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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-02
(45)【発行日】2023-08-10
(54)【発明の名称】受信装置及びデータ受信方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 25/02 20060101AFI20230803BHJP
   H04L 7/02 20060101ALI20230803BHJP
【FI】
H04L25/02 V
H04L7/02
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022065206
(22)【出願日】2022-04-11
(62)【分割の表示】P 2018037738の分割
【原出願日】2018-03-02
(65)【公開番号】P2022092012
(43)【公開日】2022-06-21
【審査請求日】2022-04-11
(73)【特許権者】
【識別番号】502161508
【氏名又は名称】シナプティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100205350
【弁理士】
【氏名又は名称】狩野 芳正
(74)【代理人】
【識別番号】100117617
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 圭策
(72)【発明者】
【氏名】瀬納 剛史
【審査官】阿部 弘
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0163207(US,A1)
【文献】特表2007-514388(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0280896(US,A1)
【文献】特表2016-541139(JP,A)
【文献】特表2017-527162(JP,A)
【文献】特開2017-112427(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0019863(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0165208(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 25/02
H04L 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1ワイヤと第2ワイヤの間の電位差に基づいて第1シングルエンド信号を出力するように構成された第1差動レシーバと、
前記第2ワイヤと第3ワイヤとに接続され、第2シングルエンド信号を出力するように構成された第2差動レシーバと、
前記第3ワイヤと前記第1ワイヤとに接続され、第3シングルエンド信号を出力するように構成された第3差動レシーバと、
前記第1シングルエンド信号を遅延することによって第1補償後シングルエンド信号を生成するように構成された第1遅延補償回路と、
前記第1補償後シングルエンド信号に少なくとも部分的に基づいて再生クロック信号を生成するように構成されたクロックリカバリ回路と、
前記再生クロック信号に同期して前記第1補償後シングルエンド信号をラッチするように構成された第1ラッチ回路と、
を備え、
第1シンボルの受信に用いられる前記第1遅延補償回路の遅延時間が、前記第2シングルエンド信号と、前記第3シングルエンド信号と、前記第1シンボルの前に伝送される第2シンボルの受信における前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとの電位差に少なくとも部分的に基づいている
受信装置。
【請求項2】
前記第1シンボルの受信に用いられる前記第1遅延補償回路の遅延時間が、前記第2シンボルの受信における前記第1ワイヤ及び前記第2ワイヤの電位差が、第1状態と第2状態のいずれにあるかに少なくとも部分的に基づいており、
前記第2状態における前記第1ワイヤと前記第2ワイヤの電位差の絶対値が、前記第1状態における前記第1ワイヤと前記第2ワイヤの電位差の絶対値より小さい
請求項1に記載の受信装置。
【請求項3】
3本以上のワイヤのうちの第1ワイヤと第2ワイヤの間の電位差に基づいて第1シングルエンド信号を出力するように構成された第1差動レシーバと、
前記第1シングルエンド信号を遅延することによって第1補償後シングルエンド信号を生成するように構成された第1遅延補償回路と、
前記第1補償後シングルエンド信号に少なくとも部分的に基づいて再生クロック信号を生成するように構成されたクロックリカバリ回路と、
前記再生クロック信号に同期して前記第1補償後シングルエンド信号をラッチするように構成された第1ラッチ回路と、
を備え、
第1シンボルの受信に用いられる前記第1遅延補償回路の遅延時間が、前記第1シンボルの前に伝送される第2シンボルの受信における前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとの電位差に少なくとも部分的に基づいており、
MIPI C-PHY規格に準拠して生成された信号が前記第1ワイヤ及び前記第2ワイヤに供給される
信装置。
【請求項4】
第1ワイヤと第2ワイヤの間の電位差に基づいて第1シングルエンド信号を出力するように構成された第1差動レシーバと、
前記第2ワイヤと3ワイヤとの電位差に基づいて第2シングルエンド信号を出力するように構成された第2差動レシーバと、
前記第3ワイヤと前記第ワイヤとの電位差に基づいて第3シングルエンド信号を出力するように構成された第3差動レシーバと、
前記第1シングルエンド信号を遅延することによって第1補償後シングルエンド信号を生成するように構成された第1遅延補償回路と、
前記第2シングルエンド信号を遅延することによって第2補償後シングルエンド信号を生成するように構成された第2遅延補償回路と、
前記第3シングルエンド信号を遅延することによって第3補償後シングルエンド信号を生成するように構成された第3遅延補償回路と、
を備え、
第1シンボルの受信に用いられる前記第1遅延補償回路の遅延時間が、前記第1シンボルの前に伝送される第2シンボルの受信における前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとの電位差に少なくとも部分的に基づいており、
前記第1シンボルの受信に用いられる前記第2遅延補償回路の遅延時間が、前記第2シンボルの受信における前記第2ワイヤと前記第3ワイヤとの電位差に少なくとも部分的に基づいており、
前記第1シンボルの受信に用いられる前記第3遅延補償回路の遅延時間が、前記第2シンボルの受信における前記第3ワイヤと前記第1ワイヤとの電位差に少なくとも部分的に基づいている、
信装置。
【請求項5】
前記第1補償後シングルエンド信号を遅延することによって第1前シンボルシングルエンド信号を生成するように構成された第1ホールド遅延回路と、
前記第2補償後シングルエンド信号を遅延することによって第2前シンボルシングルエンド信号を生成するように構成された第2ホールド遅延回路と、
前記第3補償後シングルエンド信号を遅延することによって第3前シンボルシングルエンド信号を生成するように構成された第3ホールド遅延回路と、
を備え、
前記第1遅延補償回路の遅延時間が、前記第2前シンボルシングルエンド信号と前記第3前シンボルシングルエンド信号とに少なくとも部分的に基づいている
請求項に記載の受信装置。
【請求項6】
前記第2遅延補償回路の遅延時間が、前記第1シンボルの受信における前記第2ワイヤと前記第3ワイヤとの電位差に少なくとも部分的に基づいており、
前記第3遅延補償回路の遅延時間が、前記第3ワイヤと前記第1ワイヤとの電位差に少なくとも部分的に基づいている
請求項に記載の受信装置。
【請求項7】
前記第1シンボルの受信に用いられる前記第1遅延補償回路の遅延時間が、前記第1シンボルの受信における前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとの電位差に更に基づいている
請求項1、3、4のいずれか1項に記載の受信装置。
【請求項8】
前記第1シンボルの受信に用いられる前記第1遅延補償回路の遅延時間が、前記第1シンボルの受信における前記第1ワイヤ及び前記第2ワイヤの電位差と前記第2シンボルの受信における前記第1ワイヤ及び前記第2ワイヤの電位差とが第1状態と第2状態のいずれにあるかに少なくとも部分的に基づいており、
