベルトの外面上に載っている残留膜をベルトとインプレッションシリンダとの間を通る基体上に転写させるための圧縮可能な外面を有する圧力シリンダとを備え、ベルトが、圧力シリンダの円周よりも大きい長さを有し、ベルトの長さのほんの一部にわたって圧力シリンダと接触するように案内される、印刷システムが提供される。
【0005】
本発明の特定の実施形態では、ベルトは圧力シリンダとは独立して駆動される。
【0006】
本発明では、画像形成ステーションを通過するベルトは、その速度及び張力を容易に調節できる薄い軽量のベルトである。インプレッションステーションを通過する間にベルトの移動に課されるどのような振動も画像形成ステーションにおけるベルトの走りから確実に効果的に分離されるようにするために、インプレッションステーションと画像形成ステーションとの間にベルトのたるみのある走りが提供されてもよい。
【0007】
インプレッションステーションで、圧力シリンダ上の圧縮可能なブランケットは、基体上へのインク残留膜の効果的な転写のためにベルトと基体の表面とを確実に密接に接触させることができる。
【0008】
本発明の特定の実施形態では、ベルトは、剥離層で被覆された補強層又は支持層を備える。補強層は、縦方向に実質的に伸張しないように繊維強化された布であってもよい。「実質的に伸張しない」とは、ベルトのあらゆるサイクル中に、ベルト上の任意の2つの固定点間の距離が画質に影響するほど変化しないことを意味する。しかしながら、ベルトの長さは、温度に伴って、又はより長期間にわたるエージング又は疲労に伴って変化することがある。一実施形態では、その長手方向の(例えば、画像形成ステーションからインプレッションステーションへのベルトの移動方向に平行な)ベルトの伸びは、ベルトの最初の長さと比べて多くとも1%、又は多くとも0.5%、又は多くとも0.1%である。その幅方向に、ベルトは、画像形成ステーションを通して引っぱられる際に張り及び平坦を残すのを支援するために、小さい度合いの弾性を有してもよい。ベルトの弾性は、したがって、長手方向と比べて横方向に実質的により高い。適切な布は、例えば、垂直方向の綿繊維と共にその長手方向に織られた、ステッチされた、又は他の方法で保持されたハイパー繊維(例えば、アラミド繊維、炭素繊維、セラミック繊維、又はガラス繊維)を有してもよく、又はベルトを形成するゴムに直接組み込まれてもよく、又は含浸されてもよい。その長さ方向及び幅方向に異なる物理的特性、随意的に化学的特性を有する補強層、したがってベルトは、異方性といえる。代替的に、ベルトストリップの2つの垂直方向間の「弾性」の差異は、その幅方向にも実質的に伸張しない等方性の支持層を用いるときであっても所望の度合いの弾性を提供する弾性ストリップをベルトの側縁に取り付けることによって達成することができる。
【0009】
ベルトの案内を支援し、その蛇行を防ぐために、少なくとも画像形成ステーションを通過するベルトの走りにわたって、好ましくはインプレッションステーションを通過するベルトの走りにもわたって延びる横側ガイドチャネル又はトラックの中に係合することができるベルトの2つの側縁に沿って、ベルトよりも大きい厚さの連続可撓性ビード又は長手方向に間隔をおいて配置される構成物を提供することが望ましい。チャネル間の距離は、有利には、ベルトを横方向張力のかかった状態に維持するために、ベルトの全幅よりも僅かに大きくてもよい。
【0010】
ベルト上の抗力を低減させるために、ベルトの側縁上の構成物又はビードは、本発明の一実施形態では、転がり軸受によってチャネル内に保持される。
【0011】
横側構成物は、便利には、ベルトの各側縁に縫われた又は他の方法で取り付けられたジップファスナのうちの半分の歯であってもよい。こうした横側構成物は、規則的に間隔をおいて配置される必要はない。
【0012】
ベルトは、有利には、連続ループを形成するためにその端を互いに取り付けることができる平坦な細長いストリップによって形成される。ベルトの簡単な設置及び交換を可能にするためにストリップの両端を互いに取り付けるのにジップファスナが用いられてもよい。ストリップの端は、有利には、設置中の横側チャネルを通した及びローラの上のベルトの案内を容易にするように形状設定される。ベルトの定位置への最初の案内は、例えば、最初に横側チャネル間に導入されるベルトストリップの前縁を、ベルトを設置するために手動で又は自動的に動かすことができるケーブルに取り付けることによってなされてもよい。例えば、ベルト前縁の一方又は両方の横端は、各チャネル内に存在するケーブルに取り外し可能に取り付けることができる。ケーブルを進めることでベルトがチャネル経路に沿って進む。代替的に又は加えて、両方の縁が互いに取り付けられるときに最終的にシームを形成する領域でのベルトの縁は、シーム以外の領域よりも低い可撓性を有することができる。この局所的「剛性」は、それらのそれぞれのチャネルへのベルトストリップの横側構成物の挿入を容易にし得る。
