(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-03
(45)【発行日】2023-08-14
(54)【発明の名称】ガス成分計測装置
(51)【国際特許分類】
G01N 27/12 20060101AFI20230804BHJP
G01N 1/28 20060101ALI20230804BHJP
G01N 1/02 20060101ALN20230804BHJP
【FI】
G01N27/12 A
G01N1/28 L
G01N27/12 L
G01N27/12 P
G01N1/02 W
(21)【出願番号】P 2018234600
(22)【出願日】2018-12-14
【審査請求日】2021-11-30
(31)【優先権主張番号】P 2018068464
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】中村 邦彦
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-243537(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2001/0027678(US,A1)
【文献】特開平05-099868(JP,A)
【文献】NAKAMURA, K et al.,Determination of Low Concentration of Multi-target Gas Species Exhaled with the Breath,ECS Transactions,2016年,Volume 75, Issue 16,pp.83-90
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00-27/24
G01N 33/497
G01N 1/28
G01N 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測対象である第1のガスを取り込むためのセルと、
前記セル内に存在する1又は複数種類の成分ガスに反応するガスセンサと、
前記セル内の湿度を調整する調整器と、
前記セル内の湿度を検知する湿度センサと、
集積回路と、
を備え、
前記集積回路は、
前記第1のガスが前記セル内に取り込まれる前、または前記第1のガスが前記セルから排出された後において、前記湿度センサの検知結果に基づいて、前記セル内の湿度が一定の目標湿度となるように前記調整器を制御し、
前記調整器に対する前記制御によって湿度調整された前記セル内に対する前記ガスセンサの第1の応答値を取得し、
前記第1のガスが前記セル内に取り込まれた後、
前記セル内を湿度調整することなく、前記セルに取り込まれた前記第1のガスに対する前記ガスセンサの第2の応答値を取得し、
前記第1の応答値と前記第2の応答値とから、前記第1のガスに含まれる前記1又は複数種類の成分ガスの濃度を判定する、
ガス成分計測装置。
【請求項2】
前記調整器は、
少なくとも加湿器または除湿器の何れかと、
前記加湿器または前記除湿器によって加湿または除湿された第2のガスを前記セル内に導入するポンプと、
を備え、
前記集積回路は、前記セル内の前記湿度が前記目標湿度となるように、前記第2のガスの前記セル内への前記導入を制御する、請求項1記載のガス成分計測装置。
【請求項3】
前記加湿器または前記除湿器は、当該ガス成分計測装置の外部の空気を取り込み、前記取り込んだ空気を前記第2のガスとして加湿または除湿する、請求項2記載のガス成分計測装置。
【請求項4】
前記調整器は、前記セル内に導入される前記第2のガスの流れを開閉する開閉器を更に備える、請求項2または3記載のガス成分計測装置。
【請求項5】
前記セルは、第1の開口と、前記第1の開口とは異なる第2の開口と、を含む複数の開口を有し、
前記第1のガスは、前記第1の開口から前記セル内に取り込まれ、
前記第2のガスは、前記第2の開口から前記セル内に導入される、
請求項2から4の何れかに記載のガス成分計測装置。
【請求項6】
第1の提示部を更に備え、
前記集積回路は、前記調整器に対する前記制御によって前記セル内の前記湿度が前記目標湿度の値に達した場合、ユーザへの所定の提示を前記第1の提示部にさせる、請求項1から5の何れかに記載のガス成分計測装置。
【請求項7】
前記セルに取り込まれる前記第1のガスの流量を検知する流量検知器と、
第2の提示部と、を更に備え、
前記集積回路は、前記第1のガスの前記セルへの取り込みが所定の時間に所定の流量で行われるように、前記流量検知器の検知結果に関するユーザへの提示を前記第2の提示部にさせる、請求項1から6の何れかに記載のガス成分計測装置。
【請求項8】
記録媒体を更に備え、
前記集積回路は、
前記1又は複数の成分ガスの濃度が既知である学習用ガスが前記セルに取り込まれた場合、前記セルに取り込まれた前記学習用ガスに対する前記ガスセンサの第3の応答値を取得し、
前記学習用ガスが前記セル内に取り込まれる前、または前記学習用ガスが前記セルから排出された後において、前記湿度センサの検知結果に基づいて、前記セル内の湿度が前記目標湿度となるように前記調整器を制御し、
前記調整器に対する制御によって湿度調整された前記セル内に対する前記ガスセンサの第4の応答値を取得し、
前記第3の応答値と、前記第4の応答値と、前記既知の濃度との対応に関する情報を前記記録媒体に記録し、
前記第1の応答値、前記第2の応答値、および前記情報に基づいて、前記判定を行う、請求項1から7の何れかに記載のガス成分計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガスセンサを用いて計測対象であるガスに含まれる成分ガスの濃度を計測するガス成分計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
呼気や皮膚ガスは豊富な代謝情報を含み低侵襲に採取できる。これらのガスに含まれる成分ガスの濃度を計測する装置は、病院、職場、家庭等において健康需要に応じた利用シーンで広く活用されることが期待される。これらのガスに含まれる成分ガスの濃度は、例えば、ガスクロマトグラフィによって呼気や皮膚ガスから成分ガスを分離することによって計測できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【文献】K. Nakamura, T. Hosokawa, Y. Morita, M. Nishitani, and Y. Sadaoka, Determination of Low Concentration of Multi-Target Gas Species Exhaled with the Breath, ECS Transactions, 2016, 75(16) 83-90
【文献】K. Suematsu, M. Sasaki, N. Ma, M. Yuasa, and K. Shimanoe, "Antimony-Doped Tin Dioxide Gas Sensors Exhibiting High Stability in the Sensitivity to Humidity Changes", ACS Sens., 2016, 1(7), 913-920
