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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-03
(45)【発行日】2023-08-14
(54)【発明の名称】照明装置及び投写型映像表示装置
(51)【国際特許分類】
   G03B 21/14 20060101AFI20230804BHJP
   G03B 21/00 20060101ALI20230804BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20230804BHJP
   F21V 5/02 20060101ALI20230804BHJP
   F21V 13/02 20060101ALI20230804BHJP
   F21Y 115/30 20160101ALN20230804BHJP
   F21Y 113/13 20160101ALN20230804BHJP
【FI】
G03B21/14 A
G03B21/00 D
F21S2/00 330
F21S2/00 350
F21V5/02 300
F21V13/02 400
F21Y115:30
F21Y113:13
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022184806
(22)【出願日】2022-11-18
(62)【分割の表示】P 2018014647の分割
【原出願日】2018-01-31
(65)【公開番号】P2023022126
(43)【公開日】2023-02-14
【審査請求日】2022-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100135703
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 英隆
(72)【発明者】
【氏名】山本 紀和
【審査官】川俣 郁子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107436526(CN,A)
【文献】特開平11-119151(JP,A)
【文献】特開2007-226020(JP,A)
【文献】特開2012-128214(JP,A)
【文献】特開平11-044920(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0244489(US,A1)
【文献】国際公開第2015/056381(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21K9/00-9/90
F21S2/00-45/70
G03B21/00-21/10
21/12-21/13
21/134-21/30
33/00-33/16
H04N5/66-5/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
青色光を出力する第1照明装置と、赤色光を出力する第2照明装置と、緑色光を出力する第3照明装置と、を備える投写型映像表示装置であって、
前記第2照明装置及び前記第3照明装置は、それぞれ
2次元方向で配置された複数の半導体レーザー素子を含む光源ユニットと、
前記光源ユニットの前面に配置されかつ前記各半導体レーザーからの出射光の光束の進行方向を略平行光に変換するコリメートレンズと、
前記コリメートレンズの前面に配置され、前記略平行光の進行方向を所定の1軸方向のみ変化させる少なくとも1つの光学素子と、を有し、
前記光学素子は光透過性を有し、かつ、前記略平行光に対して垂直な第1の面と、前記第1の面に対して傾斜した第2の面とを有し、
前記光学素子は、前記略平行光が前記第1の面に入射したときに、前記第2の面にて屈折させることで、前記略平行光の進行方向を前記1軸方向のみ変更して、前記略平行光に対して傾斜された傾斜光束を出射し、これにより、前記傾斜光束の進行方向の所定位置の断面において、前記光源ユニットから出力される複数のスポット光で構成される画面のアスペクト比から所定のアスペクト比に変更されるように構成し、
前記少なくとも1つの光学素子は複数の三角柱プリズムで構成され、
前記各三角柱プリズムは、前記コリメートレンズからの前記略平行光の進行方向に対して、前記光源ユニットの少なくとも1つの半導体レーザー素子ごとにシフトさせて配置されたことを特徴とする投写型映像表示装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つの光学素子は三角柱プリズムで構成されることを特徴とする請求項1に記載の投写型映像表示装置。
【請求項3】
前記光学素子を透過した光束を集光し、集光された光束の縦横方向の光線角度を変更する縮小光学系をさらに備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の投写型映像表示装置。
【請求項4】
前記傾斜光束の進行方向の所定の位置に設けられ、前記傾斜光束の進行方向をさらに変更する三角柱プリズムをさらに備えることを特徴とする請求項1~3のうちのいずれか1つに記載の投写型映像表示装置。
【請求項5】
前記第1照明装置、前記第2照明装置及び前記第3照明装置が有する源ユニットから出力される複数のスポット光で構成される画面のアスペクト比は、それぞれ異なる、請求項1~4のうちのいずれか1つに記載の投写型映像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の半導体レーザーを照明光源として用いた照明装置及び、それを用いた投写型映像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、照明装置及び投写型映像装置用の照明光源に、水銀を用いた従来の放電ランプに代わり半導体レーザーを用いた技術の開発が進められている。
【0003】
半導体レーザー光は前面に配置したコリメートレンズにより、略平行な光に整形することが可能なため、従来の放電ランプよりも光を効率よく集光することが可能であるが、現状では半導体レーザーの個々の光出力は十分高いとは言えないため、照明装置及び投写型映像表示装置の光出力を高めるには、半導体レーザー及びコリメートレンズを複数個配列させた光源ユニットとして光出力を高めるように構成される。
【0004】
光源ユニット後段には縮小光学系が配置され、光源ユニットから発せられる略平行光の光線束を縮小しスポット光とすることで、例えば蛍光体励起及びインテグレーター光学系のロッド端面への集光が可能となる。
【0005】
