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特許7324976レーザ加工ヘッド、レーザ加工装置及びレーザ加工制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-03
(45)【発行日】2023-08-14
(54)【発明の名称】レーザ加工ヘッド、レーザ加工装置及びレーザ加工制御方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/00 20140101AFI20230804BHJP
   B23K 26/064 20140101ALI20230804BHJP
【FI】
B23K26/00 P
B23K26/00 Q
B23K26/064 K
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021529945
(86)(22)【出願日】2020-06-16
(86)【国際出願番号】 JP2020023537
(87)【国際公開番号】W WO2021002188
(87)【国際公開日】2021-01-07
【審査請求日】2022-12-13
(31)【優先権主張番号】P 2019123225
(32)【優先日】2019-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】王 静波
(72)【発明者】
【氏名】西尾 正敏
(72)【発明者】
【氏名】柴田 憲三
(72)【発明者】
【氏名】西原 学
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開平2-205286(JP,A)
【文献】特開2007-54881(JP,A)
【文献】特開平9-192860(JP,A)
【文献】実用新案登録第2599463(JP,Y2)
【文献】特公平7-14098(JP,B2)
【文献】特開昭62-275592(JP,A)
【文献】特開平7-155971(JP,A)
【文献】特許第6659654(JP,B2)
【文献】特許第6616368(JP,B2)
【文献】特許第6011598(JP,B2)
【文献】特許第5187121(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00
B23K 26/064
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ発振器により出射されて光ファイバを通過したレーザ光をワークに向けて出射するレーザ加工ヘッドであって、
前記光ファイバから出射された前記レーザ光を平行化するコリメートレンズと、
前記コリメートレンズによって平行化された前記レーザ光を集光して前記ワークに向けて出射する集光レンズと、
前記ワークから反射して前記集光レンズによって平行化された反射光を、前記コリメートレンズに戻る戻り光、第1分割光、及び第2分割光を含む複数の分割光に分割する光学系と、
前記第1分割光のうち、前記ワークにおける反射角が第1の範囲内にある光を第1通過光として通過させる第1窓部が形成され、前記第1分割光のうち、前記ワークにおける反射角が第1の範囲外にある光を遮蔽する第1遮蔽部材と、
前記第2分割光のうち、前記ワークにおける反射角が前記第1の範囲とは異なる第2の範囲内にある光を第2通過光として通過させる第2窓部が形成され、前記第2分割光のうち、前記ワークにおける反射角が前記第2の範囲外にある光を遮蔽する第2遮蔽部材と、
前記第1通過光の光量を検出する第1の光センサと、
前記第2通過光の光量を検出する第2の光センサとを備えていることを特徴とするレーザ加工ヘッド。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザ加工ヘッドにおいて、
前記戻り光のうち、前記ワークにおける反射角が前記第1の範囲内にある光が、前記光ファイバのコアを伝搬可能な光の最大受光角以下の入射角で前記光ファイバに入射し、かつ前記戻り光のうち、前記ワークにおける反射角が前記第2の範囲内にある光が、前記最大受光角を超え、かつ前記光ファイバの保護層へ入射可能な光の最大入射角以下となる入射角で前記光ファイバに入射することを特徴とするレーザ加工ヘッド。
【請求項3】
請求項2に記載のレーザ加工ヘッドにおいて、
前記複数の分割光は、第3分割光をさらに含み、
当該レーザ加工ヘッドは、前記第3分割光のうち、前記ワークにおける反射角が前記第1及び第2の範囲とは異なる第3の範囲内にある光を第3通過光として通過させる第3窓部が形成され、前記第3分割光の残りを遮蔽する第3遮蔽部材と、
前記第3通過光の光量を検出する第3の光センサとをさらに備え、
前記戻り光のうち、前記ワークにおける反射角が前記第2の範囲内にある光が、前記最大受光角を超え、かつ光ファイバのクラッドを伝搬可能な光の最大投射角以下となる入射角で前記光ファイバに入射し、かつ前記戻り光のうち、前記ワークにおける反射角が前記第3の範囲内にある光が、前記最大投射角を超え、かつ前記最大入射角以下となる入射角で前記光ファイバに入射することを特徴とするレーザ加工ヘッド。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のレーザ加工ヘッドと、
