(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-02
(45)【発行日】2023-08-10
(54)【発明の名称】光構造物
(51)【国際特許分類】
G02F 1/295 20060101AFI20230803BHJP
G02F 1/225 20060101ALI20230803BHJP
【FI】
G02F1/295
G02F1/225
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022136703
(22)【出願日】2022-08-30
(62)【分割の表示】P 2020531778の分割
【原出願日】2019-02-19
【審査請求日】2022-09-13
(32)【優先日】2018-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519350591
【氏名又は名称】アナログ フォトニクス エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】プールタン、 クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】ルッソ、 ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ティムールドーガン、 エルマン
(72)【発明者】
【氏名】バード、 マシュー
(72)【発明者】
【氏名】バーミューレン、 ディードリック
(72)【発明者】
【氏名】ホセイニ、 エーサン
【審査官】堀部 修平
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-187649(JP,A)
【文献】特表2015-509207(JP,A)
【文献】国際公開第2014/156885(WO,A1)
【文献】特開2011-254028(JP,A)
【文献】特開2000-314814(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0376001(US,A1)
【文献】特開2001-007002(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00 - 1/125
G02F 1/21 - 7/00
G01S 7/48 - 7/51
G01S 17/00 - 17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光構造物であって、
一の基板を含み、
前記基板には、
一アレイの複数の光移相器と、
前記一アレイの複数の光移相器と光通信する一アレイの複数の光アンテナと、
前記一アレイの複数の光アンテナ
における前記複数の光アンテナと光通信する
複数の導波路部分を含む一の出力光分散ネットワークと、
前記出力光分散ネットワークと光通信する一の検出器素子と
が形成され、
前記光構造物は、前記複数の光移相器を横切る光が移相されるように構成され、
前記移相された光は、前記複数の光アンテナへと向けられ、
第1の部分が前記複数の光アンテナから放射され、第2の部分が
放射されることなく前記複数の光アンテナを透過し、
前記第2の部分は、前記出力光分散ネットワーク
の前記複数の導波路部分に結合され、それに引き続き前記一の検出器素子へと向けられ、
前記一の検出器素子は、前記
第2の部分を一の干渉信号として検出し、前記一の干渉信号に対する前記複数の光移相器それぞれの全体的な位相オフセットを決定するべく使用され、
前記一の干渉信号は、前記一アレイの複数の光移相器における前記複数の光移相器からの光を含
む、光構造物。
【請求項2】
前記一の検出器素子は、並列に電気接続される複数の個別検出器によって形成される、請求項1の光構造物。
【請求項3】
前記複数の個別検出器は、多数検出器の複数セットに配列され、
各セットは同じ数の個別検出器を含み、
各セットは並列に電気接続される、請求項2の光構造物。
【請求項4】
並列に電気接続される多数検出器の2つのセットが存在する、請求項3の光構造物。
【請求項5】
前記複数の個別検出器の各一つが、前記一アレイの複数の光アンテナの所定数を通るように透過した光を受光する、請求項2の光構造物。
【請求項6】
前記複数の個別検出器の個々の一つに光を送信する前記一アレイの複数の光アンテナの前記所定数は、前記複数の個別検出器のすべてに対して同じである、請求項5の光構造物。
【請求項7】
前記基板に形成されて前記一アレイの複数の光移相器と光通信する入力分散ネットワークをさらに含み、
