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特許7324936光演算装置、及び、光演算装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-02
(45)【発行日】2023-08-10
(54)【発明の名称】光演算装置、及び、光演算装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/00 20210101AFI20230803BHJP
   G02B 5/18 20060101ALI20230803BHJP
【FI】
G02B7/00 G
G02B7/00 F
G02B5/18
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022511649
(86)(22)【出願日】2021-02-18
(86)【国際出願番号】 JP2021006061
(87)【国際公開番号】W WO2021199761
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-07-13
(31)【優先権主張番号】P 2020064138
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】山岸 裕幸
【審査官】岡田 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-338846(JP,A)
【文献】特開2010-160474(JP,A)
【文献】特開2005-316414(JP,A)
【文献】特開2004-144973(JP,A)
【文献】特開2000-009980(JP,A)
【文献】特開平09-127322(JP,A)
【文献】特開2000-199812(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/00
G02B 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光硬化樹脂により構成された複数の平面状光回折素子を含む光回折素子群と、
前記光回折素子群を収容する筒体であって、その内側面に前記光回折素子群を構成する各平面状光回折素子の外縁の少なくとも一部が固定された筒体と、を備え、
前記筒体は、前記光硬化樹脂を硬化させるための光を透過する、
ことを特徴とする光演算装置。
【請求項2】
光硬化樹脂により構成された複数の平面状光回折素子を含む光回折素子群と、
前記光回折素子群を収容する筒体であって、その内側面に前記光回折素子群を構成する各平面状光回折素子の外縁の少なくとも一部が固定された筒体と、を備え、
前記光回折素子群に含まれる2つの平面状光回折素子であって、互いに隣接する2つの平面状光回折素子は、前記光硬化樹脂によって構成された柱体によって互いに連結されている、
ことを特徴とする光演算装置。
【請求項3】
光硬化樹脂により構成された複数の平面状光回折素子を含む光回折素子群と、
前記光回折素子群を収容する筒体であって、その内側面に前記光回折素子群を構成する各平面状光回折素子の外縁の少なくとも一部が固定された筒体と、を備え、
前記光回折素子群には、屈折率が個別に設定された複数のマイクロセルを有する平面状光回折素子が少なくとも一つ含まれている、
ことを特徴とする光演算装置。
【請求項4】
光硬化樹脂により構成された複数の平面状光回折素子を含む光回折素子群と、
前記光回折素子群を収容する筒体であって、その内側面に前記光回折素子群を構成する各平面状光回折素子の外縁の少なくとも一部が固定された筒体と、を備え、
最後段の前記平面状光回折素子の後段に、赤外光を可視光に変換する光変換層を備える、
ことを特徴とする光演算装置。
【請求項5】
最後段の前記平面状光回折素子の後段に、前記赤外光又は前記可視光を拡散させる拡散層をさらに含む、
ことを特徴とする請求項4に記載の光演算装置。
【請求項6】
前記最後段の平面状光回折素子から前記拡散層までの距離を規定するスペーサを更に含む、
ことを特徴とする請求項5に記載の光演算装置。
【請求項7】
前記筒体に囲まれた空間には、液体又は固体が充填されている、
ことを特徴とする請求項1~6の何れか一項に記載の光演算装置。
【請求項8】
前記液体又は固体の屈折率は、1よりも大きく、且つ、前記平面状光回折素子の屈折率よりも小さい、
ことを特徴とする請求項に記載の光演算装置。
【請求項9】
前記筒体のヤング率は、前記光回折素子群のヤング率よりも大きい、
ことを特徴とする請求項1~の何れか一項に記載の光演算装置。
【請求項10】
前記筒体の熱膨張率は、前記平面状光回折素子の熱膨張率よりも小さい、
ことを特徴とする請求項1~の何れか一項に記載の光演算装置。
【請求項11】
前記光回折素子群を構成する各平面状光回折素子の形状は、円板状であり、
前記筒体の形状は、円筒状である、
ことを特徴とする請求項1~10の何れか一項に記載の光演算装置。
【請求項12】
光硬化樹脂により構成された複数の平面状光回折素子を含む光回折素子群と、
前記光回折素子群を収容する筒体であって、その内側面に前記光回折素子群を構成する各平面状光回折素子の外縁の少なくとも一部が固定された筒体と、を備え、前記光回折素子群に含まれる2つの平面状光回折素子であって、互いに隣接する2つの平面状光回折素子は、前記光硬化樹脂によって構成された柱体によって互いに連結されている、光演算装置の製造方法であって、
前記筒体の内部で前記光回折素子群を一体的に造型する造型工程を含み、
前記造型工程において、前記筒体の下端を未硬化状態の光硬化樹脂に浸し、又は、下端が封止された前記筒体の内部に未硬化の樹脂を注入し、前記光回折素子群の硬化が完了した部分を上方に引き上げながら、下方から光を照射することによって前記光回折素子群を前記筒体の内部において順次造形する、
