(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-02
(45)【発行日】2023-08-10
(54)【発明の名称】水処理装置
(51)【国際特許分類】
A61M 1/16 20060101AFI20230803BHJP
C02F 1/44 20230101ALI20230803BHJP
B01D 61/08 20060101ALI20230803BHJP
C02F 1/461 20230101ALI20230803BHJP
【FI】
A61M1/16 161
A61M1/16 111
C02F1/44 J
B01D61/08
C02F1/461 Z
(21)【出願番号】P 2022094411
(22)【出願日】2022-06-10
【審査請求日】2022-06-10
(73)【特許権者】
【識別番号】591201686
【氏名又は名称】株式会社日本トリム
(74)【代理人】
【識別番号】100180644
【氏名又は名称】▲崎▼山 博教
(72)【発明者】
【氏名】仲西 直樹
(72)【発明者】
【氏名】三宅 正人
【審査官】大橋 俊之
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-077672(JP,A)
【文献】特開2013-172821(JP,A)
【文献】特開昭60-236661(JP,A)
【文献】特開2004-041742(JP,A)
【文献】特開2015-139475(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/16
C02F 1/44
B01D 61/08
C02F 1/461
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水に水素を溶解させることにより溶存水素水を生成する水素溶解装置と、
前記水素溶解装置に接続され、前記溶存水素水に対して逆浸透膜処理を行うことにより逆浸透溶存水素水を生成する逆浸透膜処理装置と、
前記逆浸透溶存水素水を貯留可能なROタンクと、
前記逆浸透溶存水素水を前記ROタンクから流出し、前記ROタンクに戻るように循環可能な循環流路と、
前記原水から前記溶存水素水を経て前記逆浸透溶存水素水を生成する水処理運転の制御を行う制御装置と、
を有し、
前記循環流路が、前記逆浸透溶存水素水を用いて稼働する外部装置に対して配管接続されており、
前記外部装置における稼働状況に応じて、前記逆浸透溶存水素水を
前記循環流路を介して前記外部装置に対して供給可能なものであり、
前記制御装置が、稼働状態にある前記外部装置における消費が想定される前記逆浸透溶存水素水の消費予定水量を基準として設定される生成目標水量に相当する前記逆浸透溶存水素水を生成するように前記水処理運転に係る運転制御を行うこと、を特徴とする水処理装置。
【請求項2】
前記外部装置が、前記循環流路に対して複数、配管接続されており、
前記制御装置が、稼働状態にある前記外部装置の台数、及び前記外部装置の稼働のために単位時間当たりに使用された水量に基づいて導出される前記消費予定水量に基づいて前記水処理運転に係る前記運転制御を行うこと、を特徴とする請求項1に記載の水処理装置。
【請求項3】
前記外部装置が、前記循環流路に対して複数、配管接続されており、
前記制御装置が、稼働状態にある前記外部装置の台数と、当該台数に応じて予め規定された数量とを乗じて得られる水量を前記消費予定水量として前記水処理運転に係る前記運転制御を行うこと、を特徴とする請求項1に記載の水処理装置。
【請求項4】
前記循環流路から前記外部装置に供給される前記逆浸透溶存水素水の流量に基づいて、前記外部装置の稼働のために単位時間当たりに使用された水量に基づいて導出される前記消費予定水量に基づいて前記制御装置が前記水処理運転に係る前記運転制御を行うこと、を特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の水処理装置。
【請求項5】
前記逆浸透溶存水素水を排出可能なように、前記循環流路及び前記ROタンクのいずれか一方又は双方に対して配管接続された排水路と、
前記排水路を介する前記逆浸透溶存水素水の排出を調整する排水弁と、
を有し、
前記制御装置は、前記ROタンクにおける前記逆浸透溶存水素水の貯留量が所定の基準量を超えることを条件として、前記排水路を介して前記循環流路を流れる前記逆浸透溶存水素水を排出させ、貯留量が所定の基準量を下回ることを条件として、前記排水路を介する前記逆浸透溶存水素水の排出を停止させること、を特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の水処理装置。
【請求項6】
前記制御装置が、前記外部装置において使用された前記逆浸透溶存水素水の使用水量を把握可能であり、
前記制御装置により把握された前記使用水量が前記消費予定水量を上回ることを条件として、前記使用水量と前記消費予定水量との差に基づいて導出される加算水量を前記消費予定水量に対して加算した水量を前記生成目標水量として前記水処理運転に係る運転制御を行い、
前記制御装置により把握された前記使用水量が前記消費予定水量を下回ることを条件として、前記使用水量と前記消費予定水量との差に基づいて導出される減算水量を前記消費予定水量から減算した水量を前記生成目標水量として前記水処理運転に係る前記運転制御を行うこと、を特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の水処理装置。
【請求項7】
前記外部装置が、血液透析に用いられるダイアライザー、あるいは前記ダイアライザーに対して前記血液透析に用いる透析液を供給する透析液供給装置であること、を特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の水処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、血液透析において透析患者に酸化ストレスが発生することが知られている。これは、透析時に発生する活性酸素が原因であると考えられており、この活性酸素を消去して酸化ストレスの軽減を図ることが提案されている。
【0003】
