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特許7324912電気伝導性混合物中に含有されるスズ及び/又は鉛を抽出するための電解法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-02
(45)【発行日】2023-08-10
(54)【発明の名称】電気伝導性混合物中に含有されるスズ及び/又は鉛を抽出するための電解法
(51)【国際特許分類】
   C25C 1/14 20060101AFI20230803BHJP
   C22B 1/00 20060101ALI20230803BHJP
   C22B 7/00 20060101ALI20230803BHJP
   C22B 13/00 20060101ALI20230803BHJP
   C22B 25/00 20060101ALI20230803BHJP
   C25C 1/18 20060101ALI20230803BHJP
【FI】
C25C1/14
C22B1/00 601
C22B7/00 Z
C22B13/00 101
C22B25/00 101
C25C1/18
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022125193
(22)【出願日】2022-08-05
(62)【分割の表示】P 2019534742の分割
【原出願日】2017-12-19
(65)【公開番号】P2022164694
(43)【公開日】2022-10-27
【審査請求日】2022-08-30
(31)【優先権主張番号】1662775
(32)【優先日】2016-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】519223217
【氏名又は名称】ヴェオリア エンバイロメント-ブイイー
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョルジオ,ヴィンセント
(72)【発明者】
【氏名】ディアマン,オーリアン
(72)【発明者】
【氏名】レスクレ,アンネ-ゾフィー
【審査官】瀧口 博史
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-76695(JP,A)
【文献】特開昭61-292350(JP,A)
【文献】特開昭62-230994(JP,A)
【文献】特開平7-197286(JP,A)
【文献】国際公開第2015/025304(WO,A2)
【文献】米国特許第4439338(US,A)
【文献】米国特許第4662999(US,A)
【文献】米国特許第4885064(US,A)
【文献】米国特許第5618404(US,A)
【文献】韓国登録特許第10-1233779(KR,B1)
【文献】中国特許出願公開第102330112(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103510109(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104746098(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 1/00 - 61/00
C25C 1/00 - 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物から得られる電気伝導性混合物中に含有されるスズ及び鉛を抽出するための電解方法であって、前記電気伝導性混合物は複数の固体要素から成り:
- 混合物の総重量に対して50質量%未満の金属の形態のスズ、
- 混合物の総重量に対して25質量%未満の金属の形態の鉛、並びに
- 混合物の総重量に対して25質量%超の金属銅、並びに/又は金属鉄、並びに/又は金属アルミニウム、並びに/又は金属ニッケル、並びに/又は銅及び/若しくは鉄及び/若しくはアルミニウム及び/若しくはニッケルを含む金属合金、
を含む混合物であり、
前記方法は:
a)前記電気伝導性混合物からアノード(200、201、202A、202B)を形成すること、
b)150g/L~250g/Lの濃度のメタンスルホン酸、並びに10g/L~60g/Lのスズ濃度でのスズメタンスルホン酸塩及び/又は5g/L~120g/Lの鉛濃度での鉛メタンスルホン酸塩MSPbを含む電解溶液(800、801、802)を調製すること、
c)アルミニウム、スチール、又は、スズ及び/若しくは鉛のいずれかから構成されているカソード(600、601A、601B、602A、602B、602C)を提供すること、
d)前記アノード(200、201、202A、202B)及び前記カソード(600、601A、601B、602B、602C)を、前記電解溶液(800、801、802)中に少なくとも部分的に浸漬すること、並びに
e)酸化によって前記アノード(200、201、202A、202B)の前記スズ及び鉛を浸出させ、前記電気伝導性混合物中に最初に含有されている前記スズ及び鉛を前記カソード(600、601A、601B、602A、602B、602C)上に堆積させるために、電気デバイス(20、21、22)を介して前記アノード(200、201、202A、202B)と前記カソード(600、601A、601B、602A、602B、602C)との間に電流を印加すること、
から成る工程を含み、
印加電流の密度が、前記カソード(600、601A、601B、602A、602B
、602C)において、150~400A/m である、方法。
【請求項2】
