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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-02
(45)【発行日】2023-08-10
(54)【発明の名称】ポリエステル系シュリンクフィルム
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20230803BHJP
【FI】
C08J5/18 CFD
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023501791
(86)(22)【出願日】2022-09-28
(86)【国際出願番号】 JP2022036182
【審査請求日】2023-01-11
(31)【優先権主張番号】P 2022059418
(32)【優先日】2022-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000108719
【氏名又は名称】タキロンシーアイ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】523012126
【氏名又は名称】ボンセット アメリカ コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】Bonset America Corporation
(73)【特許権者】
【識別番号】523012137
【氏名又は名称】ボンセット ラテン アメリカ ソシエダ アノニマ
【氏名又は名称原語表記】Bonset Latin America S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100106404
【弁理士】
【氏名又は名称】江森 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100112977
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 有子
(72)【発明者】
【氏名】金子 琢磨
(72)【発明者】
【氏名】勘坂 裕一郎
(72)【発明者】
【氏名】弓削 秀太
(72)【発明者】
【氏名】入船 達也
【審査官】加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-28210(JP,A)
【文献】特開2006-45317(JP,A)
【文献】特開2014-24253(JP,A)
【文献】特開平10-204273(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性ポリエステル樹脂(但し、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸及びイソフタル酸、ジオール成分として1,4-ブタンジオールを少なくとも含有し、全ジカルボン酸成分100モル%中にイソフタル酸を5モル%以上15モル%未満含むポリブチレンテレフタレート共重合体を除く。)を、樹脂全体量に対して、10~70重量%の範囲で含み、かつ、テレフタル酸を少なくとも80モル%含んでなるジカルボン酸と、エチレングリコール50~80モル%及び、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール及びジエチレングリコールから選ばれた1種以上のジオール20~50モル%からなるジオールよりなる非結晶性ポリエステル樹脂を、樹脂全体量に対して、30~90重量%の範囲で含むポリエステル系樹脂組成物に由来したポリエステル系シュリンクフィルムであって、JIS Z 8781-4:2013に準拠して測定されるCIE1976 L色空間の色度座標におけるbを0.15~0.5の範囲内の値とし、主収縮方向をTD方向とし、当該TD方向と直交する方向をMD方向とし、かつ、下記構成(a)(c)を満足することを特徴とするポリエステル系シュリンクフィルム。
(a)MD方向の応力-歪み曲線における上降伏点応力をE1(MPa)とし、下降伏点応力をE2(MPa)としたときに、E1-E2が、下記関係式(1)を満足する。
23.5≦E1-E2≦35 (1)
(b)TD方向における98℃の温水中で、10秒の条件で収縮させた場合の熱収縮率をA1としたときに、当該A1を30%以上の値とする。
(c)前記上降伏点応力であるE1の値を、前記下降伏点応力であるE2の値より大きくするとともに、前記E1を45~65MPaの範囲内の値とし、前記E2を20~40MPaの範囲内の値とする。
【請求項2】
構成(d)として、前記TD方向における、80℃の温水中で、10秒の条件で収縮さ
せた場合の熱収縮率をA2としたときに、当該A2を51%以下の値とすることを特徴と
する請求項1に記載のポリエステル系シュリンクフィルム。
【請求項3】
構成(e)として、前記TD方向における、70℃の温水中で、10秒の条件で収縮させた場合の熱収縮率をA3としたときに、当該A3を20%以下の値とすることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリエステル系シュリンクフィルム。
【請求項4】
構成(f)として、JIS K 7127:1999に準拠して測定される、前記MD方向の引張弾性率をCとしたときに、当該Cを1400~1800MPaの範囲内の値とすることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリエステル系シュリンクフィルム。
【請求項5】
構成(h)として、熱収縮前のフィルムの厚さを10~100μmの範囲内の値とすることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリエステル系シュリンクフィルム。
【請求項6】
構成(i)として、熱収縮前のフィルムのJIS K 7136:2000に準拠して測定されるヘイズ値を8%以下の値とすることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリエステル系シュリンクフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル系シュリンクフィルム(以下、熱収縮性ポリエステル系フィルム、或いは、単に、シュリンクフィルムと称する場合がある。)に関する。
より詳しくは、良好な熱収縮率を有するとともに、シュリンクラベルとして収縮させボトルに装着させた後、運搬及び保管中にラベルが破損することがない優れた破断防止性(以下、単に破断防止性と称する場合がある。)が得られるポリエステル系シュリンクフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シュリンクフィルムは、PETボトル等のラベル用基材フィルムとして幅広く用いられている。特に、ポリエステル系シュリンクフィルムは、機械的強度や透明性等に優れていることから、ラベル用基材フィルムとしてのシェアを伸ばしている状況にある。
かかるポリエステル系シュリンクフィルムは、優れた機械的特性等を有するものの、加熱収縮させる際には、急激な熱応答にともなうテンションや衝撃等が発生し、フィルム自体が破断しやすくなるという問題が見られた。
更には、シュリンクフィルムの保管条件、特に、湿度等に影響され、所定温度における熱収縮率等の物性が変化し、ひいては、運搬及び保管中に破断防止性が低下しやすいという問題が見られた。
【0003】
そこで、ラベルにおける破断防止性等を向上させるべく、幅方向に高い熱収縮率を有するとともに、長手方向は小さい熱収縮率を示し、かつ、長手方向の機械的強度が大きく、ミシン目開封性も良好で、収縮仕上がり性に優れたラベル用途に好適な熱収縮性ポリエステル系フィルムが各種提案されている(例えば、特許文献1参照)。
より具体的には、以下の構成要件(1)~(6)を満足することを特徴とする二軸延伸熱収縮性ポリエステル系フィルムである。
(1)非晶モノマーとして1,4-シクロヘキサンジメタノールをアルコール成分100モル%中、5モル%以上、30モル%以下の範囲で用いる。
(2)98℃の温水にフィルムを10秒間浸漬したときの温湯熱収縮率が、フィルム主収縮方向で60%以上、90%以下である。
(3)98℃の温水にフィルムを10秒間浸漬したときの温湯熱収縮率が、フィルム主収縮方向に直交する方向で-5%以上、5%以下である。
(4)80℃の温水中で主収縮方向に10%収縮させた後の主収縮方向に直交する方向の単位厚み当たりの直角引裂強度が、180N/mm以上、350N/mm以下である。
(5)90℃の熱風で測定したフィルム主収縮方向の最大収縮応力が、2MPa以上、10MPa以下であり、かつ、測定開始から30秒後の収縮応力が最大収縮応力の60%以上、100%以下である。
