(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-02
(45)【発行日】2023-08-10
(54)【発明の名称】導電性ローラにおける銅めっきを防止するための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
C25D 7/06 20060101AFI20230803BHJP
【FI】
C25D7/06 K
(21)【出願番号】P 2022534674
(86)(22)【出願日】2021-06-10
(86)【国際出願番号】 CN2021099457
(87)【国際公開番号】W WO2022116509
(87)【国際公開日】2022-06-09
【審査請求日】2022-06-07
(31)【優先権主張番号】202011398289.9
(32)【優先日】2020-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522118469
【氏名又は名称】重慶金美新材料科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】CHONGQING JIMAT NEW MATERIAL TECHNOLOGY CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No.12,Jinfu 2nd Road,Qiaohe Industrial Park,Gunan Street,Qijiang District,Chongqing 401421,China
(74)【代理人】
【識別番号】100146374
【氏名又は名称】有馬 百子
(72)【発明者】
【氏名】臧 世偉
(72)【発明者】
【氏名】劉 文卿
【審査官】瀧口 博史
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-256757(JP,A)
【文献】国際公開第1992/018669(WO,A1)
【文献】米国特許第05914016(US,A)
【文献】欧州特許出願公開第00992616(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
めっき槽めっき液と電気めっきの陽極とが設けられる電気めっき槽と、
補助槽めっき液と、前記補助槽めっき液に完全に浸漬される補助電極と、前記補助槽めっき液に半浸漬される導電性ローラとが設けられ、
めっきフィルム製品は前記補助槽めっき液に浸漬されていない前記導電性ローラに巻き付けられ、かつ電気めっきの陽極を通過する
補助槽とを含み、
前記補助槽めっき液は前記めっき槽めっき液と連通し、前記電気めっきの陽極は第一電源の正極出力端に接続され、前記導電性ローラの片端は前記第一電源の負極出力端に接続され、前記導電性ローラの他端は第二電源の正極出力端に接続され、前記補助電極は前記第二電源の負極出力端に接続され
、
前記補助槽は下端に開口部を有する上部補助槽を含み、前記開口部に上部導電性ローラが設けられ、前記上部導電性ローラと前記上部補助槽は気密的に接続され、前記上部導電性ローラの上側は前記上部補助槽内の上部槽めっき液に浸漬され、その下側は前記上部補助槽から露出しており、前記めっきフィルム製品は前記上部導電性ローラの下側に巻き付けられる
ことを特徴とする導電性ローラにおける銅めっきを防止するための装置。
【請求項2】
前記上部槽めっき液内に上部補助電極が設けられ、前記上部補助電極は前記上部導電性ローラの真上に位置する
ことを特徴とする請求項
1に記載の導電性ローラにおける銅めっきを防止するための装置。
【請求項3】
前記上部補助槽の側面に上部液体入口と上部液体出口とが設けられ、前記上部槽めっき液と前記めっき槽めっき液は前記上部液体入口と前記上部液体出口を経由して連通する
ことを特徴とする請求項
1に記載の導電性ローラにおける銅めっきを防止するための装置。
【請求項4】
