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  • 特許-電子装置およびその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-03
(45)【発行日】2023-08-14
(54)【発明の名称】電子装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/40 20060101AFI20230804BHJP
   H01L 23/36 20060101ALI20230804BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20230804BHJP
【FI】
H01L23/40 D
H01L23/36 D
H05K7/20 F
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020527260
(86)(22)【出願日】2019-05-13
(86)【国際出願番号】 JP2019018947
(87)【国際公開番号】W WO2020003774
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2022-04-14
(31)【優先権主張番号】P 2018122586
(32)【優先日】2018-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】小西 彰仁
(72)【発明者】
【氏名】臼井 良輔
(72)【発明者】
【氏名】河村 典裕
【審査官】河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-217206(JP,A)
【文献】特開2012-129476(JP,A)
【文献】特開2012-148904(JP,A)
【文献】特開2017-28040(JP,A)
【文献】特開2012-191043(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/40
H01L 23/36
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
実装基板と、
前記実装基板の上に設けられた発熱部品と、
前記発熱部品の上方に設けられた押圧部品と、
前記発熱部品と前記押圧部品との間に設けられたフィルムと、
前記発熱部品と前記フィルムとの間、および前記押圧部品と前記フィルムとの間に設けられた、液状の熱伝導材と、を備え、
前記フィルムは、グラファイト系炭素を含有し、かつ前記押圧部品から受ける圧力により所定の圧縮率に圧縮されてなる、電子装置。
【請求項2】
前記フィルムは、前記発熱部品に対向する第1面と、前記押圧部品に対向する第2面とを有し、
前記発熱部品と前記フィルムとの界面に形成される空隙の空隙率は5%以下であり、前記押圧部品と前記フィルムとの界面に形成される空隙の空隙率は5%以下である、請求項1記載の電子装置。
【請求項3】
前記圧縮率は、100kPaの圧力で30%以上である、請求項1記載の電子装置。
【請求項4】
前記熱伝導材は、25℃において、動粘度が2cSt以上かつ15cSt以下である、請求項1記載の電子装置。
【請求項5】
実装基板に発熱部品を実装する工程と、
前記発熱部品の上に液状の熱伝導材が塗布された、グラファイト系炭素を有するフィルムを配置する工程と、
前記フィルムの上に押圧部品を配置して前記フィルムを圧縮する工程と、
前記押圧部品側から超音波を照射してその反射波を検出することにより、前記発熱部品と前記フィルムとの間、および前記押圧部品と前記フィルムとの間の空隙を調べる工程と、を備えた電子装置の製造方法。
【請求項6】
前記フィルムは、前記発熱部品に対向する第1面と、前記押圧部品に対向する第2面とを有し、
前記発熱部品と前記フィルムとの界面に形成される空隙の面積を前記第1面の面積の5%以下とし、前記押圧部品と前記フィルムとの界面に形成される空隙の面積を前記第2面の面積の5%以下とした、請求項5記載の電子装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、配線部材に搭載された半導体素子からの放熱効率を高めた電子装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子は、大きな電流を流すことが可能になってきたことから、発熱が非常に大きくなる場合があり、放熱対策が重要になっている。そのため発熱部品と放熱材との間に熱伝導グリスを設け、この熱伝導グリスを通して発熱部品から放熱材へと熱を伝えることが行われている。
【0003】
なお、この技術に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-26458号公報
【発明の概要】
【0005】
