(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-02
(45)【発行日】2023-08-10
(54)【発明の名称】二酸化ケイ素懸濁液の調製方法
(51)【国際特許分類】
C03B 8/02 20060101AFI20230803BHJP
C03B 20/00 20060101ALI20230803BHJP
C01B 33/12 20060101ALI20230803BHJP
C01B 33/18 20060101ALI20230803BHJP
【FI】
C03B8/02 H
C03B8/02 E
C03B20/00 C
C01B33/12 E
C01B33/18 E
(21)【出願番号】P 2022503569
(86)(22)【出願日】2020-07-22
(86)【国際出願番号】 EP2020070646
(87)【国際公開番号】W WO2021013876
(87)【国際公開日】2021-01-28
【審査請求日】2022-03-14
(32)【優先日】2019-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507332918
【氏名又は名称】ヘレーウス クヴァルツグラース ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Quarzglas GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Heraeusstr.12-14, 63450 Hanau, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100206335
【氏名又は名称】太田 和宏
(74)【代理人】
【識別番号】100120857
【氏名又は名称】渡邉 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100116872
【氏名又は名称】藤田 和子
(72)【発明者】
【氏名】カイザー トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ヴァイゼンゼール ブラスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ヴィットリン ミルコ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルデ マルクス
【審査官】須藤 英輝
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-219333(JP,A)
【文献】特表2019-506352(JP,A)
【文献】特開平05-024852(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0077691(US,A1)
【文献】特表2019-502635(JP,A)
【文献】特表2019-502634(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 8/02
C03B 20/00
C01B 33/12-33/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化ケイ素懸濁液の製造方法であって、
(i)二酸化ケイ素粉末を提供する工程と、
(ii)液体を提供する工程と、
(iii)前記二酸化ケイ素粉末を前記液体と混合して、スラリーを得る工程と、
(iv)前記スラリーを超音波で処理して、前駆体懸濁液を得る工程と、
(v)前記前駆体懸濁液の少なくとも一部を第1の多段式フィルタ装置に通す工程であって、
前記第1の多段式フィルタ装置は、少なくとも第1、第2及び第3のフィルタ工程を有し、
各フィルタ工程は少なくとも1つのフィルタを含み、
前記第2のフィルタ工程は前記第1のフィルタ工程の下流に配置され、前記第3のフィルタ工程は前記第2のフィルタ工程の下流に配置され、
前記第1のフィルタ工程は5μm以上のフィルタ目開きを有し、
前記第2のフィルタ工程は0.5~5μmの範囲のフィルタ目開きを有し、
前記第3のフィルタ工程は1μm以下のフィルタ目開きを有し、
前記第1、第2及び第3のフィルタ工程から選択される前記フィルタ工程の少なくとも1つは99.5%以上の分離率を有し、
分離率はISO 16889に準拠して記載されており、いずれの場合も前記フィルタに基づいており、
前記フィルタ目開きは、前記フィルタが保持する最小の粒子サイズが何であるかを示す工程と
を含む方法。
【請求項2】
工程(v)の二酸化ケイ素懸濁液が、多段式フィルタ装置を通した後に得られる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のフィルタ装置が、以下の特性:
(a)前記第1のフィルタ工程が90%以下の分離率を有する、
(b)前記第1のフィルタ工程が、5~15μmの範囲のフィルタ目開きを有する、
(c)前記第2のフィルタ工程が95%以上の分離率を有する、
(d)前記第2のフィルタ工程が、0.5~2μmのフィルタ目開きを有する、
(e)前記第3のフィルタ工程が、99.5%以上の分離率を有する、
のうち少なくとも1つ、又は、これらの2つ以上の組み合わせを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記フィルタ工程の1つにおける前記第1のフィルタ装置の少なくとも1つのフィルタがデプスフィルタとして設計されている請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
超音波による前記スラリーの処理が、少なくとも10秒続く請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
超音波による前記スラリーの処理が、600W/リットルまでの電力密度を特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記スラリーが、前記スラリーを安定化させるための5重量%未満の添加剤を有し、前記重量%は前記スラリーの総重量に基づく請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記二酸化ケイ素粉末が、シロキサン及びケイ素アルコキシドからなる群から選択される化合物から製造できる請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記二酸化ケイ素粉末が、以下の特性:
a. 100ppm未満の炭素含有量、
b. 500ppm未満の塩素含有量、
c. 200ppb未満のアルミニウム含有量、
d. 5ppm未満のSi、O、H、C、Cl以外の原子の含有量、
e. 粉末粒子の少なくとも70重量%が、10~100nmの範囲の一次粒子サイズを有する、
f. 0.001~0.3g/cm
3の範囲のタンピング密度、
g. 5重量%未満の残留水分、
h. 35
m
2
/g未満のBET表面積
のうち少なくとも1つ、又は特性a.~h.の2つ以上の組み合わせを有し、
前記重量%、ppm及びppbは、いずれの場合も、前記二酸化ケイ素粉末の総量に基づく請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記スラリーが、以下の特性:
a.)前記スラリーの乾燥重量に基づいて、少なくとも20重量%の固形分含有量、
b.)4重量%のスラリーとして、前記スラリーが3~8の範囲のpH値を有する、
c.)二酸化ケイ素粒子の少なくとも90重量%が、1nm~10μm未満の範囲の粒子サイズを有する、
d.)5ppm以下のSi、O、H、C、Cl以外の原子の含有量、
e.)前記スラリーがレオペクシー性である
のうち少なくとも1つを特徴とし、前記重量%及びppmは、常に前記スラリーの全固形分に基づく請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記二酸化ケイ素懸濁液が、以下の特性:
A. 45℃未満の温度及び20~70重量%の範囲の固形分濃度でのレオペクシー特性であって、前記重量%は前記懸濁液中の全固形分に基づく、
B. すべての二酸化ケイ素粒子の総重量に基づいて前記二酸化ケイ素粒子の少なくとも90重量%が、1nm~10μm未満の範囲の粒子サイズを有する、
C. 4重量%の懸濁液として、前記懸濁液が3~8の範囲のpH値を有し、前記重量%は前記懸濁液の固形分に基づく、
D. 500ppm未満の塩素含有量、
E. 200ppb未満のアルミニウム含有量、
F. 5ppm未満のSi、O、H、C、Cl以外の原子の含有量、
のうち少なくとも1つを有し、前記ppm及びppbは、いずれの場合も二酸化ケイ素粒子の総量に基づく請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
二酸化ケイ素造粒体の製造方法であって
、請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の方法によって得られる二酸化ケイ素懸濁液が処理されて二酸化ケイ素造粒体が得られ、前記二酸化ケイ素造粒体は、前記二酸化ケイ素懸濁液中に存在する二酸化ケイ素粒子よりも大きい粒子径を有する方法。
【請求項13】
前記二酸化ケイ素懸濁液の前記処理が噴霧乾燥であり、前記噴霧乾燥が、以下の特性:
a]噴霧塔での噴霧造粒、
b]ノズルでの前記二酸化ケイ素懸濁液が、40bar以
下にあり、この圧力は絶対値で記載されている(p=0hPaに対する相対値)、
c]前記噴霧塔に入る液滴が、10~50℃の範
囲の温度にある、
d]前記噴霧塔に面したノズルの側の温度が、100~450℃の範
囲の温度である、
e]0.05~1m
3/hの範
囲の、ノズルを通る二酸化ケイ素懸濁液の処理量、
f]いずれの場合も前記二酸化ケイ素懸濁液の総重量に基づいて、少なくとも40重量
%の範囲の前記二酸化ケイ素懸濁液の固形分含有量、
g]10~100kg/分の範
囲の、噴霧塔へのガス流入量、
h]100~450℃の範
囲の前記噴霧塔に入るときのガス流の温度、
i]170℃未満の、前記噴霧塔を出るときのガス流の温度、
j]前記ガスが、空気、窒素及びヘリウム又はこれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択され
、
k]いずれの場合も前記噴霧乾燥で生じた前記二酸化ケイ素造粒体の総重量に基づいて、5重量%未
満の、前記噴霧塔から取り出されたときの前記造粒体の残留水分、
l]前記噴霧乾燥で生じた前記二酸化ケイ素造粒体の総重量に基づいて噴霧造粒体の少なくとも50重量%が、1~100秒の範
囲の飛行時間を完了する、
m]前記噴霧乾燥で生じた前記二酸化ケイ素造粒体の総重量に基づいて前記噴霧造粒体の少なくとも50重量%が、20m
超の飛行経路を完了する、
n]前記噴霧塔が円筒形の形状を有する、
o]10m
超の範囲の前記噴霧塔の高さ、
p]噴霧塔から造粒体を取り出す前に、90μm未満のサイズの粒子を濾別する、
q]噴霧塔から造粒体を取り出した後
、500μm超のサイズの粒子を濾別する、
r]二酸化ケイ素懸濁液の液滴が、鉛直方向に対して30~60°の角度
で前記ノズルから出る、
のうち少なくとも1つを特徴とする請求項
12に記載の方法。
【請求項14】
前記二酸化ケイ素造粒体が、以下の特性:
A)23~26°の範囲の安息角、
B)20~50m
2/gの範囲のBET比表面積、
C)0.5~1.2g/cm
3の範囲のかさ密度、
D)50~500μmの範囲の二酸化ケイ素粒子の平均粒子サイズ
E)50ppm未満の炭素含有量、
F)500ppm未満の塩素含有量、
G)200ppb未満のアルミニウム含有量、
H)5ppm未満のSi、O、H、C以外の原子の含有量、
I)0.7~1.3g/cm
3の範囲の二酸化ケイ素造粒体粒子のタンピング密度、
J)0.1~2.5mL/gの範囲の二酸化ケイ素造粒体粒子の細孔容積、
K)50~150μmの範囲の二酸化ケイ素造粒体粒子の粒子サイズ分布D
10、
L)150~300μmの範囲の二酸化ケイ素粒子の粒子サイズ分布D
50、
M)250~620μmの範囲の二酸化ケイ素粒子の粒子サイズ分布D
90、
の少なくとも1つを有し、前記ppm及びppbは、いずれの場合も前記二酸化ケイ素造粒体の総重量に基づく請求項
12又は請求項
13に記載の方法。
【請求項15】
石英ガラス体の製造方法であって、少なくとも
i.)請求項
12から請求項
14のいずれか1項に記載の方法によって得られる二酸化ケイ素造粒体を提供する工程と、
ii.)前記二酸化ケイ素造粒体からガラス融液を形成する工程と、
iii.)前記ガラス融液の少なくとも一部から石英ガラス体を形成する工程と
を含む方法。
【請求項16】
光導体の製造方法であって、
A/
請求項
15に記載の方法によって得られる石英ガラス体を提供し、前記石英ガラス体を最初に加工して、少なくとも1つの開口部を有する中空体を得る工程と、
B/工程A/からの前記中空体に、前記少なくとも1つの開口部を介して1つ以上のコアロッドを挿入して前駆体を得る工程と、
C/前記前駆体を加熱しながら延伸して、1つ以上のコア及びジャケットM1を有する光導体を得る工程と
を含む方法。
【請求項17】
発光体の製造方法であって、
(i)
請求項
15に記載の方法によって得られる石英ガラス体を提供し、前記石英ガラス体を最初に加工して、少なくとも1つの開口部を有する中空体を得る工程と、
(ii)前記中空体に、必要に応じて電極を装着する工程と、
(iii)工程(i)からの前記中空体にガスを充填する工程と
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化ケイ素懸濁液の製造方法であって、二酸化ケイ素粉末及び液体を調製する工程と、この二酸化ケイ素粉末を上記液体と混合して、スラリーを得る工程と、このスラリーを超音波で処理して、前駆体懸濁液を得る工程と、この前駆体懸濁液の少なくとも一部を第1の多段式フィルタ装置に通す工程であって、この第1の多段式フィルタ装置は、少なくとも第1、第2及び第3のフィルタ工程を有し、各フィルタ工程は少なくとも1つのフィルタを含み、第2のフィルタ工程は第1のフィルタ工程の下流に配置され、第3のフィルタ工程は、第2のフィルタ工程の下流に配置され、第1のフィルタ工程は5μm以上のフィルタ目開きを有し、第2のフィルタ工程は0.5~5μmの範囲のフィルタ目開きを有し、第3のフィルタ工程は1μm以下のフィルタ目開きを有し、これら第1、第2及び第3のフィルタ工程から選択されるフィルタ工程の少なくとも1つは99.5%以上の分離率を有し、特定されるフィルタに関する分離率は、いずれの場合もISO 16889に準拠して記載されており、フィルタ目開きは、上記フィルタが保持する最小の粒子サイズが何であるかを示す工程とを含む方法に関する。本発明は、利用可能な二酸化ケイ素懸濁液、並びにそれから作ることができるバリューチェーンの造粒体及び製品にも関する。
【背景技術】
【0002】
石英ガラス、石英ガラス製品、及び石英ガラスを含む製品が公知である。同様に、石英ガラス及び石英ガラス体を調製するための様々なプロセスも既に公知である。それにもかかわらず、さらに高純度の、すなわち不純物のない石英ガラスを調製することができる調製プロセスを特定するために、かなりの努力が依然としてなされている。石英ガラスやその加工品の多くの用途では、例えば均質性及び純度の面で高い要求がなされる。これは、とりわけ、光導体又は発光体に加工される石英ガラスに当てはまる。この分野では、不純物が吸収の原因となりうる。これは、色の変化や放出された光の減衰につながるため、短所となる。高純度石英ガラスのさらなる応用例は、半導体の製作における製造工程である。この分野では、ガラス体のあらゆる不純物が半導体の欠陥につながる可能性があるため、製作時に不良品が発生する可能性がある。これらのプロセスで使用される一連の高純度石英ガラス、特に一連の高純度合成石英ガラスは、調製に手間がかかる。これらは貴重である。
【0003】
さらには、上記のような高純度石英ガラス、特に高純度合成石英ガラス、及びそれらから誘導される製品を低価格で提供することが市場で求められている。それゆえ、高純度石英ガラスを従来よりも低価格で提供できるようにすることが望まれている。これに関しては、より費用対効果の高い製造方法、及びより安価な原材料供給源の両方が求められている。
【0004】
石英ガラス体の公知の調製プロセスは、二酸化ケイ素を溶融する工程と、その溶融物から石英ガラス体を製造する工程とを含む。例えば気泡の形態でガスが含まれることによってガラス体に不規則性があると、特に高温時に負荷がかかった際にガラス体が破損することがあり、又は特定の目的に使用できなくなることがある。石英ガラスの原材料に不純物が含まれていると、石英ガラスに亀裂や気泡、筋及び変色が生じることがある。半導体の調製及び加工のためのプロセスに採用された場合、ガラス体に含まれる不純物が放出され、処理された半導体部品に移行することもある。これは、例えば、エッチングプロセスで当てはまり、半導体ビレットに不良品が発生することにつながる。それゆえ、公知の調製プロセスに関連する共通の課題は、石英ガラス体の品質が不十分であることである。
【0005】
さらなる側面は、原材料の効率に関する。副生成物として別の場所に蓄積される石英ガラス及び原材料を、石英ガラス製品に向けた好ましい工業プロセスに投入することは、これらの副生成物を建設等で充填材として用いること、又はコストをかけてゴミとして処分することよりも有利であると思われる。これらの副生成物は、フィルタで微細な粉塵として分離されることが多い。この微細な粉塵は、特に健康、労働安全、取り扱いに関して、さらなる問題をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、従来技術にある短所のうちの1つ以上を少なくとも部分的に克服することである。
長い寿命を有する光導体、発光体、成形体及びコーティングを提供することが本発明のさらなる目的である。
気泡を含まないか又は気泡の含有量が少ないガラスから作られた光導体、発光体、成形体及びコーティングを提供することが本発明のさらなる目的である。
高い透明性を有するガラスから作られた光導体、成形体及びコーティングを提供することが本発明のさらなる目的である。
低い不透明性を有する光導体、発光体、成形体及びコーティングを提供することが本発明のさらなる目的である。
低減衰性を有する光導体を提供することが本発明のさらなる目的である。
高い輪郭精度を有する光導体、発光体、成形体及びコーティングを提供することが本発明のさらなる目的である。特に、高温でも変形しない光導体、発光体、成形体及びコーティングを提供することが本発明の目的である。特に、大きいサイズで形成された場合でも、形状が安定している光導体、発光体、成形体及びコーティングを提供することが本発明の目的である。
破れにくく破損しにくい光導体、発光体、成形体及びコーティングを提供することが本発明のさらなる目的である。
調製が効率的な光導体、発光体、成形体及びコーティングを提供することが本発明のさらなる目的である。
調製するのに費用対効果の高い光導体、発光体、成形体及びコーティングを提供することが本発明のさらなる目的である。
調製するのに長いさらなる加工工程、例えば焼き入れ(強化、テンパリング)を必要としない光導体、発光体、成形体及びコーティングを提供することが本発明のさらなる目的である。
高い耐熱衝撃性を有する光導体、発光体、成形体及びコーティングを提供することが本発明のさらなる目的である。大きい熱変動があってもわずかな熱膨張しか示さない光導体、発光体、成形体及びコーティングを提供することが特に本発明の目的である。
高い硬度を有する光導体、発光体、成形体及びコーティングを提供することが本発明のさらなる目的である。
純度が高く、異物原子の混入が少ない光導体、発光体、成形体及びコーティングを提供することが本発明のさらなる目的である。異物原子という用語は、意図的に導入されていない構成成分を意味するために採用される。
ドーパント材料の含有量が少ない光導体、発光体、成形体及びコーティングを提供することが本発明のさらなる目的である。
高い均質性を有する光導体、発光体、成形体及びコーティングを提供することが本発明のさらなる目的である。特性又は材料の均質性は、試料中のこの特性又は材料の分布の均一性の尺度である。
高い材料均質性を有する光導体、発光体、成形体及びコーティングを提供することが特に本発明の目的である。材料均質性は、光導体、発光体又は半導体デバイスに含まれる元素及び化合物、特にOH、塩素、金属、特にアルミニウム、アルカリ土類金属、耐火金属及びドーパント材料の分布の均一性の尺度である。
【0007】
ガラスから作られた光導体、発光体、並びに成形体及びコーティングに使用するのに適しており、上述の目的の少なくとも1つ、好ましくはいくつかを少なくとも部分的に解決する石英ガラス体を提供することが本発明のさらなる目的である。
線状の形態を有する石英ガラス体を提供することが本発明のさらなる目的である。特に、高い曲げ半径を有する石英ガラス体を提供することが目的である。特に、高いファイバーカールを有する石英ガラス体を提供することがさらなる目的である。
カチオンの移行が可能な限り低い石英ガラス体を提供することがさらなる目的である。
石英ガラス体の全長にわたって高い均質性を有する石英ガラス体を提供することがさらなる目的である。
特に、石英ガラス体の全長にわたって高い屈折率均質性を有する石英ガラス体を提供することが本発明のさらなる目的である。
特に、石英ガラス体の全長にわたって高い粘度均質性を有する石英ガラス体を提供することが本発明のさらなる目的である。
特に、石英ガラス体の全長にわたって高い材料均質性を有する石英ガラス体を提供することが本発明のさらなる目的である。
特に、石英ガラス体の全長にわたって高い光学的均質性を有する石英ガラス体を提供することが本発明のさらなる目的である。
【0008】
高い焼結活性を有する二酸化ケイ素粉末を提供することが本発明のさらなる目的である。
低い焼結温度を有する二酸化ケイ素粉末を提供することが本発明のさらなる目的である。
安定した造粒体を得る原料とすることができる二酸化ケイ素粉末を提供することが本発明のさらなる目的である。
【0009】
良好な取り扱い性(ハンドリング性)を有する二酸化ケイ素造粒体を提供することが本発明のさらなる目的である。
微細な粉塵の含有量が少ない二酸化ケイ素造粒体を提供することが本発明のさらなる目的である。
容易に保管、輸送及び搬送できる二酸化ケイ素造粒体を提供することがさらなる目的である。
気泡を含まない石英ガラス体を形成することができる二酸化ケイ素造粒体を提供することが本発明のさらなる目的である。バルク材料として可能な限り小さいガス体積を含む二酸化ケイ素造粒体を提供することが本発明のさらなる目的である。
開孔した二酸化ケイ素造粒体を提供することが本発明のさらなる目的である。
【0010】
上述の目的の少なくとも一部が少なくとも部分的に解決される石英ガラス体を調製することができるプロセスを提供することが本発明のさらなる目的である。
石英ガラス体をより簡単に調製することができるプロセスを提供することが本発明のさらなる目的である。
石英ガラス体を連続的に調製することができるプロセスを提供することが本発明のさらなる目的である。
石英ガラス体を連続的な溶融及び成形プロセスによって調製することが可能なプロセスを提供することが本発明のさらなる目的である。
石英ガラス体を高速で形成することができるプロセスを提供することが本発明のさらなる目的である。
石英ガラス体を低い不良品率で調製することができるプロセスを提供することが本発明のさらなる目的である。
組立可能な石英ガラス体を調製することができるプロセスを提供することが本発明のさらなる目的である。
二酸化ケイ素造粒体を、例えば1000℃を超える温度処理による意図的な緻密化工程を事前に受ける必要なく、溶融炉で加工することができる、石英ガラス体の調製プロセスを提供することが本発明のさらなる目的である。
BETが20m2/g以上の二酸化ケイ素造粒体を溶融炉に導入し、溶融し処理して石英ガラス体を得ることができる、石英ガラス体の調製プロセスを提供することが特に本発明の目的である。
石英ガラス体を調製することができる自動化されたプロセスを提供することが本発明のさらなる目的である。
【0011】
本発明のさらなる目的は、1μmを超える粒子サイズの二酸化ケイ素とは異なる粒子をできるだけ少なくした二酸化ケイ素懸濁液の製造方法を提供することである。
本発明のさらなる目的は、二酸化ケイ素懸濁液の製造方法であって、二酸化ケイ素懸濁液が可能な限り少ない不純物を含む方法を提供することである。
本発明のさらなる目的は、二酸化ケイ素懸濁液の製造方法であって、二酸化ケイ素懸濁液の固体成分がSi、O、H、Cl及びCの原子のみを含む方法を提供することである。
本発明のさらなる目的は、二酸化ケイ素懸濁液の製造方法であって、二酸化ケイ素懸濁液の固体成分が、Si、O、H、Cl又はCではない原子をできるだけ少なく含む方法を提供することである。
本発明のさらなる目的は、可能な限り均質で貯蔵中に安定している煤煙粉末からの二酸化ケイ素懸濁液の製造方法を提供することである。
本発明のさらなる目的は、高純度の石英ガラスの製造方法を述べることである。
本発明のさらなる目的は、可能な限り気泡を含まない石英ガラスの製造方法を述べることである。
本発明のさらなる目的は、金属不純物の粒子を含まない石英ガラスの製造方法を述べることである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した目的の少なくとも1つを少なくとも部分的に実行することに寄与するのは、独立請求項の客体である。従属請求項は、上記目的の少なくとも1つを満たすことに少なくとも部分的に寄与する好ましい実施形態である。
【0013】
|1|二酸化ケイ素懸濁液の製造方法であって、
(i)二酸化ケイ素粉末を提供する工程と、
(ii)液体を提供する工程と、
(iii)上記二酸化ケイ素粉末を上記液体と混合して、スラリーを得る工程と、
(iv)このスラリーを超音波で処理して、前駆体懸濁液を得る工程と、
(v)この前駆体懸濁液の少なくとも一部を第1の多段式フィルタ装置に通す工程であって、
この第1の多段式フィルタ装置は、少なくとも第1、第2及び第3のフィルタ工程を有し、
各フィルタ工程は少なくとも1つのフィルタを含み、
第2のフィルタ工程は第1のフィルタ工程の下流にあり、第3のフィルタ工程は第2のフィルタ工程の下流にあり、
上記第1のフィルタ工程は5μm以上のフィルタ目開きを有し、
上記第2のフィルタ工程は0.5~5μmの範囲のフィルタ目開きを有し、
上記第3のフィルタ工程は1μm以下のフィルタ目開きを有し、
上記第1、第2及び第3のフィルタ工程から選択されるフィルタ工程の少なくとも1つは99.5%以上の分離率を有し、
記載されるフィルタについての分離率は、いずれの場合もISO 16889に準拠して記載されており、
上記フィルタ目開きは、上記フィルタが保持する最小の粒子サイズが何であるかを示す工程と
を含む方法。
【0014】
工程(v)の二酸化ケイ素懸濁液は、好ましくは、上記多段式フィルタ装置を通過した後に得られる。
【0015】
|2|第1のフィルタ装置が、以下の特徴:
(a)第1のフィルタ工程が90%以下の分離率を有する、
(b)第1のフィルタ工程が、5~15μmの範囲のフィルタ目開きを有する、
(c)第2のフィルタ工程が95%以上の分離率を有する、
(d)第2のフィルタ工程が、0.5~2μmのフィルタ目開きを有する、
(e)第3のフィルタ工程が99.5%以上の分離率を有する
の少なくとも1つ、又はこれらの2つ以上の組み合わせを特徴とする実施形態|1|に記載の方法。
【0016】
|3|第1、第2及び第3のフィルタ工程から選択される第1のフィルタ装置のフィルタ工程のうちの1つの、少なくとも1つのフィルタがデプスフィルタとして設計されている実施形態|1|又は実施形態|2|に記載の方法。
【0017】
|4|上記スラリーが超音波で少なくとも10秒間処理される実施形態|1|から実施形態|3|のいずれか1つに記載の方法。
【0018】
|5|上記スラリーを超音波で処理することが、600W/リットルまでの電力密度を特徴とする実施形態|1|から実施形態|4|のいずれか1つに記載の方法。
【0019】
|6|上記スラリーが、スラリーを安定化させるための5重量%未満の添加剤を有し、重量%はスラリーの総重量に基づくものである実施形態|1|から実施形態|5|のいずれか1つに記載の方法。
【0020】
|7|上記二酸化ケイ素粉末が、シロキサン及びケイ素アルコキシドを含む群から選択される化合物から製造されてもよい実施形態|1|から実施形態|6|のいずれか1つに記載の方法。
【0021】
|8|上記二酸化ケイ素粉末が、以下の特性:
a. 100ppm未満の炭素含有量、
b. 500ppm未満の塩素含有量、
c. 200ppb未満のアルミニウム含有量、
d. 5ppm未満のSi、O、H、C、Cl以外の原子の含有量、
e. 粉末粒子の少なくとも70重量%が、10~100nmの範囲の一次粒子サイズを有する、
f. 0.001~0.3g/cm3の範囲のタンピング密度(Stampfdichte)、
g. 5重量%未満の残留水分、
h. 35m
2
/g未満のBET表面積、
の少なくとも1つ、又は特性a.~h.の2つ以上の組み合わせを有し、
上記重量%、ppm及びppbは、いずれの場合も、二酸化ケイ素粉末の総量に基づく実施形態|1|から実施形態|7|のいずれか1つに記載の方法。
【0022】
|9|上記スラリーが、以下の特性:
a.)スラリーの乾燥重量に基づいて、少なくとも20重量%の固形分含有量、
b.)4重量%のスラリーとして、このスラリーが3~8の範囲のpH値を有する、
c.)二酸化ケイ素粒子の少なくとも90重量%が、1nm~10μm未満の範囲の粒子サイズを有する、
d.)500ppm以下の塩素原子含有量、
e.)5ppm以下のSi、O、H、C、Cl以外の原子の含有量、
f.)上記スラリーがレオペクシー性である、
のうち少なくとも1つを特徴とし、上記重量%及びppmは、常にスラリーの全固形分に基づく実施形態|1|から実施形態|8|のいずれか1つに記載の方法。
【0023】
|10|上記二酸化ケイ素懸濁液が、以下の特性:
A. 45℃未満の温度及び20~70重量%の範囲の固形分濃度でのレオペクシー特性であって、この重量%は懸濁液中の全固形分に基づく、
B. すべての二酸化ケイ素粒子の総重量に基づいて上記二酸化ケイ素粒子の少なくとも90%が、1nm~10μm未満の範囲の粒子サイズを有する、
C. 4重量%の懸濁液として、上記懸濁液が3~8の範囲のpH値を有し、この重量%は懸濁液の固形分に基づく、
D. 500ppm未満の塩素含有量、
E. 200ppb未満のアルミニウム含有量、
F. 5ppm未満のSi、O、H、C、Cl以外の原子の含有量
のうち少なくとも1つを有し、上記ppm及びppbは、二酸化ケイ素粒子の総量に基づく実施形態|1|から実施形態|9|のいずれか1つに記載の方法。
【0024】
|11|第1の多段式フィルタ装置の使用寿命が少なくとも250リットルであり、このリットルは前駆体懸濁液フィルタ装置の濾過された体積に基づく実施形態|1|から実施形態|10|のいずれか1つに記載の方法。