前記補助槽は上端に開口を有する下部補助槽を含み、前記開口部に下部導電性ローラが設けられ、前記下部導電性ローラの下側は前記下部補助槽内の下部槽めっき液に浸漬され、その上側は前記下部槽めっき液から露出しており、前記めっきフィルム製品は前記下部導電性ローラの上側に巻き付けられる
ことを特徴とする請求項1に記載の導電性ローラにおける銅めっきを防止するための装置。
【請求項5】
前記下部槽めっき液内に下部補助電極が設けられ、前記下部補助電極は前記下部導電性ローラの真下に位置する
ことを特徴とする請求項
4前記の導電性ローラにおける銅めっきを防止するための装置。
【請求項6】
前記補助電極の端部は電極ワイヤに接続され、前記電極ワイヤは前記第二電源の負極出力端に接続され、
前記導電性ローラの端部は導電性ロッドを介して導電性スリップリングに接続され、前記導電性ローラの片端部に位置する前記導電性スリップリングは前記第一電源の負極出力端に接続され、前記導電性ローラの他端部に位置する前記導電性スリップリングは前記第二電源の正極出力端に接続される
ことを特徴とする請求項1に記載の導電性ローラにおける銅めっきを防止するための装置。
【請求項7】
請求項1~6の何れかに記載の導電性ローラにおける銅めっきを防止するための装置を用いて導電性ローラにおける銅めっきを防止するための方法であって、
導電性ローラと電気めっきの陽極はそれぞれ第一電源の負極出力端と正極出力端に接続され、前記導電性ローラと前記電気めっきの陽極は通電後、めっき槽めっき液を通過するめっきフィルム製品に対して電気めっきを行う
ステップと、
導電性ローラを第二電源の正極出力端に接続し、第二電源負極出力端に接続される補助電極とともに、導電性ローラに対する電気分解を実現し、それによってめっきフィルム製品に対して電気めっきを行う際に前記導電性ローラに発生する銅の堆積を回避する、という導電性ローラの電気分解ステップを
含む
ことを特徴とする導電性ローラにおける銅めっきを防止するための方法。
【請求項8】
補助槽を設け、導電性ローラの一部を前記補助槽内の補助槽めっき液に浸漬し、補助槽内の補助電極と前記導電性ローラをそれぞれ第二電源の負極出力端と正極出力端に接続し、前記第二電源と、前記補助電極と、前記補助槽めっき液とによって前記導電性ローラの電気分解を実現する
ことを特徴とする請求項
7に記載の導電性ローラにおける銅めっきを防止するための方法。
【請求項9】
前記導電性ローラの片端を前記第一電源の負極出力端に接続し、その他端を前記第二電源の正極出力端に接続する
ことを特徴とする請求項
8に記載の導電性ローラにおける銅めっきを防止するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気銅めっきフィルムの製造技術分野に関し、具体的には、電気めっき装置の液切り部におけるめっき液の結晶化を防止するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルムの電気銅めっきの過程で、めっきフィルムの表面には一定のめっき液が付着する。めっきフィルムを導電性ローラに巻き付けて電気めっきを行う際、めっきフィルムが導電性ローラに接触すると、めっき液も導電性ローラに接触し、めっき液と導電性ローラは電気めっき反応が起こり、それによって導電性ローラの表面に大量の銅が堆積する。これらの堆積した銅は、フィルムの製造に大きな影響を与える。例えば、ある点に堆積した銅顆粒、あるいは銅のとげはフィルムに穴を開けたり、擦り傷をつけたりし、めっきフィルム製品の品質に影響を与える。
【0003】
この課題を解決するために、業界では一般的に物理的な銅除去方法を使用して、導電性ローラに対してスプレー、洗浄を行い、またはブレードを用いて導電性ローラ表面の銅を剃るようにしている。例えば、中国特許公開第CN202898572U号は導電性ローラにおける銅めっきを防止するための装置を開示している。該特許は、導電性ローラの底部にスプレーパイプを設けることで、導電性ローラに残っている銅粉を洗浄し、それによって導電性ローラ銅の電気めっきを防止している。
【0004】
