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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-03
(45)【発行日】2023-08-14
(54)【発明の名称】部品実装用装置
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/04 20060101AFI20230804BHJP
【FI】
H05K13/04 P
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019210100
(22)【出願日】2019-11-21
(65)【公開番号】P2021082746
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】馬渡 道明
【審査官】福島 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-004209(JP,A)
【文献】特開平5-191095(JP,A)
【文献】特開2016-143724(JP,A)
【文献】国際公開第2015/059822(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ2つのレールを有する2つの搬送レーンで同一の搬送方向に基板を搬送する基板搬送手段と、
前記基板搬送手段の各搬送レーンの2つのレールのうち他の搬送レーン側のレールを可動レールとし、前記可動レールを前記搬送方向と直交する移動方向に移動させる可動レール移動手段と、
前記可動レールが移動する範囲の少なくとも一部の下方に位置し、前記基板搬送手段の各搬送レーンで搬送された基板を下面側から下受けする下受けピンが載置される下受けベース部と、
前記下受けベース部に載置される前記下受けピンを移動させる下受けピン移動手段と、
を備え、
前記各搬送レーンの可動レールの下部には、前記下受けベース部に載置された前記下受けピンが前記可動レールと干渉しない切欠きが設けられた、部品実装用装置。
【請求項2】
前記下受けピン移動手段が、前記2つの搬送レーンの間を移動させる下受けピンを前記切欠きが通過する位置に移動させてから、
前記可動レール移動手段が、前記可動レールを移動させる、請求項1に記載の部品実装用装置。
【請求項3】
前記下受けピン移動手段が、前記2つの搬送レーン間を移動させない下受けピンを移動する前記可動レールと干渉しない位置に移動させてから、
前記可動レール移動手段が、前記可動レールを移動させる、請求項1または2に記載の部品実装用装置。
【請求項4】
前記可動レールは、前記可動レールと接触する前記下受けピンを検出する接触検出手段をさらに備え、
前記切欠きに前記下受けピンを通過させる際には、前記接触検出手段は前記下受けピンとの接触を検出しない、請求項1から3のいずれかに記載の部品実装用装置。
【請求項5】
前記下受けベース部に載置された前記下受けピンの位置を検出する位置検出手段をさらに備え、
前記位置検出手段によって検出された前記下受けピンの位置が、前記切欠きが通過する位置または移動する前記可動レールと干渉しない位置にある場合に、
前記可動レール移動手段が、前記可動レールを移動させる、請求項1から4のいずれかに記載の部品実装用装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの搬送レーンに基板を搬送させて作業する部品実装用装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基板に半田ペーストを印刷する印刷装置や基板に部品を実装する部品装着装置などの部品実装用作業を実行する部品実装用装置として、2つの搬送レーンを備えるデュアルレーンタイプのものが知られている(例えば、特許文献1参照)。各搬送レーンは、搬送レーンが備える2つのレールのうち、移動可能な可動レールの位置を変更することにより、搬送する基板のサイズを変更する。2つの搬送レーンは、それぞれで基板を搬送するデュアルレーンモードの他、2つの搬送レーンの可動レールを一方に寄せるシングルレーンモードで、大きなサイズの基板を搬送する。
【0003】