ことを特徴とする光演算装置の製造方法。
【請求項13】
光硬化樹脂により構成された複数の平面状光回折素子を含む光回折素子群と、
前記光回折素子群を収容する筒体であって、その内側面に前記光回折素子群を構成する各平面状光回折素子の外縁の少なくとも一部が固定された筒体と、を備え、前記筒体は、前記光硬化樹脂を硬化させるための光を透過する、光演算装置の製造方法であって、
前記筒体の内部で前記光回折素子群を一体的に造型する造型工程と、
前記造型工程の後に、前記筒体を介して側方から光を照射することによって、前記光回折素子群を構成する各平面状光回折素子の外縁の少なくとも一部を前記筒体の内側面に固着させる固着工程と、を含んでいる、
ことを特徴とする光演算装置の製造方法。
【請求項14】
光硬化樹脂により構成された複数の平面状光回折素子を含む光回折素子群と、
前記光回折素子群を収容する筒体であって、その内側面に前記光回折素子群を構成する各平面状光回折素子の外縁の少なくとも一部が固定された筒体と、を備え、前記光回折素子群に含まれる各平面状光回折素子には、貫通孔が設けられている、光演算装置の製造方法であって、
前記筒体の内部で前記光回折素子群を一体的に造型する造型工程と、
前記造型工程の後に、前記筒体の内部に現像液を注入して行う現像処理、及び、前記筒体の内部に洗浄液を注入して行う洗浄処理の一方又は両方を実施することによって、前記光回折素子群に含まれる2つの平面状光回折素子であって、互いに隣接する2つの平面状光回折素子の間に残留した光硬化樹脂を排出する排出工程と、を含んでいる、
ことを特徴とする光演算装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の平面状光回折素子を含む光演算装置に関する。また、そのような光演算装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、入力光の光路上にレンズやフィルタなど複数の光学素子を並べて配置し、これらの光学素子を入力光に順に作用させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2013/027340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の平面状光回折素子を並べて配置し、これらの平面状光回折素子を入力光に順に作用させる光演算装置においては、これら複数の平面状光回折素子の相対的な位置関係を所期の関係に維持することが重要である。なぜなら、平面状光回折素子の相対的な位置関係が所期の関係からずれると、所期の作用を入力光に対して及ぼすことが困難になるからである。
【0005】
一例として、屈折率が個別に設定された複数のマイクロセルを有し、各マイクロセルを透過した光を相互に干渉させることによって、省スペースかつ低消費電力で予め定められた演算を光学的に実行するように設計された平面状光回折素子が知られている。このような平面状光回折素子により構成された光演算装置においては、平面状光回折素子の相対的な位置関係のずれがnmオーダーであっても、所期の光演算を実行することが困難になり得る。
【0006】
本発明の一態様は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、平面状光回折素子の相対的な位置関係を所期の関係に維持することが容易な光演算装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る光演算装置は、光硬化樹脂により構成された複数の平面状光回折素子を含む光回折素子群と、前記光回折素子群を収容する筒体であって、その内側面に前記光回折素子群を構成する各平面状光回折素子の外縁の少なくとも一部が固定された筒体と、を備えている。
【0008】
本発明の一態様に係る光演算装置の製造方法は、前記一態様に係る光演算装置の製造方法であって、前記筒体の内部で前記光回折素子群を一体的に造型する造型工程を含んでいる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、平面状光回折素子の相対的な位置関係を所期の関係に維持することが容易な光演算装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態1に係る光演算装置の構成を示す斜視図である。
図2図1の光演算装置の備える平面状光回折素子の具体例を示す斜視図である。
図3図1の光演算装置の備える光回折素子群のバリエーションを示す斜視図である。
図4図1の多層光回折素子1の第1の製造方法を模式的に示す図である。
図5図1の多層光回折素子1の第2の製造方法を模式的に示す図である。
図6】本発明の実施形態2に係る光演算装置の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔実施形態1〕
本発明の一実施形態に係る光演算装置1の構成について、図1を参照して説明する。図1は、光演算装置1の構成を示す斜視図である。
【0012】
光演算装置1は、光回折素子群11と、筒体12と、栓13a,13bと、を備えている。
【0013】
光回折素子群11は、光硬化樹脂により構成されたN個の平面状光回折素子11a1~11aNの集合である。図1においては6個の平面状光回折素子11a1~11a6により構成された光回折素子群を例示しているが、平面状光回折素子11a1~11aNの個数Nは、2以上の任意の自然数であればよく6に限定されない。
【0014】