(6)温度30℃、湿度65%RHで、672時間エージング処理する前後の70℃での主収縮方向の温湯熱収縮率の差が10%以下である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-81378号公報(特許請求の範囲等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された熱収縮性ポリエステル系フィルムの場合、熱収縮率等の物性のばらつきを少なくするために、所定量の結晶性ポリエステル樹脂を配合してポリエステル系シュリンクフィルムを作成し、吸湿性等を制御することについては、何ら考慮していなかった。
又、かかる熱収縮性ポリエステル系フィルムの場合、30℃以下、65%RH条件で、エージング処理を、672時間行い、その前後における70℃での主収縮方向の温湯熱収縮率の差を10%以下の値に制御しているものの、吸湿性を考慮していないことから、現実的には、熱収縮率の安定的な制御が困難であった。
更に又、かかる熱収縮性ポリエステル系フィルムをラベルとして用いた場合に、運搬中の落下等の衝撃による破損を防ぐために、所定条件下での長手方向(MD方向)の直角引裂強度を所定数値範囲内の値と規定しているものの、未だ不十分であった。
そのため、特許文献1に開示された熱収縮性ポリエステル系フィルムにおいては、シュリンクラベルとして収縮させて、PETボトルに装着させた後、運搬及び保管中にラベルが破損するという問題が頻繁に見られた。
【0006】
そこで、本発明の発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意努力した結果、所定量の結晶性ポリエステル樹脂を含むポリエステル系樹脂組成物に由来したポリエステル系シュリンクフィルムが、少なくとも所定構成(a)及び(b)を有することによって、従来の問題を解決するに至った。
すなわち、本発明は、良好な熱収縮率を有するとともに、破断防止性等に優れたポリエステル系シュリンクフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、結晶性ポリエステル樹脂を、樹脂全体量に対して、10~70重量%の範囲で含むポリエステル系樹脂組成物に由来したポリエステル系シュリンクフィルムであって、主収縮方向をTD方向とし、当該TD方向と直交する方向をMD方向とし、かつ、下記構成(a)~(c)等を満足することを特徴とするポリエステル系シュリンクフィルムが提供され、上述した問題点を解決することができる。
より具体的には、結晶性ポリエステル樹脂(但し、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸及びイソフタル酸、ジオール成分として1,4-ブタンジオールを少なくとも含有し、全ジカルボン酸成分100モル%中にイソフタル酸を5モル%以上15モル%未満含むポリブチレンテレフタレート共重合体を除く。)を、樹脂全体量に対して、10~70重量%の範囲で含み、かつ、テレフタル酸を少なくとも80モル%含んでなるジカルボン酸と、エチレングリコール50~80モル%及び、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール及びジエチレングリコールから選ばれた1種以上のジオール20~50モル%からなるジオールよりなる非結晶性ポリエステル樹脂を、樹脂全体量に対して、30~90重量%の範囲で含むポリエステル系樹脂組成物に由来したポリエステル系シュリンクフィルムであって、JIS Z 8781-4:2013に準拠して測定されるCIE1976 L 色空間の色度座標におけるb を0.15~0.5の範囲内の値とし、主収縮方向をTD方向とし、当該TD方向と直交する方向をMD方向とし、かつ、下記構成(a)~(c)を満足することを特徴とするポリエステル系シュリンクフィルムが提供される。
(a)MD方向の応力-歪み曲線における上降伏点応力をE1(MPa)とし、下降伏点応力をE2(MPa)としたときに、E1-E2が、下記関係式(1)を満足する。
23.5≦E1-E2≦35 (1)
(b)TD方向における98℃の温水中で、10秒の条件で収縮させた場合の熱収縮率をA1としたときに、当該A1を30%以上の値とする。
(c)上降伏点応力であるE1の値を、下降伏点応力であるE2の値より大きくするとともに、E1を45~65MPaの範囲内の値とし、E2を20~40MPaの範囲内の値とする。
【0008】
すなわち、本発明のポリエステル系シュリンクフィルムにおいて、結晶性ポリエステル樹脂を所定量含み、かつ、構成(a)~(b)を全て満足することによって、良好な熱収縮性を保持しながら、シュリンクラベルとして収縮させボトルに装着した後、運搬及び保管中にラベルが破損することがない、優れた破断防止性を得ることができる。
なお、破断防止性については、例えば、実施例1の評価7における評価基準に準じて判断することができる。
【0009】
本発明を構成するにあたり、構成(c)として、上降伏点応力であるE1の値を、下降伏点応力であるE2の値より大きくするとともに、E1を40~70MPaの範囲内の値とし、E2を15~45MPaの範囲内の値とすることが好ましい。
このようにE1及びE2との関係において、E1及びE2を、それぞれ所定範囲内の値に具体的に制限することによって、E1-E2で表される数値を更に容易に制御し、良好な熱収縮性を保持しながら、更に良好なフィルムの破断防止性を得ることができる。
【0010】
本発明を構成するにあたり、構成(d)として、TD方向における、80℃の温水中で、10秒の条件で収縮させた場合の熱収縮率をA2としたときに、当該A2を51%以下の値とすることが好ましい。
このようにA2で表される熱収縮率を、所定値以下に制限することによって、E1-E2で表される数値への影響因子を少なくして、フィルムの破断防止性を更に良好なものとすることができる。
【0011】
本発明を構成するにあたり、構成(e)として、TD方向における、70℃の温水中で、10秒の条件で収縮させた場合の熱収縮率をA3としたときに、当該A3を20%以下の値とすることが好ましい。
このようにA3で表される熱収縮率を、所定値以下に具体的に制限することによって、E1-E2で表される数値への影響因子を少なくして、フィルムの破断防止性を更に良好なものとすることができる。
【0012】
本発明を構成するにあたり、構成(f)として、JIS K 7127:1999に準拠して測定される、MD方向の引張弾性率をCとしたときに、当該Cを1400~1800MPaの範囲内の値とすることが好ましい。
このようにCで表される引張弾性率を、所定範囲内の値に具体的に制限することによって、E1-E2で表される数値を更に容易に制御し、良好な熱収縮性を保持しながら、更に良好なフィルムの破断防止性を得ることができる。
【0013】
本発明を構成するにあたり、構成(g)として、JIS Z 8781-4:2013に準拠して測定されるCIE1976 L***色空間の色度座標(以下、単に、CIE色度座標と称する場合がある。)におけるb*を0.15~0.5の範囲内の値とすることが好ましい。
このようにCIE色度座標におけるbを所定範囲内の値に制限することによって、ポリエステル系シュリンクフィルムにおける透明感に優れるばかりか、結晶性ポリエステル樹脂等の配合量を、間接的ではあるが、所望範囲に、より精度良く制御することができる。
【0014】
本発明を構成するにあたり、構成(h)として、熱収縮前のフィルムの厚さを10~100μmの範囲内の値とすることが好ましい。
このように熱収縮前のポリエステル系シュリンクフィルム厚さを所定範囲内の値に具体的に制限することによって、上降伏点応力E1、下降伏点応力E2、E1-E2で表される数値、引張弾性率C等を、それぞれ所定範囲内の値にし、更に制御しやすくできる。
【0015】
本発明を構成するにあたり、構成(i)として、熱収縮前のフィルムのJIS K 7136:2000に準拠して測定されるヘイズ値を8%以下の値とすることが好ましい。
このようにヘイズ値を所定値以下に具体的に制限することにより、ポリエステル系シュリンクフィルムの透明性についても、定量性をもって制御しやすくなり、かつ、透明性が良好なことから、汎用性を更に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1(a)~(c)は、それぞれポリエステル系シュリンクフィルムの形態を説明するための図である。
図2は、ポリエステル系シュリンクフィルムにおける結晶性ポリエステル樹脂の配合量と、CIE色度座標におけるbの値との関係を説明するための図である。
図3は、ポリエステル系シュリンクフィルムにおける結晶性ポリエステル樹脂の配合量と、MD方向のSS曲線における上降伏点応力E1と下降伏点応力E2との差であるE1-E2との関係を説明するための図である。
図4は、ポリエステル系シュリンクフィルムにおける結晶性ポリエステル樹脂の配合量と、破断防止性(相対値)との関係を説明するための図である。
図5は、ポリエステル系シュリンクフィルムにおけるMD方向のSS曲線の典型例であって、MD方向のSS曲線における上降伏点応力E1及び下降伏点応力E2、並びにMD方向の引張弾性率を説明するための図である。
