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特許7325053断熱袋、保温袋、および断熱袋の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-03
(45)【発行日】2023-08-14
(54)【発明の名称】断熱袋、保温袋、および断熱袋の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/20 20060101AFI20230804BHJP
   B65D 81/38 20060101ALI20230804BHJP
【FI】
B65D81/20 D
B65D81/38 F
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021567608
(86)(22)【出願日】2020-12-24
(86)【国際出願番号】 JP2020048430
(87)【国際公開番号】W WO2021132457
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-02-15
(31)【優先権主張番号】P 2019233165
(32)【優先日】2019-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宅島 司
(72)【発明者】
【氏名】秦 裕一
(72)【発明者】
【氏名】坂内 里江
【審査官】杉田 剛謙
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-172364(JP,A)
【文献】特開2003-172493(JP,A)
【文献】特開2001-141179(JP,A)
【文献】特開2001-317686(JP,A)
【文献】特開2002-337888(JP,A)
【文献】特開2002-293337(JP,A)
【文献】特開2002-284256(JP,A)
【文献】登録実用新案第3140178(JP,U)
【文献】特開2005-231178(JP,A)
【文献】特開2012-163138(JP,A)
【文献】国際公開第2019/230627(WO,A1)
【文献】米国特許第04185673(US,A)
【文献】特開2017-003119(JP,A)
【文献】特開昭60-126571(JP,A)
【文献】特開2006-070908(JP,A)
【文献】特開2003-314786(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/20
B65D 81/38
B65D 30/02
B65D 30/10
B65D 30/16-22
F16L 59/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する板状の芯材と、前記芯材を収容し減圧状態で密封する外被材と、を有する矩形状でシート状の真空断熱材を袋状にすることで形成される開口部を有し、
前記外被材の両端部に設けられ前記開口部を形成する端部非断熱材を前記外被材に沿うように折り曲げられて、前記外被材に接着され、
前記真空断熱材の一辺と前記一辺に対向する他辺とに交差する直線に沿って、前記真空断熱材の略中央で折り曲げられ、
前記真空断熱材は、前記芯材の外側に前記外被材で形成される側部非断熱部を有し、
前記側部非断熱部が折り曲げられることにより互いに対向する前記側部非断熱部が重ねて折り畳まれて前記外被材の外面に接着される
ことを特徴とする断熱袋。
【請求項2】
請求項1に記載の断熱袋を内部に収納して保護する保護袋を備え、
前記断熱袋は、前記開口部の開口の方向が前記保護袋の開口の方向と一致するように、前記保護袋内に接着される
ことを特徴とする保温袋。
【請求項3】
可撓性を有する板状の芯材と、前記芯材を収容し減圧状態で密封する外被材と、を有し、矩形状でシート状の真空断熱材を、
前記外被材の両端部に設けられ開口部を形成する端部非断熱材を前記外被材に沿うように折り曲げられて、前記外被材に接着され、
前記真空断熱材の一辺と前記一辺に対向する他辺とに交差する直線に沿って、前記真空断熱材の略中央で折り曲げられ、
前記真空断熱材は、前記芯材の外側に前記外被材で形成される側部非断熱部を有し、
前記側部非断熱部が折り曲げられることにより互いに対向する前記側部非断熱部が重ねて折り畳まれて前記外被材の外面に接着して袋状に形成する