【0013】
代替的に、ベルトは、はんだ付け、糊付け、テーピング(例えば、結合ストリップがストリップの両方の縁に重なる状態で、Kapton(登録商標)テープ、RTV液体接着剤、又はPTFE熱可塑性接着剤を用いること)、又は一般に公知のあらゆる他の方法によって連続ループを形成するために縁同士が接着されてもよい。ベルトの端を接合するあらゆる前述の方法は、本明細書ではシームと呼ばれる不連続部をもたらすことがあり、シームでのベルトの厚さ又はその化学的特性及び/又は機械的特性の不連続の増加を回避することが望ましい。好ましくは、インク画像又はその一部は、シーム上に堆積されないが、実質的に一様な特性/特徴を有するベルトの領域上のこうした不連続部のあくまで実行可能なだけ近くに堆積される。
【0014】
さらなる代替的実施形態では、ベルトはシームレスとすることができる。
【0015】
インプレッションステーションにおける圧力シリンダ上の圧縮可能なブランケットは、ベルトと同時に交換される必要はなく、それ自体が摩耗したときにだけ交換される必要がある。
【0016】
従来のオフセットリソプレスのように、圧力シリンダとインプレッションシリンダは、完全な回転対称ではない。圧力シリンダの場合、ブランケットの端がブランケットを支持するシリンダに取り付けられる場所に不連続部が存在する。インプレッションシリンダの場合、基体のシートをインプレッションシリンダに対して定位置に保持するのに役立つグリッパに適応するために同じく不連続部が存在することがある。圧力シリンダとインプレッションシリンダは、圧力シリンダのサイクル中に双方の不連続部が揃うように同期して回転する。インプレッションシリンダの円周が圧力シリンダの円周の2倍であり、且つ2組のグリッパを有する場合、不連続部は、2つのシリンダ間の拡大したギャップを残すためにインプレッションシリンダに関するサイクルにつき2回揃う。このギャップは、ベルトを形成するストリップの端を接続するシームが、自身が損傷することなく又は圧力シリンダ上のブランケット、インプレッションシリンダ、又は2つのシリンダ間を通る基体を損傷させることなく、インプレッションステーションの2つのシリンダ間を確実に通過できるようにするのに用いることができる。
【0017】
ベルトの長さが圧力シリンダの円周の整数倍である場合、ベルトの回転は、シームがインプレッションステーションのシリンダの不連続部によって生じる拡大したギャップと常に揃うように、圧力シリンダと位相が合った状態に保たれるようにタイミングを合わせることができる。
【0018】
ベルトが広がる(又は収縮する)ことになる場合、同じ速度でのベルトの及びインプレッションステーションのシリンダの回転では、最終的に圧力シリンダとインプレッションシリンダとの間の拡大したギャップにシームが一致しなくなるであろう。この問題は、圧力シリンダ及びインプレッションシリンダの表面速度に対するベルトの移動速度を変化させ、圧力シリンダとインプレッションシリンダとの間のニップの反対側に、動力を与えられるテンションローラ又はダンサーを提供することによって回避されることがある。速度差によって、圧力シリンダとインプレッションシリンダとの間のニップの一方の側又は他の側にたるみがたまることになり、ダンサーは、圧力シリンダとインプレッションシリンダとの間に拡大したギャップが存在するときに、ニップの一方の側のたるみを減少させ、他方の側のたるみを増加させることによってベルトの位相を進める又は遅らせるように作用することができる。
【0019】
このようにして、ベルトは、ベルトシームが2つのシリンダ間の拡大したギャップを常に通過するように圧力シリンダ及びインプレッションシリンダと同期した状態に維持することができる。加えて、これは、ベルト上のインク画像が基体上の所望の印刷位置と常に適正に揃うことを可能にする。
【0020】
ベルトの位相のこうした変化中のベルトと圧力シリンダとの間の摩擦を最小にするために、ブランケットの端間の不連続部における圧力シリンダ上にローラが提供されることが望ましい。
【0021】