前記第2状態における前記第1ワイヤと前記第2ワイヤの電位差の絶対値が、前記第1状態における前記第1ワイヤと前記第2ワイヤの電位差の絶対値より小さい
請求項に記載の受信装置。
【請求項9】
第1ワイヤと第2ワイヤの電位差に基づいて第1シングルエンド信号を出力することと、
前記第2ワイヤと第3ワイヤの電位差に基づいて第2シングルエンド信号を出力することと、
前記第3ワイヤと前記第1ワイヤの電位差に基づいて第3シングルエンド信号を出力することと、
前記第1シングルエンド信号を遅延することによって第1補償後シングルエンド信号を生成することと、
前記第1補償後シングルエンド信号に基づいて再生クロック信号を生成することと、
前記再生クロック信号に同期して前記第1補償後シングルエンド信号をラッチすることと、
を含み、
前記第1補償後シングルエンド信号を生成することが、第1シンボルの受信において前記第1補償後シングルエンド信号を生成する際に前記第1シングルエンド信号に適用される遅延時間を、前記第2シングルエンド信号と、前記第3シングルエンド信号と、前記第1シンボルの前に伝送される第2シンボルの受信における前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとの電位差に基づいて制御することを含む
データ受信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受信装置及びデータ受信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高速データ通信を実現するために、3本以上のワイヤで1つのレーンを構成するデータ通信システムが検討されている。このような技術の一例としては、MIPI C-PHY(Mobile Industry Processor Interface C-PHY)が挙げられる。
【0003】
データ通信の信頼性を向上するためには、データ有効ウインドウ(data valid window)が大きいことが望ましく、データ通信システムは、データ有効ウインドウを拡大するように設計される。
【発明の概要】
【0004】
一実施形態では、受信装置が、3本以上のワイヤのうちの異なる2本のワイヤの電位差に応じたシングルエンド信号をそれぞれ出力する複数の差動レシーバと、複数の差動レシーバのそれぞれから出力されるシングルエンド信号を遅延するように構成された複数の遅延補償回路と、複数の遅延補償回路がそれぞれに出力する複数の補償後シングルエンド信号に応じて再生クロック信号を生成するクロックリカバリ回路と、再生クロック信号に同期して複数の補償後シングルエンド信号をそれぞれにラッチするように構成された複数のラッチ回路とを備えている。複数の差動レシーバは、3本以上のワイヤのうちの第1ワイヤ及び第2ワイヤの電位差に応じた第1シングルエンド信号を出力する第1差動レシーバを備えている。複数の遅延補償回路は、第1シングルエンド信号を遅延することによって複数の補償後シングルエンド信号のうちの第1補償後シングルエンド信号を生成する第1遅延補償回路を備えている。第1シンボルの受信に用いられる第1遅延補償回路の遅延時間が、第1シンボルの前に伝送される第2シンボルの受信における第1ワイヤと第2ワイヤとの電位差に応じて制御される。
【0005】
他の実施形態では、受信装置が、第1ワイヤと第2ワイヤの電位差に応じた第1シングルエンド信号を出力する第1差動レシーバと、第2ワイヤと第3ワイヤの電位差に応じた第2シングルエンド信号を出力する第2差動レシーバと、第3ワイヤと第1ワイヤの電位差に応じた第3シングルエンド信号を出力する第3差動レシーバと、第2シングルエンド信号と第3シングルエンド信号とに応じて第1ワイヤと第2ワイヤの電位差の状態を示す第1状態信号を生成する第1状態判別回路とを備えている。
【0006】
更に他の実施形態では、受信方法が、第1ワイヤと第2ワイヤの電位差に応じて第1シングルエンド信号を出力することと、第2ワイヤと第3ワイヤの電位差に応じて第2シングルエンド信号を出力することと、第2ワイヤと第3ワイヤの電位差に応じて第3シングルエンド信号を出力することと、第1シングルエンド信号、第2シングルエンド信号及び第3シングルエンド信号を遅延して、それぞれ第1補償後シングルエンド信号、第2補償後シングルエンド信号、第3補償後シングルエンド信号を生成することと、第1補償後シングルエンド信号、第2補償後シングルエンド信号及び第3補償後シングルエンド信号に応じて再生クロック信号を生成することと、再生クロック信号に同期して、第1補償後シングルエンド信号、第2補償後シングルエンド信号及び第3補償後シングルエンド信号をそれぞれにラッチすることとを含む。第1シンボルの受信における第1補償後シングルエンド信号の生成において第1シングルエンド信号に与えられる遅延時間が、第1シンボルの前に伝送される第2シンボルの受信における第1ワイヤと第2ワイヤとの電位差に応じて制御される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一実施形態におけるデータ通信システムの構成を示すブロック図である。
図2】ワイヤA、B、Cの電位V、V、Vに起こり得る遷移を示すタイミングチャートである。
図3】ワイヤA、B、Cの電位V、V、Vに起こり得る遷移を重ねて示すタイミングチャートである。
図4】電位差V-V、V-V、V-Vに起こり得る遷移を示すタイミングチャートである。
図5】一実施形態における受信装置の構成を示す回路図である。
図6】前シンボル及び現シンボルの受信における電位差V-V、V-V、V-Vの状態と、電位差V-V、V-V、V-Vのゼロクロスタイミングとの関係を示す表である。
図7図5に示す受信装置における遅延補償回路の動作を示す表である。
図8】各ワイヤの状態と、差動レシーバが出力するシングルエンド信号の論理値と、電位差V-V、V-V、V-Vの状態との関係を示す表である。
図9】他の実施形態における受信装置の構成を示す回路図である。
図10図9に示す受信装置における遅延補償回路の動作を示す表である。
図11】更に他の実施形態における受信装置の構成を示す回路図である。
図12】前シンボル及び現シンボルの受信における電位差V-V、V-V、V-Vの状態と、電位差V-V、V-V、V-Vのゼロクロスタイミングと、差動レシーバの遅延との関係を示す表である。
図13図11に示す受信装置における遅延補償回路の動作を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
一実施形態では、図1に示すように、データ通信システムが、送信装置1と受信装置2とを備えている。本実施形態では、データ通信システムが、MIPI C-PHY規格に準拠して動作するが、これに限定されない。送信装置1は、レーン3を介して受信装置2に接続されている。一実施形態では、送信装置1と受信装置2とが別々の半導体チップに集積化されてもよい。
【0009】
このデータ通信システムでは、レーン3が、3本のワイヤA、B、Cを含んでいる。ワイヤA、B、Cのそれぞれは、3つの電位を取ることが許容されている。以下では、これらの3つの電位を、それぞれ、“H”、“M”、“L”と記載する。データ伝送が行われる場合、各UI(unit interval)において、ワイヤA、B、Cのうちの1つが“H”レベルに設定され、他の1つが“M”レベルに設定され、残りの1つが“L”レベルに設定される。したがって、ワイヤA、B、Cの電位の組み合わせの総数は6である。各UIに伝送されるシンボルは、ワイヤA、B、Cの電位の組み合わせで表現される。以下において、ワイヤA、B、Cの電位を、それぞれ、V、V、Vと記載することがある。
【0010】
図2に示すように、或るシンボルを送信した後に次のシンボルを送信する場合、ワイヤA、B、Cの電位V、V、Vは、該或るシンボルの送信時における電位V、V、Vとの組み合わせとは異なる組み合わせに遷移する。図3には、或るシンボルの送信時にワイヤA、B、Cの電位V、V、Vがそれぞれ“H”、“M”、“L”レベルであった場合に、次のシンボルの送信時におけるワイヤA、B、Cの電位V、V、Vに起こり得る遷移の全ての組み合わせが重ねて図示されている。
【0011】