本実施形態において、各平面状光回折素子11ai(iは1以上N以下の自然数)の形状は、円板状(高さの低い円柱状)であり、平面状光回折素子11a1~11aNは、各平面状光回折素子11aiの中心軸が一致するように、かつ、各平面状光回折素子11aj(jは1以上N-1以下の自然数)の上面が隣接する平面状光回折素子11j+1の下面と対向するように並んでいる。
【0015】
なお、本実施形態において、各平面状光回折素子11aiは、有効領域内に屈折率が個別に設定された複数のマイクロセルを有し、各マイクロセルを透過した光(主に可視光を想定)を相互に干渉させることによって、予め定められた光演算を実行するように設計されたものである。このような平面状光回折素子11a1~11aNを並べてN回の光演算を順次実行する場合、平面状光回折素子11a1~11aNの相対的な位置関係を所期の関係に保つことが重要になる。なお、本明細書において「マイクロセル」とは、サイズがマイクロメートルオーダー以下、すなわち、10μm未満のセルのことを指す。マイクロセルのサイズの下限は、特に限定されないが、例えば、1nmである。
【0016】
また、本実施形態において、光回折素子群11は、光硬化樹脂により構成されたN-1組の柱体11b1~11bN-1を有している。各柱体11bjは、隣接する平面状光回折素子11aj,11aj+1を有効領域外において互いに連結するための構成である。これにより、平面状光回折素子11a1~11aNの並び方向の相対的な位置関係を所期の関係に保つことが容易になる。
【0017】
筒体12は、光回折素子群11を収容するための部材である。光回折素子群11を構成する各平面状光回折素子の外縁の少なくとも一部は、筒体12の内側面に固定されている。これにより、平面状光回折素子11a~11aNの方向の相対的な位置関係を所期の関係に保つことが容易になる。筒体12の上端は、栓13aにより封止されており、筒体12の下端は、栓13bにより封止されている。栓13aは、光回折素子群11から出力される光を透過する透明材料により構成されている。光回折素子群11から出力された光に対する栓13aの光学的影響を小さく抑えるために、栓13aの上面及び下面は、平坦であり、かつ、平面状光回折素子11a1の下面に平行であることが好ましい。また、栓13bは、光回折素子群11に入力される光を透過する透明材料により構成されている。光回折素子群11に入力される光に対する栓13bの光学的影響を小さく抑えるために、栓13bの上面及び下面は、平坦であり、かつ、平面状光回折素子11a5の上面に平行であることが好ましい。
【0018】
本実施形態において、筒体12の形状は、円筒状である。筒体12の内径は、各平面状光回折素子11aiの外径と一致しており、各平面状光回折素子11aiの外縁全体を、筒体12の内側面に固定することができる。これにより、光回折素子群11の熱膨張が生じた場合でも、各平面状光回折素子11aiの外縁全体に均等に応力が作用するので、各平面状光回折素子11aiに予期せぬ歪みが生じたり、平面状光回折素子11a~11Nの相対的な位置関係の変化が生じたりする可能性を低減することができる。
【0019】
なお、筒体12は、光回折素子群11よりもヤング率の大きい材料により構成されていることが好ましい。これにより、光回折素子群11が筒体12に収容されずに裸で存在している場合と比べて、外力が作用したときに平面状光回折素子11a1~11aNの相対的な位置関係が変化し難い光演算装置1を実現することが可能になる。
【0020】
また、筒体12は、光回折素子群11よりも熱膨張率の小さい材料により構成されていることが好ましい。これにより、光回折素子群11が筒体12に収容されずに裸で存在している場合と比べて、温度が変化したときに平面状光回折素子11a1~11aNの相対的な位置関係が変化し難い光演算装置1を実現することが可能になる。
【0021】
また、筒体12は、光回折素子群11を構成する光硬化樹脂を硬化させるために用いる光(例えば光硬化樹脂が紫外線硬化樹脂の場合は紫外線)が透過する材料により構成されていることが好ましい。これにより、側方からの光照射によっても筒体12の内部で光回折素子群11を形成することが可能になるからである。なお、ヤング率が硬化樹脂よりも大きく、熱膨張率が光硬化樹脂よりも小さく、かつ、光硬化樹脂を硬化させる光が透過する材料としては、例えば、石英ガラスを挙げることができる。
【0022】
また、筒体12の内部には、オイルが充填されていることが好ましい。これにより、(1)筒体12の内部への異物(水分を含む)の侵入を困難にし、(2)平面状光回折素子11a1~11aNの振動を抑制し、(3)各平面状光回折素子11aiの経年劣化(例えば酸化)を抑制することができる。また、このオイルの屈折率が1よりも大きく、且つ、平面状光回折素子11aiの屈折率よりも小さい場合、更に、(4)空気と各平面状光回折素子11aiとの界面において生じ得る反射を低減することができる。オイルの種類は、特に限定されないが、シリコーン系又はパラフィン系のオイルが安定性及び入手性の面で優れている。アクリル系、エポキシ系、ビニル系、ゴム系、ウレタン系、メタクリル系、ナイロン系、ビスフェノール系、ジオール系、ポリイミド系、フッ素化アクリル系、フッ素化エポキシ系、又は、これらの高分子材料を組み合わせたものを、オイルとして用いてもよい。なお、オイルの充填は、必須ではない。オイルの代わりに、オイルと同程度の屈折率を有する液体又は固体を充填しても、オイルを充填した場合と同様の効果が得られる。オイルの代わりに充填する固体の例としては、例えば、光回折素子群11を構成する光硬化樹脂とは屈折率の異なる光硬化樹脂などが挙げられる。なお、平面状光回折素子11aiの各セルを透過した光を、そのセルの高さに応じて適度に屈折させるためには、平面状光回折素子11aiの材料の屈折率と、筒体12の内部に充填する液体又は固体の屈折率との差が、0.5以上1.5以下であることが好ましい。また、オイルの代わりに、酸素ガスや窒素ガスなどの気体を封入してもよい。なお、単に筒体12の内部を空気で満たす場合には、栓13a,13bを省略してもよい。