特許文献1に記載の部品実装装置は、基板を下面側から下受けする下受けピン(バックアップピン)を載置する下受けベース部(バックアップベース)と、段取り替えの際に下受けピンを自動的に搬送レーン内で移動させる下受けピン移動手段を備えている。下受けピン移動手段は、基板に部品を実装する部品実装手段と共用しているため下受けピンを持ち上げる高さに限界があり、可動レールの上を越して他の搬送レーンに下受けピンを移動させることはできない。そこで、デュアルレーンモードからシングルレーンモードに段取り替えする際は、可動レールを寄せる側の搬送レーンの下受けピンを固定レール付近の退避位置まで移動させた後に、可動レールを移動させている。これにより、下受けピンが移動する可動レールと干渉することなく、搬送レーンの幅を自動的に変更している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-4209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら特許文献1では、シングルレーンモードにおいて退避位置に移動させた下受けピンにより可動レールの移動範囲が規制されるため、下受けピンを作業者が手作業で取り除いた状態よりも搬送可能な基板のサイズの上限が小さくなるという問題点があった。また、搬送できる基板のサイズが大きくなっても基板を搬送する側の搬送レーンの下受けピンの数は変わらないため、大サイズの基板では下受けされる位置の密度が粗くなるという問題点があり、搬送する基板のサイズを自動で変更しても安定した部品実装用作業を維持するためにはさらなる改善の余地があった。
【0006】
そこで本発明は、下受けピンを自動的に2つの搬送レーン間で移動することができる部品実装用装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の部品実装用装置は、それぞれ2つのレールを有する2つの搬送レーンで同一の搬送方向に基板を搬送する基板搬送手段と、前記基板搬送手段の各搬送レーンの2つのレールのうち他の搬送レーン側のレールを可動レールとし、前記可動レールを前記搬送方向と直交する移動方向に移動させる可動レール移動手段と、前記可動レールが移動する範囲の少なくとも一部の下方に位置し、前記基板搬送手段の各搬送レーンで搬送された基板を下面側から下受けする下受けピンが載置される下受けベース部と、前記下受けベース部に載置される前記下受けピンを移動させる下受けピン移動手段と、を備え、前記各搬送レーンの可動レールの下部には、前記下受けベース部に載置された前記下受けピンが前記可動レールと干渉しない切欠きが設けられた。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、下受けピンを自動的に2つの搬送レーン間で移動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施の形態の部品装着装置の平面図
図2】(a)(b)本発明の一実施の形態の部品装着装置が備える基板搬送手段と基板保持手段の構成説明図
図3】本発明の一実施の形態の部品装着装置が備える基板搬送手段と基板保持手段がシングルレーンモードで大型の基板を保持した状態を説明する(a)平面図(b)側面図
図4】本発明の一実施の形態の部品装着装置が備える下受けベース部に載置された下受けピンの移動作業および位置検出作業の説明図
図5】本発明の一実施の形態の部品装着装置が備える搬送レーンの可動レールの(a)正面図(b)平面図
図6】本発明の一実施の形態の部品装着装置の制御系の構成を示すブロック図
図7】(a)(b)本発明の一実施の部品装着装置が備える基板搬送手段が搬送する基板種の変更工程を説明する図
図8】(a)(b)本発明の一実施の部品装着装置が備える基板搬送手段が搬送する基板種の変更工程を説明する図
図9】(a)(b)本発明の一実施の部品装着装置が備える基板搬送手段が搬送する基板種の変更工程を説明する図
図10】(a)(b)本発明の一実施の部品装着装置が備える基板搬送手段が搬送する基板種の変更工程を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に図面を用いて、本発明の一実施の形態を詳細に説明する。以下で述べる構成、形状等は説明のための例示であって、部品装着装置、基板搬送手段、基板保持手段、下受けピン移動手段の仕様に応じ、適宜変更が可能である。以下では、全ての図面において対応する要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。図1、及び後述する一部では、水平面内で互いに直交する2軸方向として、基板搬送方向のX方向(図1における左右方向)、基板搬送方向に直交するY方向(図1における上下方向)が示される。図2、及び後述する一部では、水平面と直交する高さ方向としてZ方向(図2における上下方向)が示される。Z方向は、部品装着装置が水平面上に設置された場合の上下方向である。