前記レーザ発振器と、
前記光ファイバと、
前記第1の光センサによって検出された光量が、所定の第1の閾値を超えたとき、及び前記第2の光センサによって検出された光量が、所定の第2の閾値を超えたときに、所定の処理を行うコントローラとを備えていることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項5】
請求項4に記載のレーザ加工装置において、
前記所定の処理は、警告の出力であることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項6】
請求項4に記載のレーザ加工装置において、
前記所定の処理は、前記レーザ発振器のレーザ発振を停止させる制御であることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項7】
請求項1~3のいずれか1項に記載のレーザ加工ヘッドと、前記レーザ発振器と、前記光ファイバとを備えたレーザ加工装置によるレーザ加工制御方法であって、
前記第1の光センサによって検出された光量が、所定の第1の閾値を超えたとき、及び前記第2の光センサによって検出された光量が、所定の第2の閾値を超えたときに、所定の処理を行うことを特徴とするレーザ加工制御方法。
【請求項8】
請求項1に記載のレーザ加工ヘッドであって、
前記光学系は、
前記コリメートレンズと前記集光レンズとの間に配置され、前記反射光を受けて、前記反射光の一部を前記戻り光として透過し、前記反射光の残りの一部を前記第1分割光および前記第2分割光を含む第1ミラー反射光として反射する、第1ミラーと、
前記第1ミラー反射光を受けて、前記第1ミラー反射光内の前記第1分割光を前記第1遮蔽部材に向け、前記第1ミラー反射光内の前記第2分割光を前記第2遮蔽部材に向ける、第2ミラーと、
を備えるレーザ加工ヘッド。
【請求項9】
請求項1に記載のレーザ加工ヘッドであって、
前記第1の範囲は、前記ワークにおける反射角が0度以上で第1設定角度以下の範囲であり、
前記第2の範囲は、前記ワークにおける反射角が第1設定角度を超え、前記第1設定角度よりも大きな第2設定角度以下の範囲である、
レーザ加工ヘッド。
【請求項10】
請求項1に記載のレーザ加工ヘッドであって、
前記第1遮蔽部材は、第1の直径を有する円形領域内に前記第1窓部を有し、前記円形領域外に入射した光を遮蔽し、
前記第2遮蔽部材は、前記第1の直径を有する内周縁および前記第1の直径よりも大きな第2の直径を有する外周縁により形成される円環領域内に前記第2窓部を有し、前記円環領域外に入射した光を遮蔽する、
レーザ加工ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザ発振器により出射されて光ファイバを通過したレーザ光をワークに向けて出射するレーザ加工ヘッド、当該レーザ加工ヘッドを備えたレーザ加工装置、及び当該レーザ加工装置によるレーザ加工制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、光ファイバの出射端面から出射されたレーザ光を平行化するコリメートレンズと、前記コリメートレンズによって平行化されたレーザ光を集光して前記ワークに向けて出射する集光レンズと、前記ワークから反射して前記集光レンズによって平行化された反射光の一部を、前記コリメートレンズに向けて戻り光として反射させるとともに、当該反射光の残りを透過させるベンドミラーと、前記ベンドミラーを透過した反射光の光量を検出する光センサとを備えたレーザ加工ヘッドが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-17962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1のようなレーザ加工ヘッドを備えたレーザ加工装置では、一般に、ワークからの反射光の少なくとも一部は、戻り光としてコリメートレンズを透過し、光ファイバのコア又はクラッドを通過して発振器の内部、光ファイバの接続部、及び光ファイバのクラッドの外周に配設された保護層等、レーザ加工装置の複数箇所に逆に入射してしまう。そして、当該戻り光の入射光量が所定の許容値を超えた箇所には、損傷等の不具合が生じる。なお、通常のレーザ加工装置では、当該戻り光が入射する複数箇所における入射光量の許容値が異なる場合が多い。そのため、レーザ加工装置の複数箇所における戻り光の入射光量を個別に取得し、各々の箇所の許容値と比較してその危険度を予知又は警告したいという要望がある。しかし、上記特許文献1では、ワークからの反射光の光量を検出するための光センサが1つしか設けられていないので、レーザ加工装置の複数箇所における戻り光の入射光量を個別に取得できない。
【0005】