ことを特徴とする断熱袋の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱袋、保温袋、および断熱袋の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品などを収納し、保温して運搬する際に、軽量かつ携帯し易いことから、消費者や、配送業者等によって断熱袋が使用されている。例えば、特許文献1には、ポリエチレン、ポリエチレンフォーム、及び蒸着ポリエチレンテレフタレートからなる3層構造のシートを袋状に形成した断熱袋が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-155643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
断熱袋に対して断熱性能を向上させることが求められている。
しかし、特許文献1の断熱袋では、ポリエチレン、ポリエチレンフォーム、及び蒸着ポリエチレンテレフタレートからなるシートを積層しただけなので、断熱性能を高めるには限界がある。
また、断熱性能が高いものとして、真空断熱材が存在している。
しかしながら、真空断熱材は、比較的厚さがあるため、成形が困難であり、袋状の真空断熱材を得るためには、複数枚の真空断熱材を用意したり、真空断熱材に成形を容易にするための加工を施したりする必要があった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑み、真空断熱材を用いて断熱性能を高めることが可能な断熱袋、保温袋、および断熱袋の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明は、断熱袋であって、可撓性を有する板状の芯材と、前記芯材を収容し減圧状態で密封する外被材と、を有する矩形状でシート状の真空断熱材を袋状にすることで形成される開口部を有し、前記外被材の両端部に設けられ前記開口部を形成する端部非断熱材を前記外被材に沿うように折り曲げられて、前記外被材に接着され、前記真空断熱材の一辺と前記一辺に対向する他辺とに交差する直線に沿って、前記真空断熱材の略中央で折り曲げられ、前記真空断熱材は、前記芯材の外側に前記外被材で形成される側部非断熱部を有し、前記側部非断熱部が折り曲げられることにより互いに対向する前記側部非断熱部が重ねて折り畳まれて前記外被材の外面に接着されることを特徴とする。
【0007】
これによれば、真空断熱材により構成される断熱袋の内側と外側との間の熱の伝達が低減される。
なお、この明細書には、2019年12月24日に出願された日本国特許出願・特願2019-233165号の全ての内容が含まれるものとする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、断熱袋の内側と外側との間の熱の伝達が真空断熱材により低減されるため、断熱袋の断熱性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本実施形態に係る断熱袋の斜視図
図2図2は、本実施形態の断熱袋に用いる真空断熱材の斜視図
図3図3は、本実施形態の断熱袋の製造方法を示す説明図
図4図4は、本実施形態の断熱袋を備えた保温袋を示す一部破断斜視図
【発明を実施するための形態】
【0010】
第1の発明は、断熱袋であって、可撓性を有する板状の芯材と、前記芯材を収容し減圧状態で密封する外被材と、を有するシート状の真空断熱材を袋状にすることで形成される開口部を有することを特徴とする。
これによれば、真空断熱材により構成される断熱袋の内側と外側との間の熱の伝達が低減され、断熱袋の断熱性能を向上させることができる。
【0011】
第2の発明は、前記真空断熱材は矩形状であり、前記真空断熱材の一辺と前記一辺に対向する他辺とに交差する直線に沿って、前記真空断熱材の略中央で折り曲げられる。
これによれば、真空断熱材を容易に袋状に成形できる。また、真空断熱材が折り曲げられるので、断熱袋の底面が真空断熱材で形成される。したがって、断熱袋の断熱性能を更に向上させることができる。
【0012】
第3の発明は、前記真空断熱材は、前記芯材の外側に前記外被材で形成される非断熱部を有し、折り曲げられることにより互いに対向する前記非断熱部が重ねて折り畳まれて前記外被材の外面に接着される。
