(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-03
(45)【発行日】2023-08-14
(54)【発明の名称】バリスタおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01C 7/112 20060101AFI20230804BHJP
H01C 17/00 20060101ALI20230804BHJP
C04B 35/453 20060101ALI20230804BHJP
【FI】
H01C7/112
H01C17/00 100
C04B35/453
(21)【出願番号】P 2020510401
(86)(22)【出願日】2019-02-18
(86)【国際出願番号】 JP2019005741
(87)【国際公開番号】W WO2019187763
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2021-09-22
(31)【優先権主張番号】P 2018057384
(32)【優先日】2018-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】東 佳子
(72)【発明者】
【氏名】古賀 英一
【審査官】清水 稔
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-121067(JP,A)
【文献】特開2002-015903(JP,A)
【文献】特開2017-017066(JP,A)
【文献】特開平11-001322(JP,A)
【文献】Garino, Terry J.,The effects of composition,temperature and sample size on the sintering of chem-prep high field varistors,SANDIA REPORT SAND2007-5890,米国,2007年10月,1-71,https://www.osti.gov/servlets/purl/933217
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01C 7/112
H01C 17/00
C04B 35/453
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビスマス元素、プラセオジム元素およびストロンチウム元素から選ばれる少なくとも1種を含む酸化物と、酸化亜鉛とを含む、電圧非直線性抵抗体組成物の焼結体を得る第1ステップと、
前記焼結体のL*a*b*表色系における色差b*を測定する第2ステップと、
前記色差b*が0<b*≦0.95の範囲にある
焼結体を選別する第3ステップと、
を含む、バリスタの製造方法。
【請求項2】
前記第3ステップの後、前記
選別した焼結体に電極を形成する第4ステップをさらに含む、請求項1に記載のバリスタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サージや静電気から半導体素子等を保護するバリスタとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の回路内における、例えば半導体ICにサージや静電気等の異常電圧が印加されると、電子機器に誤作動または破壊されてしまうことがある。このような異常電圧から電子機器を保護する電子部品としてバリスタがあげられる。酸化亜鉛焼結体よりなる従来のバリスタは例えば特許文献1、2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002―15903号公報
【文献】特許第4070780号公報
【発明の概要】
【0004】
バリスタの酸化亜鉛の色差を測定し、得られた色差から酸化亜鉛バリスタの耐性を評価する。これにより、良好な耐性を有するバリスタが安定的に得られる。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】
図1は実施の形態におけるバリスタの断面図である。
【
図3】
図3は実施の形態におけるバリスタの製造方法を示すフロー図である。
【
図4】
図4は実施の形態におけるバリスタの製造装置の断面図である。
【
図5】
図5は実施の形態におけるバリスタの酸化亜鉛粒子の色差と電圧比との関係を示す図である。