このような知見に基づき、例えば、逆浸透膜(RO膜)で処理され、純化した水(以下、「逆浸透水」という。)でありつつ、高濃度の水素が溶存した水(逆浸透溶存水素水)を透析用の希釈水(以下、「透析用水」とも称す)として製造する方法が提案されている。このようにして準備された透析用水をダイアライザー等と称される装置に供給し、同装置内において薬剤を溶解させることにより、水素が溶存した透析液を準備することができる。水素が溶存した透析液を血液透析に用いると、水素が生体内のヒドロキシラジカルと反応し、酸化ストレスや炎症反応を抑制することができる。このような透析用水を生成するための装置として、例えば下記特許文献1に開示されているような透析用水製造装置が提供されている。
【0004】
特許文献1に開示されている透析用水製造装置は、原水を電気分解した後、逆浸透膜処理装置において逆浸透膜処理を行うことによって、水素が溶存した透析用水を生成可能なものとされている。特許文献1の透析用水製造装置においては、逆浸透膜処理装置よりも下流側に設置されたタンク(ROタンク)に透析用水を貯蔵可能なものとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、上述した透析用水製造装置において、ダイアライザーでの透析用水の使用状況に応じて、ダイアライザーにおいて必要な透析用水を適確に供給するための方法として、例えばROタンク内の水位をフロートセンサー等で検知し、ROタンク内の水が一定以上減少したことをフラグとして透析用水を造水するという方法が考えられる。しかしながら、本発明者らが鋭意検討したところ、このような方法で造水を行う場合には、透析用水製造装置による造水が停止する期間が生じ、この期間中にROタンク内の水素含有透析用水から水素が経時的に脱気し、透析用水の溶存水素濃度が低下していくといった懸念があるとの知見に至った。
【0007】
また、上述した透析用水製造装置を透析用水の生成に用いる場合には、例えば、透析用水の淀みを抑制すること、圧力変動に伴うポンプや流路等の破損を抑制こと、透析用水が流れる流路を清浄に維持すること、供給先となる複数のダイアライザーにおいて随時、必要なタイミングで必要な水量の透析用水を使用可能とすること、等の観点からすれば、透析用水の循環径路を形成し、当該循環径路からダイアライザーが適宜、透析用水を採水可能とする構成が考えられる。しかしながら、このような構成とした場合には、透析用水が前述の循環流路を循環する間に、水素が経時的に脱気し、透析用水の溶存水素濃度が低下していくといった懸念があるとの知見に至った。
【0008】
そこで本発明は、逆浸透処理を行いつつ、高濃度の水素を溶存させることにより生成された逆浸透溶存水素水を使用する外部装置(例えばダイアライザー)に対して、要求に応じて逆浸透溶存水素水を供給可能でありつつ、水素の脱気に伴う逆浸透溶存水素水における溶存水素濃度の低下を最小限に抑制可能な水処理装置の実現を目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上述した課題を解決すべく提供される本発明の水処理装置は、原水に水素を溶解させることにより溶存水素水を生成する水素溶解装置と、前記水素溶解装置に接続され、前記溶存水素水に対して逆浸透膜処理を行うことにより逆浸透溶存水素水を生成する逆浸透膜処理装置と、前記逆浸透溶存水素水を貯留可能なROタンクと、前記逆浸透溶存水素水を前記ROタンクから流出し、前記ROタンクに戻るように循環可能な循環流路と、前記原水から前記溶存水素水を経て前記逆浸透溶存水素水を生成する水処理運転の制御を行う制御装置と、を有し、前記循環流路が、前記逆浸透溶存水素水を用いて稼働する外部装置に対して配管接続されており、前記外部装置における稼働状況に応じて、前記逆浸透溶存水素水を前記外部装置に対して供給可能なものであり、前記制御装置が、稼働状態にある前記外部装置における消費が想定される前記逆浸透溶存水素水の消費予定水量を基準として設定される生成目標水量に相当する前記逆浸透溶存水素水を生成するように前記水処理運転に係る運転制御を行うこと、を特徴とするものであると良い。
【0010】
(2)上述した本発明の水処理装置は、前記外部装置が、前記循環流路に対して複数、配管接続されており、前記制御装置が、稼働状態にある前記外部装置の台数、及び前記外部装置の稼働のために単位時間当たりに使用された水量に基づいて導出される前記消費予定水量に基づいて前記水処理運転に係る前記運転制御を行うこと、を特徴とするものであると良い。
【0011】
(3)上述した本発明の水処理装置は、前記外部装置が、前記循環流路に対して複数、配管接続されており、前記制御装置が、稼働状態にある前記外部装置の台数と、当該台数に応じて予め規定された数量とを乗じて得られる水量を前記消費予定水量として前記水処理運転に係る前記運転制御を行うこと、を特徴とするものであると良い。
【0012】
(4)上述した本発明の水処理装置は、前記循環流路から前記外部装置に供給される前記逆浸透溶存水素水の流量に基づいて、前記外部装置の稼働のために単位時間当たりに使用された水量に基づいて導出される前記消費予定水量に基づいて前記水処理運転に係る前記運転制御を行うこと、を特徴とするものであると良い。
【0013】
(5)上述した本発明の水処理装置は、前記逆浸透溶存水素水を排出可能なように、前記循環流路及び前記ROタンクのいずれか一方又は双方に対して配管接続された排水路と、前記排水路を介する前記逆浸透溶存水素水の排出を調整する排水弁と、を有し、前記制御装置は、前記ROタンクにおける前記逆浸透溶存水素水の貯留量が所定の基準量を超えることを条件として、前記排水路を介して前記循環流路を流れる前記逆浸透溶存水素水を排出させ、貯留量が所定の基準量を下回ることを条件として、前記排水路を介する前記逆浸透溶存水素水の排出を停止させること、を特徴とするものであると良い。
【0014】
(6)上述した本発明の水処理装置は、前記制御装置が、前記外部装置において使用された前記逆浸透溶存水素水の使用水量を把握する使用水量把握部を有し、前記使用水量把握部により把握された前記使用水量が前記消費予定水量を上回ることを条件として、前記使用水量と前記消費予定水量との差に基づいて導出される加算水量を前記消費予定水量に対して加算した水量を前記生成目標水量として前記水処理運転に係る運転制御を行い、前記使用水量把握部により把握された前記使用水量が前記消費予定水量を下回ることを条件として、前記使用水量と前記消費予定水量との差に基づいて導出される減算水量を前記消費予定水量から減算した水量を前記生成目標水量として前記水処理運転に係る運転制御を行うこと、を特徴とするものであると良い。