本開示は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、レーザ加工装置の複数箇所における戻り光の入射光量を個別に取得し、各々の箇所における入射光量の許容値に応じてその危険度を予知又は警告できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本開示は、レーザ発振器により出射されて光ファイバを通過したレーザ光をワークに向けて出射するレーザ加工ヘッドであって、前記光ファイバから出射された前記レーザ光を平行化するコリメートレンズと、前記コリメートレンズによって平行化された前記レーザ光を集光して前記ワークに向けて出射する集光レンズと、前記ワークから反射して前記集光レンズによって平行化された反射光を、前記コリメートレンズに戻る戻り光、第1分割光、及び第2分割光を含む複数の分割光に分割する光学系と、前記第1分割光のうち、前記ワークにおける反射角が第1の範囲内にある光を第1通過光として通過させる第1窓部が形成され、前記第1分割光のうち、前記ワークにおける反射角が第1の範囲外にある光を遮蔽する第1遮蔽部材と、前記第2分割光のうち、前記ワークにおける反射角が第1の範囲とは異なる第2の範囲内にある光を第2通過光として通過させる第2窓部が形成され、前記第2分割光のうち、前記ワークにおける反射角が前記第2の範囲外にある光を遮蔽する第2遮蔽部材と、前記第1通過光の光量を検出する第1の光センサと、前記第2通過光の光量を検出する第2の光センサとを備えていることを特徴とする。
【0007】
これにより、第1の光センサにより検出される光量は、ワークにおける反射角が第1の範囲内にある戻り光の光量に応じた値となり、第2の光センサにより検出される光量は、ワークにおける反射角が第2の範囲内にある戻り光の光量に応じた値となる。そして、ワークにおける反射角が第1の範囲内にある戻り光と、ワークにおける反射角が第2の範囲内にある戻り光とは、レーザ加工装置の異なる箇所に逆に入射する。第1及び第2の光センサにより検出される光量は、レーザ加工装置の異なる箇所における戻り光の入射光量に応じた値となる。したがって、レーザ加工装置の複数箇所における戻り光の入射光量を個別に測定し、各々の箇所における入射光量の許容値に応じてその危険度を予知または警告することができる。
【発明の効果】
【0008】
レーザ加工装置の複数箇所における戻り光の入射光量を個別に取得し、各々の箇所における入射光量の許容値に応じてその危険度を予知または警告することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の実施形態1に係るレーザ加工装置の構成を示す概略図である。
図2】レーザ加工ヘッドの構成を示す概略図である。
図3】(a)は、第1遮蔽部材の平面図であり、(b)は、図3(a)のIIIb-IIIb線における断面図である。
図4】(a)は、第2遮蔽部材の平面図であり、(b)は、図4(a)のIVb-IVb線における断面図である。
図5A】第1の光センサにより検出される光量を例示するグラフである。
図5B】第2の光センサにより検出される光量を例示するグラフである。
図6】光ファイバ90の出射端部の概略を示す断面図である。
図7】実施形態2の図2相当図である。
図8】(a)は、実施形態2の図4(a)相当図であり、(b)は、実施形態2の図4(b)相当図である。
図9】(a)は、第3遮蔽部材の平面図であり、(b)は、図9(a)のIXb-IXb線における断面図である。
図10】(a)は、実施形態3の図3(a)相当図であり、(b)は、実施形態3の図3(b)相当図である。
図11】(a)は、実施形態3の図4(a)相当図であり、(b)は、実施形態3の図4(b)相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態について図面に基づいて説明する。
【0011】
(実施形態1)
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本開示、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0012】
また、以降の説明において、「一致」するとは、厳密に一致するものの他、製造上の組立公差や加工公差を含んで一致するものも含まれる。なお、「概略平行」とは、厳密に平行するものの他に、ある所定の誤差の範囲で殆ど平行に近いものも含まれる。
【0013】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係るレーザ加工装置100の構成を示し、レーザ加工装置100は、レーザ加工ヘッド30と、マニピュレータ60と、コントローラ70と、レーザ発振器80と、光ファイバ90とを備えている。
【0014】
レーザ加工ヘッド30は、光ファイバ90からのレーザ光LBをワークWに照射する。マニピュレータ60は、先端にレーザ加工ヘッド30が取り付けられ、レーザ加工ヘッド30を移動させる。コントローラ70は、レーザ加工ヘッド30の動作とマニピュレータ60の動作と、レーザ発振器80のレーザ発振を制御する。レーザ発振器80は、発振によりレーザ光LBを光ファイバ90に出射する。光ファイバ90は、レーザ発振器80により出射されたレーザ光LBをレーザ加工ヘッド30に導く。このような構成により、レーザ加工装置100は、レーザ発振器80から出射されたレーザ光LBを、レーザ加工ヘッド30及びマニピュレータ60を動作させてワークWに所望の軌跡で照射させる。
【0015】
レーザ加工装置100は、ワークWの切断や溶接加工等を行うのに使用される。
【0016】