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の実施形態は、計測対象であるガスに含まれる成分ガスの濃度を簡便かつ高精度に計測できるガス成分計測装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係るガス成分計測装置は、計測対象である第1のガスを取り込むためのセルと、前記セル内に存在する1又は複数種類の成分ガスに反応するガスセンサと、前記セル内の湿度を調整する調整器と、前記セル内の湿度を検知する湿度センサと、集積回路と、を備え、前記集積回路は、前記第1のガスが前記セル内に取り込まれる前、または前記第1のガスが前記セルから排出された後において、前記湿度センサの検知結果に基づいて、前記セル内の湿度が所定の範囲内となるように前記調整器を制御し、前記調整器に対する前記制御によって湿度調整された前記セル内に対する前記ガスセンサの第1の応答値を取得し、前記第1のガスが前記セル内に取り込まれた後、前記セルに取り込まれた前記第1のガスに対する前記ガスセンサの第2の応答値を取得し、前記第1の応答値と前記第2の応答値とから、前記第1のガスに含まれる前記1又は複数種類の成分ガスの濃度を判定する。
【発明の効果】
【0007】
本開示の実施形態にかかるガス成分計測装置によれば、計測対象であるガスに含まれる成分ガスの濃度を簡便かつ高精度に計測できるガス成分計測装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1に係る呼気成分計測装置の機能的な構成の一例を示すブロック図
【
図2】実施の形態1に係る調湿器の機能的な構成の一例を示すブロック図
【
図3】実施の形態1に係る呼気成分計測装置の動作の一例を示すフローチャート
【
図5】実施の形態1に係る湿度調整処理の一例を示すフローチャート
【
図6】実施の形態1に係るポンプの動作状況の一例を示すシーケンスチャート
【
図7】人工呼気に対するガスセンサの応答値の一例を示すグラフ
【
図8】人工呼気に対するガスセンサの応答値の一例を示すグラフ
【
図9】人工呼気の導入時間に対するガスセンサの応答値の一例を示すグラフ
【
図10】実施の形態1に係る操作ガイド画面の一例を示す図
【
図11】実施の形態1に係る計測結果画面の一例を示す図
【
図12A】湿度調整の有無に応じたガスセンサの応答値の繰り返し再現性の一例を示すグラフ
【
図12B】湿度調整の有無に応じたガスセンサの応答値の繰り返し再現性の一例を示すグラフ
【
図12C】湿度調整の有無に応じたガスセンサの応答値の繰り返し再現性の一例を示すグラフ
【
図12D】湿度調整の有無に応じたガスセンサの応答値の繰り返し再現性の一例を示すグラフ(
図12Bにおいて低濃度条件であるサンプル番号1と2の場合の再現性のばらつきを拡大表示したグラフ)
【
図12E】湿度調整の有無に応じたガスセンサの応答値の繰り返し再現性の一例を示すグラフ(
図12Cにおいて低濃度条件であるサンプル番号1と2の場合の再現性のばらつきを拡大表示したグラフ)
【
図13】実施の形態2に係る呼気成分計測装置の機能的な構成の一例を示す模式図
【
図14】ガス濃度とガスセンサの応答値との対応の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
(本開示の基礎となった知見)
前述したように、ガスクロマトグラフィのための装置は、ガス成分計測装置として家庭や個人へ普及させるには、高価でかつ構成および取り扱いが複雑である。これに対し、半導体式ガスセンサは、安価でかつ構成および取り扱いが簡易である反面、ガス濃度の計測精度は必ずしも十分ではないことがある。
【0010】
半導体式ガスセンサは、金属酸化物を主材としたガスセンサであり、近年、安価に大量に生産され、運転者のアルコール検出器、室内環境モニタ、都市ガスの漏洩警報器等に利用されている。
【0011】
ガス成分計測装置において半導体式ガスセンサの計測対象として想定される呼気中の成分ガスは、体内の脂肪代謝による生成物であるアセトン、飲酒によるアルコール類、口臭の原因となる揮発性硫化化合物、腸内の嫌気性菌由来の水素等、など多種多様である。
【0012】
半導体式ガスセンサの応答値には湿度依存性があり、成分ガスの濃度を高精度に計測するために、この湿度依存性を考慮する必要がある。
【0013】
半導体式ガスセンサの応答値についてより詳細に説明する。
【0014】
半導体式ガスセンサ(単にガスセンサとも言う)は、一般に複数種のガスに対してガス種ごとの感度で反応する。つまり、複数の成分ガスの混合ガスに対するガスセンサの応答値(例えば出力電圧)は、複数の成分ガスの各々の濃度の関数で表される。ここで、ガスセンサの応答値に湿度依存性があるとは、ガスセンサの応答値が、計測対象の成分ガスの濃度だけでなく、水蒸気の濃度にも依存する関数になっていることを意味する。
【0015】
図14は、ガス濃度とガスセンサの応答値との対応の一例を示す図である。
図14の例では、成分ガスX、Y、Zの濃度をそれぞれx、y、zと表記し、ガスセンサA、B、Cの応答値S
A、S
B、S
Cをそれぞれ、関数f1(x,y,z)、f2(x,y,z)、f3(x,y,z)として表記している。
【0016】
関数f1、f2、f3は、例えば、濃度x、y、zが既知の複数のサンプルガスをガスセンサA、B、Cで計測し、ガスセンサA、B、Cの応答値SA、SB、SCと当該既知の濃度x、y、zとを用いて連立方程式を解くことによって特定される。さらに、関数f1、f2、f3から、その逆関数f1
-1、f2
-1、f3
-1が特定される。
【0017】
計測対象としての呼気に含まれる成分ガスX、Y、Zの濃度x、y、zは、当該呼気に対するガスセンサA、B、Cの応答値SA、SB、SCにおける逆関数の値f1
-1(SA,SB,SC)、f2
-1(SA,SB,SC)、f3
-1(SA,SB,SC)として求まる。
【0018】
なお、関数および逆関数の表現形式は、特には限定されない。関数および逆関数は、例えば、数式、数表およびニューラルネットなど、どのような形式で表現されてもよい。
【0019】
図14での理解から、水蒸気を計測対象の成分ガスの1つと考えて、水蒸気の濃度(つまり呼気の湿度)を表す変量を処理することで、水蒸気を含む複数の成分ガスの濃度を正確に判定できると考えられる。
【0020】
前述したように、ガス成分計測装置における計測対象として想定される呼気中の成分ガスは多種多様である。より多くの成分ガスの濃度を計測し、計測結果から多面的にユーザの健康状態を判断することで、より付加価値の高い判断結果が得られる。
【0021】
しかしながら、
図14で説明した考え方に基づいてより多くの成分ガスの濃度を計測することは、関数の変量を増やすことである。関数の変量を増やすと、関数を特定するために必要なサンプル数が増え、サンプルガスの計測に要する時間が増大する。また、関数および逆関数を特定するための計算量も増大する。したがって、時間的および計算量的なコストを抑え、安価でかつ構成および取り扱いが簡易なガス成分計測装置を得るためには、関数の変量は1つでも少ないほうがよい。
【0022】
そこで、本発明者は、鋭意検討の結果、ガスクロマトグラフィによらないガスセンサを用いながら、計測対象であるガスに含まれる成分ガスの濃度を高精度に計測できるガス成分計測装置に想到した。
【0023】
