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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-03
(45)【発行日】2023-08-14
(54)【発明の名称】組織間文書情報共有システム
(51)【国際特許分類】
   G16H 10/60 20180101AFI20230804BHJP
   G06F 16/907 20190101ALI20230804BHJP
   G06Q 50/22 20180101ALI20230804BHJP
【FI】
G16H10/60
G06F16/907
G06Q50/22
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021201298
(22)【出願日】2021-12-12
(65)【公開番号】P2023086628
(43)【公開日】2023-06-22
【審査請求日】2021-12-24
【審判番号】
【審判請求日】2023-01-09
【早期審理対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502351659
【氏名又は名称】株式会社医療情報技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100196760
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 浩司
(72)【発明者】
【氏名】姫野 信吉
【合議体】
【審判長】佐藤 智康
【審判官】渡邊 聡
【審判官】中野 浩昌
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-366656(JP,A)
【文献】特開2002-99561(JP,A)
【文献】特開2015-114896(JP,A)
【文献】特開2010-286881(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F16/907
G06Q50/22
G16H10/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
必ずしも文書カテゴリーの構成、文書カテゴリー内の記述項目が一致しない複数組織の電子カルテ間の文書情報共有において、
前記複数組織間で汎用的な送受信書式を定義し管理する送受信書式定義管理手段、
送信側電子カルテの文書カテゴリーごとの記述項目から情報を抽出して前記送受信書式に代入し送信する送受信書式代入送信手段、
受信した送受信書式の情報を各々対応する受信側電子カルテの文書カテゴリーの記述項目に記録する送受信書式受信記録手段を備え、
前記送受信書式定義管理手段で定義される汎用的な送受信書式は、共有が必要な記述項目を示すタグのリストであり、
前記送受信書式代入送信手段は、前記共有が必要な記述項目を示すタグのリストの各々について、送信側電子カルテで対応する文書カテゴリーの記述項目との対応を定義する送信側マップ定義手段を有し、前記対応する文書カテゴリーの記述項目の内容を、前記送信側マップ定義手段に基づいて、共有が必要な記述項目を示すタグのリストの各々に代入する送信記述項目代入手段を有し
前記送受信書式受信記録手段は、前記共有が必要な記述項目を示すタグのリストの各々について、受信側電子カルテで対応する文書カテゴリーの記述項目との対応を定義する受信側マップ定義手段を有し、前記共有が必要な記述項目を示すタグのリストの各々への代入内容を、前記受信側マップ定義手段に基づいて、対応する受信側電子カルテの文書カテゴリーの記述項目に記録する、受信記述項目記録手段を有し、
前記送受信書式は、記述項目に複数記録の代入を許容する記述項目複数代入手段を有することを特徴とする組織間文書情報共有システム。
【請求項2】
前記記述項目複数代入手段において、各々の記述項目に、当該記述項目が記録されている文書が作成された日時記録を同時に代入する日時付き記述項目複数代入手段を有することを特徴とする請求項1記載の組織間文書情報共有システム。