しかしながら熱伝導グリスを用いた場合、発熱に伴う熱膨張により熱伝導グリスが外に排出されるポンプアウトや、熱伝導グリスそのものの劣化等が発生する可能性がある。また熱伝導グリスに気泡が含まれると熱伝導性が劣化して、放熱材の放熱性が悪くなる場合がある。
【0006】
本開示にかかる電子装置は、上記問題を解決するために、実装基板と、この実装基板の上に設けられた発熱部品と、発熱部品の上方に設けられた押圧部品と、発熱部品と押圧部品との間に設けられたフィルムと、を備える。さらに、発熱部品とフィルムとの間、および押圧部品とフィルムとの間に設けられた、液状の熱伝導材と、を備える。フィルムは、グラファイト系炭素を含有し、かつ押圧部品から受ける圧力により所定の圧縮率に圧縮されている。
【0007】
本開示にかかる電子装置は、以上のように構成することにより、発生した熱を効率良く放熱し、信頼性の高い電子装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の一実施の形態における電子装置の断面図
図2図1に示す電子装置におけるフィルムの近傍の断面図
図3】本開示の一実施の形態における電子装置の製造方法を説明する断面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の一実施の形態における電子装置について、図面を参照しながら説明する。
【0010】
図1は本開示の一実施の形態における電子装置の断面図である。また、図2は、図1に示す電子装置の、フィルム14の近傍の断面図である。
【0011】
図1において、実装基板11に発熱部品12として半導体素子がフリップチップ実装されている。この発熱部品12の大きさは約9mm×14mmの長方形で、高さは約0.4mmとなっている。発熱部品12の上方には厚さ約3mmの銅からなるリッドが、押圧部品13として設けられている。発熱部品12の上にはフィルム14が設けられている。フィルム14は、押圧部品13で押し付けられて実装基板11に接着されている。このことによりフィルム14は圧縮された状態となっている。また発熱部品12とフィルム14との間、および押圧部品13とフィルム14との間には熱伝導材15として、パーフルオロポリエーテルからなるオイルが設けられている。
【0012】
フィルム14は、熱伝導率の高い材料よりなる。本実施形態では、熱伝導率の高い材料として、グラファイト系炭素を用いている。すなわち、フィルム14は、グラファイト系炭素よりなる。
【0013】
ここで、グラファイト系炭素について簡単に述べる。結晶としての炭素は、グラファイトとダイヤモンドが知られている。グラファイト系炭素とは、グラファイトを主な構成要素とする炭素のことである。グラファイト系炭素を製造する手法として、例えば、単に天然グラファイトを加工する手法や、例えばポリイミドフィルムのような有機物を熱分解する手法がある。特に、有機物を熱分解して得られるグラファイト系炭素を、熱分解グラファイト系炭素という。
【0014】
フィルム14は、発熱部品12に対向する第1面14aと、押圧部品に対向する第2面14bとを有する。ここで、発熱部品12とフィルム14との界面(図2における下側の点線)を含むその近傍、および押圧部品13とフィルム14との界面(図2における上側の点線)を含むその近傍には、空隙14cが形成される。空隙14cは、熱伝導材15により満たされている。ここで、空隙14cが生じるとその部分で熱伝導性が悪くなるため、この空隙率を5%以下とする必要がある。さらに空隙率を2%以下とすることがより望ましい。
【0015】
なお、ここで空隙率について述べる。発熱部品12とフィルム14との間、または押圧部品13とフィルム14との間に単数または複数の空隙が形成されることがある。特に、熱分解グラファイト系炭素をフィルム14に含んだ場合、発熱部品12とフィルム14との間、または押圧部品13とフィルム14との間に単数または複数の空隙が形成される。この場合に、発熱部品12とフィルム14との間に形成される空隙について、第1面14aに投影したときの面積の合計の、第1面14aの面積(第1面14aの全体の面積)に対する割合を空隙率という。同様にして、押圧部品13とフィルム14との間に単数または複数の空隙が見つかり、当該空隙について第2面14bに投影したときの面積の合計の、第2面14bの面積(第2面14bの全体の面積)に対する割合を空隙率という。
【0016】
フィルム14は、初期厚さが約100μmで、100kPaの圧力を加えた場合の圧縮率が約35%のものを用いている。ここで圧縮率とは、初期厚さをT0、100kPaの圧力を加えた状態での厚さをT1として、(T0-T1)/T0の値をパーセント表示したものである。このようなグラファイト系炭素よりなるフィルム14を用いて、押圧部品13により約200kPaの圧力を加える。このようにすることにより、押圧部品13を実装した状態でのフィルム14の厚さは、約50μmとなっている。以上のようにフィルム14に、100kPaの圧力を加えた場合の圧縮率が30%以上のものを用いることにより、放熱性の良い電子装置を得ることができる。