【0011】
まず図1を参照して、部品装着装置1の構成を説明する。図1において、本体ベース1aの中央部には、X方向に延びる第1の搬送レーン2Fおよび第2の搬送レーン2RがY方向に並列して設置されている。第1の搬送レーン2Fおよび第2の搬送レーン2Rは、それぞれ上流側から搬入された基板3をX方向へ搬送し、以下に説明する装着ヘッドによる装着作業位置に位置決めして保持する。また、第1の搬送レーン2Fおよび第2の搬送レーン2Rは、部品実装作業が完了した基板3をそれぞれ下流側に搬出する。
【0012】
以下便宜上、区別する必要がある場合を除き、第1の搬送レーン2Fおよび第2の搬送レーン2Rを単に「搬送レーン2F,2R」と称する。また、図1の下側を部品装着装置1の前側と称し、図1の上側を部品装着装置1の後側と称する。すなわち、第1の搬送レーン2Fは部品装着装置1の前側に設置され、第2の搬送レーン2Rは部品装着装置1の後側に設置されている。
【0013】
ここで図1~3を参照して、搬送レーン2F,2Rの詳細について説明する。図2図3は、搬送レーン2F,2Rの装着作業位置付近を概念的に示している。図2において、搬送レーン2F,2Rは、本体ベース1aに固定された固定レール2aとY方向に移動可能な可動レール2bを備えている。固定レール2aは並設された2つの搬送レーン2F,2Rの外側に配置され、可動レール2bは並設された2つの搬送レーン2F,2Rが対向する側に配置されている。すなわち、部品装着装置1では、第1の搬送レーン2Fの固定レール2aは前側に、可動レール2bは後側に配置され、第2の搬送レーン2Rの固定レール2aは後側に、可動レール2bは前側に配置されている。
【0014】
図2において、搬送レーン2F,2Rにおいて、固定レール2aの可動レール2b側と、可動レール2bの固定レール2a側(2つのレールの内側)には、それぞれコンベア機構2cが基板3の搬送方向(X方向)に沿って設けられている。基板3の両側端部をコンベア機構2cの上面に当接させた状態でコンベア機構2cを駆動することにより、基板3は基板搬送方向に搬送される。装着作業位置における固定レール2aと可動レール2bの上端には、金属等の剛体で形成されてコンベア機構2cの上方に一部が張り出した平板状の押え板2dがそれぞれ配置されている。
【0015】
図1において、搬送レーン2F,2Rは、搬送される基板3の幅方向(Y方向)に可動レール2bを移動させる可動レール移動手段4F,4Rを備えている。可動レール移動手段4F,4Rは、送りねじ4aと、可動レール2bに配置されて送りねじ4aに螺合するナット4bと、送りねじ4aを回転駆動するレール移動モータ4cを備えて構成される。レール移動モータ4cを制御して、送りねじ4aを回転させることで可動レール2bはY方向に移動する(図3の矢印c、矢印d)。これにより、搬送レーン2F,2Rが搬送する基板3の幅に合わせて固定レール2aと可動レール2bの間隔を変更することができる。
【0016】
このように、第1の搬送レーン2Fと第2の搬送レーン2R(搬送レーン2F,2R)は、それぞれ2つのレール(固定レール2aと可動レール2b)を有する2つの搬送レーン2F,2Rで同一の搬送方向(X方向)に基板3を搬送する基板搬送手段を構成する。また、基板搬送手段の各搬送レーンの2つのレールのうち他の搬送レーン側のレールは可動レール2bであり、可動レール移動手段4F,4Rは、可動レール2bを搬送方向と直交する移動方向(Y方向)に移動させる。
【0017】
図2(a)において、搬送レーン2F,2Rにおいて装着作業位置に搬入される基板3の下方には、基板保持手段20F,20Rが設置されている。基板保持手段20F,20Rは、複数の下受けピン21が載置される下受けベース部22と、本体ベース1aに設置されて下受けベース部22を昇降(矢印a1、矢印a2)させる昇降機構23を含んで構成される。下受けベース部22は、アルミニウムなどの非磁性体より成る板部材の上面に鋼板などの磁性体を被覆した構成となっている。下受けピン21は、マグネット部材(図示省略)を内蔵する基部21aと、基部21aの上部に設置されて基板3の下面に当接するピン部材21bを含んで構成される。
【0018】