これによれば、断熱袋の側面において2重の非断熱部が折り曲げられて外被材の外面に接着されるため、断熱袋の側面における断熱性能を向上させることができる。したがって、断熱袋の断熱性能を更に向上させることができる。
【0013】
第4の発明は、前記真空断熱材の前記開口部を形成する前記非断熱部が、前記外被材の外側に向けて折られて、前記外被材の外面に接着される。
これによれば、開口部の内側を平滑に形成することができるため、断熱袋への物品の出し入れが容易となる。
【0014】
第5の発明は、保温袋であって、前記断熱袋を内部に収納して保護する保護袋を備え、前記断熱袋は、前記開口部の開口の方向が前記保護袋の開口の方向と一致するように、前記保護袋内に接着されている。
これによれば、断熱袋を用いて保温性の高い保温袋を提供できる。また、断熱袋の真空断熱材が保護袋により保護される。したがって、断熱袋の損傷を抑制することができる。
【0015】
第6の発明は、断熱袋の製造方法であって、可撓性を有する板状の芯材と、前記芯材を収容し減圧状態で密封する外被材と、を有する矩形状に形成されたシート状の真空断熱材を、前記真空断熱材の一辺と前記一辺に対向する他辺とに交差する直線に沿って、前記真空断熱材の略中央で折り曲げ、折り曲げた後、前記芯材の外側に前記外被材で形成される非断熱部を接着して袋状に形成する。
これによれば、真空断熱材を折り曲げて、断熱袋を製造できるため、断熱袋の断熱性能を向上させることができると共に、断熱袋を容易に製造することができる。
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明に係る断熱袋の実施の形態を示す斜視図である。図2は本実施の形態の断熱袋に用いる真空断熱材の斜視図である。
なお、図2においては、説明の便宜上、真空断熱材11の芯材13の厚みを実物と比較して大きく表している。
図1に示すように、本実施の形態における断熱袋1は、図1において両側辺3,4、底部5および外面6,7をそれぞれ有し、上部に開口部2を有する袋状に構成された本体8を備えている。
断熱袋1は、開口部2を介して本体8の内部に、例えば、食品などの物品を収納して保温するものである。
【0017】
図2に示すように、断熱袋1を形成する真空断熱材11は、外被材12と、芯材13と、水分吸着材14とを備える。
外被材12は、平面視で矩形状を有しており、外被材12は、1辺が開放された袋状に形成されている。
外被材は、真空断熱材11の内部に外気が侵入することを抑制し、屈曲性を有するものであればよい。外被材12は、例えば、熱溶着フィルムと、中間層としてのガスバリアフィルムと、最外層として表面保護フィルムとを、それぞれラミネートしたものを用いることができる。
【0018】
熱溶着フィルムとしては特に指定するものではないが、低密度ポリエチレンフィルムなどの樹脂フィルを用いることができる。
ガスバリアフィルムとしては、ガスバリア性を有する公知のフィルムを好適に用いることができる。本実施形態においては、断熱袋1の内側となる真空断熱材11の上面には、ガスバリアフィルムとして樹脂フィルムにアルミを蒸着させたものを用い、断熱袋1の外側となる真空断熱材11の下面にはガスバリアフィルムとしてアルミニウム箔を用いている。
【0019】
また、本実施の形態では、熱溶着フィルムとしては特に指定するものではないが、低密度ポリエチレンフィルム、直鎖低密度ポリエチレンフィルム、高密度ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルム等の熱可塑性樹脂、或いはそれらの混合体を使用できる。
また、本実施の形態では、ガスバリアフィルムとしては、例えば、アルミニウム箔、銅箔、ステンレス箔等の金属箔;基材となる樹脂フィルムに対して金属または無機酸化物等を蒸着した蒸着層を有する蒸着フィルム;この蒸着フィルムの表面にさらに公知のコーティング処理を施したフィルム(コーティング蒸着フィルム);等が挙げられるが特に限定されない。
蒸着フィルムまたはコーティング蒸着フィルムに用いられる金属または無機酸化物としては、アルミニウム、銅、アルミナ、シリカ等を挙げることができるが、特に限定されない。また、蒸着フィルムまたはコーティング蒸着フィルムの基材となる樹脂フィルムを構成する樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)等を挙げることができるが、特に限定されない。なお、この樹脂フィルムは、樹脂のみで構成されてもよいし、樹脂以外の成分を含む樹脂組成物として構成されてもよい。ガスバリアフィルムが金属箔で構成される場合には、この金属箔に対して樹脂層等が積層されてもよい。したがって、ガスバリアフィルムは単層構造であってもよいし多層構造であってもよい。
