(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-03
(45)【発行日】2023-08-14
(54)【発明の名称】トルク検出器、モータユニット及び電動自転車
(51)【国際特許分類】
G01L 3/10 20060101AFI20230804BHJP
【FI】
G01L3/10 301L
(21)【出願番号】P 2019139627
(22)【出願日】2019-07-30
【審査請求日】2022-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】井戸 滋
【審査官】公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/057749(WO,A1)
【文献】特開2004-273161(JP,A)
【文献】特開2011-036031(JP,A)
【文献】特開2001-133337(JP,A)
【文献】国際公開第2012/176358(WO,A1)
【文献】特開2004-170304(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0126833(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 3/10
G01R 17/00-17/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に生じるトルクを検出する磁歪式のトルク検出器であって、
第1端子と第2端子との間で互いに直列に接続された第1コイル及び第1抵抗と、
前記第1端子と前記第2端子との間で互いに直列に接続された第2コイル及び第2抵抗との並列回路を含むブリッジ回路と、
2つのスイッチング素子を含み、前記ブリッジ回路
の前記第1端子に第1電圧を供給するハーフブリッジ型の電源回路と、
前記ブリッジ回路に接続され、第2電圧を保持するキャパシタと、
前記2つのスイッチング素子のオンオフを交互に繰り返し切り替えることで、前記電源回路に前記第1電圧を生成させる駆動部と、
前記第1コイルと前記第1抵抗との接続点、及び、前記第2コイルと前記第2抵抗との接続点間の電位差に基づいて前記トルクを検出する信号処理部とを備え、
前記駆動部は、前記2つのスイッチング素子のオンオフを切り替える時に、前記2つのスイッチング素子の両方がオフになるデッドタイムを設定する
トルク検出器。
【請求項2】
対象物に生じるトルクを検出する磁歪式のトルク検出器であって、
互いに直列に接続された第1コイル及び第1抵抗と、互いに直列に接続された第2コイル及び第2抵抗との並列回路を含むブリッジ回路と、
2つのスイッチング素子を含み、前記ブリッジ回路に第1電圧を供給するハーフブリッジ型の電源回路と、
前記ブリッジ回路に接続され、第2電圧を保持するキャパシタと、
前記2つのスイッチング素子のオンオフを交互に繰り返し切り替えることで、前記電源回路に前記第1電圧を生成させる駆動部と、
前記第1コイルと前記第1抵抗との接続点、及び、前記第2コイルと前記第2抵抗との接続点間の電位差に基づいて前記トルクを検出する信号処理部と、
前記キャパシタに直流バイアス電圧を供給するバイアス回路
とを備え
、
前記駆動部は、前記2つのスイッチング素子のオンオフを切り替える時に、前記2つのスイッチング素子の両方がオフになるデッドタイムを設定する
トルク検出器。
【請求項3】
対象物に生じるトルクを検出する磁歪式のトルク検出器であって、
互いに直列に接続された第1コイル及び第1抵抗と、互いに直列に接続された第2コイル及び第2抵抗との並列回路を含むブリッジ回路と、
2つのスイッチング素子を含み、前記ブリッジ回路に第1電圧を供給するハーフブリッジ型の電源回路と、
前記ブリッジ回路に接続され、第2電圧を保持するキャパシタと、
前記2つのスイッチング素子のオンオフを交互に繰り返し切り替えることで、前記電源回路に前記第1電圧を生成させる駆動部と、
前記第1コイルと前記第1抵抗との接続点、及び、前記第2コイルと前記第2抵抗との接続点間の電位差に基づいて前記トルクを検出する信号処理部とを備え、
前記駆動部は、前記2つのスイッチング素子のオンオフを切り替える時に、前記2つのスイッチング素子の両方がオフになるデッドタイムを設定し、
前記駆動部は、前記2つのスイッチング素子のオンオフの切り替えを開始した時点から第1期間におけるデッドタイムを、前記第1期間より後の第2期間におけるデッドタイムよりも長く設定する
トルク検出器。
【請求項4】
対象物に生じるトルクを検出する磁歪式のトルク検出器であって、
互いに直列に接続された第1コイル及び第1抵抗と、互いに直列に接続された第2コイル及び第2抵抗との並列回路を含むブリッジ回路と、
2つのスイッチング素子を含み、前記ブリッジ回路に第1電圧を供給するハーフブリッジ型の電源回路と、
前記ブリッジ回路に接続され、第2電圧を保持するキャパシタと、
前記2つのスイッチング素子のオンオフを交互に繰り返し切り替えることで、前記電源回路に前記第1電圧を生成させる駆動部と、
前記第1コイルと前記第1抵抗との接続点、及び、前記第2コイルと前記第2抵抗との接続点間の電位差に基づいて前記トルクを検出する信号処理部とを備え、
前記駆動部は、前記2つのスイッチング素子のオンオフを切り替える時に、前記2つのスイッチング素子の両方がオフになるデッドタイムを設定し、
前記駆動部は、前記2つのスイッチング素子のオンオフの切り替えを終了した時点以前の第3期間におけるデッドタイムを、前記第3期間より前の第4期間におけるデッドタイムよりも長く設定する
トルク検出器。
【請求項5】
対象物に生じるトルクを検出する磁歪式のトルク検出器であって、
互いに直列に接続された第1コイル及び第1抵抗と、互いに直列に接続された第2コイル及び第2抵抗との並列回路を含むブリッジ回路と、
2つのスイッチング素子を含み、前記ブリッジ回路に第1電圧を供給するハーフブリッジ型の電源回路と、
前記ブリッジ回路に接続され、第2電圧を保持するキャパシタと、
前記2つのスイッチング素子のオンオフを交互に繰り返し切り替えることで、前記電源回路に前記第1電圧を生成させる駆動部と、
前記第1コイルと前記第1抵抗との接続点、及び、前記第2コイルと前記第2抵抗との接続点間の電位差に基づいて前記トルクを検出する信号処理部とを備え、
前記駆動部は、前記2つのスイッチング素子のオンオフを切り替える時に、前記2つのスイッチング素子の両方がオフになるデッドタイムを設定し、
前記駆動部は、デッドタイムを周期的に変化させる
トルク検出器。
【請求項6】
前記駆動部は、前記トルクを検出する検出期間と、前記検出期間中のデッドタイムよりも長いデッドタイムが設定された中断期間とを繰り返すように、デッドタイムを周期的に変化させる
請求項5に記載のトルク検出器。
【請求項7】
前記駆動部は、前記トルクを検出する検出期間と、前記検出期間中のデッドタイムよりも長いデッドタイムが設定された第1中断期間と、前記2つのスイッチング素子の両方のオンオフの切り替えを停止する停止期間と、前記検出期間中のデッドタイムよりも長いデッドタイムが設定された第2中断期間とを、この順で繰り返すように、デッドタイムを周期的に変化させる
請求項5に記載のトルク検出器。
【請求項8】
前記信号処理部は、前記電源回路と前記ブリッジ回路との接続点の電位に基づいて、前記トルク検出器の異常を検知する
請求項1~7のいずれか1項に記載のトルク検出器。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載のトルク検出器を備える
モータユニット。
【請求項10】
請求項9に記載のモータユニットを備える電動自転車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トルク検出器、モータユニット及び電動自転車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、負荷トルク又は入力トルクを検出するトルク検出結果による検出結果に基づいて産業機械又は民生機器などの機器を動作させることが行われている。例えば、特許文献1には、一対のコイルと一対の抵抗とからなるブリッジ回路の差分に基づいてトルクを検出する磁歪式のトルク検出器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のトルク検出器では、起動時に一対のコイルに流れる電流のバランスが崩れ、検出精度が低下するという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、高い精度でトルクを検出することができるトルク検出器、並びに、当該トルク検出器を備えるモータユニット及び電動自転車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係るトルク検出器は、対象物に生じるトルクを検出する磁歪式のトルク検出器であって、互いに直列に接続された第1コイル及び第1抵抗と、互いに直列に接続された第2コイル及び第2抵抗との並列回路を含むブリッジ回路と、2つのスイッチング素子を含み、前記ブリッジ回路に第1電圧を供給するハーフブリッジ型の電源回路と、前記ブリッジ回路に接続され、第2電圧を保持するキャパシタと、前記2つのスイッチング素子のオンオフを交互に繰り返し切り替えることで、前記電源回路に前記第1電圧を生成させる駆動部と、前記第1コイルと前記第1抵抗との接続点、及び、前記第2コイルと前記第2抵抗との接続点間の電位差に基づいて前記トルクを検出する信号処理部とを備え、前記駆動部は、前記2つのスイッチング素子のオンオフを切り替える時に、前記2つのスイッチング素子の両方がオフになるデッドタイムを設定する。
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係るモータユニットは、前記トルク検出器を備える。
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係る電動自転車は、前記モータユニットを備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高い精度でトルクを検出することができるトルク検出器などを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施の形態1に係るトルク検出器の回路図である。
【
図2】
図2は、実施の形態1に係るトルク検出器が適用された自転車のクランク軸の近傍を示す断面図である。
【
図3】
図3は、実施の形態1に係るトルク検出器が適用された自転車のトルク伝達手段の外形を示す平面図である。
【
図4】
図4は、実施の形態1に係るトルク検出器の特徴量の時間変化を示すグラフである。
【
図5】
図5は、実施の形態2に係るトルク検出器の回路図である。
【
図6】
図6は、比較例に係るトルク検出器の特徴量の時間変化を示すグラフである。
【
図7】
図7は、実施の形態2に係るトルク検出器の特徴量の時間変化を示すグラフである。
【
図8】
図8は、実施の形態3に係るトルク検出器の特徴量の時間変化を示すグラフである。
【
図9】
図9は、実施の形態4に係るトルク検出器の特徴量の時間変化を示すグラフである。
【
図10】
図10は、実施の形態5に係るトルク検出器の特徴量の時間変化を示すグラフである。
【
図11】
図11は、実施の形態5の変形例に係るトルク検出器の特徴量の時間変化を示すグラフである。
【
図12】
図12は、実施の形態6に係るトルク検出器の回路図である。
【
図13】
図13は、実施の形態7に係る電動自転車の側面図である。
【
図14】
図14は、実施の形態7に係る電動自転車が備えるモータユニットの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下では、本発明の実施の形態に係るトルク検出器、モータユニット及び電動自転車について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本発明の一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する趣旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0012】
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。したがって、例えば、各図において縮尺などは必ずしも一致しない。また、各図において、実質的に同一の構成については同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0013】
また、本明細書において、等しいなどの要素間の関係性を示す用語、及び、要素の形状を示す用語、並びに、数値範囲は、厳格な意味のみを表す表現ではなく、実質的に同等な範囲、例えば数%程度の差異をも含むことを意味する表現である。
【0014】
(実施の形態1)
まず、実施の形態1に係るトルク検出器について説明する。
【0015】
[構成]
図1は、本実施の形態に係るトルク検出器1の回路図である。本実施の形態に係るトルク検出器1は、例えば自転車のクランク軸に入力されるトルクを検出する。
【0016】
図2は、本実施の形態に係るトルク検出器1が適用された自転車のクランク軸51の近傍を示す断面図である。クランク軸51の両端にはクランク(図示せず)が固定され、当該クランクの先端にはペダルが回動可能に固定されている。自転車に乗った人物がペダルを踏むことによる人力駆動力によって、クランク及びクランク軸51が連動して回転する。
【0017】
図2に示されるように、クランク軸51には、第1スプライン部52を介してトルク伝達手段56が接続されている。クランク軸51に入力されるトルクは、第1スプライン部52を介してトルク伝達手段56に伝達される。トルク伝達手段56に伝達されたトルクは、さらに、第2スプライン部53、ラチェット部54及びスプロケット55に順に伝達される。スプロケット55には、後輪又は前輪に接続されたチェーン(図示せず)が巻き付けられている。スプロケット55に伝達されたトルクによってスプロケット55が回転する。これにより、チェーンを介して後輪又は前輪が回転し、自転車が前進する。
【0018】
本実施の形態に係るトルク検出器1は、トルク伝達手段56に生じるトルクを検出する磁歪式のトルク検出器である。つまり、トルク伝達手段56が、トルク検出器1による検出の対象物である。トルク伝達手段56は、外周表面に磁歪効果部を有する円柱又は円筒状のトルク伝達手段の一例である。
【0019】
なお、トルク検出器1による対象物は、トルク伝達手段56に限定されるものではなく、自動車などの他の移動体、計測機器若しくは生産設備などの産業機械、又は、家電製品などの民生機器などの一部であってもよい。
【0020】
図1に示されるように、トルク検出器1は、ブリッジ回路10と、電源回路20と、MCU(Micro Controller Unit)30と、差動増幅器40と、キャパシタCとを備える。
【0021】
ブリッジ回路10は、互いに直列に接続された第1コイルL1及び第1抵抗R1と、互いに直列に接続された第2コイルL2及び第2抵抗R2との並列回路を含んでいる。また、ブリッジ回路10は、第1端子11、第2端子12、第3端子13及び第4端子14を含んでいる。
【0022】
第1端子11は、電源回路20の出力端子21に接続されている。第2端子12は、キャパシタCの一端に接続されている。第3端子13は、第1コイルL1と第1抵抗R1との接続点である。第4端子14は、第2コイルL2と第2抵抗R2との接続点である。第3端子13及び第4端子14はそれぞれ、差動増幅器40の入力端子に接続されている。
【0023】
第1コイルL1は、第1端子11と第3端子13との間に接続されている。第2コイルL2は、第1端子11と第4端子14との間に接続されている。つまり、第1コイルL1及び第2コイルL2は、互いの一端が接続されて、電源回路20の出力端子21に電気的に接続されている。
【0024】
第1抵抗R1は、第3端子13と第2端子12との間に接続されている。第2抵抗R2は、第4端子14と第2端子12との間に接続されている。つまり、第1抵抗R1及び第2抵抗R2は、互いの一端が接続されて、キャパシタCの一端に接続されている。
【0025】
第1コイルL1のインダクタンス値と第2コイルL2のインダクタンス値とは、例えば同じである。また、第1抵抗R1の抵抗値と第2抵抗R2の抵抗値とは、例えば同じである。
【0026】
第1コイルL1及び第2コイルL2はそれぞれ、クランク軸51に接続されたトルク伝達手段56の互いに異なる部位を囲むように設けられている。以下では、第1コイルL1及び第2コイルL2の配置について、
図3を用いて説明する。
【0027】
図3は、本実施の形態に係るトルク検出器1が適用された自転車のトルク伝達手段56の外形を示す平面図である。
図3では、自転車の前進方向の人力駆動力がトルク伝達手段56に矢印60で示される方向に印加された場合に、第2スプライン部53には、その反力が矢印61で示される方向に発生する。このため、トルク伝達手段56には、均一なねじり歪みが発生する。
【0028】
図3に示されるように、トルク伝達手段56の外周表面には、45°の傾斜角を有するスリット列部57と、-45°の傾斜角を有するスリット列部58とが設けられている。なお、スリット列部57及び58の各々の傾斜角は、図中の左右方向(クランク軸51の軸方向)を基準線とした場合における、スリットの長尺方向が基準線に対してなす角度である。基準線に対して右斜め上向きを正としている。
【0029】
スリット列部57及び58は、トルク伝達手段56の磁歪効果部に設けられている。具体的には、スリット列部57及び58はそれぞれ、トルク伝達手段56の軸方向の互いに異なる部位において、周方向の全周に亘って設けられている。スリット列部57及び58が設けられることにより、トルク伝達手段56に生じるねじり歪みが圧縮歪み(スリット列部57側)と引張歪み(スリット列部58側)とに分離される。
【0030】
本実施の形態では、スリット列部57及び58の各々に対向して外包するように、第1コイルL1及び第2コイルL2が配置されている。具体的には、第1コイルL1は、スリット列部57に対向して配置され、スリット列部57を外包している。スリット列部57は、圧縮歪み側のスリット列部であるので、第1コイルL1の自己インダクタンスは、透磁率の減少によって減少する。第2コイルL2は、スリット列部58に対向して配置され、スリット列部58を外包している。スリット列部58は、引張歪み側のスリット列部であるので、第2コイルL2の自己インダクタンスは、透磁率の増加によって増加する。
【0031】
第1コイルL1の自己インダクタンスが減少した場合、第1コイルL1を流れる電流量が減少するので、第3端子13の電位が低下する。第2コイルL2の自己インダクタンスが増加した場合、第2コイルL2を流れる電流量が増加するので、第4端子14の電位が増加する。このように、トルク伝達手段56にトルクが発生した場合には、第1コイルL1及び第2コイルL2の各々を流れる電流量が変化し、第3端子13及び第4端子14の各々の電位が変化する。したがって、第3端子13及び第4端子14間の電位差を検出することにより、トルクを検出することができる。
【0032】
第1コイルL1及び第2コイルL2には、
図1に示されるように、電源回路20から出力されるセンサ駆動電流Iが供給される。センサ駆動電流Iは、第1端子11で第1コイル電流I1と第2コイル電流I2とに分岐される。第1コイル電流I1は、第1コイルL1及び第1抵抗R1を流れ、第2コイル電流I2は、第2コイルL2及び第2抵抗R2を流れる。第1コイル電流I1及び第2コイル電流I2は、第2端子12で合流し、キャパシタCを介してグランドに流れる。
【0033】
なお、センサ駆動電流I、第1コイル電流I1及び第2コイル電流I2は、電源回路20に対する回生電流として逆向きに流れる場合がある。本実施の形態では、電源回路20からキャパシタCに向かう電流の電流値を正の値とし、キャパシタCから電源回路20に向かう電流の電流値を負の値とする。
【0034】
電源回路20は、ブリッジ回路10に第1電圧を供給するハーフブリッジ型の電源回路である。電源回路20は、第1コイルL1及び第2コイルL2に対して、トルク伝達手段56の磁歪効果部を励磁する電流を出力する。
【0035】
図1に示されるように、電源回路20は、2つのスイッチング素子SW1及びSW2を含んでいる。2つのスイッチング素子SW1及びSW2は、互いに直列に接続されて、電源電圧Vccとグランドとの間に接続されている。スイッチング素子SW1とスイッチング素子SW2との接続点が電源回路20の出力端子21であり、ブリッジ回路10に接続されている。出力端子21の電位を電圧値とする第1電圧がブリッジ回路10に供給される。
【0036】
本実施の形態では、2つのスイッチング素子SW1及びSW2はそれぞれ、電界効果トランジスタ(FET)である。具体的には、スイッチング素子SW1は、エンハンスメント型のPチャネルMOSFET(Metal Oxide Semiconductor FET)である。スイッチング素子SW2は、エンハンスメント型のNチャネルMOSFETである。スイッチング素子SW1及びSW2はそれぞれ、各々の制御端子(ゲート)に供給される制御信号によって導通(オン)及び非導通(オフ)が切り替えられる。2つのスイッチング素子SW1及びSW2の各々のオンオフに応じて、出力端子21の電位が時間的に変動する。つまり、電源回路20は、電圧値が時間的に変動する第1電圧を生成してブリッジ回路10に供給することができる。第1電圧の最大値は、例えば電源電圧Vccの最大値である。
【0037】
なお、2つのスイッチング素子SW1及びSW2はそれぞれ、導通及び非導通を切り替えることができる素子であればよい。2つのスイッチング素子SW1及びSW2の両方がエンハンスメント型のPチャネルMOSFETであってもよく、あるいは、エンハンスメント型のNチャネルMOSFETであってもよい。また、2つのスイッチング素子SW1及びSW2の少なくとも一方は、デプレッション型のMOSFETであってもよい。2つのスイッチング素子SW1及びSW2の少なくとも一方は、バイポーラトランジスタであってもよい。バイポーラトランジスタには、電力回生用のダイオードが並列に接続されていてもよい。
【0038】
キャパシタCは、ブリッジ回路10に接続されている。具体的には、キャパシタCは、電源回路20の出力端子21とグランドとの間で、ブリッジ回路10に対して直列に接続されている。より具体的には、キャパシタCは、ブリッジ回路10の第2端子12とグランドとに接続されている。キャパシタCは、電源回路20の出力端子21からグランドに向かってブリッジ回路10の第1コイルL1及び第2コイルL2を流れるコイル電流の直流成分を遮断する直流カットキャパシタである。
【0039】
キャパシタCは、第2電圧を保持する。第2電圧は、電源電圧Vccの電圧値の1/2の値である。キャパシタCは、例えば電解コンデンサ又はセラミックコンデンサなどであるが、特に限定されない。
【0040】
なお、キャパシタCは、電源回路20とブリッジ回路10との間に設けられていてもよい。具体的には、キャパシタCの一端は、電源回路20の出力端子21に接続され、他端がブリッジ回路10の第1端子11に接続されてもよい。この場合、ブリッジ回路10の第2端子12は、直接グランドに接続されていてもよい。
【0041】
また、トルク検出器1は、複数のキャパシタCを備えてもよい。複数のキャパシタCの全てがブリッジ回路10とグランドとの間に接続されてもよく、あるいは、電源回路20とブリッジ回路10との間に接続されてもよい。また、1つ以上のキャパシタCがブリッジ回路10とグランドとの間に接続され、別の1つ以上のキャパシタCが電源回路20とブリッジ回路10との間に接続されていてもよい。
【0042】
MCU30は、トルク検出器1の動作を制御する。MCU30は、具体的には、プログラムが格納された不揮発性メモリ、プログラムを実行するための一時的な記憶領域である揮発性メモリ、入出力ポート、プログラムを実行するプロセッサなどを含んでいる。
【0043】
MCU30は、
図1に示されるように、駆動部31と、信号処理部32とを含んでいる。なお、駆動部31及び信号処理部32が実行する機能は、例えばプロセッサがプログラムを実行することでソフトウェア的に実現されるが、専用のハードウェアで実現されてもよい。
【0044】
駆動部31は、2つのスイッチング素子SW1及びSW2のオンオフを交互に繰り返し切り替えることで、電源回路20に第1電圧を生成させる。具体的には、駆動部31は、スイッチング素子SW1のゲートと、スイッチング素子SW2のゲートとの各々に供給する制御信号の信号レベルを時間変化させることで、スイッチング素子SW1及びSW2のオンオフを制御する。駆動部31の具体的な動作については、
図4を用いて後で説明する。
【0045】
信号処理部32は、第3端子13及び第4端子14の電位差に基づいてトルクを検出する。本実施の形態では、信号処理部32は、第3端子13及び第4端子14の電位差が入力として与えられる差動増幅器40の出力信号に基づいてトルクを検出する。例えば、MCU30のメモリには、差動増幅器40の出力信号の信号レベルとトルクの大きさとを対応付けたテーブル又は関数が記憶されている。信号処理部32は、差動増幅器40の出力信号の信号レベルに基づいてテーブルを参照し、又は、関数を用いて演算することにより、トルクの大きさを算出する。信号処理部32は、算出したトルクの大きさを示す信号を外部機器(例えば、電動自転車のモータユニットなど)に出力する。
【0046】
差動増幅器40は、第3端子13及び第4端子14間の電位差(電圧)を増幅して出力する。差動増幅器40は、例えばオペアンプである。オペアンプの反転入力端子(-)が第3端子13に接続され、非反転入力端子(+)が第4端子14に接続されている。オペアンプの出力端子は、MCU30に接続されている。
【0047】
差動増幅器40が設けられていることで、第3端子13及び第4端子14の電位差を増幅することができるので、信号処理部32によるトルクの検出精度を高めることができる。なお、トルク検出器1は、差動増幅器40を備えていなくてもよい。第3端子13及び第4端子14は、直接MCU30に接続されていてもよい。
【0048】
[動作]
続いて、本実施の形態に係るトルク検出器1の動作について、
図4を用いて説明する。
図4は、本実施の形態に係るトルク検出器1の特徴量の時間変化を示すグラフである。
図4では、電源電圧Vccの電圧値が3.3Vの場合を表している。なお、電源電圧Vccの電圧値は、これに限定されず、例えば5Vであってもよく、他の値であってもよい。
【0049】
図4の(a)は、キャパシタCに蓄積される第2電圧(キャパシタ電圧)の時間変化を示している。
図4の(a)に示されるように、第2電圧は、僅かに時間変化しているが、おおよそ同じ電圧値になるように保たれている。具体的には、キャパシタCに蓄積される第2電圧の電圧値は、電源回路20がブリッジ回路10に供給する第1電圧の半分の電圧値である。具体的には、第2電圧の電圧値は、電源電圧Vcc(3.3V)の半分の電圧値であり、約1.65Vで維持されている。
【0050】
図4の(b)は、第1コイルL1(又は第2コイルL2)を流れる第1コイル電流I1(又は第2コイル電流I2)の時間変化を示している。第1コイル電流I1及び第2コイル電流I2は、トルク伝達手段56にトルクが入力されていない場合、同じ値になる。
【0051】
第1コイル電流I1及び第2コイル電流I2はいずれも、スイッチング素子SW2がオンからオフに変化したタイミングで最小値になり、当該最小値から増加し始める。さらに、第1コイル電流I1及び第2コイル電流I2はいずれも、スイッチング素子SW1がオフからオンになり、再びオフになるタイミングで最大値になり、当該最大値から減少し始める。第1コイル電流I1及び第2コイル電流I2はいずれも、スイッチング素子SW2がオフからオンになり、再びオフになるタイミングで最小値になり、当該最小値から減少し始める。なお、第1コイル電流I1及び第2コイル電流I2の最小値は負の値であり、第1コイルL1及び第2コイルL2には逆向きに(キャパシタCから電源回路20に向かって)流れる電流の最大値に相当する。
【0052】
図4の(c)は、電源回路20から供給されるセンサ駆動電流Iの時間変化を示している。センサ駆動電流Iは、第1コイル電流I1と第2コイル電流I2との和に相当している。また、センサ駆動電流Iは、
図4の(d)に示されるスイッチング素子SW1を流れるスイッチ電流と、スイッチング素子SW2を流れるスイッチ電流との和に相当している。
【0053】
図4の(d)は、スイッチング素子SW1及びSW2の各々を流れるスイッチ電流の時間変化を示している。本実施の形態では、スイッチング素子SW1がオンしている期間(第1オン期間)中に回生期間が含まれる。具体的には、
図4の(d)に示されるように、回生期間では、スイッチング素子SW1に対して逆向きの回生電流が流れる。なお、スイッチング素子SW2においても同様である。
【0054】
回生期間は、スイッチ電流が負の最大値から0mAになるまでの期間である。具体的には、スイッチング素子SW1の回生期間は、スイッチング素子SW2がオフされた時点(すなわち、デッドタイムの開始時点)から始まる。
【0055】
本実施の形態では、駆動部31は、スイッチング素子SW1を回生期間中にオンするゼロボルトスイッチングを行う。スイッチング素子SW1に回生電流が流れている回生期間では回路損失が低くなるので、回生期間中にスイッチングを行うことで、省電力化を実現することができる。ゼロボルトスイッチングを行うことで、電源回路20での発熱が抑制されるので、より高速にスイッチングを行うことができる。すなわち、電源回路20の高周波動作を実現することができる。
【0056】
図4の(e)は、スイッチング素子SW1及びSW2の各々のゲート電圧の時間変化を示している。スイッチング素子SW1及びSW2の各々のゲート電圧は、駆動部31によって制御される。
【0057】
図4の(e)に示されるように、駆動部31は、スイッチング素子SW1及びSW2の両方が同時に導通(オン)しないように制御する。つまり、スイッチング素子SW1がオンである場合、スイッチング素子SW2はオフである。スイッチング素子SW2がオンである場合、スイッチング素子SW1はオフである。スイッチング素子SW1がオンである期間(第1オン期間)とスイッチング素子SW2がオンである期間(第2オン期間)とは、例えば、互いに同じ長さの期間である。第1オン期間と第2オン期間とは重複していない。駆動部31は、第1オン期間と第2オン期間とを繰り返すように、2つのスイッチング素子SW1及びSW2を制御する。
【0058】
また、駆動部31は、2つのスイッチング素子SW1及びSW2のオンオフを切り替える時に、2つのスイッチング素子SW1及びSW2の両方がオフになるデッドタイムを設定する。具体的には、
図4の(e)に示されるように、第1オン期間と第2オン期間との間にデッドタイムを設定する。駆動部31は、第1オン期間から第2オン期間に移行する場合、及び、第2オン期間から第1オン期間に移行する場合の両方にデッドタイムを設定する。オンオフの切り替えにおける複数のデッドタイムの長さは、例えば互いに同じ長さの期間である。
【0059】
本実施の形態では、1回のスイッチング期間は、スイッチング素子SW1がオンされる第1オン期間と、第1オン期間後のデッドタイムと、スイッチング素子SW2がオンされる第2オン期間と、第2オン期間後のデッドタイムとの和である。すなわち、1回のスイッチング期間には、2つのオン期間と2つのデッドタイムとが含まれる。駆動部31は、スイッチング期間を連続的に繰り返すことで、スイッチング素子SW1及びSW2の各々のオンオフを繰り返す。
【0060】
デッドタイムは、例えば第1オン期間及び第2オン期間のいずれよりも短い期間である。例えば、デッドタイムは、例えば第1オン期間(又は第2オン期間)より短い期間であるが、1/4以下の期間であってもよく、1/10以下の期間であってもよい。あるいは、デッドタイムは、第1オン期間以上の期間であってもよく、第1オン期間と第2オン期間との和よりも短い期間であってもよい。一例として、デッドタイムは、スイッチング期間の1.5%である。
【0061】
デッドタイムが設けられていない場合、例えば、スイッチング素子SW1がオフされると同時にスイッチング素子SW2がオンされる。スイッチング素子SW1及びSW2のオンオフのタイミングが僅かにずれただけで、スイッチング素子SW1及びSW2の両方がオンされる恐れがある。スイッチング素子SW1及びSW2の両方がオンされた場合、電源電圧とグランドとが短絡されるので、スイッチング素子SW1及びSW2の両方を貫通して電源電圧Vccからグランドに流れるアーム短絡電流が発生する。
【0062】
これに対して、本実施の形態に係るトルク検出器1では、デッドタイムが設けられているので、スイッチング素子SW1及びSW2の両方がオフになった後に、いずれか一方をオンする。したがって、アーム短絡電流の発生を抑制することができる。これにより、電力損失を低減することができるので、トルク検出器1の省電力化及び小型化を実現することができる。
【0063】
図4の(f)は、電源回路20の出力端子21の電位の時間変化を示している。第1オン期間では、スイッチング素子SW1がオンされて、スイッチング素子SW2がオフされているので、出力端子21は、電源電圧Vccと電気的に接続されている。このため、第1オン期間では、出力端子21の電位は、電源電圧Vccの電圧値(3.3V)に略等しくなる。
【0064】
第2オン期間では、スイッチング素子SW2がオンされて、スイッチング素子SW1がオフされているので、出力端子21は、グランドと電気的に接続されている。このため、第2オン期間では、出力端子21の電位は、グランド電位(0V)に略等しくなる。
【0065】
なお、デッドタイムでは、出力端子21が回生電流の影響を受けて、電源電圧Vccの電圧値(3.3V)より大きい値、又は、グランド(0V)よりも小さい値をとりうる。
【0066】
上述したように、トルク伝達手段56にトルクが入力された場合には、
図4の(b)に示される第1コイル電流I1及び第2コイル電流I2が変化する。これにより、第3端子13の電位、及び、第4端子14の電位が変化するので、第3端子13と第4端子14との電位差が変化する。MCU30の信号処理部32は、第3端子13と第4端子14との電位差に基づいてトルクを検出することができる。
【0067】
[効果など]
以上のように、本実施の形態に係るトルク検出器1は、対象物に生じるトルクを検出する磁歪式のトルク検出器である。トルク検出器1は、互いに直列に接続された第1コイルL1及び第1抵抗R1と、互いに直列に接続された第2コイルL2及び第2抵抗R2との並列回路を含むブリッジ回路10と、2つのスイッチング素子SW1及びSW2を含み、ブリッジ回路10に第1電圧を供給するハーフブリッジ型の電源回路20と、ブリッジ回路10に接続され、第2電圧を保持するキャパシタCと、2つのスイッチング素子SW1及びSW2のオンオフを交互に繰り返し切り替えることで、電源回路20に第1電圧を生成させる駆動部31と、第1コイルL1と第1抵抗R1との接続点、及び、第2コイルL2と第2抵抗R2との接続点間の電位差に基づいてトルクを検出する信号処理部32とを備える。駆動部31は、2つのスイッチング素子SW1及びSW2のオンオフを切り替える時に、2つのスイッチング素子SW1及びSW2の両方がオフになるデッドタイムを設定する。
【0068】
これにより、ハーフブリッジ型の電源回路20及びキャパシタCを備えることにより、第1コイルL1を流れる第1コイル電流I1と、第2コイルL2を流れる第2コイル電流I2とを等しくすることができる。このため、センサの偏磁を抑制することができるので、トルクの検出精度を高めることができる。
【0069】
また、デッドタイムを設けることで、スイッチング素子SW1及びSW2を貫通するアーム短絡電流の発生を抑制することができるので、電力損失を低減することができる。これにより、トルク検出器1の省電力化及び小型化を実現することができる。
【0070】
また、キャパシタCには、電源電圧Vccの半分の値を保持させることができるので、電源回路20とキャパシタCとで共通の電源電圧Vccを利用することができる。つまり、トルク検出器1の電源電圧を1つのみにすることができるので、小型化及び低コスト化を実現することができる。
【0071】
(実施の形態2)
続いて、実施の形態2について説明する。
【0072】
実施の形態2では、キャパシタCに接続されたバイアス回路をトルク検出器がさらに備える。以下では、実施の形態1との相違点を中心に説明し、共通点の説明を省略又は簡略化する。
【0073】
[構成]
図5は、本実施の形態に係るトルク検出器101の回路図である。
図5に示されるように、トルク検出器101は、
図1に示されるトルク検出器1と比較して、新たにバイアス回路170を備える点が相違する。また、トルク検出器101のMCU30は、駆動部31の代わりに駆動部131を備える。
【0074】
バイアス回路170は、キャパシタCに直流バイアス電圧を供給する。バイアス回路170は、電源電圧Vccの電圧値を抵抗分圧する抵抗分圧回路を含んでいる。
【0075】
具体的には、
図5に示されるように、バイアス回路170は、互いに直列接続された第3抵抗R3及び第4抵抗R4を含んでいる。第3抵抗R3の一端は、電源電圧Vccに接続されている。第3抵抗R3の他端は、ブリッジ回路10の第2端子12と第4抵抗R4の一端とに接続されている。第4抵抗R4は、キャパシタCに並列に接続されている。具体的には、第4抵抗R4の一端は、ブリッジ回路10の第2端子12と第3抵抗R3とに接続されている。第4抵抗R4の他端は、グランドに接続されている。
【0076】
電源電圧Vccの電圧値をVcc、第3抵抗R3の抵抗値をR3、第4抵抗R4の抵抗値をR4とした場合、キャパシタCの両端には、Vcc×R4/(R3+R4)の電圧が直流バイアス電圧として印加される。本実施の形態では、R3=R4である。これにより、電源電圧Vccの電圧値の半分がキャパシタCに貯められる。
【0077】
MCU30の駆動部131は、実施の形態1に係る駆動部31と同様の動作を行う。本実施の形態では、駆動部131は、電源回路20の駆動、すなわち、スイッチングの開始を所定期間遅らせる。駆動部131は、スイッチング素子SW1及びSW2の両方をオフに保った状態で、所定期間待機する。
【0078】
所定期間は、キャパシタCに直流バイアス電圧が貯められるのに要する期間である。時定数τは、C×(R4∥R3)で表される。キャパシタCの容量値C=3.3μF、R3=R4=2kΩである場合、τ=3.3msになる。例えば、駆動部131は、所定期間として約5τ(約15ms)の期間を待機する。これにより、待機後のスイッチングの開始時点では、キャパシタCの容量値を電源電圧Vccの半分の大きさで安定させることができる。
【0079】
[効果など]
図6は、比較例に係るトルク検出器の特徴量の時間変化を示すグラフである。
図6では、待機期間を設けることなく、電源の投入と同時に電源回路20のスイッチングを開始した場合の特徴量の時間変化を示している。
図6の(a)は、第1コイルL1を流れる第1コイル電流I1、又は、第2コイルL2を流れる第2コイル電流I2の時間変化を示している。
図6の(b)は、キャパシタCの両端間の電圧(すなわち、キャパシタ電圧)の時間変化を示している。
【0080】
図6の(b)に示されるように、キャパシタCには電源の投入時点で電荷が蓄積されておらず、キャパシタCの電圧値は0Vである。電源の投入、すなわち、電源電圧Vccを発生させた後、キャパシタCの電圧値は急激に上昇し、電源電圧Vccの電圧値の半分の値で略一定になっている。
【0081】
このように、キャパシタCの電圧値が大きく変化するので、第1コイル電流I1(又は第2コイル電流I2)は、スイッチングの開始時点で正負の一方に偏る。
図6の(a)に示される例では、コイル電流は、最初に正側に偏った後、キャパシタCの電圧値が安定するのに合わせて正負に偏らずに安定している。
図6の(a)では、偏りの最大量をΔIxで表している。コイル電流の偏りは、偏磁の原因となる。
【0082】
図7は、本実施の形態に係るトルク検出器101の特徴量の時間変化を示すグラフである。
図7では、電源を投入した後の待機期間(例えば20ms)を設けた後に電源回路20のスイッチングを開始した場合の特徴量の時間変化を示している。
図7の(a)は、第1コイルL1を流れる第1コイル電流I1、又は、第2コイルL2を流れる第2コイル電流I2の時間変化を示している。
図7の(b)は、キャパシタCの両端間の電圧(すなわち、キャパシタ電圧)の時間変化を示している。
【0083】
図7の(b)に示されるように、待機期間によってキャパシタCには、電源電圧Vccの電圧値の半分の値が保持されている。すなわち、スイッチングの開始時点では、キャパシタCの両端間の電圧が安定している。
【0084】
この場合、
図7の(a)に示されるように、第1コイル電流I1(又は第2コイル電流I2)は、スイッチングの開始時点で僅かに正負の一方に偏るものの、その偏りの最大量ΔIは、
図6の(a)に示されるΔIxよりも小さくなっている。また、偏りが起きている期間も短く、速やかにコイル電流が安定している。このため、起動時のセンサの偏磁を抑制することができる。
【0085】
以上のように、本実施の形態に係るトルク検出器101は、キャパシタCに直流バイアス電圧を供給するバイアス回路170を備える。
【0086】
これにより、
図6及び
図7に示されるように、起動時の偏磁を抑制することができ、トルクの検出精度を高めることができる。
【0087】
(実施の形態3)
続いて、実施の形態3について説明する。
【0088】
実施の形態3では、デッドタイムの長さを可変にする。具体的には、実施の形態3では、トルク検出器におけるスイッチングの開始時にデッドタイムを長く設定する。なお、スイッチングの開始時にデッドタイムを長く設定することをソフトスタート機能という。
【0089】
本実施の形態では、トルク検出器の構成は、実施の形態1又は2と同じであるので、以下では、
図5に示される実施の形態2に係るトルク検出器101の構成を用いて説明する。なお、実施の形態1又は2との相違点を中心に説明し、共通点の説明を省略又は簡略化する。
【0090】
図8は、本実施の形態に係るトルク検出器101の特徴量の時間変化を示すグラフである。
【0091】
図8の(a)は、キャパシタCの両端間の電圧(すなわち、キャパシタ電圧)の時間変化を示している。ここでは、実施の形態2と同様に、バイアス回路170によってキャパシタCに蓄電してからスイッチングを開始する例を示している。電源投入からの待機期間は、例えば20msである。
【0092】
図8の(b)は、第1コイルL1を流れる第1コイル電流I1、又は、第2コイルL2を流れる第2コイル電流I2の時間変化を示している。本実施の形態では、コイル電流の正負の一方への偏りが実質的になくなっている。
【0093】
図8の(c)及び(d)はそれぞれ、スイッチング素子SW1及びSW2の各々の駆動電圧(ゲート電圧)の時間変化を示している。本実施の形態では、駆動部131は、2つのスイッチング素子SW1及びSW2のオンオフの切り替え(すなわち、スイッチング)を開始した時点から第1期間におけるデッドタイムを、当該第1期間より後の第2期間におけるデッドタイムよりも長く設定している。
【0094】
第1期間は、
図8の(c)及び(d)に示されている期間であり、スイッチングの開始時点(1.0ms)以降の期間である。例えば、第1期間は、数ms以上数十ms以下の期間であるが、これに限定されない。
【0095】
第2期間は、
図8に示されている第1期間より後の期間であり、通常動作時の期間である。具体的には、第2期間は、キャパシタ電圧が安定しているときの期間である。
【0096】
例えば、駆動部131は、第1期間におけるデッドタイムを第2期間におけるデッドタイムの2倍以上に設定する。なお、駆動部131は、第1期間におけるデッドタイムを第2期間におけるデッドタイムの4倍以上に設定してもよく、10倍以上に設定してもよい。
図8に示される例では、駆動部131は、第1期間におけるデッドタイムを、スイッチング期間(=第1オン期間+デッドタイム+第2オン期間+デッドタイム)の25%に設定している。駆動部131は、第2期間におけるデッドタイムをスイッチング期間の1.5%に設定している。
【0097】
第1期間に含まれる複数のデッドタイムは、例えば、互いに同じ長さである。すなわち、駆動部131は、第1期間におけるデッドタイムを均一な長さで維持する。あるいは、駆動部131は、第1期間におけるデッドタイムを大きい値から小さい値まで漸減させてもよい。第1期間におけるデッドタイムの最小値は、第2期間におけるデッドタイムよりも長い期間である。
【0098】
以上のように、本実施の形態に係るトルク検出器101では、駆動部131は、2つのスイッチング素子SW1及びSW2のオンオフの切り替えを開始した時点から第1期間におけるデッドタイムを、当該第1期間より後の第2期間におけるデッドタイムよりも長く設定する。
【0099】
これにより、スイッチングの開始時にデッドタイムを長く設定することにより、コイル電流の偏りをより強く抑制することができる。したがって、スイッチングの開始時のセンサの偏磁を抑制することができる。
【0100】
(実施の形態4)
続いて、実施の形態4について説明する。
【0101】
実施の形態4では、実施の形態3と同様に、デッドタイムの長さを可変にする。具体的には、実施の形態4では、トルク検出器におけるスイッチングの終了時にデッドタイムを長く設定する。なお、スイッチングの終了時にデッドタイムを長く設定することをソフトオフ機能という。
【0102】
本実施の形態では、トルク検出器の構成は、実施の形態1又は2と同じであるので、以下では、
図5に示される実施の形態2に係るトルク検出器101の構成を用いて説明する。なお、実施の形態1~3との相違点を中心に説明し、共通点の説明を省略又は簡略化する。
【0103】
図9は、本実施の形態に係るトルク検出器101の特徴量の時間変化を示すグラフである。
図9において、横軸は時間を表している。縦軸はそれぞれ、スイッチング素子SW1のゲート電圧、スイッチング素子SW2のゲート電圧、及び、コイル電流を表している。なお、コイル電流は、第1コイル電流I1又は第2コイル電流I2である。
【0104】
本実施の形態では、駆動部131は、2つのスイッチング素子SW1及びSW2のオンオフの切り替え(すなわち、スイッチング)を終了した時点以前の第3期間におけるデッドタイムを、当該第3期間より前の第4期間におけるデッドタイムよりも長く設定する。第3期間は、
図9におけるスイッチングの停止の開始時刻以降の期間である。第3期間の終了時点が、スイッチングの終了時点である。第4期間は、スイッチングの停止の開始時刻より前の期間である。
【0105】
例えば、駆動部131は、第3期間におけるデッドタイムを第4期間におけるデッドタイムの2倍以上に設定する。なお、駆動部131は、第3期間におけるデッドタイムを第4期間におけるデッドタイムの4倍以上に設定してもよく、10倍以上に設定してもよい。
図9に示される例では、駆動部131は、第3期間におけるデッドタイムを、スイッチング期間(=第1オン期間+デッドタイム+第2オン期間+デッドタイム)の25%に設定している。駆動部131は、第4期間におけるデッドタイムをスイッチング期間の1.5%に設定している。
【0106】
第3期間に含まれる複数のデッドタイムは、例えば、互いに同じ長さである。すなわち、駆動部131は、第3期間におけるデッドタイムを均一な長さで維持する。あるいは、駆動部131は、第3期間におけるデッドタイムを小さい値から大きい値まで漸増させてもよい。第3期間におけるデッドタイムの最大値は、第4期間におけるデッドタイムよりも短い期間である。
【0107】
以上のように、本実施の形態に係るトルク検出器101では、駆動部131は、2つのスイッチング素子SW1及びSW2のオンオフの切り替えを終了した時点以前の第3期間におけるデッドタイムを、当該第3期間より前の第4期間におけるデッドタイムよりも長く設定する。
【0108】
これにより、
図9に示されるように、第3期間ではコイル電流のピーク値を徐々に小さくすることができる。仮に、スイッチングの停止の開始時刻において即座にスイッチングを停止した場合、コイル電流が一方に強く偏った状態でスイッチングが終了することになる。すなわち、正負の一方にパルス電流が発生した状態でスイッチングが終了するので、センサの偏磁が発生する。
【0109】
これに対して、デッドタイムを長く設定する第3期間を設けることで、ピーク値を徐々に小さくすることができるので、スイッチングを停止した時点で発生するパルス電流のピーク値が小さくなるので、スイッチングの停止時のセンサの偏磁を抑制することができる。
【0110】
(実施の形態5)
続いて、実施の形態5について説明する。
【0111】
実施の形態5では、実施の形態3及び4と同様に、デッドタイムの長さを可変にする。具体的には、実施の形態5では、トルク検出器におけるトルクの検出を行っている途中でデッドタイムを周期的に変化させる。本実施の形態では、トルク検出器の構成は、実施の形態1又は2と同じであるので、以下では、
図5に示される実施の形態2に係るトルク検出器101の構成を用いて説明する。なお、実施の形態1~4との相違点を中心に説明し、共通点の説明を省略又は簡略化する。
【0112】
図10は、本実施の形態に係るトルク検出器101の特徴量の時間変化を示すグラフである。
図10において、横軸は時間を表している。縦軸はそれぞれ、スイッチング素子SW1のゲート電圧、スイッチング素子SW2のゲート電圧、及び、コイル電流を表している。なお、コイル電流は、第1コイル電流I1又は第2コイル電流I2である。
【0113】
本実施の形態では、駆動部131は、デッドタイムを周期的に変化させる。駆動部131は、タイマ機能を有している。
【0114】
例えば、駆動部131は、トルクを検出する検出期間と、検出期間中のデッドタイムよりも長いデッドタイムが設定された中断期間とを繰り返すように、デッドタイムを周期的に変化させる。具体的には、
図10に示されるように、駆動部131は、検出期間と、中断期間の一例であるフェード期間とを1周期として繰り返す。繰り返し周波数は、例えば100Hz以上数kHz以下である。つまり、1周期は、0.1ms以上10ms以下である。
【0115】
検出期間とフェード期間とは、例えば同じ長さの期間であるが、異なっていてもよい。検出期間がフェード期間より長い場合には、トルクを検出できる期間が長くなるので、トルクの検出を高い精度で行うことができる。検出期間がフェード期間より短い場合には、省電力化が実現される。
【0116】
フェード期間におけるデッドタイムの長さは、時間変化している。具体的には、駆動部131は、所定の範囲内でデッドタイムをスイープする。なお、所定の範囲の最小値は、検出期間におけるデッドタイムよりも長い値である。デッドタイムのスイープは、漸増のみ、漸減のみ、漸増及び漸減、又は、漸増及び漸減の複数回の繰り返しである。なお、フェード期間中に含まれる複数のデッドタイムは、均一な長さであってもよい。
【0117】
また、フェード期間中には、スイッチングを完全に停止する停止期間が含まれてもよい。具体的には、駆動部131は、
図11に示されるように、検出期間と、第1フェード期間と、停止期間と、第2フェード期間とをこの順で繰り返すように、デッドタイムを周期的に変化させてもよい。ここで、
図11は、本実施の形態の変形例に係るトルク検出器101の特徴量の時間変化を示すグラフである。1周期は、検出期間と、第1フェード期間と、停止期間と、第2フェード期間とを含んでいる。繰り返し周波数は、例えば、100Hz以上数kHz以下である。つまり、1周期は、0.1ms以上10ms以下である。
【0118】
第1フェード期間は、検出期間直後の期間であり、検出期間中のデッドタイムよりも長いデッドタイムが設定された第1中断期間の一例である。第2フェード期間は、検出期間直前の期間であり、検出期間中のデッドタイムよりも長いデッドタイムが設定された第2中断期間の一例である。第1フェード期間におけるデッドタイムと、第2フェード期間におけるデッドタイムとは、同じ長さであってもよく、異なる長さであってもよい。また、駆動部131は、第1フェード期間におけるデッドタイムと、第2フェード期間におけるデッドタイムとの少なくとも一方をスイープしてもよい。
【0119】
停止期間は、2つのスイッチング素子SW1及びSW2の両方のオンオフの切り替えを停止する期間である。つまり、停止期間の全体が大きなデッドタイムとみなすことができる。停止期間は、上述したスイッチング期間(=第1オン期間+デッドタイム+第2オン期間+デッドタイム)よりも長い期間である。
【0120】
例えば、検出期間と、第1フェード期間と、停止期間と、第2フェード期間とは、例えば同じ長さの期間であるが、少なくとも1つが異なっていてもよい。検出期間と停止期間との比率を変化させることで、トルクの検出回数と消費電力とのバランスを調整することができる。
【0121】
[効果など]
以上のように、本実施の形態に係るトルク検出器101では、駆動部131は、デッドタイムを周期的に変化させる。
【0122】
これにより、消費電力を削減することができる。
【0123】
また、例えば、駆動部131は、トルクを検出する検出期間と、検出期間中のデッドタイムよりも長いデッドタイムが設定された中断期間とを繰り返すように、デッドタイムを周期的に変化させる。
【0124】
これにより、消費電力を削減することができる。また、検出期間と中断期間との比率を調整することにより、トルクの検出回数と消費電力とのバランスを調整することができる。
【0125】
また、例えば、駆動部131は、トルクを検出する検出期間と、検出期間中のデッドタイムよりも長いデッドタイムが設定された第1中断期間と、2つのスイッチング素子SW1及びSW2の両方のオンオフの切り替えを停止する停止期間と、検出期間中のデッドタイムよりも長いデッドタイムが設定された第2中断期間とを、この順で繰り返すように、デッドタイムを周期的に変化させる。
【0126】
これにより、消費電力を削減することができる。また、検出期間と中断期間と停止期間との比率を調整することにより、トルクの検出回数と消費電力とのバランスを調整することができる。
【0127】
例えば、自転車のクランク軸51に入力されたトルクを検出する場合には、自転車が停止している期間ではトルクがほとんど変化しないので、頻繁にトルクを検出する必要がない。このため、中断期間及び停止期間を設けることにより、省電力化を実現しながら、必要な頻度でトルクを検出することができる。
【0128】
(実施の形態6)
続いて、実施の形態6について説明する。
【0129】
実施の形態6では、トルク検出器の異常を検出する。以下では、実施の形態1~5との相違点を中心に説明し、共通点の説明を省略又は簡略化する。
【0130】
図12は、本実施の形態に係るトルク検出器201の回路図である。
図12に示されるように、トルク検出器201は、
図5に示されるトルク検出器101と比較して、新たにローパスフィルタ280を備える。また、トルク検出器201のMCU30は、信号処理部32の代わりに信号処理部232を備える。
【0131】
ローパスフィルタ280は、電源回路20の出力端子21と、MCU30との間に接続されている。ローパスフィルタ280は、高周波成分(交流成分)をカットし、低周波成分(直流成分)を通過させる。
【0132】
信号処理部232は、電源回路20とブリッジ回路10との接続点の電位に基づいて、トルク検出器201の異常を検知する。具体的には、信号処理部232は、ローパスフィルタ280を介して電源回路20の出力端子21の電位を確認する。トルク検出器201が正常に動作している場合、高周波成分がローパスフィルタ280でカットされるので、出力端子21の電位は、実質的にキャパシタCの電圧(キャパシタ電圧)と同じになる。すなわち、出力端子21の電位は、電源電圧Vccの半分の値になる。
【0133】
一方で、
図12の「×」印で示されるように、ブリッジ回路10と電源回路20との接続が切断された場合(例えば、第1端子11と出力端子21とを繋ぐケーブルが外れた場合)、出力端子21の電位は、キャパシタ電圧が維持されなくなる。具体的には、出力端子21の電位は、略0Vになる。
【0134】
信号処理部232は、出力端子21の電位と閾値とを比較する。信号処理部232は、電位が閾値以下になった場合に、トルク検出器201に異常が発生したと判定する。信号処理部232は、電位が閾値より大きい場合に、トルク検出器201が正常である(異常が発生していない)と判定する。
【0135】
信号処理部232は、スイッチングの開始前、又は、
図10若しくは
図11に示されるフェード期間若しくは停止期間中に、出力端子21の電位が0Vになった場合、トルク検出器201に異常が発生したと判定し、判定結果を駆動部131に出力する。駆動部131は、トルク検出器201に異常が発生したと判定された場合に、スイッチングの開始を中止する。
【0136】
[効果など]
以上のように、本実施の形態に係るトルク検出器201では、信号処理部232は、電源回路20とブリッジ回路10との接続点の電位に基づいて、トルク検出器201の異常を検知する。
【0137】
これにより、トルク検出器201の異常を検出することができるので、トルク検出器201を備えるシステムを安全に制御することができる。
【0138】
なお、トルク検出器201は、ローパスフィルタ280を備えていなくてもよい。
【0139】
(実施の形態7)
続いて、実施の形態7について説明する。
【0140】
実施の形態7では、実施の形態1~6に係るトルク検出器を備えるモータユニット、及び、当該モータユニットを備える電動自転車について説明する。以下では、実施の形態1~6との相違点を中心に説明し、共通点の説明を省略又は簡略化する。
【0141】
図13は、本実施の形態に係る電動自転車300の側面図である。
図14は、本実施の形態に係る電動自転車300が備えるモータユニット301の断面図である。
【0142】
電動自転車300は、電動アシスト機能を有する電動自転車である。電動アシスト機能とは、電動自転車300に乗った人物によるペダルへの踏力に基づいて電動自転車300の前進を補助する機能である。
図13に示されるように、電動自転車300は、モータユニット301と、バッテリー302とを備える。
【0143】
モータユニット301は、
図14に示されるように、バッテリー302から供給される電力に基づいて駆動する電動モータ391を有する。電動モータ391は、電動自転車300に乗った人物によるペダルへの踏力に基づいてクランク軸51を回転させるトルクを発生させる。モータユニット301は、例えば、電動自転車300の中央部に設けられており、クランク軸51を含んでいる。
【0144】
モータユニット301は、さらに、制御回路基板390と、減速器392とを備える。制御回路基板390は、例えば、トルク検出器1のMCU30が実装された基板である。制御回路基板390は、トルク検出器1によって検出されたトルクに基づいて電動モータ391の駆動力を決定する。制御回路基板390は、決定した駆動力で電動モータ391を駆動する。
【0145】
電動モータ391が発生させるトルクは、減速器392を介して補助力出力スプロケット393に出力される。補助力出力スプロケット393及びスプロケット55には、チェーン394が取り付けられている。これにより、電動モータ391に基づく補助力と、人力駆動力とが合算されて、チェーン394が接続された後輪を回転させる。これにより、電動自転車300の前進がアシストされる。
【0146】
バッテリー302は、モータユニット301の駆動用の電力を貯める蓄電池である。バッテリー302は、例えば二次電池であるが、キャパシタなどであってもよい。バッテリー302に貯められた電力は、トルク検出器1の電源電圧Vccなどにも用いられる。バッテリー302は、例えば、電動自転車300のサドルを支持する立パイプに取り付けられている。
【0147】
[効果など]
以上のように、本実施の形態に係るモータユニット301は、例えば、トルク検出器1、101又は201を備える。また、本実施の形態に係る電動自転車300は、モータユニット301を備える。
【0148】
これにより、検出したトルクに基づいて電動モータ391を適切に駆動することができる。具体的には、電動アシスト機能を適切に発揮させることができ、電動自転車300の快適な乗車を補助することができる。また、各実施の形態で示したように、トルク検出器の省電力化が実現されるので、バッテリー302の電力消費を抑制することができる。したがって、より長い期間、電動アシスト機能を発揮させることができる。
【0149】
(その他)
以上、本発明に係るトルク検出器、モータユニット及び電動自転車について、上記の実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではない。
【0150】
例えば、上記の実施の形態3~6では、トルク検出器がバイアス回路170を備えなくてもよい。例えば、実施の形態1に係るトルク検出器1(バイアス回路170を備えない)がソフトスタート機能、ソフトオフ機能、及び、デッドタイムの周期的な変化機能の少なくとも1つを有してもよい。また、トルク検出器は、ソフトスタート機能、ソフトオフ機能、及び、デッドタイムの周期的な変化機能の全てを有してもよい。
【0151】
また、上記実施の形態において、駆動部31及び131並びに信号処理部32及び232などの構成要素の全部又は一部は、専用のハードウェアで構成されてもよく、あるいは、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPU(Central Processing Unit)又はプロセッサなどのプログラム実行部が、HDD(Hard Disk Drive)又は半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。
【0152】
また、駆動部31及び131並びに信号処理部32及び232などの構成要素は、1つ又は複数の電子回路で構成されてもよい。1つ又は複数の電子回路は、それぞれ、汎用的な回路でもよいし、専用の回路でもよい。
【0153】
1つ又は複数の電子回路には、例えば、半導体装置、IC(Integrated Circuit)又はLSI(Large Scale Integration)などが含まれてもよい。IC又はLSIは、1つのチップに集積されてもよく、複数のチップに集積されてもよい。ここでは、IC又はLSIと呼んでいるが、集積の度合いによって呼び方が変わり、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)、又は、ULSI(Ultra Large Scale Integration)と呼ばれるかもしれない。また、LSIの製造後にプログラムされるFPGA(Field Programmable Gate Array)も同じ目的で使うことができる。
【0154】
また、本発明の全般的又は具体的な態様は、システム、装置、方法、集積回路又はコンピュータプログラムで実現されてもよい。あるいは、当該コンピュータプログラムが記憶された光学ディスク、HDD若しくは半導体メモリなどのコンピュータ読み取り可能な非一時的記録媒体で実現されてもよい。また、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム及び記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【0155】
その他、各実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0156】
1、101、201 トルク検出器
10 ブリッジ回路
13 第3端子(接続点)
14 第4端子(接続点)
20 電源回路
21 出力端子(接続点)
31、131 駆動部
32、232 信号処理部
56 トルク伝達手段(対象物)
170 バイアス回路
300 電動自転車
301 モータユニット
C キャパシタ
L1 第1コイル
L2 第2コイル
R1 第1抵抗
R2 第2抵抗
R3 第3抵抗
R4 第4抵抗
SW1、SW2 スイッチング素子