レーザ加工ヘッド30は、図2に示すように、光ファイバ90の出射端面から出射された出射ビームOB(レーザ光)を平行化してコリメートビームCBとして出射するコリメートレンズ31と、コリメートレンズ31によって出射されたコリメートビームCB(レーザ光)を、ワークWにおける加工点で焦点を結ぶように集光して加工ビームPBとしてワークWに向けて出射するとともに、ワークWからの反射光を平行化する第1の集光レンズ32と、第1の集光レンズ32とワークWとの間に介在する保護ガラス33とを備えている。図2中、θ0は、光ファイバ90から実際に出射される出射ビームOBの出射角を示す。
【0017】
コリメートレンズ31と、第1の集光レンズ32との間には、第1ミラー34が、コリメートレンズ31及び第1の集光レンズ32の光軸OA1に対して所定の傾斜角度で傾斜した状態で配設されている。当該所定の傾斜角度は、任意に設定できるが、概略45度に設定することが望ましい。第1ミラー34は、コリメートレンズ31によって出射されたコリメートビームCBの殆どを、第1の集光レンズ32に向けて透過させる。第1ミラー34は、コリメートビームCBの99.0%以上を透過させるように構成するのが望ましい。また、第1ミラー34は、ワークWから反射して第1の集光レンズ32を通過した反射光の一部を第1ミラー反射光RB1として反射させて、当該反射光の残りを通過させてコリメートレンズ31に戻り光FBとして出射する。第1ミラー34としては、コリメートビームCBの反射を防止するための反射防止膜のコーティングをその両面に同様に施した石英ガラス製のミラーを用いることができる。当該反射防止膜における反射率はできるだけ低く設定することが望ましく、具体的には、1.0%以下に設定することが望ましい。図1では、ワークWに入射するレーザビームのパワー密度が高くなるように、ワークWを第1の集光レンズ32の焦点の近傍に配置している。したがって、ワークWから反射して第1の集光レンズ32を通過した戻り光FBが概略平行な光となる。しかし、ワークWを第1の集光レンズ32の焦点から離れた位置に配置し、ワークWから反射して第1の集光レンズ32を通過した戻り光FBの一部だけが概略平行な光となるようにしてもよい。
【0018】
第1ミラー34から第1ミラー反射光RB1の出射方向に離れた箇所には、第2ミラー35が第1ミラー34と平行に配設されている。第2ミラー35は、第1ミラー反射光RB1の一部を第2ミラー透過光TB2として透過させるとともに、当該第1ミラー反射光RB1の残りを第2ミラー反射光RB2として反射させる。したがって、第1ミラー34と第2ミラー35とで、ワークWから反射して第1の集光レンズ32によって平行化された反射光を、上記戻り光FB、第1分割光としての第2ミラー透過光TB2、及び第2分割光としての第2ミラー反射光RB2に分割する光学系が構成されている。第2ミラー35における第1ミラー反射光RB1の反射率は、特に限定されないが、第2ミラー透過光TB2と第2ミラー反射光RB2とがほぼ均等になるように、50%に設定することが望ましい。
【0019】
第2ミラー35から第2ミラー透過光TB2の出射方向に離れた箇所には、図3にも示す正方形板状の第1遮蔽部材36が第2ミラー透過光TB2の光軸に垂直な状態で配設されている。第1遮蔽部材36は、アルミニウム合金、銅、鉄、ステンレス等の金属、又は第2ミラー透過光TB2を透過させない性質の樹脂からなる。第1遮蔽部材36の中央には、円形の第1窓部としての第1開口部36aが貫通形成されている。当該第1開口部36aの中心は、第2ミラー透過光TB2の光軸OA2に一致している。第1開口部36aの直径D1は、第2ミラー透過光TB2のうち、ワークWにおける反射角が第1の範囲内にある光を第1通過光PB1として通過させるように設定される。また、第1遮蔽部材36における第1開口部36a非形成領域によって、第2ミラー透過光TB2の残り(すなわち、第2ミラー透過光TB2のうち、ワークWにおける反射角が第1の範囲外にある光)が遮蔽される。すなわち、第1遮蔽部材36は、直径D1を有する円形領域内に第1窓部(第1開口部36a)を有し、この円形領域外に入射した光を遮蔽する。上記第1の範囲は、具体的には、0度以上で所定の第1設定角度SA1以下と対応する範囲とされる。第1設定角度SA1は、戻り光FBのうち、ワークWにおける反射角が第1設定角度SA1となる光が、光ファイバ90の出射端に戻った時に、最大受光角θ1と等しい入射角で光ファイバ90に入射するように設定される。最大受光角θ1は、光ファイバ90のコア91(図6参照)を逆方向に(レーザ発振器80に向けて)伝搬可能な光の入射角の最大値である。すなわち、このθ1は、光ファイバ90のNA(Numerical Aperture)と対応するものである。したがって、第1開口部36aの直径D1は、その全体が光ファイバ90のコア91(図6参照)を逆方向(レーザ発振器80側)へ伝搬可能な入射ビームの最大の直径と対応する。また、図3中、D0は、戻り光FBのうち、光ファイバ90から実際に出射される出射ビームOBと逆の経路で戻った時の入射ビームの直径と対応する。
【0020】
第1遮蔽部材36から第2ミラー透過光TB2の出射方向に離れた箇所には、第2の集光レンズ37が第1遮蔽部材36と平行に配設されている。第2の集光レンズ37の光軸は、第1開口部36aの中心(第2ミラー透過光TB2の光軸OA2)と一致している。
【0021】