ここで、ガスバリアフィルムの厚さは特に限定されず、これらガスバリアフィルムの材質等に応じてガスバリア性を発揮できる範囲の厚さであればよい。
ここで、本実施形態におけるガスバリアフィルムのガスバリアは、おおよそ、気体透過度が104[cm3/m2・day・atm]以下のものであればよく、望ましくは103[cm3/m2・day・atm]以下のものであればよく、より望ましくは102[cm3/m2・day・atm]以下のものであればよい。
表面保護フィルムとしては、ナイロンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム等を使用できる。
【0020】
芯材13は、平面視で矩形状を有している。
芯材13は、例えば、チョップドストランドマットを積層してシート状に形成される。チョップドストランドマットは、ガラス繊維のストランドを、カットし、繊維方向を不規則にして均一に分散させ、結合剤を用いてシート状に成形したものである。
なお、本実施形態においては、芯材13は、例えば、厚さが0.5mmのチョップドストランドマットを積層して形成され、減圧状態での厚さが、例えば、2mm~3mmとなるように形成されている。
チョップドストランドマットを積層した芯材13を用いることによって、芯材13の繊維方向が芯材13の厚み方向と直交し、芯材13の厚み方向に熱が伝達され難くなる。すなわち、芯材13の熱伝達率を低減させることができる。
また、減圧状態での芯材13の厚さを2mm~3mmとすることによって、可撓性を有する真空断熱材11を構成することができる。
【0021】
また、芯材13としては、チョップドストランドマットに限定されず、断熱性を有し、可撓性を有するものであればいずれの材料を用いるようにしてもよい。
具体的には、繊維材料、発泡材料等の公知の材料を挙げることができる。無機繊維では、例えば、ガラス繊維、セラミック繊維、スラグウール繊維、ロックウール繊維等を挙げることができる。また、芯材13は板状に成形して用いてもよいため、これら無機繊維以外に、公知のバインダ材、粉体等を含んでもよい。
無機繊維以外で芯材13として用いることができる材料としては、熱硬化性発泡体を挙げることができる。熱硬化性発泡体は、熱硬化性樹脂またはこれを含む樹脂組成物(熱硬化性樹脂組成物)を公知の方法で発泡させて形成されるものであればよい。熱硬化性樹脂としては、具体的には、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ポリイミド、ポリウレタン等を挙げることができるが、特に限定されない。また、発泡方法も特に限定されず、公知の発泡剤を用いて公知の条件で発泡させればよい。また、無機繊維、及び熱硬化性発泡体以外で芯材13として使用可能な材料としては、公知の有機繊維(有機系材料からなる繊維)を挙げることができるが、その具体的な種類は特に限定されない。
【0022】
水分吸着材14は、外被材12内の水分を吸着して、真空断熱材11の断熱性能を維持する。
水分吸着材14は、芯材13とともに外被材12の内部に封入され、外被材12の内部、すなわち真空断熱構造の内部に残存する水分、もしくは、外部から経時的に透過侵入する水分を吸着して除去するものである。
【0023】
また、本実施の形態では、水分吸着材14の具体的な種類は特に限定されず、代表的には、シリカゲル、活性アルミナ、活性炭、金属系吸着材、ゼオライト等のように物理的な水分吸着性を発揮する材料(物理吸着剤)を挙げることができる。さらには、水分吸着材としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属の酸化物または水酸化物等のように化学的な水分吸着性を発揮する材料(化学吸着剤)を挙げることができる。これら材料は1種のみを水分吸着材14として用いてもよいし、2種以上を適宜組み合わせて水分吸着材14として用いてもよい。
【0024】