【請求項3】
前記送受信書式定義管理手段は、記述項目に書式設定を可能とする記述項目書式定義手段を有することを特徴とする請求項1ないし2いずれか記載の組織間文書情報共有システム。
【請求項4】
前記送信記述項目代入手段は、送信側電子カルテから抽出された記述項目の内容を、当該記述項目に定義された書式に変換する送信記述項目書式変換手段を有することを特徴とする請求項1記載の組織間文書情報共有システム。
【請求項5】
前記受信記述項目記録手段は、受信した記述項目の内容を、受信側電子カルテの当該記述項目に定義された書式に変換する受信記述項目書式変換手段を有することを特徴とする請求項1記載の組織間文書情報共有システム。
【請求項6】
前記送受信書式代入送信手段は、代入済みの送受信書式を、(i)直接受信側電子カルテに送信する、(ii)一旦中継サーバーに送信し、前記中継サーバーから受信側電子カルテに送信する、のいずれかの送受信書式送信手段を有することを特徴とする請求項1ないし5いずれか記載の組織間文書情報共有システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の組織間、特に医療機関や介護施設で作成された文書群を、互いに共有するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
医療や介護の現場などでは、医師や看護師、介護士など多数の職種のスタッフが、入院や入所に際しての基本情報文書、医療や介護の計画文書、実行計画文書、実行結果の報告文書、利用者に交付する種々の証明書など等の文書群を電子カルテとして作成してゆく。これらの文書群を介してスタッフ間、異なる職種間の情報の共有が図られてゆく。
患者、利用者が別の医療機関や介護施設を利用する際には、やはり同様の膨大な情報が必要となる。最初から情報を取り直すのは大変な労力の無駄であるし、患者、利用者にとっても、同じことを何回も尋ねられるのは苦痛である。元利用していた医療機関、介護施設の電子カルテ文書群を速やかに電子的に参照することが、特に、救急等で速やかな情報の確認が必要な際に求められている。
【0003】
サーバーの中に蓄積されている文書を他施設のサーバーに送信することは、決して容易なことではなかった。当初は、送信したい文書の内部構造や規格、送信手順、受信手順などを、送信側、受信側のスタッフ間で前もって打ち合わせておいて、その後に文書の送受信を行うものであった。このため、柔軟で機動的な文書の送受信は困難であった。
2000年ころから、ウェブサービスが用いられるようになった。送信側のサーバーに、送信する文書の内部構造や規格、送信手順、受信手順などを記載したWSDL(WebServiceDiscriptionLanguage)と呼ばれる手順文書を公開しておく。受信サーバーは、WSDL文書をまず読み込んで受信のための受け入れプログラム(BrokerProgram)を自動生成する。その後、送信側サーバーに、文書の送信要求を送り、送信されてきた文書を受信し、受信側サーバーに取り込むものである。事前のスタッフ間の打ち合わせが不要となるため、柔軟で機動的な文書の送受信が可能となった。複数のサーバーから天気やニュース、株価などの情報源を同時に表示するなど、現在のホームページ作成などで標準的な手法となっている。
【0004】
高齢化の進展に伴い、地域医療、介護の実現のために複数の医療機関、介護施設などが連携して一人一人の高齢者を総合的に治し支えることが必要となってきた。
実現のためには、それぞれの医療機関、介護施設で作成されている電子カルテなどの情報を互いに利用可能としなければならない。電子カルテは、医師や看護師、介護士の作成する文書など様々な文書カテゴリーからなる。入所時点などで全般的に集めた情報の記載、それに基づいた検査や治療、介入の計画、介入実施後の報告文書など等である。
各々の文書カテゴリーごとに、少なくとも一つの記述すべき情報の項目(以下、記述項目)がある。ID-LINK(NEC社の登録商標)、HumanBridge(富士通社の登録商標)などの製品が用いられることが多い。
