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特許7325019戸枠、この戸枠の施工方法及びこの戸枠を備えた引戸装置
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  • 特許-戸枠、この戸枠の施工方法及びこの戸枠を備えた引戸装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-03
(45)【発行日】2023-08-14
(54)【発明の名称】戸枠、この戸枠の施工方法及びこの戸枠を備えた引戸装置
(51)【国際特許分類】
   E06B 1/60 20060101AFI20230804BHJP
   E06B 1/34 20060101ALI20230804BHJP
   E06B 3/46 20060101ALI20230804BHJP
【FI】
E06B1/60
E06B1/34 Z
E06B3/46
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019206800
(22)【出願日】2019-11-15
(65)【公開番号】P2021080659
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-10-14
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和1年11月6日に以下アドレスのウェブサイトにカタログ掲載https://sumai.panasonic.jp/catalog/cwf_door.html http://esctlg.panasonic.biz/iportal/CatalogViewInterfaceStartUpAction.do?method=startUp&mode=PAGE&catalogCategoryId=&catalogId=5316410000&pageGroupId=&volumeID=PEWJ0001&designID=&nonFlash=true&redirect=true 令和1年11月6日にくらし体感スクエア2019において展示 令和1年11月7日に南陽吉久様1912建材新商品研修会において公開 令和1年11月9日に2019丸産業住設建材まつりにおいて展示 令和1年11月12日にくらしの新商品内覧会2019において展示
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002686
【氏名又は名称】協明国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】篠崎 美帆
(72)【発明者】
【氏名】松尾 幸義
【審査官】秋山 斉昭
(56)【参考文献】
【文献】特開平7-4152(JP,A)
【文献】実開平5-42568(JP,U)
【文献】特開2002-201863(JP,A)
【文献】特開2004-293235(JP,A)
【文献】特開2018-66261(JP,A)
【文献】特開平8-296369(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 1/60
E06B 1/34
E06B 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
戸幅方向にスライドされる戸パネルが建て付けられる戸枠であって、
少なくとも施工された状態で露出する表面が塗装可能な塗装下地面とされた縦枠を備え、該縦枠には、当該縦枠を縦枠下地に固定する固着具の頭部を受け入れる受入凹所が見込面において開口するように設けられており、
表面が塗装可能とされ、前記縦枠の見込面から突出しないように前記受入凹所に圧入されるコルクを含む埋込部材を備えていることを特徴とする戸枠。
【請求項2】
請求項1において、
前記埋込部材は、コルク粒とゴムとを含有するゴム含有コルクから形成されていることを特徴とする戸枠。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記塗装下地面に塗装が施された前記縦枠に取り付けられ、前記戸パネルの戸幅方向一端面が当接されるクッション部材を備えていることを特徴とする戸枠。
【請求項4】
請求項3において、
前記クッション部材の取付位置の位置決めガイドが印刷された塗装説明書を備えていることを特徴とする戸枠。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の戸枠の施工方法であって、
前記縦枠の受入凹所を介して前記縦枠下地に固着具を止着した後に、該受入凹所に、前記埋込部材を圧入し、次いで、該埋込部材の表面及び前記塗装下地面に塗装を施すことを特徴とする戸枠の施工方法。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の戸枠と、該戸枠に建て付けられ、表面が塗装可能な塗装下地面とされた戸パネルと、を備えていることを特徴とする引戸装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、戸枠、この戸枠の施工方法及びこの戸枠を備えた引戸装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、戸幅方向にスライドされる戸パネルが建て付けられる戸枠が知られている。