本開示の一態様に係るガス成分計測装置は、計測対象である第1のガスを取り込むためのセルと、前記セル内に存在する1又は複数種類の成分ガスに反応するガスセンサと、前記セル内の湿度を調整する調整器と、前記セル内の湿度を検知する湿度センサと、集積回路と、を備え、前記集積回路は、前記第1のガスが前記セル内に取り込まれる前、または前記第1のガスが前記セルから排出された後において、前記湿度センサの検知結果に基づいて、前記セル内の湿度が所定の範囲内となるように前記調整器を制御し、前記調整器に対する前記制御によって湿度調整された前記セル内に対する前記ガスセンサの第1の応答値を取得し、前記第1のガスが前記セル内に取り込まれた後、前記セルに取り込まれた前記第1のガスに対する前記ガスセンサの第2の応答値を取得し、前記第1の応答値と前記第2の応答値とから、前記第1のガスに含まれる前記1又は複数種類の成分ガスの濃度を判定する。
【0024】
これにより、セル内を所定の範囲内の湿度にした状態での第1の応答値と、計測対象である第1のガスをセル内に導入した状態での第2の応答値とから、第1のガスに含まれる成分ガスの濃度が判定される。水蒸気の濃度を一定とした状態での第1の応答値を基準として用いて、第1のガスに含まれる成分ガスの濃度を判定することができるので、ガスセンサが水蒸気に反応する場合でも水蒸気の影響は一定となり、湿度依存性が小さい判定結果が得られる。その結果、ガスクロマトグラフィによらないガスセンサを用いながら、第1のガスに含まれる成分ガスの濃度を簡便かつ高精度に計測できるガス成分計測装置が実現される。
【0025】
また、例えば、前記調整器は、少なくとも加湿器または除湿器の何れかと、前記加湿器または前記除湿器によって加湿または除湿された第2のガスを前記セル内に導入するポンプと、を備え、前記集積回路は、前記セル内の前記湿度が前記所定の範囲内となるように、前記第2のガスの前記セル内への前記導入を制御してもよい。
【0026】
これにより、加湿または除湿された第2のガスを使うことにより、セル内の湿度を効率よく所定の範囲内に制御できる。
【0027】
また、例えば、前記加湿器または前記除湿器は、当該ガス成分計測装置の外部の空気を取り込み、前記取り込んだ空気を前記第2のガスとして加湿または除湿してもよい。
【0028】
これにより、第2のガスを、外部の空気から簡便に生成することができる。
【0029】
また、例えば、前記調整器は、前記セル内に導入される前記第2のガスの流れを開閉する開閉器を更に備えてもよい。
【0030】
また、例えば、前記セルは、第1の開口と、前記第1の開口とは異なる第2の開口と、を含む複数の開口を有し、前記第1のガスは、前記第1の開口から前記セル内に取り込まれ、前記第2のガスは、前記第2の開口から前記セル内に導入されるとしてもよい。
【0031】
これにより、第1のガスの導入経路と第2のガスの導入経路とを分離して相互の混入を防止できるので、第1のガスに含まれる成分ガスの濃度をより高精度に計測できる。
【0032】
また、例えば、前記ガス成分計測装置は、第1の提示部を更に備え、前記集積回路は、前記調整器に対する前記制御によって前記セル内の前記湿度が前記所定の範囲内の値に達した場合、ユーザへの所定の提示を前記第1の提示部にさせてもよい。
【0033】
これにより、ユーザは、第1の提示部による提示に基づいて、第1のガスの取り込みを開始できるので、ガス成分計測装置の操作性が向上する。
【0034】
また、例えば、前記ガス成分計測装置は、前記セルに取り込まれる前記第1のガスの流量を検知する流量検知器と、第2の提示部と、を更に備え、前記集積回路は、前記第1のガスの前記セルへの取り込みが所定の時間に所定の流量で行われるように、前記流量検知器の検知結果に関するユーザへの提示を前記第2の提示部にさせてもよい。
【0035】
これにより、ユーザは、第2の提示部による提示に基づいて、第1のガスの取り込みを調整できるので、第1のガスに含まれる成分ガスの濃度をより高い精度で計測できる。
【0036】
また、例えば、前記ガス成分計測装置は、記録媒体を更に備え、前記集積回路は、前記1又は複数の成分ガスの濃度が既知である学習用ガスが前記セルに取り込まれた場合、前記セルに取り込まれた前記学習用ガスに対する前記ガスセンサの第3の応答値を取得し、前記学習用ガスが前記セル内に取り込まれる前、または前記学習用ガスが前記セルから排出された後において、前記湿度センサの検知結果に基づいて、前記セル内の湿度が所定の範囲内となるように前記調整器を制御し、前記調整器に対する制御によって湿度調整された前記セル内に対する前記ガスセンサの第4の応答値を取得し、前記第3の応答値と、前記第4の応答値と、前記既知の濃度との対応に関する情報を前記記録媒体に記録し、前記第1の応答値、前記第2の応答値、および前記情報に基づいて、前記判定を行ってもよい。
【0037】
これにより、第1のガスを測定するガスセンサと同じガスセンサで学習用ガスを測定することにより第1のガスの成分ガスの濃度を判定するための情報を得るので、第1のガスに含まれる成分ガスの濃度をより高い精度で計測できる。
【0038】
なお、これらの全般的または具体的な態様は、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたはコンピュータ読み取り可能なCD-ROMなどの記録媒体で実現されてもよく、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたは記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【0039】
以下、本開示の一態様に係るガス成分計測装置について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0040】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本開示の一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0041】
(実施の形態1)
実施の形態1に係るガス成分計測装置について、呼気成分計測装置の例を挙げて説明する。
【0042】
図1は、実施の形態1に係る呼気成分計測装置の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
図1に示されるように、呼気成分計測装置100は、センサユニット1、セル2、給排気口3a、3b、ポンプ4、バルブ5a、5b、調湿器6、ガス導入口7、制御部10、表示部20、データ記録部30およびデータ解析部40を備える。センサユニット1は、ガスセンサ1a、1b、1c、湿度センサ1dおよび流量検知器1eを有する。
【0043】
ガスセンサ1a、1b、1cは呼気に含まれるガスA、ガスB、ガスCのそれぞれに反応するガスセンサである。ガスA、ガスB、ガスCは例えば体内の脂肪代謝による生成物であるアセトンや、飲酒によるアルコール類、口臭の原因となる揮発性硫化化合物、腸内の嫌気性菌由来の水素、喘息マーカとなる一酸化炭素等などである。
【0044】
ガスセンサ1aは、ガスAに反応するだけでなく、ガスBやガスCにも反応し、さらに湿度(水蒸気の濃度)の影響を受ける。同様に、ガスセンサ1b、1cも、それぞれガスB、Cのみに反応するだけでなく、他のガスにも反応し、さらに湿度(水蒸気の濃度)の影響を受ける。
【0045】
セル2は、呼気を取り込んで保持する容器であり、
図1の例では円筒状に表記した。セル2の端部に給排気口3aおよび3bが設けられている。給排気口3aおよび3bは、セル2の内部と外部との間でガスを交換するための開口である。開口がセルに配設される位置は限定されないが、セル内の換気を効率よく行うことを目的とすれば