いずれの製品も、電子カルテなどの文書交換の際は、提供側で開示する文書カテゴリーごとに、当該文書カテゴリー内の記述項目を、規格化された形式の文書(SSMIX-II)を作成し、当該文書を、前述のウェブサービスで送受信するものである。
この出願に関連する先行技術文献としては次のものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-117142号公報
【文献】特開2002-366656号公報
【文献】特開2002-99561号公報
【文献】特開2015-114896号公報
【文献】特開2010-286881号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】https://jpn.nec.com/medical_healthcare/solution/id-link/index.html
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
異なる医療や介護機関間の電子カルテの単なる閲覧に留まるならば、提供側の電子カルテに前記WSDLをつけて閲覧側に開示すれば、ウェブブラウザで電子カルテの内容を閲覧することができる。
しかしながら、電子カルテの文書カテゴリーや記述項目の配置は医療、介護機関ごとに異なっており、目的とする情報がどこに記録されているかが分かりにくく、記録されている文書に速やかにたどり着くのは、しばしば困難である。
また、発見した記述項目を自施設の電子カルテの取り込もうとすると、手作業でコピー&ペーストを、その都度行わねばならず、必要とされる大量で系統的な情報取得は困難である。
【0008】
非特許文献1に示すSSMIX-IIに関しては、提供側の電子カルテの開示する文書カテゴリーごとに、SSMIX-IIで規定された形式で開示文書を作成することになる。
文書カテゴリーと記述項目の配置は医療、介護機関ごとに異なるため、提供側の電子カルテの開示する文書カテゴリーごとに、開示のためのSSMIX-II文書作成のプログラムを作成する必要がある。
これには文書カテゴリーごとに最低で3人日を越える作業量と数十万円のコストがかかる。
また、受信側の電子カルテの文書カテゴリーと記述項目の配置は、提供側と異なることが多いため、記述項目を自施設の電子カルテに取り込もうとすると、前記ウェブサービスでの開示と同様に、手作業でコピー&ペーストをその都度行わねばならず、必要とされる大量で系統的な情報取得は困難である。
自院の電子カルテに記述項目を自動的に取り込むことも可能ではあるが、提供側の電子カルテごとに文書カテゴリーと記述項目の配置が異なるため、提供側の医療、介護機関の電子カルテごとに、汎用性のない記述項目取り込みプログラムを作成する必要があり、多大なコストを要する。
実際に、大学病院どうしで電子カルテを相互に蓄積しておき、災害時に蓄積されている電子カルテ情報を用いて診療を継続しようとする3億円の予算をかけた試みも佐賀医大でなされてきたが、大学病院の電子カルテ間の互換性がないため、いちいち手作業で蓄積情報を各々の大学で入力する必要があり、結局全く情報の蓄積がなされないまま放置され、会計監査院から不適切な支出の認定をうけて問題となっている。
【0009】
特許文献1では、電子カルテの情報を共有サーバーに蓄積し、各医療機関のWEBブラウザから参照するシステムが提案されている。この方式では、個人情報の塊である各医療機関の電子カルテ情報が共有サーバーに蓄積されることになる。記録容量が巨大化し、高コストな運用が必要であるのみならず、セキュリティが破られて情報流出が起こった時の被害は甚大となる。
【0010】
特許文献2では、DTDで定義したXMLタグを用いて、医療機関間の電子カルテの異なる項目間の対応を決め、情報を共有するシステムが提案されている。この方式は、本願の方式と類似しているが、DTDで定義したXMLタグを、情報交換する医療機関間で、その都度作成する必要がある。既に多種多様な文書カテゴリー、文書書式、項目タグを有する電子カルテが運用されている現状では、情報交換のたびに、前段階としての双方の電子カルテ文書のXMLタグのすり合わせをDTDで行うという多大な作業が必要であり、簡便に情報交換は進まない。
【0011】