MIPI C-PHY規格に準拠したデータ通信では、ワイヤA、Bの電位差V-V、ワイヤB、Cの電位差V-V及びワイヤC、Aの電位差V-Vに基づいて生成された3つのシングルエンド信号が3つの差動レシーバにより生成され、該3つのシングルエンド信号をラッチすることでデータが受信される。該3つのシングルエンド信号のラッチは、3つのシングルエンド信号から再生された再生クロック信号に同期して行われる。
【0012】
電位差V-V、V-V、V-Vの可能な遷移を示す図4を参照して、電位差V-V、V-V、V-Vのそれぞれは、"strong 1"、"weak 1"、"weak 0"、"strong 0"の4つの状態を取り得る。これら4つの状態のうち、"strong 1"、"weak 1"が論理値“1”に対応しており、"weak 0"、"strong 0"が論理値“0”に対応している。
【0013】
"strong 1"は、電位差V-V、V-V、V-Vが、絶対値が相対的に大きい正電圧になる状態である。例えば、電位Vが“H”レベルであり、電位Vが“L”レベルである場合、電位差V-Vは、"strong 1"状態になる。
【0014】
"weak 1"は、電位差V-V、V-V、V-Vが、絶対値が相対的に小さな正電圧になる状態である。例えば、電位V、Vがそれぞれ“H”レベル、“M”レベルである場合、及び、電位V、Vがそれぞれ“M”レベル、“L”レベルである場合、電位差V-Vは、"weak 1"状態になる。
【0015】
"weak 0"は、電位差V-V、V-V、V-Vが、絶対値が相対的に小さい負電圧になる状態である。例えば、電位V、Vがそれぞれ“M”レベル、“H”レベルである場合、及び、電位V、Vがそれぞれ“L”レベル、“M”レベルである場合、電位差V-Vは、"weak 0"状態になる。
【0016】
最後に、"strong 0"は、電位差V-V、V-V、V-Vが、絶対値が相対的に大きい負電圧になる状態である。例えば、電位V、Vがそれぞれ“L”レベル、“H”レベルである場合、電位差V-Vは、"strong 0"状態になる。
【0017】
以下において、電位差の絶対値が相対的に小さい2つの状態”weak 0”及び”weak 1”を総称して状態”weak”と呼び、電圧の絶対値が相対的に大きい2つの状態”strong0”及び”strong 1”を総称して状態”strong”と呼ぶことがある。
【0018】
シンボルの送信毎に、電位差V-V、V-V、V-Vは、"strong 1"、"weak 1"、"weak 0"、"strong 0"の間で遷移する。論理値が“1”と“0”の間で遷移する場合、差V-V、V-V、V-Vにゼロクロスが発生する。ゼロクロスが発生するタイミングは、ゼロクロスタイミングと呼ばれる。上述の再生クロック信号は、差V-V、V-V、V-Vのゼロクロスタイミングに同期して生成される。
【0019】
MIPI C-PHY規格による通信では、電位差V-V、V-V、V-Vのゼロクロスタイミングが、原理的に、3種類に分散する。ゼロクロスタイミングは、"weak 1"から"strong 0"への遷移、及び、"weak 0"から"strong 1"への遷移において最も早い。このゼロクロスタイミングを、以下では、"Fast"と記載する。"strong 1"から"weak 0"への遷移、及び、"weak 1"から"strong 0"への遷移では、ゼロクロスタイミングが最も遅い。このゼロクロスタイミングを、以下では、"Slow"と記載する。"weak 0"と"weak 1"の間の遷移、及び、"strong 0"と"strong 1"との間の遷移では、ゼロクロスタイミングは中間的である。このゼロクロスタイミングを、以下では、"Mid"と記載する。
【0020】
電位差V-V、V-V、V-Vに対応する3つのシングルエンド信号から再生クロック信号を再生する構成では、ゼロクロスタイミングが分散すると、再生クロック信号のクロックパルスの生成タイミングも分散する。これは、データ有効ウインドウを減少させ得る。以下に詳細に述べられるように、本実施形態の受信装置2は、ゼロクロスタイミングの分散によるデータ有効ウインドウの減少を抑制するように構成される。
【0021】
図5に示す一実施形態では、受信装置2が、入力端子11~11と、差動レシーバ12~12と、遅延補償回路13~13と、ホールド遅延回路14~14と、ラッチ15~15と、クロック再生回路16とを備えている。
【0022】
入力端子11~11は、それぞれワイヤA、B、Cに接続されており、ワイヤA、B、C上を伝送される信号を送信装置1から受け取る。
【0023】
差動レシーバ12~12は、それぞれ、電位差V-V、V-V、V-Vに対応するシングルエンド信号SA-B、SB-C、SB-Cを生成する。詳細には、差動レシーバ12は、ワイヤAが接続される第1入力とワイヤBが接続される第2入力とを有しており、電位差V-Vに対応する論理値を有するシングルエンド信号SA-Bを出力する。同様に、差動レシーバ12は、ワイヤBが接続される第1入力とワイヤCが接続される第2入力とを有しており、電位差V-Vに対応する論理値を有するシングルエンド信号SB-Cを出力する。差動レシーバ12は、ワイヤCが接続される第1入力とワイヤAが接続される第2入力とを有しており、電位差V-Vに対応する論理値を有するシングルエンド信号SC-Aを出力する。シングルエンド信号SA-Bは、ワイヤA、Bの電位差V-Vが"strong 1"又は"weak 1"である場合に論理値“1”を取り、"strong 0"又は"weak 0"である場合に論理値“0”を取る。シングルエンド信号SB-C、SC-Aについても同様である。
【0024】
遅延補償回路13~13は、上述されたゼロクロスタイミングの分散を補償するような遅延をシングルエンド信号SA-B、SB-C、SB-Cに与えるように構成されている。本実施形態では、遅延補償回路13が、遅延回路21と、セレクタ24と、XOR回路25とを備えている。遅延回路21は、シングルエンド信号SA-Bを遅延時間Dだけ遅延するように構成されている。セレクタ24は、差動レシーバ12の出力に接続された入力D0と、遅延回路21の出力に接続された入力D1を有している。セレクタ24は、差動レシーバ12から受け取ったシングルエンド信号SA-Bと遅延回路21の出力信号とのいずれかを、XOR回路25の出力信号に応じて選択し、選択した信号を出力する。
【0025】
遅延補償回路13、13も同様に構成されている。遅延補償回路13は、遅延回路21と、セレクタ24と、XOR回路25とを備えており、遅延補償回路13は、遅延回路21と、セレクタ24と、XOR回路25とを備えている。遅延回路21、21の遅延時間は、Dである。遅延補償回路13~13の動作の詳細については、後に説明する。遅延補償回路13~13から出力されるシングルエンド信号を、以下では、それぞれ、補償後シングルエンド信号Comp(A-B)、Comp(B-C)、Comp(C-A)と記載する。
【0026】
ホールド遅延回路14~14は、それぞれ、ラッチ15~15のホールド時間を確保できるような遅延を、補償後シングルエンド信号Comp(A-B)、Comp(B-C)、Comp(C-A)に与えるように構成されている。ホールド遅延回路14~14から出力されるシングルエンド信号は、ワイヤA、B、Cから差動レシーバ12~12に現に入力されている信号により伝送されるシンボルの前のシンボルの論理値を表しており、それぞれ、前シンボルシングルエンド信号Prev(A-B)、Prev(B-C)、Prev(C-A)と記載する。
【0027】
ラッチ15~15は、それぞれ、前シンボルシングルエンド信号Prev(A-B)、Prev(B-C)、Prev(C-A)をクロック再生回路16から供給される再生クロック信号RCLKに同期してラッチし、ラッチした論理値を有するラッチデータ信号Data(A-B)、Data(B-C)、Data(C-A)を出力する。
【0028】
クロック再生回路16は、遅延補償回路13~13から出力される補償後シングルエンド信号Comp(A-B)、Comp(B-C)、Comp(C-A)を受け取ってクロック再生を行い、再生クロック信号RCLKを生成する。生成された再生クロック信号RCLKは、ラッチ15~15に供給される。一実施形態では、クロック再生回路16は、補償後シングルエンド信号Comp(A-B)、Comp(B-C)、Comp(C-A)が反転したタイミングのうち最先のタイミングに同期して再生クロック信号RCLKのクロックパルスを出力するように構成されてもよい。
【0029】