前記入力分散ネットワークは、一のソースからの光を受光して前記受光した光を前記一アレイの複数の光移相器に分散させるべく構成される、請求項1の光構造物。
【請求項8】
前記光構造物に対し、0~2πの範囲内の位相オフセットが決定される、請求項1の光構造物。
【請求項9】
前記複数の光アンテナと前記一の検出器素子との間の複数の個々の光路の長さがすべて等しい、
請求項1の光構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2018年2月16日に出願された米国仮特許出願第62/631,576号
の利益を主張する。
【0002】
本開示は一般に、光フェーズドアレイに関する。詳しくは、干渉を介した光フェーズド
アレイ較正のシステム、方法及び構造物に関する。
【背景技術】
【0003】
知られていることだが、チップスケールの光フェーズドアレイ(OPA)は、光検出及
び測距(LiDAR)、自由空間通信、ホログラフィックディスプレイ並びに生体医学イ
メージングを含む多くのアプリケーションに対して有用であることが証明されていること
から絶大な興味を集めている。かかるアプリケーションのためのOPAの知られた利点は
、低減されたサイズ及び重量、相対的に低いコスト、及び高信頼性を含む。かかるアプリ
ケーションの社会的重要性を考慮すると、OPAの較正が最も重要ということになる。し
たがって、OPAの較正改善を与えるシステム、方法及び構造物を業界に追加することが
歓迎される。
【発明の概要】
【0004】
干渉信号を介した光フェーズドアレイ較正のシステム、方法及び構造物に向けられた本
開示の複数側面により、業界における進展が図られる。
【0005】
先行技術とは著しく対照的に、本開示の複数側面によれば、光フェーズドアレイの較正
は有利なことに、一つの干渉信号のみについての位相オフセットの一回通過測定として行
うことができる。先行技術とはさらに対照的に、本開示の複数側面に係るシステム、方法
及び構造物は有利なことに、先行技術により必要とされる時間のかかる反復手順又は多数
の検出器信号なしで、各素子の位相オフセット及び位相関数を生成することができる。
【0006】
一つの例示的側面から見れば、本開示の複数側面に係る光フェーズドアレイのシステム
、方法及び構造物は、基板を含む光構造物を含んでよい。その基板上には、光移相器のア
レイと、当該光移相器のアレイと光通信する光アンテナのアレイと、当該光アンテナのア
レイと光通信する出力光分散ネットワークと、当該出力光分散ネットワークと光通信する
検出器素子とが形成され、前記光構造物は、当該光移相器を横切る光が移相されるように
構成され、当該移相された光は、光アンテナに向けられ、少なくとも一部分が当該光アン
テナを透過する。当該移相器のすべてからの透過した光が当該出力光分散ネットワークに
向けられ、それに引き続き当該検出器素子に向けられる。当該検出器素子は、各移相器か
らの透過した光を干渉信号として検出し、当該光アンテナと検出器素子との間の個別光経
路の長さがすべて等しくされる。有利なことに、かかる光経路長の同等性により、広範囲
の波長に対する有効な較正が可能となる。
【0007】
さらに他の例示的側面から見ると、本開示の複数側面に係る光フェーズドアレイのシス
テム、方法及び構造物は、基板を含む光構造物を含んでよい。当該光構造物上には、入力
光分散ネットワークと、当該入力光分散ネットワークと光通信する光移相器のアレイと、
当該光移相器のアレイと光通信する光アンテナのアレイと、当該光移相器のアレイと光通
信する反射器素子のアレイと、当該光移相器のアレイと光通信して光経路において当該光
移相器のアレイの前段に配置された検出器素子とが形成され、前記光構造物は、光移相器
を横切る光が移相されるように構成され、当該移相された光は反射器素子のアレイの方に
向けられ、当該移相された光の少なくとも一部分が、当該光移相器を通って戻るように反
射されて実質的に干渉信号として当該干渉信号を検出する検出器素子へと向けられる。
【0008】
さらに他の例示的側面から見ると、本開示の複数側面に係る光フェーズドアレイのシス
テム、方法及び構造物は、光構造物の較正方法を含む。放射光構造物は、一アレイの放出
アンテナ素子と光通信する一アレイの移相素子が形成される基板を含み、方法は、個別光
信号を、当該移相素子を通るように向けて当該個別光信号を移相することと、当該移相さ
れた光信号を当該一アレイの放射アンテナへ向けて当該光信号を放射することと、当該一
アレイの移相素子の個々の一つに対し、当該個々の移相素子が与える移相量を所定のパタ