【0015】
(7)上述した本発明の水処理装置は、前記外部装置が、血液透析に用いられるダイアライザー、あるいは前記ダイアライザーに対して前記血液透析に用いる透析液を生成する透析液供給装置であること、を特徴とするものであると良い。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、逆浸透処理を行いつつ、高濃度の水素を溶存させることにより生成された逆浸透溶存水素水を使用する外部装置に対して、要求に応じて逆浸透溶存水素水を供給可能でありつつ、水素の脱気に伴う逆浸透溶存水素水における溶存水素濃度の低下を最小限に抑制可能な水処理装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係る水処理装置に対して外部装置としてダイアライザーや透析液供給装置を配管接続して形成された血液透析システムに係る説明図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る水処理装置の構成を示す説明図である。
【
図3】
図2の水処理装置を構成する水素溶解装置を模式的に示した断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る水処理装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態に係る水処理装置10、及びこれを用いて構成される血液透析システム300について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0019】
水処理装置10は、外部から供給される原水2に対して水素を溶解させることにより溶存水素水を生成した後、溶存水素水に対して逆浸透膜処理を行うことにより逆浸透溶存水素水を生成する運転(水処理運転)を行うものである。血液透析システム300は、逆浸透溶存水素水を用いて生成される透析水を用いて、血液透析を行うためのものである。血液透析システム300は、逆浸透溶存水素水を用いて稼働する外部装置150として、後に詳述する透析液供給装置160やダイアライザー170を備えたものとされている。以下、水処理装置10、及び血液透析システム300の構成について、さらに具体的に説明する。
【0020】
図2に示すように、水処理装置10は、原水供給部20、水素溶解装置30、及び逆浸透膜処理装置40を備えており、これらを配管接続することにより水処理系統100を形成したものである。また、水処理装置10は、水処理系統100において生成された逆浸透溶存水素水を循環させるための循環流路50を備えている。さらに、水処理装置10は、各部の動作を制御するための制御装置200を備えている。水処理装置10は、水処理系統100において水を圧送しつつ、圧送された水を水素溶解装置30、及び逆浸透膜処理装置40において処理することにより逆浸透溶存水素水を生成し、この逆浸透溶存水素水を循環流路50において循環させつつ外部装置150に対して供給可能なものである。以下、水処理装置10を構成する各部の構成について、さらに具体的に説明する。
【0021】
原水供給部20は、水処理装置10の外部から供給される水道水や井戸水、地下水などの水(原水2)に処理を施した後、水素溶解装置30に対して供給するためのものである。原水供給部20は、プレフィルタ22、軟水化装置24、活性炭処理装置26、及びポンプ28を備えている。
【0022】
プレフィルタ22は、水処理装置10の外部から供給される水道水や井戸水、地下水などの水(原水2)から不純物を除去するためのものである。プレフィルタ22は、適宜のフィルタによって構成できるが、例えば原水2に含まれる硬度成分(カルシウムイオン、マグネシウムイオンなどの溶解固形物等)から、鉄錆や砂粒子等の不純物を除去できるものとされている。
【0023】
軟水化装置24は、原水2に含まれている硬度成分をイオン交換による置換反応により除去し、軟水とする処理を行うためのものである。水処理系統100において、軟水化装置24は、プレフィルタ22に対して下流側に配管接続されている。そのため、軟水化装置24は、プレフィルタ22において不純物が除去された原水2からさらに硬度成分を除去し、原水2を軟水化することができる。
【0024】
活性炭処理装置26は、水処理系統100において、軟水化装置24に対して下流側に配管接続されている。活性炭処理装置26には、軟水化装置24により軟水化処理された原水2が供給される。活性炭処理装置26は、多孔質の吸着物質である活性炭を用いて、原水2に含まれる残留塩素、クロラミン、有機物などを物理的な吸着作用により除去する処理を行うためのものである。
【0025】
原水供給部20は、上述したプレフィルタ22よりも水処理系統100の上流側に配されたポンプ28を作動させることによって原水2を圧送し、プレフィルタ22、軟水化装置24、及び活性炭処理装置26を通過させることができる。これにより、原水2は、プレフィルタ22において不純物が除去され、軟水化装置24において軟水化され、さらに活性炭処理装置26において残留塩素等の物質が除去された状態とされて、水素溶解装置30に供給される。
【0026】
水素溶解装置30は、水処理系統100において、原水供給部20に対して下流側に配管接続されている。水素溶解装置30は、原水供給部20から導入された原水2に水素を溶解させたもの(溶存水素水3)を生成するものである。水素溶解装置30は、原水2に水素を溶解させて溶存水素水3を生成できるものであればいかなるもので有っても良い。本実施形態では、水素溶解装置30として、電気分解処理を行うことにより、水素が溶存した溶存水素水3を生成可能なものが採用されている。
【0027】
さらに具体的には、
図3に示すように、水素溶解装置30は、固体高分子膜32や電解槽34を備えたものとすることができる。電解槽34は、電解槽本体34a、導入路34b、送水路34c、及び排水路34dを有する。また、水素溶解装置30は、電解槽本体34aの内部に、固体高分子膜32、陽極35、陰極36、誘電体層38を有する。