下受けピン21は、保持対象となる基板3のサイズ、基板3の裏面に装着された部品の位置などに応じて、下受けベース部22上に着脱自在に配置される。配置された下受けピン21は、基部21aに内蔵されたマグネット部材と下受けベース部22の磁性体との間に作用する引磁力によって下受けベース部22に固定される。なお、下受けピン21の固定形態は、マグネット部材による引磁力を用いた方法には限定されることはない。例えば、基部21aの自重によって下受けピン21を位置保持する方法や、下受けベース部22に下受けピン21の位置保持用の装着孔を設け、下受けピン21の下部を装着孔に挿入して固定するようにしてもよい。
【0019】
図2(b)において、保持対象の基板3に対応するピン配置位置に下受けピン21が配置された下受けベース部22を昇降機構23によって上昇させると(矢印b1、矢印b2)、装着作業位置に搬入された基板3の下面に下受けピン21のピン部材21bが当接する。さらに下受けベース部22を上昇させると、基板3は下受けピン21によって下受け保持され、基板3の両端部が押え板2dの下面に押し付けられて位置固定される。図2(b)は、2つの搬送レーン2F,2Rにより2枚の基板3を独立に搬送し、独立に制御される2つの基板保持手段20F,20Rにより装着作業位置に保持するデュアルレーンモードの例である。すなわち、2つの下受けベース部22に配置された下受けピン21は、それぞれ独立に基板3を下受けする。
【0020】
図3は、一方の搬送レーン2F,2Rにより1枚の大型の基板3Aを搬送し、2つの基板保持手段20F,20Rが連動して装着作業位置に搬送された基板3Aを保持するシングルレーンモードの例である。シングルレーンモードでは、搬送レーン2F,2Rが有する2つの可動レール2bを一方の固定レール2a側に移動させて、基板3Aを搬送する。図3の例では、第2の搬送レーン2Rの可動レール2bを第2の搬送レーン2Rの固定レール2a付近まで移動させ(矢印c)、さらに第1の搬送レーン2Fの可動レール2bを第2の搬送レーン2Rの可動レール2b付近まで移動させている(矢印d)。このように、第1の搬送レーン2Fの固定レール2aと可動レール2bの間隔を広げて、第1の搬送レーン2Fによって大型の基板3Aを搬送している。
【0021】
第1の搬送レーン2Fによって搬送される基板3Aは、一部が第2の搬送レーン2R側の下受けベース部22(以下、「第2の下受けベース部22R」と称する。)の上方まで張り出している。第1の搬送レーン2F側の下受けベース部22(以下、「第1の下受けベース部22F」と称する。)と第2の下受けベース部22Rの上面には、大型の基板3Aに対応するピン配置位置に複数の下受けピン21が配置されている。図3(b)において、基板3Aが装着作業位置に搬入された状態で、基板保持手段20F,20Rが有する2つの昇降機構23によって2つの下受けベース部22を連動させて上昇させると(矢印e)、基板3Aは下受けピン21によって下受けされて位置固定される。
【0022】
このように、下受けベース部22は、可動レール2bが移動する範囲の少なくとも一部の下方に位置し、基板搬送手段の各搬送レーン2F,2Rで搬送された基板3を下面側から下受けする下受けピン21が載置される。なお、上述の実施例では搬送レーン2F,2R毎に基板保持手段20F,20Rが設けられているが、基板保持手段20F,20Rは2つの搬送レーン2F,2Rに対して共有する1つを設ける構成であってもよい。この場合、デュアルレーンモードでは、2つの搬送レーン2F,2Rがそれぞれの装着作業位置に搬入した基板3を、1つの下受けベース部22に載置された下受けピン21が同時に下受けする。
【0023】
図1において、搬送レーン2F,2Rの両側方には、それぞれ部品供給部5F,5Rが設置されている。両方の部品供給部5F,5Rには、複数のテープフィーダ6がX方向に並列に装着されている。テープフィーダ6は、部品を格納するポケットが形成されたキャリアテープを部品供給部5F,5Rの外側から搬送レーン2F,2Rに向かう方向(テープ送り方向)にピッチ送りすることにより、装着ヘッドが部品をピックアップする部品供給位置に部品を供給する。
【0024】
図1において、本体ベース1aの上面におけるX方向の両端部には、リニア駆動機構を備えたY軸テーブル7が配置されている。Y軸テーブル7には、同様にリニア機構を備えた2基のビーム8F,8RがY方向に移動自在に結合されている。ビーム8F,8Rには、それぞれ装着ヘッド9F,9RがX方向に移動自在に装着されている。装着ヘッド9F,9Rの下端部に設けられて昇降するノズルホルダには、部品保持部(図示省略)が着脱自在に装着されている。ノズルホルダに装着された部品保持部は、部品供給位置に供給される部品を真空吸着して保持する。