光源ユニットは一般的に個々の半導体レーザーが複数個規則的に並べられた構成であり、半導体レーザーのパッケージ、及び前面に配置したコリメートレンズの物理的な寸法制約のため、密接した配置が困難であり、結果として光源ユニットの光線束は隙間の空いたような光線束となっている。
【0006】
加えて、機器薄型化、及び光量バランスなど光源ユニット配置の製品的な制約のため、光源ユニット部の配列の縦横比(複数のスポット光による画面のアスペクト比に対応する)が望ましいサイズにならない場合がある。その際、後段の縮小光学系のレンズ系が当該アスペクト比の大きな寸法に制約され大型化し、結果機器の大型化に繋がってしまう。
【0007】
加えて、投写型映像表示装置に使用した際には、上記アスペクト比が大きい状態で後段の縮小光学系で光線束が縮小された場合、インテグレーター光学系への集光時に光線の最縁部の光線角度はレンズに入射する像高で決定されるため、照明装置から出射される光線の縦横比が色ごとに異なると、インテグレーター光学系に入射し又は出射する光線の縦横の角度、すなわち光線のF値が異なることとなる。その結果、投写光として全ての光を使用する場合は、光学系の大型化につながってしまう。
【0008】
逆に、小型化のため縦横の光線角度、すなわちF値の異なる光線を制限するように光学系のF値を小さく設定した場合、光学系の途中で光線が遮断されることから、投写光の割合が低下し、スクリーンに到達する光出力が低下するばかりか、色ごとの縦横F値が異なることから、例えば投写レンズをズームした場合、投写レンズのズーム時のF値変動により、スクリーンに投写される色も変化してしまい、安定した光出力を得ることが困難となってしまう。
【0009】
これを改善するため、インテグレーター光学系でのロッドのテーパー化及びシリンドリカルレンズによる縦横光線角度の補正等、光学システム全体での補正をする構成が必要となる。
【0010】
特許文献1は、光源ユニット前面に、方向の異なる反射面を有する複数の光学素子が配置され、光源ユニットより発せられた光線束の一部を反射させ、光源ユニット内の同一軸方向の半導体レーザーの配列ピッチ間に再度反射させることで、光源ユニットの光線束を一方向に縮小するよう構成した光源装置が考案されている。
【0011】
さらに、特許文献2は、中心軸以外の全ての光軸列に方向の異なる反射面を有する複数の光学素子を配置し、加えて、光学素子の長さは列ごとに変化させることで半導体レーザーの配列間隔によらずに光源ユニットの光線束を一方向に縮小するよう構成した光源装置が考案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2016-186585号公報
【文献】特開2016-186909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、複数の光学素子を用いて光源ユニット内の半導体レーザーの配列ピッチ間に反射させる構成である。そのため縮小の間隔は半導体レーザーの配列間隔で制限されてしまい、最適なアスペクト比での配置を行うには別途光学補正が必要となってしまう課題があった。
【0014】
また、特許文献2に記載の技術では、特許文献1の課題を克服するため、長さの異なる複数の光学素子を用いて光源ユニット内の半導体レーザーの配列ピッチを半導体レーザーの配列間隔に制限されないよう構成しているが、列ごとに異なるサイズの光学素子が必要となり、光学部材点数の増加に加え、保持機構の複雑化を招くといった課題があった。
【0015】
加えて、特許文献1及び特許文献2に記載の技術では、前記光学素子2つの反射面は前記光学素子に入射した光線と出射する光線は同一方向になるように構成されているため、結果、光源ユニット面に垂直な光線となるように配置が制限されてしまうという課題があった。
【0016】
本発明の目的は以上の課題を解決し、光学部材点数及び保持機構の複雑化を招くことなく、半導体レーザーの配列間隔に制限されずに自由にアスペクト比を変形することのできる照明装置及び投写型映像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に係る照明装置は、
2次元方向で配置された複数の半導体レーザー素子を含む光源ユニットと、
前記光源ユニットの前面に配置されかつ前記各半導体レーザーからの出射光の光束の進行方向を略平行光に変換するコリメートレンズと、
前記コリメートレンズの前面に配置され、前記略平行光の進行方向を所定の1軸方向のみ変化させる少なくとも1つの光学素子と、
を備える照明装置であって、
前記光学素子は光透過性を有し、かつ、前記略平行光に対して垂直な第1の面と、前記第1の面に対して傾斜した第2の面とを有し、
前記光学素子は、前記略平行光が前記第1の面に入射したときに、前記第2の面にて屈折させることで、前記略平行光の進行方向を前記1軸方向のみ変更して、前記略平行光に対して傾斜された傾斜光束を出射し、これにより、前記傾斜光束の進行方向の所定位置の断面において、前記光源ユニットによる複数のスポット光による画面のアスペクト比から所定のアスペクト比に変更されるように構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
従って、本発明に係る照明装置によれば、光学部材点数の増大及び保持機構の複雑化を招くことなく、半導体レーザーの配列間隔に制限されずに自由にアスペクト比を変形することのできる照明装置等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態1に係る投写型映像表示装置1の構成例を示す概略平面図である。
図2図1の照明装置101の内部構成例を示す概略平面図である。
図3A図2の緑色光源部201Gの構成例及び光路を示す概略平面図である。
図3B図2の緑色光源部201Gの構成例及び光路を示す概略側面図である。
図3C図3A及び図3Bの断面L250における複数のスポット光により構成される画面を示す正面図である。
図3D図3A及び図3Bの断面L251における複数のスポット光により構成される画面を示す正面図である。
図4A図2の赤色光源部201Rの構成例及び光路を示す概略平面図である。
図4B図2の赤色光源部201Rの構成例及び光路を示す概略側面図である。
図4C図4A及び図4Bの断面L260における複数のスポット光により構成される画面を示す正面図である。
図4D図4A及び図4Bの断面L261における複数のスポット光により構成される画面を示す正面図である。
図4E図4A及び図4Bの断面L262における複数のスポット光により構成される画面を示す正面図である。
図5A図2の光学素子204Rの配置応用例1を示す概略平面図である。
図5B図2の光学素子204Rの配置応用例2を示す概略平面図である。