【0025】
|12|少なくとも1つのさらなるフィルタ装置が、第1の多段式フィルタ装置の下流で採用される実施形態|1|から実施形態|11|のいずれか1つに記載の方法。
【0026】
|13|実施形態|1|から実施形態|12|のいずれか1つに記載の方法によって得られる二酸化ケイ素懸濁液。
【0027】
|14|二酸化ケイ素造粒体の製造方法であって、実施形態|13|に記載の二酸化ケイ素懸濁液又は実施形態|1|から実施形態|12|のいずれか1つに記載の方法によって得られる二酸化ケイ素懸濁液が処理されて二酸化ケイ素造粒体が得られ、この二酸化ケイ素造粒体は、上記二酸化ケイ素懸濁液中に存在する二酸化ケイ素粒子よりも大きい粒子径を有する方法。
【0028】
|15|上記処理により、二酸化ケイ素造粒体を含む顆粒が生成し、この顆粒は球形の形態を有する実施形態|14|に記載の方法。
【0029】
|16|上記処理が噴霧造粒である実施形態|14|又は実施形態|15|に記載の方法。
【0030】
|17|噴霧乾燥が、以下の特性:
a]噴霧塔での噴霧造粒、
b]40bar(バール)以下、例えば、1.3~20bar、1.5~18bar、2~15bar、又は4~13barの範囲、特に好ましくは5~12barの範囲の、ノズルにおける二酸化ケイ素懸濁液の圧力であって、この圧力は絶対値で記載されている(p=0hPaに対する相対値)、
c]噴霧塔に入る液滴の温度が、10~50℃の範囲、好ましくは15~30℃の範囲、特に好ましくは18~25℃の範囲の温度である、
d]噴霧塔に面したノズルの側の温度が、100~450℃の範囲、例えば250~440℃の範囲、特に好ましくは320~430℃にある、
e]二酸化ケイ素懸濁液は、0.05~1m3/h、例えば0.1~0.7m3/h又は0.2~0.5m3/hの範囲、特に好ましくは0.25~0.4m3/hの範囲でノズルを通過する、
f]二酸化ケイ素は、いずれの場合も二酸化ケイ素懸濁液の総重量に基づいて、少なくとも40重量%、例えば50~80重量%の範囲、又は55~75重量%の範囲、特に好ましくは60~70重量%の範囲の固形分を有する、
g]10~100kg/分の範囲、例えば20~80kg/分又は30~70kg/分の範囲、特に好ましくは40~60kg/分の範囲の、噴霧塔に入るガス流、
h]100~450℃の範囲、例えば250~440℃の範囲、特に好ましくは320~430℃の範囲の温度で噴霧塔に入るガス、
i]噴霧塔から出るガスの温度が170℃未満である、
j]ガスは、空気、窒素及びヘリウム又はこれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択され、好ましくは空気である、
k]噴霧塔から取り出されたとき、造粒体は、いずれの場合も噴霧乾燥で生じた二酸化ケイ素造粒体の総重量に基づいて、5重量%未満、例えば3重量%未満、若しくは1重量%未満、又は0.01~0.5重量%の範囲、特に好ましくは0.1~0.3重量%の範囲の残留水分を有する、
l]噴霧乾燥で生じた二酸化ケイ素造粒体の総重量に基づいて少なくとも50重量%が、1~100秒の範囲、例えば10~80秒の時間、特に好ましくは25~70秒の時間をかけて飛行時間を完了する、
m]噴霧乾燥で生じた二酸化ケイ素造粒体の総重量に基づいて噴霧造粒体の少なくとも50重量%が、20m超、例えば30m超、若しくは50m超、若しくは70m超、若しくは100m超、若しくは150m超、若しくは200m超、又は20~200mの範囲、若しくは10~150m、若しくは20~100m、特に好ましくは30~80mの範囲を飛行する、
n]噴霧塔は円筒形の形状を有する、
o]噴霧塔の高さが10m超、例えば15m超、若しくは20m超、若しくは25m超、若しくは30m超、又は10~25mの範囲、特に好ましくは15~20mの範囲である、
p]噴霧塔から造粒体を取り出す前に、サイズが90μm未満の粒子を濾別する、
q]噴霧塔から造粒体を取り出した後、好ましくは振動シュート上で、500μm超のサイズの粒子を濾別する、
r]二酸化ケイ素懸濁液の液滴が、鉛直方向に対して30~60°の角度、特に好ましくは鉛直方向に対して45°の角度でノズルから出る
の少なくとも1つを特徴とする実施形態|14|から実施形態|16|のいずれか1つに記載の方法。
【0031】
|18|上記二酸化ケイ素造粒体が、以下の特性:
A)23~26°の範囲の安息角、
B)20~50m2/gの範囲のBET表面積、
C)0.5~1.2g/cm3の範囲のかさ密度、
D)二酸化ケイ素造粒体粒子が、50~500μmの範囲の平均粒子サイズを有する、
E)50ppm未満の炭素含有量、
F)500ppm未満の塩素含有量、
G)200ppb未満のアルミニウム含有量、
H)5ppm未満のSi、O、H、C以外の原子の含有量、
I)二酸化ケイ素造粒体粒子が、0.7~1.3g/cm3の範囲のタンピング密度を有する、
J)二酸化ケイ素造粒体粒子が、0.1~2.5mL/gの範囲の細孔容積を有する、
K)二酸化ケイ素造粒体粒子が、50~150μmの範囲の粒子サイズ分布(粒度分布)D10を有する、
L)二酸化ケイ素造粒体粒子が、150~300μmの範囲の粒子サイズ分布D50を有する、
M)二酸化ケイ素造粒体粒子が、250~620μmの範囲の粒子サイズ分布D90を有する
の少なくとも1つを有し、上記ppm及びppbは、いずれの場合も二酸化ケイ素造粒体の総重量に基づく実施形態|14|から実施形態|17|のいずれか1つに記載の方法。
【0032】
|19|石英ガラス体の製造方法であって、少なくとも
i.)実施形態|14|から実施形態|18|のいずれか1つに記載の方法によって得られる二酸化ケイ素造粒体を提供する工程と、
ii.)この二酸化ケイ素造粒体からガラス融液を形成する工程と、
iii.)このガラス融液の少なくとも一部から石英ガラス体を形成する工程と
を含む方法。
【0033】
|20|実施形態|19|に記載の方法によって得られる石英ガラス体。
【0034】
|21|以下の特性:
A]500ppm未満の塩素含有量、
B]200ppb未満のアルミニウム含有量、
C]5ppm未満のSi、O、H、C以外の原子の含有量、
D]log10(η(1250℃)/dPas)=11.4~log10(η(1250℃)/dPas)=12.9、又はlog10(η(1300℃)/dPas)=11.1~log10(η(1300℃)/dPas)=12.2、又はlog10(η(1350℃)/dPas)=10.5~log10(η(1350℃)/dPas)=11.5の範囲の粘度(p=1013hPa)、
E]10-4未満の屈折率均質性、
F]円筒形の形態、
G]5ppm未満のタングステン含有量、
H]5ppm未満のモリブデン含有量
のうち少なくとも1つを有し、上記ppb及びppmは、いずれの場合も石英ガラス体の総重量に基づく実施形態|20|に記載の石英ガラス体。
【0035】
|22|光導体の製造方法であって、
A/実施形態|20|若しくは実施形態|21|に記載の石英ガラス体、又は実施形態|19|に記載の方法によって得られる石英ガラス体を提供し、この石英ガラス体を最初に加工して、少なくとも1つの開口部を有する中空体を得る工程と、
B/工程A/からの中空体に、少なくとも1つの開口部を介して1つ以上のコアロッドを挿入して前駆体を得る工程と、
C/この前駆体を加熱しながら延伸して、1つ以上のコア及びジャケットM1を有する光導体を得る工程と
を含む方法。
【0036】
|23|実施形態|22|に記載の方法によって得られる光導体。
【0037】
|24|光導体の製造方法であって、
(i)実施形態|20|若しくは実施形態|21|に記載の石英ガラス体、又は実施形態|19|に記載の方法によって得られる石英ガラス体を提供し、この石英ガラス体を最初に加工して、少なくとも1つの開口部を有する中空体を得る工程と、
(ii)この中空体に、必要に応じて電極を装着する工程と、
(iii)工程(i)からの中空体にガスを充填する工程と
を含む方法。
【0038】
|25|実施形態|24|に記載の方法によって得られる光導体。
【0039】
|26|成形体の製造方法であって、
(1)実施形態|20|若しくは実施形態|21|に記載の石英ガラス体、又は実施形態|19|に記載の方法によって得られる石英ガラス体を提供する工程と、
(2)この石英ガラス体を成形して、成形体を得る工程と
を含む方法。
【0040】
|27|実施形態|26|に記載の方法によって得られる成形体。
【0041】
|28|基板上のコーティングの製造方法であって、
|A|実施形態|1|から実施形態|12|にのいずれか1つに記載の方法による二酸化ケイ素懸濁液、及び基板を提供する工程と、
|B|この二酸化ケイ素懸濁液のコーティングを基板上に堆積させる工程と
を含む方法。
【0042】
一般的な注意事項
本明細書では、記載されている範囲には、限界値として記載されている値も含まれる。それゆえ、変数Aに関する「x~yの範囲」というタイプの記載は、Aが値x、y及びxとyの間の値を取り得ることを意味する。従って、変数Aに関する「yまで」というタイプの一方側のみが制限された範囲は、値y及びy未満を意味する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】
図1は、第1の態様に記載の二酸化ケイ素懸濁液を製造するためのプロセス工程を模式的に示す。
【
図2】
図2は、第1、第2及び第3のフィルタ工程の3つのフィルタ工程を有する第1のフィルタ配置を示す。
【
図4】
図4は、石英ガラス体の製造方法を模式的に示す。
【
図5】
図5は、例として、a)スラリーの粒子サイズ分布、b)分散後の前駆体懸濁液の粒子サイズ分布を示す。
【
図6】
図6は、3つの熱い石英ガラス体を示す:a)多くの気泡、b)少数の気泡、c)非常に多くの気泡(発泡ガラス)。
【
図7】
図7は、使用される溶融物がa)未濾過の二酸化ケイ素懸濁液から形成された造粒体であるガラス体と、b)使用される溶融物が本発明のように濾過された二酸化ケイ素懸濁液の造粒体から得られるガラス体との比較画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0044】
上記の目的の少なくとも1つを少なくとも部分的に満たすことに対する寄与は、独立請求項によってなされる。従属請求項は、目的の少なくとも1つを少なくとも部分的に満たすことに寄与する好ましい実施形態を提供する。
【0045】
本発明の第1の態様は、二酸化ケイ素懸濁液の製造方法であって、
(i)二酸化ケイ素粉末を提供する工程と、
(ii)液体を提供する工程と、
(iii)上記二酸化ケイ素粉末を上記液体と混合して、スラリーを得る工程と、
(iv)このスラリーを超音波で処理して、前駆体懸濁液を得る工程と、
(v)この前駆体懸濁液の少なくとも一部を第1の多段式フィルタ装置に通す工程であって、
この第1の多段式フィルタ装置は、少なくとも第1、第2及び第3のフィルタ工程を有し、
各フィルタ工程は少なくとも1つのフィルタを含み、
第2のフィルタ工程は第1のフィルタ工程の下流に配置され、第3のフィルタ工程は第2のフィルタ工程の下流に配置され、
上記第1のフィルタ工程は5μm以上のフィルタ目開き(精度)を有し、
上記第2のフィルタ工程は0.5~5μmの範囲のフィルタ目開きを有し、
上記第3のフィルタ工程は1μm以下のフィルタ目開きを有し、
上記第1、第2及び第3のフィルタ工程から選択されるフィルタ工程の少なくとも1つは99.5%以上の分離率を有し、
分離率は、いずれの場合も記載されているフィルタに基づいて、ISO 16889に準拠して記載されており、
上記フィルタ目開きは、上記フィルタが保持する最小の粒子サイズが何であるかを示す工程と
を含む方法である。
【0046】
二酸化ケイ素粉末
本発明では、自然界に存在する二酸化ケイ素又は合成的に製造された二酸化ケイ素から二酸化ケイ素粉末を得ることが原理的に可能である。好ましくは、合成された二酸化ケイ素粉末が用いられる。特に好ましくは、焼成により製造された二酸化ケイ素粉末が使用される。
【0047】
この二酸化ケイ素粉末は、少なくとも2つの粒子を有する任意の二酸化ケイ素粉末であってよい。製造方法は、当業者にとって一般的であり、本目的に適していると思われる任意の方法であってよい。
【0048】
本発明の1つの実施形態によれば、二酸化ケイ素粉末は、石英ガラスを製造する際、特にいわゆるスート体を製造する際の副生成物として生成される。このような起源からの二酸化ケイ素は、しばしば「スート塵」とも呼ばれる。
【0049】
上記二酸化ケイ素粉末の好ましい供給源は、火炎加水分解バーナーの適用によるスート体の合成的調製から得られる二酸化ケイ素粒子である。スート体の調製では、シリンダジャケット表面を有する回転キャリアチューブが、バーナーの列に沿って前後に移動される。火炎加水分解バーナーには、二酸化ケイ素一次粒子を製造するための原料の他に、バーナーガスとして酸素及び水素を供給することができる。二酸化ケイ素一次粒子は、好ましくは、100nmまでの一次粒子サイズを有する。火炎加水分解によって製造された二酸化ケイ素一次粒子は、凝集又は塊状化して、約9μm(DIN ISO 13320:2009-1)の粒子サイズを有する二酸化ケイ素粒子を形成する。二酸化ケイ素粒子では、走査型電子顕微鏡で二酸化ケイ素一次粒子の形状を識別することができ、一次粒子サイズは測定することができる。二酸化ケイ素粒子の一部は、長手方向軸を中心に回転しているキャリアチューブのシリンダジャケット面に堆積する。このようにして、スート体は層ごとに構築される。二酸化ケイ素粒子の別の部分は、キャリアチューブのシリンダジャケット表面に堆積せず、むしろ、例えばフィルタシステムに塵として蓄積する。この二酸化ケイ素粒子の他の部分は、しばしば「スート塵」とも呼ばれる二酸化ケイ素粉末を構成する。二酸化ケイ素粒子の総重量に基づくと、一般に、キャリアチューブに堆積する二酸化ケイ素粒子の部分は、スート体の調製に関してスート塵として蓄積する二酸化ケイ素粒子の部分よりも大きい。
【0050】
最近では、スート塵は、一般に有償で費用をかけて廃棄物として処理されるか、例えば道路建設において付加価値のない充填材として、染料工業の添加剤として、タイル工業のための、及び建築基礎の修復に使用されるヘキサフルオロケイ酸の調製のための原料として使用されている。本発明の場合、スート塵は適切な原料であり、高品質の製品を得るために加工することができる。
【0051】
火炎加水分解によって調製された二酸化ケイ素は、通常、焼成二酸化ケイ素と呼ばれる。焼成二酸化ケイ素は、通常、アモルファスの二酸化ケイ素一次粒子又は二酸化ケイ素粒子の形態で入手できる。
【0052】
好ましい実施形態によれば、二酸化ケイ素粉末は、混合ガスから火炎加水分解によって調製することができる。この場合、二酸化ケイ素粒子も火炎加水分解において生成され、塊状物又は凝集体が形成される前に取り出される。ここでは、上でスート塵と呼ばれた二酸化ケイ素粉末が主生成物である。
【0053】
二酸化ケイ素粉末を生成するのに適した原料は、好ましくはシロキサン、ケイ素アルコキシド、及び無機ケイ素化合物である。シロキサンは、直鎖状及び環状のポリアルキルシロキサンを意味する。好ましくは、ポリアルキルシロキサンは、一般式
SipOpR2p
を有し、上記式中、pは少なくとも2、好ましくは2~10、特に好ましくは3~5の整数であり、
RはC原子数1~8、好ましくはC原子数1~4のアルキル基であり、特に好ましくはメチル基である。
【0054】
特に好ましいのは、ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン(D3)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)及びデカメチルシクロペンタシロキサン(D5)からなる群から選択されるシロキサン、又はこれらの2つ以上の組み合わせである。シロキサンがD3、D4及びD5を含む場合、好ましくはD4が主成分である。好ましくは、主成分は、いずれの場合も二酸化ケイ素粉末の総量に基づいて、少なくとも70重量%、好ましくは少なくとも80重量%、例えば少なくとも90重量%又は少なくとも94重量%、特に好ましくは少なくとも98重量%の量で存在する。好ましいケイ素アルコキシドは、テトラメトキシシラン及びメチルトリメトキシシランである。二酸化ケイ素粉末の原料として好ましい無機ケイ素化合物は、ハロゲン化ケイ素、ケイ酸塩、炭化ケイ素及び窒化ケイ素である。二酸化ケイ素粉末の原料として特に好ましい無機ケイ素化合物は、四塩化ケイ素及びトリクロロシランである。
【0055】
好ましい実施形態によれば、二酸化ケイ素粉末は、シロキサン、ケイ素アルコキシド及びハロゲン化ケイ素からなる群から選択される化合物から調製することができる。
【0056】
好ましくは、二酸化ケイ素粉末は、ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン及びデカメチルシクロペンタシロキサン、テトラメトキシシラン及びメチルトリメトキシシラン、四塩化ケイ素及びトリクロロシラン又はこれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される化合物から、例えば四塩化ケイ素及びオクタメチルシクロテトラシロキサンから、特に好ましくはオクタメチルシクロテトラシロキサンから調製することができる。
【0057】
火炎加水分解によって四塩化ケイ素から二酸化ケイ素を製造するためには、様々なパラメータが重要である。適切な混合ガスの好ましい組成は、25~40体積%の範囲の火炎加水分解における酸素の含有量を含む。水素の含有量は、45~60体積%の範囲であることができる。四塩化ケイ素の含有量は、好ましくは5~30体積%であり、上記の体積%はすべてガス流の全体積に基づく。さらに好ましいのは、酸素、水素及びSiCl4の上述の体積比率の組み合わせである。火炎加水分解における火炎は、好ましくは1500~2500℃の範囲、例えば1600~2400℃の範囲、特に好ましくは1700~2300℃の範囲の温度を有する。好ましくは、火炎加水分解で生じた二酸化ケイ素一次粒子は、塊状物又は凝集体が形成される前に、二酸化ケイ素粉末として取り出される。
【0058】
上記二酸化ケイ素粉末は、以下の特徴の少なくとも1つ、例えば少なくとも2つ又は少なくとも3つ、又は少なくとも4つ、好ましくは少なくとも5つを有してもよい。
i. 35m2/g未満、例えば25~35m2/g、又は25~30m2/gの範囲のBET表面積、及び
ii. 0.01~0.3g/cm3、例えば0.02~0.2g/cm3の範囲、好ましくは0.03~0.15g/cm3の範囲、さらに好ましくは0.1~0.2g/cm3の範囲、又は0.05~0.1g/cm3の範囲のかさ密度、
iii. 100ppm未満、例えば50ppm未満又は30ppm未満、特に好ましくは1ppb~20ppmの範囲の炭素含有量、
iv. 500ppm未満、例えば300ppm未満又は150ppm未満、特に好ましくは1ppb~80ppmの範囲の塩素含有量、
v. 200ppb未満、例えば1~100ppbの範囲、特に好ましくは1~80ppbの範囲のアルミニウム含有量、
vi. 5ppm未満、例えば2ppm未満、特に好ましくは1ppb~1ppmの範囲のSi、O、H、C、Cl以外の原子の合計含有量、
vii. 粉末粒子の少なくとも70重量%が、10~100nmの範囲、例えば15~100nm未満の範囲、特に好ましくは20~100nm未満の範囲の一次粒子サイズを有する、
viii. 0.001~0.3g/cm3の範囲、例えば0.002~0.2g/cm3の範囲、又は0.005~0.1g/cm3、好ましくは0.01~0.06g/cm3の範囲、好ましくは0.1~0.2g/cm3の範囲、又は0.15~0.2g/cm3の範囲のタンピング密度、
ix. 5重量%未満、例えば0.25~3重量%の範囲、特に好ましくは0.5~2重量%の範囲の残留水分含有量。
上記重量%、ppm及びppbは、それぞれ二酸化ケイ素粉末の総重量に基づく。
【0059】
上記二酸化ケイ素粉末は、二酸化ケイ素を含む。好ましくは、二酸化ケイ素粉末は、いずれの場合も二酸化ケイ素粉末の総重量に基づいて、95重量%超、例えば98重量%超、又は99重量%超、又は99.9重量%超の割合の二酸化ケイ素を含む。特に好ましくは、二酸化ケイ素粉末は、二酸化ケイ素粉末の総重量に基づいて、99.99重量%超の割合の二酸化ケイ素を含む。
【0060】
二酸化ケイ素粉末は、好ましくは、いずれの場合も二酸化ケイ素粉末の総重量に基づいて、5ppm未満、例えば2ppm未満、特に好ましくは1ppm未満のSi、O、H、C、Cl以外の原子の含有量を有するが、この二酸化ケイ素粉末は、少なくとも1ppbの量のSi、O、H、C、Cl以外の原子の含有量を有することが多い。このSi、O、H、C、Cl以外の原子は、例えば、元素、イオン、又は分子、イオン若しくは錯体の一部として存在していてもよい。
【0061】
好ましくは、粉末粒子の数に基づいて上記二酸化ケイ素粉末の粉末粒子の少なくとも70%が100nm未満、例えば10~100nm又は15~100nmの範囲、特に好ましくは20~100nmの範囲の一次粒子サイズを有する。この一次粒子サイズは、ISO 13320:2009-10に準拠した動的光散乱法によって測定される。
【0062】
好ましくは、粉末粒子の数に基づいて上記二酸化ケイ素粉末の粉末粒子の少なくとも75%が100nm未満、例えば10~100nm又は15~100nmの範囲、特に好ましくは20~100nmの範囲の一次粒子サイズを有する。
【0063】
好ましくは、粉末粒子の数に基づいて上記二酸化ケイ素粉末の粉末粒子の少なくとも80%が100nm未満、例えば10~100nm又は15~100nmの範囲、特に好ましくは20~100nmの範囲の一次粒子サイズを有する。
【0064】
好ましくは、粉末粒子の数に基づいて上記二酸化ケイ素粉体の粉体粒子の少なくとも85%が100nm未満、例えば10~100nm又は15~100nmの範囲、特に好ましくは20~100nmの範囲の一次粒子サイズを有する。
【0065】
好ましくは、粉末粒子の数に基づいて上記二酸化ケイ素粉末の粉末粒子の少なくとも90%が100nm未満、例えば10~100nm又は15~100nmの範囲、特に好ましくは20~100nmの範囲の一次粒子サイズを有する。
【0066】
好ましくは、粉末粒子の数に基づいて上記二酸化ケイ素粉体の粉体粒子の少なくとも95%が100nm未満、例えば10~100nm又は15~100nmの範囲、特に好ましくは20~100nmの範囲の一次粒子サイズを有する。
【0067】
好ましくは、上記二酸化ケイ素粉末は、20~35m2/g、例えば25~35m2/g、又は25~30m2/gの範囲の比表面積(BET表面積)を有する。このBET表面積は、測定される表面でのガス吸収に基づく、DIN 66132に準拠したBrunauer、Emmet及びTeller(BET)の方法に従って測定される。
【0068】
好ましくは、上記二酸化ケイ素粉末は、7未満、例えば、3~6.5、又は3.5~6、又は4~5.5の範囲、特に好ましくは4.5~5の範囲のpH値を有する。このpH値は、シングルロッド測定電極(水中の4%二酸化ケイ素粉末)によって測定することができる。
【0069】
上記二酸化ケイ素粉末は、好ましくは、特徴の組み合わせa./b./c.又はa./b./f.又はa./b./g.、さらに好ましくは特徴の組み合わせa./b./c./f.又はa./b./c./g.又はa./b./f./g.、特に好ましくは特徴の組み合わせa./b./c./f./g.を有する。
【0070】
上記二酸化ケイ素粉末は、好ましくは、特徴の組み合わせa./b./c.を有し、BET表面積が20~35m2/gの範囲にあり、かさ密度が0.05~0.3g/mLの範囲にあり、炭素含有量が40ppm未満である。
【0071】
上記二酸化ケイ素粉末は、好ましくは、特徴の組み合わせa./b./f.を有し、BET表面積が20~35m2/gの範囲にあり、かさ密度が0.05~0.3g/mLの範囲にあり、アルミニウム以外の金属の合計含有量が1ppb~1ppmの範囲にある。
【0072】
上記二酸化ケイ素粉末は、好ましくは、特徴の組み合わせa./b./g.を有し、BET表面積が20~35m2/gの範囲にあり、かさ密度が0.05~0.3g/mLの範囲にあり、粉末粒子の少なくとも70重量%が20~100nm未満の範囲の一次粒子サイズを有する。
【0073】
上記二酸化ケイ素粉末は、好ましくは、特徴の組み合わせa./b./c./f.を有し、BET表面積が20~35m2/gの範囲にあり、かさ密度が0.05~0.3g/mLの範囲にあり、炭素含有量が40ppm未満であり、アルミニウム以外の金属の合計含有量が1ppb~1ppmの範囲にある。
【0074】
上記二酸化ケイ素粉体は、好ましくは、特徴の組み合わせa./b./c./g.を有し、BET表面積が20~35m2/gの範囲にあり、かさ密度が0.05~0.3g/mLの範囲にあり、炭素含有量が40ppm未満であり、粉末粒子の少なくとも70重量%が20~100nm未満の範囲の一次粒子サイズを有する。
【0075】
上記二酸化ケイ素粉末は、好ましくは、特徴の組み合わせa./b./f./g.を有し、BET表面積が20~35m2/gの範囲にあり、かさ密度が0.05~0.3g/mLの範囲にあり、アルミニウム以外の金属の合計含有量が1ppb~1ppmの範囲にあり、粉末粒子の少なくとも70重量%が20~100nm未満の範囲の一次粒子サイズを有する。
【0076】
二酸化ケイ素粉末は、好ましくは、特徴の組み合わせa./b./c./f./g.を有し、BET表面積が20~35m2/gの範囲にあり、かさ密度が0.05~0.3g/mLの範囲にあり、炭素含有量が40ppm未満であり、アルミニウム以外の金属の合計含有量が1ppb~1ppmの範囲にあり、粉末粒子の少なくとも70重量%が20~100nm未満の範囲の一次粒子サイズを有する。
【0077】
第1の態様の工程(i)~(v)は、以下のように読み取れる。
(i)二酸化ケイ素粉末を提供する工程、
(ii)液体を提供する工程、
(iii)上記二酸化ケイ素粉末を上記液体と混合して、スラリーを得る工程、
(iv)このスラリーを超音波で処理して、前駆体懸濁液を得る工程、
(v)この前駆体懸濁液の少なくとも一部を第1の多段式フィルタ装置に通す工程であって、
この第1の多段式フィルタ装置は、少なくとも第1、第2及び第3のフィルタ工程を有し、
各フィルタ工程は少なくとも1つのフィルタを有し、
第2のフィルタ工程は第1のフィルタ工程の下流にあり、第3のフィルタ工程は第2のフィルタ工程の下流にあり、
上記第1のフィルタ工程は5μm以上のフィルタ目開きを有し、
上記第2のフィルタ工程は0.5~5μmの範囲のフィルタ目開きを有し、
上記第3のフィルタ工程は1μm以下のフィルタ目開きを有し、
上記第1、第2及び第3のフィルタ工程から選択されるフィルタ工程の少なくとも1つは99.5%以上の分離率を有し、
分離率は、いずれの場合もフィルタに基づいて、ISO 16889に準拠して記載されており、
上記フィルタ目開きは、上記フィルタが保持する最小の粒子サイズが何であるかを示す。
【0078】
第1、第2及び第3のフィルタ工程と呼ばれるフィルタ工程の間に、さらなるフィルタ工程を設けてもよい。
【0079】
本発明の目的のために、液体は、1013hPaの圧力及び20℃の温度で液体である物質又は物質の混合物を意味すると解釈される。
【0080】
本発明の目的のために、「スラリー」は、少なくとも2つの物質の混合物であって、現在の条件を考慮すると、その混合物が少なくとも1種の液体及び少なくとも1種の固体を有するものを意味する。スラリー及び前駆体懸濁液は、当該方法の間に形成される。前駆体懸濁液もスラリーであるが、これは工程(iv)のように超音波で処理される。以下の記述が「スラリー」又は「前駆体懸濁液」に明示的に言及していない限り、すなわち一般に「スラリー」に言及している限り、記述は原則としてスラリー若しくは前駆体懸濁液、又はスラリー及び前駆体懸濁液の両方に適用されてもよい。これは、前駆体懸濁液を得るためにスラリーを処理する際に、以下に記載されるすべての特性が処理によって変化するとは限らないこと、又は特性が変化することがあってもその特性は概ね記載される特性の範囲内にとどまることを理由に正当化されうる。
【0081】
適切な液体は、当業者に公知であり本願に適していると思われるすべての材料及び材料の混合物である。好ましくは、液体は、有機液体及び水からなる群から選択される。好ましくは、上記二酸化ケイ素粉末の液体への溶解度は、0.5g/L未満、好ましくは0.25g/L未満、特に好ましくは0.1g/L未満であり、g/Lはそれぞれ、液体1リットル当たりの二酸化ケイ素粉末のグラム数として与えられている。
【0082】
好ましい適切な液体は、極性溶媒である。これらは、有機液体又は水でありることができる。好ましくは、液体は、水、メタノール、エタノール、n-プロパノール、iso-プロパノール、n-ブタノール、tert-ブタノール、及びそれらの2つ以上の混合物からなる群から選択される。特に好ましくは、上記液体は水である。特に好ましくは、液体は、蒸留水又は脱イオン水、例えば「超純水」も含む。このような水は、0.2μS/cm未満の電気伝導率を有する。
【0083】
好ましくは、上記二酸化ケイ素粉末は加工(処理)されてスラリーが得られる。二酸化ケイ素粉末は、室温では液体にほとんど溶解しないが、スラリーを得るために液体に高い重量比率で導入することができる。
【0084】
上記二酸化ケイ素粉末及び液体は、任意の方法で混合することができる。例えば、二酸化ケイ素粉末を液体に添加することができ、又は液体を二酸化ケイ素粉末に添加することができる。添加中又は添加後に、混合物をかき混ぜることができる。特に好ましくは、添加中及び添加後に混合物はかき混ぜられる。かき混ぜの例は、振盪及び撹拌、又はその両方の組み合わせである。好ましくは、上記二酸化ケイ素粉末は、撹拌下で液体に添加することができる。さらには、好ましくは、二酸化ケイ素粉末の一部が液体に添加され、このようにして得られた混合物がかき混ぜられ、その後、この混合物が二酸化ケイ素粉末の残りの部分と混合されてもよい。同様に、液体の一部が二酸化ケイ素粉末に添加され、このようにして得られた混合物がかき混ぜられ、その後、この混合物が液体の残りの部分と混合されてもよい。
【0085】
二酸化ケイ素粉末及び液体を混合することで、スラリーが得られる。好ましくは、このスラリーは、二酸化ケイ素粉末が液体中に均一に分布している懸濁液である。「均一」は、各位置におけるスラリーの密度及び組成が、いずれの場合もスラリーの総量に基づいて、平均密度及び平均組成から10%を超えて乖離していないことを意味する。液体中の二酸化ケイ素粉末の均一な分布は、上述のようなかき混ぜによって調製され、又は得られ、あるいはその両方が可能である。
【0086】
好ましくは、上記スラリーは、1000~2000g/Lの範囲、例えば1200~1900g/Lの範囲、又は1300~1800g/Lの範囲、特に好ましくは1400~1700g/Lの範囲のリットル当たりの重量を有する。リットル当たりの重量は、容積較正された容器の重量を測定することによって測定される。
【0087】