【
図6】
図6は実施の形態におけるバリスタの色差と、分級した酸化亜鉛粒子の色差との関係を示す図である。
【
図7】
図7は実施の形態における他のバリスタの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下で説明する実施の形態は、いずれも一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置および接続形態などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。なお、以下では、全ての図を通じて同一または相当する要素には同じ符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0007】
図1は、実施の形態に係るバリスタ100の断面図である。
【0008】
バリスタ100は、バリスタ層10aと、バリスタ層10aに当接している内部電極11と、バリスタ層10aに当接しバリスタ層10aを介して内部電極11と対向している内部電極12を有する積層バリスタである。さらに、バリスタ層10aと同じ材料からなる2つの無効層10bが内部電極11および内部電極12のそれぞれに当接して配置されている。バリスタ層10aと2つの無効層10bとは一体に構成されて素体10を形成する。内部電極11は、素体10に埋設されており、素体10の端面SAに露出して端面SAで外部電極13と電気的に接続されている一端を有する。内部電極12は、素体10に埋設されており、素体10の端面SAとは反対側の端面SBに露出して端面SBで外部電極14と電気的に接続されている一端を有する。
【0009】
なお、本開示のバリスタは、一実施の形態として積層バリスタを例に説明するが、これに限定されるものではなく、異常電圧から電子機器を保護するため用いられる各種バリスタに適用することができる。
【0010】
図2は、
図1に示すバリスタ100の拡大断面図であり、素体10の一部を拡大して示す。素体10は、主成分として複数の酸化亜鉛粒子10cと、酸化物層10dとからなる。酸化物層10dは、ビスマス元素、コバルト元素、マンガン元素、アンチモン元素、ニッケル元素およびゲルマニウム元素を含む。複数の酸化亜鉛粒子10cは、六方晶系からなる結晶構造を有する。酸化物層10dは、複数の酸化亜鉛粒子10c間に介在している。
【0011】
素体10は、複数の酸化亜鉛粒子10cと、複数の酸化亜鉛粒子10c間に介在する酸化物層10dとからなる電圧非直線抵抗体組成物である。この電圧非直線抵抗体組成物の色差すなわちL*a*b*表色系における色差b*が0<b*≦0.95を満たすことにより、バリスタ100は従来のバリスタよりも良好な大きな電圧非直線性を実現することができる。b*>0.95の場合は非直線性が悪化する。また、電圧非直線抵抗体組成物の色差b*が0以下の場合は、酸化亜鉛粒子の粒子径が大きいため、電圧非直線抵抗体組成物の粒界の数が減少し、非直線性が劣化する。電圧非直線抵抗体組成物の色差b*が上記の範囲を満たすためには、電圧非直線抵抗体組成物に含まれる酸化亜鉛粒子の色差b*が-5<b*≦11.3の範囲を満たすことがのぞましい。
【0012】
L*a*b*表色系は物体の色を表現するのに最も用いられる表現である。1976年に国際照明委員会で規定され、JIS Z 8781-4に制定された。L*a*b*表色系は、明るさの度合いを表す明度L*と、色合いを表す色相である色差a*、b*とを含む。色差a*の負の方向は緑であり、正の方向は赤である。色差b*の負の方向は青であり、正の方向は黄である。色差a*、b*の絶対値が大きいほど上記の色が鮮やかである。酸化亜鉛は酸素欠陥や格子間Znを過剰に含み、酸素欠陥や格子間Znとの増減により電気的・光学的な性質が変化する。元素のドーピングによっても上記と同じ効果が得られる、すなわち電気的・光学的な性質が変化する。ドナー濃度の増加に伴い抵抗率が低下する。このとき、色調も変化し、酸化亜鉛の場合は色差b*の値が小さくなる。すなわち、バリスタは、電圧非直線抵抗体組成物中の酸化亜鉛の色差b*が小さいほど、低抵抗で良好な電圧非直線性を実現でき、発熱低下により異常電圧に対する高い耐性を実現できる。酸化亜鉛は接触抵抗が大きく、抵抗率の測定に大きな影響を与える。測定の方法や表面状態の違いにより測定値に大きな差が出る。これに対し、色相の測定は非接触で実施でき電極の形成なども必要ないため、容易かつ高精度に測定できる。色差を評価の指標として用いることで酸化亜鉛の抵抗率はより正確に、汎用的に評価でき、バリスタの信頼性の向上につながる。