例えば、下記特許文献1には、左右一対の縦枠と上下一対の横枠とを備えた引戸枠が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-78954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような戸枠は、数種類の色調が準備されている場合はあるが、予め準備された色調以外としたい場合やより好みの色調としたい場合もある。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、表面意匠の選択自由度を向上し得る戸枠、この戸枠の施工方法及びこの戸枠を備えた引戸装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明に係る戸枠は、戸幅方向にスライドされる戸パネルが建て付けられる戸枠であって、少なくとも施工された状態で露出する表面が塗装可能な塗装下地面とされた縦枠を備え、該縦枠には、当該縦枠を縦枠下地に固定する固着具の頭部を受け入れる受入凹所が見込面において開口するように設けられており、表面が塗装可能とされ、前記縦枠の見込面から突出しないように前記受入凹所に圧入されるコルクを含む埋込部材を備えていることを特徴とする。
【0007】
また、前記目的を達成するために、本発明に係る戸枠の施工方法は、本発明に係る戸枠の施工方法であって、前記縦枠の受入凹所を介して前記縦枠下地に固着具を止着した後に、該受入凹所に、前記埋込部材を圧入し、次いで、該埋込部材の表面及び前記塗装下地面に塗装を施すことを特徴とする。
【0008】
また、前記目的を達成するために、本発明に係る引戸装置は、本発明に係る戸枠と、該戸枠に建て付けられ、表面が塗装可能な塗装下地面とされた戸パネルと、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る戸枠及びこれを備えた引戸装置は、上述のような構成としたことで、表面意匠の選択自由度を向上させることができる。また、本発明に係る戸枠の施工方法は、上述のような構成としたことで、上記のような戸枠に好適な施工方法となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】(a)は、本発明の一実施形態に係る戸枠の一例を模式的に示す図2(b)におけるZ1部に対応させた一部破断概略拡大横断面図、(b)~(d)は、本発明の一実施形態に係る戸枠の施工方法の一例を模式的に示す図2(b)におけるZ2部に対応させた一部破断概略拡大横断面図である。
図2】(a)は、同戸枠を備えた本発明の一実施形態に係る引戸装置の一例を模式的に示す一部破断概略正面図、(b)は、(a)におけるX-X線矢視に対応させた一部破断概略横断面図である。
図3図2(a)におけるY-Y線矢視に対応させた一部を省略した一部破断概略縦断面図である。
図4】同戸枠が備える塗装説明書の一例を模式的に示す概略図である。
図5】本発明の他の実施形態に係る戸枠の一例及びこれを備えた引戸装置の一例を模式的に示し、図3に対応させた一部を省略した一部破断概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
なお、一部の図では、他図に付している詳細な符号の一部を省略している。
また、以下の各実施形態では、各実施形態に係る戸枠及びこれを備えた引戸装置を施工した状態を基準として上下方向等の方向を説明する。
【0012】
図1図4は、第1実施形態に係る戸枠の一例及びこれが備える塗装説明書の一例並びに同戸枠を備えた引戸装置の一例を模式的に示す図である。
本実施形態に係る戸枠2は、図2に示すように、戸幅方向にスライドされる戸パネル10が建て付けられる。この戸枠2は、少なくとも施工された状態で露出する表面が塗装可能な塗装下地面22aとされた縦枠としての戸先側縦枠22を備えている。このような構成とすれば、塗装下地面22aに塗装を施すことで種々の色調にすることができる。これにより、施工後に、例えば、壁紙や他の内装部位等との調和性等を見ながら好みの色調に塗装するようなことも可能となる。
本実施形態に係る引戸装置1は、この戸枠2と、この戸枠2に建て付けられ、表面が塗装可能な塗装下地面11a,12a,13a,14a,15a,17aとされた戸パネル10と、を備えている。このような構成とすれば、戸枠2及び戸パネル10の両方に塗装を施すことで種々の色調にすることができる。
【0013】
戸枠2は、住居等の建物の壁体3に設けられた開口部に設置される。本実施形態では、この戸枠2は、戸パネル10の上側に配される上枠20と、この上枠20の戸先側となる長手方向第1端部に接合される戸先側縦枠22と、上枠20の戸尻側となる長手方向第2端部に接合される戸尻側縦枠25と、を備えている。また、戸枠2は、開放状態の戸パネル10が納められる袖壁4の出入口5側に設けられる中間縦枠(中方立)28を備えている。この戸枠2は、少なくとも施工された状態で露出する表面が塗装可能な塗装下地面20a,22a,25a,28aとされている。このような構成とすれば、施工された状態で露出する戸枠2の表面に塗装を施すことで戸枠2を概ね全体に亘って種々の色調にすることができる。
また、本実施形態では、この戸枠2に、片引き状に配される一枚の戸パネル10を建て付けた例を示している。なお、出入口5の開口幅方向両側に袖壁4を設け、これらのそれぞれに納められる戸パネル10を両引き(引き分け)状に設けた構成としてもよい。また、戸枠2としては、戸パネル10が袖壁納めで建て付けられる態様とされたものに限られず、引違状や戸袋納め、アウトセット納めで建て付けられる態様とされたものでもよい。また、戸枠2の詳細については、後述する。
【0014】
戸パネル10は、住居等の建物に設けられた出入口5を開閉する引戸として建て付けられる。本実施形態では、この戸パネル10は、下端部に戸車18が設けられ、被ガイド部としての上端部10aが上枠20のガイド溝21aに挿入される構成、つまり、下荷重型で建て付けられる構成とされている。
この戸パネル10は、図2及び図3に示すように、一方向(上下方向)に長尺な略矩形平板状とされている。この戸パネル10の戸高寸法(長さ寸法)は、当該戸パネル10によって開閉される出入口5の開口高に応じた寸法であればよく、標準的な戸高寸法、例えば、1700mm~2100mm程度でもよい。また、戸パネル10は、戸高寸法が天井高と略同高さ、例えば、2300mm~3000mm程度とされたハイドアを構成するものでもよい。また、戸パネル10の戸幅寸法は、出入口5の開口幅に応じて適宜の寸法としてもよく、例えば、500mm~1500mm程度でもよい。また、戸パネル10の戸厚寸法は、20mm~40mm程度でもよい。