特許文献3では、項目間の類似度から、異なる組織間の文書記述項目間の対応関係を類推するシステムが提案されている。しかしながら、電子カルテの項目は、それぞれの医療機関ごとに定義されており、精々数百~千個レベルである。曖昧な類推を行って間違った対応関係を指定する危険を冒すより、直接確認しながら対応関係を指定する方が問題は少ないだろう。
【0012】
特許文献4では、自院内の文書のカテゴリーや書式が法令などの理由で変更されても、一貫した参照が可能となるシステムが提案されている。自院内の新旧文書カテゴリー内の項目の対応関係を指定するものであり、本願のように、文書カテゴリー、カテゴリー内項目が異なる医療機関間の情報共有を目指したものではない。
【0013】
特許文献5では、電子カルテのデータを、意味変換表を用いて中間コードに変換して送信し、受信側では、中間コードを再変換して電子カルテのデータを復元するシステムが提案されている。この方式は、特許文献2と同様な問題がある。さらに、意味変換表を用いて中間コードに変換する作業は、煩雑で、多数の医療機関間の情報共有で汎用性を持つとは考えにくい。
【0014】
本発明はかかる従来の問題点を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、共有が必要な記述項目を示すタグのリストである複数組織間で汎用的な送受信書式を定義し管理する送受信書式定義管理手段を備えることによって、文書カテゴリーと記述項目の配置が異なる医療、介護機関の電子カルテ間であっても、個別に対応することなく汎用的に情報の送受信を可能にすること、受信側の電子カルテの独自の文書カテゴリーと記述項目の配置に対応して、自動的に情報の取り込みを行うことのできる汎用的な組織間文書共有システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記目的を達成するための手段として請求項1記載の組織間文書情報共有システムでは、必ずしも文書カテゴリーの構成、文書カテゴリー内の記述項目が一致しない複数組織の電子カルテ間の文書情報共有において、
前記複数組織間で汎用的な送受信書式を定義し管理する送受信書式定義管理手段、
送信側電子カルテの文書カテゴリーごとの記述項目から情報を抽出して前記送受信書式に代入し送信する送受信書式代入送信手段、
受信した送受信書式の情報を各々対応する受信側電子カルテの文書カテゴリーの記述項目に記録する送受信書式受信記録手段を備え、
前記送受信書式定義管理手段で定義される汎用的な送受信書式は、共有が必要な記述項目を示すタグのリストであり、
前記送受信書式代入送信手段は、前記共有が必要な記述項目を示すタグのリストの各々について、送信側電子カルテで対応する文書カテゴリーの記述項目との対応を定義する送信側マップ定義手段を有し、前記対応する文書カテゴリーの記述項目の内容を、前記送信側マップ定義手段に基づいて、共有が必要な記述項目を示すタグのリストの各々に代入する送信記述項目代入手段を有し
前記送受信書式受信記録手段は、前記共有が必要な記述項目を示すタグのリストの各々について、受信側電子カルテで対応する文書カテゴリーの記述項目との対応を定義する受信側マップ定義手段を有し、前記共有が必要な記述項目を示すタグのリストの各々への代入内容を、前記受信側マップ定義手段に基づいて、対応する受信側電子カルテの文書カテゴリーの記述項目に記録する、受信記述項目記録手段を有し、
前記送受信書式は、記述項目に複数記録の代入を許容する記述項目複数代入手段を有することを特徴とする。
【0019】
請求項2記載の組織間文書情報共有システムでは、請求項1記載の組織間文書情報共有システムにおいて、前記記述項目複数代入手段において、各々の記述項目に、当該記述項目が記録されている文書が作成された日時記録を同時に代入する日時付き記述項目複数代入手段を有することを特徴とする。
【0020】
請求項3記載の組織間文書情報共有システムでは、請求項1ないし2いずれか記載の組織間文書情報共有システムにおいて、前記送受信書式定義管理手段は、記述項目に書式設定を可能とする記述項目書式定義手段を有することを特徴とする。
【0021】