前記方法が、前記電気伝導性混合物を圧縮する工程を、前記アノード(200、201、202A、202B)の形成の工程a)の前又は後に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アノード(200、201、202A、202B)の形成の工程a)の後、このアノード(200、201、202A、202B)が、金属バスケット(400、401、402A、402B)に挿入される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記金属バスケット(400、401、402A、402B)が、チタン、又はステンレススチールから作られている、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記電気伝導性混合物が、前記電気伝導性混合物(800)の総重量に対して5質量%未満のスズ及び鉛よりも卑であるいずれかの金属を含み、前記金属は、前記電解溶液(800)に対して物理的及び化学的に直接アクセス可能である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程e)の終了後に、以下の工程:
- 前記金属バスケット(400、401、402A、402B)及び前記カソード(600、601A、601B、602A、602B、602C)を前記電解溶液(800、801、802)から取り出すこと、
- 前記金属バスケット上の残留するスズメタンスルホン酸塩及び/又は鉛メタンスルホン酸塩をすべて回収するために、前記金属バスケット(400、401、402A、402B)を、前記電解溶液(800、801、802)で、次に水でリンスすること、並びに
- 前記カソード(600、601A、601B、602A、602B、602C)に堆積された少なくとも前記スズ及び鉛を回収すること、
をさらに含む、請求項3又は4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
最大寸法が20μm以上である前記電気伝導性混合物の要素を物理的に保持するために、ポリマーをベースとする多孔性エンベロープで前記金属バスケット(400、401、402A、402B)が包まれる、請求項3又は4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記電解溶液(800、801、802)が、フェノール系安定剤及び/又は塩化物イオン及び/又は酸化防止剤をさらに含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
記カソード(600、601A、601B、602A、602B、602C)は、プレートの形態である、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解法又は電気分解の分野全般に関する。詳細には、本発明は、廃棄物から得られる電気伝導性混合物中に含有されるスズ及び/又は鉛を抽出するための方法に関し、この方法は、電解溶液として、メタンスルホン酸(MSAの略語で表される)及び1又は複数のメタンスルホネート金属塩を含む溶液を用いる。
【0002】
本文書の意味において、廃棄物とは、製造、変換のプロセスの実施の過程で、又はある一式の材料から成る製品の使用の過程で排出され得るいかなる固体要素をも意味する。この固体要素は、例えば、その所持者が取り除く固体要素、又は所持者がそれを取り除く及び/若しくは続いてそれを処理する意図又は義務を有する場合の固体要素であり得る。
【背景技術】
【0003】
スズ及び鉛は、採鉱及び/又は冶金セクターで従来から用いられている湿式精錬プロセスの実施に大きく干渉するか、又は実施を妨害さえすることが認識されている2種類の金属である。
【0004】
特に、現行のスズめっき産業では、例えば金属の表面にスズの膜を堆積させるために、電気めっきの現象が用いられる。これらのスズめっき法は、それらの方法において、様々な浴、酸浴(例えば、フルオロホウ酸又はメタンスルホン酸)及び/又は塩基性浴(例えば、スズ酸塩をベースとする)、並びにこれらの浴のうちの少なくとも1つに少なくとも部分的に浸漬された少なくとも1つのアノード及び1つのカソードを用いている。このアノード(犠牲アノードと称される)は、カソードでの堆積が良好な品質となるように、並びにさらには、続いてのその実用において、堆積が、第一には添加剤の添加によって、及び第二にはアノードとカソードとの間に印加される電流密度によって注意深く制御される光沢、接着性、多孔度、及び/又は粗度の特性を有するように、高純度でなければならない。
【0005】
しかし、これらの方法に関する制限の1つは、必要とされる堆積の良好な品質及び充分な再現性を得るために、浴中の金属の濃度が、必然的に経時で一定でなければならないことである。これは、現在用いられている方法において、パーツをスズめっきする方法が、カソードでの堆積の厚さが所定の値に到達した時点で完了と見なされるからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、廃棄物から得られる電気伝導性混合物中に最初に含有されているスズ及び/又は鉛を抽出並びに回収するための、先行技術のこれらの欠陥及び欠点を克服する電解法を提供することが実際に求められており、電気伝導性混合物は、ある一式の様々な金属を含んでいる。電気伝導性混合物からのスズ及び/又は鉛の良好な抽出は、これらの2つの元素が、この電気伝導性混合物中に最初に含有されている他の金属の続いての回収において有害な元素であると見なされることから、不可欠である。
【0007】
浴中の金属の濃度をチェックする必要なしで、及び所定の堆積厚さによってプロセスの終了が示される必要もなしで効果的であり得るスズ及び/又は鉛を抽出するための電解法を提供することも求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
既に述べた欠点を解決するために、本出願者は、廃棄物から得られる電気伝導性混合物中に含有されるスズ及び/又は鉛を抽出する目的の方法を開発し、その操作原理は、第一に、電気伝導性混合物中に最初に含有されているスズ及び/又は亜鉛の選択的電解浸出に、及び第二には、電極上へのスズ及び/又は鉛の直接電解堆積に基づいている。したがって、本発明の方法は、従来の電気めっき法と電気精錬法との間に位置するハイブリッド法として理解され得る。
【0009】