また、水分吸着材14とともに、外被材12の内部に気体吸着材を封入してもよい。気体吸着材は、外被材12の内部、すなわち真空断熱構造の内部に残存する気体成分、もしくは、外部から経時的に透過侵入する気体成分を吸着して除去するものであればよい。ここで、気体吸着材は、少なくとも気体吸着性を有していればよいが、気体吸着性だけでなく水分吸着性を有してもよい。気体吸着材の水分吸着性は、基本的には、水蒸気を吸着する性質であり、気体吸着性の一部とみなすことができる。
気体吸着材の具体的な種類は特に限定されず、前述した水分吸着材14と同様に、シリカゲル、活性アルミナ、活性炭、金属系吸着材、ゼオライト等の公知の材料を好適に用いることができる。これら材料は1種のみを気体吸着材として用いてもよいし、2種以上を適宜組み合わせて気体吸着材として用いてもよい。特に、本開示においては、気体吸着材として、銅イオン交換されて成るZSM-5型ゼオライト(銅イオン交換ZSM-5型ゼオライト)を好適に用いることができる。
【0025】
銅イオン交換ZSM-5型ゼオライトは、空気成分である窒素、及び酸素だけでなく、水分(水蒸気)に対しても優れた吸着能力を有する。そのため、気体吸着材が銅イオン交換ZSM-5型ゼオライトを用いたものであれば、水分吸着材14を兼用することができるので、真空断熱材11の製造時に真空ポンプでは排気しきれなかった空気成分、真空断熱材11の内部で経時的に発生する微量なガス、真空断熱材11の外部から内部へ経時的に透過侵入してくる空気成分または水分等を良好に吸着除去することができる。その結果、真空断熱材11は優れた断熱性能を長期間実現することができる。
水分吸着材14、及び気体吸着材の使用形態は特に限定されず、粉末、粉末の包装体、粉末の成形体等が挙げられる。気体吸着材が銅イオン交換ZSM-5型ゼオライトであれば、粉末を所定形状に成形した成形体を挙げることができる。水分吸着材14、及び気体吸着材の使用量も特に限定されず、真空断熱材11の外被材12内部における減圧状態(略真空状態)を良好に保持できる程度の量であればよい。
【0026】
そして、外被材12の内部略中央部に芯材13、及び水分吸着材14を収納した状態で、外被材12の内部を減圧した後、外被材12の開口を熱溶着などにより閉塞することで、内部が減圧状態とされた真空断熱材11を得ることができる。
真空断熱材11には、芯材13の外側の領域に、外被材12同士が減圧により密着してなり、芯材13が存在しない非断熱部20が形成される。
非断熱部20は、真空断熱材11の長手方向に沿って延在する側部非断熱部24,25と、側部非断熱部24,25と直交する方向に延在する端部非断熱部21、22と、で構成されている。
【0027】
次に、断熱袋の製造方法について説明する。
図3は本実施形態の断熱袋1の製造方法を示す説明図である。
図3に示すように、真空断熱材11は、工程A~工程Dにより、断熱袋1に形成される。
工程Aにおいて、真空断熱材11は、図2に示した状態から、端部非断熱部21,22をそれぞれ真空断熱材11の下方に向けて折り曲げ、真空断熱材11の芯材13が存在する箇所の外面に接着する。
続いて、工程B及び工程Cにおいて、真空断熱材11の右辺12aと右辺12aに対向する他辺である左辺12bとに交差する直線である二等分線12cに沿って、真空断熱材11の略中央で、略180°折り曲げる。真空断熱材11の折り曲げ方向は、端部非断熱部21,22をそれぞれ接着した面が外側に向く方向となる。
この状態で、真空断熱材11の側部非断熱部24,25が互いに重ね合わされた状態に保持される。
なお、真空断熱材11の折り曲げ方を示すために、便宜上、真空断熱材11を折り曲げる工程を工程B、及び工程Cの2つに分けて示している。
【0028】
次に、工程Dにおいて、互いに重ね合わされた側部非断熱部24,25の内、一方の側部非断熱部24を真空断熱材11の一面側に折り曲げて接着する。また、他方の側部側非断熱部25を真空断熱材11の他面側に折り曲げて接着する。
これらの工程により、図1に示すように、真空断熱材11の折り曲げにより底部5が形成されるとともに、側部非断熱部24,25の接着により両側辺3,4が形成され、開口部2を有する袋状の断熱袋1を製造することができる。
なお、端部非断熱部21、22及び側部非断熱部24、25の接着は、例えば、粘着テープで接着することにより行われる。このように、粘着テープで接着することにより、端部非断熱部21、22及び側部非断熱部24、25を折り曲げて接着する際に生じる段差が、粘着テープにより被覆されるため、断熱袋1の外面を滑らに形成することができる。