図1のように円筒状のセルの両端部に配設する。一方、セルに配置したガスセンサを給気ガスにゆっくりと反応させ、吸気するガスの短期的な濃度ムラに影響されにくい平均的な濃度をセンサ出力として得ることを目的とすれば、吸気口と排気口はガス流の直線上に配置させず、例えば、一方を円筒状セルの側面に配設し、換気されにくいガス溜まり部をセル内に設けてこのガス溜まり部にガスセンサを配置してもよい。
【0046】
ポンプ4およびバルブ5aが、給排気口3aに接続されている。調湿器6およびバルブ5bが、給排気口3bに接続されている。
【0047】
調湿器6は、呼気を取り込む前にセル内に導入する外部空気の湿度を調整する。ポンプ4、バルブ5a、5b、および調湿器6は、セル2内の湿度を調整する調整器の一例である。
【0048】
なお、調湿器6はセル2の外部に配置される形態に限定されない。小型化された調湿器6と、調湿器6で調湿されたガスを調湿器6外に排出するポンプと、をセル2に内包させてもよい。さらに、セル2内の調湿器6の吸気口および/または排気口を開閉するバルブを設けてもよい。すなわち、調湿器6で調湿された外部空気をセル内に導入するのではなく、調湿されていない外部空気をセル2に導入してから、セル2に内包される調湿器6でセル内の湿度を調整してもよい。この場合、セル2内の調湿器6、ポンプおよびバルブが、セル2内の湿度を調整する調整器に対応する。
【0049】
図2は、調湿器6の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
図2に示されるように、調湿器6は、除湿器61、加湿器62およびバルブ63a、63bを有する。
【0050】
除湿器61は、シリカゲルやモレキュラーシーブ等の乾燥剤が入った筒体である。
【0051】
加湿器62は、加湿のためのバブリングを行う貯水容器である。
【0052】
バルブ63aは、例えば3方向弁であり、外部空気と除湿器61および加湿器62の一方とを選択的に連通させる。
【0053】
バルブ63bは、例えば3方向弁であり、除湿器61および加湿器62の一方とバルブ5bとを選択的に連通させる。
【0054】
調湿器6によれば、除湿器61および加湿器62のうち、バルブ63a、63bによって選択される一方を用いて、外部空気を除湿または加湿することができる。なお、調湿器6は、除湿および加湿のうち一方の機能のみを有していてもよい。
【0055】
再び
図1を参照して、呼気成分計測装置の説明を続ける。
【0056】
給排気口3a、3bとセル2との接続部は、
図1のように段付き形状には限られない。例えば、セル2の円筒の両端をテーパ状にして給排気口3a、3bに向けて円筒の内径を徐々に小さくしてもよい。このような構成にすれば、セル2の円筒内部の隅にガスが滞留することを低減でき、円筒の隅に残留しがちなガスの換気時間を短縮できる。
【0057】
バルブ5a、5bは、それぞれ給排気口3a、3bにおける給排気を制御する開閉器である。バルブ5aは、例えば3方向弁であり、呼気を導入するためのガス導入口7およびポンプ4の一方と給排気口3aとを選択的に連通させる。バルブ5bは、例えば3方向弁であり、外部空気および調湿器6の一方端と給排気口3bとを選択的に連通させる。調湿器6の他方端は、外部空気に開放されている。
【0058】
セル2の内部には、ガスセンサ1a、1b、1c以外に、湿度センサ1dおよび流量検知器1eが設けられている。流量検知器1eは、一例として流量計であってもよい。湿度センサ1dは、セル2内の湿度を検知し、流量検知器1eは、セル2に取り込まれる呼気の流量を検知する。
【0059】
制御部10は、各種センサの駆動および測定値の取得、バルブやポンプによるガスフローを制御する。すなわち、制御部10は、ガスの導入から成分ガスの濃度判定までの一連のシーケンスを司る。制御部10は、例えば、パーソナルコンピュータで構成されてもよい。
【0060】
表示部20は、第1の提示部として機能し、セル2内の湿度情報を表示し、また第2の提示部として機能し、セル2内の流量情報を表示する。表示部20は、例えば、パーソナルコンピュータに接続されたディスプレイで構成されてもよい。
【0061】
データ記録部30は、呼気を模擬した既知濃度の混合ガス(以下では、人工呼気と称する)をセル2に導入したときの、ガスセンサ1の応答を記憶したデータベースを有する。また、その既知濃度とガスセンサの応答とを数式で関連付けており、その数式を記述する係数等が記録されている。データ記録部30は、例えば、半導体メモリなどの記録媒体で構成されてもよい。
【0062】
データ解析部40は、ユーザの呼気に対するガスセンサ1の応答と、データ記録部30に記憶されている数式とから、呼気に含まれるガスA、B、Cの未知濃度を判定する。データ解析部40は、判定部の一例である。
【0063】
(呼気成分計測装置の動作)
以上のように構成された呼気成分計測装置100の動作について説明する。
【0064】
図3は、呼気成分計測装置100の動作の一例を示すフローチャートである。
図3に示されるように、呼気成分計測装置100の動作は、大まかには、学習工程(S10)と実測工程(S20)とで構成されている。
【0065】
学習工程(S10)では、成分ガスの濃度が既知の人工呼気を生成し(S11)、人工呼気に対するガスセンサの応答値を取得し(S12~S16)、ガスセンサの応答値と成分ガスの濃度との関連を表す対応情報を求めて記録する(S17)。ここで、人工呼気は、学習用ガスの一例である。
【0066】
図4は、人工呼気生成装置300の一例を説明する図である。人工呼気生成装置300は、既知濃度のガスA、B、Cと乾燥空気とを、それぞれマスフローコントローラ301で流量調整することにより、人工呼気を生成する。乾燥空気は2つに分岐され、一方は加湿器302において水中を介してバブリングされ、加湿空気となる。この加湿空気、他方の乾燥空気、ならびにガスA、BおよびCは、流量調整されて1つに混合され、呼気の湿度を模擬した人工呼気として
図1のセル2に供給される。マスフローコントローラ301での調整によって、ガスセンサ1a、1b、1cが反応する複数の成分ガスの濃度の異なる組み合わせで、複数種類の人工呼気が生成される。
【0067】
再び
図3を参照して、人工呼気をセル2に供給する前に、セル2内の湿度を調整する(S12)。
【0068】
ステップS12では、制御部10は、ポンプ4を駆動し、ポンプ4がセル2内のガスを吸引できるようにバルブ5aの開放方向を制御する。また、制御部10は、調湿器6を介さずに外部空気をセル2内に取り込めるように、バルブ5bの開放方向を制御する。これによりセル2内を外部空気で換気する。これは、セル内に残留した呼気の成分ガスと水蒸気を排出するためである。
【0069】
次に調湿器6を介して外部空気をセル内に取り込めるようにバルブ5bの開放方向を制御する。これにより、さらにセル2内に残留した呼気の成分ガスを排出し、除湿を促進する。調湿器6を介さない換気を省略することも可能である。しかし、調湿器6を介さない換気を行うことにより、除湿時間を低減することができる。これにより、乾燥剤への負荷を低減し、乾燥材の交換頻度を低減することができる。
【0070】
ステップS12により、セル2内の湿度をある一定の湿度に制御することができる。この一定の湿度とは、相対湿度でも絶対湿度でもよい。また、一定の湿度とは、所定の範囲内の湿度であってもよい。