【0023】
(平面状光回折素子の具体例)
光演算装置1が備える平面状光回折素子11aiの具体例について、図2を参照して説明する。図2は、本具体例に係る平面状光回折素子11aiの有効領域を示した斜視図である。
【0024】
本具体例に係る平面状光回折素子11aiの有効領域は、一辺1.0mmの正方形であり、マトリックス状に配置された100×100個のマイクロセルにより構成されている。各マイクロセルは、厚さ100μmのベース上に形成された、1辺1μmの底辺を有するピラーにより構成されている。各ピラーの高さは、0nm、100nm、200nm、…、110nm、1200nm(100nmステップ13段階)の何れかであり、そのピラーにより構成されるマイクロセルの屈折率が所期の屈折率になるように決められている。
【0025】
なお、平面状光回折素子11aiのセルサイズは、本具体例において1μmであるが、これに限定されない。すなわち、平面状光回折素子11aiのセルサイズは、10μm未満であれば良い。また、平面状光回折素子11aiのセル数及び有効領域サイズも任意である。
【0026】
(光回折素子群の変形例)
本実施形態においては、図3の(a)に示すように、互いに隣接する平面状光回折素子11aj,11aj+1を互いに連結するための構成として、有効領域外に配置された複数の円柱状の柱体11biを採用しているが、本発明はこれに限定されない。
【0027】
例えば、図3の(b)に示すように、互いに隣接する平面状光回折素子11aj,11aj+1を互いに連結するための構成として、有効領域を取り囲む単一の円筒状の柱体11ciを採用してもよい。これにより、互いに隣接する平面状光回折素子11aj,11aj+1の相対的な位置関係を、より確実に維持することが可能になる。また、この場合、各柱体11ciには、開口11diを設けることが好ましい。これにより、光回折素子群11を造型する際に、柱体11ciの内部に残留した紫外線硬化樹脂を排出すること、及び、柱体11ciの内部に洗浄液又は現像液を注入及び排出することが可能になる。
【0028】
(光演算装置の第1の製造方法)
光演算装置1の第1の製造方法S1について、図4を参照して説明する。図4は、光演算装置1の第1の製造方法S1を模式的に示す図である。なお、光演算装置1の第1の製造方法S1においては、外径が筒体12の内径と同一又は略同一の円板部21が設けられた引上棒2を使用する。また、光回折素子群11は、紫外線硬化樹脂により構成されているものとする。
【0029】
まず、準備工程S11を実施する。準備工程S11においては、引上棒2を円板部21を下に向けて筒体12の内部に上方から挿入した後、紫外線を透過する材料により構成された小型のプール3に張られた未硬化状態の紫外線硬化樹脂に筒体12の下端を浸す。
【0030】
次に、光回折素子造型工程S12及び柱体造型工程S13(特許請求の範囲における「造型工程」の一例)を実施する。光回折素子造型工程S12においては、引上棒2を徐々に引き上げながら、紫外線を筒体12の下方から筒体12の内部の紫外線硬化樹脂に照射することによって、平面状光回折素子11a1を造形する。柱体造型工程S3においては、引上棒2を徐々に引き上げながら、紫外線を筒体12の下方から筒体12の内部の紫外線硬化樹脂に照射することによって、柱体11b1を造形する。なお、光回折素子造型工程S12及び柱体造型工程S13における紫外線照射は、SLA(Stereo Lithography)方式で行ってもよいし、DLP(Digital Light Processing)方式で行ってもよい。
【0031】
続けて、光回折素子造型工程S12及び柱体造型工程S13を繰り返し、平面状光回折素子11a2~11aN、及び、柱体11b2~11bN-1からなる光回折素子群11を一体的に造形する。なお、平面状光回折素子11a1~11aN、及び、柱体11b1~11bN-1の造形を完了した後、紫外線を筒体12の側方から照射することによって、各平面状光回折素子11aiの外縁を筒体12の内側面に固着させる固着工程を実施してもよい。
【0032】
次に、円板部21を平面状光回折素子11a1から切り離して引上棒2を筒体12から抜き取り、光回折素子群11が内部に形成された筒体12をプール3から引き上げる。そして、現像・洗浄工程S14(特許請求の範囲における「排出工程」の一例)を実施する。現像・洗浄工程S14においては、筒体12の内部に現像液を注入して現像処理を行うと共に、筒体12の内部に洗浄液を注入して洗浄処理を行う。この現像処理及び/又は洗浄処理によって、隣接する平面状光回折素子11aj,11aj+1の間に残留した未硬化の紫外線硬化樹脂が、上述した貫通孔を介して排出される。なお、現像の必要がない紫外線硬化樹脂を用いる場合には、現像処理を省略してもよい。
【0033】
最後に、オイル充填工程S15を実施する。オイル充填工程S15においては、筒体12の内部にオイルを充填して、筒体12の上端及び下端を栓13a及び13bで封止する。これにより、光演算装置1ができあがる。
【0034】
なお、各平面状光回折素子11aiには、有効領域外に貫通孔が設けられていることが好ましい。これにより、隣接する平面状光回折素子11aj,11aj+1の間に残留した未硬化の紫外線硬化樹脂を排出したり、現像液又は洗浄液を注入及び排出したりすることが容易になる。
【0035】