請求項4記載の組織間文書情報共有システムでは、請求項1記載の組織間文書情報共有システムにおいて、前記送信記述項目代入手段は、送信側電子カルテから抽出された記述項目の内容を、当該記述項目に定義された書式に変換する送信記述項目書式変換手段を有することを特徴とする。
【0022】
請求項5記載の組織間文書情報共有システムでは、請求項1記載の組織間文書情報共有システムにおいて、前記受信記述項目記録手段は、受信した記述項目の内容を、受信側電子カルテの当該記述項目に定義された書式に変換する受信記述項目書式変換手段を有することを特徴とする。
【0023】
請求項6記載の組織間文書情報共有システムでは、請求項1ないし5いずれか記載の組織間文書情報共有システムにおいて、前記送受信書式代入送信手段は、代入済みの送受信書式を、(i)直接受信側電子カルテに送信する、(ii)一旦中継サーバーに送信し、前記中継サーバーから受信側電子カルテに送信する、のいずれかの送受信書式送信手段を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
請求項1記載の組織間文書情報共有システムでは、送受信書式定義管理手段を備えるので、複数組織間で汎用的な送受信書式を定義し管理する。
送受信書式代入送信手段を備えるので、送信側電子カルテの文書カテゴリーごとの記述項目から情報を抽出して送受信書式に代入し送信する。
送受信書式受信記録手段を備えるので、受信した送受信書式の情報を各々対応する受信側電子カルテの文書カテゴリーの記述項目に記録する。
送受信書式定義管理手段で定義される汎用的な送受信書式は、共有が必要な記述項目を示すタグのリストである。
【0025】
請求項1記載の組織間文書情報共有システムでは、送信記述項目代入手段を備えるので、共有が必要な記述項目を示すタグのリストの各々について、送信側電子カルテで対応する文書カテゴリーの記述項目との対応を定義する送信側マップ定義手段を有し、前記対応する文書カテゴリーの記述項目の内容を、前記送信側マップ定義手段に基づいて、共有が必要な記述項目を示すタグのリストの各々に代入する。送信側の電子カルテの文書カテゴリー、記述項目の構成を一旦分解し、汎用的な表現に転換できる。
【0026】
請求項1記載の組織間文書情報共有システムでは、受信記述項目記録手段を備えるので、共有が必要な記述項目を示すタグのリストの各々について、受信側電子カルテで対応する文書カテゴリーの記述項目との対応を定義する受信側マップ定義手段を有し、共有が必要な記述項目を示すタグのリストの各々への代入内容を、前記受信側マップ定義手段に基づいて、対応する受信側電子カルテの文書カテゴリーの記述項目に記録する。汎用的な表現から受信側の電子カルテの文書カテゴリー、記述項目に再構成できる。
【0027】
請求項1記載の組織間文書情報共有システムでは、送受信書式において、記述項目に複数記録の代入を許容する記述項目複数代入手段を有する。複数の記述内容を同時に同一記述項目で共有できる。
【0028】
請求項2記載の組織間文書情報共有システムでは、日時付き記述項目複数代入手段を備えるので、各々の記述項目に、当該記述項目が記録されている文書が作成された日時記録を同時に代入する。これにより、記述項目の内容を時系列で代入できる。
【0029】
請求項3記載の組織間文書情報共有システムでは、送受信書式定義管理手段は、記述項目に書式設定を可能とする記述項目書式定義手段を有する。これにより、表現の揺らぎの無い記述項目の内容表現が可能となる。
【0030】
請求項4記載の組織間文書情報共有システムでは、送信記述項目書式変換手段を備えるので、送信側電子カルテから抽出された記述項目の内容を、当該記述項目に定義された書式に変換する。これにより、送信側の電子カルテの書式を汎用的な書式に変換できる。
【0031】
請求項5記載の組織間文書情報共有システムでは、受信記述項目書式変換手段を備えるので、受信した記述項目の内容を、受信側電子カルテの当該記述項目に定義された書式に変換する。これにより、受信側の電子カルテの独自の書式に変換できる。
【0032】
請求項6記載の組織間文書情報共有システムでは、送受信書式代入送信手段は、代入済みの送受信書式を、(i)直接受信側電子カルテに送信する、(ii)一旦中継サーバーに送信し、前記中継サーバーから受信側電子カルテに送信する、のいずれかの送受信書式送信手段を有する。これにより、費用や目的により、送受信の方式を選択できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の組織間文書情報共有システムの概要図である。
図2】送受信書式定義管理手段における記述項目のタグの設定様式の例を示す。
図3】送信側医療介護機関の電子カルテ内の文書カテゴリー、記述項目から、送信側マップ定義手段で定義された送信側マップに基づき、送受信書式に必要な記述項目を抽出し代入する送受信書式代入送信手段の概要図である。
図4】受信側医療介護機関の電子カルテ内の文書カテゴリー、記述項目へ、受信側マップ定義手段で定義された受信側マップに基づき、送受信書式から必要な記述項目を抽出し記録する送受信書式受信記録手段の概要図である。
図5】日時付き記述項目複数代入手段を用いて、送受信書式に代入された複数の日時付き記述項目の内容を、前記受信側マップに基づき、受信側医療介護機関の電子カルテの該当する文書カテゴリー(図では「検温板」)に、複数の日時付き文書を作成し、それぞれに記述項目の内容を記録する説明図である。
図6】送信側医療介護機関の電子カルテの記述項目の書式を、送受信書式で設定された書式に変換して代入し、さらに当該記述項目を受信側医療介護機関の電子カルテの書式に変換して記録する説明図である。
図7】送信側電子カルテから作成された送受信書式を受信側電子カルテに送信する方式を2例説明している。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は、本発明の組織間文書情報共有システムの概要図である。
送信側医療介護機関の電子カルテサーバーには、医師初診記録などの種々の文書カテゴリーがある。それぞれの文書カテゴリーごとに通常は複数の記述項目がある。
日時ごとに,当該文書カテゴリーに前記記述項目を記録した新しい文書が新規作成され、当該文書には作成日時が記録される。
送受信書式定義管理手段で定義された送受信書式の記述項目に、送信側電子カルテから対応する文書カテゴリーの記述項目の内容が抽出されて代入され、その後送信される(送受信書式代入送信手段)。
前記代入された送受信書式を受信した受信側医療介護機関の電子カルテは、送受信書式内の記述項目の各々について、対応する自電子カルテの文書カテゴリー、記述項目に内容を記録する(送受信書式受信記録手段)。
【0035】
従来は、送受信する文書カテゴリー、当該カテゴリー内の記述項目を固定しSSMIX-IIなどの書式に変換していた。
これでは、医療介護機関ごとに異なる電子カルテの文書カテゴリーや記述項目の配置に柔軟に対応できない。本発明の送受信書式では、文書カテゴリーを用いず、記述項目に対応するタグのリストのみで構成されている。記述項目名であるタグ名に重複がない、ユニークであることは当然である。
【0036】
ここで、送受信書式であるタグのリストが医療機関の組合せごとに変化してしまうと、前記送受信書式代入送信手段、前記送受信書式受信記録手段のそれぞれを、医療機関の組合せごとに作成しなければならなくなる(前記「特許文献2」の問題点)。
この煩雑な作業を無くすため、本願の送受信書式定義管理手段では、多種多様な電子カルテの項目群に対応するタグのリストを汎用的な送受信書式として定義するだけでなく、医療機関による恣意的な変更を許さないように管理する。
管理は各種学会などの全国組織が権限を持って統一性を確保するのが望ましい。さらには、国際的な組織による、多言語対応のタグリスト管理が、より望ましいことは言うまでもない。
【0037】
本願の送受信書式定義管理手段によって統一されたタグのリストがあれば、送信側の医療機関は、受信側の医療機関の文書カテゴリーや項目構成を気にすることなく、単一の送受信書式代入送信手段を用意すればよい。
受信側の医療機関は、送信側の医療機関の文書カテゴリーや項目構成を気にすることなく、単一の送受信書式受信記録手段を用意すればよい。
前記統一されたタグのリストは、診療科などにより多数のタグのリストとなるが、必要なタグのみ利用して送受信を行えばよい。
これにより、電子カルテ毎の文書カテゴリーの構成の違いに制約されず、記述項目内容の送受信が可能となる。
【0038】
受信側の医療介護機関は、使い慣れた電子カルテの文書カテゴリー、記述項目の構成で受信内容を閲覧し、また必要に応じて自院の電子カルテに、手作業によるコピー&ペースト作業を行うことなく記録することが可能となる。
なお、後述の記述項目複数代入手段のように、記述項目の内容は単独とは限らず、図1送受信書式の「病名:」、「所見:」などのように、複数の内容を並列して代入しても良い(記述項目複数代入手段)。
【0039】
図2は送受信書式定義管理手段における記述項目のタグの設定様式の例を示す。
(a)は、XMLによる設定で、<記述項目名>と</記述項目名>の間に、当該記述項目の内容を記述する。
(b)はJSON形式で、記述項目名に続いて「:」をつけ、その後に記述項目の内容を記述するものである。
図1の送受信書式で「病名」や「所見」などのように、複数の内容を記述項目に代入しても良い(記述項目複数代入手段)。
複数内容間の区切り記号(delimiter)は、任意に設定して良い。
(c)や(d)は、俗に電文形式やCSV(Comma Separated Values)と呼ばれる書式で、記述項目名に続いて、「/」や「,」で内容を区切り(内容間delimiter)、記述項目ごとの区切り(項目間delimiter)にはCR/LFなどを用いるものである。
送受信書式の記述項目のタグリストは、情報共有に不必要な記述項目はスキップしても良い。
必要な記述項目のみ代入し、必要な記述項目のみ記録すればよい。
多数の診療科ごとに必要とされる記述項目は多彩である。
それらの記述項目は、記述項目のタグがユニークで重複が無ければ、既存のリストを使用中の医療介護機関に影響を与えることなく、任意のタグを任意の数追加できる。送受信の際は、内容が代入されていない記述項目はスキップして良い。これにより、多数の診療科の多彩な記述項目内容に対しても、制限を加えることなく柔軟に対応できる。また、情報の共有が必要な記述項目のみ(例えば、病名、医師記事、検査結果など)について代入することで、軽快な情報の共有が可能となる。
【0040】
図3は、送信側医療介護機関の電子カルテ内の文書カテゴリー、記述項目から、送信側マップ定義手段で定義された送信側マップに基づき、送受信書式に必要な記述項目を抽出し代入する送受信書式代入送信手段の概要図である。
送信側マップでは、送受信書式に代入する送信側電子カルテの文書カテゴリーと当該文書カテゴリー内に記録された記述項目のペアと、対応する送受信書式の記述項目の対応一覧を示す。
この送信側マップに基づき、送信側電子カルテから、各々の文書カテゴリーの最新文書内から指定された記述項目を抽出し、指定された送受信書式の記述項目に代入する。
通常電子カルテには「体重」などの記述項目が、看護記録やリハビリ記録などに複数散在して記録されている。
必ずしも各々で体重測定しているわけではなく、例えば看護師が測定し看護記録に記録した内容を、別の職種の記録に転記している場合も多い。
このような場合は、最新の記録である転記元の内容のみを抽出し、送受信書式に代入すればよい。
【0041】
図4は。受信側医療介護機関の電子カルテ内の文書カテゴリー、記述項目へ、受信側マップ定義手段で定義された受信側マップに基づき、送受信書式から必要な記述項目を抽出し記録する送受信書式受信記録手段の概要図である。
受信側マップでは、送受信書式の記述項目の各々と、それぞれ対応する送受信書式から内容を抽出し記録する、受信側電子カルテの文書カテゴリーと当該文書カテゴリー内に記録すべき記述項目のペアとの対応一覧を示す。この受信側マップに基づき、送受信書式の記述項目から内容を抽出し、受信側電子カルテへ、各々の文書カテゴリーの記述項目に送受信書式の記述項目の内容を記録する。
通常電子カルテには「体重」などの記述項目が、看護記録やリハビリ記録などに複数散在して記録されている。必ずしも各々で体重測定しているわけではなく、例えば看護師が測定し看護記録に記録した内容を、別の職種の記録に転記している場合も多い。