ーンにわたるように変えることと、当該放射されて移相された光信号がもたらす干渉信号
を検出することと、当該検出された干渉信号から当該光構造物の、当該干渉信号に対する
全体的な移相量を決定することとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
添付の図面を参照することにより、本開示の完全な理解を実現することができる。
【0010】
【
図1】本開示の複数側面に係るオンチップ検出器を含む例示の光フェーズドアレイ(OPA)構造物を示す模式図である。
【
図2】本開示の複数側面に係るオンチップ検出器及びタップを含む代替的な例示のOPA構造物を示す模式図である。
【
図3】本開示の複数側面に係る出力分散ネットワーク及び多数の光検出器を含む代替的な例示のOPA構造物を示す模式図である。
【
図4】本開示の複数側面に係る出力分散ネットワーク及び多数の光検出器を含む他の代替的な例示のOPA構造物を示す模式図である。
【
図5】本開示の複数側面に係るオンチップ検出器及び移相器とアンテナとの間に配置される反射器を含む例示のOPA構造物を示す模式図である。
【
図6】本開示の複数側面に係るオンチップ検出器及びアンテナの後段に配置される反射器を含む代替的な例示のOPA構造物を示す模式図である。
【
図7】本開示の複数側面に係るオンチップ検出器及び分散反射器を含む例示のOPA構造物を示す模式図である。
【
図8】本開示の複数側面に係るオンチップコヒーレント/平衡検出器及び反射器を含む例示のOPA構造物を示す模式図である。
【
図9】本開示の複数側面に係るオンチップコヒーレント/平衡検出器及びアンテナの後段に配置される反射器を含む例示のOPA構造物を示す模式図である。
【
図10】本開示の複数側面に係るオンチップコヒーレント/平衡検出器及び分散反射器を含む例示のOPA構造物を示す模式図である。
【
図11】本開示の複数側面に係る64個の素子による複素数体値干渉信号の生成を示すプロットである。
【
図12(A)】本開示の複数側面に係るランダムにされた位相面を有する一次元64素子光フェーズドアレイの初期角放出遠距離場パワー対遠距離場角度を示すプロットである。
【
図12(B)】初期遠距離場パワーに対する、本開示の複数側面に従って干渉測定が行われる場合を示すゼロ度(0°)近くの遠距離場角度を示すプロットの拡大図である。
【
図13(A)】本開示の複数側面に係る3個の例示の移相器の、光移相器を掃引するときの適用位相に対する、遠距離場パワーの0°の移相器の効果を示すプロットである。
【
図13(B)】本開示の複数側面に係る64個の例示の移相器の、光移相器を掃引するときの適用位相に対する、遠距離場パワーの0°の移相器の効果を示すプロットである。
【
図14(A)】本開示の複数側面に係る較正された例示の光フェーズドアレイの、遠距離場度数に対する遠距離場パワーを示すプロットである。
【
図14(B)】本開示の複数側面に係る較正された例示の光フェーズドアレイの、較正された遠距離度数に対する遠距離パワーを示すプロットの拡大図である。
【
図15】本開示の複数側面に係る光フェーズドアレイの例示の較正方法を示すフロー図である。
【0011】
例示の複数の実施形態が、図面及び詳細な説明により十分に記載される。しかしながら
、本開示に係る実施形態は、様々な形態で実施してよく、図面及び詳細な説明に記載され
る特定の又は例示の実施形態に限られない。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下は、本開示の原理の例示にすぎない。すなわち、わかることであるが、当業者は、
ここに明示的に記載又は図示されていないが、本開示の原理を具体化し、その要旨及び範
囲の中に含まれる様々な配列を考え出すことができる。
【0013】
さらに、ここに記載される例及び条件付き言語はすべて、本開示の原理及び本技術を発
展させるべく発明者が寄与する概念を読者が理解するのを援助する教育的目的のためのみ
であることが意図され、かかる具体的に記載された例及び条件に限定されることがないも
のと解釈されるべきである。
【0014】
さらに、本開示の原理、側面及び実施形態、並びにそれらの具体例を記載するここの陳
述はすべて、その構造的等価物及び機能的等価物双方を包含することを意図する。加えて
、かかる等価物が、現在知られている均等物、及び将来開発される均等物の双方、すなわ
ち、構造に関係なく同じ機能を行う開発された任意要素、を含むことが意図される。
【0015】
よって、当業者にわかることだが、例えば、ここでの任意のブロック図は、本開示の原
理を具体化する例示的な回路の概念図を表す。
【0016】