より詳細には、本発明の主題は、廃棄物から得られる電気伝導性混合物中に含有されるスズ及び/又は鉛を抽出するための電解方法であり、この方法は:
a)電気伝導性混合物からアノードを形成すること、
b)150g/L~250g/Lの濃度のメタンスルホン酸MSA(以降MSAの略語で称される)、並びに10g/L~60g/Lのスズ濃度でのスズメタンスルホン酸塩MSSn及び/又は5g/L~120g/Lの鉛濃度での鉛メタンスルホン酸塩MSPbを含む電解溶液を調製すること、
c)カソードを提供すること、
d)アノード及びカソードを、電解溶液中に少なくとも部分的に浸漬すること、並びに
e)酸化によってアノードのスズ及び/又は鉛を浸出させ、電気伝導性混合物中に最初に含有されているスズ及び/又は鉛をカソード上に堆積させるために、電気デバイスを介してアノードとカソードとの間に電流を印加すること、
から成る工程を含むことを特徴とする。
【0010】
したがって、本発明に従う方法によって、電気伝導性混合物からスズ及び/又は鉛を抽出することが可能であり、スズ及び/又は鉛の浸出に続いて電気分解を用いる電解法によって与えられる。これは、第一に、カソードと電気伝導性混合物であるアノードとの間に電流を印加することによって、及び第二に、メタンスルホン酸MSAをベースとする電解溶液の存在によって可能とされる。金属イオンが、実際にはスズ及び/又は鉛の堆積に特に適する電解溶液であるメタンスルホン酸MSA中で高い限界溶解度を有することには留意されたい。
【0011】
本発明の意味において、電気伝導性混合物は、複数の固体要素から成り:
- 混合物の総重量に対して50質量%未満の金属の形態のスズ、
- 混合物の総重量に対して25質量%未満の金属の形態の鉛、並びに
- 混合物の総重量に対して25質量%超の金属銅、並びに/又は金属鉄、並びに/又は金属アルミニウム、並びに/又は銅及び/若しくは鉄及び/若しくはアルミニウムを含む金属合金、
を含む混合物を意味する。
【0012】
いかなる場合であっても、廃棄物から得られる電気伝導性混合物は、必然的に様々な固体要素を含む。したがって、本発明の意味において、続いてのスズ及び/又は鉛の電気精錬のために高温冶金処理によって製造及び成形された犠牲アノードも、又は保護若しくは装飾されるべき材料の制御された電解堆積のために表面処理産業で用いられるスズ若しくはSnPbの合金さえも含む犠牲アノードも、廃棄物として見なされない。これは、これらの犠牲アノードが、サイズ及び組成の異なる一式の固体要素から成るものではないからである。
【0013】
本発明の意味において、浸出又は浸出することとは、アノードとカソードとの間への電流の印加に続いて、電気伝導性混合物のスズ及び/又は鉛を可溶化することを意味する。
【0014】
さらに、この方法は、様々な固体要素から成り、アノードの製造のために特に調製する必要のない電気伝導性混合物から製造される犠牲アノードを用いるという利点も有する。
さらに、本発明に従う電解法の実施の過程で、電解浸出反応の終了を評価するために浴中のスズ及び/又は鉛の濃度を確認する必要もない。これは、本発明に従う電解抽出法が、アノードのスズ及び/又は鉛が枯渇するや否や終了し、特に、アノードとカソードとの間に、又はアノード若しくはカソードと参照電極との間に印加された電流又は電圧の強度の変動が観察された場合に終了を認知することができるからである。
【0015】
本発明の意味において、アノードのスズ及び/又は鉛の枯渇とは、アノードにおいて物理的及び化学的に直接アクセス可能であるスズ及び/又は鉛の少なくとも80%が可溶化され、浸出されたことを意味する。
【0016】
この方法によると、平滑状又は樹枝状又は粉状の堆積がカソードにおいて得られるように、必要とされる堆積の品質を選択することも可能である。これを行うために、堆積の形態が、中でも、印加される電流の密度に依存することが知られている。主に、カソードに印加される電流の密度が、特に1つの種類の堆積を促進することになる。しかし、電解溶液にある特定の試薬を添加することが、同等の電流密度で、必要とされる形態に影響を有し得る。最後に、電解溶液中にある特定の金属又は無機不純物が存在することが、同じ効果を有し得る。
【0017】
有利には、この方法は、アノードの形成の工程a)の前又はそれに続いて行われる電気伝導性混合物を圧縮する工程を含む。このアノードの形成の工程a)は、電解溶液の調製の工程b)の前又はそれに続いて行われてよい。
【0018】
本発明のこの変型例の実施形態では、電気伝導性混合物は、ワイヤ、シート、格子、又はその他の形態であってよい電気伝導体に接続されてもよい。
【0019】
有利には、アノードを形成する工程a)実施の後、このアノードは、金属バスケットに挿入されてよい。金属バスケットは、好ましくは、化学的に中性であり、電気伝導体及び電流分配器の役割を果たす。
【0020】
好ましくは、金属バスケットは、チタン、ステンレススチール、又はカーボンから作られており、それは、これら3つの材料が、メタンスルホン酸媒体(以降、MSAの略語で表される)中でアノード安定であるという利点を有するからであり、すなわち、それらは、印加される電流及び電圧という意味での本発明の使用条件の限度内で印加される電流の存在下であっても、溶解しない。
【0021】
バスケット中での電気伝導性混合物の圧縮又は配列は、それらからアノードを製造するための2つの限定されないソリューションであることには留意されたい。
【0022】
有利には、電気伝導性混合物は、電気伝導性混合物の総重量に対して5質量%未満のスズ及び鉛よりも卑であるいずれかの金属を含み、前記金属は、電解溶液に対して物理的及び化学的に直接アクセス可能である。
【0023】
そして、物理的及び化学的に直接アクセス可能であるスズ及び鉛よりも卑である金属が、電解溶液を汚染するか、又は劣化さえさせる金属であると見なされ得ることには留意されたい。
【0024】
鉛及びスズよりも卑である金属とは、本発明の意味において、鉛及びスズよりも低い酸化還元電位で定められるいかなる金属又は金属合金をも意味し、酸化還元電位は、標準条件下で得られるものである。