【0015】
本実施形態では、この戸パネル10は、図2(a)に示すように、戸高方向両側端部のそれぞれに設けられた上端横框部11及び下端横框部12と、戸幅方向両側端部のそれぞれに設けられた戸先側縦框部13及び戸尻側縦框部14と、を備えている。つまり、この戸パネル10は、四方框パネル状とされている。また、戸パネル10は、戸高方向途中部位に設けられ、戸先側縦框部13と戸尻側縦框部14との間に架け渡されるように設けられた中間横桟部15を備えている。また、戸パネル10は、この中間横桟部15の上下両側に設けられ、上端横框部11、下端横框部12、戸先側縦框部13及び戸尻側縦框部14並びに中間横桟部15よりも戸厚方向に沿う寸法が小とされた上側鏡板部16及び下側鏡板部17を備えている。
【0016】
戸幅方向両側の戸先側縦框部13及び戸尻側縦框部14は、戸高方向に延びるように長尺状とされている。これら戸先側縦框部13及び戸尻側縦框部14は、戸パネル10の戸高方向の全体に亘って設けられている。つまり、これら戸先側縦框部13及び戸尻側縦框部14の長さ寸法は、戸パネル10の戸高寸法と同寸法とされ、これら戸先側縦框部13及び戸尻側縦框部14と上端横框部11及び下端横框部12とを縦勝状に接合した構成としている。なお、これら戸先側縦框部13及び戸尻側縦框部14の戸厚方向に沿う寸法は、互いに略同寸法とされていてもよい。また、図例では、戸先側縦框部13に、引手を設けた例を示している。このような引手としては、戸先側縦框部13の戸厚方向両側のそれぞれにおいて開口する手掛凹所状とされたものであってもよい。
【0017】
上端横框部11、下端横框部12及び中間横桟部15は、戸幅方向に延びるように長尺状とされている。上端横框部11、下端横框部12及び中間横桟部15の戸厚方向に沿う寸法は、互いに略同寸法とされていてもよく、また、戸先側縦框部13及び戸尻側縦框部14の戸厚方向に沿う寸法と略同寸法またはこれらの戸厚方向に沿う寸法よりも小とされていてもよい。
本実施形態では、これら上端横框部11、下端横框部12及び中間横桟部15並びに戸先側縦框部13及び戸尻側縦框部14の表面を、塗装可能な塗装下地面11a,12a,13a,14a,15aとしている。これら上端横框部11、下端横框部12及び中間横桟部15並びに戸先側縦框部13及び戸尻側縦框部14は、少なくとも戸厚方向両面が塗装下地面11a,12a,13a,14a,15aとされている。また、これら上端横框部11、下端横框部12及び中間横桟部15並びに戸先側縦框部13及び戸尻側縦框部14は、上側鏡板部16及び下側鏡板部17側に向く側面が塗装下地面11a,12a,13a,14a,15aとされている。また、戸先側縦框部13及び戸尻側縦框部14は、戸幅方向外側に向く戸先側端面及び戸尻側端面が塗装下地面13a,14aとされている。なお、上端横框部11及び下端横框部12の戸高方向外側に向く面も塗装下地面とされていてもよい。
【0018】
上側鏡板部16は、上端横框部11、中間横桟部15、戸先側縦框部13及び戸尻側縦框部14に四周が囲まれるように設けられている。本実施形態では、この上側鏡板部16を、透光部を構成するものとしている。この上側鏡板部16は、アクリルやポリカーボネート等の合成樹脂系材料や、ガラス等の透光性材料から形成されたものでもよい。この上側鏡板部16は、四周端部が上端横框部11、中間横桟部15、戸先側縦框部13及び戸尻側縦框部14に設けられた受入溝に受け入れられて保持されたものでもよい。
なお、この上側鏡板部16は、略無色透明とされたものに限られず、有色透明とされたものや半透明とされたものでもよい。また、上側鏡板部16の戸厚方向両面または一方面に、格子状部材が設けられたものでもよい。また、上側鏡板部16としては、透光性を有したものに限られず、不透光な構成とされたものであってもよい。
【0019】
下側鏡板部17は、中間横桟部15、下端横框部12、戸先側縦框部13及び戸尻側縦框部14に四周が囲まれるように設けられている。この下側鏡板部17は、本実施形態では、不透光な構成とされ、戸厚方向両面が塗装下地面17aとされている。
この下側鏡板部17や上記した上端横框部11、下端横框部12及び中間横桟部15並びに戸先側縦框部13及び戸尻側縦框部14は、適宜の木質系材料や金属系材料、合成樹脂系材料等から形成されたパネル芯材に、後記する戸先側縦枠22と同様の表面材が貼着された構成とされている。なお、これら下側鏡板部17や上記した上端横框部11、下端横框部12及び中間横桟部15並びに戸先側縦框部13及び戸尻側縦框部14は、いわゆるフラッシュパネル状とされたものであってもよい。
【0020】
戸パネル10の戸車18は、図2(a)に示すように、戸パネル10の下端部の戸幅方向両側端部のそれぞれに設けられている。これら戸車18,18は、戸厚方向に沿う軸回りに回転可能とされている。なお、これら戸車18,18は、戸パネル10の下端部に設けられた取付凹所に嵌め込まれるように埋込状に取り付けられた戸車ユニットに回転自在に設けられていてもよい。また、図3に示すように、床側には、これら戸車18,18が走行自在に係合するガイド溝29aが設けられた下レール29が設置される。この下レール29は、戸枠2または引戸装置1が備えたものであってもよい。図例では、この下レール29を、床下地上に配設された床材9,9間に埋込状に設けた例を示している。また、この下レール29は、図2(b)に示すように、戸先側縦枠22と戸尻側縦枠25との間に亘って設けられる。ガイド溝29aは、上方側に向けて開口し、戸幅方向に沿って延びるように設けられている。なお、下レール29としては、床材9,9間に埋込状に設けられるものに限られず、床材9上に直置状に設けられるものでもよい。また、下レール29は、戸枠2を構成する下枠に設けられたものであってもよい。
【0021】
また、戸パネル10の適所に、錠装置や、開閉方向の両方または一方に移動する戸パネル10を減速させる減速機構、戸パネル10の移動を助勢する助勢機構等が設けられていてもよい。また、戸パネル10としては、四周の框部を構成する上端横框部11、下端横框部12、戸先側縦框部13及び戸尻側縦框部14内を上下に区画する単一の中間横桟部15を設けた態様とされたものに限られない。上端横框部11、下端横框部12、戸先側縦框部13及び戸尻側縦框部14内を複数に区画する格子状桟部材を設けた態様とされたものでもよい。また、戸パネル10としては、四方框パネル状とされたものに限られず、戸厚方向両面が概ね全面に亘って平坦面状とされたものでもよい。
【0022】
上枠20は、上枠下地に固定され、出入口5の上側(天側)を区画する。この上枠20は、戸幅方向に長尺状とされている。この上枠20は、出入口5の上側を区画する部位の戸厚方向に沿う見込寸法が袖壁4に対応する部位の見込寸法よりも大とされている。この上枠20の出入口5の上側を区画する部位の見込寸法は、壁体3の壁厚よりも大とされている。また、この上枠20の長手方向略中央部となる出入口5の上側を区画する部位と袖壁4に対応する部位との境界部には、中間縦枠28の上端部を受け入れる切欠状の凹所が設けられていてもよい。
この上枠20の少なくとも施工された状態で露出する表面は、塗装可能な塗装下地面20aとされている。この上枠20は、下方側に向く見込面及び戸厚方向外側に向く両側の見付面が塗装下地面20aとされている。また、この上枠20の上方側に向く見込面の施工された状態で露出する戸厚方向両側端部も塗装下地面20aとされている。この上枠20は、適宜の木質系材料や金属系材料、合成樹脂系材料等から形成された枠基材に、後記する戸先側縦枠22と同様の表面材が貼着された構成とされている。なお、戸パネル10が戸袋納めで建て付けられる構成とされた戸枠2の場合には、上枠20における戸袋側部位の表面を塗装下地面20aとしていない態様としてもよい。
【0023】
また、この上枠20には、図3に示すように、戸パネル10の上端側の被ガイド部としての上端部10aを受け入れてガイドするガイド溝21aが設けられている。このガイド溝21aは、下方側に向けて開口し、戸幅方向に沿って延びるように設けられている。このガイド溝21aの溝幅は、戸パネル10の上端部10aの受け入れが可能で、戸パネル10の上端側を円滑にガイド可能なように、戸パネル10の戸厚よりも僅かに大とされていてもよい。また、このガイド溝21aの溝深さは、戸パネル10の上端部10aの保持が可能なように適宜の寸法であってもよい。
また、このガイド溝21aは、上枠20に設けられた凹溝に嵌め込まれるように取り付けられた上レール21によって区画されている。この上レール21は、ガイド溝21aの溝底を区画する薄板状の溝底片部と、ガイド溝21aの溝幅方向両側を区画する薄板状の両側片部と、を備えている。
【0024】
なお、図例では、上枠20の上側に天井から垂れ下がる垂れ壁を設けた例を示しているが、上枠20を天井に付設状や埋込状に設けたり、更には、上レール21を直接的に天井に付設状や埋込状に設けたりしてもよい。つまりは、戸パネル10の戸高寸法を、床から天井までの天井高に応じた寸法としてもよい。上枠20を天井に埋込状に設ける場合には、この上枠20の表面を塗装下地面20aとしていない態様としてもよい。また、上記のようなガイド溝21aを区画する上レール21を上枠20に設けた態様に代えて、ガイド溝21aを上枠20に直接的に設けた態様等としてもよく、例えば、上レール21が上枠として機能するものでもよい。
【0025】
戸先側縦枠22は、縦枠下地3aに固定され、出入口5の戸先側を区画する。この戸先側縦枠22は、戸高方向に長尺状とされている。この戸先側縦枠22の戸厚方向に沿う見込寸法は、壁体3の壁厚よりも大とされている。
この戸先側縦枠22には、図1(b)~(d)に示すように、当該戸先側縦枠22を縦枠下地3aに固定する固着具6の頭部7を受け入れる受入凹所24が見込面としての溝底面23aにおいて開口するように設けられている。本実施形態では、この戸先側縦枠22の見込面に、戸パネル10の戸先側端部を受け入れる受入溝(戸じゃくり溝)23を上下方向(戸高方向に沿う方向)に延びるように設けた構成としている。この受入溝23は、出入口5側に向けて開口するように設けられている。この受入溝23の戸厚方向に沿う溝幅寸法は、戸パネル10の戸先側端部の受入が可能なように、戸先側端部の戸厚寸法に応じて適宜の寸法とすればよい。また、この受入溝23の戸幅方向に沿う溝深さ寸法は、戸先側縦枠22と閉鎖状態の戸パネル10の戸先側端面との間における明かり漏れ等が生じ難くなるように適宜の寸法としてもよい。この受入溝23の溝深さ寸法は、例えば、1mm~10mm程度でもよい。
【0026】
この戸先側縦枠22は、上記した受入溝23の溝底面23a及び溝幅方向両内側面を含む出入口5側に向く見込面及び戸厚方向外側に向く両側の見付面が塗装下地面22aとされている。また、この戸先側縦枠22の反出入口側に向く見込面の施工された状態で露出する戸厚方向両側端部も塗装下地面22aとされている。
この戸先側縦枠22は、適宜の木質系材料や金属系材料、合成樹脂系材料等から形成された枠基材22bに、表面材22cが貼着された構成とされている。この表面材22cは、枠基材22bの受入溝を構成する部位の角部を含む角部に応じた位置となるように裏面側に設けられた折曲溝の部位において折り曲げられて枠基材22bに貼着されている。図例では、枠基材22bの反出入口側の戸厚方向両側端部に、表面材22cを受け入れる切欠状の凹段部を設けた例を示している。
【0027】
また、この表面材22cの表面が塗装下地面22aを構成する。この表面材22cとしては、図1(a)に示すように、MDF(中密度繊維板)等の木質系ボードやガラス繊維等の強化繊維シートを含んだ繊維強化樹脂層等の表面基材22dの表面側に、塗装下地面22aを構成する下地シート22fが設けられたものでもよい。また、本実施形態では、表面基材22dの表面側に、防湿シート22eを介して下地シート22fを積層した構成としている。これら表面基材22d、防湿シート22e及び下地シート22fは、適宜の接着剤によって積層一体化されていてもよい。また、枠基材22bと表面基材22dとの間にも防湿シートを介在させていてもよい。
【0028】
また、上記のような下地シート22fとしては、塩化ビニルやポリエチレン、ポリプロピレン等の樹脂シート22gの表面側に、絵柄層22h、不織布22i及び表面保護層22jがこの順に積層されたものであってもよい。絵柄層22hは、木目模様や石目模様、皮革模様、コルク模様等の天然材料を模した絵柄であってもよく、その他の絵柄であってもよい。不織布22i及び表面保護層22jは、上記した絵柄層22hの絵柄が視認可能なように設けられている。不織布22iは、塗料を保持する塗料保持層として機能する。この不織布22iは、塗料の保持性や絵柄層22hの絵柄の視認性の観点等から適宜の目付(坪量)とされたものであってもよい。表面保護層22jは、表面から塗布される塗料が不織布22iに浸透可能なように設けられたものであってもよい。このような表面保護層22jを設けた構成とすれば、塗装下地面22aの耐擦傷性を向上させることができる。
【0029】
なお、表面保護層22jは、透明であることが好ましく、着色剤が添加されて有色透明とされたものでもよい。また、表面保護層22jは、絵柄層22hの絵柄が視認可能な程度の半透明であってもよい。また、図例では、塗装下地面22aとなる下地シート22fの表面に、エンボス状の凹凸模様を設けた例を示しているが、このような態様に限られない。また、絵柄層22h及び表面保護層22jの両方または一方を下地シート22fに設けていない構成としてもよく、塗装下地面22aを構成する下地シート22fとしては、その他、種々の構成とされたものであってもよい。
【0030】
受入凹所24は、受入溝23の溝底面23aにおいて出入口5側に向けて開口するように設けられている。この受入凹所24は、戸先側縦枠22の長手方向に間隔を空けて複数箇所に設けられている(図3参照)。この受入凹所24を設ける位置や個数は、戸先側縦枠22を安定的に縦枠下地3aに固定する観点等から適宜の位置や個数としてもよい。また、この受入凹所24は、戸先側縦枠22の長手方向両側端部と長手方向途中部位の一箇所または複数箇所とに設けられていてもよい。
また、この受入凹所24は、その内径が戸先側縦枠22を縦枠下地3aに固定するねじ等の固着具6の頭部7の外径よりも大径状とされている。図例では、この受入凹所24を、この受入凹所24の深さ方向(戸先側縦枠22の戸幅方向に沿う枠厚さ方向)に見て、略円形状とした例を示している。
【0031】
また、この受入凹所24は、深さ方向の全体に亘って同径状とされている。
また、この受入凹所24の深さ寸法は、固着具6の頭部7の収容や保持が可能なように、適宜の深さ寸法としてもよい。この受入凹所24の深さ寸法は、戸先側縦枠22の枠厚さ寸法の1/2~1/4程度の寸法であってもよく、例えば、5mm~15mm程度であってもよい。また、図例では、この受入凹所24の底側に、受入凹所24よりも小径状とされ、かつ固着具6の軸部が挿通される軸部挿通孔を貫通させるように設けた例を示しているが、このような態様に限られない。つまり、受入凹所24と軸部挿通孔とによって段付孔を構成している。なお、このような軸部挿通孔を設けずに、受入凹所24を有底穴状とした態様としてもよい。
【0032】
また、戸枠2は、図1(b)~(d)に示すように、表面31aが塗装可能とされ、戸先側縦枠22の溝底面23aから突出しないように受入凹所24に圧入されるコルクを含む埋込部材31を備えている。このような構成とすれば、固着具6の頭部7を露出させることなく、埋込部材31の表面31aにも戸先側縦枠22と同様に塗装を施すことができる。また、例えば、このような埋込部材31に代えて、受入凹所24を塞ぐ後記する樹脂製のキャップ30を取り付けて塗装することも考えられる。この場合、このようなキャップ30には塗装が施し難くなるが、上記構成によれば、埋込部材31の表面31aに塗装を施すことができる。また、埋込部材31がコルクを含んでいるので、塗料8の馴染み性が良く、また、加工誤差があった場合にも適度に変形して受入凹所24に圧入し易く、かつ圧入後の落下を抑制することができる。
【0033】
この埋込部材31は、受入凹所24の内周形状に応じた形状とされている。本実施形態では、埋込部材31は、略円柱状とされている。この埋込部材31の軸方向(受入凹所24の深さ方向と同方向)に沿う厚さ寸法及び外径は、受入凹所24の深さ寸法及び内径に応じて適宜の寸法とされている。
埋込部材31の厚さ寸法及び受入凹所24の深さ寸法は、埋込部材31が受入凹所24に圧入された状態で溝底面23aから突出しないように、つまり、表面31aが溝底面23aと同一平面状または受入凹所24内に位置するように、互いの公差が設定されている。これらの公差は、埋込部材31の厚さ寸法が最大許容寸法であり、受入凹所24の深さ寸法が最小許容寸法である場合に受入凹所24に圧入された埋込部材31の表面31aと溝底面23aとが同一平面状となるように設定されていてもよい。また、これらの公差は、埋込部材31の厚さ寸法が最小許容寸法であり、受入凹所24の深さ寸法が最大許容寸法である場合に受入凹所24に圧入された埋込部材31の表面31aと溝底面23aとの段差寸法が3mm以下程度となるように設定されていてもよい。図例では、埋込部材31の厚さ寸法を、受入凹所24の深さ寸法よりも僅かに小とした例を示している。
【0034】
また、埋込部材31の外径及び受入凹所24の内径は、受入凹所24への埋込部材31の圧入性や圧入後の落下を抑制する観点等から互いの公差が設定されている。これらの公差は、埋込部材31の外径が最大許容寸法であり、受入凹所24の内径が最小許容寸法である場合に、一般的な成人男性が親指で埋込部材31を受入凹所24に圧入可能なように径差が1mm以下程度となるように設定されていてもよい。また、これらの公差は、埋込部材31の外径が最小許容寸法であり、受入凹所24の内径が最大許容寸法である場合に受入凹所24に圧入された埋込部材31が落下しないように径差が1mm以下程度となるように設定されていてもよい。なお、図例では、埋込部材31の外径を、軸方向の全体に亘って同径状とした例を示しているが、このような態様に限られない。例えば、埋込部材31の圧入方向先端側となる軸方向一方側端部の周縁部に面取部を設けたり、埋込部材31を軸方向の概ね全体に亘って軸方向一方側に向かうに従い先細り状としたりしてもよい。
【0035】
また、本実施形態では、この埋込部材31を、コルク粒とゴムとを含有するゴム含有コルクから形成されたものとしている。このような構成とすれば、天然コルクを打ち抜き加工等して形成された埋込部材31と比べて、圧縮復元性や表面平滑性、加工寸法精度等を向上させることができ、受入凹所に圧入され、表面31aに塗装が施される埋込部材31としてより好適なものとなる。このような埋込部材31としては、コルク粒を合成ゴムや適宜の加硫促進剤と配合して加硫成形されたものでもよい。また、この埋込部材31は、上記のような円柱状の形状に成形されたものでもよく、または、シート状(板状)に成形された中間体から打ち抜き加工等によって形成されたものでもよい。また、この埋込部材31に含まれる合成ゴムとしては、ニトリルゴムやクロロプレンゴム、アクリルゴム、スチレンゴム、ブタジエンゴム、シリコーンゴム、ブチルゴム等、どのようなものでもよい。
【0036】
また、埋込部材31に含まれるコルク粒と合成ゴムとの配合割合は、質量比で20:80~80:20程度でもよい。また、この埋込部材31に含まれるコルク粒は、粒径が0.2mm~5mm程度とされたものでもよく、0.5mm~3mm程度とされたものでもよい。
なお、埋込部材31は、受入凹所24に圧入のみによって取り付けられるものでもよく、また、適宜の接着剤によって取り付けられるものでもよい。
また、埋込部材31としては、上記のようなゴム含有コルクから形成されたものに限られず、コルク粒をバインダー樹脂(接着剤)で一体化したいわゆる圧搾コルクでもよく、天然コルクから構成されたものでもよい。
【0037】
また、本実施形態では、図1(b)に示すように、戸枠2は、上記した埋込部材31に代えて、受入凹所24を塞ぐように取り付けられる樹脂製のキャップ30を備えている。このキャップ30は、受入凹所24に嵌め込まれる嵌込部と受入凹所24よりも大径状とされた鍔状部とを備えている。このキャップ30は、嵌込部が受入凹所24に嵌め込まれて取り外し可能に取り付けられるものでもよい。また、このキャップ30は、戸先側縦枠22の塗装下地面22aと同系色とされたものでもよい。このキャップ30は、戸先側縦枠22の塗装下地面22aに、透明なクリア塗装を施す場合に埋込部材31に代えて取り付けられるものでもよい。この場合は、キャップ30を取り外した状態で戸先側縦枠22の塗装下地面22aにクリア塗装を施し、塗装後にキャップ30を受入凹所24に取り付けるようにしてもよい。
【0038】
また、本実施形態では、図1(d)に示すように、戸枠2は、塗装下地面22aに塗装が施された戸先側縦枠22に取り付けられ、戸パネル10の戸幅方向一端面としての戸先側端面が当接されるクッション部材32を備えている。このような構成とすれば、戸先側縦枠22の塗装面への戸パネル10の当接を抑制することができ、戸先側縦枠22の塗装剥がれや、戸パネル10への色移り等を抑制することができる。また、本実施形態のように、戸パネル10が塗装可能な場合には、戸パネル10の塗装剥がれや、互いの色移りを抑制することができる。
このクッション部材32は、上記した受入凹所24が設けられていない箇所の塗装後の溝底面23aに取り付けられる。このクッション部材32は、図3に示すように、戸先側縦枠22の長手方向に間隔を空けて複数箇所に取り付けられる。
【0039】
また、このクッション部材32は、ポリウレタン等の透光性を有した樹脂製であってもよい。また、このクッション部材32は、溝底面23a側に、当該クッション部材32を塗装面となる溝底面23aに固定する適宜の粘着材が設けられた構成とされていてもよい。
また、このクッション部材32の受入溝23の溝深さ方向(戸幅方向と同方向)に沿う厚さ寸法は、受入溝23の溝深さ寸法よりも小とされている。このクッション部材32の厚さ寸法は、受入溝23の溝深さ寸法の2/3以下でもよく、例えば、1mm~3mm程度であってもよい。また、このクッション部材32の厚さ寸法は、戸パネル10の戸先側端面にフック状のいわゆる鎌錠が設けられている場合には、該鎌錠が戸先側縦枠22側に設けられた受部に施錠可能な寸法としてもよく、1.5mm以下であってもよい。
また、図例では、このクッション部材32を、厚さ方向に見て円形状とした例を示しているが、方形状とされたものであってもよい。また、このクッション部材32の外径は、戸パネル10の戸先側端面との当接性や見栄え上の観点等から適宜の径としてもよい。図例では、このクッション部材32の外径を、受入凹所24の内径と概ね同径状とした例を示している。また、このクッション部材32の溝底面23a側となる取付面を平坦面状とし、出入口5側の反取付面を突湾曲面形状とした例を示しているが、このような態様に限られない。
【0040】
また、本実施形態では、図3及び図4に示すように、戸枠2は、クッション部材32の取付位置の位置決めガイド34が印刷された塗装説明書33を備えている。このような構成とすれば、この塗装説明書33を、クッション部材32の取付治具として用いることができ、クッション部材32を好適な位置に容易に取り付けることができる。
塗装説明書33には、後述する本実施形態に係る戸枠の施工方法に含まれる塗装手順が記載されている。図例では、塗装説明書33に塗装手順を簡略化して記載した例を示している。
位置決めガイド34は、本実施形態では、厚さ方向に見て方形状とされた塗装説明書33の下辺34aの両角部に設けられている。これら位置決めガイド34,34は、下辺34aから所定の高さ位置にクッション部材32の取付位置の目印となる位置決め線34b,34cを設けた構成とされている。本実施形態では、戸パネル10の建付態様に応じて複数の位置決め線として第1位置決め線34bと第2位置決め線34cとを設けた構成としている。また、第1位置決め線34bを、下辺34aからの寸法が8cmとなる位置に設け、第2位置決め線34cを、下辺34aからの寸法が10cmとなる位置に設けた例を示しているが、このような態様に限られない。
【0041】
また、各位置決めガイド34,34に、第1位置決め線34b及び第2位置決め線34cが中心(円心)を通るように、クッション部材32と略同径状とされた半円状の破線を印刷した例を示している。
この塗装説明書33を用いて上側のクッション部材32を取り付ける際には、図3において二点鎖線にて示すように、塗装説明書33の上下を反転させて、つまり、下辺34aを上側に向けて位置決めするようにしてもよい。図例では、塗装説明書33の下辺34a側を上レール21のガイド溝21a内に挿入し、下辺34aをガイド溝21aの溝底に当接させた状態で第2位置決め線34cにクッション部材32の中心を合わせるようにしてクッション部材32を取り付けた例を示している。また、塗装説明書33を用いて下側のクッション部材32を取り付ける際には、下辺34aを下側に向けて位置決めするようにしてもよい。図例では、この塗装説明書33の下辺34aを下レール29の表面に当接させた状態で第1位置決め線34bにクッション部材32の中心を合わせるようにしてクッション部材32を取り付けた例を示している。
【0042】
戸尻側縦枠25は、図2(b)に示すように、縦枠下地3aに固定され、全開状態の戸パネル10の戸尻側端部が当接または近接される構成とされている。この戸尻側縦枠25は、戸高方向に長尺状とされている。この戸尻側縦枠25の戸厚方向に沿う見込寸法は、袖壁4の壁厚に応じて壁体3の壁厚よりも小とされている。
この戸尻側縦枠25の見込面には、戸先側縦枠22と概ね同様、戸パネル10の戸尻側端部を受け入れる受入溝(戸じゃくり溝)26が上下方向(戸高方向に沿う方向)に延びるように設けられている。また、当該戸尻側縦枠25を縦枠下地3aに固定する固着具6の頭部7を受け入れる受入凹所27が見込面としての溝底面26aにおいて開口するように設けられている。
【0043】
この戸尻側縦枠25の少なくとも施工された状態で露出する表面は、塗装可能な塗装下地面25aとされている。この戸尻側縦枠25は、戸先側縦枠22と概ね同様、受入溝26の溝底面26a及び溝幅方向両内側面を含む出入口5側に向く見込面及び戸厚方向反袖壁側の見付面が塗装下地面25aとされている。また、この戸尻側縦枠25の反出入口側に向く見込面の施工された状態で露出する戸厚方向一方側端部も塗装下地面25aとされている。なお、戸尻側縦枠25の袖壁4側に向く見付面や反出入口側に向く見込面の戸厚方向他方側端部も塗装下地面25aとされていてもよい。この戸尻側縦枠25は、上記した戸先側縦枠22と同様、枠基材に表面材が貼着された構成とされている。
【0044】
また、戸枠2は、この戸尻側縦枠25の受入凹所27に圧入される上記同様の埋込部材31を備えている。また、戸枠2は、埋込部材31に代えて、戸尻側縦枠25の受入凹所27を塞ぐように取り付けられる上記同様のキャップ30を備えている。
また、戸枠2は、塗装下地面25aに塗装が施された戸尻側縦枠25に取り付けられ、戸パネル10の戸幅方向他端面としての戸尻側端面が当接される上記同様のクッション部材32を備えている。このクッション部材32は、上記同様、塗装説明書33の位置決めガイド34を用いて取り付けるようにしてもよい。
【0045】
なお、戸パネル10が戸袋納めで建て付けられる構成とされた戸枠2の場合には、戸尻側縦枠25の表面を塗装下地面25aとしていない態様としてもよい。また、この場合は、戸尻側縦枠25の受入凹所27に圧入される埋込部材31や、戸尻側縦枠25の受入凹所27に取り付けられるキャップ30、戸尻側縦枠25の溝底面26aに取り付けられるクッション部材32を設けていない態様としてもよい。また、この場合は、上記のような比較的に薄型のクッション部材32に代えて、戸尻側縦枠25の溝底面26aに取り付けられ、戸パネル10の戸尻側端部が当接または弾接される緩衝体を設けた態様としてもよい。
また、この戸尻側縦枠25及び上記した戸先側縦枠22と上記した上枠20とは、適宜のねじ等の固着具やダボ等の接合部、接着剤等によって縦勝状に接合されるものでもよい。
【0046】
中間縦枠28は、図2(b)に示すように、袖壁4の出入口5側端部に沿うように配され、戸高方向に長尺状とされている。この中間縦枠28の戸厚方向に沿う見込寸法は、袖壁4の壁厚よりも大とされている。また、この中間縦枠28は、見込方向一方側端部が戸パネル10の厚さ方向一方面に近接して対向するように配される。また、この中間縦枠28の見込方向一方側端部には、戸パネル10の厚さ方向一方面に摺るように接する隙間遮蔽部材(モヘア部材)が設けられている。
この中間縦枠28の少なくとも施工された状態で露出する表面は、塗装可能な塗装下地面28aとされている。この中間縦枠28は、出入口5側に向く見込面及び戸厚方向外側に向く両側の見付面が塗装下地面28aとされている。また、この中間縦枠28の反出入口側に向く見込面の施工された状態で露出する戸厚方向両側端部も塗装下地面28aとされている。この中間縦枠28は、上記した戸先側縦枠22と同様、枠基材に表面材が貼着された構成とされている。
【0047】
次に、本実施形態に係る戸枠の施工方法の一例について説明する。
同施工方法は、戸先側縦枠22の受入凹所24を介して縦枠下地3aに固着具6を止着した後に、受入凹所24に、埋込部材31を圧入し、次いで、埋込部材31の表面31a及び塗装下地面22aに塗装を施す構成とされている。この戸先側縦枠22を含む戸枠2を施工する際には、上枠20の長手方向両端部に戸先側縦枠22及び戸尻側縦枠25を接合して三方枠状に枠組みした状態で開口部に設置し、上枠下地及び縦枠下地3aに固定するようにしてもよい。また、適宜、中間縦枠28を、その上端部を上枠20に固定し、下端部を床側に固定して設置するようにしてもよい。また、本実施形態では、戸尻側縦枠25も施工された状態で露出することとなるので、この戸尻側縦枠25の受入凹所27にも埋込部材31を圧入し、次いで、埋込部材31の表面31a及び塗装下地面25aに塗装を施すようにしてもよい。また、上枠20及び中間縦枠28の施工された状態で露出する表面となる塗装下地面20a,28aにも塗装を施すようにしてもよい。つまり、戸枠2は、少なくとも施工された状態で露出する表面が塗装下地面とされ、施工された状態でその塗装下地面に塗装が施される構成とされている。
【0048】
上記のように戸枠2に塗装を施す際には、図4に示すように、まず、戸先側縦枠22及び戸尻側縦枠25の受入凹所24,27に取り付けられたキャップ30を取り外し、受入凹所24,27に埋込部材31を圧入するようにしてもよい。そして、所望する色調の塗装を施すようにしてもよい。戸枠2に塗装する塗料8(図1(d)参照)は、上記した絵柄層22hの絵柄(例えば、木目模様)の視認が可能な浸透性のステイン系塗料であってもよく、絵柄層22hを隠蔽する塗膜を形成する造膜系の塗料であってもよい。また、クリア塗装を施す場合には、上述のように、キャップ30を取り外した状態で、埋込部材31を圧入することなく塗装を施した後に、戸先側縦枠22及び戸尻側縦枠25の受入凹所24,27にキャップ30を取り付けるようにしてもよい。なお、戸枠2に塗装を施す前に、戸枠2が備える、戸先側縦枠22の表面材22cまたは下地シート22fと同様の構成とされた試し塗り用シートに試し塗りを行うようにしてもよい。
次いで、戸先側縦枠22及び戸尻側縦枠25の溝底面23a,26aに、上記したように塗装説明書33の位置決めガイド34を用いてクッション部材32を取り付けるようにしてもよい。また、戸パネル10にも塗装を施すようにしてもよい。なお、戸枠2及び戸パネル10の塗装は、戸パネル10を取り外した状態で行うようにしてもよく、戸パネル10を建て付けた状態で行うようにしてもよい。
【0049】
次に、第2実施形態に係る戸枠の一例及びこれを備えた引戸装置の一例について、図5を参照しながら説明する。
なお、以下の実施形態では、上記した例との相違点について主に説明し、同様の構成については、同一符号を付し、その説明を省略または簡略に説明する。また、上記した例と同様の作用効果等についても説明を省略または簡略に説明する。
【0050】
本実施形態に係る引戸装置1Aは、戸パネル10Aが戸枠2Aに上吊型で建て付けられる構成とされている。
戸枠2Aの上枠20Aには、戸パネル10Aの上端側に設けられた被ガイド部材を構成するランナー19をガイドするガイド溝21bが長手方向に延びるように設けられ、戸パネル10Aを吊下支持する上レール21Aが設けられている。上枠20Aには、この上レール21Aの上側部位を受け入れる凹溝が設けられている。また、上レール21Aには、ガイド溝21bの溝底側となる上側を区画する天壁部、溝幅方向両側を区画する両側壁部及びこれら両側壁部の下端部から互いに向き合う方向に突出する案内片部が設けられている。戸パネル10Aのランナー19は、戸幅方向両側端部の上端部のそれぞれに設けられている。これらランナー19には、上レール21Aのガイド溝21bに挿入され、案内片部上を走行する転動体が設けられている。なお、戸パネル10Aの上端部に設けられる被ガイド部材及びこの被ガイド部材を案内支持する上レール21Aとしては、上記のような構成とされたものに限られず、その他、種々の構成とされたものでもよい。
【0051】
また、戸パネル10Aの下端部には、図示を省略しているが、床側に設けられたガイドピン等の下端ガイド部材が差し込まれるガイド溝が設けられている。
また、戸枠2Aは、上記同様の戸先側縦枠22や図示省略の戸尻側縦枠25、中間縦枠28を備えている。
この戸枠2Aにも上記同様にして塗装が施される。また、塗装後にクッション部材32を取り付ける際には、上記と概ね同様、図5において二点鎖線にて示すように塗装説明書33を用いて取り付けるようにしてもよい。図例では、上側のクッション部材32を取り付ける際には、塗装説明書33の下辺34aを上レール21Aの案内片部に当接させた状態で第1位置決め線34bにクッション部材32の中心を合わせるようにしてクッション部材32を取り付けた例を示している。また、下側のクッション部材32を取り付ける際には、塗装説明書33の下辺34aを床面に当接させた状態で第1位置決め線34bにクッション部材32の中心を合わせるようにしてクッション部材32を取り付けた例を示している。
【0052】
なお、戸パネル10,10Aがアウトセット納めで建て付けられる構成とされた戸枠2,2Aの場合には、壁体の表面から突出するように配される上枠や上レールを覆う幕板状部材やこの幕板状部材の長手方向両端に取り付けられる側端部材を設けた構成としてもよい。この場合は、これら幕板状部材や側端部材の表面を、上記同様な塗装下地面としてもよい。また、戸枠2,2A及びこれを備えた引戸装置1,1Aを構成する各部及び各部材の具体的構成としては、上記した構成に限られず、その他、種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0053】
1,1A 引戸装置
2,2A 戸枠
10,10A 戸パネル
11a,12a,13a,14a,15a,17a 塗装下地面
22 戸先側縦枠(縦枠)
22a 塗装下地面
23a 溝底面(見込面)
24 受入凹所
31 埋込部材
31a 表面
32 クッション部材
33 塗装説明書
34 位置決めガイド
3a 縦枠下地
6 固着具
7 頭部
図1
図2
図3
図4
図5