以上のように、第1の製造方法S1は、光演算装置1の製造方法であって、筒体12の下端を未硬化状態の光硬化樹脂に浸し、光回折素子群11の硬化が完了した部分を上方に引き上げながら、下方から光を照射することによって光回折素子群11を筒体12の内部において順次造形する。したがって、第1の製造方法S1によれば、平面状光回折素子11a1~11aNの相対的な位置関係が所期の関係にある光回折素子群11を、筒体12の内部において一体的に造形することができる。また、第1の製造方法S1によれば、紫外線を用いて光回折素子群11を造形しているので、電子線を用いて光回折素子群11を造形する場合と比べて、造形に要する時間が短くて済む。また、以上の製造方法S1によれば、未硬化の紫外線硬化樹脂を廃棄する必要がないので、原料コストを抑制することができる。
【0036】
また、第1の製造方法S1によれば、各平面状光回折素子11aiは、ベースとマイクロセルとが同じ光硬化樹脂を用いて形成される。そのため、マイクロセルがベースとは異なる材料で形成された場合に比べ、マイクロセルとベースとの間の結合強度が増加する。例えば、ガラス製のベースの上に光硬化樹脂のマイクロセルを形成した場合、未硬化の光硬化樹脂を洗浄する際などに、マイクロセルがベースから剥離する場合がある。それに比べて、両者が同じ材料で一体的に形成される本実施形態においては、マイクロセルとベースとの結合力が強く、マイクロセルがベースからより剥離しにくいという効果が得られる。
【0037】
ベースから剥離するマイクロセルが多くなると、回折された光の光路長が変わる、又は回折角度が変わる等により光の性質が変わり、演算精度が低下する虞がある。しかし、本実施形態による製造方法で製造された光演算装置1では、マイクロセルがベースから剥離しにくいため、そのような虞をより低減することができる。
【0038】
(光演算装置の第2の製造方法)
光演算装置1の第2の製造方法S2について、図5を参照して説明する。図5は、光演算装置1の第2の製造方法S2を模式的に示す図である。なお、光演算装置1の第2の製造方法S2においては、プール3を用いることなく光演算装置1を製造する。
【0039】
まず、準備工程S21を実施する。準備工程S21においては、筒体12の下端を栓13aにより封止し、引上棒2を円板部21から下に向けて筒体12の内部に上方から挿入した後、筒体12の内部に紫外線硬化樹脂を注入する。注入された紫外線硬化樹脂は、円板部21を上下に貫通する不図示の貫通孔を通って、円板部21の下側にも侵入する。
【0040】
次に、光回折素子造型工程S22及び柱体造型工程S23を実施する。光回折素子造型工程S22においては、引上棒2を徐々に引き上げながら、紫外線を筒体12の下方から筒体12の内部の紫外線硬化樹脂に照射することによって、平面状光回折素子11a1を造形する。柱体造型工程S23においては、引上棒2を徐々に引き上げながら、紫外線を筒体12の下方から筒体12の内部の紫外線硬化樹脂に照射することによって、柱体11b1を造形する。なお、光回折素子造型工程S22及び柱体造型工程S23における紫外線照射は、SLA(Stereo Lithography)方式で行ってもよいし、DLP(Digital Light Processing)方式で行ってもよい。
【0041】
続けて、光回折素子造型工程S22及び柱体造型工程S23を繰り返し、平面状光回折素子11a2~11aN、及び、柱体11b2~11cN-1を造形する。なお、平面状光回折素子11a1~11aN、及び、柱体11b1~11bN-1の造形を完了した後、紫外線を筒体12の側方から照射することによって、各平面状光回折素子11aiの外縁を筒体12の内側面に固着させてもよい。
【0042】
次に、円板部21を平面状光回折素子11a1から切り離して引上棒2を筒体12から抜き取り、筒体12の内部に残留した紫外線硬化樹脂を排出する。そして、現像・洗浄工程S24を実施する。現像・洗浄工程S14においては、筒体12の内部に現像液を注入して現像処理を行うと共に、筒体12の内部に洗浄液を注入して洗浄処理を行う。なお、現像の必要がない紫外線硬化樹脂を用いる場合には、現像処理を省略してもよい。
【0043】
最後に、オイル充填工程S25を実施する。オイル充填工程S25においては、筒体12の内部にオイルを充填して、筒体12の上端を栓13bで封止する。これにより、光演算装置1ができあがる。
【0044】
第2の製造方法S2よれば、第1の製造方法S1よりも少ない紫外線硬化樹脂で光演算装置1を製造することができる。このため、第2の製造方法S2によれば、第1の製造方法S1よりも更に原料コストを抑制することができる。
【0045】
また、本製造方法においても、ベースとマイクロセルとが同じ材料で一体的に形成されるため、マイクロセルがベースからより剥離しにくいという効果が得られる。
【0046】
〔実施形態2〕
次に、本発明の実施形態2に係る光演算装置1Aについて、図面を参照して説明する。なお、実施形態1に係る光演算装置1と同じ要素については、同じ符号を付して詳細な説明は省略する。光演算装置1Aに入射される光は赤外光(特に近赤外光)である。最初に、入射光として赤外光を用いる理由について説明する。
【0047】
光演算装置1Aに入射した入射光は、最後段の平面状光回折素子11a6から所定の距離にある像面(image plane)で結像する。この像面までの距離は、最後段の平面状光回折素子11a6から、入射光の波長の倍数で決められた数値になる。また、各平面状光回折素子11aiに入射する光は平行光にすることが必要で、光の発散角による光の広がりを勘案すると、波長の倍数だけ離した像面までの距離は短いほどよい。しかし、像面までの距離が短いと、位置合わせを含めた製造が難しくなる。以上の条件を考慮すると、光演算装置1Aに入射される光の波長は長いほどよい。例えば、可視光よりも赤外光が好ましい。これが、光演算装置1Aに入射される光として赤外光を用いる理由である。