第2の集光レンズ37から第2ミラー透過光TB2の出射方向に離れた箇所には、第1の光センサ38がその受光面を第2の集光レンズ37に対向させた状態で配設されている。第1の光センサ38の受光面は、第2の集光レンズ37の焦点に位置していることが望ましいが、この限りではない。第1の光センサ38により検出される光量は、第1通過光PB1の光量となる。
【0022】
また、第2ミラー35から第2ミラー反射光RB2の出射方向に離れた箇所には、図4にも示す正方形板状の第2遮蔽部材39が第2ミラー反射光RB2の光軸に垂直な状態で配設されている。第2遮蔽部材39も、アルミニウム合金、銅、鉄、ステンレス等の金属、又は第2ミラー反射光RB2を透過させない性質の樹脂からなる。第2遮蔽部材39には、共通の点を中心とする半円弧状に延びる長孔状の1対の第2窓部としての第2開口部39aが、その開放側を互いに対向させた状態で互いに間隔を空けて貫通形成されている。両第2開口部39aの間隔DE1は、両第2開口部39aによって囲まれた円形の領域を支持するための機械的強度を確保できる範囲で、短く設定することが好ましい。両第2開口部39aの内周縁の直径D1は、第1遮蔽部材36の第1開口部36aの直径D1と同じである。第2開口部39aの径方向の位置及び幅は、第2ミラー反射光RB2のうち、ワークWにおける反射角が第2の範囲内にある光を第2通過光PB2として通過させるように設定される。第2の範囲は、具体的には、第1設定角度SA1を超え、かつ所定の第2設定角度SA2以下となる範囲とされる。また、第2遮蔽部材39における第2開口部39a非形成領域によって、第2ミラー反射光RB2の残り(すなわち、第2ミラー反射光RB2のうち、ワークWにおける反射角が第2の範囲外にある光)が遮蔽される。すなわち、第2遮蔽部材39は、直径D1を有する内周縁および直径D1よりも大きな直径D2を有する外周縁により形成される円環領域内に第2窓部(両第2開口部39a)を有し、この円環領域外に入射した光を遮蔽する。第2設定角度SA2は、戻り光FBのうち、ワークWにおける反射角が第2設定角度SA2となる光が、光ファイバ90の出射端に戻った時に、最大受光角θ1を超え、最大投射角θ3をも超え、最大入射角θ2以下となる入射角で光ファイバ90に入射するように設定される。最大投射角θ3は、光ファイバ90のクラッド92内を逆方向に伝搬可能な光の入射角の最大値である。最大入射角θ2は、光ファイバ90の保護層93に入射可能な光の入射角の最大値である。なお、最大入射角θ2は、最大投射角θ3を超えた、所定の角度に設定してよい。したがって、第2開口部39aの外周縁の直径D2は、光ファイバ90のクラッド92を逆方向へ伝搬可能な光の入射ビームの直径を超える。
【0023】
第2遮蔽部材39から第2ミラー反射光RB2の出射方向に離れた箇所には、第3の集光レンズ40が第2遮蔽部材39と平行に配設されている。第3の集光レンズ40の光軸OA3は、両第2開口部39aの中心(第2ミラー反射光RB2の光軸)と一致している。
【0024】
第3の集光レンズ40から第2ミラー反射光RB2の出射方向に離れた箇所には、第2の光センサ41がその受光面を第3の集光レンズ40に対向させた状態で配設されている。第2の光センサ41の受光面は、第3の集光レンズ40の焦点に位置していることが望ましいが、この限りではない。第2の光センサ41により検出される光量は、第2通過光PB2の光量となる。
【0025】
マニピュレータ60は、サーボモータ(図示せず)及びエンコーダ(図示せず)を関節軸毎に有している。
【0026】
コントローラ70は、制御部71と、表示部72とを有している。
【0027】
制御部71は、入力された制御プログラムに従って、レーザ発振器80のレーザ光出力を制御するように構成されている。
【0028】
さらに、制御部71は、制御プログラム及びマニピュレータ60に設けられたエンコーダ(図示せず)からのフィードバック信号に従って、マニピュレータ60に設けられたサーボモータ(図示せず)に位置指令を送信し、サーボモータ(図示せず)の回転速度及び回転量を制御する。
【0029】
また、制御部71は、図5Aに示すように、第1の光センサ38によって検出された光量が、所定の第1の警告閾値Vfa1を超えたときに、表示部72に警告を表示出力させる。また、制御部71は、第1の光センサ38によって検出された光量が、第1の警告閾値Vfa1よりも大きい所定の第1の停止閾値Vfs1を超えたときに、レーザ発振器80に対し、レーザ発振を停止させる制御を行う。
【0030】
また、制御部71は、図5Bに示すように、第2の光センサ41によって検出された光量が、所定の第2の警告閾値Vfa2を超えたときに、表示部72に警告を表示出力させる。また、制御部71は、第2の光センサ41によって検出された光量が、第2の警告閾値Vfa2よりも大きい所定の第2の停止閾値Vfs2を超えたときに、レーザ発振器80に対し、レーザ発振を停止させる制御を行う。
【0031】
表示部72は、制御部71による制御により、レーザ発振器80の出力状態、マニピュレータ60の動作状態、及び警告等を表示するように構成されている。
【0032】