代替的実施形態では、インプレッションシリンダは、グリッパ(例えば、真空手段によってインプレッションシリンダ上に保持されるウェブ基体又はシート基体用の)を有さず、この場合、インプレッションシリンダは、シームを圧力シリンダ上の圧縮可能なブランケットの端間の不連続部と位置合わせする必要性を抑える、連続表面欠損凹部を有してもよい。加えて、ベルトがシームレスである場合、ベルト上のインク堆積と以下の詳細な説明において限定しない様態で示されるような後続のステーションでの印刷システムの動作との同期の制御が、さらに容易になり得る。
【0022】
US61/606,913の印刷システムは、同じ中間転写部材に関連する2つのインプレッションステーションと共に、基体をそのリバース側上に方向転換するための2つのインプレッションステーション間の両面刷り機構を提供することによって、デュプレックス作動を可能にする。これは、インク画像を乗せた中間転写部材の区域がインク画像を基体上に刷らずにインプレッションステーションを通過できるようにすることによって可能にされた。これは比較的小さい圧力ローラ又はニップローラをインプレッションシリンダと係合する状態及び係合解除する状態に動かす時に可能となるが、本発明の圧力シリンダをこのように動かすことはあまり好都合ではないであろう。
【0023】
恒久的に好ましく係合されるブランケットを備えた圧力シリンダ及びインプレッションシリンダを有する単一のインプレッションステーションを用いる両面印刷を可能にするために、本発明の一実施形態では、インプレッションステーションを既に通過した基体シートを反転させ、像を基体シートの裏面上に印刷するために再度同じインプレッションステーションを通過するように基体のシートを戻すためのデュプレックス機構が提供される。
【0024】
本発明の第2の態様によれば、インク画像を形成するために水性キャリア中に有機ポリマー樹脂と着色剤とを含むインクの液滴を中間転写部材の外面に適用する画像形成ステーションと、樹脂と着色剤との残留膜を残すためにインク画像を乾燥させる乾燥ステーションと、残留膜を基体に転写するインプレッションステーションとを備える印刷システムであって、中間転写部材が薄い可撓性の実質的に伸張しないベルトを含み、インプレッションステーションが、インプレッションシリンダと、ベルトをインプレッションシリンダに付勢してベルトの外面上に載っている残留膜をベルトとインプレッションシリンダとの間を通る基体上に転写させるための圧縮可能な外面を有する圧力シリンダとを含み、ベルトが圧力シリンダの円周よりも大きい長さを有し、ベルトの長さのほんの一部にわたって圧力シリンダと接触するように案内される、印刷システムが提供される。
【0025】
本発明は、図面に示される構成部品及び特徴の寸法が提示の便宜及び明快さのために選択されており必ずしも縮尺ではない付属の図面を参照しながら、単なる例としてここでさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図3】ブランケットの端間の不連続部内にローラを有する圧力シリンダの斜視図である。
【
図4】ベルトの案内を支援するためにその縁に沿って構成物を有する、ベルトを形成するストリップの平面図である。
【
図5】
図4に示された構成物を受け入れる、ベルトのためのガイドチャネルの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1の印刷システムは、画像形成ステーション12と、乾燥ステーション14と、インプレッションステーション16とを通して循環するエンドレスベルト10を備える。
【0028】
画像形成ステーション12において、インクジェット技術を用いる1つ以上のプリントヘッドを組み込んでいる4つの別個のプリントバー22が、異なる色の水性インク液滴をベルト10の表面上に堆積する。示される実施形態は、典型的な4つの異なる色(すなわち、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、及びブラック(K))のうちの1つをそれぞれ堆積することができる4つのプリントバーを有するが、画像形成ステーションは異なる数のプリントバーを有することができ、プリントバーは異なる濃淡の同じ色(例えば、ブラックを含む種々の濃淡のグレー)を堆積することができ、又は2つ以上のプリントバーが同じ色(例えばブラック)を堆積することができる。画像形成ステーションの各プリントバー22に続いて、熱風(普通は空気)をベルト10の表面上に吹きつけてインク液滴を半乾きにするために中間乾燥システム24が提供される。この熱風の流れは、ベルト10上の異なる色のインク液滴が混ざり合うのを防ぐ一助となる。
【0029】