【0028】
電解槽本体34aは、電気分解が行われる原水2を貯留可能な槽状のものである。導入路34bは、原水供給部20から供給された原水2を電解槽本体34aの内部に導入するためのものである。送水路34cは、水素溶解装置30によって生成された溶存水素水3を水処理系統100の下流側に送出するための流路である。また、排水路34dは、水素溶解装置30における処理によって発生した排水(溶存酸素水)を外部に排出するための流路である。
【0029】
固体高分子膜32は、水素溶解装置30において電解質として機能するものである。固体高分子膜32は、電解槽34の短手方向略中央部において、電解槽34の長手方向に延びるように配置されている。これにより、電解槽34の内部空間は、固体高分子膜32を介して一方側の空間と、他方側の空間とに隔てられている。固体高分子膜32は、電気分解により、陽極35側で発生したオキソニウムイオン(H3O+)を陰極36側へと移動させる役割を有するものである。固体高分子膜32は、例えばスルホン酸基を有するフッ素系の樹脂材料により形成されたものを好適に使用することができる。より具体的には、ナフィオン(デュポン社製)、Flemion(旭硝子社製)、Aciplex(旭硝子社製)などを固体高分子膜32として好適に用いることができる。
【0030】
陽極35及び陰極36は、電解槽34への給電を行う給電体として機能するものである。陽極35及び陰極36は、固体高分子膜32を介して互いに対向するように配置されている。陽極35及び陰極36は、例えば、チタンや白金などの素材を用いて形成されている。陽極35と陰極36は、電気的に接続されている。
【0031】
誘電体層38は、固体高分子膜32と陽極35との間に形成された空間、及び固体高分子膜32と陰極36との間に形成された空間に配されている。誘電体層38は、例えばチタンや白金などの素材を用いて形成されている。
【0032】
水素溶解装置30において原水2を電気分解すると、陽極35側、及び陰極36側において以下のような反応が起こる。
陽極側:6H2O→4H3O++O2+4e-
陰極側:4H3O++4e-→2H2+4H2O
【0033】
水素溶解装置30においては、陰極36における水素の生成原料としてオキソニウムイオン(H3O+)が使用され、電気分解処理の際にOH-イオンが発生しない。従って、水素溶解装置30は、溶存水素の量を増やすために高い電流値で電気分解処理を行った場合であっても、処理水のpHが変化しない。従って、水素溶解装置30においては、pHの上限値に起因して、処理水の溶存水素濃度が抑制されてしまうという不都合を生じることがなくなり、所望の高い電流値で電気分解処理を行い、処理水の溶存水素濃度を向上させることが可能になる。その結果、必要な溶存水素濃度を有する処理水を得ることが可能になる。
【0034】
水素溶解装置30は、上述した電気分解処理により生成した溶存水素水3を、電解槽本体34aの陰極36側に形成された送水路34cから、逆浸透膜処理装置40側に導出できる。一方、電気分解処理により、陽極35側で発生した溶存酸素水4は、陽極35側に形成された排水路34dにより、電解槽本体34aの外部へと排出される。
【0035】
逆浸透膜処理装置40は、水処理系統100において水素溶解装置30よりも下流側に配されている。逆浸透膜処理装置40は、逆浸透膜42を用いて逆浸透膜処理を行うための装置である。
図2に示すように、逆浸透膜処理装置40は、逆浸透膜42、ROタンク44、及びROポンプ45を備えている。
【0036】
逆浸透膜42は、水素溶解装置30により生成した溶存水素水3に対して、逆浸透処理を行うためのものである。ここで、半透膜を境界にして、濃度の異なる溶液がある場合、低濃度の溶液から高濃度の溶液へ水が移動する現象(浸透)が生じる。これに対し、半透膜を境界にして、高濃度の溶液側に圧力を加えることにより、高濃度側の溶液から低濃度側の溶液へ水を移動させ、低濃度側に水が浸透する現象(逆浸透)を生じさせることができる。逆浸透膜42は、逆浸透膜処理装置40において逆浸透させた水(逆浸透水)を得る処理(逆浸透膜処理)を行うために設けられている。
【0037】
逆浸透膜処理装置40は、水を逆浸透させることにより、微量金属類などの不純物を除去することができる。逆浸透膜処理装置40は、水素溶解装置30側からROポンプ45によって圧送された溶存水素水3を逆浸透膜42において逆浸透させることにより、溶存水素水3からさらに微量金属類などの不純物を除去することができる。本実施形態の水処理装置10では、上述したように水素溶解装置30において溶存水素水3を生成するまでの段階において、既にプレフィルタ22において不純物が除去され、軟水化装置24において軟水化され、さらに活性炭処理装置26において残留塩素等の物質が除去されている。そのため、水処理装置10は、逆浸透膜処理装置40によって溶存水素水3を逆浸透処理することにより、ISO13959(透析用水基準)に規定される水質基準を満たす水(逆浸透水)を得ることができる。また、水処理装置10においては、水素溶解装置30において生成された溶存水素水3を逆浸透膜処理装置40によって逆浸透処理する。そのため、水処理装置10は、逆浸透膜処理装置40における逆浸透処理を行うことにより、水素が溶存した逆浸透水(逆浸透溶存水素水5)を得ることができる。
【0038】
ROタンク44は、水処理系統100において、上述した逆浸透膜42よりも下流側に設けられている。ROタンク44は、逆浸透膜42による逆浸透膜処理がなされた逆浸透水(逆浸透溶存水素水5)を貯蔵するためのものである。ROタンク44には、紫外線殺菌装置47が設置されている。また、ROタンク44には、往き側タンク配管46、及び戻り側タンク配管48が接続されている。往き側タンク配管46及び戻り側タンク配管48は、循環流路50をなす配管に対して配管接続されるものである。
【0039】
往き側タンク配管46は、ROタンク44から逆浸透溶存水素水5を導出するための配管である。往き側タンク配管46は、戻り側タンク配管48よりもROタンク44の底側(本実施形態ではROタンク44の底部)に配管接続されている。往き側タンク配管46には、循環ポンプ46a、限外濾過装置46b、及び往き側接続部46cが設けられている。