図6は、MD方向のSS曲線における上降伏点応力E1と下降伏点応力E2との差であるE1-E2と、破断防止性(相対値)との関係を説明するための図である。
図7は、ポリエステル系シュリンクフィルムの所定加熱条件(温水98℃、10秒)におけるTD方向の熱収縮率A1と、MD方向のSS曲線における上降伏点応力E1と下降伏点応力E2との差であるE1-E2との関係を説明するための図である。
図8は、ポリエステル系シュリンクフィルムの所定加熱条件(温水80℃、10秒)におけるTD方向の熱収縮率A2と、MD方向のSS曲線における上降伏点応力E1と下降伏点応力E2との差であるE1-E2との関係を説明するための図である。
図9は、ポリエステル系シュリンクフィルムの所定加熱条件(温水70℃、10秒)におけるTD方向の熱収縮率A3と、MD方向のSS曲線における上降伏点応力E1と下降伏点応力E2との差であるE1-E2との関係を説明するための図である。
図10は、MD方向の引張弾性率Cと、上降伏点応力E1と下降伏点応力E2との差であるE1-E2との関係を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1の実施形態]
第1の実施形態は、図1(a)~(c)に例示するように、結晶性ポリエステル樹脂を、樹脂全体量に対して、10~70重量%の範囲で含むポリエステル系樹脂組成物に由来したポリエステル系シュリンクフィルム10であって、主収縮方向をTD方向とし、当該TD方向と直交する方向をMD方向としたときに、下記構成(a)及び(b)等を満足することを特徴とするポリエステル系シュリンクフィルムである。
より具体的には、結晶性ポリエステル樹脂(但し、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸及びイソフタル酸、ジオール成分として1,4-ブタンジオールを少なくとも含有し、全ジカルボン酸成分100モル%中にイソフタル酸を5モル%以上15モル%未満含むポリブチレンテレフタレート共重合体を除く。)を、樹脂全体量に対して、10~70重量%の範囲で含み、かつ、テレフタル酸を少なくとも80モル%含んでなるジカルボン酸と、エチレングリコール50~80モル%及び、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール及びジエチレングリコールから選ばれた1種以上のジオール20~50モル%からなるジオールよりなる非結晶性ポリエステル樹脂を、樹脂全体量に対して、30~90重量%の範囲で含むポリエステル系樹脂組成物に由来したポリエステル系シュリンクフィルムであって、JIS Z 8781-4:2013に準拠して測定されるCIE1976 L 色空間の色度座標におけるb を0.15~0.5の範囲内の値とし、主収縮方向をTD方向とし、当該TD方向と直交する方向をMD方向とし、かつ、下記構成(a)~(c)を満足することを特徴とするポリエステル系シュリンクフィルムである。
(a)MD方向の応力-歪み曲線における上降伏点応力をE1(MPa)とし、下降伏点応力をE2(MPa)としたときに、E1-E2が、下記関係式(1)を満足する。
23.5≦E1-E2≦35 (1)
(b)TD方向における98℃の温水中で、10秒の条件で収縮させた場合の熱収縮率をA1としたときに、当該A1を30%以上の値とする。
(c)上降伏点応力であるE1の値を、下降伏点応力であるE2の値より大きくするとともに、E1を45~65MPaの範囲内の値とし、E2を20~40MPaの範囲内の値とする。
【0018】
以下、第1の実施形態のポリエステル系シュリンクフィルムにつき、各構成に分け、適宜、図面を参照しながら、具体的に説明する。
【0019】
1.ポリエステル樹脂
主成分であるポリエステル樹脂は、基本的に、上述した(a)~(b)の構成を満足しやすいポリエステル樹脂であれば、その種類は問わないが、通常、ジオール及びジカルボン酸からなるポリエステル樹脂、ジオール及びヒドロキシカルボン酸からなるポリエステル樹脂、ジオール、ジカルボン酸、及びヒドロキシカルボン酸からなるポリエステル樹脂、あるいは、これらのポリエステル樹脂の混合物であることが好ましい。
ここで、ポリエステル樹脂の原料成分としてのジオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール等の脂肪族ジオール、1,4-ヘキサンジメタノール等の脂環式ジオール、芳香族ジオール等の少なくとも一つが挙げられる。
そして、これらの中でも、特に、エチレングリコール、ジエチレングリコール、及び1,4-ヘキサンジメタノールが好ましい。
又、同じくポリエステル樹脂の化合物成分としてのジカルボン酸としては、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸等の脂肪酸ジカルボン酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、あるいは、これらのエステル形成性誘導体等の少なくとも一つが挙げられる。
そして、これらの中でも、特に、テレフタル酸が好ましい。
又、同じくポリエステル樹脂の化合物成分としてのヒドロキシカルボン酸としては、乳酸、ヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトン等の少なくとも一つが挙げられる。
【0020】
又、非結晶性ポリエステル樹脂として、例えば、テレフタル酸を少なくとも80モル%含んでなるジカルボン酸と、エチレングリコール50~80モル%及び、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール及びジエチレングリコールから選ばれた1種以上のジオール20~50モル%からなるジオールよりなる非結晶性ポリエステル樹脂を好適に使用できる。
必要に応じ、フィルムの性質を変化させるために、他のジカルボン酸及びジオール、あるいはヒドロキシカルボン酸を使用してもよい。又、それぞれ単独でも、あるいは、混合物であっても良い。
一方、結晶性ポリエステル樹脂として、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート等があるが、それぞれ単独であっても、あるいは混合物であっても良い。
【0021】
又、ポリエステル樹脂が、結晶性ポリエステル樹脂と、非結晶性ポリエステル樹脂と、の混合物である場合、良好かつ適当な破断防止性、耐熱性、及び熱収縮率等を得るために、ポリエステル系シュリンクフィルムを構成する樹脂の全体量(100重量%)に対し、結晶性ポリエステル樹脂の配合量を、10~70重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このように、結晶性ポリエステル樹脂の配合量を、所定範囲内の値とすることによって、良好な熱収縮特性を発揮するとともに、優れた破断防止性を有するポリエステル系シュリンクフィルムとすることができるためである。
より具体的には、結晶性ポリエステル樹脂の配合量が10重量%未満の値になると、ポリエステル系シュリンクフィルムの所定収縮温度における収縮率や、破断防止性の制御が困難となる場合があるためである。
一方、結晶性ポリエステル樹脂の配合量が70重量%を超えると、所定収縮温度において十分な熱収縮率が得られないばかりか、破断防止性の所定影響因子を制御できる範囲が著しく狭くなる場合があるためである。
従って、結晶性ポリエステル樹脂の配合量を、全体量の15~60重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、20~50重量%の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0022】
ここで、図2に言及して、ポリエステル系シュリンクフィルムにおける結晶性ポリエステル樹脂の配合量と、JIS Z 8781-4:2013に準拠して測定されるCIE1976 L***色空間の色度座標におけるb*の値との関係を説明する。
すなわち、図2の横軸に、例えば、厚さ30μmのポリエステル系シュリンクフィルムにおける結晶性ポリエステル樹脂の配合量(重量%)が採って示してあり、縦軸に、CIE色度座標におけるb*の値が採って示してある。
又、図中において、実施例1をEx.1とし、比較例1をCE.1と記載しているが、以下同様である。
そして、図2中の特性曲線から、かかる結晶性ポリエステル樹脂の配合量と、CIE色度座標におけるb*の値との関係において、優れた相関関係(相関係数(R)が、0.96)があることが理解される。
従って、かかる結晶性ポリエステル樹脂の配合量を制限することによって、CIE色度座標におけるb*の値についても、所定範囲内に制御しやすくなると言える。
逆に言えば、CIE色度座標におけるb*を所定範囲内の値(0.15~0.5)に制限することによって、ポリエステル系シュリンクフィルムにおける結晶性ポリエステル樹脂等の配合量を、間接的ではあるが、より精度良く制御できると理解される。