好ましい実施形態によれば、以下の特徴のうち少なくとも1つ、例えば少なくとも2つ、又は少なくとも3つ、又は少なくとも4つ、特に好ましくは少なくとも5つが当該スラリーに適用される。
a.)当該スラリーは、いずれの場合もスラリーの総重量に基づいて、少なくとも20重量%、例えば20~70重量%の範囲、又は30~50重量%の範囲、又は55~75重量%の範囲、特に60~70重量%の範囲の固形分を有する、
b.)当該スラリーは、3以上の範囲、例えば4超のpH値、又は4.5~8又は4.5~7の範囲のpH値を有し、このpH値は4重量%のスラリーに基づいて決定される、
c.)4重量%のスラリーにおいて、二酸化ケイ素粒子の少なくとも90%が、1nm~10μm未満の範囲、例えば200~300nmの範囲のDIN ISO 13320-1による粒子サイズを有する、
d.)5ppm以下のSi、O、H、C及び/又はCl以外の原子の含有量、
e.)当該スラリーがレオペクシー性である、
f.)当該スラリーがプラスチック表面に接触して搬送される、
g.)当該スラリーはせん断される(geschert)、
h.)当該スラリーは、0℃超、好ましくは5~35℃の範囲の温度を有する、
i.)当該スラリーは、500~2000mPasの範囲、例えば600~1700mPasの範囲、特に好ましくは650~1350mPasの範囲のDIN 53019-1(5rpm、30重量%)による粘度を有する。
【0088】
別の実施形態によれば、上記の特性a.)~j.)の少なくとも1つ、例えば少なくとも2つ、又は少なくとも3つ、又は少なくとも4つは、前駆体懸濁液にも適用される。
【0089】
4重量%の水性スラリーにおいて、二酸化ケイ素粒子は、好ましくは50~250nmの範囲、特に好ましくは100~150nmの範囲の粒子サイズD10を有する。4重量%の水性スラリーにおいて、二酸化ケイ素粒子は、好ましくは100~400nm、特に好ましくは200~250nmの範囲の粒子サイズD50を有する。4重量%の水溶液において、二酸化ケイ素粒子は、好ましくは200~600nmの範囲、特に好ましくは350~400nmの範囲の粒子サイズD90を有する。この粒子サイズは、DIN ISO 13320-1に準拠して決定される。粒子サイズD10、D50、D90又はこれらの2つ以上の組み合わせに関する記述は、前駆体懸濁液にも適用されてよい。
【0090】
粒子サイズは、二酸化ケイ素粉末中、スラリー中、前駆体懸濁液中、又は二酸化ケイ素造粒体中に存在する一次粒子から融合した粒子のサイズを意味すると解釈される。平均粒子サイズは、記載されている物質のすべての粒子サイズの算術平均を意味すると解釈される。D50値は、全粒子数に基づく粒子の50%が、記載された値よりも小さいことを示す。D10値は、全粒子数に基づく粒子の10%が記載された値よりも小さいことを示す。D90値は、全粒子数に基づく粒子の90%が記載された値よりも小さいことを示す。粒子サイズは、ISO 13322-2:2006-11に準拠して動的画像解析によって決定される。
【0091】
「等電点」は、ゼータ電位が値ゼロをとるpH値を意味すると解釈される。ゼータ電位は、ISO 13099-2:2012に準拠して決定される。
【0092】
スラリーのpH値は、好ましくは上述の範囲の値に設定される。スラリーのpH値を設定するために、例えばNaOH又はNH3等の物質が、スラリーを頻繁にかき混ぜながら、スラリー水溶液に好ましく添加されてもよい。スラリーのpH値について述べたことは、前駆体懸濁液のpH値にも適用されてよい。
【0093】
次の工程(iv)では、スラリーが超音波で処理されて前駆体懸濁液が得られる。超音波による処理には、当業者に公知であり、本願に適していると思われる原理で、任意の方法及び任意の超音波源が、原則として、選択されてもよい。
【0094】
本文脈において、超音波は、20~100kHzの範囲のピーク周波数を有する音である。これは、単周波数又は帯域幅の音であってもよい。後者の場合、処理に使用される超音波の周波数の少なくとも60%は、ピーク周波数±10Hzにわたる範囲にある。
【0095】
さらなる実施形態では、スラリーは、少なくとも10秒、例えば少なくとも20秒、少なくとも40秒、又は少なくとも60秒、120秒、180秒、若しくは240秒、超音波で処理される。
【0096】
さらなる実施形態では、スラリーは、最大1000秒、例えば最大500秒又は最大200秒、又は最大100秒、50秒若しくは20秒、超音波で処理される。
【0097】
さらなる実施形態では、スラリーは、10秒~1800秒、例えば30秒~1000秒、又は30秒~600秒、又は40秒~300秒の範囲で超音波で処理される。
【0098】
超音波で使用される電力密度は、超音波源の電力取込量をスラリーの体積で割ることによって得られる。さらなる実施形態では、使用される超音波源は、超音波発生装置又はアジテーターボールミル、あるいはその両方の組み合わせである。
【0099】
さらなる実施形態では、超音波処理中のスラリーの温度は、5~45℃の範囲、例えば10~40℃、又は15~40℃にある。
【0100】
さらなる実施形態では、超音波によってスラリーに作用する電力密度は、600W/リットル未満、例えば450W/リットル未満、又は約300W/リットルであり、電力密度はスラリーの体積に基づく。電力密度は、通常、100W/リットル以上である。
【0101】
さらなる実施形態では、超音波による電力密度は400~500W/リットルの範囲であり、処理時間は10~90秒の範囲である。
【0102】
別の実施形態では、超音波による電力密度は300~400W/リットルの範囲であり、処理時間は90~250秒の範囲である。
【0103】
次の工程(v)では、前駆体懸濁液の少なくとも一部を第1の多段式フィルタ装置に通し、前駆体懸濁液が多段式フィルタ装置を通過すると、二酸化ケイ素懸濁液が濾液として得られる。第1の多段式フィルタ装置は、少なくとも第1、第2及び第3のフィルタ工程を有する。第1の多段式フィルタ装置は、例えば、場合によっては第4及び第5、並びに場合によっては第6のようなさらなるフィルタ工程を有してもよい。多段式フィルタ装置内のフィルタ工程は、特定の順序で配置されている。それらは下流に向かって順に番号が付けられている。つまり、前駆体懸濁液は、最初に第1のフィルタ工程を通って流れ、その下流にある第2のフィルタ工程を通って流れる、等ということである。複数のフィルタを並列に配置することも想定でき、その場合、異なる量の懸濁液が、並列に配置されたフィルタをほぼ同時に流れる。複数のフィルタを1つのフィルタ工程内に並列に配置することで、フィルタ工程の使用寿命、若しくはフィルタ工程を通過する処理量、又はその両方を向上させることができる。上述した第1及び第2のフィルタ工程の間、又はここではさらに説明しない第2及び第3のフィルタ工程の間に、さらなるフィルタ工程が設けられてもよい。また、互いに独立した1つ以上のさらなるフィルタ工程が、ここではさらに説明しない第2及び第3のフィルタ工程の間に設けられてもよい。
【0104】
各フィルタ工程は、少なくとも1つのフィルタを含む。1つのフィルタ工程内では、単一のフィルタが備えられてもよい。また、複数のフィルタが備えられてもよい。これらは通常、並列に配置され、その場合、その複数のフィルタは通常、同じ特性のフィルタである。フィルタ工程内の流れを分割するために、複数のフィルタが、既に説明したように並列に配置されてもよい。これにより、フィルタ工程内での使用寿命、若しくはフィルタ工程を通過する処理量、又はその両方が向上することが多い。
【0105】
第1のフィルタ工程は、5μm以上、例えば5μm~15μm、又は約10μm又は約15μmのフィルタ目開きを有する。
【0106】
第2のフィルタ工程は、0.5~5μmの範囲、例えば0.5~2μmの範囲、又は約1μm又は約2μmのフィルタ目開きを有する。
【0107】
第3のフィルタ工程は、1μm以下、例えば、1μm又は0.5μmのフィルタ目開きを有する。
【0108】
第1、第2及び第3のフィルタ工程から選択されるフィルタ工程の少なくとも1つは、99.5%以上、例えば99.8%、又は99.9%の分離率を有する。
【0109】
フィルタ目開きは、フィルタが一定の効果で濾別できる最小の粒子サイズを意味する。以下、フィルタ目開きをxともいう。
【0110】
分離率εx(濾過率ともいう)は、すべての場合においてISO 16889:2008に準拠して記載されている。この規格では、βxの値はNhに対するNxの比として求められ、Nx=フィルタの上流側の粒子数であり、Nh=フィルタの下流側の粒子数であり、xはフィルタ目開きである。フィルタ目開きは、分離率が決定される粒子サイズ(μm)である。分離率はεxとも呼ばれ、(βx-1)/βxである。
【0111】
例として、フィルタの上流側に単位体積当たり10μm以上の粒子サイズの粒子が400個ある懸濁液に対する分離率ε10=75%は、このフィルタの下流側で、この懸濁液が単位体積当たり10μm以上の粒子サイズの粒子が100個存在することを意味する。この例では、懸濁液から採取した粒子の75%が10μm以上の粒子サイズを有していた。
【0112】
個々のフィルタについての分離率及びフィルタ目開きの定義を借りて、1つ以上の個々のフィルタを含むフィルタ工程について対応する詳細を作成してもよい。上述の範囲及び好ましい実施形態が適用される。
【0113】
第1のフィルタ装置は、以下の
(a)第1のフィルタ工程は、90%以下、例えば85%、80%若しくは75%、若しくは80~99.9%、若しくは80~95%の分離率を有する、
(b)第1フィルタ工程は、5μm以上、5~25μm、若しくは5~15μmの範囲、例えば10μm若しくは5μmのフィルタ目開きを有する、
(c)第2のフィルタ工程は、80%以上、例えば95%以上、例えば98%、99%、99.9%若しくは99.99%の分離率、若しくは80~99.9%若しくは80~95%の範囲の分離率を有する、
(d)第2のフィルタ工程は、0.5μm以上、例えば5~10μm、若しくは0.5~2μmの範囲の、例えば0.5μm、1.0μm、1.5μm、若しくは2.0μmフィルタ目開きを有する、
(e)第3のフィルタ工程は、80%以上、例えば99.5%以上、例えば99.9%若しくは99.99%、若しくは80~99.9%の範囲、若しくは95~99.9%の範囲の分離率を有する、
(f)第3のフィルタ工程は、0.5μm以上の範囲、例えば0.5~10μm、若しくは0.5~3μm、若しくは0.5~1μmの範囲のフィルタ目開きを有する、
のうち少なくとも1つ以上又はすべての特性、又は特性(a)~(e)の2つ以上の組み合わせによって特徴付けられてもよく、例として挙げた値の各組み合わせがとりわけ好ましい。1つの実施形態では、すべての特性(a)~(f)の組み合わせが有利であり、例えば、下記表1の例F1.3が挙げられる。
【0114】
好ましい実施形態では、第1のフィルタ工程は、5μm以上、例えば5μm~25μmの範囲のフィルタ目開き、及び80%~99.9%、好ましくは80%~95%の範囲の分離率を有する。
【0115】
さらなる実施形態では、第2のフィルタ工程は、0.5μm以上、例えば0.5μm~10μmの範囲のフィルタ目開き、及び80%~99.9%、好ましくは95%~99.9%の範囲の分離率を有する。
【0116】
さらなる実施形態では、第3フィルタ工程は、0.5μm以上、例えば0.5μm~10μmの範囲のフィルタ目開き、及び80%~99.9%、好ましくは95%~99.9%の範囲の分離率を有する。
【0117】
さらなる例によれば、第1のフィルタ装置は、以下の特性の組み合わせを特徴としてもよい。
【0118】
【0119】
さらなる実施形態では、第1の多段式フィルタ装置は、少なくとも1つのデプスフィルタを含む。本文脈において、デプスフィルタは、分離されるべき粒子がフィルタ内の一部分にわたって保持され、そのため、通常、フィルタ稼動時にフィルタケーキは形成されないフィルタを意味すると解釈される。一方、エリアフィルタ又は表層フィルタでは、分離されるべき粒子が表層フィルタの境界面で分離されるため、フィルタ稼働時にフィルタケーキが蓄積される。第1の多段式フィルタは、さらに複数のデプスフィルタを含んでいてもよい。また、第1の多段式フィルタ装置で使用されるすべてのフィルタがデプスフィルタであることも可能である。
【0120】
さらなる実施形態では、第1の多段式フィルタ装置の下流に、少なくとも1つのさらなる、好ましくは多段式フィルタ装置が採用される。2つ、3つ、4つ、5つ、及び最大10個以上の多段式フィルタ装置が、下流側に順番に配置されて提供されてもよい。
さらなる実施形態では、第2の多段式フィルタ装置は、少なくともデプスフィルタを備えている。
【0121】
さらなる実施形態では、第1のフィルタ装置の第2のフィルタ工程は、90%以下の分離率を持つ第1のフィルタと、95%以上の分離率を持つ少なくとも1つのさらなるフィルタとを少なくとも備える。
【0122】
さらなる実施形態では、第1の多段式フィルタの使用寿命は、少なくとも100リットル、例えば150リットル以上、又は250リットル以上、又は500リットル、又は800リットル以上、又は1000リットル以上であり、このリットルは、いずれの場合も第1の多段式フィルタ装置によって濾過された前駆体懸濁液の体積に基づく。
【0123】
さらなる実施形態では、第2の任意の多段式フィルタ装置の使用寿命は、少なくとも100リットル、例えば150リットル以上、又は250リットル以上、又は500リットルであり、このリットルは、いずれの場合も第2の多段式フィルタ装置によって濾過された前駆体懸濁液の体積に基づく。
【0124】
フィルタ装置に関連して、使用寿命は、フィルタ装置が目詰まりする前にフィルタ装置を通過できる懸濁液の量を意味する。目詰まりは、ポンプの出力が変わらない状態で、フィルタの上流側の圧力が新しいフィルタの少なくとも1.5倍に上昇することで認識できる。フィルタが目詰まりした場合は、作業を中断して、目詰まりしたフィルタを清掃するか、又は交換しなければならない。
【0125】
さらなる実施形態では、上記スラリーは、5重量%未満、2重量%未満、例えば0重量%(なし)の添加剤、特に安定化のための添加剤を有し、この重量%はスラリーの総重量に基づく。多くの場合、スラリーは少なくとも0.1重量%の添加剤、例えば0.1~5重量%の範囲の添加剤を有し、この重量%はスラリーの総重量に基づく。添加物の含有量は、濾過の過程でほとんど又は全く変化しない。従って、前駆体懸濁液及び当該方法によって得られる二酸化ケイ素懸濁液は、スラリーについて述べたような安定化のための添加剤含有量を有する。
【0126】
さらなる実施形態によれば、当該方法によって得られる二酸化ケイ素懸濁液は、以下の特性のうち少なくとも1つ、例えば少なくとも2つ又は少なくとも3つ又は少なくとも4つ、特に好ましくは少なくとも5つを有する。
A. 上記二酸化ケイ素懸濁液は、記載された試験条件下でレオペクシー性である、
B. 4重量%のスラリーにおいて、二酸化ケイ素懸濁液中の二酸化ケイ素粒子の少なくとも90%が、1nm~10μm未満の範囲、例えば200~300nmの範囲のDIN ISO 13320-1に準拠した粒子サイズを有する、
C. 上記二酸化ケイ素懸濁液は、3以上の範囲、例えば4超の範囲のpH値、又は4.5~8、若しくは4.5~7の範囲のpH値を有し、このpH値は4重量%のスラリーによって決定される、
D. 500ppm以下、350ppm以下、又は200ppm以下の二酸化ケイ素懸濁液の固形分中の塩素含有量であり、このppmは二酸化ケイ素懸濁液中の固形分の総量に基づく、
E. 200ppb以下、例えば1~100ppbの範囲、特に好ましくは1~80ppbの範囲のアルミニウム含有量であり、このppmは二酸化ケイ素懸濁液中の固形物の総量に基づく、
F. 5ppm以下のSi、O、H、C、Clの原子以外の原子を含むこと、
G. 上記二酸化ケイ素懸濁液は、いずれの場合もスラリーの総重量に基づいて、少なくとも20重量%、例えば20~70重量%の範囲、又は30~50重量%の範囲、又は55~75重量%の範囲、特に好ましくは60~70重量%の範囲の固形分を有する、
H. 上記二酸化ケイ素懸濁液は、0℃超、好ましくは5~35℃の範囲の温度を有する、
I. 上記二酸化ケイ素懸濁液は、500~2000mPasの範囲、例えば600~1700mPasの範囲、特に好ましくは650~1350mPasの範囲のDIN 53019-1(5rpm、30重量%)に準拠した粘度を有する。
【0127】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載の方法によって得られる二酸化ケイ素懸濁液である。これに関連して記載された実施形態も考慮される。
【0128】
本発明の第3の態様は、二酸化ケイ素造粒体の製造方法であって、第2の態様に係る二酸化ケイ素懸濁液、又は第1の態様に係る方法によって、特に工程(i)~(v)を実施することによって製造された二酸化ケイ素懸濁液から二酸化ケイ素造粒体が得られる方法である。
【0129】
当該二酸化ケイ素造粒体は、上記二酸化ケイ素懸濁液中に存在する二酸化ケイ素粒子よりも大きい粒子サイズを有する。二酸化ケイ素懸濁液の製造及び特性に関する第1及び第2の態様に関連して説明した実施形態は、第3の態様の実施形態でもある。
【0130】
当該二酸化ケイ素造粒体を製造するためには、原則として、粒子径の増大が達成される当業者に公知であるすべての方法が適している。
【0131】
二酸化ケイ素造粒体は、上記二酸化ケイ素粉末よりも、また上述の二酸化ケイ素懸濁液に含まれる二酸化ケイ素粒子よりも大きい粒子径を有する。
【0132】
当該二酸化ケイ素造粒体は、上記二酸化ケイ素粉末の粒子径よりも大きい粒子径を有する。当該二酸化ケイ素造粒体の粒子径は、好ましくは、上記二酸化ケイ素粉末の粒子径の500~50,000倍の範囲であり、例えば1,000~10,000倍、特に好ましくは2,000~8,000倍である。
【0133】
いずれの場合も当該二酸化ケイ素造粒体の総重量に基づいて、工程i.)で製造された二酸化ケイ素造粒体の少なくとも90%は焼成により製造された二酸化ケイ素粉末から製造されることが好ましく、例えば少なくとも95重量%又は少なくとも98重量%、特に好ましくは少なくとも99重量%以上は焼成により製造された二酸化ケイ素粉末から製造される。
【0134】
好ましくは、加工すると、顆粒を有する二酸化ケイ素造粒体が形成され、この顆粒は球状の形態を有しており、さらに好ましくは、加工は噴霧造粒又はロール造粒を含む。
【0135】
粉末は、1~100nm未満の範囲の一次粒子サイズを有する乾燥固体の粒子を意味すると解釈される。
【0136】
当該二酸化ケイ素造粒体は、二酸化ケイ素粉末を造粒することにより得られてもよい。二酸化ケイ素造粒体は、概して、3m2/g以上のBET比表面積、及び1.5g/cm3未満の密度を有する。造粒は、粉末粒子を顆粒に変換することを意味すると解釈される。造粒すると、複数の二酸化ケイ素粒子の塊がまとまり、「二酸化ケイ素顆粒」と呼ばれる大きい塊状物ができる。これらは、「二酸化ケイ素造粒体粒子」又は「造粒体粒子」と呼ばれることも多い。顆粒は全体として造粒体を形成し、例えば、二酸化ケイ素は「二酸化ケイ素造粒体」を形成する。二酸化ケイ素造粒体は、二酸化ケイ素粉末よりも大きい粒子径を有する。
【0137】
粉末を造粒体に変換する造粒のプロセスについては、後で詳しく説明する。
【0138】
本文脈において、二酸化ケイ素粒は、二酸化ケイ素体、特に石英ガラス体を粉砕することにより得られる二酸化ケイ素粒子を意味すると解釈される。二酸化ケイ素粒は、通常、1.2g/cm3超、例えば、1.2~2.2g/cm3の範囲、特に好ましくは、約2.2g/cm3の密度を有する。さらに好ましくは、二酸化ケイ素粒のBET表面積は、DIN ISO 9277:2014-01に準拠して測定して、通常1m2/g未満である。
【0139】
当業者に適した二酸化ケイ素粒子は、原則としてすべて二酸化ケイ素粒子と考えられてもよい。二酸化ケイ素造粒体及び二酸化ケイ素粒が好ましく選択される。
【0140】
粒子径又は粒子サイズは、式
【数1】
に従って等面積円相当径x
Aとして求められる粒子の直径を意味すると解釈され、上記式中、A
iは画像分析によって調べられた粒子の面積である。適切な決定方法は、例えば、ISO 13322-1:2014又はISO 13322-2:2009である。「…よりも大きい粒子サイズ」等の比較記述は、常に基準値が同じ手段で決定されることを意味する。
【0141】
二酸化ケイ素造粒体の顆粒は、好ましくは、球形の形態を有する。球形の形態は、粒子の形状が円形から楕円形であることを意味する。二酸化ケイ素造粒体の顆粒は、好ましくは0.7~1.3SPHT3の範囲の平均球形度、例えば0.8~1.2SPHT3の範囲の平均球形度、特に好ましくは0.85~1.1の範囲の平均球形度を有する。特性SPHT3については、試験方法に記載されている。
【0142】
さらに好ましくは、二酸化ケイ素造粒体の顆粒は、0.7~1.3Symm3の範囲の平均対称性、例えば0.8~1.2Symm3の範囲の平均対称性、特に好ましくは0.85~1.1Symm3の範囲の平均対称性を有する。平均対称性Symm3という特性については、試験方法に記載されている。
【0143】
造粒
当該二酸化ケイ素造粒体は、二酸化ケイ素粉末から造粒により得られる。造粒は、粉末粒子を顆粒に変換することを意味する。造粒の際には、複数の二酸化ケイ素粉末粒子の凝集により、「二酸化ケイ素顆粒」と呼ばれるより大きい塊状物(凝集体)が形成される。これらは、「二酸化ケイ素粒子」、「二酸化ケイ素造粒体粒子」又は「造粒体粒子」と呼ばれることも多い。顆粒はまとめて造粒体を構成し、例えば、二酸化ケイ素顆粒は「二酸化ケイ素造粒体」を構成する。
【0144】
本発明では、当業者に公知であり、当業者が二酸化ケイ素粉末の造粒に適していると思う任意の造粒プロセスを、原則として、選択することができる。造粒プロセスは、凝集造粒プロセス又はプレス造粒プロセスに分類することができ、さらに湿式造粒プロセス及び乾式造粒プロセスに分類することができる。公知の方法は、造粒プレートでのロール造粒、噴霧造粒、遠心粉砕、流動層造粒、凍結造粒、造粒ミルを用いた造粒プロセス、緻密化、ロールプレス、ブリケット加工、内側破砕(Schuelpenherstellung)、又は押し出しである。
【0145】
好ましくは、球状の形態を有する二酸化ケイ素造粒体が、上記処理で形成され、このプロセスは、さらに好ましくは、噴霧造粒又はロール造粒によって行われる。さらに好ましくは、球状の形態を有する顆粒を有する二酸化ケイ素造粒体は、最大で50%の顆粒、好ましくは最大で40%の顆粒、さらに好ましくは最大で20%の顆粒、より好ましくは0~50%、又は0~40%、又は0~20%、又は10~50%、10~40%、又は10~20%の球状の形態を有さない顆粒を含み、これらの割合はいずれの場合も造粒体中の顆粒の総数に基づく。球状の形態を有する顆粒は、本明細書に記載のSPHT3値を有する。
【0146】
噴霧乾燥
第3の態様の好ましい実施形態によれば、二酸化ケイ素造粒体は、二酸化ケイ素懸濁液の噴霧造粒によって得られる。噴霧造粒は、噴霧乾燥としても知られる。
【0147】
噴霧乾燥は、好ましくは、噴霧塔で行われる。噴霧乾燥のために、二酸化ケイ素懸濁液は、好ましくは、上昇した温度で加圧される。加圧された二酸化ケイ素懸濁液は、その後、ノズルを介して減圧され、噴霧塔に噴霧される。その後、液滴が形成され、それが瞬時に乾燥し、最初に乾燥した微小な粒子(「核」)が形成される。この微小な粒子は、粒子に当てられたガス流とともに、流動層を形成する。このようにして、微粒子は浮遊状態を維持し、さらなる液滴を乾燥させるための表面を形成することができる。
【0148】
二酸化ケイ素懸濁液が噴霧塔に噴霧される際に通るノズルは、好ましくは、噴霧塔の内部への入口を形成する。
【0149】
ノズルは、好ましくは、噴霧中に二酸化ケイ素懸濁液との接触面を有する。「接触面」は、噴霧中に二酸化ケイ素懸濁液と接触するノズルの領域を意味する。多くの場合、ノズルの少なくとも一部は、噴霧中に二酸化ケイ素懸濁液が案内される際に通る管として形成され、そのため、この中空管の内側が二酸化ケイ素懸濁液と接触するようになっている。
【0150】
上記接触面は、好ましくは、ガラス、プラスチック又はこれらの組み合わせを含む。好ましくは、接触面はガラス、特に好ましくは石英ガラスを含む。好ましくは、接触面はプラスチックを含む。原則として、プロセス温度で安定しており、二酸化ケイ素懸濁液に異物原子を通過させない、当業者に公知のすべてのプラスチックが適している。好ましいプラスチックはポリオレフィンであり、例えば、少なくとも1種のオレフィンを含むホモポリマー又はコポリマー、特に好ましくはポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブタジエン若しくはこれらの2つ以上の組み合わせを含むホモポリマー又はコポリマーである。好ましくは、接触面は、ガラス、プラスチック、又はこれらの組み合わせから作製されており、例えば、石英ガラス及びポリオレフィンからなる群から選択され、特に好ましくは、石英ガラス及びポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブタジエン、又はこれらの2つ以上の組み合わせを含むホモポリマー又はコポリマーからなる群から選択される。好ましくは、接触面は金属を含まず、特に、タングステン、チタン、タンタル、クロム、コバルト、ニッケル、鉄、バナジウム、ジルコニウム及びマンガンを含まない。
【0151】
原則として、接触面及びノズルのさらなる部分は、同じ材料又は異なる材料から作製されることが可能である。好ましくは、ノズルのさらなる部分は、接触面と同じ材料を含む。同様に、ノズルのさらなる部分が接触面とは異なる材料を含むことも可能である。例えば、接触面を適切な材料、例えば、ガラス又はプラスチックでコーティングすることができる。
【0152】
好ましくは、ノズルは、ノズルの総重量に基づいて、その70重量%超、例えば75重量%超、又は80重量%超、又は85重量%超、又は90重量%超、又は95重量%超、特に好ましくは99重量%超が、ガラス、プラスチック、又はガラス及びプラスチックの組み合わせからなる群から選択される要素で作られている。
【0153】
好ましくは、ノズルは、ノズルプレートを含む。このノズルプレートは、ガラス、プラスチック、又はガラス及びプラスチックの組み合わせから作製されていることが好ましい。好ましくは、ノズルプレートは、ガラス製であり、特に好ましくは石英ガラス製である。好ましくは、ノズルプレートはプラスチック製である。好ましいプラスチックは、ポリオレフィン、例えば、少なくとも1種のオレフィンを含むホモポリマー又はコポリマー、特に好ましくは、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブタジエン若しくはこれらの2つ以上の組み合わせを含むホモポリマー又はコポリマーである。好ましくは、ノズルプレートは、金属を含まず、特に、タングステン、チタン、タンタル、クロム、コバルト、ニッケル、鉄、バナジウム、ジルコニウム及びマンガンを含まない。
【0154】
好ましくは、ノズルはらせん状部分(Drallschnecke)を含む。このらせん状部分は、ガラス、プラスチック、又はガラス及びプラスチックの組み合わせから作製されていることが好ましい。好ましくは、らせん状部分は、ガラス製であり、特に好ましくは石英ガラス製である。好ましくは、らせん状部分はプラスチック製である。好ましいプラスチックは、ポリオレフィン、例えば、少なくとも1種のオレフィンを含むホモポリマー又はコポリマー、特に好ましくは、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブタジエン若しくはこれらの2つ以上の組み合わせを含むホモポリマー又はコポリマーである。好ましくは、らせん状部分は、金属を含まず、特に、タングステン、チタン、タンタル、クロム、コバルト、ニッケル、鉄、バナジウム、ジルコニウム及びマンガンを含まない。
【0155】
さらには、ノズルは、さらなる構成要素を含むことができる。好ましいさらなる構成要素は、ノズル本体、特に好ましくは上記らせん状部分及びノズルプレートを囲むノズル本体、クロスピース、並びにバッフルである。好ましくは、ノズルは、これらのさらなる構成要素の1つ以上、特に好ましくはすべてを含む。このさらなる構成要素は、互いに独立に、原則として、当業者に公知でありこの目的に適した任意の材料、例えば、金属を含む材料、ガラス、又はプラスチックから作製することができる。好ましくは、ノズル本体はガラス製であり、特に好ましくは石英ガラス製である。好ましくは、さらなる構成要素はプラスチック製である。好ましいプラスチックは、ポリオレフィン、例えば、少なくとも1種のオレフィンを含むホモポリマー又はコポリマー、特に好ましくは、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブタジエン若しくはこれらの2つ以上の組み合わせを含むホモポリマー又はコポリマーである。好ましくは、さらなる構成要素は、金属を含まず、特に、タングステン、チタン、タンタル、クロム、コバルト、ニッケル、鉄、バナジウム、ジルコニウム及びマンガンを含まない。
【0156】
好ましくは、噴霧塔は、ガス入口及びガス出口を含む。ガス入口から噴霧塔の内部にガスを導入し、ガス出口からガスを排出することができる。ノズルを介して噴霧塔内にガスを導入することも可能である。同様に、噴霧塔の出口を介してガスを放出することができる。さらには、好ましくは、ノズル及び噴霧塔のガス入口を介してガスを導入し、噴霧塔の出口及び噴霧塔のガス出口を介してガスを放出することができる。
【0157】
好ましくは、噴霧塔の内部には、空気、不活性ガス、少なくとも2種の不活性ガス又は空気と少なくとも1種の不活性ガスとの組み合わせ、好ましくは空気と少なくとも1種の不活性ガスとの組み合わせ、好ましくは2種の不活性ガスから選択される雰囲気が存在する。不活性ガスは、好ましくは、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン及びキセノンからなる群から選択される。例えば、噴霧塔の内部には、空気、窒素又はアルゴン、特に好ましくは空気が存在する。
【0158】
さらに好ましくは、噴霧塔内に存在する雰囲気は、ガス流の一部である。このガス流は、好ましくは、ガス入口を介して噴霧塔に導入され、ガス出口を介して放出される。ガス流の一部をノズルを介して導入し、ガス流の一部を固体出口を介して放出することも可能である。ガス流は、噴霧塔内でさらなる構成成分を得ることができる。これらは、噴霧乾燥中の二酸化ケイ素懸濁液に由来し、ガス流に移行することができる。
【0159】
好ましくは、乾燥したガス流が噴霧塔に供給される。乾燥したガス流は、噴霧塔に設定された温度での相対湿度が凝縮点より低いガス又は混合ガスを意味する。相対空気湿度100%は、20℃での水分含有量が17.5g/m3に相当する。ガスは、好ましくは150~450℃、例えば200~420℃、又は300~400℃、特に好ましくは320~400℃の範囲の温度に予熱される。
【0160】