乾燥ステーション14において、インクをより十分に乾かすためにベルト10上のインク液滴が放射及び/又は熱風に曝され、液体キャリアのすべてではないにしてもほとんどが飛ばされて、樹脂と着色剤との層だけが後に残り、これは軟化点に加熱される。ポリマー樹脂の軟化は、インク画像を粘着性にし、転写部材に付着するその以前の能力と比べて、基体に付着するその能力を高めることができる。
【0030】
インプレッションステーション16において、ベルト10は、インプレッションシリンダ20と圧縮可能なブランケット19を乗せた圧力シリンダ18との間を通る。ブランケット19の長さは、その上に印刷が行われる基体のシート26の最大長さに等しいか又はこれよりも大きい。ベルト10の長さは、圧力シリンダ18の円周よりも少なくとも10%だけ長く、一実施形態では、少なくとも3倍、又は少なくとも5倍、又は少なくとも7倍、又は少なくとも10倍だけかなり長く、その長さの一部にわたって圧力シリンダ18にだけ接触する。インプレッションシリンダ20は、圧力シリンダ18の2倍の直径を有し、基体の2つのシート26を同時に支持することができる。基体のシート26は、供給スタック28から適切な輸送機構(
図1には図示せず)によって運ばれ、インプレッションシリンダ20と圧力シリンダ18との間のニップを通過する。ニップ内で、インク画像が基体上に刷られ、且つベルトの表面からきれいに離れるように、この時点で粘着性であり得るインク画像を乗せたベルト10の表面が、圧力シリンダ18上のブランケット19によって基体26にしっかりと押しつけられる。基体は、次いで、出力スタック30に運ばれる。特定の実施形態では、基体への転写を容易にするべく樹脂を軟化させること及びインク膜を粘着性にすることを支援するために、インプレッションステーションの2つのシリンダ18及び20間のニップの直前に、剥離層の薄い表面を加熱するヒータ31が提供されてもよい。
【0031】
インクをベルト10の表面からきれいに分離させるために、ベルトの表面は疎水性の剥離層を有する必要がある。米国特許仮出願第61/606,913号に基づく優先権を主張する同時係属のPCT出願第PCT/IB2013/051716号(代理人整理番号LIP5/001PCT)(両出願とも参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる)では、この疎水性の剥離層は、インプレッションステーションでの剥離層と基体との適正な接触を保証するのに必要な圧縮可能な順応(conformability)層も含む、厚いブランケットの一部として形成される。結果的に、ブランケットは、それが果たす多くの機能のうちのいずれかの不具合時に交換される必要がある、非常に重く且つ費用のかかるアイテムとなる。
【0032】
本発明では、疎水性の剥離層は、これを基体シート26に押しつけるのに必要とされる厚いブランケット19とは別個の要素の部分をなす。
図1では、剥離層は可撓性の薄い伸張しないベルト10上に形成され、該ベルトは、好ましくは、その縦方向の寸法における引張強度を増加させるために繊維で強化され、ハイパー繊維が特に適する。
【0033】
図4及び
図5に概略的に示されるように、本発明の特定の実施形態では、その横方向の寸法におけるベルトの張りを維持するためにそれぞれのガイドチャネル80(
図5の断面図に示される)の中に各側部で受け入れられる、間隔をおいて配置された突起又は構成物(formations)70をベルト10の側縁に備える。構成物70は、ベルトの側縁に縫われるか又は他の方法で取り付けられるジップファスナのうちの半分の歯であってもよい。間隔をおいて配置される構成物の代替として、ベルト10よりも大きい厚さの連続可撓性ビードが各側部に沿って提供されてもよい。摩擦を減らすために、ガイドチャネル80は、
図5に示すように、構成物70又はビードをチャネル80内に保持するために転がり軸受要素82を有してもよい。構成物は、ベルトの両方の側縁上で同じである必要はない。それらは、形状、間隔、組成、及び物理的特性が異なることがある。例えば、一方の側部上の構成物は、横側構成物がそれらのそれぞれの横側チャネルを通して案内されるときにベルトの張りを維持するのに望まれる弾性を提供してもよい。図面に示されないが、ベルトの一方の側部上で、横側構成物は、それ自体がベルトに取り付けられている弾性ストライプに取り付けられてもよい。
【0034】
構成物は、ベルトの迅速な動きを含む印刷システムの作動状態を持続させることができる任意の材料で作製されてもよい。適切な材料は、約50℃~250℃の範囲内の高温に耐えることができる。有利には、こうした材料はまた、耐摩擦性であり、その作動寿命中のベルトの移動に悪影響を及ぼす可能性があるサイズ及び/又は量の屑を生じない。例えば、横側構成物は、二硫化モリブデンで強化されたポリアミドで作製することができる。本発明の印刷システムに用いられ得るベルトに適する構成物の限定ではない例のさらなる詳細は、同時係属のPCT出願第PCT/IB2013/051719号(代理人整理番号LIP7/005PCT)で開示される。