しかしながら、従来の物理的方法では、導電性ローラの表面に形成された堆積銅を除去することができるが、導電性ローラ表面に残留している銅顆粒を徹底的に除去することができず、よって非金属フィルムの銅めっきの要件を満たすことができず、なお、めっき液の有効成分にも影響を与え、さらにめっきフィルムの銅めっき効果に影響を及ぼす。このような銅除去方法は、めっきフィルムの銅めっき過程において銅除去の操作ステップを追加する必要があり、設備の実現がより複雑になる。
【0005】
上記欠陥は改善すべきものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術の不足を補うために、本発明は導電性ローラにおける銅めっきを防止するための装置及び方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の技術的解決手段は以下の通りである。
【0008】
導電性ローラにおける銅めっきを防止するための装置であって、
めっき槽めっき液と電気めっきの陽極とが設けられる電気めっき槽と、
補助槽めっき液と、前記補助槽めっき液に完全に浸漬される補助電極と、前記補助槽めっき液に半浸漬される導電性ローラとが設けられ、
めっきフィルム製品が前記補助槽めっき液に浸漬されていない前記導電性ローラに巻き付けられ、かつ電気めっきの陽極を通過する
補助槽とを含み、
前記補助槽めっき液は前記めっき槽めっき液と連通し、前記電気めっきの陽極は第一電源の正極出力端に接続され、前記導電性ローラの片端は前記第一電源の負極出力端に接続され、前記導電性ローラの他端は第二電源の正極出力端に接続され、前記補助電極は前記第二電源の負極出力端に接続されることを特徴とする。
【0009】
上記解決手段による本発明であって、前記補助槽は下端に開口を有する上部補助槽を含み、前記開口部に上部導電性ローラが設けられ、前記上部導電性ローラと前記上部補助槽は気密的に接続され、前記上部導電性ローラの上側は前記上部補助槽内の上部槽めっき液に浸漬され、その下側は前記上部補助槽から露出しており、前記めっきフィルム製品は前記上部導電性ローラの下側に巻き付けられることを特徴とする。
【0010】
さらに、前記上部槽めっき液内に上部補助電極が設けられ、前記上部補助電極は前記上部導電性ローラの真上に位置する。
【0011】
さらに、前記上部補助槽の側面に上部液体入口と上部液体出口とが設けられ、前記上部槽めっき液と前記めっき槽めっき液は前記上部液体入口と前記上部液体出口を経由して連通する。
【0012】
上記解決手段による本発明であって、前記補助槽は上端に開口を有する下部補助槽を含み、前記開口部に下部導電性ローラが設けられ、前記下部導電性ローラの下側は前記下部補助槽内の下部槽めっき液に浸漬され、その上側は前記下部槽めっき液から露出しており、前記めっきフィルム製品は前記下部導電性ローラの上側に巻き付けられることを特徴とする。
【0013】
さらに、前記下部槽めっき液内に下部補助電極が設けられ、前記下部補助電極は前記下部導電性ローラの真下に位置する。
【0014】
上記解決手段による本発明であって、前記補助電極の端部は電極ワイヤに接続され、前記電極ワイヤは前記第二電源の負極出力端に接続され、前記導電性ローラの端部は導電性ロッドを介して導電性スリップリングに接続され、前記導電性ローラの片端部に位置する前記導電性スリップリングは前記第一電源の負極出力端に接続され、前記導電性ローラの他端部に位置する前記導電性スリップリングは前記第二電源の正極出力端に接続されることを特徴とする。
【0015】
導電性ローラと電気めっきの陽極はそれぞれ第一電源の負極出力端と正極出力端に接続され、前記導電性ローラと前記電気めっきの陽極は通電後、めっき槽めっき液を通過するめっきフィルム製品に対して電気めっきを行う導電性ローラにおける銅めっきを防止するための方法であって、
導電性ローラを第二電源の正極出力端に接続し、第二電源負極出力端に接続される補助電極とともに、導電性ローラに対する電気分解を実現し、それによってめっきフィルム製品に対して電気めっきを行う際に前記導電性ローラに発生する銅の堆積を回避する、という導電性ローラの電気分解ステップをさらに含むことを特徴とする。