【0025】
Y軸テーブル7およびビーム8F,8Rは、装着ヘッド9F,9Rを水平方向(X方向、Y方向)に移動させるヘッド移動機構10F,10Rを構成する。ヘッド移動機構10F,10Rおよび装着ヘッド9F,9Rは、部品供給部5F,5Rに装着されているテープフィーダ6の部品供給位置から部品を部品保持部によって真空吸着してピックアップし、搬送レーン2F,2Rに保持された基板3の装着位置に移載する部品装着作業の一連のターンを繰り返し実行する。
【0026】
図1において、ビーム8F,8Rには、ビーム8F,8Rの下面側に位置して装着ヘッド9F,9Rとともに一体的に移動する基板認識カメラ11F,11Rがそれぞれ装着されている。装着ヘッド9F,9Rが移動することにより、基板認識カメラ11F,11Rは搬送レーン2F,2Rの装着作業位置に位置決めされた基板3の上方に移動して、基板3に設けられた基板マーク(図示省略)を撮像して基板3の位置を認識する。また、基板認識カメラ11F,11Rは、装着作業位置に基板3がない状態で下受けベース部22を撮像し、下受けベース部22に載置された下受けピン21の位置を検出する。
【0027】
部品供給部5F,5Rと搬送レーン2F,2Rとの間には、それぞれ部品認識カメラ12F,12Rが設置されている。部品認識カメラ12F,12Rは、部品供給部5F,5Rから部品を取り出した装着ヘッド9F,9Rが部品認識カメラ12F,12Rの上方に位置した際に、部品保持部に保持された部品を下方から撮像する。装着ヘッド9F,9Rによる部品の基板3への部品装着作業では、基板認識カメラ11F,11Rによる基板3の認識結果と部品認識カメラ12F,12Rによる部品の認識結果とを加味して装着位置の補正が行われる。
【0028】
図1において、部品装着装置1の前面で作業者が作業する位置には、作業者が操作するタッチパネル13が設置されている。タッチパネル13は、その表示部に各種情報を表示し、また表示部に表示される操作ボタンなどを使って作業者がデータ入力や部品装着装置1の操作を行う。部品供給部5F,5Rと搬送レーン2F,2Rとの間には、部品認識カメラ12F,12Rの他、第1のノズル収納部14F,14R、第2のノズル収納部15F,15Rが配置されている。
【0029】
第1のノズル収納部14F,14Rには,装着ヘッド9F,9Rの下端部に設けられたノズルホルダに装着される部品保持部が部品種に対応して複数収納保持されている。第2のノズル収納部15F,15Rには、同様に装着ヘッド9F,9Rの下端部に設けられたノズルホルダに装着されて、下受けピン21の移載に用いられるピン保持ノズル9a(図4を参照)が収納保持されている。装着ヘッド9F,9Rが第1のノズル収納部14F,14R,第2のノズル収納部15F,15Rにアクセスしてノズル交換動作を行うことにより、ノズルホルダに装着されるノズルを目的および対象とする部品種に応じて交換することができる。
【0030】
次に図4を参照して、下受けピン21の移動作業について説明する。この移動作業は、搬送レーン2F,2Rの装着作業位置に基板3を搬送していない状態で、ノズルホルダにピン保持ノズル9aを装着した装着ヘッド9F,9Rによる移載機能を利用して実行される。具体的には、ヘッド移動機構10F,10Rが装着ヘッド9F,9Rを水平方向に移動させ、ピン保持ノズル9aによって下受けピン21の上部を保持して持ち上げて、下受けベース部22上の所定のピン配置位置に移動させる(矢印f)。このように、ヘッド移動機構10F,10Rとノズルホルダにピン保持ノズル9aが装着された装着ヘッド9F,9Rは、下受けベース部22に載置される下受けピン21を移動させる下受けピン移動手段である。
【0031】
また、移動作業の前には、ヘッド移動機構10F,10Rが基板認識カメラ11F,11Rを水平方向に移動させて、下受けベース部22に載置されている下受けピン21の位置を検出する(矢印g)。すなわち、ヘッド移動機構10F,10Rと基板認識カメラ11F,11Rは、下受けベース部22に載置された下受けピン21の位置を検出する位置検出手段である。このように、位置検出手段が下受けピン21の位置を検出した後、下受けピン移動手段が下受けピン21の移動作業を繰り返し実行することで、下受けピン21を保持する基板3に対応するピン配置位置に配列させる。
【0032】