【0013】
バリスタの電圧非直線性について説明する。バリスタは、ある印加電圧値を境に抵抗値が急激に減少する。これによりバリスタは、電圧と電流との間に非直線的な特性を有する。本開示においては、この非直線性を電圧非直線抵抗体組成物に1mAの電流を流したときの電圧値V1mAに対する、5Aの電流を流したときの電圧値V5Aの比である電圧比α(V5A/V1mA)として示す。
【0014】
酸化亜鉛焼結体は、抵抗率の異なる多数の結晶粒子から構成されている。焼結体の抵抗の評価では抵抗の不均一な分布による電流集中は検出できず、電流集中に起因して劣化する特性を有する焼結体を選別できない。結晶粒子の形状の評価では焼結体の電気特性は評価できない。
【0015】
酸化亜鉛焼結体は、多数の抵抗率の異なる結晶粒子から構成されている。したがって、一般に、酸化亜鉛焼結体は低抵抗の粒子や抵抗の不均一な部位を有しており、電流集中によるサージ耐量劣化など、信頼性の悪化を招く場合がある。焼結体の抵抗の評価では、その特性の変動を検出できない。
【0016】
また、結晶粒子の観察は形状を評価するだけなので、本質の電気特性に関する情報は得られない。これに対して、色相は、酸化亜鉛粒子の半導体物性と密接に関連する光学特性の合算値であり、結晶の抵抗特性の違いを含んだ指標となる。従って、色相等の光学特性を評価することにより、焼結体を構成する粒子の抵抗の分布を評価できる。サージ耐量悪化につながる粒子間の特性差を、焼結体の光学特性で評価できるため、高い信頼性のバリスタの識別が可能となる。また、予め、出発原料の酸化亜鉛粒子の特性を光学特性で限定することで、均質な酸化亜鉛結晶粒子から構成されるバリスタ焼結体を得ることができ、信頼性を高めることもできる。
【0017】
本実施の形態のバリスタは、上記構成により良好な電圧非直線性を実現することができる。
【0018】
次に、バリスタ100の製造方法について説明する。
【0019】
図3は、バリスタ100における製造工程を示す製造フロー図である。まず、素体10の出発原料として、酸化亜鉛粒子よりなる酸化亜鉛粉末を準備する。平均粒径により分級されていない酸化亜鉛粒子よりなる酸化亜鉛粉末を用いる場合を比較例1とする。実施の形態では、これらの酸化亜鉛粒子は球形状を有し、平均粒径は0.60μmであり、BET比表面積は2.0~3.7m
2/gに分布している。酸化亜鉛粉末に純水と高分子界面活性剤とを分散剤として添加し、よく撹拌したのち、遠心分離器により3段階に分級した。遠心分離器の回転数は、収率に合わせて300~3000rpmで行った。分級の方法として、振動ふるい式、慣性力式、濾過式も有効である。酸化亜鉛粉末を、粒子サイズの大きな順すなわちBET比表面積xの小さい順に実施例1(x≦2.2m
2/g)、実施例2(2.2m
2/g<x≦3.1m
2/g)、比較例2(x>3.1m
2/g)の3段階に分級した。
【0020】
分級されていない酸化亜鉛粉末自体と3段階に分級された酸化亜鉛粉末自体の特性を得るために、分級されていない酸化亜鉛と、乾燥した上記の3段階に分級した酸化亜鉛粉末の各々とに高純度なAl2O3を所定量添加して乾式混合し、造粒、成形し1100~1300℃で焼成して焼結させて実施例1、2と比較例1、2の酸化亜鉛粉末の焼結体を得た。得られた焼結体の抵抗率を4端子法にて測定した。さらに焼結体のL*a*b*表色系での色差b*である色差b*(ZnO)を測定した。
【0021】
分級された酸化亜鉛粉末に酸化物層10dを構成する酸化ビスマス粉末、酸化コバルト粉末、酸化マンガン粉末、酸化アンチモン粉末、酸化ニッケル粉末および酸化ゲルマニウム粉末を添加しバリスタを作成した。
【0022】
出発原料の配合比は、酸化亜鉛粉末を96.54mol%、酸化ビスマス粉末を1.00mol%、酸化コバルト粉末を1.06mol%、酸化マンガン粉末を0.30mol%、酸化アンチモン粉末を0.50mol%、酸化ニッケル粉末を0.50mol%および酸化ゲルマニウム粉末を0.10mol%である。これらの粉末と、有機バインダとを含むスラリーを準備する(ステップS11)。
【0023】
次に、複数のグリーンシートを得るステップについて詳細に説明する。
【0024】
図4は、複数のグリーンシートを得る装置を模式的に示す断面図である。