【0016】
上記解決手段による本発明であって、補助槽を設け、導電性ローラの一部を前記補助槽内の補助槽めっき液に浸漬し、補助槽内の補助電極と前記導電性ローラをそれぞれ第二電源の負極出力端と正極出力端に接続し、前記第二電源と、前記補助電極と、前記補助槽めっき液とによって前記導電性ローラの電気分解を実現することを特徴とする。
【0017】
上記解決手段による本発明であって、前記導電性ローラの片端を前記第一電源の負極出力端に接続し、その他端を前記第二電源の正極出力端に接続することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
上記解決手段による本発明の有益な効果は次のとおりである。
【0019】
本発明は電気めっきの前に導電性ローラの電気分解装置を追加し、導電性ローラと直列接続される補助電極を追加することにより、補助槽内のめっき液で回路を形成し、導電性ローラを電気分解の陽極とし、従って、導電性ローラが電気めっきを完了することを前提に、導電性ローラの付近のめっき液の電気分解を実現でき、導電性ローラにおける銅の電気めっきと電気分解のバランスをとり、導電性ローラにおける銅の残留を回避し、めっきフィルム製品における銅めっきの品質を高める。本発明は装置全体の構造がシンプルで、小さい電解槽で機能を全て実現することができ、電気めっき過程のプロセスを増やすことがなく、電気めっき過程の実現に影響を与えない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図2】上部補助槽と下部補助槽の構造概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面及び実施形態とともに本発明をさらに説明する。
導電性ローラにおける銅めっきを防止するための方法であって、導電性ローラと電気めっきの陽極をそれぞれ第一電源の負極出力端と正極出力端に接続し、第一電源の正極出力端と、電気めっきの陽極と、めっき液と、導電性ローラと、第一電源の負極出力端とを順に接続し、電気めっきの回路を形成する。導電性ローラと電気めっきの陽極は通電後、電気めっき槽を通過するめっきフィルム製品に対して電気めっきを行う。
【0022】
電気めっきの進行につれて、導電性ローラの表面に多くの銅顆粒が堆積する。付近のめっき液の影響による導電性ローラでの銅の堆積を回避するために、導電性ローラと電気めっきの陽極を組み合わせて電気めっきを実現する過程において、同時に導電性ローラに対して電気分解を行う。導電性ローラを第二電源の正極出力端に接続し、第二電源負極出力端に接続される補助電極とともに、導電性ローラに対する電気分解を実現し、それによってめっきフィルム製品に対して電気めっきを行う際に導電性ローラに発生する銅の堆積を回避する。
【0023】
導電性ローラの付近のめっき液に対する電気分解を実現するために、導電性ローラの位置に補助槽を設け、導電性ローラの一部を補助槽内の補助槽めっき液に浸漬し、補助槽内の補助電極と導電性ローラをそれぞれ第二電源の負極出力端と正極出力端に接続し、第二電源の正極出力端と、導電性ローラと、補助槽めっき液と、補助電極と、第二電源の負極出力端とを順に接続し、電気分解の回路を形成する。第二電源、補助電極、及び補助槽めっき液で導電性ローラの電気分解を実現する。電気めっき設備の構造が異なるため、導電性ローラの具体的な設置位置も異なる。そのため、補助槽は電気めっき設備の任意の位置にある可能性があり、よって、ここでその具体的な設置位置を限定しない。
【0024】
本発明は補助槽、補助電極、及び補助槽めっき液を追加し、補助槽内に電気分解回路を追加することにより、導電性ローラがめっきフィルム製品に対して電気めっきを行う際に陰極となり、補助電極とともに銅に対して電気分解を行う際に陽極となり、導電性ローラにおける銅の電気めっきと電気分解のバランスが実現される。導電性ローラを第一電源と第二電源に同時に接続するために、本発明では、導電性ローラの片端を第一電源の負極出力端に接続し、その他端を第二電源の正極出力端に接続する。
