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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-03
(45)【発行日】2023-08-14
(54)【発明の名称】加熱調理器
(51)【国際特許分類】
   A47J 37/06 20060101AFI20230804BHJP
   F24C 15/20 20060101ALI20230804BHJP
【FI】
A47J37/06 371
F24C15/20 A
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019119961
(22)【出願日】2019-06-27
(65)【公開番号】P2021003493
(43)【公開日】2021-01-14
【審査請求日】2021-07-15
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(72)【発明者】
【氏名】志智 一義
(72)【発明者】
【氏名】小牟田 孝博
(72)【発明者】
【氏名】吉川 健太郎
【審査官】川口 聖司
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-093535(JP,A)
【文献】特開2010-115473(JP,A)
【文献】特開平03-061457(JP,A)
【文献】特開昭63-225494(JP,A)
【文献】実開平04-001305(JP,U)
【文献】特開平11-342082(JP,A)
【文献】特開2004-290241(JP,A)
【文献】特開2007-204841(JP,A)
【文献】特開2001-275847(JP,A)
【文献】特開2011-250953(JP,A)
【文献】特開2001-037646(JP,A)
【文献】特開2014-113189(JP,A)
【文献】特開昭64-083222(JP,A)
【文献】特開平06-018044(JP,A)
【文献】特開平11-128091(JP,A)
【文献】米国特許第04238669(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 37/00-37/07
A47J 27/00-27/64
F24C 15/16-15/36
H05B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリル庫を有する加熱調理器であって、
グリル庫が、
食材が載置されるグリル皿と、
前記グリル皿が収容されて加熱される加熱空間を備える内側ケースと、
前記内側ケースを収納する外側ケースと、
前記内側ケースと前記外側ケースとの間の空間に配置された第1のヒータとを含み、
前記内側ケースは、前記加熱空間と前記第1のヒータとの間に配置された底板部と前記底板部から上方に立設し、前記底板部と一部品として一体化された壁部とを含み、
前記底板部と前記グリル皿の底面との間には隙間を有し、
前記第1のヒータの出力波長の範囲において、前記加熱空間と前記第1のヒータとの間に位置する前記内側ケースの部分の両面が、前記第1のヒータを挟んで反対側の前記外側ケースの部分に比べて高い放射率を備える、加熱調理器。
【請求項2】
前記第1のヒータが、波長範囲が3.0~15.07μmの赤外線を放出する赤外線ヒータである、請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項3】
前記第1のヒータが、3.0~15.07μmの波長の赤外線を放出するとき、前記加熱空間と前記第1のヒータとの間の前記内側ケースの部分の放射率が、85%以上である、請求項2に記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記加熱空間と前記第1のヒータとの間の前記内側ケースの部分における加熱空間側の表面および前記第1のヒータ側の表面が、黒色を備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の加熱調理器。
【請求項5】
前記加熱空間と前記第1のヒータとの間の前記内側ケースの部分が、金属部材を黒色ガラス層によって覆うことによって形成されたホーロー部材である、請求項4に記載の加熱調理器。
【請求項6】
前記加熱空間の天井近傍に設けられた第2のヒータをさらに有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の加熱調理器。
【請求項7】
前記内側ケースが、前側に前記加熱空間に連通する食材出し入れ口を備え、
前記内側ケースの底板部が、前記加熱空間の前後方向に延在する複数の第1の突条部を備える、請求項1から6のいずれか一項に記載の加熱調理器。
【請求項8】
前記内側ケースの底板部が、前記加熱空間の左右方向に延在して前記複数の第1の突条部に交差する複数の第2の突条部を備える、請求項7に記載の加熱調理器。
【請求項9】
前記第1の突条部の幅が、前記第2の突条部の幅に比べて小さい、請求項8に記載の加熱調理器。
【請求項10】
前記第1の突条部の数が、前記第2の突条部の数に比べて多い、請求項8または9に記載の加熱調理器。
【請求項11】
前記第1の突条部の高さが、前記第2の突条部の高さに比べて大きい、請求項8から10のいずれか一項に記載の加熱調理器。
【請求項12】
前記加熱空間の前後方向の中央に近い第2の突条部の幅が、前記中央から遠い第2の突条部の幅に比べて大きい、請求項8から11のいずれか一項に記載の加熱調理器。
【請求項13】
前記内側ケースが、前記底板部から突出し、前記加熱空間の外部に向かって引き出された前記グリル皿と接触するストッパー部を備える、請求項1から12のいずれか一項に記載の加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食材を収容して加熱調理を行うグリル庫を備える加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に開示されている加熱調理器は、魚などの食材を収容して加熱調理する加熱空間を備えるグリル庫を有する。このグリル庫には、食材が載置されたグリル皿が収容される。また、グリル庫の底板部がガラス板で構成されている。そのガラス板の下方にグリル皿を誘導加熱する加熱コイルが配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-113189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の加熱調理器のグリル庫の場合、加熱空間の底面がガラス板であって、加熱コイルが加熱空間の外部に配置されているので、加熱空間内の清掃がやりやすい。しかしながら、発明者らの検討の結果、加熱空間の底面の材料によっては、熱効率が低下することが分かった。
【0005】
そこで、本発明は、加熱空間内を簡単に清掃することができ、且つ、熱効率の低下を抑制できる加熱調理器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、
グリル庫を有する加熱調理器であって、
グリル庫が、
食材が収容されて加熱される加熱空間を備える内側ケースと、
前記内側ケースを収納する外側ケースと、
前記内側ケースと前記外側ケースとの間の空間に配置された第1のヒータとを含み、
前記第1のヒータの出力波長の範囲において、前記加熱空間と前記第1のヒータとの間に位置する前記内側ケースの部分が、前記第1のヒータを挟んで反対側の前記外側ケースの部分に比べて高い放射率を備える、加熱調理器が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、加熱空間内を簡単に清掃することができ、且つ、熱効率の低下を抑制できる加熱調理器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施の形態に係る加熱調理器の斜視図
図2】トッププレートを取り除いた状態の加熱調理器の斜視図
図3】グリル庫の筺体への搭載状態を示す加熱調理器の斜視図
図4】グリル扉が閉じた状態のグリル庫の斜視図
図5】グリル扉が開いた状態のグリル庫の斜視図
図6】グリル庫の内部を示す加熱調理器の断面図
図7】グリル扉を省略した加熱調理器の斜視図
図8】グリル庫の本体部の分解斜視図
図9】内側ケースの底板部がホーロー加工されている場合(実施例1)とホーロー加工がされていない場合(比較例1)それぞれにおける内側ケース底面温度とグリル皿温度の変化を示す図
図10A】金属板に黒色塗装を行った場合(実施例2)における、赤外線の波長と放射率との関係を示す図
図10B】金属板に黒色塗装を行っていない場合(比較例2)における、赤外線の波長と放射率との関係を示す図
図11】内側ケースの底板部の上面図
図12】グリル扉の後面を示す斜視図
図13】グリル扉と本体部の前側パネルとの接触を示す図6の部分拡大図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一態様は、グリル庫を有する加熱調理器であって、グリル庫が、食材が収容されて加熱される加熱空間を備える内側ケースと、前記内側ケースを収納する外側ケースと、前記内側ケースと前記外側ケースとの間の空間に配置された第1のヒータとを含み、前記第1のヒータの出力波長の範囲において、前記加熱空間と前記第1のヒータとの間に位置する前記内側ケースの部分が、前記第1のヒータを挟んで反対側の前記外側ケースの部分に比べて高い放射率を備える。
【0010】
この態様によれば、加熱空間内を簡単に清掃することができ、且つ、熱効率の低下を抑制できる加熱調理器を提供することができる。
【0011】
前記第1のヒータが、波長範囲が3.0~15.07μmの赤外線を放出する赤外線ヒータであってもよい。
【0012】
前記加熱空間と前記第1のヒータとの間の前記内側ケースの部分の放射率が、90%以上であるのが好ましい。
【0013】
前記加熱空間と前記第1のヒータとの間の前記内側ケースの部分における加熱空間側の表面および第1のヒータ側の表面が、黒色を備えてもよい。
【0014】
前記加熱空間と前記第1のヒータとの間の前記内側ケースの部分が、金属部材を黒色ガラス層によって覆うことによって形成されたホーロー部材であってもよい。
【0015】
前記加熱空間と前記第1のヒータとの間の前記内側ケースの部分が、前記内側ケースの底板部であってもよい。
【0016】
前記加熱調理器は、前記加熱空間の天井近傍に設けられた第2のヒータをさらに有してもよい。
【0017】
前記内側ケースの底板部と前記底板部から立設する壁部とが、一部品として一体化されてもよい。
【0018】
前記内側ケースが、前側に前記加熱空間に連通する食材出し入れ口を備えてもよく、その場合、前記内側ケースの底板部が、前記加熱空間の前後方向に延在する複数の第1の突条部を備えてもよい。複数の第1の突条部により、内側ケースの底板部の熱変形が抑制される。
【0019】
前記内側ケースの底板部が、前記加熱空間の左右方向に延在して前記複数の第1の突条部に交差する複数の第2の突条部を備えてもよい。複数の第2の突条部により、内側ケースの底板部の熱変形がさらに抑制される。
【0020】
前記第1の突条部の幅が、前記第2の突条部の幅に比べて小さい方が好ましい。内側ケースの底板部の清掃性が向上する。
【0021】
前記第1の突条部の数が、前記第2の突条部の数に比べて多い方が好ましい。内側ケースの底板部の清掃性が向上する。
【0022】
前記第1の突条部の高さが、前記第2の突条部の高さに比べて大きい方が好ましい。内側ケースの底板部の清掃性が向上する。
【0023】
前記加熱空間の前後方向の中央に近い第2の突条部の幅が、前記中央から遠い第2の突条部の幅に比べて大きい方が好ましい。内側ケースの底板部の中央部の熱変形がさらに抑制される。
【0024】
前記加熱調理器が、食材が載置されて前記加熱空間に収容されるグリル皿をさらに有してもよく、その場合、前記内側ケースが、前記底板部から突出し、前記加熱空間の外部に向かって引き出された前記グリル皿と接触するストッパー部を備えてもよい。グリル庫からのグリル皿の脱落を抑制することができる。
【0025】
以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0026】
なお、発明者(ら)は、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0027】
以下に、本発明の一実施の形態に係る加熱調理器について図1図13を参照しながら説明する。
【0028】
図1は、本発明の一実施の形態に係る加熱調理器の斜視図である。図2は、トッププレートを取り除いた状態の加熱調理器の斜視図である。なお、図に示すX-Y-Z座標系は、発明の理解を容易にするためのものであって、発明を限定するものではない。X-Y-Z座標系において、X軸方向は加熱調理器の左右方向であって、Y軸方向は前後方向であって、Z軸方向は高さ方向である。
【0029】
図1および図2に示すように、本実施の形態に係る加熱調理器10は、いわゆる誘導加熱調理器であって、筺体12と、筺体12の上部に取り付けられたトッププレート14と、トッププレート14の下方に配置された複数の誘導加熱コイル16とを有する。
【0030】
加熱調理器10の筺体12は、例えば金属材料から作製され、直方体形状を備える。
【0031】
トッププレート14は、磁束が通過可能なガラス板を含んでいる。トッププレート14は、筺体12の上部開口を閉じるように、筺体12の上部に取り付けられる。トッププレート14には、誘導加熱コイル16によって誘導加熱される鍋などの調理容器が載置される。
【0032】
誘導加熱コイル16は、その上方のトッププレート14におけるガラス板の部分に載置された調理容器を誘導加熱する。誘導加熱コイル16は、筺体12内の上部、すなわち、トッププレート114の下面近傍に配置されている。誘導加熱コイル16は、その前方に配置された操作ユニット18を介して、ユーザに操作される。
【0033】
本実施の形態の場合、加熱調理器10はまた、グリル庫を有する。
【0034】
図3は、グリル庫の筺体への搭載状態を示す加熱調理器の斜視図である。また、図4は、グリル扉が閉じた状態のグリル庫の斜視図である。さらに、図5は、グリル扉が開いた状態のグリル庫の斜視図である。そして、図6は、グリル庫の内部を示す加熱調理器の断面図である。
【0035】
図3は、誘導加熱コイル16、操作ユニット18、およびこれらに関連する構成要素を取り除いた状態の筺体12を示している。図3に示すように、グリル庫20は、筺体12の左側空間12aに搭載されている。具体的には、筺体12の内部空間は、左側空間12aと右側空間12bとに、隔壁12cによって分割されている。
【0036】
図4および図5に示すように、グリル庫20は略直方体形状のユニットである。グリル庫20は、魚などの食材を収容し、その収容した食材をグリル調理(加熱調理)する本体部22と、本体部22を閉じるグリル扉24と、本体部22内を排気する排気ダクト26とを備える。
【0037】
具体的には、図5に示すように、グリル庫20の本体部22は、その前面を構成する前側パネル28を備える。その前側パネル28に、加熱調理器10の前方に向かって開いた(Y軸方向に開口する)食材出し入れ口28aが形成されている。なお、グリル扉24を省略した加熱調理器10の斜視図である図7に示すように、本体部22の前側パネル28は、筺体12の前面の一部を構成している。また、図6に示すように、本体部22は、食材が収容されて加熱される加熱空間S1を備える。
【0038】
なお、本実施の形態の場合、グリル庫20は、食材出し入れ口28aを介して加熱空間22aに対して出し入れ可能なグリル皿30を備える。食材は、グリル皿30に載置された状態でグリル庫20の本体部22の加熱空間S1に収容される。グリル皿30の前端は、詳細は後述するが、グリル扉24に着脱可能に接続されている。また、グリル皿30は、その後部に、左右方向(X軸方向)に間隔をあけて設けられた2つの脚部30aを備える。
【0039】
本実施の形態の場合、図6に示すようにグリル庫20の本体部22(厳密には前側パネル28を除く部分)は、二重構造であって、内側ケース32と、内側ケース32を収納する外側ケース34とから構成されている。内側ケース32と外側ケース34は、略直方体形状であって、前端が開いている。
【0040】
図8は、グリル庫の本体部の分解斜視図である。
【0041】
図8に示すように、グリル庫20の本体部22における内側ケース32は、底板部32aと、底板部32aからそれぞれ立設する右側壁部32b、左側壁部32c、および背板部32dと、底板部32aに対して間隔をあけて対向して右側壁部32b、左側壁部32c、および背板部32dに支持される天板部32eとを備える。本実施の形態の場合、底板部32a、右側壁部32b、および左側壁部32cは、一部品として一体化されている。内側ケース32の内部空間が、グリル庫20の本体部22の加熱空間S1として機能する。
【0042】
グリル庫20の本体部22における外側ケース34は、底板部34aと、底板部34aからそれぞれ立設する右側壁部34b、左側壁部34c、および背壁部34dと、底板部34aに対して間隔をあけて対向して右側壁部34b、左側壁部34c、および背壁部34dに支持される天板部34eとを備える。本実施の形態の場合、底板部34a,右側壁部34b、および左側壁部34cは、一部品として一体化されている。外側ケース34の内部空間に、内側ケース32が収納されている。
【0043】
本実施の形態の場合、図6に示すように、グリル庫20の本体部22は、加熱空間S1に収容された食材(グリル皿30上の食材)を加熱調理するための第1および第2のヒータ36、38を備える。
【0044】
本実施の形態の場合、第1および第2のヒータ36、38は、図8に示すように、波長範囲が3.0~15.07μmの赤外線を放出する赤外線ヒータである。
【0045】
図6に示すように、第1のヒータ36は、内側ケース32の底板部32aと外側ケース34の底板部34aとの間の空間S2内に配置されている。第2のヒータ38は、加熱空間S1の天井近傍、すなわち内側ケース32の天板部32eの下面に沿って配置されている。第1のヒータ36は、外側ケース34の右側壁部34b、左側壁部34cそれぞれに取り付けられたカンチレバー状の支持部材40により、内側ケース32の底板部32aと外側ケース34の底板部34aから離れた状態で支持されている。同様に、第2のヒータ38は、内側ケース32の右側壁部32b、左側壁部34cそれぞれに取り付けられたカンチレバー状の支持部材42により、天板部32eから離れた状態で支持されている。これにより、第1のヒータ36と第2のヒータ38との間に食材が載置されたグリル皿30が配置され、これらのヒータ36、38によって食材が上および下から加熱される。
【0046】
本実施の形態の場合、第2のヒータ38は、内側ケース32の内部、すなわち加熱空間S1に配置されている。そのため、第2のヒータ38は、その下方に位置するグリル皿30に載置された食材を直接的に加熱する。一方、第1のヒータ36は、内側ケース32の外側に配置されている。そのため、第1のヒータ36は、内側ケース32を介して、その内側ケース32内(すなわち加熱空間S1)に配置されたグリル皿30上の食材を間接的に加熱する。
【0047】
内側ケース32の外側に配置された第1のヒータ36によってその内側ケース32内の加熱空間S1に収容された食材を効率よく加熱するために、加熱空間S1と第1のヒータ36との間に位置する内側ケース32の底板部32aは、第1のヒータ36を挟んで反対側の外側ケース34の底板部34aに比べて、高い放射率を備える。すなわち、キルヒホッフの法則によれば、内側ケース32の底板部32aは、外側ケース34の底板部34aに比べて、高い放射率と同程度の高い吸収率を備え、その一方で、低い反射率を備える。
【0048】
具体的に説明すると、第1のヒータ36が加熱空間S1内の食材を効率よく加熱するためには、第1のヒータ36から放出された赤外線が、外側ケース34の底板部34aでは反射され、内側ケース32の底板部32aでは吸収される必要がある。そのために、内側ケース32の底板部32aは、外側ケース34の底板部34aに比べて高い放射率を備える。
【0049】
内側ケース32の底板部32aが外側ケース34の底板部34aに比べて高い放射率を備えるために、本実施の形態の場合、内側ケース32の底板部32aが、ホーロー加工された部材(ホーロー部材)である。一方、外側ケース34の底板部34aは、ホーロー加工されていない部材である。
【0050】
具体的には、本実施の形態の場合、内側ケース32および外側ケース34それぞれの構成要素および前側パネル28は、薄い金属板を成形加工(プレス加工や曲げ加工など)することによって作製されている。それらにおいて、内側ケース32の底板部32aは、成形加工後に表面全体に黒色ガラスの層が形成されている。なお、本実施の形態の場合、内側ケース32の底板部32a、右側壁部32b、および左側壁部32cは一体化された一部品であって、その一部品に背板部32dが溶接されている。その底板部32a、右側壁部32b、左側壁部32c、および背板部32dが一体化されてなる部品が、液状の黒色ガラス(釉薬)に漬けた後、焼成処理される。
【0051】
ホーロー加工されることにより、内側ケース32の底板部32aは、第1のヒータ36側の表面と加熱空間S1側の表面に、黒色層(黒色ガラス層)を備える。第1のヒータ36から放出された赤外線は、まず第1のヒータ36側の黒色層に吸収される。次に、赤外線の吸収によって温度上昇した第1のヒータ36側の黒色層から金属板を介して加熱空間S1側の黒色層に熱が移動する。そして、温度上昇した加熱空間S1側の黒色層から赤外線が加熱空間S1内に放射される。その赤外線により、加熱空間S1内に収容された食材が加熱される。
【0052】
図9は、内側ケースの底板部がホーロー加工されている場合(実施例1)とホーロー加工がされていない場合(比較例1)それぞれにおける内側ケース底面温度とグリル皿温度の変化を示している。図9において、実線および破線は、グリル皿30の中央の温度の変化を示している。一点鎖線および二点鎖線は、内側ケース32の底板部32aの加熱空間S1側の表面温度の変化を示している。
【0053】
図9に示すように、内側ケース32の底板部32aがホーロー加工されている場合(実施例1)、ホーロー加工されていない場合(比較例1)に比べて、グリル皿30の温度が高く、底板部32aの表面温度が低い。
【0054】
ホーロー加工された場合(実施例1)、内側ケース32の底板部32aが、相対的に高い吸収率で第1のヒータ36からの赤外線を吸収しつつ、相対的に高い放射率で加熱空間S1に赤外線を放射する。そのため、加熱空間S1に収容されたグリル皿30の温度が相対的に高く、その一方で底板部32aの温度が相対的に低い。
【0055】
ホーロー加工されていない場合(比較例1)、内側ケース32の底板部32aが、相対的に低い吸収率で第1のヒータ36からの赤外線を吸収しつつ、相対的に低い放射率で加熱空間S1に赤外線を放射する。すなわち、ホーロー加工がされていない場合、底板部32aは、相対的に高い反射率で第1のヒータ36からの赤外線を反射する。また、放射率が相対的に低いために赤外線の放射エネルギーに変換されない熱エネルギーが底板部32aに蓄えられ、その結果として、底板部32aの温度が相対的に高い。
【0056】
このようなホーロー加工に代わって、内側ケース32の底板部32aの放射率を高めるために、黒色塗装を行ってもよい。または、内側ケース32の底板部32aの材料を金属板とし、金属板に酸化被膜を形成することで、底板部32aを黒色にしてもよい。または、内側ケース32の底板部32aが、黒色ガラスにより形成されてもよい。黒色ガラスは、たとえば溶融したガラス材料に、酸化鉄を混ぜることにより形成されてもよい。
【0057】
図10Aは、金属板に黒色塗装を行った場合(実施例2)における、赤外線の波長と放射率との関係を示している。図10Bは、金属板に黒色塗装を行っていない場合(比較例2)における、赤外線の波長と放射率との関係を示している。なお、ここでは、アルミメッキ鋼板に黒色塗装を行っている。
【0058】
図10Aおよび図10Bに示すように、黒色塗装により、放射率が上昇することがわかる。例えば、第1および第2のヒータ36、38の出力波長の波長範囲3.0~15.07μmでは、放射率は90%以上である。
【0059】
このように、内側ケース32の底板部32aはホーロー加工されるまたは黒色塗装される。または底板部32aは黒色ガラスである。すなわち第1のヒータ36側の表面と加熱空間S1側の表面が黒色を備える。これにより、底板部32aがガラス板で構成されている場合と実質的に同等に、第1の加熱ヒータ36は、加熱空間S1内の食材をその外部から加熱することができる。また、底板部32aの基材を金属板とする場合は、底板部32aをガラス板で構成する場合に比べて、グリル庫20、具体的には内側ケース32を容易に作製することができる。
【0060】
なお、ホーロー加工と黒色塗装を比較した場合、耐久性や清掃のし易さ(ふき取り易さ)を考慮すると、前者の方が好ましい。
【0061】
また、内側ケース32の底板部32aは、内側ケース32内の加熱空間S1を素早く温めることを考慮すると、その肉厚は小さい方が好ましい。肉厚が大きいと熱容量が大きくなり、底板部32a内の熱分布が一様になるまでに時間がかかる。その結果、底板部32aから加熱空間S1に放射される赤外線の放射量が安定するまでに時間がかかる。
【0062】
内側ケース32の底板部32aは、その厚さを小さくすると、変形、特に熱変形しやすくなる。その熱変形を抑制するために、本実施の形態の場合、底板部32aは補強されている。
【0063】
図11は、内側ケースの底板部の上面図である。
【0064】
図11に示すように、内側ケース32の底板部32aは、加熱空間S1側の表面に、加熱調理器10(すなわちグリル庫20)の前後方向(Y軸方向)に延在する複数の第1の突条部32fを備える。複数の第1の突条部32fは、天板部32eに向かって突出し、左右方向(X軸方向)に一定の間隔をあけて並んでいる。この複数の第1の突条部32fが補強リブとして機能することにより、底板部32aの前後方向のたわみ変形が抑制される。
【0065】
また、本実施の形態の場合、内側ケース32の底板部32aは、加熱空間S1側の表面に、複数の第1の突条部32fに交差する複数の第2の突条部32gを備える。複数の第2の突条部32gは、加熱調理器10(すなわちグリル庫20)の左右方向(X軸方向)に延在する複数の第2の突条部32gを備える。
【0066】
さらに、本実施の形態の場合、複数の第2の突条部32gとして、グリル庫20の前後方向(Y軸方向)の中央近くに配置された相対的に幅が広い第2の突条部32gと、中央から離れた、すなわちグリル庫20の食材出し入れ口28a近傍と背板部32d近傍とにそれぞれ配置された相対的に幅が狭い第2の突条部32gとが設けられている。この複数の幅が異なる第2の突条部32gが補強リブとして機能することにより、底板部32aの左右方向のたわみ変形が抑制される。特に、中央に配置された幅が広い第2の突条部32gにより、底板部32aの中央部分が高さ方向(Z軸方向)に大きく変位するたわみ変形が抑制される。
【0067】
なお、複数の第1の突条部32fは、複数の第2の突条部32gに比べて、数が多く、幅が小さく、高さ(底板部32aの加熱空間S1側の表面からの突出量)が大きい。これは、グリル庫20の清掃において、底板部32aにおける加熱空間S1側の表面のふき取りを容易にするためである。これとは異なり第2の突条部32gが第1の突条部32fに比べて数が多く、幅が小さく、高さが大きいと、加熱空間Sの奥から食材出し入れ口28aに向かってクロスを動かして底板部32aを拭くときに、クロスがふき取った油などの付着物が第2の突条部32gに引っ掛かりそのまま残る可能性がある。したがって、清掃性を考慮すると、底板部32aの補強のために設けられる第1および第2の突条部32f、32gは、前者の方が後者に比べて、数が多く、幅が小さく、高い方がよい。
【0068】
また、複数の第1および第2の突条部32f、32gは、図6に示すように、グリル皿30に接触しない。具体的には、図11に示すように、グリル皿30の後部に設けられた一方の脚部30aが、加熱調理器10の左右方向(X軸方向)の最外に配置された一方の第1の突条部32fと右側壁部32bとの間の底板部32aの部分に接触する。また、他方の脚部30aが、他方の第1の突条部32fと左側壁部32cとの間の底板部32aの部分に接触する。このような2つの脚部30aにより、グリル皿30と第1および第2の突条部32f、32gとの間にすきまが形成されている。
【0069】
このようなグリル皿30の脚部30aは、グリル皿30が加熱空間S1の外部に向かって引き出されると、底板部32aにおける食材出し入れ口28a近傍の部分に設けられたストッパー部32hと接触する。これにより、グリル皿30が、グリル庫20から脱落することが抑制される。なお、ユーザがグリル皿30を持ち上げることによってグリル皿30の脚部30aがストッパー部32hを乗り越えることにより、グリル皿30全体を、加熱空間S1の外部に取り出すことができる。また、グリル皿30は、その脚部30aがストッパー部32hに接触するまでに前傾または後傾しないように、すなわち平行移動するように、その上端30bが、内側ケース32の右側壁部32bおよび左側壁部32cに設けられたガイド部32jによってガイドされる(図6参照)。
【0070】
なお、このような複数の第1および第2の突条部32f、32gとストッパー部32hを備える底板部32aは、金属板をプレス加工することによって容易に作製することができる(底板部がガラス板で作製される場合に比べて)
【0071】
図5に戻って、グリル扉24は、本実施の形態の場合、本体部22の食材出し入れ口28aの前方で、加熱調理器10の前後方向(Y軸方向)に移動可能に構成されている。また、グリル扉24には、グリル皿30の前端が接続されている。その結果、グリル扉24を前方に移動させることにより、グリル皿30を本体部22の加熱空間S1の外部に引き出すことができる。
【0072】
また、図4および図5に示すように、グリル扉24は、加熱調理器10の前後方向(Y軸方向)に移動することにより、本体部22の食材出し入れ口28aを開閉する。具体的には、グリル扉24の後面(本体部22側の表面)が本体部22の前面(本実施の形態の場合、前側パネル28)に対して接触するまたは離間することにより、グリル扉24は食材出し入れ口28aを開閉する。
【0073】
グリル扉24は、本体部22の加熱空間S1での食材の加熱中にその食材から発生する煙やにおいが食材出し入れ口28aを介して外部に流出することを抑制する。加熱中の食材から発生する煙やにおいは、排気ダクト26とトッププレート14の後側に設けられたメッシュガード14aを介して外部に排気される。その排気ダクト26には、煙に含まれる油分やにおいを補修するフィルター44が交換可能に取り付けられている。なお、図6に示すように、食材から発生した煙が加熱空間S1から排気ダクト26に向かって流れるように(一点鎖線)、内側ケース32の天板部32eは、前端が後端に比べて低い位置になるように傾斜していている。また、グリル扉24を開けることなくユーザが加熱空間S1で加熱中の食材が確認できるように、グリル扉24にはのぞき窓24aが設けられている。
【0074】
食材出し入れ口28aを介して、すなわちグリル扉24と本体部22(本実施の形態の場合、前側パネル28)との間を介して煙やにおいが漏れないように、グリル扉24と本体部22との間にはシール構造が設けられている。
【0075】
具体的には、本実施の形態の場合、図7に示すように、シール構造として、本体部22の前側パネル28に、枠状の隆起部(第1の隆起部)28bが設けられている。この枠状の隆起部28bは、食材出し入れ口28aの開口方向(Y軸方向)視でその食材出し入れ口28aを囲むように前側パネル28に設けられている。また、グリル扉24に向かって隆起し、グリル扉24の後面に接触する。
【0076】
本実施の形態の場合、枠状の隆起部28bは、シームレスに前側パネル28に設けられ、また、前側パネル28に対してオーバーハングすることなく設けられている。例えば、隆起部28bは、金属板から前側パネル28をプレス加工するときに作製される。
【0077】
また、本実施の形態の場合、枠状の隆起部28bは、シール面として機能する平坦な頂面28cを備える。この平坦な頂面28cが、グリル扉24の後面に面接触する。
【0078】
図12は、グリル扉の後面を示す斜視図である。
【0079】
図12に示すように、本実施の形態の場合、グリル扉24の後面は、金属製の後側パネル46によって構成されている。本体部22の前側パネル28における枠状の隆起部28bの平坦な頂面28cは、グリル扉24の後側パネル46における平坦な部分(二点鎖線で囲まれた部分)に面接触する。なお、本実施の形態の場合、前側パネル28の隆起部28bに接触する後側パネル46の部分には、座繰り穴などの凹部が部分的に含まれている。
【0080】
図7に示すような本体部22の前側パネル28における枠状の隆起部28bと、図11に示すようなグリル扉24の後面とが接触することにより、本体部22とグリル扉24との間がシールされる。その接触を維持するために、グリル扉24は本体部22に向かって付勢されている。
【0081】
図13は、グリル扉と本体部の前側パネルとの接触を示す図6の部分拡大図である。
【0082】
図13に示すように、本実施の形態の場合、グリル皿30の前端には、グリル扉24と着脱可能に接続するためのブラケット48が取り付けられている。このブラケット48は、フック部48aを備え、そのフック部48aにグリル扉24の後側パネル46に形成された係合穴46aが引っ掛かる(図12参照)。また、グリル扉24には、自由端が下からグリル皿30に接触する板バネ50が設けられている。この板バネ50の復元力により、フック部48aと係合穴46aの係合点を支点にしてグリル扉24の上側部が本体部22の前側パネル28に向かって付勢されている。
【0083】
また、本実施の形態の場合、図12に示すように、グリル扉24の下部には、本体部22に向かって突出する舌片部24bが設けられている。この舌片部24bは、本体部22の前側パネル28に設けられた係合穴28dに挿入される(図7参照)。図13に示すように、舌片部24bには係合爪24cが設けられており、この係合爪24cが板バネ52によって本体部22側に付勢されている。その結果、グリル扉24の下側部が本体部22の前側パネル28に向かって付勢されている。
【0084】
このような本体部22の枠状の隆起部28bを用いることにより、シリコンなどの弾性材料から作製された枠状のシール部材を用いる場合に比べてグリル庫の清掃が容易になる。例えば、シール部材が本体部に取り付けられている場合、シール部材に付着した油やシール部材と本体部との間に侵入した油を拭き取るために、シール部材を本体部から取り外す必要がある。これに対して、隆起部28bの場合、隆起部28bと本体部22(前側パネル28)との間に隙間がなく、また、本体部22に対してオーバーハングしていないため、油などの付着物を容易に拭き取ることができる。
【0085】
本実施の形態の場合、グリル扉24と本体部22の枠状の隆起部28bとの間から煙やにおいが漏れないように、図7に示すように、その隆起部28bは、他の部分の隆起高さに比べて低い隆起高さの非接触部28eを備える。すなわち、この非接触部28eは、図13に示すように、グリル扉24の後側パネル46に接触しない。
【0086】
図13に示すように、グリル扉24が閉じた状態のとき、非接触部28eとグリル扉24(その後側パネル46)との間に形成された取り込み流路FCを介して、外気が本体部22の加熱空間S1内に取り込まれる。
【0087】
具体的に説明すると、図6に示すように、本体部22の加熱空間S1で食材が加熱されているとき、加熱空間S1の温められた空気(および煙)が排気ダクト26に向かって流れる(一点鎖線)。その空気の流れに誘引され、非接触部28eとグリル扉24との間に形成された取り込み流路FCを介して外気が加熱空間S1に流入する。それにより、グリル扉24近傍の加熱空間S1の領域に、排気ダクト26に向かう空気の流れが生じる。その結果、非接触部28e以外の隆起部28bの部分とグリル扉24との間を介して煙やにおいが漏れることが抑制される。
【0088】
このような非接触部28eが枠状の隆起部28bに設けられていない場合、グリル扉24近傍の加熱空間S1の領域に排気ダクト26に向かう空気の流れが生じず、その領域の圧力が上昇する。その圧力によって隆起部28bとグリル扉24との間を介して煙やにおいが漏れる可能性がある。
【0089】
また、図7に示すように、本実施の形態の場合、非接触部28eは、食材出し入れ口28aに対して下側に位置する。その結果として、非接触部28eとグリル扉24との間に形成された取り込み流路FCを介する煙やにおいの漏れが抑制されている。
【0090】
さらに、図7に示すように、非接触部28eは、食材出し入れ口28aの左右方向(X軸方向)の中央に位置するように枠状の隆起部28bに設けられている。そのため、非接触部28eとグリル扉24との間の取り込み流路FCを通過した外気が加熱空間S1の中央領域に流入する。その結果、外気の流入による加熱空間S1内の温度勾配の変化が抑制され、食材の加熱むらが抑制される。すなわち、加熱空間S1の中央領域は、他の領域に比べて温度が高くまた低下し難いため、冷たい外気が流入しても温度が大きく変化しにくい。
【0091】
これに関連して、本実施の形態の場合、非接触部28eは、図7に示すように、隆起高さが漸次的に減少することによって枠状の隆起部28bに形成されるのが好ましい。これにより、加熱空間S1の左右方向(X軸方向)の中央に多量の外気が流入し、その両側に少量の外気が流入する。その結果、外気の流入による加熱空間S1内の温度勾配の変化がさらに抑制され、食材の加熱むらがさらに抑制される。
【0092】
また、図13に示すように、非接触部28eの断面形状において、外側部分はスロープ状である。それにより、外気が非接触部28eとグリル扉24との間に形成された取り込み流路FC内にスムーズに流入することができる(外気の流路抵抗が減少する)。
【0093】
さらに、本実施の形態の場合、グリル扉24と本体部22の枠状の隆起部28bとの間から煙やにおいをより漏れなくするために、非接触部28eとグリル扉24との間に形成された流路FCに向かって外気を強制的に送り込むように、加熱調理器10は構成されている。
【0094】
本実施の形態の場合、図3に示すように、加熱調理器10は、筺体12内に外気を取り込んで筺体12内を冷却するファン54を有する。このファン54からグリル庫20の本体部22の隆起部28bにおける非接触部28eに向かう流路が、筺体12内に設けられている。
【0095】
具体的には、図3に示すように、ファン54は、筺体12の右側空間12bの前側に配置されている。ファン54が回転することにより、外気が、筺体12の前面の下部に設けられた吸引口12dを介して筺体12内に吸引され、ファン54に取り込まれる。ファン54に取り込まれた外気は、後方に向かって吹き出され、ファン54の後方に配置された制御基板(図示せず)を冷却する。その後、外気は、隔壁12cに形成された連絡穴12eを介して、グリル庫20が配置された左側空間12a内に流入する(一点鎖線)。
【0096】
図6に示すように、左側空間12aに流入した外気は、グリル庫20の本体部22(外側ケース34の底板部34a)と筺体12の底板部12fとの間を、前方に(グリル扉24)に向かって流れる(一点鎖線)。
【0097】
そして、図13に示すように、外気は、本体部22の前側パネル28の係合穴28dを通過し、非接触部28eとグリル扉24との間に形成された取り込み流路FCに到着する。
【0098】
この取り込み流路FCに外気を強制的に送り込むことにより、グリル扉24と本体部22の枠状の隆起部28bとの間からの煙やにおいの漏れがさらに抑制される。また、取り込み流路FCを介する煙やにおいの漏れもさらに抑制される。
【0099】
さらにまた、本実施の形態の場合、グリル扉24と本体部22の枠状の隆起部28bとの間からの煙やにおいの漏れをさらに抑制するために、図12に示すように、その枠状の隆起部28bを少なくとも部分的に囲む隆起部(第2の隆起部)46bがグリル扉24の後側パネル46に設けられている。
【0100】
本実施の形態の場合、隆起部46bは、図12に示すように、バー状である。また、図13に示すように、隆起部46bは、グリル扉24が閉じた状態のとき、本体部22の枠状の隆起部28bの下方に位置する。
【0101】
図13に示すように、隆起部46bは、本体部22(その前側パネル28)に対して接触しない。この隆起部46bは、本体部22とグリル扉24との間をシールするものではなく、グリル扉24と本体部22の枠状の隆起部28bとの間から漏れた煙などに対する流路抵抗を増加させる障害物である。本実施の形態の場合、この隆起部46bにより、本体部22とグリル扉24との間から下方向に煙やにおいが漏れにくくなる。
【0102】
なお、グリル扉24の隆起部46bが本体部22に接触しない理由は、本体部22の枠状の隆起部28bをグリル扉24に確実に接触させるためである。隆起部46bが本体部22に接触する仕様である場合、製造上のばらつきによって本体部22の枠状の隆起部28bがその全体にわたってグリル扉24に接触できない可能性があるからである。
【0103】
また、グリル扉24の隆起部46bは、本体部22の枠状の隆起部28bを全体にわたって囲む枠状であってもよい。
【0104】
さらに、本実施の形態のように、枠状の隆起部28bに非接触部28eが設けられている場合には、図12に示すように、隆起部46bは、他の部分に比べて隆起高さが低い隆起高さの部分46cを備えるのが好ましい。この部分46cを介して、非接触部28eとグリル扉24との間に形成された取り込み流路FCに外気がスムーズに流入することができる。
【0105】
以上のような本実施の形態によれば、加熱空間内を簡単に清掃することができる加熱調理器を提供することができる。また、底板部に透過率の高いガラスを用いない場合でも、熱効率の低下を抑制できる加熱調理器を提供することができる。なお、底板部の基材をガラス板とする場合は、ガラス板を金属製の筐体にシール材を介して接合する必要があるため、製造が複雑となる。しかし、底板部を金属板とする場合は、底板部が内側ケースの他の部分と一体に形成されるため、製造が容易となる。
【0106】
以上、上述の実施の形態を挙げて本開示を説明したが、本開示の実施の形態はこれに限定されない。
【0107】
例えば、上述の実施の形態の場合、図6に示すように、内側ケース32の外側に配置される第1のヒータ36は、内側ケース32の底板部32aの下方に配置されている。しかしながら、本発明の実施の形態はこれに限らない。第1のヒータは、内側ケースの外側に配置されるのであれば、例えば、内側ケースの天板部の上方、右側壁部または左側壁部の横に配置されてもよい。
【0108】
以上のように、本発明における技術の例示として、上述の実施の形態を説明した。そのために、添付図面および詳細な説明を提供した。
【0109】
したがって、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、前記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0110】
また、上述の実施の形態は、本発明における技術を例示するためのものであるから、請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明は、食材を収容して加熱するグリル庫を備える加熱調理器に適用可能である。
【符号の説明】
【0112】
10 加熱調理器
20 グリル庫
32 内側ケース
32a 内側ケースの部分(底板部)
34 外側ケース
34a 外側ケースの部分(底板部)
36 第1のヒータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12
図13