【0025】
物理的及び化学的に直接アクセス可能であるいずれかの金属とは、本発明の意味において、その表面のすべて又は一部が電解溶液と直接接触しているいずれかの金属を意味する。
【0026】
例えば、及び非限定的に、鉛及びスズよりも卑である金属として、亜鉛及びアルミニウムに言及することができる。
【0027】
しかし、それでも、電気伝導性混合物は、ある特定の量の亜鉛及び/又はアルミニウムを、それらが電解溶液に対して物理的及び化学的に直接アクセス可能ではない場合は含んでもよい。
【0028】
電解溶液に対して物理的又は化学的に直接アクセス可能ではないとは、本文書の意味において、金属又は金属合金が、少なくとも1つの他の物質(金属、無機物、有機物)によって、又はスズ及び鉛よりも高い酸化還元電位を有する別の金属合金によって被覆されていることを意味する。このように、被覆されている金属又は金属合金は、スズ及び鉛の電解浸出反応に対する影響を有することがない。
【0029】
例えば、金属又は金属合金は、表面上で不動態化又は酸化された場合、物理的及び化学的に直接アクセス可能ではない。
【0030】
また、例えば、化学元素の亜鉛は、その金属状態ではスズ及び鉛よりも卑であるが、スズ又は鉛よりも貴であると見なされる真鍮などの銅合金の形態で存在する場合は、本発明の原理に影響を与えないことにも留意されたい。
【0031】
有利には、本発明に従う方法は、工程e)の後に、以下の工程:
- 金属バスケット及びカソードを電解溶液から取り出すこと、
- バスケット上の残留するスズメタンスルホン酸塩(以降、MSSnで表される)及び/又は残留する鉛メタンスルホン酸塩(以降、MSPbで表される)をすべて回収するために、金属バスケットを、電解溶液で、次に水でリンスすること、並びに
- カソードに堆積された少なくともスズ及び/又は鉛を回収すること、
をさらに含んでよい。
【0032】
有利には、本発明に従う方法は、最大寸法が20μm以上である電気伝導性混合物の要素を物理的に保持するために、ポリマーをベースとする多孔性エンベロープで金属バスケットを包むための工程をさらに含む。
【0033】
例えば、このエンベロープは、モノフィラメント又はマルチフィラメントポリプロピレンから作られていてよく、その多孔性によって、バスケット中の少なくとも1つの寸法が20μm超である粒子の保持が可能となる。このエンベロープは、ナイロン、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、又はメタンスルホン酸に対して特に抵抗性を有する他のいかなる天然材料から成っていてもよい。
【0034】
しかし、金属バスケットが炭素繊維から成っていることも可能である。この場合、多孔性エンベロープ及び金属バスケットは、単一ピースの同じパーツを形成する。金属バスケットから粒子が排出されることはなく、溶液中のイオンのみが移動可能であることには留意されたい。したがって、そのようなエンベロープは、浸出された金属イオンの電気化学的移動に干渉しないという利点を有する。
【0035】
また、エンベロープが、多孔性エンベロープの細孔の直径を拡大又は縮小するように、より高い度合い又はより低い度合いで架橋された膜を用いて製造されてよいことにも留意
されたい。
【0036】
有利には、電解溶液は、フェノール系安定剤及び/又は塩化物イオン及び/又は酸化防止剤をさらに含んでいてよい。
【0037】
有利には、カソードは、アルミニウム、又はスチール、又はスズ、及び/又は鉛のいずれかから構成されていてよい。
【0038】
有利には、印加電流の密度は、カソードにおいて、150~400A/mであってよく、カソードは、プレートの形態である。
【0039】
電流密度が150A/mよりも低い場合、カソードで発生する堆積は、高い接着特性を有し、それをカソードから分離することが容易ではなくなることには留意されたい。
【0040】
本発明の意味において、容易に分離可能な堆積物とは、擦り取る若しくは剥がし取ることによって、又は堆積表面にウォータージェットを噴霧することによって分離することができる堆積物を意味する。
【0041】
電流密度が400A/mよりも高い場合、第一に、ファラデー反応の収率が70%よりも大きく低下し、第二に、カソードでの堆積が粉状で、電解溶液によって非常に汚染されることには留意されたい。
【0042】
さらに、カソードで鉛だけを回収することが所望される場合、本発明によると、電解溶液は、スズメタンスルホン酸塩を必ずしも含む必要はなく、カソードでスズだけを回収することが所望される場合、電解溶液は、鉛メタンスルホン酸塩を必ずしも含む必要はない。また、電気伝導性混合物中に存在する金属は、プロセスが定常状態となった後、電解液の初期性質に関わらず同じ割合でカソードから回収されることにも留意されたい。
【0043】
図面の簡単な説明
本発明の他の革新的な特徴及び利点は、限定するためではなく指摘する目的で提供される以下の記述を、図が本発明に従う方法の実施の例を模式的に示すものである添付の図面を参照して読むことによって明らかとなる。
分かりやすくするために、同一又は類似の要素は、すべての図において同一の参照符号で示される。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1図1
図2図2
図3図3
【発明を実施するための形態】
【0045】
製品
以下で述べる実施形態の例で用いられるメタンスルホン酸(MSA)は、CAS番号75-75-2で定められる。以下で述べる実施形態で用いられるスズメタンスルホン酸塩(MSSn)は、CAS番号53408-94-9で定められ、鉛メタンスルホン酸塩(MSPb)は、CAS番号17570-76-2で定められる。
【0046】
例1:第一のデバイスによる本発明の実施
本発明に従う方法の実施の第一の例について、図1を参照して以下で述べる。
【0047】