【0017】
フィルム14の材料として、熱分解グラファイト系炭素を含有することが望ましい。特に、フィルム14は、熱分解グラファイト系炭素よりなることが望ましい。熱分解グラファイト系炭素は、面方向への熱伝導性に優れるため、発熱部品12の発熱が局所的になっても、速やかに面方向に拡散して押圧部品13に伝えることができるため、効率的に放熱することができる。
【0018】
熱伝導材15には25℃における動粘度が約10cStのパーフルオロポリエーテルを用いている。この熱伝導材15を用い、押圧部品13により約200kPaの圧力を加えることにより、押圧部品13を実装した状態での熱伝導材15の厚さは、約2μmとなっている。このように圧力を加えることによりフィルム14および熱伝導材15を圧縮し、発熱部品12、フィルム14、および押圧部品13の凹凸を埋めることができ、熱抵抗を大幅に小さくすることができる。
【0019】
熱伝導材15は、25℃における動粘度が、2cSt以上、15cSt以下のものを用いることが望ましい。動粘度が2cSt未満の場合、フィルム14に十分な熱伝導材を塗布することが難しく、発熱部品12とフィルム14との間あるいは押圧部品13とフィルム14との間に例えば空洞を発生させてしまう可能性がある。逆に動粘度が15cStを超えると、フィルム14にボイド等の欠陥があっても検出しにくくなる。なお、空洞は空隙の一種である。
【0020】
またフィルム14の端面は熱伝導材15で覆われていることが望ましい。このようにすることによりフィルム14からグラファイトの粉が落ちることを防ぐことができ、信頼性を向上させることができる。
【0021】
次に本開示の一実施の形態における電子装置の製造方法について図3を参照しながら説明する。
【0022】
まず実装基板11に発熱部品12として半導体素子をフリップチップ実装する。次に所定の形状に切断したフィルム14を、パーフルオロポリエーテルからなるオイルにディップし、これを発熱部品12の上に配置する。フィルム14は厚さ約100μmの熱分解グラファイト系炭素からなり、100kPaの圧力を加えた場合の圧縮率が約35%となるものを用いる。フィルム14の形状は発熱部品12の上面と同じ形状となっている。またオイルは25℃における動粘度が約10cStの低分子量のパーフルオロポリエーテルを用い、これが熱伝導材15となっている。
【0023】
その上に厚さ約3mmの銅からなるリッドを押圧部品13として配置し、実装基板11方向に圧力を加えてフィルム14を圧縮しながら接着剤16で固定する。約200kPaの圧力を加えることにより、フィルム14は約50μmの厚さとなり、熱伝導材15の厚さは約2μmとなっている。
【0024】
次に図3のように、押圧部品13を実装した実装基板11を水槽17に浸漬して評価用ステージ19に設置する。超音波プローブ18を水面20と押圧部品13との間に配置し、押圧部品13側から超音波プローブ18により約50MHzの超音波を照射してその反射波を検出する。超音波プローブ18を発熱部品12の面方向にスキャンして得られた反射波の情報を画像情報に変換する。このようにすることにより発熱部品12とフィルム14との間および押圧部品13とフィルム14との間の空隙、あるいはフィルム14の欠陥を検出することができる。もし発熱部品12とフィルム14との間に単数または複数の空隙が見つかり、当該空隙について第1面14aに投影したときの面積の合計が第1面14aの面積の5%を超える場合は不良品として除去することができる。また、押圧部品13とフィルム14との間に単数または複数の空隙が見つかり、当該空隙について第2面14bに投影したときの面積の合計が第2面14bの面積の5%を超える空隙が見つかった場合は不良品として除去することができる。
【0025】
このようにすることにより、発熱部品12、フィルム14、および押圧部品13の凹凸を熱伝導材で埋めることができ、これらの間に空洞がなく放熱性に優れた電子装置を得ることができる。
【0026】
なお、本実施形態で用いたフィルム14の材料は、グラファイト系炭素を用いたが、天然グラファイトを用いた膨張グラファイトを用いることも可能である。
【0027】
なお、実装基板11として、例えばプリント基板を用いることができる。発熱部品12としては、半導体素子以外にも抵抗素子、コンデンサ等を用いることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本開示に係る電子装置およびその製造方法は、発生した熱を効率良く放熱し、信頼性の高い電子装置を得ることができ、産業上有用である。
【符号の説明】
【0029】
11 実装基板
12 発熱部品
13 押圧部品
14 フィルム
14a 第1面
14b 第2面
14c 空隙
15 熱伝導材
16 接着剤
17 水槽
18 超音波プローブ
19 評価用ステージ
20 水面
図1
図2
図3