そして、上述のように構成されたレーザ加工装置100では、レーザ発振器80がレーザ光LBを出射する。出射されたレーザ光LBは、光ファイバ90によってレーザ加工ヘッド30に導かれる。そして、レーザ光LBが、光ファイバ90の出射端から出射ビームOBとして出射され、コリメートレンズ31によって平行化され、コリメートビームCBとして第1ミラー34に入射する。第1ミラー34を透過したコリメートビームCBは、第1の集光レンズ32によって集光され、加工ビームPBとして出射される。第1の集光レンズ32から出射された加工ビームPBは、保護ガラス33を通過してワークWに照射され、その一部がワークWから反射する。ワークWから反射した反射光は、第1の集光レンズ32を通過して第1ミラー34に入射する。そして、第1ミラー34に到達した反射光の一部は、戻り光FBとして第1ミラー34を透過してコリメートレンズ31によって光ファイバ90の出射端に入射する。この光は、光ファイバ90内を伝搬して、レーザ発振器80の内部、光ファイバ90の接続部及び図6に示すクラッド92の外周に配設された保護層93等、レーザ加工装置100の複数箇所に入射する。図6は、戻り光FB1、FB2およびFB3を示す。戻り光FB1は、ワークWにおける反射角が第1設定角度SA1以下となる光である。戻り光FB1は、光ファイバ90の最大受光角θ1以下の入射角で光ファイバ90に入射し、コア91内を伝搬してレーザ発振器80の内部に入射する。また、戻り光FB2は、ワークWにおける反射角が第3設定角度SA3以下で、かつ第1設定角度SA1を超える光である。戻り光FB2は、最大受光角θ1を超え、かつ最大投射角θ3以下となる入射角で光ファイバ90に入射し、クラッド92内を伝搬してレーザ発振器80の内部に入射する。戻り光F3は、ワークWにおける反射角が第3設定角度SA3を超え、かつ第2の設定角度SA2以下となる光である。戻り光FB3は、最大投射角θ3を超える入射角で光ファイバ90に入射し、クラッド92内を通過してから保護層93に入射する。この範囲の戻り光FB3は光ファイバ90の保護層93を通過しながら、保護層93によって吸収され、熱に変わってしまう。図6に示していないが、通常、光ファイバ90の出射端は、クラッド92を突き抜けて保護層93に入射可能な戻り光FB3を吸収する光吸収構造体を備える。光吸収構造体は、この戻り光FB3を熱に変換する。更に、冷却水によってこの光吸収構造体を冷却することによって、この戻り光FB3が光ファイバ90に被害を与えないようそのリスクを回避している。一方、第1ミラー34に到達した反射光の一部は、第1ミラー34で反射して第1ミラー反射光RB1として第2ミラー35に入射する。第2ミラー35に入射した第1ミラー反射光RB1の一部は、第2ミラー透過光TB2として第2ミラー35を透過し、第1遮蔽部材36に入射する。そして、第1遮蔽部材36に入射した第2ミラー透過光TB2のうち、ワークWにおける反射角が第1設定角度SA1以下となる光が、第1開口部36aを第1通過光PB1として通過し、第2の集光レンズ37によって、第1の光センサ38の受光面で焦点を結ぶように集光される。一方、第2ミラー35に入射した第1ミラー反射光RB1の一部は、第2ミラー反射光RB2として第2ミラー35で反射し、第2遮蔽部材39に入射する。そして、第2遮蔽部材39に入射した第2ミラー反射光RB2のうち、ワークWにおける反射角が第1設定角度SA1を超え、かつ第2設定角度SA2以下となる光が、第2開口部39aを第2通過光PB2として通過し、第3の集光レンズ40によって、第2の光センサ41の受光面で焦点を結ぶように集光される。これにより、第1の光センサ38により検出される光量は、ワークWにおける反射角が第1設定角度SA1以下となる戻り光FB1の光量、すなわちコア91を伝搬しうる光の光量に応じた値となる。第2の光センサ41により検出される光量は、ワークWにおける反射角が第1設定角度SA1を超え、かつ第2設定角度SA2以下となる戻り光FB2,FB3の光量、すなわちクラッド92と保護層93内を伝搬しうる光の光量に応じた値となる。したがって、コア91を伝搬してレーザ発振器80の内部へ到達しうる戻り光FB1の入射光量と、クラッド92内又は保護層93を伝搬して光ファイバ90の端面又はレーザ発振器80の内部へ到達しうる戻り光FB2,FB3の入射光量とを個別に測定できる。前述の通り、保護層93に入射しうる戻り光FB3は、光ファイバ90の出射端に設けられる光吸収構造体によって吸収される。但し、この戻り光FB3が増えすぎると、光吸収構造体によって吸収しきれなくなってしまう。
【0033】
そして、第1の光センサ38によって検出された光量が、第1の警告閾値Vfa1を超えたとき、表示部72が、制御部71の制御により警告を表示出力させる。また、第2の光センサ41によって検出された光量が、第2の警告閾値Vfa2を超えたときも、表示部72が、制御部71の制御により警告を表示出力させる。さらに、第1の光センサ38によって検出された光量が、第1の停止閾値Vfs1を超えたとき、レーザ発振器80が、制御部71の制御によりレーザ発振を停止する。また、第2の光センサによって検出された光量が、第2の停止閾値Vfs2を超えたときも、レーザ発振器80が、制御部71の制御によりレーザ発振を停止する。例えば、第1の警告閾値Vfa1及び第1の停止閾値Vfs1は、戻り光FB1がコア91を通過して逆方向に入射する箇所、すなわちレーザ発振器80の内部構造、に応じた値に個別に設定されてもよい。これにより、レーザ発振器80の損傷を確実に抑制するとともに、レーザ発振器80がさらに多くの入射光を許容できる状態で警告の出力やレーザ発振の停止が無駄になされるのを防止できる。また、第2の警告閾値Vfa2、及び第2の停止閾値Vfs2は、戻り光FB2,FB3がクラッド92を通過して逆方向に入射する箇所の内部構造や、保護層93及び光吸収構造体の特性に応じた値に個別に設定されてもよい。これにより、光ファイバ90又はレーザ発振器80の損傷を確実に抑制するとともに、光ファイバ90又はレーザ発振器80がさらに多くの入射光を許容できる状態で警告の出力やレーザ発振の停止が無駄になされるのを防止できる。