次に図5を参照して、搬送レーン2F,2Rの可動レール2bに設置された接触検出手段24について説明する。図5は、第1の搬送レーン2Fの可動レール2bの概略を示している。接触検出手段24は、可動レール2bの固定レール2a側(前側)に設置されており、レーザ光を投光する投光部と、投光部が投光したレーザ光を受光する受光部を含んで構成される。
【0033】
接触検出手段24は、投光部から投光されたレーザ光が下受けベース部22上に配置された下受けピン21によって遮光されることで下受けピン21を検出する。接触検出手段24は、下受けベース部22上に配置された下受けピン21が、固定レール2a側に移動している可動レール2bと接触する前に検出される位置に配置されている。このように、可動レール2bは、可動レール2bと接触する下受けピン21を検出する接触検出手段24を備えている。なお、接触検出手段24は、投光部と受光部を備えるレーザセンサに限定されることはなく、移動中の可動レール2bと接触する下受けピン21を検出するものであればよい。
【0034】
図5(b)において、可動レール2bの下部の一部には、下降した状態の下受けベース部22(例えば、図2(a)参照)に載置された下受けピン21に接触することなく可動レール2bが通過可能な切欠き2eが形成されている。図5の例では、切欠き2eは可動レール2bの下部に2箇所形成されている。
【0035】
可動レール2bをY方向に移動(矢印h)させる際は、可動レール2bの切欠き2eが通過する位置(以下、「切欠き通過位置P」と称する。)に下受けピン21を直線状に並べて配置することで、下受けベース部22に載置された下受けピン21と干渉することなく可動レール2bを移動させることができる(図8(a)参照)。このように、各搬送レーン2F,2Rの可動レール2bの下部には、下受けベース部22に載置された下受けピン21が可動レール2bと干渉しない切欠き通過位置Pに切欠き2eが設けられている。
【0036】
次に図6を参照して、部品装着装置1の制御系の構成について説明する。部品装着装置1は、制御部30、搬送レーン2F,2R、可動レール移動手段4F,4R、昇降機構23、接触検出手段24、テープフィーダ6、装着ヘッド9F,9R、ヘッド移動機構10F,10R、基板認識カメラ11F,11R、部品認識カメラ12F,12R、タッチパネル13を備えている。制御部30は、装着動作処理部31、基板種変更処理部32、装着記憶部33を備えている。装着記憶部33は記憶装置であり、装着データ34、ピン配置位置データ35などが記憶されている。
【0037】
装着データ34には、基板3の種類(基板種)毎に、基板3のサイズ、基板3を搬送する基板搬送モード(シングルレーンモード、デュアルレーンモード)、搬送レーン2F,2R(第1の搬送レーン2F、第2の搬送レーン2R)、装着される部品の種類と装着位置(XY座標)など、部品装着作業に必要な情報が記憶されている。ピン配置位置データ35には、基板3の種類(基板種)毎に、下受けベース部22上に配置する下受けピン21のピン配置位置(下受けベース部22におけるXY座標など)が記憶されている。
【0038】
図8において、装着動作処理部31は、装着データ34に基づいて部品装着装置1の各部を制御して、テープフィーダ6が供給する部品を装着ヘッド9F,9Rで保持して、装着作業位置に保持された基板3に装着する部品装着作業を制御する。基板種変更処理部32は、装着データ34に含まれる基板3のサイズ、基板搬送モード、基板3を搬送する搬送レーン2F,2R、およびピン配置位置データ35に基づいて、可動レール移動手段4F,4R、昇降機構23、接触検出手段24、ヘッド移動機構10F,10R、基板認識カメラ11F,11Rを制御して、基板搬送手段が搬送する基板種を変更する基板種変更処理を実行させる。
【0039】
具体的には、搬送レーン2F,2Rによって搬送する基板種を変更する場合、まず基板種変更処理部32は、装着ヘッド9F,9Rのノズルホルダに装着されている部品保持部をピン保持ノズル9aに交換させる。次いで基板種変更処理部32は、基板認識カメラ11F,11Rとヘッド移動機構10F,10R(位置検出手段)を制御して、下受けベース部22上の下受けピン21の位置を検出させる(ピン位置検出工程)。基板種変更処理部32は、検出された下受けピン21の位置がピン配置位置データ35に記憶されている変更前の基板種のピン配置位置と異なる場合は、タッチパネル13にピン配置位置が異なる旨の情報を報知させる。
【0040】