ここで特に言及されない限り、描画を含む図面は縮尺通りではない。
【0017】
いくつかの付加的な背景として、光フェーズドアレイが、回折制限された出力ビームを
有する光を送信及び受信するための広範な適用性を見出していることが指摘される。大き
なアパチャを構成するには、数千もの素子が必要とされる。ビームフォーミングのための
当該素子間にわたる所望の位相分布をもたらすべく、速く、効率的かつロバストな較正手
順が必要とされる。理想的に、かかる手順は、較正がその場で行われるようにオンチップ
で行われる。
【0018】
本開示を参照する当業者に容易にわかることだが、本開示に係るシステム、方法及び構
造物は、一の光フェーズドアレイの少なくとも一部分を形成する複数の光素子の制御信号
に対する未知の個別位相オフセット及び位相を、有利かつ直接的に測定する。特に有利な
ことに、当該測定を行うのに必要なのは、一つの検出器素子のみである。ただし、一つを
超える検出器を使用することもできる。
【0019】
当業者によってさらに理解されることだが、光素子のこれらの未知の位相オフセットは
、ウェハ特性のばらつき、製造誘因位相ノイズ、熱勾配又は他のプロセスによって引き起
こされ得る。
【0020】
簡潔には、本開示の複数側面は、複数素子の干渉の様々な強度を、各素子の位相を個々
に掃引しながら測定することを含む。留意されることだが、ここで使用されるような干渉
は、一つの光検出器を有する光学機器における複数の光信号の合計、又は多数の光検出器
を有する光学的及び電気的ドメインにおける複数の光信号の合計である。当該素子により
引き起こされる背景場が、各素子の位相を決定する基準として使用される。この背景場は
、移相器制御信号を修正することによってランダムに割り当て又は選択することができる
。個々の素子が掃引されるとき、背景場は、光フェーズドアレイ全体における多数の素子
ゆえに、ほぼ一定のままである。
【0021】
この幅広い議論が整ったので、本開示の複数側面に係るシステム、方法及び構造物のい
くつかの特定の構成及び動作を以下に記載する。
【0022】
図1は、本開示の複数側面に係るオンチップ検出器を含む例示の光フェーズドアレイ(
OPA)構造物を示す模式図である。
【0023】
同図を参照すると、光導波路パターンが形成された基板を一般に含む光構造物が示され
、そのパターンは、光を受光して一アレイの移相素子に分散させるべく構成された受光端
を含む。図にさらに示されるのは、移相された光を受光し、その受光の少なくとも一部分
を放射するべく構成された一アレイのアンテナである。
【0024】
当業者は、特定のアンテナ構成及び構造に応じて、アンテナが受光した移相光のすべて
が必ずしも放射されるわけではないことがわかり認識する。その代わり、当該光の少なく
とも一部分がアンテナを介して送られ、その後、出力光分散ネットワークの効果により、
検出器素子へと向けられる。
【0025】
動作上、及び本開示の例示的な一側面によれば、入力光分散ネットワークによって受光
された光は、移相器によって移相され、アンテナ素子へと向けられる。アンテナを介して
送られた移相された光の複数部分が、出力光分散ネットワークへと向けられ、それに引き
続き、各移相器からの光を含む干渉信号としてオンチップ検出器へと向けられる。前述し
たように、かかる干渉信号は、出力光分散ネットワークが出力した光信号の合計である。
【0026】
この時点で留意されることだが、基板上に形成される導波路パターンは一般に、上述し
た素子を光学的に相互接続して当該素子を含み、有利なことに、周知の製造技法すなわち
CMOSを使用して基板に実装してSi(又はSiN)導波路から構成することができる
。
【0027】
さらに留意されることだが、分散ネットワークが二分木分散ネットワークを含むように
示されるが、これは例示目的にすぎない。
当業者に容易にわかるように、本開示に係るそのような分散ネットワークは、カスケード
接続された1×Nスプリッタ、二分木、スター結合器、一つの1×Mスプリッタ、方向性
結合器、空き領域、及び他の、スラブ導波路のような導波路構造物を含む周知の構造物の
いずれか又は組み合わせから構成することができる。
【0028】
本開示の複数側面によれば、透過構造物の場合、個別アンテナ素子と検出器素子との間
の光路長はすべて同じ長さである。
【0029】
さらに、等しい数の移相素子及びアンテナ素子が示されるが、これが必要というわけで
はない。移相器及びアンテナの正確な数は、用いられる特定の導波路相互接続に依存する
。
図1のような図面が、8個の移相器及びアンテナを有する例示の構造物を示すが、本開