【0048】
図6は、本発明の実施形態2に係る光演算装置1Aの構成を示す断面図である。光演算装置1Aは、実施形態1に係る光演算装置1の光の出口側の栓13bに代えて、光変換層31、光拡散層32、及びスペーサ40を備える。それ以外の構成は、光演算装置1の構成と同じである。
【0049】
光変換層31と光拡散層32は、赤外光の入射方向に略直交する方向に設けられた円板状の部材である。光変換層31と光拡散層32の形状は特に限定されないが、本実施形態では、平面状光回折素子11aiの形状に合わせている。スペーサ40は、光変換層31と光拡散層32とを外周部で支持する部材である。図6には、赤外光の入射方向を矢印Dで示している。
【0050】
光変換層31は、赤外光の波長を短くして可視光に変換する層であり、光演算装置1Aの最後段に配置されている。最後段とは、光演算装置1Aに入射した光が出ていく段であり、本実施形態では平面状光回折素子11a6の後段である。光変換層31は、平面状光回折素子11a6から出射された赤外光を可視光に変換する。
【0051】
光変換層31は、例えば、ナノ粒子を表面改質することにより形成する方法が知られている。例えば、無機フッ化物や無機酸化物等の誘電体表面に希土類イオンをドープした、ナノサイズの粒子を使用することができる。また、光変換層31は、例えば、希土類イオンに有機色素を錯形成する方法により形成してもよい。この方法は、赤外光を可視光に変換する変換効率が比較的高い。
【0052】
光演算装置1Aが光変換層31を備える理由は以下のとおりである。赤外光を撮像する高精度カメラは、例えばInGaAsセンサを用いた撮像素子が必要となり、高価である。そこで、光演算装置1Aを透過させる光は赤外光を用いて、光演算装置1Aを透過した赤外光を可視光に変換して可視光カメラで撮像する方法が考えられる。可視光であれば、可視光用の安価なCMOSセンサ等を用いて撮像することができるからである。光変換層31は、光演算装置1Aから出てきた光を可視光用のカメラで検出可能とするための波長変換要素である。
【0053】
平面状光回折素子11a6を透過した光(以下、透過光とも記載する)は、例えば、レンズを透過した後にカメラで撮像される。この透過光には、様々な進行方向を有する成分が含まれており、一部の成分は、レンズでケラレてしまう場合がある。そのため、拡散層32により、透過光のうち、レンズでケラレてしまう成分の進行方向を変化させ、カメラに入射する成分を増やす(透過光の開口数を小さくすること、或いは、レンズの実効的な開口数を大きくすることに相当)ことが好ましい。つまり、拡散層32は、光変換層31で発生した可視光を拡散させ、レンズでケラレない成分を増やし、カメラにより多くの光を導く機能を有する。言い換えると、拡散層32により、レンズによる物理的制約を回避することができる。拡散層32は、光を拡散させる機能を有するものであればその構成は限定されないが、例えば石英板の片面の表面を粗化したものである。石英板の表面を粗化する方法は、サンドブラスト等による機械的方法、又は腐食液を塗布する化学的方法等がある。粗化の程度は、例えば表面に微粒子を分散させたような構成の場合、微粒子の粒度としては粒度80から250程度であることが好ましい。また、光の拡散角度という点では、10°から80°の間であることが好ましく、60°から80°程度の広い拡散角がさらに好ましい。なお、深く粗化すると、深さ方向(光の進行方向)に光が拡散して像がぼけるため、粗化は石英板の表面のみであることが好ましい。つまり、拡散機能を有する層は薄いほうが好ましい。
【0054】
スペーサ40は、光演算装置1Aの最後段の平面状光回折素子11a6から拡散層32までの距離Lを規定する。距離Lは、厳密には平面状光回折素子11a6のマイクロセルの最も高い位置から拡散層32までの距離であるが、マイクロセルの高さは最大でも1200nm(1.2μm)程度であるため、マイクロセルの高さを無視してもよい。例えば、光変換層31の厚さがxである場合、スペーサ40の高さ(赤外光の進行方向の長さ)は(L-x)とする。具体的には、入射赤外光が1550nmの近赤外光の場合、距離Lは一例として60μmとすることができる。例えば、別体として製造したスペーサ40(高さL-x)を平面状光回折素子11a6の上に配置し、スペーサ40の上に光変換層31(厚さx)と拡散層32を順に配置することにより、平面状光回折素子11a6から拡散層32までの距離Lを精度よく規定することができる。スペーサ40は、柱体11biと同様の柱体を円環状に配列して構成してもよく、また円環状の形状に形成してもよい。
【0055】
上述の光演算装置1Aでは、光変換層31が光の入射側にあり、拡散層32が光の出射側にある。しかし、光変換層31と拡散層32の順序はこれに限られず、逆の配列としてもよい(図示せず)。この場合、平面状光回折素子11a6から出た赤外光はまず拡散層32に入射して拡散され、拡散された赤外光が光変換層31に入射して可視光に変換される。
【0056】
(製造方法)
次に、光演算装置1Aの製造方法について説明する。光演算装置1Aの製造方法は、光演算装置1の第1の製造方法S1の現像・洗浄工程S14まで同じである。その後、スペーサ40を形成し、スペーサ40の上に、予め製造しておいた光変換層31と拡散層32とをこの順に積層する。また、スペーサ40は、柱体11biの製造方法と同様の方法で、平面状光回折素子11a6の上に紫外線硬化樹脂を用いて形成してもよい。スペーサ40を柱体11biの製造方法と同様の方法で製造することにより、より距離Lの寸法精度を高めることができる。
【0057】
あるいは、スペーサ40と光変換層31と拡散層32とをこの順に積層した光変換ユニットを予め製造しておき、製造方法S1の現像・洗浄工程S14の後で光変換ユニットを平面状光回折素子11a6の上に積層してもよい。