噴霧塔の内部は、温度制御可能であることが好ましい。好ましくは、噴霧塔の内部の温度は、550℃まで、例えば300~500℃、特に好ましくは320~450℃の値を有する。
【0161】
好ましくは、上記ガス流は、150~450℃、例えば200~420℃、又は300~400℃、特に好ましくは350~400℃の範囲のガス入口での温度を有する。
【0162】
固体出口、ガス出口、又はその両方の場所で放出されるガス流は、好ましくは170℃未満、例えば50~150℃、特に好ましくは100~130℃の温度を有する。
【0163】
さらに、導入時のガス流の温度と排出時のガス流の温度との差は、好ましくは100~330℃、例えば150~300℃の範囲である。
【0164】
このようにして得られた二酸化ケイ素顆粒は、二酸化ケイ素粉末の個々の粒子の塊状物として存在する。二酸化ケイ素粉末の個々の粒子は、塊状物の中で引き続き認識可能である。この二酸化ケイ素粉末の粒子の平均粒子サイズは、好ましくは10~1000nmの範囲、例えば20~500nm、30~250nm、35~200nm、又は40~150nmの範囲、特に好ましくは50~100nmの範囲である。これらの粒子の平均粒子サイズは、DIN ISO 13320-1に準拠して測定される。
噴霧乾燥は、助剤の存在下で実施することができる。原則として、当業者に公知であり、本願に適していると思われるすべての材料を助剤として採用することができる。助剤としては、例えば、いわゆる結合剤(バインダ)を考えることができる。適切な結合材料の例は、酸化カルシウム等の金属酸化物、炭酸カルシウム等の金属炭酸塩、並びにセルロース、セルロースエーテル、デンプン及びデンプン誘導体等の多糖類である。
【0165】
特に好ましくは、本発明の文脈において、噴霧乾燥は助剤を使用せずに行われる。
【0166】
好ましくは、二酸化ケイ素造粒体を噴霧塔から取り出す前、取り出した後、又は取り出しの前後に、その一部が分離される。分離のためには、当業者に公知であり適切と思われるすべてのプロセスを考慮することができる。好ましくは、分離は、スクリーニング(選別)又は篩い分けによって行われる。
【0167】
好ましくは、噴霧乾燥によって形成された二酸化ケイ素造粒体を噴霧塔から取り出す前に、50μm未満の粒子サイズ、例えば70μm未満の粒子サイズ、特に好ましくは90μm未満の粒子サイズを有する粒子がスクリーニングによって分離される。このスクリーニングは、好ましくは噴霧塔の下部領域、特に好ましくは噴霧塔の出口の上方に配置されたサイクロン配置構成を用いて行われる。
【0168】
好ましくは、噴霧塔から二酸化ケイ素造粒体を取り出した後、1000μmを超える粒子サイズ、例えば700μmを超える粒子サイズ、特に好ましくは500μmを超える粒子サイズを有する粒子が篩い分けによって分離される。粒子の篩い分けは、原則として、当業者に公知でありこの目的に適したすべてのプロセスに従って行うことができる。好ましくは、この篩い分けは振動シュート(斜路)を用いて行われる。
【0169】
一実施形態によれば、二酸化ケイ素懸濁液をノズルを介して噴霧塔で噴霧乾燥することは、以下の特性のうち少なくとも1つ、例えば2つ又は3つ、特に好ましくはすべてを特徴とする。
a]噴霧塔での噴霧造粒、
b]ノズルでの二酸化ケイ素懸濁液の圧力が40barを超えず、例えば1.3~20bar、1.5~18bar、2~15bar、若しくは4~13bar、又は特に好ましくは5~12barの範囲にあり、この圧力は絶対的に(p=0hPaに対する相対値)記載されている、
c]噴霧塔に入るときの液滴の温度が、10~50℃の範囲、好ましくは15~30℃の範囲、特に好ましくは18~25℃の範囲である、
d]噴霧塔に面したノズルの側の温度が、100~450℃の範囲、例えば250~440℃の範囲、特に好ましくは320~430℃の範囲にある、
e]ノズルを通る二酸化ケイ素懸濁液の処理量が、0.05~1m3/hの範囲、例えば0.1~0.7m3/h又は0.2~0.5m3/hの範囲、特に好ましくは0.25~0.4m3/hの範囲である、
f]二酸化ケイ素懸濁液は、いずれの場合もこの二酸化ケイ素懸濁液の総重量に基づいて、少なくとも40重量%、例えば50~80重量%の範囲、又は55~75重量%の範囲、特に好ましくは60~70重量%の範囲の固形分を有する、
g]10~100kg/分の範囲、例えば20~80kg/分又は30~70kg/分の範囲、特に好ましくは40~60kg/分の範囲の、噴霧塔に入るガス流、
h]噴霧塔に入るときのガス流の温度が、100~450℃の範囲、例えば250~440℃の範囲、特に好ましくは320~430℃の範囲である、
i]噴霧塔を出るときのガス流の温度が170℃未満である、
j]ガスは、空気、窒素及びヘリウム、又はこれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択され、好ましくは空気である、
k]噴霧塔から取り出されたとき、造粒体は、いずれの場合も噴霧乾燥で生じた二酸化ケイ素造粒体の総重量に基づいて、5重量%未満、例えば3重量%未満、若しくは1重量%未満、又は0.01~0.5重量%の範囲、特に好ましくは0.1~0.3重量%の範囲の残留水分を有する、
l]いずれの場合も噴霧乾燥で生じた二酸化ケイ素造粒体の総重量に基づいて、噴霧造粒体の少なくとも50重量%が、1~100秒の範囲、例えば10~80秒の時間、特に好ましくは25~70秒の時間をかけて飛行時間を完了する、
m]噴霧乾燥によって生じた二酸化ケイ素造粒体の総重量に基づいて噴霧造粒体の少なくとも50重量%が、20m超、例えば30m超、若しくは50m超、若しくは70m超、若しくは100m超、若しくは150m超、若しくは200m超、又は20~200m、若しくは10~150m若しくは20~100mの範囲、特に好ましくは30~80mの範囲を飛行する、
n]噴霧塔は円筒形の形状を有する、
o]噴霧塔の高さが10m超、例えば15m超、若しくは20m超、若しくは25m超、若しくは30m超、又は10~25mの範囲、特に好ましくは15~20mの範囲である、
p]噴霧塔から造粒体を取り出す前に、サイズが90μm未満の粒子を濾別する、
q]噴霧塔から造粒体を取り出した後、好ましくは振動シュート上で、サイズが500μm超の粒子を濾別する、
r]二酸化ケイ素懸濁液の液滴が、鉛直方向に対して30~60°の角度、特に好ましくは鉛直方向に対して45°の角度でノズルから出る。
【0170】
鉛直とは、重力のベクトルの方向を意味する。
【0171】
飛行経路は、二酸化ケイ素懸濁液の液滴が噴霧塔のガスチャンバ内のノズルから出て顆粒を形成してから、飛行及び落下の動作が完了するまでにわたる経路を意味する。飛行及び落下の動作は、顆粒が噴霧塔の床に衝突するか、既に噴霧塔の床に転がっている他の顆粒と衝突するか、いずれか先に起こることで終了するのが通例である。
【0172】
飛行時間は、顆粒が噴霧塔内の上記飛行経路を辿るのに必要な期間である。好ましくは、ダイ顆粒は、噴霧塔内でらせん状の飛行経路を有する。
【0173】
好ましくは、噴霧乾燥で生成された二酸化ケイ素造粒体の総重量に基づいて、噴霧造粒体の少なくとも60重量%が、20m超、例えば30m超、若しくは50m超、若しくは70m超、若しくは100m超、若しくは150m超、若しくは200m超、又は20~200mの範囲、若しくは10~150m、若しくは20~100mの範囲、特に好ましくは30~80mの範囲の平均飛行経路を辿る。
【0174】
好ましくは、噴霧乾燥で生成された二酸化ケイ素造粒体の総重量に基づいて、噴霧造粒体の少なくとも70重量%が、20m超、例えば30m超、若しくは50m超、若しくは70m超、若しくは100m超、若しくは150m超、若しくは200m超、又は20~200mの範囲、若しくは10~150m、若しくは20~100mの範囲、特に好ましくは30~80mの範囲の平均飛行経路を辿る。
【0175】
好ましくは、噴霧乾燥で生成された二酸化ケイ素造粒体の総重量に基づいて、噴霧造粒体の少なくとも80重量%が、20m超、例えば30m超、若しくは50m超、若しくは70m超、若しくは100m超、若しくは150m超、若しくは200m超、又は20~200mの範囲、若しくは10~150m、若しくは20~100mの範囲、特に好ましくは30~80mの範囲の平均飛行経路を辿る。
【0176】
好ましくは、噴霧乾燥で生成された二酸化ケイ素造粒体の総重量に基づいて、噴霧造粒体の少なくとも90重量%が、20m超、例えば30m超、若しくは50m超、若しくは70m超、若しくは100m超、若しくは150m超、若しくは200m超、又は20~200mの範囲、若しくは10~150m、若しくは20~100mの範囲、特に好ましくは30~80mの範囲の平均飛行経路を辿る。
【0177】
ロール造粒
第1の態様の別の実施形態によれば、二酸化ケイ素造粒体は、二酸化ケイ素懸濁液のロール造粒によって得られる。
【0178】
ロール造粒は、昇温した状態でガスの存在下で二酸化ケイ素懸濁液を撹拌することにより行われる。好ましくは、ロール造粒は、撹拌ツールを備えた撹拌容器内で行われる。好ましくは、撹拌容器は、撹拌ツールと反対の向きに回転する。好ましくは、撹拌容器はさらに、二酸化ケイ素粉末を撹拌容器に導入する際に通すことができる入口、二酸化ケイ素造粒体を取り出す際に通すことができる出口、ガス入口及びガス出口を含む。
【0179】
二酸化ケイ素懸濁液の撹拌には、好ましくはピン型撹拌ツールが用いられる。ピン型撹拌ツールは、撹拌ツールの回転軸と同軸上に長手方向軸を持つ複数の細長いピンを備えた撹拌ツールを意味する。ピンの軌跡は、好ましくは回転軸を中心とした同軸の円を描く。
【0180】
好ましくは、上記二酸化ケイ素懸濁液は、7未満のpH値、例えば、2~6.5の範囲のpH値、特に好ましくは、4~6の範囲のpH値に設定される。pH値の設定には、好ましくは無機酸が使用され、例えば、塩酸、硫酸、硝酸及びリン酸からなる群から選択される酸、特に好ましくは塩酸が使用される。
【0181】
好ましくは、撹拌容器内には、空気、不活性ガス、少なくとも2種の不活性ガス又は空気と少なくとも1種の不活性ガスとの組み合わせ、好ましくは2種の不活性ガスから選択される雰囲気が存在する。不活性ガスは、好ましくは、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン及びキセノンからなる群から選択される。例えば、撹拌容器内には、空気、窒素又はアルゴン、特に好ましくは空気が存在する。
【0182】
さらには、好ましくは、撹拌容器内に存在する雰囲気は、ガス流の一部である。ガス流は、好ましくは、ガス入口を介して撹拌容器に導入され、ガス出口を介して放出される。ガス流は、撹拌容器内でさらなる構成成分を得ることができる。これらは、ロール造粒における二酸化ケイ素懸濁液に由来し、ガス流に移行することができる。
【0183】
好ましくは、乾燥したガス流が撹拌容器に導入される。乾燥したガス流は、撹拌容器に設定された温度での相対湿度が凝縮点より低いガス又は混合ガスを意味する。ガスは、好ましくは、50~300℃、例えば80~250℃、特に好ましくは100~200℃の範囲の温度に予熱される。
【0184】
好ましくは、採用した二酸化ケイ素懸濁液1kgあたり、毎時10~150m3のガス、例えば毎時20~100m3のガス、特に好ましくは毎時30~70m3のガスが撹拌容器に導入される。
【0185】
混合中、二酸化ケイ素懸濁液はガス流によって乾燥され、二酸化ケイ素顆粒が形成される。形成された造粒体は、撹拌容器から取り出される。
【0186】
好ましくは、取り出された造粒体はさらに乾燥される。好ましくは、乾燥は、例えば、ロータリーキルンで連続的に行われる。乾燥のための好ましい温度は、80~250℃の範囲、例えば100~200℃の範囲、特に好ましくは120~180℃の範囲である。
【0187】
本発明の文脈では、プロセスに関して「連続的」は、そのプロセスが連続的に操作できることを意味する。つまり、プロセスの実行中に、プロセスに関与する材料の導入と取り出しを継続的に行うことができる。このためにプロセスを中断する必要はない。
【0188】
物体の属性としての「連続的」は、例えば「連続炉」に関連して、その物体で行われるプロセス、又はその物体で行われるプロセス工程が連続的に行われうるように、この物体が構成されていることを意味する。
【0189】
ロール造粒から得られた造粒体は、篩い分けすることができる。篩い分けは、乾燥の前又は後に行われる。好ましくは、造粒体は乾燥前にふるいにかけられる。好ましくは、50μm未満の粒子サイズ、例えば80μm未満の粒子サイズ、特に好ましくは100μm未満の粒子サイズを有する顆粒がふるい分けられる。さらには、好ましくは、900μmを超える粒子サイズ、例えば700μmを超える粒子サイズ、特に好ましくは500μmを超える粒子サイズの顆粒がふるい分けられる。より大きい粒子の篩い分けは、原則として、当業者に公知でありこの目的に適した任意のプロセスに従って実施することができる。好ましくは、大きい粒子の篩い分けは、振動シュートによって行われる。
【0190】
一実施形態によれば、ロール造粒は、以下の特徴のうち少なくとも1つ、例えば2つ又は3つ、特に好ましくはすべてを特徴とする。
[a]造粒は、回転する撹拌容器内で行われる、
[b]造粒は、二酸化ケイ素懸濁液1kgあたり、1時間あたり10~150kgのガス流量で行われる、
[c]導入時のガス温度は40~200℃である、
[d]100μm未満の粒子サイズ及び500μmを超える粒子サイズを有する顆粒がふるい分けられる、
[e]形成された顆粒は、15~30重量%の残留水分含有量を有する、
[f]形成された顆粒は、80~250℃で、好ましくは連続乾燥管で、特に好ましくは残留水分含有量が1重量%未満になるまで乾燥される。
【0191】
好ましくは、造粒、好ましくは噴霧造粒又はロール造粒によって得られた二酸化ケイ素顆粒は、処理された後で石英ガラス体を得るために加工される。この前処理は、石英ガラス体を得るための処理を容易にするか、又は得られる石英ガラス体の特性に影響を与える様々な目的を果たすことができる。例えば、二酸化ケイ素造粒体Iは、緻密化、精製、表面改質又は乾燥させることができる。
【0192】
第1の態様のさらなる実施形態によれば、当該二酸化ケイ素造粒体は、以下の特性を有する。
A)23°~26°の範囲の安息角、
B)20m2/g~50m2/gの範囲のBET表面積、及び
C)0.5~1.2g/cm3の範囲、例えば0.6~1.1g/cm3の範囲、特に好ましくは0.7~1.0g/cm3の範囲のかさ密度、
D)50~500μmの範囲の平均粒子サイズ、
E)50ppm未満の炭素含有量、
F)500ppm未満、例えば350ppm以下、又は200ppm以下の塩素含有量、
G)20ppb未満のアルミニウム含有量、
H)0.7~1.2g/cm3の範囲のタンピング密度、
I)0.1~2.5ml/gの範囲、例えば0.15~1.5ml/gの範囲、特に好ましくは0.2~0.8ml/gの範囲の細孔容積、
J)23~26°の範囲の安息角、
K)50~150μmの範囲の粒子サイズ分布D10、
L)150~300μmの範囲の粒子サイズ分布D50、
M)250~620μmの範囲の粒子サイズ分布D90、
上記ppm及びppbは、いずれの場合も二酸化ケイ素造粒体の総重量に基づく。
【0193】
二酸化ケイ素造粒体は、好ましくは、いずれの場合も二酸化ケイ素造粒体の総重量に基づいて、1000ppb未満、例えば500ppb未満、特に好ましくは100ppb未満のアルミニウム以外の金属の金属含有量を有するが、ただし、当該二酸化ケイ素造粒体は、少なくとも1ppbのアルミニウム以外の金属の含有量を有することが多い。二酸化ケイ素造粒体は、いずれの場合も二酸化ケイ素造粒体の総重量に基づいて、1ppm未満、好ましくは40~900ppbの範囲、例えば50~700ppbの範囲、特に好ましくは60~500ppbの範囲のアルミニウム以外の金属の金属含有量を有することが多い。このような金属は、例えば、ナトリウム、リチウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、ゲルマニウム、銅、モリブデン、チタン、鉄及びクロムである。これらは、例えば、元素として、イオンとして、又は分子、若しくはイオン若しくは錯体の一部として存在していてもよい。
【0194】
当該二酸化ケイ素造粒体は、例えば分子、イオン又は元素の形で、他の構成成分を含んでもよい。二酸化ケイ素造粒体は、いずれの場合も二酸化ケイ素造粒体の総重量に基づいて、好ましくは5ppm未満、例えば3ppm未満、特に好ましくは1ppm未満のSi、O、H、C、Cl以外の原子を含む。Si、O、H、C、Cl以外の原子の量で表される他の構成成分は、少なくとも1ppbの量で含まれる。この他の構成成分は、特に、炭素、フッ化物、ヨウ化物、臭化物、リン、又はこれらの少なくとも2つの混合物からなる群から選択されてもよい。
【0195】
当該二酸化ケイ素造粒体は、いずれの場合も二酸化ケイ素造粒体の総重量に基づいて、好ましくは10ppm未満、例えば8ppm未満、又は5ppm未満、特に好ましくは4ppm未満の炭素を含む。二酸化ケイ素造粒体は、少なくとも1ppbの量の炭素を含むことが多い。
【0196】
当該二酸化ケイ素造粒体は、いずれの場合も二酸化ケイ素造粒体の総重量に基づいて、好ましくは100ppm未満、例えば80ppm未満、特に好ましくは70ppm未満の他の構成成分を含むが、当該二酸化ケイ素造粒体は、少なくとも1ppbの量の他の構成成分を含むことが多い。
【0197】
本発明の第4の態様は、石英ガラス体の製造方法であって、少なくとも
i.)第3の態様に記載の方法又はこの文脈で言及された実施形態の1つに記載された方法によって二酸化ケイ素造粒体を提供する工程と、
ii.)この二酸化ケイ素造粒体からガラス融液を形成する工程と、
iii.)このガラス融液の少なくとも一部から石英ガラス体を形成する工程と
を含む方法である。
【0198】
工程i.)における提供は、当該方法に適する当業者に公知である任意の方法及びやり方で行われてもよい。これは、例えば、第3の態様に係る二酸化ケイ素造粒体を作るために既に説明した方法によって、例えば、噴霧造粒又はロール造粒によって行われてもよい。そうして得られた二酸化ケイ素造粒体は、炉に供給され、工程ii.)でガラス融液へと溶融される。当該二酸化ケイ素造粒体は、本発明の第1の態様の工程(i)~(v)を実施した後、本発明の第3の態様に係る方法を実施することによって製造されてもよい。両方法で好ましい実施形態は、ここでも好ましい。
【0199】
工程ii.)
工程ii.)によれば、二酸化ケイ素造粒体からガラス融液が形成される。通常、二酸化ケイ素造粒体は、ガラス融液が得られるまで加温される。ガラス融液を得るための二酸化ケイ素造粒体の加温は、原則として、この目的のために当業者に公知の任意の方法で実施することができる。
【0200】
ガラス融液の調製のための竪型構成(V-Zug)
例えば加温による二酸化ケイ素造粒体からのガラス融液の形成は、連続プロセスで行うことができる。これにより、好ましくは、二酸化ケイ素造粒体を炉に連続的に導入するか、又はガラス融液を炉から連続的に取り出すか、又はその両方を行うことができる。さらに、二酸化ケイ素造粒体が炉に連続的に導入され、ガラス融液が炉から連続的に取り出される。
【0201】
このためには、少なくとも1つの入口及び少なくとも1つの出口を有する炉が、原則として適している。入口は、二酸化ケイ素及び任意にさらなる材料を炉内に導入する際に通ることができる開口部を意味する。出口は、二酸化ケイ素の少なくとも一部を炉から取り出す際に通ることができる開口部を意味する。炉は、例えば、鉛直方向又は水平方向に配置することができる。好ましくは、炉は鉛直方向(竪型)に配置される。好ましくは、少なくとも1つの入口が、少なくとも1つの出口の上方に配置される。炉の備品及び特徴部に関連する「上方」は、特に入口及び出口に関連して、別のものの「上方」に配置されている備品又は特徴部が、絶対高さのゼロよりも高い位置にあることを意味する。「鉛直」は、炉の入口と出口を直接結ぶ線と重力方向とのずれが30°以下であることを意味する。
【0202】
第1の態様の1つの実施形態によれば、炉は、吊り下げ式の金属シート坩堝を含む。吊り下げ式の金属シート坩堝には、当該二酸化ケイ素造粒体が導入され、加温されてガラス融液が得られる。金属シート坩堝は、少なくとも1枚の圧延金属シートを含む坩堝を意味する。好ましくは、金属シート坩堝は、複数の圧延金属シートを有する。これらのシートは、リベット等の適切な締結具によって接合されている。吊り下げ式金属シート坩堝は、炉内に吊り下げ位置で配置される上述の金属シート坩堝を意味する。
【0203】
吊り下げ式の金属シート坩堝は、原則として、当業者に公知の二酸化ケイ素の溶融に適したすべての材料から作製されることが可能である。好ましくは、吊り下げ式金属シート坩堝の金属シートは、いわゆる焼結材料、例えば焼結金属を含む。焼結金属は、金属粉末の焼結により得られる金属又は合金を意味する。焼結金属は、例えば圧延によって金属シートに再成形することができる。金属シート坩堝は、好ましくは2枚以上の、又は複数の金属シートを含む。これらの金属シートは圧延した焼結金属から作製することができる。
【0204】
好ましくは、金属シート坩堝の金属シートは、耐火金属からなる群から選択される少なくとも1つの元素を含む。耐火金属は、第4族(Ti、Zr、Hf)の金属、第5族(V、Nb、Ta)の金属、及び第6族(Cr、Mo、W)の金属を意味する。
【0205】
好ましくは、金属シート坩堝の金属シートは、モリブデン、タングステン又はこれらの組み合わせからなる群から選択される焼結金属を含む。さらには、好ましくは、金属シート坩堝の金属シートは、少なくとも1種のさらなる耐火金属、特に好ましくは、レニウム、オスミウム、イリジウム、ルテニウム、又はこれらの2つ以上の組み合わせを含む。
【0206】
好ましくは、金属シート坩堝の金属シートは、モリブデンと耐火金属との合金、又はタングステンと耐火金属との合金を含む。特に好ましい合金金属は、レニウム、オスミウム、イリジウム、ルテニウム、又はこれらの2つ以上の組み合わせである。さらなる例によれば、金属シート坩堝の金属シートは、モリブデンとタングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、ルテニウム、又はこれらの2つ以上の組み合わせとの合金である。例えば、金属シート坩堝の金属シートは、タングステンとモリブデン、レニウム、オスミウム、イリジウム、ルテニウム、又はこれらの2つ以上の組み合わせとの合金であることができる。
【0207】
好ましくは、金属シート坩堝の上述の金属シートは、耐火金属で被覆することができる。一例によれば、金属シート坩堝の金属シートは、レニウム、オスミウム、イリジウム、ルテニウム、モリブデン若しくはタングステン、又はこれらの2つ以上の組み合わせで被覆されている。
【0208】
好ましくは、金属シート及びコーティングは異なる組成を有する。例えば、モリブデン金属シートは、レニウム、オスミウム、イリジウム、ルテニウム、タングステン、又はこれらの2つ以上の組み合わせの1つ以上のコーティングで被覆することができる。別の例によれば、タングステン金属シートは、レニウム、オスミウム、イリジウム、ルテニウム、モリブデン、又はこれらの2つ以上の組み合わせの1つ以上の層で被覆される。さらなる例によれば、金属シート坩堝の金属シートは、レニウムと合金化されたモリブデン、又はレニウムと合金化されたタングステンから作製され、坩堝の内側がレニウム、オスミウム、イリジウム、ルテニウム、又はこれらの2つ以上の組み合わせを含む1つ以上の層で被覆されていることが可能である。
【0209】
好ましくは、吊り下げ式金属シート坩堝の金属シートは、理論密度の95%以上、例えば、95%~98%、又は96%~98%の密度を有する。より好ましいのは、より高い理論密度、特に98~99.95%の範囲の密度である。基本材料の理論密度は、細孔のない100%緻密な材料の密度に相当する。金属シート坩堝の金属シートの密度が理論密度の95%超であることは、例えば、焼結金属を焼結して、その後、焼結した金属を緻密化(圧縮)することで得られる。特に好ましくは、焼結金属を焼結し、圧延して金属シートを得て、その金属シートを加工して坩堝を得ることにより、金属シート坩堝を得ることができる。
【0210】
好ましくは、金属シート坩堝は、少なくとも蓋、壁、及び底板を有する。好ましくは、吊り下げ式の金属シート坩堝は、以下の特徴のうち少なくとも1つ、例えば少なくとも2つ、少なくとも3つ、又は少なくとも4つ、特に好ましくは少なくとも5つ、又はすべてを有する。
(a)少なくとも1つ、例えば1つよりも多い又は少なくとも2つ又は少なくとも3つ又は少なくとも5つ、特に好ましくは3つ又は4つの金属シートの層、
(b)少なくとも1枚の金属シート、例えば少なくとも3枚、又は少なくとも4枚、又は少なくとも6枚、又は少なくとも8枚、又は少なくとも12枚、又は少なくとも15枚、又は少なくとも16枚、又は少なくとも20枚の金属シート、特に好ましくは12枚又は16枚の金属シート、
(c)2つの金属シート部品の間の少なくとも1つの結合部、例えば、吊り下げ式金属シート坩堝の同じ2つの金属シート部品の間、又は複数の異なる金属シート部品の間の少なくとも2つ、又は少なくとも5個、又は少なくとも10個、又は少なくとも18個、又は少なくとも24個、又は少なくとも36個、又は少なくとも48個、又は少なくとも60個、又は少なくとも72個、又は少なくとも48個、又は少なくとも96個、又は少なくとも120個、又は少なくとも160個、特に好ましくは36個又は48個の結合部、
(d)吊り下げ式金属シート坩堝の金属シート部品は、例えば、少なくとも1つの接合部を深絞りすることによってリベット止めされ、例えば、深絞りと金属シートのカラー付け又は皿穴との組み合わせによって接合され、ねじ止めされ、又は、例えば、電子ビーム溶接及び溶接箇所の焼結によって溶接され、特に好ましくはリベット止めされる、
(e)吊り下げ式金属シート坩堝の金属シートは、物理的密度の増加を伴う成形工程、好ましくは焼結された金属又は焼結された合金の成形によって得られ、さらには、好ましくは、この成形は圧延である、
(f)銅、アルミニウム、鋼、鉄、ニッケル、又は耐火金属、例えば坩堝材料のハンガーアセンブリ、好ましくは、銅又は鋼の水冷ハンガーアセンブリ、
(g)ノズル、好ましくは、坩堝に永続的に固定されたノズル、
(h)マンドレル、例えば、ピンでノズルに固定されたマンドレル、支持ロッドで蓋に固定されたマンドレル、又は支持ロッドで坩堝の下に取り付けられたマンドレル、
(i)例えば充填パイプの形で、又は別の入口としての少なくとも1つのガス入口、
(j)例えば、坩堝の蓋又は壁に設けられた別個の出口としての少なくとも1つのガス出口、
(k)冷却ジャケット、好ましくは水冷式ジャケット、
(l)外側の断熱材、好ましくは酸化ジルコニウム製の外側の断熱材。
【0211】
吊り下げ式金属シート坩堝は、原則として、当業者に公知であり当業者には適切と思われる任意の方法で加熱することができる。例えば、吊り下げ式金属シート坩堝は、電気的な発熱体(抵抗)によって、又は誘導によって加熱することができる。抵抗加熱の場合、金属シート坩堝の固体表面は外側から暖められ、そこから内側にエネルギーを供給する。
【0212】
誘導加熱の場合、エネルギーはコイルを使って溶融坩堝の側壁に直接結合され、そこから坩堝の内側に伝達される。抵抗加熱の場合、エネルギーは輻射を介して結合され、それによって固体表面が外部から暖められ、そこからエネルギーが内部に伝達される。好ましくは、溶融坩堝は誘導加熱される。
【0213】
本発明の1つの実施形態によれば、特にバルク材料を溶融するための溶融坩堝へのエネルギー伝達は、溶融坩堝の中に、又は溶融坩堝の上に向けられた、例えばバーナー炎等の炎を用いて、溶融坩堝、若しくはその中に存在するバルク材料、又はその両方を加温することによっては行われない。さらなる実施形態によれば、バルク材を溶融させるためにはバーナーは使用されない。
【0214】
吊り下げ配置により、吊り下げ式の金属シート坩堝は炉内で移動することができる。好ましくは、坩堝を少なくとも部分的に炉内に移動させたり、炉から出したりすることができる。炉内に異なる加熱ゾーンが存在する場合、それらの温度プロファイルが炉内に存在する坩堝に伝達される。炉内の坩堝の位置を変えることにより、複数の加熱ゾーン、変化する加熱ゾーン、又は複数の変化する加熱ゾーンを坩堝内に作り出すことができる。
【0215】
金属シート坩堝はノズルを有する。このノズルはノズル材料から作製されている。好ましくは、ノズル材料は、例えば、いずれの場合もノズル材料の理論密度に基づいて、95%超、例えば98~100%、特に好ましくは99~99.999%の範囲の密度を有する予備緻密化された材料を含む。好ましくは、ノズル材料は、耐火金属、例えばモリブデン、タングステン又はこれらとさらなる耐火金属との組み合わせを含む。モリブデンは、特に好ましいノズル材料である。好ましくは、モリブデンを含むノズルは、理論密度の100%の密度を有することができる。
【0216】
好ましくは、金属シート坩堝に含まれる底板は、金属シート坩堝の側面よりも厚い。好ましくは、底板は、金属シート坩堝の側面と同じ材料から作製されている。好ましくは、金属シート坩堝の底板は、圧延金属シートではない。底板は、いずれも金属シート坩堝の壁と比較して、例えば、1.1~5000倍の厚さ、2~1000倍の厚さ、4~500倍の厚さ、特に好ましくは5~50倍の厚さである。
【0217】
本発明の第1の態様の好ましい実施形態によれば、炉は、吊り下げ式又は立設式の焼結坩堝を含む。二酸化ケイ素造粒体は、吊り下げ式又は立設式の焼結坩堝に導入され、加温されてガラス融液が得られる。
【0218】
焼結坩堝は、少なくとも1種の焼結金属を含みかつその金属の理論密度の96%以下の密度を有する焼結材料から作製された坩堝を意味する。焼結金属は、金属粉末の焼結により得られる合金の金属を意味する。焼結坩堝内の焼結材料及び焼結金属は圧延されていない。
【0219】
好ましくは、焼結坩堝の焼結材料は、その焼結材料の理論密度の85%以上の密度、例えば、85%~95%、又は90%~94%、特に好ましくは91%~93%の密度を有する。
【0220】
焼結材料は、原則として、当業者に公知であり二酸化ケイ素を溶融するのに適した任意の材料から作製することができる。好ましくは、焼結材料は、耐火金属、黒鉛、又は黒鉛箔で裏打ち(ライニング)された材料からなる群から選択される要素の少なくとも1つから作製される。
【0221】
好ましくは、焼結材料は、モリブデン、タングステン及びこれらの組み合わせからなる群から選択される第1の焼結金属を含む。さらには、好ましくは、焼結材料は、特に好ましくはモリブデン、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、ルテニウム、又はこれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される、第1の焼結金属とは異なる少なくとも1種のさらなる耐火金属をさらに含む。
【0222】