【0040】
循環ポンプ46aは、ROタンク44に貯留されている逆浸透溶存水素水5を汲み出して、循環流路50に向けて圧送するものである。限外濾過装置46bは、限外濾過膜を備えている。限外濾過装置46bは、逆浸透膜処理によって逆浸透溶存水素水5が生成された後に微生物等が含まれていた場合にこれを捕捉できるように設けられている。また、往き側接続部46cは、循環流路50を構成する配管の端部が配管接続される部分である。
【0041】
戻り側タンク配管48は、循環流路50をなす配管を流れて来た逆浸透溶存水素水5をROタンク44に戻すための配管である。戻り側タンク配管48は、往き側タンク配管46よりもROタンク44の上方に接続されている。本実施形態ではROタンク44に貯留されている逆浸透溶存水素水5の液面よりも上方側から逆浸透溶存水素水5を戻すことが可能な位置に設けられている。戻り側タンク配管48には、限外濾過装置48a、及び戻り側接続部48bが設けられている。限外濾過装置48aは、上述した限外濾過装置46bと同様のものであり、ROタンク44に向けて戻ってきた逆浸透溶存水素水5に微生物等が含まれていた場合にこれを捕捉できるように設けられている。また、戻り側接続部48bは、循環流路50を構成する配管のうち、往き側接続部46cが接続されているのとは反対側の端部が配管接続される部分である。
【0042】
循環流路50は、上述したROタンク44に接続された往き側タンク配管46、及び戻り側タンク配管48に対して配管接続されることにより、ROタンク44から出て、ROタンク44に戻る逆浸透溶存水素水5の循環流を形成するための流路である。循環流路50には、逆浸透溶存水素水を用いて稼働する外部装置150が配管接続されている。外部装置150は、水処理装置10によって生成された逆浸透溶存水素水5を用いて稼働するものであればいかなるものであっても良い。本実施形態においては、血液透析システム300を構成する透析液を生成するための透析液供給装置160や、ダイアライザー170が外部装置150として循環流路50に対して配管接続されている。
【0043】
透析液供給装置160は、逆浸透溶存水素水5に対して薬剤を溶解させることにより透析に用いる薬液(透析液)を生成可能なものである。透析液供給装置160には、薬剤を供給するための供給装置を一又は複数(図示例では、薬剤溶解装置162,164の2台)が接続されている。透析液供給装置160は、循環流路50から取り込んだ逆浸透溶存水素水5に対して、薬剤溶解装置162,164から供給された薬剤を混合させることにより、透析液を生成できる。透析液供給装置160により生成された透析液は、各患者毎に割り当てられたダイアライザー180に供給され、血液透析に供される。
【0044】
また、ダイアライザー170は、上述したダイアライザー180とは異なり、逆浸透溶存水素水5に対して薬剤を溶解させることにより透析液を生成する機能を備えたものである。そのため、ダイアライザー170は、透析液供給装置160を介することなく、循環流路50に対して接続されている。
【0045】
制御装置200は、水処理装置10において原水2から溶存水素水3を経て逆浸透溶存水素水5を生成する水処理運転の制御を行うものである。制御装置200は、外部装置150における稼働状況に応じて、逆浸透溶存水素水5を外部装置150に対して供給するための制御を行える。制御装置200は、稼働状態にある外部装置150において消費されると想定される逆浸透溶存水素水5の消費予定水量Qを基準として設定される生成目標水量Xに相当する逆浸透溶存水素水5を生成するように水処理運転に係る運転制御を行う。
【0046】
ここで、前述した消費予定水量Qの導出は、様々な方法によって行うことができる。例えば、第一の方法として、稼働状態にある外部装置150の台数(稼働台数a)、及び外部装置150の稼働のために単位時間当たりに使用される水量(単位時間水量b)に基づいて消費予定水量Qを導出する方法が考えられる。すなわち、制御装置200は、稼働台数a及び単位時間水量bを乗じる演算を行うことにより、消費予定水量Q(Q=a×b)を導出するものとすることができる。また、第二の方法として、稼働台数aと、稼働台数aに応じて予め規定された数量cとを乗じて得られる水量を消費予定水量Q(Q=a×c)として導出する方法が考えられる。
【0047】
また、第三の方法として、外部装置150において単位時間当たりに消費される逆浸透溶存水素水5の水量を検知するための流量センサを循環流路50あるいは外部装置150に設け、当該流量センサによって検知された単位時間当たりの消費水量dの実績値、及び外部装置150の稼働予想時間tに基づいて消費予定水量Q(Q=d×t)を導出するものとすることができる。なお、外部装置150において単位時間当たりに消費される逆浸透溶存水素水5の水量は、例えば、外部装置150に供給される逆浸透溶存水素水5の流量einと、外部装置150において消費されずに循環流路50に戻る逆浸透溶存水素水5の流量eoutとの差(ein-eout)に基づいて導出することができる。制御装置200は、例えば前述した第一の方法から第三の方法のうちいずれかの方法や、他の方法により消費予定水量Qを導出するものとすることができる。
【0048】
また、消費予定水量Qの導出は、制御装置200が行うものとすることも可能であるが、制御装置200以外の装置が行うようにすることも可能である。具体的には、例えば、透析液供給装置160が備える制御装置(図示せず)において消費予定水量Qを導出し、そのデータを制御装置200が取得して水処理運転に係る運転制御を行うようにすると良い。透析液供給装置160の制御装置は、各外部装置150において使用される逆浸透溶存水素水5の水量等、各外部装置150の使用状況を管理制御を行う。そのため、透析液供給装置160の制御装置において消費予定水量Qを導出し、そのデータを制御装置200が活用することとすれば、消費予定水量Qの導出を容易かつ精度良く行うことができるのに加え、制御装置200の負担を抑制できる。
【0049】