図1は、カソード600及びアノード200が部分的に浸漬されている電解溶液800を含む浴10を示し、アノード200は、金属バスケット400の中に位置している。この金属バスケット400は、酸化に関して安定であること、及び電気伝導体及び電流分配器として作用するという利点を有することには留意されたい。したがって、このバスケットはまた、最大寸法が20μm以上である電気伝導性混合物の要素を物理的に保持するために、ポリマーをベースとする多孔性エンベロープで包まれてもよいことには留意されたい(図1に示さず)。
【0048】
この例で用いられるカソード600は、アルミニウム、スチール、又はスズの薄板の形態である。このカソード600の活性表面は、アノード200の活性表面の1~0.4倍であってよい。
【0049】
アノード200は、少なくともスズ及び/又は鉛、さらには他の金属を含む廃棄物の金属粒子から得られる電気伝導性混合物から成る。電気伝導性混合物は、バスケットが細孔を有することから、電解溶液と直接接触している。
【0050】
本発明の意味において、金属粒子とは、マイクロメートル若しくはそれ以上のサイズの不規則片の形態、又は微粒子状、フィラメント状、若しくは管状の形態であり得るいずれの金属要素をも意味する。
【0051】
この電気伝導性混合物が、鉄、銅、アルミニウム、ニッケル、チタン、ヒ素、アンチモン、ビスマス、又は例えば金、銀などの貴金属の金属粒子をさらに含んでいてもよいことには留意されたい。
【0052】
電解溶液800は、溶解したスズイオン及び/又は鉛イオンを、メタンスルホン酸MSAを含む電解溶液800中に含む。
【0053】
特に、この第一の例で用いられ得る第一の電解溶液800は、電解反応が開始する前の初期状態で、30g/Lのスズ濃度でのスズメタンスルホン酸塩(以降、MSSnで表される)及び50g/Lの鉛濃度での鉛メタンスルホン酸塩(以降、MSPbで表される)を170g/Lの酸を含むメタンスルホン酸の溶液中に溶解して含む、水で希釈されていても又は希釈されていなくてもよいメタンスルホン酸を含んでよい。
【0054】
この第一の例のコンテクストで用いられ得る第二の電解溶液は、初期状態で、50g/Lのスズ濃度でのスズメタンスルホン酸塩を、200g/Lの酸を含むメタンスルホン酸の溶液中に含んでもよい。
【0055】
この第一の例で用いられ得る第三の電解溶液800は、初期状態で、80g/Lの鉛濃度での鉛メタンスルホン酸塩を、180g/Lの酸を含むメタンスルホン酸の溶液中に含んでもよい。
【0056】
上述の3つの電解溶液800の各々は、フェノール系安定剤及び/又は塩化物イオン及び/又は酸化防止剤をさらに含んでいてよい。
【0057】
そのような安定剤は、Sn2+イオンのSn4+への酸化を防止し、さらには、経時でのMSAの部分的な劣化も防止するという利点を有する。
【0058】
さらに、塩化物イオンに関しては、少ない量で、アノードに含まれる金属の不動態化(すなわち、表面酸化物の形成)を制限することを可能とし、したがって、これらの金属の溶解を促進するという利点を有する。そのような塩化物イオンの添加は、電解反応の働き
に影響を与えないことには留意されたい。
【0059】
最後に、酸化防止剤に関しては、電解溶液800を安定化させ、及び特に、Sn2+の濃度がSn4+よりも高くなるように酸化反応を制限するという利点を有する。
【0060】
電解溶液がスズメタンスルホン酸塩(MSSn)及び鉛メタンスルホン酸塩(MSPb)を一緒に含む場合、電解溶液中のMSSn/MSPbのモル比は、好ましくは0.5~5であることに留意されたい。
【0061】
図1のデバイスによって実施される本発明に従う方法は、第一に、電気伝導性混合物中に最初に含有されているスズ及び/又は鉛の選択的電解浸出に、及び第二に、カソード600でのスズ及び/又は鉛の直接電解堆積に基づいている。
【0062】
最初にアノード200に含有されているスズ及び/又は鉛の電解浸出及びその結果としてのカソード600での電解堆積を開始させるために、図1に従うデバイスは、カソード600及びアノード200を接続してそれらの間に電流を印加し、電解溶液800中に循環させる電気デバイス20をさらに含む。
【0063】
これを行うために、カソード600及びアノード200を電解溶液800中に配置する前又は後に、カソード600及びアノード200は、電気デバイス20によって電気的に接続され、それによって、それらの間に電流を印加することが可能となることには留意されたい。
【0064】
したがって、次に電流が、酸化によってアノード200のスズ及び/又は鉛を浸出させ、さらに電気伝導性混合物中に最初に含有されているスズ及び/又は鉛をカソード600上に堆積させるために、電気デバイス20を介してアノード200とカソード600との間に印加される。
【0065】
本明細書での第一の例では、印加される電流は、連続電流である。しかし、電流は、パルス電流、堆積表面のリフレッシュ及び/若しくは浸出のための短い時間の反転を有する連続電流、又は電解堆積に一般的に用いられる他のいかなる電流であってもよい。印加される定電流がおよそ10Aである場合に、10Aから9Aを例とするこの強度の急な低下は、アノード200でのスズ及び/又は鉛の枯渇を意味し得ることには留意されたい。
【0066】
電解は、定電圧で行われてもよいことには留意されたい。例えば、スズ及び/又は鉛イオンの浸出、並びに本明細書で述べる電解法の実行は、定電圧でのガルバニモードで行われてもよい。その場合、印加される電圧は、用いられるカソード600の性質に応じて、さらには、アノード200とカソード600との間の距離、及びそれらの形態に従って、0.1から5Vまで様々であってよいことにも留意されたい。
【0067】
本明細書での例の構成において、すなわち、カソード600の活性表面がアノード200の活性表面の1~0.4倍である構成において、150A/m~400A/mが特に可能である高い電流密度を得ることができることには留意されたい。好ましくは、必要とされる電流密度は、250A/mである。
【0068】
そのような電流密度が好ましいのは、粉状の堆積、及び/又は反応の終了後にカソードから容易に分離可能である堆積が得られ、さらに、高いファラデー収率、すなわち70%超を維持しながら電解槽のサイズを低下させることも可能とするという利点を有するからである。