【0035】
画像形成ステーションにおけるガイドチャネルは、ベルト10上のインク液滴の正確な配置を保証する。乾燥ステーション14及びインプレッションステーション16内などの他の領域では、横側ガイドチャネルは望ましいがあまり重要ではない。ベルト10がたるみを有する領域では、ガイドチャネルは存在しない。
【0036】
どのようなためらい又は振動も異なる色のインク液滴の見当合わせに影響することになるので、ベルト10が画像形成ステーション12を通して一定の速度で動くことが重要である。ベルトをスムーズに案内するのを支援するために、定置されたガイドプレート上をベルトが滑動するのではなく各プリントバー22に隣接するローラ32上をベルトが通過することで摩擦が低減される。ローラ32は、それらのそれぞれのプリントバーと正確に位置合わせされる必要はない。それらはプリントヘッド噴射位置の僅かに(例えば数ミリメートル)下流に存在してもよい。摩擦力は、プリントバーに実質的に平行なベルトの張りを維持する。ベルトの下側は、したがって、その上で案内されるすべての表面とそれしか転がり接触しないので、高い摩擦特性を有してもよい。ガイドチャネルによってかかる横方向張力は、ベルト10がプリントバー22の下を通る際に該ベルト10を平坦に及びローラ32と接触している状態に維持するのに十分なだけ必要とされる。伸張しない補強/支持層、疎水性の剥離表面層、及び高摩擦の下側の他に、ベルト10はどのような他の機能も果たす必要がない。これは、したがって、摩耗したら取り外す及び交換するのが容易な薄い軽量の低価格なベルトであり得る。
【0037】
疎水性の剥離層と基体との密接な接触を達成するために、ベルト10は、インプレッションシリンダ20と圧力シリンダ18とを備えるインプレッションステーション16を通過する。圧力シリンダ18の外面上に取り外し可能にクランプされた交換可能なブランケット19は、ベルト10の剥離層を基体シート26と接触する状態に付勢するのに必要とされる順応性を提供する。インプレッションステーションの各側部上のローラ53は、ベルトがインプレッションステーション16のシリンダ18及び20間のニップを通過する際にベルトが所望の配向に維持されることを保証する。
【0038】
US61/606,913で説明されるように、温度制御は、印刷画像の高品質が達成されるべき場合、印刷システムの最重要事項である。これは、ベルトの熱容量が、フェルト又はスポンジ状の圧縮可能な層も組み込んだ中間転写部材の熱容量よりもかなり低いという点で、本発明では大いに簡易化される。US61/606,913はまた、ブランケットが下から加熱されることを考慮して意図的に挿入された、ブランケットの熱容量に影響を及ぼす付加的な層を提案した。ブランケット19からのベルト10の分離は、乾燥ステーション14においてはるかに少ないエネルギーを用いてインク液滴が乾燥され、その温度が樹脂の軟化温度に加熱されることを可能にする。さらに、ベルトは、画像形成ステーションに戻る前に冷却されてもよく、これは、インクジェットノズルの非常に近くを通る高温面上にインク液滴を噴霧しようとすることによって引き起こされる問題を低減させる又は回避する。代替的に及び加えて、冷却ステーションは、ベルトが画像形成ステーションに入る前にベルトの温度を所望の値に低下させるために印刷システムに付加されてもよい。
【0039】
説明したように、印刷プロセスの種々の段階での温度は、用いられるベルト及びインクの種類に応じて変化してもよく、さらには所与のステーションに沿った種々の場所で変動してもよいが、本発明の特定の実施形態では、画像形成ステーションでの中間転写部材の外面上の温度は、40℃から160℃までの間、又は60℃から90℃までの間の範囲内である。本発明の特定の実施形態では、ドライヤステーションでの温度は、90℃から300℃までの間、又は150℃から250℃までの間、又は200℃から225℃までの間の範囲内である。特定の実施形態では、インプレッションステーションでの温度は、80℃から220℃までの間、又は100℃から160℃までの間の範囲内、又は約120℃、又は約150℃である。転写部材が画像形成ステーションにこうしたステーションの作動範囲に適合するであろう温度で入るのを可能にすることを冷却ステーションが望まれる場合、冷却温度は、40℃から90℃までの間の範囲内であってもよい。