また、薬剤溶解装置162,164が備える制御装置(図示せず)において消費予定水量Qを導出し、そのデータを制御装置200が取得して水処理運転に係る運転制御を行うようにすることも可能である。薬剤溶解装置162,164は、薬剤を溶解させるために適した水量(現実に治療に使用する水量)を把握するための制御装置を有しているため、その制御装置を活用して消費予定水量Qを導出することが可能である。このように、薬剤溶解装置162,164の制御装置において消費予定水量Qを導出し、そのデータを制御装置200が活用することとすれば、消費予定水量Qの導出を容易かつ精度良く行うことができるのに加え、制御装置200の負担を抑制できる。
【0050】
また、消費予定水量Qの導出は、水処理装置10の制御装置200や、透析液供給装置160の制御装置、あるいは薬剤溶解装置162,164の制御装置とは別に設けられた他の装置を用いて行うようにすることも可能である。このような装置を設ける場合には、循環流路50のいずれかの箇所や、循環流路50に繋がる他の箇所等、適宜の箇所に設けることが可能である。
【0051】
制御装置200は、上述したようにして消費予定水量Qを導出すると、消費予定水量Qを基準として生成目標水量Xを設定する。ここで、制御装置200による生成目標水量Xは、様々な方法で行うことができる。例えば、制御装置200は、消費予定水量Qそのものを生成目標水量Xと設定するものとしたり、消費予定水量Qを所定の演算式に代入して生成目標水量Xを設定するものとしたりすることができる。制御装置200は、このようにして消費予定水量Qを基準として設定された生成目標水量Xに相当する量の逆浸透溶存水素水5を生成するように、水処理装置10をなす各部の動作制御を行い、水処理運転を実行させる。
【0052】
血液透析システム300においては、制御装置200による制御のもと、
図4に示すフローチャートに則って。外部装置150の稼働状態に応じて水処理運転が行われる。以下、
図4のフローチャートについて、各ステップ毎に説明する。
【0053】
(ステップ1)
制御装置200は、ステップ1において消費予定水量Qを導出するための演算処理を行う。消費予定水量Qの演算は、例えば上述した第一の方法から第三の方法のうちいずれかの方法によって行うことができる。消費予定水量Qの導出が完了すると、制御フローがステップ2に進められる。
【0054】
(ステップ2)
制御装置200は、ステップ2において、する処理を行う。生成目標水量Xは、上述したようにステップ1において導出された消費予定水量Qをそのまま適用する方法や、消費予定水量Qに基づいて所定の演算式によって導出された水量を適用する方法によって設定される。生成目標水量Xの設定が完了すると、制御フローがステップ3に進められる。
【0055】
(ステップ3)
制御装置200は、ステップ3において、ステップ2で設定された生成目標水量Xに相当する水量の逆浸透溶存水素水5を生成可能なように、水処理装置10を構成する各部の動作制御を行うことにより、水処理運転を行わせる。具体的には、制御装置200は、原水供給部20に設けられたポンプ28の出力を生成目標水量Xに応じて変動させて原水2を水素溶解装置30に供給させる。また、制御装置200は、水素溶解装置30に供給される原水2の水量に応じて、水素溶解装置30で生成される溶存水素水3の溶存水素濃度が適正値となるように、水素溶解装置30の出力調整を行う。また、生成目標水量Xの逆浸透溶存水素水5がROタンク44に供給されるように、生成目標水量Xに応じてROポンプ45の出力調整を行う。制御装置200は、このようにして水処理運転を行い、生成目標水量Xに相当する水量の逆浸透溶存水素水5を生成させる。
【0056】
(ステップ4)
制御装置200は、ステップ4において、外部装置150で必要とされる水量の逆浸透溶存水素水5を供給可能なように、消費予定水量Qに基づいて循環ポンプ46aの出力制御を行う。ステップ4に係る制御が完了すると、制御フローはステップ1に戻される。
【0057】
血液透析システム300において、水処理装置10は、上述したようにして、
図4に係る制御フローに則った制御に基づく動作を繰り返す。これにより、水処理装置10は、消費予定水量Qに基づいて適正な水量の逆浸透溶存水素水5をROタンク44に補充しつつ、外部装置150において必要とされる水量の逆浸透溶存水素水5を、循環流路50を介して外部装置150に供給できる。
【0058】
上述した実施形態において例示した、本発明を具現化した水処理装置10は、以下の(a)~(e)に示すような特徴的構成を有し、これにより本発明に特有の効果を奏することができる。
【0059】
(a)上述した本実施形態の水処理装置10は、原水2に水素を溶解させることにより溶存水素水3を生成する水素溶解装置30と、水素溶解装置30に接続され、溶存水素水3に対して逆浸透膜処理を行うことにより逆浸透溶存水素水5を生成する逆浸透膜処理装置40と、逆浸透溶存水素水5を貯留可能なROタンク44と、逆浸透溶存水素水5をROタンク44から流出し、ROタンク44に戻るように循環可能な循環流路50と、原水2から溶存水素水3を経て逆浸透溶存水素水5を生成する水処理運転の制御を行う制御装置200と、を有し、循環流路50が、逆浸透溶存水素水5を用いて稼働する外部装置150に対して配管接続されており、外部装置150における稼働状況に応じて、逆浸透溶存水素水5を外部装置150に対して供給可能なものであり、制御装置200が、稼働状態にある外部装置150における消費が想定される逆浸透溶存水素水5の消費予定水量Qを基準として規定される生成目標水量Xに相当する逆浸透溶存水素水5を生成するように水処理運転に係る運転制御を行うこと、を特徴とするものであると良い。
【0060】
本実施形態の水処理装置10は、上記(a)のような構成とすることにより、外部装置150の稼働のために利用される逆浸透溶存水素水5に匹敵する水量の逆浸透溶存水素水5をROタンク44に準備することができる。これにより、本実施形態の水処理装置10は、逆浸透溶存水素水5を生成している状態を維持し、要求に応じて逆浸透溶存水素水5を供給可能でありつつ、水素の脱気に伴う逆浸透溶存水素水5における溶存水素濃度の低下を最小限に抑制することができる。
【0061】
(b)上述した本実施形態の水処理装置10は、外部装置150が、循環流路50に対して複数、配管接続されており、制御装置200が、稼働状態にある外部装置150の稼働台数a、及び外部装置150の稼働のために単位時間当たりに使用された水量(単位時間水量b)に基づいて導出される消費予定水量Qに基づいて前記水処理運転に係る前記運転制御を行うこと、を特徴とするものであると良い。
【0062】
本実施形態の水処理装置10は、上記(b)のような構成とすることにより、消費予定水量Qを外部装置150の稼働台数a、及び単位時間水量bに基づいて適切に導出することができる。これにより、過不足なく適量の逆浸透溶存水素水5をROタンク44に準備し、適正な溶存水素濃度の逆浸透溶存水素水5を外部装置150における要求に応じて供給できる。なお、消費予定水量Qの導出は、制御装置200が行うことも可能であるが、制御装置200とは異なる他の装置(例えば透析液供給装置160や薬剤溶解装置162,164、あるいはその他の装置)において行うようにすることも可能である。
【0063】
(c)上述した本実施形態の水処理装置10は、外部装置150が、循環流路50に対して複数、配管接続されており、制御装置200が、稼働状態にある外部装置150の稼働台数aと、当該稼働台数aに応じて予め規定された数量cとを乗じて得られる水量を消費予定水量Qとして前記水処理運転に係る前記運転制御を行うこと、を特徴とするものであると良い。
【0064】
本実施形態の水処理装置10は、上記(c)のような構成とすることにより、消費予定水量Qを外部装置150の稼働台数a、及び稼働台数aに応じて予め規定された数量cに基づいて適切に導出することができる。これにより、過不足なく適量の逆浸透溶存水素水5をROタンク44に準備し、適正な溶存水素濃度の逆浸透溶存水素水5を外部装置150における要求に応じて供給できる。なお、消費予定水量Qの導出は、制御装置200が行うことも可能であるが、制御装置200とは異なる他の装置(例えば透析液供給装置160や薬剤溶解装置162,164、あるいはその他の装置)において行うようにすることも可能である。
【0065】
(d)上述した本実施形態の水処理装置10は、循環流路50から外部装置150に供給される逆浸透溶存水素水5の流量に基づいて、外部装置150の稼働のために単位時間当たりに使用された水量(消費水量d)に基づいて導出される消費予定水量Qに基づいて前記水処理運転に係る前記運転制御を行うこと、を特徴とするものであると良い。
【0066】
本実施形態の水処理装置10は、上記(d)のような構成とすることにより、外部装置150の稼働のために単位時間当たりに使用された消費水量dに基づいて消費予定水量Qを適確に導出することができる。これにより、過不足なく適量の逆浸透溶存水素水5をROタンク44に準備し、適正な溶存水素濃度の逆浸透溶存水素水5を外部装置150における要求に応じて供給できる。なお、消費予定水量Qの導出は、制御装置200が行うことも可能であるが、制御装置200とは異なる他の装置(例えば透析液供給装置160や薬剤溶解装置162,164、あるいはその他の装置)において行うようにすることも可能である。
【0067】
(e)上述した本実施形態の水処理装置10は、外部装置150が、血液透析に用いられるダイアライザー170、あるいはダイアライザー180に対して血液透析に用いる透析液を供給する透析液供給装置160であること、を特徴とするものであると良い。
【0068】
本実施形態の水処理装置10は、上記(e)のような構成とすることにより、外部装置150として設けられた透析液供給装置160やダイアライザー170に対して適正な溶存水素濃度の逆浸透溶存水素水5を供給できる。従って、本実施形態の水処理装置10は、上述した血液透析システム300のように血液透析に用いられる装置において必要とされる透析用水の生成装置として好適に利用できる。
【0069】
なお、本発明の水処理装置は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能であり、上記実施形態において例示したものや、上記(a)~(e)に係るものに限定されるものではなく、例えば以下の第一変形例、第二変形例のような構成としても良い。以下、水処理装置10及び血液透析システム300の第一変形例、及び第二変形例について説明する。なお、第一変形例及び第二変形例の説明において、上記実施形態に係る水処理装置10及び血液透析システム300と同様の構成については、同一の符号を付し、詳細の説明については省略する。
【0070】
≪第一変形例≫
第一変形例の水処理装置10は、
図5に示すように、逆浸透溶存水素水5を排出可能なように、循環流路50及びROタンク44のいずれか一方又は双方(図示例では循環流路50)に排水路52を設けた構成とすることも可能である。このような構成とした場合、
図5に示すように、循環流路50と排水路52との分岐部分に三方弁54を設けたり、三方弁54に代えて、あるいは三方弁54に加えて排水路52に開閉弁を設けたりして、排水路を介する逆浸透溶存水素水5の排出を調整可能な排水弁を備えた構成とされている。
【0071】
水処理装置10は、このような構成としつつ、制御装置200による制御のもと、ROタンク44における逆浸透溶存水素水5の貯留量が所定の基準量を超えることを条件として、排水路52を介して循環流路50を流れる逆浸透溶存水素水5を排出させ、貯留量が所定の基準量を下回ることを条件として、排水路52を介する逆浸透溶存水素水5の排出を停止させものとされている。
【0072】
第一変形例に係る水処理装置10は、上述した(a)~(e)に係る特徴的構成に加えて、以下の(f)に係る特徴的構成を有し、これにより以下のような特有の効果を奏することができる。
【0073】
(f)第一変形例の水処理装置10は、逆浸透溶存水素水5を排出可能なように、循環流路50及びROタンク44のいずれか一方又は双方に対して配管接続された排水路52と、排水路52を介する逆浸透溶存水素水5の排出を調整する排水弁と、を有し、制御装置200は、ROタンク44における逆浸透溶存水素水5の貯留量が所定の基準量を超えることを条件として、排水路52を介して循環流路50を流れる逆浸透溶存水素水5を排出させ、貯留量が所定の基準量を下回ることを条件として、排水路52を介する逆浸透溶存水素水5の排出を停止させること、を特徴とするものである。
【0074】