【0025】
スラリー20を幅LAの隙間からポリエチレンテレフタレート(PET)からなるフィルム21上に塗布して乾燥させることで複数のグリーンシートを得る(ステップS12)。実施の形態では幅LAは180μmである。
【0026】
次に、所定の枚数の複数のグリーンシートの表面に銀とパラジウムの合金粉末を含む電極ペーストを所定の形状に印刷し、これら複数のグリーンシートを積層して積層体を得る(ステップS13)。
【0027】
次に、この積層体を、複数のグリーンシートの表面に平行な面方向と垂直の方向に加圧する(ステップS14)。この加圧の際の加圧力は実施の形態では55MPaであり、30MPa以上100MPa以下の範囲が好ましい。積層体を30MPa以上の圧力で加圧することで、構造欠陥のない積層体を得ることができる。また、積層体を100MPa以下の圧力で加圧することで、積層体の内部における電極ペーストの形状を保持することができる。
【0028】
次に、この加圧した積層体を750℃~900℃で焼成することで、素体10(電圧非直線性抵抗体組成物)と内部電極11、12とからなる焼結体を得る(ステップS15)。この焼成により、出発原料である分級した複数の酸化亜鉛粉末が、
図2に示す複数の酸化亜鉛粒子10cとなり、複数の酸化亜鉛粒子10cの間に酸化物層10dが介在する電圧非直線性抵抗体を得ることができる。
【0029】
次に、素体10の互いに反対側の端面SA、SBに、銀とパラジウムの合金粉末を含む電極ペーストを塗布し、700~830℃で熱処理することで、外部電極13、14を形成する。なお、外部電極13、14は、めっき法により形成しても良い。また、外部電極13、14は、電極ペーストを焼成して素体10の端面SA、SBに形成された焼成層と、焼成層にめっき法により形成されるめっき層とを有していても良い。焼結体の色差を測定する(ステップS16)。
【0030】
そして、作製したバリスタの電圧比αを測定した。
【0031】
実施の形態におけるバリスタと酸化亜鉛粉末の焼結体とについて詳細に説明する。酸化亜鉛粉末の焼結体の4端子法で評価した抵抗率ρと測定された色差b*(ZnO)を表1に示す。表1はさらに、これらの酸化亜鉛粉末に添加物を加えて作成したバリスタの電圧比αとバリスタの素体(電圧非直線性抵抗体組成物)の色差b*(バリスタ)を示す。得られた酸化亜鉛粉末の焼結体の色差は異なっていた。粒子サイズが大きくなるほど、色差b*(ZnO)が小さく青みが強くなるとともに抵抗率ρが小さくなり、ドナー濃度の違いを色相により評価できることが確認できる。また、ZnOがとりうる抵抗率の下限値は約1.0×10-3Ωcmであり、その時の色差b*(ZnO)は-5と見積もられる。さらにこの結果から、生成時の粒子サイズにより結晶中のドナー濃度が異なり、サイズが大きな結晶粒子ほど酸素欠陥を多く有することがわかる。分級により、微小なサイズの粒子を除去し、サイズが大きな粒子を用いることにより、各粒子のドナー濃度の分布を小さくできるといえる。さらに表1に記載の実施例1と比較例1の抵抗率ρは同等であるが、色差b*(ZnO)はそれぞれ11.25と12.80で異なり、分級された原料を用いたほうが焼結体全体のドナー濃度が高い結果が出ている。この結果から、比較例1の抵抗率ρの測定結果は一部のドナー濃度が高い低抵抗部分の抵抗値が顕在化していることを示しており、焼結体内の各結晶粒子の特性の分布の影響を強く受けていることがわかる。色差を追加評価することにより、抵抗率の測定では判別できなかった各結晶粒子の抵抗率ρの分布の情報を得ることができる。
【0032】
【0033】
図5は、実施例1、2におけるバリスタ100の素体10と、比較例1、2におけるバリスタの素体に使用した酸化亜鉛粒子のそれぞれの色差b*(ZnO)の測定値と、バリスタの電圧比α(V
5A/V
1mA)との関係を示すグラフである。バリスタの色差b*(バリスタ)が負に大きく青みが強いほど、電圧比αは小さくなる。すなわち、大電流領域の抵抗率が小さくなり、異常電圧が印加されたときの発熱が抑制されるため、バリスタの耐性が向上する。色差の測定結果から算出した実施例1の酸化亜鉛粒子の色差b*(ZnO)が6.95のとき、酸化亜鉛の焼結体の抵抗率ρは9.6×10