好ましくは、焼結材料は、モリブデンと耐火金属との合金、又はタングステンと耐火金属との合金を含む。特に好ましい合金金属は、レニウム、オスミウム、イリジウム、ルテニウム、又はこれらの2つ以上の組み合わせである。さらなる例によれば、焼結材料は、モリブデンとタングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、ルテニウム又はこれらの2つ以上の組み合わせとの合金を含む。例えば、焼結材料は、タングステンとモリブデン、レニウム、オスミウム、イリジウム、ルテニウム又はこれらの2つ以上の組み合わせとの合金を含むことができる。
【0223】
さらなる実施形態によれば、上述の焼結材料は、耐火金属、特にレニウム、オスミウム、イリジウム、ルテニウム又はこれらの2つ以上の組み合わせを含むコーティングを含むことができる。一例によれば、このコーティングは、レニウム、オスミウム、イリジウム、ルテニウム、モリブデン、タングステン、又はこれらの2つ以上の組み合わせを含む。
【0224】
好ましくは、焼結材料及びそのコーティングは、異なる組成を有する。一例は、レニウム、オスミウム、イリジウム、ルテニウム、タングステン、又はこれらの2つ以上の組み合わせの1つ以上の層で被覆されたモリブデンを含む焼結材料である。別の例によれば、タングステンを含む焼結材料が、レニウム、オスミウム、イリジウム、ルテニウム、モリブデン、又はこれらの2つ以上の組み合わせの1つ以上の層で被覆される。別の例によれば、焼結材料は、レニウムと合金化されたモリブデン、又はレニウムと合金化されたタングステンから作製され、坩堝の内側がレニウム、オスミウム、イリジウム、ルテニウム、又はこれらの2つ以上の組み合わせを含む1つ以上の層で被覆されていることが可能である。
【0225】
好ましくは、焼結坩堝は、焼結材料を焼結して鋳型を得ることによって作製される。焼結坩堝は、全体として型に入れて作ることができる。焼結坩堝の個々の部品を金型で作り、その後加工して焼結坩堝を得ることも可能である。好ましくは、坩堝は、例えば、底板及び1つ以上の側面部品等の複数の部品から作られる。側面部品は、好ましくは、坩堝の外周に基づいて一体的に(1つのピースで)作られる。好ましくは、焼結坩堝は、複数の側面部品を重ねて配置して作製することができる。好ましくは、焼結坩堝の側面部品は、ねじ込み又はさね継ぎ接続によって密封される。ねじ込みは、好ましくは、境界部にねじ山を有する側面部品を作製することによって達成される。さね継ぎ接続の場合、接合される2つの側面部品はそれぞれ、境界部に切り欠きを有し、そこに接続する第3の部品としてさね材が導入され、坩堝の壁の平面に垂直な形で閉じた接続が形成されるようになっている。特に好ましくは、焼結坩堝は複数の側面部品、例えば2つ以上の側面部品、特に好ましくは3つ以上の側面部品から作製される。特に好ましくは、吊り下げ式焼結坩堝の部品はねじ止めされている。特に好ましくは、立設式の焼結坩堝の部品は、さね継ぎ接続によって接続されている。
【0226】
底板は、原則として、当業者に公知でありこの目的に適した任意の手段によって、坩堝の壁と接続することができる。好ましい実施形態によれば、底板は、外向きのねじを有し、底板は、ねじ込まれることによって、坩堝の壁と接続される。さらなる実施形態によれば、底板は、ねじによって、坩堝の壁と接続される。さらなる実施形態によれば、底板は、例えば、底板を坩堝壁の内向きのフランジ上に置くことによって、焼結坩堝内に懸架される。さらなる実施形態によれば、坩堝の壁の少なくとも一部と、緻密化された底板とが一体的に焼結される。特に好ましくは、吊り下げ式焼結坩堝の底板及び坩堝壁はねじ止めされる。特に好ましくは、立設式焼結坩堝の底板及び坩堝壁はさね継ぎ接続により接続される。
【0227】
好ましくは、焼結坩堝に含まれる底板は、側面よりも厚く、例えば、1.1~20倍の厚さ、又は1.2~10倍の厚さ、又は1.5~7倍の厚さ、特に好ましくは2~5倍の厚さである。好ましくは、側面の肉厚は、焼結坩堝の周方向及び高さ方向にわたって一定である。
【0228】
焼結坩堝はノズルを有する。このノズルはノズル材料から作製されている。好ましくは、ノズル材料は、例えば、いずれの場合もノズル材料の理論密度に基づいて、95%超、例えば98~100%、特に好ましくは99~99.999%の範囲の密度を有する予備緻密化された材料を含む。好ましくは、ノズル材料は、耐火金属、例えばモリブデン、タングステン又はこれらと耐火金属との組み合わせを含む。モリブデンは、特に好ましいノズル材料である。好ましくは、モリブデンを含むノズルは、理論密度の100%の密度を有することができる。
【0229】
吊り下げ式焼結坩堝は、当業者に公知であり当業者には適切と思われる任意の方法で加熱することができる。吊り下げ式焼結坩堝は、例えば、誘導加熱又は抵抗加熱することができる。誘導加熱の場合、エネルギーは、焼結坩堝の側壁に設けられたコイルを介して直接導入され、そこから坩堝の内部に供給される。抵抗加熱の場合、エネルギーは輻射によって導入され、それによって固体表面が外側から加温され、そこからエネルギーが内部に供給される。好ましくは、焼結坩堝は誘導加熱される。抵抗加熱の場合、エネルギーは輻射によって導入され、それによって固体表面が外側から加温さられ、そこからエネルギーが内部に供給される。好ましくは、焼結坩堝は誘導加熱される。
【0230】
本発明の一実施形態によれば、特にバルク材料を溶融するための溶融坩堝へのエネルギー伝達は、溶融坩堝の中に、又は溶融坩堝の上に向けられた、例えばバーナー炎等の炎を用いて、溶融坩堝、若しくはその中に存在するバルク材料、又はその両方を加温することによっては行われない。
【0231】
好ましくは、焼結坩堝は、1つ以上の加熱ゾーンを有し、例えば、1つ又は2つ又は3つ又は3つを超える数の加熱ゾーン、好ましくは1つ又は2つ又は3つの加熱ゾーン、特に好ましくは1つの加熱ゾーンを有する。焼結坩堝の各加熱ゾーンは、同じ温度にすることも、異なる温度に上げることもできる。例えば、すべての加熱ゾーンを1つの温度に上げることができ、又はすべての加熱ゾーンを異なる温度に上げることができ、又は2つ以上の加熱ゾーンを1つの温度に上げ、1つ以上の加熱ゾーンを互いに独立に他の温度に上げることができる。好ましくは、すべての加熱ゾーンが異なる温度に上げられる。例えば、加熱ゾーンの温度は、二酸化ケイ素造粒体の材料搬送の方向に上昇する。
【0232】
吊り下げ式焼結坩堝は、炉内に吊り下げ式に配置された上述の焼結坩堝を意味する。
【0233】
好ましくは、吊り下げ式焼結坩堝は、以下の特徴のうち少なくとも1つ、例えば少なくとも2つ、少なくとも3つ、又は少なくとも4つ、特に好ましくはすべてを有する。
{a}吊り下げアセンブリ、好ましくは高さ調整可能な吊り下げアセンブリ、
{b}側面部品として互いに密封された少なくとも2つのリング、好ましくは側面部品として互いにねじ止めされた少なくとも2つのリング、
{c}ノズル、好ましくは、坩堝に永続的に取り付けられたノズル、
{d}マンドレル、例えば、ピンでノズルに固定されたマンドレル、支持ロッドで蓋に固定されたマンドレル、又は支持ロッドで坩堝の下に取り付けられたマンドレル、
{e}例えば充填パイプの形態の、又は特に好ましくは充填パイプの形態の別個の入口としての少なくとも1つのガス入口、
{f}例えば、坩堝の蓋又は壁に設けられている少なくとも1つのガス出口、
{g}冷却ジャケット、特に好ましくは水冷式ジャケット、
{h}坩堝の外側、例えば冷却ジャケットの外側に設けられた断熱材、好ましくは酸化ジルコニウム製の断熱層。
【0234】
吊り下げアセンブリは、好ましくは、吊り下げ式焼結坩堝の建設中に設置される吊り下げアセンブリであり、例えば、坩堝の一体的な構成要素として設けられる吊り下げアセンブリであり、特に好ましくは、坩堝の一体的な構成要素として焼結材料から設けられる吊り下げアセンブリである。さらには、好ましくは、吊り下げアセンブリは、焼結坩堝上に設置される吊り下げアセンブリであって、焼結材料とは異なる材料、例えば、アルミニウム、鋼、鉄、ニッケル又は銅、好ましくは銅から作製された吊り下げアセンブリであり、特に好ましくは、焼結坩堝上に設置される冷却された、例えば水冷式の銅製の吊り下げアセンブリである。
【0235】
吊り下げアセンブリにより、吊り下げ式焼結坩堝は炉内で移動することができる。好ましくは、坩堝を少なくとも部分的に炉に導入したり、炉から引き出したりすることができる。炉内に異なる加熱ゾーンが存在する場合、それらの温度プロファイルが炉内に存在する坩堝に伝達される。炉内の坩堝の位置を変えることにより、複数の加熱ゾーン、変化する加熱ゾーン、又は複数の変化する加熱ゾーンを坩堝内に作り出すことができる。
【0236】
立設式焼結坩堝は、これまでに記載されたタイプの焼結坩堝であって、炉の中に立って配置されているものを意味する。
【0237】
好ましくは、立設式焼結坩堝は、以下の特徴のうち少なくとも1つ、例えば少なくとも2つ、少なくとも3つ、又は少なくとも4つ、特に好ましくはすべてを有する。
/a/立設エリアとして形成された領域、好ましくは、坩堝の底面に立設エリアとして形成された領域、さらに好ましくは、坩堝の底板に立設エリアとして形成された領域、特に好ましくは、坩堝の底面の外縁に立設エリアとして形成された領域、
/b/側面部品として互いに密封された少なくとも2つのリング、好ましくは側面部品としてさね継ぎ接続によって互いに密封された少なくとも2つのリング、
/c/ノズル、好ましくは、坩堝に、特に好ましくは、坩堝の底面の、立設エリアとして形成されていない領域に永続的に取り付けられたノズル、
/d/マンドレル、例えば、ピンでノズルに固定されたマンドレル、ピンで蓋に固定されたマンドレル、又は支持ロッドで坩堝の下から取り付けられたマンドレル、
/e/例えば、充填管の形の、又は別個の入口としての少なくとも1つのガス入口、
/f/例えば、蓋又は坩堝の壁に設けられた別個の出口としての少なくとも1つのガス出口、
/g/蓋。
【0238】
立設式焼結坩堝は、好ましくは、炉内と炉の下の領域でガス区画が分離されている。炉の下の領域は、ノズルの下の領域であって、取り出されたガラス融液が存在する領域を意味する。好ましくは、ガス区画は、坩堝が立っている表面によって隔てられている。炉の内壁と坩堝の外壁との間の炉のガス区画に存在するガスは、炉の下の領域には漏れない。取り出されたガラス融液は、炉のガス区画からのガスに接触しない。好ましくは、焼結坩堝を立てて配置した炉から取り出されたガラス融液及びそれから形成された石英ガラス体は、焼結坩堝を吊り下げて配置した炉から取り出された融液及びそれから形成された石英ガラス体よりも表面純度が高い。
【0239】
好ましくは、坩堝は、二酸化ケイ素造粒体が坩堝の入口及び炉の入口を通って坩堝に入ることができ、ガラス融液が坩堝の出口及び炉の出口を通って取り出されるように、炉の入口及び出口と接続される。
【0240】
好ましくは、坩堝は、少なくとも1つの入口に加えて、ガスを導入し取り出す際に使用できる少なくとも1つの開口部、好ましくは複数の開口部を含む。好ましくは、坩堝は、少なくとも2つの開口部を有し、少なくとも1つはガスの入口として使用でき、少なくとも1つはガスの出口として使用できるようにされる。好ましくは、少なくとも1つの開口部をガス入口として使用し、少なくとも1つの開口部をガス出口として使用することで、坩堝内にガス流が生じる。
【0241】
二酸化ケイ素造粒体は、坩堝の入口から坩堝内に導入され、その後、坩堝内で加温される。加温は、ガスの存在下で、又は2種以上のガスの混合ガスの存在下で行うことができる。さらには、加温中に、二酸化ケイ素造粒体に付着した水が気相に移行し、さらなるガスを形成することができる。このガス又は2種以上のガスの混合物は、坩堝のガス区画に存在する。坩堝のガス区画は、坩堝内の固相又は液相によって占有されない領域を意味する。適切なガスは、例えば、水素、不活性ガス、及びそれらの2つ以上である。不活性ガスは、2400℃の温度まで、坩堝内に存在する材料と反応しないガスを意味する。好ましい不活性ガスは、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン及びキセノンであり、特に好ましくはアルゴン及びヘリウムである。好ましくは、加温は還元性雰囲気中で行われる。これは、水素、又は水素と不活性ガスとの組み合わせ、例えば、水素とヘリウムとの組み合わせ、水素と窒素との組み合わせ、又は水素とアルゴンとの組み合わせ、特に好ましくは水素とヘリウムとの組み合わせによって提供することができる。
【0242】
好ましくは、空気、酸素及び水を、水素、少なくとも1種の不活性ガス、又は水素と少なくとも1種の不活性ガスとの組み合わせと交換する、少なくとも部分的なガス交換が、二酸化ケイ素造粒体上で行われる。この少なくとも部分的なガス交換は、二酸化ケイ素造粒体の導入時に、又は加温前に、又は加温中に、又は上述の活動の少なくとも2つの間に、二酸化ケイ素造粒体上で実施される。好ましくは、二酸化ケイ素造粒体は、水素及び少なくとも1種の不活性ガス、例えばアルゴン又はヘリウムのガス流中で溶融するまで加温される。
【0243】
好ましくは、炉は少なくとも1つのガス出口を有し、好ましくはその中にある溶融坩堝も同様であり、炉に導入されたガス及び炉の運転中に形成されたガスがそれを通して除去される。炉はさらに、少なくとも1つの専用ガス入口を持つことができる。代替的又は追加的に、例えば二酸化ケイ素粒子と一緒に、又は二酸化ケイ素粒子の前に、又は二酸化ケイ素粒子の後に、又は上記の可能性の2つ以上の組み合わせによって、固体入口とも呼ばれる入口を通してガスを導入することができる。
【0244】
炉及びガス流は、好ましくは、第1の態様の文脈で説明した特徴を特徴とする。好ましくは、ガス流は、入口を介して炉にガスを導入し、出口を介して炉からガスを除去することによって形成される。「ガス置換率」は、単位時間当たりに出口を通って炉から排出されるガスの量を意味する。ガス置換率は、ガス流のスループット又は体積のスループットとも呼ばれる。
【0245】
好ましくは、ガス流のガス置換率は200~3000L/h、例えば200~2000L/h、特に好ましくは200~1000L/hの範囲である。
【0246】
二酸化ケイ素造粒体を溶融するための炉温度は、好ましくは1700~2500℃の範囲であり、例えば1900~2400℃の範囲であり、特に好ましくは2100~2300℃の範囲である。
【0247】
好ましくは、炉での保持時間は、1時間~50時間、例えば1~30時間、特に好ましくは5~20時間の範囲である。本発明の文脈では、保持時間は、プロセスを実施する際に、本発明に準拠した方法で、ガラス融液が形成された溶融炉から溶融炉の充填量を取り出すために必要な時間を意味する。充填量は、溶融炉内の二酸化ケイ素の全質量である。これに関連して、二酸化ケイ素は、固体として及びガラス融液として存在することができる。
【0248】
好ましくは、炉温度は、材料搬送方向の長さにわたって上昇する。好ましくは、炉の温度は、材料搬送方向の長さにわたって、少なくとも100℃、例えば少なくとも300℃、少なくとも500℃、又は少なくとも700℃、特に好ましくは少なくとも1000℃上昇する。好ましくは、炉の中の最高温度は1700~2500℃、例えば1900~2400℃、特に好ましくは2100~2300℃である。炉温度の上昇は、均一に、又は温度プロファイルに従って進行することができる。
【0249】
好ましくは、ガラス融液が炉から取り出される前に炉温度は低下する。好ましくは、ガラス融液が炉から取り出される前に、炉温度は、50~500℃、例えば100℃又は400℃、特に好ましくは150~300℃低下する。好ましくは、取り出し時のガラス融液の温度は、1750~2100℃、例えば1850~2050℃、特に好ましくは1900~2000℃である。
【0250】
好ましくは、炉温度は、材料搬送方向の長さにわたって上昇し、ガラス融液が炉から取り出される前に低下する。これに関連して、炉の温度は、材料搬送方向の長さにわたって、好ましくは少なくとも100℃、例えば少なくとも300℃、少なくとも500℃、又は少なくとも700℃、特に好ましくは少なくとも1000℃上昇する。好ましくは、炉の中の最高温度は1700~2500℃、例えば1900~2400℃、特に好ましくは2100~2300℃である。好ましくは、ガラス融液が炉から取り出される前に、炉温度は50~500℃、例えば100℃又は400℃、特に好ましくは150~300℃低下する。
【0251】
予熱部
好ましくは、上記炉は、通路によって互いに結合された少なくとも第1のチャンバ及びさらなるチャンバを有し、この第1及び第2のチャンバは異なる温度を有し、第1のチャンバの温度は、さらなるチャンバの温度よりも低い。さらなるチャンバの1つでは、当該二酸化ケイ素造粒体からガラス融液が形成される。このチャンバは、以下では溶融チャンバと呼ばれる。また、ダクトを介して溶融チャンバに接合されているが、溶融チャンバよりも上流に位置するチャンバを予熱部と呼ぶ。一例は、少なくとも1つの出口が溶融チャンバの入口に直接接続されているものである。また、上記の配置構成は、独立した炉でも可能であり、その場合、溶融チャンバは溶融炉となる。しかしながら、本明細書では、用語「溶融炉」は、「溶融チャンバ」という用語と同一であると解釈されてよい。従って、溶融炉に関して述べられていることは、溶融チャンバにも適用されるとみなしてよく、その逆もまた同様である。用語「予熱部」は、どちらの場合も同じものを意味する。
【0252】
好ましくは、二酸化ケイ素造粒体は、炉に入る際に、20~1300℃の範囲の温度を有する。
【0253】
第1の実施形態によれば、当該二酸化ケイ素造粒体は、溶融チャンバに入る前に予備加熱(テンパリング)されない。当該二酸化ケイ素造粒体は、例えば、炉に入る際に20~40℃の範囲、特に好ましくは20~30℃の温度を有する。二酸化ケイ素造粒体IIが工程i.)に従って提供される場合、二酸化ケイ素造粒体IIは、好ましくは、炉に入る際に20~40℃の範囲、特に好ましくは20~30℃の範囲の温度を有する。
【0254】
別の実施形態によれば、当該二酸化ケイ素造粒体は、炉に入る前に、40~1300℃の範囲の温度にまで予備加熱される。予備加熱は、温度を選択した値に設定することを意味する。予備加熱は、原則として、当業者の公知であり二酸化ケイ素造粒体の予備加熱について公知である任意の方法で行うことができる。例えば、予備加熱は、溶融チャンバとは別に配置された炉、又は溶融チャンバに接続された炉で実施することができる。
【0255】
好ましくは、予備加熱は、溶融チャンバに接続されたチャンバで行われる。それゆえ、好ましくは、炉は、二酸化ケイ素を予備加熱することができる予熱部を備える。好ましくは、予熱部自体がフィード炉(連続式炉、Durchlaufofen)であり、特に好ましくはロータリーキルンである。フィード炉は、動作時にフィード炉の入口からフィード炉の出口まで二酸化ケイ素を移動させる、加熱されたチャンバを意味する。好ましくは、出口は溶融炉の入口に直接接続されている。このようにして、二酸化ケイ素造粒体は、さらなる中間工程又は中間手段なしに、予熱部から溶融炉に到着することができる。
【0256】
予熱部が、少なくとも1つのガス入口及び少なくとも1つのガス出口を含むことがさらに好ましい。ガスは、ガス入口から内部、予熱部のガスチャンバに到達することができ、ガスはガス出口から除去されることが可能である。二酸化ケイ素造粒体用の予熱部の入口を介して、予熱部にガスを導入することも可能である。ガスを予熱部の出口から除去し、その後、二酸化ケイ素造粒体から分離することも可能である。さらには、好ましくは、ガスは、二酸化ケイ素造粒体用の入口及び予熱部のガス入口を介して導入され、予熱部の出口及び予熱部のガス出口を介して除去されることが可能である。
【0257】
好ましくは、ガス流は、ガス入口及びガス出口を使用して、溶融炉の予熱部、特にその中に存在する坩堝の中で生成される。適切なガスは、例えば、水素、不活性ガス、及びそれらの2つ以上である。好ましい不活性ガスは、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン及びキセノンであり、特に好ましくは窒素及びヘリウムである。好ましくは、予熱部には還元性雰囲気が存在する。これは、水素、又は水素と不活性ガスとの組み合わせ、例えば水素とヘリウムとの組み合わせ、又は水素と窒素との組み合わせ、特に好ましくは水素とヘリウムとの組み合わせの形で提供することができる。さらには、好ましくは、予熱部には酸化性雰囲気が存在する。これは、好ましくは、酸素、又は酸素と1つ以上のさらなるガスとの組み合わせの形で提供することができ、空気が特に好ましい。さらに好ましくは、二酸化ケイ素が予熱部で、減圧下で予備加熱されることが可能である。
【0258】
例えば、当該二酸化ケイ素造粒体は、炉に入る際に、100~1100℃又は300~1000℃又は600~900℃の範囲の温度を有することができる。
【0259】
一実施形態によれば、炉は少なくとも2つのチャンバを含む。好ましくは、炉は、第1のチャンバ及び少なくとも1つのさらなるチャンバを含む。第1のチャンバ及びさらなるチャンバは、通路によって互いに接続されている。
【0260】
上記少なくとも2つのチャンバは、原則として、任意の方法で炉内に配置することができ、好ましくは鉛直方向又は水平方向に、特に好ましくは鉛直方向に配置される。好ましくは、これらのチャンバは、第1の態様によるプロセスを実施する際に、二酸化ケイ素造粒体が第1のチャンバを通過し、その後、さらなるチャンバで加熱されてガラス融液が得られるような方法で炉内に配置される。さらなるチャンバは、好ましくは、溶融炉及びその中に配置された坩堝の上述の特徴を有する。
【0261】
好ましくは、各チャンバは、入口と出口とを含む。好ましくは、炉の入口は、通路を介して第1のチャンバの入口に接続されている。好ましくは、炉の出口は、通路を介してさらなるチャンバの出口に接続されている。好ましくは、第1のチャンバの出口は、通路を介してさらなるチャンバの入口に接続されている。
【0262】
好ましくは、上記複数のチャンバは、二酸化ケイ素造粒体が炉の入口を介して第1のチャンバ内に到達できるように配置される。好ましくは、それらのチャンバは、二酸化ケイ素ガラス融液が炉の出口を介してさらなるチャンバから取り出されることができるように配置される。特に好ましくは、二酸化ケイ素造粒体が炉の入口を通って第1のチャンバに到達し、二酸化ケイ素ガラス融液が炉の出口を通ってさらなるチャンバから取り出されることが可能である。
【0263】
造粒体又は粉末の形態の二酸化ケイ素は、プロセスによって定められた材料搬送の方向に、通路を介して第1のチャンバからさらなるチャンバに入ることができる。通路によって接続されたチャンバに言及することは、第1のチャンバとさらなるチャンバとの間の材料搬送方向にさらなる中間要素が配置されている配置構成への言及を含む。原則として、気体、液体及び固体が通路を通過することができる。好ましくは、二酸化ケイ素粉末、二酸化ケイ素粉末の懸濁液、及び二酸化ケイ素造粒体が、第1のチャンバとさらなるチャンバとの間の通路を通過することができる。本発明に係るプロセスが実施されている間、第1のチャンバに導入されたすべての材料は、第1のチャンバとさらなるチャンバとの間の通路を介して、さらなるチャンバに到達することができる。好ましくは、造粒体又は粉末の形態の二酸化ケイ素のみが、第1のチャンバとさらなるチャンバとの間の通路を介して、さらなるチャンバに到着する。好ましくは、第1のチャンバとさらなるチャンバとの間の通路は、二酸化ケイ素によって閉じられ、第1のチャンバ及びさらなるチャンバのガスチャンバが互いに分離されるようになっており、好ましくは、異なるガス若しくは混合ガス、異なる圧力又はその両方がガスチャンバ内に存在することができるようになっている。別の実施形態によれば、上記通路は、ゲート、好ましくはロータリーゲートバルブで形成されている。
【0264】
好ましくは、炉の第1のチャンバは、少なくとも1つのガス入口と少なくとも1つのガス出口とを有する。ガス入口は、原則として、当業者に公知でありガスの導入に適した任意の形態、例えば、ノズル、ベント又はチューブの形態を有することができる。ガス出口は、原則として、当業者に公知でありガスを除去するのに適した任意の形態、例えば、ノズル、ベント又はチューブの形態を有することができる。
【0265】
好ましくは、二酸化ケイ素造粒体は、炉の入口から第1のチャンバに導入され、加温される。この加温は、ガス又は2種以上のガスの組み合わせの存在下で行うことができる。この目的のため、ガス又は2種以上のガスの組み合わせが、第1のチャンバのガスチャンバ内に存在する。第1のチャンバのガスチャンバは、第1のチャンバのうち、固相又は液相によって占有されていない領域を意味する。適切なガスは、例えば、水素、酸素、不活性ガス、及びそれらの2つ以上である。好ましい不活性ガスは、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン及びキセノンであり、特に好ましくは、窒素、ヘリウム、及びこれらの組み合わせである。好ましくは、加温は還元性雰囲気中で行われる。これは、好ましくは、水素又は水素とヘリウムとの組み合わせの形で提供することができる。好ましくは、二酸化ケイ素造粒体は、ガス又は2種以上のガスの組み合わせの流れの中で、第1のチャンバ内で加温される。
【0266】
当該二酸化ケイ素造粒体が、第1のチャンバ内で、減圧下で、例えば500mbar未満、又は300mbar未満、例えば200mbar以下の圧力で加温されることがさらに好ましい。
【0267】
好ましくは、第1のチャンバは、二酸化ケイ素造粒体を移動させる少なくとも1つの装置を有する。原則として、この目的のために当業者に公知であり適切と思われるすべての装置を選択することができる。好ましくは、撹拌装置、振盪装置、及び旋回装置である。
【0268】
第1の態様の一実施形態によれば、第1のチャンバ内の温度及びさらなるチャンバ内の温度は異なる。好ましくは、第1のチャンバ内の温度は、さらなるチャンバ内の温度よりも低い。好ましくは、第1のチャンバとさらなるチャンバとの温度差は、600~2400℃の範囲、例えば、1000~2000℃の範囲、又は1200~1800℃の範囲、特に好ましくは1500~1700℃の範囲である。さらには、好ましくは、第1のチャンバの温度は、さらなるチャンバの温度よりも600~2400℃、例えば1000~2000℃又は1200~1800℃、特に好ましくは1500~1700℃低い。
【0269】
一実施形態によれば、炉の第1のチャンバは、予熱部、特に好ましくは上述の特徴を有する上述の予熱部である。好ましくは、予熱部は、通路を介してさらなるチャンバに接続されている。好ましくは、二酸化ケイ素は、予熱部から通路を介してさらなるチャンバに入る。予熱部とさらなるチャンバとの間の通路は、予熱部に導入されたガスがその通路を通ってさらなるチャンバに入らないように、閉鎖することができる。好ましくは、予熱部とさらなるチャンバとの間の通路は、二酸化ケイ素が水と接触しないように、閉じられる。予熱部とさらなるチャンバとの間の通路は、予熱部のガスチャンバと第1のチャンバとが、異なるガス若しくは混合ガス、異なる圧力、又はその両方がガスチャンバ内に存在するように互いに分離されるように閉鎖することができる。適切な通路は、好ましくは、上述の実施形態に記載のとおりである。
【0270】
さらなる実施形態によれば、炉の第1のチャンバは予熱部ではない。例えば、第1のチャンバは、平準化チャンバ(レベリングチャンバ)であってもよい。平準化チャンバは、その上流にある予熱部の処理量の変動、又は予熱部とさらなるチャンバとの間の処理量の差が平準化される炉のチャンバである。例えば、上述したように、第1のチャンバの上流にロータリーキルンを配置することができる。これの処理量は、通常、平均処理量の6%までの量だけ変動することができる。好ましくは、二酸化ケイ素は、平準化チャンバに到達したときの温度で、平準化チャンバ内で保持される。
【0271】
炉が第1のチャンバ及び複数のさらなるチャンバ、例えば2つのさらなるチャンバ、3つのさらなるチャンバ、4つのさらなるチャンバ、5つのさらなるチャンバ、又は5を超える数のさらなるチャンバ、特に好ましくは2つのさらなるチャンバを有することも可能である。炉が2つのさらなるチャンバを有する場合、材料の搬送方向に基づいて、第1のチャンバは好ましくは予熱部であり、さらなるチャンバの第1のチャンバは平準化チャンバであり、さらなるチャンバの第2のチャンバは溶融チャンバである。
【0272】
さらなる実施形態によれば、第1のチャンバには添加剤が存在する。添加剤は、好ましくは、ハロゲン、不活性ガス、塩基、酸素、又はこれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される。
【0273】
原則として、元素状のハロゲン及びハロゲン化合物が適切な添加剤である。好ましいハロゲンは、塩素、フッ素、塩素含有化合物及びフッ素含有化合物からなる群から選択される。特に好ましいのは、元素状の塩素及び塩化水素である。
【0274】
原則として、すべての不活性ガス及びその2種以上の混合物は、適切な添加剤である。好ましい不活性ガスは、窒素、ヘリウム、又はこれらの組み合わせである。
【0275】
原則として、塩基も適切な添加剤である。添加剤として使用される好ましい塩基は、無機塩基及び有機塩基である。
【0276】
さらに、酸素は好適な添加剤である。好ましくは、酸素は、酸素含有雰囲気として存在し、例えば、不活性ガス又は2種以上の不活性ガスの混合物と組み合わせて存在し、特に好ましくは、窒素、ヘリウム又は窒素及びヘリウムと組み合わせて存在する。
【0277】
第1のチャンバは、原則として、当業者に公知である二酸化ケイ素の加熱に適した任意の材料を含むことができる。好ましくは、第1のチャンバは、石英ガラス、耐火金属、アルミニウム、及びこれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の成分を含み、特に好ましくは、第1のチャンバは、石英ガラス又はアルミニウムを含む。
【0278】
好ましくは、第1のチャンバがポリマー又はアルミニウムを含む場合、第1のチャンバ内の温度は600℃を超えない。好ましくは、第1のチャンバが石英ガラスを含む場合、第1のチャンバ内の温度は100~1100℃である。好ましくは、第1のチャンバは主に石英ガラスを含む。
【0279】
二酸化ケイ素が第1のチャンバから第1のチャンバとさらなるチャンバとの間の通路を通ってさらなるチャンバに搬送される際、二酸化ケイ素は原理的にどのような状態ででも存在することができる。好ましくは、二酸化ケイ素は、固体として、例えば、粒子、粉末又は造粒体として存在する。第1の態様の一実施形態によれば、第1のチャンバからさらなるチャンバへの二酸化ケイ素の搬送は、造粒体として行われる。
【0280】
さらなる実施形態によれば、さらなるチャンバは、金属シート又は焼結材料から作製された坩堝であり、この焼結材料は焼結金属を含み、金属シート又は焼結金属は、モリブデン、タングステン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0281】
ガラス融液は、出口を介して、好ましくはノズルを介して炉から取り出される。
【0282】
工程iii.)