図5C図2の光学素子204Rの配置応用例3を示す概略平面図である。
図5D図2の光学素子204Rの配置応用例4を示す概略平面図である。
図6】実施形態2に係る投写型映像表示装置2の構成例を示す概略平面図である。
図7A図6の蛍光体ホイール305の構成例を示す概略正面図である。
図7B図6の蛍光体ホイール305の構成例を示す概略側面図である。
図8図6の照明装置301の内部構成例を示す概略平面図である。
図9A図8の部分反射ミラー501の構成例を示す正面図である。
図9B図8の部分反射ミラー502の構成例を示す正面図である。
図10A図6の照明装置301から出射して蛍光体励起用アフォーカル光学系310に進む各スポット光B1,B2、B3の配置例を示す模式正面図である。
図10B図6の照明装置301から出射して青色用アフォーカル光学系320に進むスポット光B1を示す模式正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、適宜図面を参照しながら、実施形態について詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0021】
なお、添付図面及び以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために、提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
【0022】
(実施形態1)
以下、図1図5を用いて実施形態1について説明する。以下では本開示に係る投写型映像表示装置の具体的な実施形態として、光偏向制御を行うデジタルマイクロミラーデバイス(以下、「DMD」という。)を有する投写型映像表示装置について説明する。
【0023】
[1-1.構成]
図1は実施形態1に係る投写型映像表示装置1の構成例を示す概略平面図である。
【0024】
図1において、投写型映像表示装置1は、照明装置101、アフォーカル光学系110、反射ミラー102、拡散板ホイール103、集光光学系104、ロッドインテグレーター105、リレー光学系120、内部全反射プリズム(以下、「TIRプリズム」という。)130、光偏向制御部106、及び投写光学系140を備えて構成される。ここで、アフォーカル光学系110は、例えば片凸レンズ111と、両凹レンズ112とを備えて構成される。リレー光学系120は、例えば片凸レンズ121,123と、両凸レンズ122とを備えて構成される。TIRプリズム130は、例えばプリズム131,132を備えて構成される。
【0025】
照明装置101から出力された平行光であるレーザー光の光束はアフォーカル光学系110を介して、反射ミラー102にて反射された後、拡散板ホイール103を通過する。通過するレーザー光は拡散板ホイール103によりそのコヒーレント性が低下された後、集光光学系104で集光される。集光されたレーザー光は縮小光学系であるロッドインテグレーター105に入射し均一な光量分布に変換された後、リレー光学系120及びTIRプリズム130を介して光偏向制御部106に導かれる。光偏向制御部106のDMDにて光変調信号に応じて光を偏向させることにより映像光を生成する。生成した映像光は投写光学系140を介してスクリーン400に投写され、映像光に対応する映像が表示される。
【0026】
[1-1-1.照明装置の構成]
図2図1の照明装置101の内部構成例を示す概略平面図である。
【0027】
図2において、照明装置101は、3色の光源部201B,201G,201Rと、色合成ミラー210,211とを備えて構成される。
【0028】
赤色の光源部201Rは、複数の赤色光源を有する赤色の光源ユニット202Rと、各赤色光源に対応して設けられる複数のコリメートレンズ203Rと、例えば各赤色光源に対応して設けられる複数の光学素子204Rと、三角柱プリズム205とを備えて構成される。緑色の光源部201Gは、複数の緑色光源を有する緑色の光源ユニット202Gと、各緑色光源に対応して設けられる複数のコリメートレンズ203Gと、例えば各緑色光源に対応して設けられる複数の光学素子204Gとを備えて構成される。青色の光源部201Bは、複数の青色光源を有する青色の光源ユニット202Bと、各青色光源に対応して設けられる複数のコリメートレンズ203Bを備えて構成される。なお、各色の光学素子204G,204Rは例えば三角柱プリズムで構成される。
【0029】
光源ユニット202B,202G,202Rはそれぞれ、青色、緑色及び赤色の光源であって、発光色が異なる半導体レーザーを縦横の2次元方向の4×2配列でまとめられた光源ブロックBB,BG,BRを2個ないし5個用いて構成する。発光色ごとに光源ユニットの数が異なるのは、各色の光出力や視感度のバランスを図るためである。図2の構成例では、青色光源ユニット202Bは2個の光源ブロックBBで構成され、緑色光源ユニット202Gは3個の光源ブロックBGで構成され、赤色光源ユニット202Rは5個の光源ブロックBRで構成されている。その結果、各色の光源ユニット202B,202G,202Rの縦横比(光源からの複数のスポット光による画面のアスペクト比に対応し、以下「アスペクト比」という。)は以下のように、互いに異なる。
(1)青色光源ユニット202Bは4×4配列の光源ブロックBBで構成され、そのアスペクト比は1:1となる。
(2)緑色光源ユニット202Gは4×6配列の光源ブロックBGで構成され、そのアスペクト比は2:3となる。
(3)赤色光源ユニット202Rは4×10配列の光源ブロックBRで構成され、そのアスペクト比は2:5となる。
【0030】
図3A図2の緑色光源部201Gの構成例及び光路を示す概略平面図であり、図3B図2の緑色光源部201Gの構成例及び光路を示す概略側面図である。図3C図3A及び図3Bの断面L250における複数のスポット光により構成される画面を示す正面図であり、図3D図3A及び図3Bの断面L251における複数のスポット光により構成される画面を示す正面図である。なお、図3Aにおいて、レーザー光の出射方向をX軸方向とし、当該図3Aの平面において前記X軸方向に垂直な方向をY軸方向とし、XY平面に垂直な方向をZ軸方向とする。
【0031】
図3A及び図3Bにおいて、緑色光源ユニット202Gの各光源より出力された光はコリメートレンズ203Gにて、X軸方向に対して略平行な略平行光に整形された後、複数の光学素子204Gに入射する。ここで、各光学素子204Gは、前記略平行光に対して垂直な入射平面204Pと、前記入射平面204Pに対して所定の傾斜角度θで傾斜された(すなわち、入射する略平面光に対して角度θで傾斜された)出射平面204Qで構成される光透過性を有する光学素子であり、出射平面204Qの傾斜角度θは光学素子204G内で入射光が全反射しない角度となるように設定されている。例えば、本構成例で用いられている光学素子204Gの材質はホウケイ酸塩ガラス(BK7)であり、傾斜角度θは37度であり、入射する略平面光の屈折角度θdは約29度である。