【0069】
さらに、電解の過程で、電解溶液800のpHは制御されず、反応の終了は、主として、電解が定電流で行われる場合は電圧の低下によって、又は電解が定電圧で行われる場合は電流の低下によって示される。反応の終了はまた、アノード200及びカソード600から成るシステムの電位差の変化が観察された場合にも、又は作用電極及び参照電極から成るシステムの電位差の変化が観察された場合であって、その場合の参照電極は、既に電解溶液800中に配置されていた場合(ガルバノモード)にも示され得る。これらの低下はすべて、アノード200でのスズ及び/又は鉛の枯渇によって最初に引き起こされ、次に、極端な場合にしか発生しないが、スズ及び/又は鉛の非存在下で、アノード200で依然として物理的及び化学的に直接アクセス可能である別の金属の放出によって引き起こされる。
【0070】
所望に応じて、電気伝導性混合物に含有される粒子の電解浸出の終了を、又は言い換えると、電解反応の終了を観察するために、例えば分光光度的システムが、図1に示すデバイスに付与されてもよい。
【0071】
所望に応じて、アノード200において、浸出されるべきスズ及び/又は鉛粒子がもはやまったく存在しない場合、金属バスケット400及びカソード600は、電解溶液800から取り出されてよい。
【0072】
多孔性エンベロープによって包まれた又は包まれていない金属バスケット400と共にアノード200を取り出した後、金属バスケットは、残留するMSSn及び/又はMSPbイオン並びにMSAをすべて回収するために、電解溶液800で、次に水でリンスされる。
【0073】
例えば、バスケットは、3つの連続するリンス浴に浸漬され、各浴は、初期状態では水を含んでいる。このように進行させ、電解プロセスが複数回実施される過程で、第一の浴は、その組成が初期電解溶液800の組成に近づくように、メタンスルホン酸イオン(以降、MSで表される)、及び電気伝導性混合物中に最初に存在していた金属が豊富であることが認知され得る。この第一の浴には、補充用として電解溶液800に再導入されるのに充分なMS及び金属が存在する。
【0074】
次に、第二の浴は、第一の位置に動かされ、第三の浴は、第二の位置に動かされ、第三の浴に水が導入される。これは、従来の洗浄モードである。別の選択肢では、金属バスケット中に含有される残留金属が、逆流洗浄ユニットにすべて移されてもよい。これにより、電解溶液800中のすべてのMSSn、MSPb、及びMSAの形態を回収することが可能となる。
【0075】
次に、カソード600に堆積された少なくともスズ及び/又は鉛が回収される。カソードでの堆積物として、金属形態のSnPb固体が存在し得る。例えば、カソード600に堆積された金属は、スズ及び鉛の混合物を成し、その割合は、これら2つの金属の初期電気伝導性混合物中の初期比率に依存する。金属は、その物理的特性に従って、プレート、シート、又は粒子のいずれかの形態で回収され、続いての工程で再度それらが処理される前に、素早くろ過及び洗浄する必要がある。
【0076】
スズ及び鉛と少ない割合で共浸出して存在するイオンの形態の金属が電解溶液800中で濃縮された場合、例えばイオン交換樹脂によってそれらを分離/回収するための特定の処理操作が実施され得る。電解溶液800の品質を損なうことなくこれらの少ない金属をすべて抽出することが不可能である場合は、目的の各金属を特に回収する(又は群として回収する)ための処理が実施される。例えば、この処理は、選択的析出/複合体化及び/又はイオン交換樹脂及び/又は溶媒抽出を含み得る。
【0077】
図1に記載されるデバイスは、所望に応じて、浴10中でのその温度、又は循環若しくは撹拌などの電解溶液800に関するある特定のパラメータを確認及び/又は制御するための当業者に公知のいかなるデバイスを備えていてもよいことには留意されたい。
【0078】
経時での堆積の性質を制御するのは、電解溶液中に最初に含有されているメタンスルホン酸塩の性質ではなく、むしろ、アノード200を構成する電気伝導性混合物中に最初に含有されている金属の性質であることには留意されたい。
【0079】
さらに、一方で、鉛メタンスルホン酸塩を含まずスズメタンスルホン酸塩を含む電解溶液の存在下であり、他方では、アノード200を構成し、スズと同量の鉛を含む電気伝導性混合物の存在下では、経時での傾向が、鉛と同量のスズを含むことになるカソードでの堆積に向かうことには留意されたい。しかし、電解溶液の性質は、経時で変動する。
【0080】
したがって、アノードに存在するSn/Pbと同じ比率でMSSn及びMSPbを最初に含む電解溶液が使用されるか、又はMSSn若しくはMSPbのいずれかを含む電解溶液が使用される。
【0081】
例2:第二のデバイスによる本発明の実施
ここで、本発明を実施するための第二のデバイスについて、図2を参照してこの第二の例で述べる。
【0082】
図2は、第一のカソード601A及び第二のカソード601Bの2つのカソード、並びにアノード201が部分的に浸漬されている電解溶液801を含む浴11を示す。アノード201は、多孔性エンベロープ451に包まれた金属バスケット中に位置している。この多孔性エンベロープ451は、典型的には、ソックスであってよい。
【0083】
金属銅、金属ニッケル、金属アルミニウム、及び金属合金Sn60Pb40の別個の粒子から成る電気伝導性混合物からここでは形成されるアノード201は、その電解溶液801への浸漬を可能とするための細孔を有する金属バスケットとしてのチタンバスケット401中に挿入される。この第二の例では、粒子は、1mm未満の厚さ、およそ100mm未満の表面積、及びおよそ40mm未満の寸法の金属板片である。
【0084】
特に、アノード201を構成するこの第二の例の電気伝導性混合物は:
- 混合物の総重量に対しておよそ58質量%の濃度の銅、
- 混合物の総重量に対しておよそ12質量%の濃度のニッケル、