【0034】
(実施形態2)
実施形態2では、図7に示すように、第1ミラー34と第2ミラー35との間に、第3ミラー42が第1ミラー34及び第2ミラー35と平行に配設されている。第3ミラー42は、第1ミラー反射光RB1の一部を第3ミラー透過光TB3として透過させるとともに、当該第1ミラー反射光RB1の残りを第3ミラー反射光RB3として反射させる。そして、第3ミラー透過光TB3の一部が第2ミラー透過光TB2として第2ミラー35を透過するとともに、第3ミラー透過光TB3の残りが第2ミラー反射光RB2として第2ミラー35で反射する。したがって、第1ミラー34と第2ミラー35と第3ミラー42とで、ワークWから反射して第1の集光レンズ32を通過した反射光を、上記戻り光FB、第1分割光としての第2ミラー透過光TB2、第2分割光としての第2ミラー反射光RB2、及び第3分割光としての第3ミラー反射光RB3に分割する光学系が構成されている。第3ミラー42における第1ミラー反射光RB1の反射率は、特に限定されないが、第3ミラー透過光TB3と第3ミラー反射光RB3とがほぼ均等になるように、50%に設定することが望ましい。また、図8に示すように、第2遮蔽部材39の第2開口部39aの幅が、実施形態1よりも狭くなっている。具体的には、第2開口部39aの径方向の位置及び幅は、第2ミラー反射光RB2のうち、ワークWにおける反射角が、第1設定角度SA1を超え、かつ第3設定角度SA3以下となる光を第2通過光PB2として通過させるように設定される。したがって、本実施形態2では、第2の範囲が、第1設定角度SA1を超え、かつ第3設定角度SA3以下となる範囲となる。第2の範囲は、光ファイバ90のクラッド92を逆方向に伝搬しうる戻り光FB2の範囲と対応する。したがって、第2開口部39aの外周縁の直径D3は、その全体が光ファイバ90のクラッド92を伝搬可能な入射ビームの最大直径と対応する。言うまでもなく、第2開口部39aの内周縁の直径D1は光ファイバ90のコア91を伝搬しうる入射ビームの最大直径と対応するものであり、図3の直径D1と等しい。
【0035】
また、第3ミラー42から第3ミラー反射光RB3の出射方向に離れた箇所には、図9にも示す正方形板状の第3遮蔽部材43が第3ミラー反射光RB3の光軸に垂直な状態で配設されている。第3遮蔽部材43も、アルミニウム合金、銅、鉄、ステンレス等の金属、又は第3ミラー反射光RB3を透過させない性質の樹脂からなる。第3遮蔽部材43には、共通の点を中心とする半円弧状に延びる長孔状の1対の第3窓部としての第3開口部43aが、その開放側を互いに対向させた状態で互いに間隔を空けて貫通形成されている。両第3開口部43aの間隔DE1は、両第3開口部43aによって囲まれた円形の領域を支持するための機械的強度を確保できる範囲で、短く設定することが好ましい。両第3開口部43aの内周縁の直径D3は、第2遮蔽部材39の第2開口部39aの外周縁の直径D3と等しい。第3開口部43aの径方向の位置及び幅は、第3ミラー反射光RB3のうち、ワークWにおける反射角が第3の範囲内にある光を第3通過光PB3として通過させるように設定される。また、第3遮蔽部材43における第3開口部43a非形成領域によって、第3ミラー反射光RB3の残り(すなわち、ワークWにおける反射角が第3の範囲外にある光)が遮蔽される。上記第3の範囲は、具体的には、第3設定角度SA3を超え、かつ第2設定角度SA2以下となる範囲とされる。両第3開口部43aの外周縁の直径D2は、第2開口部39aの外周縁の直径D2と等しい。
【0036】
第3遮蔽部材43から第3ミラー反射光RB3の出射方向に離れた箇所には、第4の集光レンズ44が第3遮蔽部材43と平行に配設されている。第4の集光レンズ44の光軸OA4は、両第3開口部43aの中心(第3ミラー反射光RB3の光軸)と一致している。
【0037】
第4の集光レンズ44から第3ミラー反射光RB3の出射方向に離れた箇所には、第3の光センサ45がその受光面を第4の集光レンズ44に対向させた状態で配設されている。第3の光センサ45の受光面は、第4の集光レンズ44の焦点に位置していることが望ましいが、この限りではない。したがって、第3の光センサ45により検出される光量は、第3通過光PB3の光量、すなわち光ファイバ90の保護層93を通過しうる戻り光FB3の光量となる。
【0038】
また、コントローラ70の制御部71が、第3の光センサ45によって検出された光量が、所定の第3の警告閾値を超えたときにも、表示部72に警告を表示出力させる。また、第3の光センサ45によって検出された光量が、第3の警告閾値よりも大きい所定の第3の停止閾値を超えたときにも、レーザ発振器80に対し、レーザ発振を停止させる制御を行う。
【0039】