-1Ωcmであり、このときの電圧比αは1.27であった。これに対して比較例の色差より算出した酸化亜鉛粒子の色差b*(ZnO)は12.8であり、酸化亜鉛焼結体の抵抗率ρは15Ωcmであり、このときの電圧比αは1.36であった。以上のように、色差b*(ZnO)が小さい酸化亜鉛粒子を用いた実施例1、2のバリスタ100における電圧比αは比較例1、2におけるバリスタのαよりも小さい。実施例1,2のバリスタ100と、比較例1.3のバリスタとの電圧比αの違いについて、
図5に示したとおり、酸化亜鉛焼結体の色差b*(ZnO)が小さくなるほど電圧比αが小さくなって改善され、ZnO粒子の抵抗率が低下することからバリスタ100の異常電圧への耐性が向上する。また、実施例1、2のバリスタの組成物の焼結体の測定された色差b*(バリスタ)と、原料として用いた分級された酸化亜鉛粒子(実施例1、2と比較例1、2)の色差b*(ZnO)の関係を
図6に示す。色差b*(バリスタ)と色差b*(ZnO)とは互いに比例関係があり、バリスタの組成物に使用した場合も、酸化亜鉛の色差は反映されることがわかる。また、色差b*(バリスタ)が0以下の場合は、用いる酸化亜鉛粒子の粒子径が大きいため、電圧非直線抵抗体組成物の粒界の数が減少し、非直線性が劣化する。
【0034】
なお、電圧比αの値は、例えば素体10を形成する酸化物層の材料構成または組成によって異なる。本実施の形態のバリスタ100における酸化物層10dは、ビスマス元素が含まれているが、ビスマス元素以外に電圧比直線性を有する材料組成であって、プラセオジウム元素またはストロンチウム元素のいずれかの元素が含まれていれば、さらに電圧比αを小さくすることができ、従来のよりも良好な異常電圧耐性を実現することができる。
【0035】
この色差測定を外部電極の焼付後、樹脂コーティングや、モールドなどを行うまでの間に導入することにより、非破壊で,均一性の影響を含んだ電圧非直線性を短時間で評価することが可能になる。樹脂でのコーティングがなくベアチップである場合は梱包ラインに組み込めば、新たに工程ラインを増設することなく、完成したバリスタの全量に色差測定を実施できる。
【0036】
また、この色差測定は積層のバリスタ以外のバリスタにも適用可能である。
図7は実施の形態における他のバリスタ200の断面図である。前出の積層バリスタであるバリスタ100と同様の組成比で配合、混合した
酸化亜鉛粉末に有機バインダを添加し、ディスク型の成形体を作製する。この成形体を750~900℃で焼成することで、電圧非直線性抵抗体組成物からなるディスク型の焼結体30を得る。この焼成により、出発原料である分級した酸化亜鉛粉末が、
図2に示す複数の酸化亜鉛粒子10cとなり、複数の酸化亜鉛粒子10cの間に酸化物層10dが介在する電圧非直線性抵抗体を得ることができる。この場合も、電圧非直線性抵抗体のb*(バリスタ)は積層バリスタの焼結体と同様の値を有する。この焼結体の色差を測定し、色差に基づいて良否判定を行った後、焼結体30の互いに反対側の表面に金属ペーストを塗布し、700~830℃で熱処理して焼き付けることで電極31、32を形成する。その後、電極31、32にリード線33、34をそれぞれ接着し、焼結体30に樹脂膜をコーティングする。
【0037】
色差b*は非接触で効率よく色差計で測定できるので、バリスタ200の製造過程で焼結体30の全量の色差b*を測定し、測定された色差b*で選別された焼結体30に電極31、32を形成することで、効率よくバリスタ200を製造することができる、すなわち、1つ以上の焼結体30の電圧非直線性抵抗体組成物のL*a*b*表色系における色差b*を測定する。1つ以上の焼結体30のうち測定された色差b*が0<b*≦0.95の範囲にある焼結体30を或る焼結体30として選別する。選別された或る焼結体30に電極31、32を形成する。この選別の工程により、電圧非直線性を有する高信頼性のバリスタを効率的に製造することができる。
【0038】
Pr系添加物、SrCoO3系添加物など,他の添加物が加えられたバリスタでも同様の結果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本開示のバリスタおよびその製造方法は、異常電圧から電子機器を保護する電子部品として有用である。
【符号の説明】
【0040】
100 バリスタ
10 素体(電圧非直線性抵抗体組成物)
10a バリスタ層
10b 無効層
11 内部電極(第1電極)
12 内部電極(第2電極)
13 外部電極
14 外部電極
10c 酸化亜鉛粒子
10d 酸化物層
20 スラリー
21 フィルム