次いで基板種変更処理部32は、変更後の基板種のピン配置位置データ35に基づいて、装着ヘッド9F,9Rとヘッド移動機構10F,10R(下受けピン移動手段)を制御して、下受けベース部22上の下受けピン21の位置を所定のピン配置位置に移動させる(ピン移動工程)。次いで基板種変更処理部32は、可動レール移動手段4F,4Rを制御して、可動レール2bを次に搬送する基板種の幅に合わせて移動させる(レール移動工程)。可動レール2bを移動させる間、基板種変更処理部32は、接触検出手段24を作動させて可動レール2bと下受けピン21の接触を検出する(接触検出工程)。
【0041】
基板種変更処理部32は、接触を検出すると可動レール2bの移動を停止させ、タッチパネル13に接触を検出した旨の情報を報知させる。なお、下受けピン21の移動と可動レール2bの移動の順番は、変更前後の基板種のサイズ等により変更される。すなわち、変更後の基板種の方が大きい場合は、可動レール2bを移動させて基板3の搬送幅を広げた後に、下受けピン21を移動させる(レール移動工程にピン移動工程を実行する)。
【0042】
次に図7図9を参照して、デュアルレーンモードからシングルレーンモードへの変更を伴う基板種変更処理について説明する。この場合、2つの搬送レーン2F,2R間で下受けピン21を移動させる作業が追加される。図7(a)において、基板種変更処理の前は、デュアルレーンモードによって第1の搬送レーン2Fでは基板3Bが搬送され、第2の搬送レーン2Rでは基板3Cが搬送されていたとする。また、第1の下受けベース部22Fには基板3Bに対応するピン配置位置に下受けピン21が載置され、第2の下受けベース部22Rには基板3Cに対応するピン配置位置に下受けピン21が載置されているとする。
【0043】
図7(a)において、まず、基板種変更処理部32は、ピン位置検出工程を実行させて、第1の下受けベース部22Fと第2の下受けベース部22Rに載置された下受けピン21の位置を検出する。なお、下受けピン21が所定の位置にあることが別の手段によって確認されている場合は、ピン移動工程前のピン位置検出工程を省略してもよい。
【0044】
図7(b)において、次いで基板種変更処理部32は、ピン移動工程を実行させる。すなわち、第1の下受けベース部22Fでは次の基板種に対応するピン配置位置に下受けピン21が移動される。また、第2の下受けベース部22Rでは、次の基板種で使用する下受けピン21が切欠き通過位置Pに直線状に並ぶように移動される。また、第2の下受けベース部22Rでは、次の基板種で使用されない下受けピン21Aが移動する可動レール2bと干渉しない退避位置に移動される。この例では、下受けピン21Aは、第2の下受けベース部22Rの後側の端に移動している。
【0045】
図7(b)において、次いで基板種変更処理部32は、ピン位置検出工程を実行し、可動レール2bを移動させる前の下受けピン21、下受けピン21Aが所定の位置にあることを確認する。すなわち、位置検出手段(基板認識カメラ11F,11R、ヘッド移動機構10F,10R)によって検出された下受けピン21、下受けピン21Aの位置が、切欠き2eが通過する位置(切欠き通過位置P)または移動する可動レール2bと干渉しない位置にある場合に、可動レール移動手段4F,4Rが可動レール2bを移動させる。
【0046】
図8(a)において、次いで基板種変更処理部32は、接触検出手段24による接触検出機能を停止させる。次いで基板種変更処理部32は、レール移動工程を実行ささせる。すなわち、第2の搬送レーン2Rと第1の搬送レーン2Fの可動レール2bがそれぞれ後側に移動し(矢印i1、矢印j1)、切欠き2eが切欠き通過位置Pに直線状に配列された下受けピン21を通過する。
【0047】
図8(b)において、基板種変更処理部32は、第2の搬送レーン2Rの可動レール2bを第1の搬送レーン2Fの可動レール2bと干渉しない位置まで移動させる(矢印i2)。また、基板種変更処理部32は、第1の搬送レーン2Fの可動レール2bを第1の搬送レーン2Fが次の基板種を搬送する位置まで移動させる(矢印j2)。レール移動工程が終了すると、次いで基板種変更処理部32は、接触検出手段24による検出機能を再開させる。すなわち、切欠き2eに下受けピン21を通過させる際には、接触検出手段24は下受けピン21との接触を検出しない。
【0048】
図9(a)において、次いで基板種変更処理部32は、ピン移動工程を実行させる。すなわち、第1の下受けベース部22Fと第2の下受けベース部22R上の下受けピン21の位置を、次の基板種に対応するピン配置位置に移動させる。このピン移動工程には、第2の下受けベース部22R上の下受けピン21を第2の下受けベース部22R上のピン配置位置に移動(矢印k1)させる処理の他、第2の下受けベース部22R上の下受けピン21を第1の下受けベース部22F上のピン配置位置に移動(矢印k2)させる処理が含まれる。図9(b)において、ピン移動工程が終了すると、基板搬送手段(搬送レーン2F,2R)は次の基板種(基板3D)を搬送可能な状態となる。