- 混合物の総重量に対しておよそ12質量%の濃度のアルミニウム、
- 混合物の総重量に対しておよそ18質量%の濃度のSn60Pb40合金、
を含む。
【0085】
最初にアノード201に含有されているスズ及び鉛の電解浸出並びにカソード601A及び601Bでの電解堆積を開始させるために、図2に従うデバイスは、カソード601A及び601B並びにアノード201を接続してそれらの間に電流を印加し、電解溶液801中に電流を循環させる電気デバイス21をさらに含む。
【0086】
本発明の実施のこの第二の例では、チタンバスケット401は、アノード201のための電気伝導体として作用し、空気の透過度がおよそ900m・m-2・h-1であり、バブルポイントがおよそ65μmであるモノフィラメントポリプロピレン布から成る多孔性エンベロープ451に挿入される(布はSefarから供与、参照番号PP 25141 AN。
【0087】
チタンバスケット401及びその多孔性エンベロープ451は:
- 220g/Lの酸濃度でのメタンスルホン酸MSA、
- 16g/Lのスズ濃度でのスズメタンスルホン酸塩MSSn、
- 9g/Lの鉛濃度での鉛メタンスルホン酸塩MSPb、
- 及び4ml/Lでの酸化防止剤であって:酸化防止剤として、例えば、Coventyaから市販されている製品Starglo Anti-Oxが用いられる、酸化防止剤、
を含む電解溶液801に浸漬される。
【0088】
2つのカソード601A及び601Bは、316Lステンレススチールから作られており、電解溶液801中、アノード201、チタンバスケット401、及び多孔性エンベロープ451から成るアノードアセンブリの両側にそれぞれ配置される。連続モードの電流が、電流を続いてアノード201に伝導するチタンバスケット401と2つのカソード601A及び601Bとの間に、およそ210A・m-2のカソードでの定電流密度で供給される。
【0089】
電解の過程で、チタンバスケット401とカソード601A及び601Bとの間の電位差は、0.2Vから0.7Vに増加する。電位差が0.7Vに達した時点で、電解の制御は、定電流モードから定電圧モードに変更される。カソード601及び602での電流密度が210A・m-2から50A・m-2未満に低下した時点で、電解が停止される。アノードアセンブリは、電解溶液801から取り出され、液体が排出され、次に水で洗浄される。
【0090】
チタンバスケット401及び多孔性エンベロープ451から成るアセンブリに依然として存在する残留金属の分析から、SnPb合金の完全な電解浸出が示される。さらに、この分析はまた、特に、残留金属が、最初の電気伝導性混合物中に存在するニッケルの総重量に対して98質量%のニッケル、及び最初の電気伝導性混合物中に存在する銅の総重量に対して99質量%未満の銅を含むことも示す。さらに、アルミニウムの浸出は見られず、最初の電気伝導性混合物中に存在するアルミニウムはすべて、電解後にも依然として存在する。
【0091】
カソード601A及び601Bの各々で還元されたSnPbの堆積質量は、アノードで電解浸出されたSnPb合金の総重量に対して83質量%のSnPb合金に相当し、この第二の例では、電解の過程で電解溶液801のスズ及び鉛が僅かに増加する結果となる。
【0092】
例3:第三のデバイスによる本発明の実施
ここで、本発明を実施するための第三のデバイスについて、図3を参照してこの第三の例で述べる。
【0093】
図3は、部分的に浸漬された3つのカソード(第一のカソード602A、第二のカソード602B、及び第三のカソード602C)、並びに2つのアノード202A及び202B、並びに例2のように多孔性エンベロープ452A及び452Bに包まれた2つの金属バスケット402A及び402Bが存在する電解溶液802を含む浴12を示す。アノード202A及び202Bの各々は、金属バスケット402A及び402Bの中に位置している。ここでは、金属バスケット402A及び402Bは、チタンから作られており、他の例の場合と同様に、アノード202A及び202Bの各々に対する、それらを含有する電気伝導体として作用する。多孔性エンベロープ452A及び452Bは、空気の透過度がおよそ800m・m-2・h-1であり、バブルポイントがおよそ55μmであるモノフィラメントポリプロピレン布から形成される。
【0094】
カソード602A、602B、及び602Cは、アルミニウムから作られている。第一のカソード602A及び第三のカソード602Cは、電解溶液中、浴12の両側にそれぞれ配置され、第二のカソードは、エンベロープで包まれた2つの金属バスケット402Aと402Bとの間に配置される。
【0095】
電解溶液802は、226g/Lの酸でのメタンスルホン酸MSA及び45g/Lのスズ濃度でのスズメタンスルホン酸塩MSSnを含み、初期状態の電解溶液802に鉛メタンスルホン酸塩MSPbは存在しない。
【0096】
この第三の例は、図3を参照して、廃棄物から得られる単一の電気伝導性混合物中に最初に含有されているスズ及び鉛の抽出について特に述べるものである。この単一混合物は、次に、実質的に等しい6つの部分に分割される。これらの部分の各々は、ペアで処理され、そして、ペアとして、2つのアノード202A及び202Bであると見なされることになる。したがって、2つのアノード202A及び202Bの各々は、同じ組成を有する。これらの2つの異なるアノード202A及び202Bは、定常状態に到達させるために、同じ電解溶液802で同時に処理される。
【0097】
様々な部分が得られる元になる電気伝導性混合物は、25μm~10mm超の様々なサイズを有する廃棄物の粒子を含み、電気及び電子装置からの廃棄物を粉砕する機械的処理に由来する。この電気伝導性混合物は、この第三の例では、主として:
- 金属銅及び金属銅合金の粒子、
- 金属アルミニウム及び金属アルミニウム合金、
- 金属鉄及び金属鉄合金、
- スズ、及び鉛を含有し得る金属スズ合金(RoHS適用除外、ろう接合金)、
から成る。
【0098】
電気伝導性混合物に対して行われる化学的及び鉱床的分析から、この第三の例では、それが:
- 混合物の総重量に対しておよそ73質量%の濃度の銅合金、
- 混合物の総重量に対しておよそ0.9質量%の濃度のアルミニウム合金、
- 混合物の総重量に対しておよそ1.7質量%の濃度の鉄合金、
- 混合物の総重量に対しておよそ18.7質量%の濃度のスズ合金、
を含むことが示される。
【0099】
電気伝導性混合物は、例えば、O、S、Si、Ca、Br、As、Bi、Ag、Mo、Sbなどの化学元素を含む粒子などの他の固体要素をさらに含む。これらの後者の固体要素の合計は、電気伝導性混合物の総重量に対しておよそ5.7質量%の濃度に相当する。
【0100】
この例では、電気伝導性混合物中に含有されるスズ合金は、主として鉛を含有し、質量比が算出された場合、Sn80Pb20の種類の平均スズ合金の存在が示されることになるスズ合金であると不適切に見なされる。
【0101】
これらの部分は、金属バスケット402A/多孔性エンベロープ452A及び金属バスケット402B/多孔性エンベロープ452Bから成る2つのアセンブリにペアで導入され、そうして2つのアノード202A及び202Bが形成される。
【0102】
2つの金属バスケット402A及び402Bが電解溶液802に浸漬された時点で、連続モードの電流が、各金属バスケット402A及び402Bと各カソード602A、602B、及び602Cとの間に、電気デバイス22を介して印加される。電流は、各カソード602A、602B、及び602Cにおいて、およそ250A・m-2の定電流密度を有する。
【0103】
次に、各部分は、以下で示されるように、同じ電解溶液802にペアで浸漬される。言い換えると、第一に、2つの第一の部分から成る第一のバッチが浸漬される。第二に、2つの他の部分から成る第二のバッチが浸漬される。続いて第三に、最後の2つの部分から成る第三のバッチが浸漬される。
【0104】
電解の過程で、金属バスケット402A及び402Bとカソード602A、602B、及び602Cとの間の電位差は、0.2Vから0.5Vに増加する。電位差が0.5Vに達した時点で、電解の制御は、定電流モードから定電圧モードに変更される。カソード602A、602B、及び602Cの電流密度が250A・m-2から190A・m-2未満に低下した時点で、電解が停止される。
【0105】
アノードアセンブリ(金属バスケット402A及び402B/多孔性エンベロープ452A及び452B/アノード202A及び202B)は、電解溶液802から取り出され、液体が排出され、次に水で洗浄される。エンベロープで包まれた金属バスケット402A及び402Bから中身が取り出され、この第一のバッチの処理後に得られた第一の様々な画分を示す残留粒子が回収される。カソード602A、602B、及び602Cは、取り出され、液体が排出される。電解堆積された金属は、緩やかに擦り取ることによってカソード602A、602B、及び602Cから回収され、水で洗浄され、次に脱水される。
【0106】
次に、第二のバッチが、上記で中身が取り出され、エンベロープで包まれた金属バスケット402A及び402Bに導入される。エンベロープで包まれた金属バスケット402A及び402Bは、次に、上記で用いられた電解溶液802に浸漬される。上記で堆積物が擦り取られたカソード602A、602B、及び602Cは、初期構成時と同様に電解溶液802中に配置される。第一のバッチに印加されたものと同じ連続モードの電流が、第一のバッチにおいて確立されたものと同一の制御で、カソード602A、602B、及び602Cとアノード202A及び202Bとの間に印加される。
【0107】
反応終了後、第二のバッチの処理後に得られた第二の様々な画分も、第一のバッチに対して行われたものと同一のプロトコルを用いて回収される。
【0108】
次に、第三のバッチが、上記で中身が取り出され、エンベロープで包まれた金属バスケット402A及び402Bに導入される。エンベロープで包まれた金属バスケット402A及び402Bは、次に、上記で用いられた電解溶液802に浸漬される。上記で堆積物が擦り取られたカソード602A、602B、及び602Cは、初期構成時と同様に電解溶液802中に配置される。第一のバッチ及び第二のバッチに印加されたものと同じ連続モードの電流が、第一のバッチにおいて確立されたものと同一の制御で、カソード602A、602B、及び602Cとアノード202A及び202Bとの間の第三のバッチに印加される。
【0109】
反応終了後、第三の様々な画分も、第一及び第二のバッチに対して行われたものと同一のプロトコルを用いて回収される。
【0110】
アノードアセンブリ(金属バスケット402A及び402B/多孔性エンベロープ452A及び452B)で回収された3つの異なる画分に対する別々の化学分析を平均すると、主要なスズ及び鉛の電解浸出は、原料の廃棄物で分析された割合に対して、それぞれ88.3%及び86.5%の量であることが示される。他の非常に部分的にしか電解浸出されていない金属は、Ni、Al、Fe、及びCaであり、処理前の初期電気伝導性混合物中で分析されたそれらの含有量に対して、それぞれ5%、2.8%、2.2%、及び1.2%の比率である。
【0111】
カソード602A、602B、及び602Cでの堆積物の化学分析は、99.9%よりも優れたグレードのSnPb合金が一定して得られることを示す。3つの連続する試験全体での合金中の平均したスズ及び鉛の含有量は、Sn87Pb13の種類の合金であることを示す。カソード602A、602B、及び602Cでの3つの堆積バッチに対して別々に行われた分析は、Sn99Pbの種類の合金からSn80Pb20の種類の合金に変化することを示し、すなわち、処理前の初期電気伝導性混合物で分析されたスズ合金の組成と同等である。
【0112】
3つのバッチの処理の過程における電解溶液802の組成変化の分析から、第二のバッチの処理の終了時に平衡が達成されるまで、スズメタンスルホン酸塩が部分的に鉛メタンスルホン酸塩に置き換えられることが示される。この例で行われた条件での定常状態には、したがって、第二のバッチの処理の終了時に到達する。
図1
図2
図3