示はそれに限られず、製造技法及びアプリケーションが決定付ける実質的に任意の数の素
子が可能である。したがって、任意サイズの構造物が考えられ、一つの集積半導体チップ
又はフォトニック集積回路上に作られることが有利である。本開示に従って構成されるシ
ステムは、集積電子回路及び集積フォトニック回路の双方を含むことができ、それらは適
宜相互接続及び/又は集積される
【0030】
当業者が容易に理解しわかることだが、移相素子において用いられる任意の移相器が、
熱光学的、電気光学的、機械的、流体的、液晶的、非線形的、音響光学的及び応力誘起の
移相器を含み得る一方、アンテナは、適宜、格子ベース設計、プラズモン放射器、金属ア
ンテナ、ミラーファセット及び端面ファセットを含み得る。
【0031】
最後に、検出器素子は、一般に入力として光信号を受け取り、それ応答して電気信号を
出力するとの、業界周知の任意種類の一以上の個別光検出器を含み得る。
【0032】
図2は、本開示の複数側面に係るオンチップ検出器及びタップを含む代替的な例示のO
PA構造物を示す模式図である。この図面からわかるように、図示の構造物は、各移相器
から移相光の少なくとも一部分を分岐する一アレイの個別タップを含む。分岐された光は
、オンチップ検出器へと向けられ、干渉信号として検出される。前述のように、かかる干
渉信号は、すべての移相器からの光を含む。有利なことに、図示のような光パワータップ
は、適宜、方向性結合器、マルチモード干渉結合器、断熱結合器又は他のデバイスによっ
て形成することができる。
【0033】
図3は、代替的な例示のOPA構造物を示す模式図である。このOPA構造物は、本開
示の複数側面に係る多数の個別光検出器を有する出力分散ネットワークを含む。この例示
の構成において、多数の光検出器は、当該多数の光検出器から一つの電気信号が出力され
るように並列に電気接続され、一つの検出器素子が形成される。留意されることだが、当
該多数の光検出器を当該一アレイのアンテナに光学的に接続する分散ネットワークは、一
定数の1×M及び2×1構造物を含むが、当業者は、本開示がこれに限られないことがわ
かる。
【0034】
またも留意されることだが、前述のように、アンテナと多数の光検出器の個々の一つと
の間の個々の光路長はすべて等しい。したがって、この等しい経路長特性を与えてアンテ
ナを光検出器に光学的に接続する任意の出力ネットワーク構造/構成物が考慮される。さ
らに留意されることだが、個別光検出器はそれぞれが、特定のアンテナ集合体に関連付け
られ、図示の構成において、個別光検出器はそれぞれ、等しい数の個別アンテナが送る光
を入力として受光する。
【0035】
図4は、本開示の複数側面に係る出力分散ネットワーク及び多数の光検出器を含む他の
代替的な例示のOPA構造物を示す模式図である。この例示の構成において、個別光検出
器が、複数セットの光検出器にグループ化され、当該複数セットは並列して加算される。
留意されることだが、この例示の図示構成において2つのセットが示されるが、これは例
示目的にすぎず、他構成においてはこれよりも多数のセットも考慮される。しかしながら
、2つのセットは、コヒーレント測定の直交検出にとって有用である。
【0036】
この時点まで、移相素子によって出力されて干渉信号として検出される一つ以上の光検
出器に送信される光の送信を一般的に含む構造物及び動作を、開示及び記載してきた。以
下に記載するように、本開示に係る代替構造物は、有利なことに、透過性素子ではなく反
射性素子を用いることができる。
【0037】
図5は、本開示の複数側面に係るオンチップ検出器及び移相器とアンテナとの間に配置
される反射器を含む例示のOPA構造物を示す模式図である。この図示構成において、個
別移相器のそれぞれから出力される光の少なくとも一部分が反射されて当該移相器を通る
ように戻り、それに引き続き、干渉信号として検出器へと向けられる。反射光の一部分を
検出器に向けるべく、タップ結合器を利用してよい。当業者に容易にわかることだが、か
かる反射光は、それぞれの移相器を2回通過し、それに引き続き、入力分散ネットワーク
を介して検出器へと分散される。有利なことに、かかる構成は、光を一アレイの移相器へ
と分散することと反射光を検出器素子へと戻すこととの双方を行うのに一つの分散ネット
ワークのみを必要とする。留意されることだが、反射は適宜、導波路、共振器、ブラッグ
回折格子、固定反射器、チューニング可能反射器、液晶、又は他の構造物における不連続
性を含む一定数の周知の反射器/構造物のいずれかによって生成することができる。
【0038】