【0071】
ステップS12において、セル2内の湿度を除湿により調整する場合の詳細な手順について説明する。
【0072】
図5は、除湿による湿度調整処理の一例を示すフローチャートである。
【0073】
除湿による湿度調整では、制御部10は、まず目標湿度H0とその許容誤差ε(>0)を設定する(S31)。例えば、目標湿度H0を10%RH、許容誤差εを0.5%RHとすれば、セル2内の湿度を、10±0.5%RHの範囲に調整することになる。
【0074】
湿度センサ1dによりセル2内の湿度Hを測定する(S32)。
【0075】
制御部10は、測定された湿度Hと目標湿度Hとの差分H-H0が許容誤差εよりも小さく(S33でYES)かつ許容誤差の負値-εよりも大きければ(S34でYES)、湿度調整を終了する。
【0076】
H-H0≧ε(S33でNO)の場合は除湿する必要があるので、制御部10は、ポンプ4の動作時間Tonを設定して(S35)、設定した時間Tonの間、ポンプ4を動作させる(S36)。このとき、給排気口3bと除湿器61とがつながるように、バルブ5b、63bの開放方向が制御される。また給排気口3aはポンプ4とつながるようにバルブ5aの開放方向が制御される。これにより、時間Tonの間、セル2内に除湿器61を介して除湿された外部空気が導入され、セル2内の湿度は下がっていく。
【0077】
制御部10は、時間Tonの経過後にポンプ4を停止し、ある定められた時間Toffの間、セル2内のガスを静置させる(S37)。その後、制御部10は、再び湿度Hを取得して、H-H0を許容値εと比較する。
【0078】
まだ除湿が足りない場合は、ステップS32からステップS37の同じルーチンを繰り返す。このとき、制御部10は、ポンプの駆動時間Tonを、H-H0の値を元に決定する。簡単にはTonをH-H0の値に比例係数をかけ合わせた値としてもよい。
【0079】
図6は、ポンプ4の動作状況の一例を示すシーケンスチャートである。湿度Hが目標湿度H0に近づくにつれてポンプ4の駆動時間は短くなり、やがて|H-H0|<εとなって湿度調整は終了する。
【0080】
なお、上記処理では、Tonの時間内ではポンプ4を駆動させたが、ポンプ4を駆動させなくても、セル2内部の空気が除湿器61につながっていれば、セル2内の湿度は低下していく。ポンプ4を駆動させない処理により、目標湿度H0まで調整するのに時間がかかるが、静音で湿度調整することが可能である。
【0081】
過度に除湿して目標湿度よりセル内の湿度が下回った場合(ステップS34でNO)、加湿機能がある調湿器6を用いるときは、加湿を行ってもよい。加湿機能がない調湿器を用いるときは、バルブ5bの方向性を制御して、給排気口3bを外部空気につなげておけば、徐々に外部空気の水蒸気がセル内に入り込み、セル2内の湿度は増加する。湿度Hの測定を繰り返してやがてH-H0>-εを満たして、湿度調整は終了する。
【0082】
【0083】
制御部10は、湿度調整が終了したときのガスセンサの応答値を、第3の応答値として取得する(S13)。
【0084】
制御部10は、給排気口3aをガス導入口7につなげるようにバルブ5aの開放方向を制御し、給排気口3bは外部空気側につなげるようにバルブ5bの開放方向を制御する。人工呼気をガス導入口7からセル2に導入し、給排気口3bとバルブ5bを介して外部に排出する。これにより、人工呼気を、定められた流量で定められた時間だけセル2へ導入する(S14)。
【0085】
制御部10は、人工呼気の導入終了後にセル2内のガスを一定時間静置させ、人工呼気の導入および静置の間に取得されたガスセンサの応答値の最大値を第4の応答値として取得する(S15)。
【0086】
制御部10は、このようにして取得された第3の応答値と第4の応答値とをそれぞれベース値およびピーク値として、ベース値とピーク値との差異(例えば、ベース値とピーク値との差分や比率)を、ガスセンサの実効的な応答値として設定する。これにより、ガスセンサ素子自体の特性のドリフトや、ガスセンサの応答値(例えば、半導体式ガスセンサにおける素子抵抗値)を電圧に変換するアナログ回路のドリフトがある場合、可能な限りこれをキャンセルすることができる。
【0087】
制御部10は、すべての人工呼気について、ベース値とピーク値とを取得し、ガスセンサの実効的な応答値を求めた後、ガス濃度とガスセンサの実効的な応答値との関連を表す対応情報を求めて、データ記録部30に対応情報を記録する(S17)。対応情報は、例えば、
図14で説明した逆関数f
1
-1、f
2
-1、f
3
-1を表す数式、数表であっもてよく、また、逆関数f
1
-1、f
2
-1、f
3
-1を実行するニューラルネットの構成情報であってもよい。データ記録部30には、さらに、ガスセンサの応答値のベース値、ピーク値および実効的な応答値が記録されてもよい。
【0088】
ここで、ステップS12において、第3の応答値を取得する前に、セル2内の湿度を一定の目標湿度に調整することの効果について説明する。
【0089】
図7は、人工呼気に対するガスセンサの応答値の一例を示すグラフである。
図7において、縦軸は、半導体式ガスセンサ(NISSHAエフアイエス製水素センサSB-19)の人工呼気に対するガスセンサ出力電圧を表し、横軸は時間を表す。
【0090】
図7は、セル2内に対して外部空気による換気と除湿による湿度調整を行い(期間P1)、一定流量で一定時間人工呼気を導入し(期間P2)、一定時間セル2内のガスを静置する(期間P3)処理を6回繰り返した結果を示している。人工呼気は、アセトン1.0ppm、エタノール1.2ppm、水素24.8ppm、一酸化炭素6.2ppm、二酸化炭素25.4%を混合した相対湿度約70%の空気である。
【0091】
処理の繰り返しごとに、湿度調整での目標湿度を、63%RHから12%RHまで、意図的に下げていった。この湿度範囲は、およそ日本の季節の年間の湿度変化範囲を含んでいる。つまり、
図7の結果は、年間を通して、湿度調整を行わずにガスセンサの応答値を取得した場合に見られるガスセンサの応答値を模している。
【0092】
図7より明らかに、湿度の違いでガスセンサの応答電圧のベース値が異なっている。つまり、ガスセンサは湿度依存性を有している。そのため、湿度調整を行わずに取得したベース値とピーク値との差異をガスセンサの応答値の実効値として用いると、応答値の実効値にも湿度依存性が生じることになる。このような温度依存性は、ガスセンサの応答値のベース値を取得する前に、セル2内の湿度をある一定の湿度に調整することで軽減される。
【0093】
例えば、湿度調整における目標湿度を10%RHとすれば、一年を通して環境湿度はこの値を上回るため、除湿のみでセル2内を10%RHに調整することができる。湿度調整に要する時間を短縮するならば目標湿度を20%RHとしてもよい。加湿機能がある調湿器6を用いる場合、加湿により高湿度側に調整してもよい。ただし、加湿機能は必須ではなく、加湿機能を省略することにより、装置の構成が複雑になることを避けることができる。
【0094】
さらには、調湿器6そのものを省略し、あらかじめ湿度を一定にされた空気や、窒素などの不活性ガスを、ボンベやスプレー缶で導入してもよい。ただし、装置の家庭への普及や外出先への携行を想定すると、ボンベやスプレー缶の常備は困難であるため、除湿機能のみを有する調湿器で乾燥空気を得る方法がより実用的である。
【0095】