【0025】
図1ないし
図9に示すように、導電性ローラにおける銅めっきを防止するための装置であって、上記のように導電性ローラを配置して銅めっきを行う方法に用いられる。それは電気めっき槽400と電気めっき槽400の前端に設けられる補助槽とを含む。電気めっき槽400内にはめっき槽めっき液401と電気めっきの陽極が設けられ、電気めっきの陽極は第一電源の正極出力端に接続され、導電性ローラの片端は第一電源の負極出力端に接続され、電気めっきの陽極と導電性ローラはめっき槽めっき液401を介して相互作用し、めっきフィルム製品500に対する電気めっきを実現する。好ましくは、補助槽はPVC板で製造され、さらには、めっき液が置かれる電気めっきまたは電気分解の環境に適応できるように、PVC以外のその他の耐酸性、耐アルカリ性、及び耐腐食性のある材料で製造されてもよい。
【0026】
補助槽内には補助槽めっき液と、補助槽めっき液に浸漬される補助電極と、補助槽めっき液に半浸漬される導電性ローラとが設けられ、めっきフィルム製品500は補助槽めっき液に浸漬されていない導電性ローラに巻き付けられ、かつ電気めっきの陽極を通過する。補助電極と導電性ローラは平行に設けられ、導電性ローラの他端は第二電源の正極出力端に接続され、補助電極は第二電源の負極出力端に接続され、導電性ローラと補助電極は補助槽めっき液を介して相互作用し、導電性ローラ及び付近の補助槽めっき液に対する電気分解を実現する。導電性ローラと電気めっきの陽極の相互作用を保証し、電気めっき過程を実現するために、補助槽めっき液とめっき槽めっき液401は連通する。
【0027】
好ましくは、補助電極は銅棒であり、さらには銅棒、チタン棒、ステンレス鋼棒、チタン被覆銅棒などを使用してもよい。
【0028】
図1ないし
図5、及び
図9に示すように、めっきフィルム製品500の上面に対する電気めっきを実現する過程で、めっきフィルム製品500は導電性ローラの下面を経由して巻き付けられ、電気めっき槽400に入り、かつ電気めっき槽400内の電気めっきの陽極はめっきフィルム製品500の上側に位置する。
【0029】
このような接続方法による導電性ローラに対して、電気めっき槽400の前側に上部補助槽200が設けられる。具体的には、上部補助槽200は上部槽本体210を含み、上部槽本体210の下端には開口を有し、かつ上部導電性ローラ220は該開口部に設けられる。好ましくは、上部槽本体210の底部は台形である。
【0030】
上部導電性ローラ220の上側は上部補助槽200内の上部槽めっき液201に浸漬され、その下側は上部補助槽200から露出し、めっきフィルム製品500は上部導電性ローラ220の下側に巻き付けられる。上部導電性ローラ220と組み合わせるように、電気めっき槽400内には上部電気めっきの陽極410が設けられ、めっきフィルム製品500は上部電気めっきの陽極410の下側を通過する。好ましくは、上部導電性ローラ220の横断面において、上部補助槽200内に位置する部分は上部補助槽200外に位置する部分より大きく、上部導電性ローラ220とめっきフィルム製品500との接触にも影響を与えず、上部導電性ローラ220と補助槽めっき液との接触面積を十分に増やすこともできる。
【0031】
液体の漏れを回避するために、上部導電性ローラ220と上部補助槽200は気密的に接続される。本実施例における開口部には密封板211が設けられ、上部導電性ローラ220は密封板211によって上部補助槽200に気密に接続される。好ましくは、密封板211はハイパロンシール材であり、開口部に深刻な漏れがないことが確保される。
【0032】
上部槽めっき液201内には上部補助電極230が設けられ、かつ上部補助電極230は上部導電性ローラ220の真上に位置し、上部補助槽200内における電流のより均一な分布を保証し、電気めっき過程と電気分解過程のバランスを保証することができる。正常の電気めっき過程と電気分解過程を保証するために、上部槽めっき液201の液面は上部補助電極230の下面より高く、めっき槽めっき液401の液面は上部電気めっきの陽極410の下面より高い。本実施例において、上部補助電極230は上部槽めっき液201に完全に没入しており、これによって、上部補助電極230が銅の電気分解の負極として機能する際、電流がより均一に伝達でき、上部槽めっき液201内の電流がより均一に分布できる。