その他の構成は実施形態1と同じであるので、同一の構成箇所には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0040】
本実施形態2において、例えば、第2の警告閾値Vfa2、及び第2の停止閾値Vfs2は、戻り光FB2が光ファイバ90のクラッド92を通過して逆方向に入射する箇所の内部構造(レーザ発振器80の内部構造)に応じた値に設定されてもよい。これにより、レーザ発振器80の損傷を確実に抑制するとともに、レーザ発振器80がさらに多くの入射光を許容できる状態で警告の出力やレーザ発振の停止がなされるのを防止できる。また、第3の警告閾値、及び第3の停止閾値は、戻り光FB3が入射する箇所、すなわち保護層93及び光吸収構造体の特性に応じた値に設定されてもよい。これにより、光ファイバ90の損傷を確実に抑制するとともに、光ファイバ90がさらに多くの入射光を許容できる状態で警告の出力やレーザ発振の停止が無駄になされるのを防止できる。
【0041】
(実施形態3)
実施形態3では、図10及び図11に示すように、第1遮蔽部材36が、透光性を有するガラス又は樹脂からなる正方形状の第1板状部材36bと、当該第1板状部材36bの一方の面における中央部を除く領域に形成された不透光性の第1コーティング層36cとで構成されている。第1コーティング層36cは、第2ミラー透過光TB2を透過させない性質を有する金属又は樹脂からなる。そして、第1板状部材36bの第1コーティング層36c非形成領域が、透光性を有する第1窓部36dを構成している。第1窓部36dの領域は、実施形態1の第1開口部36a形成領域に該当する。同様に、第2遮蔽部材39も、透光性を有するガラス又は樹脂からなる正方形状の第2板状部材39bと、当該第2板状部材39bの一方の面における円環状の領域を除く領域に形成された不透光性の第2コーティング層39cとで構成されている。第2コーティング層39cは、第2ミラー反射光RB2を透過させない性質を有する金属又は樹脂からなる。そして、第2板状部材39bの第2コーティング層39c非形成領域が、透光性を有する第2窓部39dを構成している。第2窓部39dの領域は、実施形態1の第2開口部39aの形成領域に該当する。
【0042】
その他の構成は実施形態1と同じであるので、同一の構成箇所には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0043】
なお、上記実施形態2でも、第1遮蔽部材36、第2遮蔽部材39、及び第3遮蔽部材43として、実施形態3と同様に、透光性の板状部材に不透光性のコーティング層を形成したものを用いてもよい。
【0044】
また、上記実施形態1,3では、第1遮蔽部材36及び第2遮蔽部材39を正方形板状としたが、長方形板状、円形板状等、他の形状としてもよい。同様に、実施形態2でも、第3遮蔽部材43を正方形板状以外の形状としてもよい。
【0045】
上記実施形態1では、レーザ加工ヘッド30は、第2ミラー透過光TB2から第1の範囲内の光の光量を検出し、第2ミラー反射光RB2から第2の範囲内の光の光量を検出している。これに限らず、レーザ加工ヘッド30は、第2ミラー透過光TB2から第2の範囲の光の光量を検出し、第2ミラー反射光RB2から第1の範囲の光の光量を検出してもよい。上記実施形態2では、レーザ加工ヘッド30は、第2ミラー透過光TB2から第1の範囲内の光の光量を検出し、第2ミラー反射光RB2から第2の範囲内の光量を検出し、第3ミラー反射光RB3から第3の範囲内の光量を検出している。これに限らず、レーザ加工ヘッド30は、例えば、第2ミラー透過光TB2から第3の範囲内の光の光量を検出し、第2ミラー反射光RB2から第1の範囲内の光量を検出し、第3ミラー反射光RB3から第2の範囲内の光量を検出してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
以上説明したように、本開示は、レーザ加工装置の複数箇所における戻り光の入射光量を個別に取得し、各々の箇所における入射光量の許容値に応じてその危険度を予知又は警告できるようにするという実用性の高い効果が得られることから、きわめて有用で産業上の利用性は高い。
【符号の説明】
【0047】
30 レーザ加工ヘッド
31 コリメートレンズ
32 第1の集光レンズ
34 第1ミラー(光学系)
35 第2ミラー(光学系)
36 第1遮蔽部材
36a 第1開口部(第1窓部)
36d 第1窓部
38 第1の光センサ
39 第2遮蔽部材
39a 第2開口部(第2窓部)
39d 第2窓部
41 第2の光センサ
42 第3ミラー(光学系)
43 第3遮蔽部材
43a 第3開口部(第3窓部)
45 第3の光センサ
70 コントローラ
80 レーザ発振器
90 光ファイバ
91 コア
93 保護層
100 レーザ加工装置
LB レーザ光
FB 戻り光
TB2 第2ミラー透過光(第1分割光)
RB2 第2ミラー反射光(第2分割光)
RB3 第3ミラー反射光(第3分割光)
PB1 第1通過光
PB2 第2通過光
PB3 第3通過光
Vfa1 第1の警告閾値
Vfs1 第1の停止閾値
Vfa2 第2の警告閾値
Vfs2 第2の停止閾値
θ1 最大受光角
θ2 最大入射角
θ3 最大投射角
W ワーク
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11