なお、発明者は、呼気成分の計測にあっては、ピーク値を得るときに、呼気自体を湿度調整する必要がないことも確認している。
【0096】
図8は、アセトンを主たる検出対象とするガスセンサの、アセトンと水蒸気とを含む混合ガスに対する応答値と相対湿度の関係を示している。
図8に見られるように、呼気として想定される相対湿度80%以上の高湿度領域において、ガスセンサの応答は一定であり、かつアセトン1.0ppmと1.7ppmの違いは判別できている。
【0097】
つまり、呼気のような高湿度領域では、ガスセンサのアセトンに対する応答値の湿度依存性は小さくなっているので、呼気自体を湿度調整しなくても、得られる応答値のピーク値の湿度依存性は小さい。このような特性は、アセトン以外のガスを主たる検出対象とするガスセンサにおいても、同様に見られる。
【0098】
したがって、ガスセンサの応答値のベース値およびピーク値のうち、ベース値を取得する際にセル内の湿度調整を行うことで、大きな効果を得ることができる。すなわち、湿度が一定に調整された状態でベース値を取得することにより、ガスセンサの湿度依存性を効果的に軽減できる。
【0099】
また、ステップS14において、人工呼気を定められた流量で定められた時間だけセル2へ導入することの効果について説明する。
【0100】
図9は、人工呼気の導入時間に対するガスセンサの応答値の一例を示すグラフである。
図9において、縦軸は、ガスセンサの実効的な応答値(ベース値とピーク値との差分)を表し、横軸は人工呼気の導入時間を表す。
図9には、成分ガスの濃度が互いに異なる2種類の人工呼気(高濃度人工呼気および低濃度人工呼気)を、2.3L/分の流量で、40秒、20秒、10秒、5秒、1秒導入した場合の、実効的な応答値を示している。
【0101】
図9から、成分ガスの濃度が互いに異なるいずれの人工呼気でも、吹き込み時間が異なると、ガスセンサの応答値が変動することを示している。また、ガスの導入総量は流量と導入時間との積である。よって、ガスの流量およびガスの導入時間の双方を基準化することにより、ステップS17で有効な対応情報が得られる。
【0102】
以上、学習工程S10では、セル内の湿度の調整することによって湿度依存性を軽減したガスセンサの応答値を得て、ガス濃度とガスセンサの実効的な応答値との対応情報を求めることを説明した。また、ガスセンサの応答値には、ガスの導入流量および導入時間への依存性があることを説明した。
【0103】
以下では、実測工程S20について、ガスセンサに湿度依存性およびガスの導入流量および導入時間への依存性があることを踏まえて説明する。
【0104】
実測工程S20の大部分は、学習工程S10の人工呼気を、実際の計測対象の呼気に置き換えて構成されている。ここで、計測対象の呼気は、第1のガスの一例である。
【0105】
再び
図3を参照して、ステップS21では、制御部10は、ポンプ4を駆動し、ポンプ4がセル2内のガスを吸引できるようにバルブ5aの開放方向を制御する。また、制御部10は、調湿器6を介さずに外部空気をセル2内に取り込めるようにバルブ5bの開放方向を制御する。これによりセル2内を外部空気で換気してセル内に残留した呼気の成分ガスと水蒸気を排出する。
【0106】
次に、制御部10は、調湿器6を介して外部空気をセル2内に取り込めるようにバルブ5bの開放方向を制御する。これにより、さらにセル2内に残留した呼気の成分ガスを排出し、除湿を促進する。ここで、調湿器6において加湿または除湿されてからセル2に取り込まれる外部空気は、第2のガスの一例である。
【0107】
ステップS21で、セル2内の湿度を、学習工程S10のステップS12の湿度調整での目標湿度と同一の目標湿度に制御することにより、測定精度を高めることができる。ここで、目標湿度は、相対湿度であってもよいし、絶対湿度であってもよい。また、目標湿度は、所定の範囲内の湿度であってもよい。湿度調整には、学習工程S10と同様に、
図5の手順を利用し、制御部10は、セル2内が目標の湿度範囲に到達したとき、湿度調整を終了するとともに、目標湿度範囲に到達したことを、湿度表示部としての表示部20を介してユーザに通知する。
【0108】
図10は、表示部20に表示される操作ガイド画面の一例を示す図である。
図10に示される操作ガイド画面において、調湿中のアイコンは、湿度調整が行われている間、高輝度で表示される。
【0109】
制御部10は、学習工程S10における第3の応答値と同様に、湿度調整が終了したときのガスセンサの応答値を、第1の応答値として取得する(S22)。第1の応答値を取得し終えると、表示部20の操作ガイド画面において、調湿中のアイコンが低輝度で表示され、開始のアイコンが高輝度で表示される(S23)。これにより、ユーザは、呼気を吹き込むことができるようになったことを認識する。
【0110】
ステップS24では、制御部10は、給排気口3aをガス導入口7につなげるようにバルブ5aの開放方向を制御する。給排気口3bは外部空気側につなげるようにバルブ5bの開放方向を制御する。ユーザは呼気をガス導入口7からセル2に吹き込み、セル2内に吹き込まれたガスは給排気口3bとバルブ5bを介して外部に排出される。
【0111】
ユーザが呼気の吹き込みを開始すると、
図10に示すように、表示部20の操作ガイド画面において、セル2に配置した流量検知器1eの値が、リアルタイムにグラフで提示される。操作ガイド画面には、例えば、学習工程S10のステップS14での導入流量の±10%の流量範囲が斜線で示され、ユーザは、吹き込む呼気の流量が当該斜線で示された範囲に入るようにガイドされる。例えば、画面の右側に、「弱く」、「そのまま」、「強く」といったアイコンが配置され、吹き込まれる呼気の流量の増減に伴って、いずれかのアイコンが高輝度で表示されてもよい。
【0112】
ユーザは、提示されるガイドに応じて吹き込み流量を調整し、一定流量で呼気を吹き込むことができる。制御部10は、呼気の吹き込みに伴う流量検知器1eの値の立ち上がりを検出し、検出したタイミングから計時して、ステップS14での導入時間と等しい時間が経過すると、バルブ5aで呼気のセル2への吹き込みが遮断されるように制御する(S25)。
【0113】
このようにして、ステップS24での呼気の吹き込み流量と吹き込み時間は、それぞれ学習工程S10のステップS14で人工呼気を導入した際の導入流量および導入時間とできる限り同一となるように制御される。これにより、ガスセンサの応答値の、ガスの導入流量および導入時間に対する依存性を軽減することができる。
【0114】
制御部10は、呼気の導入終了後にセル2内のガスを一定時間静置させ、呼気の吹き込みおよび静置の間に得られたガスセンサの応答値の最大値を第2の応答値として取得する(S26)。
【0115】
制御部10は、このようにして取得された第1の応答値と第2の応答値とをそれぞれベース値およびピーク値として、ベース値とピーク値との差異(例えば、ベース値とピーク値との差分や比率)を、ガスセンサの実効的な応答値として設定する。
【0116】
制御部10は、ガスセンサの実効的な応答値と、データ記録部30に記憶されている対応情報とを用いて、呼気に含まれる成分ガスの濃度を算出する(S27)。算出された濃度は、表示部20に表示される計測結果画面においてユーザに提示される(S28)。
【0117】
図11は、表示部20に表示される計測結果画面の一例を示す図である。