【0023】
次いで、図3に言及して、ポリエステル系シュリンクフィルムにおける結晶性ポリエステル樹脂の配合量と、MD方向のSS曲線の上降伏点応力E1及び下降伏点応力E2との差であるE1-E2との関係を説明する。
すなわち、図3の横軸に、結晶性ポリエステル樹脂の配合量(重量%)が採って示してあり、縦軸に、SS曲線における、上降伏点応力E1及び下降伏点応力E2との差であるE1-E2(MPa)が採って示してある。
そして、図3中の特性曲線から、結晶性ポリエステル樹脂の配合量が多くなるほど、E1-E2で表される数値が大きくなる傾向がある。
従って、結晶性ポリエステル樹脂の配合量を制限することよって上降伏点応力E1及び下降伏点応力E2との差であるE1-E2で表される数値についても、所定範囲内に制御しやすくなると言える。
【0024】
次いで、図4に言及して、ポリエステル系シュリンクフィルムにおける結晶性ポリエステル樹脂の配合量と、破断防止性の評価(相対値)と、の関係を説明する。
すなわち、図4の横軸に、結晶性ポリエステル樹脂の配合量(重量%)が採って示してあり、縦軸に、破断防止性の評価(相対値)が採って示してある。
そして、破断防止性の評価(相対値)は、実施例1等で得られた評価◎を5点、評価○を3点、評価△を1点、評価×を0点として、それぞれ数値化したものである。
かかる図4中の特性曲線から、結晶性ポリエステル樹脂の配合量が10~70重量%の範囲内の値であれば、破断防止性の評価(相対値)は、3点以上となり、良好な破断防止性が得られることが理解される。
従って、結晶性ポリエステル樹脂の配合量を所定範囲内の値(10~70重量%)に制限することによって、ポリエステル系シュリンクフィルムの破断防止性についても、精度良く制御できると言える。
【0025】
2.構成(a)
構成(a)は、第1の実施形態のポリエステル系シュリンクフィルムにおいて、MD方向の応力-歪み曲線(SS曲線)における上降伏点応力をE1(MPa)とし、下降伏点応力をE2(MPa)としたときに、E1-E2が、所定関係式(1)を満足する旨の必要的構成要件である。
この理由は、良好な熱収縮特性を発揮するとともに、優れた破断防止性等を得ることができるためである。
より具体的には、E1-E2で表される数値が、23.5MPa未満の値になったり、逆に50MPaを超える値になると、運搬及び保管中に、フィルムの物性変化を十分に抑えることができず、良好な貯蔵安定性が得られないばかりか、良好な破断防止性についても発揮できなくなってしまう場合があるためである。
従って、かかるE1-E2で表される数値を、25~40MPaの範囲内の値とすることがより好ましく、26~35MPaの範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0026】
ここで、図5に言及して、JIS K 7127:1999に準拠して測定される、所定加熱条件(試験温度:23℃、試験速度:200mm/min)の引張試験での、ポリエステル系シュリンクフィルムのMD方向におけるSS曲線の典型例を説明する。
すなわち、図5の横軸に、ポリエステル系シュリンクフィルムのMD方向における歪みの値(%)を採って示してあり、縦軸に、その歪みに対応する応力(MPa)が採って示してある。
そして、かかる図5中の特性曲線(SS曲線)から、ポリエステル系シュリンクフィルムのMD方向における歪みを大きくしていくと、それに対応して応力が発生し、その値も上昇することが理解される。
ここで、引張弾性率(C)は、ヤング率とも呼ばれ、SS曲線における直線の勾配として求めることができ、図5中の2点の微小ひずみ(ε1及びε2)に対応する応力(σ1及びσ2)から下記関係式(2)で定義される。
C=(σ2-σ1)/(ε2-ε1) (2)
次いで、更に、MD方向における歪みを大きくすると、ポリエステル系シュリンクフィルムの結晶転移が生じ、上に凸のブロードピークが現れる。これが、ピークに対応した応力であって、上降伏点応力(E1)と定義される。
次いで、更に、MD方向における歪みを大きくしていくと、ポリエステル系シュリンクフィルムの結晶転移が再度生じ、下に凸のブロードピークが現れる。これが、ピークに対応した応力であって、下降伏点応力(E2)と定義される。
そして、本発明は、ポリエステル系シュリンクフィルムの上降伏点応力と下降伏点応力の差(E1-E2)と、シュリンクラベルとして収縮させボトルに装着した後、運搬及び保管中におけるラベルの破断防止性等の所定関係を見出し、それを制御することを特徴としたものである。
【0027】
次いで、図6に言及して、上降伏点応力E1及び下降伏点応力E2との差であるE1-E2と、破断防止性の評価(相対値)と、の関係を説明する。
すなわち、図6の横軸に、上降伏点応力E1及び下降伏点応力E2との差であるE1-E2(MPa)が採って示してあり、縦軸に、破断防止性の評価(相対値)が採って示してある。
そして、破断防止性の評価(相対値)は、実施例1等で得られた評価◎を5点、評価○を3点、評価△を1点、評価×を0点として、それぞれ数値化したものである。
かかる図6中の特性曲線から、E1-E2で表される数値が、23.5MPa以上であれば、破断防止性の評価(相対値)は、3点以上となり、良好な破断防止性が得られることが理解される。
従って、E1-E2で表される数値を所定範囲内の値(23.5~50MPa)に制限することによって、ポリエステル系シュリンクフィルムの破断防止性についても、精度良く制御できると言える。
なお、本評価にて、良好な破断防止性が発揮されたポリエステル系シュリンクフィルムであれば、シュリンクラベルとして収縮させボトルに装着した後、運搬及び保管中のラベルにおいて、良好な破断防止性が発揮されることが別途明らかになっている。
【0028】
3.構成(b)
構成(b)は、第1の実施形態のポリエステル系シュリンクフィルムにおいて、主収縮方向をTD方向とし、当該TD方向における、98℃の温水中で、10秒の条件で収縮させた場合の熱収縮率をA1とし、この熱収縮率A1を30%以上の値とする旨の必要的構成要件である。
この理由は、かかる98℃熱収縮率A1を所定値以上に具体的に制限することにより、熱収縮時のポリエステル系シュリンクフィルムにおいて、良好な熱収縮率が得られ、更には、E1-E2で表される数値を、更に容易に所定範囲内に制御し、ひいては、良好な破断防止性が得られるためである。
より具体的には、フィルムの98℃熱収縮率A1が、30%未満の値になると、熱収縮率が不十分であり、複雑な形状を有するPETボトルに対して、そのボトル周囲の形状に追従できなくなる場合があるためである。
従って、かかる98℃熱収縮率A1の下限を40%以上の値とすることがより好ましく、50%以上の値とすることが更に好ましい。
一方、上述した98℃熱収縮率A1の値が過度に大きくなると、フィルムを熱収縮させた際に、急激な熱応答により不均一に収縮し、熱収縮時の破断現象が生じやすくなり、更にはE1-E2で表される数値を、所定範囲内に制御することが困難となる場合があるためである。
従って、かかる98℃熱収縮率A1の上限を80%以下の値とすることが好ましく、75%以下の値とすることがより好ましく、70%以下の値とすることが更に好ましい。
なお、第1の実施形態のシュリンクフィルムにおける熱収縮率は、下記式で定義される。
熱収縮率(%)=(L0-L1)/L0×100
0:熱処理前のサンプルの寸法(長手方向又は幅方向)
1:熱処理後のサンプルの寸法(L0と同じ方向)
【0029】
ここで、図7に言及して、ポリエステル系シュリンクフィルムの所定加熱条件(温水98℃、10秒)における収縮率(A1)と、MD方向のSS曲線における上降伏点応力E1及び下降伏点応力E2の差(E1-E2)との関係を説明する。
すなわち、図7の横軸に、ポリエステル系シュリンクフィルムのTD方向における熱収縮率(A1)の値(%)を採って示してあり、縦軸に、上降伏点応力E1及び下降伏点応力E2の差(E1-E2)(MPa)が採って示してある。
かかる図7中に示された特性曲線から、所定の熱収縮率A1と、上降伏点応力E1及び下降伏点応力E2の差(E1-E2)との間において、高い相関関係(線形近似で、相関係数(R)が、例えば0.90)があることが理解される。
よって、熱収縮時における所定の熱収縮率A1を制御することによって、ポリエステル系シュリンクフィルムの上降伏点応力と下降伏点応力の差(E1-E2)についても制御できることが理解される。
【0030】
4.任意的構成要件
(1)構成(c)
構成(c)は、第1の実施形態のポリエステル系シュリンクフィルムにおいて、上降伏点応力であるE1の値を、下降伏点応力であるE2の値より大きくするとともに、E1を40~70MPaの範囲内の値とし、E2を15~45MPaの範囲内の値とする旨の任意的構成要件である。
すなわち、MD方向のSS曲線における、上降伏点応力E1及び下降伏点応力E2の値を具体的に制限することによって、上降伏点応力E1と下降伏点応力E2の差であるE1-E2で表される数値を、所定範囲内に更に容易に制御して、破断防止性に優れたシュリンクフィルムとすることができる。