ゼロクロスタイミングの分散を補償するために、本実施形態では、各シンボルの受信において用いられる遅延補償回路13~13の遅延時間が、それぞれ、各シンボルの直前に伝送されるシンボルの受信における電位差V-V、V-V、V-Vに応じて制御される。より具体的には、あるシンボルの受信において用いられる遅延補償回路13の遅延時間は、その前に伝送されるシンボルの受信における電位差V-Vが、”weak”、”strong”のいずれであるかに応じて制御される。同様に、あるシンボルの受信において用いられる遅延補償回路13の遅延時間は、その前に伝送されるシンボルの受信における電位差V-Vが、”weak”、”strong”のいずれであるかに応じて制御され、あるシンボルの受信において用いられる遅延補償回路13の遅延時間は、その前に伝送されるシンボルの受信における電位差V-Vが、”weak”、”strong”のいずれであるかに応じて制御される。このような制御は、以下に述べられるような考察に基づくものである。
【0030】
図6に示す表から理解されるように、電位差V-V、V-V、V-Vのゼロクロスタイミングは、前シンボル及び現シンボルの受信における電位差V-V、V-V、V-Vのそれぞれが、”weak”及び”strong”のいずれであるかに依存している。電位差V-Vについて説明すると、前シンボル及び現シンボルの受信における電位差V-Vがいずれも”weak”である場合、及び、いずれも”strong”である場合、電位差V-Vのゼロクロスタイミングは”Mid”である。前シンボルの受信における電位差V-Vが”strong”であり、現シンボルの受信における電位差V-Vが”weak”である場合、電位差V-Vのゼロクロスタイミングは”Slow”である。また、前シンボルの受信における電位差V-Vが”weak”であり、現シンボルの受信における電位差V-Vが”strong”である場合、電位差V-Vのゼロクロスタイミングは”Fast”である。電位差V-V、V-Vについても同様である。
【0031】
本実施形態では、前シンボルの受信における電位差V-V、V-V、V-Vが”weak”及び”strong”のいずれであるかに依存して遅延補償回路13~13の遅延時間が制御される。
【0032】
詳細には、図7に示すように、前シンボルの受信における電位差V-Vが”weak”である場合、遅延補償回路13はシングルエンド信号SA-Bを遅延時間Dだけ遅延して得られる信号を補償後シングルエンド信号Comp(A-B)として出力する。このような動作は、遅延補償回路13のセレクタ24が遅延回路21の出力信号を選択することで実現される。一方、前シンボルの受信における電位差V-Vが”strong”である場合、遅延補償回路13は差動レシーバ12から受け取ったシングルエンド信号SA-Bをそのまま補償後シングルエンド信号Comp(A-B)として出力する。
【0033】
このような動作によれば、電位差V-Vのゼロクロスタイミングの分散を補償しながら補償後シングルエンド信号Comp(A-B)を生成することができる。例えば、タイミング"Fast"とタイミング"Mid"との間の時間差とタイミング"Mid"とタイミング"Slow"との間の時間差が同一である場合、遅延回路21の遅延時間Dを、該時間差に一致させることで、電位差V-Vの実効的なゼロクロスタイミングが"Mid"と"Slow"の2種類であるような補償後シングルエンド信号Comp(A-B)を生成することができる。タイミング"Fast"とタイミング"Mid"との間の時間差とタイミング"Mid"とタイミング"Slow"との間の時間差が同一でない場合でも、遅延時間Dを適正に設定することで、例えば、タイミング"Fast"とタイミング"Mid"との間の時間差とタイミング"Mid"とタイミング"Slow"との間の時間差の平均に設定することで電位差V-Vのゼロクロスタイミングの分散を補償することができる。
【0034】
遅延補償回路13、13の遅延時間も同様にして制御される。前シンボルの受信における電位差V-Vが”weak”である場合、遅延補償回路13はシングルエンド信号SB-Cを遅延時間Dだけ遅延して得られる信号を補償後シングルエンド信号Comp(B-C)として出力する。一方、前シンボルの受信における電位差V-Vが”strong”である場合、遅延補償回路13は差動レシーバ12から受け取ったシングルエンド信号SB-Cをそのまま補償後シングルエンド信号Comp(B-C)として出力する。また、前シンボルの受信における電位差V-Vが”weak”である場合、遅延補償回路13はシングルエンド信号SC-Aを遅延時間Dだけ遅延して得られる信号を補償後シングルエンド信号Comp(C-A)として出力する。一方、前シンボルの受信における電位差V-Vが”strong”である場合、遅延補償回路13は差動レシーバ12から受け取ったシングルエンド信号SC-Aをそのまま補償後シングルエンド信号Comp(C-A)として出力する。このような動作によれば、ゼロクロスタイミングの分散を補償しながら補償後シングルエンド信号Comp(B-C)、Comp(C-A)を生成することができる。
【0035】
本実施形態では、前シンボルの受信における電位差V-V、V-V、V-Vが”weak”、”strong”のいずれであるかが、電位差V-V、V-V、V-Vを直接検出するのではなく、前シンボルシングルエンド信号Prev(A-B)、Prev(B-C)、Prev(C-A)の論理演算によって算出される。以下では、論理演算による電位差V-V、V-V、V-Vの状態の判別について記述する。
【0036】
図8を参照して、ワイヤA、B、Cが、“H”、“M”、“L”から選択された互いに異なる電位を取ることから、ワイヤA、B、Cの可能な状態は、6つある。これらの状態を、それぞれ、状態#1~#6と記載する。例えば、状態#1は、ワイヤA、B、Cが、それぞれ、電位“H”、“M”、“L”である状態を意味している。
【0037】
あるシンボルの受信において電位差V-Vが”weak”、”strong”のいずれであるかは、該シンボルの受信において差動レシーバ12、12から出力されるシングルエンド信号SB-C、SC-Aの論理値から判別可能である。電位差V-Vが”weak”である場合、ワイヤA、Bのいずれか一方が、電位“M”を取る。これは、ワイヤB、Cの電位差V-Vに対応するシングルエンド信号SB-Cの論理値と、ワイヤC、Aの電位差V-Vに対応するシングルエンド信号SC-Aの論理値のうちの一方が“1”であり、他方が“0”であることを意味している。例えば、ワイヤAが電位“M”を取る場合、ワイヤA、B、Cは、状態#3、#4のいずれかである。状態#3では、シングルエンド信号SB-C、SC-Aが、それぞれ、“1”、“0”であり、状態#4では、シングルエンド信号SB-C、SC-Aが、それぞれ、“0”、“1”である。よって、シングルエンド信号SB-C、SC-Aの論理値の排他的論理和が“1”であれば、電位差V-Vが”weak”であると判断できる。
【0038】
同様に、電位差V-Vが”weak”、”strong”のいずれであるかは、該シンボルの受信において差動レシーバ12、12から出力されるシングルエンド信号SC-A、SA-Bの論理値から判別可能である。シングルエンド信号SC-A、SA-Bの論理値の排他的論理和が“1”であれば、電位差V-Vが”weak”であると判断できる。
【0039】
更に、電位差V-Vが”weak”、”strong”のいずれであるかは、該シンボルの受信において差動レシーバ12、12から出力されるシングルエンド信号SA-B、SB-Cの論理値から判別可能である。シングルエンド信号SA-B、SB-Cの論理値の排他的論理和が“1”であれば、電位差V-Vが”weak”であると判断できる。
【0040】
以上の議論から理解されるように、前シンボルの受信における電位差V-V、V-V、V-Vが”weak”、”strong”のいずれであるかは、前シンボルシングルエンド信号Prev(A-B)、Prev(B-C)、Prev(C-A)の論理演算によって判別可能である。図5に示す遅延補償回路13、13、13は、前シンボルシングルエンド信号Prev(A-B)、Prev(B-C)、Prev(C-A)から前シンボルの受信における電位差V-V、V-V、V-Vが”weak”及び”strong”のいずれであるかを判別し、それぞれの遅延時間を制御するように構成されている。
【0041】