【0058】
(変形例1)
光演算装置1Aは、スペーサ40と光変換層31と拡散層32とを別々の要素として構成した。しかし、図6の光演算装置1Bに示すように、距離Lをできるだけ寸法精度よく規定するため、スペーサ40と拡散層32とを一体化して構成してもよい。
【0059】
光演算装置1Bは、スペーサ40と、光変換層31とを備える。スペーサ40は、外周部において光の入射方向に設けられた脚部401と、円板状のプレート部402とを含む。プレート部402の入射側の面には、拡散層32が形成されている。光変換層31は、プレート部402の出射側の面に積層されている。脚部401は、平面状光回折素子11a6と拡散層32との間の距離Lを規定する。即ち、脚部401の高さ(光の入射方向の長さ)はLである。本変形例においても、光変換層31と拡散層32の順序を入れ替えてもよい。
【0060】
スペーサ40は、例えば石英で形成されており、拡散層32は、プレート部402の入射側の面を粗化して形成されている。また、スペーサ40は石英であるため、脚部401の高さLの寸法精度よく形成することができる。つまり、スペーサ40の一部を拡散層32として構成することで、平面状光回折素子11a6と拡散層32との間の距離Lを寸法精度よく規定することができる。
【0061】
光演算装置1Bの製造方法は、光演算装置1の第1の製造方法S1の現像・洗浄工程S14の後で、予め製造しておいたスペーサ40と光変換層31を平面状光回折素子11a6の上に配置すればよい。
【0062】
(変形例2)
光演算装置1A、1Bにおいて、拡散層32は、円板状部材の全面に形成する必要はない。拡散層32は、少なくとも平面状光回折素子11a6のマイクロセルからの出射光が入射する範囲に形成されていればよい。マイクロセルからの出射光が入射しない範囲には、拡散層32を形成せず、位置合わせのためのアライメントマークを設けてもよい。例えば、光演算装置1Bにおいては、脚部401の底面にアライメントマークを設けてもよい。拡散層32を設けない領域にアライメントマークを設けることにより、アライメントマークを見ながら位置決めが容易となる。
【0063】
(付記事項)
本発明は、上述した実施形態に限定されるものでなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、上述した実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0064】
なお、本明細書における「光回折素子」は、或る情報(例えば、或る画像)を表す光信号を別の情報(例えば、別の画像)を表す光信号に変換する素子である。このため、或る画像を表す電気信号を別の画像を表す電気信号に変換する素子をフィルタと呼ぶのと同様の意味で、本明細書における「光回折素子」は、「光フィルタ」と言い換えることができる。また、本明細書における「光演算装置」は、光回折素子、すなわち、光フィルタを用いて光演算を実行するものである。このため、本明細書における「光演算装置」は、「多層光フィルタ装置」と言い換えることができる。
【0065】
(まとめ)
本発明の態様1に係る光演算装置は、光硬化樹脂により構成された複数の平面状光回折素子を含む光回折素子群と、前記光回折素子群を収容する筒体であって、その内側面に前記光回折素子群を構成する各平面状光回折素子の外縁の少なくとも一部が固定された筒体と、を備えている。
【0066】
上記の構成によれば、平面状光回折素子の相対的な位置関係を所期の関係に維持することが容易になる。
【0067】
本発明の態様2に係る光演算装置においては、態様1の構成に加えて、前記筒体に囲まれた空間には、屈折率整合を図るための液体又は固体が充填されている、という構成が採用されている。
【0068】
上記の構成によれば、筒体内部への異物(水分を含む)を困難にすることができる。或いは、平面状光回折素子が振動することを抑制することができる。或いは、各平面状光回折素子の経年劣化(例えば酸化)を抑制することができる。
【0069】
本発明の態様3に係る光演算装置においては、態様1又は2の構成に加えて、前記液体又は固体の屈折率は、1よりも大きく、且つ、前記平面状光回折素子の屈折率よりも小さい、という構成が採用されている。
【0070】
上記の構成によれば、空気と各平面状光回折素子との界面において生じ得る反射を低減することができる。
【0071】
本発明の態様4に係る光演算装置においては、態様1~3の何れかの構成に加えて、前記筒体のヤング率は、前記光回折素子群のヤング率よりも大きい、という構成が採用されている。
【0072】
上記の構成によれば、光回折素子群が筒体に収容されずに裸で存在している場合と比べて、外力が作用したときに平面状光回折素子の相対的な位置関係が変化し難い光演算装置を実現することができる。
【0073】
本発明の態様5に係る光演算装置においては、態様1~4の何れか一態様の構成に加えて、前記筒体の熱膨張率は、前記平面状光回折素子の熱膨張率よりも小さい、という構成が採用されている。
【0074】
上記の構成によれば、光回折素子群が筒体に収容されずに裸で存在している場合と比べて、温度が変化したときに平面状光回折素子の相対的な位置関係が変化し難い光演算装置を実現することができる。
【0075】
本発明の態様6に係る光演算装置においては、態様1~5の何れか一態様の構成に加えて、前記筒体は、前記光硬化樹脂を硬化させるための光を透過する、という構成が採用されている。
【0076】
上記の構成によれば、側方からの光照射によっても筒体内で光回折素子群を形成することが可能になる。また、側方からの光照射によって各平面状光回折素子の外縁を筒体の内側面に固着させることが容易になる。
【0077】