このような場合は、最新の記録である送受信書式の記述項目の内容を、受信側マップに基づき、受信側電子カルテで指定された文書カテゴリーの記述項目群に、それぞれ記録すればよい。
【0042】
図5は、日時付き記述項目複数代入手段を用いて、送受信書式に代入された複数の日時付き記述項目の内容を(日時付き記述項目複数代入手段)、前記受信側マップに基づき、受信側医療介護機関の電子カルテの該当する文書カテゴリー(図5では「検温板」)に、複数の日時付き文書を作成し、それぞれに記述項目の内容(図5では、「BT:」、「HR:」)を記録(日時付き記述項目複数記録手段)する説明図である。
医療介護機関間の情報共有では、時系列での文書情報の共有が必要となることも多い。
送信側電子カルテの文書カテゴリー(図5では「看護プログレスノート」)では、時系列で文書が作成され、当該文書の作成日時、当該時点での記述項目(図5では、「体温」、「心拍数」)の内容が記録されている。送受信書式では、前記時系列文書の記述項目の内容を、当該文書の作成日時付きで複数代入している(日時付き記述項目複数代入手段)。
受信側電子カルテでは、該当する文書カテゴリー(図5では「検温板」)に、複数の作成日時付き文書を作成し、それぞれに記述項目の内容(図5では、「BT:」、「HR:」)を記録(日時付き記述項目複数記録手段)する。
これにより、送信側電子カルテの時系列文書群を、受信側の電子カルテで再現できる。図5では、説明の便宜のため受信側電子カルテの記録先文書カテゴリーは「検温板」単一としているが、記述項目の内容が、受信側の電子カルテで複数の文書カテゴリーに分散される際は、必要に応じて複数の文書カテゴリーを時系列で作成、記録しても良い。
【0043】
図6は、送信側医療介護機関の電子カルテの記述項目の書式を、送受信書式で定義された(記述項目書式定義手段)書式に変換して代入し、さらに当該記述項目を受信側医療介護機関の電子カルテの書式に変換して記録する説明図である。
電子カルテの種類によって、処理の便宜のため、あるいは記述の揺らぎを防ぐため、記述項目ごとに厳密な書式を定めている場合も多い。
前記佐賀医大の失敗事例も、この点への配慮を欠いたことが原因である。
送受信書式では、送受信書式定義管理手段で記述項目の書式が定義されている。
送信側の電子カルテの記述項目を、当該記述項目書式に変換して送受信書式に代入する(送信記述項目書式変換手段)。
受信側の電子カルテでは送受信書式の記述項目を、自院の記述項目の書式に変換して記録する(受信記述項目書式変換手段)。
これにより、電子カルテ間の記述項目の書式の相違を意識せずに情報の共有が可能となる。
【0044】
図7は、送信側電子カルテから作成された送受信書式を受信側電子カルテに送信する方式を2例説明している。
(a)では、送信側医療介護機関の電子カルテで送受信書式を作成し、受信側医療介護機関の電子カルテに対して、ウェブサービスなどの方式を用いて、1:1で送受信するものである。単純明快であり、コストも最小限で済む。
これに対して(b)では、作成された送受信書式を一旦中継サーバーに送信し、この中継サーバーから複数の医療介護機関に配信するものである。
前記佐賀医大の例のような目的には、(a)の1:1では管理が困難であるため、(b)方式が適しているだろう。なお、送受信方式として2例を挙げたが、これらに限定されるものではなく、P2Pなどの方式もあり、適宜選択して良い。
【0045】
以上、医療介護機関の情報共有の実施例を説明したが、本発明の具体的な構成は前記実施例に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明に含まれる。
例えば、医療介護機関以外にも、組織間で文書情報の共有を行う際も本発明に含まれる。
共有された文書情報は、受信側医療介護機関の電子カルテに送信元を記述した上で永久記録しても良いが、一次的保存、閲覧のみでも、使い慣れた自院の電子カルテの文書カテゴリー、記述項目の構成で活用できるので有用である。
具合的には触れなかったが、患者の同一性の確認や情報漏洩に対するセキュリティが不可欠であることは言うまでもない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7