従って、上降伏点応力E1を、45~65MPaの範囲内の値とすることがより好ましく、50~60MPaの範囲内の値とすることが更に好ましい。
そして、下降伏点応力E2を、20~40MPaの範囲内の値とすることがより好ましく、25~35MPaの範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0031】
(2)構成(d)
構成(d)は、第1の実施形態のポリエステル系シュリンクフィルムにおいて、80℃の温水中で、10秒の条件で収縮させた場合の熱収縮率をA2とし、当該A2を51%以下の値とする旨の任意的構成要件である。
すなわち、かかる80℃熱収縮率A2を所定値以下に具体的に制限することにより、熱収縮時のポリエステル系シュリンクフィルムにおいて、良好な熱収縮率を維持しつつも、E1-E2で表される数値を、更に容易に所定範囲内に制御することができ、ひいては、良好な破断防止性を得えることができる。
より具体的には、フィルムの80℃熱収縮率A2が、51%を超えた値になると、フィルムを熱収縮させた際に、急激な熱応答により不均一に収縮し、熱収縮時の破断現象が生じやすくなる場合があるばかりか、E1-E2で表される数値を、所定範囲内に制御することが困難となって、シュリンクラベルとして収縮させボトルに装着した後、運搬及び保管中に、ラベルの破断防止性が低下する場合がある。
従って、かかる80℃熱収縮率A2を48%以下の値とすることがより好ましく、45%以下の値とすることが更に好ましい。
但し、上述した80℃熱収縮率A2が過度に小さくなると、熱収縮率が不十分となり、複雑な形状を有するPETボトルに対して、そのボトル周囲の形状に追従できなくなる場合がある。
従って、かかる80℃熱収縮率A2の下限を15%以上の値とすることが好ましく、20%以上の値とすることがより好ましく、25%以上の値とすることが更に好ましい。
【0032】
ここで、図8に言及して、ポリエステル系シュリンクフィルムの所定加熱条件(温水80℃、10秒)における収縮率(A2)と、MD方向のSS曲線における上降伏点応力E1及び下降伏点応力E2の差(E1-E2)との関係を説明する。
すなわち、図8の横軸に、ポリエステル系シュリンクフィルムのTD方向における熱収縮率(A2)の値(%)を採って示してあり、縦軸に、上降伏点応力E1及び下降伏点応力E2の差(E1-E2)(MPa)が採って示してある。
かかる図8中に示された特性曲線から、所定の熱収縮率A2と、上降伏点応力E1及び下降伏点応力E2の差(E1-E2)との間において、高い相関関係(線形近似で、相関係数(R)が、例えば0.89)があることが理解される。
よって、熱収縮時における所定の熱収縮率A2を制御することによって、ポリエステル系シュリンクフィルムの上降伏点応力と下降伏点応力の差(E1-E2)についても制御できることが理解される。
【0033】
(3)構成(e)
構成(e)は、第1の実施形態のポリエステル系シュリンクフィルムにおいて、TD方向における熱収縮率をA3としたときに、当該A3を20%以下の値とする旨の任意的構成要件である。
すなわち、このように70℃、温水10秒における熱収縮率A3を所定値以下に具体的に制限することにより、80~100℃において、安定的な熱収縮率が得られ、更にE1-E2で表される数値を、更に容易に所定範囲内に制御し、ひいては、良好な破断防止性が得ることができる。
より具体的には、かかる熱収縮率A3が、20%を超えた値になると、80~100℃において、安定的な熱収縮率が得えることが困難となるばかりか、E1-E2で表される数値を、所定範囲内に制御することが困難となって、良好な破断防止性が得られない場合がある。
従って、かかる熱収縮率A3の上限を15%以下の値とすることがより好ましく、10%以下の値とすることが更に好ましい。
但し、かかる熱収縮率A3が、過度に小さいと、80~100℃において、熱収縮率が不十分となり、複雑な形状を有するPETボトルに対して、そのボトル周囲の形状に追従できなくなる場合がある。
従って、かかる熱収縮率A3の下限を1%以上の値とすることがより好ましく、3%以上の値とすることが更に好ましい。
【0034】
ここで、図9に言及して、ポリエステル系シュリンクフィルムの所定加熱条件(温水70℃、10秒)における収縮率(A3)と、MD方向のSS曲線における上降伏点応力E1及び下降伏点応力E2の差(E1-E2)との関係を説明する。
すなわち、図9の横軸に、ポリエステル系シュリンクフィルムのTD方向における熱収縮率(A3)の値(%)を採って示してあり、縦軸に、上降伏点応力E1及び下降伏点応力E2の差(E1-E2)(MPa)が採って示してある。
かかる図9中に示された特性曲線から、所定の熱収縮率A3と、上降伏点応力E1及び下降伏点応力E2の差(E1-E2)との間において、高い相関関係(線形近似で、相関係数(R)が、例えば0.73)があることが理解される。
よって、熱収縮時における所定の熱収縮率A3を制御することによって、ポリエステル系シュリンクフィルムの上降伏点応力と下降伏点応力の差(E1-E2)についても制御できることが理解される。
【0035】
(4)構成(f)
構成(f)は、第1の実施形態のポリエステル系シュリンクフィルムにおいて、JIS K 7127:1999に準拠して測定される、MD方向の引張弾性率をCとしたときに、当該Cを1400~1800MPaの範囲内の値とする旨の任意的構成要件である。
すなわち、このようにMD方向の引張弾性率を、所定範囲内の値に具体的に制限することにより、E1-E2で表される数値を所定範囲内に制御しやすくし、ひいては、破断防止性を向上させることできる。
【0036】
より具体的には、MD方向の引張弾性率Cが1400MPa未満になると、E1-E2で表される数値を、所定範囲内の値に制御できなくなり、ひいては、良好な破断防止性が低下する場合がある。
一方、MD方向の引張弾性率Cが1800MPaを超えると、使用できるポリエステル樹脂の種類が過度に限定されたり、E1-E2で表される数値を、安定的に制御したりすることが困難になって、生産上の歩留まりが著しく低下する場合がある。
従って、構成(f)として、MD方向の引張弾性率Cを1450~1700MPaとすることがより好ましく、1480~1650MPaの範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0037】
ここで、図10に言及して、MD方向の引張弾性率Cと、上降伏点応力E1と下降伏点応力E2との差であるE1-E2との関係を説明する。
すなわち、図10の横軸に、MD方向の引張弾性率C(MPa)が採って示してあり、縦軸に、上降伏点応力E1と下降伏点応力E2との差であるE1-E2(MPa)が採って示してある。
かかる図10中に示された特性曲線から、引張弾性率Cが、1400MPa以上であれば、E1-E2で表される数値を、23.5MPa以上に制御できることが理解される。
よって、後述する実施例1等で測定されるように、ポリエステル系シュリンクフィルムにおける引張弾性率Cを制限することによって、E1-E2で表される数値についても制御しやすくなると言える。
【0038】
(5)構成(g)
構成(g)は、第1の実施形態のポリエステル系シュリンクフィルムにおいて、JIS Z 8781-4:2013に準拠して測定されるCIE1976 L***色空間の色度座標におけるb*を0.15~0.5の範囲内の値とする旨の任意的構成要件である。
すなわち、かかるCIE色度座標におけるb*が、0.15未満になると、結晶性ポリエステル樹脂等の配合量が相対的ではあるが低下し、E1-E2で表される数値を、所定範囲内に制御することが困難となる場合がある。
一方、かかるCIE色度座標におけるb*が、0.5を超えた値になると、ポリエステル系シュリンクフィルムにおける透明感が低下するばかりか、結晶性ポリエステル樹脂等の配合量が、相対的ではあるが過剰になって、熱収縮率の値が著しく低下する場合がある。
従って、CIE色度座標におけるb*を0.2~0.4の範囲内の値とすることがより好ましく、0.22~0.36の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0039】
(6)構成(h)
構成(h)は、第1の実施形態のポリエステル系シュリンクフィルムにおいて、熱収縮前のフィルムの厚さ(平均厚さ)を、通常、10~100μmの範囲内の値にする旨の任意的構成要件である。
すなわち、このように熱収縮前のフィルムの厚さを所定範囲内の値に具体的に制限することにより、熱収縮率A1~A3、上降伏点応力E1、下降伏点応力E2、及び、E1-E2で表される数値等を、それぞれ所定範囲内の値にし、更に容易に制御しやすくなるためである。
そのため、所定影響因子の要因を低下させて、ポリエステル系シュリンクフィルムにおいて、破断防止性を向上させることできる。