本発明の態様7に係る光演算装置においては、態様1~6の何れか一態様の構成に加えて、前記光回折素子群を構成する各平面状光回折素子の形状は、円板状であり、前記筒体の形状は、円筒状である、という構成が採用されている。
【0078】
上記の構成によれば、光回折素子群の熱膨張が生じた場合でも、各平面状光回折素子の外縁全体に均等に応力が作用するので、各平面状光回折素子に予期せぬ歪みが生じたり、平面状光回折素子の相対的な位置関係の変化が生じたりする可能性を低減することができる。
【0079】
本発明の態様8に係る光演算装置においては、態様1~7の何れか一態様の構成に加えて、前記光回折素子群に含まれる2つの平面状光回折素子であって、互いに隣接する2つの平面状光回折素子は、前記光硬化樹脂によって構成された柱体によって互いに連結されている、という構成が採用されている。
【0080】
上記の構成によれば、平面状光回折素子の並び方向の相対的な位置関係を所期の関係に保つ、すなわち、互いに隣接する平面状光回折素子間の間隔を所期の値に保つことが容易になる。
【0081】
本発明の態様9に係る光演算装置においては、態様1~8の何れか一態様の構成に加えて、前記光回折素子群には、屈折率が個別に設定された複数のマイクロセルを有する平面状光回折素子が少なくとも一つ含まれている、という構成が採用されている。
【0082】
上記の構成によれば、多段階の光演算を実行可能な光演算装置を実現することができる。
【0083】
本発明の態様10に係る光演算装置においては、態様1~9の何れか一態様の構成に加えて、最後段の前記平面状光回折素子の後段に、赤外光を可視光に変換する光変換層を備える、という構成が採用されている。
【0084】
上記の構成によれば、光演算装置から出射された光に含まれる赤外光を可視光に変換することができ、可視光用の撮像素子を用いて出射光を検出することができる。
【0085】
本発明の態様11に係る光演算装置においては、態様10の構成に加えて、最後段の前記平面状光回折素子の後段に、前記赤外光又は前記可視光を拡散させる拡散層をさらに含む、という構成が採用されている。
【0086】
上記の構成によれば、光変換層での光変換効率を高めることができる。
【0087】
本発明の態様12に係る光演算装置においては、態様11の態様の構成に加えて、前記最後段の平面状光回折素子から前記拡散層までの距離を規定するスペーサを更に含む、という構成が採用されている。
【0088】
上記の構成によれば、最後段の平面状光回折素子から拡散層までの距離を寸法精度よく規定することができる。
【0089】
本発明の態様13に係る光演算装置の製造方法は、態様1~12の何れか一態様に係る光演算装置の製造方法であって、前記筒体の内部で前記光回折素子群を一体的に造型する造型工程を含んでいる。
【0090】
上記の方法によれば、光回折素子群が筒体の内部で一体的に造型されるので、平面状光回折素子の相対的な位置関係が所期の関係にある光演算装置を容易に製造することができる。
【0091】
本発明の態様14に係る光演算装置の製造方法は、態様13に係る光演算装置の製造方法のうち、前記筒体の下端を未硬化状態の光硬化樹脂に浸し、又は、下端を封止した前記筒体の内部に未硬化の樹脂を注入し、前記光回折素子群の硬化が完了した部分を上方に引き上げながら、下方から光を照射することによって前記光回折素子群を前記筒体の内部において順次造形する、ものである。なお、前記光回折素子群に含まれる2つの平面状光回折素子であって、互いに隣接する2つの平面状光回折素子は、前記光硬化樹脂によって構成された柱体によって互いに連結されているものとする。
【0092】
上記の方法によれば、光(例えば紫外線)を用いて光回折素子群を造形しているので、電子線を用いて光回折素子群を造形する場合と比べて、造形に要する時間が短くて済む。また、上記の方法によれば、小型のプール、又は、筒体の内部に注入した少量の紫外線硬化樹脂によって光回折素子群を造型することができるので、原料コストを抑制することができる。
【0093】
本発明の態様15に係る光演算装置の製造方法は、態様13又は14に係る光演算装置の製造方法のうち、前記造型工程の後に、前記筒体を介して側方から光を照射することよって、前記光回折素子群を構成する各平面状光回折素子の外縁の少なくとも一部を前記筒体の内側面に固着させる固着工程を更に含んでいる、ものである。なお、前記筒体は、前記光硬化樹脂を硬化させるための光を透過するものとする。
【0094】
上記の方法によれば、前記光回折素子群を構成する各平面状光回折素子の外縁の少なくとも一部を前記筒体の内側面により強固に固定することができる。
【0095】
本発明の態様16に係る光演算装置の製造方法は、態様13~15の何れか一態様に係る光演算装置の製造方法のうち、前記造型工程の後に、前記筒体の内部に現像液を注入して行う現像処理、及び、前記筒体の内部に洗浄液を注入して行う洗浄処理の一方又は両方を実施することによって、前記光回折素子群に含まれる2つの平面状光回折素子であって、互いに隣接する2つの平面状光回折素子の間に残留した光硬化樹脂を排出する排出工程を更に含んでいる、ものである。なお、前記光回折素子群に含まれる各平面状光回折素子には、貫通孔が設けられているものとする。
【0096】
上記の方法によれば、互いに隣接する2つの平面状光回折素子の間に残留した光硬化樹脂をより確実に排出することができる。
【符号の説明】
【0097】
1 光演算装置
11 光回折素子群
11a1~11a6 平面状光回折素子
11b1~11b5 柱体(円柱状)
11c1~11c5 柱体(円筒状)
12 筒体
13a,13c 栓
31 光変換層
32 拡散層
40 スペーサ
401 脚部
402 プレート部
図1
図2
図3
図4
図5
図6