【0040】
本発明の特定の実施形態では、ベルト10の剥離層は、粘着性にすることができるインク残留画像がインプレッションステーションにおいてそれからきれいに剥がれることを保証するために、疎水性の特性を有する。しかしながら、画像形成ステーションでは、水性インク液滴が疎水性の表面上を動き回ることができ、当たった瞬間に平坦化して各液滴中のインクの質量と共に増加する直径を有する液滴を形成するのではなく、インクが球形小球に丸まる傾向があるため、同じ疎水性の特性は望ましくない。疎水性の外面を有する剥離層を備える実施形態では、したがって、インク液滴が当たった瞬間に最初に広がってディスクになり、次いで乾燥段階及び転写段階の間にそれらの平坦化した形状を保持することを促進するステップが行われる必要がある。
【0041】
この目的を達成するため、液体インク液滴がプロトン移動によってベルトの外面との接触後に電荷を帯びて、帯電した液体インク液滴とベルトの外面上の反対電荷との静電相互作用が生じることを可能にするために、液体インクは、ブレンステッド・ローリーのプロトン移動によって帯電可能な成分を含むことが望ましい。こうした静電荷は、液滴をベルトの外面に付着させ、球形小球の形成を妨害するであろう。インク組成物は、通常は負に帯電する。
【0042】
ブレンステッド・ローリーのプロトン移動から生じるファンデルワールス力は、インクと、アミノシリコーンなどの剥離層の化学組成の一部をなす成分か、又は(例えば、処理されるベルトがシラノール末端ポリジアルキルシロキサンシリコンを含む剥離層を有する場合に)ベルト10が画像形成ステーション12に到着する前にベルト10の表面に塗布される高電荷密度PEI(ポリエチレンイミン)などの処理溶液との相互作用のいずれかに起因することがある。
【0043】
特定の理論に縛るつもりはないが、インクキャリアが蒸発すると、水性環境の減少が、インク成分の及び剥離層又はその処理溶液のそれぞれのプロトン付加を減らし、したがってそれらの間の静電相互作用を減少させ、乾燥したインク画像が基体への転写時にベルトから剥がれることを可能にすると考えられる。
【0044】
ベルト10は、シームレスとする、すなわちその長さに沿ってどこにも不連続部のないものとすることができる。こうしたベルトは、インプレッションステーションの2つのシリンダ18及び20の周速度と常に同じ表面速度で走るように作動され得るので、印刷システムの制御を大いに簡易化するであろう。エージングに伴うベルトのどのような伸びも印刷システムの性能に影響しないであろうし、以下で詳述されるローラ50及び54の引っ張りによってより多くのたるみを除くことだけが必要であろう。
【0045】
しかしながら、ベルトは、最初に平坦なストリップとして安価に形成され、その両端が、例えばジップファスナによって、あるいはフック・ループ式テープのストリップによって、あるいは縁を一緒にはんだ付けすることによって、あるいはテープ(例えば、結合ストリップがストリップの両方の縁に重なる状態で、Kapton(登録商標)テープ、RTV液体接着剤、又はPTFE熱可塑性接着剤)を用いることによって互いに取り付けられる。このようなベルトの構成では、確実に印刷がシーム上では行われないようにすることと、確実にシームがインプレッションステーション16において基体26に接触して平坦化しないようにすることが不可欠である。
【0046】
インプレッションステーション16のインプレッションシリンダ20及び圧力シリンダ18は、従来のオフセットリソプレスのブランケット及びインプレッションシリンダと同じ様式で構築されてもよい。このようなシリンダでは、ブランケット19の2つの端がクランプされる領域での圧力シリンダ18の表面に周方向の不連続部が存在する。ニップを通したそれらの輸送を助けるために基体シートの前縁を把持するのに役立つグリッパに適応するインプレッションシリンダの表面にも不連続部が存在してもよい。本発明の例証される実施形態では、インプレッションシリンダに関する各サイクルにつき不連続部が2回揃うように、インプレッションシリンダの円周は圧力シリンダの円周の2倍であり、インプレッションシリンダは2組のグリッパを有する。
【0047】
ベルト10がシームを有する場合、確実にシームがインプレッションステーション16のシリンダ間のギャップと常にタイミングが合うようにすることが必要である。この理由のため、ベルト10の長さは圧力シリンダ18の円周の整数倍に等しいことが望ましい。
【0048】
しかしながら、ベルトが新品時にこうした長さを有していても、その長さは、使用の間に例えば疲労又は温度に伴って変化することがあり、これにより、インプレッションステーションのニップの通過中のシームの位相がサイクルごとに変化することになる。
【0049】
ベルト10の長さのこうした変化を補償するために、ベルト10はインプレッションステーション16のシリンダとは僅かに異なる速度で駆動されてもよい。ベルト10は2つのローラ40及び42によって駆動される。ベルトを駆動するローラ40及び42を通じて異なるトルクをかけることによって、画像形成ステーションを通過するベルトの走りが制御された張力下に維持される。特定の実施形態では、ローラ40及び42は、インプレッションステーション16のシリンダとは別に動力を与えられ、2つのローラ40及び42の表面速度がインプレッションステーション16のシリンダ18及び20の表面速度とは異なるように設定されることを可能にする。
【0050】
ベルトがその上で案内される、種々のローラ50、52、53、及び54のうちの2つは、動力を与えられるテンションローラ又はダンサー50及び54であり、インプレッションステーションのシリンダ間のニップの各側に1つ提供される。これらの2つのダンサー50、54は、ニップの前後でベルト10のたるみの長さを制御するのに用いられ、それらの移動は、それぞれのダンサーに隣接する双方向矢印によって概略的に表される。
【0051】
ベルト10が圧力シリンダの円周の整数倍よりも僅かに長い場合、1つのサイクルでシームがインプレッションステーションのシリンダ18及び20間の拡大したギャップと位置合わせされれば、次のサイクルでシームは
図1で見た場合の右に動かされるであろう。これを補償するために、ベルトは、たるみがニップの右にたまり、張力がニップの左にたまるようにローラ40及び42によってより速く駆動される。ベルト10を適正な張力に維持するために、ダンサー50が下に動かされ、同時にダンサー54が左に動かされる。インプレッションステーションのシリンダの不連続部が互いに面し、それらの間にギャップが生じるときに、ニップを通過するベルトの走りを加速し、シームをギャップの中にもってくるために、ダンサー54が右に動かされ、ダンサー50が上に動かされる。ダンサー50及び54はそれぞれ垂直方向に及び水平方向に動くものとして
図1に概略的に示されるが、これはそうである必要はなく、各ダンサーは、一方の他方に対する変位がシームの所望の位置合わせを可能にするベルトの適切な加速又は減速を可能にする限り、あらゆる方向に沿って動いてもよい。
【0052】
ニップを通して加速される際のベルト10上の抗力を低減させるために、圧力シリンダ18は、
図3に示すように、ブランケットの端間の不連続領域内にローラ90を備えてもよい。
【0053】
ベルトの位相をこのように補正する必要性は、ベルト10の長さを測定すること又はインプレッションステーションのシリンダの位相に対するベルト上の1つ以上のマーカの位相を監視することのいずれかによって感知されてもよい。マーカ(単数又は複数)は、例えばベルトの表面につけられてもよく、適切な検出器によって磁気的に又は光学的に感知されてもよい。代替的に、マーカは、ベルトに張力をかけるのに用いられる横側構成物の凹凸、例えば欠歯の形態をとってもよく、したがって機械的位置インジケータとして役立つ。
【0054】
図2は、基体の同じシートが同じインプレッションステーションのニップを、1回は上に面し、1回は下に面する状態で、2回通過することを可能にするデュプレックス機構の作動原理を示す。
【0055】
図2では、基体のシート上に画像を刷った後で、基体のシートが搬出コンベア60によってインプレッションシリンダ20からはぎ取られ、最終的に出力スタック30上に落とされる。シートのその裏面上に第2の画像が印刷されなければならない場合、シートは、その自由端で吸着器(sucker)64を運ぶピボットアーム62によってコンベヤ60から除去されてもよい。基体のシートは、この時点では、吸着器の跡が基体上に残らないように、その最後の印刷面が吸着器64と反対側に面する状態で、コンベヤ60上に位置するであろう。
【0056】
基体のシートをコンベヤ60からはぎ取ると、ピボットアーム62は、点線で示される位置にピボット運動し、先程はシートの後縁だったものをインプレッションシリンダのグリッパに与えるであろう。供給スタックからの基体のシートの紙送りは、このデュプレックス作動モードでは、交互サイクルでインプレッションシリンダが供給スタック28から、次いで搬出コンベア60からシートを受け取るように修正されるであろう。基体の面反転が行われるステーションは、以下、デュプレックスステーション又は両面刷りステーションと呼ばれることがある。
【0057】
本発明の印刷システムは、ウェブ基体並びに上述のようにシート基体上に印刷するのに用いられてもよい。ウェブ印刷システムでは、インプレッションシリンダ上にグリッパは存在せず、圧力シリンダの周りを包むブランケットの端間にギャップが存在する必要はない。代わりに、圧力シリンダは、適切な圧縮可能な材料で作製された外側と共に形成されてもよい。
【0058】
ウェブの両面に印刷するために、それぞれそれ独自のプリントヘッド、中間転写部材、圧力シリンダ、及びインプレッションシリンダを有する、2つの別個の印刷システムが提供されてもよい。2つの印刷システムは、それらの間のウェブ反転機構と直列に配置されてもよい。
【0059】
代替的実施形態では、倍幅印刷システムが用いられてもよく、これは、互いと直列にではなく並列に配置された2つの印刷システムに相当する。この場合、中間転写部材、プリントバー、及びインプレッションステーションは、すべて、ウェブの少なくとも倍の幅であり、中心線をまたぐ印刷システムの各半分によって異なる画像が印刷される。印刷システムの一方の側を下った後で、ウェブが、反転され、その裏面に画像を印刷するため再度印刷システムに同じ方向にしかし印刷システムの他の側に戻される。
【0060】
ウェブ上に印刷するときに、ウェブの両面に印刷する正しい位置合わせのためにウェブを配置し、ウェブ上に印刷された画像間の空きスペースを減らすために、動力を与えられるダンサーが必要とされる場合がある。
【0061】
上記の説明は簡略化されており、本発明の理解を可能にする目的のためだけに提供されている。印刷システムが上手くいくためには、インクの物理的特性及び化学的特性、化学組成、及びベルト10の剥離面の可能な処理、及び印刷システムの種々のステーションの制御はすべて重要であるが、本明細書の文脈では詳細に考慮される必要はない。
【0062】
こうした態様は、本願とほぼ同時に出願されている又は出願されるであろう同一出願人の他の出願において説明され、特許請求される。本発明に係る印刷システムで用いられ得る水性インクのさらなる詳細は、PCT出願番号PCT/IB2013/051755(代理人整理番号LIP11/001PCT)で開示される。こうしたインクに適するであろうベルト及びその剥離層は、PCT出願番号PCT/IB2013/051743(代理人整理番号LIP10/002PCT)及びPCT/IB2013/051751(代理人整理番号LIP10/005PCT)で開示される。選択的前処理溶液は、PCT出願番号PCT/IB2013/000757(代理人整理番号LIP12/001PCT)の開示に従って調製することができる。本発明に係る印刷システムにおける適切なベルト構造体及びその設置方法は、PCT出願番号PCT/IB2013/051719(代理人整理番号LIP7/005PCT)で詳述され、一方、こうしたシステムを制御するための例示的な方法は、PCT出願番号PCT/IB2013/051727(代理人整理番号LIP14/001PCT)に提供される。加えて、本発明の印刷システムの動作は、同時係属のPCT出願番号PCT/IB2013/050245(代理人整理番号LIP15/001PCT)で説明されるようにディスプレイ及びユーザ・インターフェースを通じて監視されてもよい。
【0063】
本出願人の上述の出願のすべての内容は、参照により本明細書に十分に記載されたかのように組み込まれる。
【0064】
本発明は、単なる例として提供され本発明の範囲を限定することを意図していないその実施形態の詳細な説明を用いて説明されている。説明される実施形態は異なる特徴を含み、そのすべてが本発明のすべての実施形態に必要とされるわけではない。本発明のいくつかの実施形態は、特徴又は特徴の可能な組合せのうちのほんのいくつかを使用する。説明される本発明の実施形態の変形及び説明される実施形態に記載の特徴の異なる組合せを含む本発明の実施形態が、本発明に関係のある当業者には想起されるであろう。
【0065】
本開示の説明及び請求項では、動詞「備える、含む(comprise)」、「含む(include)」、及び「有する」、並びにこれらの活用形のそれぞれは、動詞の1つ又は複数の目的語が動詞の1つ又は複数の主語の部材、成分、要素、又はその一部の必ずしも完全な列挙でないことを示すのに用いられる。本明細書で用いられる場合の単数形の「1つの(a)、(an)」及び「その(the)」は、文脈上他の意味に明白に規定される場合を除き複数形の言及を含む。例えば、「インプレッションステーション」又は「少なくとも1つのインプレッションステーション」という用語は、複数のインプレッションステーションを含むことがある。