従って、構成(h)として、熱収縮前のフィルムの厚さを、15~70μmの範囲内の値とすることがより好ましく、20~40μmの範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0040】
(7)構成(i)
又、構成(i)は、第1の実施形態のポリエステル系シュリンクフィルムにおいて、熱収縮前のフィルムのJIS K 7136:2000に準拠して測定されるヘイズ値を8%以下の値とする旨の任意的構成要件である。
すなわち、このようにヘイズ値を所定範囲内の値に具体的に制限することにより、ポリエステル系シュリンクフィルムの透明性についても、定量性をもって制御しやすくなり、かつ、透明性が良好なことから、汎用性を更に高めることができる。
より具体的には、熱収縮前のフィルムのヘイズ値が、8%を超えた値になると、透明性が低下し、PETボトルに対する装飾用途等への適用が困難となる場合がある。
一方、熱収縮前のフィルムのヘイズ値が、過度に小さくなると、安定的に制御することが困難になって、生産上の歩留まりが著しく低下する場合がある。
従って、構成(i)として、熱収縮前のフィルムのヘイズ値を0.1~6%の範囲内の値とすることがより好ましく、0.5~5%の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0041】
(8)その他
第1の実施形態のポリエステル系シュリンクフィルム中、又は、その片面、あるいは両面に、各種添加剤を配合したり、それらを付着させたりすることが好ましい。
より具体的には、加水分解防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、着色剤、有機フィラー、無機フィラー、有機繊維、無機繊維等の少なくとも一つを、ポリエステル系シュリンクフィルムの全体量に対して、通常、0.01~10重量%の範囲で配合することが好ましく、0.1~1重量%の範囲で配合等することがより好ましい。
【0042】
又、図1(b)に示すように、これらの各種添加剤の少なくとも一つを含む他の樹脂層10a、10bを、ポリエステル系シュリンクフィルム10の片面、又は両面に、積層することも好ましい。
その場合、ポリエステル系シュリンクフィルムの厚さを100%としたとときに、追加で積層する他の樹脂層の単層厚さ又は合計厚さを、通常、0.1~10%の範囲内の値とすることが好ましい。
【0043】
そして、他の樹脂層を構成する主成分としての樹脂は、ポリエステル系シュリンクフィルムと同様のポリエステル樹脂であっても良く、あるいは、それとは異なるアクリル系樹脂、オレフィン系樹脂、ウレタン系樹脂、ゴム系樹脂等の少なくとも一つであることが好ましい。
【0044】
更に、ポリエステル系シュリンクフィルムを多層構造にすることで、加水分解防止効果や機械的保護を更に向上させたり、あるいは、図1(c)に示すように、ポリエステル系シュリンクフィルムの収縮率が、面内で均一になったりするように、ポリエステル系シュリンクフィルム10の表面に、収縮率調整層10cを設けることも好ましい。
かかる収縮率調整層は、ポリエステル系シュリンクフィルムの収縮特性に応じて、接着剤、塗布方式、あるいは加熱処理等によって、積層することができる。
【0045】
より具体的には、収縮率調整層の厚さは、0.1~3μmの範囲であって、所定温度におけるポリエステル系シュリンクフィルムの収縮率が過度に大きい場合には、それを抑制するタイプの収縮率調整層を積層することが好ましい。
又、所定温度におけるポリエステル系シュリンクフィルムの収縮率が過度に小さい場合には、それを拡大するタイプの収縮率調整層を積層することが好ましい。
よって、ポリエステル系シュリンクフィルムとして、収縮率が異なる各種シュリンクフィルムを作成することなく、収縮率調整層によって、所望の収縮率を得ようとするものである。
【0046】
[第2の実施形態]
第2の実施形態は、第1の実施形態のポリエステル系シュリンクフィルムの製造方法に関する実施形態である。
【0047】
1.原材料の準備及び混合工程
まずは、原材料として、非結晶性ポリエステル樹脂、結晶性ポリエステル樹脂、ゴム系樹脂、帯電防止剤、加水分解防止剤等の、主剤や添加剤を準備することが好ましい。
次いで、攪拌容器内に、秤量しながら、準備した非結晶性ポリエステル樹脂や結晶性ポリエステル樹脂等を投入し、攪拌装置を用いて、均一になるまで、混合攪拌することが好ましい。
【0048】
2.原反シートの作成工程
次いで、均一に混合した原材料を、絶乾状態に乾燥することが好ましい。
次いで、典型的には、押し出し成形を行い、所定厚さの原反シートを作成することが好ましい。
より具体的には、例えば、押出温度245℃の条件で、L/D24、押出スクリュー径50mmの押出機(田辺プラスチック機械株式会社製)により、押し出し成形を行い、所定厚さ(通常、30~1000μm)の原反シートを得ることができる。
【0049】
3.ポリエステル系シュリンクフィルムの作成
次いで、得られた原反シートにつき、シュリンクフィルム製造装置を用い、ロール上やロール間を移動させながら、加熱押圧して、ポリエステル系シュリンクフィルムを作成する。
すなわち、所定の延伸温度、延伸倍率で、フィルム幅を基本的に拡大させながら、加熱押圧しながら、所定方向に延伸することにより、ポリエステル系シュリンクフィルムを構成するポリエステル分子を所定形状に結晶化させることが好ましい。
そして、その状態で固化させることによって、装飾やラベル等として用いられる熱収縮性のポリエステル系シュリンクフィルムを作成することができる。
【0050】
(1)MD方向の延伸倍率
又、熱収縮前のポリエステル系シュリンクフィルムのMD方向における延伸倍率(平均MD方向延伸倍率、単に、MD方向延伸倍率と称する場合がある。)を100~200%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このようにMD方向延伸倍率を所定範囲内の値に具体的に制限し、かつ、熱収縮率A1~A3、上降伏点応力E1、下降伏点応力E2、E1-E2で表される数値、引張弾性率C等を、それぞれ所定範囲内の値に具体的に制限することで、シュリンクラベルとして収縮させボトルに装着した後、運搬及び保管中におけるラベルの破断防止性を向上させることができるためである。
【0051】
より具体的には、MD方向延伸倍率が、100%未満の値になると、製造上の歩留まりが著しく低下する場合があるためである。
一方、MD方向延伸倍率が200%を超えると、TD方向における収縮率に影響し、その収縮率の調整自体が困難となる場合があるためである。
従って、MD方向延伸倍率を100~150%の範囲内の値とすることがより好ましく、100~120%の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0052】
(2)TD方向の延伸倍率
又、熱収縮前のポリエステル系シュリンクフィルムのTD方向における延伸倍率(平均TD方向延伸倍率、単に、TD方向延伸倍率と称する場合がある。)を300~600%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、上述のMD方向延伸倍率のみならず、TD方向延伸倍率も所定範囲内の値に具体的に制限し、かつ、熱収縮率A1~A3、上降伏点応力E1、下降伏点応力E2、E1-E2で表される数値、引張弾性率C等を、それぞれ所定範囲内の値に具体的に制限することで、より一層、シュリンクラベルとして収縮させボトルに装着した後、運搬及び保管中におけるラベルの破断防止性を向上させることができるためである。
【0053】
より具体的には、TD方向延伸倍率が、300%未満の値になると、TD方向における収縮率が著しく低下し、使用可能なポリエステル系シュリンクフィルムの用途が過度に制限される場合があるためである。
一方、TD方向延伸倍率が、600%を超えた値になると、熱収縮率が著しく大きくなって、使用可能なポリエステル系シュリンクフィルムの用途が過度に制限されたり、あるいは、その延伸倍率自体を一定に制御することが困難となったりする場合があるためである。
従って、TD方向延伸倍率を350~550%の範囲内の値とすることがより好ましく、400~500%の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0054】
4.ポリエステル系シュリンクフィルムの検査工程
作成したポリエステル系シュリンクフィルムにつき、連続的又は間断的に、下記特性等を測定し、所定の検査工程を設けることが好ましい。
すなわち、所定の検査工程によって、下記特性等を測定し、所定範囲内の値に入ることを確認することによって、より均一な収縮特性等を有するポリエステル系シュリンクフィルムとすることができる。
1)ポリエステル系シュリンクフィルムの外観についての目視検査
2)厚さのばらつき測定
3)引張弾性率測定
4)引裂強度測定
5)SS曲線による粘弾性特性測定
【0055】