【0032】
コリメートレンズ203Gより出射された光は光学素子204Gの入射平面204Pを介して入射後、傾斜された出射平面204Qにより角度θdだけ屈折し、緑色光源ユニット202Gの光の進行方向が例えばXY平面上で1軸方向のみ変更され、光学素子204Gを介してコリメートレンズ203Gより出射された光線(X軸方向)に対して例えば約29度傾いて光学素子204Gの出射平面204Qより出射される。複数の光学素子204Gの個々の配置を、図3Aに示すように、コリメートレンズ203Gからの略平行光の進行方向(X軸方向)に対して距離をずらして配置することで、光学素子204Gより出射される光束の圧縮率を変化することが可能である。図3Aの構成例では、青色光源部201Bからの複数のスポット光による画面のアスペクト比が断面L251において1:1となり、かつ、各コリメートレンズ203Gより出射された複数の光の位相が断面L251において互いに同相となるように、複数の光学素子204Gの位置をX軸方向で調整して配置している。図3Aの構成例を用いた実施例では、光源部201Gの複数の光源の間隔が11mmのため、隣り合う光学素子204GをX軸方向で約4.7mmだけシフトさせて配置している。
【0033】
その結果、図3Cに示すように、各コリメートレンズ203Gから出射後の断面L250において、緑色光源ユニット202Gからの複数のスポット光で構成される画面のアスペクト比は2:3となっている。これに対して、複数の光学素子204Gを通過後の断面L251においては、図3Dに示すように、青色光源ユニット202Bのアスペクト比と同様に、アスペクト比が1:1になるように、複数のスポット光で構成される画面が整形される。上記アスペクト比は各光学素子204Gの傾斜角度θ(X軸方向に対する角度)及び/又は間隔を変化することで任意のアスペクト比に変化させることが可能である。なお、各コリメートレンズ203Gから出射されたスポット光は実際は楕円光であるが、整形時の形状変化状態が分かりやすいように円光として図示している。
【0034】
上記の緑色光源ユニット202Gと同様に、赤色光源ユニット202Rも複数の光学素子204Rを用いてアスペクト変換を行う。これについて以下に説明する。
【0035】
図4A図2の赤色光源部201Rの構成例及び光路を示す概略平面図であり、図4B図2の赤色光源部201Rの構成例及び光路を示す概略側面図である。また、図4C図4A及び図4Bの断面L260における複数のスポット光により構成される画面を示す正面図であり、図4D図4A及び図4Bの断面L261における複数のスポット光により構成される画面を示す正面図であり、図4E図4A及び図4Bの断面L262における複数のスポット光により構成される画面を示す正面図である。
【0036】
図4A及び図4Bにおいて、赤色光源ユニット202Rより出力された光はコリメートレンズ203Rにて略平行光に整形された後、複数の光学素子204Rの入射平面204Pを介して入射する。ここで、各光学素子204Rは、前記略平行光に対して垂直な入射平面204Pと、前記入射平面204Pに対して傾斜された出射平面204Qで構成される光透過性を有する光学素子であり、傾斜された出射平面204Qの傾斜角度θは光学素子204R内で入射光が全反射しない角度となるように設定されている。複数の光学素子204Rに入射した光は、光学素子204Rの傾斜した出射平面204Qで屈折し、赤色光源ユニット202Rの光の進行方向が例えばXY平面上で1軸方向のみ変更され、光学素子204Rの出射平面204Qから出射される。図4Aの構成例では、光学素子204Rの材質は、光学素子204Gと同様にホウケイ酸塩ガラス(BK7)であり、傾斜角度θは37度であり、光の屈折角度θdは約29度である。また、光源部201Rの光源の間隔も光源部201Gと同様に11mmであり、隣り合う光学素子204Rは約2.0mmだけシフトして配置している。
【0037】
赤色光源ユニット202Rから出力される複数のスポット光で構成される画面のアスペクト比は2:5であり、青色光源部201Bのアスペクト比(1:1)に対して非常に大きいため、光学素子204Rより出射した光束のみでアスペクト比1:1まで圧縮するのは困難である。光学素子204Rより出射した光は、その後に配置した三角柱プリズム205に再度入射した後、屈折されることで、光線の進行方向をコリメートレンズ203Rからの略平行光と平行に補正し、かつ光束をアスペクト比1:1まで圧縮して赤色光源部201Rより出射することができる。本構成例では、三角柱プリズム205に関しても光学素子204Rと同様にホウケイ酸塩ガラス(BK7)であり、傾斜角度θは37度であり、光の屈折角度θdは約29度である。
【0038】
その結果、図4Cに示すように、コリメートレンズ203Rから出射後の断面L260では、赤色光源ユニット202Rのアスペクト比は2:5となっている。これに対して、光学素子204Rを通過した後の断面L261上では、図4Dに示すように、青色光源ユニット202Bと同様のアスペクト比は約2:3.5に変更される。その後、三角柱プリズム205を通過後の断面L262上では、図4Eに示すように、青色光源ユニット202Bと緑色光源ユニット202Gと同様のアスペクト比1:1に変更される。
【0039】
光源部201B,201G,201Rより出射した光束は、図2に示すように、波長ごとに透過及び反射特性の異なる色合成ミラー210,211により合成され、各色の画面のアスペクト比が等しい状態で、照明装置101より出射される。具体的には、色合成ミラー210には赤色波長帯域を透過し、緑色波長帯域を反射するダイクロイック膜が形成されており、色合成ミラー211には赤及び緑色波長帯域を透過し、青色波長帯域を反射するダイクロイック膜が形成されている。
【0040】
[1-1-2.投影表示部の構成]
図1に示すように、照明装置101で出力された平行光の光束はアフォーカル光学系110に入射し収束した平行光に整形される。アフォーカル光学系110において、片凸レンズ111は、照明装置101からの平行光を集光するコンデンサレンズであり、両凹レンズ112は、レンズ111からの光を平行光化するレンズである。アフォーカル光学系110より出射された光束は、反射ミラー102にて反射されたのち、拡散板ホイール103を通過する。拡散板ホイール103は、円盤状の回転体に拡散板が貼り付けされており、駆動モーターにてホイールが回転することで、拡散板の発熱を抑制しつつ、照明装置101の光源の持つコヒーレント性及び偏光特性状態を乱すことが可能となり、スクリーン400に投写される映像のスペックルを抑制する。拡散板ホイール103を出射した光は集光光学系104で集光された後、ロッドインテグレーター105の端面に入射する。
【0041】
ロッドインテグレーター105に入射した光はロッドインテグレーター105内で内部全反射を繰り返し、反対側の端面より、輝度分布が均整化された面発光として光出力される。ロッドインテグレーター105は、ガラスなどの透明部材によって構成される中実のロッドである。ロッドインテグレーター105は、入射する光を内部で複数回反射させることにより、光強度分布を均一化した光を生成する。なお、ロッドインテグレーター105は、内壁がミラー面によって構成される中空のロッドであってもよい。照明装置101より出射される光束は、アスペクト比が1:1になるよう変更されており、集光光学系104で集光される際、光束の縦横の最縁部の光線角度、すなわちF値は等しくなる。
【0042】
ロッドインテグレーター105から出射された光束は、リレー光学系120に入射し、リレーレンズである片凸レンズ121、両凸レンズ122及び片凸レンズ123を経て所望の近軸倍率及び角倍率(F値)になるよう再度整形された後に、TIRプリズム130に入射する。TIRプリズム130は2つのプリズム131,132から構成され、互いのプリズム131,132の近接面には薄い空気層(図示せず)が形成されている。空気層は臨界角以上の角度で入射する光を全反射する。レンズリレーレンズ光学系120からTIRプリズム130に入射した光は、この空気層で全反射され、光偏向制御部106に略結像する。
【0043】
光偏向制御部106はDMDを有し、映像信号等の各種制御信号に基づき、DMDを変調動作させ、光強度の異なる映像光を時分割で生成する。具体的にはDMDは、複数の可動式の微小ミラーを有する。各微小ミラーは、基本的に1画素に相当する。DMDは、光偏向制御部からの変調信号に基づいて各微小ミラーの角度を変更することにより、反射光を投写光学系140に向けるか否かを切り替える。DMDで反射された光はTIRプリズム130のプリズム132、131の双方を透過した後、映像として投影する光(DMD-ON光)は投写光学系140に入射した後にスクリーン400に出射される一方、それ以外の光(DMD-OFF光)は投写光学系140には入射せず、映像として表示されないよう構成している。
【0044】
ここで、光偏向制御部106に入射する光線は、照明装置101を出射時にアスペクト比を変更された作用で、縦方向及び横方向ともに所望のF値に変更されており、DMD-ON光は投写光学系140内の絞りを効率よく通過し、スクリーン400に投写することが可能となる。
【0045】
また、投写光学系140にズーム機能が付加されている場合などは、ズーム動作時に投写光学系のF値が変化する場合がある。その際、各色のF値が揃っていない場合は、投写光学系140内の絞りを通過する割合が変わってしまい、スクリーン400上で色度変化として知覚される場合があるが、本技術を用いた場合は、この色度変化の発生も抑えることが可能となる。
【0046】
照明装置101内の光源部201B,201G,201Rの動作を時分割し、光偏向制御部106で光強度の異なる赤域、緑域、青域の色光で各々投影された映像は、スクリーン400に到達しフルカラー映像として知覚される。この際、時分割の周期が長いと、人間の眼に色のちらつきが知覚される場合が生じるため、映像情報が60フレーム/秒(60fps)の場合、例えば赤域~黄域までの1周期を映像情報の3倍速(180fps)で駆動することで、色のちらつきを抑制することができる。
【0047】
[1-2.効果等]
以上のように、本実施形態に係る照明装置101を含む投写型映像表示装置1は、半導体レーザー素子が2次元方向に複数個配置された光源部201B,201G,201Rと、前記光源部201B,201G,201R前面に配置され半導体レーザー出射光の光束の進行方向を略平行光に変換するコリメートレンズ203と、前記コリメートレンズ203に前面に配置されかつ前記略平行光に対して傾斜した出射平面204Qで構成される光透過性を有する光学素子204を1つ以上備える。投写型映像表示装置1はさらに、前記略平行光が前記光学素子204の前記平面に入射後、前記光学素子204の傾斜した出射平面204Qで屈折し、2次元方向に配置された光源ユニット202B,202G,202Rからの略平行光の進行方向が1軸方向のみ変更され、当該進行方向が斜めに変更された状態で略平行光の傾斜光束が出射され、前記傾斜光束の進行方向に光源ユニット202B,202G,202Rの縦横アスペクト比が整った変換光束が出射されるよう構成される。従って、発光効率を高めることが可能であり、投写光学系のF値が変化した場合でも色度変化をなくすことが可能となる。
【0048】
また、光学素子204B、204G,204Rの傾斜角度θ並びにその配置方法により、縦横アスペクト比が自由に設定できることで、半導体レーザーの配列自由度が高まり、照明装置101及び投写型映像表示装置1の薄型化設計などに際して、光学部材点数の増大、及び保持機構の複雑化を抑制することが可能となる。
【0049】
本実施形態において、光学素子204G,204Rは列ごとに異なる三角柱プリズムで構成したが、本発明はこれに限らず、例えば、大型の三角柱プリズムを用いて、複数列にまたがって構成してもよい。
【0050】
図5A図2の光学素子204Rの配置応用例1を示す概略平面図であり、図5B図2の光学素子204Rの配置応用例2を示す概略平面図である。また、図5C図2の光学素子204Rの配置応用例3を示す概略平面図であり、図5D図2の光学素子204Rの配置応用例4を示す概略平面図である。
【0051】
図5Aにおいて、複数の光学素子204Rの傾斜した各出射平面204Qが直線上に位置するように配置した。また、このような構成の場合において、図5Bに示すように、複数の光学素子204RAのような複数列にまたがる三角柱プリズムを配置してもよい。この場合において、部品点数の減少、組立の簡易化を図ることができる。なお、図5Aに示すように光学素子204Rの出射平面204Qが直線上に位置するように配置した場合は、隣り合う各1対の光学素子204Rのシフト量Δdは、後述する図5C及び図5Dに比較して広くなり、光学素子204Rを通過後の光束幅Wは狭くなる。
【0052】
図5Cに示すように、シフト量Δdをゼロとすると、光束幅Wは図5A及び図5Bに比較して広がる。さらに、図5Dに示すように、シフト量Δdをマイナスにして、図5Cとは逆に-X軸方向でシフトさせることで、光束幅Wをさらに広げることが可能となる。このように、三角柱プリズムである複数の光学素子204Rシフト量Δd、もしくは傾斜角度θを変化させることで、アスペクト比を任意に変化させることが可能である。
【0053】
本実施形態によれば、光源ユニット202B,202G,202Rで構成された照明装置及びそれを用いた投写型映像表示装置であって、光学部材点数及び保持機構の複雑化を招くことなく、半導体レーザーの配列間隔に制限されずに自由にアスペクト比を変形することができる。
【0054】
また、本実施形態によれば、アスペクト比を変更した光束を縮小光学系に導くことで、縮小光学系の出射部にて縦横比の光線角度を自由に変化することで、投写光学系のF値が変化した場合でも色度変化のない投写型映像表示装置等を提供できる。
【0055】
さらに、本実施形態によれば、光源ユニット202B,202G,202Rから発せられる光線の一部分のみを選択的に方向変化させ、異なる光学系に光束を導くことで、装置の小型化及び冷却機構の簡略化を行うことができる。
【0056】
以上説明したように、本出願において開示する技術の例示として、実施形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施形態にも適用可能である。また、上記実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施形態とすることも可能である。
【0057】
(実施形態2)
実施形態1では、照明装置101内には色ごとに光源部201B,201G,201Rと独立して構成したが、光源部の光源ユニットを異なる色と共通化してもよい。このように構成した実施形態に係る投写型映像表示装置2について以下に説明する。
【0058】
図6は実施形態2に係る投写型映像表示装置2の構成例を示す概略平面図である。
【0059】
図6において、実施形態2に係る投写型映像表示装置2は、実施形態1に係る投写型映像表示装置1に比較して以下の点が主として異なる。
(1)光偏向制御部106にて駆動されかつ赤域、緑域及び青域の三原色それぞれに用いるDMD106R、106G,106Bを備える。
(2)実施形態1では光源部201B,201G,201Rと異なる発光色の光源を用いていた。これに対して、本実施形態2では、照明装置301は青色のみの3個の光源ユニット202BA,202BB,202BCを備え、緑色及び赤色は蛍光体を青色光源で励起することで得られる黄色蛍光発光を利用する。
【0060】
[1-1.構成]
図6において、投写型映像表示装置2は、照明装置301、蛍光体励起用アフォーカル光学系310、青色用アフォーカル光学系320、反射ミラー302,303,304、拡散板ホイール103、ダイクロイックミラー306、蛍光体集光レンズ330、蛍光体ホイール305、集光光学系104、ロッドインテグレーター105、リレー光学系120、TIRプリズム130、カラープリズム340、光偏向制御部106、及び投写光学系140を備えて構成される。ここで、蛍光体励起用アフォーカル光学系310は例えば、片凸レンズ311と、両凹レンズ312とを含む。青色用アフォーカル光学系320は例えば、片凸レンズ321と、両凹レンズ322とを含む。蛍光体集光レンズ330は例えば、片凸レンズ331,332を含む。リレー光学系120は例えば、片凸レンズ121と、両凸レンズ122と、片凸レンズ123とを含む。
【0061】
図6において、照明装置301は2つの青色の平行光の光束を出力する。照明装置301から出力された青色の平行光の一方の光束は、青色用アフォーカル光学系320に入射後、反射ミラー302,303にて反射された後、拡散板ホイール103を通過する。ここで、拡散板ホイール103によりレーザー光のコヒーレント性が低下された後、レーザー光はダイクロイックミラー306を透過し、集光光学系104で集光され、ロッドインテグレーター105に入射する。ダイクロイックミラー306は青色域光を透過し、黄色域光(緑色域光及び赤色域光)を反射するよう構成される。
【0062】
照明装置301から出力された青色の平行光の他方の光束は、蛍光体励起用アフォーカル光学系310に入射した後、ダイクロイックミラー306を透過し、蛍光体集光レンズ330を通過して蛍光体ホイール305近傍に集光スポットを形成する。ここで、蛍光体集光レンズ330は例えばコンデンサレンズである片凸レンズ331,332から構成され、蛍光体励起用アフォーカル光学系310からの平行光を効率良く蛍光体ホイール305近傍に集光するのに加え、蛍光体ホイールから発せられる高いNAの蛍光発光も平行光に補正するように構成される。
【0063】
図7A図6の蛍光体ホイール305の構成例を示す概略正面図であり、図7B図6の蛍光体ホイール305の構成例を示す概略側面図である。
【0064】
図7A及び図7Bにおいて、蛍光体ホイール305は、アルミニウム基板361と、その中央部に駆動モーター360とを備え、中心軸360Xに対して回転制御可能な円形基板を構成する。アルミニウム基板361の表面には、反射膜(図示せず)と、その表面の上にさらに蛍光体層362が形成されている。反射膜は可視光を反射する金属層もしくは誘電体膜である。蛍光体層362には、青色光により励起され、緑色及び赤色の波長成分を含んだ黄色光を発光するCe付活YAG系黄色蛍光体を形成している。この蛍光体の結晶母体の代表的な化学組織はYAl12である。蛍光体層362は円環状に形成されている。
【0065】
スポット光で励起された蛍光体層362は緑域成分及び赤域成分の色光を含む黄色域光を発光する。蛍光体ホイール305はアルミニウム基板361で構成され、かつ中心軸360Xに対して回転させることにより、青色励起光による蛍光体層362の温度上昇を抑制し、蛍光変換効率を安定に維持することができる。蛍光体層362に入射した光は、緑域成分及び赤域成分の色光を蛍光発光し、蛍光体ホイール305から出射する。また、反射膜側に発光する光は反射膜で反射し、蛍光体ホイール305から出射する。蛍光体層362にて出射した緑域成分及び赤域成分の色光は、偏光状態がランダムな自然光として出射され、再びコンデンサレンズである片凸レンズ332、331で集光され、略平行光に変換された後、ダイクロイックミラー306に入射する。ダイクロイックミラー306は黄色域光を反射するよう構成されており、黄色域光は反射されて集光光学系104の方向に進行する。
【0066】
蛍光体層362で励起されなかった青色光は、反射膜にて反射され、再びコンデンサレンズである片凸レンズ332,331で略平行光に変換された後、ダイクロイックミラー306に入射する。ダイクロイックミラー306は青色域光を透過するため、蛍光体励起用アフォーカル光学系310の方向に戻り、集光光学系104の方向には進行しない。
【0067】
このようにして、蛍光体層362から発光した緑域及び赤域の色光と、青色用アフォーカル光学系320を通過した青域の色光とが、ダイクロイックミラー306より集光光学系104側に出射される。これらの色光は色合成され、白色光として視認される。ダイクロイックミラー306を透過した光は、集光光学系104に入射してロッドインテグレーター105に集光する。
【0068】
ロッドインテグレーター105は、ガラスなどの透明部材によって構成される中実のロッドである。ロッドインテグレーター105は、入射する光を内部で複数回反射させることにより、光強度分布を均一化した光を生成する。なお、ロッドインテグレーター105は、内壁がミラー面によって構成される中空のロッドであってもよい。
【0069】
リレーレンズ121,122,123は、ロッドインテグレーター105からの出射光をDMD106に略結像する。ロッドインテグレーター105を出射した光はリレーレンズ121、122を透過し、反射ミラー304で方向を曲げられた後にリレーレンズ123を透過し、TIRプリズム130に入射する。TIRプリズム130は2つのプリズム131、132から構成され、互いのプリズム131,132の近接面には薄い空気層(図示せず)を形成している。空気層は臨界角以上の角度で入射する光を全反射する。リレーレンズ123からTIRプリズム132に入射した光は、この空気層で全反射され、カラープリズム340に入射する。
【0070】
カラープリズム340は3つのプリズム340G,340B,340Rから構成され、それぞれの近接面には青反射のダイクロイックミラー(図示せず)と赤反射のダイクロイックミラー(図示せず)が形成されている。各々のダイクロイックミラーにより、カラープリズム340Bには青域の色域の光線のみが、カラープリズム340Rには赤域の色域の光線のみが、カラープリズム340Gには緑域の色域の光線のみが分光され、それぞれの色に対応した光偏向制御部106のDMD106B,106R,106Gに略結像する。
【0071】
光偏向制御部106は3個のDMD106B,106R,106Gを備え、映像信号等の各種制御信号に従って、DMD106B,106R,106Gを変調動作させ、光強度の異なる映像光を生成する。具体的には、各DMD106B,106R,106Gは、複数の可動式の微小ミラーを有する。各微小ミラーは、基本的に1画素に相当する。DMD106B,106R,106Gは変調信号に基づいて各微小ミラーの傾斜角度を変更することにより、反射光を投写光学系140に向けるか否かを切り替える。DMD106B,106R,106Gで反射された光はカラープリズム340、TIRプリズム130の双方を透過する。当該透過光のうち、映像として投影する光(DMD-ON光)は投写光学系140に入射した後にスクリーン400に映像として投写され、映像を表示される。それ以外の光(DMD-OFF光)は投写光学系140には入射せず、スクリーン400に表示されないように構成されている。
【0072】
図8図6の照明装置301の内部構成例を示す概略平面図である。
【0073】
図8において、照明装置301は、青色専用光源ユニット202BA,202BB,202BC、複数のコリメートレンズ203B、複数の光学素子204B、及び部分反射ミラー501,502とを備えて構成される。ここで、青色専用光源ユニット202BA,202BB,202BCはそれぞれ、青色の半導体レーザーを縦横方向の2次元で4×2配列でまとめられた3個の光源ブロックBBを備えて構成される。その結果、各光源ユニット202BA,202BB,202BCの各合計の光源は4×6配列で構成され、アスペクト比は2:3となる。
【0074】
青色専用光源ユニット202BAから出力されたスポット光B1のうち、複数の光学素子204Bを介したスポット光B1は片凸レンズ321に入射する一方、複数の光学素子204Bを介さないスポット光B1は部分反射ミラー502で反射された後、蛍光体励起用アフォーカル光学系310片凸レンズ311に入射する。また、青色専用光源ユニット202BBから出力されたスポット光B2は部分反射ミラー501で反射された後、部分反射ミラー502を通過し、蛍光体励起用アフォーカル光学系310の片凸レンズ311に入射する。さらに、青色専用光源ユニット202BCから出力されたスポット光B3は部分反射ミラー501,502を通過した後、蛍光体励起用アフォーカル光学系310の片凸レンズ311に入射する。以上の動作を実現するための構成例について以下に説明する。
【0075】
図9A図8の部分反射ミラー501の構成例を示す正面図であり、図9B図8の部分反射ミラー502の構成例を示す正面図である。
【0076】
図9A及び図9Bにおいて、部分反射ミラー501,502は、ガラス板の表面上に誘電体反射膜(図示せず)を形成することで構成される。部分反射ミラー501において、図9Aに示すように、所定のスポット光B3のみを通過させる、縦方向の長手方向を有する矩形形状の複数のスリット501s(厚さ方向に貫通する)が半導体素子の配置間隔で形成される。また、部分反射ミラー502において、図9Bに示すように、所定のスポット光B2,B3のみを通過させる、横方向の長手方向を有する矩形形状の複数のスリット501s(厚さ方向に貫通する)が半導体素子の配置間隔で形成される。
【0077】
図8において、青色専用光源ユニット202BB,202BCはそれぞれ光線の進む位置が半導体素子の間隔の半分の距離で横方向にシフトされて配置されている。従って、光源ユニット202BCから出射したスポット光B3は、部分反射ミラー501の複数のスリット501sを通過し、部分反射ミラー502に進む。一方、光源ユニット202BBから出射したスポット光B2は部分反射ミラー501の誘電体反射膜で反射し、部分反射ミラー502に進む。
【0078】
青色専用光源ユニット202BAは、青色専用光源ユニット202BB,202BCからの光線が進む位置が半導体素子の間隔の半分の距離で縦方向にシフトされて配置されている。従って、部分反射ミラー501を通過したスポット光B3は部分反射ミラー502の複数のスリット502sを通過し、蛍光体励起用アフォーカル光学系310の片凸レンズ311に進む。また、青色専用光源ユニット202BAから出力されたスポット光B1のうち、コリメートレンズ203Bを通過した後、前面に光学素子204Bが取り付けられていない部分のスポット光B1は進行方向を変えずに進み、部分反射ミラー502に到達後、部分反射ミラー502内の誘電体反射膜で反射し、蛍光体励起用アフォーカル光学系310の片凸レンズ311に進む。一方、青色専用光源ユニット202BAの前面に光学素子204が取り付けられている部分のスポット光B1は、光学素子204内で屈折し、部分反射ミラー502に到達せず、青色用アフォーカル光学系320の片凸レンズ321に進む。
【0079】
図10A図6の照明装置301から出射して蛍光体励起用アフォーカル光学系310に進む各スポット光B1,B2,B3の配置例を示す模式正面図であり、図10B図6の照明装置301から出射して青色用アフォーカル光学系320に進むスポット光B1を示す模式正面図である。
【0080】
図10Aに示すように、部分反射ミラー501,502で通過し又は反射したスポット光B1,B2,B3が半導体素子の間隔の半分の間隔で整列している。この光源配置のアスペクト比は図8の青色専用光源ユニット202BA,202BB,202BCのアスペクト比と同様に2:3のアスペクト比となる。この光束は蛍光体励起用アフォーカル光学系310に入射後、ダイクロイックミラー306を透過し、蛍光体集光レンズ330を通過して蛍光体ホイール305近傍に集光されたスポット光を形成する。この集光されたスポット光により蛍光体層362は励起され、緑域成分及び赤域成分の色光を含む黄色域光を発光する。蛍光体スポット光は直径2mm程度の非常に小さいスポット光であり、かつ、蛍光体発光時にもスポット光の広がりが発生するため、蛍光体励起用アフォーカル光学系310に入射する光線のアスペクト比が2:3であっても、蛍光体層362により反射されるスポット光による画面のアスペクト比がほぼ1:1と補正されるため、効率に大きな影響は発生しない。
【0081】
一方、図10Bにおいて、3個の光学素子204を通過し部分反射ミラー502に到達せず青色用アフォーカル光学系320に進むスポット光B1の配置を示す。3個の光学素子204は青色専用光源ユニット202BAの3個の光源ブロックBBの片側の光源に取り付けているため、青色専用光源ユニット202BAから3個の光学素子204に進むスポット光B1による画面のアスペクト比は2:3となっているが、実施形態1で示したとおり複数の光学素子204で屈折された際に横方向が圧縮されて画面401から画面402に変形され、青色用アフォーカル光学系320にはアスペクト比が1:1に変更された出力光が入射する。
【0082】
青色用アフォーカル光学系320に入射した光束は、途中反射ミラー302,303にて反射された後、拡散板ホイール103を通過する。当該通過光は、拡散板ホイール103によりそのレーザー光のコヒーレント性を低下させた後、ダイクロイックミラー306を透過し、集光光学系104で集光され、ロッドインテグレーター105に入射する。このように、青色域光はロッドインテグレーター105に直接入射するため、アスペクト比を1:1にすることで、蛍光体層362からの反射光のアスペクト比1:1と揃えることが可能となり、投写光学系140での効率低下が発生しない。また、青色域光、緑色域光、赤色域光の全てが揃っているため、投写レンズのF値が変化してもホワイトバランスが崩れることなく、良好な映像を投写することが可能となる。
【0083】
[1-2.効果等]
以上説明したように、本実施形態に係る照明装置301及び投写型映像表示装置2によれば、複数の光学素子204を用いて、青色専用光源ユニット202BA,202BB,202BCから出力される光束を分離しかつアスペクト比を変更することで、光学系を簡略化し、投写型映像表示装置2を小型化することが可能となる。加えて、青色専用光源ユニット202BA,202BB,202BCは一体的な構造とすることが可能なことから、光源ユニット202BA,202BB,202BCの冷却機構の合理化による低コスト化を図ることが可能となる。
【0084】
以上説明したように、本開示における技術の例示として、実施形態を説明した。そのために、添付図面及び詳細な説明を提供した。従って、添付図面及び詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面及び詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0085】
また、上述の実施形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲又はその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本開示は、照明装置及び投写型映像表示装置において、光学部材点数の増大及び保持機構の複雑化を招くことなく、光源ユニットの配列間隔に制限されずに自由に光束アスペクト比を変化することのできる照明装置及び投写型映像表示装置を実現できるものである。
【符号の説明】
【0087】
1,2…投写型映像表示装置、
101…照明装置、
102…反射ミラー、
103…拡散板ホイール、
104…集光光学系、
105…ロッドインテグレーター、
106…光偏向制御部、
106R…赤色光偏向制御部、
106G…緑色光偏向制御部、
106B…青色光偏向制御部、
110…アフォーカル光学系、
111…片凸レンズ、
112…両凹レンズ、
120…リレー光学系、
121…片凸レンズ、
122…両凸レンズ、
123…片凸レンズ、
130…内部全反射プリズム(TIRプリズム)、
131,132…プリズム、
140…投写光学系、
201B,201G,201R…光源部、
202B,202G,202R…光源ユニット、
202BA,202BB,202BC…青色専用光源ユニット、
203B,202G,202R…コリメートレンズ、
204G,204R…光学素子、
204P…入射平面、
204Q…出射平面、
205…三角柱プリズム、
210,211…色合成ミラー、
301…照明装置、
302,303,304…反射ミラー、
305…蛍光体ホイール、
306…ダイクロイックミラー、
310…蛍光体励起用アフォーカル光学系、
311…片凸レンズ、
312…両凹レンズ、
320…青色用アフォーカル光学系、
321…片凸レンズ、
322…両凹レンズ、
330…蛍光体集光レンズ、
331,332…片凸レンズ、
340…カラープリズム、
340B,340G,340R…プリズム、
360…駆動モーター、
360X…中心軸、
361…アルミニウム基板、
362…蛍光体層、
400…スクリーン、
501,502…部分反射ミラー、
501s,502s…スリット、
L250,L251,L260,L261,L262…断面、
B1,B2,B3…スポット光、
BB,BG,BR…光源ブロック。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5A
図5B
図5C
図5D
図6
図7A
図7B
図8
図9A
図9B
図10A
図10B