【0033】
上部補助電極230の端部は上部電極ワイヤ231に接続され、上部電極ワイヤ231は第二電源の負極出力端に接続される。上部導電性ローラ220の端部は上部導電性ロッド222を介して上部導電性スリップリング223に接続され、上部導電性ローラ220の片端部に位置する上部導電性スリップリング223は第一電源の負極出力端に接続され、上部導電性ローラ220の他端部に位置する上部導電性スリップリング223は第二電源の正極出力端に接続される。
【0034】
上部補助槽200の側面には上部液体入口241と上部液体出口242が設けられ、上部槽めっき液201とめっき槽めっき液401は上部液体入口241と上部液体出口242を経由して連通する。好ましくは、上部液体出口242と上部液体入口241は上部槽本体210の両端に位置し、上部補助槽200めっき液が流出する前に完全に反応できることが保証される。より好ましくは、上部液体出口242の高さは上部液体入口241の高さより高く、同様に、上部補助槽200めっき液のバランスをとった反応を促進できる。
【0035】
図1、
図2、
図6ないし
図9に示すように、めっきフィルム製品500の下面に対する電気めっきを実現する過程で、めっきフィルム製品500は導電性ローラの上面を経由して巻き付けられ、電気めっき槽400に入り、かつ電気めっき槽400内の電気めっきの陽極はめっきフィルムの下側に位置する。
【0036】
このような接続方法による導電性ローラに対して、電気めっき槽400の前側に下部補助槽300が設けられる。具体的には、下部補助槽300は下部槽本体310を含み、下部槽本体310の上端には開口を有し、かつ下部導電性ローラ320は該開口部に設けられる。
【0037】
下部導電性ローラ320の下側は下部補助槽300内の下部槽めっき液301に浸漬され、その上側は下部槽めっき液301から露出し、めっきフィルム製品500は下部導電性ローラ320の上側に巻き付けられる。下部導電性ローラ320と組み合わせるように、電気めっき槽400内には下部電気めっきの陽極420が設けられ、下部電気めっきの陽極420はめっき槽めっき液401内に浸漬され、めっきフィルム製品500は下部電気めっきの陽極420の上側を通過する。下部槽めっき液301内には下部補助電極330が設けられ、かつ下部補助電極330は下部導電性ローラ320の真下に位置し、下部補助槽300内における電流のより均一な分布を保証し、電気めっき過程と電気分解過程のバランスを保証することができる。
【0038】
下部補助電極330の端部は下部電極ワイヤ331に接続され、下部電極ワイヤ331は第二電源の負極出力端に接続される。下部導電性ローラ320の端部は下部導電性ロッド322を介して下部導電性スリップリング323に接続され、下部導電性ローラ320の片端部に位置する下部導電性スリップリング323は第一電源の負極出力端に接続され、下部導電性ローラ320の他端部に位置する下部導電性スリップリング323は第二電源の正極出力端に接続される。
【0039】
具体的な一実施例において、分液孔342の片端は槽本体に設けられる下部液体入口341と連通し、めっき槽めっき液401と下部槽めっき液301とは、下部液体入口341、分液管340、及び下部補助槽300の上端の開口部によって連通する。該実施例において、下部槽めっき液301は上端の開口部から溢れ出る。下部補助槽300内の下部槽めっき液301の濃度を一致させ、下部液体入口341付近の濃度が大きく、液体入口341から離れた位置の濃度が小さいことを回避するように、下部補助槽300内に分液管340が設けられ、分液管340に複数の分液孔342が均一に設けられ、分液管340は下部補助槽300側壁における下部液体入口341と連通する。