当業者が理解しわかることだが、反射を生成するさらに他の態様は、ブラッグ条件を満
たす波長で一般に使用される格子ベースのアンテナによる。有利なことに、かかる構成に
おいて、アンテナは反射素子として作用する。
【0039】
図6は、本開示の複数側面に係るオンチップ検出器及びアンテナの後段に配置される反
射器を含む代替的な例示の光フェーズドアレイ(OPA)構造物を示す模式図である。当
業者にわかることだが、本開示の複数側面に係る構造物において様々な反射器位置を用い
ることができる。図示されるように、この図面における反射器素子は、アンテナの後段の
光路に配置される。その結果、アンテナが送信した光は反射して戻され、アンテナを通り
、移相器を通り、それに引き続き、干渉信号として検出器素子へと向けられる。
【0040】
図7は、本開示の複数側面に係るオンチップ検出器及び分散反射器を含む例示の光フェ
ーズドアレイ(OPA)構造物を示す模式図である。この例示の図示構成において、アン
テナは、分散反射器としての役割を果たすべく構成され、有利なことに、波長依存性とし
てよい。
【0041】
図8は、本開示の複数側面に係るオンチップコヒーレント/平衡検出器及び反射器を含
む例示の光フェーズドアレイ(OPA)構造物を示す模式図である。先に開示した構造物
と同様に、この図は、有利にはローカル発振器を含むコヒーレント検出器を含む例示的な
構造物を示す。
【0042】
図9は、本開示の複数側面に係る、アンテナの後段に配置されたオンチップコヒーレン
ト/平衡検出器及び反射器を含む例示の光フェーズドアレイ(OPA)構造物を示す模式
図である。
【0043】
図10は、本開示の複数側面に係るオンチップコヒーレント/平衡検出器及び分散反射
器を含む例示の光フェーズドアレイ(OPA)構造物を示す模式図である。
【0044】
この時点で当業者が理解しわかることだが、本開示において用いられる干渉は、有利な
ことに、移相素子を横切った後の任意点で測定することができる。先行技術とは異なり、
本開示に係るシステム、方法及び構造物は、時間がかかる反復最適化手順が必要なくかつ
用いない。その代わり、制御信号の関数(「位相関数」とも称する)としての移相器の位
相応答と共に、一回の所定通過における各素子の位相オフセットを直接測定する。最後に
、特に優れたことに、すべてのアンテナの一回の干渉測定のみが必要とされる。すなわち
、一つのピクセル検出器のみが必要とされ、したがって、近接するアンテナ又はアンテナ
グループの干渉を測定する多数の検出器素子が不要となる。
【0045】
各素子の位相オフセット及び位相応答が測定された後、光フェーズドアレイは、特定の
アプリケーションに決定付けられるビーム操舵又はビームフォーミングを行うための任意
の素子位相分布に対して容易に設定され得る。最後に、位相対制御信号の関係に加え、本
開示に係る較正により、当該干渉と、当該干渉の予想される正弦波形状とを比較すること
による強度変化対制御信号の抽出が許与される。
【0046】
本開示の方法をさらに完全に理解するべく、振幅an(実数値)と、未知ではあるが所
望の位相オフセットbnを有するN個の光素子の干渉の光パワー測定値Sを考える。bn
の一部分は、不完全性ゆえにデバイス固有であるが、0°ではない遠距離場測定値のよう
な、干渉測定技法ゆえの寄与分も有し得る。
【0047】
一般性を目的として、素子のチューニング可能位相を、任意の初期の既知電圧(又は制
御信号)v
nに設定することができ、その結果得られる位相θ
n(v
n)は未知となり得
る。初期の測定値Sは以下のとおりである。
【数1】
ここで、iは虚数単位、Cチルダはこの測定の初期複素体値である。素子mの電圧v
mが
変化する場合、その結果得られるパワー測定値S
m(v
m)は以下のように記述できる。
【数2】
【0048】
すなわち、Sm(vm)は、何らかの基準信号Cmに対する素子mの干渉測定値とみな
すことができる。大きなNに対しては、CチルダはほぼCmに等しくなる。すなわち、干
渉から素子mを取り出すことにより、測定の初期複素数体値の大きさ又は位相が大きく変
化することはないので、mが変化しても、各アンテナのコヒーレント測定は、同様の基準
信号に対して行われる。
【0049】
図11は、本開示の複数側面に係る64個の素子による複素数体値の生成を示すプロッ
トである。詳しくは、
図11は、64個の素子の合計から生成された後のCチルダの値を
示す。素子が多数になると、Cチルダが大きくなる可能性があり、各素子の個別の寄与が
小さくなる。
【0050】
近似C
m≒Cチルダを使用すると、S
m(v
m)は以下のように単純化できる。
【数3】