そして、第2の実施形態のポリエステル系シュリンクフィルムの製造において、結晶性ポリエステル樹脂を、樹脂全体量に対して、10~70重量%の範囲で含むポリエステル系樹脂組成物に由来したポリエステル系シュリンクフィルムであって、主収縮方向をTD方向とし、当該TD方向と直交する方向をMD方向とし、かつ、下記構成(a)~(b)を測定し、所定範囲内の値であることを確認するのが肝要である。
(a)MD方向の応力-歪み曲線における上降伏点応力をE1(MPa)とし、下降伏点応力をE2(MPa)としたときに、E1-E2が、下記関係式(1)を満足する。
23.5≦E1-E2≦50 (1)
(b)TD方向における98℃の温水中で、10秒の条件で収縮させた場合の熱収縮率をA1としたときに、当該A1を30%以上の値とする。
【0056】
[第3の実施形態]
第3の実施形態は、ポリエステル系シュリンクフィルムの使用方法に関する実施形態である。
従って、すなわち、公知のシュリンクフィルムの使用方法を、いずれも好適に適用することができる。
例えば、ポリエステル系シュリンクフィルムの使用方法を実施するに際して、まずは、ポリエステル系シュリンクフィルムを、適当な長さや幅に切断するとともに、長尺筒状物を形成する。
次いで、当該長尺筒状物を、自動ラベル装着装置(シュリンクラベラー)に供給し、更に必要な長さに切断する。
次いで、内容物を充填したPETボトル等に外嵌する。
【0057】
次いで、PETボトル等に外嵌したポリエステル系シュリンクフィルムの加熱処理として、所定温度の熱風トンネルやスチームトンネルの内部を通過させる。
そして、これらのトンネルに備えてなる赤外線等の輻射熱や、90℃程度の加熱蒸気を周囲から吹き付けることにより、ポリエステル系シュリンクフィルムを均一に加熱して熱収縮させる。
よって、PETボトル等の外表面に密着させて、ラベル付き容器を迅速に得ることができる。
【0058】
すなわち、本発明のポリエステル系シュリンクフィルムによれば、第1の実施形態で詳述したように、結晶性ポリエステル樹脂を、樹脂全体量に対して、10~70重量%の範囲で含むポリエステル系樹脂組成物に由来したポリエステル系シュリンクフィルムであって、少なくとも構成(a)及び(b)を満足することを特徴とする。
そうすることで、シュリンクラベルとして収縮させボトルに装着した後、運搬及び保管中におけるラベルの破断防止性を向上させることができる。
【実施例
【0059】
以下、本発明を実施例に基づき、詳細に説明する。但し、特に理由なく、本発明の権利範囲が、実施例等の記載によって制限されることはない。
なお、実施例等において用いたポリエステル樹脂等は、以下の通りである。
【0060】
(PETG1)
ジカルボン酸:テレフタル酸100モル%、ジオール:エチレングリコール63モル%、ジエチレングリコール13モル%、1,4-シクロヘキサンジメタノール24モル%からなる非結晶性ポリエステル
(PETG2)
ジカルボン酸:テレフタル酸100モル%、ジオール:エチレングリコール68モル%、1,4-シクロヘキサンジメタノール22モル%、ジエチレングリコール10モル%からなる非結晶性ポリエステル
(PETG3)
ジカルボン酸:テレフタル酸100モル%、ジオール:エチレングリコール70モル%、ネオペンチルグリコール28モル%、ジエチレングリコール2モル%からなる非結晶性ポリエステル
(APET)
ジカルボン酸:テレフタル酸100モル%、ジオール:エチレングリコール100モル%からなる結晶性ポリエステル
(PBT)
ジカルボン酸:テレフタル酸100モル%、ジオール:1,4-ブタンジオール100モル%からなる結晶性ポリエステル
(添加剤(アンチブロッキング剤))
マトリクス樹脂:PET、シリカ含有量:5質量%、シリカの平均粒径:2.7μmからなるシリカマスターバッチ
【0061】
[実施例1]
1.ポリエステル系シュリンクフィルムの作成
攪拌容器内に、非結晶性ポリエステル樹脂(PETG1)を90重量部と、結晶性ポリエステル樹脂(A-PET)を10重量部と、所定の添加剤(アンチブロッキング剤)を0.8重量部と、を収容した。
次いで、これらの原料を絶乾状態にしたのち、押出温度245℃の条件で、L/D24、押出スクリュー径50mmの押出機(田辺プラスチック機械株式会社製)により、押し出し成形を行い、厚さ150μmの原反シートを得た。
次いで、シュリンクフィルム製造装置を用い、原反シートから、予備加熱温度80℃、延伸温度80℃、熱固定温度78℃、延伸倍率(MD方向:100%、TD方向:500%)で、厚さ30μmのポリエステル系シュリンクフィルムを作成した。
【0062】
2.ポリエステル系シュリンクフィルムの評価
(1)評価1:厚さのばらつき
得られたポリエステル系シュリンクフィルムの厚さ(所望値である30μmを基準値として)を、マイクロメータを用いて測定し、以下の基準に準じて評価した。
◎:厚さのばらつきが、準値±0.1μmの範囲内の値である。
〇:厚さのばらつきが、基準値±0.5μmの範囲内の値である。
△:厚さのばらつきが、基準値±1.0μmの範囲内の値である。
×:厚さのばらつきが、基準値±3.0μmの範囲内の値である。
【0063】
(2)評価2:降伏点応力(E1及びE2)
得られたポリエステル系シュリンクフィルムのMD方向のSS曲線における上降伏点応力E1及び下降伏点応力E2を測定した。
又、得られた上降伏点応力E1及びE2から、E1-E2を算出し、各評価に使用した。
【0064】
(2)-1 評価2-1 上降伏点応力(E1)
測定された上降伏点応力(E1)につき、以下の基準に準じて評価した。
◎:上降伏点応力(E1)が、45~65MPaの範囲内の値である。
〇:上降伏点応力(E1)が、上記範囲外であって、かつ、40~70MPaの範囲内の値である。
△:上降伏点応力(E1)が、上記範囲外であって、かつ、35~75MPaの範囲内の値である。
×:上降伏点応力(E1)が、35MPa未満又は75MPaを超える値である。
【0065】
(2)-2 評価2-2:下降伏点応力(E2)
測定された下降伏点応力(E2)につき、以下の基準に準じて評価した。
◎:下降伏点応力(E2)が、20~40MPaの範囲内の値である。
〇:下降伏点応力(E2)が、上記範囲外であって、かつ、15~45MPaの範囲内の値である。
△:下降伏点応力(E2)が、上記範囲外であって、かつ、10~50MPaの範囲内の値である。
×:下降伏点応力(E2)が、10MPa未満又は50MPaを超える値である。
【0066】
(2)-3 評価2-3:E1-E2
算出されたE1-E2につき、以下の基準に準じて評価した。
◎:E1-E2が、25~40MPaの範囲内の値である。
〇:E1-E2が、上記範囲外であって、かつ、23.5~50MPaの範囲内の値である。
△:E1-E2が、上記範囲外であって、かつ、22~60MPaの範囲内の値である。
×:E1-E2が、22MPa未満又は60MPaを超える値である。
【0067】
(3)評価3:熱収縮率(A1)
得られたポリエステル系シュリンクフィルム(TD方向)を、恒温水槽を用いて、98℃の温水に、10秒間浸漬し、熱収縮させた。
次いで、所定温度(98℃温水)で加熱処理前後の寸法変化から、下式(3)に準じて、熱収縮率(A1)を算出し、以下の基準に準じて評価した。
熱収縮率=(熱収縮前のフィルムの長さ-熱収縮後のフィルムの長さ)/熱収縮前のフィルムの長さ×100 (3)
◎:熱収縮率(A1)が、40~75%の範囲内の値である。
〇:熱収縮率(A1)が、上記範囲外であって、かつ、30~80%の範囲内の値である。
△:熱収縮率(A1)が、上記範囲外であって、かつ、25~85%の範囲内の値である。
×:熱収縮率(A1)が、25%未満又は85%を超える値である。
【0068】
(4)評価4:熱収縮率(A2)
得られたポリエステル系シュリンクフィルム(TD方向)を、恒温水槽を用いて、80℃の温水に、10秒間浸漬し、熱収縮させた。
次いで、所定温度(80℃温水)で加熱処理前後の寸法変化から、上記式(3)に準じて、熱収縮率(A2)を算出し、以下の基準に準じて評価した。
◎:熱収縮率(A2)が、48%以下の値ある。
〇:熱収縮率(A2)が、51%以下の値である。
△:熱収縮率(A2)が、54%以下の値である。
×:熱収縮率(A2)が、54%を超える値である。
【0069】
(5)評価5:熱収縮率(A3)
得られたポリエステル系シュリンクフィルム(TD方向)を、恒温水槽を用いて、70℃の温水に、10秒間浸漬し、熱収縮させた。
次いで、所定温度(70℃温水)で加熱処理前後の寸法変化から、上記式(3)に準じて、熱収縮率(A3)を算出し、以下の基準に準じて評価した。
◎:熱収縮率(A3)が、15%以下の値である。
〇:熱収縮率(A3)が、20%以下の値である。
△:熱収縮率(A3)が、25%以下の値である。
×:熱収縮率(A3)が、25%を超える値である。
【0070】
(6)評価6:引張弾性率(C)
得られたポリエステル系シュリンクフィルムをTD方向に幅10mm、MD方向に長さ150mmとし、短冊状に切り出したものを試験片として準備した。