図11の結果は、具体的には、ガスセンサ1aをアセトンセンサ(NISSHAエフアイエス製SB-AQ8)、ガスセンサ1bを水素センサ(NISSHAエフアイエス製SB-19)、ガスセンサ1cを一酸化炭素センサ(FIGARO製TGS5042)とし、これら3つのガスセンサで3種の成分ガスの濃度を判定した結果を示している。
【0118】
以上、実測工程S20では、セル内の湿度の調整することによって湿度依存性を軽減したガスセンサの応答値を得て、ガスセンサの実効的な応答値と対応情報とからガス濃度を高精度に求めることできる。また、ユーザによる呼気の吹き込み流量および吹き込み時間を、学習工程S10での人工呼気の導入流量および導入時間とできる限り同じにすることにより、ガスの導入流量および導入時間に対するガスセンサの応答値の依存性も軽減できる。
【0119】
ここで、実測工程S20のステップS21において湿度調整を行うことの効果について、湿度調整を行わない場合、換気のみを行った場合、および除湿による湿度調整を行った場合に得られた、ガスセンサの実効的な応答値を対比して説明する。
【0120】
図12A、
図12B、
図12Cは、湿度調整の有無に応じたガスセンサの応答値の繰り返し再現性の一例を示すグラフである。
図12A、
図12B、
図12Cにおいて、縦軸はガスセンサの応答値(ピーク値)を表し、横軸は人工呼気のサンプル番号を表す。人工呼気のサンプルは、サンプル番号が大きいほど高い濃度の成分ガスを含んでいる。
【0121】
図12A、
図12B、
図12Cには、人工呼気のサンプルを、サンプル番号1、2、3、4、5、4、3、2、1の順序で、つまり成分ガスの濃度が上昇し下降する順序で、セル2に導入する処理を3ループ繰り返したときの、ガスセンサの応答値(ピーク値)が示されている。比較のため、
図12Aでは、ステップS21の湿度調整を省略し、
図12Bでは、ステップS21の湿度調整に代えて外部空気による換気のみを行い、
図12Cでは、ステップS21において除湿による湿度調整を行った場合の結果が示されている。
【0122】
図12Aでは、異なるループ間、および同じループ内でも濃度の上昇時と下降時とで、応答値が大きく異なり、応答値の繰り返し再現性を得ることができなかった。
図12Bでは、
図12Aと比べると、応答値の繰り返し再現性は改善されているが、十分ではない。
図12Cでは、異なるループ間、および同じループ内での濃度の上昇時と下降時とで、ほぼ同一の応答値が再現され、実用的な繰り返し再現性が得られた。
【0123】
より詳細に、
図12Bの低濃度領域(すなわち、サンプル番号1と2)におけるセンサ応答値のばらつき(すなわち、平均値に対する差分)を
図12Dに、同様に
図12Cの低濃度領域におけるセンサ応答値のばらつきを
図12Eに示した。湿度調整を行った場合の
図12Eのほうが換気のみの
図12Dに比べてばらつきが低減されているので、湿度調整を行うことでより高い繰り返し再現性を得た。
【0124】
これらの結果から、ステップS21においてセル2内の湿度を一定値に調整することにより、実測工程S20で実用的な繰り返し再現性を得ることができる。
【0125】
なお、上述した例では、計測対象であるガスは呼気ガスであるが、本実施形態に係るガス成分計測装置は、皮膚ガスにも適用可能である。この場合も、ガス成分計測装置は、以下に説明する点を除き、上述した呼気成分計測装置と同様の構成を有し、同様に動作する。すなわち、皮膚ガスは呼気ガスと異なり肺のような圧力源がないので、ガス成分計測装置は、例えば、皮膚表面から拡散する微量ガスを、時間をかけて微小容量のセルで受ける構成となる。皮膚ガスの拡散は、
図1の流量検知器1eを構成する流量センサの検出下限以下の流量となる。この場合、セルへの流量を一定にするには、例えば、ガス導入口7に皮膚を晒し、バルブ5aをガス導入口7と給排気口3aとを連通するように駆動させてから一定時間を計測して、連通を遮断する。すなわち、この場合の流量検知器1eの機能とはその一定時間を計測する機能のみであってもよい。
【0126】
従って、
図3の学習工程S10のS14は、流量は用いずに時間管理のみで工程の開始・終了を行ってもよい。同様に、実測工程S20のS23では吹込み流量をユーザに提示するのではなく、皮膚をガス導入口7に晒せ、バルブ5aをガス導入口7と給排気口3aとを連通するように駆動させてから、学習工程と同じ一定時間までの経過時間をユーザに提示してもよい。また、学習工程S10の人工皮膚ガスを生成する工程S11は、
図4の人工呼気生成装置において混合されたガスの圧力を直接ガス導入口7に導くのではなく、いったんガスバッグ等に捕集し、大気圧同等のガスバッグ内の人工皮膚ガスを導入口7に接続する形態をとってもよい。
【0127】
(実施の形態2)
実施の形態2に係るガス成分計測装置について、歯ブラシおよびそのクレードルに形成された呼気成分計測装置の例を挙げて説明する。
【0128】
実施の形態2に係る呼気成分計測装置は、実施の形態1で説明した呼気成分計測装置を、歯ブラシおよびそのクレードルに形成した応用例である。呼気成分計測装置を歯ブラシに形成した理由は、歯ブラシは口にくわえる生活用品であり、呼気を吹き込むという動作に親和性が高いためである。
【0129】
図13は、実施の形態2に係る呼気成分計測装置の機能的な構成の一例を示す模式図である。
図13に示されるように、呼気成分計測装置200は、歯ブラシ8と歯ブラシ8を保持するクレードル9とに形成される。以下の説明では、呼気成分計測装置200の構成要素を、呼気成分計測装置100において機能的に対応する構成要素の符号と同じ符号で参照する。また、呼気成分計測装置100で説明した事項と共通する事項については、説明を適宜省略する。
【0130】
歯ブラシ8には、ガスセンサ1a、1b、1c、湿度センサ1d、流量検知器1e、セル2、給排気口3a、3b、ガス導入口7、制御部10aが設けられる。
【0131】
セル2は、歯ブラシ8の把持部の内部空間によって構成され、当該内部空間に、ガスセンサ1a、1b、1c、湿度センサ1d、流量検知器1e、および制御部10aが配置される。
【0132】
流量検知器1eは、セル2内の圧力を検知する圧力センサで構成される。検知された圧力と、歯ブラシ8における呼気に対する流路抵抗の設計値とから、呼気の吹き込み流量が算出される。一般に、ダイアフラム式の圧力センサは、熱線方式や超音波方式にてガスの流量を検出する流量検知器と比べて安価で構成が簡素であり、かつ歯ブラシのような小体積内に収めやすい。
【0133】
ガス導入口7は、歯ブラシ8のブラシ付近に設けられ、歯磨き中に水が歯ブラシ内部に侵入しないように、撥水性を有する微細孔の集合体で形成されている。ガス導入口7から吹き込まれた呼気は、セル2に導入され、給排気口3bから排出される。
【0134】
制御部10aは、例えば、ワンチップのマイクロコンピュータで構成され、歯ブラシ8がクレードル9から取り外された状態で、各種センサの駆動および測定値の取得を制御する。
【0135】
クレードル9には、ポンプ4、バルブ5b、調湿器6、制御部10b、表示部20、データ記録部30およびデータ解析部40、オーリング91が設けられる。
【0136】
調湿器6は、シリカゲルやモレキュラーシーブ等の乾燥剤が入った筒体であり、除湿機能のみを有している。
【0137】
オーリング91は、歯ブラシ8とクレードル9との間の気密を保持する。
【0138】
制御部10b、データ記録部30およびデータ解析部40は、例えば、ワンチップのマイクロコンピュータで構成される。表示部20は、例えば、圧電ブザーなどの発音素子や発光ダイオードなどの発光素子で構成される。