ただし、これに限定されるものではなく、接着剤や溶着等を用いてもよい。
【0029】
本実施の形態においては、端部非断熱部21,22を真空断熱材11の外側に接着するようにしたが、端部非断熱部21,22を真空断熱材11の内側に接着するようにしてもよい。
また、各側部非断熱部24,25を真空断熱材11の一面及び他面にそれぞれ接着するようにしたが、各側部非断熱部24,25を真空断熱材11の同じ面にそれぞれ接着するようにしてもよい。
また、断熱袋1を製造する場合に、一方の側部非断熱部24を折り曲げて真空断熱材11に接着した状態で、真空断熱材11を二等分線12cに沿って折り曲げ、他方の側部非断熱部25、及び端部非断熱部21を折り曲げて真空断熱材11に接着することで、一方の側部非断熱部24に開口が形成された袋状に形成するようにしてもよい。
【0030】
次に、断熱袋1を用いた保温袋51について説明する。
図4は本実施形態の断熱袋1を備えた保温袋51を示す一部破断斜視図である。
図4に示すように、保温袋51は、断熱袋1を内部に収納して保護する保護袋53を備える。
保護袋53は一辺に開口52が形成された矩形の袋状に形成されている。保護袋53の内面の幅寸法は、断熱袋1の幅寸法と略同一に形成されている。
保護袋53の内底部55から開口52までの長さは、断熱袋1の底部5から開口部2までの長さよりも長く形成されている。
なお、保護袋53は、具体的な構成が特に限定されないが、クッション性を備えるシートにより構成されるとともに可撓性を有し、断熱袋1を保護可能に構成されている袋体を挙げることができる。例えば、アルミ蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムと、発泡ポリエチレンシートと、高密度ポリエチレンフィルムと、を積層し厚み約1~2mmのシートを利用して保護袋53を形成することができる。
【0031】
保護袋53の内部には、断熱袋1が開口部2の開口方向を、保護袋53の開口52の開口方向と一致するよう収納される。
そして、断熱袋1の底部5を保護袋53の内底部55に当接させた状態で、断熱袋1と保護袋53とを接着し、断熱袋1と保護袋53とを固定する。
断熱袋1と保護袋53との接着は、例えば、断熱袋1の開口部2の外周に貼られた両面テープ57により行われる。なお、断熱袋1と保護袋53とを接着剤により接着してもよい。
保護袋53に断熱袋1を接着した状態で、保護袋53の断熱袋1よりも長い部分は、折り畳み部56とされ、折り畳み部56は、保護袋53内に断熱袋1を収納した状態で、折り畳み可能である。
【0032】
次に、本実施の形態の作用について説明する。
断熱袋1に物品を挿入する場合に、開口部2が開かれ断熱袋1の内部に物品が挿入される。
この場合に、端部非断熱部21、及び端部非断熱部22のそれぞれが、開口部2の外側に折り曲げられているため、開口部2の内側を平滑に形成することができ、断熱袋1の内側への物品の出し入れを円滑に行うことができる。
【0033】
また、芯材13の厚さを2mm~3mm程度に薄く形成しているので、断熱袋1が撓みやすく、収納される物品の形状に応じて断熱袋1を容易に変形させることができ、断熱袋1への物品の出し入れを容易に行うことができる。
また、断熱袋1が撓んで、収納された物に合わせて変形されるので、断熱袋1内の空間に存在する気体を少なくすることができ、断熱袋1の保温性を向上させることができる。
【0034】
真空断熱材11により物品が覆われるため、物品への熱の伝達が低減される。断熱袋1の底部5も真空断熱材11であるため、底部5からの熱の伝達を抑制することができる。
また、真空断熱材11が折り曲げられる部分は底部5のみであり、真空断熱材11を容易に袋状に成形できる。
【0035】
断熱袋1の両側辺3,4において、外被材12の側部側非断熱部24,25を2枚に重ねて覆うので、断熱袋1の側辺3,4からの空気の出入りを防ぐことができ、保温性能を向上させることができる。
【0036】
断熱袋1は、内部に物品を保持した状態で、開口部2を閉じてもよい。
開口部2を閉じることにより、開口部2から外気が流入するのを抑制し、保温性能を向上させることも可能である。
【0037】
断熱袋1の内側のガスバリアフィルムに樹脂フィルムにアルミを蒸着させたものを用いているので、内側のガスバリアフィルムの金属層が薄く構成される。このため、ガスバリアフィルムの金属層を熱が伝わるヒートブリッジ現象が、金属箔を用いたガスバリアフィルムを用いる場合よりも低減される。