詳細には、遅延補償回路13の遅延時間は、前シンボルシングルエンド信号Prev(A-B)、Prev(B-C)に応じて制御される。遅延補償回路13のXOR回路25は、前シンボルシングルエンド信号Prev(A-B)、Prev(B-C)に基づいて前シンボル状態信号Weak_P(A-B)を生成する状態判別回路として動作する。前シンボル状態信号Weak_P(A-B)は、電位差V-Vの状態、具体的には、電位差V-Vが”weak”、”strong”のいずれであるかを示している。前シンボル状態信号Weak_P(A-B)は、前シンボルシングルエンド信号Prev(B-C)、Prev(C-A)の排他的論理和の論理値を有しており、前シンボルの受信における電位差V-Vが”weak”である場合、論理値“1”を取る。
【0042】
前シンボル状態信号Weak_P(A-B)が“1”である場合、セレクタ24は、入力D1を選択して遅延回路21の出力信号を補償後シングルエンド信号Comp(A-B)として出力する。一方、前シンボル状態信号Weak_P(A-B)が“0”である場合、セレクタ24は、入力D1を選択して差動レシーバ12から受け取ったシングルエンド信号SA-Bを補償後シングルエンド信号Comp(A-B)として出力する。これにより、図7に示すような、前シンボルの電位差V-Vが”weak”である場合にシングルエンド信号SA-Bに遅延時間Dの遅延を挿入する動作が実現される。
【0043】
同様に、遅延補償回路13の遅延時間は、前シンボルシングルエンド信号Prev(C-A)、Prev(A-B)に応じて制御される。遅延補償回路13のXOR回路25は、前シンボルシングルエンド信号Prev(C-A)、Prev(A-B)に基づいて前シンボル状態信号Weak_P(B-C)を生成する状態判別回路として動作する。前シンボル状態信号Weak_P(B-C)は、前シンボルシングルエンド信号Prev(C-A)、Prev(A-B)の排他的論理和の論理値を有しており、前シンボルの受信における電位差V-Vが”weak”である場合、論理値“1”を取る。セレクタ24は、前シンボル状態信号Weak_P(B-C)が“1”である場合に遅延回路21の出力信号を補償後シングルエンド信号Comp(B-C)として出力し、“0”である場合に差動レシーバ12から受け取ったシングルエンド信号SB-Cを補償後シングルエンド信号Comp(B-C)として出力する。これにより、前シンボルの電位差V-Vが”weak”である場合にシングルエンド信号SB-Cに遅延時間Dの遅延を挿入する動作が実現される。
【0044】
更に、遅延補償回路13の遅延時間は、前シンボルシングルエンド信号Prev(A-B)、Prev(B-C)に応じて制御される。遅延補償回路13のXOR回路25は、前シンボルシングルエンド信号Prev(A-B)、Prev(B-C)に基づいて前シンボル状態信号Weak_P(C-A)を生成する状態判別回路として動作する。前シンボル状態信号Weak_P(C-A)は、前シンボルシングルエンド信号Prev(A-B)、Prev(B-C)の排他的論理和の論理値を有しており、前シンボルの受信における電位差V-Vが”weak”である場合、論理値“1”を取る。セレクタ24は、前シンボル状態信号Weak_P(C-A)が“1”である場合に遅延回路21の出力信号を補償後シングルエンド信号Comp(C-A)として出力し、“0”である場合に差動レシーバ12から受け取ったシングルエンド信号SC-Aを補償後シングルエンド信号Comp(C-A)として出力する。これにより、前シンボルの電位差V-Vが”weak”である場合にシングルエンド信号SC-Aに遅延時間Dの遅延を挿入する動作が実現される。
【0045】
このように動作する遅延補償回路13、13、13から出力される補償後シングルエンド信号Comp(A-B)、Comp(B-C)、Comp(C-A)がクロック再生回路16に供給され、再生クロック信号RCLKの生成に用いられる。各シンボルの受信において再生クロック信号RCLKのクロックパルスが出力されるタイミングは、補償後シングルエンド信号Comp(A-B)、Comp(B-C)、Comp(C-A)が反転するタイミングのうち最先のタイミングに同期している。このような動作により、電位差V-V、V-V、V-Vのゼロクロスタイミングの分散が補償された再生クロック信号RCLKが生成され、ラッチ15~15に供給される。
【0046】
以上に説明されているように、本実施形態では、電位差V-V、V-V、V-Vが”weak”及び”strong”のいずれであるかを検出し、検出結果に応じて遅延補償回路13、13、13の遅延時間が制御される。これにより、ゼロクロスタイミングの分散が補償された補償後シングルエンド信号Comp(A-B)、Comp(B-C)、Comp(C-A)が生成される。このようにして生成された補償後シングルエンド信号Comp(A-B)、Comp(B-C)、Comp(C-A)から再生クロック信号RCLKを生成することにより、本実施形態の受信装置2は、データ有効ウインドウを有効に拡大することができる。
【0047】
図9に示す一実施形態では、受信装置2が、前シンボルの受信における電位差V-V、V-V、V-Vの状態に加え、現シンボルの受信における電位差V-V、V-V、V-Vの状態に応じて遅延補償回路13、13、13の遅延時間を制御するように構成される。具体的には、本実施形態では、受信装置2が、遅延回路17、17、17を追加的に備えると共に、遅延補償回路13、13、13の構成が変更される。他の構成は、図5に示す受信装置2と同様である。
【0048】
遅延回路17、17、17は、それぞれ、差動レシーバ12、12、12から出力されるシングルエンド信号SA-B、SB-C、SC-Aを遅延して遅延シングルエンド信号Dly(A-B)、Dly(B-C)、Dly(C-A)を生成し、遅延補償回路13、13、13に供給する。遅延回路17、17、17は、現シンボルの電位差V-V、V-V、V-Vに応じて遅延補償回路13、13、13の遅延時間を制御するための時間を確保するために設けられている。以下では、差動レシーバ12、12、12から出力されるシングルエンド信号SA-B、SB-C、SC-Aが、それぞれ、現シンボルの電位差V-V、V-V、V-Vの論理値を有することを明確にするために、差動レシーバ12、12、12から出力されるシングルエンド信号SA-B、SB-C、SC-Aを、それぞれ、現シンボルシングルエンド信号Crt(A-B)、Crt(B-C)、Crt(C-A)と記載することがある。
【0049】
本実施形態では、遅延補償回路13、13、13が、前シンボルシングルエンド信号Prev(A-B)、Prev(B-C)、Prev(C-A)に加え、現シンボルシングルエンド信号Crt(A-B)、Crt(B-C)、Crt(C-A)に応じてそれぞれの遅延時間を制御するように構成されている。
【0050】
詳細には、本実施形態では、遅延補償回路13が、遅延回路21、22と、セレクタ24と、XOR回路25、26とを備えている。遅延回路21、22は、それぞれ、遅延時間D、Dを有している。遅延回路21は、遅延回路17の出力に接続されており、遅延回路22は、遅延回路21の出力に接続されている。セレクタ24は、3つの入力D0、D1、D2を有している。セレクタ24の入力D0は、遅延回路17の出力に接続され、入力D1は遅延回路21の出力に接続され、入力D2は遅延回路22の出力に接続されている。このように構成された遅延補償回路13は、遅延回路17から出力される遅延シングルエンド信号Dly(A-B)に、0、D、D+Dのいずれかの遅延時間を与えることができる。
【0051】
XOR回路25は、前シンボルシングルエンド信号Prev(B-C)、Prev(C-A)に基づいて前シンボル状態信号Weak_P(A-B)を生成する状態判別回路として動作し、XOR回路26は、現シンボルシングルエンド信号Crt(B-C)、Crt(C-A)に基づいて現シンボル状態信号Weak_A(A-B)を生成する状態判別回路として動作する。前シンボル状態信号Weak_P(A-B)は、前シンボルシングルエンド信号Prev(B-C)、Prev(C-A)の排他的論理和の論理値を有するように生成される。上述された議論から理解されるように、前シンボル状態信号Weak_P(A-B)は、前シンボルの受信において電位差A-Bが"weak"であるときに“1”に設定されることになる。同様に、現シンボル状態信号Weak_C(A-B)は、現シンボルシングルエンド信号Crt(B-C)、Crt(C-A)の排他的論理和の論理値を有するように生成される。現シンボル状態信号Weak_C(A-B)は、現シンボルの受信において電位差A-Bが"weak"であるときに“1”に設定されることになる。
【0052】