【0139】
歯ブラシ8に設けた制御部10aとクレードル9に設けた制御部10bとは、例えば、無線通信を介して連動する。呼気成分計測装置200においては、制御部10aと制御部10bとが連動することにより、呼気成分計測装置100での制御部10としての機能を果たす。
【0140】
次に、呼気成分計測装置200の動作の一例について説明する。
【0141】
ここで、人工呼気を測定する前およびユーザの呼気を測定する前に湿度調整するのではなく、人工呼気を測定した後およびユーザの呼気を測定した後で湿度調整してもよい。つまり、湿度調整が人工呼気およびユーザの呼気を測定した後で行われるように、学習工程および実測工程の双方においてガスセンサの応答値をピーク値およびベース値の順で取得する。これにより、歯磨きに際して呼気成分を検出する利用シーンにおいて、ユーザを待たせることなく、ユーザにとっての利便性を向上させることができる。
【0142】
まず、呼気成分計測装置200による学習工程について説明する。
【0143】
呼気成分計測装置200による学習工程では、
図3の学習工程S10のステップS14、S15を、ステップS12、S13の前に行う。これにより、人工呼気に対するガスセンサの応答値は、ピーク値が先に取得され、湿度調整の後、ベース値が取得される。ステップS17では、取得されたベース値とピーク値との差異をガスセンサの実効的な応答値として、ガス濃度とガスセンサの実効的な応答値との関連を表す対応情報をデータ記録部30に記録する。
【0144】
ステップS12、S13の前に、ステップS14、S15を行うことで、ユーザは、湿度調整で待たされることなく人工呼気を測定できる。
【0145】
次に、呼気成分計測装置200による実測工程について説明する。
【0146】
呼気成分計測装置200による実測工程は、
図3の実測工程S20のステップS23~S26を、ステップS21、S22の前に行うものである。
【0147】
呼気成分計測装置200による実測工程では、まず、ユーザは歯磨きを終えた後に、ガス導入口7を口内に含み、呼気を吹き込む。ガス導入口7から導入された呼気の成分ガスは、セル2内のガスセンサ1a、1b、1cで検知される。呼気の吹き込み開始は流量検知器1eである圧力センサの応答で検知される。
【0148】
制御部10aであるマイクロプロセッサは、吹き込みが開始したことを流量検知器1eで検知し、吹込み中に圧力値が定められた一定範囲に入っているか否か、そして定められた一定時間吹き込んだかを、表示部20を介して、ユーザに知らせる。
【0149】
吹き込み終了後に一定時間、呼気をセル2内に静置する。呼気の吹き込みおよび静置の間に取得されたガスセンサ1a、1b、1cの応答値の最大値を第2の応答値とする。
【0150】
呼気成分計測装置200では、給排気口3aにバルブ5aやシャッターを設けて、吹き込み後にセル2を外部に対して遮断する代わりに、給排気口3aの口径を十分に小さくとることで、外部空気の影響を受けずに、ガスセンサ1a、1b、1cの応答値を取得する。
【0151】
以上の処理が、
図3のステップS23~S26に対応する。ステップS21、S22の前に、ステップS23~S26を行うことにより、ユーザは、湿度調整で待たされることなくユーザの呼気を測定できる。
【0152】
次に、ユーザは、歯ブラシ8をクレードル9に戻し、歯ブラシ8の根元の給排気口3bとクレードル9の内部とをつなぐ。ポンプ4を起動して、クレードル9の給排気口から外部空気をクレードル内に取り込んで歯ブラシ8に送り、セル2内を一定時間換気する。
【0153】
このとき、セル2内の湿度は湿度センサ4dでモニタされる。換気のみで規定の湿度に達しないときは、バルブ5bの方向を切り換え、調湿器6を介して外部空気をクレードル9に取り込んで歯ブラシ8に送り、セル2内を定められた湿度に調湿する。
【0154】
湿度調整には、
図5の手順を利用する。セル2内が目標の湿度範囲に到達したとき、湿度調整を終了し、ガスセンサの応答値のベース値を、第1の応答値として取得する。第1の応答値が取得されることにより、第1の応答値と第2の応答値との差異により、ガスセンサの実効的な応答値が得られる。
【0155】
以上の処理が、
図3のステップS21、S22に対応する。
【0156】
最後に、
図3のステップS27、S28に対応して、呼気の成分ガスの濃度が判定される。呼気成分計測装置200では、歯ブラシ8とクレードル9との間で無線などの通信手段により、ベース値である第1の応答値とピーク値である第2の応答値とがデータ解析部40に送られ、データ記録部30に記録されている対応情報に基づいて、呼気の成分ガスの濃度が判定される。
【0157】
なお、実施の形態2の変形例として、
図13ではクレードル9に設けられているデータ記録部30、データ解析部40、制御部10b、ポンプ4、バルブ5bおよび調湿器6を、すべて小型化して、歯ブラシ8内に収めてもよい。
【0158】
本開示において、部の全部又は一部、又は
図1および13に示されるブロック図の機能ブロックの全部又は一部は、半導体装置、半導体集積回路(IC)、又はLSI(large scale integration)を含む一つ又は複数の電子回路によって実行されてもよい。LSI又はICは、一つのチップに集積されてもよいし、複数のチップを組み合わせて構成されてもよい。ここでは、LSIやICと呼んでいるが、集積の度合いによって呼び方が変わり、システムLSI、VLSI(very large scale integration)、若しくはULSI(ultra large scale integration) と呼ばれるものであってもよい。 LSIの製造後にプログラムされる、Field Programmable Gate Array (FPGA)、又はLSI内部の接合関係の再構成又はLSI内部の回路区画のセットアップができるreconfigurable logic deviceも同じ目的で使うことができる。
【0159】
さらに、部の全部又は一部の機能又は操作は、ソフトウエア処理によって実行することが可能である。この場合、ソフトウエアは一つ又は複数の半導体メモリ、光学ディスク、ハードディスクドライブなどの非一時的記録媒体に記録され、ソフトウエアが処理装置(processor)によって実行されたときに、そのソフトウエアで特定された機能が処理装置(processor)および周辺装置によって実行される。本開示の装置は、ソフトウエアが記録されている一つ又は複数の非一時的記録媒体、処理装置(processor)、及び必要とされるハードウエアデバイス、例えばインターフェース、を備えていても良い。
【産業上の利用可能性】
【0160】
本開示のガス成分計測装置は、例えば、安価でかつ構成および取り扱いが簡易な呼気成分計測装置として、例えばヘルスケア分野において広く利用できる。
【符号の説明】
【0161】
1 センサユニット
1a、1b、1c ガスセンサ
1d 湿度センサ
1e 流量検知器
2 セル
3a、3b 給排気口
4 ポンプ
5a、5b、63a、63b バルブ
6 調湿器
7 ガス導入口
8 歯ブラシ
9 クレードル
10、10a、10b 制御部
20 表示部
30 データ記録部
40 データ解析部
61 除湿器
62、302 加湿器
91 オーリング
100、200 呼気成分計測装置(ガス成分計測装置)
300 人工呼気生成装置