【0049】
このように、基板種変更処理では、下受けピン移動手段(装着ヘッド9F,9R、ヘッド移動機構10F,10R)が、2つの搬送レーン2F,2Rの間を移動させる下受けピン21を切欠き2eが通過する位置(切欠き通過位置P)に移動させてから、可動レール移動手段4F,4Rが、可動レール2bを移動させる。また、下受けピン移動手段が、2つの搬送レーン2F,2R間を移動させない下受けピン21Aを移動する可動レール2bと干渉しない位置に移動させてから、可動レール移動手段4F,4Rが、可動レール2bを移動させる。
【0050】
次に図10を参照して、シングルレーンモードからデュアルレーンモードへの変更を伴う基板種変更処理について説明する。図10(a)において、ピン位置検出工程、ピン移動工程が実行されて、第1の下受けベース部22F上の下受けピン21は移動する可動レール2bに干渉しない位置に移動され、第2の下受けベース部22R上の下受けピン21は切欠き通過位置Pに直線状に並ぶように移動される。
【0051】
図10(b)において、次いでレール移動工程が実行されて、第1の搬送レーン2Fと第2の搬送レーン2Rの可動レール2bが、切欠き2eが切欠き通過位置Pに直線状に配列された下受けピン21を通過した後に所定の位置までそれぞれ移動する(矢印m、矢印n)。次いでピン移動工程が実行されて、第1の下受けベース部22Fと第2の下受けベース部22R上において、下受けピン21が次の基板種に対応するピン配置位置にそれぞれ配置される。
【0052】
上記説明したように、本実施形態の部品装着装置1(部品実装用装置)は、それぞれ2つのレール(固定レール2a、可動レール2b)を有する2つの搬送レーン2F,2Rで基板3を搬送する基板搬送手段と、各搬送レーン2F,2Rの2つのレールのうち他の搬送レーン側のレールを可動レール2bとし、可動レール2bを搬送方向と直交する移動方向に移動させる可動レール移動手段4F,4Rと、可動レール2bが移動する範囲に位置し、各搬送レーン2F,2Rで搬送された基板3を下受けする下受けピン21が載置される下受けベース部22と、下受けベース部22に載置される下受けピン21を移動させる下受けピン移動手段(ヘッド移動機構10F,10R、装着ヘッド9F,9R)と、を備えている。
【0053】
そして、各搬送レーン2F,2Rの可動レール2bの下部には、下受けベース部22に載置された下受けピン21が可動レール2bと干渉しない切欠き2eが設けられている。これによって、下受けピン移動手段によって保持された下受けピン21が可動レール2bの上を越えることができない場合であっても、下受けピン21を自動的に2つの搬送レーン2F,2R間で移動することができる。
【0054】
なお、上記は部品装着装置1を例に説明したが、切欠き2eを有する可動レール2bを有する2つの搬送レーン2F,2Rと、可動レール移動手段4F,4Rと、下受けベース部22と、下受けピン移動手段は、部品装着装置1以外の部品実装用装置が備えていてもよい。例えば、基板3にクリームはんだを印刷する印刷装置がこれらを備える構成であってもよい。これによって、印刷装置においても下受けピン21を自動的に2つの搬送レーン2F,2R間で移動させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の部品実装用装置は、下受けピンを自動的に2つの搬送レーン間で移動することができるという効果を有し、部品を基板に実装する分野において有用である。
【符号の説明】
【0056】
1 部品装着装置(部品実装用装置)
2a 固定レール
2b 可動レール
2e 切欠き
2F 第1の搬送レーン(搬送レーン)
2R 第2の搬送レーン(搬送レーン)
3、3A~3D 基板
4F,4R 可動レール移動手段
9F,9R 装着ヘッド(下受けピン移動手段)
11F,11R 基板認識カメラ(位置検出手段)
21,21A 下受けピン
22 下受けベース部
22F 第1の下受けベース部(下受けベース部)
22R 第2の下受けベース部(下受けベース部)
24 接触検出手段
P 切欠き通過位置(切欠きが通過する位置)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10