次いで、JIS K7127:1999に準拠して、温度23℃、相対湿度50%RHの雰囲気下で、引張速度200mm/minにて引張試験を行い、準備した試験片のMD方向における引張弾性率(C)を、弾性率測定のひずみ範囲を、0~1%として計測及び算出して、以下の基準に準じて評価した。
◎:引張弾性率(C)が、1450~1700MPaの範囲内の値である。
〇:引張弾性率(C)が、上記範囲外であって、かつ、1400~1800MPaの範囲内の値である。
△:引張弾性率(C)が、上記範囲外であって、かつ、1350~1900MPaの範囲内の値である。
×:引張弾性率(C)が、1350MPa未満又は1900MPaを超える値である。
【0071】
(7)評価7:破断防止性
市販の飲料水が充填された状態の円柱状PETボトルを準備した(商品名:エビアン、容積:500ml)。
次いで、ポリエステル系シュリンクフィルムを幅26cmにスリットして得た長尺状のシュリンクフィルムに、長手方向に沿って幅1mmのミシン目を設け、幅方向端部に1,3-ジオキソランを塗布し、重ね代が約1cmとなるように幅方向端部同士を重ね合わせて接着し、直径約8cmの筒状フィルムとした。更に、この筒状フィルムを長手方向に5cm毎に切りだし、複数の筒状ラベルを得た。
次いで、当該筒状ラベルを準備した円柱状PETボトルに被せ、85℃に保持された蒸気トンネルの中を、ベルトコンベアの上にのせるとともに、6m/minの通過速度で移動させ、筒状ラベルが円柱状PETボトルに密着するよう熱収縮させた。
次いで、ラベル状のポリエステル系シュリンクフィルムを、ラベル残り幅がミシン目残り1個となるようにミシン目を引き裂いて、破断防止性の評価用サンプルとした。
次いで、コンクリート製の床面に対して、1.5mの高さから、当該評価用サンプルを自然落下させ、ラベル状のポリエステル系シュリンクフィルムが、目視にて切断又は破損等されるまでの回数を測定し、以下の基準に沿って、破断防止性を評価した。
◎:3回以上の落下試験に耐える。
〇:2回以上の落下試験に耐える。
△:1回の落下試験に耐える。
×:1回の落下試験に耐えない。
【0072】
(8)評価8:CIE色度座標
得られたポリエステル系シュリンクフィルムにつき、JIS Z 8781-4:2013に準拠して測定されるCIE1976 L色空間の色度座標におけるbを、分光光度計(株式会社島津製作所製、製品名「UV-3600」)を用いて測定し、以下の基準に準じて、シュリンクフィルムの色味を評価した。
◎:CIE色度座標におけるbが、0.2~0.4の範囲内の値である。
〇:CIE色度座標におけるbが、上記範囲外であって、かつ、0.15~0.5の範囲内の値である。
△:CIE色度座標におけるbが、上記範囲外であって、かつ、0.1~0.6の範囲内の値であって、上記〇の範囲外である。
×:CIE色度座標におけるbが、0.1未満、又は0.6を超える値である。
【0073】
[実施例2]
実施例2において、表1に示すように、非結晶性ポリエステル樹脂(PETG1)を70重量部と、結晶性ポリエステル樹脂(A-PET)を30重量部と、所定添加剤(アンチブロッキング剤)を0.8重量部とを用いた。
それと共に、実施例1と同様に、原反シートから、予備加熱温度80℃、延伸温度80℃、熱固定温度78℃とし、延伸倍率(MD方向:100%、TD方向:500%)で、厚さ30μmのポリエステル系シュリンクフィルムを作成した。
そして、作成したポリエステル系シュリンクフィルムにつき、実施例1と同様に、破断防止性等につき、評価した。結果を表2に示す。
【0074】
[実施例3]
実施例3において、表1に示すように、非結晶性ポリエステル樹脂(PETG1)を50重量部と、結晶性ポリエステル樹脂(A-PET)を50重量部と、所定添加剤(アンチブロッキング剤)を0.8重量部とを用いた。
それとともに、実施例1と同様に、原反シートから、予備加熱温度80℃、延伸温度80℃、熱固定温度78℃とし、延伸倍率(MD方向:100%、TD方向:500%)で、厚さ30μmのポリエステル系シュリンクフィルムを作成した。
そして、作成したポリエステル系シュリンクフィルムにつき、実施例1と同様に、破断防止性等につき、評価した。結果を表2に示す。
【0075】
[実施例4]
実施例4において、表1に示すように、非結晶性ポリエステル樹脂(PETG1)を30重量部と、結晶性ポリエステル樹脂(A-PET)を70重量部と、所定添加剤(アンチブロッキング剤)を0.8重量部とを用いた。
それとともに、実施例1と同様に、原反シートから、予備加熱温度80℃、延伸温度80℃、熱固定温度78℃とし、延伸倍率(MD方向:100%、TD方向:500%)で、厚さ30μmのポリエステル系シュリンクフィルムを作成した。
そして、作成したポリエステル系シュリンクフィルムにつき、実施例1と同様に、破断防止性等につき、評価した。結果を表2に示す。
【0076】
[実施例5]
実施例5において、表1に示すように、非結晶性ポリエステル樹脂(PETG3)を65重量部と、結晶性ポリエステル樹脂(APET)を25重量部と、結晶性ポリエステル樹脂(PBT)を10重量部と、所定添加剤(アンチブロッキング剤)を1重量部とを用いた。
それとともに、実施例1と同様に、原反シートから、予備加熱温度87℃、延伸温度88℃、熱固定温度85℃とし、延伸倍率(MD方向:110%、TD方向:500%)で、厚さ30μmのポリエステル系シュリンクフィルムを作成した。
そして、作成したポリエステル系シュリンクフィルムにつき、実施例1と同様に、破断防止性等につき、評価した。結果を表2に示す。
【0077】
[比較例1]
比較例1において、表1に示すように、構成(a)の値が低く、構成(a)を満足しない、ポリエステル系シュリンクフィルムを作成し、実施例1と同様に、評価して結果を表2にまとめた。
すなわち、非結晶性ポリエステル樹脂(PETG1)を100重量部と、所定添加剤(アンチブロッキング剤)を0.8重量部とを用いた。
それとともに、実施例1と同様に、原反シートから、予備加熱温度90℃、延伸温度83℃、熱固定温度81℃とし、延伸倍率(MD方向:100%、TD方向:500%)で、厚さ30μmのポリエステル系シュリンクフィルムを作成した。
そして、作成したポリエステル系シュリンクフィルムにつき、実施例1と同様に、破断防止性等につき、評価した。結果を表2に示す。
【0078】
[比較例2]
比較例2において、表1に示すように、構成(a)の値が低く、構成(a)を満足しない、ポリエステル系シュリンクフィルムを作成し、実施例1と同様に、ポリエステル系シュリンクフィルムを作成し、評価して結果を表2にまとめた。
すなわち、非結晶性ポリエステル樹脂(PETG2)を100重量部と、所定添加剤(アンチブロッキング剤)を0.8重量部とを用いた。
それとともに、実施例1と同様に、原反シートから、予備加熱温度90℃、延伸温度83℃、熱固定温度81℃とし、延伸倍率(MD方向:100%、TD方向:500%)で、厚さ30μmのポリエステル系シュリンクフィルムを作成した。
そして、作成したポリエステル系シュリンクフィルムにつき、実施例1と同様に、破断防止性等につき、評価した。結果を表2に示す。
【0079】
【表1】
【0080】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明によれば、結晶性ポリエステル樹脂を、樹脂全体量に対して、10~70重量%の範囲で含むポリエステル系樹脂組成物に由来したポリエステル系シュリンクフィルムにおいて、少なくとも構成(a)及び(b)を満足することにより、良好な熱収縮率を有するとともに、シュリンクラベルとして収縮させボトルに装着させた後、運搬及び保管中にラベルが破損することがない優れた破断防止性が得られるようになった。
特に、熱収縮条件がばらついたような場合や、適用されるPETボトルの形状が多少変化したような場合であっても、幅広い温度領域(例えば、70~100℃、10秒)において、安定的に熱収縮し、優れた破断防止性を得ることができるようになった。
従って、本発明のポリエステル系シュリンクフィルムによれば、各種PETボトルや、弁当の外周被覆材等に好適に適用して、汎用性を著しく広げることができることから、その産業上の利用可能性は極めて高いと言える。
【要約】
熱収縮後のフィルムの破断現象を効果的に抑制するポリエステル系シュリンクフィルムを提供する。
結晶性ポリエステル樹脂を、樹脂全体量に対して、10~70重量%の範囲で含むポリエステル系樹脂組成物に由来したポリエステル系シュリンクフィルムであって、主収縮方向をTD方向とし、当該TD方向と直交する方向をMD方向とし、かつ、下記構成(a)及び(b)を満足することを特徴とするポリエステル系シュリンクフィルムである。
(a)MD方向の応力-歪み曲線における上降伏点応力をE1(MPa)とし、下降伏点応力をE2(MPa)としたときに、E1-E2が、下記関係式(1)を満足する。
23.5≦E1-E2≦50 (1)
(b)熱収縮率A1(TD方向、98℃、10秒)を30%以上とする。
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図10