ここで、∠Cチルダは、複素数Cチルダの角度である。
【0051】
ここでわかることは、Sm(vm)が、光素子の初期の所望位相オフセットbmと、す
べての素子にわたる不変の位相値∠Cチルダとの差となる位相オフセットを有する正弦曲
線を生成するということである。さらに、電圧の関数としての素子の位相応答θm(vm
)もまた、直接測定される。θm(vm)が複素数である(利得/減衰を有する)場合、
これもまた本方法によって測定することができる。素子間の相対的な振幅amもまた比較
される。
【0052】
したがって、この正弦曲線を実験的にフィッティングすることにより、相対的な位相オ
フセット、相対的な振幅、及び各素子の位相関数が生成される。フィッティングは、正確
な結果をもたらすべく、システムのヒューリスティックな知識によって行うことができる
。さらに、移相器はまた、(PN接合部における漏洩電流のような)導入光パワーの測定
も許容し得る。この知識をこの手順と併せて使用することにより、複素数値θm(vm)
の正確なフィッティングが許与される。
【0053】
各素子1~Nに対して一回の通過及び計測S
m(v
m)を行うことにより、各光素子の
初期位相オフセットb
m(定数(-∠Cチルダ)を伴う)と、電圧の関数としてのチュー
ニング可能位相関数θ
m(v
m)とがわかる。この電圧が(b
m-∠Cチルダ)の反転す
なわち
【数4】
に等しくなるように設定されると、干渉の測定値が最大となり較正が完了する。
【0054】
わかることだが、本開示に係るこの干渉測定は一般的であり、ここに図示及び記載され
るものを含む多数のフェーズドアレイ構成において達成することができる。干渉測定の一
つの重要な側面は、干渉測定が、光素子の所望の位相分布に関連するということである。
すなわち、この干渉測定の最大値を生成することにより、所望の位相分布が生成され、又
は既知の位相変換を介して所望の位相分布が導かれる。各光素子に対して移相器の応答θ
m(vm)が測定されるので、初期の所望位相分布から他の位相分布へのビーム操舵又は
ビームフォーミングを、較正後に容易に達成することができる。また、ここでの数学的議
論は個別素子それぞれの位相制御を目的とするが、この手順はまた、素子グループを制御
する移相器についても行えることに留意することも重要である。
【0055】
ここで、波長λ=1.55μmにおける1次元2μmピッチの64素子光フェーズドア
レイの一つの例示を与える。素子の位相オフセットは、0~2πの範囲内の一様ランダム
位相分布に設定される。得られた遠距離場が
図12(A)に示される。
【0056】
簡潔にするべく、干渉測定値は、0°(
図12(B))にある遠距離場の中心点とする
。第1の3個の移相器を掃引するこの時点でのパワーが
図13(A)に示される。近似的
に(b
m-∠Cチルダ)に等しい位相オフセットを有する正弦曲線が生成される。
図13
(B)は、64個の素子を掃引したときに生成された制限曲線のすべてを一つのプロット
に示す。
【0057】
図13(B)に示される正弦曲線は、理論位相オフセット(b
m-∠Cチルダ)を有す
る。移相器を、フィッティングされたオフセット値の反転に設定すると、遠距離場は、図
14(A)に示されるものへと改変される。光フェーズドアレイはここで、0°でのパワ
ーとなる干渉測定値を最大限にするべく較正される。
【0058】
図14(B)は、0°での拡大図を示し、この位置での理論最大遠距離場をプロットす
る。較正された光フェーズドアレイは、理論最大値と比べて損失が0.05dB未満であ
る。
【0059】
図15に例示されるフロー図を参照すると、一般化された較正手順がさらに理解される
。同図に示されるように、光フェーズドアレイを含む光構造物にとって、個別移相器のそ
れぞれに対し、位相シフト又は移相量は、当該構造物に対する干渉信号を検出している間
、所定のパターンをとるように変化する。このような検出から、干渉信号に対する全体的
な位相オフセットが決定される。留意されることだが、本開示に係るそのような方法/手
順は、有利なことに、個別移相器の代わりに移相器のグループが変化するように修正され
得る。かかる動作により、移相器は、異なる周波数で変化するので、有利なことに、干渉
信号における各周波数成分の位相オフセットを決定することができる。
【0060】
この時点で、いくつかの特定例を使用して本開示が提示されてきたが、当業者には、本
発明の教示がそれに限定されるわけではないことが認識される。したがって、本開示は、
添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるべきである。