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特許7325000表面処理銅箔、並びに、それを用いた銅張積層板、樹脂付銅箔および回路基板
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  • 特許-表面処理銅箔、並びに、それを用いた銅張積層板、樹脂付銅箔および回路基板 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-03
(45)【発行日】2023-08-14
(54)【発明の名称】表面処理銅箔、並びに、それを用いた銅張積層板、樹脂付銅箔および回路基板
(51)【国際特許分類】
   C25D 7/06 20060101AFI20230804BHJP
   C25D 5/16 20060101ALI20230804BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20230804BHJP
   B32B 15/01 20060101ALI20230804BHJP
   C25D 5/12 20060101ALI20230804BHJP
   C23C 28/00 20060101ALI20230804BHJP
【FI】
C25D7/06 A
C25D5/16
H05K1/03 630H
B32B15/01 H
C25D5/12
C23C28/00 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020571036
(86)(22)【出願日】2019-12-24
(86)【国際出願番号】 JP2019050697
(87)【国際公開番号】W WO2020162068
(87)【国際公開日】2020-08-13
【審査請求日】2022-08-17
(31)【優先権主張番号】P 2019018095
(32)【優先日】2019-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000239426
【氏名又は名称】福田金属箔粉工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100162765
【弁理士】
【氏名又は名称】宇佐美 綾
(72)【発明者】
【氏名】北井 佑季
(72)【発明者】
【氏名】岡本 健
【審査官】瀧口 博史
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-7937(JP,A)
【文献】特開平5-29740(JP,A)
【文献】特開2017-193778(JP,A)
【文献】特開2018-090906(JP,A)
【文献】特開2015-061934(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 7/06
C25D 5/12
C25D 5/16
H05K 1/09
H05K 3/38
B32B 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅箔の少なくとも一方の面に銅の微細粗化粒子処理層を有する表面処理銅箔であって、
前記微細粗化粒子処理層が粒子径40~200nmの微細銅粒子で構成されており、
前記微細粗化粒子処理層上にニッケルを含む耐熱処理層を有し、
前記耐熱処理層上に少なくともクロムを含む防錆処理層を有し、
前記防錆処理層上にシランカップリング剤処理層を有し、かつ、
前記耐熱処理層がニッケルまたはニッケルとリンとで構成されており、当該耐熱処理層中のニッケル付着量が30~60mg/mである、
表面処理銅箔。
【請求項2】
樹脂組成物の硬化物を含む絶縁層と、前記絶縁層の片面又は両面に請求項1に記載の表面処理銅箔とを備える銅張積層板。
【請求項3】
樹脂組成物又は前記樹脂組成物の半硬化物を含む樹脂層と、前記樹脂層の片面に請求項1に記載の表面処理銅箔とを備える樹脂付銅箔。
【請求項4】
請求項に記載の銅張積層板または請求項に記載の樹脂付銅箔を備え、その表面に回路としての導体パターンとを有する、回路基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面処理銅箔、並びに、それを用いた銅張積層板、樹脂付銅箔および回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
高周波対応の高速信号伝送基板には、導体として各種の金属箔、特に銅箔が使用されているが、将来的には、現在よりもさらに高い周波数の信号を使用する5GやWiGig(Wireless Gigabit)等に対応する必要がある。そのため、基板の伝送損失をより低減することが求められている。
【0003】
このような問題において、伝送損失を低減するためには、基板を構成する樹脂基材と銅箔を改良する必要がある。つまり、樹脂基材の誘電体に起因する誘電損失を小さくし、さらに銅箔の導体損失を小さくすることが必要となっている。
【0004】
このうち銅箔側の改良については、従来、表面粗さを小さくする等によって導体損失を小さくし、伝送損失の低減を図ってきた。しかし、伝送損失を小さくしようとすると、基板用に用いられる銅箔の基本特性として必須である樹脂との密着性や耐熱性が下がり、逆に密着性や耐熱性を向上させようとすると伝送損失が大きくなるという問題があり、伝送特性と基本特性を両立させるのは難しいとされていた。これは、伝送特性を小さくするために表面粗さを小さくすると樹脂に対するアンカー効果が弱まり、その結果、引き剥がし強さが低くなるためと考えられる。
【0005】
その他にも、高周波信号伝送回路形成用表面処理銅箔としては、伝送特性に影響を及ぼす粗化処理層について、従来の金属銅ではなく不導体の銅複合化合物で構成することで電気が流れないようにして粗化処理による導体損失を低減することが報告されている(特許文献1)。
【0006】
また、プリント配線板用表面処理銅箔において、伝送特性に影響を及ぼすシランカップリング剤層の粗化粒子の平均高さを調節したり、ニッケルを含む金属処理層のニッケル元素量を調節したりすることも知られている(特許文献2)。
【0007】
しかしながら、上記特許文献1記載の技術では、バリア処理やクロメート処理等を行わないため、特に耐熱性に劣るという問題がある。
【0008】
一方、上記特許文献2記載の技術では、バリア処理層として機能する金属処理層の処理量が少ないため、高い温度域(例えば、150℃以上)では耐熱性の確保が困難になるという問題がある。
【0009】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、高速信号伝送基板の伝送損失を低減させることができ、かつ、樹脂基材との密着性と、特に耐熱性を実用上問題ないレベルで確保できる表面処理銅箔、並びにそれを用いた銅張積層板、樹脂付銅箔および回路基板を提供することを目的とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特許第6110581号公報
【文献】特許第6182584号公報
【発明の概要】
【0011】
本発明の一態様に係る表面処理銅箔は、銅箔の少なくとも一方の面に銅の微細粗化粒子処理層を有する表面処理銅箔であって、前記微細粗化粒子処理層が粒子径40~200nmの微細銅粒子で構成されており、前記微細粗化粒子処理層上にニッケルを含む耐熱処理層を有し、前記耐熱処理層上に少なくともクロムを含む防錆処理層を有し、前記防錆処理層上にシランカップリング剤処理層を有し、かつ、前記耐熱処理層中のニッケル付着量が、30~60mg/mであることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る表面処理銅箔の構成を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<表面処理銅箔>
本実施形態に係る表面処理銅箔は、図1に示すように、銅箔1の少なくとも一方の面に銅の微細粗化粒子処理層2を有する表面処理銅箔であって、前記微細粗化粒子処理層2が粒子径40~200nmの微細銅粒子で構成されており、前記微細粗化粒子処理層2上にニッケルを含む耐熱処理層3を有し、前記耐熱処理層3上に少なくともクロムを含む防錆処理層4を有し、前記防錆処理層上にシランカップリング剤処理層5を有し、かつ、前記耐熱処理層中のニッケル付着量が、30~60mg/mであることを特徴とする。
【0014】
このような構成により、未処理銅箔の表面に微細粗化粒子で構成される微細粗化粒子処理層を設けることで樹脂基材との密着性を高め、さらに前記微細粗化粒子のサイズと、特に耐熱処理層中のニッケル付着量を調節することによって、伝送特性と基本特性(樹脂基材との密着性および耐熱性)を両立できる。
【0015】
すなわち、本発明によれば、高速信号伝送基板の伝送損失を低減させることができ、かつ、樹脂基材との密着性と、特に耐熱性を実用上問題ないレベルで確保できる表面処理銅箔、並びにそれを用いた銅張積層板、樹脂付銅箔および回路基板を提供することができる。
【0016】
以下、まず本実施形態の表面処理銅箔の各構成について、具体的に説明する。
【0017】
(銅箔)
従来、リジット基板等に使用される銅箔は電解銅箔、フレキシブル基板等に使用される銅箔は圧延銅箔というのが一般的であったが、近年、特にフレキシブル基板市場の隆盛に伴い、圧延銅箔並みの特性を有する電解銅箔が開発されており、現在は、基板の種類によらず圧延銅箔や電解銅箔が使用されている。このため、本実施形態で使用する未処理銅箔は、圧延銅箔または電解銅箔に限定することは無く、何れの銅箔を使用しても良い。
【0018】
(微細粗化粒子処理層)
微細粗化粒子処理層は、上記未処理銅箔の上に形成される一層目の表面処理層であって、表面積を増やし、樹脂基材との引き剥がし強さを向上させるために設ける層であり、粒子径40~200nmの微細銅粒子で構成されている。
【0019】
本実施形態において、上記粒子径とは以下の意味で使用する。つまり、電界放射型走査電子顕微鏡FE-SEM(日本電子製JSM-7800F)を使用し、試料台を40°傾斜させながら倍率80,000倍で観察し、観察された銅粒子の高さを粒子径の値とする。そして、本実施形態の微細粗化粒子処理層における微細銅粒子の粒子径は、上記方法で観察・測定した範囲の最大値が200nm、最小値が40nmである。
【0020】
なお、本実施形態における微細銅粒子処理層は、粒子径が200nmを超える銅粒子や40nm未満の銅粒子が含まれることを除外するものではない。しかし、200nmを超える粒子が多いと伝送損失が大きくなるおそれがあり、また40nm未満の粒子が多いと十分な密着性が確保できないおそれがあり、いずれの場合も好ましくない。
【0021】
前記微細粗化粒子処理層は、電解めっき法により形成することができる。
【0022】
本実施形態の微細銅粒子の粒子径は、めっき処理の浴組成の他、電解電流密度の影響を強く受ける。例えば、電解電流密度が高い場合には粗化粒子の粒子径は小さくなる傾向であり、逆に、電解電流密度が低い場合には粗化粒子の粒子径は大きくなる傾向である。このため、目的とする粒子径の粗化粒子を得るためには、電解電流密度を適切に設定しなければならない。
【0023】
以下に、銅の微細粗化粒子処理層を形成させる浴組成及び電解条件の例を挙げるが特にこれに限定されるものではない。
【0024】
(浴組成)
硫酸銅五水和物:10~70g/L(特に好ましくは30~50g/L)
ジエチレントリアミン五酢酸五ナトリウム(以下DTPA・5Na):
50~150g/L(特に好ましくは80~120g/L)
pH:3.0~6.0(特に好ましくは3.5~5.5)
pHの調製は硫酸及び水酸化ナトリウムを使用
【0025】
(電解条件)
電流密度:0.5~10.0A/dm(特に好ましくは1.0~6.0A/dm
電気量:10~130A・sec/dm(特に好ましくは30~110A・sec/dm
液温:25~50℃(特に好ましくは30~45℃)
陽極:銅板。
【0026】
DTPA・5Na濃度は50~150g/Lが適当であるが、この範囲外では、50g/L未満の場合、十分な微細化効果が得られにくくなり粗化粒子が粗大化する。150g/Lを超えると電流効率の低下を招き粗化処理の析出量が極端に減少し、更に電圧も上昇し不経済である。
【0027】
また、電気量は10~130A・sec/dmがよく、この範囲では粒子径40~200nmの銅粒子が得られ樹脂に対する密着性を確保できやすいという利点がある。逆に電気量が10A・sec/dm未満の場合、粒子径40nm未満の銅粒子が多くなり、密着性が低下するおそれがある。また、130A・sec/dmより多い場合は、粒子形状が樹枝状になりやすく、粒子径が粗大化しやすくなり、その結果、未処理銅箔との固着性が低くなり粉落ちが多くなる、ラミネート面の表面粗さが大きくなる等の不具合を生じる。
【0028】
(耐熱処理層)
耐熱処理層は、薬液や熱などのストレスから微細粗化粒子処理層を含めた銅箔を保護するために設けられる耐熱・防錆のための層であり、バリア処理層と呼ばれることもある。本実施形態の耐熱処理層はニッケルまたはニッケルとリンとを含み、かつ、耐熱処理層中のニッケル付着量は30~60mg/mである。
【0029】
前記ニッケル付着量が30~60mg/mであることにより、伝送特性と前記基本特性を両立できる。このニッケル付着量が30mg/m未満となると耐熱性が低下し、例えば、樹脂と銅箔の界面において膨れが発生し、結果として密着性が低下するおそれがあり、60mg/mを超えると、伝送損失が大きくなる可能性がある。より好ましいニッケル付着量の範囲は、40~50mg/mである。
【0030】
なお、本実施形態において、「付着量」とは、銅箔の微細粗化粒子処理層側にめっき(例えば電解めっき法)によって析出したニッケルの単位面積あたりの質量のことを指す。また、付着量は被処理銅箔を硝酸等で溶解、希釈し、ICP発光分光分析装置を用いてニッケルの濃度を分析する方法によって測定可能である。
【0031】
本実施形態の耐熱処理層は、ニッケルまたはニッケルとリンとで構成されていることが好ましい。
【0032】
本実施形態の耐熱処理層は、上記の微細粗化粒子処理層を形成した後に形成する二層目の表面処理層であり、電解めっき法により形成することができる。前記ニッケル付着量は、この電解めっきを行う際の電流条件によって調製することが可能である。
【0033】
以下に、ニッケルとリンとで構成される本実施形態の耐熱処理層を形成させる浴組成及び電解条件の例を挙げるが特にこれに限定されるものではない。
【0034】
(浴組成)
硫酸ニッケル六水和物 10~100g/L(特に好ましくは20~60g/L)
酢酸ナトリウム三水和物 2~40g/L(特に好ましくは5~30g/L)
次亜リン酸ナトリウム一水和物 0.1~10g/L(特に好ましくは1.0~6.0g/L)
pH 3.0~5.5(特に好ましくは3.5~5.0)。
【0035】
(電解条件)
電流密度:0.5~3.5A/dm(特に好ましくは1.0~2.0A/dm
電気量:1.8~2.7A・sec/dm(特に好ましくは2.0~2.5A・sec/dm
液温:25~50℃(特に好ましくは30~40℃)
陽極:白金族酸化物被覆チタン等の不溶性電極。
【0036】
ニッケルイオンの供給源としては硫酸ニッケル六水和物、塩化ニッケル六水和物、酢酸ニッケル四水和物などが使用できる。リンイオンの供給源としては亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸ナトリウム、亜リン酸ニッケルなどが使用できる。また導電性の付与として硫酸ナトリウムを添加してもよい。
【0037】
(防錆処理層)
防錆処理層は、加熱時や保管時の酸化を防ぐために設けられる層である。本実施形態の防錆処理層は、少なくともクロムを含み、クロメート処理層と呼ばれることもある。さらに、亜鉛を含んでいてもよい。
【0038】
本実施形態の防錆処理層は上記の耐熱処理層を形成した後に形成する三層目の表面処理層であり、電解めっき法により形成することができる。
【0039】
本実施形態の防錆処理層を形成させる浴組成は公知のものでよく、例えばクロム酸、重クロム酸ナトリウム、重クロム酸カリウムなどの6価クロムを有する浴組成が挙げられる。なお、防錆処理層形成後のクロムの析出形態はCr(OH)とCrが混在した状態であり、人体に悪影響を及ぼす6価クロムはなく3価クロムの形態で析出している。クロム酸液はアルカリ性、酸性のどちらでもかまわない。
【0040】
また、アルカリ性クロム酸液として特公昭58-15950号にある亜鉛イオン、6価クロムイオンを含むアルカリ性ジンククロメート液を使用してもよく、本クロム酸液を使用することで、クロム単独酸液からの防錆処理層よりも防錆性を向上させる事が出来る。
【0041】
本実施形態の防錆処理層を施す電解浴及び電解条件としては、例えば、以下に示す様な浴組成、条件が挙げられるが特にこれに限定されるものではない。
【0042】
(浴組成)
重クロム酸ナトリウム:2.5~60g/L(特に好ましくは5~30g/L)
亜鉛イオン:0.25~16g/L(特に好ましくは0.5~8g/L)
水酸化ナトリウム:10~180g/L(特に好ましくは20~90g/L)
【0043】
(電解条件)
電流密度:1.5~8.0A/dm(特に好ましくは3.0~4.0A/dm
電気量:4.5~6.5A・sec/dm(特に好ましくは5.0~6.0A・sec/dm
液温:25~50℃(特に好ましくは30~40℃)
陽極:白金族酸化物被覆チタン等の不溶性電極。
【0044】
(シランカップリング剤処理層)
本実施形態のシランカップリング剤処理層は、上記の防錆処理層を形成した後に形成する四層目の表面処理層であり、樹脂基材との密着性をより向上させるために設けられる層である。さらにシランカップリング剤処理層を設けることにより、引き剥がし強さを向上させるのみならず、過酷試験後の引き剥がし強さの劣化も抑制する事ができ、更に防錆性も向上させ、優れた汎用性を備えた回路基板用銅箔となる。
【0045】
本実施形態のシランカップリング剤処理層は、シランカップリング剤を適量で水等に添加し、水溶液として浸漬処理又はスプレー処理などにより塗布した後、水洗、乾燥させることによって形成できる。シランカップリング剤としてはエポキシ基、アミノ基、メルカプト基、ビニル基、メタクリロキシ基、スチリル基等、多種の中から選択して使用することができる。しかし、それぞれ異なった特性を有し、また、基材との相性もあるため、適切に選択して使用する必要がある。
【0046】
シランカップリング剤処理層を形成する浴としては、例えば以下に示す様な組成、条件が挙げられるが特にこれに限定されるものではない。
【0047】
(浴組成、条件)
γ-アミノプロピルトリエトキシシラン:1~5mL/L(特に好ましくは2~4mL/L)
液温:25~35℃(特に好ましくは28~32℃)
浸漬時間:15秒。
【0048】
<銅張積層板>
本実施形態の銅張積層板は、樹脂組成物の硬化物からなる絶縁層と、前記絶縁層の片面又は両面に上述した銅箔と、を備えることを特徴とする。このような構成により、耐熱性を備えつつ、伝送損失が低減された、信頼性の高い銅張積層板を提供することができる。
【0049】
本実施形態において、樹脂組成物の硬化物とは硬化反応が進行し、樹脂が架橋することにより、加熱しても溶融しない状態となったもののことをさす。また、樹脂組成物の半硬化物とは、樹脂組成物を、さらに硬化しうる程度に途中まで硬化された状態のものである。すなわち、半硬化物は、樹脂組成物を半硬化した状態の(Bステージ化された)ものである。例えば、樹脂組成物は、加熱すると、最初、粘度が徐々に低下し、その後、硬化が開始し、粘度が徐々に上昇する。このような場合、半硬化としては、粘度が上昇し始めてから、完全に硬化する前の間の状態等が挙げられる。
【0050】
(絶縁層)
本実施形態の銅張積層板が備える絶縁層は、下記で説明する樹脂組成物の硬化物からなる。さらに、絶縁層が後述するガラス基材を含んでいてもよい。絶縁層の厚みは、特に限定されないが、20~800μm程度である。
【0051】
本実施形態の絶縁層を構成する樹脂組成物は、熱硬化性樹脂および/または熱可塑性樹脂などを含む樹脂組成物であれば特に限定はない。例えば、熱硬化樹脂の場合にはエポキシ樹脂、低分子ポリフェニレンエーテル樹脂、シアネートエステル樹脂、フェノール樹脂、ベンゾオキサジン、酸無水物や不飽和基を保有する樹脂(アクリル、メタクリル、アリル、スチリル、ブタジエン、マレイミド等)等を単体で、もしくは、共重合体として使用することができる。また、熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、液晶ポリマー、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー等が挙げられる。上記樹脂は単独で使用してもよいし、2種以上を併用することもできる。
【0052】
中でも、その硬化物や半硬化物において、低誘電率・低誘電正接、高耐熱性を得ることができる樹脂を使用することがより好ましい。
【0053】
上述したような樹脂組成物は、銅張積層板を製造する際は、通常ワニス状に調製し、樹脂ワニスとして用いられることが多い。このような樹脂ワニスは、例えば、以下のようにして調製される。
【0054】
まず、熱硬化性樹脂、熱硬化性硬化剤、及び必要に応じて各種添加剤等の有機溶媒に溶解できる各成分を、有機溶媒に投入して溶解させる。この際、必要に応じて、加熱してもよい。その後、必要に応じて、有機溶媒に溶解しない成分、無機充填材等を添加して、ボールミル、ビーズミル、プラネタリーミキサー、ロールミル等を用いて、所定の分散状態になるまで分散させることにより、ワニス状の樹脂組成物が調製される。ここで用いられる有機溶媒としては、熱硬化性樹脂や熱硬化性硬化剤等を溶解させ、硬化反応を阻害しないものであれば、特に限定されない。具体的には、例えば、トルエン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。これらは単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0055】
本実施形態の絶縁層には、上記樹脂組成物の硬化物以外に、さらにガラス基材を含有させることが好ましい。それにより、加工上のトラブル(割れ等)を抑制したり、寸法変化を小さくしたり、線膨張を小さくしたり、反りを抑制したりできるという利点がある。
【0056】
本実施形態の絶縁層がガラス基材を含む場合、上述の樹脂組成物をガラス基材に含浸させて得られるプリプレグとして使用してもよい。このようなプリプレグを製造する方法としては、例えば、上述の樹脂ワニス(ワニス状に調製された樹脂組成物)をガラス基材に含浸させた後、乾燥する方法が挙げられる。
【0057】
樹脂ワニスのガラス基材への含浸は、浸漬及び塗布等によって行われる。この含浸は、必要に応じて複数回繰り返すことも可能である。また、この際、組成や濃度の異なる複数の樹脂ワニスを用いて含浸を繰り返し、最終的に希望とする組成及び樹脂量に調製することも可能である。
【0058】
樹脂ワニスが含浸されたガラス基材を、所望の加熱条件、例えば、80~170℃で1~10分間加熱することにより半硬化状態(Bステージ)のプリプレグが得られる。
【0059】
(銅張積層板の製造方法)
本実施形態の銅張積層板は、例えば、上述したような熱硬化性樹脂組成物を含むプリプレグを一枚または複数枚重ね、さらにその上下の両面又は片面に上述したような銅箔を、前記シランカップリング剤処理層がプリプレグと接するようにして重ね、これを加熱加圧成形して積層一体化することによって、両面銅箔張り又は片面銅箔張りの積層板を作製することができる。
【0060】
加熱加圧条件は、製造する積層板の厚みや樹脂組成物の種類等により適宜設定することができるが、例えば、温度を170~220℃、圧力を1.5~5.0MPa、時間を60~150分間とすることができる。
【0061】
<樹脂付銅箔>
本実施形態の樹脂付銅箔は、樹脂組成物又は前記樹脂組成物の半硬化物を含む樹脂層と、その樹脂層の片面に設けられた銅箔とが積層されている構成を有する。すなわち、本実施形態の樹脂付銅箔は、硬化前の樹脂組成物(Aステージの樹脂組成物)を含む樹脂層と、銅箔とを備える樹脂付銅箔であってもよいし、樹脂組成物の半硬化物(Bステージの樹脂組成物)を含む樹脂層と、銅箔とを備える樹脂付銅箔であってもよい。
【0062】
樹脂層に用いる樹脂組成物、および銅箔としては、上記銅張積層板で説明したものと同様のものを使用することができる。なお、本実施形態の樹脂付銅箔において、樹脂組成物またはその半硬化物は、前記樹脂組成物を乾燥または加熱乾燥したものであってもよい。
【0063】
樹脂付銅箔を製造する方法としては、例えば、上記で得られた樹脂ワニスを銅箔のシランカップリング剤処理層を形成した表面に塗布した後、乾燥することにより、樹脂組成物を半硬化させる方法等が挙げられる。
【0064】
樹脂付銅箔が有する樹脂層は、通常、ガラス基材を含んでいないため、樹脂ワニスの銅箔への適用は、塗布等によって行われるが、それは必要に応じて複数回繰り返すことも可能である。また、この際、組成や濃度の異なる複数の樹脂ワニスを用いて塗布を繰り返し、最終的に希望とする組成(含有比)及び樹脂量に調製することも可能である。
【0065】
樹脂ワニスを塗布した後、半硬化状態にする場合は、所望の加熱条件、例えば、80~170℃で1~10分間加熱して、硬化前の樹脂組成物を含む樹脂層(Aステージ)又は半硬化状態の樹脂層(Bステージ)が得られる。樹脂ワニスを塗布した(プリプレグの場合は、樹脂ワニスを含浸させた)後、加熱によって、ワニスから有機溶媒を揮発させ、有機溶媒を減少又は除去させことができる。
【0066】
本実施形態の樹脂付銅箔も、上述の銅張積層板と同様の効果および利点を有する。
【0067】
<回路基板>
本実施形態の銅張積層板および樹脂付銅箔は、表面の銅箔をエッチング加工等して回路形成をすることによって、表面に回路として導体パターンを設けた回路基板として使用することができる。回路形成する方法としては、上記記載の方法以外に、例えば、セミアディティブ法(SAP:Semi Additive Process)やモディファイドセミアディティブ法(MSAP:Modified Semi Additive Process)による回路形成等が挙げられる。本実施形態の銅張積層板および樹脂付銅箔を用いて得られる回路基板は、耐熱性を備えつつ、伝送損失が低減された、信頼性の高い回路基板である。
【0068】
本明細書は、上述したように様々な態様の技術を開示しているが、そのうち主な技術を以下にまとめる。
【0069】
本発明の一態様に係る表面処理銅箔は、銅箔の少なくとも一方の面に銅の微細粗化粒子処理層を有する表面処理銅箔であって、前記微細粗化粒子処理層が粒子径40~200nmの微細銅粒子で構成されており、前記微細粗化粒子処理層上にニッケルを含む耐熱処理層を有し、前記耐熱処理層上に少なくともクロムを含む防錆処理層を有し、前記防錆処理層上にシランカップリング剤層を有し、かつ、前記耐熱処理層中のニッケル付着量が30~60mg/mであることを特徴とする。
【0070】
このような構成により、高速信号伝送基板の伝送損失を低減させることができ、かつ、樹脂基材との密着性と、特に耐熱性を実用上問題ないレベルで確保できる表面処理銅箔を提供することができる。
【0071】
また、前記表面処理銅箔において、前記耐熱処理層がニッケルまたはニッケルとリンとで構成されていることが好ましい。それにより、上述したような効果をより確実に得ることができる。
【0072】
本発明の他の態様に係る銅張積層板は、樹脂組成物の硬化物からなる絶縁層と、前記絶縁層の片面又は両面に上述した表面処理銅箔と、を備えることを特徴とする。
【0073】
また、本発明のさらなる態様に係る樹脂付銅箔は、樹脂組成物又は前記樹脂組成物の半硬化物を含む樹脂層と、前記樹脂層の片面に上述の表面処理銅箔とを備えることを特徴とする。
【0074】
さらに、本発明には、上記銅張積層板または上記樹脂付銅箔を備え、その表面に回路としての導体パターンとを有する回路基板も包含される。
【0075】
以下に、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【実施例
【0076】
<未処理銅箔>
実施例及び比較例の未処理銅箔として、厚さ18μmの電解銅箔または圧延銅箔を用いた。なお、未処理圧延銅箔を用いる場合は、炭化水素系有機溶剤に60秒間浸漬、水洗して圧延油の除去を行ったのちに表面処理を行った。
【0077】
<表面処理銅箔の作成>
(実施例1)
前処理として、100g/L硫酸水溶液中で陰極に銅板、陽極に上記未処理銅箔を使用し電流密度5A/dmで6秒間電解を行い、未処理銅箔表面の酸化層除去及び活性化を行った。
【0078】
次いで、以下に示す浴組成、電解条件で処理することで、該未処理銅箔のラミネート面側に銅の微細粗化粒子処理層を形成させた。
【0079】
(浴組成)
硫酸銅五水和物 35g/L
ジエチレントリアミン五酢酸五ナトリウム 100g/L
pH4.8
【0080】
(電解条件)
電流密度:6A/dm
電気量:50A・sec/dm
液温:30℃
電極:銅板。
【0081】
得られた微細粗化粒子処理層を、電界放射型走査電子顕微鏡FE-SEM(日本電子製JSM-7800F)を使用し、試料台を40°傾斜させながら倍率80,000倍で観察した。その結果観察された銅粒子の高さを粒子径の値として、前記微細粗化粒子処理層における粗化粒子の粒子径は、最小値40nm、最大値200nmであった。
【0082】
次いで、水洗後、二層目表面処理層である耐熱処理層を、以下に示す浴組成、電解条件で処理することで形成させた。
【0083】
(浴組成)
硫酸ニッケル六水和物 30g/L
酢酸ナトリウム三水和物 10g/L
次亜リン酸ナトリウム一水和物 2.0g/L
pH4.5
【0084】
(電解条件)
電流密度:1.0A/dm
電気量:1.8A・sec/dm
液温:32℃
電極:白金族酸化物被覆チタン板。
【0085】
得られた耐熱処理層におけるニッケル付着量は、被処理銅箔を硝酸で溶解、希釈してICP発光分光分析装置によりニッケルの濃度を分析することによって測定した。その結果、ニッケル付着量は32mg/mであった。
【0086】
次いで、水洗後、三層目表面処理層となる防錆処理層を、以下に示す電解浴組成、pH、電解条件で処理を施した。
【0087】
(浴組成)
重クロム酸ナトリウム:10g/L
亜鉛イオン:1.0g/L
水酸化ナトリウム:40g/L
液温:30℃
【0088】
(電解条件)
電流密度:4A/dm
電気量:5.5A・sec/dm
陽極:白金族酸化物被覆チタン板。
【0089】
次いで、水洗後、四層目表面処理層となるシランカップリング剤処理層を、以下に示す浴組成、液温、浸漬時間で処理を施すことにより形成し、実施例1の表面処理銅箔を得た。
【0090】
(浴組成)
γ-アミノプロピルトリエトキシシラン 2mL/L
液温:30℃
浸漬時間:15秒。
【0091】
(実施例2)
二層目の耐熱処理層を、以下に示す浴組成、電解条件で処理することで形成させた以外は、実施例1と同様にして、実施例2の表面処理銅箔を得た。得られた耐熱処理層におけるニッケル付着量は56mg/mであった。
【0092】
(浴組成)
硫酸ニッケル六水和物 30g/L
酢酸ナトリウム三水和物 10g/L
次亜リン酸ナトリウム一水和物 2.0g/L
【0093】
(電解条件)
電流密度:1.6A/dm
電気量:2.7A・sec/dm
pH4.5
液温:32℃
陽極:白金族酸化物被覆チタン板。
【0094】
(比較例1)
二層目の耐熱処理層を設けなかったこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1の表面処理銅箔を得た。得られた表面処理銅箔におけるニッケル付着量は0mg/mであった。
【0095】
(比較例2)
二層目の耐熱処理層を、以下に示す浴組成、電解条件で処理することで形成させた以外は、実施例1と同様にして、比較例2の表面処理銅箔を得た。得られた耐熱処理層におけるニッケル付着量は82mg/mであった。
【0096】
(浴組成)
硫酸ニッケル六水和物 30g/L
酢酸ナトリウム三水和物 10g/L
次亜リン酸ナトリウム一水和物 2.0g/L
【0097】
(電解条件)
電流密度:2.1A/dm
電気量:3.6A・sec/dm
pH4.5
液温:32℃
陽極:白金族酸化物被覆チタン板。
【0098】
(比較例3)
二層目の耐熱処理層を、以下に示す浴組成、電解条件で処理することで形成させた以外は、実施例1と同様にして、比較例3の表面処理銅箔を得た。得られた耐熱処理層におけるニッケル付着量は106mg/mであった。
【0099】
(浴組成)
硫酸ニッケル六水和物 30g/L
酢酸ナトリウム三水和物 10g/L
次亜リン酸ナトリウム一水和物 2.0g/L
【0100】
(電解条件)
電流密度:2.8A/dm
電気量:4.9A・sec/dm
pH4.5
液温:32℃
陽極:白金族酸化物被覆チタン板。
【0101】
(比較例4)
一層目の微細粗化粒子処理層を、以下に示す浴組成、電解条件で処理することで形成させた以外は、実施例1と同様にして、比較例4の表面処理銅箔を得た。得られた微細粗化粒子処理層における粗化粒子の粒子径は、最小値700nm、最大値1400nmであった。また、得られた耐熱処理層におけるニッケル付着量は32mg/mであった。
【0102】
(浴組成)
浴(1) 硫酸銅五水和物 47g/L
硫酸100g/L
浴(2) 硫酸銅五水和物 200g/L
硫酸100g/L
【0103】
(電解条件)
浴(1)にて電流密度50A/dm、電気量130A・sec/dm、液温30℃の電解条件にて電解して微細銅粒子を付着させた後、さらに浴(2)にて電流密度5A/dm、電気量400A・sec/dm、液温40℃の電解条件にて電解することで微細粗化粒子処理層を形成した。
【0104】
(比較例5)
二層目の耐熱処理層を、以下に示す浴組成、電解条件で処理することで形成させ、さらに防錆処理層を形成しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、比較例5の表面処理銅箔を得た。得られた耐熱処理層におけるニッケル付着量は42mg/mであった。
【0105】
(浴組成)
硫酸ニッケル六水和物 30g/L
酢酸ナトリウム三水和物 10g/L
次亜リン酸ナトリウム一水和物 2.0g/L
【0106】
(電解条件)
電流密度:1.3A/dm
電気量:2.3A・sec/dm
pH4.5
液温:32℃
陽極:白金族酸化物被覆チタン板。
【0107】
<評価用積層板の作成>
(伝送特性試験用基板作製)
プリプレグ(パナソニック製、メグトロン6「R-5670N」、#1078タイプ)を2枚重ねて積層し、それぞれ実施例および比較例に示す銅箔を両面に重ねて、温度200℃、2時間、圧力3MPaの条件で加熱加圧することにより、150μmの厚みの評価用銅張積層板を得た。次に、得られた両面板の片面を線幅100~200μmで加工した後、加工面を挟むようにさらにプリプレグ2枚を2次積層し、3層板を作製した。線幅は仕上がり後、回路の特性インピーダンスが50Ωとなるように調製した。
【0108】
(耐熱試験用基板作製)
プリプレグ(パナソニック製、メグトロン6「R-5670N」、#2116タイプ)を6枚重ねて積層し、それぞれ上記で得られた各実施例および各比較例の表面処理銅箔を両面に重ねて、温度200℃、2時間、圧力3MPaの条件で加熱加圧することにより、0.8mmの厚みの評価用銅張積層板を得た。
【0109】
<評価試験>
上記のように調製されたそれぞれの評価積層板を、以下に示す方法により評価を行った。
【0110】
[伝送特性(20GHz)]
各実施例および比較例の表面処理銅箔を用いて得られた評価用積層板について、伝送特性はネットワークアナライザー(キーサイトテクノロジー社製 N5230A)を用いて通過損失を評価した。なお、評価周波数は20GHzであった。
【0111】
[オーブン耐熱試験]
得られた銅箔張積層板を用いて、JIS C 6481に準じて作製した試験片を、250℃、260℃、280℃、及び300℃に設定した空気循環装置付き恒温槽中で1時間処理したときに、試験片5枚中全て異常がなかったものを「○」、試験片5枚中1枚以上のサンプルにおいて「ふくれ」又は「はがれ」が生じたものを「×」と判定した。本試験においては、280℃で「○」の評価を得たサンプルを合格とする。
【0112】
以上の試験結果を表1に示す。
【0113】
【表1】
【0114】
表1の結果から明らかなように、本発明の表面処理銅箔を用いた積層板では、優れた耐熱性を有し、かつ、伝送特性にも優れていることが確認された。
【0115】
これに対し、耐熱処理層におけるニッケル付着量が0であった比較例1では、耐熱性を得ることができなかった。一方で、耐熱処理層におけるニッケル付着量が過剰となっていた比較例2および比較例3では、伝送特性は不十分であった。
【0116】
また、微細粗化粒子処理層における銅粒子サイズが大きかった比較例4では、伝送特性に劣り、耐熱性も十分とは言い難い結果となった。防錆処理層を形成しなかった比較例5でも十分な耐熱性を得ることはできなかった。
【0117】
この出願は、2019年2月4日に出願された日本国特許出願特願2019-018095を基礎とするものであり、その内容は、本願に含まれるものである。
【0118】
本発明を表現するために、前述において具体例や図面等を参照しながら実施形態を通して本発明を適切かつ十分に説明したが、当業者であれば前述の実施形態を変更及び/又は改良することは容易になし得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態又は改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態又は当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明は、伝送基板(回路基板)用の電子材料やそれを用いた各種デバイスに関する技術分野において、広範な産業上の利用可能性を有する。

図1