【0040】
別の具体的な実施例において、分液孔342の片端は下部槽本体310に設けられる下部液体入口341と連通し、下部槽本体310には下部液体出口がされに設けられ(図には示されていない。以下同じ。)、めっき槽めっき液401と下部槽めっき液301とは下部液体入口341、分液管340、及び下部液体出口によって連通する。
【0041】
図1、
図3、
図6、
図9に示すように、本発明の補助槽と電気めっき槽400は本体槽100の上方に固定され、本体槽100内に本体槽めっき液101が設けられ、補助槽めっき液とめっき槽めっき液401は本体槽めっき液101と連通する。本体槽100の側壁に第一本体槽立板110、第二本体槽立板120、及び第三本体槽立板130が設けられ、かつ第一本体槽立板110は第二本体槽立板120の内側に位置し、第二本体槽立板120は第三本体槽立板130の内側に位置する。
【0042】
導電性ローラの端部は軸受で第一本体槽立板110に嵌設され、導電性ローラの端部は導電性ロッドで導電性スリップリングに接続され、導電性ロッドの内側の端部は第二本体槽立板120を貫通して導電性ローラに接続され、その外側の端部は第三本体槽立板130を貫通した後に導電性スリップリングに接続され、導電性ローラの片端部に位置する導電性スリップリングは第一電源の負極出力端に接続され、その他端部の導電性スリップリングは第二電源の正極出力端に接続される。
【0043】
具体的には、上部導電性ローラ220の両端部は上部軸受221で第一本体槽立板110の上側に嵌設され、上部導電性ロッド222の内側の端部は第二本体槽立板120を貫通した後に上部導電性ローラ220に接続され、その外側の端部は第三本体槽立板130を貫通した後に上部導電性スリップリング223に接続され、上部導電性ローラ220の片端に位置する上部導電性スリップリング223は第一電源の負極出力端に接続され、その他端部の上部導電性スリップリング223は第二電源の正極出力端に接続される。下部導電性ローラ320の両端部は下部軸受321で第一本体槽立板110に嵌設され、かつ上部導電性ローラ220の下側に位置し、下部導電性ロッド322の内側の端部は第二本体槽立板120を貫通した後に下部導電性ローラ320に接続され、その外側の端部は第三本体槽立板130を貫通した後に下部導電性スリップリング323に接続され、下部導電性ローラ320の片端に位置する下部導電性スリップリング323は第一電源の負極出力端に接続され、その他端部の下部導電性スリップリング323は第二電源の正極出力端に接続される。
【0044】
本発明での本体槽100は、補助槽と本体槽100との間のめっき液が流通するための通路となるだけでなく、補助槽と本体槽100を支持することができる。また、下部補助槽300に下部液体出口が設けられていない場合、その下部槽めっき液301は直接に下部補助槽300の上縁から溢れ出て、本体槽100内に流れ込み、微細な液体パイプラインによって、下部槽めっき液301と、本体槽めっき液101と、めっき槽めっき液401との連通が実現される。
【0045】
図10に示すように、本発明の実現過程において、
第一電源の正極出力端V1+は電気めっきの陽極に接続され、その負極出力端V1-は導電性ローラ(上部導電性ローラ220と下部導電性ローラ320)の片端に接続される。第一電源の正極出力端V1+と、電気めっきの陽極と、めっき槽めっき液と、導電性ローラと、第一電源の負極出力端V1-とが順に接続され、完全な電流回路が形成され、それによってめっきフィルム製品の表面に銅の電気めっきが実現される。
【0046】
第二電源の正極出力端V2+は導電性ローラ(上部導電性ローラ220と下部導電性ローラ320)の他端に接続され、その負極出力端V2-は補助電極に接続される。第二電源の正極出力端V2+と、導電性ローラと、補助槽めっき液と、補助電極と、第二電源の負極出力端V2-とは順に接続され、完全な電流回路が形成され、それによって導電性ローラ(上部導電性ローラ220と下部導電性ローラ320)の表面における銅の電気分解が実現される。