【0038】
保護袋53内に断熱袋1が収納されるので、断熱袋1の外面6,7が保護袋53に覆われ、断熱袋1で生じるヒートブリッジ現象の影響を低減できる。
開口52を閉じて畳み部56を折り畳むことにより、開口52を介した保護袋53内への空気の流入を抑制することができる。
【0039】
以上説明したように、本実施の形態においては、断熱袋1は、可撓性を有する板状の芯材13と、芯材13を収容し減圧状態で密封する外被材12と、で形成されるシート状の真空断熱材11を袋状にすることで形成される開口部2を有する。
これによれば、断熱袋1が真空断熱材11により構成されるため、断熱袋1の内側と外側との間の熱の伝達を真空断熱材11により低減することができ、断熱袋1の断熱性能を向上させることができる。
【0040】
また、本実施形態においては、真空断熱材11は矩形状であり、真空断熱材11の一辺である右辺12aと右辺12aに対向する他辺である左辺12bとに交差する直線である二等分線12cに沿って略中央で折り曲げられる。
これによれば、真空断熱材11を容易に袋状に成形できる。また、真空断熱材11が中央で折り曲げられるので断熱袋1の底部5が真空断熱材11で形成される。したがって、断熱袋1の断熱性能を更に向上させることができる。
【0041】
また、本実施形態においては、真空断熱材11は、芯材13の外側に外被材12で形成される非断熱部20を有し、折り曲げられることにより互いに対向する非断熱部20の側部側非断熱部24が重ねて折り畳まれて外被材12の外面である外面6に接着され、折り曲げられることにより互いに対向する側部側非断熱部25が重ねて折り畳まれて、外被材12の外面である外面7に接着される。
これによれば、断熱袋1の側面において2重の側部側非断熱部24,25が折り曲げられて外被材12の外面に接着されるため、断熱袋1の側辺3,4における断熱性能を向上することができる。したがって、断熱袋1の断熱性能を更に向上させることができる。
【0042】
また、本実施形態においては、開口部2を形成する非断熱部20である端部非断熱部21,22が、それぞれ外被材12の外側に向けて折られ、外被材12の外面である外面6,7に接着され、開口部2が形成される。
これによれば、開口部2の内側を平滑に形成することができるため、断熱袋1への物品の出し入れが容易となる。
【0043】
また、本実施形態においては、断熱袋1を内部に収納して保護する保護袋53を備え、断熱袋1は、開口部2の開口の方向を保護袋53の開口52の方向と一致させて、保護袋53内に接着されている。
これによれば、断熱袋1を用いて保温性の高い保温袋51を提供できる。また、断熱袋1の真空断熱材11が保護袋53により保護されることにより、断熱袋1の損傷を抑制することができる。
【0044】
また、本実施形態においては、断熱袋1の製造方法であって、可撓性を有する板状の芯材13と、芯材13を収容し減圧状態で密封する外被材12と、を有する矩形状に形成されたシート状の真空断熱材11を、真空断熱材11の一辺である右辺12aと右辺12aに対向する他辺である左辺12bとに交差する直線である二等分線12cに沿って、真空断熱材11の略中央で折り曲げ、折り曲げられた後、前記芯材13の外側に外被材12で形成される非断熱部20を接着して袋状に形成する。
これによれば、真空断熱材11を折り曲げて、断熱袋1を製造できるため、断熱袋1の断熱性能を向上できると共に、断熱袋1を容易に製造することができる。
【0045】
なお、本実施の形態は本発明を適用した一態様を示すものであって、本発明は前記実施の形態に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0046】
以上のように、本発明に係る断熱袋は、シート状の真空断熱材を折り曲げて袋状に形成されるものであり、容易かつ少ない製造コストで製造することができる断熱袋として好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 断熱袋
2 開口部
3,4 側辺
6,7 外面
11 真空断熱材
12 外被材
12c 二等分線
13 芯材
20 非断熱部
21,22 側部非断熱部
24,25 端部非断熱部
51 保温袋
52 開口
53 保護袋
図1
図2
図3
図4