第一変形例の水処理装置10は、このような構成とされているため、排水路52を介して排水を行うことにより、ROタンク44における逆浸透溶存水素水5の貯留量が所定の基準量となるように調整することができる。これにより、本変形例の水処理装置10は、逆浸透溶存水素水5を生成している状態を維持し、要求に応じて逆浸透溶存水素水5を供給可能でありつつ、水素の脱気に伴う逆浸透溶存水素水5における溶存水素濃度の低下を最小限に抑制することができる。
【0075】
≪第二変形例≫
第二変形例の水処理装置10においては、制御装置200が、外部装置150において使用された逆浸透溶存水素水5の使用水量を把握可能なものとされている。本変形例の水処理装置10は、制御装置200により把握された使用水量が消費予定水量Qを上回ることを条件として、使用水量と消費予定水量Qとの差に基づいて導出される加算水量を消費予定水量に対して加算した水量を生成目標水量Xとして水処理運転に係る運転制御を行う。
【0076】
一方、本変形例の水処理装置10は、制御装置200により把握された使用水量が消費予定水量Qを下回ることを条件として、使用水量と消費予定水量Qとの差に基づいて導出される減算水量を消費予定水量Qから減算した水量を生成目標水量Xとして水処理運転に係る運転制御を行う。
【0077】
第二変形例に係る水処理装置10は、上述した(a)~(e)に係る特徴的構成に加えて、以下の(g)に係る特徴的構成を有し、これにより以下のような特有の効果を奏することができる。
【0078】
(g)第二変形例の水処理装置10は、制御装置200が、外部装置150において使用された逆浸透溶存水素水5の使用水量を把握可能であり、制御装置200により把握された使用水量が消費予定水量Qを上回ることを条件として、使用水量と消費予定水量Qとの差に基づいて導出される加算水量を消費予定水量Qに対して加算した水量を生成目標水量Xとして水処理運転に係る運転制御を行い、制御装置200により把握された使用水量が消費予定水量Qを下回ることを条件として、使用水量と消費予定水量Qとの差に基づいて導出される減算水量を消費予定水量Qから減算した水量を生成目標水量Xとして水処理運転に係る運転制御を行うものである。
【0079】
第二変型例の水処理装置10は、外部装置150において実際に使用された逆浸透溶存水素水5の使用水量を把握し、使用水量と消費予定水量Qとの差に基づいて生成目標水量Xを増減させるものとされている。これにより、第二変型例の水処理装置10は、外部装置150における実際の逆浸透溶存水素水5の使用水量を反映した水量に生成目標水量Xを設定でき、その分だけ逆浸透溶存水素水5をより一層過不足無く生成させることができる。
【0080】
≪その他の変形例≫
上述した実施形態や第一変形例、第二変形例に係る水処理装置10は、本発明の水処理装置の一例を示したものに過ぎず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0081】
例えば、上述した水処理装置10は、上記(b)~(d)のいずれかのようにして消費予定水量Qを導出して生成目標水量Xを設定するものであるが、上記(b)~(d)とは別の方法によって消費予定水量Qを導出して生成目標水量Xを設定するものとすることが可能である。また、水処理装置10は、上記(b)~(d)から選ばれる複数の方法によって導出された複数の消費予定水量Qに基づいて、生成目標水量Xを設定するようにしても良い。例えば、水処理装置10は、上記(b)~(d)から選ばれる複数の方法によって導出された複数の消費予定水量Qの平均値や、複数の消費予定水量Qのうち最大のもの、あるいは最小のものに基づいて生成目標水量Xを設定するようにしても良い。
【0082】
また、上述した水処理装置10は、ダイアライザー170や透析液供給装置160を外部装置150とした血液透析システム300に用いられるものとして例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、血液透析に用いられる装置とは異なる他の装置を外部装置150としても良い。
【0083】
本願発明は、上述した実施の形態に記載の構成に限定されることなく、本願発明の技術的思想の範囲を逸脱しない範囲において適宜設計変更等することが可能である。上述した各実施の形態や変形例の構成要素は任意に選択して組み合わせて構成するとよい。また各実施の形態や変形例の任意の構成要素と、課題を解決するための手段、発明を実施するための形態等に記載の任意の構成要素または課題を解決するための手段、発明を実施するための形態等に記載の任意の構成要素を具体化した構成要素とは任意に組み合わせて構成するとよい。これらについても、本願または本願に基づく分割出願等において権利取得する意思を有する。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、例えば、血液透析に用いる透析液を生成する透析液供給装置やダイアライザー等の外部装置に対して供給する逆浸透溶存水素水を生成するための水処理装置全般において好適に利用できる。
【符号の説明】
【0085】
2 :原水
3 :溶存水素水
5 :逆浸透溶存水素水
10 :水処理装置
30 :水素溶解装置
40 :逆浸透膜処理装置
44 :ROタンク
50 :循環流路
52 :排水路
54 :三方弁
150 :外部装置
160 :透析液供給装置
170 :ダイアライザー
180 :ダイアライザー
200 :制御装置
300 :血液透析システム
Q :消費予定水量
X :生成目標水量
a :稼働台数
b :単位時間水量
c :数量
d :消費水量
【要約】
【課題】逆浸透処理を行いつつ、高濃度の水素を溶存させることにより生成された逆浸透溶存水素水を使用する装置に対して、要求に応じて逆浸透溶存水素水を供給可能でありつつ、水素の脱気に伴う逆浸透溶存水素水における溶存水素濃度の低下を最小限に抑制可能な水処理装置の実現を目的とした。
【解決手段】水処理装置10は、原水供給部20と、水素溶解装置30と、逆浸透膜処理装置40と、逆浸透溶存水素水5を貯留可能なROタンク44と、逆浸透溶存水素水5を循環可能な循環流路50とを有する。循環流路50は、逆浸透溶存水素水5を用いて稼働する外部装置に対して接続されている。制御装置200は、稼働状態にある外部装置150において想定される逆浸透溶存水素水5の消費予定水量Qを基準として規定される生成目標水量Xに相当する逆浸透溶存水素水5を生成させる。
【選択図】
図2