石英ガラス体は、上記ガラス融液の少なくとも一部から製造される。このために、好ましくは、工程ii)で製造されたガラス融液の少なくとも一部が取り出され、それから石英ガラス体が作られる。
【0283】
工程ii)で製造されたガラス融液の一部の取り出しは、原則として、溶融炉若しくは融解チャンバから連続的に、又はガラス融液の製造が終了した後に実施することができる。好ましくは、ガラス融液の一部が連続的に取り出される。ガラス融液は、炉の出口又は溶融チャンバの出口から、好ましくはノズルを介して取り出される。
【0284】
ガラス融液は、取り出しの前、取り出しの間、又は取り出しの後に、ガラス融液の形成を可能にする温度まで冷却することができる。ガラス融液の粘度の上昇は、ガラス融液の冷却に関係する。ガラス融液は、好ましくは、成形において、製造された形態が保持され、同時に、成形が可能な限り容易かつ確実であり、少ない労力で実施できるような程度に冷却される。当業者は、成形ツールにおけるガラス融液の温度を変化させることにより、成形用のガラス融液の粘度を容易に確立することができる。好ましくは、ガラス融液は、取り出しの際に1750~2100℃の範囲、例えば1850~2050℃の範囲、特に好ましくは1900~2000℃の範囲の温度を有する。好ましくは、ガラス融液は、取り出し後に500℃未満の温度、例えば200℃未満、100℃未満、50℃未満、特に好ましくは20~30℃の範囲の温度に冷却される。
【0285】
形成される石英ガラス体は、中実体であってもよく中空体であってもよい。中実体は、主に単一の材料でできている物体を意味する。それにもかかわらず、中実体は、1つ以上の介在物、例えば、気泡を有することができる。中空体のこのような介在物は、一般に65mm3以下、例えば40mm3未満、又は20mm3未満、又は5mm3未満、又は2mm3未満、特に好ましくは0.5mm3未満のサイズを有する。好ましくは、中実体は、いずれの場合も中実体の全体積に基づいて、その体積の0.02体積%未満、例えば0.01体積%未満又は0.001体積%未満の介在物を含む。
【0286】
石英ガラス体は、外部形状(外形)を有する。外部形状は、石英ガラス体の断面の外縁部の形状を意味する。石英ガラス体の断面の外部形状は、好ましくは、円形、楕円形又は3つ以上の角、例えば4つ、5つ、6つ、7つ若しくは8つの角を有する多角形であり、特に好ましくは、石英ガラス体は円形である。
【0287】
好ましくは、この石英ガラス体は、100~10000mm、例えば1000~4000mm、特に好ましくは1200~3000mmの範囲の長さを有する。
【0288】
好ましくは、石英ガラス体は、1~500mmの範囲、例えば2~400mmの範囲、特に好ましくは5~300mmの範囲の外径を有する。
【0289】
石英ガラス体の形成は、ノズルを用いて行われる。ガラス融液は、ノズルを介して送られる。ノズルを介して形成される石英ガラス体の外部形状は、ノズルの開口部の形態によって決定される。開口部が円形であれば、石英ガラス体を形成する際に円筒が作られる。ノズルの開口部に構造がある場合は、その構造が石英ガラス体の外部形状に転写される。開口部に構造を有するノズルを用いて製造された石英ガラス体は、ガラス素線に沿った長さ方向にその構造の像を有する。
【0290】
ノズルは溶融炉に組み込まれている。好ましくは、ノズルは坩堝の一部として、特に好ましくは、坩堝の出口の一部として、溶融炉に組み込まれている。
【0291】
好ましくは、ガラス融液の少なくとも一部がノズルを介して取り出される。石英ガラス体の外部形状は、ガラス融液の少なくとも一部がノズルを介して取り出されることによって形成される。
【0292】
好ましくは、石英ガラス体は、その形状を維持するように、成形後に冷却される。好ましくは、石英ガラス体は、成形後に、成形時のガラス融液の温度よりも少なくとも1000℃低い温度、例えば少なくとも1500℃低い温度又は少なくとも1800℃低い温度、特に好ましくは1900~1950℃低い温度に冷却される。好ましくは、石英ガラス体は、500℃未満の温度、例えば200℃未満又は100℃未満又は50℃未満の温度、特に好ましくは20~30℃の範囲の温度に冷却される。
【0293】
本発明の第1の態様の好ましい実施形態によれば、得られた石英ガラス体は、化学的処理、熱的処理又は機械的処理からなる群から選択される少なくとも1つの手順で処理することができる。
【0294】
好ましくは、石英ガラス体は化学的に後処理される。後処理は、既に製造された石英ガラス体の処理に関する。石英ガラス体の化学的後処理は、原則として、当業者に公知であり石英ガラス体の表面の化学構造若しくは組成、又はその両方を変化させるための材料を採用するのに適していると思われる任意の手順を意味する。好ましくは、化学的後処理は、フッ素化合物による処理及び超音波洗浄からなる群から選択される少なくとも1つの手段を含む。
【0295】
可能なフッ素化合物は、特にフッ化水素及びフッ素含有酸、例えばフッ化水素酸である。液体は、好ましくは35~55重量%の範囲、より好ましくは35~45重量%の範囲のフッ素化合物の含有量を有し、これらの重量%はいずれの場合も液体の総量に基づく。100重量%までの残りは、通常は水である。好ましくは、水は完全に脱塩された水又は脱イオン水である。
【0296】
超音波洗浄は、好ましくは液槽中で、特に好ましくは洗浄剤の存在下で行われる。超音波洗浄の場合、一般にフッ素化合物、例えばフッ化水素酸もフッ化水素も使用しない。
【0297】
石英ガラス体の超音波洗浄は、好ましくは、以下の条件の少なくとも1つ、例えば少なくとも2つ又は少なくとも3つ又は少なくとも4つ又は少なくとも5つ、特に好ましくはすべての条件下で実施される。
- 連続プロセスで行われる超音波洗浄。
- 超音波洗浄のための装置は、互いにチューブによって接続された6つのチャンバを有する。
- 各チャンバにおける石英ガラス体の保持時間を設定できる。好ましくは、各チャンバにおける石英ガラス体の保持時間は同じである。好ましくは、各チャンバにおける保持時間は、1~120分の範囲であり、例えば、5分未満、若しくは1~5分若しくは2~4分、又は60分未満、若しくは10~60分若しくは20~50分、特に好ましくは、5~60分の範囲である。
- 第1のチャンバは、好ましくは水及び塩基を含む塩基性媒体と、超音波洗浄器とを含む。
- 第3のチャンバは、好ましくは水及び酸を含む酸性媒体と、超音波洗浄器とを含む。
- 第2チャンバ及び第4~第6チャンバでは、石英ガラス体が、水、好ましくは脱塩水で洗浄される。
- 第4~第6のチャンバは、水のカスケードで運転される。好ましくは、水は第6のチャンバにのみ導入され、第6のチャンバから第5のチャンバへ、第5のチャンバから第4のチャンバへと流れる。
【0298】
好ましくは、石英ガラス体は熱的に後処理される。石英ガラス体の熱的後処理は、原則として、当業者に公知であり温度によって石英ガラス体の形態若しくは構造又はその両方を変化させるのに適していると思われる手順を意味する。好ましくは、熱的後処理は、焼き入れ、圧縮、膨張、延伸(絞り)、溶着、及びこれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの手段を含む。好ましくは、熱的後処理は、材料を除去する目的では行われない。
【0299】
焼き入れは、好ましくは石英ガラス体を炉中で、好ましくは900~1300℃の範囲、例えば900~1250℃又は1040~1300℃の範囲、特に好ましくは1000~1050℃又は1200~1300℃の範囲の温度で加熱することにより行われる。好ましくは、熱処理において、1300℃の温度を1時間を超える連続した期間にわたって超えないようにされ、特に好ましくは、熱処理の全期間にわたって1300℃の温度を超えないようにされる。焼き入れは、原則として、減圧、常圧、増圧、好ましくは減圧、特に好ましくは真空中で行うことができる。
【0300】
圧縮は、好ましくは、石英ガラス体を好ましくは約2100℃の温度に加熱し、その後、好ましくは約60rpmの回転速度で回転旋回運動中に成形することにより行われる。例えば、棒(ロッド)状の石英ガラス体を円筒に成形することができる。
【0301】
好ましくは、石英ガラス体にガスを注入することにより、石英ガラス体を膨張させることができる。例えば、石英ガラス体は、膨らませることで、大口径の管に成形することができる。このためには、好ましくは、石英ガラス体が約2100℃の温度に加熱され、一方で、好ましくは約60rpmの回転速度で回転旋回運動が行われ、内部に、好ましくは約100mbarまでの規定され制御された内圧で、ガスがフラッシュされる。大口径の管は、外径が少なくとも500mmの管を意味する。
【0302】
石英ガラス体は、好ましくは延伸(絞り加工)することができる。延伸は、好ましくは石英ガラス体を好ましくは約2100℃の温度に加熱し、その後、制御された引っ張り速度で石英ガラス体の所望の外径まで引っ張ることによって行われる。例えば、ランプ管は、石英ガラス体から延伸によって形成することができる。
【0303】
好ましくは、石英ガラス体は機械的に後処理される。石英ガラス体の機械的後処理は、原則として、当業者に公知であり研磨手段を使用して石英ガラス体の形状を変えること、又は石英ガラス体を複数のピースに分割するのに適していると思われる任意の手順を意味する。特に、機械的後処理は、研削、穿孔、ホーニング、ソーイング(鋸引き)、ウォータージェットカッッティング、レーザーカッティング、サンドブラストによる粗面化、ミリング、及びこれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの手段を含む。
【0304】
好ましくは、石英ガラス体は、これらの手順を組み合わせて処理され、例えば、化学的後処理と熱的後処理との組み合わせ、化学的後処理と機械的後処理との組み合わせ、熱的後処理と機械的後処理との組み合わせ、特に好ましくは、化学的後処理と熱的後処理と機械的後処理との組み合わせで処理される。さらには、好ましくは、石英ガラス体は、上述したいくつかの手順に、それぞれ独立に供されることが可能である。
【0305】
さらなる実施形態によれば、当該プロセスは、以下の任意の
iv.)上記石英ガラス体から少なくとも1つの開口部を有する中空体を作製する工程
を含んでもよい。
【0306】
作製された中空体は、内部形状及び外部形状を有する。内部形状は、中空体の断面の内縁部の形状を意味する。中空体の断面における内部形状と外部形状は、同じであってもよいし異なっていてもよい。中空体の断面における内部形状及び外部形状は、円形、楕円形又は3つ以上の角、例えば4つ、5つ、6つ、7つ若しくは8つの角を有する多角形であることができる。
【0307】
好ましくは、断面の外部形状は中空体の内部形状に対応している。特に好ましくは、中空体は、断面において丸い内部形状及び丸い外部形状を有する。
【0308】
別の実施形態では、上記中空体は、内部形状及び外部形状が異なっていてもよい。好ましくは、中空体は、断面において円形の外部形状及び多角形の内部形状を有する。特に好ましくは、中空体は、断面において、円形の外部形状及び六角形の内部形状を有する。
【0309】
好ましくは、中空体は、100~10000mm、例えば1000~4000mm、特に好ましくは1200~2000mmの範囲の長さを有する。
【0310】
好ましくは、中空体は、0.8~50mmの範囲、例えば1~40mm、2~30mm又は3~20mmの範囲、特に好ましくは4~10mmの範囲の壁厚(肉厚)を有する。
【0311】
好ましくは、中空体は、2.6~400mm、例えば3.5~450mmの範囲、特に好ましくは5~300mmの範囲の外径を有する。
【0312】
好ましくは、中空体は1~300mm、例えば5~280mm又は10~200mmの範囲、特に好ましくは20~100mmの範囲の内径を有する。
【0313】
中空体は、1つ以上の開口部を有する。好ましくは、中空体は1つの開口部を含む。好ましくは、中空体は、偶数個の開口部、例えば、2個、4個、6個、8個、10個、12個、14個、16個、18個又は20個の開口部を有する。好ましくは、中空体は2つの開口部を有する。好ましくは、中空体はチューブである。中空体のこの形態は、光導体が1つのコアのみを含む場合に特に好ましい。中空体は、2つを超える数の開口部を含むことができる。開口部は、好ましくは、石英ガラス体の端部に互いに対向して(反対側に)位置する対で配置される。例えば、石英ガラス体の各端部には、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ又は7つよりも多い開口部を有することができ、特に好ましくは5つ、6つ又は7つの開口部を有する。好ましい形態は、例えば、チューブ、ツインチューブ、すなわち2つの平行なチャネルを有するチューブ、及びマルチチャネルチューブ、すなわち2を超える数の平行なチャネルを有するチューブである。
【0314】
中空体は、原則として、当業者に公知の任意の方法によって形成することができる。好ましくは、中空体はノズルを用いて形成される。好ましくは、ノズルは、その開口部の中央に、成形中のガラス融液を偏向させる装置を備える。このようにして、ガラス融液から中空体を成形することができる。
【0315】
中空体は、ノズルの使用及びそれに続く後処理によって作製することができる。適切な後処理は、原則として、中実体から中空体を作るために当業者に公知であるすべてのプロセスであり、例えば、チャネルの圧縮、穿孔、ホーニング又は研削である。好ましくは、適切な後処理は、中実体を1つ以上のマンドレル上に送ることであり、それによって中空体が形成される。マンドレルを中実体に導入して中空体を作製することもできる。好ましくは、中空体は成形後に冷却される。
【0316】
好ましくは、中空体は、成形後に500℃未満の温度、例えば200℃未満、100℃未満又は50℃未満の温度、特に好ましくは20~30℃の範囲の温度に冷却される。
【0317】
予備緻密化
原則として、工程i.)で提供された二酸化ケイ素造粒体を、工程ii.)で加温してガラス融液を得る前に、1つ以上の前処理工程に供することが可能である。可能な前処理工程は、例えば、熱的又は機械的な処理工程である。例えば、当該二酸化ケイ素造粒体は、工程ii.)の加温の前に緻密化することができる。「緻密化」は、BET表面積の減少及び細孔容積の減少を意味する。
【0318】
二酸化ケイ素造粒体は、好ましくは、二酸化ケイ素造粒体を加熱することによって、又は二酸化ケイ素造粒体に圧力を加えることによって機械的に、例えば二酸化ケイ素造粒体を圧延したりプレスしたりすることによって緻密化される。好ましくは、二酸化ケイ素造粒体は、加熱によって緻密化される。特に好ましくは、二酸化ケイ素造粒体の緻密化は、溶融炉に接続された予熱部による加熱によって行われる。
【0319】
好ましくは、二酸化ケイ素は、800~1400℃の範囲の温度、例えば850~1300℃の範囲の温度、特に好ましくは900~1200℃の範囲の温度での加熱によって緻密化される。
【0320】
第1の態様の一実施形態では、二酸化ケイ素造粒体のBET表面積は、工程ii.)の加温の前に5m2/g未満、好ましくは7m2/g未満、又は10m2/g未満、特に好ましくは15m2/g未満には低減されない。さらには、二酸化ケイ素造粒体のBET表面積は、工程i.)で提供された二酸化ケイ素造粒体と比較して、工程ii.)での加温の前に低減されないことが好ましい。
【0321】
第1の態様の1つの実施形態では、二酸化ケイ素造粒体のBET表面積は、20m2/g未満、例えば15m2/g未満、又は10m2/g未満、又は5超~20m2/g未満、又は7~15m2/gの範囲、特に好ましくは9~12m2/gの範囲に低減される。好ましくは、二酸化ケイ素造粒体のBET表面積は、工程i.)で提供された二酸化ケイ素造粒体と比較して、工程ii.)での加熱の前に40m2/g未満、例えば1~20m2/g、又は2~10m2/g、特に好ましくは3~8m2/gだけ低減され、緻密化後のBET表面積は5m2/g超である。
【0322】
圧縮された二酸化ケイ素造粒体は、好ましくは、以下の特性のうち少なくとも1つ、例えば少なくとも2つ、少なくとも3つ、又は少なくとも4つ、特に好ましくは少なくとも5つを有する。
A. 5超~40m2/g未満、例えば10~30m2/gの範囲、特に好ましくは15~25m2/gの範囲のBET比表面積、
B. 100~300μmの範囲、特に好ましくは120~200μmの範囲の粒子サイズD10、
C. 150~550μmの範囲、特に好ましくは200~350μmの範囲の粒子サイズD50、
D. 300~650μmの範囲、特に好ましくは400~500μmの範囲の粒子サイズD90、
E. 0.8~1.6g/cm3、特に好ましくは1.0~1.4g/cm3の範囲のかさ密度、
F. 1.0~1.4g/cm3、特に好ましくは1.15~1.35g/cm3の範囲のタンピング密度、
G. 5ppm未満、例えば4.5ppm未満、特に好ましくは4ppm未満の炭素含有量、
H. 500ppm未満、特に好ましくは1ppb~200ppmのCl含有量。
上記ppm及びppbは、いずれの場合も圧縮された二酸化ケイ素造粒体の総重量に基づく。
【0323】
圧縮された二酸化ケイ素造粒体は、好ましくは特性A./F./G.又はA./F./H.又はA./G./H.の組み合わせ、特に好ましくは特性A./F./G./H.の組み合わせを有する。
【0324】
圧縮された二酸化ケイ素造粒体は、好ましくは特性A./F./G.の組み合わせを有し、BET比表面積が10~30m2/gの範囲にあり、タンピング密度が1.15~1.35g/mLの範囲にあり、炭素含有量が4ppm未満である。
【0325】
圧縮された二酸化ケイ素造粒体は、好ましくは、特性A./F./H.の組み合わせを有し、BET表面積が10~30m2/gの範囲にあり、タンピング密度が1.15~1.35g/mLの範囲にあり、塩素含有量が1ppb~200ppmの範囲にある。
【0326】
圧縮された二酸化ケイ素造粒体は、好ましくは、特性A./G./H.の組み合わせを有し、BET比表面積が10~30m2/gの範囲にあり、炭素含有量が4ppm未満であり、塩素含有量が1ppb~200ppmの範囲にある。
【0327】
圧縮された二酸化ケイ素造粒体は、好ましくは、特性A./F./G./H.の組み合わせを有し、BET比表面積が10~30m2/gの範囲にあり、タンピング密度が1.15~1.35g/mLの範囲にあり、炭素含有量が4ppm未満であり、塩素含有量が1ppb~200ppmの範囲にある。
【0328】
第1の態様の一実施形態では、溶融エネルギーは、固体表面を介して二酸化ケイ素造粒体に伝達される。圧縮された二酸化ケイ素造粒体が、例えば、上記二酸化ケイ素造粒体として選択されてもよい。
【0329】
固体表面は、二酸化ケイ素造粒体の表面とは異なる表面であって、二酸化ケイ素造粒体が溶融のために加熱される温度では溶融又は崩壊しない表面を意味する。固体表面に適した材料は、例えば、坩堝材料として適している材料である。
【0330】
固体表面は、原則として、当業者に公知でありこの目的に適した任意の表面とすることができる。例えば、坩堝、又は坩堝ではない別個の構成要素を固体表面として使用することができる。
【0331】
溶融エネルギーを二酸化ケイ素造粒体に伝達するために、固体表面は、原則的として、当業者に公知でありこの目的に適した任意の方法で加熱することができる。好ましくは、固体表面は、抵抗加熱又は誘導加熱によって加熱される。誘導加熱の場合、エネルギーはコイルによって固体表面に直接結合され、そこからその内側に供給される。抵抗加熱の場合、固体表面は外側から加温され、そこから内側にエネルギーを伝える。これに関連して、熱容量の小さい加熱チャンバガスが有利であり、例えば、アルゴン雰囲気又はアルゴンを含む雰囲気であることが有利である。例えば、固体表面は、電気的に、又は固体表面を外部から炎で焼くことにより加熱することができる。好ましくは、固体表面は、二酸化ケイ素造粒体を溶融するのに十分な量のエネルギーを二酸化ケイ素造粒体及び/又は一部溶融した二酸化ケイ素造粒体に伝達できる温度に加熱される。
【0332】
本発明の一実施形態によれば、坩堝へのエネルギーの導入は、坩堝の中に、又は坩堝の上に向けられた、例えばバーナー炎等の炎によって、坩堝、若しくはその中に存在するバルク材料、又はその両方を加温することによっては行われない。
【0333】
固体表面として別個の構成要素を使用する場合、これを任意の方法で、例えば、二酸化ケイ素造粒体上にその構成要素を置くことにより、若しくは二酸化ケイ素造粒体の顆粒間にその構成要素を導入することにより、若しくは坩堝と二酸化ケイ素造粒体との間にその構成要素を挿入することにより、又はこれらの2つ以上の組み合わせによって、二酸化ケイ素造粒体と接触させることができる。この構成要素は、溶融エネルギーの移動の前、又は移動中、又は移動前と移動中に加熱することができる。
【0334】
好ましくは、溶融エネルギーは、坩堝の内側を経由して二酸化ケイ素造粒体に伝達される。この場合、坩堝は、二酸化ケイ素造粒体が溶融するように十分に加熱される。坩堝は、好ましくは、抵抗的又は誘導的に加熱される。暖かさは、坩堝の外側から内側に伝わる。坩堝の内側の固体表面は、溶融エネルギーを二酸化ケイ素造粒体に伝える。
【0335】
本発明のさらなる実施形態によれば、溶融エネルギーは、ガス区画を介しては二酸化ケイ素造粒体に伝達されない。さらには、好ましくは、溶融エネルギーは、二酸化ケイ素造粒体を炎で焼くことによっては二酸化ケイ素造粒体に伝達されない。これらの除外されたエネルギー伝達手段の例は、1つ以上のバーナー炎を上から溶融坩堝内、又は二酸化ケイ素上、又はその両方に向けることである。
【0336】
本発明の第5の態様は、第4の態様に記載の方法によって得られる石英ガラス体である。従って、本発明の第1の態様に係る方法が実施され、特に工程(i)~(v)が実施され、二酸化ケイ素造粒体が形成される、石英ガラス体の製造方法も好ましい。ここから、既に上述したように、ガラス融液、及び最終的に石英ガラス体が形成される。
【0337】
1つの実施形態では、当該石英ガラス体は、以下の特性のうち少なくとも1つ、好ましくは2つ以上、最大ですべての特性を有する。
A]1ppm未満の塩素含有量、
B]200ppb未満のアルミニウム含有量、
C]5ppm未満のSi、O、H、C以外の原子の含有量、
D]log10(η(1250℃)/dPas)=11.4~log10(η(1250℃)/dPas)=12.9、又はlog10(η(1300℃)/dPas)=11.1~log10(η(1300℃)/dPas)=12.2、又はlog10(η(1350℃)/dPas)=10.5~log10(η(1350℃)/dPas)=11.5の範囲の粘度(p=1013hPa)、
E]10-4未満の屈折率均質性、
F]円筒形の形態、
G]5ppm未満のタングステン含有量、
H]5ppm未満のモリブデン含有量。
上記ppb及びppmは、いずれの場合も石英ガラス体の総重量に基づく。
【0338】
本発明の第6の態様は、光ファイバー光導体(導光体)の製造方法であって、
A/本発明の第5の態様又はその実施形態のいずれか1つに記載の石英ガラス体、又は第4の態様に従って得られる石英ガラス体を提供し、この石英ガラス体を最初に加工して、少なくとも1つの開口部を有する中空体を得る工程と、
B/上記石英ガラス体に、上記少なくとも1つの開口部を介して1つ以上のコアロッドを挿入して前駆体を得る工程と、
C/工程B/からの前駆体を加熱しながら延伸して、1つ以上のコア及びジャケットM1を有する光ファイバー光導体を得る工程と
を含む方法である。
【0339】
工程A/
工程A/で提供される石英ガラス体は、好ましくは、本発明の第4及び/又は第5の特性の特徴を特徴とする。さらには、この石英ガラス体は、少なくとも1つの開口部を有する中空体を与えるために、再成形法によって成形されてもよい。特に好ましくは、このようにして得られる石英ガラス体は、第5の態様の特性を有する。
【0340】
工程B/
石英ガラス体の少なくとも1つの開口部を介して、1つ以上のコアロッドが導入される(工程B/)。本発明の文脈におけるコアロッドは、ジャケット、例えばジャケットM1に導入され、光導体を得るために加工されるように設計された物体を意味する。コアロッドは、石英ガラスのコアを有する。好ましくは、コアロッドは、石英ガラスのコアと、このコアを取り囲むジャケット層M0とを含む。
【0341】
各コアロッドは、石英ガラス体に収まるように選択される形態を有する。好ましくは、コアロッドの外部形状は、石英ガラス体の開口部の形状に対応している。特に好ましくは、石英ガラス体は管であり、コアロッドは断面が円形の棒状体である。
【0342】
コアロッドの直径は、中空体の内径よりも小さい。好ましくは、コアロッドの直径は、中空体の内径よりも0.1~3mm小さく、例えば0.3~2.5mm小さく、又は0.5~2mm小さく、又は0.7~1.5mm小さく、特に好ましくは0.8~1.2mm小さい。
【0343】
好ましくは、石英ガラス体の内径とコアロッドの直径の比は、2:1~1.0001:1の範囲、例えば1.8:1~1.01:1の範囲、又は1.6:1~1.005:1の範囲、又は1.4:1~1.01:1の範囲、特に好ましくは1.2:1~1.05:1の範囲である。
【0344】
好ましくは、石英ガラス体の内部でコアロッドによって満たされていない領域を、少なくとも1つのさらなる成分、例えば二酸化ケイ素粉末又は二酸化ケイ素造粒体で満たすことができる。
【0345】
さらなる石英ガラス体に既に存在するコアロッドを、石英ガラス体に導入することも可能である。この場合、このさらなる石英ガラス体は、石英ガラス体の内径よりも小さい外径を有する。石英ガラス体に導入されるコアロッドは、すでに2つ以上のさらなる石英ガラス体、例えば、3つ又は4つ又は5つ又は6つ以上のさらなる石英ガラス体に入っていてもよい。
【0346】
このようにして得られた1本以上のコアロッドを有する石英ガラス体を、以下では「前駆体」と称する。
【0347】
工程C/
前駆体は加熱しながら延伸される(工程C/)。得られた製品は、1つ以上のコアと、少なくとも1つのジャケットM1とを有する光導体である。
【0348】
好ましくは、前駆体の延伸は、1~100m/hの範囲の速度で、例えば2~50m/h又は3~30m/hの範囲の速度で行われる。特に好ましくは、石英ガラス体の延伸は、5~25m/hの範囲の速度で行われる。
【0349】
好ましくは、延伸は、2500℃までの温度で、例えば1700~2400℃の範囲の温度で、特に好ましくは2100~2300℃の範囲の温度で加熱しながら行われる。
【0350】
好ましくは、前駆体は、前駆体を外側から加熱する炉を通して送られる。
【0351】
好ましくは、前駆体は、光導体の所望の厚さが得られるまで延伸される。好ましくは、前駆体は、いずれの場合も工程A/で提供された石英ガラス体の長さに基づいて、1,000~6,000,000倍の長さ、例えば10,000~500,000倍の長さ、又は30,000~200,000倍の長さに延伸される。特に好ましくは、前駆体は、いずれの場合も工程A/で提供される石英ガラス体の長さに基づいて、100,000~10,000,000倍の長さ、例えば150,000~5,800,000倍の長さ、160,000~640,000倍の長さ、又は1,440,000~5,760,000倍の長さ、又は1,440,000~2,560,000倍の長さに延伸される。
【0352】
好ましくは、前駆体の直径は、いずれの場合も工程A/で提供された石英ガラス体の直径に基づいて、100~3,500の範囲、例えば300~3,000の範囲、又は400~800の範囲、又は1,200~2,400の範囲、又は1,200~1,600の範囲の倍数で、延伸によって縮小される。
【0353】
光導波路とも呼ばれる光導体は、電磁放射線、特に光を伝導又は誘導するのに適した任意の材料を含むことができる。
【0354】
放射線を伝導又は誘導するということは、放射線の強度を大きく妨げたり減衰させたりすることなく、光導体の長さ方向に放射線を伝播させることを意味する。このために、放射線は光導体の一端を介してガイド(導波路)に結合される。好ましくは、光導体は、170~5000nmの波長範囲の電磁放射線を伝導する。好ましくは、当該波長範囲における光導体による放射線の減衰量は、0.1~10dB/kmの範囲である。好ましくは、光導体は、最大50Tbit/sの伝送速度を有する。
【0355】
光導体は、好ましくは6m超のカールパラメータを有する。本文脈におけるカールパラメータは、外力から解放された自由に動くファイバーとして存在するファイバー、例えば光導体又はジャケットM1の曲げ半径を意味する。
【0356】
光導体は、好ましくは、柔軟性を有するように作製される。本発明の文脈における柔軟性は、光導体が20mm以下、例えば10mm以下、特に好ましくは5mm以下の曲げ半径を特徴とすることを意味する。曲げ半径は、光導体を破壊することなく、かつ光導体の放射線伝導能力を損なうことなく形成できる最小の半径を意味する。光導体の曲げ部分で0.1dB超の光の減衰がある場合、障害が発生する。この減衰は、好ましくは、1550nmの基準波長で規定される。
【0357】
好ましくは、石英は、二酸化ケイ素と、いずれの場合も石英の総重量に基づいて、1重量%未満の他の物質、例えば0.5重量%未満の他の物質、特に好ましくは0.3重量%未満の他の物質から構成される。さらには、好ましくは、石英は、石英の総重量に基づいて、少なくとも99重量%の二酸化ケイ素を含む。
【0358】
光導体は、好ましくは、細長い形状を有する。光導体の形状は、その長さの延長線L及びその断面Qによって規定される。光導体は、好ましくは、その長さの延長線Lに沿って丸い外壁を有する。光導体の断面Qは、常に、光導体の外壁に垂直な平面内で決定される。光導体が長さの延長線L上で湾曲している場合、断面Qは光導体の外壁上の1点での接線に垂直に決定される。光導体は、好ましくは、0.04~1.5mmの範囲の直径dLを有する。光導体は、1m~100kmの範囲の長さを有することが好ましい。
【0359】
光導体は、1つ以上のコア、例えば、1つのコア又は2つのコア又は3つのコア又は4つのコア又は5つのコア又は6つのコア又は7つのコア、又は7を超える数のコア、特に好ましくは1つのコアを含んでいてもよい。好ましくは、光導体を介して伝導される電磁放射線の90%超、例えば95%超、特に好ましくは98%超がコア内で伝導される。コア内での光の輸送には、光導体ですでに述べたように、好ましい波長範囲が適用される。好ましくは、コアの材料は、ガラス又は石英ガラス、又は両者の組み合わせからなる群から選択され、特に好ましくは石英ガラスである。複数のコアは、互いに独立に、同じ材料から作製することができ、又は異なる材料から作製することもできる。好ましくは、すべてのコアが同じ材料から作製され、特に好ましくは石英ガラスから作製される。
【0360】
各コアは、好ましくは円形の、断面QKを有し、長さLKの細長い形状を有する。あるコアの断面QKは、他の各コアの断面QKとは独立している。それらのコアの断面QKは、同じであってもよいし異なっていてもよい。好ましくは、すべてのコアの断面QKは同じである。コアの断面QKは、常に、コアの外壁又は光導体の外壁に垂直な平面内で決定される。コアが長さの延長線上で湾曲している場合、断面QKはコアの外壁上の1点における接線に垂直になる。あるコアの長さLKは、他の各コアの長さLKとは独立している。それらのコアの長さLKは、同じであってもよいし異なっていてもよい。好ましくは、すべてのコアの長さLKは同じである。各コアは、好ましくは、1m~100kmの範囲の長さLKを有する。各コアは、直径dKを有する。あるコアの直径dKは、他の各コアの直径dKとは独立している。それらのコアの直径dKは、同じであってもよいし異なっていてもよい。好ましくは、すべてのコアの直径dKは同じである。好ましくは、各コアの直径dKは、0.1~1000μm、例えば0.2~100μm又は0.5~50μm、特に好ましくは1~30μmの範囲である。
【0361】
各コアは、コアの最大延長に垂直に、少なくとも1つの屈折率分布を有する。「屈折率分布」は、コアの最大延長に垂直な方向に屈折率が一定又は変化していることを意味する。好ましい屈折率分布は、同心円状の屈折率分布、例えば、コアの中心部に最大の屈折率を有する第1の領域が存在し、その領域がより低い屈折率を有するさらなる領域に囲まれている屈折率の同心円状のプロファイルに相当するものである。好ましくは、各コアは、その長さLKにわたって1つだけの屈折率分布を有する。あるコアの屈折率分布は、他の各コアの屈折率分布とは独立している。それらのコアの屈折率分布は、同じであってもよいし異なっていてもよい。好ましくは、すべてのコアの屈折率分布は同じである。原則として、1つのコアが複数の異なる屈折率分布を持つことも可能である。
【0362】
コアの最大延長に垂直な各屈折率分布は、最大屈折率nKを有する。コアの最大延長に垂直な各屈折率分布は、さらに低い屈折率を有することもできる。屈折率分布の最小屈折率は、屈折率分布の最大屈折率nKよりも0.5以下小さいことが好ましい。屈折率分布の最小屈折率は、屈折率分布の最大屈折率nKよりも0.0001~0.15、例えば0.0002~0.1、特に好ましくは0.0003~0.05小さいことが好ましい。
【0363】
好ましくは、コアは、いずれの場合も温度20℃、常圧(p=1013hPa)で、基準波長λr=589nm(ナトリウムD線)で測定した場合に、1.40~1.60の範囲、例えば1.41~1.59の範囲、特に好ましくは1.42~1.58の範囲の屈折率nKを有する。この点に関するさらなる詳細は、試験方法の項を参照されたい。あるコアの屈折率nKは、他の各コアの屈折率nKとは独立している。それらのコアの屈折率nKは、同じであってもよいし異なっていてもよい。好ましくは、すべてのコアの屈折率nKは同じである。
【0364】
好ましくは、光導体の各コアは、1.9~2.5g/cm3の範囲、例えば、2.0~2.4g/cm3の範囲、特に好ましくは2.1~2.3g/cm3の範囲の密度を有する。好ましくは、コアは、いずれの場合もコアの総重量に基づいて、100ppb未満、例えば20ppb未満又は5ppb未満、特に好ましくは1ppb未満の残留水分含有量を有する。あるコアの密度は、他の各コアの密度とは独立している。それらのコアの密度は、同じであってもよいし異なっていてもよい。好ましくは、すべてのコアの密度は同じである。
【0365】
光導体が複数のコアを含む場合、各コアは、他のコアとは独立に、上記の特徴を備えている。すべてのコアが同じ特徴を有することが好ましい。
【0366】
本発明によれば、コアは、少なくとも1つのジャケットM1によって取り囲まれている。ジャケットM1は、好ましくは、コアの全長にわたってコアを取り囲んでいる。好ましくは、ジャケットM1は、コアの外面、すなわちコアの外壁全体、の少なくとも95%、例えば少なくとも98%又は少なくとも99%、特に好ましくは100%についてコアを取り囲んでいる。多くの場合、コアは端部(いずれの場合も最後の1~5cm)までジャケットM1によって全体的に取り囲まれている。これは、機械的な障害からコアを保護するのに役立つ。
【0367】
ジャケットM1は、コアの断面QKのプロファイルに沿った少なくとも1つの点Pよりも低い屈折率を有する、二酸化ケイ素を含む任意の材料を含むことができる。好ましくは、コアの断面QKのプロファイルにおけるこの少なくとも1つの点は、コアの中心に位置する点である。さらには、好ましくは、コアの断面のプロファイルにおける点Pは、コアの中で最大の屈折率nKmaxを有する点である。好ましくは、ジャケットM1は、コアの断面Qのプロファイルにおける少なくとも1つの点において、コアの屈折率nKよりも少なくとも0.0001低い屈折率nM1を有する。好ましくは、ジャケットM1は、コアの屈折率nKよりも0.0001~0.5の範囲、例えば0.0002~0.4の範囲、特に好ましくは0.0003~0.3の範囲の量だけ低い屈折率nM1を有する。
【0368】
好ましくは、ジャケットM1は、0.9~1.599の範囲、例えば1.30~1.59の範囲、特に好ましくは1.40~1.57の範囲の屈折率nM1を有する。好ましくは、ジャケットM1は、一定の屈折率nM1を有する光導体の領域を形成する。一定の屈折率を有する領域は、屈折率がnM1の平均値から0.0001を超えて乖離していない領域を意味する。
【0369】
原則として、光導体はさらなるジャケットを含むことができる。特に好ましくは、さらなるジャケットの少なくとも1つ、好ましくは複数又はすべてが、各コアの屈折率nKよりも低い屈折率を有する。好ましくは、光導体は、ジャケットM1を取り囲む1つ又は2つ又は3つ又は4つ又は4を超える数のさらなるジャケットを有する。好ましくは、ジャケットM1を取り囲むさらなるジャケットは、ジャケットM1の屈折率nM1よりも低い屈折率を有する。
【0370】
好ましくは、光導体は、コアを取り囲み、ジャケットM1に取り囲まれた、すなわちコアとジャケットM1との間に位置する、1つ又は2つ又は3つ又は4つ又は4を超える数のさらなるジャケットを有する。さらには、好ましくは、コアとジャケットM1との間に位置するさらなるジャケットは、ジャケットM1の屈折率nM1よりも高い屈折率を有する。
【0371】
好ましくは、上記屈折率は、光導体のコアから最も外側のジャケットに向かって減少する。コアから最も外側のジャケットまでの屈折率の低下は、段階的に又は連続的に起こることができる。屈折率の低下は、異なる区間を有することができる。さらには、好ましくは、屈折率は、少なくとも1つのセクションでは段階的であり、少なくとも1つの他のセクションでは連続的であることができる。段差(低下量)は同じ高さでもよいし異なる高さでもよい。屈折率が低下している部分の間に、屈折率が上昇している部分を配置することは確かに可能である。
【0372】
異なるジャケットの異なる屈折率は、例えば、ジャケットM1、さらなるジャケット及び/又はコアのドーピング(不純物添加)によって構成することができる。
【0373】
コアの調製の仕方にもよるが、コアは調製の後に第1のジャケット層M0を既に有することができる。コアに直接隣接するこのジャケット層M0は、組み込みジャケット層とも呼ばれることがある。ジャケット層M0は、ジャケットM1、及び、存在する場合には、さらなるジャケットよりもコアの中間点に近い位置にある。ジャケット層M0は、一般に、光伝導や放射線伝導のためには機能しない。むしろ、ジャケット層M0は、放射線が輸送されるコアの内部に放射線を保持する役割の方が大きい。従って、コア内で伝導される放射線は、コアからジャケット層M0への界面で反射されることが好ましい。このコアからジャケット層M0への界面は、好ましくは、屈折率の変化を特徴とする。ジャケット層M0の屈折率は、好ましくは、コアの屈折率nKよりも低い。好ましくは、ジャケット層M0は、コアと同じ材料を含むが、ドーピング又は添加物に起因して、コアよりも低い屈折率を有する。
【0374】
好ましくは、少なくともジャケットM1は二酸化ケイ素製であり、以下の特徴のうち少なくとも1つ、好ましくは複数又はすべてを有する。
a)5ppm未満、特に好ましくは1ppm未満のOH含有量、
b)200ppm未満、好ましくは100ppm未満、例えば80ppm未満、特に好ましくは60ppm未満の塩素含有量、
c)200ppb未満、好ましくは100ppb未満、例えば80ppb未満、特に好ましくは60ppb未満のアルミニウム含有量、
d)5・1015/cm3未満、例えば0.1・1015~3・1015/cm3の範囲、特に好ましくは0.5・1015~2.0・1015/cm3の範囲のODC含有量、
e)1ppm未満、例えば0.5ppm未満、特に好ましくは0.1ppm未満のアルミニウム以外の金属の金属含有量、
f)log10(η(1250℃)/dPas)=11.4~log10(η(1250℃)/dPas)=12.9、及び/又はlog10(η(1300℃)/dPas)=11.1~log10(η(1300℃)/dPas)=12.2、及び/又はlog10(η(1350℃)/dPas)=10.5~log10(η(1350℃)/dPas)=11.5の範囲の粘度(p=1013hPa)、
g)6m超のカールパラメータ、
h)1・10-4未満の屈折率均質性、
i)1150℃~1250℃の範囲、特に好ましくは1180℃~1220℃の範囲の変態点Tg。
上記ppb及びppmは、それぞれジャケットM1の総重量に基づく。
【0375】
好ましくは、ジャケットは、1・10-4未満の屈折率均質性を有する。屈折率均質性は、試料、例えばジャケットM1又は石英ガラス体の各位置における屈折率の最大偏差を、その試料で測定されたすべての屈折率の平均値を基準にして示したものである。平均値を測定するためには、少なくとも7つの測定位置で屈折率が測定される。
【0376】
好ましくは、ジャケットM1は、いずれの場合もジャケットM1の総重量に基づいて、1000ppb未満、例えば500ppb未満、特に好ましくは100ppb未満のアルミニウム以外の金属の金属含有量を有する。しかしながら、多くの場合、ジャケットM1は、少なくとも1ppbのアルミニウム以外の金属の含有量を有する。このような金属は、例えば、ナトリウム、リチウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、ゲルマニウム、銅、モリブデン、チタン、鉄及びクロムである。これらは、例えば、元素として、イオンとして、又は分子の一部として、若しくはイオンの一部として、若しくは錯体の一部として存在することができる。
【0377】
ジャケットM1は、さらなる構成成分を含んでいてもよい。ジャケットM1は、好ましくは5ppm未満、例えば4.5ppm未満、特に好ましくは4ppm未満の他の構成成分を含み、このppmはいずれの場合もジャケットM1の総重量に基づく。考慮されてもよいさらなる構成成分は、例えば、炭素、フッ素、ヨウ素、臭素及びリンである。これらは、元素として、イオンとして、又は分子若しくはイオン若しくは錯体の一部として存在してもよいが、ジャケットM1は、少なくとも1ppbのSi、O、H、C、Cl以外の原子を含有することが多い。
【0378】
好ましくは、ジャケットM1は、いずれの場合もジャケットM1の総重量に基づいて、5ppm未満、例えば4ppm未満、3ppm未満、特に好ましくは2ppm未満の炭素を含む。しかしながら、多くの場合、ジャケットM1は、少なくとも1ppbの炭素含有量を有する。
【0379】
好ましくは、ジャケットM1は、OH含有量、Cl含有量又はAl含有量の均一な分布を有する。
【0380】
光導体の一実施形態では、ジャケットM1は、いずれの場合もジャケットM1及びコアの総重量に基づいて、重量で、少なくとも80重量%、例えば少なくとも85重量%、特に好ましくは少なくとも90重量%を占める。好ましくは、ジャケットM1は、いずれの場合もジャケットM1、コア、及びジャケットM1とコアとの間に位置するさらなるジャケットの総重量に基づいて、重量で、少なくとも80重量%、例えば少なくとも85重量%、特に好ましくは少なくとも90重量%を占める。好ましくは、ジャケットM1は、いずれの場合も光導体の総重量に基づいて、重量で、少なくとも80重量%、例えば、少なくとも85重量%、特に好ましくは少なくとも90重量%を占める。
【0381】
好ましくは、ジャケットM1は、2.1~2.3g/cm3の範囲、特に好ましくは2.18~2.22g/cm3の範囲の密度を有する。
【0382】
さらなる態様は、
A/本発明の第5の態様に係る石英ガラス体、又は第4の態様に係る方法によって得られる石英ガラス体を提供し、この石英ガラス体を最初に加工して、少なくとも1つの開口部を有する中空体を得る工程と、
B/上記石英ガラス体に、少なくとも1つの開口部を介して1つ以上のコアロッドを挿入して前駆体を得る工程と、
C/工程B/からの前駆体を加熱しながら延伸して、1つ以上のコア及びジャケットM1を有する光導体を得る工程と
を含む方法によって得られる光導体に関する。
【0383】
工程A/、B/及びC/は、好ましくは、第4の態様に記載された特性を特徴とする。
【0384】
当該光導体は、好ましくは、第6の態様に記載された特性を特徴とする。
【0385】
本発明の第7の態様は、発光体の製造方法であって、
(i)本発明の第5の態様に係る石英ガラス体又は第4の態様に係る方法によって得られる石英ガラス体を提供し、この石英ガラス体を最初に加工して、中空体を得る工程と、
(ii)この中空体に、必要に応じて電極を装着する工程と、
(iii)この中空体にガスを充填する工程と
を含む方法に関する。
【0386】
工程(i)
工程(i)では、石英ガラス体が提供される。工程(i)で提供された石英ガラス体は、最初に加工され、少なくとも1つの開口部、例えば、1つの開口部又は2つの開口部又は3つの開口部又は4つの開口部、特に好ましくは1つ又は2つの開口部を含む中空体が得られる。
【0387】
工程(i)には、第5の態様に係る方法又は第4の態様に係る方法によって得られる石英ガラス体が好ましい。この石英ガラス体は、好ましくは、第4又は第5の態様に記載の特性を有する。
【0388】
第7の態様に係る石英ガラス体の加工については、複数の可能性が考えられる。
【0389】
上記石英ガラス体は、原則として、当業者に公知であり開口部を有するガラス中空体の製造に適したあらゆる手段によって、開口部を有する中空体を与えるように加工されてもよい。適切な方法は、例えば、圧縮、吹き込み(ブロー)、吸い込み、又はこれらの組み合わせを含むものである。2つの開口部を有する中空体から、一方の開口部を閉じることにより、例えば溶融して1つの開口部を有する中空体を作製することも可能である。
【0390】
上記中空体は、いずれの場合も中空体の総重量に基づいて、好ましくは98~100重量%の範囲、例えば99.9~100重量%の範囲、特に好ましくは100重量%の量の二酸化ケイ素を含む材料で構成されている。
【0391】
中空体の調製に用いられる材料は、好ましくは、以下の特徴の少なくとも1つ、好ましくは複数、例えば2つ、又は好ましくはすべてを有する。
HK1. 材料の総重量に基づいて、好ましくは95重量%超、例えば97重量%超、特に好ましくは99重量%超の二酸化ケイ素含有量、
HK2. 2.1~2.3g/cm3の範囲、特に好ましくは2.18~2.22g/cm3の範囲の密度、
HK3. 中空体の内部で発生する光の量に基づいて、10~100%の範囲、例えば30~99.99%の範囲、特に好ましくは50~99.9%の範囲の、350~750nmの可視領域の少なくとも1つの波長における光透過率、
HK4. 500ppm未満、例えば400ppm未満、特に好ましくは300ppm未満のOH含有量、
HK5. 200ppm未満、好ましくは100ppm未満、例えば80ppm未満、特に好ましくは60ppm未満の塩素含有量、
HK6. 200ppb未満、例えば100ppb未満、特に好ましくは80ppb未満のアルミニウム含有量、
HK7. 5ppm未満、例えば4.5ppm未満、特に好ましくは4ppm未満の炭素含有量、
HK8. 5・1015/cm3未満のODC含有量、
HK9. 1ppm未満、例えば0.5ppm未満、特に好ましくは0.1ppm未満のアルミニウム以外の金属の金属含有量、
HK10. log10η(1250℃)=11.4~log10η(1250℃)=12.4、及び/又はlog10η(1300℃)=11.1~log10η(1350℃)=11.7、及び/又はlog10η(1350℃)=10.5~log10η(1350℃)=11.1の範囲の粘度(p=1013hPa)、
HK11. 1150~1250℃の範囲、特に好ましくは1180~1220℃の範囲の変態点Tg。
上記ppm及びppbはそれぞれ、中空体の総重量に基づく。
【0392】
工程(ii)
好ましくは、工程(i)の中空体に、ガスを充填する前に、電極、好ましくは2つの電極が装着される。好ましくは、電極は電流源に接続されている。好ましくは、電極は発光体のソケットに接続されている。
【0393】
電極の材料は、好ましくは、金属の群から選択される。原則として、電極材料は、発光体の使用条件下で、酸化、腐食、溶融等、電極としての形状や導電性が損なわれない金属であれば、あらゆる金属からも選択することができる。電極材料は、好ましくは、鉄、モリブデン、銅、タングステン、レニウム、金及び白金、又はそれらから選択される少なくとも2つからなる群から選択され、タングステン、モリブデン又はレニウムが好ましい。
【0394】
工程(iii)
工程(i)で提供され、任意に工程(ii)で電極が装着された中空体に、ガスが充填される。
【0395】
充填は、当業者に公知であり充填に適した任意のプロセスで行うことができる。好ましくは、ガスは、少なくとも1つの開口部を介して中空体に供給される。
【0396】
好ましくは、ガスを充填する前に中空体を真空にし、好ましくは2mbar未満の圧力まで真空にする。その後、ガスを導入することで、中空体にガスが充填される。これらの工程は、空気中の不純物、特に酸素を減らすために繰り返すことができる。好ましくは、これらの工程は、空気、特に酸素等の他のガス不純物の量が十分に少なくなるまで、少なくとも2回、例えば少なくとも3回、又は少なくとも4回、特に好ましくは少なくとも5回繰り返される。この手順は、1つの開口部を有する中空体に充填する場合に特に好ましい。
【0397】
2つ以上の開口部を含む中空体では、中空体は、そのうちの1つの開口部から充填することが好ましい。ガスを充填する前に中空体に存在する空気は、少なくとも1つのさらなる開口部から出ることができる。ガスは、空気等の他のガス不純物、特に酸素の量が十分に少なくなるまで、中空体を通して供給される。
【0398】
中空体には、不活性ガス、又は2種以上の不活性ガスの組み合わせ、例えば、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、又はこれらの2つ以上の組み合わせ、特に好ましくはクリプトン、キセノン、又は窒素とアルゴンとの組み合わせが充填されることが好ましい。発光体の中空体用のさらに好ましい充填材料は、重水素及び水銀である。
【0399】
好ましくは、ガスを充填した後に中空体を閉鎖して、さらなる加工中にガスが出ないようにするか、さらなる処理中に外部から空気が入らないようにするか、又はその両方を行う。この閉鎖は、キャップを溶融させるか又は置くことにより行うことができる。適切なキャップは、例えば石英ガラスのキャップ、又は発光体ソケットであり、石英ガラスのキャップは例えば中空体上に溶融される。好ましくは、中空体は溶融によって閉鎖される。
【0400】
当該発光体は、中空体と任意の電極を含む。発光体は、以下の特徴のうち少なくとも1つ、例えば少なくとも2つ、又は少なくとも3つ、又は少なくとも4つ、特に好ましくは少なくとも5つを有することが好ましい。
I.)0.1cm3~10m3の範囲、例えば0.3cm3~8m3の範囲、特に好ましくは0.5cm3~5m3の範囲の体積を有する、
II.)1mm~100mの範囲、例えば3mm~80mの範囲、特に好ましくは5mm~50mの範囲の長さ、
III.)2~360°の範囲、例えば10~360°の範囲、特に好ましくは30~360°の範囲の放射角、
IV.)145~4000nmの範囲、例えば150~450nm、又は800~4000nmの範囲、特に好ましくは160~280nmの波長範囲の光の放射、
V.)1mW~100kWの範囲、特に好ましくは1kW~100kWの範囲、又は1~100Wの範囲の電力。
【0401】
さらなる態様は、
(i)本発明の第5の態様に係る石英ガラス体、又は本発明の第4の態様に従って得られる石英ガラス体を提供し、この石英ガラス体を最初に加工して、中空体を得る工程と、
(ii)この中空体に、必要に応じて電極を装着する工程と、
(iii)この中空体にガスを充填する工程と
を含む方法によって得られる発光体に関する。
【0402】
工程(i)、(ii)及び(iii)は、好ましくは、第7の態様の過程で説明された特性を特徴とする。
【0403】
当該発光体は、好ましくは、第7の態様に記載された特性を特徴とする。
【0404】
本発明の第8の態様は、成形体の製造方法であって、
(1)本発明の第5の態様に係る石英ガラス体、又は第4の態様に係る方法によって得られる石英ガラス体を提供する工程と、
(2)この石英ガラス体を成形して、成形体を得る工程と
を含む方法に関する。
【0405】
工程(1)で提供される石英ガラス体は、本発明の第5の態様に係る石英ガラス体、又は本発明の第4の態様に係る方法によって得られる石英ガラス体である。提供される石英ガラス体は、好ましくは、第1の態様又は第5の態様の特性を有する。
【0406】
工程(2)
工程(1)で提供される石英ガラス体を成形するためには、原則として、当業者に公知であり石英ガラスを成形するのに適した任意のプロセスが可能である。好ましくは、石英ガラス体は、第1、第4及び第5の態様の文脈で説明したように成形されて、成形体が得られる。さらには、好ましくは、当該成形体は、ガラス吹きの当業者に公知の技術によって成形されてもよい。
【0407】
成形体は、原則として、石英ガラスから成形可能な任意の形状をとることができる。好ましい成形体は、例えば
- 丸底フラスコ及び平底フラスコ等の少なくとも1つの開口部を有する中空体、
- そのような中空体のための備品及びキャップ、
- ボウル及びボート(ウエハキャリア)等の覆いのない物品、
- 覆いなしで又は閉鎖可能な状態で配置された坩堝、
- シート及び窓、
- キュベット、
- 管及び中空円筒、例えば反応管、セクション管、直方体チャンバ、
- 例えば丸型又は角型の、対称型若しくは非対称型のロッド、バー及びブロック、
- 一端又は両端が閉鎖された管及び中空円筒、
- ドーム及びベル、
- フランジ、
- レンズ及びプリズム、
- 互いに溶着された部品、
- 湾曲した部品、例えば、凸状又は凹状の面及びシート、湾曲したロッド及び管
である。
【0408】
一実施形態によれば、当該成形体を成形後に処理することができる。このために、原則として、石英ガラス体の後処理に適している第1の態様に関連して記載されたすべてのプロセスが可能である。好ましくは、当該成形体は、例えば、穿孔(ドリル加工)、ホーニング、外部研削、サイズ縮小、又は延伸によって、機械的に処理することができる。
【0409】
さらなる態様は、
(1)本発明の第5の態様に係る石英ガラス体、又は本発明の第4の態様に係る方法によって得られる石英ガラス体を提供する工程と、
(2)この石英ガラス体を成形して、成形体を得る工程と
を含む方法によって得られる成形体に関する。
【0410】
工程(1)及び(2)は、好ましくは、第8の態様の過程で記載された特性を特徴とする。
【0411】
当該成形体は、好ましくは、第8の態様の課程で記載された特性を特徴とする。
【0412】
本発明の第9の態様は、基板上のコーティングの製造方法であって、
|A|第1の態様又はその実施形態に従って得られる二酸化ケイ素懸濁液、及び基板を提供する工程と、
|B|この二酸化ケイ素懸濁液の層を基板に塗布する(形成する)工程と
を含み、
コーティングが基板上に形成される方法である。
【0413】
工程|A|で提供される二酸化ケイ素懸濁液は、本発明の第1の態様に係る方法によって得られる。この二酸化ケイ素懸濁液は、第1の態様に関連して記載された実施形態に対応するさらなる特性を有していてもよい。
【0414】
工程|B|における塗布(形成)は、原則として、当業者に公知である、コーティングを行うのに適したすべての方法によって行われてよく、基板は二酸化ケイ素懸濁液で少なくとも部分的に被覆される。
【0415】
さらなる実施形態では、塗布は、二酸化ケイ素懸濁液を基板上に堆積させるか、二酸化ケイ素懸濁液に基板を浸漬させるか、又は両方の形態の組み合わせによってもよい。二酸化ケイ素懸濁液の堆積による塗布は、例えば、スピンコーティング、含浸、キャスト、滴下、スパッタリング、噴霧、ドクターブレード、刷毛塗り、又は吐出ポンプを介した印刷、又は基板へのインクジェット印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷若しくはパッド印刷によって行われてもよい。二酸化ケイ素懸濁液は、0.01μm~250μmの範囲、例えば0.1μm~50μmの範囲の乾燥前膜厚で塗布されてもよい。
【0416】
「塗布する」は、使用した二酸化ケイ素懸濁液が補助材を介して基板に塗布されることも意味すると解釈される。塗布に使用される二酸化ケイ素懸濁液は、ノズルを介して基板上に噴霧されてもよく、スパッタリングされてもよく、スロットノズルを介して塗布されてもよい。その他の対象となる方法は、カーテンキャスト及びスピンコーティングである。二酸化ケイ素懸濁液は、ロールやローラーを介して基板の表面に塗布されてもよい。公知のスプレー法又はスパッタ法は、例えば、ノズルを介したマイクロディスペンサ又はデジタル印刷である。この場合、塗布に使用される二酸化ケイ素懸濁液に力を加えてもよいし、二酸化ケイ素懸濁液を単に基板上に滴下してもよい。
【0417】
浸漬の場合は、基板は、槽の中で、二酸化ケイ素懸濁液の中で引きずられてもよい。基板が部分的にコーティングされるだけの場合は、例えばディップコーティングのように、コーティングする表面のみが二酸化ケイ素懸濁液に浸され、再び取り出されてもよい。繰り返し浸漬することで、異なるコーティングの厚さが得られてもよく、コーティングの厚さは、二酸化ケイ素懸濁液の粘度及び固体成分によって設定されてもよい。これにより、二酸化ケイ素懸濁液の乾燥前のコーティングの厚さは、0.5~1000μmの範囲、好ましくは5~250μmの範囲、特に好ましくは10~100μmの範囲で得られてもよい。
【0418】
これに続いて、コーティングの液体成分を減少させる工程|C|を行ってもよいが、必ずしもそうする必要はない。工程|C|は、コーティングの総重量に基づいてコーティングの液体成分が設定値に達するか、それを下まわるまで行われる。この設定値は、例えば、10重量%、5重量%、2重量%、さらには0.2重量%としてもよく、重量%はいずれの場合もコーティングの総重量に基づく。原則として、当業者に公知であり当業者には適していると思われるすべての方法が考慮されてもよく、特に、熱による乾燥、コーティングにガス又は混合ガスを重ねることによる乾燥、減圧の周囲圧で液体を蒸発させること、例えばマイクロ波で液体の分子を運動させること等を含む群から選択される少なくとも1つが考慮されてもよい。上記方法のうちの2つ以上の組み合わせも考えられ、その組み合わせは、空間的及び/又は時間的に同じであってもよく、空間的及び/又は時間的に連続していてもよく、空間的及び/又は時間的に重なっていてもよい。本文脈において、「重なって」は、後続の方法が開始されるときに、第1の方法がまだ完了していないことを意味する。
【0419】
以下、本発明を図で説明する。図は縮尺に忠実ではなく、本発明を制限することを意図していない。
【0420】
図の詳細な説明
図1は、二酸化ケイ素懸濁液を製造するための方法であって、少なくとも、(i)二酸化ケイ素粉末を提供する工程101と、(ii)液体を提供する工程102と、(iii)上記二酸化ケイ素粉末を上記液体と混合して、スラリーを得る工程103と、(iv)このスラリーを超音波で処理して、前駆体懸濁液を得る工程104と、(v)この前駆体懸濁液の少なくとも一部を第1の多段式フィルタ装置に通す工程105とを含む方法を模式的に示す。
【0421】
図2は、第1のフィルタ211、第2のフィルタ212、及び第3のフィルタ213をそれぞれ有する3つのフィルタ工程を含むフィルタ配置を模式的に示す。これらは下流の順に配置されている。
【0422】
図3は、3つのフィルタ工程を含むさらなるフィルタ配置を模式的に示す。二酸化ケイ素懸濁液をフィルタ311を備えた第1のフィルタ工程に通した後、この懸濁液は第2のフィルタ工程に向かう途中で分割され、懸濁液の一部は第2のフィルタ工程のフィルタA312を通過し、懸濁液の別の一部はフィルタB313を通過する。その後、懸濁液は再び合わされ、フィルタ314を備えた第3のフィルタ工程に通される。
【0423】
図4は、工程411、412、413を含む石英ガラス体の製造方法を模式的に示す。工程i.)411では、二酸化ケイ素造粒体が提供される。工程ii.)412では、二酸化ケイ素造粒体からガラス融液が形成される。工程iii.)413では、ガラス融液の少なくとも一部から石英ガラス体が形成される。
【0424】
図5のグラフa)は、本発明の方法の基礎となる二酸化ケイ素粉末のスラリーを例として示す。このグラフは、ある量の1μm未満の粒子サイズの十分に分散した粒子を示すが、1~5μm及び10~100μmの範囲の一連の塊状物も示す。グラフb)は、グラフa)に係る二酸化ケイ素スラリーを分散させることによって得られた二酸化ケイ素懸濁液の粒子サイズ分布を示す。この図では、すべての粒子が分散している。1μmを超える二酸化ケイ素粒子の粒子サイズは示されていない。その後の濾過では、二酸化ケイ素粒子の
図5b)の粒子サイズ分布が維持されるが、二酸化ケイ素ではない粒子が分離される。
【0425】
図6は、溶融ポットから取り出した後の約1mの(熱い)ガラス体の比較画像を示す。これらの図において、使用された融液は、a)濾過されていない二酸化ケイ素懸濁液から形成された造粒体であり、b)使用された融液が、本発明に従って濾過された二酸化ケイ素懸濁液の造粒体であるガラス体であり、c)使用された融液が、例15-4のような造粒体であるガラス体、すなわち、焼成シリカの懸濁液が、濾過の前にボールミル(酸化ジルコンのボール及びポリウレタンでコーティングされたカップ)で処理されたガラス体である。
【0426】
図7は、2種の冷却した石英ガラス体を示す。画像a)の石英ガラス体は、本発明のような処理をしていない二酸化ケイ素粒子の懸濁液から作られたものである。大きい気泡がたくさん含まれている。画像b)の石英ガラス体は、本発明に係る二酸化ケイ素懸濁液に基づいて作られたものである。気泡はほとんど見られない。
【0427】
試験方法
a. OH含有量
ガラスのOH含有量は、赤外分光法によって測定する。D.M.Dodd及びD.M.Fraser、「Optical Determinations of OH in Fused Silica」(J.A.P. 37、3991(1966))の方法を採用する。同書に記載されている装置の代わりに、FTIR分光計(フーリエ変換赤外分光計、Perkin Elmer(パーキン・エルマー)の現在のSystem 2000)を採用する。スペクトルの解析は、原則として、約3670cm-1の吸収バンド又は約7200cm-1の吸収バンドのどちらによっても可能である。吸収バンドの選択は、OH吸収による透過率の低下が10~90%であることに基づく。
【0428】
b. 酸素欠乏センター(ODC)
定量的な検出のために、ODC(I)吸収を、165nmで、1~2mmの厚さを有するプローブにおける透過率測定により、McPherson,Inc.(マクファーソン)(米国)の真空UV分光計、モデルVUVAS 2000を用いて測定する。
そのとき、
N=α/σ
上記式中、
N=欠陥濃度[1/cm3]
α=ODC(I)バンドの光吸収[1/cm、底e]
σ=有効断面積[cm3]
ただし、有効断面積はσ=7.5・l0-17cm2に設定される(L.Skuja、「Color Centers and Their Transformations in Glassy SiO2」、Lectures of the summer school 「Photosensitivity in optical Waveguides and glasses」、1998年7月13~18日、フィッツナウ(Vitznau)、スイスより)。
【0429】
c. 元素分析
c-1)固体試料を粉砕する。次に、約20gの試料を、それを耐HF性の容器にすべて導入し、HFで覆い、100℃で1時間熱処理することにより清浄化する。冷却後、酸を捨て、試料を高純度水で数回洗浄する。その後、この容器及び試料を乾燥庫内で乾燥させる。
【0430】
次に、約2gの固体試料(上記のように清浄化した粉砕材料;前処理をしていない塵埃(ダスト)等)を耐HF性の抽出容器に秤量し、15mlのHF(50重量%)に溶解する。抽出容器を密閉し、試料が完全に溶解するまで100℃で熱処理する。その後、この抽出容器を開けて、溶液が完全に蒸発するまで、100℃でさらに熱処理する。その間、抽出容器には15mlの高純度水を3回充填する。分離した不純物を溶解するために、1mlのHNO3を抽出容器に導入し、高純度水を15mlまで充填する。これで試料溶液の準備が整う。
【0431】
c-2)ICP-MS/ICP-OES測定
OESを採用するか又はMSを採用するかは、予想される元素濃度による。典型的には、MSの測定値は1ppbであり、OESの測定値は10ppbである(いずれも秤量した試料に基づく)。上記測定装置による元素濃度の測定は、装置メーカー(ICP-MS:Agilent 7500ce、ICP-OES:Perkin Elmer 7300 DV)の規定に従い、かつ較正用の認証済みの基準液を用いて行う。次いで、装置により測定した溶液(15ml)中の元素濃度を、プローブの元の重量(2g)に基づいて変換する。
【0432】
注:当該元素濃度を測定するためには、酸、容器、水、及び装置が十分に純粋でなければならないことに留意しなければならない。これは、石英ガラスを使わずにブランク試料を抽出することにより確認する。
【0433】
このようにして以下の元素を測定する:Li、Na、Mg、K、Ca、Fe、Ni、Cr、Hf、Zr、Ti、(Ta)、V、Nb、W、Mo、Al。
【0434】
c-3)液体として存在する試料の測定は、工程c-1)による試料調製を省略して、上述のように行う。15mlの液体試料を抽出フラスコに導入する。元の試料重量に基づく変換は行わない。
【0435】
d. 液体の密度の決定
液体の密度を測定するために、正確に規定された体積の液体を、その液体及びその成分に対して不活性な測定装置に秤量し、容器の空重量及び充填後の重量を測定する。密度は、2つの重量測定値の差を、導入した液体の体積で割った値として与えられる。
【0436】
e. フッ化物の測定
石英ガラス試料15gを粉砕し、70℃の硝酸で処理することにより清浄化する。次いで、この試料を高純度水で数回洗浄し、次いで乾燥させる。試料2gをニッケル坩堝に量り入れ、10gのNa2CO3及び0.5gのZnOで覆う。坩堝をNi蓋で閉じ、1000℃で1時間焙焼する。その後、ニッケル坩堝に水を入れて、溶融クラストが完全に溶けるまで煮沸する。この溶液を200mlのメスフラスコに移し、高純度水を200mlまで入れる。未溶解成分の沈降後、30mlを取り、100mlメスフラスコに移し、0.75mlの氷酢酸及び60mlのTISABを加え、高純度水で満たす。この試料溶液を150mlのガラスビーカーに移す。
【0437】
試料溶液中のフッ化物含有量の測定は、予想される濃度範囲に適したイオン感応性(フッ化物)電極、及びメーカーが規定する表示装置を用いて、ここでは、Wissenschaftlich-Technische Werkstaetten GmbH(ヴィッセンシャフトリッヒ・テヒニッシェ・ヴェルクシュテッテン)製のpMX 3000/pH/IONに接続されたフッ化物イオン選択性電極及び参照電極F-500及びR503/Dを用いて行う。溶液中のフッ化物濃度、希釈倍率、試料重量を用いて、石英ガラス中のフッ化物濃度を算出する。
【0438】
f. 塩素の測定(50ppm以上)
15gの石英ガラス試料を粉砕し、約70℃の硝酸で処理することにより清浄化する。その後、この試料を高純度水で数回洗浄し、次いで乾燥させる。次に、試料2gを圧力容器用のPTFE製インサートに充填し、15mlのNaOH(c=10mol/l)で溶解し、PTFE製の蓋で閉じて圧力容器に入れる。圧力容器を閉じ、約155℃で24時間熱処理する。冷却後、PTFE製インサートを取り出し、溶液を100mlのメスフラスコにすべて移す。そこに10mlのHNO3(65重量%)及び15mlの酢酸緩衝液を加え、冷却し、100mlまで高純度水を満たす。この試料溶液を150mlのガラスビーカーに移す。この試料溶液は5~7の範囲のpH値を有する。
【0439】
試料溶液中の塩化物含有量の測定は、予想される濃度範囲に適したイオン感応性(塩化物)電極、及びメーカーが規定する表示装置を用いて、ここではWissenschaftlich-Technische Werkstaetten GmbH製のpMX 3000/pH/IONに取り付けられた型番Cl-500の電極及び型番R-503/Dの参照電極を用いて行う。
【0440】
g. 塩素含有量(50ppm未満)
石英ガラス中の塩素含有量50ppm未満~0.1ppmは中性子放射化分析(NAA)によって測定する。このために、測定対象の石英ガラス体から直径3mm、長さ1cmのボアを3つ採取する。これらを分析のために研究機関、今回はドイツのマインツにあるJohannes-Gutenberg University(ヨハネス・グーテンベルク大学)のinstitute for nuclear chemistry(核化学研究所)に送る。塩素による試料の汚染を排除するために、測定の直前に現地でHF浴で試料を徹底的に洗浄した。各ボアは数回測定する。その後、その結果とボアは研究所から返送される。
【0441】
h. 光学特性
石英ガラス試料の透過率は、Perkin Elmer製の市販の回折格子型分光計又はFTIR型分光計(Lambda 900[190~3000nm]又はSystem 2000[1000~5000nm])を用いて測定する。必要な測定範囲に応じて選択を行う。
【0442】
絶対透過率を測定するために、試料体を平行平面上で研磨し(表面粗さRMS<0.5nm)、超音波処理によって表面の残留物をすべて除去する。試料の厚さは1cmである。不純物、ドーパント等による強い透過率の低下が予想される場合には、装置の測定範囲内に収まるように、より厚い試料又はより薄い試料を選択することができる。放射線が試料を通過する際にわずかなアーティファクトが発生するだけで、同時に十分に検出可能な効果が測定される試料の厚さ(測定長さ)が選択される。
【0443】
不透明度の測定では、試料を積分球の前に置く。不透明度は、測定された透過率の値Tを用いて、式
O=1/T=I0/I
により算出する。
【0444】
i. 管又はロッド内の屈折率及び屈折率分布
管/ロッドの屈折率分布は、York Technology Ltd.(ヨーク・テクノロジー)製のPreform Profiler P102又はP104を用いて特性評価することができる。このために、ロッドを横たわった状態で測定チャンバ内に置き、チャンバをしっかりと閉じる。次いで、この測定チャンバに、試験波長である633nmにおける最外のガラス層の屈折率に非常に近い633nmにおける屈折率を有する液浸オイルを充填する。次いで、レーザービームが測定チャンバを通過する。測定チャンバの背後(放射線の方向)に、(測定チャンバから出る放射線と比較した、測定チャンバに入る放射線の)偏角を測定する検出器を装着する。ロッドの屈折率分布が半径方向に対称であると仮定して、直径方向の屈折率分布は、逆アーベル変換により再構築することができる。これらの計算は、装置メーカーであるYorkのソフトウェアによって行われる。
【0445】
試料の屈折率は、上記と同様のYork Technology Ltd.のPreform Profiler P104で測定する。等方性の試料の場合、屈折率分布を測定すると、1つの値、屈折率、だけが与えられる。
【0446】
j. 炭素含有量
二酸化ケイ素造粒体及び二酸化ケイ素粉末の表面炭素含有量の定量的な測定は、Leco Corporation(レコ・コーポレーション)、米国の炭素分析器RC612を用いて、すべての表面炭素汚染(SiCを除く)を酸素で完全に酸化して二酸化炭素を得ることによって行う。このために、4.0gの試料を秤量し、石英ガラスの皿に入れて炭素分析器に導入する。試料を純酸素に浸し、180秒間900℃に加熱する。生成したCO2は、炭素分析器の赤外線検出器により測定する。これらの測定条件下では、検出限界は1ppm(重量ppm)以下の炭素である。
【0447】
上記の炭素分析器を用いたこの分析に適した石英ガラスボートは、実験用品市場でLECO番号781-335を有するLECO分析器用消耗品として、この場合はDeslis Laborhandel(デスリス・ラボールハンデル)(フルールシュトラセ(Flurstrasse) 21、D-40235 デュッセルドルフ(ドイツ))からDeslis番号LQ-130XLとして入手することができる。このようなボートは、約25mm/60mm/15mmの幅/長さ/高さ寸法を有する。この石英ガラスボートに、その高さの半分まで試料材料を充填する。二酸化ケイ素粉末の場合、1.0gの試料材料の試料重量に到達することができる。そのとき、検出下限は、1重量ppm未満の炭素である。同じボート内で、同じ充填高さについて、4gの二酸化ケイ素造粒体の試料重量に到達する(100~500μmの範囲の平均粒子サイズ)。その場合、検出下限は、約0.1重量ppmの炭素である。検出下限は、試料の測定面積分が空試料の測定面積分の3倍以下であるとき、到達される(空試料=上記の方法だが、空の石英ガラスボートによる)。
【0448】
k. カールパラメータ
カールパラメータ(「ファイバーカール」とも呼ばれる)は、DIN EN 60793-1-34:2007-01(規格IEC 60793-1-34:2006のドイツ版)に従って測定する。測定は、Annex AのセクションA.2.1、A.3.2、及びA.4.1に記載の方法に従って行う(「極端な技法(extrema technique)」)。
測定は、付属書AのA.2.1、A.3.2及びA.4.1(「extrema technique」)の項に記載された方法に従って行われる。
【0449】
l. 減衰
減衰は、DIN EN 60793-1-40:2001(規格IEC 60793-1-40:2001のドイツ版)に従って測定する。測定は、付属書に記載の方法(「カットバック法」)に従って、λ=1550nmの波長で行う。
【0450】
m. スラリー又は懸濁液の粘度
スラリーを、脱塩水(Direct-Q 3UV、Millipore(ミリポア)、水質:18.2MΩcm)を用いて、30重量%の固形分濃度で作製する。次いで、粘度をAnton-Paar(アントン・パール)社製のMCR102で測定する。このために、粘度を毎分5回転(5rpm)で測定する。測定は、23℃の温度及び1013hPaの気圧で行う。懸濁液の場合も同じ手順を用いる。
【0451】
n. チキソトロピー及びレオペクシー
- n1. チキソトロピー
スラリー又は懸濁液を、脱塩水(Direct-Q 3UV、Millipore、水質:18.2MΩcm)を用いて、30重量%の固形分濃度で作製する。次いで、チキソトロピーを、円錐平板型配置のAnton-Paar社製のMCR102で測定する。このために、粘度は、毎分5回転(5rpm)及び毎分50回転(50rpm)で測定する。第1の値と第2の値の商が、チキソトロピー指数を示す。測定は、23℃の温度で行う。
【0452】
- n2. レオペクシー
スラリー又は懸濁液を、脱塩水(Direct-Q 3UV、Millipore、水質:18.2MΩcm)を用いて、60重量%の固形分濃度となるように作製する。次いで、25℃に調温したスラリー又は懸濁液の粘度を、Malvern Panalytical Ltd.(マルバーン・パナリティカル)のパドル撹拌機付きKinexus pro+レオメーターで、25/s又は100/sの一定せん断速度で15分間測定する。
【0453】
o. スラリーのゼータ電位
ゼータ電位測定のために、ゼータ電位セル(Flow Cell、Beckman Coulter(ベックマン・コールター))を用いる。試料を脱塩水(Direct-Q 3UV、Millipore、水質:18.2MΩcm)中に溶解して、1g/Lの濃度を有する20mL溶液を得る。0.1mol/L及び1mol/Lの濃度を有するHNO3溶液並びに0.1mol/Lの濃度を有するNaOH溶液の添加を通じて、pHを7に設定する。測定は、23℃の温度で行う。
【0454】
p. スラリー又は懸濁液の等電点
等電点、ゼータ電位測定セル(Flow Cell、Beckman Coulter)、及び自動滴定装置(DelsaNano AT、Beckman Coulter)を用いる。試料を脱塩水(Direct-Q 3UV、Millipore、水質:18.2MΩcm)中に溶解して、1g/Lの濃度を有する20mL溶液を得る。0.1mol/L及び1mol/Lの濃度を有するHNO3溶液並びに0.1mol/Lの濃度を有するNaOH溶液の添加により、pHを変化させる。等電点は、ゼータ電位が0に等しいpH値である。測定は、23℃の温度で行う。
【0455】
q. スラリー又は懸濁液のpH値
スラリーのpH値は、Wissenschaftlich-Technische-Werkstaetten GmbH製のWTW 3210を用いて測定する。WTW製のpH 3210 Set 3を電極として用いる。測定は、23℃の温度で行う。
【0456】
r. 固形分含有量
スラリー又は懸濁液の材料の計量部分m1を、500℃に4時間加熱し、冷却後再計量する(m2)。固形分含有量wは、m2/m1×100[重量%]として与えられる。
【0457】
s. かさ密度
バルク材のかさ密度は、規格DIN ISO 697:1984-01に従って、Powtec(パウテック)製のSMG 697で測定する。バルク材料(二酸化ケイ素粉末又は造粒体)は、塊を形成しない。
【0458】
t. タンピング密度
バルク材のタンピング密度は、規格DIN ISO 787:1995-10に基づいて測定する。二酸化ケイ素粉末及び二酸化ケイ素造粒体は、バルク材として特に適している。
【0459】
u. 細孔径分布の測定
細孔径分布は、DIN 66133に従って測定する(480mN/mの表面張力及び140°の接触角で)。3.7nmより小さい細孔径の測定については、Porotec(ポロテック)社製のPascal 400を使用する。3.7nm~100μmの細孔径の測定については、Porotec製のPascal 140を使用する。試料を、測定前に圧力処理に供する。このために、手動の油圧プレス機を使用する(Specac Ltd.(スペックアク))(リバーハウス(River House)、97 クレイアベニュー(Cray Avenue)、オーピントン(Orpington)、ケント(Kent) BR5 4HE、英国)製の注文番号15011)。250mgの試料材料を計量して、Specac Ltd.製の13mmの内径を有する「ペレットダイ」に入れ、ディスプレイに従って1tの荷重を加える。この荷重を、5sにわたって維持し、必要に応じて再調整する。次いで、試料に対する荷重を解除し、試料を再循環空気乾燥棚内で4時間にわたって105±2℃で乾燥させる。
【0460】
この試料を計量し、0.001gの精度を有するタイプ10の針入度計に入れる。測定の良好な再現性を提供するために、針入度計は、「使用するステム体積」、すなわち針入度計を充填するために使用されるHg体積の百分率が全Hg体積の20%~40%の範囲にあるように、選択する。次いで、針入度計をゆっくり50μmHgに排気減圧し、この圧力で5分間放置した。以下のパラメータ、全細孔容積、全細孔表面積(円筒状の細孔を仮定して)、平均細孔半径、モーダルな細孔半径(最も多く見られる細孔半径)、第2ピーク細孔半径(μm)、は測定装置のソフトウェアにより直接提供される。
【0461】
v. 一次粒子サイズ
一次粒子サイズは、走査電子顕微鏡(SEM)モデルZeiss Ultra 55を使用して測定する。試料を脱塩水(Direct-Q 3UV、Millipore、水質:18.2MΩcm)中に懸濁させて、極めて希薄な懸濁液を得る。この懸濁液を、超音波プローブ(UW 2070、Bandelin electronic(バンデリン・エレクトロニック)、70W、20kHz)で1分間処理し、次いで炭素粘着パッドに供する。
【0462】
w. 懸濁液中の平均粒子サイズ
懸濁液中の平均粒子サイズは、Malvern Instruments Ltd.(英国)から入手可能なMastersizer 2000をユーザマニュアルに従って使用し、レーザー偏向法を使用して測定する。試料を脱塩水(Direct-Q 3UV、Millipore、水質:18.2MΩcm)中に懸濁させて、1g/Lの濃度を有する20mLの懸濁液を得る。この懸濁液を、超音波プローブ(UW 2070、Bandelin electronic、70W、20kHz)で1分間処理する。
【0463】
x. 固形物の粒子サイズ及びコアサイズ
固形物の粒子サイズ及びコアサイズは、Retsch Technology GmbH(レッチェ・テクノロジー)(ドイツ)から入手可能なCamsizer XTをユーザマニュアルに従って使用して測定する。ソフトウェアは、試料のD10、D50、及びD90の値を与える。
【0464】
y. BET測定
比表面積の測定については、DIN ISO 9277:2010に従って静的容量BET法を使用する。BET測定については、SMART法(「適応的分注速度による収着法(Sorption Method with Adaptive dosing Rate」)に従って動作する「NOVA 3000」又は「Quadrasorb」(Quantachrome(カンタクローム)から入手可能)を使用する。ミクロ細孔分析を、t-プロット法(p/p0=0.1~0.3)を使用して行い、メソ細孔分析を、MBET法(p/p0=0.0~0.3)を使用して行う。基準材料として、Quantachromeから入手可能な標準アルミナSARM-13及びSARM-214を使用する。測定セル(清浄かつ乾燥)の風袋重量を計量する。導入される試料材料及びフィラーロッドが測定セルをできる限り満たし、デッドスペースが最小限に低減されるように、測定セルの種類を選択する。試料材料を、測定セル内に導入する。測定値の予想値が10~20m2/gに対応するように、試料材料の量を選択する。測定セルをBET測定装置(フィラーロッドなし)の焼成位置に固定し、<200mbarに排気減圧する。排気減圧の速度は、材料が測定セルから漏出しないように設定する。焼成を、この状態で200℃で1時間にわたって行う。冷却後、試料が充填された測定セルを計量する(生の値)。次いで、風袋重量を、生の重量値から減じる=正味重量=試料の重量。次いで、充填ロッドを測定セル内に導入し、これもやはりBET測定装置の測定位置に固定する。測定の開始前に、試料の識別及び試料の重量をソフトウェアに入力する。測定を開始する。窒素ガス(N2 4.0)の飽和圧力を測定する。測定セルを排気減圧し、窒素浴を使用して77Kに冷却する。デッドスペースを、ヘリウムガス(He 4.6)を使用して測定する。測定セルを再び排気減圧する。少なくとも5つの測定点による多点分析を行う。N2 4.0を吸収剤として使用する。比表面積は、m2/gで与えられる。
【0465】
z. ガラス体の粘度
ガラスの粘度は、TA Instruments(ティーエー・インスツルメンツ)製の型番401のビームベンディング式粘度計を、Windows 10で動作するメーカーのソフトウェアWinTA(現行バージョン9.0)と共に使用して、DIN ISO 7884-4:1998-02規格に従って測定する。支持体間の支持幅は、45mmである。長方形の断面を有する試料ロッドを、均質な材料の領域から切り出す(試料の頂面及び底面は、少なくとも1000グレインの仕上げを有する)。加工後の試料表面は、粒度=9μm及びRA=0.15μmを有する。試料ロッドは、以下の寸法、長さ=50mm、幅=5mm、及び高さ=3mm(規格文書と同様に、長さ、幅、高さの順に書かれている)、を有する。3つの試料を測定し、平均を計算する。試料表面に密着した熱電対を使用して、試料温度を測定する。以下のパラメータ、加熱速度=1500℃の最大値まで25K、荷重重量=100g、最大曲げ=3000μm(規格文書からの相違)、を使用する。
【実施例】
【0466】
以下、本発明を実施例により説明する。本発明は実施例に限定されるものではない。
【0467】
E.1. 二酸化ケイ素粉末から二酸化ケイ素造粒体の製造
E15-x:焼成シリカ(BET=30m2/g、懸濁液中の平均粒子サイズ=100nm)のスラリーを、撹拌機/パドル形状を備えたミキサーで脱イオン水(L=0.1μS/cm)に入れ、均質化した。均質化された混合物の固形分は55重量%であった。E15-2、E15-3の場合には、次に、表2に示すように、懸濁液を超音波発生装置で処理した。その後、すべての懸濁液E15-xをフィルタ配置に通した。濾過前の粒子サイズ及び元素分析を表3に示す。
【0468】
例E15-1~E15-4では、3つのフィルタ番号1.~3.を有するフィルタ配置(1.から2.を経て3.までの下流への配列)を選択した。これは以下の通りであった。
1.フィルタ:Acura Multiflow(登録商標)(PP多層デプスフィルタ)、フィルタ目開き10μm、分離率80%、
2.フィルタ:Acura Promelt(登録商標)(PPデプスフィルタ)、フィルタ目開き1μm、分離率99.9%、
3.フィルタ:Acura Multiflow(登録商標)(PP多層デプスフィルタ)、フィルタ目開き0.5μm、分離率80%。
【0469】
例E15-1は、上記のように製造したが、超音波処理はしなかった。
【0470】
E15-2では、ブースターB4-1.2及びFC100L1K-1Sスルーフローセルを備えたチタンプローブBS4d55を備えたモデルUIP 1000 hdT-230超音波発生装置(Hielscher Ultrasonics GmbH(ヒールシャー・ウルトラソニクス)、テルトウ(Teltow)(ドイツ))を選択した。950W/リットルの電力密度、180l/hの処理量を選択した。
【0471】
E15-3では、550W/リットルの電力密度及び250l/hの処理量でBandelin(ベルリン、(ドイツ))製のボルテックスリアクターブロックWB4-1604超音波発生装置を選択した。
【0472】
例E15-4では、手順はE-15-xに記載の通りであったが、超音波の代わりに、精密濾過を行う前に、以下の動作パラメータ、速度900rpm、処理量250l/h、ミルボールサイズ500μmのNetzsch Feinmahltechnik GmbH(ネッチ・ファインマール・テヒニーク)、ゼルプ(Selb)(ドイツ)製のボールミルモデルDiskus 20での処理を行った。
【0473】
【0474】
【0475】
例15-1と他の例E15-2~E15-4とを比較すると、分散工程の後、追加的に分散させなかった比較懸濁液に比べて、懸濁液中の平均粒子サイズが明らかに低く、粒子サイズの分布が明らかに狭いことが分かる。
【0476】
950W/リットルの電力密度の超音波による分散は、小さな平均粒子サイズでは良好な均質化を示すが、分析証明ではSi、O、H、C及びCl以外の元素、特に金属原子の含有量が増加している。石英ガラスへのさらなる加工では、これらは不溶性の粒子又はガスの泡を形成することを意味する。これらの粒子は、フィルタ配置では一部しか保持されない。分散のためにボールミルを使用した場合、同等のさらに顕著な知見が観察される。
【0477】
本発明に係る例E15-2及びE15-3は、良好で一貫した分散を示し、Si、O、H、C及びCl以外の元素の低い含有量を示す。Si、O、H、C及びCl以外の元素の粒子の最大部分が、フィルタ配置に保持される。
【0478】
例E15-3及びE15-4のフィルタ配置は、例E15-1と比較して、交換されるまでの使用寿命(フィルタ配置使用寿命)が少なくとも8倍長いことを示しているが、E15-4では、ボールミルによる分散工程による金属イオンの注入量がE15-3よりもかなり高い。
【0479】
これにより、より純度の高い二酸化ケイ素懸濁液が得られ、同時にフィルタ配置の使用寿命も長くなる。
【0480】
ボールミルで分散させた場合の金属(Ca、Co、Cr、Cu、Fe、Ge、Hf、K、Li、Mg、Mn、Mo、Na、Nb、Ni、Ti、V、W、Zn、Zr)の注入量は、超音波で分散させた場合よりもかなり高い。
【0481】
2. フィルタ配置におけるフィルタの組み合わせの違い
E16-x:焼成シリカ(BET=30m2/g、懸濁液中の平均粒子サイズ=100nm)のスラリーを、撹拌機/パドル形状を備えたミキサーで脱イオン水(L=0.1μS/cm)に入れ、前と同様に均質化した。均質化された混合物の固形分は63重量%であった。その後、すべてのスラリーを超音波発生装置で処理した(定格:550W/リットル、処理量:250l/h、処理時間:30秒)。その後、すべてのE16-x懸濁液をフィルタ配置に通した。フィルタ配置は、3つのフィルタ番号1.~3.で構成されていた(1.から2.を経て3.までの下流への配列)。
使用したフィルタは以下の通りであった(表4)。
【0482】
【0483】
Multiflowフィルタは、Fuhr GmbH(フール)、55270 クライン-ヴィンターンハイム(Klein-Winternheim)(ドイツ)から入手可能である。それらのフィルタは、高さ:20(20インチ(50.8cm))、材質:ポリプロピレン、グラデーション:4(4層)、アダプター:F3(フィン付き222アダプター)の構成で使用した。
【0484】
Promeltフィルタも、Fuhr GmbHから入手可能である。それらのフィルタは、高さ:20(20インチ(50.8cm))、材質:ポリプロピレン、グラデーション:1(βレート=1000)(4層)、アダプター:F3(フィン付き222アダプター)の構成で使用した。
【0485】
amaPure TSフィルタは、Filtration Group GmbH(フィルトラツィオン・グループ)、シュライフバッハ通り(Schleifbachweg) 45、74613 エーリンゲン(Oehringen)(ドイツ)(旧Mahle Industriefiltration(マーレ・インダストリーフィルトラツィオン))から入手できる。それらのフィルタは、高さ:20インチ(50.8cm)、材質:ポリプロピレン、バージョン:X8の構成で使用した。
【0486】
フィルタ配置における3つのフィルタの各組み合わせを表5に示す。
【0487】
観察結果
i. E16-1~E16-8に含まれる懸濁液の造粒性は「良好」であることがわかった。「良好」は、すべての懸濁液が造粒体化に適していることを意味する。
ii. 各例の造粒体から製造された石英ガラスのブリスターは、例E16-1~E16-3及びE16-7及びE16-8について「良好」であった。「良好」は、気泡がほとんどなく販売可能な石英ガラスの品質であることを意味する。そのような石英ガラスを
図7のb)に示す。例E16-4~E16-6のブリスターは「中程度」と評価した。「中程度」は、気泡の数が多く、限定的にしか販売できないと考えられる石英ガラスの品質を意味する。
iii. 金属イオンの注入量は徹底的に少なく、D90とD10との比で表される粒子サイズ分布も低かった。
iv. フィルタの使用寿命に応じて、短い使用寿命(1000リットル未満)及び長い使用寿命(1000リットル超)が観察された。
【0488】
【0489】
3. 超音波処理
E17-x:焼成シリカ(BET=30m2/g、懸濁液中の平均粒子サイズ=100nm)のスラリーを、撹拌機/パドル形状を備えたミキサーで、脱イオン水(L=0.1μS/cm)中で前と同様に均質化した。均質化された混合物の固形分は63重量%であった。その後、すべてのスラリーを超音波発生装置で処理した。超音波処理パラメータを表6にまとめる。すべての懸濁液E17-xを、続いて例E15-xと同じフィルタ配置に通した。
【0490】
観察結果
i. 高い超音波出力では、フィルタの上流にある懸濁液の平均粒子サイズは、低い超音波出力の場合よりも幾分低い。同時に、金属イオン、及び(ひいては)Si、O、H、C、Cl以外のイオンの含有量が明らかに高い。
ii. 同じ処理時間(10秒(s))で、550W/リットルの超音波出力での金属イオンの注入量は、950W/リットルの場合よりも明らかに低い。D10/D90の粒子サイズ分布はわずかに異なるだけである。550W/リットルでの処理時間を2倍の20秒にすると、950W/リットル及び10秒での処理と同等の粒子サイズ及び分布が、超音波処理により明らかに低い金属イオン濃度で得られる。
iii. 処理時間が長くなると、金属イオン濃度が高くなる。
【0491】
【符号の説明】
【0492】
101 工程(i)
102 工程(ii)
103 工程(iii)
104 工程(iv)
105 工程(v)
211 第1のフィルタ
212 第2のフィルタ
213 第3のフィルタ
311 フィルタを用いる第1の一フィルタ工程
312 第2フィルタ工程、フィルタA
313 第2フィルタ工程、フィルタB
314 フィルタを用いる第3のフィルタ工程
411 工程i.)
412 工程ii.)
413 工程iii.)