セレクタ24は、XOR回路25、26からそれぞれ出力される前シンボル状態信号Weak_P(A-B)、現シンボル状態信号Weak_C(A-B)に応じて、入力D0、D1、D2のいずれかを選択し、選択した入力に入力されるシングルエンド信号を、補償後シングルエンド信号Comp(A-B)として出力する。
【0053】
遅延補償回路13も同様に構成され、同様に動作する。遅延補償回路13は、遅延回路21、22と、セレクタ24と、XOR回路25、26とを備えている。遅延回路21、22は、それぞれ、遅延時間D、Dを有している。XOR回路25は、前シンボルシングルエンド信号Prev(C-A)、Prev(A-B)の排他的論理和の論理値を有する前シンボル状態信号Weak_P(B-C)を生成する。XOR回路26は、現シンボルシングルエンド信号Crt(C-A)、Crt(A-B)の排他的論理和の論理値を有する現シンボル状態信号Weak_A(B-C)を生成する。セレクタ24は、前シンボル状態信号Weak_P(B-C)及び現シンボル状態信号Weak_A(B-C)に応じて入力D0、D1、D2のいずれかを選択し、選択した入力に入力されるシングルエンド信号を、補償後シングルエンド信号Comp(B-C)として出力する。
【0054】
更に、遅延補償回路13も同様に構成され、同様に動作する。遅延補償回路13は、遅延回路21、22と、セレクタ24と、XOR回路25、26とを備えている。遅延回路21、22は、それぞれ、遅延時間D、Dを有している。XOR回路25は、前シンボルシングルエンド信号Prev(A-B)、Prev(B-C)の排他的論理和の論理値を有する前シンボル状態信号Weak_P(C-A)を生成する。XOR回路26は、現シンボルシングルエンド信号Crt(A-B)、Crt(B-C)の排他的論理和の論理値を有する現シンボル状態信号Weak_A(C-A)を生成する。セレクタ24は、前シンボル状態信号Weak_P(C-A)及び現シンボル状態信号Weak_A(C-A)に応じて入力D0、D1、D2のいずれかを選択し、選択した入力に入力されるシングルエンド信号を、補償後シングルエンド信号Comp(C-A)として出力する。
【0055】
図10に示すように、本実施形態では、遅延補償回路13、13、13の遅延時間が、前シンボルの受信における電位差V-V、V-V、V-Vに加え、現シンボルの受信における電位差V-V、V-V、V-Vに応じて制御される。以下では、まず、遅延補償回路13の遅延時間の制御について説明する。
【0056】
遅延補償回路13の遅延時間は、前シンボルの受信における電位差V-Vと現シンボルの受信における電位差V-Vとが、それぞれ、”weak”と”strong”のいずれであるかに応じて制御される。前シンボルの受信における電位差V-Vと現シンボルの受信における電位差V-Vがいずれも”weak”である場合、遅延補償回路13の遅延時間がDに設定される。詳細には、XOR回路25、26からそれぞれ出力される前シンボル状態信号Weak_P(A-B)、現シンボル状態信号Weak_C(A-B)が、いずれも“1”に設定される。この場合、セレクタ24は、入力D1を選択し、入力D1に入力されるシングルエンド信号を、補償後シングルエンド信号Comp(A-B)として出力する。この結果、遅延補償回路13によって遅延シングルエンド信号Dly(A-B)に与えられる遅延時間が、Dに制御される。
【0057】
前シンボルの受信における電位差V-Vと現シンボルの受信における電位差V-Vがいずれも”strong”である場合も、遅延補償回路13の遅延時間がDに設定される。詳細には、XOR回路25、26からそれぞれ出力される前シンボル状態信号Weak_P(A-B)、現シンボル状態信号Weak_C(A-B)が、いずれも“0”に設定される。この場合、セレクタ24は、入力D1を選択し、入力D1に入力されるシングルエンド信号を、補償後シングルエンド信号Comp(A-B)として出力する。この結果、遅延補償回路13によって遅延シングルエンド信号Dly(A-B)に与えられる遅延時間が、Dに制御される。
【0058】
前シンボルの受信における電位差V-Vが”strong"であり、現シンボルの受信における電位差V-Vが”weak”である場合、遅延補償回路13の遅延時間が0に設定される。詳細には、前シンボル状態信号Weak_P(A-B)、現シンボル状態信号Weak_C(A-B)が、それぞれ、“0”、“1”に設定される。この場合、セレクタ24は、入力D0を選択し、入力D0に入力されるシングルエンド信号を、補償後シングルエンド信号Comp(A-B)として出力する。この結果、遅延補償回路13によって遅延シングルエンド信号Dly(A-B)に与えられる遅延時間が、0に制御される。
【0059】
また、前シンボルの受信における電位差V-Vが”weak"であり、現シンボルの受信における電位差V-Vが”strong”である場合、遅延補償回路13の遅延時間がD+Dに設定される。詳細には、前シンボル状態信号Weak_P(A-B)、現シンボル状態信号Weak_C(A-B)が、それぞれ、“1”、“0”に設定される。この場合、セレクタ24は、入力D2を選択し、入力D2に入力されるシングルエンド信号を、補償後シングルエンド信号Comp(A-B)として出力する。この結果、遅延補償回路13によって遅延シングルエンド信号Dly(A-B)に与えられる遅延時間が、D+Dに制御される。
【0060】
このような動作によれば、電位差V-Vのゼロクロスタイミングの分散を一層に補償しながら補償後シングルエンド信号Comp(A-B)を生成することができる。例えば、タイミング"Fast"とタイミング"Mid"との間の時間差とタイミング"Mid"とタイミング"Slow"との間の時間差が同一である場合、遅延回路21、22の遅延時間D、Dを、当該時間差に一致させることで、電位差V-Vの実効的なゼロクロスタイミングが"Slow"の1種類であるような補償後シングルエンド信号Comp(A-B)を生成することができる。タイミング"Fast"とタイミング"Mid"との間の時間差とタイミング"Mid"とタイミング"Slow"との間の時間差が同一でない場合でも、遅延時間D、Dを適正に設定することで、例えば、タイミング"Fast"とタイミング"Mid"との間の時間差とタイミング"Mid"とタイミング"Slow"との間の時間差の平均に設定することで電位差V-Vのゼロクロスタイミングの分散を補償することができる。
【0061】
遅延補償回路13の遅延時間も、同様にして制御される。遅延補償回路13は、前シンボルの受信における電位差V-Vと現シンボルの受信における電位差V-Vが、それぞれ、”weak”と”strong”のいずれであるかに応じて制御される。
【0062】
詳細には、前シンボルの受信における電位差V-Vと現シンボルの受信における電位差V-Vがいずれも”weak”である場合、又は、いずれも”strong”である場合、セレクタ24は、入力D1を選択し、入力D1に入力されるシングルエンド信号を、補償後シングルエンド信号Comp(B-C)として出力する。この結果、遅延補償回路13によって遅延シングルエンド信号Dly(B-C)に与えられる遅延時間が、遅延時間Dに制御される。
【0063】
前シンボルの受信における電位差V-Vが”strong"であり、現シンボルの受信における電位差V-Vが”weak”である場合、セレクタ24は、入力D0を選択し、入力D0に入力されるシングルエンド信号を、補償後シングルエンド信号Comp(B-C)として出力する。この結果、遅延補償回路13によって遅延シングルエンド信号Dly(B-C)に与えられる遅延時間が、0に制御される。
【0064】
また、前シンボルの受信における電位差V-Vが”weak"であり、現シンボルの受信における電位差V-Vが”strong”である場合、セレクタ24は、入力D2を選択し、入力D2に入力されるシングルエンド信号を、補償後シングルエンド信号Comp(A-B)として出力する。この結果、遅延補償回路13によって遅延シングルエンド信号Dly(B-C)に与えられる遅延時間が、D+Dに制御される。
【0065】
更に、遅延補償回路13の遅延時間も、同様にして制御される。遅延補償回路13は、前シンボルの受信における電位差V-Vと現シンボルの受信における電位差V-Vが、それぞれ、”weak”と”strong”のいずれであるかに応じて制御される。
【0066】
前シンボルの受信における電位差V-Vと現シンボルの受信における電位差V-Vがいずれも”weak”である場合、又は、いずれも”strong”である場合、セレクタ24は、入力D1を選択し、入力D1に入力されるシングルエンド信号を、補償後シングルエンド信号Comp(C-A)として出力する。この結果、遅延補償回路13によって遅延シングルエンド信号Dly(C-A)に与えられる遅延時間が、Dに制御される。
【0067】
前シンボルの受信における電位差V-Vが”strong"であり、現シンボルの受信における電位差V-Vが”weak”である場合、セレクタ24は、入力D0を選択し、入力D0に入力されるシングルエンド信号を、補償後シングルエンド信号Comp(C-A)として出力する。この結果、遅延補償回路13によって遅延シングルエンド信号Dly(C-A)に与えられる遅延時間が、0に制御される。
【0068】
また、前シンボルの受信における電位差V-Vが”weak"であり、現シンボルの受信における電位差V-Vが”strong”である場合、セレクタ24は、入力D2を選択し、入力D2に入力されるシングルエンド信号を、補償後シングルエンド信号Comp(C-A)として出力する。この結果、遅延補償回路13によって遅延シングルエンド信号Dly(C-A)に与えられる遅延時間が、D+Dに制御される。
【0069】
このように動作する遅延補償回路13、13、13から出力される補償後シングルエンド信号Comp(A-B)、Comp(B-C)、Comp(C-A)がクロック再生回路16に供給される。クロック再生回路16は、遅延補償回路13~13から出力される補償後シングルエンド信号Comp(A-B)、Comp(B-C)、Comp(C-A)から再生クロック信号RCLKを生成する。このような動作により、電位差V-V、V-V、V-Vのゼロクロスタイミングの分散が補償された再生クロック信号RCLKが生成され、ラッチ15~15に供給される。
【0070】
以上に説明されているように、本実施形態では、前シンボルに加え、現シンボルの受信における電位差V-V、V-V、V-Vが”weak”及び”strong”のいずれであるかを検出し、検出結果に応じて遅延補償回路13、13、13の遅延時間が制御される。これにより、ゼロクロスタイミングの分散が一層に補償された補償後シングルエンド信号Comp(A-B)、Comp(B-C)、Comp(C-A)が生成される。このようにして生成された補償後シングルエンド信号Comp(A-B)、Comp(B-C)、Comp(C-A)から再生クロック信号RCLKを生成することにより、本実施形態の受信装置2は、データ有効ウインドウを有効に拡大することができる。
【0071】
図11に示す実施形態では、遅延補償回路13、13、13の構成が変更される。図11の受信装置2の他の部分は、図9に示す受信装置2と同様に構成されている。
【0072】
詳細には、遅延補償回路13は、遅延回路22の出力に接続され、遅延時間Dを有する遅延回路23を追加的に備えている。セレクタ24は、4つの入力D0~D3を有している。セレクタ24の入力D0は遅延回路17の出力に接続され、入力D1は遅延回路21の出力に接続され、入力D2は遅延回路22の出力に接続され、入力D3は遅延回路23の出力に接続されている。このように構成された遅延補償回路13は、遅延回路17から出力される遅延シングルエンド信号Dly(A-B)に、0、D、D+D、D+D+Dのいずれかの遅延時間を与えることができる。
【0073】
遅延補償回路13、13も同様に構成されている。遅延補償回路13は、遅延時間Dを有する遅延回路23を追加的に備えており、遅延補償回路13は、遅延時間Dを有する遅延回路23を追加的に備えている。セレクタ24、24は、いずれも、4つの入力D0~D3を有している。セレクタ24の入力D0は遅延回路17の出力に接続され、入力D1は遅延回路21の出力に接続され、入力D2は遅延回路22の出力に接続され、入力D3は遅延回路23の出力に接続されている。セレクタ24の入力D0は遅延回路17の出力に接続され、入力D1は遅延回路21の出力に接続され、入力D2は遅延回路22の出力に接続され、入力D3は遅延回路23の出力に接続されている。このように構成された遅延補償回路13、13は、遅延回路17、17から出力される遅延シングルエンド信号Dly(B-C)、Dly(C-A)に、0、D、D+D、D+D+Dのいずれかの遅延時間を与えることができる。
【0074】
このような遅延補償回路13、13、13の構成は、ゼロクロスタイミングの分散を補償すると共に、差動レシーバ12~12それぞれの入力信号の電位差に依存する差動レシーバ12~12の遅延の変動を補償可能にするためのものである。図12に示すように、差動レシーバ12~12の遅延は、電位差V-V、V-V、V-Vが”weak”、”strong”のいずれであるかに応じて変動する。差動レシーバ12~12の遅延の変動を補償することで、データ有効ウインドウを一層に拡大することができる。
【0075】
一実施形態では、現シンボルの受信における差動レシーバ12~12の遅延は、現シンボルの受信における電位差V-V、V-V、V-Vが”weak”である場合に大きくなり、”strong”である場合に小さくなる。加えて、差動レシーバ12~12の遅延は、現シンボルの影響より小さいものの、前シンボルの受信における電位差V-V、V-V、V-Vにも影響され得る。本実施形態では、差動レシーバ12~12の遅延は、前シンボルの受信における電位差V-V、V-V、V-Vが”weak”である場合に大きくなり、”strong”である場合に小さくなる。
【0076】
総合すると、本実施形態では、差動レシーバ12~12の遅延は、現シンボルの受信における電位差V-V、V-V、V-Vが”weak”である場合に最も大きい。この時の遅延を"Large"と記載する。また、現シンボル、前シンボルの両方の受信における電位差V-V、V-V、V-Vが”strong”である場合に最も小さい。この時の遅延を"Small"と記載する。また、現シンボルの受信における電位差V-V、V-V、V-Vが”strong”であり、前シンボルの受信における電位差V-V、V-V、V-Vが”weak”である場合、差動レシーバ12~12の遅延は、中間的である。この時の遅延を"Mid"と記載する。以下に述べられる本実施形態の受信装置2の動作によれば、このような差動レシーバ12~12の遅延の変動を補償することができる。
【0077】
図13に示すように、本実施形態においても図10に示す動作と同様に、遅延補償回路13、13、13の遅延時間が、前シンボルの受信における電位差V-V、V-V、V-Vと、現シンボルの受信における電位差V-V、V-V、V-Vとに応じて制御される。ただし、本実施形態における遅延補償回路13、13、13の遅延時間の制御は、図10に示す動作とは異なっている。本実施形態では、遅延補償回路13、13、13の遅延時間が、0、D、D+D、D+D+Dのいずれかから選択される。以下では、まず、遅延補償回路13の遅延時間の制御について説明する。
【0078】
前シンボルの受信における電位差V-Vが”strong”であり、現シンボルの受信における電位差V-Vが”weak”である場合、電位差V-Vのゼロクロスタイミングが最も遅い”Slow”になり、且つ、差動レシーバ12の遅延が最も長い”Large”になる。このため、遅延補償回路13の遅延時間は最も小さい0に設定される。詳細には、XOR回路25から出力される前シンボル状態信号Weak_P(A-B)が“0”に設定され、XOR回路26から出力される現シンボル状態信号Weak_C(A-B)が“1”に設定される。セレクタ24は、入力D0を選択し、入力D0に入力されるシングルエンド信号を、補償後シングルエンド信号Comp(A-B)として出力する。この結果、遅延補償回路13によって遅延シングルエンド信号Dly(A-B)に与えられる遅延時間が、0に制御される。
【0079】
前シンボル及び現シンボルの受信における電位差V-Vがいずれも”weak”である場合、電位差V-Vのゼロクロスタイミングが”Mid”になり、且つ、差動レシーバ12の遅延が”Large”になる。このため、遅延補償回路13の遅延時間は2番目に小さいDに設定される。詳細には、XOR回路25、26から出力される前シンボル状態信号Weak_P(A-B)、現シンボル状態信号Weak_C(A-B)が、いずれも“1”に設定される。セレクタ24は、入力D1を選択し、入力D1に入力されるシングルエンド信号を、補償後シングルエンド信号Comp(A-B)として出力する。この結果、遅延補償回路13によって遅延シングルエンド信号Dly(A-B)に与えられる遅延時間が、Dに制御される。
【0080】
前シンボル及び現シンボルの受信における電位差V-Vがいずれも”strong”である場合、電位差V-Vのゼロクロスタイミングが”Mid”になり、且つ、差動レシーバ12の遅延が最も小さい”Small”になる。このため、遅延補償回路13の遅延時間は2番目に大きいD+Dに設定される。詳細には、XOR回路25、26から出力される前シンボル状態信号Weak_P(A-B)、現シンボル状態信号Weak_C(A-B)が、いずれも“0”に設定される。セレクタ24は、入力D2を選択し、入力D2に入力されるシングルエンド信号を、補償後シングルエンド信号Comp(A-B)として出力する。この結果、遅延補償回路13によって遅延シングルエンド信号Dly(A-B)に与えられる遅延時間が、D+Dに制御される。
【0081】
前シンボルの受信における電位差V-Vが”weak”であり、現シンボルの受信における電位差V-Vが”strong”である場合、電位差V-Vのゼロクロスタイミングが最も早い”Fast”になり、且つ、差動レシーバ12の遅延が”Mid”になる。この場合、本実施形態では、遅延補償回路13の遅延時間が最も大きいD+D+Dに設定される。詳細には、XOR回路25から出力される前シンボル状態信号Weak_P(A-B)が“1”に設定され、XOR回路26から出力される現シンボル状態信号Weak_C(A-B)が“0”に設定される、セレクタ24は、入力D3を選択し、入力D3に入力されるシングルエンド信号を、補償後シングルエンド信号Comp(A-B)として出力する。この結果、遅延補償回路13によって遅延シングルエンド信号Dly(A-B)に与えられる遅延時間が、D+D+Dに制御される。
【0082】
このような動作によれば、遅延回路21、22、23の遅延時間D、D、Dを適切に設定することにより、電位差V-Vのゼロクロスタイミングの分散を補償し、更に、差動レシーバ12の遅延時間の分散を補償しながら補償後シングルエンド信号Comp(A-B)を生成することができる。
【0083】
遅延補償回路13の遅延時間も、同様にして制御される。前シンボルの受信における電位差V-Vが”strong”であり、現シンボルの受信における電位差V-Vが”weak”である場合、遅延補償回路13のセレクタ24は、入力D0を選択し、入力D0に入力されるシングルエンド信号を、補償後シングルエンド信号Comp(B-C)として出力する。この結果、遅延補償回路13によって遅延シングルエンド信号Dly(B-C)に与えられる遅延時間が、0に制御される。
【0084】
前シンボル及び現シンボルの受信における電位差V-Vがいずれも”weak”である場合、セレクタ24は、入力D1を選択し、入力D1に入力されるシングルエンド信号を、補償後シングルエンド信号Comp(A-B)として出力する。この結果、遅延補償回路13によって遅延シングルエンド信号Dly(B-C)に与えられる遅延時間が、Dに制御される。
【0085】
前シンボル及び現シンボルの受信における電位差V-Vがいずれも”strong”である場合、セレクタ24は、入力D2を選択し、入力D2に入力されるシングルエンド信号を、補償後シングルエンド信号Comp(B-C)として出力する。この結果、遅延補償回路13によって遅延シングルエンド信号Dly(B-C)に与えられる遅延時間が、D+Dに制御される。
【0086】
前シンボルの受信における電位差V-Vが”weak”であり、現シンボルの受信における電位差V-Vが”strong”である場合、セレクタ24は、入力D3を選択し、入力D3に入力されるシングルエンド信号を、補償後シングルエンド信号Comp(B-C)として出力する。この結果、遅延補償回路13によって遅延シングルエンド信号Dly(B-C)に与えられる遅延時間が、D+D+Dに制御される。
【0087】
更に、遅延補償回路13の遅延時間も、同様にして制御される。前シンボルの受信における電位差V-Vが”strong”であり、現シンボルの受信における電位差V-Vが”weak”である場合、遅延補償回路13のセレクタ24は、入力D0を選択し、入力D0に入力されるシングルエンド信号を、補償後シングルエンド信号Comp(C-A)として出力する。この結果、遅延補償回路13によって遅延シングルエンド信号Dly(C-A)に与えられる遅延時間が、0に制御される。
【0088】
前シンボル及び現シンボルの受信における電位差V-Vがいずれも”weak”である場合、セレクタ24は、入力D1を選択し、入力D1に入力されるシングルエンド信号を、補償後シングルエンド信号Comp(C-A)として出力する。この結果、遅延補償回路13によって遅延シングルエンド信号Dly(C-A)に与えられる遅延時間が、Dに制御される。
【0089】
前シンボル及び現シンボルの受信における電位差V-Vがいずれも”strong”である場合、セレクタ24は、入力D2を選択し、入力D2に入力されるシングルエンド信号を、補償後シングルエンド信号Comp(C-A)として出力する。この結果、遅延補償回路13によって遅延シングルエンド信号Dly(C-A)に与えられる遅延時間が、D+Dに制御される。
【0090】
前シンボルの受信における電位差V-Vが”weak”であり、現シンボルの受信における電位差V-Vが”strong”である場合、セレクタ24は、入力D3を選択し、入力D3に入力されるシングルエンド信号を、補償後シングルエンド信号Comp(C-A)として出力する。この結果、遅延補償回路13によって遅延シングルエンド信号Dly(C-A)に与えられる遅延時間が、D+D+Dに制御される。
【0091】
このように動作する遅延補償回路13、13、13から出力される補償後シングルエンド信号Comp(A-B)、Comp(B-C)、Comp(C-A)がクロック再生回路16に供給される。クロック再生回路16は、遅延補償回路13~13から出力される補償後シングルエンド信号Comp(A-B)、Comp(B-C)、Comp(C-A)から再生クロック信号RCLKを生成する。
【0092】
以上に説明されているように、本実施形態では、前シンボルに加え、現シンボルの受信における電位差V-V、V-V、V-Vが”weak”及び”strong”のいずれであるかを検出し、検出結果に応じて遅延補償回路13、13、13の遅延時間が、0、D、D+D、D+D+Dのいずれかから選択される。このような動作により、ゼロクロスタイミングの分散を補償すると共に、差動レシーバ12、12、12の遅延の変動を補償した補償後シングルエンド信号Comp(A-B)、Comp(B-C)、Comp(C-A)が生成される。このようにして生成された補償後シングルエンド信号Comp(A-B)、Comp(B-C)、Comp(C-A)から再生クロック信号RCLKを生成することにより、本実施形態の受信装置2は、データ有効ウインドウを有効に拡大することができる。
【0093】
なお、本実施形態において、遅延補償回路13、13、13により与えられる遅延時間は、差動レシーバ12~12の特性に応じて変更され得る。例えば、差動レシーバ12~12が、電位差V-V、V-V、V-Vの絶対値が小さいほど遅延が小さいように構成されている場合には、前シンボル及び現シンボルの受信における電位差V-V、V-V、V-Vと、遅延補償回路13、13、13により与えられる遅延時間との対応関係が、図13に示すものから変更され得る。遅延補償回路13、13、13により与えられる遅延時間の変更は、セレクタ24~24の動作を規定する真理値表を変更することにより変更可能である。
【0094】
以上には、本開示の様々な実施形態が具体的に記載されているが、本開示に記載された技術は、様々な変更と共に実施され得る。例えば、上記には、MIPI C-PHY規格に準拠し、それぞれが3つの電位を取り得る3本のワイヤA、B、Cを介してデータ通信が行われるデータ通信システムが記述されているが、上記の実施形態に開示されている技術は、4本又はそれ以上の本数のワイヤを介してデータ通信が行われるデータ通信システム及び各ワイヤが4以上の電圧レベルを取り得るデータ通信システムにおいても使用され得る。
【符号の説明】
【0095】
1 :送信装置
2 :受信装置
3 :レーン
A、B、C:ワイヤ
11~11:入力端子
12~12:差動レシーバ
13~13:遅延補償回路
14~14:ホールド遅延回路
15~15:ラッチ
16 :クロック再生回路
17~17:遅延回路
21~21:遅延回路
22~22:遅延回路
23~23:遅延回路
24~24:セレクタ
25~25:XOR回路
26~26:XOR回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13