【0047】
また、電気めっき過程の電流が電気分解過程の電流よりはるかに大きいため、導電性ローラ(上部導電性ローラ220と下部導電性ローラ320)を第二電源に接続しても、第一電源に連通して銅の電気めっきを実現する過程に影響を及ぼさない。
【0048】
この回路接続により、導電性ローラ(上部導電性ローラ220と下部導電性ローラ320)は電気めっきの陽極とともにめっきフィルム製品に対して銅めっきを行う過程で陰極となり、補助電極とともに銅の電気分解を行う過程で陽極となり、従って、銅めっきを実現することを前提に、導電性ローラ(上部導電性ローラ220と下部導電性ローラ320)の表面における銅の電気めっきと電気分解のバランスをとり、それによって導電性ローラ(上部導電性ローラ220と下部導電性ローラ320)に銅が残留しないことが実現される。
【0049】
実施例において、第一電源は三相電源に接続される第一整流器01を含み、第二電源は三相電源に接続される第二整流器02を含み、回路保護のために2つの整流器が配置された回路にそれぞれ遮断器が設けられる。別の実施例において、第一電源と第二電源はパルス電源で実現してもよい。
【0050】
本発明は電気分解の方法で導電性ローラに対して電気分解処理を行い、めっきフィルム製品に対して電気めっきを行う過程で導電性ローラに発生する銅の堆積を回避し、従来の物理的な銅の除去方法が考慮していないめっき液による影響という問題を解決した。本発明は銅残留の問題を効果的に解決し、めっきフィルム製品の電気めっき品質を高めることができる。本発明は補助槽と補助電極を取り付け、補助槽内に電気分解回路を追加することにより、導電性ローラがめっきフィルム製品に対して電気めっきを行う際に陰極となり、補助電極とともに銅に対して電気分解を行う際に陽極となり、導電性ローラにおける銅の電気めっきと電気分解のバランスが実現される。
【0051】
当業者であれば、上記説明に基づく改善または変更が可能であることは、当然理解されるものであり、すべての改善と変更は本発明に添付の特許請求の保護範囲に属する。
【0052】
以上は図面とともに本発明を例示的に説明したが、本発明の実現は上記方式に限定されるものではないことは明らかであり、本発明の方法、構想、及び技術的解決手段を用いて行った様々な改良、または本発明の構想と技術的解決手段に改良を加えず直接他の場合に応用したものは、すべて本発明の保護範囲内である。
【0053】
本発明は電気めっきの前に導電性ローラの電気分解装置を追加し、導電性ローラと直列接続される補助電極を追加することにより、補助槽内のめっき液で回路を形成し、導電性ローラを電気分解の陽極とし、従って、導電性ローラが電気めっきを完了することを前提に、導電性ローラの付近のめっき液の電気分解を実現でき、導電性ローラにおける銅の電気めっきと電気分解のバランスをとり、導電性ローラにおける銅の残留を回避し、めっきフィルム製品における銅めっきの品質を高める。また、小さい電解槽で機能を全て実現することができ、電気めっき過程のプロセスを増やすことがない。よって、本発明は実用性を有する。
【符号の説明】
【0054】
01 第一整流器
02 第二整流器
100 本体槽
101 本体槽めっき液
110 第一本体槽立板
120 第二本体槽立板
130 第三本体槽立板
200 上部補助槽
201 上部槽めっき液
210 上部槽本体
211 密封板
220 上部導電性ローラ
221 上部軸受
222 上部導電性ロッド
223 上部導電性スリップリング
230 上部補助電極
231 上部電極ワイヤ
241 上部液体入口
242 上部液体出口
300 下部補助槽
301 下部槽めっき液
310 下部槽本体
320 下部導電性ローラ
321 下部軸受
322 下部導電性ロッド
323 下部導電性スリップリング
330 下部補助電極
331 下部電極ワイヤ
340 分液管
341 下部液体入口
342 分液孔
400 電気めっき槽
401 めっき槽めっき液
410 上部電気めっきの陽極
420 下部電気めっきの陽極
500 めっきフィルム製品